説明

警備システム及び警備装置

【課題】 利用者からの要請に基づき、安全かつ確実に警備状態を変更することのできる警備システム及び警備装置を提供すること。
【解決手段】 携帯端末30から警備装置10に対して警備状態の変更要請信号を送信する。警備装置10は、変更要請信号を受信すると監視センタ40に対して対処要請信号を送信するとともに、警備用設備装置17に対して解錠許可信号を出力する。警備員が警備用設備装置17を解錠して監視対象内に入り内部を確認の上、監視対象の警備状態を変更すると、警備装置10は監視センタ40へ対処要請取消信号を送信するとともに、警備用視設備装置17に対して解錠許可信号の送出を停止する。これにより、変更要請処理を終了する。警備装置10は、携帯端末30から要請取消信号を受信したときにも、同様にして変更要請処理を終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警備システムに関するものであり、特に、携帯端末から警備装置にアクセスして警備状態の変更を行うことのできる警備システム及び警備装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅などで発生した異常を遠隔の監視センタにて監視する警備システムが普及している。このような警備システムとして、住宅など監視対象に配置された防犯センサと接続される警備装置と、この警備装置と通信網を介して接続される監視センタとを有し、警備装置の警備状態が警備セットモードにあるときに防犯センサが検知信号を出力すると、警備装置が警報出力したり遠隔の監視センタに通報したりするものが知られている。
【0003】
このような警備システムにおいて、警備装置の警備状態は、利用者が警備装置に対してIDカードなどにより操作を行うことで、監視対象を警備する警備セットモードまたは監視対象の警備を解除する解除モードに切り替えられる。
【0004】
しかし、このような従来の警備システムでは、外出時など監視区域が無人になる場合に、警備装置を操作して「警備セットモード」に設定する必要があり、操作を忘れて外出してしまった場合には、監視区域が無警戒になるという問題があった。
【0005】
そこで、このような問題を解決するものとして、特許文献1が提案されている。特許文献1には、監視区域の管理者が遠隔から警備装置に電話をかけ、電話機のプッシュボタン操作によりID番号を入力するとともに、警備状態を変更するためのコマンドを入力することにより、警備状態を遠隔から変更できる警報システムが開示されている。
【特許文献1】特開2000−295592
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1の警報装置は、電話機により遠隔から警備装置の警備状態を直接変更できてしまうために、ID番号を知り得た者の不正操作により警備を「解除」されてしまう可能性があり、セキュリティ性が低いという問題がある。また、監視区域内に利用者がいる場合であっても、これに気付かずに遠隔からの操作により「警備開始」にセットしてしまい、誤報が発生するおそれがある。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みなされたもので、利用者からの要請に基づき、安全かつ確実に警備状態を変更することのできる警備システム及び警備装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、携帯端末からの要請に応じて、警備装置から監視センタに対して警備要員の対処要請信号を送信するとともに、警備員が監視対象に進入できるように設備制御装置に対して許可信号を出力し、携帯端末からの取消要求または警備装置の警備状態のモード変更があったときに、警備員が監視対象に進入することを不可とする信号の出力、及び監視センタへのそれらの情報の送信を行うことにより上記課題を達成する。
【0009】
本発明の第1の実施態様に係る警備システムは、通信網に接続可能な携帯端末と、監視対象を警備する警備装置と、監視対象に進入するための設備機器を制御する設備制御装置と、警備装置と通信網を介して接続されており警備装置を監視し該警備装置と所定の制御信号及び情報を送受信する監視センタとを具備する警備システムであって、携帯端末は、所定の操作に基づき、警備装置に対して警備状態の変更を要請するための変更要請信号を生成する変更要請部と、該変更要請信号を警備装置に送信する通信部とを備え、警備装置は、通信網を介して携帯端末及び監視センタとデータ通信を行う通信部と、監視対象を監視する監視部と、警備状態として監視対象を警備する警備モード又は監視対象の警備を解除した解除モードの設定を行うモード設定部と、変更要請信号を受信したときに監視センタに警備員の派遣を要請する対処要請信号を送出するとともに、設備制御装置に対して、警備員が監視対象に進入することを許可する許可信号を送出する変更要請処理部とを備える、ことを特徴とする。
【0010】
この態様においては、警備装置は携帯端末からの要請に基づいて、監視センタに変更要請信号を受信したことを知らせる。それとともに、設備機器に対して許可信号が送出される。設備機器への許可信号により、監視センタから緊急派遣された警備員が設備機器の操作を行うことにより、監視対象内に入り、内部点検をするとともに警備モードの変更をすることが可能となる。
【0011】
本発明の他の態様に係る警備システムは、携帯端末の変更要請部が、第二の所定の操作に基づいて、警備状態の変更要請を取消すための要請取消信号を出力可能であり、警備装置の変更要請処理部は、携帯端末から要請取消信号を受信すると、監視センタに対処要請取消信号を送出するとともに、設備制御装置に対して警備員が監視対象へ進入することを不可とするための信号を送出することを特徴とする。
【0012】
この態様では、誤操作による警備状態の変更を事後的に取り消すものである。複数の携帯端末をそれぞれ複数人で使用する場合、まだ監視対象内に人が残っているのに気づかずに、警備モードへの変更要請があった場合に、監視対象内の利用者が自分の携帯端末から取消操作を行うことが可能である。
【0013】
本発明の他の態様に係る警備システムは、警備装置が、さらに、現在の警備状態、及び変更要請信号に基づく要請の有無を記憶する記憶部を備え、変更要請処理部は、携帯端末に、現在の警備状態及び要請の有無を送信することを特徴とする。
【0014】
この態様においては、警備装置から携帯端末に現在の警備状態及び他に誰かが変更要請していないかについての情報が送られてくる。これにより、利用者は現在の警備状態及び要請状態を確認してから、警備状態の変更の必要性を判断することが可能となり、誤った要請を防止することができる。携帯端末の利用者は、記憶違いによる要請や、すでに他の利用者による警備状態への変更が完了しているにもかかわらず変更要請する場合があり、これらを防止することが可能となる。また現在他の利用者が要請中であることを知ることでき、この場合も重ねて要請することを防止可能となる。
【0015】
本発明の他の態様に係る警備システムは、携帯端末が、さらに、現在の位置情報を取得する位置情報取得部を備え、携帯端末の変更要請部は、取得した位置情報を変更要請信号とともに警備装置に送信し、警備装置の変更要請処理部は、携帯端末から受信した位置情報が監視対象を基準にして所定範囲内にあるときには、変更要請信号を受信したときの処理を拒絶することを特徴とする。
【0016】
この態様では、監視対象の近くにおいて、携帯端末から警備状態変更要請を拒絶する。監視対象の近くであれば、利用者が自ら監視対象まで出向き、自分で警備状態の変更をするのが一般的であることから、このような利用形態では、不正使用の可能性が考えられる。警備システムでは、セキュリティが最も重要であるから、かかる利用形態による変更要請を拒否することにより、セキュリティ性を高めるものである。
【0017】
本発明の第1の態様に係る警備装置は、利用者の所持する携帯端末及び監視センタと、通信網を介して通信を行う通信部と、監視対象を監視する監視部と、警備状態として監視対象を警備する警備モード又は監視対象の警備モードを解除する解除モードの設定を行うモード設定部と、携帯端末から警備状態の変更を要請する変更要請信号を受信したときに、監視センタに対処要請信号を送出するとともに、警備員が監視対象内に進入可能となるように監視対象に進入するための設備機器を制御する変更要請処理部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、携帯端末からの要請により、警備装置が監視センタに対処要請信号を送信するとともに、設備制御装置に対して警備員が監視対象に進入することを許可する許可信号を送出することにより、不正なアクセスによる警備状態の切換えを防止することが可能となり、高いセキュリティ性を保持しつつ遠隔操作による警備状態の変更を行うことのできる警備システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の警備システムを、図面を用いて詳細に説明する。
【0020】
図1に、本発明の一実施形態にかかる警備システム1を示す。警備システム1は、監視対象に設けられた警備装置10と、利用者が所持する携帯端末30と、監視センタ40と、認証センタ50を備えており、これらの各部10,30,40,50は通信ネットワーク(通信網)60を介して接続され、互いにデータ通信が可能である。通信網60としては、公衆回線網、インターネット網、携帯電話網を含む各種通信網を利用可能であり、これらの通信網が複数接続された形態も含む。図1では、2個の携帯端末30しか示していないが、一つの監視対象に対してより多くの携帯端末30からアクセスすることができるように構成可能である。図1中に、携帯端末30の、概略構成を例示している。
【0021】
<警備システム全体の概略構成について>
警備装置10は、監視対象に設置される装置で、監視対象内に配置された各種センサにより監視対象内を監視しており、異常が発生すると、通信網60を介して監視センタ40に通報する。
【0022】
監視センタ40は、警備装置10の状態を監視し、異常があれば、警備員の出動指令その他の必要行動を指令する警備管理装置及び各種のデータベース等を備えている。
【0023】
携帯端末30は、通信網60を介して警備装置10にアクセスし、現在の警備状態の確認、及び警備状態の切換え要請等を行うことができる。認証センタ50は、認証サーバ等により構成され、携帯端末からの警備装置へのアクセス要求が正当な権限者からの要求であるかどうかを認証する。認証センタ50は、インターネットの接続プロバイダ、又は認証サービス提供の会社等に設けても、監視センタ40内または警備装置10内に設けてもよい。以下、各装置について、順次詳細に説明する。
【0024】
<携帯端末について>
携帯端末30は、通信網60を介して警備装置10と接続される。この際の通信網の種別、通信プロトコル、交換設備、接続サービス会社の設備などは、通常使用可能な一般的な技術を用いることができる。携帯端末30の接続要求があると、所定の認証サーバ50によりID番号等の確認が行われ、警備装置10へのアクセス権限が確認される。尚、IPv6の普及した場合には、携帯端末30から警備装置10に直接アクセスする等、通信環境に応じて携帯装置30から警備装置10へのアクセス形態は適宜変更可能である。
【0025】
携帯端末30は、無線通信部31、制御部32、表示部34、操作部35、記憶部36を備えている。携帯端末30の利用者は、操作部35の操作に基づいて、警備装置10に対して、警備状態の確認、警備状態の変更を要請することができる。これらの要請は、操作部35の操作により行う。操作部35の操作に基づいて変更要請があると、変更要請部33は、警備装置10への接続要求、変更要請信号等の生成等の処理を行う。接続要求、各種信号及びデータの送受信は無線通信部31及び通信網60を介して行う。
【0026】
本警備システム1で使用する携帯端末30としては、例えば携帯電話、PDA、PC等の通信機能を有する端末を用いることができる。この場合、これらの装置に、上述の機能を奏するための制御プログラムをインストールすることにより、本発明の携帯端末として機能させることができる。ID番号等の認証が認められ警備装置10との接続が確立すると、携帯端末30は、通信網60を介して、警備装置10とデータの送受信を行うことができる。尚、図1では、無線通信による例を示している。このように、携帯端末30は無線通信が可能であることが望ましいが、有線により警備装置10と通信する構成とすることもできる。
【0027】
利用者は、携帯端末30の操作部35を操作して、警備装置10に確認要求信号を送信して、現在の警備状態等の現状情報の送信を要求可能な構成とすることもできる。警備装置10は、現状情報の送信要求があると、携帯端末30に対して、現在の警備状態等の情報を送信する。携帯端末30は、受信した警備状態に関する情報を受信すると、表示部35に表示する。この表示により、利用者は警備装置10の現在の警備状態を確認することができる。
【0028】
利用者は、警備状態の確認後、操作部35の操作により警備装置10に対して警備状態の変更を要請することにより、記憶違い等による誤った変更要請を防止することができる。変更要請があると、変更処理部33は、変更要請に応じて、警備装置10に対して変更要請信号を送信する。警備装置10は、変更要請信号を受信すると、警備状態の変更のための処理を実行する。利用者はさらに、携帯端末30を操作することにより、警備状態の変更要請の取消しを行うことができる。変更要請処理部33は、取消し要請の操作があると、警備装置10に対して要請取消信号を送信する。
【0029】
尚、携帯端末30からの要請を警備状態の変更要請と取消し要請のみとし、警備装置10と接続されたときには、必ず現状の警備状態データを取得して携帯端末30に表示し、さらに、変更要請のステップにすすむかどうかを利用者に確認した上で、変更要請信号を送信する構成とすることも可能である。これにより、必ず、現状の警備状態を確認の上、変更要請をすることになり、誤操作を抑制することが可能となる。
【0030】
<警備装置について>
警備装置10は、監視対象に設置される。監視対象とは、警備の対象となる領域で、ビル等の各種施設、またはビル、マンション等の一つの部屋等であり、種々のものが監視対象となり得る。警備装置10は、制御部11、及びこれに接続される網通信部12,記憶部13、モード設定部14、内部通信部15、検知部16を備えている。制御部11は、CPU、レジスタ、及び各種論理回路等から構成され、ROM、RAM等からなる記憶部13に記憶された制御プログラム、制御データ等に基づいて、警備装置10として必要な各種機能を提供する。
【0031】
図2を用いて制御部11の機能をさらに詳細に説明する。図2は、制御部11の主要な機能を、機能ブロック図で表した制御装置10全体の機能ブロック図である。制御部11は、主制御部21、異常処理部22、モード設定処理部23、変更要請処理部24、通信制御部25を備えている。主制御部21は、警備装置10全体を制御する。
【0032】
異常処理部22は、検知部16から入力される信号に基づき異常の有無を判定する。検知部16には、監視対象内に配置された煙感知器、熱感知器、ガス漏れ検知センサ、非常通報ボタン、侵入センサなどの各種センサが接続されている。異常処理部22は、警備状態が後述する「警備セットモード」のときに異常の発生と判定すると、通信制御部25、網通信部12及び通信網60を介して監視センタに異常通報するとともに、後述する警備用設備装置17に警備員が監視対象に進入することを許可する許可信号(解錠許可信号)を送出する。また、異常状態が適切に復旧したと判定すると、監視センタに復旧信号を送信するとともに、警備用設備装置17への解錠許可信号の送出を停止するか、又は警備員が監視対象へ進入することを不可とするための信号を送出する。
【0033】
モード設定処理部23は、モード設定部14からの信号に基づいて警備状態の変更を行う。モード設定部14は、IDカード等を用いた利用者の操作により、警備開始の設定、または解除を行う操作部である。通常、カード読取装置、またはキー入力部等の入力装置を備えている。利用者は、監視対象内に利用者が存在しなくなるとき(無人時)に警備状態を、監視対象を警備する「警備セットモード(警備モード)」に設定し、警備セットモードの監視対象内に利用者が入るとき(有人時)に監視対象の警備を解除する「警備解除モード」に設定する。これらの警備状態のモード設定は、記憶部13に記憶されるとともに、監視センタ40に送信される。
【0034】
変更要請処理部24は、携帯端末30からの警備状態の変更要請を受けて、警備状態の変更に必要な処理を行う。変更要請処理部24は、携帯端末30からの変更要請信号を受信すると、記憶部13に、変更要請中であること(変更要請状態「ON」)を記憶する。また、監視センタ40に対処要請信号を出力するとともに、後述の警備用設備装置17に許可信号としての解錠許可信号を送出する。
【0035】
さらに、変更要請処理部24は、変更要請中に携帯端末30から要請取消信号を受信すると、記憶部13に記憶した変更要請状態を「OFF」に設定し、監視センタ40に対処要請取消信号を出力する。さらに、警備用設備装置17に対する解錠許可信号の送出も停止する。また、変更要請中に警備状態が変更されると、警備員が変更要請に基づき正規の手続きで警備状態を変更したものであるとして、変更要請状態を「OFF」に設定し、監視センタ40に対処要請取消信号を出力し、さらに警備用設備装置17への解錠許可信号の送出を停止する。
【0036】
さらに、変更要請処理部24は、携帯端末30から現在の警備状態の確認を要求する確認要求信号を受信したときに、記憶部13から、現状の警備状態及び変更要請状態に関する情報を読み出して、携帯端末30に送信する。前述したように、変更要請信号を受信したときに、まず先に現在の警備状態及び変更要請の有無についての情報を送信する構成とすることも可能である。
【0037】
通信制御部25は、通信網60、及び内部通信のための通信制御を行う。携帯端末30及び監視センタ40との通信は通信制御部25の制御の下、網通信部12を介して行われる。また、内部通信として、通信制御部25の制御の下、内部通信部15を介して警備用設備装置17に対して、解錠許可信号を送出する。
【0038】
<警備用設備装置について>
警備用設備装置17とは、管理キー等が収納されているキーボックスの施錠装置、または所定の権限者以外の入出が禁止される出入り口の電気錠扉等の施錠装置からなる設備機器19及びこれらを制御する設備制御部18である。キーボックスとは、管理キー等のマスターキーが保管されているボックスである。異常時に警備員等がキーボックスから管理キーを取り出して、監視対象内に入り異常の有無を確認する。また、設備機器19として電気錠扉が設けられている場合、異常時に警備員等が電気錠を解錠して監視対象内に入り、異常の有無を確認する。
【0039】
警備装置10には、内部通信部15を介して警備用設備装置17が接続されている。警備装置10は、異常処理部22が異常発生と判定したときまたは変更要請処理部24が変更要請を受け付けたときに、警備用設備装置17に対して解錠許可信号(許可信号)を送出する。警備用設備装置17は、設備機器の解錠操作を行うための操作部(図示せず)を備えており、異常時等に、警備員がこの操作部を操作してキーボックスや電気錠扉等の設備機器を解錠する。設備制御部18は、警備装置10から解錠許可信号を受信している場合に限り、警備員の設備機器19の解錠操作を受け付ける。設備制御部18は、解錠許可信号(許可信号)がない限り、警備員といえども警備用設備装置17を操作して監視対象内へ進入することは許可しない。そのため、警備装置10から解錠許可信号(許可信号)が送出されていない限り、警備員は、監視対象内に入ることができない。
【0040】
なお、本例において設備機器19は、上述したキーボックス又は電気錠扉などの施錠装置に限定されるものではなく、少なくとも監視対象へ進入するための設備であれば何れであってもよい。
【0041】
<監視センタについて>
監視センタは、警備会社が運営するサーバシステムを備えた施設であり、管制員が監視対象を常時監視している。また、監視センタは、監視対象となる警備装置10の情報、すなわち、警備装置10の管理番号、利用者の氏名、住所、電話番号、過去の対処履歴などを記憶管理するデータベースを備えている。監視センタでは、警備装置から受信した異常信号や対処要請信号に基づいて対処すべき監視対象の情報がディスプレイに表示され、利用者に対する確認処理や、監視対象への警備員の対処指示(出動指令)などの必要な措置をとる。また、監視センタは、異常信号や対処要請信号を受信した監視対象から、異常の復旧や要請の取消しを示す信号を受信すると、当該異常信号や対処要請信号にかかる処理を終了する。
【0042】
<変更要請処理に伴う警備システムの動作について>
図3は、変更要請処理を行う場合の、携帯端末30、警備装置10、監視センタ40の相互の関連動作示す図である。図3は、前述の認証センタ50を警備装置10内に設けた例であり、携帯端末30からの接続要求に対して、警備装置10で認証を行い、認証が完了すると現状情報を返信する例を示している。
【0043】
携帯端末30からの接続要求があると(70)、警備装置10はID番号等により接続要求者の認証を行い、認証に問題がなければ接続を確立する(80)。同時に携帯端末30に対して記憶部13に記憶された現在の警備状態、変更要請の有無等の現状態の情報を出力する(81)。
【0044】
携帯端末30は、現状態の情報を受信すると、表示部34に(図1)に表示する。図4(a)及び(b)に携帯端末30の表示画面の2つの表示例65a、及び65bを示す。表示例65aは、警備解除モードであり、変更要請がない状態を示している。表示例65bは、現在、警備解除モードであるが、変更要請があることを示している。現在警備セットモードである場合、警備状態が、「警備セット」若しくは「セット」等の表示がなされる。
【0045】
表示例65aの場合には、<操作>の「要請」がクリックされることにより警備状態の変更を要請する操作がなされ(72)、変更要請信号が警備装置10に送信される(73)。表示例65bの場合には、すでに変更要請中であるので、<操作>の「キャンセル」をクリックすることにより変更要請の取消操作がなされ、要請取消信号が警備装置10に送信される(図示せず)。また、表示例65a,65bにおいて、<操作>の「更新」をクリックすることにより、警備装置10の現状態確認を要求する操作がなされ、現状態確認信号が警備装置10に送信される。そして、警備装置10は現在の警備状態や変更要請の有無を携帯端末30に出力し、携帯端末30の表示画面が更新される。
【0046】
警備装置10は、変更要請信号を受信すると(82)、変更要請処理を行い(83)、監視センタ40に対処要請信号を送信し(84)、警備用設備装置17に解錠許可信号を送出する(85)。
【0047】
監視センタ40は、対処要請信号を受信すると(90)、監視センタ40の表示部等(図示せず)に要請情報を出力(表示出力、音声出力等)し(91)、管制員に対して特定の監視対象から要請があった事実及び要請の内容を知らせる。管制員は、変更要請に伴う対処要請であることを確認すると、警備員に対して要請のあった監視対象への出動指令を出す。尚、管制員を介することなく、監視センタ40の監視システムが対処要請信号に基づいて、警備員控え室の出力装置に対して変更要請に対する出動指令を発令するように構成してもよい。また、このとき、監視センタ40は、電話連絡や電子メール等により、利用者に監視対象の警備状態が変更要請された旨を通知することが好ましい。
【0048】
警備員は監視対象に出動し、警備用設備装置17の操作部を操作してキーボックス等を解錠してマスターキーを取り出し、又は、電気錠扉の電気錠を解錠して警備対象内に入る。このとき、警備用設備装置17には解錠許可信号が送出されているので、警備員は所定の操作によりキーボックスや電気錠扉を解錠することができる。警備員は、監視対象内に入り、監視対象に異常がないかどうかを確認した上で、警備状態を変更(警備解除モード→警備セットモード、警備セットモード→警備解除モード)する(86)。警備状態が変更されたことで、変更要請処理部24は変更要請の終了のための処理を実行する(87)。変更要請処理部24は、監視センタ40に、対処要請取消信号を出力し(88)、警備用設備装置17に対して解錠許可信号の送出を停止する(89)。
【0049】
また、警備装置10が携帯端末30から要請取消信号を受信したときにも(86)、同様に、変更要請処理部24は要請終了処理を実行し(87)、対処要請取消信号を送信し(88)、解錠許可信号の送出を停止する(89)。監視センタ40では、対処要請取消信号を受信すると(93)、要請情報の出力を停止して当該要請にかかる処理を終了する(94)。
【0050】
尚、上述の説明では、図4を用いて警備解除モードから警備セットモードへの変更要請の例を説明したが、警備セットモードから警備解除モードへの変更も携帯端末30から要請可能である。例えば、監視対象に入室するためのカード等を自宅に忘れた場合等に、このような警備セットモードから警備解除モードへの変更が必要となる場合がある。
【0051】
<警備装置の変更要請処理手順>
図5は、警備装置10の変更要請処理手順の一例を示すフローチャートである。まず、携帯端末30からの接続要求を受信することにより(S101)、変更要請処理を開始する。携帯端末30からの接続要求があると(S101;Yes)、変更要請処理部24は記憶部13に記憶している現時点の警備状態及び変更要請の有無等の情報を携帯端末30に送信する(S102)。その後、変更要請信号を受信したか(S103)、または要請取消信号を受信したか(S104)が確認される。このとき、要請取消信号を受信すると(S104;Yes)、記憶部13の情報に基づき現在変更要請中であるか否かが判定され(S111)、変更要請中でなければ(S111;No)そのまま変更処理を終了する。他方、変更要請中であれば(S111;Yes)、要請取消処理を行う(S109)。なお、S103、S104において、所定時間携帯端末30から何れの信号も受信しない場合(S103;No、S104;No)は、携帯端末30との接続を解除し、処理を終了することが好ましい。
【0052】
携帯端末30から変更要請信号を受信すると(S103Yes)、変更要請処理部24は、監視センタ40に対して対処要請信号を送信する(S105)。次に、警備用設備装置17に対して解錠許可信号を送出する(S106)。その後、要請取消信号を受信したか(S107)、警備員による警備状態の変更があったか(S108)が確認される。携帯端末30から要請取消信号を受信すると(S107;Yes)、変更要請処理部24は監視センタ40に対して対処要請取消信号を送信し(S109)、さらに警備用設備装置17に対する解錠許可信号の送出を停止して(S110)、変更要請処理を終了する。また、警備状態が変更されると(S108;Yes)、警備員により正常に警備状態が変更されたものとみなして、同様に対処要請取消信号を送信するとともに(S109)、解錠許可信号の送出を停止して(S110)、変更要請処理を終了する。
【0053】
以上説明したように、本発明によると、携帯端末からの変更要請に従って、監視センタの管理の下で警備状態の変更処理が行われるので、ID番号を知り得た不正な者が簡単に警備状態の変更をすることはできず、顧客の利便性を向上させつつセキュリティ性の高い警備システムを提供することができる。
【0054】
また、本発明の実施形態によると、現在の警備状態及び変更要請中であるかどうかを確認してから、警備状態の変更が可能となるので、記憶違いまたは複数人の2重操作により、誤って警備状態を変更してしまう等の誤操作を防止することが可能となる。さらに、この実施形態では、誤って警備状態を変更されそうなときに、変更要請中に他の利用者が所持する携帯端末側から要請取消信号を送信することにより、変更要請をキャンセルすることもできる。このような場合に備えて、携帯端末から警備状態を変更する場合には、他の携帯端末にも音声又はバイブレーション等により変更要請中であることを積極的に報知するような構成とすることもできる。
【0055】
<他の実施形態>
携帯端末にGPSなどの位置情報取得手段を設けて、携帯端末から警備装置へ変更要請信号を送信する際に、携帯端末が取得した位置情報と位置情報の取得時刻情報とを付して送信する構成とし、認証サーバまたは警備装置は、携帯端末から送信される位置情報と位置情報の取得時刻と現在時刻の差が所定の時間内であり、かつ、位置情報が監視対象から所定の距離以上離れた位置である場合に限り、携帯端末と警備装置との接続を受け付ける、または変更要請を受け付けるように構成する。
【0056】
この実施形態では、監視対象の近くからの警備状態の変更を拒絶する。これにより、本発明にかかる警備システムのセキュリティ性をより高めることが可能となる。すなわち、監視対象の近くにいるのであれば、監視対象まで移動して自分で警備状態を変更すれば足りるはずであり、監視対象の近くにいるにもかかわらず、携帯端末により警備状態の変更を行うのは、不正使用の可能性が考えられるので、このような使用形態を排除するものである。また、位置取得時間と現在時刻の差が大きいと、遠くで位置情報を取得して、監視対象の近くで、変更要請した場合を排除するものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態にかかる警備システム1を示す概念図である。
【図2】制御部の主要な機能を、機能ブロック図で表した制御装置の機能ブロック図である。
【図3】変更処理要請処理を行う場合の、携帯端末、警備装置、監視センタの相互の関連動作示す図である。
【図4】(a)及び(b)に携帯端末の表示画面の2つの表示例を示す。
【図5】警備装置の変更要請処理手順の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
1 警備システム 10 警備装置
11 制御部 12 網通信部
13 記憶部 14 モード設定部
15 内部通信部 16 検知部
17 警備用設備装置 18 設備制御部
19 設備機器 21 主制御部
22 異常処理部 23 モード設定処理部
24 変更要請処理部 30 携帯端末
31 無線通信部 32 携帯端末の制御部
33 変更要請部 34 表示部
35 操作部 36 記憶部
40 監視センタ 50 認証センタ
60 通信網 65a、65b 画面表示例



【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信網に接続可能な携帯端末と、監視対象を警備する警備装置と、前記監視対象に進入するための設備機器を制御する設備制御装置と、前記警備装置と前記通信網を介して接続されており前記警備装置を監視し該警備装置と所定の制御信号及び情報を送受信する監視センタとを具備する警備システムであって、
前記携帯端末は、所定の操作に基づき、前記警備装置に対して警備状態の変更を要請するための変更要請信号を生成する変更要請部と、該変更要請信号を前記警備装置に送信する通信部とを備え、
前記警備装置は、前記通信網を介して前記携帯端末及び前記監視センタとデータ通信を行う通信部と、前記監視対象を監視する監視部と、警備状態として前記監視対象を警備する警備モード又は監視対象の警備を解除した解除モードの設定を行うモード設定部と、前記変更要請信号を受信したときに前記監視センタに警備員の派遣を要請する対処要請信号を送出するとともに、前記設備制御装置に対して、警備員が前記監視対象に進入することを許可する許可信号を送出する変更要請処理部とを備える、
ことを特徴とする警備システム。
【請求項2】
前記携帯端末の変更要請部は、第二の所定の操作に基づいて、警備状態の変更要請を取消すための要請取消信号を出力可能であり、
前記警備装置の変更要請処理部は、前記携帯端末から前記要請取消信号を受信すると、前記監視センタに対処要請取消信号を送出するとともに、前記設備制御装置に対して警備員が監視対象へ進入することを不可とするための信号を送出することを特徴とする請求項1に記載の警備システム。
【請求項3】
前記警備装置は、さらに、現在の警備状態、及び前記変更要請信号に基づく要請の有無を記憶する記憶部を備え、
前記変更要請処理部は、前記携帯端末に、現在の警備状態及び要請の有無を送信することを特徴とする請求項1または2に記載の警備システム。
【請求項4】
前記携帯端末は、さらに、現在の位置情報を取得する位置情報取得部を備え、前記携帯端末の変更要請部は、取得した前記位置情報を前記変更要請信号とともに前記警備装置に送信し、
前記警備装置の変更要請処理部は、前記携帯端末から受信した位置情報が前記監視対象を基準にして所定範囲内にあるときには、前記変更要請信号を受信したときの処理を拒絶することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の警備システム。
【請求項5】
利用者の所持する携帯端末及び監視センタと、通信網を介して通信を行う通信部と、
監視対象を監視する監視部と、
警備状態として前記監視対象を警備する警備モード又は監視対象の警備モードを解除する解除モードの設定を行うモード設定部と、
前記携帯端末から警備状態の変更を要請する変更要請信号を受信したときに、監視センタに対処要請信号を送出するとともに、警備員が前記監視対象内に進入可能となるように前記監視対象に進入するための前記設備機器を制御する変更要請処理部と、
を備えることを特徴とする警備装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−99543(P2006−99543A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286345(P2004−286345)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】