説明

車両、及び、電力システム

【課題】発電部と蓄放電部と電力駆動部とを備えた車両、及び、車両が入出庫する車庫を有する施設側の電力システムにおいて、電力システムから車両に対して、蓄放電部に蓄電させる車両充電作動、車両の蓄放電部に放電させる車両放電作動の少なくとも一方を実行するにあたり、車両のみならず施設側も含めた全体の省エネルギ化を達成する。
【解決手段】車両1において、走行時間帯における蓄放電部4の蓄放電状態を制御して、帰庫時期における蓄放電部4の蓄電残量である帰庫時期蓄電残量を調整可能な蓄電残量調整手段9を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を利用して発電する発電部と、蓄放電可能な蓄放電部と、少なくとも電力を利用して走行動力を出力する電力駆動部と、外部に設置された電力システムに対して電気的に接続可能な外部接続部とを備え、前記蓄放電部が前記外部接続部に対して電力を蓄放電可能に構成されている車両と、及び、その車両が入出庫する車庫を有する施設側に設置され、前記車両の外部接続部に対して電気的に接続可能な車両接続部を備えて、前記車両接続部を介して前記車両の蓄放電部に電力を供給して当該蓄放電部に蓄電させる車両充電作動、及び、前記車両の蓄放電部に放電させて前記車両接続部を介して当該蓄放電部から電力を取り出す車両放電作動の少なくとも一方を実行可能な車両充放電手段を備えた電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄放電可能な蓄放電部と、その蓄放電部に蓄電した電力を利用して走行動力を出力する電力駆動部とを備えた電気駆動車両を利用するにあたり、その車庫を有する施設(住宅等)側には、その車両の蓄放電部を充電する目的で、車両の外部接続部を電力システムの車両接続部に電気的に接続した状態で、車両の蓄放電部に電力を供給して当該蓄放電部に蓄電させる車両充電作動を実行可能に構成されている電気駆動車両用電力システムが設置される。
そして、このような電気駆動車両と電気駆動車両用電力システムとの間で、相互に電力の伝達を可能とする技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
即ち、特許文献1に記載の電気駆動車両用電力システムは、車両の蓄放電部に対する充電目的の構成に加えて、施設側における商用電力系統の停電時における電力確保等の目的で、車両の蓄放電部に放電させて当該蓄放電部から電力を取り出す車両放電作動を実行可能に構成されている。また、この電気駆動車両は、燃料を利用して発電する発電部を備えるものではなく、上記車両充電作動を実行して充電された蓄放電部の蓄電電力のみを利用して走行するものである。
従って、この電気駆動自動車用電力システムにおいて、電気駆動車両が車庫に戻る帰庫時期における当該車両の蓄放電部の蓄電残量は、当初充電時の蓄電残量から走行で消費した分を差し引いたものというように、それまでの走行状態等に起因するものとなっている。
【0003】
一方、上記電力駆動車両のような蓄放電部及び電力駆動部に加え、燃料を利用して発電するエンジン駆動発電機等の発電部を備え、電力駆動部において少なくとも発電部の発電電力や蓄放電部の蓄電電力を利用して走行動力を出力するハイブリッド車両と、そのハイブリッド車両が入出庫する車庫を有する施設側に設けられた電力システムとの間でも、車両の外部接続部を電力システムの車両接続部に電気的に接続した状態で、施設側における商用電力系統の停電時における電力確保等の目的で、上記のような車両放電作動を実行可能とするものが提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
また、上記特許文献2に記載の電力システムにおいては、通常のハイブリッド車両を利用するものである。即ち、通常のハイブリッド車両においては、蓄放電部の蓄電残量が、始動時等で支障ができない下限以上に維持され、且つ、燃費が向上されるように発電部の発電量及び電力駆動部の電力消費量を制御した結果に起因して逐次変化するものとなる。
従って、この電力システムにおいて、ハイブリッド車両の帰庫時期における蓄電残量は、それまでの走行状態等に起因するものとなっている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−8380号公報
【特許文献2】特開2006−1581241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような従来の電気駆動車両システム及びハイブリッド車両システムでは、帰庫時期における蓄電残量は走行状態等に起因するものとなっているので、その帰庫時期における蓄電残量を積極的に調整し得るものとはなっていない。
また、従来のハイブリッド車両システムでは、車両の燃費向上に貢献できるものの、その車両のみならず施設側も含めた全体の省エネルギ化を実現するようには構成されていない。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、発電部と蓄放電部と電力駆動部とを備えた車両に対して、車両が入出庫する車庫を有する施設側の電力システムにより、車両の外部接続部を介して、車両の蓄放電部に電力を供給して当該蓄放電部に蓄電させる車両充電作動、及び、車両の蓄放電部に放電させて当該蓄放電部から電力を取り出す車両放電作動の少なくとも一方を実行するにあたり、車両のみならず施設側も含めた全体の省エネルギ化を達成し得る技術を実現する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る車両は、燃料を利用して発電する発電部と、蓄放電可能な蓄放電部と、少なくとも電力を利用して走行動力を出力する電力駆動部と、外部に設置された電力システムに対して電気的に接続可能な外部接続部とを備え、前記蓄放電部が前記外部接続部に対して電力を蓄放電可能に構成されている車両であって、その第1特徴構成は、走行時間帯における前記蓄放電部の蓄放電状態を制御して、帰庫時期における前記蓄放電部の蓄電残量である帰庫時期蓄電残量を調整可能な蓄電残量調整手段を備えた点にある。
【0008】
更に、上記目的を達成するための本発明に係る電力システムは、本発明に係る車両が入出庫する車庫を有する施設側に設置され、前記車両の外部接続部に対して電気的に接続可能な車両接続部を備えて、前記車両接続部を介して前記車両の蓄放電部に電力を供給して当該蓄放電部に蓄電させる車両充電作動、及び、前記車両の蓄放電部に放電させて前記車両接続部を介して当該蓄放電部から電力を取り出す車両放電作動の少なくとも一方を実行可能な車両充放電手段を備えた点を特徴とする。
【0009】
上記第1特徴構成によれば、上記蓄電残量調整手段を備えることにより、車両が出庫してから帰庫するまでの走行時間帯における蓄放電部の蓄放電状態が制御されて、帰庫時期における上記帰庫時期蓄電残量が調整可能となるので、車両のみならずその車両に対して上記車両充電作動及び上記車両放電作動の少なくとも一方を実行する電力システムが設けられた施設側も含めた全体の省エネルギ化を達成することができる。
即ち、車両及び施設側の全体において、車両の発電部で発電した電力と、施設側で調達した電力との内、コストが安いほうをできるだけ多く利用して、全体の省エネルギ化を達成することができる。
【0010】
本発明に係る車両の第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、前記蓄電残量調整手段が、前記帰庫時期蓄電残量を上限蓄電残量に調整する上限蓄電帰庫モードと前記帰庫時期蓄電残量を前記上限蓄電残量よりも少ない下限蓄電残量に調整する下限蓄電帰庫モードとを択一的に切り換える蓄電帰庫モード切換処理を実行する形態で、前記帰庫時期蓄電残量を調整するように構成されている点にある。
【0011】
上記第2特徴構成によれば、車両の蓄電残量調整手段において、上記上限蓄電帰庫モードと上記下限蓄電帰庫モードとを択一的に切り換える蓄電帰庫モード切換処理を実行する形態で、例えば蓄放電部の最大蓄電残量等の上記上限蓄電残量と、例えば次回の走行時間帯において発電部を起動するのに必要な最小蓄電残量等の上記下限蓄電残量との間で帰庫時期蓄電残量を調整して、上述したように、車両のみならず施設側も含めた全体の省エネルギ化を達成することができる。
【0012】
本発明に係る車両の第3特徴構成は、上記第1乃至上記第2の何れかの特徴構成に加えて、走行予定に関する走行予定情報の入力を受け付ける走行予定情報受付手段を備えると共に、
前記蓄電残量調整手段が、前記走行予定情報に基づいて走行時間帯における前記蓄放電部の蓄放電状態を制御して、前記帰庫時期蓄電残量を調整するように構成されている点にある。
【0013】
更に、上記目的を達成するための本発明に係る電力システムは、車両が上記第3特徴構成を有する場合、即ち、前記車両との間で通信可能な通信手段を備え、
前記車両が、走行予定に関する走行予定情報の入力を受け付ける走行予定情報受付手段を備えると共に、前記蓄電残量調整手段が、前記走行予定情報に基づいて走行時間帯における前記蓄放電部の蓄放電状態して、前記帰庫時期蓄電残量を調整するように構成されている場合において、
前記走行予定情報を取得して、出庫前に前記通信手段を介して前記走行予定情報を前記走行予定情報受付手段へ送信可能な走行予定情報送信手段を備えた点を特徴とする。
【0014】
上記第3特徴構成によれば、車両において、上記走行予定情報受付手段により、走行予定情報の入力を受け付けることで、上記蓄電残量調整手段は、その走行予定情報から、帰庫時期やそれまでの走行時間帯において必要な走行動力を認識することができる。よって、その蓄電残量調整手段は、必要な走行動力を出力しながら帰庫時期蓄電量を調整目標とするためのエンジンの最適な出力状態に関するシミュレーションを行うなどして、帰庫時期蓄電量が調整目標にできるだけ近いものとなるように、蓄放電部の蓄放電状態を制御することができる。
【0015】
更に、上記施設側の電力システムでは、上記走行予定情報送信手段により、施設側で予め走行予定情報を取得し、その走行予定情報を、通信手段を介して車両の走行予定情報受付手段へ送信することができる。よって、車両では、使用者が車両に乗り込んだときにわざわざ走行予定情報を入力する必要がなく、施設側の電力システムから受信した走行予定情報を用いて、車両の蓄電残量調整手段を自動的に作動させて、帰庫時期蓄電残量を全体の省エネルギ化を達成できる適切なものに調整することができる。
【0016】
本発明に係る車両の第4特徴構成は、上記第3特徴構成に加えて、前記走行予定情報受付手段が、前記走行予定情報として、走行時間帯又は走行距離に関する情報の入力を受け付ける点にある。
【0017】
上記第4特徴構成の車両によれば、上記走行予定情報としては、出発時間(即ち、車両の出庫時期)、帰宅時間(即ち車両の帰庫時期)、行き先等のように車両の走行時間帯及び走行距離に関する情報とすることができ、上記蓄電残量調整手段は、この走行時間帯及び走行距離により、帰庫時期や、その走行時間帯における電力駆動部での電力の消費状態を明確に認識することができる。
【0018】
本発明に係る車両の第5特徴構成は、上記第3乃至上記第4の何れかの特徴構成に加えて、前記走行予定情報受付手段が、ナビゲーション装置の入出力情報に基づいて前記蓄電残量調整手段で用いる前記走行予定情報を更新する走行予定情報更新処理を実行する点にある。
【0019】
上記第5特徴構成の車両によれば、上記走行予定情報受付手段により上記走行予定情報更新処理を実行することで、出庫してからの走行時間帯に使用者の都合や交通渋滞などの理由で行き先や帰宅時間等の走行予定が変更となった場合でも、ナビゲーション装置の入出力情報により新たな走行予定を認識して、それにより走行予定情報を逐次更新することができる。よって、蓄電残量調整手段では、逐次更新される走行予定情報を用いて蓄放電部の蓄放電状態を制御するので、帰庫時期蓄電残量を調整目標に極めて近いものとすることができ、全体の省エネルギ化を一層向上することができる。
【0020】
本発明に係る車両の第6特徴構成は、上記第1乃至上記第5の何れかの特徴構成に加えて、前記電力システムとの間で通信可能な通信手段を備えると共に、
前記通信手段を介して前記電力システムから受信した調整指令に従って、前記蓄電残量調整手段で用いる前記帰庫時期蓄電残量の調整目標を決定する指令受付手段を備えた点にある。
【0021】
更に、上記目的を達成するための本発明に係る電力システムは、車両が上記第6特徴構成を有する場合、即ち、前記車両との間で通信可能な通信手段を備え、
前記通信手段を介して前記電力システムから受信した調整指令に従って、前記蓄電残量調整手段で用いる前記帰庫時期蓄電残量の調整目標を決定する指令受付手段を備えて構成されている場合において、
前記電力システムで調達可能な電力に関する電力需給情報に基づいて、前記車両の蓄電残量調整手段で用いる帰庫時期蓄電残量の調整目標を決定し、前記通信手段を介して当該決定した帰庫時期蓄電残量の調整目標に関する調整指令を前記車両に送信可能な調整指令送信手段を備えた点を特徴とする。
【0022】
上記第6特徴構成によれば、車両において、上記指令受付手段により、通信手段を介して前記電力システムから調整指令を受信することで、自動的に、その調整指令に従って上述した蓄電残量調整手段で用いる帰庫時期蓄電残量の調整目標を決定することができる。よって、車両では、使用者が車両に乗り込んだときにわざわざ帰庫時期蓄電残量の調整目標を入力する必要がなく、施設側の電力システムから受信した調整指令に従って決定した走行予定情報を用いて、蓄電残量調整手段を自動的に作動させることができる。
【0023】
更に、上記施設側の電力システムでは、車両のみならず施設側も含めた全体の省エネルギ化を達成するための最適な帰庫時期蓄電残量を求め、それを調整目標として決定することができる。よって、施設側の電力システムの調整指令送信手段が、その決定した最適な調整目標に関する調整指令を、通信手段を介して車両に送信することで、車両では、指令受付手段がその受信した調整指令に従って調整目標を決定し、蓄電残量調整手段が帰庫時期蓄電残量をこの最適な調整目標にできるだけ近くなるように調整することで、全体の省エネルギ化を達成することができる。
【0024】
本発明に係る車両の第7特徴構成は、上記第6特徴構成に加えて、前記通信手段が、無線通信ネットワークを介して前記電力システムとの間で通信可能に構成され、
前記指令受付手段が、走行時間帯に前記電力システムから受信した調整指令に従って前記帰庫時期蓄電残量の調整目標を更新する調整目標更新処理を実行する点にある。
【0025】
更に、上記目的を達成するための本発明に係る電力システムは、車両が上記第7特徴構成を有する場合、即ち、前記通信手段が、無線通信ネットワークを介して前記車両との間で通信可能に構成され、
前記車両の指令受付手段が、走行時間帯に前記電力システムから受信した調整指令に従って前記帰庫時期蓄電残量の調整目標を更新する調整目標更新処理を実行するように構成されている場合において、
前記調整指令送信手段が、前記車両の走行時間帯における電力需給情報の変更に基づいて前記帰庫時期蓄電残量の調整目標を更新し、前記通信手段を介して当該更新した帰庫時期蓄電残量の調整目標に関する調整指令を前記車両に送信する再指令処理を実行可能に構成されている点を特徴とする。
【0026】
上記第7特徴構成によれば、車両において、出庫してからの走行時間帯でも、上記指令受付手段が上記調整目標更新処理を実行して、電力システムから無線通信ネットワークを介して受信した調整指令に従って、帰庫時期蓄電残量の調整目標を、電力システムで決定された新しいものに更新することができる。
【0027】
更に、電力システムでは、上記調整指令送信手段が上記再指令処理を実行することで、車両発電コストや施設電力調達コスト等の電力需給情報が変更になった場合でも、その電力需給情報の変更に基づいて現状で全体の省エネルギ化を達成し得る最適な帰庫時期蓄電残量を新たな調整目標として決定し、無線通信ネットワークを介して、その現状の電力需給情報にあった最適な調整目標に関する調整指令を車両に送信することができる。
よって、車両では、上記指令受付手段により上記調整目標更新処理を実行することで、走行時間帯に無線通信ネットワークを介して電力システムから受信した調整指令に従って帰庫時期蓄電残量の調整目標を最適なものに更新し、蓄電残量調整手段が帰庫時期蓄電残量をこの最適な調整目標にできるだけ近くなるように調整することで、全体の省エネルギ化を一層向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明に係る車両及び電力システムの実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、ハイブリッド車両1と当該車両1が入出庫する車庫67を有する施設側に設置された電力システム50の概略構成図を示し、図2は、電力システム50の車両接続部51を車庫67に入庫している車両1の外部接続部5に接続している状態における各種処理フローを示しており、図3は、車庫67から出庫した車両1が走行している走行時間帯における各種処理フローを示している。
先ず、車両1の構成、及び、電力システム50の構成について、図1〜3に基づいて夫々説明する。
【0029】
〔車両1の構成〕
図1に示すように、ハイブリッド車両1(車両の一例)には、天然ガスやガソリンなどの車両用燃料Gaを利用して発電する発電部として、車両用燃料Gaを燃焼させて軸動力を出力するエンジン2と、エンジン2の出力軸と同軸上に連結され当該エンジン2の軸動力を消費して電力を出力するジェネレータ3gが設けられており、更に、少なくとも電力を利用して走行動力を出力する電力駆動部として、上記エンジン2の出力軸と同軸上に連結され電力を消費して軸動力を出力するモータ3mと、軸出力を車輪15に伝達して走行する走行駆動機構16とが設けられている。
【0030】
即ち、上記走行駆動機構16では、公知のハイブリッド車両と同様に、エンジン2が出力した軸動力とモータ3mが出力した軸動力との和からジェネレータ3gで消費した軸動力を差し引いた軸動力が走行動力として車輪15に伝達されることになる。尚、モータ3mとジェネレータ3gとは、夫々を別体で設置しても構わないが、一体型のモータ/ジェネレータ3により実現しても良い。
また、減速時には、車輪15の制動力をジェネレータ3gに伝達して電力を出力(発電)することもできる。
【0031】
更に、ハイブリッド車両1には、上記電力線12に対して電力を蓄放電可能な蓄放電部としてのバッテリー4が設けられており、このバッテリー4は、上記ジェネレータ3g等から電力線12を介して供給された電力を蓄電可能、且つ、上記モータ3m等に電力線12を介して電力を放電可能に構成されている。
【0032】
ハイブリッド車両1には、後述する電力システム50の車両接続部51に対して電気的に接続可能な外部接続部5が設けられている。この外部接続部5は、当該電力システム50の車両接続部51が接続された状態で、ハイブリッド車両1の電力線12と電力システム50の電力線59とを電気的に接続して、バッテリー4から電力システム50側に対する電力の入出力を可能とするものである。
尚、このハイブリッド車両1側から電力システム50側への電力の入出力は、ハイブリッド車両1にインバータを設置して交流電力で行っても良いし、電力システム50側にインバータを設置して直流電力で行っても良い。
【0033】
よって、詳細については後述するが、施設側に設置された電力システム50は、上記ハイブリッド車両1の外部接続部5に対して電気的に接続可能な車両接続部51を備えると共に、その車両接続部51をハイブリッド車両1の外部接続部5に接続した状態で、車両接続部51を介してハイブリッド車両1のバッテリー4に電力を供給して当該バッテリー4に蓄電させる車両充電作動、及び、ハイブリッド車両1のバッテリー4に放電させてその車両接続部51を介して当該バッテリー4から電力を取り出す車両放電作動を択一的に実行可能な車両充放電手段52を備えて構成されている。
【0034】
ハイブリッド車両1には、電力システム50の通信装置58との間で通信可能な通信手段としての通信装置11が設けられている。
具体的に、この通信装置11は、電力システム50の通信装置58に対して、外部接続部5に車両接続部51が接続されることで連結する電力線12及び59を介して電力システム50との間で通信可能、且つ、携帯電話網等の無線通信ネットワーク66を介して通信可能に構成されている。尚、本願において、上記電力線12及び59を介して行われる通信を「電力線通信」と呼び、上記無線通信ネットワーク66を介して行われる通信を「無線通信」と呼ぶ。
【0035】
ハイブリッド車両1には、公知のものと同様に、GPS(図示せず)等を用いて行き先などの入力情報から現在位置や走行ルート及び距離や到着時間などの出力情報を演算し出力するナビゲーション装置10が設けられている。
【0036】
ハイブリッド車両1には、所定のコンピュータプログラムを実行することで、ハイブリッド車両1における各種制御を実行するコンピュータからなる車両制御装置6が設けられており、この車両制御装置6は、例えば、エンジン2の出力制御やバッテリー4の蓄放電状態制御等を実行可能に構成され、更に、後述する走行予定情報受付手段7、指令受付手段8、蓄電残量調整手段9として機能する。以下、この車両制御装置6が機能する各種手段7,8,9について説明を加える。
【0037】
上記走行予定情報受付手段7は、走行予定に関する走行時間帯又は走行距離等の走行予定情報の入力を受け付ける手段として構成されている。
尚、上記走行予定情報は、出発時間(即ち、車両の出庫時期)、帰宅時間(即ち車両の帰庫時期)、行き先等の走行予定を入力することで、その走行予定から認識することができる。
【0038】
更に、この走行予定情報受付手段7は、ハイブリッド車両1の出庫前に実行する走行予定情報登録処理と、ハイブリッド車両1が出庫してから車庫67に戻るまでの走行時間帯に実行する走行予定情報更新処理とを、実行可能に構成されている。
上記走行予定情報登録処理は、図2も参照して、ハイブリッド車両1が車庫67に停車している出庫直前に、ハイブリッド車両1側で使用者により入力された走行予定情報、又は、通信装置11を介した電力線通信又は無線通信により後述する電力システム50の走行予定情報送信手段54から受信した走行予定情報を、後述する蓄電残量調整手段9で用いる走行予定情報として登録する処理である。尚、この走行予定情報登録処理での走行予定情報の送受信は、電力システム50の車両接続部51がハイブリッド車両1の外部接続部5に接続された状態である出庫前に実行されることから、電力線通信で行って通信コストを節約することができ望ましい。
【0039】
一方、上記走行予定情報更新処理は、図3も参照して、走行時間帯に、ナビゲーション装置10の入出力情報に基づいて後述する蓄電残量調整手段9で用いる走行予定情報を更新する処理である。
即ち、走行時間帯に使用者の都合や交通渋滞などの理由で行き先や帰宅時間等の走行予定が変更となった場合でも、ナビゲーション装置10において、行き先や自宅が目的地として使用者により入力され、その目的地までの走行距離や到着時間が演算されて出力される。
よって、上記走行予定情報受付手段7は、上記走行予定情報更新処理を実行して、ナビゲーション装置10の入出力情報に基づいて新たな走行予定を認識し、その新たな走行予定により走行予定情報を逐次更新することができる。
【0040】
上記指令受付手段8は、通信装置11を介した電力線通信又は無線通信により、後述する電力システム50の調整指令送信手段55から受信した調整指令に従って、後述する蓄電残量調整手段9で用いる帰庫時期蓄電残量の調整目標を決定する手段として構成されている。
【0041】
更に、この指令受付手段8は、ハイブリッド車両1の出庫前に実行する調整目標登録処理と、ハイブリッド車両1が出庫してから車庫67に戻るまでの走行時間帯に実行する調整目標更新処理とを、実行可能に構成されている。
上記調整目標登録処理は、図2も参照して、ハイブリッド車両1が車庫67に停車している出庫直前に、通信装置11を介した電力線通信又は無線通信により、後述する電力システム50の調整指令送信手段55から調整指令を受信し、その受信した調整指令に従って調整目標を自動的に登録する処理である。尚、この調整目標登録処理での調整指令の送受信は、電力システム50の車両接続部51がハイブリッド車両1の外部接続部5に接続された状態である出庫前に実行されることから、電力線通信で行って通信コストを節約することが望ましい。
【0042】
一方、上記調整目標更新処理は、図3も参照して、ハイブリッド車両1が車庫67にない走行時間帯に、通信装置11を介した無線通信により後述する電力システム50の調整指令送信手段55から受信した調整指令に従って調整目標を更新する処理である。尚、この調整目標更新処理での調整指令の送受信は、電力システム50の車両接続部51がハイブリッド車両1の外部接続部5に接続されていない状態である出庫後に実行されることから、無線通信で行う必要がある。
【0043】
即ち、走行時間帯でも、上記指令受付手段8が上記調整目標更新処理を実行して、電力システム50から携帯電話網等の無線通信ネットワーク66を介して受信した調整指令に従って、バッテリー4の帰庫時期蓄電残量の調整目標を、電力システム50で決定された新しいものに逐次更新することができる。
【0044】
上記蓄電残量調整手段9は、ハイブリッド車両1が車庫67から出庫してから同車庫67に帰庫するまでの走行時間帯において、バッテリー4の蓄放電状態を制御して、ハイブリッド車両1が車庫67に戻る帰庫時期におけるバッテリー4の蓄電残量である帰庫時期蓄電残量を調整可能な手段として構成されている。
【0045】
尚、上記蓄電残量調整手段9は、上記バッテリー4の蓄放電状態を制御するにあたり、車輪15から走行駆動機構16に付加される走行動力に対してエンジン2の出力を制御することで、バッテリー4の蓄電残量を調整することができる。
即ち、上記蓄電残量調整手段9は、エンジン2の軸出力が上記走行動力よりも大きくなるように当該エンジン2の出力制御を行い、モータ/ジェネレータ3をジェネレータ3gとして作動させて、ジェネレータ3gの発電電力をバッテリー4に供給して蓄電させることで、バッテリー4に蓄電残量を増加させることができる。
逆に、上記蓄電残量調整手段9は、エンジン2の軸出力が上記走行動力よりも小さくなるように当該エンジン2の出力制御を行い、モータ/ジェネレータ3をモータ3mとして作動させて、バッテリー4の放電電力をモータ3mに供給して消費させることで、バッテリー4に蓄電残量を減少させることができる。
【0046】
更に、上記蓄電残量調整手段9は、下記に示すように上限蓄電帰庫モードと下限蓄電帰庫モードとを択一的に切り換える蓄電帰庫モード切換処理を実行するという簡単な形態で上記帰庫時期蓄電残量を調整するように構成されている。
即ち、上記上限蓄電帰庫モードは、上記帰庫時期蓄電残量を上限蓄電残量に調整するモードである。尚、この上限蓄電残量は、例えばバッテリー4の最大蓄電残量等を基準に設定することができる。
一方、上記下限蓄電帰庫モードは、上記帰庫時期蓄電残量を上記上限蓄電残量よりも少ない下限蓄電残量に調整するモードである。尚、この下限蓄電残量は、発電部を構成するエンジン2を起動するのに必要な最小蓄電残量等を基準に設定することができる。
【0047】
そして、上記ハイブリッド車両1は、上記蓄電残量調整手段9を備えることにより、ハイブリッド車両1のみならず施設側の電力システム50全体において、ハイブリッド車両1で発電した電力と施設側で調達した電力との内、コストが安いほうをできるだけ多く利用できるように、帰庫時期におけるバッテリー4の帰庫時期蓄電残量が調整可能となるので、全体の省エネルギ化を達成することができる。
例えば、ハイブリッド車両1においてエンジン2の軸出力によりジェネレータ3gで発電するのにかかるコストである車両発電コストが、施設側でコージェネレーションシステム61や商用電力系統64から電力を調達するのにかかる施設電力調達コストに比べ比較的安い場合には、上記蓄電残量調整手段9を上限蓄電帰庫モードに設定して、バッテリー4の帰庫時期蓄電残量を多めに調整する。すると、ハイブリッド車両1のバッテリー4に対する充電目的等での車両充放電手段52による車両充電作動の実行時においては、施設側の電力システム50で調達される比較的高価な電力を電力システム50からハイブリッド車両1のバッテリー4に殆ど供給する必要がない。よって、次回のハイブリッド車両1の走行時間帯においては、ハイブリッド車両1側で発電された比較的安価な電力をできるだけ多く利用してハイブリッド車両1を走行させることができる。
一方、電力システム50の停電時における電力確保目的等での車両充放電手段52による車両放電作動の実行時においては、ハイブリッド車両1側で発電されバッテリー4に蓄電された比較的安価な電力を、電力システム50に多く取り出すことができる。よって、電力システム50ではハイブリッド車両1側で発電した比較的安価な電力をできるだけ多く電力負荷60に供給することができる。
【0048】
逆に、上記車両発電コストが上記施設電力調達コストよりも高い場合には、上記蓄電残量調整手段9を下限蓄電帰庫モードに設定して、バッテリー4の帰庫時期蓄電残量を少なめに調整する。すると、ハイブリッド車両1のバッテリー4に対する充電目的等での車両充放電手段52による車両充電作動の実行時においては、電力システム50で調達する比較的安価な電力を当該電力システム50からハイブリッド車両1のバッテリー4にできるだけ多く供給して蓄電させることができる。よって、次回のハイブリッド車両1の走行時間帯においては、電力システム50で調達された比較的安価な電力をできるだけ多く利用してハイブリッド車両1を走行させることができる。
一方、電力システム50の停電時における電力確保目的等での車両充放電手段52による車両放電作動の実行時においては、電力システム50で調達されハイブリッド車両1のバッテリー4に蓄電された比較的安価な電力を、再度電力システム50に多く取り出すことができる。よって、電力システム50ではハイブリッド車両1側で発電された比較的高価な電力をできるだけ使用せずに、安価な電力を電力負荷60に供給することができる。
【0049】
更に、上記蓄電残量調整手段9は、上記走行予定情報に基づいて、走行時間帯におけるバッテリー4の蓄放電状態を制御して、帰庫時期蓄電残量を調整するように構成されている。
即ち、上記蓄電残量調整手段9は、上記走行予定情報受付手段7で登録され更に逐次更新される走行時間帯又は走行距離等の走行予定情報から、帰庫時期やそれまでの走行時間帯において必要な走行動力を導出する。更に、必要な走行動力を出力しながら、バッテリー4の帰庫時期蓄電量が上記指令受付手段8で登録され更に逐次更新される調整目標となるように、エンジン2の最適な出力状態に関するシミュレーションを実行する。そして、このシミュレーション結果に基づいてエンジン2の出力制御を行うことで、帰庫時期蓄電量を調整目標にできるだけ近いものとし、全体の省エネルギ化を向上させることができる。
【0050】
〔電力システム50の構成〕
図1に示すように、電力システム50は、ハイブリッド車両1が入出庫する車庫67を有する施設側に設置され、上述したように、車両接続部51を備えると共に、その車両接続部51をハイブリッド車両1の外部接続部5に接続した状態で、車両充電作動及び車両放電作動を択一的に実行可能な車両充放電手段52を備えたものとして構成されている。
【0051】
尚、上記車両接続部51は、ハイブリッド車両1の外部接続部5に接続した状態で、電力システム50の電力線59とハイブリッド車両1の電力線12とを電気的に接続して、車両充放電手段52からハイブリッド車両1側に対する電力の入出力を可能とするものである。
また、上記車両充放電手段52による車両充電作動や車両放電作動は、例えば、ハイブリッド車両1又は電力システム50に設置されたインバータを制御することで実行される。
【0052】
電力システム50には、電気機器等のように電力を消費する電力負荷60、及び、電力の調達先となる各種電源部61,62,64が設けられており、各種電源部61,62,64から調達した電力、及び、後述する車両充放電手段52の車両放電作動によりハイブリッド車両1から調達した電力を、電力負荷60に必要な電力や車両充放電手段52の車両充電作動に必要な電力として供給するように電力の授受を行う電力回線である電力需給部65が設けられている。
【0053】
尚、本実施形態において、上記各種電源部は、天然ガス系都市ガス13Aなどのコージェネ用燃料Gbを利用して発電すると共に給湯用等の熱を発生するコージェネレーションシステム61や、太陽光を利用して発電する太陽光発電システム62や、系統接続部63を介して電力需給部65において不足した電力を補う商用電力系統64を示す。
【0054】
電力システム50には、ハイブリッド車両1の通信装置11との間で通信可能な通信装置58が設けられており、これは、ハイブリッド車両1の通信装置11の説明でも述べたように、ハイブリッド車両1の通信装置58に対して、電力線12及び59を介した電力線通信可能、且つ、無線通信ネットワーク66を介した無線通信可能に構成されている。
【0055】
電力システム50には、所定のコンピュータプログラムを実行することで、電力システム50における各種制御を実行するコンピュータからなるセンタ制御装置53が設けられており、このセンタ制御装置53は、例えば、電力負荷60の負荷制御や各種電源部61,62,64及び車両充放電手段52の作動制御等を実行可能に構成され、更に、後述する走行予定情報送信手段54、調整指令送信手段55、電力需給管理手段56として機能し、また、キーボードやディスプレイ等からなる入出力部57が設けられている。以下、この車両制御装置6が機能する各種手段54,55,56について説明を加える。
【0056】
上記電力需給管理手段56は、電力システム50の電力需給部65で調達可能な電力に関する電力需給情報に基づいて、ハイブリッド車両1と電力システム50との全体の省エネルギ化を目的として、各電源部61,62,64からの電力調達量、車両充放電手段52の車両充電作動による電力調達量、車両充放電手段52の車両放電作動による電力供給量、電力負荷60への電力供給等を計画及び管理する手段として構成されている。
【0057】
尚、上記電力需給情報としては、電力需給部65で各種電源部61,62,64から調達可能な電力量である調達可能電力量、その調達可能な電力のコストである調達可能電力コスト、電力負荷60や車両充放電手段52の車両充電作動に必要な電力量の上記調達可能電力量に対する過不足などの情報として取得することができる。
【0058】
また、コージェネレーションシステム61からの調達可能電力量はそれの定格出力に起因したものとなり、また、商用電力系統64からの調達可能電力量は契約電力量に起因したものとなるので、例えば一定値として設定することができる。一方、太陽光発電システム62からの調達可能電力量は晴天時に多く曇りや雨天時に少ないというように天気に起因したものとなるので、例えば、インターネット等から入手した気象情報等から予測することができる。
また、上記調達可能電力コストは、コージェネレーションシステム61の発電効率及びコージェネ用燃料Gbの単価、商用電力系統の電力単価等から算出することができる。
【0059】
上記走行予定情報送信手段54は、上述したようにハイブリッド車両1の走行予定に関する走行予定情報を取得して、ハイブリッド車両1が車庫67から出庫する出庫時期に、通信装置58を介した電力線通信又は無線通信によりその走行予定情報を、ハイブリッド車両1の走行予定情報受付手段7へ送信可能な手段として構成されている。
【0060】
具体的には、上記走行予定情報送信手段54は、使用者に対して入出力部57に対する走行予定の入力を促して、入出力部57に入力された走行予定から走行予定情報を取得し、出庫直前に、それをハイブリッド車両1の走行予定情報受付手段7に送信するように構成されている。
そして、上記走行予定情報送信手段54により電力システム50で入力された送信予定情報をハイブリッド車両1の走行予定情報受付手段7に送信することにより、使用者がハイブリッド車両1に乗り込んだときにわざわざ走行予定情報を入力する必要がない。そして、ハイブリッド車両1の走行予定情報受付手段7は、この走行予定情報送信手段54からの走行予定情報の受信に伴って、上述したように蓄電残量調整手段9で用いる走行予定情報を登録する走行予定情報登録処理を自動的に実行することになる。
【0061】
上記調整指令送信手段55は、電力需給情報に基づいて、ハイブリッド車両1の蓄電残量調整手段9で用いる帰庫時期蓄電残量の調整目標を決定し、通信手段を介した電力線通信又は無線通信により当該決定した帰庫時期蓄電残量の調整目標に関する調整指令をハイブリッド車両1の指令受付手段8に送信可能な手段として構成されている。
【0062】
即ち、上記調整指令送信手段55は、上述した電力需給管理手段56で取得される電力調達情報に基づいて、ハイブリッド車両1と電力システム50との全体の省エネルギ化を達成するように、最適なバッテリー4の帰庫時期蓄電残量に関するシミュレーションを実行し、その最適な帰庫時期蓄電残量を調整目標として決定することができる。
【0063】
更に、この調達指令送信手段55は、ハイブリッド車両1の出庫前に実行する初期指令処理と、ハイブリッド車両1が出庫してから車庫67に戻るまでの走行時間帯に実行する再指令処理とを、実行可能に構成されている。
上記初期指令処理は、図2も参照して、ハイブリッド車両1が車庫67に停車している出庫直前に、その時点での電力需給情報に基づいて帰庫時期蓄電残量の調整目標を決定し、通信装置58を介した電力線通信又は無線通信により当該決定した帰庫時期蓄電残量の調整目標に関する調整指令をハイブリッド車両1の指令受付手段8に送信する処理である。よって、ハイブリッド車両1の指令受付手段8は、この調整指令送信手段55の初期指令処理による調整指令の受信に伴って、上述したように蓄電残量調整手段9で用いる調整目標を登録する調整目標登録処理を実行することになる。
【0064】
一方、上記再指令処理は、図3も参照して、ハイブリッド車両1が車庫67にない走行時間帯に、その時点での電力需給情報の変更に基づいて帰庫時期蓄電残量の調整目標を更新し、通信装置58を介した無線通信により当該更新した帰庫時期蓄電残量の調整目標に関する調整指令をハイブリッド車両1の指令受付手段8に送信する処理である。よって、ハイブリッド車両1の指令受付手段8は、この調整指令送信手段55の再期指令処理による調整指令の受信に伴って、上述したように蓄電残量調整手段9で用いる調整目標を更新する調整目標更新処理を実行することになる。尚、この再指令処理での調整指令の送受信は、電力システム50の車両接続部51がハイブリッド車両1の外部接続部5に接続されていない状態である出庫後に実行されることから、無線通信で行う必要がある。
【0065】
そして、上記のように調整指令送信手段55による初期指令処理及び再指令処理を実行することで、ハイブリッド車両1の上記蓄電残量調整手段9に対して、バッテリー4の帰庫時期蓄電残量が常に全体の省エネルギ化を達成し得る調整目標となるように、バッテリー4の蓄放電状態を制御させることができる。
【0066】
例えば、電力システム50において、電力需給管理手段56は、インターネット等から入手した気象情報から当日の天気が晴天であると認識し太陽光発電システム62による発電量が多くなると予測される場合、コージェネ用燃料Gbの価格が比較的高い場合、電力システム50側で電力が余剰となると予測される場合などにおいては、電力システム50で電力を調達するのにかかる施設電力調達コストがハイブリッド車両1で車両用燃料Gaを消費して発電する発電するのにかかる車両発電コストに対して比較的安くなると予測することになる。よって、当該電力需給管理手段56は、全体の省エネルギ化を実現するべく、電力システム50側での電力調達量ができるだけ多くなるように、ハイブリッド車両1が帰庫した際に、車両充放電手段52により車両充電作動を行うことを計画する。
すると、電力システム50の調整指令送信手段55は、当該バッテリー4の帰庫時期蓄電残量の調整目標を少なめの下限蓄電残量に決定し、そのハイブリッド車両1の蓄電残量調整手段9に調整目標を当該下限蓄電残量に設定させるための調整指令をハイブリッド車両1の指令受付手段8に送信する。
これにより、ハイブリッド車両1の蓄電残量調整手段9は、上記指令受付手段8で受信した調整指令に従って、下限蓄電帰庫モードでバッテリー4の帰庫時期蓄電残量を少なめの下限蓄電残量にできるだけ近くなるように調整することになる。
よって、このハイブリッド車両1が帰庫した際には、上記電力システムの車両充放電手段52が車両充電作動を行うことにより、比較的安価な電力を電力システム50からハイブリッド車両1のバッテリー4にできるだけ多く供給して蓄電させることができ、次回のハイブリッド車両1の走行時間帯においては、その安価な電力を利用してハイブリッド車両1を走行させることができる。
【0067】
一方、電力システム50において、電力需給管理手段56は、インターネット等から入手した気象情報から当日の天気がくもり又は雨であると認識し太陽光発電システム62による発電量が少なくなると予測される場合、コージェネ用燃料Gbの価格が比較的安い場合、電力システム50側で電力が不足となると予測される場合などにおいては、電力システム50で電力を調達するのにかかる施設電力調達コストがハイブリッド車両1で車両用燃料Gaを消費して発電する発電するのにかかる車両発電コストに対して比較的高くなると予測することになる。よって、当該電力需給管理手段56は、全体の省エネルギ化を実現するべく、電力システム50側での電力調達量ができるだけ少なくなるように、ハイブリッド車両1が帰庫した際に、車両充放電手段52により車両放電作動を行うことを計画する。
すると、電力システム50の調整指令送信手段55は、当該バッテリー4の帰庫時期蓄電残量の調整目標を多めの上限蓄電残量に決定し、そのハイブリッド車両1の蓄電残量調整手段9に調整目標を当該上限蓄電残量に設定させるための調整指令をハイブリッド車両1の指令受付手段8に送信する。
これにより、ハイブリッド車両1の蓄電残量調整手段9は、上記指令受付手段8で受信した調整指令に従って、上限蓄電帰庫モードでバッテリー4の帰庫時期蓄電残量を多めの上限蓄電残量にできるだけ近くなるように調整することになる。
よって、このハイブリッド車両1が帰庫した際には、上記電力システムの車両充放電手段52が車両放電作動を行うことにより、比較的安価な電力をハイブリッド車両1のバッテリー4から電力システム50にできるだけ多く供給して、電力負荷60に供給することができる。
【0068】
〔別実施形態〕
上記実施形態では、本発明に係る車両をハイブリッド車両1とした例を説明したが、別に、図4に示すような車両を燃料電池車両1’としても構わない。
即ち、この燃料電池車両1’は、車両用燃料Gaを利用して発電する発電部として、車両用燃料Gaと空気とを電気化学反応させて電力を出力する燃料電池72が設けられており、更に、少なくとも電力を利用して走行動力を出力する電力駆動部として、上記燃料電池72の出力電力やバッテリー4の放電電力を消費して軸動力を出力するモータ71と、そのモータ71の軸出力を車輪15に伝達して走行する走行駆動機構16とが設けられている点で、上記ハイブリッド車両1と相違する。
また、この燃料電池車両1’は、上記実施形態のハイブリッド車両1と同様に、蓄電残量調整手段9等の特徴構成を備えることから、当該車両1’のみならず施設側も含めた全体の省エネルギ化を達成し得るものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係る発電部と蓄放電部と電力駆動部とを備えた車両、及び、車両が入出庫する車庫を有する施設側の電力システムは、電力システムから車両に対して、蓄放電部に蓄電させる車両充電作動、車両の蓄放電部に放電させる車両放電作動の少なくとも一方を実行するにあたり、車両のみならず施設側も含めた全体の省エネルギ化を達成し得るものとして有効に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本実施形態における車両と電力システムの概略構成図
【図2】電力システムの車両接続部を車両の外部接続部に接続している状態における各種処理フロー図
【図3】車庫から出庫した車両が走行している走行時間帯における各種処理フロー図
【図4】別実施形態における車両の概略構成図
【符号の説明】
【0071】
1:ハイブリッド車両(車両)
1’:燃料電池車両(車両)
2:エンジン(発電部)
3m:モータ(電力駆動部)
3g:ジェネレータ(発電部)
4:バッテリー(蓄放電部)
5:外部接続部
7:走行予定情報受付手段
8:指令受付手段
9:蓄電残量調整手段
10:ナビゲーション装置
11,58:通信装置(通信手段)
16:走行駆動機構(電力駆動部)
50:電力システム
51:車両接続部
52:車両充放電手段
54:走行予定情報送信手段
55:調整指令送信手段
56:電力需給管理手段
66:無線通信ネットワーク
67:車庫
71:モータ(電力駆動部)
72:燃料電池(発電部)
Ga:車両用燃料
Gb:コージェネ用燃料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を利用して発電する発電部と、蓄放電可能な蓄放電部と、少なくとも電力を利用して走行動力を出力する電力駆動部と、外部に設置された電力システムに対して電気的に接続可能な外部接続部とを備え、前記蓄放電部が前記外部接続部に対して電力を蓄放電可能に構成されている車両であって、
走行時間帯における前記蓄放電部の蓄放電状態を制御して、帰庫時期における前記蓄放電部の蓄電残量である帰庫時期蓄電残量を調整可能な蓄電残量調整手段を備えた車両。
【請求項2】
前記蓄電残量調整手段が、前記帰庫時期蓄電残量を上限蓄電残量に調整する上限蓄電帰庫モードと前記帰庫時期蓄電残量を前記上限蓄電残量よりも少ない下限蓄電残量に調整する下限蓄電帰庫モードとを択一的に切り換える蓄電帰庫モード切換処理を実行する形態で、前記帰庫時期蓄電残量を調整するように構成されている請求項1に記載の車両。
【請求項3】
走行予定に関する走行予定情報の入力を受け付ける走行予定情報受付手段を備えると共に、
前記蓄電残量調整手段が、前記走行予定情報に基づいて走行時間帯における前記蓄放電部の蓄放電状態を制御して、前記帰庫時期蓄電残量を調整するように構成されている請求項1又は2に記載の車両。
【請求項4】
前記走行予定情報受付手段が、前記走行予定情報として、走行時間帯又は走行距離に関する情報の入力を受け付ける請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記走行予定情報受付手段が、ナビゲーション装置の入出力情報に基づいて前記蓄電残量調整手段で用いる前記走行予定情報を更新する走行予定情報更新処理を実行する請求項3又は4に記載の車両。
【請求項6】
前記電力システムとの間で通信可能な通信手段を備えると共に、
前記通信手段を介して前記電力システムから受信した調整指令に従って、前記蓄電残量調整手段で用いる前記帰庫時期蓄電残量の調整目標を決定する指令受付手段を備えた請求項1〜5の何れか一項に記載の車両。
【請求項7】
前記通信手段が、無線通信ネットワークを介して前記電力システムとの間で通信可能に構成され、
前記指令受付手段が、走行時間帯に前記電力システムから受信した調整指令に従って前記帰庫時期蓄電残量の調整目標を更新する調整目標更新処理を実行する請求項6に記載の車両。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の車両が入出庫する車庫を有する施設側に設置され、前記車両の外部接続部に対して電気的に接続可能な車両接続部を備えて、前記車両接続部を介して前記車両の蓄放電部に電力を供給して当該蓄放電部に蓄電させる車両充電作動、及び、前記車両の蓄放電部に放電させて前記車両接続部を介して当該蓄放電部から電力を取り出す車両放電作動の少なくとも一方を実行可能な車両充放電手段を備えた電力システム。
【請求項9】
前記車両との間で通信可能な通信手段を備え、
前記車両が、走行予定に関する走行予定情報の入力を受け付ける走行予定情報受付手段を備えると共に、前記蓄電残量調整手段が、前記走行予定情報に基づいて走行時間帯における前記蓄放電部の蓄放電状態して、前記帰庫時期蓄電残量を調整するように構成されている場合において、
前記走行予定情報を取得して、出庫前に前記通信手段を介して前記走行予定情報を前記走行予定情報受付手段へ送信可能な走行予定情報送信手段を備えた請求項8に記載の電力システム。
【請求項10】
前記車両との間で通信可能な通信手段を備え、
前記通信手段を介して前記電力システムから受信した調整指令に従って、前記蓄電残量調整手段で用いる前記帰庫時期蓄電残量の調整目標を決定する指令受付手段を備えて構成されている場合において、
前記電力システムで調達可能な電力に関する電力需給情報に基づいて、前記車両の蓄電残量調整手段で用いる帰庫時期蓄電残量の調整目標を決定し、前記通信手段を介して当該決定した帰庫時期蓄電残量の調整目標に関する調整指令を前記車両に送信可能な調整指令送信手段を備えた請求項8又は9に記載の電力システム。
【請求項11】
前記通信手段が、無線通信ネットワークを介して前記車両との間で通信可能に構成され、
前記車両の指令受付手段が、走行時間帯に前記電力システムから受信した調整指令に従って前記帰庫時期蓄電残量の調整目標を更新する調整目標更新処理を実行するように構成されている場合において、
前記調整指令送信手段が、前記車両の走行時間帯における電力需給情報の変更に基づいて前記帰庫時期蓄電残量の調整目標を更新し、前記通信手段を介して当該更新した帰庫時期蓄電残量の調整目標に関する調整指令を前記車両に送信する再指令処理を実行可能に構成されている請求項10に記載の電力システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−245416(P2008−245416A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81576(P2007−81576)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】