説明

視点位置算出装置

【課題】 運転者の視点位置の算出に係る信頼性の向上を図る。
【解決手段】本発明は、運転者の視点位置EPを算出する視点位置算出装置1であって、右サイドミラーRの角度と車両の運転席着座中心面Tとに基づいて第1の推定視点位置EPRSを算出する第1推定視点位置算出部12と、左サイドミラーLの角度と車両の運転席着座中心面Tとに基づいて第2の推定視点位置EPLSを算出する第2推定視点位置算出部13と、推定視点位置EPRS,EPRSが一致するか否かを判定する一致条件判定部15と、推定視点位置EPRS,EPRSが一致すると判定された場合、当該推定視点位置を運転者の視点位置EPとして算出する視点位置算出部16とを備え、視点位置算出部16は、各推定視点位置EPRS,EPRSが一致しないと判定された場合、推定視点位置EPRS,EPLSに基づいて視点位置EPを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者の視点位置を算出する視点位置算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術文献として特開平10―176928号公報が知られている。この公報には、車両のルームミラーやサイドミラーの角度をもとに、運転者の視点位置を測定する視点位置測定装置が記載されている。この視点位置測定装置では、ルームミラーやサイドミラーの角度に基づいて、複数のミラーから運転者の視点位置に向かう直線を求め、求めた直線と運転席の中心面との交点を視点位置として測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10―176928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した視点位置測定装置においては、複数のミラーから求めた直線と運転席の中心面との交点が一致しなかった場合についての検討が十分なされておらず、視点位置の測定に関する信頼性が高いとは言えなかった。
【0005】
そこで、本発明は、運転者の視点位置の算出に係る信頼性の向上を図ることができる視点位置算出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、車両の運転者の視点位置を算出する視点位置算出装置であって、車両に設けられた第1の車載ミラーの角度と車両の運転席の着座中心位置とに基づいて、運転者の第1の推定視点位置を算出する第1推定視点位置算出手段と、車両に設けられた第2の車載ミラーの角度と車両の運転席の着座中心位置とに基づいて、運転者の第2の推定視点位置を算出する第2推定視点位置算出手段と、第1の推定視点位置及び第2の推定視点位置が一致するか否かを判定する一致条件判定手段と、一致条件判定手段が第1の推定視点位置及び第2の推定視点位置は一致すると判定した場合、第1の推定視点位置又は第2の推定視点位置を運転者の視点位置として算出する視点位置算出手段と、を備え、視点位置算出手段は、一致条件判定手段が第1の推定視点位置及び第2の推定視点位置が一致しないと判定した場合、第1の推定視点位置及び第2の推定視点位置に基づいて、運転者の視点位置を算出することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る視点位置算出装置によれば、運転者が自らの視点位置に合わせて車載ミラーの角度を調整することを利用して、車載ミラーの角度と運転席の着座中心位置とに基づき運転者の視点位置の算出を行うので、視点位置検出用の機器等を新たに設けることなく、運転者の視点位置の算出を容易に実現することができる。しかも、本発明に係る視点位置算出装置では、各車載ミラーに応じて求められる推定視点位置が一致するときは当該推定視点位置を視点位置として算出し、一致しないときは各推定視点位置に基づいて視点位置を算出する。従って、この視点位置算出装置によれば、一致しない場合に第1の推定視点位置や第2の推定視点位置を視点位置とみなさず適切に視点位置の算出を行うので、運転者の視点位置の算出に係る信頼性の向上を図ることができる。
【0008】
また、本発明に係る視点位置算出装置においては、車両に設けられた第3の車載ミラーの角度と車両の運転席の着座中心位置とに基づいて、運転者の第3推定視点位置を算出する第3推定視点位置算出手段を更に備え、一致条件判定手段は、第1の推定視点位置、第2の推定視点位置、及び第3の推定視点位置が一致するか否かを判定し、視点位置算出手段は、一致条件判定手段が推定視点位置の全てが一致すると判定した場合、いずれかの推定視点位置を運転者の視点位置として算出し、一致条件判定手段が第1の推定視点位置、第2の推定視点位置、及び第3の推定視点位置のうちいずれかの位置が一致しないと判定した場合、第1の推定視点位置、第2の推定視点位置、及び第3の推定視点位置に基づいて、運転者の視点位置を算出することが好ましい。
【0009】
本発明に係る視点位置算出装置によれば、第1〜第3の車載ミラーの角度からそれぞれ求められる三箇所の推定視点位置に基づいて運転者の視点位置を算出するので、二箇所の推定視点位置に基づいて視点位置を算出する場合と比べて、更に信頼性の向上を図ることができる。
【0010】
また、本発明に係る視点位置算出装置においては、第1の車載ミラー、第2の車載ミラー、及び第3の車載ミラーは、それぞれ車両のルームミラー、右サイドミラー、及び左サイドミラーのうちいずれかのミラーであることが好ましい。
この場合、運転者の後方視界確認に必須であるルームミラー、右サイドミラー、及び左サイドミラーを第1〜第3の車載ミラーとして推定視点位置を算出するので、信頼性の向上に有利である。
【0011】
また、本発明に係る視点位置算出装置においては、視点位置算出手段は、一致条件判定手段が推定視点位置の全てが一致しないと判定した場合、第1の推定視点位置、第2の推定視点位置、及び第3の推定視点位置を頂点とする三角形の内側の位置を視点位置として算出することが好ましい。
本発明に係る視点位置算出装置によれば、推定視点位置の全てについて一致しない場合であっても、各推定視点位置の位置関係に基づいて適切に視点位置を算出することができる。
【0012】
また、本発明に係る視点位置算出装置においては、推定視点位置が予め設定されたアイレンジ内に存在するか否かを判定するアイレンジ判定手段を更に備え、一致条件判定手段は、アイレンジ判定手段が二箇所以上の推定視点位置がアイレンジ内に存在すると判定した場合、アイレンジ内に存在すると判定された推定視点位置について一致するか否かを判定し、視点位置算出手段は、一致条件判定手段がアイレンジ内に存在すると判定された推定視点位置のうちいずれかの位置は一致しないと判定した場合、アイレンジ内に存在すると判定された推定視点位置に基づいて、視点位置を算出することが好ましい。
本発明に係る視点位置算出装置によれば、車両に対して予め設定されたアイレンジ内に存在する推定視点位置についてのみ一致の判定及び視点位置の算出を行うので、故障等により誤って算出された推定視点位置から視点位置が算出されることを回避でき、視点位置の算出に係る信頼性の向上を図ることができる。
【0013】
また、本発明に係る視点位置算出装置においては、アイレンジ判定手段がいずれかの推定視点位置がアイレンジ内に存在しないと判定した場合、運転者に対して警告を行う警告手段を更に備えることを更に備えることが好ましい。
本発明に係る視点位置算出装置によれば、アイレンジ内にいずれかの推定視点位置が存在しないと判定した場合、いずれかの車載ミラーの角度や運転者の運転姿勢が適切ではないと考えられることから、運転者に対して警告を行う。これにより、車載ミラーの角度や運転者の運転姿勢が適切ではない場合、運転者に確認を促すことができるので、車両の走行の安全性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、運転者の視点位置の算出に係る信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る視点位置算出装置の第1の実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1の視点位置算出装置による視点位置の算出を説明するための概略図である。
【図3】HUDの構成を示す概略側面図である。
【図4】視点位置の算出を説明するための概略平面図である。
【図5】視点位置の算出を説明するための車両右側から見た概略側面図である。
【図6】視点位置の算出を説明するための車両左側から見た概略側面図である。
【図7】アイレンジを説明するための概略側面図である。
【図8】推定視点位置が一致しない場合を説明するための概略図である。
【図9】推定視点位置が一致しない場合における視点位置の算出を説明するための概略側面図である。
【図10】HUDの虚像を示す図である。
【図11】第1の実施形態に係る視点位置算出装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】図11に示す視点位置算出処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】第2の実施形態に係る視点位置算出装置を示すブロック図である。
【図14】視点位置の算出を説明するための概略図である。
【図15】視点位置の算出を説明するための概略平面図である。
【図16】視点位置の算出を説明するための概略側面図である。
【図17】推定視点位置が一致しない場合を説明するための概略図である。
【図18】推定視点位置が一致しない場合における視点位置の算出を説明するための概略側面図である。
【図19】第2の実施形態に係る視点位置算出装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図20】図19に示す視点位置算出処理の流れを示すフローチャートである。
【図21】視点位置の算出に係る他の例を説明するための概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図面中、XYZ直交座標系により、車両の前後方向をX軸、車幅方向をY軸、車両の上下方向をZ軸として表す。また、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
[第1の実施形態]
図1及び図2に示されるように、第1の実施形態に係る視点位置算出装置1は、車両の右サイドミラーR及び左サイドミラーLの角度に基づいて運転者の視点位置EPを算出するものである。視点位置算出装置1は、算出した視点位置EPに応じて、車両のHUD[Head Up Display]30の表示位置の調整を行う。右サイドミラーR及び左サイドミラーLは、それぞれ特許請求の範囲に記載の第1の車載ミラー及び第2の車載ミラーに相当する。
【0018】
図3に示されるように、HUD30は、ウインドシールドW上に実景と重なる虚像Vを投影することで、運転者の視界内に各種情報を表示するものである。HUD30は、車両のダッシュボード内に埋め込まれた埋め込み式のHUDである。HUD30は、ダッシュボード内に埋め込まれた筐体31と、筐体31内に配置された表示デバイス32、反射部材33、及び反射部材アクチュエータ34とを備えている。筐体31には、表示デバイス32から出力された光をウインドシールドWに照射するための開口部Gが形成されている。HUD30は、表示デバイス32から出力された光を反射部材33により開口部Gへ向けて反射し、ウインドシールドWに照射することで虚像Vを形成する。虚像Vを形成する光の光路をUとして表す。視点位置算出装置1は、反射部材アクチュエータ34を制御して反射部材33の角度や位置を変更させることで、HUD30の虚像Vの表示位置を調整する。HUD30は、上下方向だけでなく左右方向にも虚像Vの表示位置を調整可能な構成となっている。
【0019】
以下、視点位置算出装置1による運転者の視点位置EPの算出について説明する。
【0020】
図2に示されるように、視点位置算出装置1は、運転者が所定の確認位置を視認できるようにサイドミラーR,Lの角度を調整することを利用して運転者の視点位置EPの算出を行う。ここで、図4及び図5に示されるように、運転者が右サイドミラーRによって車両右後方の確認位置RPを視認できるように右サイドミラーRの角度を調整した場合を考える。この場合、車両右後方の確認位置RPから右サイドミラーRに向かう光は、右サイドミラーRの鏡面で反射して運転者の視点位置EPに至る。この光の通る光路をH1とする。
【0021】
また、運転者の姿勢について前屈みの姿勢や多少後ろに反った姿勢で運転することはあっても左右に傾いた姿勢で運転する場合は少ないことから、運転者の視点位置EPは運転席の着座中心位置を含むXZ平面である運転席着座中心面T内に存在すると考えられる。この場合、運転者の視点位置EPは、光路H1と運転席着座中心面Tとの交点に等しいと推定される。このことから、視点位置算出装置1は、運転席着座中心面Tと光路H1との交点である第1の推定視点位置EPRSを視点位置EPの候補として算出する。
【0022】
次に、視点位置算出装置1による第1の推定視点位置EPRSの算出について説明する。なお、各位置の座標についてはHUD30の開口部Gを座標原点として表す。
【0023】
車両の右サイドミラーRについて、図4に示されるように、YZ平面と平行になるように右サイドミラーRを立てた状態を初期状態とし、初期状態における右サイドミラーRの鏡面の中心位置RSを座標(XR、YR、ZR)として表す。また、運転者による角度調整後の右サイドミラーRの鏡面の中心位置RSmvを座標(XRmv、YRmv、ZRmv)として表す。
【0024】
ここで、XY平面における幾何学的関係について考える。XY平面内で右サイドミラーRが初期状態から変化した角度をθ1とすると、角度調整後の右サイドミラーRの中心位置RSmvの座標のうちXRmv,YRmvは以下の式(1),(2)で表される。
【数1】

【0025】
この場合、車両右後方の確認位置RP、右サイドミラーRの中心位置RSmv、及び運転者の視点位置EPを結ぶ光路H1は、Z軸方向から見て図4に示す幾何学的関係を有している。すなわち、光路H1がXY平面内で右サイドミラーRの中心位置RSmvを頂点として形成する角の大きさはθ1の2倍に等しい。このことから、光路H1と運転席着座中心面Tとの交点である第1の推定視点位置EPRSの座標(XRS、YRS、ZRS)のXRSは、式(1),(2)を用いて以下の式(3)として表される。
【数2】

【0026】
また、第1の推定視点位置EPRSは、運転席着座中心面T上に存在するため、運転席着座中心面TのY座標をy0とすると、第1の推定視点位置EPRSのY座標であるYRSはy0に等しい。
【0027】
次に、XZ平面における幾何学的関係について考える。図5に示されるように、XZ平面内で右サイドミラーRが初期状態から変化した角度をθ3とすると、角度調整後の右サイドミラーRの中心位置RSmvの座標XRmv,ZRmvは以下の式(4),(5)で表される。
【数3】

【0028】
このとき、光路H1は、Y軸方向から見て図5に示す幾何学的関係を有し、XZ平面内で右サイドミラーRの中心位置RSmvを頂点とする角の大きさはθ3の2倍に等しくなる。第1の推定視点位置EPRSのZ座標であるZRSは、式(4),(5)を用いて以下の式(6)として表される。
【数4】

【0029】
以上の式(3),(6)及び運転席着座中心面TのY座標y0から第1の推定視点位置EPRSの座標(XRS、YRS、ZRS)が求められる。
【0030】
次に、視点位置算出装置1による第2の推定視点位置EPLSの算出について説明する。第2の推定視点位置EPLSは、車両の左サイドミラーLの角度に基づいて算出される視点位置EPの候補である。
【0031】
車両の左サイドミラーLについて、図4に示されるように、初期状態における鏡面の中心位置LSを座標(XL、YL、ZL)で表す。また、運転者による角度調整後の左サイドミラーLの鏡面の中心位置LSmvを座標(XLmv、YLmv、ZLmv)で表す。
【0032】
右サイドミラーRの場合と同様に、XY平面内で左サイドミラーLが初期状態から変化した角度をθ2とすると、図4に示す幾何学的関係から角度調整後の左サイドミラーLの中心位置LSmvの座標XLmv,YLmvは以下の式(7),(8)で表される。
【数5】

【0033】
この場合、車両左後方の確認位置LP、左サイドミラーLの中心位置LSmv、及び運転者の視点位置EPを結ぶ光路H2は、Z軸方向から見て図4に示す幾何学的関係を有する。すなわち、光路H2は、XY平面内で左サイドミラーLの中心位置LSmvを頂点とする角の大きさはθ2の2倍に等しい。このことから、光路H2と運転席着座中心面Tとの交点である第2の推定視点位置EPLSの座標(XLS、YLS、ZLS)のXLSは、式(7),(8)を用いて以下の式(9)として表される。
【数6】

【0034】
また、第2の推定視点位置EPLSは、運転席着座中心面T上に存在するため、運転席着座中心面TのY座標をy0とすると、第2の推定視点位置EPLSのY座標であるYLSはy0として求められる。
【0035】
次に、XZ平面における幾何学的関係について考える。図6に示されるように、XZ平面内で左サイドミラーLが変化した角度をθ4とすると、角度調整後の左サイドミラーLの中心位置LSmvの座標XLmv,ZLmvは以下の式(10),(11)で表される。
【数7】

【0036】
光路H2は、Y軸方向から見て図6に示す幾何学的関係を有し、XZ平面内で左サイドミラーLの中心位置LSmvを頂点とする角の大きさはθ4の2倍に等しくなる。このため、第2の推定視点位置EPLSのZ座標は、式(10),(11)を用いることで以下の式(12)として表される。
【数8】

【0037】
以上の式(9),(12)及び運転席着座中心面TのY座標y0から第2の推定視点位置EPRSの座標(XRS、YRS、ZRS)が求められる。
【0038】
視点位置算出装置1は、算出した第1の推定視点位置EPRS及び第2の推定視点位置EPLSについて、図3及び図7に示すアイレンジER内に存在するか否かを判定する。アイレンジERは、極めて特殊な運転姿勢や体格の運転者を除きほとんどの運転者の視点位置EPが含まれる範囲として予め設定された範囲である。車両に備えられたHUD30は、アイレンジER内の視点からウインドシールドWに投影する虚像Vが適切に視認できるように設計されている。
【0039】
図7に示されるように、運転席着座中心面T内におけるアイレンジERは、HUD30の開口部G(座標原点)を基準とした所定の仰角許容範囲α1〜α2として表すことができる。α1は、アイレンジERに対応する最小の仰角である。仰角α1による法線をQ1として示す。また、α2は、アイレンジERに対応する最大の仰角である。仰角α2による法線をQ2として示す。このとき、ある座標(s、t、u)に対する仰角αは、座標原点を(X0、Y0、Z0)として以下の式(13)から求められる。
【数9】

【0040】
視点位置算出装置1は、算出した第1の推定視点位置EPRS及び第2の推定視点位置EPLSについて、仰角β,γをそれぞれ算出し、これらの仰角β,γがアイレンジERの仰角許容範囲α1〜α2内に含まれるか否かを判定する。
【0041】
視点位置算出装置1は、仰角β,γがアイレンジERの仰角許容範囲α1〜α2内に含まれると判定した場合、第1の推定視点位置EPRS及び第2の推定視点位置EPLSはアイレンジER内に存在すると判定する。視点位置算出装置1は、仰角β,γがアイレンジERの仰角許容範囲α1〜α2内に含まれないと判定した場合、第1の推定視点位置EPRS及び第2の推定視点位置EPLSはアイレンジER内に存在しないと判定する。
【0042】
視点位置算出装置1は、第1の推定視点位置EPRS又は第2の推定視点位置EPLSがアイレンジER内に存在しないと判定した場合、サイドミラーR,Lの角度や運転者の運転姿勢が適切ではないと判断して運転者に警告を行う。
【0043】
視点位置算出装置1は、第1の推定視点位置EPRS及び第2の推定視点位置EPLSがアイレンジER内に存在すると判定した場合、第1の推定視点位置EPRS及び第2の推定視点位置EPLSが一致するか否かを判定する。なお、一致するか否かの判定条件は、各推定視点位置間の距離が所定値以下のときに満たされる。この所定値は、視点位置の算出精度を確保するため装置の演算精度等に応じて適切に設定される。
【0044】
視点位置算出装置1は、図4〜図6に示されるように、第1の推定視点位置EPRS及び第2の推定視点位置EPLSが一致すると判定した場合、第1の推定視点位置EPRS又は第2の推定視点位置EPLSを運転者の視点位置EPとして算出する。すなわち、視点位置算出装置1は、第1の推定視点位置EPRSの座標(XRS、YRS、ZRS)又は第2の推定視点位置EPLSの座標(XLS、YLS、ZLS)を視点位置EPの座標(X、Y、Z)として算出する。
【0045】
また、視点位置算出装置1は、図8及び図9に示されるように、第1の推定視点位置EPRS及び第2の推定視点位置EPLSが一致しないと判定した場合、第1の推定視点位置EPRS及び第2の推定視点位置EPLSから等距離の中点位置を運転者の視点位置EPとして算出する。この場合の視点位置EPの座標(X、Y、Z)は、以下の式(14)〜式(16)から求められる。
【数10】

【0046】
次に、上述した視点位置算出装置1の構成について説明する。
【0047】
図1に示されるように、第1の実施形態に係る視点位置算出装置1は、装置を統括的に制御するECU[Electronic Control Unit]2を備えている。ECU2は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]などからなる電子制御ユニットである。ECU2は、イグニッションスイッチ3、右サイドミラー検出部4、左サイドミラー検出部5、表示位置調整部6、及び警告出力部7と電気的に接続されている。
【0048】
イグニッションスイッチ3は、運転者が車両のエンジンを始動するためのスイッチである。イグニッションスイッチ3がONにされることで、車両のエンジンと連動して視点位置算出装置1が起動する。イグニッションスイッチ3がOFFにされることで、視点位置算出装置1は機能停止する。
【0049】
右サイドミラー検出部4は、車両の右サイドミラーRの角度を検出する。右サイドミラー検出部4は、検出した右サイドミラーRの角度に関する右サイドミラー角度信号をECU2に出力する。左サイドミラー検出部5は、車両の左サイドミラーLの角度を検出する。左サイドミラー検出部5は、検出した左サイドミラーLの角度に関する左サイドミラー角度信号をECU2に出力する。
【0050】
表示位置調整部6は、HUD30の反射部材アクチュエータ34を駆動して、HUD30による虚像Vの表示位置の調整を行う。表示位置調整部6は、ECU2からの指令に応じてHUD30の表示位置を調整する。警告出力部7は、運転者に対して警告音声の出力を行う。警告出力部7は、ECU2からの指令に応じて所定の内容の警告音声を出力する。警告出力部7は、特許請求の範囲に記載の警告手段として機能する。
【0051】
ECU2は、角度調整判定部11、第1推定視点位置算出部12、第2推定視点位置算出部13、アイレンジ判定部14、一致条件判定部15、及び視点位置算出部16を有している。
【0052】
角度調整判定部11は、右サイドミラー検出部4の右サイドミラー角度信号及び左サイドミラー検出部5の左サイドミラー角度信号に基づいて、サイドミラーの角度が調整されたか否かを判定する。
【0053】
第1推定視点位置算出部12は、角度調整判定部11により右サイドミラーRの角度が調整されたと判定された場合、右サイドミラー角度信号に基づいて右サイドミラーRの角度に関する情報を更新する。第1推定視点位置算出部12は、右サイドミラーRの角度と運転席着座中心面Tとに基づいて、第1の推定視点位置EPRSを算出する。第1推定視点位置算出部12は、HUD30の開口部Gを基準として第1の推定視点位置EPRSの仰角βを算出する。第1推定視点位置算出部12は、特許請求の範囲に記載の第1推定視点位置算出手段として機能する。
【0054】
第2推定視点位置算出部13は、角度調整判定部11により左サイドミラーLの角度が調整されたと判定された場合、左サイドミラー角度信号に基づいて左サイドミラーLの角度に関する情報を更新する。第2推定視点位置算出部13は、左サイドミラーLの角度と運転席着座中心面Tとに基づいて、第2の推定視点位置EPLSを算出する。第2推定視点位置算出部13は、HUD30の開口部Gを基準として第2の推定視点位置EPLSの仰角γを算出する。第2推定視点位置算出部13は、特許請求の範囲に記載の第2推定視点位置算出手段として機能する。
【0055】
アイレンジ判定部14は、第1の推定視点位置EPRS及び第2の推定視点位置EPLSが所定のアイレンジER内に存在するか否かを判定する。具体的には、アイレンジ判定部14は、第1の推定視点位置EPRSの仰角β及び第2の推定視点位置EPLSの仰角γがアイレンジERの仰角許容範囲α1〜α2内に含まれるか否かの判定により、各推定視点位置がアイレンジER内に存在するか否かを判定する。アイレンジ判定部14は、第1の推定視点位置EPRS又は第2の推定視点位置EPLSのいずれかがアイレンジER内に存在しないと判定した場合、警告出力部7に警告出力指令を送信する。アイレンジ判定部14は、特許請求の範囲に記載のアイレンジ判定手段として機能する。
【0056】
一致条件判定部15は、アイレンジ判定部14が第1の推定視点位置EPRS及び第2の推定視点位置EPLSはアイレンジER内に存在すると判定した場合、第1の推定視点位置EPRS及び第2の推定視点位置EPLSが一致するか否かを判定する。一致条件判定部15は、特許請求の範囲に記載の一致条件判定手段として機能する。
【0057】
視点位置算出部16は、一致条件判定部15が第1の推定視点位置EPRS及び第2の推定視点位置EPLSは一致すると判定した場合、第1の推定視点位置EPRS又は第2の推定視点位置EPLSを運転者の視点位置EPとして算出する。視点位置算出部16は、一致条件判定部15が第1の推定視点位置EPRS及び第2の推定視点位置EPLSは一致しないと判定した場合、第1の推定視点位置EPRS及び第2の推定視点位置EPLSの中点位置を運転者の視点位置EPとして算出する。視点位置算出部16は、特許請求の範囲に記載の視点位置算出手段として機能する。
【0058】
視点位置算出部16は、視点位置EPを算出した場合、算出した視点位置EPと記憶されている前回の運転者の視点位置とが一致するか否かを判定する。視点位置算出部16は、算出した視点位置EPと前回の視点位置とが一致すると判定した場合、処理を終了する。一方、視点位置算出部16は、算出した視点位置EPと前回の視点位置とが一致しないと判定した場合、算出した視点位置EPに基づいて運転者の視点位置に関する情報を更新する。
【0059】
視点位置算出部16は、更新した視点位置EPに応じた表示位置調整指令を表示位置調整部6に送信する。具体的には、視点位置算出部16は、HUD30の開口部Gを基準とした視点位置EPの仰角α0(図7参照)を算出し、視点位置EPの仰角α0に応じた表示位置調整指令を表示位置調整部6に送信する。
【0060】
ここで、表示位置調整部6によるHUD30の虚像Vの表示位置の調整制御について図7及び図10を参照して説明する。表示位置調整部6は、視点位置算出部16から送信された表示位置調整指令から視点位置EPの仰角α0を認識する。表示位置調整部6は、視点位置EPの仰角α0に基づいて、HUD30の虚像Vの表示位置を調整する。
【0061】
このとき、仰角α0の法線Q0には、アイレンジER内において最も基準(開口部G)に近い点である最近点P1と最も遠い点である最遠点P2が含まれる。高さは、最近点P1より最遠点P2がやや高くなる。この法線Q0上のアイレンジER内では、最近点P1及び最遠点P2の中央付近ほど視点位置EPが存在する確率が大きいため、仰角α0の法線Q0上に投影した代表点P0を運転者の視点位置とみなして、虚像Vの表示位置を調整する。すなわち、表示位置調整部6は、実際の視点位置EPが最近点P1及び最遠点P2の間のいずれの位置にあっても、代表点P0にあるものとみなして表示位置を調整する。
【0062】
また、図10に示されるように、虚像Vの最外形線(描画範囲)と虚像Vの可視範囲との間には、マージンが通常設けられる。このマージンは、車両の振動等により運転者の視点位置EPが一時的に変動した際に、運転者の視界から虚像Vが欠けないための余裕となる。図10において、代表点P0に視点位置EPが存在するとみなして調整された虚像Vについて、代表点P0から観測される描画範囲上端Vaと可視範囲上限Vbとの差分をDとする。また、最遠点P2における描画範囲上端Vaと可視範囲上限Vcとの差分をEとする。このとき、差分Eよりも差分Dが大きくなる範囲に光学的余裕又は虚像Vの大きさを設計する。これにより仰角α0の法線Q0上に位置する視点位置EPからは虚像Vが常に視認可能になるように調整される。なお、マージンは、DからDとEとの差分に減少するため、この差分を設計上の必要マージンとして確保することにより、最遠点P2においても良好な視認性が確保される。すなわち、HUD30の開口部Gを基準とした虚像V及び可視範囲について、アイレンジERにおける最近点P1及び最遠点P2からの視認余裕を適正に設計することにより、虚像Vの位置を常に見える範囲に保つ制御が可能になる。
【0063】
次に、上述した視点位置算出装置1の処理について図面を参照して説明する。
【0064】
図11に示されるように、視点位置算出装置1の角度調整判定部11は、イグニッションスイッチ3がONにされて装置が起動されると、右サイドミラー検出部4の右サイドミラー角度信号及び左サイドミラー検出部5の左サイドミラー角度信号に基づいて、いずれかのサイドミラーの角度が調整されたか否かを判定する(S1)。角度調整判定部11がサイドミラーの角度が調整されていないと判定した場合、ステップS11に移行する。
【0065】
角度調整判定部11がサイドミラーの角度が調整されていると判定した場合、ステップS2のミラー角度更新処理が行われる。ミラー角度更新処理において、第1推定視点位置算出部12は、角度調整判定部11により右サイドミラーRの角度が調整されたと判定された場合に、右サイドミラー角度信号に基づいて右サイドミラーRの角度に関する情報を更新する。同様に、第2推定視点位置算出部13は、角度調整判定部11により左サイドミラーLの角度が調整されたと判定された場合に、左サイドミラー角度信号に基づいて左サイドミラーLの角度に関する情報を更新する。
【0066】
続いて、ステップS3の推定視点位置算出処理が行われる。推定視点位置算出処理において、第1推定視点位置算出部12は、ミラー角度更新処理で更新を行った場合に、右サイドミラーRの角度と運転席着座中心面Tとに基づいて第1の推定視点位置EPRSを算出する。同様に、第2推定視点位置算出部13は、ミラー角度更新処理で更新した左サイドミラーLの角度と運転席着座中心面Tとに基づいて、第2の推定視点位置EPLSを算出する。
【0067】
その後、ステップS4の仰角算出処理が行われる。仰角算出処理において、第1推定視点位置算出部12は、推定視点位置算出処理で算出した第1の推定視点位置EPRSの仰角βを算出する。同様に、第2推定視点位置算出部13は、推定視点位置算出処理で算出した第2の推定視点位置EPLSの仰角γを算出する。
【0068】
次に、アイレンジ判定部14は、第1の推定視点位置EPRSの仰角β及び第2の推定視点位置EPLSの仰角γがアイレンジERの仰角許容範囲α1〜α2内に含まれるか否かを判定する(S5)。アイレンジ判定部14は、仰角β,γのいずれかがアイレンジERの仰角許容範囲α1〜α2内に含まれないと判定した場合、第1の推定視点位置EPRS又は第2の推定視点位置EPLSがアイレンジER内に存在しないと判定して、警告出力指令を警告出力部7に送信する警告処理を行う(S6)。警告出力部7は、運転者に対して警告出力指令に応じた警告音声の出力を行う。
【0069】
アイレンジ判定部14により第1の推定視点位置EPRS及び第2の推定視点位置EPLSがアイレンジER内に存在すると判定された場合、各推定視点位置に基づいて運転者の視点位置EPを算出する視点位置算出処理が行われる(S7)。視点位置算出処理については後述する。
【0070】
視点位置算出部16は、視点位置EPを算出した場合、算出した視点位置EPと記憶されている前回の運転者の視点位置とが一致するか否かを判定する(S8)。視点位置算出部16は、算出した視点位置EPと前回の運転者の視点位置とが一致すると判定した場合、S11に移行する。
【0071】
一方、視点位置算出部16は、算出した視点位置EPと前回の運転者の視点位置とが一致しないと判定した場合、算出した視点位置EPに基づいて運転者の視点位置に関する情報を更新する(S9)。視点位置算出部16は、更新した視点位置EPに応じた表示位置調整指令を表示位置調整部6に送信する(S10)。表示位置調整部6は、表示位置調整指令に応じてHUD30の虚像Vの表示位置の調整を行う。
【0072】
ステップS11において、イグニッションスイッチ3がOFFにされたか否かが判定される。視点位置算出装置1は、イグニッションスイッチ3がOFFにされていない場合、S1から処理を繰り返す。視点位置算出装置1は、イグニッションスイッチ3がOFFにされた場合、処理を終了する。
【0073】
次に、上述したステップS7の視点位置算出処理について図12を参照して説明する。図12に示されるように、視点位置算出処理において、一致条件判定部15は、第1の推定視点位置EPRS及び第2の推定視点位置EPLSが一致するか否かを判定する(S21)。
【0074】
視点位置算出部16は、一致条件判定部15が第1の推定視点位置EPRS及び第2の推定視点位置EPLSが一致すると判定した場合、第1の推定視点位置EPRS又は第2の推定視点位置EPLSを運転者の視点位置EPの算出結果として決定する視点位置決定処理を行う(S22)。
【0075】
一方、視点位置算出部16は、一致条件判定部15が第1の推定視点位置EPRS及び第2の推定視点位置EPLSが一致しないと判定した場合、第1の推定視点位置EPRS及び第2の推定視点位置EPLSの中点位置を算出する中点位置算出処理を行う(S23)。その後、視点位置算出部16は、算出した中点位置を運転者の視点位置EPの算出結果として決定する視点位置決定処理を行う(S24)。
【0076】
続いて、上述した視点位置算出装置1の作用効果について説明する。
【0077】
上述した第1の実施形態に係る視点位置算出装置1によれば、運転者が自らの視点位置EPに合わせてサイドミラーR,Lの角度を調整することを利用して、サイドミラーR,Lの角度と運転席着座中心面Tとに基づき運転者の視点位置EPの算出を行うので、視点位置検出用の機器等を新たに設けることなく、運転者の視点位置EPの算出を容易に実現することができる。
【0078】
しかも、この視点位置算出装置1では、サイドミラーR,Lから求められる第1及び第2の推定視点位置が一致するときは、第1の推定視点位置EPRS又は第2の推定視点位置EPLSを視点位置EPとして算出し、一致しないときは各推定視点位置に基づいて視点位置EPを算出する。従って、この視点位置算出装置1によれば、一致しない場合に第1の推定視点位置EPRSや第2の推定視点位置EPLSを視点位置EPとみなさず適切に視点位置EPの算出を行うので、運転者の視点位置EPの算出に係る信頼性の向上を図ることができる。
【0079】
また、この視点位置算出装置1によれば、車両に対して予め設定されたアイレンジER内に存在する推定視点位置についてのみ一致の判定や視点位置EPの算出を行うことで、故障等により誤って算出された推定視点位置から視点位置EPが算出されることを回避でき、視点位置EPの算出に係る信頼性の向上を図ることができる。
【0080】
更に、この視点位置算出装置1では、アイレンジER内にいずれかの推定視点位置が存在しないと判定した場合、いずれかのサイドミラーR,Lの角度や運転者の運転姿勢が適切ではないと考えられることから、運転者に対して警告を行う。これにより、サイドミラーR,Lの角度や運転者の運転姿勢が適切ではない場合、運転者に確認を促すことができるので、車両の走行の安全性の向上を図ることができる。
【0081】
また、この視点位置算出装置1では、運転中の運転者が頻繁に確認する右サイドミラーR及び左サイドミラーLの角度から推定視点位置を算出するので、その他の車載ミラーの角度から推定視点位置を算出する場合と比べて、運転者の視点位置EPの算出精度の向上が図られる。
【0082】
[第2の実施形態]
図13及び図14に示されるように、第2の実施形態に係る視点位置算出装置21は、第1の実施形態に係る視点位置算出装置1と比べて、ルームミラーCの角度に基づく第3の推定視点位置を更に用いて運転者の視点位置EPを算出する点が大きく異なる。
【0083】
具体的には、第2の実施形態に係る視点位置算出装置21は、運転者が所定の確認位置を視認できるようにルームミラーCの角度を調整することを利用して運転者の視点位置EPの算出を行う。
【0084】
ここで、図15に示されるように、車両のルームミラーCについて、その中心位置CSを座標(Xc、Yc、Zc)として表す。車両のルームミラーCについて、まずXY平面における幾何学的関係を考える。XY平面においてルームミラーCがYZ平面に平行な初期状態から傾けられた角度をθ5で表す。ルームミラーCの角度がθ5に調整された状態において運転者が車両後方の確認位置CPを視認可能である場合を考える。この場合、車両後方の確認位置CPからルームミラーCに向かう光は、ルームミラーCの鏡面で反射して運転者の視点位置EPに至る。この光の通る光路をH3とする。また、この光路H3と運転席着座中心面Tとの交点を第3の推定視点位置EPCSとする。
【0085】
光路H3は、Z軸方向から見て図15に示す幾何学的関係を有し、XY平面内でルームミラーCの中心位置CSを頂点とする角の大きさはθ5の2倍に等しい。このことから、光路H3と運転席着座中心面Tとの交点である第3の推定視点位置EPCSの座標を(XCS、YCS、ZCS)とすると、XCSは以下の式(17)として表される。
【数11】

【0086】
また、第3の推定視点位置EPCSは、運転席着座中心面T上に存在するため、運転席着座中心面TのY座標をy0とすると、第3の推定視点位置EPCSのY座標であるYCSはy0に等しい。
【0087】
次に、XZ平面における幾何学的関係について考える。図16に示されるように、XZ平面内でルームミラーCが初期状態から傾けられた角度をθ6で表す。このとき、光路H3は、Y軸方向から見て図16に示す幾何学的関係を有し、XZ平面内でルームミラーCの中心位置CSを頂点とする角の大きさはθ6の2倍に等しくなる。第3の推定視点位置EPCSのZ座標であるZCSは、以下の式(18)として表される。
【数12】

【0088】
以上の式(17),(18)及び運転席着座中心面TのY座標y0から第3の推定視点位置EPCSの座標(XCS、YCS、ZCS)が求められる。
【0089】
第2の実施形態に係る視点位置算出装置21は、第1の推定視点位置EPRS、第2の推定視点位置EPLS、及び第3の推定視点位置EPCSに基づいて、運転者の視点位置EPの算出を行う。
【0090】
視点位置算出装置21は、第1の推定視点位置EPRS、第2の推定視点位置EPLS、及び第3の推定視点位置EPCSについて、図7に示すアイレンジER内に存在するか否かを判定する。視点位置算出装置21は、第1の推定視点位置EPRS、第2の推定視点位置EPLS、及び第3の推定視点位置EPCSについて、仰角β,γ,δをそれぞれ算出し、これらの仰角β,γ,δがアイレンジERの仰角許容範囲α1〜α2内に含まれるか否かを判定する。
【0091】
視点位置算出装置21は、アイレンジERの仰角許容範囲α1〜α2内に含まれると判定した仰角について、当該仰角に対応する推定視点位置はアイレンジER内に存在すると判定する。視点位置算出装置21は、アイレンジERの仰角許容範囲α1〜α2内に含まれないと判定した仰角について、当該仰角に対応する推定視点位置はアイレンジER内に存在しないと判定する。
【0092】
視点位置算出装置21は、2つ以上の仰角がアイレンジERの仰角許容範囲α1〜α2内に含まれないと判定した場合、サイドミラーR,L及びルームミラーCの角度や運転者の運転姿勢が適切ではないと判断して運転者に警告を行う。
【0093】
視点位置算出装置21は、アイレンジER内に二箇所の推定視点位置のみが存在すると判定した場合、上述した第1の実施形態の場合と同様に、運転者の視点位置EPを算出する。すなわち、視点位置算出装置21は、二箇所の推定視点位置が一致するか否かを判定する。視点位置算出装置21は、二箇所の推定視点位置が一致する場合、当該推定視点位置を視点位置EPとして算出する。視点位置算出装置21は、二箇所の推定視点位置が一致しない場合、二箇所の推定視点位置の中点位置を視点位置EPとして算出する。この場合、視点位置EPの座標(X、Y、Z)は、一方の推定視点位置の座標を(Xa、Ya、Za)、他方の推定視点位置の座標を(Xb、Yb、Zb)として以下の式(19)〜式(21)から求められる。
【数13】

【0094】
視点位置算出装置21は、アイレンジER内に三箇所全ての推定視点位置が存在すると判定した場合、第1の推定視点位置EPRS、第2の推定視点位置EPLS、及び第3の推定視点位置EPCSが一致するか否かを判定する。視点位置算出装置21は、全ての推定視点位置が一致すると判定した場合、いずれかの推定視点位置を視点位置EPとして算出する。視点位置算出装置21は、いずれか二箇所の推定視点位置のみが一致すると判定した場合、当該推定視点位置と残りの推定視点位置との中点位置を視点位置EPとして算出する。
【0095】
視点位置算出装置21は、推定視点位置の全てが一致しないと判定した場合、第1の推定視点位置EPRS、第2の推定視点位置EPLS、及び第3の推定視点位置EPCSを頂点とする三角形の内心の位置を運転者の視点位置EPとして算出する(図18参照)。ここで、第1の推定視点位置EPRS、第2の推定視点位置EPLS、及び第3の推定視点位置EPCSを頂点とする三角形について考える。第1の推定視点位置EPRSと第3の推定視点位置EPCSとを結ぶ辺をEdgeLS、第2の推定視点位置EPLSと第3の推定視点位置EPCSとを結ぶ辺をEdgeRS、第1の推定視点位置EPRSと第2の推定視点位置EPLSとを結ぶ辺をEdgeCSとして表すと、各辺の長さは以下の式(22)〜(24)により表される。
【数14】

【0096】
よって、辺EdgeLS、EdgeRS、EdgeCSから等距離に位置する内心である視点位置EPは、以下の式(25)から求められる。
【数15】

【0097】
次に、上述した視点位置算出装置21の構成について説明する。なお、視点位置算出装置21の構成のうち第1の実施形態に係る視点位置算出装置1と重複する部分については説明を省略する。
【0098】
第2の実施形態に係る視点位置算出装置21は、ルームミラー検出部23を備えている。ルームミラー検出部23は、ルームミラーCの角度を検出するためのものである。ルームミラー検出部23は、検出したルームミラーCの角度をルームミラー角度信号としてECU22に出力する。ルームミラーCは、特許請求の範囲に記載の第3の車載ミラーに相当する。
【0099】
第2の実施形態に係る視点位置算出装置21のECU22は、角度調整判定部24、第1、推定視点位置算出部12、第2推定視点位置算出部13、第3推定視点位置算出部25、アイレンジ判定部26、一致条件判定部27、及び視点位置算出部28を有している。
【0100】
角度調整判定部24は、右サイドミラー検出部4の右サイドミラー角度信号、左サイドミラー検出部5の左サイドミラー角度信号、及びルームミラー検出部23のルームミラー角度信号に基づいて、いずれかのミラーの角度が調整されたか否かを判定する。
【0101】
第3推定視点位置算出部25は、角度調整判定部24によりルームミラーCの角度が調整されたと判定された場合、ルームミラー角度信号に基づいてルームミラーCの角度に関する情報を更新する。第3推定視点位置算出部25は、ルームミラーCの角度と運転席着座中心面Tとに基づいて、第3の推定視点位置EPCSを算出する。第3推定視点位置算出部25は、HUD30の開口部Gを基準として第3の推定視点位置EPCSの仰角δを算出する。第3推定視点位置算出部25は、特許請求の範囲に記載の第3推定視点位置算出手段として機能する。
【0102】
アイレンジ判定部26は、第1の推定視点位置EPRS、第2の推定視点位置EPLS、第3の推定視点位置EPCSが所定のアイレンジER内に存在するか否かを判定する。アイレンジ判定部26は、仰角β,γ,δがアイレンジERの仰角許容範囲α1〜α2内に含まれるか否かを判定することで、各推定視点位置がアイレンジER内に存在するか否かを判定する。アイレンジ判定部26は、2つ以上の仰角がアイレンジERの仰角許容範囲α1〜α2内に含まれないと判定した場合、警告出力部7に警告出力指令を送信する。
【0103】
一致条件判定部27は、アイレンジ判定部26が2つ以上の仰角がアイレンジERの仰角許容範囲α1〜α2内に含まれると判定した場合、これらの仰角に対応する推定視点位置について一致するか否かを判定する。
【0104】
視点位置算出部28は、一致条件判定部27が全ての推定視点位置が一致すると判定した場合、いずれかの推定視点位置を視点位置EPとして算出する。視点位置算出部28は、一致条件判定部27がいずれか二箇所の推定視点位置のみが一致すると判定した場合、一致する二箇所の推定視点位置と残りの推定視点位置との中点位置を視点位置EPとして算出する。
【0105】
視点位置算出部28は、一致条件判定部27が推定視点位置の全てが一致しないと判定した場合、第1の推定視点位置EPRS、第2の推定視点位置EPLS、及び第3の推定視点位置EPCSを頂点とする三角形の内心の位置を運転者の視点位置EPとして算出する(図18参照)。
【0106】
視点位置算出部28は、視点位置EPを算出した場合、算出した視点位置EPと記憶されている前回の運転者の視点位置とが一致するか否かを判定する。視点位置算出部28は、算出した視点位置EPと前回の運転者の視点位置とが一致すると判定した場合、処理を終了する。視点位置算出部28は、算出した視点位置EPと前回の運転者の視点位置とが一致しないと判定した場合、算出した視点位置EPに基づいて運転者の視点位置に関する情報を更新する。視点位置算出部28は、更新した視点位置EPに応じた表示位置調整指令を表示位置調整部6に送信する。
【0107】
次に、上述した視点位置算出装置21の処理について図面を参照して説明する。
【0108】
図19に示されるように、視点位置算出装置21の角度調整判定部24は、イグニッションスイッチ3がONにされて装置が起動されると、右サイドミラー検出部4の右サイドミラー角度信号、左サイドミラー検出部5の左サイドミラー角度信号、及びルームミラー検出部23のルームミラー角度信号に基づいて、いずれかのミラーの角度が調整されたか否かを判定する(S31)。角度調整判定部24は、いずれのミラーの角度も調整されていないと判定した場合、ステップS41に移行する。
【0109】
角度調整判定部24がミラーの角度が調整されていると判定した場合、ステップS32のミラー角度更新処理が行われる。ミラー角度更新処理において、第1推定視点位置算出部12は、角度調整判定部24により右サイドミラーRの角度が調整されたと判定された場合に、右サイドミラー角度信号に基づいて右サイドミラーRの角度に関する情報を更新する。同様に、第2推定視点位置算出部13は、角度調整判定部24により左サイドミラーLの角度が調整されたと判定された場合に、左サイドミラー角度信号に基づいて左サイドミラーLの角度に関する情報を更新する。第3推定視点位置算出部25は、角度調整判定部24によりルームミラーCの角度が調整されたと判定された場合に、ルームミラー角度信号に基づいてルームミラーCの角度に関する情報を更新する。
【0110】
続いて、ステップS33の推定視点位置算出処理が行われる。推定視点位置算出処理において、第1推定視点位置算出部12は、ミラー角度更新処理で更新した場合に、更新した右サイドミラーRの角度と運転席着座中心面Tとに基づいて第1の推定視点位置EPRSを算出する。同様に、第2推定視点位置算出部13は、ミラー角度更新処理で更新を行った場合に、更新した左サイドミラーLの角度と運転席着座中心面Tとに基づいて第2の推定視点位置EPLSを算出する。第3推定視点位置算出部25は、ミラー角度更新処理で更新を行った場合に、更新したルームミラーCの角度と運転席着座中心面Tとに基づいて第3の推定視点位置EPCSを算出する。
【0111】
その後、ステップS34の仰角算出処理が行われる。仰角算出処理において、第1推定視点位置算出部12は、推定視点位置算出処理で算出した第1の推定視点位置EPRSの仰角βを算出する。同様に、第2推定視点位置算出部13は、推定視点位置算出処理で算出した第2の推定視点位置EPLSの仰角γを算出する。第3推定視点位置算出部25は、推定視点位置算出処理で算出した第3の推定視点位置EPCSの仰角δを算出する。
【0112】
次に、アイレンジ判定部26は、仰角β,γ,δのうち2つ以上の仰角がアイレンジERの仰角許容範囲α1〜α2内に含まれるか否かを判定する(S35)。アイレンジ判定部26は、2つ以上の仰角がアイレンジERの仰角許容範囲α1〜α2内に含まれないと判定した場合、警告出力指令を警告出力部7に送信する警告処理を行う(S36)。警告出力部7は、運転者に対して警告出力指令に応じた警告音声の出力を行う。
【0113】
アイレンジ判定部26により2つ以上の仰角がアイレンジERの仰角許容範囲α1〜α2内に含まれると判定された場合、仰角許容範囲α1〜α2内に含まれる仰角を持つ推定視点位置に基づいて運転者の視点位置EPを算出する視点位置算出処理が行われる(S37)。この視点位置算出処理については後述する。
【0114】
視点位置算出部28は、視点位置EPを算出した場合、算出した視点位置EPと記憶されている前回の運転者の視点位置とが一致するか否かを判定する(S38)。視点位置算出部28は、算出した視点位置EPと前回の視点位置とが一致すると判定した場合、S41に移行する。
【0115】
一方、視点位置算出部28は、算出した視点位置EPと前回の視点位置とが一致しないと判定した場合、算出した視点位置EPに基づいて運転者の視点位置に関する情報を更新する(S39)。視点位置算出部28は、更新した視点位置EPに応じた表示位置調整指令を表示位置調整部6に送信する(S40)。表示位置調整部6は、表示位置調整指令に応じてHUD30の虚像Vの表示位置の調整を行う。
【0116】
ステップS41において、イグニッションスイッチ3がOFFにされたか否かが判定される。視点位置算出装置21は、イグニッションスイッチ3がOFFにされていない場合、S31から処理を繰り返す。視点位置算出装置21は、イグニッションスイッチ3がOFFにされた場合、処理を終了する。
【0117】
次に、上述したステップS37の視点位置算出処理について図20を参照して説明する。図12に示されるように、視点位置算出処理において、アイレンジ判定部26は、仰角β,γ,δの全てがアイレンジERの仰角許容範囲α1〜α2内に含まれるか否かを判定する(S51)。
【0118】
一致条件判定部27は、アイレンジ判定部26により仰角β,γ,δの全てはアイレンジERの仰角許容範囲α1〜α2内に含まれないと判定された場合、仰角許容範囲α1〜α2内に含まれる仰角を持つ二箇所の推定視点位置について一致するか否かを判定する(S52)。視点位置算出部28は、一致条件判定部27が二箇所の推定視点位置は一致すると判定した場合、いずれかの推定視点位置を運転者の視点位置EPの算出結果として決定する視点位置決定処理を行う(S53)。
【0119】
一方、視点位置算出部28は、一致条件判定部27が二箇所の推定視点位置は一致しないと判定した場合、これらの推定視点位置の中点位置を算出する中点位置算出処理を行う(S54)。その後、視点位置算出部28は、算出した中点位置を運転者の視点位置EPの算出結果として決定する視点位置決定処理を行う(S55)。
【0120】
ステップS51においてアイレンジ判定部26により仰角β,γ,δの全てがアイレンジERの仰角許容範囲α1〜α2内に含まれると判定された場合、一致条件判定部27は、推定視点位置の全てが一致するか否かを判定する(S56)。視点位置算出部28は、一致条件判定部27が推定視点位置の全てが一致すると判定した場合、いずれかの推定視点位置を運転者の視点位置EPの算出結果として決定する視点位置決定処理を行う(S57)。
【0121】
一方、一致条件判定部27は、推定視点位置の全てが一致しないと判定した場合、いずれか二箇所の推定視点位置について一致するか否かを判定する(S58)。視点位置算出部28は、一致条件判定部27がいずれか二箇所の推定視点位置について一致すると判定した場合、一致する推定視点位置と残りの推定視点位置との中点位置を算出する中点位置算出処理を行う(S59)。その後、視点位置算出部28は、算出した中点位置を運転者の視点位置EPの算出結果として決定する視点位置決定処理を行う(S60)。
【0122】
ステップS58において、一致条件判定部27がいずれか二箇所の推定視点位置についても一致しないと判定した場合、視点位置算出部28は、第1の推定視点位置EPRS、第2の推定視点位置EPLS、及び第3の推定視点位置EPCSを頂点とする三角形の内心位置を算出する内心位置算出処理を行う(S61)。その後、視点位置算出部28は、算出した内心位置を運転者の視点位置EPの算出結果として決定する視点位置決定処理を行う(S62)。
【0123】
続いて、上述した視点位置算出装置21の作用効果について説明する。
【0124】
上述した第2の実施形態に係る視点位置算出装置21によれば、第1の実施形態に係る視点位置算出装置1と同様の作用効果を得ることができる。更に、この視点位置算出装置21によれば、三箇所の推定視点位置に基づいて運転者の視点位置を算出するので、二箇所の推定視点位置に基づいて視点位置を算出する場合と比べて、更に算出精度及び信頼性の向上を図ることができる。しかも、アイレンジER内に存在しない推定視点位置については視点位置EPの算出の基礎としないので、いずれかの推定視点位置が誤っていた場合であっても、視点位置EPの算出精度が著しく低下することが避けられる。このことは、装置の信頼性の向上に寄与する。
【0125】
また、この視点位置算出装置21では、右サイドミラーR、左サイドミラーL、及びルームミラーCの3つの車載ミラーからそれぞれ推定視点位置を求めている。このように、運転者の後方視界確認に必須である右サイドミラーR、左サイドミラーL、及びルームミラーCの角度から推定視点位置を算出するので、その他の車載ミラーの角度から算出する場合と比べて、運転者の視点位置EPの算出精度の向上に有利である。
【0126】
更に、この視点位置算出装置21によれば、3箇所の推定視点位置のうちいずれか2箇所について一致すると判定した場合には、当該推定視点位置と残りの推定視点位置との間で等距離の中点位置を視点位置EPとして算出し、推定視点位置の全てが一致しない場合には、3箇所の推定視点位置を頂点とする三角形の内心位置を視点位置として算出する。このため、視点位置算出装置21によれば、推定視点位置の全てが一致しない場合であっても、各推定視点位置の位置関係に基づいて適切に視点位置を算出することができる。
【0127】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0128】
例えば、第1の実施形態に係る視点位置算出装置1において、右サイドミラーRや左サイドミラーLに代えて、ルームミラーCや大型車用補助ミラー等の他の車載ミラーを採用しても良い。また、第2の実施形態に係る視点位置算出装置21において、右サイドミラーR、左サイドミラーL、及びルームミラーCに代えて他の車載ミラーを採用しても良い。
【0129】
また、第2の実施形態に係る視点位置算出装置21において、推定視点位置の全てが一致しない場合、各推定視点位置を頂点とする三角形の内心位置に代えて三角形の重心位置を運転者の視点位置EPとして算出する態様であっても良い。ここで、第1の推定視点位置EPRSの座標(XRS、YRS、ZRS)、第2の推定視点位置EPLSの座標(XLS、YLS、ZLS)、第3の推定視点位置EPCSの座標(XCS、YCS、ZCS)とすると、三角形の重心位置である視点位置EP(X、Y、Z)は、以下の式(26)から求められる。この場合においても、各推定視点位置の位置関係に基づいて適切に視点位置EPを算出することができ、信頼性の高い算出結果が得られる。
【数16】

【0130】
更に、第2の実施形態に係る視点位置算出装置21において、推定視点位置の全てが一致しない場合、車載ミラーの種類等に応じて各推定視点位置に重み付けを行い、重み付け結果と各推定視点位置の位置関係とに基づいて視点位置EPを算出する態様であっても良い。この場合、各推定視点位置の推定精度や信頼度に応じて視点位置EPを適切に算出することが可能になる。
【0131】
また、第2の実施形態に係る視点位置算出装置21においては、2つ以上の仰角がアイレンジERの仰角許容範囲α1〜α2内に存在しない場合に警告を行っていたが、いずれか一つの仰角がアイレンジERの仰角許容範囲α1〜α2内に存在しない場合に警告を行う態様としても良い。これにより、いずれかの車載ミラーが適切な角度に調整されていないことを運転者に報せることができる。
【0132】
また、上述した各実施形態では、推定視点位置が所定のアイレンジER内に存在するか否かについて判定を行っていたが、必ずしもアイレンジERに関する判定を行う必要はない。すなわち、算出した推定視点位置がアイレンジER内に存在するか否かにかかわらず視点位置EPを算出する態様であっても良い。
【符号の説明】
【0133】
1,21…視点位置算出装置 2…ECU 3…イグニッションスイッチ 4…右サイドミラー検出部 5…左サイドミラー検出部 6…表示位置調整部 7…警告出力部 12…第1推定視点位置算出部(第1推定視点位置算出手段) 13…第2推定視点位置算出部(第2推定視点位置算出手段) 23…ルームミラー検出部 11,24…角度調整判定部 25…第3推定視点位置算出部(第2推定視点位置算出手段) 14,26…アイレンジ判定部(アイレンジ判定手段) 15,27…一致条件判定部(一致条件判定手段) 16,28…視点位置算出部(視点位置算出手段) 30…HUD R…右サイドミラー(第1の車載ミラー) L…左サイドミラー(第2の車載ミラー) C…ルームミラー(第3の車載ミラー) T…運転席着座中心面(着座中心位置を含む面) W…ウインドシールド G…HUDの開口部 EP…視点位置 EPCS…第3の推定視点位置 EPLS…第2の推定視点位置 EPRS…第1の推定視点位置 ER…アイレンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者の視点位置を算出する視点位置算出装置であって、
前記車両に設けられた第1の車載ミラーの角度と前記車両の運転席の着座中心位置とに基づいて、前記運転者の第1の推定視点位置を算出する第1推定視点位置算出手段と、
前記車両に設けられた第2の車載ミラーの角度と前記車両の運転席の着座中心位置とに基づいて、前記運転者の第2の推定視点位置を算出する第2推定視点位置算出手段と、
前記第1の推定視点位置及び前記第2の推定視点位置が一致するか否かを判定する一致条件判定手段と、
前記一致条件判定手段が前記第1の推定視点位置及び前記第2の推定視点位置は一致すると判定した場合、前記第1の推定視点位置又は前記第2の推定視点位置を前記運転者の視点位置として算出する視点位置算出手段と、
を備え、
前記視点位置算出手段は、前記一致条件判定手段が前記第1の推定視点位置及び前記第2の推定視点位置は一致しないと判定した場合、前記第1の推定視点位置及び前記第2の推定視点位置に基づいて、前記運転者の視点位置を算出することを特徴とする視点位置算出装置。
【請求項2】
前記車両に設けられた第3の車載ミラーの角度と前記車両の運転席の着座中心位置とに基づいて、前記運転者の第3の推定視点位置を算出する第3推定視点位置算出手段を更に備え、
前記一致条件判定手段は、前記第1の推定視点位置、前記第2の推定視点位置、及び前記第3の推定視点位置が一致するか否かを判定し、
前記視点位置算出手段は、前記一致条件判定手段が全ての前記推定視点位置は一致すると判定した場合、前記第1の推定視点位置、前記第2の推定視点位置又は前記第3の推定視点位置を前記運転者の視点位置として算出し、
前記一致条件判定手段が前記第1の推定視点位置、前記第2の推定視点位置、及び前記第3の推定視点位置のうちいずれかの位置が一致しないと判定した場合、前記第1の推定視点位置、前記第2の推定視点位置、及び前記第3の推定視点位置に基づいて前記運転者の視点位置を算出することを特徴とする請求項1に記載の視点位置算出装置。
【請求項3】
前記第1の車載ミラー、前記第2の車載ミラー、及び前記第3の車載ミラーは、それぞれ前記車両のルームミラー、前記車両の右サイドミラー、及び前記車両の左サイドミラーのうちいずれかのミラーであることを特徴とする請求項2に記載の視点位置算出装置。
【請求項4】
前記視点位置算出手段は、前記一致条件判定手段が前記推定視点位置の全てが一致しないと判定した場合、前記第1の推定視点位置、前記第2の推定視点位置、及び前記第3の推定視点位置を頂点とする三角形の内側の位置を前記視点位置として算出することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の視点位置算出装置。
【請求項5】
前記推定視点位置が予め設定されたアイレンジ内に存在するか否かを判定するアイレンジ判定手段を更に備え、
前記一致条件判定手段は、前記アイレンジ判定手段が二箇所以上の前記推定視点位置が前記アイレンジ内に存在すると判定した場合、前記アイレンジ内に存在すると判定された推定視点位置について一致するか否かを判定し、
前記視点位置算出手段は、前記一致条件判定手段が前記アイレンジ内に存在すると判定された推定視点位置のうちいずれかの位置は一致しないと判定した場合、前記アイレンジ内に存在すると判定された推定視点位置に基づいて、前記視点位置を算出することを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の視点位置算出装置。
【請求項6】
前記アイレンジ判定手段がいずれかの前記推定視点位置が前記アイレンジ内に存在しないと判定した場合、前記運転者に対して警告を行う警告手段を更に備えることを特徴とする請求項5に記載の視点位置算出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−40902(P2012−40902A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181714(P2010−181714)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】