説明

車両搭載機器の固定構造

【課題】車両の衝突時においても、車両搭載機器の保護を図ることができる車両搭載機器の固定構造を提供する。
【解決手段】車両搭載機器の固定構造20は、載置テーブル25と、インバータ720と載置テーブル25との連結状態を解除可能にインバータ720と載置テーブル25とを連結固定可能なピン部材27a,27bと、エンジンマウントが占める第1領域と異なる第2領域に向けて延び、連結状態が解除されたインバータ720を前記第2領域に向けて案内可能な案内部材29とを備え、案内部材29は、インバータ720に形成された凸部720Bを受け入れ可能な溝部28aと、インバータ720に形成された溝部内に受け入れられる凸部との一方を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両搭載機器の固定構造に関し、特に衝突時における車両搭載機器の保護が図られた車両搭載機器の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から衝突時において、車室への影響等を考慮した車両搭載機器の固定構造が各種提案されている。たとえば、特開平6−270697号公報に記載された電気自動車の補機部品配置構造においては、エンジンルーム内に配置されたインバータ、補機バッテリ、エアコン用インバータ等の複数の補機部品同士をリンク機構を介して接続している。
【0003】
そして、フロントボディが圧縮変形した場合には、各補機部品は、リンクの作用によって、それぞれ、車両の前後方向軸線から外れる方向へ移動する。これにより、補機部品を介して、室内に伝達される衝撃荷重を低減することができる。
【0004】
また、特開2001−97052号公報に記載された車載用補機部品の取付構造においては、インバータを、その長手方向が車両の前後方向に対して傾斜した状態でサスタワーの直前に配置する。そして、エンジンルームが圧縮変形した際に、インバータがフロントサイドメンバに対して移動可能としている。
【0005】
これにより、外部から衝撃が加えられた際に、インバータがサスタワーによって支持されることになり、インバータを介してトーボードに衝撃が伝達されることが抑制されている。
【0006】
さらに、特開平10−16689号公報に記載された組電池の取付け構造においては、組電池の周囲をカプセルで取り囲んだ状態で収容容器に収容し、この収容ケースをスプリングを介して、車体のボディに固定している。これにより、衝突時において、組電池の崩壊を抑制している。
【特許文献1】特開平6−270697号公報
【特許文献2】特開2001−97052号公報
【特許文献3】特開平10−16689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特開平6−270697号公報に記載された電気自動車の補機部品配置構造においては、大きな衝撃力が加えられると、リンク機構は、破損することが考えられる。結果として、車両が衝突した際に、各補機機器同士が接触し、補機機器が破損する恐れがある。
【0008】
さらに、特開2001−97052号公報に記載された車載用補機部品の取付構造においては、インバータの移動可能な領域は小さく、衝突の程度によっては、インバータと他の搭載機器とで挟まれることで、インバータの保護を十分に図ることができないおそれがある。
【0009】
また、特開平10−16689号公報に記載された組電池の取付け構造においては、衝突した他の車両や、当該組電池の前方に位置する他の車両搭載機器が組電池にまで達し、組電池をさらに後方に向けて押圧した際に、組電池が損傷するおそれがある。
【0010】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、車両の衝突時においても、車両搭載機器の保護を図ることができる車両搭載機器の固定構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る車両搭載機器の固定構造は、車両本体に固定され、車両搭載機器が載置される載置台と、特定の一方向に向けて車両搭載機器が押圧されることで、車両搭載機器と載置台との連結状態を解除可能に車両搭載機器と載置台とを連結固定可能な固定機構とを備える。さらに、この車両搭載機器の固定機構は、車両搭載機器に対して一方向後方側に配置された後方部材が占める第1領域と異なる第2領域に向けて延び、連結状態が解除された車両搭載機器を第2領域に向けて案内可能な案内部材とを備える。そして、上記案内部材は、車両搭載機器に形成された凸部を受け入れ可能な溝部と、車両搭載機器に形成された溝部内に受け入れられる凸部との一方を含む。好ましくは、上記案内部材は載置台の上面上に設けられ、載置台より一方向後方側にまで延びる。好ましくは、上記一方向は、車両本体の前方側から後方側に向かう方向とされ、第2領域は、後方部材の上方に位置し、案内部材は、車両本体の前方側から後方側に向かうにつれて、後方部材の上方に向けて傾斜する。好ましくは、上記案内部材の剛性は、載置台の剛性よりも高い。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る車両搭載機器の固定構造によれば、車両の衝突時においても、車両搭載機器の保護を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態に係る車両搭載機器の固定構造20およびこの固定構造を備えた車両について説明する。
【0014】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係るハイブリッド車両の概略構成を示すブロック図である。この図1に示すように、ハイブリッド車両1は、エンジン100と、モータジェネレータ200と、動力分割機構300と、ディファレンシャル機構400と、ドライブシャフト500と、前輪である駆動輪600L,600Rと、PCU(Power Control Unit)700と、エアクリーナ800と、バッテリ1000と、A/C(air/conditioner)コンプレッサ1100とを備える。
【0016】
そして、エンジン100と、モータジェネレータ200と、動力分割機構300と、PCU700と、A/Cコンプレッサ1100とは、エンジンルーム2内に配設される。モータジェネレータ200とPCU700とは、ケーブル900Aにより接続される。PCU700とバッテリ1000とは、ケーブル900Bにより接続される。PCU700とA/Cコンプレッサ1100とは、ケーブル900Cにより接続される。また、エンジン100およびモータジェネレータ200からなる動力出力装置は、動力分割機構300を介してディファレンシャル機構400に連結されている。ディファレンシャル機構400は、ドライブシャフト500を介して駆動輪600L,600Rに連結されている。
【0017】
モータジェネレータ200は、3相交流同期電動発電機であって、PCU700から受ける交流電力によって駆動力を発生する。また、モータジェネレータ200は、ハイブリッド車両1の減速時等においては発電機としても使用され、その発電作用(回生発電)により交流電力を発電し、その発電した交流電力をPCU700へ出力する。
【0018】
PCU700は、バッテリ1000から受ける直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータ200を駆動制御する。また、PCU700は、モータジェネレータ200が発電した交流電圧を直流電圧に変換してバッテリ1000を充電する。
【0019】
動力分割機構300は、たとえばプラネタリギヤ(図示せず)を含んで構成される。
エンジン100および/またはモータジェネレータ200から出力された動力は、動力分割機構300からディファレンシャル機構400を介してドライブシャフト500に伝達される。ドライブシャフト500に伝達された駆動力は、駆動輪600L,600Rに回転力として伝達されて、車両を走行させる。このように、モータジェネレータ200は、電動機として作動する。
【0020】
一方、車両の減速時等においては、駆動輪600L,600Rあるいはエンジン100によってモータジェネレータ200が駆動される。このとき、モータジェネレータ200が発電機として作動する。モータジェネレータ200により発電された電力は、PCU700内のインバータを介してバッテリ1000に蓄えられる。
【0021】
図2は、PCU700の主要部の構成を示す回路図である。図2を参照して、PCU700は、コンバータ710と、インバータ720と、制御装置730と、コンデンサC1,C2と、電源ラインPL1〜PL3と、出力ライン740U,740V,740Wとを含む。コンバータ710は、バッテリ1000とインバータ720との間に接続され、インバータ720は、出力ライン740U,740V,740Wを介してモータジェネレータ200と接続される。
【0022】
コンバータ710に接続されるバッテリ1000は、たとえば、ニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池である。バッテリ1000は、発生した直流電圧をコンバータ710に供給し、また、コンバータ710から受ける直流電圧によって充電される。
【0023】
コンバータ710は、パワートランジスタQ1,Q2と、ダイオードD1,D2と、リアクトルLとからなる。パワートランジスタQ1,Q2は、電源ラインPL2,PL3間に直列に接続され、制御装置730からの制御信号をベースに受ける。ダイオードD1,D2は、それぞれパワートランジスタQ1,Q2のエミッタ側からコレクタ側へ電流を流すようにパワートランジスタQ1,Q2のコレクタ−エミッタ間にそれぞれ接続される。リアクトルLは、バッテリ1000の正極と接続される電源ラインPL1に一端が接続され、パワートランジスタQ1,Q2の接続点に他端が接続される。
【0024】
このコンバータ710は、リアクトルLを用いてバッテリ1000から受ける直流電圧を昇圧し、その昇圧した昇圧電圧を電源ラインPL2に供給する。また、コンバータ710は、インバータ720から受ける直流電圧を降圧してバッテリ1000を充電する。
【0025】
インバータ720は、U相アーム750U、V相アーム750VおよびW相アーム750Wからなる。各相アームは、電源ラインPL2,PL3間に並列に接続される。U相アーム750Uは、直列に接続されたパワートランジスタQ3,Q4を含み、V相アーム750Vは、直列に接続されたパワートランジスタQ5,Q6を含み、W相アーム750Wは、直列に接続されたパワートランジスタQ7,Q8を含む。ダイオードD3〜D8は、それぞれパワートランジスタQ3〜Q8のエミッタ側からコレクタ側へ電流を流すようにパワートランジスタQ3〜Q8のコレクタ−エミッタ間にそれぞれ接続される。そして、各相アームにおける各パワートランジスタの接続点は、出力ライン740U,740V,740Wを介してモータジェネレータ200の各相コイルの反中性点側にそれぞれ接続されている。
【0026】
このインバータ720は、制御装置730からの制御信号に基づいて、電源ラインPL2から受ける直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータ200へ出力する。また、インバータ720は、モータジェネレータ200によって発電された交流電圧を直流電圧に整流して電源ラインPL2に供給する。
【0027】
コンデンサC1は、電源ラインPL1,PL3間に接続され、電源ラインPL1の電圧レベルを平滑化する。また、コンデンサC2は、電源ラインPL2,PL3間に接続され、電源ラインPL2の電圧レベルを平滑化する。
【0028】
制御装置730は、モータトルク指令値、モータジェネレータ200の各相電流値、およびインバータ720の入力電圧に基づいてモータジェネレータ200の各相コイル電圧を演算し、その演算結果に基づいてパワートランジスタQ3〜Q8をオン/オフするPWM(Pulse Width Modulation)信号を生成してインバータ720へ出力する。
【0029】
また、制御装置730は、上述したモータトルク指令値およびモータ回転数に基づいてインバータ720の入力電圧を最適にするためのパワートランジスタQ1,Q2のデューティ比を演算し、その演算結果に基づいてパワートランジスタQ1,Q2をオン/オフするPWM信号を生成してコンバータ710へ出力する。
【0030】
さらに、制御装置730は、モータジェネレータ200によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ1000を充電するため、コンバータ710およびインバータ720におけるパワートランジスタQ1〜Q8のスイッチング動作を制御する。
【0031】
このPCU700においては、コンバータ710は、制御装置730からの制御信号に基づいて、バッテリ1000から受ける直流電圧を昇圧して電源ラインPL2に供給する。そして、インバータ720は、コンデンサC2によって平滑化された直流電圧を電源ラインPL2から受け、その受けた直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータ200へ出力する。
【0032】
また、インバータ720は、モータジェネレータ200の回生動作によって発電された交流電圧を直流電圧に変換して電源ラインPL2へ出力する。そして、コンバータ710は、コンデンサC2によって平滑化された直流電圧を電源ラインPL2から受け、その受けた直流電圧を降圧してバッテリ1000を充電する。
【0033】
ここで、インバータ720に供給される電圧は、600V程度となっており、衝突時においても、インバータを保護する必要がある。
【0034】
図3は、エンジンルーム2内におけるインバータ720、エンジン100、エンジンマウント150およびサスタワー160などの車両搭載機器の配置関係を示す模式図である。
【0035】
ハイブリッド車両1のボディは、たとえば、モノコックボディとされており、ボディは、ハイブリッド車両1の前後方向に延び、ハイブリッド車両1の幅方向に間隔を空けて配置されたサイドメンバ12と、このサイドメンバ12同士を接続するように、ハイブリッド車両1の幅方向に延びるクロスメンバとを備えている。
【0036】
そして、エンジンルーム2は、フロントボディ11によって規定されており、このフロントボディ11内にも、サイドメンバ12が延びている。
【0037】
インバータ720の後方には、エンジン100を支持するためのエンジンマウント150が位置している。このエンジンマウント150は、エンジン100の荷重およびエンジン100からの振動等に十分に堪えうる剛性を有しており、インバータ720の剛性よりも高くなっている。さらに、インバータ720の近傍に配置された車両搭載機器や搭載部材としては、エンジン100、サスタワー160等がある。
【0038】
そして、本実施の形態に係るインバータ720の固定構造20は、ハイブリッド車両1の衝突時に、インバータ720が、エンジン100、エンジンマウント150およびサスタワー160と衝突することを抑制する。
【0039】
図4は、インバータ720およびインバータ720の固定構造20を示す斜視図である。この図4に示すように、固定構造20は、サイドメンバ12に固定された載置テーブル25と、載置テーブル25の上面上に載置されたインバータ720の両側に配置された案内部材29と、インバータ720を案内部材19を介して載置テーブル25上に固定するピン部材(固定部材)27a,27bとを備えている。
【0040】
載置テーブル25は、サイドメンバ12上にボルト46,47によって固定されると共に、底面側から支持部材13によって水平面上に配置される平板部53と、この平板部53の上面上に形成され、ハイブリッド車両1の前方側から後方側に向けて上面が上方に向けて傾斜する傾斜部54とを備えている。
【0041】
そして、インバータ720は、この傾斜部54の上面上に配置されており、この傾斜部54の上面上に、案内部材29が配置されている。
【0042】
このため、案内部材29およびインバータ720も、傾斜部54の上面と同様に、ハイブリッド車両1の前方側から後方側に向けて上方に向けて傾斜している。
【0043】
ここで、エンジンマウント150は、インバータ720および載置テーブル25に対してハイブリッド車両1後方側に配置されており、案内部材29は、エンジンマウント150の上方に位置する領域に向けて延びている。
【0044】
インバータ720の底面のうち、側辺部には、外方に向けて突出すると共に、ハイブリッド車両1の前方側から後方側に向けて延びる凸部720Bが形成されている。より具体的には、インバータ720は、電子素子が実装された基板と、この基板等を収容する収容ケースとを備えており、凸部720Bは、収容ケースに形成されている。
【0045】
そして、案内部材29は、インバータ720の側方に位置する傾斜部54の上面に配置されており、案内部材29は、凸部720Bを受け入れ可能な溝部(凹部)28aを備えている。この溝部28aは、案内部材29のうち、ハイブリッド車両1の前方側端部から後方側端部にまで亘って延びている。このように、インバータ720に形成された凸部720Bと、案内部材29の溝部28aとが係合することで、インバータ720は、案内部材29によって案内される。
【0046】
なお、この実施の形態においては、インバータ720に凸部720Bを形成し、案内部材29に溝部28aを形成することで、案内部材29によって、インバータ720を案内可能としているが、これに限られない。
【0047】
たとえば、案内部材29に凸部を形成し、他方、インバータ720の収容ケースに、案内部材29に形成された凸部を受け入れ可能な溝部(凹部)を形成し、インバータ720を案内部材29によって特定の一方向に向けて案内可能としてもよい。
【0048】
さらに、本実施の形態においては、インバータ720に形成された凸部は、ハイブリッド車両1の前方側から後方側に向けて延在しているが、これに限られず、断続的に設けられてもよく、少なくとも一箇所に設けられておればよい。
【0049】
この案内部材29は、ハイブリッド車両1の前方側から後方側に向けてエンジンマウント150が位置する領域と異なる領域に向けて延びている。本実施の形態においては、案内部材29は、エンジンマウント150の上方に位置する領域に向けて延びている。
【0050】
特に、案内部材29は、傾斜部54の上面のうち、ハイブリッド車両1の後方側縁部よりもハイブリッド車両1の後方側に向けて突出している。このため、案内部材29は、インバータ720をより確実に、エンジンマウント150の上方に位置する領域に案内可能となっている。
【0051】
凸部720Bおよび案内部材29には、ピン部材(固定部材)27a,27bが挿入される穴部が形成されており、ピン部材27a,27bによってインバータ720が、案内部材29を介して、載置テーブル25の上面上に固定されている。
【0052】
このため、通常時においては、ピン部材27a,27bによって載置テーブル25上に固定されている。このピン部材27a,27bは、たとえば、案内部材29や載置テーブル25よりも剛性が小さく、インバータ720に所定以上の押圧力が加えられることで破断可能となっている。
【0053】
インバータ720を載置テーブル25上に固定可能な固定部材であれば、上記のようなピン部材27a,27bに限られず、ボルト、インバータ720と載置テーブル25とを挟持する挟持部材であってもよい。
【0054】
上記のようにインバータ720を固定した状態で他の車両等と衝突した際におけるインバータ720の振る舞いについて説明する。
【0055】
図5は、ハイブリッド車両1が他の車両等と衝突したときのインバータ720の動きを示す側面図である。この図5において、フロントボディ11が変形し、エンジンルーム2が圧縮された際に、インバータ720は、当該他の車両またはインバータ720よりも前方側に設けられた他の車両搭載機器によって車両後方側に向けて押圧される。
【0056】
このようにインバータ720がハイブリッド車両1の後方側に向けて押圧されることで、ピン部材27a,27bが破断して、インバータ720と載置テーブル25の連結固定状態が解除される。
【0057】
これにより、インバータ720は、案内部材29に沿って変位可能とされる。ここで、案内部材29は、ハイブリッド車両1後方側に向かうにつれた上方に向けて傾斜しており、インバータ720が他の車両や他の車両搭載機器によって押圧されることで、インバータ720は、エンジンマウント150の上方に向けて案内される。
【0058】
ここで、案内部材29は、インバータ720の両側に配置されているため、インバータ720が案内部材29に沿って案内される際に、位置ずれすることが抑制されており、確実にエンジンマウント150の上方に位置する領域に案内される。なお、本実施の形態においては、上記のように2つの案内部材29を配置することで、インバータ720の位置ずれを抑制しているが、これに限られない。たとえば、案内部材29は、溝部28aを規定する底壁部と、この底壁部の側部に連設され上方に向けて立ち上がる側壁部と、この側壁部の上端部に連設された上壁部とを備え、上壁部または底壁部の少なくとも一方に形成され、凸部720Bに形成された溝部と係合可能な突起部を有し、インバータ720が位置ずれすることを、この突起部および溝部とで抑制するようにしてもよい。
【0059】
エンジンマウント150と、エンジンルーム2を覆うフード(図示せず)との間には、インバータ720が通過することができる程度の空間が規定されている。このため、案内部材29によってエンジンマウント150の上方に位置する領域に案内されたインバータ720は、フードおよびエンジンマウント150のいずれとも接触することが抑制され、エンジンマウント150に対してハイブリッド車両1の後方側にまで達することができる。
【0060】
このようにインバータ720が案内部材29によって案内されることで、上述のようにエンジンマウント150との接触を抑制することができるのみならず、エンジン100等の他の車両搭載機器との接触を抑制することができる。
【0061】
これにより、ハイブリッド車両1と他の車両等との衝突時において、インバータ720が他の車両搭載機器等と衝突することを抑制することができ、インバータ720が損傷することを抑制することができる。
【0062】
なお、本実施の形態においては、インバータ720の固定構造20について説明したがこれに限られず、たとえば、コンバータ、リアクトル、モータジェネレータ等の電気機器や他の車両搭載機器についても適用することができる。
【0063】
さらに、本実施の形態においては、案内部材29は、インバータ720をエンジンマウント150の上方に位置する領域に案内しているが、これに限られない。すなわち、インバータ720よりもハイブリッド車両1後方側に位置する車両搭載機器や搭載部材が占める領域から離れた領域に向けて案内可能であればよい。
【0064】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。さらに、上記数値などは、例示であり、上記数値および範囲にかぎられない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、車両搭載機器の固定構造に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態に係るハイブリッド車両の概略構成を示すブロック図である。
【図2】PCUの主要部の構成を示す回路図である。
【図3】エンジンルーム内におけるインバータ、エンジン、サスタワーなどの車両搭載機器の配置関係を示す模式図である。
【図4】インバータおよびインバータの固定構造を示す斜視図である。
【図5】ハイブリッド車両が他の車両等と衝突したときのインバータの動きを示す側面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 ハイブリッド車両、2 エンジンルーム、11 フロントボディ、12 サイドメンバ、13 支持部材、20 固定構造、25 載置テーブル、27a,27b ピン部材、28a 溝部(凹部)、29 案内部材、46,47 ボルト、100 エンジン、150 エンジンマウント、160 サスタワー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体に固定され、車両搭載機器が載置される載置台と、
特定の一方向に向けて前記車両搭載機器が押圧されることで、前記車両搭載機器と前記載置台との連結状態を解除可能に前記車両搭載機器と前記載置台とを連結固定可能な固定機構と、
前記車両搭載機器に対して前記一方向後方側に配置された後方部材が占める第1領域と異なる第2領域に向けて延び、連結状態が解除された前記車両搭載機器を前記第2領域に向けて案内可能な案内部材とを備え、
前記案内部材は、前記車両搭載機器に形成された凸部を受け入れ可能な溝部と、前記車両搭載機器に形成された溝部内に受け入れられる凸部との一方を含む、車両搭載機器の固定構造。
【請求項2】
前記案内部材は前記載置台の上面上に設けられ、前記載置台より前記一方向後方側にまで延びる、請求項1に記載の車両搭載機器の固定構造。
【請求項3】
前記一方向は、前記車両本体の前方側から後方側に向かう方向とされ、
前記第2領域は、前記後方部材の上方に位置し、
前記案内部材は、前記車両本体の前方側から後方側に向かうにつれて、前記後方部材の上方に向けて傾斜する、請求項1または請求項2に記載の車両搭載機器の固定構造。
【請求項4】
前記案内部材の剛性は、前記載置台の剛性よりも高い、請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両搭載機器の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−29275(P2009−29275A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195710(P2007−195710)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】