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車両制御装置
説明

車両制御装置

【課題】運転者の意図に即した走行と燃費の向上を両立させることのできる車両制御装置を提供する。
【解決手段】車両の走行状態に基づく指標を求め、前記指標に応じて車両の走行特性を変化させる車両制御装置において、前記車両を機敏に走行させる方向への前記指標の前記走行状態の変化に対する変化を、前記車両の走行の機敏さを低下させる方向への前記指標の前記走行状態の変化に対する変化より遅くする指標設定手段(ステップS2)を有し、前記車両の駆動力源の出力を制御することに伴って、予め定めた範囲内で駆動力源の燃費エネルギ効率を変化させるように、前記指標に基づいて走行特性を補正設定するように構成された制御器(ステップS8)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の走行環境や運転者の嗜好、走行意図などに適合するように、車両の加速度などの走行状態に基づいて所定の指標を求め、その指標に応じて駆動力特性やシャシー特性などの走行特性を制御する制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に対する運転者の期待や要求は、運転シーン毎に区々であり、俊敏な走行(いわゆるスポーティな走行)を望む運転シーンや、これとは反対に滑らかでゆったりとした走行(いわゆるマイルドな走行)を望む運転シーンなど、車両が走行している際のシーンは多様である。これに対して、車両毎の走行特性は、車種などに応じて、設計段階で予め決められ、運転者の運転指向(もしくは運転嗜好)に完全には一致しない場合がある。
【0003】
このような不一致を可及的に是正することが従来種々試みられており、例えば特許文献1には、ニューロコンピュータを使用する駆動力制御装置であって、アクセルストロークおよび車速に対する加速度の関係を要求加速度モデルとして学習し、そのモデルと走りの指向を反映した第2の基準加速度モデルとの偏差、および第2の基準加速度モデルと標準的な第1の基準加速度モデルとの偏差に基づいてスロットル開度を演算するように構成された装置が規定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−249007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両は、ガソリンや軽油あるいは電気などのエネルギを消費して走行する輸送装置であるから、エネルギ効率あるいは燃費特性に優れていることが望ましい。ゆえに、エネルギ効率の向上と走行特性の改善との両立を図る技術を開発する必要がある。
【0006】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、運転者の運転指向に適合した走行特性を得られるとともに、エネルギ燃費効率(いわゆる燃費)を改善することのできる車両制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、車両の走行状態に基づく指標を求め、前記指標に応じて車両の走行特性を変化させる車両制御装置において、前記車両を機敏に走行させる方向への前記指標の前記走行状態の変化に対する変化を、前記車両の走行の機敏さを低下させる方向への前記指標の前記走行状態の変化に対する変化より遅くする指標設定手段を有し、前記車両の駆動力源の出力を制御することに伴って、予め定めた範囲内で駆動力源の燃費エネルギ効率を変化させるように、前記指標に基づいて走行特性を補正設定するように構成された制御器を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記走行状態は、前記車両の前後加速度成分と横加速度成分とを含む合成加速度を含み、前記指標設定手段は、前記指標を、前記合成加速度が大きいほど大きい値とする手段を含み、前記制御器は、前記指標が小さい合成加速度に基づいて求められたものであるときには、前記指標が大きい合成加速度に基づいて求められたものであるときよりも、前記駆動力源の燃費エネルギ効率が良好になる走行特性を設定するように構成されていることを特徴とする車両制御装置である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記車両は、前記制御器によって回転数が制御される内燃機関を備え、前記制御器の制御特性は、前記内燃機関の燃費が予め定め範囲内の燃費効率側となる特性に設定されることを特徴とする車両制御装置である。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記車両は、変速比を変化させることにより前記内燃機関の回転数が変化する変速機を更に備え、前記制御器は、前記変速機の変速比を変化させる制御器を含み、前記制御器の制御特性は、前記変速機の変速比に応じた前記内燃機関の回転数が前記予め定め範囲内の燃費効率が得られる回転数となるように前記変速比を制御する特性に設定されることを特徴とする車両制御装置である。
【0011】
請求項5の発明は、請求項3の発明において、前記内燃機関が出力した動力を分割する差動作用を行う動力分割機構と、その動力分割機構に連結されるとともに発電量に応じて前記内燃機関の回転数を変化させることのできる発電機とを更に備え、前記制御器は、前記発電機の回転数を制御して前記内燃機関の回転数を制御する制御器を含み、前記制御器の制御特性は、前記発電機の回転数に応じた前記内燃機関の回転数が前記予め定めた範囲内の燃費効率側の回転数となるように前記発電機の回転数を制御する特性に設定されることを特徴とする車両制御装置である。
【0012】
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記車両は、前記発電機で発電した電力を蓄える蓄電装置を更に備え、その蓄電装置に既に蓄えられている電力量が多い場合には、既に蓄えられている電力量が少ない場合に比較して、前記予め定めた範囲内の燃費効率側となる前記回転数が相対的に低回転数とされていることを特徴とする車両制御装置である。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかの発明において、前記加速度は、前記車両の前後加速度成分と横加速度成分とを含むことを特徴とする車両制御装置である。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1ないし7のいずれかの発明において、前記車両が走行する路面を含む前記車両の外部の環境である走行環境に関する情報を取得するとともに、前記制御器は、前記指標に加えて前記走行環境情報に応じて前記制御器の制御特性を変更するように構成されていることを特徴とする車両制御装置である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、制御器の制御特性を変更することにより駆動力源の制御特性が変更され、その制御器の制御特性は、車両の走行状態から求められる指標に応じて変更させられるので、車両の走行状態に適した制御特性、あるいは車両の走行状態として現れている運転者の運転指向に適した制御特性(もしくは走行特性)を設定することができる。しかも、制御器の制御特性は、駆動力源のエネルギ効率が予め定めた範囲内となるように設定されるので、運転指向に合わせてエネルギ効率を考慮した走行特性を設定することができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、加速度が小さいことに基づいて求められた指標による制御器の制御特性が、駆動力源のエネルギ燃費効率が良くなる側に設定され、これに加速度が大きいことに基づいて指標が求められた場合には、駆動力源のエネルギ燃費効率側からエネルギ出力効率側となるように要求最大加速度率を満たすように設定され、したがって、運転指向に合わせたエネルギ効率を考慮した走行特性を設定できる。
【0017】
請求項3の発明によれば、駆動力源として回転式内燃機関を備えた車両における運転指向に合わせたエネルギ効率を考慮した走行特性を設定できる。
【0018】
請求項4の発明によれば、内燃機関の回転数が変化する変速比を制御する制御器の制御特性を、前記指標に基づいて変化させることにより、内燃機関の回転数を燃費が所定の範囲に入りかつ前記指標に応じて特性となるように制御でき、その結果、運転指向に合わせたエネルギ効率を考慮した走行特性を設定できる。
【0019】
請求項5の発明によれば、内燃機関と発電機とを駆動力源とするハイブリッド車において運転指向に合わせたエネルギ効率を考慮した走行特性を設定できる。
【0020】
請求項6の発明によれば、そのハイブリッド車における蓄電装置の電力残量すなわち蓄電装置が既に有している電力量に応じて第1の制御装置の制御特性を変更するので、蓄電装置の電力残量に応じてハイブリッド車における運転指向に合わせたエネルギ効率を考慮した走行特性を設定できる。
【0021】
請求項7の発明によれば、運転者の運転指向が一層現れやすい合成加速度に基づいて駆動力特性や車両の挙動特性を設定することになるので、運転指向に合わせたエネルギ効率を考慮した走行特性を設定できる。
【0022】
請求項8の発明によれば、走行環境をも考慮した走行特性を設定できるので、運転指向に合わせたエネルギ効率を考慮した走行特性を設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明に係る制御装置で実行される、より具体的な制御例を説明するためのフローチャートである。
【図2】この発明で対象とすることのできる車両を模式的に示す図である。
【図3】2モータタイプのハイブリッド装置の一例を模式的に示す模式図である。
【図4】前後加速度および横加速度の検出値をタイヤ摩擦円上にプロットして示す図である。
【図5】瞬時SPIに基づく指示SPIの変化の一例を示す図である。
【図6】瞬時SPIと指示SPIとの偏差の時間積分とその積分値のリセットの状況を説明するための図である。
【図7】指示SPIと要求最大加速度率との関係を示すマップである。
【図8】指示SPIと要求エネルギ効率特性との関係を模式的に示す図である。
【図9】最小燃費率領域およびその領域を通る最小燃費線を模式的に示す図である。
【図10】無段変速機について基本変速補正手段で得られた目標回転数とスポーツモード回転数指示手段で得られた目標回転数とをマックスセレクトして制御指令信号とする変速制御系統を説明するためのブロック図である。
【図11】有段変速機について基本変速段補正手段で得られた目標変速段とスポーツモードギヤ段指示手段で得られた目標変速段とをミニマムセレクトして制御指令信号とする変速制御系統を説明するためのブロック図である。
【図12】指示SPIに基づいて求められた補正ギヤ比および補正アシストトルクを操舵特性に反映させる制御のブロック図である。
【図13】指示SPIに基づいて求められた車高長および補正減衰係数ならびに補正ばね定数を懸架特性に反映させる制御のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
つぎに具体例を参照してこの発明を説明する。この発明の制御装置が対象とする車両は、駆動力源が出力した動力を駆動輪に伝達して走行し、また前輪を操舵機構によって転舵することにより旋回走行し、さらに各車輪にブレーキが配置され、そして車体をサスペンション機構によって支持した一般的な構成の車両である。その駆動力源は、内燃機関(エンジン)によって構成され、あるいはエンジンと発電機(すなわちモータ・ジェネレータ)とによって構成され、あるいはモータによって構成されていてもよい。
【0025】
エンジンを駆動力源とする車両では、そのエンジンの出力側に有段式もしくは無段式の変速機を連結して設けることができる。したがって、この種の構成の車両では、エンジンのスロットル開度を変化させる機構および変速比を変化させる機構、あるいはこれらの機構を直接制御する機器がいわゆる第1の制御器に相当する。また、エンジンと発電機とを駆動力源として備えるいわゆるハイブリッド車では、遊星歯車機構などの差動作用のある動力分割機構にエンジンと発電機とを連結し、その発電機の回転数に応じて内燃機関の回転数を制御するように構成することができる。したがって、この種のハイブリッド車では、エンジンのスロットル開度を変化させる機構および発電機の発電量や回転数を変化させる機構、あるいはこれらの機構を直接制御する機器がいわゆる第1の制御器に相当する。さらに、モータを駆動力源とする車両にあっては、必要に応じてその出力側に変速機を連結して設けることができる。したがって、この種のいわゆる電気自動車では、モータの電流を変化させる機構および変速比を変化させる機構、あるいはこれらの機構を直接制御する機器がいわゆる第1の制御器に相当する。
【0026】
また、この発明に係る制御装置は、前記エンジンや変速機などの駆動系統の制御と併せて、操舵機構による操舵の制御内容、ブレーキによる制動制御の内容、サスペンション機構による車体の支持制御の内容を、車両の走行状態に基づいて変更するように構成されている。これらの各機構は車両の挙動を変化させるように動作するものであるから、結局、この発明に係る制御装置は、挙動特性を車両の走行状態に基づいて変更するように構成されている。したがって、この発明における走行特性には、駆動力源や変速機あるいはブレーキによる駆動力特性、操舵機構による操舵特性もしくは回頭性あるいはパワーアシスト特性、サスペンション機構による懸架特性もしくはダンパー特性などが含まれ、以下の説明で「走行特性」とはこれらの特性の総称を意味することがある。そして、ブレーキによる制動特性や、操舵機構による操舵特性もしくは回頭性あるいはパワーアシスト特性、サスペンション機構による懸架特性もしくはダンパー特性などの車両の挙動特性を変化させるアクチュエータあるいは制御器がいわゆる第2の制御器に相当する。
【0027】
また、この発明に係る制御装置では、走行状態から指標(パラメータ)を求める。その走行状態とは、前後方向あるいは横方向の加速度、これらの加速度を合成した合成加速度、アクセル操作量、ブレーキ操作量、ヨーイングの程度、ヨーレートなどを含み、また加速度には、センサで検出された実測加速度や、アクセル操作量もしくはブレーキ操作量から算出される推定加速度が含まれる。以下に説明する具体例は、加速度から求まる指標を使用する例である。
【0028】
先ず、この発明で対象とする車両の一例を説明すると、この発明で対象とする車両は、運転者の操作によって加減速し、また旋回する車両であり、その典型的な例が、内燃機関やモータを駆動力源とした自動車である。その一例を図2にブロック図で示してある。ここに示す車両1は、操舵輪である二つの前輪2と、駆動輪である二つの後輪3との四輪を備えた車両であり、これらの四輪2,3のそれぞれは懸架装置4によって車体(図示せず)に取り付けられている。この懸架装置4は、一般に知られているものと同様に、スプリングとショックアブソーバー(ダンパー)とを主体として構成されており、図2にはそのショックアブソーバー5を示してある。ここに示すショックアブソーバー5は、気体や液体などの流体の流動抵抗を利用して緩衝作用を生じさせるように構成され、モータ6などのアクチュエータによってその流動抵抗を大小に変更できるように構成されている。すなわち、流動抵抗を大きくした場合には、車体が沈み込みにくく、いわゆる硬い感じとなり、車両の挙動としては、コンフォートな感じが少なくなって、スポーティ感が増大する。なお、これらのショックアブソーバー5に加圧気体を給排することによって車高の調整を行うように構成することもできる。
【0029】
前後輪2,3のそれぞれには、図示しないブレーキ装置が設けられており、運転席に配置されているブレーキペダル7を踏み込むことによりブレーキ装置が動作して前後輪2,3に制動力を与えるように構成されている。
【0030】
車両1の駆動力源は、内燃機関やモータあるいはこれらを組み合わせた機構など、従来知られている構成の駆動力源であり、図2には内燃機関(エンジン)8を搭載している例を示してあり、このエンジン8の吸気管9には、吸気量を制御するためのスロットルバルブ10が配置されている。このスロットルバルブ10は、電子スロットルバルブと称される構成のものであって、モータなどの電気的に制御されるアクチュエータ11によって開閉動作させられ、かつ開度が調整されるように構成されている。そして、このアクチュエータ11は、運転席に配置されているアクセルペダル12の踏み込み量すなわちアクセル開度に応じて動作してスロットルバルブ10を所定の開度(スロットル開度)に調整するように構成されている。
【0031】
そのアクセル開度とスロットル開度との関係は適宜に設定でき、両者の関係が一対一に近いほど、いわゆるダイレクト感が強くなって車両の走行特性は、スポーティな感じになる。これとは反対にアクセル開度に対してスロットル開度が相対的に小さくなるように特性を設定すれば、車両の走行特性はいわゆるマイルドな感じになる。なお、駆動力源としてモータを使用した場合には、スロットルバルブ10に替えてインバータあるいはコンバータなどの電流制御器を設け、アクセル開度に応じてその電流を調整するとともに、アクセル開度に対する電流値の関係すなわち走行特性を適宜に変更するように構成する。
【0032】
エンジン8の出力側に変速機13が連結されている。この変速機13は、入力回転数と出力回転数との比率すなわち変速比を適宜に変更するように構成されており、例えば従来知られている有段式の自動変速機やベルト式無段変速機あるいはトロイダル型無段変速機などの変速機である。したがって、変速機13は、図示しないアクチュエータを備え、そのアクチュエータを適宜に制御することにより変速比をステップ的(段階的)に変化させ、あるいは連続的に変化させるように構成されている。具体的には、運転者のアクセル操作に基づくアクセル開度や車速などの車両の状態に対応させて変速比を決めた変速マップを予め用意し、その変速マップに従って変速制御を実行し、あるいは車速やアクセル開度などの車両の状態に基づいて目標出力を算出し、その目標出力と最適燃費線とから目標エンジン回転数を求め、その目標エンジン回転数となるように変速制御を実行する。
【0033】
このような基本的な変速制御に対して燃費優先のエネルギ効率制御や駆動力を増大させるエネルギ効率制御を選択できるように構成されている。燃費を優先するエネルギ効率制御は、アップシフトを相対的に低車速で実行する制御もしくは相対的に高速側変速比を低車速側で使用する制御であり、また駆動力もしくは加速特性を向上させるエネルギ効率制御は、アップシフトを相対的に高車速で実行する制御もしくは相対的に低速側変速比を高車速側で使用する制御である。このような制御は、変速マップを切り替えたり、駆動要求量を補正したり、あるいは算出された変速比を補正したりして行うことができる。なお、エンジン8と変速機13との間に、ロックアップクラッチ付きのトルクコンバータなどの伝動機構を、必要に応じて設けることができる。そして、変速機13の出力軸が終減速機であるデファレンシャルギヤ14を介して後輪(駆動輪)3に連結されている。
【0034】
前輪2を転舵する操舵機構15について説明すると、ステアリングホイール16の回転動作を左右の前輪2に伝達するステアリングリンケージ17が設けられ、またステアリングホイール16の操舵角度もしくは操舵力をアシストするアシスト機構18が設けられている。このアシスト機構18は、図示しないアクチュエータを備え、そのアクチュエータによるアシスト量を調整できるように構成されており、したがってアシスト量を少なくすることにより操舵力(もしくは操舵角)と前輪2の実際の転舵力(もしくは転舵角)とが一対一の関係に近くなり、いわゆる操舵のダイレクト感が増して、車両の走行特性がいわゆるスポーティな感じになるように構成されている。
【0035】
なお、特には図示しないが、上記の車両1には挙動あるいは姿勢を安定化させるためのシステムとして、アンチロック・ブレーキ・システム(ABS)やトラクションコントロールシステム、これらのシステムを統合して制御するビークルスタビリティコントロールシステム(VSC)などが設けられている。これらのシステムは従来知られているものであって、車体速度と車輪速度との偏差に基づいて車輪2,3に掛かる制動力を低下させ、あるいは制動力を付与し、さらにはこれらと併せてエンジントルクを制御することにより、車輪2,3のロックやスリップを防止もしくは抑制して車両の挙動を安定させるように構成されている。また、走行路や走行予定路に関するデータ(すなわち走行環境)を得ることのできるナビゲーションシステムや、スポーツモードとノーマルモードおよび低燃費モード(エコモード)となどの走行モードを手動操作で選択するためのスイッチを設けてあってもよく、さらには登坂性能や加速性能あるいは回頭性などの走行特性を変化させることのできる四輪駆動機構(4WD)を備えていてもよい。
【0036】
上記のエンジン8や変速機13あるいは懸架装置4のショックアブソーバー5、前記アシスト機構18、上述した図示しない各システムなどを制御するためのデータを得る各種のセンサが設けられている。その例を挙げると、前後輪2,3の回転速度を検出する車輪速センサ19、アクセル開度センサ20、スロットル開度センサ21、エンジン回転数センサ22、変速機13の出力回転数を検出する出力回転数センサ23、操舵角センサ24、前後加速度(Gx)を検出する前後加速度センサ25、横方向(左右方向)の加速度(横加速度Gy)を検出する横加速度センサ26、ヨーレートセンサ27などが設けられている。なお、各加速度センサ25,26は、上記のアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)やビークルスタビリティコントロールシステム(VSC)などの車両挙動制御で用いられている加速度センサと共用することができ、あるいはエアバッグを搭載している車両では、その展開制御のために設けられている加速度センサと共用することができる。さらに、前後左右の加速度Gx,Gyは、水平面上で、車両の前後方向に対して所定角度(例えば45°)傾斜させて配置した加速度センサで検出した検出値を、前後加速度および横加速度に分解して得ることとしてもよい。またさらに、前後左右の加速度Gx,Gyはセンサーによって検出することに替えて、アクセル開度や車速、ロードロード、操舵角度などに基づいて演算して求めてもよい。これらのセンサ19,〜27は、電子制御装置(ECU)28に検出信号(データ)を伝送するように構成されており、また電子制御装置28はそれらのデータおよび予め記憶しているデータならびにプログラムに従って演算を行い、その演算結果を制御指令信号として上述した各システムあるいはそれらのアクチュエータに出力するように構成されている。なお、合成加速度は、車両の前後方向の加速度成分と、車幅方向(横方向)の加速度成分とを含む加速度等の複数の方向の加速度成分を含む加速度に限らず、車両前後方向のみ等、いずれか一の方向の加速度を用いてもよい。
【0037】
なお、ここで、ハイブリッド車における駆動力源の一例を説明すると、図3はいわゆる2モータタイプのハイブリッド装置を模式的に示しており、エンジン8の動力を第1モータ・ジェネレータ(MG1)50と出力軸51とに分割するように構成されている。その分割のための動力分割機構52として差動作用のある遊星歯車機構が設けられており、図3に示す例では、サンギヤ53とリングギヤ54との間に配置したピニオンギヤをキャリヤ55によって自転および公転が可能に保持したシングルピニオン型の遊星歯車機構が採用されている。そのキャリヤ55にエンジン8が連結され、かつサンギヤ53に第1モータ・ジェネレータ50が連結され、さらにリングギヤ54に出力軸51が連結されている。第1モータ・ジェネレータ50は、発電機能のある電動機であって、動力分割機構52が差動作用をなすことにより、第1モータ・ジェネレータ50の回転数に応じてエンジン8の回転数が変化し、したがって第1モータ・ジェネレータ50によってエンジン回転数を制御できるように構成されている。
【0038】
その第1モータ・ジェネレータ50は、インバータ56を介して蓄電装置57に連結されている。すなわち、インバータ56によって第1モータ・ジェネレータ50の発電量や第1モータ・ジェネレータ50が電動機として機能する場合のトルクあるいは回転数を制御するように構成されている。さらに、出力軸51に第2モータ・ジェネレータ58が連結されており、この第2モータ・ジェネレータ58は他のインバータ59を介して蓄電装置57に接続されている。そして、各モータ・ジェネレータ50,58の間で電力を相互に供給できるように構成されている。すなわち、第1モータ・ジェネレータ50が発電機として機能した場合には、その電力を第2モータ・ジェネレータ58に供給して第2モータ・ジェネレータ58を電動機として機能させ、エンジン8が出力した動力の一部を電力に一旦変換した後、その動力を出力軸51に伝達するように構成されている。
【0039】
この発明に係る制御装置は、車両の走行状態を車両の挙動制御(すなわち走行特性の制御)に反映させるように構成されている。ここで車両の走行状態とは、前後加速度や横加速度あるいはヨーイングやローリングの加速度、もしくはこれら複数方向の加速度を合成した加速度で表される状態である。すなわち、車両を目標とする速度で走行させたり、目標とする方向に進行させたりすることにより、あるいは路面などの走行環境の影響を受けて車両の挙動を元の状態に戻したりする場合に、複数方向の加速度が生じるのが通常であることを考慮すると、車両の走行状態は走行環境や運転指向をある程度反映していると考えられる。このような背景に基づきこの発明では、車両の走行状態を車両の走行特性の制御に反映させるように構成されている。
【0040】
前述したように、車両の挙動には、加速性や回頭性(旋回性)、懸架装置4による支持剛性(すなわちバンプ・リバウンドの程度や生じやすさ)、ローリングやピッチングの程度などが含まれ、この発明に係る制御装置では、これらの走行特性の変更の要因の一つとして上記の走行状態を含んでいる。その場合、上記の走行状態の一例であるいずれかの方向の加速度もしくは合成加速度の値をそのまま使用して走行特性を変更してもよいが、より違和感を減らすため、それらの値を補正した指標を用いてもよい。
【0041】
その指標の一例としてスポーツ度(SPI:Sports Index)について説明する。ここで、スポーツ度とは、運転者の意図または車両の走行状態を示す指標である。この発明で採用することのできるスポーツ度は、複数方向の加速度(特にその絶対値)を合成して得られる指標であり、走行方向に対する挙動に大きく関係する加速度として前後加速度Gxと横加速度Gyとを合成した加速度がその例である。例えば、
瞬時スポーツ度(瞬時SPI)Iin=(Gx+Gy1/2
で算出される。ここで、加速度はセンサで検出された加速度に限らず、アクセル開度や操舵角、ブレーキ踏力もしくはブレーキペダルの踏み込み量などの運転者による操作に基づいて演算もしくは推定されたものであってもよい。また、「瞬時スポーツ度Iin」とは、車両の走行中における各瞬間毎に、各方向の加速度が求められ、その加速度に基づいて算出される指標という意味であり、いわゆる物理量である。なお、「各瞬間毎」とは、加速度の検出およびそれに基づく瞬時スポーツ度Iinの算出が所定のサイクルタイムで繰り返し実行される場合には、その繰り返しの都度を意味する。
【0042】
また、上記の演算式に用いられる前後加速度Gxのうち、加速側の加速度もしくは減速側(制動側)の加速度(すなわち減速度)の少なくともいずれか一方は、正規化処理されたもの、あるいは重み付け処理したものを用いてもよい。すなわち、一般的な車両では、加速側の加速度に対して減速側の加速度の方が大きいが、その相違は運転者にはほとんど体感もしくは認識されず、多くの場合、加速側および減速側の加速度がほぼ同等に生じていると認識されている。正規化処理とは、このような実際の値と運転者が抱く感覚との相違を是正するための処理であり、前後加速度Gxについては、加速側の加速度を大きくし、あるいは減速側の加速度(すなわち減速度)を小さくする処理である。より具体的には、それぞれの加速度の最大値の比率を求め、その比率を加速側あるいは減速側の加速度に掛ける処理である。もしくは横加速度に対する減速側の加速度を補正する重み付け処理である。要は、タイヤで生じさせることのできる前後駆動力および横力がタイヤ摩擦円で表されるのと同様に、各方向の最大加速度が所定半径の円周上に位置するように、前後の少なくともいずれか一方を重み付けするなどの補正を行う処理である。したがって、このような正規化処理と重み付け処理とを行うことにより、加速側の加速度と減速側の加速度との走行特性に対する反映の程度が異なることになる。そこで重み付け処理の一例として、車両の前後の減速方向の加速度と、車両の前後の加速方向の加速度とのうち、加速方向の加速度の影響度が、減速方向の加速度の影響に対して相対的に大きくなるよう、減速方向の加速度と、加速方向の加速度とを重み付け処理してもよい。なお、横加速度は加速側加速度より大きく現れることがあるので、横加速度についても正規化処理を行ってもよい。
【0043】
このように、加速度の実際値と運転者が抱く感覚とには、加速度の方向によって相違がある。例えばヨーイング方向やローリング方向での加速度と前後加速度とには、そのような相違があることが考えられる。そこでこの発明では、方向が異なる加速度ごとの走行特性に対する反映の程度、言い換えれば、いずれかの方向の加速度に基づく走行特性の変化の程度を、他の方向の加速度に基づく走行特性の変化の程度とは異ならせるように構成することができる。
【0044】
横加速度Gyのセンサ値および上記の正規化処理を行った前後加速度Gyをタイヤ摩擦円上にプロットした例を図4に示してある。これは、一般道を模擬したテストコースを走行した場合の例であり、大きく減速する場合に横加速度Gyも大きくなる頻度は多く、タイヤ摩擦円に沿って前後加速度Gxと横加速度Gyとが生じるのは一般的な傾向であることが看て取れる。
【0045】
この発明では、上記の瞬時スポーツ度Iinから指示スポーツ度(指示SPI)Iout が求められる。この指示スポーツ度Iout は、走行特性を変更する制御に用いられる指標であり、その算出の元になる前記瞬時スポーツ度Iinの増大に対しては直ちに増大し、瞬時スポーツ度Iinの低下に対して遅れて低下するように構成した指標である。特に、所定の条件の成立を要因として指示スポーツ度Iout を低下させるように構成されている。図5には、瞬時スポーツ度Iinの変化に基づいて求められた指示スポーツ度Iout の変化を示してある。ここに示す例では、瞬時スポーツ度Iinは上記の図4にプロットしてある値で示し、これに対して、指示スポーツ度Iout は、瞬時スポーツ度Iinの極大値に設定され、所定の条件が成立するまで、従前の値を維持するように構成されている。すなわち、指示スポーツ度Iout は、増大側には迅速に変化し、低下側には相対的に遅く変化する指標として構成されている。
【0046】
具体的に説明すると、図5における制御の開始からT1 の時間帯では、例えば車両が制動旋回した場合など、その加速度の変化によって得られる瞬時スポーツ度Iinが増減するが、前回の極大値を上回る瞬時スポーツ度Iinが、前述した所定の条件の成立に先行して生じるので、指示スポーツ度Iout が段階的に増大し、保持する。これに対してt2 時点あるいはt3 時点では、例えば車両が旋回加速から直線加速に移行した場合など、低下のための条件が成立したことにより指示スポーツ度Iout が低下する。このように指示スポーツ度Iout を低下させる条件は、要は、指示スポーツ度Iout を従前の大きい値に保持することが運転者の意図と合わないと考えられる状態が成立することであり、この発明では時間の経過を要因として成立するように構成されている。
【0047】
すなわち、指示スポーツ度Iout を従前の大きい値に保持することが運転者の意図と合わないと考えられる状態は、保持されている指示スポーツ度Iout とその間に生じている瞬時スポーツ度Iinとの乖離が相対的に大きく、かつその状態が継続している状態である。したがって、旋回加速コントロールした場合など、運転者によってアクセルペダル12を一時的に緩めるなどの操作に起因する瞬時スポーツ度Iinによっては指示スポーツ度Iout を低下させずに、緩やかに減速に移行した場合など、運転者によってアクセルペダル12を連続的に緩めるなどの操作に起因する瞬時スポーツ度Iinが、保持されている指示スポーツ度Iout を下回っている状態が所定時間継続した場合に、指示スポーツ度Iout を低下させる条件が成立した、とするように構成されている。このように指示スポーツ度Iout の低下開始条件は、瞬時スポーツ度Iinが指示スポーツ度Iout を下回っている状態の継続時間とすることができ、また実際の走行状態をより的確に指示スポーツ度Iout に反映させるために、保持されている指示スポーツ度Iout と瞬時スポーツ度Iinとの偏差の時間積分値(あるいは累積値)が予め定めたしきい値に達することを指示スポーツ度Iout の低下開始条件とすることができる。なお、そのしきい値は、運転者の意図に合った走行実験やシミュレーションなどに基づいて適宜に設定できる。後者の偏差の時間積分値を用いるとすれば、指示スポーツ度Iout と瞬時スポーツ度Iinとの偏差および時間を加味して指示スポーツ度Iout を低下させることになるので、実際の走行状態あるいは挙動をより的確に反映した走行特性の変更制御が可能になる。
【0048】
なお、図5に示す例では、上記のt2 時点に到るまでの指示スポーツ度Iout の保持時間が、t3 時点に到るまでの指示スポーツ度Iout の保持時間より長くなっているが、これは以下の制御を行うように構成されているためである。すなわち、前述したT1 の時間帯の終期に指示スポーツ度Iout が所定値に増大させられて保持され、その後、前述した低下開始条件が成立する前のt1 時点に瞬時スポーツ度Iinが増大して、保持されている指示スポーツ度Iout との偏差が予め定めた所定値以下となっている。なお、その所定値は、運転者の意図に合った走行実験やシミュレーションを行って、あるいは瞬時スポーツ度Iinの算出誤差を考慮して適宜に設定できる。このように瞬時スポーツ度Iinが保持されている指示スポーツ度Iout に近くなったということは、その時点の走行状態が、保持されている指示スポーツ度Iout の元になった瞬時スポーツ度Iinを生じさせた加減速状態および/または旋回状態もしくはそれに近い状態になっていることを意味している。すなわち指示スポーツ度Iout を保持されている値に増大させた時点からある程度時間が経過しているとしても、走行状態はその時間が経過する前の時点の走行状態と近似しているので、瞬時スポーツ度Iinが保持されている指示スポーツ度Iout を下回る状態であっても、前述した低下開始条件の成立を遅延させ、指示スポーツ度Iout を従前の値に保持させることとしたのである。その遅延のための制御もしくは処理は、前述した経過時間の積算値(累積値)や偏差の積分値をリセットして、経過時間の積算や前記偏差の積分を再開したり、あるいはその積算値もしくは積分値を所定量減じたり、さらには積算もしくは積分を一定時間中断したりして行えばよい。
【0049】
図6は前述した偏差の積分とそのリセットとを説明するための模式図であり、図6にハッチングを施してある部分の面積が偏差積分値に相当する。その過程で、瞬時スポーツ度Iinと指示スポーツ度Iout との差が所定値Δd以下になったt11時点に積分値がリセットされ、再度、前記偏差の積分が開始される。したがって、その低下開始条件が成立しないので、指示スポーツ度Iout は従前の値に維持される。そして、積分を再開した後、瞬時スポーツ度Iinが保持されている指示スポーツ度Iout より大きい値になると、指示スポーツ度Iout が瞬時スポーツ度Iinに応じた大きい値に更新され、かつ保持され、前記の積分値がリセットされる。
【0050】
ところで、この発明に係る制御装置では、加速度に基づいて指標を求め、その指標に応じて走行特性を設定するように構成されている。その加速度は、センサによって得られたいわゆる実加速度であってよいが、これに替えて駆動要求量や車速あるいは制動操作量、さらには操舵角度などから演算して求められた推定加速度(あるいは目標加速度)であってもよい。また、実加速度と目標加速度とを併用することとしてもよい。実加速度と目標加速度とを併用する場合、それぞれの加速度に応じて指標(第1の指標および第2の指標)を求め、それらの指標を比較していわゆるスポーツ度が高くなる指標を採用してもよい。例えば、実加速度に基づいていわゆる実瞬時スポーツ度Iinおよびそれに基づく実指示スポーツ度Iout を求める一方、目標加速度に基づいていわゆる目標瞬時スポーツ度Iinおよびそれに基づく目標指示スポーツ度Iout を求め、これら実指示スポーツ度Iout と目標指示スポーツ度Iout とのうち大きい値を採用し、その採用された指示スポーツ度Iout に応じて走行特性を設定してもよい。
【0051】
上述したいわゆる実加速度あるいは推定加速度に基づいて瞬時スポーツ度Iinが算出され、その瞬時スポーツ度Iinから決まる上記の指示スポーツ度Iout は、車両の走行状態を表しており、これは、路面勾配やコーナの有無あるいはその曲率などの走行環境、さらに運転者の運転指向を含んだものとなっている。走行路の状態によって車両の加速度が変化するとともに、走行路の状態によって運転者による加減速操作が行われ、さらにはその加減速操作によって加速度が変化するからである。この発明に係る制御装置は、その指示スポーツ度Iout を車両の走行特性の制御に利用するように構成されている。この発明における走行特性には、加速特性や操舵特性、サスペンション特性、音特性などが含まれ、これらの特性は、前述したスロットルバルブ10の制御特性、変速機13の変速特性、懸架装置4におけるショックアブソーバー5による減衰特性、アシスト機構18のアシスト特性などをそれぞれに設けられているアクチュエータによって変化させることにより適宜に設定される。その走行特性の変化の一般的な傾向は、指示スポーツ度Iout が大きいほど、いわゆるスポーティな走行が可能になる特性の変化である。
【0052】
ここで説明している具体例における上記の指示スポーツ度Iout は、前後加速度Gxと横加速度Gyとを合成した指標であり、その合成加速度すなわち瞬時スポーツ度Iinが大きいほど大きい値に設定される。したがって、指示スポーツ度Iout に基づく走行特性は、基本的には、指示スポーツ度Iout の値が大きくなるのに従って、よりスポーティな走行が可能な特性となる。この発明に係る制御装置は、走行特性を運転者の運転指向に合わせると同時に、車両のエネルギ効率が良好になるように、言い換えればエネルギ効率が損なわれないように、走行特性を設定するように構成されている。その一例を図1に簡略化したフローチャートによって示してある。この図1に示すルーチンは、上述した指示スポーツ度Iout に基づいて走行特性を設定して走行するモードが、運転者によって選択され、あるいはモード切替スイッチを操作して選択された場合に実行されるように構成されており、先ず、その時点の走行状態を示す指標が演算される(ステップS1)。その指標は、一例として前述した瞬時スポーツ度Iin(あるいは合成加速度:合成G)であり、したがってその時点における運転者の運転指向や、道路勾配あるいは曲線路などの道路環境などを反映したものとなっている。ついで、走行特性を変更する元データとなる指示スポーツ度Iout が演算される(ステップS2)。なお、これら瞬時スポーツ度Iinおよび指示スポーツ度Iout の演算の仕方は前述したとおりである。
【0053】
さらに、加速度の時間微分値(すなわちジャーク)が演算される(ステップS3)。ここで説明している例では、前後加速度Gxと横加速度Gyとの合成加速度を、車両の走行状態を表すデータとして使用しているので、その合成加速度の時間微分値がジャークとして採用されている。すなわち、
ジャーク={(dGx/dt)+(dGy/dt)1/2
である。こうして演算されたジャーク(すなわち瞬時スポーツ度(合成加速度)Iinの時間微分値)が予め定めた禁止判断閾値αより大きいか否かが判断される(ステップS4)。この禁止判断閾値αは、加速度の変化と走行特性の変更に伴う挙動の変化とが重畳することが好ましくないと考えられるジャークの下限値であり、走行実験やシミュレーションなどによって予め定めたものである。そして、この禁止判断閾値αは、走行特性の全体について一つの値を設定することができるが、これとは異なり、走行特性を規定する(走行特性に含まれる)駆動力特性や変速特性、操舵特性、懸架特性(ダンパ特性もしくはサスペンション特性)などの各特性毎に設定することができる。その場合、変化が車両の搭乗者に体感されやすい特性についての禁止判断閾値αほど小さい値とする。こうすることにより、加速度が変化している際の、変化が体感されやすい特性の変化が、より強く制限される。さらにまた、上記の禁止判断閾値αは、一定値であってもよく、あるいは車速などの他の要因に応じて変化する変数であってもよい。
【0054】
ジャークが上記の禁止判断閾値より大きいことによりステップS4で肯定的に判断された場合には、フラグFが立てられる(ステップS5)。すなわち、フラグFが「1」にセットされる。ついで、ジャークが許可判断閾値βより小さいか否かが判断される(ステップS6)。この許可判断閾値βは、ジャークが低下している場合のジャークの値を評価するためのものであり、より具体的には、走行特性の変更を開始し得る程度までジャークが低下しているか否かを判断するためのものである。この許可判断閾値βは、走行特性の変更に伴う車両の挙動が加速度の変化と重畳してもよいと考えられるジャークの程度を判断し、もしくは走行特性の変更が、加速度の変化がほぼ無くなっている状態で終了するように走行特性の変更制御のタイミングを判断するためのものであり、走行実験やシミュレーションなどによって予め定めたものである。そして、この許可判断閾値βは、走行特性の全体について一つの値を設定することができるが、これとは異なり、走行特性を規定する(走行特性に含まれる)駆動力特性や変速特性、操舵特性、懸架特性(ダンパ特性もしくはサスペンション特性)などの各特性毎に設定することができる。その場合、変化が車両の搭乗者に体感されやすい特性についての許可判断閾値βほど小さい値とする。こうすることにより、加速度が変化している際の、変化が体感されやすい特性の変化が、より強く制限される。さらにまた、上記の許可判断閾値βは、一定値とすることができ、例えばゼロに近い値とすることができる。これに替えて許可判断閾値βは、ジャークが前述した禁止判断閾値αを超えていた場合の値(例えば最大値)に応じた値とすることができる。具体的には、ジャークの最大値が大きいほど、許可判断閾値βを大きい値とすることができる。
【0055】
上記のフラグFを「1」にセットした時点もしくは直後では、ジャークが増大しているからジャークが許可判断閾値βを下回ることはなく、したがってステップS6で否定的に判断される。この場合は、図1に示すルーチンを一旦終了する。すなわち、ジャークが禁止判断閾値αを超えていることにより、たとえ大きい加速度が生じていて走行特性を変更する状態が成立していても、走行特性(特に駆動力に変化が生じる変速特性や出力特性など)の変更が禁止される。
【0056】
一方、上記のステップS4で否定的に判断された場合、すなわちジャークが禁止判断閾値α以下になっている場合、フラグFが「1」か否かが判断される(ステップS7)。ジャークが禁止判断閾値α以下となるのは、ジャークが増大しても禁止判断閾値αを超えなかった場合と、ジャークが禁止判断閾値αを超えた後に低下して禁止判断閾値α以下になった場合との両方がある。前者の場合、すなわちジャークが禁止判断閾値αを超えなかった場合には、フラグFが「1」にセットされていないので、ステップS7で否定的に判断される。この場合は、ジャークが直前の状態として禁止判断閾値αを超えたことがないことになり、その場合、指示スポーツ度Iout に基づいて定まる走行特性の補正量が演算される(ステップS8)。特にこの発明に係る制御装置では、駆動力特性についての補正量が演算される。その駆動力特性には、アクセル操作量に対する駆動力源(具体的にはエンジンやモータ)の出力特性や変速機の変速比制御特性など駆動力に関係する制御の特性が含まれ、図1に示す例では、要求最大加速度率の補正量を求める例が示されている。
【0057】
ここで要求最大加速度率とは、余裕駆動力を規定するものであって、例えば要求最大加速度率が100%とは、車両が発生し得る最大の加速度を可能にする状態であり、変速機13についてはエンジン回転数が最大になる変速比もしくは最も大きい変速比(最も低車速側の変速比)を設定することである。また例えば要求最大加速度率が50%とは、車両が発生し得る最大の加速度の半分の加速度を可能にする状態であり、変速機13については中間の変速比を設定することである。図7に示す例では、指示スポーツ度Iout が大きくなるほど要求最大加速度率が大きくなるように構成されている。図7に実線で示す基本特性は、車両を実際に走行させて得られたデータに基づいて指示スポーツ度Iout と要求最大加速度率との関係を計算して求めたものであり、実車による走行やシミュレーションを行って適宜に修正を加えたものである。この基本特性に対して要求最大加速度率が大きくなる側に特性線を設定した場合には、車両の加速度が相対的に大きくなるので、いわゆるスポーティな走行特性もしくは加速特性となる。これとは反対に要求最大加速度率が小さくなる側に特性線を設定した場合には、車両の加速度が相対的に小さくなるので、いわゆるコンフォートな走行特性もしくは加速特性となる。これらの調整(すなわち適合もしくはチューニング)は、車両に要求される商品性などに応じて適宜行えばよい。なお、基本特性では、指示スポーツ度Iout がゼロより大きい状態で要求最大加速度率がゼロとなるように設定してあるのは、交通渋滞や車庫入れなどの微速走行状態を加速特性を設定もしくは変更するための制御に反映させないようにしたためである。
【0058】
この指示スポーツ度Iout に基づく走行特性のエネルギ効率を考慮した要因として、指示スポーツ度Iout 自体の値、ハイブリッド車においては要求発電量、駆動力源から駆動輪までのパワートレーンの燃費効率、ナビゲーションシステムによって得られる走行路に関する情報(郊外路や高速道路の種別などの走行環境情報)、登降坂路の勾配情報などの走行環境情報を挙げることができる。その一例として指示スポーツ度Iout 自体の値の大小に応じて要求最大加速度率を補正する例を説明すると、図8は指示スポーツ度(指示SPI)Iout の値に応じて設定した要求エネルギ効率特性を模式的に示しており、この要求エネルギ効率特性は、前述した要求最大加速度率を要求エネルギ効率特性に反映させる程度を示す指標である。図8に示す例では、要求エネルギ効率特性は、指示スポーツ度Iout が小さい値では燃費側効率を重視した特性に設定され、大きい値では走り側(スポーツ側)を重視した特性に設定されるように構成されている。小さい値に設定され、所定値以上では指示スポーツ度Iout の値に応じて増大するように構成されている。
【0059】
こうして求められた補正量に基づいて変速特性が演算される(ステップS9)。指示スポーツ度Iout が小さくなるに従って、燃費を重視した回転数に補正される。すなわち、回転数が下がり、アクセルペダルの踏み込み量も増えるのでアクセルコントロールの余裕幅を持った特性が得られる。その結果、スロットル開度が開き側でコントロールされるようになり、燃費効率の向上が図れる。ステップS9の後、フラグFがゼロリセットされて(ステップS10)、このルーチンを一旦終了する。
【0060】
上記のように指示スポーツ度Iout の値に応じて補正を行う制御では、検出もしくは推定された合成加速度すなわち瞬時スポーツ度Iinが小さいことにより指示スポーツ度Iout の値が小さいと、指示スポーツ度Iout に基づいて求まる要求最大加速度率が要求エネルギ効率特性の値に応じて減少補正される。その結果、エンジン8は、その運転点が最適燃費線上もしくはこれに近い燃費線上にあるように制御される。すなわち、車両の一般的(もしくは基本的)な駆動力特性は、少なくとも定常走行状態あるいはこれに近い準定常走行状態で燃費が最小となるように設定されている。その燃費が最小となる運転点もしくは運転領域(最小燃費率領域)は、エンジンの回転数を横軸に取り、トルクを縦軸に取った線図に示せば、所定の回転数およびトルクを中心とした楕円で示され、その外側に燃費が順次悪くなる領域がいわゆる等高線で示される。最適燃費線は、その燃費が最小となる領域を通り、かつ使用頻度の高い運転点がその領域に入るように設定される。図9は、最小燃費領域と各エンジン回転数の最小燃費線とを模式的に示しており、前述したように、エンジン8および変速機13の制御内容すなわち特性が補正される。
【0061】
一方、指示スポーツ度Iout の値が大きい場合には、図8に示すように要求エネルギ効率特性の値が走り側に大きくなり、要求最大加速度率の減少補正の程度が小さくなり、あるいは減少補正されることなく、駆動力特性に反映される。この場合は、燃費が幾分低下するものの、運転者の運転指向や走行環境に適したアクセルコントロール余裕幅の大きい走行が可能になる。
【0062】
上記の制御が行われる走行例を制動時やワィンディング路を走行する場合を例にとって説明する。ブレーキペダルを踏み込むなどのことによる減速度が大きいと、前後加速度の絶対値が大きくなるので前述した瞬時スポーツ度Iinが大きくなる。その値が、その時点に保持されている指示スポーツ度Iout を設定することになった従前の瞬時スポーツ度Iinより大きいと、指示スポーツ度Iout が増大する。そして、その指示スポーツ度Iout に応じた要求最大加速度率が設定されるので、低車速側の変速比が多用される変速特性に切り替わる。そのため、制動時の変速比として相対的に大きい変速比が設定されるので、エンジン回転数が、変更前の走行特性によるよりも高回転数になり、車両の有する運動エネルギがエンジン8や変速機13などの回転部材の回転エネルギとして回収される。したがって、そのような減速の直後に再加速するべくアクセルペダルを踏み込んだ場合、エンジン8などの回転部材の回転数が既に高い回転数に維持されているので、エンジン8が出力する動力は、その回転数の増大に消費される割合が少なく、車両を加速する方に動力が多く消費され、その結果、アクセルコントロール性が向上し、再加速性が良好になる。
【0063】
これとは反対に、ゆっくりと減速した場合、瞬時スポーツ度Iinが大きくはならないので、既に保持されている指示スポーツ度Iout が小さい値であれば、車両の走行特性はマイルドな走行を行う特性に維持される。したがって、アクセルペダルの踏み込み量に対する変速比が、スポーティな走行を行う場合に比較して小さくなり、エンジン回転数を相対的に低回転数に保持できることにより燃費の良好な走行が可能になる。
【0064】
また、ワィンディング路を走行する場合に加減速や操舵角の程度が大きいと、合成加速度つまり瞬時スポーツ度Iinが大きくなり、それに伴って車両の走行特性はいわゆるスポーティな走行を行いやすい特性に制御される。すなわち、加速性能や減速性能が相対的に大きく、また操舵のいわゆるダイレクト感が強く、さらにはサスペンション特性がいわゆる硬い感じになる。したがって、コーナへの手前でアクセルペダルを戻すと、相対的に大きい変速比が設定されることによりエンジン回転数が増大してエンジンブレーキの効きが良くなり、かつそのエンジン回転数が維持される。またコーナから抜ける場合にアクセルペダルを踏み込むと、エンジン8が動力を出力するが、エンジン回転数が上記のように相対的に高回転数に維持されているので、エンジン8が出力する動力は、その回転数の増大に消費される割合が少なく、車両を加速する方に動力が多く消費され、その結果、再加速性が良好になる。これに対して、ゆっくり減速してコーナに進入してコーナを通過する場合には、前述したように指示スポーツ度Iout が小さい値になって燃費の良い運転点が選択されるので、燃費が良く、しかも運転指向に合った走行を行うことができる。
【0065】
なお、上述したステップS6における特性の補正は、上述した指示スポーツ度Iout の値に基づく補正に加えて、あるいはこれとは別に、他の要因に基づいて行ってもよい。その例を挙げると、例えばエンジン8に加えて発電機能のある電動機を駆動力源として備えているハイブリッド車では、エンジン8が出力する動力を使って発電を行い、あるいは車両の有する運動エネルギを使って発電を行い、その電力をバッテリなどの蓄電装置に蓄えることがある。このようなエネルギの回収および貯蔵は、蓄電装置によって電力を蓄えることが可能であることを前提として成り立ち、蓄電装置に蓄えられている電力が多い場合にはエネルギの回収および貯蔵が制約される。一方、発電量は、エンジン8の回転数が高回転数であるほど電動機(発電機)の回転数が高くなることにより増大する。そこで、上記のステップS6においては、蓄電装置の充電容量(SOC:State of Charge)が既に多くなっていて要求発電量が少ない場合には、前述した指示スポーツ度Iout の値が小さい場合と同様に、燃費が良好になる特性に補正する。例えば指示スポーツ度Iout に基づく要求最大加速度率を減少補正して、エンジン回転数を抑えた走行を行う特性に補正する。
【0066】
また、特性の補正要因としてパワートレーンの燃費効率を挙げることができる。エンジン8などの駆動力源から変速機13を経て駆動輪に至るパワートレーンは、それ自体が複数の回転部材によって構成されているので、相対回転数が小さいなどの損失の少ない動作状態が存在し、またエンジン8の燃費効率が良好な変速状態が存在する。このような燃費効率の良好な状態は、パワートレーンの構成に応じて事前に計測し、あるいは把握しておくことができる。このような燃費効率の良好な状態を設定するように、ステップS6では特性の補正を行ってもよい。
【0067】
走行環境に応じて特性の補正を行ってもよい。その走行環境とは、走行路やその周辺の状況であり、市街地道路と郊外道路、一般道と高速道路もしくは自動車専用道路、舗装道路と未舗装道路もしくは泥濘路、平坦路と登降坂路、低地道路と高地道路となど、路面状態や直線路の長さ、交通信号の多寡、気圧などによって区別される道路の種別もしくは環境である。これらの走行環境に関する情報は、ナビゲーションシステムを利用して得ることができ、また登降坂路の勾配は駆動力源の出力と実前後加速度となどに基づいても求めることができる。これらの走行環境が、車両に相対的に小さい駆動力を要求するものであれば、燃費が良好になる特性に補正する。例えば指示スポーツ度Iout に基づく要求最大加速度率を減少補正して、エンジン回転数を抑えた走行を行う特性に補正する。
【0068】
ところで、上述した制御装置では、スポーティな走行が特に行われておらず、あるいはスポーティな走行が特には要求されていない場合には、指示スポーツ度Iout が小さいことにより、その車両の燃費を重視した特性として設定されている駆動力特性もしくは変速特性に応じて、あるいはこれを補正した特性に応じて変速制御が実行され、これに対して指示スポーツ度Iout が大きい場合には、その指示スポーツ度Iout から求められる要求最大加速度率に基づいた変速比が設定される。このように変速比を決定する基準もしくは基礎データが複数あるので、最終的な変速比を以下に説明するようにして決定する。
【0069】
変速機13として無段変速機を搭載している車両やエンジン回転数をモータによって制御可能なハイブリッド車では、車速や駆動要求量に基づいて目標出力を算出し、その目標出力を達成するエンジン回転数となるように制御される。その要求回転数毎の車速と加速度との関係を示せば図10のようになり、これに上述した図7に基づいて指示スポーツ度Iout から求められた要求最大加速度率を書き加える。例えば100%と50%との要求最大加速度率を書き加えると図10の太い実線のようになる。したがって、指示スポーツ度Iout から求められた要求最大加速度を示す線と現在時点の車速を示す線との交点を通る線で表される回転数が要求回転数となる。
【0070】
前述した図2を参照して説明したような変速機13を備えている車両では、その変速機13によって設定するべき変速比を制御するために、基本的な変速マップを備えている。その変速マップは、無段変速機については、車速とエンジン回転数とに応じて変速比を設定したマップである。その変速比制御の一例は、一般に、トルクデマンド制御として知られている制御であり、例えば駆動要求量としてのアクセル開度と車速とに基づいて駆動力マップから要求駆動力を求め、その要求駆動力と車速もしくはエンジン回転数とからエンジンの要求出力を求める。その要求出力を最適燃費で出力する目標エンジン回転数がエンジン回転数マップに基づいて求められ、その目標エンジン回転数を達成するように無段変速機の変速比が制御される。すなわち、変速機13を駆動力源であるエンジンの回転数制御機構として機能させる。なお、エンジンの出力はトルクと回転数との積で求められるから、上記の目標エンジン回転数あるいはこれに相当する車速とに基づいて要求出力を達成するエンジントルクが求められ、そのエンジントルクとなるようにスロットル開度が算出される。
【0071】
図10に示すスポーツモード回転数指示手段B31は、上述した指示スポーツ度Iout に基づいて求められた要求回転数を指示する手段であり、また基本変速補正手段B32は、トルクデマンド制御などの燃費を重視した通常のエンジン回転数制御での変速特性を指示スポーツ度Iout に基づいて補正し、目標回転数(目標変速比)を指示する手段である。これらのいわゆる基本補正回転数と上記のいわゆるスポーツモード回転数とが回転数調停手段B33によって比較され(調停され)、大きい値の回転数が選択される。いわゆるマックスセレクトされる。こうして選択された回転数が最終回転数指示手段B34によって制御信号として出力される。したがって、アクセル開度が大きい状態で基本補正回転数がスポーツモード回転数より高回転数であれば、基本補正回転数が制御量として採用され、変速指令信号として出力される。そして、合成加速度(瞬時スポーツ度Iin)の増大などによって走行特性がスポーティな特性に次第に変化し、それに伴ってスポーツモード回転数が基本補正回転数より大きくなると、いわゆるマックスセレクトによりスポーツモード回転数が制御量として採用され、変速指令信号として出力される。
【0072】
一方、変速機13が有段変速機の場合には、図11に示すように制御する。有段変速機の変速制御では、目標とする変速段を定め、その変速段を設定するように変速機13のアクチュエータに制御指令信号が出力される。したがって、各変速段毎の車速と加速度との関係を示せば図11に示すようになり、これに指示スポーツ度Iout から求められた要求最大加速度率として100%および50%の要求最大加速度の線を書き加えると図11の太い実線のようになる。したがって、指示スポーツ度Iout から求められた要求最大加速度を示す線と現在時点の車速を示す線との交点に最も近い変速段の線で表される変速段が目標変速段となる。
【0073】
この発明に係る制御装置による制御が実行されている場合、上記の図11で求められたスポーツ目標変速段と、予め用意されている変速線図に基づく基本目標変速段(例えば、アクセル操作と、車速とに基づいて定まる変速比)を指示スポーツ度Iout に基づいて補正した基本補正変速段とが比較(ギヤ段調停)され、変速比が大きい低車速側の変速段が選択される。いわゆるミニマムセレクトされ、その結果、スポーツ度が小さい状態では、燃費の良好な走行が可能になり、またスポーティな走行が要求されている状態では、変速比が大きくなることにより最大駆動力あるいはエンジンブレーキ力が大きくなって車両の挙動コントロールが機敏になる。
【0074】
図11に示すスポーツモードギヤ段指示手段B41は、上述した指示スポーツ度Iout に基づいて求められたギヤ段を指示する手段であり、また基本変速段補正手段B42は通常のアクセルペダル開度と車速とによる変速線図に基づいて求められたギヤ段を、相対的に小さい値の指示スポーツ度Iout に基づいて補正する手段である。これらのいわゆるスポーツモードギヤ段と基本補正変速段とはギヤ段調停手段B43によって比較され(調停され)、より低速側のギヤ段(より変速比が大きいギヤ段)が選択される。いわゆるミニマムセレクトされる。こうして選択されたギヤ段が最終ギヤ段指示手段B44によって制御信号として出力される。すなわち、変速機13を駆動力源であるエンジンの回転数制御機構として機能させる。したがって、アクセル開度が大きい状態で基本補正変速段がスポーツモードギヤ段より低速側の変速段であれば、基本補正変速段が制御量として採用され、変速指令信号として出力される。その変速段は、走りを重視して設定された変速線図を元にして求められたものであるから、走りの良い走行が可能になる。そして、合成加速度(瞬時スポーツ度Iin)の増大などによって走行特性がスポーティな特性に次第に変化し、それに伴ってスポーツモードギヤ段が基本補正変速段より低速側の変速段となると、いわゆるミニマムセレクトによりスポーツモードギヤ段が制御量として採用され、変速指令信号として出力される。
【0075】
このように、指示スポーツ度Iout の値が相対的に小さい状態での燃費を重視した走行特性と、指示スポーツ度Iout の値が相対的に大きくなって挙動が機敏になるなどスポーティな走行が容易な走行特性とは、共に、車両の加速度などの走行状態から求められる指標の変化に従って変化するように構成されているので、燃費を重視した走行とスポーティな走行との間の変化が連続的なものとなり、違和感のない走行が可能になる。
【0076】
この発明に係る制御装置は、上述したように駆動力特性を指示スポーツ度Iout に基づいて変化させるが、これに加えて操舵特性やサスペンション機構のダンパ特性などの挙動特性を指示スポーツ度Iout に基づいて変化させ、運転者の運転指向や走行環境に即した走行を容易にすることができる。その場合、指示スポーツ度Iout の値が相対的に小さい場合には、前述した要求最大加速度率を減少補正したのと同様に、挙動特性への指示スポーツ度Iout の反映の程度を補正してもよい。こうすることにより、上述した駆動力特性を燃費重視の特性としたことに適合するように挙動特性が設定されるので、駆動力特性といわゆるシャシー特性とが相互に適合し、燃費および走行特性を、より向上させることができる。
【0077】
その挙動特性の指示スポーツ度Iout に基づいて制御の例を説明すると、図12はその操舵特性を上述した指示スポーツ度Iout に基づいて変更する制御を説明するためのブロック図であり、可変歯車比ステアリングギヤ(VGRSギヤ)を用いた電動パワーステアリング機構(EPS)を模式的に示している。操舵力を受けて車両の幅方向(横方向)に前後動するラック30が設けられ、このラック30にはVGRSギヤユニット31のギヤが噛み合っている。その歯車比を変更するためのVGRSアクチュエータ32が、VGRSユニット31に付設されている。また、操舵された方向へのラック30の移動を補助(アシスト)するEPSギヤモータ33が設けられている。さらに、VGRSアクチュエータ32に指令信号を出力して前記歯車比を変更するギヤ比演算部34と、前記EPSギヤモータ33が出力するべきトルク(ラック30に与える推力)を演算して指令信号として出力するアシストトルク演算部35とが設けられている。これら、伝動パワーステアリング機構や各演算部は、一般に知られている構成のものを使用することができる。
【0078】
上記の各演算部34,35には、車速、操舵角、操舵トルクの検出値がデータとして入力されている。これらのデータは、それぞれに応じて設けられているセンサで得ることができる。これに加えたギヤ比演算部34には、補正ギヤ比がデータとして入力されている。この補正ギヤ比は、前記VGRSアクチュエータ32に対する指令信号を補正するためのギヤ比であり、前述した指示スポーツ度Iout に応じた値に設定するように構成されている。具体的には、指示スポーツ度Iout に対応する補正ギヤ比を定めたマップを予め用意し、そのマップによって補正ギヤ比を求めればよい。その指示スポーツ度Iout と補正ギヤ比との関係は必要に応じて適宜に決めておくことができる。
【0079】
一方、アシストトルク演算部35には、上記の車速、操舵角ならびに操舵トルクに加えて、補正アシストトルクがデータとして入力される。この補正アシストトルクは、前記EPSギヤモータ33に対する指令信号を補正するためのトルクであり、前述した指示スポーツ度Iout に応じた値に設定するように構成されている。具体的には、指示スポーツ度Iout に対応する補正アシストトルクを定めたマップを予め用意し、そのマップによってアシストトルクを求めればよい。その指示スポーツ度Iout と補正アシストトルクとの関係は必要に応じて適宜に決めておくことができる。
【0080】
したがって図12に示すように構成した場合には、車両に生じている加速度に基づいて求められる指示スポーツ度Iout の大小に応じて、VGRSユニット31における歯車比が変更され、また操舵力をアシストするトルクが変更される。
【0081】
さらに、図13は懸架特性を上述した指示スポーツ度Iout に基づいて変更する制御を説明するためのブロック図であり、懸架機構(図示せず)による車高長および振動の減衰係数ならびにばね定数を制御するように構成した例である。これら車高長および振動の減衰係数ならびにばね定数の要求値を演算する演算部40が設けられている。この演算部40は、一例としてマクロコンピュータを主体として構成され、入力されたデータおよび予め記憶しているデータを使用して演算を行うことにより、要求車高長および要求減衰係数ならびに要求ばね定数を求めるように構成されている。そのデータの例を挙げると、車速、右前輪(FR)輪ハイトコントロールセンサの検出信号、左前輪(FL)輪ハイトコントロールセンサの検出信号、右後輪(RR)輪ハイトコントロールセンサの検出信号、左後輪(RL)輪ハイトコントロールセンサの検出信号、右前輪(FR)上下G(加速度)センサの検出信号、左前輪(FL)上下G(加速度)センサの検出信号、右後輪(RR)上下G(加速度)センサの検出信号、左後輪(RL)上下G(加速度)センサの検出信号がデータとして入力されている。これらは、一般に知られている装置と同様である。
【0082】
そして、図13に示す例では、補正車高長および補正減衰係数ならびに補正ばね定数が、懸架特性の制御のためのデータとして入力されている。補正車高長は、前記指示スポーツ度Iout に応じて車高長を補正するためのデータであり、例えば指示スポーツ度Iout に対応する補正車高長を定めたマップを予め用意し、そのマップによって補正車高長を求めるように構成することができる。また、補正減衰係数は、ショックアブソーバーなどの振動減衰作用を行う機器における減衰係数を補正するためのデータであり、例えば指示スポーツ度Iout に対応する補正減衰係数を定めたマップを予め用意し、そのマップによって補正減衰係数を求めるように構成することができる。補正減衰係数は、指示スポーツ度Iout が大きいほど大きい値とされ、懸架装置がいわゆる硬い感じの特性に設定される。補正ばね定数も同様であって、懸架装置におけるばね定数を補正するためのデータとして、例えば指示スポーツ度Iout に対応する補正ばね定数を定めたマップを予め用意し、そのマップによって補正ばね定数を求めるように構成することができる。補正ばね定数は、指示スポーツ度Iout が大きいほど大きい値とされ、懸架装置がいわゆる堅い感じの特性に設定される。
【0083】
上記の演算部40は、上述した各データを使用して演算を行い、算出された要求車高長を車高長制御部41に制御指令信号として出力し、指示スポーツ度Iout に応じた車高長に制御するように構成されている。具体的には、指示スポーツ度Iout が相対的に大きい場合には、車高が相対的に低くなるように制御される。また、演算部40は演算の結果得られた要求減衰係数を減衰係数制御部42に制御指令信号として出力し、指示スポーツ度Iout に応じた減衰係数に制御するように構成されている。具体的には、指示スポーツ度Iout が相対的に大きい場合には、減衰係数が相対的に大きくなるように制御される。さらに、演算部40は演算の結果得られた要求ばね定数をばね定数制御部43に制御指令信号として出力し、指示スポーツ度Iout に応じた減衰ばね定数に制御するように構成されている。具体的には、指示スポーツ度Iout が相対的に大きい場合には、ばね定数が相対的に大きくなるように制御される。
【0084】
以上のように、この発明に係る制御装置は、走行特性の一例である懸架特性を加速度(特に前後加速度Gxおよび横加速度Gy)に基づいて求められる指示スポーツ度Iout などの制御指標に応じて変化させ、運転者の意図と走行環境および車両の走行状態とに適した懸架特性を設定することができる。その結果、前後および/または左右の加速度が相対的に小さいいわゆる滑らかな走行の場合には、懸架特性がいわゆる軟らかい感じの特性となって乗り心地が向上し、また前後および/または左右の加速度が相対的に大きいいわゆる俊敏な走行が要求されている場合には、懸架特性がいわゆる硬い感じの特性となり、車体の前後左右の沈み込みや跳ね上がりあるいはローリングやピッチングが抑制されてドライバビリティが向上する。
【0085】
なお、加速度は加速度センサの絶対値あるいは操作系や車両運動の情報に基づき算出もしくは組み合わせてもよい。
【0086】
ここで、上述した実施態様で示した発明を、主要な要件で特定して示せば、以下のとおりである。すなわち、上述した実施態様で示した発明の一つは、「走行している車両の状態に基づいて指標を求めるとともに、前記車両の走行状態を制御する制御器の制御特性を前記指標に応じて変更する車両制御装置において、前記制御器は、前記車両の駆動力源の出力を制御することに伴って駆動力源のエネルギ効率を変化させる第1の制御器と、前記車両の挙動特性を変化させることのできる第2の制御器とを含み、前記第1の制御器の制御特性を、前記駆動力源のエネルギ効率が予め定めた範囲内でかつ前記駆動力源の出力特性が前記指標に応じた特性となるように設定し、かつ前記第2の制御器の制御特性を、前記車両の挙動特性が前記指標に応じた特性となるように前記指標に基づいて設定するように構成されていることを特徴とする車両制御装置。」と言うことができる。
【0087】
また、その発明において、「前記指標は、前記車両の加速度に基づいて求められ指標を含み、かつ前記第1の制御器の制御特性は、前記指標が小さい加速度に基づいて求められたものであるときには、大きい加速度に基づいて求められたものであるときよりも、前記駆動力源のエネルギ効率が良好になる特性に設定されるように構成されていることを特徴とする車両制御装置。」と言うことができる。
【符号の説明】
【0088】
1…車両、 2…前輪、 3…後輪、 4…懸架装置、 5…ショックアブソーバー、 6…モータ、 7…ブレーキペダル、 8…内燃機関(エンジン)、 10…スロットルバルブ、 11…アクチュエータ、 12…アクセルペダル、 13…変速機、 15…操舵機構、 16…ステアリングホイール、 17…ステアリングリンケージ、 18…アシスト機構、 19…車輪速センサ、 20…アクセル開度センサ、 21…スロットル開度センサ、 22…エンジン回転数センサ、 23…出力回転数センサ、 24…操舵角センサ、 25…前後加速度センサ、 26…横加速度センサ、 27…ヨーレートセンサ、 28…電子制御装置(ECU)、 52…動力分割機構、 50,58…モータ・ジェネレータ、 57…蓄電装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行状態に基づく指標を求め、前記指標に応じて車両の走行特性を変化させる車両制御装置において、
前記車両を機敏に走行させる方向への前記指標の前記走行状態の変化に対する変化を、前記車両の走行の機敏さを低下させる方向への前記指標の前記走行状態の変化に対する変化より遅くする指標設定手段を有し、
前記車両の駆動力源の出力を制御することに伴って、予め定めた範囲内で駆動力源の燃費エネルギ効率を変化させるように、前記指標に基づいて走行特性を補正設定するように構成された制御器を備えている
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記走行状態は、前記車両の前後加速度成分と横加速度成分とを含む合成加速度を含み、
前記指標設定手段は、前記指標を、前記合成加速度が大きいほど大きい値とする手段を含み、
前記制御器は、前記指標が小さい合成加速度に基づいて求められたものであるときには、前記指標が大きい合成加速度に基づいて求められたものであるときよりも、前記駆動力源の燃費エネルギ効率が良好になる走行特性を設定するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記車両は、前記制御器によって回転数が制御される内燃機関を備え、
前記制御器の制御特性は、前記内燃機関の燃費が予め定め範囲内の燃費効率側となる特性に設定されることを特徴とする請求項1まは2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記車両は、変速比を変化させることにより前記内燃機関の回転数が変化する変速機を更に備え、
前記制御器は、前記変速機の変速比を変化させる制御器を含み、
前記制御器の制御特性は、前記変速機の変速比に応じた前記内燃機関の回転数が前記予め定め範囲内の燃費効率が得られる回転数となるように前記変速比を制御する特性に設定されることを特徴とする請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記内燃機関が出力した動力を分割する差動作用を行う動力分割機構と、その動力分割機構に連結されるとともに発電量に応じて前記内燃機関の回転数を変化させることのできる発電機とを更に備え、
前記制御器は、前記発電機の回転数を制御して前記内燃機関の回転数を制御する制御器を含み、
前記制御器の制御特性は、前記発電機の回転数に応じた前記内燃機関の回転数が前記予め定めた範囲内の燃費効率側の回転数となるように前記発電機の回転数を制御する特性に設定されることを特徴とする請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記車両は、前記発電機で発電した電力を蓄える蓄電装置を更に備え、
その蓄電装置に既に蓄えられている電力量が多い場合には、既に蓄えられている電力量が少ない場合に比較して、前記予め定めた範囲内の燃費効率側となる前記回転数が相対的に低回転数とされている
ことを特徴とする請求項5に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記加速度は、前記車両の前後加速度成分と横加速度成分とを含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記車両が走行する路面を含む前記車両の外部の環境である走行環境に関する情報を取得するとともに、前記制御器は、前記指標に加えて前記走行環境情報に応じて前記制御器の制御特性を変更するように構成されている
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−61945(P2012−61945A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207210(P2010−207210)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】