説明

車両のパワートレイン配設構造

【課題】排気管の取り廻しが最短となり、排気効率の向上を図り、かつ、エンジンルームの前後方向のスペースの短縮を図ることも可能な車両のパワートレイン配設構造を提供する。
【解決手段】車室2とエンジンルーム2とを仕切るダッシュパネル3を設け、ダッシュパネル3の凹部内に車輪を駆動するパワートレイン20を設け、パワートレイン20は、縦置きエンジン21と、その後方に接続したトランスミッション22とから成り、エンジン21の前側には排気管31に接続したキャタリスト32を設け、キャタリスト32を上下方向に向けて配設したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車室とエンジンルームとを仕切るダッシュパネルが設けられ、該ダッシュパネルに設けられた凹部内に車輪を駆動するパワートレインが設けられたような車両のパワートレイン配設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述例の車両のパワートレイン配設構造としては、図5、図6、図7に示す構造がある。
すなわち、エンジンルーム81と車室82とを前後方向に仕切るダッシュパネルとしてのダッシュロアパネル83を設け、このダッシュロアパネル83の後端部にはフロアパネル84を接続すると共に、このフロアパネル84には車室内方へ突出して、車両の前後方向に延びるトンネル部85が形成されている。
【0003】
上述のエンジンルーム81内およびトンネル部85の車外側には、エンジン86とトランスミッション87とから成るパワートレイン88を配設するが、ヨー慣性モーメントを低減して走行安全性を向上させる目的で、上記ダッシュロアパネル83の車幅方向中央部には車両後方に凹入する凹部83aを形成し、エンジン86の後部を、この凹部83a内に設けている。
また、上記凹部83aを設けることにより、エンジン86を後退配置して、エンジンルーム81のコンパクト化と、フロントノーズの短縮とを図ることができる。
【0004】
この車両の駆動方式は前部機関後輪駆動タイプ(いわゆるFRタイプ)に構成されていて、縦置きに配置した上記パワートレイン88により、図示しない後輪を駆動するように構成している。
さらに、エンジン86の排気系には、排気ガスを浄化するキャタリスト89を設けるが、図5、図6、図7に示すこの従来構造においては、該キャタリスト89がフロントシート90(図7参照)の下方におけるトンネル部85の上方膨出部85aの車外側に設けられている。
【0005】
このキャタリスト89は排気温により早期に活性化する必要があるので、可及的エンジン86に近い上述のフロアパネル84の下部に設けられているため、次のような問題点があった。
つまり、フロア下方へのキャタリスト89の配置により、フロントシート90に着座する乗員のヒップポイントが必然的に上方位置になり、空力抵抗の関係上、ルーフ91の位置は下方に下げることが望ましいが、キャタリスト89が存在するので、ルーフ91の位置を下げることが不可能となる。
【0006】
また、キャタリスト89は反応時に発熱するので、乗員に熱害が及ぶ問題点があり、この熱害を防止するため、図7のキャタリスト89とトンネル部85の上方膨出部85aとの間にインシュレータなどを介設すると、さらにヒップポイントが上がる問題点があった。
なお、図中、92は前輪、93は熱交換器としてのラジエータ、94はサスクロスメンバ、95はダッシュロアパネル83より左右一対が車幅方向に離間して前方に延びるフロントサイドフレーム、96はバンパレイン、97はカウル部、98はボンネット、99はフロントウインドガラスである。
【0007】
一方、特許文献1には、ダッシュロアパネルの凹部にエンジンの後側一部を配設する一方、排気管を一旦エンジンの前方に取り回し、このエンジンの前方において車幅方向に延びるようにキャタリストを配設した構造が開示されている。
この特許文献1に開示された構造によれば、キャタリストをエンジンルーム内に設けているので、ヒップポイントの上昇が防止できて、車体の全高を低くすることができると共に、キャタリストによる車室内への熱害防止を図ることができるという利点がある反面、上述のキャタリストをエンジン前方に車幅方向に向けて配設している関係上、キャタリスト上流およびキャタリスト下流の排気管の取り廻し長さが長くなって、排気効率の向上が阻害されるという問題点があった。
【特許文献1】特開2003−326981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、ダッシュパネルに設けられた凹部内に車輪を駆動するパワートレインが設けられ、該パワートレインは縦置きエンジンと、その後方に接続されたトランスミッションとから成り、上記エンジンの前側には排気管に接続されたキャタリストが設けられ、このキャタリストを上下方向に向けて配設することで、パワートレインの後方シフト配置と、キャタリストのレイアウトとを両立させることができるのは勿論のこと、排気管の取り廻しが最短となって、排気効率の向上を図ることができ、またキャタリストを上下方向に向けて配設することにより、エンジンルームの前後方向のスペースの短縮を図ることも可能となる車両のパワートレイン配設構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による車両のパワートレイン配設構造は、車室とエンジンルームとを仕切るダッシュパネルが設けられ、該ダッシュパネルに設けられた凹部内に車輪を駆動するパワートレインが設けられた車両のパワートレイン配設構造であって、上記パワートレインは、縦置きエンジンと、その後方に接続されたトランスミッションとから成り、上記エンジンの前側には排気管に接続されたキャタリストが設けられ、上記キャタリストは上下方向に向けて配設されたものである。
上記構成によれば、ダッシュパネルの凹部内にパワートレインを設けるので、パワートレインの後方シフト配置ができ、ヨー慣性モーメントの低減と、フロントノーズの短縮とを図ることができる。
【0010】
また、上記キャタリストはフロア下方に存在しないので、車室内への熱害防止を図ることができ、かつ、ヒップポイントが上がることがないため、空力性能向上に対応してルーフを下げることも可能となる。
つまり、パワートレインの後方シフト配置と、キャタリストのレイアウトとを両立させることができる。
しかも、上記キャタリストを上下方向に向けて配設したので、排気管の取り廻しが最短となって、排気効率の向上を図ることができると共に、キャタリストの縦置き構造により、エンジンルームの前後方向のスペースの短縮を図ることも可能となる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記エンジンの側方にはエキゾーストマニホールドが設けられ、該エキゾーストマニホールドに近接した前方に上記キャタリストを配設したものである。
上記構成によれば、キャタリストをエキゾーストマニホールドに近接配置したので、排気経路が最短となり、排気効率のさらなる向上を図ることができるうえ、キャタリストの早期活性化を図ることができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記キャタリストは上記エキゾーストマニホールドと一体に設けられたものである。
上記構成によれば、エキゾーストマニホールドが最短に形成され、エンジン全体をコンパクトに構成できて、車両衝突時のクラッシュスペースを確保することができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記エンジンの前方には熱交換器と、該熱交換器を冷却する冷却ファンとが設けられ、上記キャタリストは上記冷却ファン後方で、かつ該冷却ファンと正面視でオーバラップする位置に配設されたものである。
上記構成によれば、キャタリストと冷却ファンとのオーバラップ構造により、冷却ファンの配風でキャタリストを冷却することができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記キャタリストは、上記熱交換器に対して車幅方向にオフセットして配設されたものである。
上記構成によれば、キャタリストのオフセット構成により、冷却ファンの配風によるキャタリストの冷却性を確保しつつ、エンジンの冷却も阻害しないので、エンジンの冷却性能に悪影響を与えることがない。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記エキゾーストマニホールドはエンジンの排気ポートから下方に延び、該エキゾーストマニホールドの下流に上記キャタリストの下部が接続され、該キャタリストの上部に接続された排気通路が後方に延びるように配設されたものである。
上記構成によれば、最短経路にて排気できるので、排気効率をより一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、ダッシュパネルに設けられた凹部内に車輪を駆動するパワートレインが設けられ、該パワートレインは縦置きエンジンと、その後方に接続されたトランスミッションとから成り、上記エンジンの前側には排気管に接続されたキャタリストが設けられ、このキャタリストを上下方向に向けて配設したので、パワートレインの後方シフト配置と、キャタリストのレイアウトとを両立させることができるのは勿論のこと、排気管の取り廻しが最短となって、排気効率の向上を図ることができ、またキャタリストを上下方向に向けて配設することで、エンジンルームの前後方向のスペースの短縮を図ることも可能となる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
排気管の取り廻しが最短となって、排気効率の向上を図るという目的を、車室とエンジンルームとを仕切るダッシュパネルが設けられ、該ダッシュパネルに設けられた凹部内に車輪を駆動するパワートレインが設けられた車両のパワートレイン配設構造において、上記パワートレインは、縦置きエンジンと、その後方に接続されたトランスミッションとから成り、上記エンジンの前側に、排気管に接続されたキャタリストを設け、上記キャタリストを上下方向に向けて配設するという構成にて実現した。
【実施例】
【0018】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両のパワートレイン配設構造を示し、側面図で示す図1、平面図で示す図2、正面図で示す図3において、エンジンルーム1と車室2とを前後方向に仕切るダッシュパネルとしてのダッシュロアパネル3を設けている。このダッシュロアパネル3は車室2の前部を仕切るパネルである。
【0019】
上述のダッシュロアパネル3の下部後端部には、図1に示すようにフロアパネル4を、一体または一体的に接続すると共に、このフロアパネル4には車室内方
へ突出して、車両の前後方向に延びるトンネル部5を形成している。このトンネル部5は車体剛性の中心となるもので、トンネル開口部の前部はエンジンルーム1と連通している。
【0020】
図2に示すように、上述のフロアパネル4の左右両サイドには、車両の前後方向に延びるサイドシル6,6を接合固定している。
このサイドシル6は、サイドシルインナ7とサイドシルアウタ8とを接合して、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面を備えた車体剛性部材である。
【0021】
また、図2に示すように、上述のダッシュロアパネル3の車幅方向中央部には車両後方に凹入する凹部3aを形成する一方、図1に示すように、上述のダッシュロアパネル3の上端部には、車幅方向に延びるダッシュアッパパネル9を接合固定し、このダッシュアッパパネル9の上部にはカウルパネル10を取付けて、車幅方向に延びるカウル閉断面11を備えたカウル部12を構成している。
【0022】
さらに、上述の車室2の前方には、フロントウインドガラス13が設けられ、このフロントウインドガラス13の上部はルーフ14前部のフロントヘッダで支持され、フロントウインドガラス13の左右両側部は、左右のフロントピラー15,15(図3参照)で支持され、フロントウインドガラス13の下部は、上述のカウルパネル10で支持されている。
【0023】
図2に示すように、ダッシュロアパネル3より左右一対が車幅方向に離間して前方に延びる左右一対のフロントサイドフレーム16,16を設け、これら左右の各フロントサイドフレーム16,16の前端相互間には、バンパレイン17を車幅方向に向けて取付けている。
ここで、上述のフロントサイドフレーム16は、フロントサイドフレームインナとフロントサイドフレームアウタとを接合固定して、車両の前後方向に延びる閉断面を備えた車体剛性部材である。
【0024】
また、図1に示すように、エンジンルーム1の上面部には、ボンネット18が開閉可能に設置されており、このボンネット18前端部下方には、走行風取入用の開口部を備えたフロントグリル19が配設されている。
【0025】
図1、図2に示すように、エンジンルーム1内およびトンネル部5の車外側には、図示しない後輪を駆動するパワートレイン20が設けられており、前部機関後輪駆動(いわゆるFR)タイプの車両を構成している。
上述のパワートレイン20は、縦置きエンジン21と、その後方に接続されたトランスミッション22とを備え、上記エンジン21の後部を上記凹部3a内に配設することにより、重量物としてのエンジン21乃至パワートレイン20の後退レイアウトを達成して、ヨー慣性モーメントの低減を図って、走行安全性を確保すると共に、エンジンルーム1のコンパクト化と、フロントノーズの短縮とを図るように構成している。
【0026】
ここで、上述のエンジン21は、フロントサイドハウジング23,フロントロータハウジング24、インタミディエイトサイドハウジング25、リヤロータハウジング26、リヤサイドハウジング27を備えたロータリエンジンで構成され、各ロータハウジング24,26内を回転するロータの回転力を、エキセントリックシャフトに伝達して出力するものである。
【0027】
図2に示すように、トランスミッション22にはプロペラシャフト28が接続されていて、トランスミッション22の出力を該プロペラシャフト28を介して、図示しないリヤディファレンシャル装置に伝達し、このリヤディファレンシャル装置の差動出力を、リヤアクスルシャフトを介して左右の後輪に伝達すべく構成している。
また、上述のリヤディファレンシャル装置のワインドアップ振動を抑制すると共に、パワートレイン20からのロール方向の動きを許容する目的で、トランスミッション22のミッションケースと、リヤディファレンシャル装置のデフケースとの間には、車両の前後方向に延びるパワープラントフレーム29(いわゆるPPF)が取付けられており、このパワープラントフレーム29および上述のプロペラシャフト28は図2に示すように、トンネル部5内に配設されている。
【0028】
図1、図2に示すように、エンジン21の右側の側方には排気ポート30,30に連通するエキゾーストマニホールド31が設けられている。このエキゾーストマニホールド31は図1、図3に示すように、エンジン21の排気ポート30,30から下方に延びた後に、エンジン21の右側前方に延びている。
一方、排気ガス浄化用のキャタリスト32を、上記エンジン21の右側前方のデッドスペースに設けている。このキャタリスト32は上下方向に向けて配設され、所謂縦置きキャタリストと成している。
【0029】
そして、上述のエキゾーストマニホールド31の下流端31aを、縦置き配置したキャタリスト32の下部に接続することで、エキゾーストマニホールド31に最も近接した前方位置に上記キャタリスト32を配設したものである。
しかも、この実施例では、上記キャタリスト32は上述のエキゾーストマニホールド31と一体に設けられている。また、上述の縦置き配置したキャタリスト32の上部には、排気通路としてのエキゾーストパイプ33の上流端33aを接続し、このエキゾーストパイプ33を後方に延びるように配設すると共に、このエキゾーストパイプの過半部は、図1、図2に示すように上述のトンネル部5の車外側に配置されている。
【0030】
実施例で示すように、エンジン21としてロータリエンジンを用いると、各ロータハウジング24,26に形成される排気ポート30,30は、ロータの回転中心よりも下方に形成されるので、エンジン21の前方に位置する縦置きキャタリスト32に対して、上記構成のエキゾーストマニホールド31およびエキゾーストパイプ33を採用することで、排気経路の取り廻しを最短と成すことができる。
また、上述のキャタリスト32をエンジン21の前側で、しかも、上下方向に向けて配設することにより、エンジンルーム1内においてキャタリスト32が占める前後方向および車幅方向の占有スペースは、キャタリスト32の外径と等しくなり、その占有スペースの最小化を図ることができるので、エンジンルーム1の前後方向スペースの短縮を図ることが可能となる。
【0031】
さらに、上述のエンジン21の前方には熱交換器としてのラジエータ40と、このラジエータ40を冷却する冷却ファンとしてのクーリングファン41とを設けている。上述のラジエータ40は、アッパタンク、ロアタンクと、これら上下の各タンク間に介設されたウオータチューブおよびコルゲートフィンを備え、エンジン冷却水(クーラントを含む)を走行風で冷却(熱交換)する熱交換器であって、この実施例では、図1に示すようにラジエータ40を略垂直方向に向けて配設すると共に、該ラジエータ40およびクーリングファン41はラジエータユニットとして一体化している。
【0032】
図3に正面図で示すように、上記キャタリスト32はクーリングファン41の後方で、かつ該クーリングファン41と正面視でオーバラップする位置に配設されており、このオーバラップ構造によりクーリングファン41の配風でキャタリスト32を冷却すべく構成している。
【0033】
また、図2に平面図で示すように、上述のキャタリスト32は、ラジエータ40に対して車幅方向にオフセットして配設されており、このオフセット構成により、クーリングファン41の配風によるキャタリスト32の冷却性を確保しつつ、エンジン21の冷却を阻害しないように構成している。
さらに、図2に平面図で、図3に正面図でそれぞれ示すように、上述のキャタリスト32は正面視でエンジン21とオーバラップしないように配設されており、クーリングファン41の起風でエンジン21を確実に冷却することができるように構成している。
【0034】
さらにまた、この実施例のキャタリスト32は図1に示す側面視において、エンジン21とオーバラップしないように配設されている。換言すれば、キャタリスト32はエンジン21の前方にオフセットして配設されている。このため、キャタリストとエンジンとが側面視においてオーバラップする構造と比較して、エンジン21への熱害を可及的防止することができると共に、キャタリスト32がエンジン21前方へオフセットしている分、車室2への熱害をより一層良好に防止することができる。
【0035】
一方、図3に示すように、左右一対のフロントサイドフレーム16,16の下部には、サスペンションクロスメンバ50を取付け、このサスペンションクロスメンバ50にはサスペンションアームとしてのアッパアーム51およびロアアーム52を揺動可能に設け、これら上下の各アーム51,52で左右の前輪53,53をそれぞれ支持している。
【0036】
また、図1〜図3に示すように、左右一対のフロントサイドフレーム16,16間には、車幅方向に延びる閉断面構造のフロントクロスメンバ54(いわゆるNo.1.5クロスメンバ)を横架して、前部車体剛性の向上を図っている。
【0037】
さらに、図1に示すように、上述のフロントサイドフレーム16の後部にはキックアップ部16Kを一体形成し、このキックアップ部16Kをダッシュロアパネル3の前面に沿設すると共に、フロントサイドフレーム16の下部後端をフロアパネル4の下部に延出して、この延出部には、図2に平面図で示すように、フロアフレーム55がフロントサイドフレーム16と前後方向に略一直線状に連続するように設けられている。
上記構成において、車両の走行時には、フロントグリル19の開口部からエンジンルーム1内に流入する走行風によりラジエータ40内のエンジン冷却水を冷却することができ、またクーリングファン41の配風はその後方に位置するエンジン21およびキャタリスト32に案内されるので、これら両者21,32を冷却することができる。
【0038】
このように、図1〜図3で示した実施例の車両のパワートレイン配設構造は、車室2とエンジンルーム1とを仕切るダッシュロアパネル3が設けられ、該ダッシュロアパネル3に設けられた凹部3a内に車輪(後輪参照)を駆動するパワートレイン20が設けられた車両のパワートレイン配設構造であって、上記パワートレイン21は、縦置きエンジン21と、その後方に接続されたトランスミッション22とから成り、上記エンジン21の前側には排気管(エキゾーストマニホールド31参照)に接続されたキャタリスト32が設けられ、上記キャタリスト32は上下方向に向けて配設されたものである(図1、図2参照)。
この構成によれば、ダッシュロアパネル3の凹部3a内にパワートレイン20を設けるので、パワートレイン20の後方シフト配置ができ、ヨー慣性モーメントの低減と、フロントノーズの短縮とを図ることができる。
【0039】
また、上記キャタリスト32はフロア下方に存在しないので、車室2内への熱害防止を図ることができ、かつ、ヒップポイントが上がることがないため、空力性能向上に対応してルーフを下げることも可能となる。
つまり、パワートレイン20の後方シフト配置と、キャタリスト32のレイアウトとを両立させることができる。
しかも、上記キャタリスト32を上下方向に向けて配設したので、キャタリスト32上流およびキャタリスト32下流の排気管(エキゾーストマニホールド31,エキゾーストパイプ33参照)の取り廻しが最短となって、排気効率の向上を図ることができると共に、キャタリスト32の縦置き構造により、エンジンルーム1の前後方向のスペースの短縮を図ることも可能となる。
【0040】
また、上記エンジン21の側方にはエキゾーストマニホールド31が設けられ、該エキゾーストマニホールド31に近接した前方に上記キャタリスト32を配設したものである(図2参照)。
この構成によれば、キャタリスト32をエキゾーストマニホールド31に近接配置したので、排気経路が最短となり、排気効率のさらなる向上を図ることができるうえ、キャタリスト32がエンジン21の排気ポート30に近いため、エンジン21からの高温の排気ガスでキャタリスト32の早期活性化を図ることができる。
【0041】
さらに、上記キャタリスト32は上記エキゾーストマニホールド31と一体に設けられたものである(図1、図2参照)。
この構成によれば、エキゾーストマニホールド31が最短に形成され、エンジン全体をコンパクトに構成できて、車両衝突時のクラッシュスペースを確保することができる。
【0042】
加えて、上記エンジン21の前方には熱交換器(ラジエータ40参照)と、該熱交換器ラジエータ40を冷却する冷却ファン(クーリングファン41参照)とが設けられ、上記キャタリスト32は上記冷却ファン(クーリングファン41)後方で、かつ該冷却ファン(クーリングファン41)と正面視でオーバラップする位置に配設されたものである(図2、図3参照)。
この構成によれば、キャタリスト32と冷却ファン(クーリングファン41参照)とのオーバラップ構造により、冷却ファン(クーリングファン41)の配風でキャタリスト32を冷却することができる。
【0043】
さらに、上記キャタリスト32は、上記熱交換器(ラジエータ40)に対して車幅方向にオフセットして配設されたものである(図2参照)。
この構成によれば、キャタリスト32のオフセット構成により、冷却ファン(クーリングファン41参照)の配風によるキャタリスト32の冷却性を確保しつつ、エンジン21の冷却も阻害しないので、エンジン21の冷却性能に悪影響を与えることがない。
【0044】
さらに、上記エキゾーストマニホールド31はエンジン21の排気ポート30から下方に延び、該エキゾーストマニホールド31の下流に上記キャタリスト32の下部が接続され、該キャタリスト32の上部に接続された排気通路(エキゾーストパイプ33参照)が後方に延びるように配設されたものである(図1参照)。
この構成によれば、最短経路にて排気できるので、排気効率をより一層向上させることができる。
【0045】
図4は車両のパワートレイン配設構造の他の実施例を示し、この図4に示すこの実施例は、図1〜図3で示した先の実施例の構成に加えて、ラジエータ40、クーリングファン41の後部と、キャタリスト32の車幅方向内側の側部との間に、略前後方向で延びて走行風案内手段と隔壁部材とを兼ねる仕切り部材60を設けたものである。
この仕切り部材60は、その後端に対してその前端が若干車幅方向内方に位置するようにスラント配置されており、走行風をキャタリスト32に確実に案内するように構成している。この仕切り部材60は、フロントクロスメンバ54とサスペンションクロスメンバ50とで、その上下を支持することができる。
【0046】
このように構成すると、走行風によるキャタリスト32の冷却性能の向上を図ることができると共に、キャタリスト32の熱害がエンジン21に悪影響を及ぼすのを可及的防止することができ、さらには、オルタネータやスタータモータなどのエンジン補機61に対してキャタリスト32の熱害が及ぶのを確実に防止することができる。
図4で示したこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については、図1〜図3で示した先の実施例と同一であるから、図4において前図(特に、図2)と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0047】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のダッシュパネルは、実施例のダッシュロアパネル3に対応し、
以下同様に、
排気管は、エキゾーストマニホールド31に対応し、
排気通路は、エキゾーストパイプ33に対応し、
熱交換器は、ラジエータ40に対応し、
冷却ファンは、クーリングファン41に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、上記実施例においては、縦置きエンジンとして、2ロータ構造のロータリエンジンを例示したが、これは3ロータ構造のロータリエンジンであってもよく、また他のエンジンであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の車両のパワートレイン配設構造を示す側面図
【図2】図1の要部の平面図
【図3】図1の要部の正面図
【図4】車両のパワートレイン配設構造の他の実施例を示す平面図
【図5】従来の車両のパワートレイン配設構造を示す側面図
【図6】図5の要部の平面図
【図7】図5の要部の正面図
【符号の説明】
【0049】
1…エンジンルーム
2…車室
3…ダッシュロアパネル(ダッシュパネル)
3a…凹部
20…パワートレイン
21…エンジン
22…トランスミッション
30…排気ポート
31…エキゾーストマニホールド(排気管)
32…キャタリスト
33…エキゾーストパイプ(排気通路)
40…ラジエータ(熱交換器)
41…クーリングファン(冷却ファン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室とエンジンルームとを仕切るダッシュパネルが設けられ、該ダッシュパネルに設けられた凹部内に車輪を駆動するパワートレインが設けられた車両のパワートレイン配設構造であって、
上記パワートレインは、縦置きエンジンと、その後方に接続されたトランスミッションとから成り、
上記エンジンの前側には排気管に接続されたキャタリストが設けられ、
上記キャタリストは上下方向に向けて配設された
車両のパワートレイン配設構造。
【請求項2】
上記エンジンの側方にはエキゾーストマニホールドが設けられ、該エキゾーストマニホールドに近接した前方に上記キャタリストを配設した
請求項1記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項3】
上記キャタリストは上記エキゾーストマニホールドと一体に設けられた
請求項2記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項4】
上記エンジンの前方には熱交換器と、該熱交換器を冷却する冷却ファンとが設けられ、
上記キャタリストは上記冷却ファン後方で、かつ該冷却ファンと正面視でオーバラップする位置に配設された
請求項1〜3の何れか1に記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項5】
上記キャタリストは、上記熱交換器に対して車幅方向にオフセットして配設された
請求項4記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項6】
上記エキゾーストマニホールドはエンジンの排気ポートから下方に延び、該エキゾーストマニホールドの下流に
上記キャタリストの下部が接続され、該キャタリストの上部に接続された排気通路が後方に延びるように配設された
請求項2〜5の何れか1に記載の車両のパワートレイン配設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−227190(P2009−227190A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77251(P2008−77251)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】