説明

試料処理装置

【課題】 省スペースで、且つ、搬送時間が短い試料搬送装置を提供する。
【解決手段】 内部を真空状態にして試料を処理する処理室40と、処理室40に試料を搬送する内部を真空状態に保った第1の試料搬送室30と、試料搬送ロボット11を有し試料収納カセット70に収納された試料60を搬送する内部を大気圧状態とする第2の試料搬送室10と、第1の試料搬送室30と第2の試料搬送室10との間に連結され各試料搬送室との境界に試料を搬入出するのに十分な大きさのゲートと該ゲートを開閉するバルブを有し該バルブを閉じてその内部を大気圧状態または真空状態とするロック室20と、制御装置50とを有する試料処理装置1において、第2の試料搬送室10からロック室20内に設けた試料台21へ試料を搬送する搬送経路上で試料が横切る位置に複数対の遮光センサ23を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程などにおける試料処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ処理装置などの試料処理装置は、処理室内部を真空状態にして試料に処理を施す。前記処理室には、枚様式に試料が搬送される。そのため、前記処理室には、試料を搬送するロボットを搭載した試料搬送室が連接されている。ここで、前記処理室内部は、試料処理装置の稼動中前記処理室内部は、装置の稼働中ほぼ真空状態に保たれるので、前記試料搬送室内部もほぼ常に真空状態に保たれる。しかし、処理前または処理後の試料を収納する試料収納カセットの内部は大気圧状態であるため、前記処理装置は、大気圧状態下において試料を搬送するロボットをも有している。このように、試料を試料収納カセットから真空処理室まで搬送する間に、試料は、大気圧状態下にある試料搬送室と真空状態下にある試料搬送室を経由するため、これらの搬送室の間には、大気圧状態下にある試料搬送室と真空圧状態下にある試料搬送室を連結し、連接する真空状態下にあるチャンバ内部を真空状態に保ったまま、その内部を加圧または減圧し、大気側試料搬送ロボットと真空側試料搬送ロボットとの間で試料の受渡しを可能にする、ロック室と呼ばれるユニットを有している。
【0003】
通常大気側真空ロボットは、搬送中の試料を落とさないように、試料とハンドの間の間隙を減圧し、大気圧により試料とハンドを吸着しながら試料を搬送する。このように真空吸着力を用いて試料を搬送すると、前記搬送ロボットが試料を搬送中に、試料がハンドの上で動くことがないので、高速度で試料を搬送することが出来る。ただし、真空状態かでは、前記吸着力が働かないので、真空吸着方式の試料搬送ロボットは使用できない。そこで、真空側試料搬送ロボットは、ハンド上面に試料を載せ、ハンド上面の試料設置面の周囲部分に突起部を有し、その突起部の内部で試料が位置制限される構造を持つ。
【0004】
真空側試料搬送ロボットが前記ロック室から試料を受け取るとき、ロック室試料台の上に載っている試料は、例えばプッシャーなどにより持ち上げられ、真空側試料搬送ロボットのハンドが試料台と試料の間に挿入された後、プッシャーが引き下げられることによって、試料は前記ハンドの上に受け渡される。
【0005】
このとき、ハンド上面の前記突起部の内側がテーパ形状になっており、前記ロック室からハンドに試料が受け渡されるとき、試料の位置がハンド上部の試料設置位置から外れていても、試料の位置が前記突起部のテーパ形状部の内側に納まっていれば、前記テーパ形状簿を試料が滑り落ちることで、前記突起部の内部に試料が納まる。
【0006】
ロック室から真空側試料搬送ロボットが試料を受け取るとき、試料とハンドの位置のずれが前記許容ずれ量より大きい場合、試料の受け渡しに失敗するかあるいは、試料がハンド上面の突起部の内側に入らず搬送中に試料を落とすなどの危険がある。
【0007】
ここで、前記ハンドの突起部の内部にある試料設置面は、ハンドの上面で水平宝庫に微動することができる。このように、ハンド上で試料が自由に動くと、試料搬送精度が低下する。
【0008】
したがって、前記ロック室から前記真空側試料搬送ロボットハンドに試料が受け渡されるとき、試料とハンドの位置の許容ずれ量が大きくなるように、ハンド上面の試料設置面の面積を大きくすると、ハンド上面での試料延び同僚が大きくなり搬送精度が低下し、搬送精度を向上させるために前記真空側試料搬送ロボットの試料設置面上で試料延び同僚が小さなハンドを用いると前記ロック室から前記真空側試料搬送ロボットハンドが試料を受け取るときの試料とハンドの位置の許容ずれ量が小さくなる。
【0009】
真空側試料搬送ロボットの試料搬送精度が悪いと、試料が処理室内部で処理されるときの処理性能に悪影響を及ぼすため、試料搬送ロボットによる試料搬送位置の高精度化は重要である。したがってロック室から真空側試料搬送ロボットが試料を受け取る際に、試料位置とハンド位置の許容ずれ量が小さくても確実に受け渡しに成功するように、試料とハンドの位置が試料受け渡し位置まで高精度に配置されていることが求められる。
【0010】
ところが、前記試料収納カセット内部では、試料の位置は、高精度の位置決めはされていない。大気側試料搬送ロボットが、前記試料収納カセットから前記ロック室まで試料を搬送すると、試料毎に目標搬送位置に対して試料搬送位置にずれが生じる。そのため、真空側試料搬送ロボットがロック室から試料を受け取るとき、ロボットハンドと試料位置の前記許容ずれ量が小さいと、試料の受け渡しに失敗することがある。
【0011】
そこで、通常は、大気側試料搬送ロボットが前記試料収納カセットから前記ロック室まで試料を搬送するとき、前記試料収納カセットに収納される試料を大気側試料搬送ロボットによってセンタリングユニットと呼ばれる試料の芯出しを行うユニットに搬送し、センタリングユニットが試料の芯出しを行った後、再び大気側試料搬送ロボットが試料をロック室へ搬送する。これにより試料は、目標位置まで高精度に搬送される。
【0012】
上記のようなセンタリングユニットは、ウェハをウェハ受け渡し位置に搬送するウェハ搬送部と、ウェハ搬送部の搬送方向中心軸に対して非対称に配置され前記ウェハの複数のエッジ座標データを検出する複数のセンサと、ウェハ搬送部において複数のセンサにより得られた複数のエッジ座標データのうちウェハに形成された位置合わせ形状部を含まない3点のエッジ座標データに基づきウェハの中心を求め、この求められたウェハ中心と受け渡し位置の中心とのずれ量を求める演算部と、演算部で求められたずれ量に基づいてウェハ受け渡し位置中心にウェハの中心を合わせるためにウェハ搬送部をXY方向に異動させる移動手段とを設けている(例えば、特許文献1参照)。
【0013】
ここでセンタリングユニットの試料芯出し位置とロック室の試料受け渡し位置までの位置関係は、前記大気側試料搬送室筐体などの機械加工品の加工公差や、前記大気側試料搬送室とロック室との組立公差などの要因により、装置それぞれに微小の差が生じるため、前期センタリングユニットで芯出しされた試料を前記ロック室の試料台中心まで高精度に搬送できるように、前記大気側試料搬送ロボットには、装置組み立ての段階で各装置毎にティーチングと呼ばれる搬送位置の微調整がされている。ティーチングとは、手動で試料搬送ロボットを目標位置まで動かし、その位置を試料搬送ロボットの駆動系に記憶させる作業である。
【0014】
同様に、真空側試料搬送装置に対しても、ロック室から真空処理室の試料台まで、高精度に試料を搬送できるように、装置ごとに、真空側試料搬送ロボットに対してもティーチング作業が行われる。
【0015】
一度ティーチング作業を行った試料搬送ロボットは、ティーチング位置まで高精度に繰り返し動作する。
【0016】
さらに、試料を目的位置に高精度に搬送する方法として、試料を搬送する試料搬送ロボットに対して、試料のミスアライメントを検出して、試料搬送ロボットの動きを修正する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−254738号公報
【特許文献2】特開平10−64971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記のように、従来は、試料を前記処理室の処理台中心まで高精度に搬送するために、センタリングユニットと呼ばれる装置を用いて試料の芯出しを行った後に、試料を前記処理室まで搬送しており、センタリングユニットを搭載することで装置全体が大きくなり、メンテナンススペースが小さくなることが問題であった。
【0018】
また、上記方法では、試料を前記処理室まで搬送する途中でセンタリングユニットを経由することで、搬送時間が長くなるとともに、センタリングユニットを搭載することで装置のコストが上がることが問題であった。さらに、試料の搬送に当たって、センタリングユニットを介することで、試料を汚染する機会が増えるという問題があった。
【0019】
さらに、センタリングユニットで試料の中心を出しても、大気搬送室にロック室を取り付ける場合に誤差がある場合には、この取付誤差を改めて修正することが必要となるという問題がある。
【0020】
本発明の目的は、省スペースで、且つ、搬送時間が短く、試料収納カセットからロック室試料台への試料の搬送の過程で試料の位置合わせを行える試料搬送装置を提供することにある。また、本発明の別の目的は、低コストの試料処理装置を提供することにある。さらに、本発明の別の目的は、試料の汚染の機会を減らし、かつ大気搬送室にロック室を取り付ける場合に誤差が生じても、試料をロック室試料台に正確に搬送することができる試料処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的は、内部を真空状態にして試料を処理する処理室と、該処理室に試料を搬送する内部を真空状態に保った第1の試料搬送室と、試料搬送ロボットを有し試料収納カセットに収納された試料を搬送する内部を大気圧状態とする第2の試料搬送室と、第1の試料搬送室と第2の試料搬送室との間に連結され各試料搬送室との境界に試料を搬入出するのに十分な大きさのゲートと該ゲートを開閉するバルブを有し該バルブを閉じてその内部を大気圧状態または真空状態とするロック室と、制御装置とを有する試料処理装置において、第2の試料搬送室からロック室内に設けた試料台へ試料を搬送する搬送経路上で試料が横切る位置に一対以上の遮光センサを設けることによって、達成できる。
【0022】
さらに、上記目的は、上記試料処理装置において、ロック室の第2の試料搬送室側ゲートの近傍であって第2の試料搬送室からロック室内の試料台へ試料を搬送する搬送経路上で試料が横切る位置に一対以上の遮光センサを設けることによって達成される。
【0023】
さらに、上記目的は、上記試料処理装置において、遮光センサが光ビーム放射部と光ビーム検出部とを有し、制御装置が遮光センサの出力を用いて光ビームが搬送中の試料によって遮光される時間または時刻を計測して遮光センサが取り付けられる位置に対する試料の位置を演算することによって、達成される。
【0024】
上記目的は、上記試料処理装置において、遮光センサが光ビーム放射部と光ビーム検出部とを有し、制御装置が遮光センサの出力を用いて光ビームが搬送中の試料によって遮光される時間または時刻を計測して遮光センサが取り付けられる位置に対する試料の位置を演算するとともに、試料搬送先である試料台に対する遮光センサの位置が明確にされており、試料搬送ロボットが所定の一定の搬送速度で試料を搬送することにより、制御装置が遮光センサの出力を用いて搬送中の試料と試料台の位置関係を演算することによって、達成される。
【0025】
また、上記目的は、上記試料処理装置において、遮光センサが光ビーム放射部と光ビーム検出部とを有し、制御装置が遮光センサの出力を用いて光ビームが搬送中の試料によって遮光される時間または時刻を計測して遮光センサが取り付けられる位置に対する試料の位置を演算するとともに、試料搬送先である試料台に対する遮光センサの位置が明確にされており、制御装置が遮光センサの出力を用いて試料の搬送速度を演算し、搬送中の試料の位置と試料台との位置関係を演算することによって、達成される。
【0026】
さらに、上記目的は、上記試料処理装置において、遮光センサが光ビーム放射部と光ビーム検出部とを有し、制御装置が遮光センサの出力を用いて光ビームが搬送中の試料によって遮光される時間または時刻を計測して遮光センサが取り付けられる位置に対する試料の位置を演算するとともに、遮光センサの出力を用いて試料の搬送速度および搬送中の試料の位置と試料台との位置関係を演算し、その結果に基づいて搬送中の試料と試料台までの距離と方向を演算し、さらにこの演算結果に基づいて試料搬送ロボットの動作を制御することによって、達成される。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、省スペースで、且つ、搬送時間が短い試料処理装置を提供することができる。また、低コストの試料処理装置を提供することができる。さらに、本発明によれば、試料の汚染の機会を減らし、かつ大気搬送室にロック室を取り付ける場合に誤差が生じても、この考慮することなく試料をロック室試料台に正確に搬送することができる試料処理装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の実施例について、以下、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の実施例にかかる試料処理装置の全体図を示す上面図である。図2は、本発明の実施例にかかる試料処理装置の大気側試料搬送室を示す一部切り欠き斜視図である。図3は、本発明の実施例にかかる試料処理装置の真空側試料搬送室を示す一部切り欠き斜視図である。図4は、本発明の実施例にかかる試料処理装置の大気側試料搬送ロボットがロック室内部に試料を搬送するときの様子を表す一部切り欠き斜視図である。
【0029】
本実施例で示す試料処理装置は、処理室内部を真空状態に減圧して試料を処理する。試料処理装置1は、大気側試料搬送室10と、真空側試料搬送室30と、大気側試料搬送室10および真空側試料搬送室30に接続される複数のロック室20と、真空側試料搬送室30に接続される複数の試料処理室(真空処理室)40と、試料収納カセット70が載置される大気側試料搬送室10に装着されるカセット載置台(図示を省略)と、制御装置50とを有して構成される。
【0030】
大気側試料搬送室10の内部には大気側試料搬送ロボット11が設けられ、真空側試料搬送室30の内部には、真空側試料搬送ロボット31が設けられている。また、大気側試料搬送室10および真空側試料搬送室30にボルト等で連結されて取り付けられたロック室20の内部には試料が載置されるロック室試料台21が設けられ、真空処理室40内には試料処理台41がそれぞれ設けられる。これらロック室20、真空処理室40は、試料が載置されて作業が行われるワークステーションである。
【0031】
真空処理室40および真空側試料搬送室30の内部は、ほぼ常に真空状態であり、大気側試料搬送室10および処理前または処理後の試料を収納する試料収納カセット70は、常に大気状態にある。ロック室20は、その前後に試料を搬入または搬出するために十分な大きさの開口と、それらの開口部に開閉可能なバルブを有し、このバルブを閉じて、その内部を加圧または減圧することができる真空容器内に配置されている。
【0032】
大気側試料搬送室10の内部に設置された大気側試料搬送ロボット11によって、試料収納カセット70に収納される試料60は、ロック室20の内部に設置されるロック室試料台21に搬送される。つまりロック室20が搬送の目的地である。このときロック室20の内部は大気状態であり、ロック室内部の真空側のゲートは閉じられている。試料60がロック室試料台21上に搬送された後、ロック室20の大気側ゲートが閉じられ、その内部が減圧され真空状態になる。ロック室20内部が真空状態になった後、真空側ゲートが開き、試料60は、真空側試料搬送室30の内部に格納される真空側試料搬送ロボット31によって試料処理室40の内部に設置される試料処理台41に搬送される。試料処理室40と真空側試料搬送室30の境界にはバルブを有しており、このバルブを閉じた後、試料処理室40の内部で、試料に処理が施される。処理後の試料60は、上記と同様にして、真空側試料搬送ロボット31、ロック室20、大気側試料搬送ロボット11を介して、試料収納カセット70に回収される。
【0033】
ここで、真空側試料搬送ロボット31が、ロック室20と試料60を受け渡しするときの受け渡し方法を、図6を用いて説明する。大気側試料搬送ロボット11から搬送された試料60は、ロック室試料台21の上に設置される。ロック室試料台21には、プッシャー25が備え付けられている。プッシャー25は、ロック室試料台上面に対し垂直に取付けられており、その上下動作によってロック室試料台上方へ突き出されたり、ロック室試料台内部に引き戻されたりする。試料60が前記ロック室試料台21の上に載せられた状態で、プッシャー25がロック室試料台21内から押し上げることで、試料60はロック室試料台21の上方へ押し上げられる。プッシャー25が試料60を押し上げている状態で、真空側試料搬送ロボット31のロボットハンド311がロック室試料台21とプッシャー25によって押し上げられた試料60との間の空間に挿入され、プッシャー25がロック室試料台21の内部に引き戻されることで、試料60がロック室20内でロック室試料台21から真空側試料搬送ロボット31へ受け渡される。
【0034】
ここで、真空側試料搬送ロボット31のロボットハンド311は、試料設置面313の少なくとも前後または左右方向の端部に突起部312を有する形状を持っており、ロック室20から真空側試料搬送ロボット31に試料60が受け渡されるとき、プッシャー25によって押し上げられた試料60の位置がロボットハンド311の試料設置面313とその周囲の突起部312の傾斜部分の外側までずれていた場合、試料60はロボットハンド311の試料設置面313に載らず、搬送エラーを発生する。
【0035】
このようなロック室20からロボットハンド311への試料60の受け渡し失敗の原因は、プッシャー25によって押し上げられた試料60の位置あるいは試料60の下方に挿入されたロボットハンド311の位置が適正な試料受け渡し位置からずれることによる。
【0036】
そのため、試料搬送ロボットハンド311の挿入位置は、装置の組立時にティーチングと呼ばれる微調整が行われる。ティーチング後のロボットハンド311は、繰り返し動作しても高精度でティーチング位置に移動することができる。
【0037】
また、大気側試料搬送ロボット11が、試料60を試料収納カセット70から受け渡し位置まで高精度に搬送するために、ロック室20の入口の近傍に遮光センサを取付けて、搬送中の試料60と搬送先であるロック室試料台21の中心との相対的な位置関係を検出して、その結果に従い位置を調節して、試料60を搬送することで、高精度に試料60を搬送する。
【0038】
大気側試料搬送室10とロック室20を一部切り開いた上面斜視図である図4を用いて、本システムについて詳細に説明する。ロック室20には、ロック室試料台21と大気側試料搬送室10との境界の開口部22の間の空間上で、その検出用光ビーム24が搬送中の試料60によって遮光されるようにロック室試料台21と開口部22との間に設置された遮光センサ23を試料60の中心の経路の左右に2セット有している。この遮光センサ23は、その光ビームを放射する放射器23Rと、放射器23Rから放射された光ビーム24を受光して検出する検出器23Dから成る。ロック室20の上面外側に光ビーム24の検出器23Dが取付けられ、ロック室20の下面外側に光ビーム24の放射器23Rが取付けられる。ロック室20の上面および下面を構成する部品の光ビーム24が通過する部分には、光透過性のある素材、例えば透明塩化ビニルが用いられる。検出用のセンサは、光センサ以外にも、指向性の強いセンサを用いることができる。
【0039】
試料60がロック室20内部に搬入され始めると、光ビーム24が搬送中の試料60によって遮光される。試料60がロック室20に搬入され始め、試料60が光ビーム24を遮光する直前の状態を表す概念図を図5(a)に示す。また、搬送中の試料60が光ビーム24を遮光している時の状態を表す概念図を図5(b)に示す。このとき、搬送中の試料60は、所定の一定速度で搬送される。2組の遮光センサ23のロック室試料台21に対する取付け位置はそれぞれ既知である。本例では、ロック室試料台21の中心を通る線について対称な位置に等距離に配置されている。
【0040】
ここで、光ビーム放射器23Rと光ビーム検出器23Dの1組を遮光センサA、別の1組を遮光センサBとすると、遮光センサAの光ビーム24が搬送中の試料60によって遮光され始めた時刻t1(A)と、搬送中の試料60によって遮光されていた光ビームが、試料60が通り過ぎることによって、再び光ビーム検出器23Dが光ビーム24を検出し始めるときの時刻t2(A)が検出される。したがって、搬送中の試料60によって遮光センサAの光ビーム24が遮光される時間Ta=(t2(A)−t1(A))が検出される。同様に、搬送中の試料60によって光センサBの光ビーム24が遮光される時間Tb=(t2(B)−t1(B))が検出される。
【0041】
光ビーム検出器23Dの光ビーム検出量の時系列データの一例を図7に示す。試料搬送速度およびセンサ取付け位置と目標搬送先であるロック室20の試料台21までの位置関係は既知であるため、TaあるいはTbが検出されることによって、ロック室試料台21の中心に対する搬送中の試料60の搬送方向横方向の位置が計算できる。ただし、計算結果の信頼性を向上させるため、本実施例では、2対の遮光センサ23を用いて計算精度を向上させている。また、搬送中の試料が、光ビーム24を遮光し始めた時刻t1(A)、t1(B)、あるいは、遮光センサ23が再び光ビーム24を検知し始めた時刻t2(A)、t2(B)を用いて試料台21の中心から試料60の中心までの搬送方向の距離が計算できる。したがって、搬送中の試料と目標搬送先であるロック室試料台21の中心位置までの位置関係が検出され、その検出結果に従い、搬送位置を決定することにより、試料収納カセット70の内部で、試料毎に位置が定まっていなくても、ロック室試料台21の中心まで高精度に試料を搬送することができる。
【0042】
予め検出され、あるいは設定されている試料搬送速度および搬送先であるロック室試料台21の中心から遮光センサ取付け位置までの距離は、図示しない記憶装置の記憶媒体に必要に応じて読み出し可能に保存されており、これらの情報と遮光センサ23によって測定されたデータが制御装置50に取り込まれ、制御装置50から大気側試料搬送ロボット11に制御信号が送られる。
【0043】
ここで、ロック室試料台21とロック室20に取付けられる遮光センサ23の位置関係は、高精度にその配置が設定され、あるいは検出された位置関係が必要となるため、ロック室試料台21を取付けるチャンバと遮光センサ23を取付けるチャンバは同一部品とされるのが好ましい。本実施例では、ロック室20のチャンバ部品は一つのパーツで構成されており、このチャンバ部品に試料台21および遮光センサ23が取付けられる。また、ロック室試料台21に遮光センサ23を取り付けるようにしてもよい。
【0044】
また、遮光センサ23は、試料60が試料収納カセット70からロック室試料台21まで搬送されるまでの空間上において、必ずその光ビーム24を搬送中の試料60が横切る任意の位置に配置してもよい。ただし、例えば、遮光センサ23を大気側試料搬送室10に設置する場合、遮光センサ設置位置と目標搬送先であるロック室20の試料台21までの位置関係は、大気側試料搬送室10の筐体の加工公差や、大気側試料搬送室10とロック室20の筐体の組立公差などによって、装置ごとに位置関係が明確でなくなるため、センサ設置位置とロック室20の試料台21までの位置関係は、装置の組み立て後にティーチングする必要がある。
【0045】
本発明を用いると、試料収納カセット70からロック室20の試料台21まで搬送された試料60は、試料60ごとに位置のずれが低減され、高精度に搬送されるので、ロック室20の試料台21から真空側試料搬送ロボット31に試料60が受け渡されるとき、受け渡しの失敗が抑制される。
【0046】
また、本発明を用いると、センタリングユニットを経由して試料を搬送する場合と比べて搬送時間が短くなる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明にかかる試料処理装置の構成を説明する上面図。
【図2】本発明にかかる試料処理装置の大気側試料搬送室の構造を説明する一部切り欠き斜視図。
【図3】本発明にかかる試料処理装置の真空側試料搬送室の構造を説明する一部切り欠き斜視図。
【図4】本発明にかかる試料処理装置において、大気側試料搬送ロボットがロック室内部に試料を搬送するときの様子を表す一部切り欠き斜視図。
【図5(a)】本発明にかかる試料処理装置において、大気側試料搬送ロボットがロック室内部に試料を搬送する際に、ロック室に取付けられる遮光センサを試料が通過する直前の様子を示す概念図。
【図5(b)】本発明にかかる試料処理装置において、大気側試料搬送ロボットが試料をロック室内部に試料を搬送する際に、ロック室に取付けられる遮光センサを遮光しながら通過する様子示す概念図。
【図6】ロック室から真空側試料搬送ロボットハンドに試料がけ渡されるときの様子を示す概念図。
【図7】前記遮光センサの検出器が検出した光ビーム受光量の時系列データを表す概略図。
【符号の説明】
【0048】
1…試料処理装置、10…大気側試料搬送室、11…大気側試料搬送ロボット、20…ロック室、21…ロック室試料台、22…開口部、23…遮光センサ、23R…光ビーム投射器、23D…光ビーム検出器、24…光ビーム、25…プッシャー、30…真空側試料搬送室、31…真空側試料搬送ロボット、311…真空ロボットハンド、312…突起部、313…試料設置面、40…真空処理室、41…真空処理室処理台、50…制御装置、60…試料、70…試料収納カセット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を真空状態にして試料を処理する処理室と、該処理室に試料を搬送する内部を真空状態に保った第1の試料搬送室と、試料搬送ロボットを有し試料収納カセットに収納された試料を搬送する内部を大気圧状態とする第2の試料搬送室と、第1の試料搬送室と第2の試料搬送室との間に連結され各試料搬送室との境界に試料を搬入出するのに十分な大きさのゲートと該ゲートを開閉するバルブを有し該バルブを閉じてその内部を大気圧状態または真空状態とするロック室と、制御装置とを有する試料処理装置であって、
第2の試料搬送室からロック室内に設けた試料台へ試料を搬送する搬送経路上で試料が横切る位置に一対以上の遮光センサを設けた
ことを特徴とする試料処理装置。
【請求項2】
内部を真空状態にして試料を処理する処理室と、該処理室に試料を搬送する内部を真空状態に保った第1の試料搬送室と、試料搬送ロボットを有し試料収納カセットに収納された試料を搬送する内部を大気圧状態とする第2の試料搬送室と、第1の試料搬送室と第2の試料搬送室との間に連結され各試料搬送室との境界に試料を搬入出するのに十分な大きさのゲートと該ゲートを開閉するバルブを有し該バルブを閉じてその内部を大気圧状態または真空状態とするロック室と、制御装置とを有する試料処理装置であって、
ロック室の第2の試料搬送室側ゲートの近傍であって第2の試料搬送室からロック室内の試料台へ試料を搬送する搬送経路上で試料が横切る位置に一対以上の遮光センサを設けた
ことを特徴とする試料処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の試料処理装置であって、遮光センサが光ビーム放射部と光ビーム検出部とを有し、制御装置が遮光センサの出力を用いて光ビームが搬送中の試料によって遮光される時間または時刻を計測して遮光センサが取り付けられる位置に対する試料の位置を演算することを特徴とする試料処理装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の試料処理装置であって、遮光センサが光ビーム放射部と光ビーム検出部とを有し、制御装置が遮光センサの出力を用いて光ビームが搬送中の試料によって遮光される時間または時刻を計測して遮光センサが取り付けられる位置に対する試料の位置を演算するとともに、試料搬送先である試料台に対する遮光センサの位置が明確にされており、試料搬送ロボットが所定の一定の搬送速度で試料を搬送することにより、制御装置が遮光センサの出力を用いて搬送中の試料と試料台の位置関係を演算することを特徴とする試料処理装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の試料処理装置であって、遮光センサが光ビーム放射部と光ビーム検出部とを有し、制御装置が遮光センサの出力を用いて光ビームが搬送中の試料によって遮光される時間または時刻を検出して遮光センサが取り付けられる位置に対する試料の位置を演算するとともに、試料搬送先である試料台に対する遮光センサの位置が明確にされており、制御装置が遮光センサの出力を用いて試料の搬送速度を演算し、搬送中の試料の位置と試料台との位置関係を演算することを特徴とする試料処理装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の試料処理装置であって、遮光センサが光ビーム放射部と光ビーム検出部とを有し、制御装置が遮光センサの出力を用いて光ビームが搬送中の試料によって遮光される時間または時刻を計測して遮光センサが取り付けられる位置に対する試料の位置を演算するとともに、遮光センサの出力を用いて試料の搬送速度および搬送中の試料の位置と試料台との位置関係を演算し、その結果に基づいて搬送中の試料と試料台までの距離と方向を演算し、さらにこの演算結果に基づいて試料搬送ロボットの動作を制御することを特徴とする試料処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−294987(P2006−294987A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115874(P2005−115874)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】