説明

車両制振制御装置

【課題】適正に制振制御を実行することができる車両制振制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】車両10に搭載された動力源21を制御し車両10のバネ上振動を抑制する制振制御を実行する車両制振制御装置1において、動力源21の運転領域に応じて制振制御の態様を変えることを特徴とする。したがって、車両制振制御装置1は、動力源21の運転領域に応じて制振制御の態様を変えることで、例えば、制振制御と動力源21に関する他の制御との協調を図ることができ、適正に制振制御を実行することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制振制御装置に関し、特に車両に搭載された動力源を制御し車両のバネ上振動を抑制する車両制振制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の振動を抑制する車両制振制御装置として、動力源を制御し車両のバネ上振動を抑制するいわゆるバネ上制振制御を実行する車両制振制御装置が知られている。ここで、車両のバネ上振動とは、加振源を路面とし、路面から車両の車輪への入力により、サスペンションを介して車体に発生する振動のうち、例えば、1〜4Hzの周波数成分(車種や車両の構成によって顕著にあらわれる周波数成分が異なり、多くの車両は1.5Hz近傍の周波数成分)の振動をいい、この車両のバネ上振動には、車両のピッチ方向またはバウンス方向(上下方向)の成分が含まれている。ここでいうバネ上制振とは、上記車両のバネ上振動を抑制するものである。
【0003】
このような従来の車両制振制御装置としては、例えば、特許文献1に車両安定化制御システムが開示されている。この特許文献1に記載されている車両安定化制御システムは、推定駆動軸トルクに走行抵抗外乱を加算したものを現在の駆動力とし、この現在の駆動力に応じたピッチング振動を車体バネ上振動モデルの状態方程式および出力方程式から求める。そして、この車両安定化制御システムは、この出力方程式で表されるピッチング振動が速やかに0になるような補正値を求め、この補正値に基づいて基本要求エンジントルクを補正し、補正したエンジントルクに基づいて動力源としてのエンジンの吸入空気量や燃料噴射量、点火時期等を調整し車両の駆動力を制御し車両のバネ上振動を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−69472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような特許文献1に記載されている車両安定化制御システムでは、例えば、エンジンなどの動力源の状態によっては上記の制振制御と通常のエンジン制御などの他の制御との協調を図るなど、より適正な制振制御を実行することが望まれていた。
【0006】
そこで本発明は、適正に制振制御を実行することができる車両制振制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明による車両制振制御装置は、車両に搭載された動力源を制御し前記車両のバネ上振動を抑制する制振制御を実行する車両制振制御装置において、前記動力源の運転領域に応じて前記制振制御の態様を変えることを特徴とする。
【0008】
また、上記車両制振制御装置では、前記動力源が当該動力源の異なる運転領域の境界の近傍で運転される場合に、前記制振制御を実行しない場合の一方の前記運転領域で前記動力源が運転されるように前記制振制御の態様を変えるように構成してもよい。
【0009】
また、上記車両制振制御装置では、前記動力源の運転領域は、少なくとも前記制振制御の制御量を調節するための前記動力源の操作量に応じて定まり、前記動力源が当該動力源の異なる運転領域の境界の近傍で運転される場合に前記操作量を制限することで前記制振制御の態様を変えるように構成してもよい。
【0010】
また、上記車両制振制御装置では、前記動力源は、少なくともエンジンを含み、前記動力源の異なる運転領域は、前記動力源の燃焼室で燃焼可能な空気と燃料との混合気の空燃比が異なる運転領域であるように構成してもよい。
【0011】
また、上記車両制振制御装置では、前記動力源の異なる運転領域は、前記空燃比が理論空燃比である理論空燃比運転領域と、前記空燃比が前記理論空燃比より燃料の割合が少ないリーン空燃比であるリーン空燃比運転領域とであるように構成してもよい。
【0012】
また、上記車両制振制御装置では、前記動力源の異なる運転領域は、前記空燃比が理論空燃比である理論空燃比運転領域と、前記空燃比が前記理論空燃比より燃料の割合が多いリッチ空燃比であるリッチ空燃比運転領域とであるように構成してもよい。
【0013】
また、上記車両制振制御装置では、前記動力源は、少なくともエンジンを含み、前記動力源の異なる運転領域は、前記動力源の複数の気筒のうちの少なくとも1つの運転を休止する減筒運転領域と、前記動力源の複数の気筒の全てを稼動する全気筒運転領域とであるように構成してもよい。
【0014】
また、上記車両制振制御装置では、前記動力源は、少なくともエンジンを含み、前記動力源の異なる運転領域は、前記動力源の吸気の状態が異なる領域であるように構成してもよい。
【0015】
また、上記車両制振制御装置では、前記動力源は、少なくともエンジンを含み、前記動力源の異なる運転領域は、前記動力源の排気の状態が異なる領域であるように構成してもよい。
【0016】
また、上記車両制振制御装置では、前記動力源の異なる運転領域は、前記動力源のアクチュエータの作動状態が異なる領域であるように構成してもよい。
【0017】
また、上記車両制振制御装置では、前記動力源の異なる運転領域の組み合わせが複数ある場合、前記動力源が各組み合わせにおける前記異なる運転領域の境界の近傍で運転される場合に前記制振制御の態様を変えるように構成してもよい。
【0018】
また、上記車両制振制御装置では、前記動力源の異なる運転領域ごとに前記制振制御の制御量を調節する手段を変えることで前記制振制御の態様を変えるように構成してもよい。
【0019】
また、上記車両制振制御装置では、前記動力源は、少なくともエンジンを含み、前記動力源の異なる運転領域は、吸気通路に設けられた過給機により前記吸気通路の過給圧を調節することで前記制振制御の制御量を調節する過給調節運転領域と、前記吸気通路に設けられたスロットル弁により前記吸気通路の開度を調節することで前記制振制御の制御量を調節するスロットル調節運転領域とを含むように構成してもよい。
【0020】
また、上記車両制振制御装置では、前記動力源は、少なくともエンジンを含み、前記動力源の異なる運転領域は、吸気弁可変リフト機構により前記吸気通路に設けられた吸気弁のリフト量を調節することで前記制振制御の制御量を調節するリフト調節運転領域と、前記吸気通路に設けられたスロットル弁により前記吸気通路の開度を調節することで前記制振制御の制御量を調節するスロットル調節運転領域とを含むように構成してもよい。
【0021】
また、上記車両制振制御装置では、前記動力源は、少なくともエンジンと電動機とを含み、前記動力源の異なる運転領域は、前記エンジンの出力を調節することで前記制振制御の制御量を調節するエンジン調節運転領域と、前記電動機の出力を調節することで前記制振制御の制御量を調節する電動機調節運転領域とを含むように構成してもよい。
【0022】
また、上記車両制振制御装置では、前記動力源の異なる運転領域が3以上の異なる運転領域を含む場合、それぞれの前記運転領域ごとに前記制振制御の制御量を調節する手段を変えることで前記制振制御の態様を変えるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る車両制振制御装置によれば、適正に制振制御を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る車両制振制御装置が適用された車両の概略構成例を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係る車両制振制御装置の機能構成例を制御ブロックの形式で示した模式図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係る車両制振制御装置において抑制される車体振動の状態変数を説明する図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に係る車両制振制御装置において仮定される車体振動の力学的運動モデルの一例を説明する図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態に係る車両制振制御装置において仮定される車体振動の力学的運動モデルの一例を説明する図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態に係る車両制振制御装置の運転領域判定マップの一例を示す図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態に係る車両制振制御装置の協調制御の一例を説明するフローチャートである。
【図8】図8は、本発明の実施形態に係る車両制振制御装置の運転領域判定マップの他の一例を示す図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態に係る車両制振制御装置の運転領域判定マップの他の一例を示す図である。
【図10】図10は、本発明の実施形態に係る車両制振制御装置の協調制御の他の一例を説明するフローチャートである。
【図11】図11は、本発明の実施形態に係る車両制振制御装置が適用された車両の他の概略構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る車両制振制御装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0026】
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る車両制振制御装置が適用された車両の概略構成例を示す図、図2は、本発明の実施形態に係る車両制振制御装置の機能構成例を制御ブロックの形式で示した模式図、図3は、本発明の実施形態に係る車両制振制御装置において抑制される車体振動の状態変数を説明する図、図4、図5は、本発明の実施形態に係る車両制振制御装置において仮定される車体振動の力学的運動モデルの一例を説明する図、図6は、本発明の実施形態に係る車両制振制御装置の運転領域判定マップの一例を示す図、図7は、本発明の実施形態に係る車両制振制御装置の協調制御の一例を説明するフローチャート、図8、図9は、本発明の実施形態に係る車両制振制御装置の運転領域判定マップの他の一例を示す図、図10は、本発明の実施形態に係る車両制振制御装置の協調制御の他の一例を説明するフローチャート、図11は、本発明の実施形態に係る車両制振制御装置が適用された車両の他の概略構成例を示す図である。
【0027】
本実施形態に係る車両制振制御装置1は、図1に示すように、走行用動力源として動力源21を搭載した車両10に適用される。なお、図1に例示する車両10は、動力源21として、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなどのエンジンを用いるものとして説明するが、後述の図11に例示する車両10Aのように、モータなどの電動機あるいはモータなどの電動機とエンジンとを併用して用いてもよく、すなわち、車両制振制御装置1は、いわゆるハイブリッド車両10Aに適用してもよい。
【0028】
また、本実施形態に係る車両制振制御装置1が適用された車両10は、動力源21が車両10の前進行方向における前側部分に搭載され、駆動輪を左右の後輪である車輪30RL、30RRとする後輪駆動となっている。なお、車両10の動力源21の搭載位置は、前側部分のみに限定されるものではなく、後側部分、中央部分のいずれに搭載されても良い。また、車両10の駆動形式は、後輪駆動のみに限定されるものではなく、前輪駆動、4輪駆動のいずれの形式であってもよい。
【0029】
また、本実施形態に係る車両制振制御装置1は、図1に示すように、後述する電子制御装置(ECU:Electric Control Unit)50に組み込んで構成し、すなわち、車両制振制御装置1をECU50により兼用して構成するものとして説明するが、これに限らない。車両制振制御装置1は、ECU50とは別個に構成され、ECU50に接続するようにして構成してもよい。
【0030】
本実施形態の車両制振制御装置1は、動力源21を制御し車両10のバネ上振動を抑制するいわゆるバネ上制振制御(制振制御)を実行するものである。ここで、車両10のバネ上振動とは、加振源を路面とし、路面の凹凸に応じて路面から車両10の左右前輪である車輪30FL、30FR、左右後輪である車輪30RL、30RRへの入力により、サスペンションを介して車両10の車体に発生する振動のうち、例えば、1〜4Hz(車種や車両の構成によって顕著にあらわれる周波数成分が異なり、多くの車両は1.5Hz近傍の周波数成分)の振動をいい、この車両10のバネ上振動には、車両10のピッチ方向又はバウンス方向(上下方向)あるいは両方の成分が含まれている。ここでいうバネ上制振とは、上記車両10のバネ上振動を抑制するものである。
【0031】
車両制振制御装置1は、路面から車両10の左右前輪である車輪30FL、30FR、左右後輪である車輪30RL、30RRへの入力により、例えば、1〜4Hz、さらに言えば1.5Hz近傍の周波数成分の車両10のピッチ方向又はバウンス方向(上下方向)の振動が生じた場合に動力源21を制御し逆位相の駆動トルク(駆動力)を出力することで車輪(駆動時には、駆動輪)が路面に対して作用している「車輪トルク」(車輪と接地路面上との間に作用するトルク)を調節し上記振動を抑制する。つまり、車両制振制御装置1は、動力源21の動力、すなわち駆動トルクを制御することで、駆動トルクを路面に伝達する駆動輪としての車輪30RL、30RRにバネ上振動を抑制する車輪トルクである制振トルクを発生させる車輪トルク制御を行い、上記振動を抑制する。車両制振制御装置1が実行する制振制御においては、この制振トルクを車輪30RL、30RRに作用させることによって、バネ上振動が抑制される。
【0032】
これにより、車両制振制御装置1は、運転者の操縦安定性、乗員の乗り心地等を改善している。また、このような動力源21が発生する動力の制御、すなわち動力制御による制振制御によれば、サスペンションによる制振制御のように発生した振動エネルギーを吸収することにより抑制するというよりは、振動を発生する力の源を調節して振動エネルギーの発生を抑えることになるので、制振作用が比較的速やかであり、また、エネルギー効率が良いなどの利点を有する。また、動力制御による制振制御においては、制御対象が動力源の動力(駆動トルク)に集約されるので、制御の調節が比較的に容易である。
【0033】
車両制振制御装置1が適用される車両10は、図1に示すように、左右前輪である車輪30FL、30FRと、左右後輪である車輪30RL、30RRとを有する。また、車両10は、運転者が操作するアクセルペダル60と、運転者のアクセル操作による要求値、すなわちアクセルペダル60の踏込量であるアクセルペダル踏込量θaを検出し、アクセルペダル踏込量θaに対応した電気信号をECU50に出力するアクセルペダルセンサ70を有する。車両10は、種々の公知の態様にて、運転者のアクセルペダル60の踏込み操作であるアクセル操作に応じて車輪30RL、30RRに駆動力を作用させる駆動装置20が搭載される。駆動装置20は、図示の例では、動力源21にて発生する動力(駆動トルク)が変速機(例えば、トルクコンバータなどを含む)22、差動歯車装置23等を介して、車輪30RL、30RRへ伝達されるよう構成されている。なお、ここでは図示していないが、車両10には、種々の公知の車両と同様に各輪に制動力を発生する制動装置と前輪又は前後輪の舵角を制御するためのステアリング装置が設けられる。
【0034】
駆動装置20の作動は、車両制振制御装置1として兼用されるECU50により制御される。ECU50は、種々の公知の形式の、双方向コモン・バスにより相互に連結されたCPU、ROM、RAMおよび入出力ポート装置を有するマイクロコンピュータおよび駆動回路を含んでいてよい。ECU50には、車輪30FL、30FR、30RL、30RRに搭載された車輪速センサ40i(i=FL、FR、RL、RR)からの車輪速度Vwi(i=FL、FR、RL、RR)を表す信号と、車両10の各部に設けられたセンサからのエンジン回転速度(動力源21の出力回転速度であり、動力源21がモータであれば、モータの出力軸の回転速度)Er、変速機22の出力回転速度Dr、アクセルペダル踏込量θa、動力源21の運転環境に対応するパラメータとして、動力源21がガソリンエンジンであれば冷却水温度、吸入空気温度、吸入空気圧、大気圧、スロットル開度、燃料噴射量、燃料噴射時期、点火時期など(動力源21がモータであれば供給電流量、バッテリの蓄電状態SOC(State of Charge)など)、車両10に設けられた不図示のシフトポジション装置のシフトポジション、変速機22が複数のギヤ段を有するものであれば変速機22のギヤ段等の信号が入力される。なお、ECU50は、上記以外に、本実施形態の車両10において実行されるべき各種制御に必要な種々のパラメータを得るための各種検出信号が入力される。
【0035】
ECU50は、図2に示すように、例えば、動力源21の作動、特に動力源21が発生する動力をドライバ要求トルクTeなどに基づいて制御することで駆動制御装置としても機能する車両制振制御装置1と、図示しない制動装置の作動を制御する制動制御装置2とを含んで構成される。なお、本実施形態では、駆動力制御装置を車両制振制御装置1により兼用して構成するものとして説明するが、これに限定されるものではなく、駆動力制御装置とECU50とを別個に構成し、駆動力制御装置をECU50に接続するようにして構成してもよい。また、制動制御装置2も同様に個別に構成し、制動制御装置2をECU50に接続するように構成しても良い。
【0036】
制動制御装置2は、図2に示すように、各車輪30FL、30FR、30RL、30RRが所定量回転する毎に逐次的に生成されるパルス形式の電気信号が各車輪速センサ40FL、40FR、40RL、40RRから入力される。制動制御装置2は、この逐次的に入力されるパルス信号の到来する時間間隔を計測することにより各車輪回転速度ωi(i=FL、FR、RL、RR)が算出され、これに車輪半径rが乗ぜられることにより、各車輪速度Vwiが算出される。制動制御装置2は、本実施形態では、各車輪30FL、30FR、30RL、30RRにそれぞれ対応する車輪速度VwFL、VwFR、VwRL、VwRRの平均値r・ωを車両制振制御装置1(本実施形態では、車両制振制御部4)に出力する。なお、車輪回転速度から車輪速度への演算は、車両制振制御装置1にて行われてもよい。その場合、車輪回転速度は制動制御装置2から車両制振制御装置1に出力される。
【0037】
また、制動制御装置2は、種々の公知のABS制御、VSC(Vehicle Stability Control)、TRC(Traction Control)といった自動制動制御、すなわち、車輪30FL、30FR、30RL、30RRと路面との間の摩擦力(車輪30FL、30FR、30RL、30RRの前後力と横力とのベクトル和)が過大になり限界を越えることを抑制し、あるいは、かかる車輪30FL、30FR、30RL、30RRの摩擦力がその限界を越えることに起因する車両10の挙動の悪化を抑制するべく車輪上の前後力又はスリップ率を制御するものであってもよく、あるいは、ABS制御、VSC、TRCの車輪30FL、30FR、30RL、30RRのスリップ率制御に加えてステアリング制御等を含めて車両10の挙動の安定化を図るVDIM(Vehicle Dynamics Integrated Management)であってもよい。なお、VDIMが搭載される場合には、制動制御装置2は、VDIMの一部を構成することとなる。
【0038】
ここで、制動制御装置2は、上記自動制動制御(ABS制御、VSC、TRC、VDIM)において、車両10の挙動を変化させて制御、すなわち車両10の挙動を変化させることで安定した挙動となるように積極的に制御するために、動力源21が発生する動力を制御する場合がある。制動制御装置2は、本実施形態では、自動制動制御に基づいて車両10の挙動を変化させて制御するために駆動力制御を行う場合、例えば、ドライバ要求トルクTeを変更する。つまり、制動制御装置2は、車両挙動制御部としての機能も有する。制動制御装置2は、自動制動制御に基づいてドライバ要求トルクTeを変更する場合、動力源21の駆動トルクが車両10の挙動を安定した挙動となるように変化させることができる制動トルク修正量を駆動制御装置としても機能する車両制振制御装置1に出力する。ここで、制動制御装置2から車両制振制御装置1に出力された制動トルク修正量は、後述する要求トルク算出部3aにおいて算出されたドライバ要求トルクTeに加減算される。この結果、ドライバ要求トルクTeが制動トルク修正量に基づいて車両10の挙動を変化させて制御するように変更(補正、修正)され、変更された最終的な要求トルクに応じた制御指令が制御指令決定部3cから動力源21に出力されることとなる。なお、制動制御装置2は、自動制動制御に基づいて車両10の挙動を変化させて制御するために動力源21が発生させる駆動トルクを制御する際に、アクセルペダル踏込量θaを算出しても良い。この場合は、算出されたアクセルペダル踏込量θaが車両制振制御装置1の要求トルク算出部3aへ出力される。
【0039】
車両制振制御装置1は、図2に示すように、駆動制御装置として、車両10に対する運転者からの駆動要求に応じた値としてのアクセルペダル踏込量θaに基づいて、運転者の要求する駆動装置20の動力源21の駆動トルクであるドライバ要求トルク(要求駆動力に応じたトルク)Teを決定する。そして、車両制振制御装置1は、このドライバ要求トルクTeを制御の基本として種々の変更(補正、修正)がなされた最終的な要求トルクに基づいて動力源21に制御指令を出力する。駆動装置20の動力源21に出力される制御指令は、制御対象である動力源21の駆動トルクを最終的な要求トルクに調節するために、言い換えれば、後述する車輪30RL、30RRに作用する制振トルクを調節するために、この動力源21に入力する操作量を含んだ指令である。制御指令に含まれる動力源21の操作量は、例えば、動力源21がガソリンエンジンであれば最終的な要求トルクに応じたスロットル開度や点火時期、動力源21がディーゼルエンジンであれば最終的な要求トルクに応じた燃料噴射量、動力源21がモータであれば最終的な要求トルクに応じた供給電流量などである。
【0040】
そして、車両制振制御装置1では、動力源21の駆動トルクを制御することによる車両10のピッチ方向の振動やバウンス方向の振動を抑制する制御、すなわちバネ上振動を抑制する制御である制振制御を実行すべく、運転者によって要求される駆動トルクであるドライバ要求トルクTeが制振制御の制御量である制振トルク、さらに言えば、制振制御で要求される車輪トルクである制振トルクに基づいて修正され、あるいは、ドライバ要求トルクTeに応じた制御指令が制振トルクに応じた制振制御指令に基づいて修正され、その修正された最終要求トルクに対応する制御指令が駆動装置20の動力源21に出力される。
【0041】
本実施形態の車両制振制御装置1は、図2に示すように、駆動制御部3と、車両制振制御部4とを含んで構成されている。
【0042】
駆動制御部3は、要求トルク算出部3aと、加算器3bと、制御指令決定部3cとを含んで構成されている。要求トルク算出部3aは、公知の任意の手法によりアクセルペダル踏込量θaに基づいてドライバ要求トルクTeを算出するものである。加算器3bは、要求トルク算出部3aにより算出されたドライバ要求トルクTeを車両制振制御部4により算出された制振制御の制御量である制振トルクに応じた制振トルク修正量Txで修正する、すなわち、要求トルク算出部3aにより算出されたドライバ要求トルクTeを制振トルクに基づいて補正するものである。制御指令決定部3cは、ドライバ要求トルクTeを制振トルクに応じた修正量Txにより修正した最終要求トルクに対応した動力源21の制御指令を生成し、生成された制御指令を動力源21の図示しない各制御器に出力するものである。つまり、駆動制御部3は、アクセルペダル踏込量θaを要求トルク算出部3aにてドライバ要求トルクTeに換算した後、加算器3bにてドライバ要求トルクTeを制振トルクに基づいて修正(補正)して最終要求トルクを算出し、この最終要求トルクを制御指令決定部3cにて駆動装置20への制御指令に変換し、この制御指令を駆動装置20に出力する。
【0043】
車両制振制御部4は、動力源21を制御し車両10のバネ上振動を抑制する制振制御を実行するための制振制御の制御量である制振トルクに応じた制振トルク修正量Txを設定するものである。
【0044】
この車両制振制御部4においては、(1)車輪において路面との間に作用する力による車輪の車輪トルクの取得、(2)ピッチ/バウンス振動状態量の取得、(3)ピッチ/バウンス振動状態量を抑制する車輪トルクの修正量の算出とこれに基づく要求トルク又は制御指令の修正が実行される。本実施形態では、(1)の車輪トルクは、制動制御装置2から受信した振動と相関のある実測値としての車輪の車輪速度(または、車輪の車輪回転速度)に基づいて車輪トルク推定値を算出するが、これに限らない。車輪トルクは、エンジン回転速度に基づいて車輪トルク推定値を算出してもよいし、車両10の走行中の車輪トルクの値が直接的に検出可能なセンサ、例えば、ホイールトルクセンサやホイール六分力計などにより、車輪において実際に発生している車輪トルクの検出値であってもよい。(2)のピッチ/バウンス振動状態量は、車両10の車体振動の運動モデルにより算出するものとして説明するが、これに限らない。ピッチ/バウンス振動状態量は、ピッチ/バウンドセンサ、Gセンサ、サスペンションの縮量を検出するセンサなどの種々のセンサによる検出値を振動と相関のある実測値として用いてもよい。つまり、本実施形態では、後述するように少なくとも振動と相関のある実測値として車両10の車輪の車輪速度に基づいたフィードバック制御により制振トルクを設定するものとして説明するが、これに限らず、振動と相関のある実測値を直接的にセンサで検出し、この振動と相関のある実測値に基づいて、振動を抑制するための制振トルクを設定してもよい。本実施形態の車両制振制御装置1は、(1)−(3)の処理作動において実現される。
【0045】
車両10において、例えば、運転者のアクセル操作、すなわち運転者の駆動要求に基づいて駆動装置20が作動して車輪トルクの変動が生ずると、図3に例示されている車両10の車体において、車体の重心Cgの鉛直方向(z方向)のバウンス振動(バウンス方向の振動)と、車体の重心周りのピッチ方向(θ方向)のピッチ振動(ピッチ方向の振動)が発生しうる。また、車両10の走行中に路面の凹凸に応じて路面から車両10の車輪30FL、30FR、30RL、30RRへの入力により外力またはトルク(外乱)が作用すると、その外乱が車両10に伝達され、やはり車体にピッチ/バウンス振動が発生しうる。
【0046】
そこで、車両制振制御部4は、車両10の車体のピッチ/バウンス振動の力学的運動モデルを構築し、そのモデルにおいて運転者の駆動要求に応じたドライバ要求トルクTe(を車輪トルクに換算した値)と、現在の車輪トルク(の推定値)とを入力した際の車体の変位z、θとその変化率dz/dt、dθ/dt、すなわち、車体振動の状態変数を算出し、モデルから得られた状態変数が0に収束するように、すなわち、ピッチ/バウンス振動を抑制できるよう駆動装置20の動力源21の動力制御が行われ駆動トルクが調節される(つまり、ドライバ要求トルク、あるいはドライバ要求トルクに応じた制御指令が修正される。)。
【0047】
車両制振制御部4は、図2に示すように、フィードフォワード制御部4aと、フィードバック制御部4bと、駆動トルク変換部4cとを含んで構成される。ここでは、車両制振制御部4は、車両10の車輪の車輪速度に基づいたフィードバック制御と共に車両10に対するドライバ要求トルク(要求駆動力)に基づいたフィードフォワード制御を併用して、制振制御の制御量である制振トルクを設定する。
【0048】
フィードフォワード制御部4aは、いわゆる、最適レギュレータの構成を有し、ここでは、車輪トルク変換部4dと、運動モデル部4eと、FF二次レギュレータ部4fとを含んで構成される。フィードフォワード制御部4aは、車輪トルク変換部4dにてトルク要求トルクTeを車輪トルクに換算した値(ドライバ要求車輪トルクTwo)が車両10の車体のピッチ/バウンス振動の運動モデル部4eに入力される。フィードフォワード制御部4aは、運動モデル部4eにて入力されたトルクに対する車両10の状態変数の応答が算出され、FF二次レギュレータ部4fにて後述する所定のゲインKに基づいてその状態変数を最小に収束するドライバ要求車輪トルクTwoの修正量として、FF系制振トルク修正量U・FFが算出される。このFF系制振トルク修正量U・FFは、動力源21に対するドライバ要求トルクTe(要求駆動力)に基づいたフィードフォワード制御系で設定される制振制御のFF制御量である。
【0049】
フィードバック制御部4bは、いわゆる、最適レギュレータの構成を有し、ここでは、車輪トルク推定部4gと、フィードフォワード制御部4aと兼用される運動モデル部4eと、FB二次レギュレータ部4hとを含んで構成される。フィードバック制御部4bは、車輪トルク推定部4gにて後述するように車輪速度の平均値r・ωに基づいて車輪トルク推定値Twが算出され、この車輪トルク推定値Twは、外乱入力として、運動モデル部4eへ入力される。なお、ここでは、フィードフォワード制御部4aの運動モデル部とフィードバック制御部4bの運動モデル部とは同じものであるので運動モデル部4eにより兼用するが、それぞれ別個に設けられていてもよい。フィードバック制御部4bは、運動モデル部4eにて入力されたトルクに対する車両10の状態変数の応答が算出され、FB二次レギュレータ部4hにて後述する所定のゲインKに基づいてその状態変数を最小に収束するドライバ要求車輪トルクTwoの修正量として、FB系制振トルク修正量U・FBが算出される。このFB系制振トルク修正量U・FBは、路面から車両10の車輪30FL、30FR、30RL、30RRへの入力による外力又はトルク(外乱)に基づいた車輪速度の変動分に応じたフィードバック制御系で設定される制振制御のFB制御量である。
【0050】
車両制振制御部4は、フィードフォワード制御部4aによるFF制御量であるFF系制振トルク修正量U・FFとフィードバック制御部4bによるFB制御量であるFB系制振トルク修正量U・FBとが加算器4iに出力され、加算器4iにてFF系制振トルク修正量U・FFとFB系制振トルク修正量U・FBとが加算されて、制振制御におけるトータルの制御量である制振トルクが算出される。そして、この車両制振制御部4は、この制振トルクが駆動トルク変換部4cにて駆動装置20の駆動トルクの単位、すなわち、ドライバ要求トルクTeの単位に換算した値である制振トルク修正量Txに変換される。そして、車両制振制御部4は、変換された制振トルク修正量Txが加算器3bに出力される。つまり、車両制振制御装置1は、力学的運動モデルを用いて取得された制振トルク修正量Txに基づいてドライバ要求トルクTeを補正し、車輪30RL、30RRにバネ上振動を抑制する制振トルク(車輪トルク)を発生することができる最終要求トルク(駆動トルク)に変更する。
【0051】
したがって、車両制振制御装置1は、運転者が動力源21に要求する駆動トルクであるドライバ要求トルクTeと、制振制御の制御量であり制振制御で車輪30RL、30RRに要求される車輪トルクである制振トルクに応じた制振トルク修正量Txとに基づいて、動力源21が発生する最終要求トルクを調節することができ、これにより、車輪30RL、30RRにドライバ要求車輪トルクを発生させた上で、バネ上振動を抑制する制振トルクを発生させることができる。つまり、車両制振制御装置1は、車両10に搭載された動力源21が発生する動力を制御することで、動力を伝達する駆動輪である車輪30RL、30RRにバネ上振動を抑制する制振トルクを発生させる制振制御を実行し、動力源21の出力トルク(駆動トルク)を制御して車輪30RL、30RRの車輪トルクを変化させることで車体に発生する振動を抑制させることができる。
【0052】
なお、上記の車両制振制御装置1は、加算器3bにてドライバ要求トルクTeを制振トルク修正量Txで修正し最終要求トルク(駆動トルク)に変更した後に、制御指令決定部3cにてこの最終要求トルクを実現する動力源21の操作量(例えば、動力源21がガソリンエンジンであれば最終的な要求トルクに応じたスロットル開度や点火時期、動力源21がディーゼルエンジンであれば最終的な要求トルクに応じた燃料噴射量、動力源21がモータであれば最終的な要求トルクに応じた供給電流量など)を含む制御指令に変換し駆動装置20の動力源21に出力するものとして説明したがこれに限らない。車両制振制御装置1は、例えば、加算器3bの前段で、ドライバ要求トルクTeを実現する動力源21の操作量を含む制御指令を算出すると共に制振トルク修正量Txに応じた駆動トルクを実現する動力源21の操作量を含む制振制御指令を算出した後に、加算器3bにて制御指令に含まれる動力源21の操作量を制振制御指令に含まれる動力源21の操作量で修正し最終制御指令に変更し、駆動装置20の動力源21に出力するように構成してもよい。またここでは、制振制御の制御量は、制振制御で車輪30RL、30RRに要求される車輪トルクである制振トルクであるものとして説明したが、制振トルクを駆動装置20の駆動トルクの単位に換算した制振トルク修正量Txであってもよいし、ドライバ要求トルクTeを制振トルク修正量Txで修正した最終要求トルクであってもよい。
【0053】
ここで、車両制振制御装置1における制振制御においては、上述したように、車両10の車体のピッチ方向およびバウンス方向の力学的運動モデルを仮定して、ドライバ要求車輪トルクTwo、車輪トルク推定値Tw(外乱)をそれぞれ入力としたピッチ方向またはバウンス方向の状態変数の状態方程式を構成する。そして、かかる状態方程式から、最適レギュレータの理論を用いてピッチ方向およびバウンス方向の状態変数を0に収束させる入力(制振トルク)を決定し、得られた制振トルクに基づいてドライバ要求トルクTeが補正される。
【0054】
車両10の車体のバウンス方向またはピッチ方向の力学的運動モデルとして、例えば、図4に示すように、車体を質量Mおよび慣性モーメントIの剛体Sとみなし、この剛体Sが、弾性率kfと減衰率cfの前輪サスペンションと弾性率krと減衰率crの後輪サスペンションにより支持されているとする(車両10の車体のバネ上振動モデル)。この場合、車体の重心Cgのバウンス方向の運動方程式(バウンス方向の力学的運動モデル)とピッチ方向の運動方程式(ピッチ方向の力学的運動モデル)は、下記の数1に示す数式のように表すことができる。
【0055】
【数1】

【0056】
上記の数1において、Lf、Lrは、それぞれ、重心Cgから前車輪軸および後車輪軸までの距離であり、rは、車輪半径であり、hは、重心Cgの路面からの高さである。なお、式(1a)において、第1項、第2項は、前車輪軸から、第3項、第4項は、後車輪軸からの力の成分であり、式(1b)において、第1項は、前車輪軸から、第2項は、後車輪軸からの力のモーメント成分である。式(1b)における第3項は、駆動輪において発生している車輪トルクT(Two、Tw)が車体の重心周りに与える力のモーメント成分である。
【0057】
上記の式(1a)および(1b)は、車両10の車体の変位z、θとその変化率dz/dt、dθ/dtを状態変数ベクトルX(t)として、下記の式(2a)に示すように、(線形システムの)状態方程式の形式に書き換えることができる。

dX(t)/dt=A・X(t)+B・u(t) ・・・ (2a)

【0058】
上記の式(2a)において、X(t)、A、Bは、それぞれ、
【数2】


であり、行列Aの各要素a1からa4およびb1からb4は、それぞれ、上記の式(1a)、(1b)にz、θ、dz/dt、dθ/dtの係数をまとめることにより与えられ、
a1=−(kf+kr)/M、
a2=−(cf+cr)/M、
a3=−(kf・Lf−kr・Lr)/M、
a4=−(cf・Lf−cr・Lr)/M、
b1=−(Lf・kf−Lr・kr)/I、
b2=−(Lf・cf−Lr・cr)/I、
b3=−(Lf・kf+Lr・kr)/I、
b4=−(Lf・cf+Lr・cr)/I
である。また、u(t)は、
u(t)=T
であり、上記の状態方程式(2a)にて表されるシステムの入力である。したがって、上記の式(1b)より、行列Bの要素p1は、
p1=h/(I・r)
である。
【0059】
上記の状態方程式(2a)において、

u(t)=−K・X(t) ・・・(2b)

とおくと、状態方程式(2a)は、

dX(t)/dt=(A−BK)・X(t) ・・・(2c)

となる。したがって、X(t)の初期値X(t)をX(t)=(0,0,0,0)と設定して(トルク入力がされる前には振動はないものとする。)、状態変数ベクトルX(t)の微分方程式(2c)を解いたときに、X(t)、すなわち、バウンス方向およびピッチ方向の変位およびその時間変化率、の大きさを0に収束させるゲインKが決定されれば、バウンス・ピッチ振動を抑制する制振トルクu(t)が決定されることとなる。
【0060】
ゲインKは、いわゆる、最適レギュレータの理論を用いて決定することができる。この理論によれば、2次形式の評価関数(積分範囲は、0から∞)

J=∫(XQX+uRu)dt ・・・(3a)

の値が最小になるとき、状態方程式(2a)においてX(t)が安定的に収束し、評価関数Jを最小にする行列Kは、
K=R−1・B・P
により与えられることが知られている。ここで、Pは、リカッティ方程式
−dP/dt=AP+PA+Q−PBR−1
の解である。リカッティ方程式は、線形システムの分野において知られている任意の方法により解くことができ、これにより、ゲインKが決定される。
【0061】
なお、評価関数Jおよびリカッティ方程式中のQ、Rは、それぞれ、任意に設定される半正定対称行列、正定対称行列であり、システムの設計者により決定される評価関数Jの重み行列である。例えば、ここでの運動モデルの場合、Q、Rは、
【数3】


などと置いて、式(3a)において、状態ベクトルの成分うち、特定のもの、例えば、dz/dt、dθ/dt、のノルム(大きさ)をその他の成分、例えば、z、θ、のノルムより大きく設定すると、ノルムを大きく設定された成分が相対的に、より安定的に収束されることとなる。また、Qの成分の値を大きくすると、過渡特性重視、すなわち、状態ベクトルの値が速やかに安定値に収束し、Rの値を大きくすると、消費エネルギーが低減される。ここで、フィードフォワード制御部4aに対応するゲインKと、フィードバック制御部4bに対応するゲインKを異ならせても良い。例えば、フィードフォワード制御部4aに対応するゲインKは、運転者の加速感に対応するゲイン、フィードバック制御部4bに対応するゲインKは、運転者の手応えや応答性に対応するゲインとしても良い。
【0062】
車両制振制御部4における実際のバネ上制振制御においては、図2のブロック図に示されているように、運動モデル部4eにおいて、トルク入力値を用いて式(2a)の微分方程式を解くことにより、状態変数ベクトルX(t)が算出される。次いで、FF二次レギュレータ部4f、FB二次レギュレータ部4hにて、上記のように状態変数ベクトルX(t)を0又は最小値に収束させるべく決定されたゲインKを運動モデル部4eの出力である状態ベクトルX(t)に乗じた値u(t)、すなわち、FF系制振トルク修正量U・FFおよびFB系制振トルク修正量U・FBが、駆動トルク変換部4cにおいて動力源21のドライバ要求トルクTeの単位、すなわち、動力源21の駆動トルクの単位に変換されて、加算器3bにおいてドライバ要求トルクTeが補正される。式(1a)および(1b)で表されるシステムは、共振システムであり、任意の入力に対して状態変数ベクトルの値は、実質的にシステムの固有振動数の成分のみとなる。したがって、u(t)(の換算値)によりドライバ要求トルクTeが補正されるように構成することにより、ドライバ要求トルクTeのうち、システムの固有振動数の成分、すなわち、車両10の車体においてピッチ/バウンス振動を引き起こす成分が修正され、車両10の車体におけるピッチ/バウンス振動を抑制することとなる。運転者の駆動要求に応じたドライバ要求トルクTeにおいて、システムの固有振動数の成分がなくなると、動力源21に出力されるドライバ要求トルクTeに応じた制御指令のうち、システムの固有振動数の成分は、−u(t)のみとなり、Tw(外乱)による振動が収束することとなる。
【0063】
なお、運動モデル部4eにおいて用いられる力学的運動モデルのパラメータは、車両制振制御装置1に記憶されている。車両制振制御装置1は、パラメータ、例えば、M、I、Lf、Lr、h、r、kf、cf、kr、crなどが記憶されており、FF系制振トルク修正量U・FFおよびFB系制振トルク修正量U・FBを算出する際に用いられる。
【0064】
なお、車両10の車体のバウンス方向またはピッチ方向の力学的運動モデルとして、例えば、図5に示すように、図4の構成に加えて、前車輪および後車輪のタイヤのバネ弾性を考慮したモデル(車両10の車体のバネ上・下振動モデル)が採用されてもよい。前車輪および後車輪のタイヤが、それぞれ、弾性率ktf、ktrを有しているとすると、図5から理解されるように、車体の重心Cgのバウンス方向の運動方程式とピッチ方向の運動方程式は、下記の数4に示す数式のように表すことができる。
【0065】
【数4】

【0066】
上記の数4において、xf、xrは、前車輪、後車輪のばね下変位量であり、mf、mrは、前車輪、後車輪のばね下の質量である。式(4a)−(4d)は、z、θ、xf、xrとその時間微分値を状態変数ベクトルとして、図4の場合と同様に、式(2a)のような状態方程式を構成し(ただし、行列Aは、8行8列、行列Bは、8行1列となる。)最適レギュレータの理論にしたがって、状態変数ベクトルの大きさを0に収束させるゲイン行列Kを決定することができる。車両制振制御装置1における実際の制振制御は、図4の場合と同様である。
【0067】
ここで、図2の車両制振制御部4のフィードバック制御部4bにおいて、外乱として入力される車輪トルクは、例えば、各車輪30FL、30FR、30RL、30RRにトルクセンサを設け実際に検出するように構成してもよいが、ここでは走行中の車両10におけるその他の検出可能な値から車輪トルク推定部4gにて推定された車輪トルク推定値Twが用いられる。
【0068】
車輪トルク推定値Twは、例えば、各車輪に対応する車輪速センサから得られる車輪回転速度の平均値ω又は車輪速度の平均値r・ωの時間微分を用いて、次式(5)により推定、算出することができる。

Tw=M・r・dω/dt ・・・(5)

上記の式(5)において、Mは、車両の質量であり、rは、車輪半径である。すなわち、駆動輪が路面の接地個所において発生している駆動力の総和が、車両10の全体の駆動力M・G(Gは、加速度)に等しいとすると、車輪トルク推定値Twは、次式(5a)にて与えられる。

Tw=M・G・r ・・・(5a)

車両の加速度Gは、車輪速度r・ωの微分値より、次式(5b)によって与えられる。

G=r・dω/dt ・・・(5b)

したがって、車輪トルクは、上記の式(5)のようにして推定される。
【0069】
なお、本実施形態の車両制振制御部4は、運転者の駆動要求に応じたドライバ要求トルクTeに基づいたフィードフォワード制御部4aにおけるFF制御量であるFF系制振トルク修正量と、車両10の車輪の車輪速度に基づいたフィードバック制御部4bにおけるFB制御量であるFB系制振トルク修正量とに基づいて制振トルクを設定する車両制振制御部4が車両10の運転状態に基づいてFF系制振トルク修正量又はFB系制振トルク修正量を補正することで、車両10の運転状態に応じた適正な制振制御の実現を図ることができる。
【0070】
ここで、上述したように、車両制振制御部4は、フィードフォワード制御部4aとフィードバック制御部4bとが運動モデル部4eを兼用しているものの、基本的には独立した別個の制御系として構成され、FF系制振トルク修正量とFB系制振トルク修正量とをそれぞれ算出した後に、FF系制振トルク修正量とFB系制振トルク修正量とを加算することで制振トルクを設定している。このため、車両制振制御部4は、実際に制振トルクを設定する前段で、フィードフォワード制御部4aのFF系制振トルク修正量、フィードバック制御部4bのFB系制振トルク修正量に対して、それぞれ個別に上下限ガードを行ったり、補正を行ったりすることができる。また、これにより、車両10の状況に応じてどちらか一方の制御を遮断することも容易となる。
【0071】
そして、本実施形態の車両制振制御部4は、フィードフォワード制御部4aにFF制御補正部4kとFF制御ゲイン設定部4lとを備え、フィードバック制御部4bにFB制御補正部4mとFB制御ゲイン設定部4nとをさらに含んで構成される。車両制振制御部4は、FF制御補正部4kとFF制御ゲイン設定部4lとによってFF系制振トルク修正量を補正する一方、FB制御補正部4mとFB制御ゲイン設定部4nとによってFB系制振トルク修正量を補正している。つまり、車両制振制御部4は、FF系制振トルク修正量に対して車両10の状態に応じてFF制御ゲインを設定しFF系制振トルク修正量にこのFF制御ゲインを掛けることでFF系制振トルク修正量を補正し、FB系制振トルク修正量に対して車両10の状態に応じてFB制御ゲインを設定しFB系制振トルク修正量にこのFB制御ゲインを掛けることでFB系制振トルク修正量を補正する。
【0072】
FF制御補正部4kは、FF二次レギュレータ部4fの後段、加算器4iの前段に位置しFF二次レギュレータ部4fからFF系制振トルク修正量U・FFが入力され、補正したFF系制振トルク修正量U・FFを加算器4iに出力する。FF制御補正部4kは、このFF系制振トルク修正量U・FFに対してFF制御ゲイン設定部4lが設定するFF制御ゲインK・FFを乗算することで、FF系制振トルク修正量U・FFをFF制御ゲインK・FFに基づいて補正する。そして、FF制御ゲイン設定部4lは、このFF制御ゲインK・FFを車両10の状態に応じて設定する。つまり、FF二次レギュレータ部4fからFF制御補正部4kに入力されたFF系制振トルク修正量U・FFは、FF制御ゲイン設定部4lによりFF制御ゲインK・FFが車両10の状態に応じて設定されることで、FF制御補正部4kにて車両10の状態に応じて補正されることとなる。なお、FF制御補正部4kは、FF系制振トルク修正量U・FFが予め設定される上下限ガード値の範囲内となるように上下限ガードを行ってもよい。
【0073】
FB制御補正部4mは、FB二次レギュレータ部4hの後段、加算器4iの前段に位置しFB二次レギュレータ部4hからFB系制振トルク修正量U・FBが入力され、補正したFB系制振トルク修正量U・FBを加算器4iに出力する。FB制御補正部4mは、このFB系制振トルク修正量U・FBに対してFB制御ゲイン設定部4nが設定するFB制御ゲインK・FBを乗算することで、FB系制振トルク修正量U・FBをFB制御ゲインK・FBに基づいて補正する。そして、FB制御ゲイン設定部4nは、このFB制御ゲインK・FBを車両10の運転状態に応じて設定する。つまり、FB二次レギュレータ部4hからFB制御補正部4mに入力されたFB系制振トルク修正量U・FBは、FB制御ゲイン設定部4nによりFB制御ゲインK・FBが車両10の運転状態に応じて設定されることで、FB制御補正部4mにて車両10の運転状態に応じて補正されることとなる。なお、FB制御補正部4mは、FB系制振トルク修正量U・FBが予め設定される上下限ガード値の範囲内となるように上下限ガードを行ってもよい。
【0074】
ところで、上記のように構成される車両制振制御装置1では、例えば、エンジンなどの動力源21の運転領域によっては、上記の制振制御と通常のエンジン制御などの他の制御との協調を図り動力源21を制御して制振トルクを発生させることによる背反を調整するなど、より適正な制振制御を実行することが望まれていた。
【0075】
そこで、本実施形態の車両制振制御装置1は、動力源21の運転領域に応じて制振制御の態様を変えることで、例えば、制振制御と動力源21に関する他の制御との協調を図り、動力源21の状態に応じて適正に制振制御を実行している。
【0076】
具体的には、本実施形態の車両制振制御装置1は、図2に示すように、協調制御部5を備えている。協調制御部5は、動力源21の運転領域に応じて制振制御の態様を変えるものである。
【0077】
本実施形態の協調制御部5は、動力源21がこの動力源21の異なる運転領域の境界の近傍で運転される場合に制振制御の態様を変えるようにしている。さらに言えば、協調制御部5は、動力源21が異なる運転領域の境界の近傍で運転される場合に制振制御を実行しない場合の一方の運転領域で動力源21が運転されるように制振制御の態様を変えることで、制振制御と他の制御との協調を図り動力源21を制御して制振トルクを発生させることによる背反を調整し、より適正な制振制御を実行している。
【0078】
ここでは、動力源21の運転領域は、少なくとも制振制御の制御量を調節するための動力源21の操作量に応じて定まる運転領域である。協調制御部5は、例えば、制御指令決定部3cに接続して設けられ、動力源21が異なる運転領域の境界の近傍で運転される場合に動力源21の操作量を制限することで、制振制御を実行しない場合の一方の運転領域で動力源21が運転されるように制振制御の態様を変える。
【0079】
ここで、制振制御の制御量は、車両制振制御装置1による制振制御において、車両10のバネ上振動を抑制するために望ましい値に調節すべき値、すなわち、車両10のバネ上振動を抑制するために制御すべき値である。本実施形態の制振制御の制御量は、上述したように、制振制御で車輪30RL、30RRに要求される車輪トルクとしての制振トルクであるが、制振トルク修正量Txであってもよいし、ドライバ要求トルクTeを制振トルク修正量Txで修正した最終要求トルクであってもよい。
【0080】
動力源21の操作量は、制御対象である動力源21に入力することでこの動力源21を用いた制振制御の制御量である制振トルク(出力)に影響を与える値であり、すなわち、制振制御の制御量である制振トルクを制御対象である動力源21を通じて調節するための値である。つまり、動力源21の操作量は、制御対象である動力源21を用いた制振制御の制御量である制振トルク(実際値)を要求される制振トルク(目標値)に調節するために動力源21に入力される値である。本実施形態の制振トルクを調節するための動力源21の操作量は、上述したように、例えば、動力源21がガソリンエンジンであればスロットル開度や点火時期、動力源21がディーゼルエンジンであれば燃料噴射量、動力源21がモータであれば供給電流量などである。
【0081】
ここでは、例えば、動力源21がガソリンエンジンであり、制振トルクを調節するための動力源21の操作量がスロットル開度である場合、すなわち、動力源21の運転領域が少なくとも制振トルクを調節するための動力源21の操作量であるスロットル開度に応じて定まる場合を説明する。
【0082】
ここでは、動力源21の異なる運転領域は、例えば、動力源21であるガソリンエンジンの燃焼室で燃焼可能な空気と燃料との混合気の空燃比が異なる運転領域である。さらに具体的に言えば、動力源21の異なる運転領域は、例えば、理論空燃比運転領域とリッチ空燃比運転領域とである。理論空燃比運転領域は、混合気の空燃比が理論空燃比(ストイキ)である運転領域である一方、リッチ空燃比運転領域は、酸素に対して燃料が増量され混合気の空燃比が理論空燃比より燃料の割合が多いリッチ空燃比である運転領域である。
【0083】
図6は、運転領域判定マップの一例を示す図である。この運転領域判定マップは、車両制振制御装置1が搭載される車両10ごとに予め適合されたマップであり不図示の記憶部に記憶されている。図6の運転領域判定マップは、横軸が動力源21であるエンジンのエンジン回転速度Erに応じた回転数、縦軸が制振トルクを調節するための動力源21の操作量であるスロットル開度となっている。なお、縦軸は、スロットル開度に応じて定まるエンジン負荷であってもよい。
【0084】
動力源21をなすガソリンエンジンは、図6に例示するように、エンジンの回転数とスロットル開度とに応じた所定の運転領域に基づいてその運転が制御されている。図6で例示する運転領域判定マップでは、例えば、第1領域が理論空燃比運転領域であり、第2領域がリッチ空燃比運転領域である。つまり、動力源21をなすガソリンエンジンは、回転数とスロットル開度との組み合わせが第1領域の理論空燃比運転領域にある場合、空燃比が理論空燃比となるように空燃比制御が実行される一方、回転数とスロットル開度との組み合わせが第2領域のリッチ空燃比運転領域にある場合、空燃比がリッチ空燃比となるように空燃比制御が実行される。
【0085】
そして、協調制御部5は、例えば、図6の運転領域判定マップに基づいて、動力源21が異なる運転領域の境界の近傍で運転されているか否かを判定することができる。協調制御部5は、例えば、図6の運転領域判定マップに基づいて、ドライバ要求スロットル開度と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第1領域の理論空燃比運転領域内となり、かつ、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第2領域のリッチ空燃比運転領域内となる場合、又は、ドライバ要求スロットル開度と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第2領域のリッチ空燃比運転領域内となり、かつ、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第1領域の理論空燃比運転領域内となる場合に、動力源21が異なる運転領域の境界の近傍で運転されていると判定することができる。
【0086】
ここで、ドライバ要求スロットル開度は、制振トルク修正量Txで修正する前のドライバ要求トルクTeに応じた動力源21の操作量(ドライバ要求操作量)である。制振要求スロットル開度は、制振トルク修正量Txに応じた動力源21の操作量(制振要求操作量)である。また、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和は、最終要求トルクに応じた動力源21の操作量である最終要求スロットル開度(最終要求操作量)に相当する。
【0087】
そして、協調制御部5は、ドライバ要求スロットル開度と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第1領域の理論空燃比運転領域内となり、かつ、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第2領域のリッチ空燃比運転領域内となる場合、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が制振制御を実行しない場合の一方の運転領域である第1領域の理論空燃比運転領域内に留まるように、操作量としてのスロットル開度を制限し、最終的なスロットル開度として反映させる。この結果、車両制振制御装置1は、動力源21であるガソリンエンジンの排気性能の悪化、燃費の悪化を抑制した上で、適正に制振制御を実行することができ運転者の操縦安定性、乗員の乗り心地等を向上することができる。
【0088】
また、協調制御部5は、ドライバ要求スロットル開度と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第2領域のリッチ空燃比運転領域内となり、かつ、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第1領域の理論空燃比運転領域内となる場合、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が制振制御を実行しない場合の一方の運転領域である第2領域のリッチ空燃比運転領域内に留まるように、操作量としてのスロットル開度を制限し、最終的なスロットル開度として反映させる。この結果、車両制振制御装置1は、例えば、車両10の走行性能上の要求を満たすため、さらなる加速要求に対して動力源21が迅速に応答できる状態とし応答性を向上した上で、適正に制振制御を実行することができ運転者の操縦安定性、乗員の乗り心地等を向上することができる。
【0089】
したがって、車両制振制御装置1は、動力源21が異なる運転領域の境界の近傍で運転される場合に動力源21の操作量であるスロットル開度を制限し制振制御を実行しない場合の一方の運転領域で動力源21が運転されるように制振制御の態様を変えることで、制振制御と動力源21の空燃比制御との協調を図ることができ、適正に制振制御を実行することができる。
【0090】
ここで、協調制御部5は、動力源21の操作量である最終的なスロットル開度を制限する場合、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和であるスロットル開度に対して上下限ガードを設けることで制限するようにすればよい。なお、協調制御部5は、これに限らず、制振トルク修正量Txを設定する際の種々の制御ゲインを変更し制振トルク、制振トルク修正量Tx又は制振要求スロットル開度を制限することで最終的なスロットル開度を制限してもよいし、ドライバ要求スロットル開度又はドライバ要求スロットル開度を制限することで最終的なスロットル開度を制限してもよい。また、協調制御部5は、制振制御自体を禁止することで、すなわち、制振トルク修正量Txを0とし制振要求スロットル開度を0とすることで最終的なスロットル開度を制限してもよい。
【0091】
次に、図7のフローチャートを参照して、本実施形態に係る車両制振制御装置1の協調制御の一例を説明する。なお、これらの制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
【0092】
車両制振制御装置1の協調制御部5は、種々のセンサの検出信号や制御信号、制振制御実行中フラグのON・OFFなどに基づいて制振制御が実行中であるか否かを判定する(S100)。協調制御部5は、制振制御が実行中でないと判定した場合(S100:No)、制御指令決定部3cから動力源21への制御指令に含まれる最終要求トルクに応じた操作量をそのまま最終操作量(最終スロットル開度)として反映させ動力源21を制御し(S106)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。なおここでは、制振トルク修正量Txは0であり制振要求スロットル開度は0である。
【0093】
協調制御部5は、制振制御が実行中であると判定した場合(S100:No)、ドライバ要求操作量であるドライバ要求スロットル開度と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第1領域の理論空燃比運転領域内となり、かつ、制振要求操作量である制振要求スロットル開度とドライバ要求操作量であるドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第2領域のリッチ空燃比運転領域内となるか否かを判定する(S102)。
【0094】
協調制御部5は、S102の判定をYesと判定した場合(S102:Yes)、制振要求操作量である制振要求スロットル開度とドライバ要求操作量であるドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第1領域の理論空燃比運転領域内に留まるように、制御指令決定部3cから動力源21への制御指令に含まれる最終要求トルクに応じた操作量であるスロットル開度を上限ガードし(S104)、これを最終スロットル開度として反映させ動力源21を制御し(S106)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0095】
協調制御部5は、S102の判定をNoと判定した場合(S102:No)、ドライバ要求操作量であるドライバ要求スロットル開度と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第2領域のリッチ空燃比運転領域内となり、かつ、制振要求操作量である制振要求スロットル開度とドライバ要求操作量であるドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第1領域の理論空燃比運転領域内となるか否かを判定する(S108)。
【0096】
協調制御部5は、S108の判定をYesと判定した場合(S108:Yes)、制振要求操作量である制振要求スロットル開度とドライバ要求操作量であるドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第2領域のリッチ空燃比運転領域内に留まるように、制御指令決定部3cから動力源21への制御指令に含まれる最終要求トルクに応じた操作量であるスロットル開度を下限ガードし(S110)、これを最終スロットル開度として反映させ動力源21を制御し(S106)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0097】
協調制御部5は、S108の判定をNoと判定した場合(S108:No)、制御指令決定部3cから動力源21への制御指令に含まれる最終要求トルクに応じた操作量をそのまま最終操作量(最終スロットル開度)として反映させ動力源21を制御し(S106)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0098】
なお、以上で説明した動力源21の異なる運転領域は、理論空燃比運転領域とリッチ空燃比運転領域とには限らない。
【0099】
動力源21の異なる運転領域は、例えば、理論空燃比運転領域とリーン空燃比運転領域とであってもよい。理論空燃比運転領域は、混合気の空燃比が理論空燃比(ストイキ)である運転領域である一方、リーン空燃比運転領域は、酸素に対して燃料が減量され混合気の空燃比が理論空燃比より燃料の割合が少ないリーン空燃比である運転領域である。リーン空燃比運転領域は、例えば、動力源21をなすガソリンエンジンが希薄燃焼(リーンバーン)で運転されるリーンバーン運転領域であり、酸素に対して理論空燃比より燃料の割合を少なくすることで、エンジンにおける燃焼の効率化や低燃費化、排気性能の向上を図る運転領域である。
【0100】
図8は、運転領域判定マップの他の一例を示す図である。この運転領域判定マップは、車両制振制御装置1が搭載される車両10ごとに予め適合されたマップであり不図示の記憶部に記憶されている。図8の運転領域判定マップは、横軸が動力源21であるエンジンのエンジン回転速度Erに応じた回転数、縦軸が制振トルクを調節するための動力源21の操作量であるスロットル開度となっている。なお、縦軸は、スロットル開度に応じて定まるエンジン負荷であってもよい。
【0101】
図8で例示する運転領域判定マップでは、例えば、第1領域がリーン空燃比運転領域であり、第2領域が理論空燃比運転領域である。つまり、動力源21をなすガソリンエンジンは、回転数とスロットル開度との組み合わせが第1領域のリーン空燃比運転領域にある場合、空燃比がリーン空燃比となるように空燃比制御が実行される一方、回転数とスロットル開度との組み合わせが第2領域の理論空燃比運転領域にある場合、空燃比が理論空燃比となるように空燃比制御が実行される。
【0102】
そしてこの場合、協調制御部5は、ドライバ要求スロットル開度と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第1領域のリーン空燃比運転領域内となり、かつ、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第2領域の理論空燃比運転領域内となる場合、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が制振制御を実行しない場合の一方の運転領域である第1領域のリーン空燃比運転領域内に留まるように、操作量としてのスロットル開度を制限し、最終的なスロットル開度として反映させる。この結果、車両制振制御装置1は、動力源21であるガソリンエンジンの排気性能の悪化、燃費の悪化を抑制した上で、適正に制振制御を実行することができ運転者の操縦安定性、乗員の乗り心地等を向上することができる。
【0103】
また、協調制御部5は、ドライバ要求スロットル開度と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第2領域の理論空燃比運転領域内となり、かつ、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第1領域のリーン空燃比運転領域内となる場合、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が制振制御を実行しない場合の一方の運転領域である第2領域の理論空燃比運転領域内に留まるように、操作量としてのスロットル開度を制限し、最終的なスロットル開度として反映させる。この結果、車両制振制御装置1は、例えば、車両10の走行性能上の要求を満たすため、さらなる加速要求に対して動力源21が迅速に応答できる状態とし応答性を向上した上で、適正に制振制御を実行することができ運転者の操縦安定性、乗員の乗り心地等を向上することができる。
【0104】
したがって、車両制振制御装置1は、動力源21が異なる運転領域の境界の近傍で運転される場合に動力源21の操作量であるスロットル開度を制限し制振制御を実行しない場合の一方の運転領域で動力源21が運転されるように制振制御の態様を変えることで、制振制御と動力源21の空燃比制御との協調を図ることができ、適正に制振制御を実行することができる。
【0105】
また、動力源21の異なる運転領域は、例えば、減筒運転領域と全気筒運転領域とであってもよい。減筒運転領域は、動力源21をなすガソリンエンジンであって複数の気筒の内の少なくとも1つの運転を運転条件に応じて休止させるいわゆる可変気筒システムを備えたガソリンエンジンで、複数の気筒のうちの少なくとも1つの運転を休止する運転領域である。減筒運転領域は、例えば、複数の気筒のうちの少なくとも1つの運転を運転条件に応じて休止させることで、エンジンにおける低燃費化、排気性能の向上を図る運転領域である。一方、全気筒運転領域は、動力源21をなすガソリンエンジンの複数の気筒の全てを稼動する運転領域である。全気筒運転領域は、例えば、複数の気筒の全てを稼動させることで発進時や加速時等に必要な動力性能を確保するための運転領域である。なお、この減筒運転領域と全気筒運転領域とは、動力源21をなすガソリンエンジンにおいて稼動している気筒の長手方向長さ(シリンダ軸方向長さ)の和が相互に異なる領域の組み合わせにも対応するものでもある。
【0106】
この場合、例えば、図8で例示した運転領域判定マップにおいて、第1領域を減筒運転領域とし、第2領域を全気筒運転領域とすればよい。つまり、動力源21をなすガソリンエンジンは、回転数とスロットル開度との組み合わせが第1領域の減筒運転領域にある場合、複数の気筒のうちの少なくとも1つの運転を休止するように可変気筒制御が実行される一方、回転数とスロットル開度との組み合わせが第2領域の全気筒運転領域にある場合、複数の気筒の全てを稼動するように可変気筒制御が実行される。
【0107】
そしてこの場合、協調制御部5は、ドライバ要求スロットル開度と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第1領域の減筒運転領域内となり、かつ、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第2領域の全気筒運転領域内となる場合、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が制振制御を実行しない場合の一方の運転領域である第1領域の減筒運転領域内に留まるように、操作量としてのスロットル開度を制限し、最終的なスロットル開度として反映させる。この結果、車両制振制御装置1は、動力源21であるガソリンエンジンの排気性能の悪化、燃費の悪化を抑制した上で、適正に制振制御を実行することができ運転者の操縦安定性、乗員の乗り心地等を向上することができる。
【0108】
また、協調制御部5は、ドライバ要求スロットル開度と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第2領域の全気筒運転領域内となり、かつ、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第1領域の減筒運転領域内となる場合、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が制振制御を実行しない場合の一方の運転領域である第2領域の全気筒運転領域内に留まるように、操作量としてのスロットル開度を制限し、最終的なスロットル開度として反映させる。この結果、車両制振制御装置1は、例えば、車両10の走行性能上の要求を満たすため、さらなる加速要求に対して動力源21が迅速に応答できる状態とし応答性を向上した上で、適正に制振制御を実行することができ運転者の操縦安定性、乗員の乗り心地等を向上することができる。
【0109】
したがって、車両制振制御装置1は、動力源21が異なる運転領域の境界の近傍で運転される場合に動力源21の操作量であるスロットル開度を制限し制振制御を実行しない場合の一方の運転領域で動力源21が運転されるように制振制御の態様を変えることで、制振制御と動力源21の可変気筒制御との協調を図ることができ、適正に制振制御を実行することができる。また、車両制振制御装置1は、制振制御と動力源21の可変気筒制御との協調を図ることで、適正に制振制御を実行した上で、特定の気筒の稼動と休止とが必要以上に繰り返されることを抑制することができ、いわゆるNV性能(ノイズバイブレーション性能)が悪化することを抑制することができる。
【0110】
また、動力源21の異なる運転領域は、例えば、動力源21であるガソリンエンジンの吸気の状態が異なる運転領域であってもよい。さらに具体的に言えば、動力源21の異なる運転領域は、例えば、ガソリンエンジンの吸気の状態が異なる運転領域として、吸気流制御弁閉弁運転領域と吸気流制御弁開弁運転領域とであってもよい。吸気流制御弁閉弁運転領域は、動力源21をなすガソリンエンジンであって吸気通路に設けられた吸気流制御弁(吸気流体弁)を備えたガソリンエンジンで、吸気流制御弁を閉弁状態とする運転領域である。一方、吸気流制御弁開弁運転領域は、吸気流制御弁を開弁状態とする運転領域である。
【0111】
ここで、吸気通路に設けられる吸気流制御弁は、開閉制御されることで動力源21をなすエンジンの燃焼室へ導入する吸気流を変更し渦流を生じさせるものであり、タンブルコントロールバルブ(TCV:Tumble Control Valve)やスワールコントロールバルブ(SCV:Swirl Control Valve)などがその一例である。タンブルコントロールバルブは、その開度(言い換えれば吸気通路において吸入空気が通過可能な通路断面積)を相対的に小さくすることで燃焼室に生じるタンブル流を相対的に強化することができ、スワールコントロールバルブは、その開度を相対的に小さくすることで燃焼室に生じるスワール流を相対的に強化することができる。上述の吸気流制御弁閉弁運転領域は、典型的には、開度を相対的に小さくし燃焼室に生じる渦流の強度を増すことで、エンジンにおける燃焼の効率化や低燃費化、排気性能の向上を図る運転領域である。
【0112】
この場合、例えば、図8で例示した運転領域判定マップにおいて、第1領域を吸気流制御弁閉弁運転領域とし、第2領域を吸気流制御弁開弁運転領域とすればよい。つまり、動力源21をなすガソリンエンジンは、回転数とスロットル開度との組み合わせが第1領域の吸気流制御弁閉弁運転領域にある場合、吸気流制御弁の開度が相対的に小さくなるように吸気流制御弁開閉制御が実行される一方、回転数とスロットル開度との組み合わせが第2領域の吸気流制御弁開弁運転領域にある場合、吸気流制御弁の開度が全開となるように吸気流制御弁開閉制御が実行される。
【0113】
そしてこの場合、協調制御部5は、ドライバ要求スロットル開度と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第1領域の吸気流制御弁閉弁運転領域内となり、かつ、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第2領域の吸気流制御弁開弁運転領域内となる場合、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が制振制御を実行しない場合の一方の運転領域である第1領域の吸気流制御弁閉弁運転領域内に留まるように、操作量としてのスロットル開度を制限し、最終的なスロットル開度として反映させる。この結果、車両制振制御装置1は、動力源21であるガソリンエンジンの排気性能の悪化、燃費の悪化を抑制した上で、適正に制振制御を実行することができ運転者の操縦安定性、乗員の乗り心地等を向上することができる。
【0114】
また、協調制御部5は、ドライバ要求スロットル開度と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第2領域の吸気流制御弁開弁運転領域内となり、かつ、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第1領域の吸気流制御弁閉弁運転領域内となる場合、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が制振制御を実行しない場合の一方の運転領域である第2領域の吸気流制御弁開弁運転領域内に留まるように、操作量としてのスロットル開度を制限し、最終的なスロットル開度として反映させる。この結果、車両制振制御装置1は、例えば、車両10の走行性能上の要求を満たすため、さらなる加速要求に対して動力源21が迅速に応答できる状態とし応答性を向上した上で、適正に制振制御を実行することができ運転者の操縦安定性、乗員の乗り心地等を向上することができる。
【0115】
したがって、車両制振制御装置1は、動力源21が異なる運転領域の境界の近傍で運転される場合に動力源21の操作量であるスロットル開度を制限し制振制御を実行しない場合の一方の運転領域で動力源21が運転されるように制振制御の態様を変えることで、制振制御と動力源21の吸気流制御弁開閉制御との協調を図ることができ、適正に制振制御を実行することができる。
【0116】
また、この吸気流制御弁閉弁運転領域と吸気流制御弁開弁運転領域とは、動力源21のアクチュエータである吸気流制御弁の作動状態が異なる運転領域でもある。すなわち、吸気流制御弁閉弁運転領域における吸気流制御弁の作動状態は、吸気流制御弁の開度が相対的に小さく設定されるような作動状態である一方、吸気流制御弁開弁運転領域における吸気流制御弁の作動状態は、吸気流制御弁の開度が全開に設定されるような作動状態である。言い換えれば、動力源21のアクチュエータである吸気流制御弁は、制振制御の制御量である制振トルクを調節するための動力源21の操作量であるスロットル開度に応じてその作動状態が切り替えられる。つまり、この動力源21では、スロットル開度と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第1領域である吸気流制御弁閉弁運転領域から第2領域である吸気流制御弁開弁運転領域に移動、又は、第2領域である吸気流制御弁開弁運転領域から第1領域である吸気流制御弁閉弁運転領域に移動するたびにアクチュエータの作動状態が切り替えられる。
【0117】
ここで、この車両制振制御装置1は、上記のようにして制振制御と、動力源21のアクチュエータ駆動制御である吸気流制御弁開閉制御との協調を図ることで、適正に制振制御を実行した上で、動力源21のアクチュエータである吸気流制御弁の必要以上の作動状態の切り替えを抑制しいわゆるハンチングを抑制することができ、吸気流制御弁の作動回数を抑制することができ、装置寿命を延ばしたり制御電力の低減を図ったりすることができる。
【0118】
また、動力源21の異なる運転領域は、例えば、ガソリンエンジンの吸気の状態が異なる運転領域として、可変吸気制御弁閉弁運転領域と可変吸気制御弁開弁運転領域とであってもよい。可変吸気制御弁閉弁運転領域は、動力源21をなすガソリンエンジンであって吸気通路の経路、長さ、容積などを可変とするいわゆる可変吸気システム(ACIS:Acoustic Control Induction System)を備えたガソリンエンジンで、可変吸気システムの可変吸気制御弁としてのACIS弁を閉弁状態とする運転領域である。一方、可変吸気制御開弁運転領域は、ACIS弁を開弁状態とする運転領域である。
【0119】
ここで、この可変吸気システムは、ACIS弁が開閉制御されることで、吸気通路の経路、長さ、容積などを変更することにより、エンジンの状態などに応じてアイドリングを安定させたり、吸入空気の充填効率を上げたりするためのものである。可変吸気システムは、例えば、ACIS弁の開度(言い換えれば吸気通路において吸入空気が通過可能な通路断面積)を全開とすることで動力源21をなすエンジンの燃焼室に吸入される空気の充填効率を向上することができる。
【0120】
図9は、運転領域判定マップの他の一例を示す図である。この運転領域判定マップは、車両制振制御装置1が搭載される車両10ごとに予め適合されたマップであり不図示の記憶部に記憶されている。図9の運転領域判定マップは、横軸が動力源21であるエンジンのエンジン回転速度Erに応じた回転数、縦軸が制振トルクを調節するための動力源21の操作量であるスロットル開度となっている。なお、縦軸は、スロットル開度に応じて定まるエンジン負荷であってもよい。
【0121】
図9で例示する運転領域判定マップでは、例えば、第1領域が可変吸気制御弁閉弁運転領域であり、第2領域が可変吸気制御弁開弁運転領域である。つまり、動力源21をなすガソリンエンジンは、回転数とスロットル開度との組み合わせが第1領域の可変吸気制御弁閉弁運転領域にある場合、ACIS弁の開度が全閉となるように可変吸気制御が実行される一方、回転数とスロットル開度との組み合わせが第2領域の可変吸気制御弁開弁運転領域にある場合、ACIS弁の開度が全開となるように可変吸気制御が実行される。
【0122】
そしてこの場合、協調制御部5は、ドライバ要求スロットル開度と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第1領域の可変吸気制御弁閉弁運転領域内となり、かつ、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第2領域の可変吸気制御弁開弁運転領域内となる場合、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が制振制御を実行しない場合の一方の運転領域である第1領域の可変吸気制御弁閉弁運転領域内に留まるように、操作量としてのスロットル開度を制限し、最終的なスロットル開度として反映させる。この結果、車両制振制御装置1は、動力源21であるガソリンエンジンの排気性能の悪化、燃費の悪化を抑制した上で、適正に制振制御を実行することができ運転者の操縦安定性、乗員の乗り心地等を向上することができる。
【0123】
また、協調制御部5は、ドライバ要求スロットル開度と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第2領域の可変吸気制御弁開弁運転領域内となり、かつ、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第1領域の可変吸気制御弁閉弁運転領域内となる場合、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が制振制御を実行しない場合の一方の運転領域である第2領域の可変吸気制御弁開弁運転領域内に留まるように、操作量としてのスロットル開度を制限し、最終的なスロットル開度として反映させる。この結果、車両制振制御装置1は、例えば、車両10の走行性能上の要求を満たすため、さらなる加速要求に対して動力源21が迅速に応答できる状態とし応答性を向上した上で、適正に制振制御を実行することができ運転者の操縦安定性、乗員の乗り心地等を向上することができる。
【0124】
したがって、車両制振制御装置1は、動力源21が異なる運転領域の境界の近傍で運転される場合に動力源21の操作量であるスロットル開度を制限し制振制御を実行しない場合の一方の運転領域で動力源21が運転されるように制振制御の態様を変えることで、制振制御と動力源21の可変吸気制御との協調を図ることができ、適正に制振制御を実行することができる。
【0125】
また、この可変吸気制御弁閉弁運転領域と可変吸気制御弁開弁運転領域とは、上述の吸気流制御弁閉弁運転領域と吸気流制御弁開弁運転領域と同様に、動力源21のアクチュエータである可変吸気システムのACIS弁の作動状態が異なる運転領域でもある。ここで、この車両制振制御装置1は、上記のようにして制振制御と、動力源21のアクチュエータ駆動制御である可変吸気制御との協調を図ることで、適正に制振制御を実行した上で、動力源21のアクチュエータである可変吸気システムのACIS弁の必要以上の作動状態の切り替えを抑制しいわゆるハンチングを抑制することができ、ACIS弁の作動回数を抑制することができ、装置寿命を延ばしたり制御電力の低減を図ったりすることができる。
【0126】
また、動力源21の異なる運転領域は、例えば、動力源21であるガソリンエンジンの排気の状態が異なる運転領域であってもよい。さらに具体的に言えば、動力源21の異なる運転領域は、例えば、ガソリンエンジンの排気の状態が異なる運転領域として、排気冷却促進運転領域と基本運転領域とであってもよい。排気冷却促進運転領域は、動力源21をなすガソリンエンジンであって排気通路に設けられた排気冷却システムを備えたガソリンエンジンで、排気冷却システムによりエンジンの排気冷却を促進する運転領域である。一方、基本運転領域は、排気冷却システムによるエンジンの排気冷却の促進を行わない運転領域である。
【0127】
ここで、この排気冷却システムは、例えば、排気冷却制御弁が開閉制御されることで、排気通路の経路、長さ、容積などを変更することにより、エンジンの排気冷却を促進するためのものである。排気冷却システムは、例えば、排気冷却制御弁の開度(言い換えれば排気通路において排気ガスが通過可能な通路断面積)を全開とすることで排気通路の経路、長さ、容積などを変更し動力源21をなすエンジンの排気冷却を促進することができる。
【0128】
この場合、例えば、図8で例示した運転領域判定マップにおいて、第1領域を基本運転領域とし、第2領域を排気冷却促進運転領域とすればよい。つまり、動力源21をなすガソリンエンジンは、回転数とスロットル開度との組み合わせが第1領域の基本運転領域にある場合、排気冷却システムによるエンジンの排気冷却の促進を行わないように排気冷却制御が実行される一方、回転数とスロットル開度との組み合わせが第2領域の排気冷却促進運転領域にある場合、排気冷却システムによりエンジンの排気冷却を促進するように排気冷却制御が実行される。
【0129】
そしてこの場合、協調制御部5は、ドライバ要求スロットル開度と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第1領域の基本運転領域内となり、かつ、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第2領域の排気冷却促進運転領域内となる場合、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が制振制御を実行しない場合の一方の運転領域である第1領域の基本運転領域内に留まるように、操作量としてのスロットル開度を制限し、最終的なスロットル開度として反映させる。この結果、車両制振制御装置1は、動力源21であるガソリンエンジンの排気性能の悪化、燃費の悪化を抑制した上で、適正に制振制御を実行することができ運転者の操縦安定性、乗員の乗り心地等を向上することができる。
【0130】
また、協調制御部5は、ドライバ要求スロットル開度と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第2領域の排気冷却促進運転領域内となり、かつ、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第1領域の基本運転領域内となる場合、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が制振制御を実行しない場合の一方の運転領域である第2領域の排気冷却促進運転領域内に留まるように、操作量としてのスロットル開度を制限し、最終的なスロットル開度として反映させる。この結果、車両制振制御装置1は、例えば、車両10の走行性能上の要求を満たすため、さらなる加速要求に対して動力源21が迅速に応答できる状態とし応答性を向上した上で、適正に制振制御を実行することができ運転者の操縦安定性、乗員の乗り心地等を向上することができる。
【0131】
したがって、車両制振制御装置1は、動力源21が異なる運転領域の境界の近傍で運転される場合に動力源21の操作量であるスロットル開度を制限し制振制御を実行しない場合の一方の運転領域で動力源21が運転されるように制振制御の態様を変えることで、制振制御と動力源21の排気冷却制御との協調を図ることができ、適正に制振制御を実行することができる。
【0132】
また、この基本運転領域と排気冷却促進運転領域とは、上述の吸気流制御弁閉弁運転領域と吸気流制御弁開弁運転領域と同様に、動力源21のアクチュエータである排気冷却システムの排気冷却制御弁の作動状態が異なる運転領域でもある。ここで、この車両制振制御装置1は、上記のようにして制振制御と、動力源21のアクチュエータ駆動制御である排気冷却制御との協調を図ることで、適正に制振制御を実行した上で、動力源21のアクチュエータである排気冷却システムの排気冷却制御弁の必要以上の作動状態の切り替えを抑制しいわゆるハンチングを抑制することができ、排気冷却制御弁の作動回数を抑制することができ、装置寿命を延ばしたり制御電力の低減を図ったりすることができる。
【0133】
また、動力源21の異なる運転領域は、例えば、エンジンの排気の状態が異なる運転領域として、EGR(EGR:Exhaust Gas Recirculation、排気還流)作動運転領域とEGR非作動運転領域とであってもよい。EGR作動運転領域は、動力源21をなすエンジンであって排気通路に設けられたEGRシステムを備えたエンジンで、EGRシステムによりエンジンの排気ガスを吸気側に再還流させる運転領域である。一方、EGR非作動運転領域は、EGRシステムによりエンジンの排気ガスを吸気側に再還流させない運転領域である。
【0134】
ここで、このEGRシステムは、例えば、EGR弁が開閉制御されることで、EGR通路を介して排気ガスをエンジンの吸気側に再還流することにより、エンジンの排気性能の向上、燃費の向上を図るためのものである。EGRシステムは、例えば、EGR弁の開度(排気ガスが通過可能な通路断面積)を相対的に大きくすることでエンジンの吸気側に再還流される排気ガスの量が増加され、エンジンの排気性能の向上、燃費の向上を図ることができる。
【0135】
この場合、例えば、図8で例示した運転領域判定マップにおいて、第1領域をEGR作動運転領域とし、第2領域をEGR非作動運転領域とすればよい。つまり、動力源21をなすエンジンは、回転数とスロットル開度との組み合わせが第1領域のEGR作動運転領域にある場合、EGRシステムによるエンジンの排気ガスの吸気側への再還流を行うようにEGR制御が実行される一方、回転数とスロットル開度との組み合わせが第2領域のEGR非作動運転領域にある場合、EGRシステムによるエンジンの排気ガスの吸気側への再還流を行わないようにEGR制御が実行される。
【0136】
そしてこの場合、協調制御部5は、ドライバ要求スロットル開度と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第1領域のEGR作動運転領域内となり、かつ、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第2領域のEGR非作動運転領域内となる場合、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が制振制御を実行しない場合の一方の運転領域である第1領域のEGR作動運転領域内に留まるように、操作量としてのスロットル開度を制限し、最終的なスロットル開度として反映させる。この結果、車両制振制御装置1は、動力源21であるエンジンの排気性能の悪化、燃費の悪化を抑制した上で、適正に制振制御を実行することができ運転者の操縦安定性、乗員の乗り心地等を向上することができる。
【0137】
また、協調制御部5は、ドライバ要求スロットル開度と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第2領域のEGR非作動運転領域内となり、かつ、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が第1領域のEGR作動運転領域内となる場合、制振要求スロットル開度とドライバ要求スロットル開度との和と現在の回転数との組み合わせで定まる動力源21の運転点が制振制御を実行しない場合の一方の運転領域である第2領域のEGR非作動運転領域内に留まるように、操作量としてのスロットル開度を制限し、最終的なスロットル開度として反映させる。この結果、車両制振制御装置1は、例えば、車両10の走行性能上の要求を満たすため、さらなる加速要求に対して動力源21が迅速に応答できる状態とし応答性を向上した上で、適正に制振制御を実行することができ運転者の操縦安定性、乗員の乗り心地等を向上することができる。
【0138】
したがって、車両制振制御装置1は、動力源21が異なる運転領域の境界の近傍で運転される場合に動力源21の操作量であるスロットル開度を制限し制振制御を実行しない場合の一方の運転領域で動力源21が運転されるように制振制御の態様を変えることで、制振制御と動力源21のEGR制御との協調を図ることができ、適正に制振制御を実行することができる。
【0139】
また、このEGR作動運転領域とEGR非作動運転領域とは、上述の吸気流制御弁閉弁運転領域と吸気流制御弁開弁運転領域と同様に、動力源21のアクチュエータであるEGRシステムのEGR弁の作動状態が異なる運転領域でもある。ここで、この車両制振制御装置1は、上記のようにして制振制御と、動力源21のアクチュエータ駆動制御であるEGR制御との協調を図ることで、適正に制振制御を実行した上で、動力源21のアクチュエータであるEGRシステムのEGR弁の必要以上の作動状態の切り替えを抑制しいわゆるハンチングを抑制することができ、EGR弁の作動回数を抑制することができ、装置寿命を延ばしたり制御電力の低減を図ったりすることができる。
【0140】
なお、動力源21をなすエンジンの排気の状態を異ならせる手段、あるいは、制振制御の制御量(制振トルク)を調節するための動力源21の操作量に応じてその作動状態が切り替えられる動力源21のアクチュエータは、排気冷却システムの排気冷却制御弁やEGRシステムのEGR弁に限らず、例えば、エンジンの排気圧を可変制御する排気圧制御弁、過給機を備えるエンジンにおいて過給機のタービンをバイパスするバイパス管(ウエストゲート)を開閉することで過給圧を制御するウエストゲート弁、排気通路を遮断しエンジンのピストンにかかる背圧を高めることで制動力を発生させる排気ブレーキ、各々に触媒が設けられる分岐排気通路を開閉することで排気ガスを排気温度に応じていずれかの触媒に導いて浄化させるバイパス弁などであってもよい。
【0141】
また、この車両制振制御装置1は、上記のような動力源21の異なる運転領域の組み合わせが複数あってもよく、この場合、動力源21が各組み合わせにおける異なる運転領域の境界の近傍で運転される場合に制振制御の態様を変えるようにすればよい。この場合であっても、車両制振制御装置1は、制振制御と動力源21に関する他の制御との協調を図り、動力源21の状態に応じて適正に制振制御を実行することができる。
【0142】
また、以上の説明では、動力源21の運転領域は、少なくとも制振制御の制御量(制振トルク)を調節するための動力源21の操作量、上記の説明ではスロットル開度に応じて定まるものとして説明したがこれに限らない。動力源21の運転領域は、単に動力源21の状態に関する種々のパラメータに応じて定まるものであってもよい。
【0143】
また、以上の説明では、車両制振制御装置1は、上述したように、動力源21が異なる運転領域の境界の近傍で運転される場合に制振制御を実行しない場合の一方の運転領域で動力源21が運転されるように制振制御の態様を変えるものとして説明したが、これに限らず、動力源21の運転領域に応じて制振制御の態様を変えるものであればよい。
【0144】
協調制御部5は、例えば、動力源21の異なる運転領域ごとに制振制御の制御量である制振トルクを調節する手段を変えることで、言い換えれば、制振制御の制振トルクを調節するための動力源21の操作量の種類を変えることで、制振制御の態様を変えるようにしてもよい。すなわち、協調制御部5は、動力源21の運転領域のうち相互に異なる運転領域では、制振制御の態様をそれぞれの運転領域に対応した態様に変えるようにしてもよい。
【0145】
この場合、動力源21の異なる運転領域は、例えば、動力源21をなすエンジンが過給機とスロットル弁とを備える場合、過給調節運転領域とスロットル調節運転領域とを含んでもよい。過給調節運転領域は、動力源21をなすエンジンの吸気通路に設けられた過給機により吸気通路の過給圧を調節することで制振制御の制御量である制振トルクを調節する運転領域である。スロットル調節運転領域は、動力源21をなすエンジンの吸気通路に設けられたスロットル弁により吸気通路の開度を調節することで制振制御の制御量である制振トルクを調節する運転領域である。
【0146】
図10のフローチャートを参照して、本実施形態に係る車両制振制御装置1の協調制御の他の一例を説明する。なお、これらの制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
【0147】
車両制振制御装置1の協調制御部5は、種々のセンサの検出信号や制御信号、制振制御実行中フラグのON・OFFなどに基づいて制振制御が実行中であるか否かを判定する(S200)。協調制御部5は、制振制御が実行中でないと判定した場合(S200:No)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0148】
協調制御部5は、制振制御が実行中であると判定した場合(S200:Yes)、例えば、動力源21の現在の運転点が第1領域である過給調節運転領域内にあるか否かを判定する(S202)。協調制御部5は、例えば、動力源21の現在の運転点が過給圧でないと制振制御の制御量である制振トルクを調節することができない運転領域であるか否か判定することで、動力源21の現在の運転点が第1領域である過給調節運転領域内にあるか否かを判定することができる。
【0149】
ここで、過給圧でないと制振制御の制御量である制振トルクを調節することができない運転領域は、例えば、スロットル弁の開度が全開(WOT:Wide Open Throttle)である運転状態である。つまり、第1領域である過給調節運転領域と第2領域であるスロットル調節運転領域とは、スロットル弁のスロットル開度に応じて境界が定められる運転領域であり、ここでは、第1領域の過給調節運転領域は、スロットル弁の開度が全開(WOT)近傍である運転領域、第2領域のスロットル調節運転領域は、スロットル弁の開度が所定以下である運転領域である。
【0150】
車両制振制御装置1は、協調制御部5により動力源21の現在の運転点が第1領域の過給調節運転領域内にあると判定された場合(S202:Yes)、過給機により過給圧を調節することで制振トルクを調節する第1態様で制振制御を実行し(S204)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。つまり、車両制振制御装置1は、動力源21の現在の運転点が第1領域の過給調節運転領域内にあり、制振制御を第1態様で実行する場合、制振トルクを調節するための動力源21の操作量として過給圧を用い、制御指令決定部3cから動力源21への制御指令にこの過給圧を調節するための操作量を含めるようにする。
【0151】
なお、過給機による過給圧は、例えば、過給機のタービンに設けられたノズルベーンの開度を制御しタービンに導入される排気ガスの流速を調節したり、タービンをバイパスするバイパス管(ウエストゲート)に設けられたウエストゲート弁の開度を調節したり、いわゆるモータアシスト付の過給機である場合にはこのモータの駆動を調節したりすることで調節することができる。
【0152】
車両制振制御装置1は、協調制御部5により動力源21の現在の運転点が第1領域の過給調節運転領域内にないと判定された場合(S202:No)、すなわち、動力源21の現在の運転点が第2領域のスロットル調節運転領域内にある場合、スロットル弁によりスロットル開度を調節することで制振トルクを調節する第2態様で制振制御を実行し(S206)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。つまり、車両制振制御装置1は、動力源21の現在の運転点が第2領域のスロットル調節運転領域にあり、制振制御を第2態様で実行する場合、制振トルクを調節するための動力源21の操作量としてスロットル開度を用い、制御指令決定部3cから動力源21への制御指令にこのスロットル開度を調節するための操作量を含めるようにする。
【0153】
したがって、車両制振制御装置1は、動力源21の異なる運転領域ごとに制振制御の制御量である制振トルクを調節する手段を変え制振制御の態様を変えることで、制振制御と動力源21の過給制御との協調を図ることができ、適正に制振制御を実行することができる。
【0154】
なお、第1領域である過給調節運転領域と第2領域であるスロットル調節運転領域とは、いわゆるターボラグに応じて境界が定められる運転領域であってもよい。上記のようなターボ過給機付きエンジンにあっては、スロットル弁を開いてから機関回転速度が加速するまでの応答に時間的な遅れ、いわゆるターボラグが生じることが知られている。このため、第1領域である過給調節運転領域と第2領域であるスロットル調節運転領域とをこのターボラグの度合いに応じて境界を定め、ターボラグの度合いに応じて定められた第1領域である過給調節運転領域と第2領域であるスロットル調節運転領域とに基づいて、制振制御の第1態様と第2態様とを使い分けるようにしてもよい。また、場合によっては、制振制御の第1態様又は第2態様のいずれか一方は、制振制御の制御量である制振トルクを0にする態様、すなわち制振制御を禁止する態様としてもよい。
【0155】
また、動力源21の異なる運転領域ごとに制振制御の制御量である制振トルクを調節する手段を変えることで制振制御の態様を変える場合であって、動力源21をなすエンジンがいわゆる吸気弁可変リフト機構とスロットル弁とを備える場合、動力源21の異なる運転領域は、例えば、リフト調節運転領域とスロットル調節運転領域とを含んでもよい。そして、協調制御部5は、例えば、第1領域であるリフト調節運転領域と第2領域であるスロットル調節運転領域とに基づいて制振制御の第1態様と第2態様とを使い分けるようにしてもよい。ここで、吸気弁可変リフト機構は、エンジンの吸気通路に設けられた吸気弁のリフト量を可変とし、吸気弁のリフト量を連続的に変化させて吸入空気量を調節するものである。
【0156】
リフト調節運転領域は、動力源21をなすエンジンの吸気弁可変リフト機構により吸気通路に設けられた吸気弁のリフト量を調節することで制振制御の制御量である制振トルクを調節する運転領域である。スロットル調節運転領域は、動力源21をなすエンジンの吸気通路に設けられたスロットル弁により吸気通路の開度を調節することで制振制御の制御量である制振トルクを調節する運転領域である。
【0157】
第1領域であるリフト調節運転領域と第2領域であるスロットル調節運転領域とは、例えば、動力源21のエンジンの温度(冷却水温や制御油温)などに応じて境界が定められる運転領域である。ここでは、第1領域のリフト調節運転領域は、エンジンの温度が比較的に高く吸気弁可変リフト機構の制御油の粘度が比較的に低く、吸気弁のリフト量の制御精度を十分に確保できる運転領域である。一方、第2領域のスロットル調節運転領域は、エンジンの温度が比較的に低く吸気弁可変リフト機構の制御油の粘度が比較的に高く、吸気弁のリフト量の制御精度を十分に確保できず、例えば、エンジンの各気筒間での吸気弁のリフト量の制御誤差が大きくなる傾向にある運転領域である。
【0158】
車両制振制御装置1は、協調制御部5により動力源21の現在の運転点が第1領域のリフト調節運転領域内にあると判定された場合、吸気弁可変リフト機構により吸気弁のリフト量を調節することで制振トルクを調節する第1態様で制振制御を実行する。つまり、車両制振制御装置1は、動力源21の現在の運転点が第1領域のリフト調節運転領域内にあり、制振制御を第1態様で実行する場合、制振トルクを調節するための動力源21の操作量として吸気弁のリフト量を用い、制御指令決定部3cから動力源21への制御指令にこの吸気弁のリフト量を調節するための操作量を含めるようにする。
【0159】
一方、車両制振制御装置1は、協調制御部5により動力源21の現在の運転点が第2領域のスロットル調節運転領域内にある場合、スロットル弁によりスロットル開度を調節することで制振トルクを調節する第2態様で制振制御を実行する。つまり、車両制振制御装置1は、動力源21の現在の運転点が第2領域のスロットル調節運転領域にあり、制振制御を第2態様で実行する場合、制振トルクを調節するための動力源21の操作量としてスロットル開度を用い、制御指令決定部3cから動力源21への制御指令にこのスロットル開度を調節するための操作量を含めるようにする。
【0160】
したがって、車両制振制御装置1は、動力源21の異なる運転領域ごとに制振制御の制御量である制振トルクを調節する手段を変え制振制御の態様を変えることで、制振制御と動力源21の吸気弁可変リフト制御との協調を図ることができ、適正に制振制御を実行することができる。
【0161】
なお、本実施形態に係る車両制振制御装置1は、図11に示すように、ハイブリッド形式の駆動装置20Aを搭載したハイブリッド車両10Aに適用してもよい。ハイブリッド車両10Aが備える駆動装置20Aは、動力源21Aとして少なくともエンジンと電動機とを含むものである。
【0162】
ハイブリッド車両10Aは、エンジン210と、このエンジン210から出力されたエンジントルクを分割する動力分割機構220と、この動力分割機構220により分割されたエンジントルクの一部によって主に発電機として作動する第1モータ/ジェネレータ231と、この第1モータ/ジェネレータ231で発電された電力及び/又はバッテリ241の電力を用いて主に電動機として作動する第2モータ/ジェネレータ232と、動力源21Aの出力トルクを駆動輪である車輪30RL、30RR(駆動軸Ds,Ds)に伝える動力伝達機構250とを備えている。
【0163】
さらに、このハイブリッド車両10Aには、車両制振制御装置1が組み込まれたECU50が設けられている。ECU50には、例えば、車両全体の動作を制御する電子制御装置、エンジン210の動作を制御する電子制御装置、第1モータ/ジェネレータ231や第2モータ/ジェネレータ232の動作を制御する電子制御装置などが含まれている。
【0164】
エンジン210は、動力源21Aであり、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなどのエンジンであり、燃焼室内で燃料を燃焼させることによってピストンを往復運動させ、これにより出力軸(クランクシャフト)211に機械的な動力(エンジントルク)を発生させる。
【0165】
第1及び第2のモータ/ジェネレータ231、232は、動力源21Aであり、それぞれに電動機又は発電機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されたものであって、インバータ242を介してバッテリ241と電力のやりとりを行う。そのインバータ242は、車両制振制御装置1が組み込まれたECU50によって制御される。
【0166】
動力分割機構220は、外歯歯車のサンギヤと、このサンギヤと同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤと、サンギヤに噛合すると共にリングギヤに噛合する複数のピニオンギヤと、これら各ピニオンギヤを自転、且つ、公転自在に保持するプラネタリキャリアとを有し、そのサンギヤとリングギヤとプラネタリキャリアとが回転要素になって差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。そのサンギヤには、第1モータ/ジェネレータ231の回転軸231aが連結されている。リングギヤには、減速機や差動装置等からなる動力伝達機構250の減速ギヤがリングギヤ軸を介して連結されている。その動力伝達機構250において、減速ギヤには第2モータ/ジェネレータ232の回転軸232aが連結され、差動装置には車輪30RL、30RRの駆動軸Ds,Dsが連結されている。また、プラネタリキャリアには、エンジン210の出力軸211が連結されている。
【0167】
この動力分割機構220において、エンジントルクは、ピニオンギヤを介してサンギヤ及びリングギヤに分配して伝達される。サンギヤにはエンジントルクの一部が伝達され、リングギヤには残りのエンジントルクが伝達される。そのサンギヤを経た一部のエンジントルクは、第1モータ/ジェネレータ231を発電機として作動させる。その際に第1モータ/ジェネレータ231が作り出した電力は、インバータ242に送られて、バッテリ241に充電又は第2モータ/ジェネレータ232に供給される。一方、リングギヤを経た残りのエンジントルクは、動力伝達機構250を介して駆動軸Ds,Dsを直接駆動する。また、この動力分割機構220は、第1モータ/ジェネレータ231のモータジェネレータトルクを調整することによって、エンジントルクの大きさを制御することもできる。
【0168】
そして、動力源21Aの異なる運転領域ごとに制振制御の制御量である制振トルクを調節する手段を変えることで制振制御の態様を変える場合であって、動力源21Aがエンジン210と第2モータ/ジェネレータ232とを含む場合、動力源21Aの異なる運転領域は、例えば、エンジン調節運転領域と電動機調節運転領域とを含んでもよい。そして、協調制御部5は、例えば、第1領域であるエンジン調節運転領域と第2領域である電動機調節運転領域とに基づいて制振制御の第1態様と第2態様とを使い分けるようにしてもよい。
【0169】
エンジン調節運転領域は、動力源21Aをなすエンジン210の出力を調節することで制振制御の制御量である制振トルクを調節する運転領域である。電動機調節運転領域は、動力源21Aをなす第2モータ/ジェネレータ232の出力を調節することで制振制御の制御量である制振トルクを調節する運転領域である。
【0170】
第1領域であるエンジン調節運転領域と第2領域である電動機調節運転領域とは、例えば、バッテリ241の充電量、言い換えれば電池残量(残存容量)などの情報を含む蓄電状態(SOC:State of Charge)や動力源21Aのエンジン210の温度(冷却水温や制御油温)などに応じて境界が定められる運転領域である。ここでは、第1領域のエンジン調節運転領域は、例えば、電池残量が比較的に低く第2モータ/ジェネレータ232からの出力を十分に確保しにくいような運転領域である。一方、第2領域の電動機調節運転領域は、例えば、エンジン210の温度が比較的に低いエンジン210の冷間時でありエンジン210の出力制御の精度を十分に確保しにくいような運転領域である。
【0171】
車両制振制御装置1は、協調制御部5により動力源21Aの現在の運転点がエンジン調節運転領域内にあると判定された場合、エンジン210の出力を調節することで制振トルクを調節する第1態様で制振制御を実行する。つまり、車両制振制御装置1は、動力源21Aの現在の運転点が第1領域のエンジン調節運転領域内にあり、制振制御を第1態様で実行する場合、制振トルクを調節するための動力源21Aの操作量としてエンジン210の出力を調節する操作量、すなわち、エンジン210がガソリンエンジンであればスロットル開度や点火時期、エンジン210がディーゼルエンジンであれば燃料噴射量を用い、制御指令決定部3cから動力源21Aのエンジン210への制御指令にこのエンジン210の出力を調節する操作量を含めるようにする。
【0172】
一方、車両制振制御装置1は、協調制御部5により動力源21Aの現在の運転点が第2領域の電動機調節運転領域内にある場合、第2モータ/ジェネレータ232の出力を調節することで制振トルクを調節する第2態様で制振制御を実行する。つまり、車両制振制御装置1は、動力源21Aの現在の運転点が第2領域の電動機調節運転領域にあり、制振制御を第2態様で実行する場合、制振トルクを調節するための動力源21Aの操作量として第2モータ/ジェネレータ232の出力を調節する操作量、すなわち、供給電流量などを用い、制御指令決定部3cから動力源21Aの第2モータ/ジェネレータ232への制御指令にこの第2モータ/ジェネレータ232の出力を調節する操作量を含めるようにする。
【0173】
したがって、車両制振制御装置1は、動力源21Aの異なる運転領域ごとに制振制御の制御量である制振トルクを調節する手段を変え制振制御の態様を変えることで、制振制御と動力源21Aの通常の出力制御との協調を図ることができ、適正に制振制御を実行することができる。なお、第1領域であるエンジン調節運転領域と第2領域である電動機調節運転領域とは、例えば、車速などに応じて境界が定められてもよい。
【0174】
なお、この車両制振制御装置1は、動力源21、21Aの異なる運転領域ごとに制振制御の制御量である制振トルクを調節する手段を変えることで制振制御の態様を変える場合であって動力源21、21Aの異なる運転領域が3つ以上の異なる運転領域を含んでいてもよく、この場合、それぞれの運転領域ごとに制振制御の制御量である制振トルクを調節する手段を変えることで制振制御の態様を変えるようにしてもよい。この場合であっても、車両制振制御装置1は、制振制御と動力源21、21Aに関する他の制御との協調を図り、動力源21、21Aの状態に応じて適正に制振制御を実行することができる。また、車両制振制御装置1は、動力源21、21Aが異なる運転領域の境界の近傍で運転される場合に、制振制御を実行しない場合の一方の運転領域で動力源21、21Aが運転されるように制振制御の態様を変える制御と、動力源21、21Aの異なる運転領域ごとに制振制御の制御量を調節する手段を変えることで制振制御の態様を変える制御とを適宜組み合わせてもよい。
【0175】
以上で説明した本発明の実施形態に係る車両制振制御装置1によれば、車両10、10Aに搭載された動力源21、21Aを制御し車両10、10Aのバネ上振動を抑制する制振制御を実行する車両制振制御装置1において、動力源21、21Aの運転領域に応じて制振制御の態様を変える。したがって、車両制振制御装置1は、動力源21、21Aの運転領域に応じて制振制御の態様を変えることで、例えば、制振制御と動力源21、21Aに関する他の制御との協調を図ることができ、適正に制振制御を実行することができる。
【0176】
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る車両制振制御装置1によれば、動力源21、21Aがこの動力源21、21Aの異なる運転領域の境界の近傍で運転される場合に、制振制御を実行しない場合の一方の運転領域で動力源21、21Aが運転されるように制振制御の態様を変えるように構成してもよい。この場合、車両制振制御装置1は、動力源21、21Aが異なる運転領域の境界の近傍で運転される場合に制振制御を実行しない場合の一方の運転領域で動力源21、21Aが運転されるように制振制御の態様を変えることで、例えば、制振制御と動力源21、21Aに関する他の制御との協調を図ることができ、適正に制振制御を実行することができる。
【0177】
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る車両制振制御装置1によれば、動力源21、21Aの運転領域は、少なくとも制振制御の制御量を調節するための動力源21、21Aの操作量に応じて定まり、動力源21、21Aがこの動力源21、21Aの異なる運転領域の境界の近傍で運転される場合に制振制御の制御量を調節するための動力源21、21Aの操作量を制限することで制振制御の態様を変えるように構成してもよい。この場合、車両制振制御装置1は、動力源21、21Aが異なる運転領域の境界の近傍で運転される場合に制振制御の制御量を調節するための動力源21、21Aの操作量を制限して制振制御の態様を変えることで、例えば、制振制御と動力源21、21Aに関する他の制御との協調を図ることができ、適正に制振制御を実行することができる。
【0178】
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る車両制振制御装置1によれば、動力源21、21Aの異なる運転領域ごとに制振制御の制御量を調節する手段を変えることで制振制御の態様を変えるように構成してもよい。この場合、車両制振制御装置1は、動力源21、21Aの異なる運転領域ごとに制振制御の制御量である制振トルクを調節する手段を変え制振制御の態様を変えることで、例えば、制振制御と動力源21、21Aに関する他の制御との協調を図ることができ、適正に制振制御を実行することができる。
【0179】
なお、上述した本発明の実施形態に係る車両制振制御装置は、上述した実施形態に限定されず、請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
【0180】
以上の説明では、車両制振制御装置は、運動モデルとしてバネ上又はバネ上・バネ下運動モデルを仮定し最適レギュレータの理論を利用してバネ上制振制御を行うものとして説明したが、これに限らず、上記で説明したもの以外の運動モデルを採用したものあるいは最適レギュレータ以外の制御手法により制振を行うものであってもよい。
【0181】
また、上記実施形態では、運転者の駆動要求に基づいて、動力源21、21Aの動力制御を行う場合について説明したが本発明はこれに限定されるものではない。例えば、車両10は、自動走行制御装置を備え、自動走行制御において動力源21、21Aの制御を行う場合に算出される自動走行要求トルクに基づいて動力制御を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0182】
以上のように、本発明に係る車両制振制御装置は、適正に制振制御を実行することができるものであり、車両に搭載された動力源を制御し車両のバネ上振動を抑制する種々の車両制振制御装置に用いて好適である。
【符号の説明】
【0183】
1 車両制振制御装置
2 制動制御装置
3 駆動制御部
4 車両制振制御部
5 協調制御部
10、10A 車両
20、20A 駆動装置
21、21A 動力源
30FL、30FR、30RL、30RR 車輪
50 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された動力源を制御し前記車両のバネ上振動を抑制する制振制御を実行する車両制振制御装置において、
前記動力源の運転領域に応じて前記制振制御の態様を変えることを特徴とする、
車両制振制御装置。
【請求項2】
前記動力源が当該動力源の異なる運転領域の境界の近傍で運転される場合に、前記制振制御を実行しない場合の一方の前記運転領域で前記動力源が運転されるように前記制振制御の態様を変える、
請求項1に記載の車両制振制御装置。
【請求項3】
前記動力源の運転領域は、少なくとも前記制振制御の制御量を調節するための前記動力源の操作量に応じて定まり、前記動力源が当該動力源の異なる運転領域の境界の近傍で運転される場合に前記操作量を制限することで前記制振制御の態様を変える、
請求項1又は請求項2に記載の車両制振制御装置。
【請求項4】
前記動力源は、少なくともエンジンを含み、
前記動力源の異なる運転領域は、前記動力源の燃焼室で燃焼可能な空気と燃料との混合気の空燃比が異なる運転領域である、
請求項2又は請求項3に記載の車両制振制御装置。
【請求項5】
前記動力源の異なる運転領域は、前記空燃比が理論空燃比である理論空燃比運転領域と、前記空燃比が前記理論空燃比より燃料の割合が少ないリーン空燃比であるリーン空燃比運転領域とである、
請求項4に記載の車両制振制御装置。
【請求項6】
前記動力源の異なる運転領域は、前記空燃比が理論空燃比である理論空燃比運転領域と、前記空燃比が前記理論空燃比より燃料の割合が多いリッチ空燃比であるリッチ空燃比運転領域とである、
請求項4に記載の車両制振制御装置。
【請求項7】
前記動力源は、少なくともエンジンを含み、
前記動力源の異なる運転領域は、前記動力源の複数の気筒のうちの少なくとも1つの運転を休止する減筒運転領域と、前記動力源の複数の気筒の全てを稼動する全気筒運転領域とである、
請求項2乃至請求項6のいずれか1項に記載の車両制振制御装置。
【請求項8】
前記動力源は、少なくともエンジンを含み、
前記動力源の異なる運転領域は、前記動力源の吸気の状態が異なる領域である、
請求項2乃至請求項7のいずれか1項に記載の車両制振制御装置。
【請求項9】
前記動力源は、少なくともエンジンを含み、
前記動力源の異なる運転領域は、前記動力源の排気の状態が異なる領域である、
請求項2乃至請求項8のいずれか1項に記載の車両制振制御装置。
【請求項10】
前記動力源の異なる運転領域は、前記動力源のアクチュエータの作動状態が異なる領域である、
請求項2乃至請求項9のいずれか1項に記載の車両制振制御装置。
【請求項11】
前記動力源の異なる運転領域の組み合わせが複数ある場合、前記動力源が各組み合わせにおける前記異なる運転領域の境界の近傍で運転される場合に前記制振制御の態様を変える、
請求項2乃至請求項10のいずれか1項に記載の車両制振制御装置。
【請求項12】
前記動力源の異なる運転領域ごとに前記制振制御の制御量を調節する手段を変えることで前記制振制御の態様を変える、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の車両制振制御装置。
【請求項13】
前記動力源は、少なくともエンジンを含み、
前記動力源の異なる運転領域は、吸気通路に設けられた過給機により前記吸気通路の過給圧を調節することで前記制振制御の制御量を調節する過給調節運転領域と、前記吸気通路に設けられたスロットル弁により前記吸気通路の開度を調節することで前記制振制御の制御量を調節するスロットル調節運転領域とを含む、
請求項12に記載の車両制振制御装置。
【請求項14】
前記動力源は、少なくともエンジンを含み、
前記動力源の異なる運転領域は、吸気弁可変リフト機構により前記吸気通路に設けられた吸気弁のリフト量を調節することで前記制振制御の制御量を調節するリフト調節運転領域と、前記吸気通路に設けられたスロットル弁により前記吸気通路の開度を調節することで前記制振制御の制御量を調節するスロットル調節運転領域とを含む、
請求項12又は請求項13に記載の車両制振制御装置。
【請求項15】
前記動力源は、少なくともエンジンと電動機とを含み、
前記動力源の異なる運転領域は、前記エンジンの出力を調節することで前記制振制御の制御量を調節するエンジン調節運転領域と、前記電動機の出力を調節することで前記制振制御の制御量を調節する電動機調節運転領域とを含む、
請求項12乃至請求項14のいずれか1項に記載の車両制振制御装置。
【請求項16】
前記動力源の異なる運転領域が3以上の異なる運転領域を含む場合、それぞれの前記運転領域ごとに前記制振制御の制御量を調節する手段を変えることで前記制振制御の態様を変える、
請求項12乃至請求項15のいずれか1項に記載の車両制振制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−17303(P2011−17303A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163079(P2009−163079)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】