説明

誤差分布算出方法、形状測定方法、および形状測定装置

【課題】複数の測定プローブを備えたフレーム部に起因する回転誤差を短時間且つ精度良く算出できる、誤差分布算出方法、形状測定方法、および形状測定装置を提供する。
【解決手段】被検物が載置される載置部と、被検物の形状を測定する複数の測定プローブの各々が所定のオフセットだけ離間して取り付けられた測定部と、測定部を互いに直交する2方向に前記載置部上を移動させる移動部と、を備えた形状測定装置における移動部による回転誤差分布を算出する誤差分布算出方法である。載置部上と所定の関係を持った位置に基準部材を配置する配置工程と、測定プローブの少なくとも2つが、基準部材の座標値をそれぞれ測定する測定工程と、各々の測定座標値の差分に基づいて移動部による回転誤差分布を算出する算出工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誤差分布算出方法、形状測定方法、および形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品等の物体の表面形状を測定する技術は従来から種々提案されており、接触式の測定プローブを用いて被検物の形状を三次元で測定するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に係る形状測定装置においては、門柱状のフレーム部に保持された測定プローブが被検物に対して3方向に移動可能な構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−160084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した門柱状のフレーム部に複数種類の測定プローブを搭載することで多機能化を図ることが考えられる。しかしながら、門柱状のフレーム部は、例えばフレーム部の重量などによって撓みが生じ、XYZ各軸の少なくともいずれかにおいてローリング、ピッチング、ヨーイング等の回転誤差が生じるおそれがあった。すると、予め設定された測定プローブ間のオフセットにズレが生じ、結果的に測定プローブの測定値に誤差が生じてしまう。このような回転誤差を検出する手法としては、従来、角度干渉計を用いる方法が知られているが、誤差検出方法が非常に煩雑となってしまう。
そこで、複数の測定プローブを備えた形状測定装置において、フレーム部に起因する回転誤差分布を短時間且つ精度良く算出できる新たな技術の提供が望まれていた。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、複数の測定プローブを備えたフレーム部に起因する回転誤差を短時間且つ精度良く算出できる、誤差分布算出方法、形状測定方法、および形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に従えば、被検物が載置される載置部と、
前記被検物の形状を測定する複数の測定プローブの各々が所定のオフセットだけ離間して取り付けられた測定部と、前記測定部を互いに直交する2方向に前記載置部上を移動させる移動部と、を備えた形状測定装置における前記移動部による回転誤差分布を算出する誤差分布算出方法であって、前記載置部上と所定の関係を持った位置に基準部材を配置する配置工程と、前記測定プローブの少なくとも2つが、前記基準部材の座標値をそれぞれ測定する測定工程と、各々の測定座標値の差分に基づいて前記移動部による回転誤差分布を算出する算出工程と、を備える誤差分布算出方法が提供される。
【0007】
また、本発明の第2の態様に従えば、第1の態様の誤差分布算出方法を用いて算出した前記回転誤差分布に基づき、前記測定部による測定値を補正する工程を含む形状測定方法が提供される。
【0008】
また、本発明の第3の態様に従えば、被検物が載置される載置部と、前記被検物の形状を測定する複数の測定プローブの各々が所定のオフセットだけ離間して取り付けられた測定部と、前記測定部を互いに直交する2方向に前記載置部上を移動させる移動部と、前記載置部と所定の関係を持った位置に配置した基準部材の座標値を前記測定プローブの少なくとも2つでそれぞれ測定することで算出され、前記移動部による回転誤差分布に基づき、前記測定部による前記被検物の測定値を補正する補正部と、を備える形状測定装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の測定プローブを備えたフレーム部に起因する回転誤差を短時間且つ精度良く算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】形状測定装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】形状測定装置の要部構成を示す側面図。
【図3】回転誤差分布を算出する方法の工程説明図。
【図4】配置工程及び測定工程を説明する図。
【図5】回転誤差の検出方向の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の形状測定装置の一実施形態に係る構成について説明する。なお、本実施形態は、発明の要旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各要請要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0012】
図1は、本発明の形状測定装置に係る一実施形態の構成例を示す斜視図であり、図2は要部拡大側面図である。図1、2に示すように、形状測定装置100は、本体部11と、被検物200を載置するための傾斜回転テーブル14と、被検物200の形状を測定する測定部20と、測定部20を移動させるための移動部30と、を有している。
【0013】
本体部11は、架台12と、該架台12上に載置される定盤13とを含む。架台12は、形状測定装置100全体の水平度を調整するためのものである。定盤13は、石製または鋳鉄製からなるものであり、上面が架台12により水平に保たれたものとなっている。この定盤13の上面には、傾斜回転テーブル14が載置されている。なお、定盤13には、定盤13上の基準を規定するための基準球55が設けられている。基準球55は定盤13に確実に固定されることで定盤13に対して移動することがなく、定盤13上に形成されるXYZ空間における基準点を規定するものである。
【0014】
以下、互いが直交する3方向により規定されるXYZ座標系を用いて形状測定装置100の構成について説明する。ここで、XY平面とは定盤13の上面を規定するものである。すなわち、X方向とは定盤13上における一方向を規定するものであり、Y方向とは定盤13の上面においてX方向に直交する方向を規定するものであり、Z方向とは定盤13の上面に直交する方向を規定するものである。
【0015】
傾斜回転テーブル14は、被検物200が上面に載置される回転テーブル21、回転テーブル21の上面(載置面)に対して垂直なZ軸方向に延びる回転軸L1を中心として回転テーブル21が回転可能に装着される傾斜テーブル22、並びに、回転軸L1と直交するX軸方向に延びる傾斜軸L2を中心に傾斜テーブル22を回転可能に支持する支持部23、24およびこれら支持部23,24を支持するベース部25を備えて構成される。回転テーブル21は円形の板状の部材であり、上面の平面度が高精度に規定されている。また、ベース部25は、両面の平面度が高精度に規定されている。
【0016】
傾斜テーブル22は、回転軸駆動モータ22aを内蔵しており、回転軸駆動モータ22aは、回転軸L1を中心として回転テーブル21を回転駆動する。回転テーブル21は、中央部分に形成されている複数の貫通穴(不図示)を介して、複数のボルトにより回転軸駆動モータ22aのシャフトに連結されている。なお、回転軸駆動モータ22aは、不図示のエンコーダにより、その回転角度が計測されるようになっている。
【0017】
また、支持部23は、傾斜軸駆動モータ23aを内蔵しており、傾斜軸駆動モータ23aは、傾斜軸L2を中心として傾斜テーブル22を回転駆動することで、回転テーブル21を水平面に対して所定の傾斜角度で傾斜させる。なお、傾斜軸駆動モータ23aは、不図示のエンコーダにより、その傾斜角度が計測されるようになっている。
【0018】
このように、傾斜回転テーブル14では、回転テーブル21を回転させ、傾斜テーブル22を傾斜させることで、回転テーブル21に載置される被検物を任意の姿勢で保持できるようになっている。なお、回転テーブル21は、傾斜テーブル22の傾斜角度が急勾配になっても被検物がずれないように、被検物を固定することができるように構成されている。
【0019】
移動部30は、測定部20の先端部を被検物200の表面に対して走査させるためのものである。本実施形態に係る形状測定装置100では、後述のように形状測定者により指定された方向に測定部20が移動部30により移動されるようになっている。
【0020】
移動部30は門型フレーム15を主体として構成されている。なお、定盤13は、端部(図1では右側の端部)が、定盤13上をY軸方向に門型フレーム15を駆動させるY軸ガイドを兼ねるように構成されている。
【0021】
門型フレーム15は、X軸方向に延びるX軸ガイド15a、定盤13のY軸ガイドに沿って駆動する駆動側柱15b、および駆動側柱15bの駆動に従って定盤13の上面を滑動する従動側柱15cにより構成されている。
【0022】
ヘッド部16は、門型フレーム15のX軸ガイド15aに沿ってX軸方向に沿って駆動可能とされている。ヘッド部16には、該ヘッド部16に対してZ軸方向に駆動可能なZ軸ガイド17が装着されている。Z軸ガイド17の下端部には上記測定部20が装着されており、測定部20は、Z軸を中心に回動可能、かつ、水平方向の所定軸を中心に傾動可能に構成されている。
【0023】
測定部20は、光切断プローブ31、画像プローブ32、およびタッチプローブ33の3種類のプローブを含む。
光切断プローブ31は、被検物200に向けて、光切断を行うためのライン光を照射する照射部31aと、ライン光が照射されることで光切断面(線)が現れた被検物200の表面を検出する検出部31bと、を主体に構成される。
【0024】
照射部31aは、図示しないシリンドリカルレンズや細い帯状の切り欠きを有したスリット板等から構成され、光源からの照明光を受けて扇状のライン光を生じさせるものである。検出部31bは、照射部31aの光照射方向とは異なる方向から被検物200の表面に投影されるライン光を撮像するためのものである。
【0025】
また、光切断プローブ31には、検出部31bにより検出された画像データに基づいて被検物200の形状を測定する演算処理部300が接続されている。演算処理部300は、形状測定装置100における全体の駆動を制御するための制御部500に含まれる。
【0026】
画像プローブ32は、内蔵する画像センサにより被検物200を撮影し、その結果得られた画像データを上記演算処理部300に供給するようになっている。
【0027】
タッチプローブ33は、その先端を被検物200に接触させ、そのときのタッチプローブ33の座標位置から、接触した被検物200の表面の各座標位置を検出する。例えば、タッチプローブ33は、その先端を被検物200に接触させたときに、回転テーブル21の角度位置、傾斜テーブル22の角度位置、移動部30のX,Y,Z方向における位置から、所定の基準位置に対する相対位置を検出する。タッチプローブ33は、接触時に信号を出力するので、そのタイミングで前記位置情報を取得し、形状測定装置100の演算処理部300に供給するようになっている。
【0028】
そして、演算処理部300では、光切断プローブ31から供給される信号、画像プローブ32から供給される画像データ、および、タッチプローブ33から供給される信号を用いて、被検物200の三次元の形状測定を行う。このように形状測定装置100は、被検物200の形状や材質などに応じて、これらの3種類のプローブ31,32,33を使い分けることで、被検物200の形状を測定することが可能となっている。
【0029】
また、上述したように、ヘッド部16をX軸方向に移動させることにより、Z軸ガイド17を介してヘッド部16に支持されている各プローブ(光切断プローブ31、画像プローブ32、およびタッチプローブ33)のX軸方向の位置を調整することが可能である。さらに、移動部30をY軸方向に移動させることにより、Z軸ガイド17およびヘッド部16を介して各プローブ31,32,33のY軸方向の位置を調整することが可能である。また、Z軸ガイド17をZ軸方向に移動させることにより、Z軸ガイド17に装着されている各プローブ31,32,33のZ軸方向の位置を調整することか可能である。
【0030】
このように、形状測定装置100は、各プローブ31,32,33のX軸、Y軸およびZ軸方向の位置を調整したり、傾斜テーブル22や回転テーブル21を回転させたりして、被検物200と各プローブ31,32,33の相対位置を変化させながら、被検物200の各部の形状を測定することができる。
【0031】
本実施形態に係る形状測定装置100は、図1に示した基準球55にタッチプローブ33を接触させることで定盤13上における測定部20(タッチプローブ33)の基準位置を検出した後、被検物200の形状測定を行うようにしている。
【0032】
光切断プローブ31、画像プローブ32、およびタッチプローブ33は、互いが所定のオフセットだけ離間した状態でX方向に沿って一列に配置されている。すなわち、光切断プローブ31、画像プローブ32、およびタッチプローブ33は、原則として、互いの距離が変化することがない。そのため、形状測定装置100は、タッチプローブ33の位置(座標値)に基づき、光切断プローブ31、および画像プローブ32の位置を容易に把握することができるようになっている。
【0033】
しかしながら、測定部20を移動させる移動部30は、例えば、門型フレーム15が自重による撓みが発生することで定盤13に対し、XYZ方向に移動する際、回転誤差(ローリング、ピッチング、ヨーイング)が生じることがある。このような回転誤差が移動部30に生じると、測定部20を所定の位置に精度良く移動させることができなくなり、被検物200の形状測定を精度良く行うことができなくなってしまう。
【0034】
そこで、本実施形態の形状測定装置100は、後述の回転誤差分布算出方法により移動部30の移動空間における回転誤差分布を算出し、該回転誤差分布を補正する補正テーブルを用いて被検物200の形状測定を精度良く行うことが可能となっている。
【0035】
以下、形状測定装置100による形状測定方法について説明するに先立ち、形状測定時に測定部20の測定値を補正するために使用する移動部30の移動空間における回転誤差分布を算出する方法について図3に示すフローを参照しつつ、説明する。図4、5は図3に示すフロー中における具体的な工程を説明するための図である。
【0036】
(回転誤差分布算出方法)
まず、定盤13上に規定される測定部20の移動空間に基準部材40を複数配置する(配置工程S1)。基準部材40は、不図示のフレーム部に固定されており、図4に示されるように、定盤13の上方(Z方向)に亘って複数段配置されている(本実施形態では、例えば3段とした)。なお、基準部材40は少なくともプローブとの接触部分が高精度に形成された球状部材となっている。
【0037】
続いて、測定部20を用いることで各基準部材40の座標値をそれぞれ測定する(測定工程S2)。具体的には、図4に示すように、測定部20のうち、光切断プローブ31およびタッチプローブ33により、それぞれ各基準部材40の座標値を測定する。また、移動部30に設けられているエンコーダ(不図示)の値に基づき、光切断プローブ31およびタッチプローブ33における座標値(機械座標値)も算出しておく。これら測定値および機械座標値は、制御部500に設けられたメモリに記憶される。
【0038】
本実施形態では、定盤13に設けられた基準球55を用いて基準部材40の位置を測定するようにしている。具体的には、タッチプローブ33を基準球55に接触させることで、基準球55と各基準部材40との間の距離を測定し、各基準部材40の座標を測定し、上記中心座標を測定する。
【0039】
このように定盤13に確実に固定された基準球55から各基準部材40の座標を測定するため、温度等の環境変動や経年劣化の影響を抑えつつ、基準部材50の位置座標を精度良く測定することが可能となる。
【0040】
続いて、上記各基準部材40の測定座標値の差分に基づいて移動部30による回転誤差分布を算出する(算出工程S3)。
具体的に、演算処理部300は、上記メモリに記憶された測定値から光切断プローブ31およびタッチプローブ33間の実測距離を算出するとともに、上記機械座標値から光切断プローブ31およびタッチプローブ33間の機械的距離を算出する。そして、実測距離と機械的距離との差分を計算する。
【0041】
ここで、移動部30に回転誤差が発生していない場合、実測距離と機械的距離とは同じ値となる。しかしながら、移動部30に回転誤差が生じていると、実測距離及び機械的距離間に差が生じる。この差は、移動部30における回転誤差成分に起因して生じたものである。
【0042】
上記回転誤差は、プローブ間距離と計測精度で決まる。そこで、本実施形態では上述のように、測定部20のうち、最も離間して配置された(図2参照)光切断プローブ31およびタッチプローブ33を用いて基準部材40の位置を測定し、回転誤差を高精度に検出するようにした。
【0043】
本実施形態に係る測定部20は、光切断プローブ31、画像プローブ32、およびタッチプローブ33は、互いが所定のオフセットだけ離間した状態でX方向に沿って一列に配置されている。そのため、本測定では、例えば、測定部20が、プローブ31,32,33が配置されるX方向に移動すると、図5に示すように移動部30が移動時にX軸周りに回転していたとしてもプローブ31,33間の実測距離Dが変化することが無い。なお、図5においては、図を見やすくするため、画像プローブ32の図示を省略している。
【0044】
すなわち、本測定方法では、移動部30が移動する軸方向を中心とする回転誤差が検出されないため、上述のように測定部20をX方向に移動する場合、移動部30に生じる回転誤差成分のうち、Y軸周りの回転成分およびZ軸周りの回転成分のみを取得することができる。
【0045】
同様に、測定部20をY方向に移動する場合、移動部30に生じる回転誤差成分のうち、移動部30におけるX軸周りの回転誤差およびZ軸周りの回転誤差のみを取得することができる。また、測定部20をZ方向に移動する場合、移動部30に生じる回転誤差成分のうち、移動部30におけるX軸周りの回転誤差およびY軸周りの回転誤差のみを取得することができる。
【0046】
以上のようにして、演算処理部300は、全ての基準部材40について上記回転誤差成分を取得し、移動部30の移動空間における回転誤差分布を算出する。本実施形態では、上述のように、基準部材40が定盤13の上方(Z方向)に亘って複数段配置されているので、移動部30が移動する定盤13上の移動空間の全域に亘って回転誤差分布を精度良く算出することができる。
【0047】
本実施形態に係る誤差分布算出方法によれば、測定部20に設けられたプローブ31,33により測定した座標値を演算することで誤差分布を算出し、該誤差分布から補正テーブルを作成するため、従来、移動部30の回転誤差分布を測定する手法として考えられる角度干渉計を用いる場合に比べ、簡易且つ短時間で行うことができる。また、実際に測定部20が測定した値を用いるため、誤差分布を精度良く取得することができる。
【0048】
(形状測定方法)
続いて、被検物200の形状測定を行う方法について説明する。
形状測定者は、回転テーブル21に被検物200を載置する。
形状測定装置100は、移動部30により測定部20のうち、用途に応じたプローブ、例えば光切断プローブ31を回転テーブル21まで移動し、被検物200の形状を測定する。
【0049】
形状測定装置100は、被検物200に投影されたライン光の長手方向と略直角な方向に光切断プローブ31(照射部31a)を移動させるように移動部30を駆動し、ライン光により被検物200の表面を走査する。
【0050】
このとき、制御部500は上記回転誤差分布に基づき移動部30を駆動させる。具体的に、制御部500は、タッチプローブ33の座標位置から光切断プローブ31の位置座標を算出する際、回転誤差分のずれを解消するように上記オフセット値を補正する。これにより、移動部30に生じる回転誤差により光切断プローブ31の測定値に誤差が生じることが防止される。
【0051】
被検物200にライン光が照射されると、被検物200の表面にライン光による光切断面(線)が現れるため、検出部31bにより、ライン光が所定間隔走査される毎に(光切断面が現れた)被検物200を撮像する。このとき、検出部31bで撮像された被検物200の画像データは、演算処理部300に送られる。
【0052】
このようにして得られた被検物200の画像データから、被検物200の凹凸に応じて変形したライン光による光切断面(線)の位置情報に基づいて、光切断面(線)(ライン光)が延びる長手方向の画素毎に、三角測量の原理を用いて被検物200表面の基準平面からの高さを算出し、被検物200の三次元形状を測定することができる。
【0053】
本実施形態に係る形状測定方法によれば、制御部500が上記回転誤差分布に基づき移動部30を駆動するため、光切断プローブ31の測定値に誤差が生じることが防止され、信頼性の高い形状測定を行うことができる。なお、形状測定装置100は、画像プローブ32を用いて被検物200の形状を測定する場合においても、制御部500が上記回転誤差分布に基づき移動部30を駆動するため、画像プローブ32の測定値に誤差が生じることが防止され、信頼性の高い形状測定を行うことができる。
【0054】
なお、上記実施形態では、傾斜回転テーブル14を配置しない状態で定盤13上に基準部材40を配置し、回転誤差分布を算出する場合について説明したが、定盤13上に傾斜回転テーブル14を配置した状態で回転誤差分布を算出しても構わない。
【0055】
また、上記実施形態では、測定部20が3種類のプローブを備えた例について説明したが、本発明は2種類以上のプローブを設ける場合に適用することが可能である。また、上記実施形態では、異なる種類のプローブを設ける場合を例に示したが、本発明は、同じ種類のプローブを2つ以上設ける場合にも適用することが可能である。従って、本発明は、プローブの種類に関わらず、2つ以上のプローブを形状測定装置に設ける場合に適用することが可能である。
【0056】
また、測定部20は、各プローブ31,32,33が着脱可能な構成とされていても構わない。すなわち、上記補正テーブルを算出する際、基準部材40の位置測定に利用しないプローブを取り外すようにしても構わない。
また、上記実施形態では、被検物200を傾斜回転テーブル14に載置する場合について説明したが、定盤13上に被検物200が直接載置される構成であってもかまわない。
【0057】
また、上記実施形態では被検物200を載置する載置台として、回転軸L1およびL2の2軸を中心として回転可能な回転テーブル21を備えた傾斜回転テーブル14を例に挙げて説明したが、本発明は少なくとも1軸を中心として回転可能な載置面を備えた載置台或いは載置面が回転しない載置台であってもよい。
【0058】
また、本発明を適用した形状測定装置に設けることができるプローブの種類は、上述した例に限定されるものではない。
【0059】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
13…定盤、15…門型フレーム、20…測定部、30…移動部、31…光切断プローブ、32…画像プローブ、33…タッチプローブ、40…基準部材、100…形状測定装置、200…被検物、300…演算処理部、500…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物が載置される載置部と、
前記被検物の形状を測定する複数の測定プローブの各々が所定のオフセットだけ離間して取り付けられた測定部と、
前記測定部を互いに直交する2方向に前記載置部上を移動させる移動部と、を備えた形状測定装置における前記移動部による回転誤差分布を算出する誤差分布算出方法であって、
前記載置部上と所定の関係を持った位置に基準部材を配置する配置工程と、
前記測定プローブの少なくとも2つが、前記基準部材の座標値をそれぞれ測定する測定工程と、
各々の測定座標値の差分に基づいて前記移動部による回転誤差分布を算出する算出工程と、
を備える誤差分布算出方法。
【請求項2】
前記測定工程においては、前記オフセット値が最も大きい2つの前記測定プローブを用いる請求項1に記載の誤差分布算出方法。
【請求項3】
前記測定工程においては、前記測定部の移動空間に前記基準部材が複数配置されており、前記基準部材の各々の座標値を前記測定プローブが測定する請求項1又は2に記載の誤差分布算出方法。
【請求項4】
前記基準部材は、前記載置部上に複数段配置されている請求項3に記載の誤差分布算出方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の誤差分布算出方法を用いて算出した前記回転誤差分布に基づき、前記測定部による測定値を補正する工程を含む形状測定方法。
【請求項6】
被検物が載置される載置部と、
前記被検物の形状を測定する複数の測定プローブの各々が所定のオフセットだけ離間して取り付けられた測定部と、
前記測定部を互いに直交する2方向に前記載置部上を移動させる移動部と、
前記載置部と所定の関係を持った位置に配置した基準部材の座標値を前記測定プローブの少なくとも2つでそれぞれ測定することで算出され、前記移動部による回転誤差分布に基づき、前記測定部による前記被検物の測定値を補正する補正部と、
を備える形状測定装置。
【請求項7】
前記基準部材の座標値の測定を行う前記測定プローブは、前記移動部が移動する2方向のうちいずれか一方に沿って配置されている請求項6に記載の形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−93237(P2012−93237A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240965(P2010−240965)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】