説明

車両の制御装置

【課題】変速ショックを低減し、さらに変速時間を短縮して、滑らかでかつ速やかな変速を実行することができ、ひいては燃費の向上に寄与することが可能な車両の制御装置を提供する。
【解決手段】圧縮比を変更して制御可能な内燃機関と、該内燃機関の出力側に連結された自動変速機とを備え、前記内燃機関と前記自動変速機とを協調制御する車両の制御装置において、前記自動変速機の変速比もしくは運転状態を制御する変速制御に対応させて前記圧縮比を変更する圧縮比協調制御手段(ステップS13,S16,S17,S20)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、動力源としての内燃機関とその出力側に連結された自動変速機とを協調させて制御する車両の制御装置に関し、特に自動変速機の挙動に関連して内燃機関の圧縮比を制御する制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンなどの内燃機関を動力源とし、その内燃機関の出力トルクを変速して駆動トルクを出力する自動変速機を搭載した車両において、その自動変速機における変速は、例えばエンジンを含む複数の回転要素の回転変化を伴うので、変速ショックを低減するために、それらの回転要素の慣性力を吸収してトルク変動を滑らかにする必要がある。すなわち、変速ショックを防止するためには、その変速の前後および変速中における急激な回転変動を防止する必要がある。このような変速ショックを低減する制御技術の一例が特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載されている内燃機関の変速制御装置は、吸気バルブの作動特性を変更可能な可変動弁機構を備えるとともに出力軸に変速機が接続された内燃機関において、変速要求が発生すると、吸気バルブの作動特性を変更して吸入空気量を減少させるとともに、吸気バルブの閉時期を下死点近傍として実圧縮比が高められた状態で、内燃機関の出力が低下する方向に変更する、すなわち内燃機関のトルクダウンを行うように構成されている。
【0003】
なお、特許文献2には、過給機を備えたエンジンの制御装置であって、過給機による過給圧を制御することにより燃料量に対する空気量を変化させて燃焼混合気の空燃比を制御するとともに、過給圧を目標のサージレベルに実際のサージレベルが近づくように制御する、特に、エンジンと組み合わされる自動変速機のトルクコンバータのロックアップ状態に応じて目標のサージレベルを変更するように構成された制御装置に関する発明が記載されている。
【0004】
また、特許文献3には、出力トルクに応じて圧縮比を切り換えて運転されるとともに、出力軸に対してトルクを授受可能に設けられた電動機を備えた内燃機関であって、内燃機関に要求されるトルクが圧縮比を切り換えるための閾値トルクを超える場合には、電動機から出力軸に対してトルクを出力することにより、内燃機関の出力トルクを閾値トルク以下に抑制するように構成された内燃機関およびその制御方法に関する発明が記載されている。
【0005】
また、特許文献4には、内燃機関の動力を所定の複数の変速比の1つによって変速する変速装置を備え、内燃機関の吸気弁と排気弁との少なくとも一方のバルブリフト、および吸気カムと排気カムとの少なくとも一方のカム位相、ならびに内燃機関の圧縮比の少なくとも1つを制御する車両の制御装置であって、特に、減速要求が発生した場合に、圧縮比を増加側に設定し、また、内燃機関の回転数が低いほど、圧縮比をより小さな値に設定する制御装置に関する発明が記載されている。
【0006】
そして、特許文献5には、エンジンの圧縮比を可変制御するエンジンの圧縮比制御装置であって、特に、エンジン運転中に使用されるガソリンのアルコール含有率を検出し、そのアルコール含有率が高いほどエンジンの圧縮比を高く設定する制御装置に関する発明が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開2008−14168号公報
【特許文献2】特開平11−117785号公報
【特許文献3】特開2004−232518号公報
【特許文献4】特開2006−83729号公報
【特許文献5】特開2008−111375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1に記載されている内燃機関の変速制御装置によれば、変速要求が発生した場合に、吸気バルブの作動角およびリフト量を減少して吸入空気量を減少させることにより内燃機関のトルクダウンを行うことができる。また、その際に、吸気バルブの閉時期が下死点近傍に設定されて内燃機関の実圧縮比が高められるため、内燃機関の安定した燃焼性を確保しつつ必要なトルクダウン量を得ることができる。
【0009】
そして、上記の特許文献1に記載されている内燃機関の変速制御装置は、特に、吸気バルブの作動特性の変更終了後に自動変速機の変速制御を開始する、すなわち内燃機関のトルクダウンが行われた後に自動変速機の変速制御が開始されるように構成されている。したがって、上記の変速制御装置では、変速時のショックを確実に軽減することができる。
【0010】
しかしながら、上記のようにトルクダウン後に変速を行うことにより、トルク変動による変速ショックを確実に軽減できる反面、トルクダウンを待って変速を実行することになるので、その変速に要する時間が長くなってしまう。そのため、例えばアップシフトの場合は、アップシフトが実行されることにより内燃機関の回転数が低下するのに時間がかかることになり、その結果、内燃機関の平均回転数が高くなって、その分だけ燃費が悪化してしまう可能性がある。このように、変速ショックを低減するための従来の自動変速機と内燃機関との協調制御においては、未だ改良の余地があった。
【0011】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、変速ショックを低減し、さらに変速時間を短縮して、滑らかでかつ速やかな変速を実行することができ、ひいては燃費の向上に寄与することが可能な車両の制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、圧縮比を変更して制御可能な内燃機関と、該内燃機関の出力側に連結された自動変速機とを備え、前記内燃機関と前記自動変速機とを協調制御する車両の制御装置において、前記自動変速機の変速比もしくは運転状態を制御する変速制御に対応させて前記圧縮比を変更する圧縮比協調制御手段を備えていることを特徴とする制御装置である。
【0013】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記圧縮比協調制御手段が、前記変速制御により前記変速比を変更する変速を実行する場合、遅くとも前記変速の開始時に、前記圧縮比を相対的に高くするとともに、前記変速の完了前に、前記圧縮比を相対的に低くする手段を含むことを特徴とする制御装置である。
【0014】
さらに、請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記圧縮比協調制御手段が、前記変速制御により前記変速比を増大するダウンシフトを実行する場合、遅くとも前記ダウンシフトの開始時に、前記圧縮比を相対的に高くすることにより前記内燃機関の出力トルクを増大させるとともに、前記ダウンシフトの完了前に、前記圧縮比を相対的に低くすることにより前記出力トルクを減少させる手段を含むことを特徴とする制御装置である。
【0015】
そして、請求項4の発明は、請求項2または3の発明において、前記車両の走行中に前記内燃機関への燃料の供給を休止するフューエルカットを実行するフューエルカット制御手段を更に備え、前記圧縮比協調制御手段が、前記変速制御により前記変速比を低減するアップシフトを実行する場合、遅くとも前記アップシフトの開始時に、前記フューエルカットを実行しかつ前記圧縮比を相対的に高くすることにより前記内燃機関の回転抵抗となるフリクショントルクを増大させるとともに、前記アップシフトの完了前に、前記フューエルカットを終了しかつ前記圧縮比を相対的に低くすることにより前記フリクショントルクを減少させる手段を含むことを特徴とする制御装置である。
【0016】
一方、請求項5の発明は、請求項1の発明において、前記自動変速機が、前記内燃機関との間に設けられたロックアップ機能付きの流体伝動装置を更に備え、前記圧縮比協調制御手段が、前記流体伝動装置がロックアップされた場合に、前記内燃機関の出力トルクが大きいほど、および前記内燃機関の回転数が低いほど、前記圧縮比を相対的に低くする手段を含むことを特徴とする制御装置である。
【0017】
また、請求項6の発明は、請求項1の発明において、前記車両の走行中に前記内燃機関への燃料の供給を休止するフューエルカットを実行するフューエルカット制御手段を更に備え、前記圧縮比協調制御手段が、前記フューエルカットが実行されている前記車両の減速走行時に、前記内燃機関および前記自動変速機が有する慣性トルクと前記自動変速機の変速比とに応じて前記車両に作用する内燃機関制動力が前記車両の走行状態に基づいて設定される要求制動力に対して不足する場合に、その不足分を補うように前記圧縮比を相対的に高くして前記内燃機関の回転抵抗となるフリクショントルクを増大させる手段を含むことを特徴とする制御装置である。
【0018】
さらに、請求項7の発明は、請求項6の発明において、前記内燃機関の出力トルクを動力源として駆動される補機を更に備え、前記圧縮比協調制御手段が、前記補機が駆動されて前記内燃機関制動力が前記要求制動力に対して超過する場合に、その超過分を相殺するように前記圧縮比を相対的に低くして前記フリクショントルクを減少させる手段を含むことを特徴とする制御装置である。
【0019】
そして、請求項8の発明は、請求項7の発明において、前記自動変速機が、前記内燃機関との間に設けられるとともに伝達トルク容量を変更して制御可能な流体伝動装置を更に備え、前記圧縮比協調制御手段が、前記補機が駆動されて前記内燃機関制動力が前記要求制動力に対して超過する場合に、その超過分を相殺するように、前記圧縮比を相対的に低くして前記フリクショントルクを減少させ、かつ前記流体伝動装置の伝達トルク容量を相対的に大きくして前記内燃機関の回転数を低下させる手段を含むことを特徴とする制御装置である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、例えばダウンシフトもしくはアップシフトのための自動変速機における変速比の制御、あるいは内燃機関と自動変速機との直結などの自動変速機の運転状態の制御等を含む自動変速機の変速制御を実行する場合に、その変速制御の内容に基づいて内燃機関の圧縮比が協調して制御される。そのため、変速制御の内容に応じて圧縮比を制御することにより内燃機関の出力トルクを適宜増減することができる。その結果、変速ショックの発生を抑制するとともに変速時間を短縮することができ、滑らかでかつ速やかな変速が可能になる。
【0021】
また、請求項2の発明によれば、変速を実行する場合に、その変速の開始に先行して、もしくは遅くともその変速の開始と同時に、内燃機関の圧縮比が相対的に高く設定される。そして、その変速が完了する前に、内燃機関の圧縮比が相対的に低く設定される。圧縮比を制御すること、あるいは圧縮比と内燃機関の他の運転状態とを組み合わせて制御することにより、内燃機関の出力トルクを増減することができる。したがって、上記のように変速の開始および終了のタイミングに協調させて、圧縮比を高低に適宜変更して制御することにより、変速ショックの発生を抑制するとともに変速時間を短縮することができ、滑らかでかつ速やかな変速が可能になる。
【0022】
さらに、請求項3の発明によれば、ダウンシフトを実行する場合に、そのダウンシフトの開始に先行して、もしくは遅くともそのダウンシフトの開始と同時に、内燃機関の圧縮比が相対的に高く設定される。ダウンシフトの開始直後のイナーシャ相では自動変速機側の回転数が上昇するが、圧縮比を高くすることにより内燃機関の出力トルクを増大させて内燃機関側の回転数を速やかに上昇させることができ、その分変速時間を短縮することができる。そして、そのダウンシフトが完了する前に、内燃機関の圧縮比が相対的に低く設定される。圧縮比を低くすることにより内燃機関の出力トルクを減少させる、すなわちトルクダウンさせることができる。したがって、ダウンシフトが完了する際には内燃機関がトルクダウンされているので、内燃機関の出力トルクに起因する変速ショックを低減することができる。そのため、変速ショックの発生を抑制するとともに変速時間を短縮することができ、滑らかでかつ速やかなダウンシフトが可能になる。
【0023】
そして、請求項4の発明によれば、アップシフトを実行する場合に、そのアップシフトの開始に先行して、もしくは遅くともそのアップシフトの開始と同時に、内燃機関のフューエルカットが実行されるとともに圧縮比が相対的に高く設定される。アップシフトの場合、そのアップシフト直後のイナーシャ相において内燃機関の回転数を低下させる必要があるが、フューエルカットを実行しつつ圧縮比を高めることにより、内燃機関のフリクショントルクを増大させて内燃機関の回転数を速やかに低下させることができ、その分変速時間を短縮することができる。そして、そのアップシフトが完了する前に、内燃機関のフューエルカットが終了されるとともに圧縮比が相対的に低く設定される。フューエルカットが実行されていない通常の状態で圧縮比を低くすることにより内燃機関をトルクダウンさせることができる。したがって、アップシフトが完了する際には内燃機関がトルクダウンされているので、内燃機関の出力トルクに起因する変速ショックを低減することができる。そのため、変速ショックの発生を抑制するとともに変速時間を短縮して、滑らかでかつ速やかなアップシフトが可能になる。
【0024】
一方、請求項5の発明によれば、内燃機関と自動変速機とを連結する流体伝動装置がロックアップされた場合、すなわち内燃機関と自動変速機とが直接機械的に連結された場合に、内燃機関の圧縮比が相対的に低く設定される。その場合、圧縮比は一律に低くされるのではなく、内燃機関の出力トルクが大きいほど、また内燃機関の回転数が低いほど、圧縮比が低くなるように設定される。流体伝動装置がロックアップされると、内燃機関のトルク変動が直接自動変速機側に伝達されるため、そのトルク変動に起因するいわゆるこもり音などの振動や騒音が発生し易くなる。その場合に、上記のように圧縮比が低く設定されて内燃機関の出力トルクが低下させられることにより、こもり音などの振動や騒音の発生を防止もしくは抑制することができる。また、ロックアップ領域において内燃機関の出力トルクおよび回転数に応じて圧縮比が変更されるため、圧縮比を低下することによる内燃機関の効率の低下を可及的に軽減することができる。すなわち、ロックアップ領域において一律に圧縮比が低下された場合と比較して、効率の低下を抑制して燃費を向上させることができる。
【0025】
また、請求項6の発明によれば、車両の減速走行時に内燃機関がフューエルカットされている際に、車両には、内燃機関および自動変速機が有する慣性トルクが自動変速機を介して駆動輪に伝達されて内燃機関制動力が作用する。そして、この内燃機関制動力がその時点の車両の走行状態に基づいて要求される要求制動力よりも小さい場合に、内燃機関の圧縮比が高められてフリクショントルクが増大させられる。そのため、減速走行時に要求制動力に対する内燃機関制動力の不足分を、増大させたフリクショントルクによって補填することができ、減速走行時に、その走行状態に応じた適切な制動力を発生させることができる。
【0026】
さらに、請求項7の発明によれば、車両の減速走行時に内燃機関がフューエルカットされている際に、さらに内燃機関により駆動される補機が作動している場合は、補機を駆動する際の負荷がかかる分だけ内燃機関制動力が増大する。このとき、要求制動力よりも内燃機関制動力が大きい場合は、内燃機関の圧縮比が低下させられてフリクショントルクが減少させられる。そのため、減速走行時でかつ補機駆動時に、要求制動力に対する内燃機関制動力の超過分をフリクショントルクを低減することによって補正することができ、減速走行時に、補機の作動状態も含む走行状態に応じた適切な制動力を発生させることができる。
【0027】
そして、請求項8の発明によれば、車両の減速走行時に内燃機関がフューエルカットされている際に、さらに内燃機関により駆動される補機が作動している場合であって、その補機を駆動する際の負荷が大きく、内燃機関の圧縮比を低下させてフリクショントルクを減少させてもなお要求制動力よりも内燃機関制動力が大きい場合は、内燃機関と自動変速機とを連結する流体伝動装置の伝達トルク容量が減少させられる。その結果、内燃機関の回転数が低下し、その分だけ内燃機関のフリクショントルクがさらに減少させられる。そのため、減速走行時でかつ補機駆動時に、要求制動力に対する内燃機関制動力の超過分をフリクショントルクを低減することによって補正することができ、減速走行時に、補機の作動状態も含む走行状態に応じた適切な制動力を発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
つぎに、この発明を具体例に基づいて説明する。図1は、この発明で制御の対象とする内燃機関および自動変速機を搭載した車両Veの駆動系統および制御系統の構成を説明する図である。図1において、符号1は動力源であり、この発明においては、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関を対象としている。なお、以下の説明では、動力源1をエンジン(ENG)1と記す。エンジン1の出力側に、例えばトルクコンバータなどの流体伝動装置2を介して、自動変速機(AT)3が連結されている。そして、自動変速機3の出力側に、例えばプロペラシャフト4およびデファレンシャル5ならびにドライブシャフト6などを介して、駆動輪7が連結されている。
【0029】
すなわち、エンジン1の出力トルクは、流体伝動装置2を介して自動変速機3に入力され、その自動変速機3において設定される変速比に応じて変速されて、駆動トルクとして駆動輪7へ伝達されるようになっている。なお、エンジン1には、例えば、エアコン用コンプレッサやパワーステアリング用オイルポンプあるいはオルタネータなど、直接もしくは間接的にエンジン1の出力トルクにより駆動されて作動する補機8が連結されている。
【0030】
エンジン1は、上記のように、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジンあるいはLPGエンジンなどの燃料を燃焼させて動力を出力する内燃機関であって、スロットル開度(吸気量)や燃料噴射量(燃料供給量)あるいは点火時期などの運転状態を電気的に制御できるように構成されている。特に、この発明におけるエンジン1は、圧縮比を変更して制御可能なように、具体的には、上記のスロットル開度や燃料噴射量あるいは点火時期などと同様に、圧縮比を電気的に制御できるように構成されている。
【0031】
なお、エンジン1の圧縮比を変更して制御するための機構としては、例えば、エンジン1のシリンダブロックとクランクケースとをシリンダの軸方向に相対移動可能な構成とし、それらシリンダブロックとクランクケースと相対移動させて燃焼室の容積を変更することにより圧縮比を可変にした機構や、コンロッドを可動構造にしてもしくはリンク機構を用いるなどしてピストンストロークを変更することにより圧縮比を可変にした機構、あるいは可変バルブタイミング機構を利用して吸気弁の閉弁時期を変更してシリンダ内の空気量を変化させることにより見かけ上の圧縮比を変更させる方法など、公知の技術を適宜採用することができる。
【0032】
流体伝動装置2は、上記のように、例えば従来公知のトルクコンバータ2が用いられ、特にこの発明におけるトルクコンバータ2は、ポンプインペラとタービンランナとの間を、すなわちエンジン1と自動変速機3との間を機械的に連結可能なロックアップクラッチ2aを備えている。さらに、このロックアップクラッチ2aは、完全係合状態から完全解放状態の間で、半係合(スリップ係合)状態を含み、その係合・解放状態を任意に変更して、すなわち伝達トルク容量を任意に変更して制御可能な構成となっている。すなわち、この発明におけるトルクコンバータ2は、その伝達トルク容量を変更して制御可能であり、かつロックアップ機能を備えた流体伝動装置2である。
【0033】
自動変速機3は、例えば、油圧を電気的に制御して変速比を変更する変速制御を行ういわゆる電子制御式の変速機であり、その自動変速機3に一体に設けられた油圧制御装置(図示せず)を制御することにより、変速段もしくは変速比の切り換え・変更を行うように構成されている。
【0034】
そして、上記のスロットル開度や燃料噴射量あるいは点火時期そして圧縮比などのエンジン1の運転状態、およびトルクコンバータ2におけるロックアップクラッチ2aの係合・解放状態、および自動変速機3の変速比(もしくは変速段)を変更する変速制御を実行させるための油圧制御装置の動作状態を制御する電子制御装置(ECU)9が設けられている。
【0035】
この電子制御装置9は、一例として中央演算処理装置(CPU)および記憶装置(RAM,ROM)ならびに入出力インターフェースを主体とするマイクロコンピュータにより構成されていて、電子制御装置9には、例えば、エンジン1の回転数を検出するエンジン回転数センサ10あるいは車速を検出する車輪速センサ11や車両Veの走行状態を推定するための加速度を検出する加速度センサ12などの出力信号、あるいは、アクセルペダル(図示せず)の操作量やブレーキペダル(図示せず)の操作量あるいはステアリング(図示せず)の操舵量などに応じた信号などが、制御データとして入力されるようになっている。
【0036】
そして、電子制御装置9からは、上述したエンジン1のスロットル開度および燃料噴射量ならびに点火時期そして圧縮比などを変更する制御信号、トルクコンバータ2におけるロックアップクラッチ2aの係合・解放状態を変更する制御信号、自動変速機3の変速比を変更する制御信号などを出力するように構成されている。
【0037】
前述したように、この発明は、滑らかでかつ速やかな変速を実行することができ、また、燃費の向上に寄与することが可能な制御装置を提供することを目的としていて、そのために、この発明の制御装置は以下の制御を実行するように構成されている。
【0038】
(第1の制御例)
図2は、この発明の制御装置における第1の制御例を説明するためのフローチャートであって、このフローチャートで示されるルーチンは、所定の短時間毎に繰り返し実行される。そして、この第1の制御例は、自動変速機3における変速制御により変速比を増大させるダウンシフトの場合の制御例である。
【0039】
図2において、先ず、自動変速機3に対するダウンシフトの実行指令の有無について、すなわち自動変速機3に対してダウンシフトの実行指令が出力されたか否かが判断される(ステップS11)。
【0040】
自動変速機3に対してダウンシフトの実行指令が出力されていないことにより、このステップS11で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、このルーチンをリターンする。
【0041】
これに対して、自動変速機3に対してダウンシフトの実行指令が出力されたことにより、ステップS11で肯定的に判断された場合には、ステップS12へ進み、現在のエンジン1の運転状態に基づく運転領域が、エンジン1のノッキングが発生する可能性があるノック領域であるか否かが判断される。例えば、その時点におけるエンジン1の点火時期や回転数あるいはエンジン1に対する負荷などの運転状態から、現在の運転領域がノック域であるか否かを判断することができる。
【0042】
なお、エンジン1の燃料として、例えばエチルアルコールなどのアルコール含有率を高めた高アルコール濃度のものを使用する場合は、通常のガソリンもしくはアルコール含有量が低い低アルコール濃度の燃料を使用した場合と比較して、ノッキングはほとんど発生しないとみなすことができる。したがって、高アルコール濃度の燃料を使用する場合は、上記のステップS12における判断においては、現在の運転領域がノック域ではないとみなして否定的に判断される。
【0043】
現在の運転領域がノック域でないことにより、このステップS12で否定的に判断された場合は、ステップS13へ進み、エンジン1の圧縮比が相対的に高めに設定される。すなわち、エンジン1の圧縮比が変速制御が実行されない通常のレベルよりも高くなる方向に変更される。それと同時に、もしくはエンジン1の圧縮比が変更されてから所定時間が経過した後に、上記のステップS11で実行指令されたダウンシフトが開始される(ステップS14)。言い換えると、このステップS13,S14においては、遅くとも上記のステップS11で実行指令されたダウンシフトの開始時に、エンジン1の圧縮比が相対的に高められる。エンジン1の圧縮比が高められることにより、エンジン1の出力トルクが増大し、その結果エンジン1の回転数が上昇する。
【0044】
自動変速機3におけるダウンシフトを実行する場合、図3のタイムチャートに示すように、そのダウンシフトの開始直後に生じるイナーシャ相では、エンジン1側の回転数に対して自動変速機3側の回転数が上昇する。具体的には、トルクコンバータ2のポンプインペラ側の回転数に対してタービンランナ側の回転数が上昇する。このとき、上記のようにエンジン1の圧縮比を高めて出力トルクを増大させることにより、その出力トルクの増大分だけエンジン1の回転数を上昇させることができる。その結果、自動変速機3における入力側の回転要素と出力側の回転要素との回転同期を促進してダウンシフトの完了を早めること、すなわちそのダウンシフトにおける変速時間を短縮することができる。
【0045】
ダウンシフトが実行されると、そのダウンシフトが完了する所定時間前であるか否かが判断される(ステップS15)。言い換えると、ダウンシフトが開始されると、そのダウンシフト開始時からの経過時間が、ダウンシフトが完了する以前の所定時間前の時点に到達したか否かが判断される。
【0046】
そのダウンシフト開始時からの経過時間が、未だダウンシフトが完了する以前の所定時間前の時点に到達していないことにより、このステップS15で否定的に判断された場合は、ステップS13へ戻り、従前の制御が繰り返される。すなわち、ダウンシフト開始時からの経過時間がダウンシフトが完了する以前の所定時間前の時点に到達するまで、上記のステップS13,S14の制御が繰り返し実行される。
【0047】
これに対して、ダウンシフト開始時からの経過時間が、ダウンシフトが完了する以前の所定時間前の時点に到達したことにより、ステップS15で肯定的に判断された場合には、ステップS16へ進み、エンジン1の圧縮比が相対的に低めに設定される。すなわち、このダウンシフトが完了する前に、エンジン1の圧縮比が変速制御が実行されない通常のレベルよりも低くなる方向に変更される。エンジン1の圧縮比が低下されることにより、エンジン1の出力トルクが減少する。そしてその後、このルーチンをリターンする。
【0048】
ダウンシフトにおいて、自動変速機3における入力側の回転要素と出力側の回転要素とを係合させてそのダウンシフトが完了する場合、前記の入力側の回転要素と出力側の回転要素との間のトルクの差が大きいと、それらの係合時にショックが発生する。このとき、上記のように、ダウンシフトの完了前に、エンジン1の圧縮比を低くして出力トルクを低下させることにより、ダウンシフトの完了時における前記の入力側の回転要素と出力側の回転要素との間のトルクの差を少なくして、そのダウンシフトの完了時における変速ショックの発生を防止もしくは抑制することができる。
【0049】
一方、上記のステップS12において、現在の運転領域がノック域であることにより肯定的に判断された場合には、ステップS17へ進み、エンジン1の圧縮比が相対的に低めに設定される。すなわち、エンジン1の圧縮比が、変速制御が実行されない通常のレベルよりも低くなる方向に変更される。
【0050】
通常、エンジン1は、その圧縮比が高くなるほどノッキングが発生し易くなる。したがって、上記のように、エンジン1の運転領域がノック域にある場合は、エンジン1の圧縮比を低下することにより、ノッキングの発生を防止もしくは抑制することができる。
【0051】
エンジン1の圧縮比が低めに変更されるのと同時に、もしくはエンジン1の圧縮比が変更されてから所定時間が経過した後に、上記のステップS11で実行指令されたダウンシフトが開始される(ステップS18)。
【0052】
ダウンシフトが実行されると、そのダウンシフトが完了する所定時間前であるか否かが判断される(ステップS19)。言い換えると、ダウンシフトが開始されると、そのダウンシフト開始時からの経過時間が、ダウンシフトが完了する以前の所定時間前の時点に到達したか否かが判断される。
【0053】
そのダウンシフト開始時からの経過時間が、未だダウンシフトが完了する以前の所定時間前の時点に到達していないことにより、このステップS19で否定的に判断された場合は、ステップS17へ戻り、従前の制御が繰り返される。すなわち、ダウンシフト開始時からの経過時間がダウンシフトが完了する以前の所定時間前の時点に到達するまで、上記のステップS17,S18の制御が繰り返し実行される。
【0054】
これに対して、ダウンシフト開始時からの経過時間が、ダウンシフトが完了する以前の所定時間前の時点に到達したことにより、ステップS19で肯定的に判断された場合には、ステップS20へ進み、エンジン1の圧縮比が相対的に高めに設定される。すなわち、このダウンシフトが完了する前に、エンジン1の圧縮比が変速制御が実行されない通常のレベルよりも高くなる方向に変更される。この場合の圧縮比の変更は、エンジン1はノッキングし易い状態になっているので、エンジン1にノッキングが発生しない範囲でエンジン1の出力トルクが低下するように、圧縮比が調整されて変更される。なお、必要に応じてエンジン1の点火時期の遅角制御を併用することもできる。そしてその後、このルーチンをリターンする。
【0055】
このように、ダウンシフトの完了前に、エンジン1の圧縮比を調整して出力トルクを低下させることにより、ダウンシフトの完了時における前記の入力側の回転要素と出力側の回転要素との間のトルクの差を少なくして、そのダウンシフトの完了時における変速ショックの発生を防止もしくは抑制することができる。
【0056】
続いて、自動変速機3における変速制御により変速比を減少させるアップシフトの場合の制御例を説明する。図4は、その制御例を説明するためのフローチャートであって、このフローチャートで示されるルーチンは、所定の短時間毎に繰り返し実行される。図4において、先ず、自動変速機3に対するアップンシフトの実行指令の有無について、すなわち自動変速機3に対してアップシフトの実行指令が出力されたか否かが判断される(ステップS21)。
【0057】
自動変速機3に対してアップンシフトの実行指令が出力されていないことにより、このステップS21で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、このルーチンをリターンする。
【0058】
これに対して、自動変速機3に対してアップンシフトの実行指令が出力されたことにより、ステップS21で肯定的に判断された場合には、ステップS22へ進み、現在の自動変速機3の状態がイナーシャ相であるか否かが判断される。この自動変速機3の状態がイナーシャ相であるか否かの判断は、トルクコンバータ2のタービンランナ側の回転数(タービン回転数)を基に判断することができる。すなわち、アップシフト実行時に、このタービン回転数が、車速と自動変速機3のギヤ比とから決まる所定の回転数に向かって変化している間をイナーシャ相と判断することができ、タービン回転数が、上記の所定の回転数に到達することによりイナーシャ相は解消されたすなわちイナーシャ相ではないと判断することができる。
【0059】
現在の自動変速機3の状態がイナーシャ相でないと判定され、このステップS22で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、このルーチンをリターンする。これに対して、現在の自動変速機3の状態がイナーシャ相であると判定され、ステップS22で肯定的に判断された場合には、ステップS23へ進み、現在のエンジン1の運転状態に基づく運転領域が、エンジン1でノッキングが発生する可能性があるノック領域であるか否かが判断される。例えば、その時点におけるエンジン1の点火時期や回転数あるいはエンジン1に対する負荷などの運転状態から、現在の運転領域がノック域であるか否かを判断することができる。
【0060】
なお、前述のステップS12と同様に、高アルコール濃度の燃料を使用する場合は、上記のステップS23における判断おいては、現在の運転領域がノック域ではないとみなして否定的に判断される。
【0061】
現在の運転領域がノック域でないことにより、このステップS23で否定的に判断された場合は、ステップS24へ進み、エンジン1への燃料の供給を休止するフューエルカットが実行される。それと同時に、もしくはフューエルカットが実行されてから所定時間が経過した後に、エンジン1の圧縮比が相対的に高めに設定される(ステップS25)。すなわち、エンジン1の圧縮比が、変速制御が実行されない通常のレベルよりも高くなる方向に変更される。また、それと同時に、もしくはエンジン1の圧縮比が変更されてから所定時間が経過した後に、上記のステップS21で実行指令されたアップシフトが開始される(ステップS26)。言い換えると、これらステップS24,S25,S26においては、遅くとも上記のステップS21で実行指令されたアップシフトの開始時に、エンジン1の圧縮比が相対的に高められる。
【0062】
このように、エンジン1のフューエルカットが実行されている状態でエンジン1の圧縮比が高められることにより、エンジン1の回転抵抗が増大し、すなわちエンジン1のフリクショントルクが増大し。その結果、エンジン1の回転数が低下する。
【0063】
自動変速機3におけるアップシフトを実行する場合、図5のタイムチャートに示すように、そのアップシフトの開始直後に生じるイナーシャ相で、アップシフト後の変速比に対応した自動変速機3側の回転数(タービン回転数)までエンジン1側の回転数を低下させる必要がある。このとき、上記のようにエンジン1のフューエルカットを実行するとともに圧縮比を高めて、エンジン1のフリクショントルク(図5で示すような負の方向のエンジントルク)を増大させることにより、エンジン1の回転抵抗を増やしてその分だけエンジン1の回転数を速やかに低下させることができる。その結果、自動変速機3における入力側の回転要素と出力側の回転要素との回転同期を促進してアップシフトの完了を早めること、すなわちそのアップシフトにおける変速時間を短縮することができる。
【0064】
アップシフトが実行されると、そのアップシフトが完了する所定時間前であるか否かが判断される(ステップS27)。言い換えると、アップシフトが開始されると、そのアップシフト開始時からの経過時間が、アップシフトが完了する以前の所定時間前の時点に到達したか否かが判断される。
【0065】
そのアップシフト開始時からの経過時間が、未だアップシフトが完了する以前の所定時間前の時点に到達していないことにより、このステップS27で否定的に判断された場合は、ステップS24へ戻り、従前の制御が繰り返される。すなわち、アップシフト開始時からの経過時間がアップシフトが完了する以前の所定時間前の時点に到達するまで、上記のステップS24,S25,S26の制御が繰り返し実行される。
【0066】
これに対して、アップシフト開始時からの経過時間が、アップシフトが完了する以前の所定時間前の時点に到達したことにより、ステップS27で肯定的に判断された場合には、ステップS28へ進み、エンジン1のフューエルカットが終了されるとともに、エンジン1の圧縮比が相対的に低めに設定される(ステップS29)。すなわち、このアップシフトが完了する前に、エンジン1のフューエルカットが終了されるとともに、エンジン1の圧縮比が、変速制御が実行されない通常のレベルよりも低くなる方向に変更される。なお、この場合の圧縮比の変更は、図5に示すように、エンジン1のフリクショントルクが徐々に減少するように、圧縮比が調整されて変更される。そしてその後、このルーチンをリターンする。
【0067】
このように、アップシフトの完了前に、エンジン1の圧縮比を徐々に低くして、エンジン1の回転抵抗となっていたフリクショントルクを徐々に0に近づけることにより、アップフトの完了時における自動変速機3の入力側の回転要素と出力側の回転要素との係合を滑らかに実現させ、そのアップシフトの完了時における変速ショックの発生を防止もしくは抑制することができる。
【0068】
一方、上記のステップS23において、現在の運転領域がノック域であることにより肯定的に判断された場合には、ステップS30へ進み、エンジン1への燃料の供給を休止するフューエルカットが実行される。それと同時に、もしくはフューエルカットが実行されてから所定時間が経過した後に、エンジン1の圧縮比が相対的に高めに設定される(ステップS31)。すなわち、エンジン1の圧縮比が、変速制御が実行されない通常のレベルよりも高くなる方向に変更される。また、それと同時に、もしくはエンジン1の圧縮比が変更されてから所定時間が経過した後に、上記のステップS21で実行指令されたアップシフトが開始される(ステップS32)。言い換えると、これらステップS30,S31,S32においては、遅くとも上記のステップS21で実行指令されたアップシフトの開始時に、エンジン1の圧縮比が相対的に高められる。
【0069】
このように、エンジン1のフューエルカットが実行されている状態でエンジン1の圧縮比が高められることにより、エンジン1の回転抵抗が増大し、すなわちエンジン1のフリクショントルクが増大し。その結果、エンジン1の回転数が低下する。
【0070】
前述のステップS24,S25,S26の制御と同様、上記のようにエンジン1のフューエルカットを実行するとともに圧縮比を高めて、エンジン1のフリクショントルクを増大させることにより、エンジン1の回転抵抗を増やしてその分だけエンジン1の回転数を速やかに低下させることができる。その結果、自動変速機3における入力側の回転要素と出力側の回転要素との回転同期を促進してアップシフトの完了を早めること、すなわちそのアップシフトにおける変速時間を短縮することができる。
【0071】
アップシフトが実行されると、そのアップシフトが完了する所定時間前であるか否かが判断される(ステップS33)。言い換えると、アップシフトが開始されると、そのアップシフト開始時からの経過時間が、アップシフトが完了する以前の所定時間前の時点に到達したか否かが判断される。
【0072】
そのアップシフト開始時からの経過時間が、未だアップシフトが完了する以前の所定時間前の時点に到達していないことにより、このステップS33で否定的に判断された場合は、ステップS30へ戻り、従前の制御が繰り返される。すなわち、アップシフト開始時からの経過時間がアップシフトが完了する以前の所定時間前の時点に到達するまで、上記のステップS30,S31,S32の制御が繰り返し実行される。
【0073】
これに対して、アップシフト開始時からの経過時間が、アップシフトが完了する以前の所定時間前の時点に到達したことにより、ステップS33で肯定的に判断された場合には、ステップS34へ進み、エンジン1のフューエルカットが終了されるとともに、エンジン1の圧縮比が相対的に高めに設定される(ステップS35)。すなわち、このアップシフトが完了する前に、エンジン1のフューエルカットが終了されるとともに、エンジン1の圧縮比が、変速制御が実行されない通常のレベルよりも高くなる方向に変更される。この場合の圧縮比の変更は、エンジン1のフューエルカットが終了することによりエンジン1は再びノッキングし易い状態になるので、エンジン1にノッキングが発生しない範囲でエンジン1の出力トルクが低下するように、圧縮比が調整されて変更される。なお、必要に応じてエンジン1の点火時期の遅角制御を併用することもできる。そしてその後、このルーチンをリターンする。
【0074】
このように、アップシフトの完了前に、エンジン1の圧縮比を調整して出力トルクを低下させることにより、アップシフトの完了時における前記の入力側の回転要素と出力側の回転要素との間のトルクの差を少なくして、そのアップシフトの完了時における変速ショックの発生を防止もしくは抑制することができる。
【0075】
上記のように、この発明の制御装置における第1の制御例によれば、例えば、ダウンシフトを実行する場合に、そのダウンシフトの開始に先行して、もしくは遅くともそのダウンシフトの開始と同時に、エンジン1の圧縮比が相対的に高く設定される。ダウンシフトの開始直後のイナーシャ相では自動変速機3側の回転数が上昇するが、エンジン1圧縮比を高くすることによりそのエンジン1の出力トルクを増大させてエンジン1側の回転数を速やかに上昇させることができ、その分変速時間を短縮することができる。そして、そのダウンシフトが完了する前に、エンジン1の圧縮比が相対的に低く設定される。圧縮比を低くすることによりエンジン1の出力トルクを減少させる、すなわちトルクダウンさせることができる。したがって、ダウンシフトが完了する際にはエンジン1がトルクダウンされているので、エンジン1の出力トルクの変動、あるいはエンジン1と自動変速機3との間のトルクの差に起因する変速ショックを低減することができる。そのため、変速ショックの発生を抑制するとともに変速時間を短縮することができ、滑らかでかつ速やかなダウンシフトが可能になる。
【0076】
また、アップシフトを実行する場合に、そのアップシフトの開始に先行して、もしくは遅くともそのアップシフトの開始と同時に、エンジン1のフューエルカットが実行されるとともにエンジン1の圧縮比が相対的に高く設定される。アップシフトの場合、そのアップシフト直後のイナーシャ相においてエンジン1の回転数を低下させる必要があるが、フューエルカットを実行しつつ圧縮比を高めることにより、エンジン1のフリクショントルクを増大させてエンジン1の回転数を速やかに低下させることができ、その分変速時間を短縮することができる。そして、そのアップシフトが完了する前に、エンジン1のフューエルカットが終了されるとともにエンジン1の圧縮比が相対的に低く設定される。フューエルカットが実行されていない通常の状態で圧縮比を低くすることによりエンジン1をトルクダウンさせることができる。したがって、アップシフトが完了する際にはエンジン1がトルクダウンされているので、エンジン1の出力トルクの変動、あるいはエンジン1と自動変速機3との間のトルクの差に起因する変速ショックを低減することができる。そのため、変速ショックの発生を抑制するとともに変速時間を短縮して、滑らかでかつ速やかなアップシフトが可能になる。
【0077】
ここで、上述した具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、上述したステップS13,S16,S17,S20,S25,S29,S31,S35の機能的手段が、この発明の圧縮比協調制御手段に相当し、ステップS24,S28,S30,S34の機能的手段が、この発明のフューエルカット制御手段に相当する。
【0078】
(第2の制御例)
この第2の制御例は、エンジン1と自動変速機3との間に設けられたトルクコンバータ2のロックアップクラッチ2aの係合・解放状態に応じて、エンジン1の圧縮比を制御するようにした例であり、具体的には、ロックアップクラッチ2aが係合された場合に、エンジン1の出力トルクおよび回転数に基づいて圧縮比を変更する制御の例である。
【0079】
前述したように、トルクコンバータ2のロックアップクラッチ2aが係合されると、エンジン1と自動変速機3とが機械的に直接連結された状態になるので、エンジン1で発生した振動がそのロックアップクラッチ2aを介して自動変速機3へ伝達され、自動変速機3において例えばいわゆるこもり音などの騒音や振動が発生し易くなる。そのため、ロックアップクラッチ2aが係合された場合に、エンジン1の圧縮比を相対的に低く設定することによりエンジン1の出力トルクを低下させて、自動変速機3におけるこもり音などの発生が防止もしくは抑制される。
【0080】
この場合、エンジン1の圧縮比を低くすることによってこもり音等の騒音や振動を抑えることができるが、一方で、圧縮比を低くすることによってエンジン1の運転効率が低下して燃費が悪化する可能性がある。そこで、この発明における制御装置では、ロックアップクラッチ2aが係合されて自動変速機3におけるこもり音等の騒音や振動を軽減するためにエンジン1の圧縮比を変更する場合に、一律に圧縮比を低くするのではなく、エンジン1の出力トルク、およびエンジン1の回転数の大きさに応じて、圧縮比を低下させる量あるいは度合いを変更して、エンジン1の圧縮比を制御するように構成されている。
【0081】
すなわち、ロックアップクラッチ2aが係合された場合は、図6に示すように、エンジン1の出力トルク(エンジントルク)が大きいほど、またエンジン1の回転数が低いほど、エンジン1の圧縮比が低くなるように、圧縮比の大きさが変更されて制御される。例えば、この図6の(a),(b)に示すようなエンジン1の圧縮比と出力トルクおよび回転数とに関連するマップを予め設定しておき、それらマップから圧縮比の値を求めることができる。あるいは、エンジン1の出力トルクおよび回転数の推定値もしくは検出値から、演算によりエンジン1の圧縮比を求めることもできる。
【0082】
例えば、ロックアップクラッチ2aが係合された場合、図7のロックアップ領域(ロックアップON)において、範囲Aで示すようなエンジン1の出力トルクが相対的に小さくかつ回転数が相対的に低い領域、および範囲Bで示すようなエンジン1の出力トルクが相対的に大きくかつ回転数が相対的に高い領域では、エンジン1の圧縮比は相対的に低くなるように設定される。また、範囲Cで示すようなエンジン1の出力トルクが小さくかつ回転数が高い領域では、エンジン1の圧縮比は相対的に高くなるように設定される。
【0083】
このように、この発明の制御装置における第2の制御例によれば、エンジン1と自動変速機3とを連結するロックアップ機能付きのトルクコンバータ2におけるロックアップクラッチ2aが係合された場合、すなわちエンジン1と自動変速機3とが機械的に連結された場合に、エンジン1の出力トルクが大きいほど、またエンジン1の回転数が低いほど、圧縮比が低くなるように設定される。そのため、自動変速機3におけるこもり音などの振動や騒音の発生を防止もしくは抑制することができる。また、ロックアップ領域においてエンジン1の出力トルクおよび回転数に応じて圧縮比が変更されることにより、圧縮比を低下することによるエンジン1の効率の低下を可及的に軽減することができる。すなわち、ロックアップ領域において一律に圧縮比が低下された場合と比較して、効率の低下を抑制して燃費を向上させることができる。
【0084】
(第3の制御例)
この第3の制御例は、エンジン1のフューエルカット制御が実行されている車両Veの減速走行時に、圧縮比を変化させてエンジン1のフリクショントルクを制御することにより、適切なエンジンブレーキ力を得るようにした制御の例である。
【0085】
車両Veの減速走行時にエンジン1がフューエルカットされている場合、エンジン1および自動変速機3が有する慣性トルクが所定の変速比(変速段)に設定された自動変速機3を介して駆動輪7に伝達されて、車両Veにはエンジンブレーキ力すなわちこの発明における内燃機関制動力が作用する。このエンジンブレーキ力が、走行状態に応じて車両Veに要求される要求制動力と等しければ、適正な制動力で車両Veを安定して走行もしくは制動させることができる。それに対して、エンジンブレーキ力が要求制動力に対して不足する場合には、エンジン1の圧縮比が高められて、フリクショントルクが増大させられる。それにより、エンジンブレーキ力が増大し、要求制動力に対する不足分を補うことができる。
【0086】
すなわち、車両Veの減速走行時にエンジン1がフューエルカットされている場合は、図8に示すように、例えば走行路面の勾配やカーブの曲率の緩・急など、その時点の車両Veの走行状態に基づいた要求制動力Bが求められる。それに対して、例えば4速の有段式の自動変速機3を介して駆動輪7側へ伝達される制動トルクによって車両Veに発生する制動力すなわちエンジンブレーキ力は、自動変速機3に設定されている変速段毎に一定の値となる(図8には、第4速が設定されている場合のエンジンブレーキ力B4,第3速が設定されている場合のエンジンブレーキ力B3,第2速が設定されている場合のエンジンブレーキ力B2の例が示されている)。そこで、この発明における制御装置では、要求制動力Bに対する各変速段毎のエンジンブレーキ力B1,〜B4の不足分ΔBを求め、すなわち各変速段毎のエンジンブレーキ力B1,〜B4と要求制動力Bとの偏差ΔBを求め、その不足分(偏差)ΔBを補正するように、エンジン1の圧縮比が変更されて設定されるように構成されている。
【0087】
具体的には、例えば図9に示すように、圧縮比の変更による補正分、すなわち上記の要求制動力Bに対する各変速段毎のエンジンブレーキ力B1,〜B4の不足分(偏差)ΔBが大きいほど、エンジン1の圧縮比が高くなるように設定される。
【0088】
このように、この発明の制御装置における第3の制御例によれば、エンジン1でフューエルカット制御が実行されている減速走行時に、エンジン1のフリクショントルクによりエンジンブレーキ力B1,〜B4が、その時点の車両Veの走行状態に基づいて要求される要求制動力Bよりも小さい場合に、その不足分ΔBに対応して、エンジン1の圧縮比が高められてフリクショントルクが増大させられる。そのため、減速走行時に要求制動力Bに対するエンジンブレーキ力B1,〜B4の不足分ΔBを、増大させたフリクショントルクによって補填することができ、減速走行時に、その走行状態に応じた適切な制動力を発生させることができる。
【0089】
(第4の制御例)
この第4の制御例は、前述の第3の制御例と同様、エンジン1のフューエルカット制御が実行されている車両Veの減速走行時に、圧縮比を変化させてエンジン1のフリクショントルクを制御することにより、適切なエンジンブレーキ力を得るようにした制御例であって、特に、エンジン1がフューエルカット制御されている際にエアコンのコンプレッサやオルタネータなどの補機8が駆動されてエンジンブレーキ力が要求制動力に対して上回った場合に、エンジン1の圧縮比を変更して適切なエンジンブレーキ力を得るようにした例である。
【0090】
すなわち、図10の時刻t1から時刻t2の期間で示すように、車両Veの減速走行時にエンジン1がフューエルカットされていて、さらに補機8が駆動されて要求制動力Bに対してエンジンブレーキ力B’が大きくなった(負の方向に上回った)場合は、図11に示すように、補機8に対する駆動力が大きいほど、すなわち補機8を駆動することにより増加するエンジンブレーキ力B’が大きいほど、エンジン1の圧縮比が低くなるように設定される。
【0091】
さらに、図12の時刻t3から時刻t4の期間で示すように、車両Veの減速走行時にエンジン1がフューエルカットされていて、さらに大きなトルクで補機8が駆動されて、要求制動力Bに対してエンジンブレーキ力B”がさらに大きくなり、エンジン1の圧縮比の調整だけではエンジンブレーキ力B”の超過分を補正しきれない場合は、例えば、図13に示すように、トルクコンバータ2のロックアップクラッチ2aをスリップ係合(半係合)させてトルクコンバータ2の伝達トルク容量を低下させることにより、エンジン1のフリクショントルクが減少するように制御される。
【0092】
このように、この発明の制御装置における第4の制御例によれば、車両Veの減速走行時にエンジン1がフューエルカットされている際に、さらにエンジン1により駆動される補機8が作動している場合は、補機8を駆動する際の負荷がかかる分だけエンジンブレーキ力B’が増大する。このとき、要求制動力Bよりもエンジンブレーキ力B’が大きい場合は、エンジン1の圧縮比が低下させられてフリクショントルクが減少させられる。
【0093】
また、車両Veの減速走行時にエンジン1がフューエルカットされている際に、さらにエンジン1により駆動される補機8が作動している場合であって、その補機8を駆動する際の負荷が大きく、エンジン1の圧縮比を低下させてフリクショントルクを減少させてもなお要求制動力Bよりもエンジンブレーキ力B”が大きい場合は、エンジン1と自動変速機3とを連結するトルクコンバータ2の伝達トルク容量が減少させられる。その結果、エンジン1の回転数が低下し、その分だけエンジン1のフリクショントルクがさらに減少させられる。
【0094】
したがって、減速走行時でかつ補機8が駆動される際に、要求制動力Bに対するエンジンブレーキ力B’(もしくはB”)の超過分をフリクショントルクを低減することによって補正することができ、減速走行時に、補機8の作動状態も含む走行状態に応じた適切な制動力を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】この発明の制御装置を適用可能な車両の駆動系統および制御系統を模式的に示す概念図である。
【図2】この発明の制御装置による第1の制御例におけるダウンシフトの例を説明するためのフローチャートである。
【図3】図2のフローチャートに示すこの発明の第1の制御例におけるダウンシフトを実行した場合のエンジントルクおよびタービン回転数の変化を示すタイムチャートである。
【図4】この発明の制御装置による第1の制御例におけるアップシフトの例を説明するためのフローチャートである。
【図5】図4のフローチャートに示すこの発明の第1の制御例におけるアップシフトを実行した場合のエンジントルクおよびタービン回転数の変化を示すタイムチャートである。
【図6】この発明の制御装置による第2の制御例を実行した場合の圧縮比を変更して設定する際のマップの例である。
【図7】この発明の制御装置による第2の制御例を実行した場合のロックアップ領域における圧縮比の高低の分布を説明するための模式図ある。
【図8】この発明の制御装置による第3の制御例を実行した場合の要求駆動力に対するエンジンブレーキ力の補正制御を説明するための模式図である。
【図9】この発明の制御装置による第3の制御例を実行した場合の圧縮比を変更して設定する際のマップの例である。
【図10】この発明の制御装置による第4の制御例を実行した場合の要求駆動力に対するエンジンブレーキ力の補正制御を説明するための模式図である。
【図11】この発明の制御装置による第4の制御例を実行した場合の圧縮比を変更して設定する際のマップの例である。
【図12】この発明の制御装置による第4の制御例における他の例を実行した場合の要求駆動力に対するエンジンブレーキ力の補正制御を説明するための模式図である。
【図13】この発明の制御装置による第4の制御例における他の例を実行した場合の圧縮比を変更して設定する際のマップの例である。
【符号の説明】
【0096】
1…エンジン(内燃機関;ENG)、 2…トルクコンバータ(流体伝動装置)、 2a…ロックアップクラッチ、 3…自動変速機(AT)、 7…駆動輪、 8…補機、 9…電子制御装置(ECU)、 Ve…車両。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮比を変更して制御可能な内燃機関と、該内燃機関の出力側に連結された自動変速機とを備え、前記内燃機関と前記自動変速機とを協調制御する車両の制御装置において、
前記自動変速機の変速比もしくは運転状態を制御する変速制御に対応させて前記圧縮比を変更する圧縮比協調制御手段を備えていることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記圧縮比協調制御手段は、前記変速制御により前記変速比を変更する変速を実行する場合、遅くとも前記変速の開始時に、前記圧縮比を相対的に高くするとともに、前記変速の完了前に、前記圧縮比を相対的に低くする手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記圧縮比協調制御手段は、前記変速制御により前記変速比を増大するダウンシフトを実行する場合、遅くとも前記ダウンシフトの開始時に、前記圧縮比を相対的に高くすることにより前記内燃機関の出力トルクを増大させるとともに、前記ダウンシフトの完了前に、前記圧縮比を相対的に低くすることにより前記出力トルクを減少させる手段を含むことを特徴とする請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記車両の走行中に前記内燃機関への燃料の供給を休止するフューエルカットを実行するフューエルカット制御手段を更に備え、
前記圧縮比協調制御手段は、前記変速制御により前記変速比を低減するアップシフトを実行する場合、遅くとも前記アップシフトの開始時に、前記フューエルカットを実行しかつ前記圧縮比を相対的に高くすることにより前記内燃機関の回転抵抗となるフリクショントルクを増大させるとともに、前記アップシフトの完了前に、前記フューエルカットを終了しかつ前記圧縮比を相対的に低くすることにより前記フリクショントルクを減少させる手段を含む
ことを特徴とする請求項2または3に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記自動変速機は、前記内燃機関との間に設けられたロックアップ機能付きの流体伝動装置を更に備え、
前記圧縮比協調制御手段は、前記流体伝動装置がロックアップされた場合に、前記内燃機関の出力トルクが大きいほど、および前記内燃機関の回転数が低いほど、前記圧縮比を相対的に低くする手段を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記車両の走行中に前記内燃機関への燃料の供給を休止するフューエルカットを実行するフューエルカット制御手段を更に備え、
前記圧縮比協調制御手段は、前記フューエルカットが実行されている前記車両の減速走行時に、前記内燃機関および前記自動変速機が有する慣性トルクと前記自動変速機の変速比とに応じて前記車両に作用する内燃機関制動力が前記車両の走行状態に基づいて設定される要求制動力に対して不足する場合に、その不足分を補うように前記圧縮比を相対的に高くして前記内燃機関の回転抵抗となるフリクショントルクを増大させる手段を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
前記内燃機関の出力トルクを動力源として駆動される補機を更に備え、
前記圧縮比協調制御手段は、前記補機が駆動されて前記内燃機関制動力が前記要求制動力に対して超過する場合に、その超過分を相殺するように前記圧縮比を相対的に低くして前記フリクショントルクを減少させる手段を含む
ことを特徴とする請求項6に記載の車両の制御装置。
【請求項8】
前記自動変速機は、前記内燃機関との間に設けられるとともに伝達トルク容量を変更して制御可能な流体伝動装置を更に備え、
前記圧縮比協調制御手段は、前記補機が駆動されて前記内燃機関制動力が前記要求制動力に対して超過する場合に、その超過分を相殺するように、前記圧縮比を相対的に低くして前記フリクショントルクを減少させ、かつ前記流体伝動装置の伝達トルク容量を相対的に大きくして前記内燃機関の回転数を低下させる手段を含む
ことを特徴とする請求項7に記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−132085(P2010−132085A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308919(P2008−308919)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】