車両横転防止制御装置および車両横転防止制御方法
【課題】 横転判断精度を高めることができる車両横転防止制御装置および車両横転防止制御方法を提供する。
【解決手段】 車両挙動を制御するために作動するブレーキ装置と、ドライバの操舵に基づいて車両に対し所定のロールが発生することを予測すると共に、ドライバによる操舵の切戻しを検出する操舵入力判断部23と、操舵の切戻しが検出されたときに横転判断を行うARP制御介入判断部29と、操舵入力判断部23により所定のロールが発生すると予測され、かつ、ARP制御介入判断部29により横転判断された場合、アクチュエータであるブレーキ装置を制御し横転防止制御を行うARP制御部22と、を備えた。
【解決手段】 車両挙動を制御するために作動するブレーキ装置と、ドライバの操舵に基づいて車両に対し所定のロールが発生することを予測すると共に、ドライバによる操舵の切戻しを検出する操舵入力判断部23と、操舵の切戻しが検出されたときに横転判断を行うARP制御介入判断部29と、操舵入力判断部23により所定のロールが発生すると予測され、かつ、ARP制御介入判断部29により横転判断された場合、アクチュエータであるブレーキ装置を制御し横転防止制御を行うARP制御部22と、を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両横転防止制御装置および車両横転防止制御方法の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、操舵角と切増し方向の操舵角速度から車両の横転を判断し、旋回外輪に制動力を付与する車両横転防止制御装置がある。この技術に関係する一例が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−28918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来装置において、横転判断精度をさらに高めて欲しいとのニーズがある。
本発明の目的は、横転判断精度を高めることができる車両横転防止制御装置および車両横転防止制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、ドライバによる操舵の切増し時の操舵角速度に基づいて大きなロールの発生を予測する横転予測を実行し、横転予想成立後、操舵の切戻しが検出されたときに横転防止制御を実行する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、横転判断精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1の車両横転防止制御装置を適用した車両の構成図である。
【図2】実施例1のコントロールユニット10の横転防止制御に係る制御ブロック図である。
【図3】実施例1のARP制御判断の流れを示すフローチャートである。
【図4】操舵入力判断フラグのセット/リセット処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】横転が予測される操舵入力時の舵角信号を示すタイムチャートである。
【図6】ステップS103の舵角信号生成処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】横転が予測される操舵入力時(右転舵→左転舵→直進状態)の操舵入力判別用舵角速度信号を示すタイムチャートである。
【図8】横転が予測される操舵入力時(左転舵→右転舵→直進状態)の操舵入力判別用舵角速度信号を示すタイムチャートである。
【図9】ステップS104の操舵入力判断予備カウンタ1の算出処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】操舵入力時の操舵状態変数と操舵入力判断予備カウンタ1の変化を示すタイムチャートである。
【図11】ステップS105の操舵入力判断予備カウンタ2の算出処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】横転が予測される操舵入力時の操舵状態変数と操舵入力判断予備カウンタ2の変化を示すタイムチャートである。
【図13】ステップS106の操舵入力判断フラグセット処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】横転が予測される操舵入力時の操舵状態変数と操舵入力判断予備カウンタ3の変化を示すタイムチャートである。
【図15】ステップS107の操舵入力判断フラグリセット処理の流れを示すフローチャートである。
【図16】横転が予測される操舵入力後に車両が直進状態となった場合の操舵状態変数と操舵入力判断フラグリセットカウンタの変化を示すタイムチャートである。
【図17】横転が予測される操舵入力後に車両挙動安定状態となった場合の操舵状態変数と操舵入力判断フラグリセットカウンタの変化を示すタイムチャートである。
【図18】実施例1のARP制御実行判断の流れを示すフローチャートである。
【図19】ARP挙動不安定判断処理の流れを示すフローチャートである。
【図20】横転が予測される操舵入力時のARPカウンタの変化を示すタイムチャートである。
【図21】目標横加速度算出処理の流れを示すフローチャートである。
【図22】実施例1の目標ヨーレイト信号の生成方法および目標ヨーレイト信号とヨーレイト信号との差分最大値の算出方法を示すタイムチャートである。
【図23】実施例1の目標横加速度ゲインテーブルである。
【図24】実施例1の目標横加速度生値の算出方法を示すタイムチャートである。
【図25】目標減速度算出処理の流れを示すフローチャートである。
【図26】ARP制御の作動状態を示すタイムチャートである。
【図27】ARP制御中の目標車速と目標減速度の変化を示すタイムチャートである。
【図28】ARP制御介入判断処理の流れを示すフローチャートである。
【図29】ARP制御中のARP目標液圧(値)とARP制御信号の変化を示すタイムチャートである。
【図30】実施例1の横転防止制御作用を示すタイムチャートである。
【図31】実施例1の横転防止制御作用を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の車両横転防止制御装置および車両横転防止制御方法を実現するための形態を、図面に基づく実施例により説明する。
なお、以下に説明する実施例は多くのニーズに適用できるように検討されており、横転判断精度を高めることは検討されたニーズの1つである。以下の実施例では、不要な横転防止制御の介入を抑制できるとのニーズにも適用している。また、車両挙動を早期に安定化できるとのニーズにも適用している。
【実施例1】
【0009】
図1は、実施例1の車両横転防止制御装置を適用した車両の構成図である。
油圧コントロールユニット1は、各車輪2FL,2FR,2RL,2RRに設けられた各車輪速センサ3FL,3FR,3RL,3RRからの車輪速信号およびブレーキペダル4に設けられたブレーキペダルストロークセンサ5からのストローク信号に基づいて、各車輪2FL,2FR,2RL,2RRに設けられたディスクブレーキ6FL,6FR,6RL,6RRのホイルシリンダ圧を調整する。油圧コントロールユニット1としては、例えば、従来のアンチロックブレーキシステムの油圧コントロールユニットを適用できる。
この油圧コントロールユニット1は、後述する横転防止制御であるActive Rollover Prevention(ARP)制御時、コントロールユニット10からの指令に応じて、左右前輪2FL,2FRのホイルシリンダ圧を増圧する。油圧コントロールユニット1とディスクブレーキ6FL,6FR,6RL,6RRとにより、車両の各輪に制動力を与えるブレーキ装置が構成される。ブレーキ装置は、車両挙動を制御するために作動するアクチュエータである。
【0010】
電動パワーステアリングモータ7は、舵取り機構8のラック軸9にドライバの操舵力を補助する操舵アシスト力を出力する。電動パワーステアリングモータ7は、コントロールユニット10により制御される。コントロールユニット10は、通常制御時、コラムシャフト11に設けられた操舵トルクセンサ13からの操舵トルク信号と、油圧コントロールユニット1により算出された車速(車体速)とに基づいて、電動パワーステアリングモータ7を駆動する。
この電動パワーステアリングモータ7は、後述する初期ステアリング横転防止制御時、コントロールユニット10からの指令に応じて、切増し時の操舵アシスト力を通常制御時の操舵アシスト力よりも小さくする。ハンドル12と、コラムシャフト11と、舵取り機構8と、電動パワーステアリングモータ7とにより、操舵アシスト力を調整できるアシスト力可変型操舵装置が構成される。
【0011】
減衰力可変型制御サスペンション14FL,14FR,14RL,14RRは、車輪2FL,2FR,2RL,2RRを車体に懸架し、サスペンションの減衰力を調整する。減衰力可変型制御サスペンション14FL,14FR,14RL,14RRは、コントロールユニット10により制御される。コントロールユニット10は、通常制御時、ヨーレイトセンサ(ヨーレイト検出部)15からヨーレイト信号、加速度センサ(横加速度検出部)16からの前後加速度,横加速度信号等に基づいて、減衰力可変型制御サスペンション14FL,14FR,14RL,14RRを駆動する。この減衰力可変型制御サスペンション14FL,14FR,14RL,14RRは、後述する初期サスペンション横転防止制御時、コントロールユニット10からの指令に応じて、旋回外輪側のサスペンションの圧側減衰力を通常制御時よりも高減衰力に変更する。
【0012】
コントロールユニット10は、各センサ信号および油圧コントロールユニット1により算出された車速等に基づいて、車両が障害物回避等の急な操舵を行った際、横加速度の増加を抑制することでロールオーバが発生するのを防止する横転防止制御を実行する。また、コントロールユニット10は、横転防止制御よりも先に、車体のロール量を抑制する初期サスペンション横転防止制御と、ハンドル12の切増し量を抑制する初期ステアリング横転防止制御とを実行する。
また、コントロールユニット10は、上記横転防止制御とは独立して、車両のオーバーステア傾向またはアンダーステア傾向を抑制するVDC(Vehicle Dynamics Control)制御を実行する。このVDC制御では、操舵角センサ17およびブレーキペダルストロークセンサ5などの情報から得られるハンドル12の舵角およびブレーキペダルストロークにより目標横滑り量を演算し、ヨーレイトセンサ15、加速度センサ16および車輪速センサ3FL,3FR,3RL,3RRから得られる車両のヨーレイト、横加速度および各車輪速から演算した車両の横滑り量と比較する。コントロールユニット10は、目標横滑り量と車両の横滑り量との差に応じて油圧コントロールユニット1に駆動信号を出力し、各輪のホイルシリンダ圧を個々に増減および保持することにより、車両のヨーモーメントを制御する。これにより、車両をドライバの狙ったラインに近付けることができ、走行安定性の向上を図ることができる。
このVDC制御の許可/禁止は、ドライバのスイッチ操作により切り替え可能とする。
【0013】
図2は、実施例1のコントロールユニット10の横転防止制御に係る制御ブロック図であり、コントロールユニット10は、各センサ信号等に基づいて、ARP制御の可否を判断するARP制御判断部21と、ARP制御判断部21の判断結果に基づいて、油圧コントロールユニット1、減衰力可変型制御サスペンション14および電動パワーステアリングモータ7を駆動するARP制御部(横転防止制御部)22を備える。
ARP制御判断部21は、操舵入力判断部(横転予測部,切戻し検出部)23と、路面μ判断部(路面摩擦係数算出部)24と、ARP制御実行判断部25とを有する。
操舵入力判断部23は、操舵角センサ(操舵角検出部)17からの舵角(操舵角)信号および舵角信号を微分器(操舵角速度検出部)26により1階微分した舵角速度(操舵角速度)信号を用いて操舵入力の判断を行い、操舵入力状態に応じた操舵状態変数を出力する操舵入力判断処理を実施する。ここで、操舵とは、横転を予想するもので、ドライバがハンドル12を切増した後、操舵中立位置を超えてハンドル12を切り戻す操舵をいい、以下、操舵中立位置までの切戻しを1次切戻し、操舵中立位置を超えた切戻しを2次切戻しという。
【0014】
路面μ判断部24は、加速度センサ16からの前後加速度信号および横加速度信号から路面μ推定値(路面摩擦係数の推定値)を演算する。路面μ推定値をRM、前後加速度をXg、横加速度をYgとすると、RMは、下記の式を参照して算出できる。
RM = ( xg2 + yg2 )1/2
なお、上記路面μ推定方法は一例であって、他の方法を用いてもよい。
ARP制御実行判断部25は、操舵入力判断部23の判断結果と、路面μ推定値と、ヨーレイトセンサ15からのヨーレイト信号と、加速度センサ16からの横加速度信号とからARP制御を実行するか否かを判断するARP制御実行判断処理を実施するもので、ARP挙動不安定判断部(車両挙動検出部)27と、目標車速および目標減速度算出部28と、ARP制御介入判断部(横転判断部)29とを備える。
【0015】
ARP挙動不安定判断部27は、ヨーレイト信号、横加速度信号、舵角信号および操舵状態変数から車両挙動が不安定であるか判断するARP挙動不安定判断処理を実施する。
目標車速および目標減速度算出部28は、ヨーレイト信号および舵角信号から求めたヨーレイト信号、路面μ推定値から目標車速および目標減速度を算出する目標車速および目標減速度算出処理を実施する。
ARP制御介入判断部29は、目標減速度、路面μ推定値、操舵状態変数から制御介入判断を実施し、目標減速度から左右前輪2FL,2FRのホイルシリンダ圧の目標液圧(ARP目標液圧値)を算出するARP制御介入判断を実施する。
ARP制御部22では、ARP制御介入判断部29により算出されたARP目標液圧値が得られるように、油圧コントロールユニット1に対し指令を出力するARP制御を実施する。
【0016】
また、ARP制御部22は、操舵入力判断部23により操舵状態変数=1が出力された場合、ARP制御に先立ち、旋回外輪側のサスペンションの圧側減衰力を通常制御時よりも高減衰力とする初期サスペンション横転防止制御を実行する。
さらに、ARP制御部22は、ARP挙動不安定判断部27により車両挙動が不安定であると判定された(ARPカウンタに不安定判断閾値がセットされた)場合、ARP制御に先立ち、切増し時の操舵アシスト力が通常制御時のアシスト力よりも小さくなるように、電動パワーステアリングモータ7に対し指令を出力する初期ステアリング横転防止制御を実行する。
ARP制御判断部21では、図3に示すように、ステップS1で操舵入力判断部23により操舵入力判断処理を行い、ステップS2でARP制御実行判断部25によるARP制御実行判断処理を行う。
以下、操舵入力判断処理とARP制御実行判断処理の詳細について説明する。
【0017】
〔操舵入力判断処理〕
(操舵入力判断フラグのセット/リセット処理)
図4は、操舵入力判断フラグのセット/リセット処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。操舵入力判断フラグは、横転が予測される操舵入力であることを判定するためのフラグである。
ステップS101では、ARP制御の許可するARPスイッチ(不図示)がONされているか否かを判定する。YESの場合にはステップS102へ移行し、NOの場合にはステップS108へ移行する。ARPスイッチは、例えば、ハンドル12等、ドライバの手の届く位置に設けられ、ドライバによりON/OFF操作される。
ステップS102では、車速が10km/h以下であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS108へ移行し、NOの場合にはステップS103へ移行する。
ステップS103では、操舵入力判断に使用する舵角信号を生成する処理を実施し、ステップS104へ移行する。
【0018】
ステップS104では、操舵入力判断予備カウンタ1を算出し、ステップS105へ移行する。操舵入力予備カウンタ1は、図5の切増し状態を検出するためのカウンタである。
ステップS105では、操舵入力判断予備カウンタ2を算出し、ステップS106へ移行する。操舵入力判断予備カウンタ2は、図5の1次切戻しを検出するためのカウンタである。
ステップS106では、操舵入力判断フラグをセットする処理を実施し、ステップS107へ移行する。操舵入力判断フラグは、図5の2次切戻しを検出するためのフラグである。
ステップS107では、操舵入力判断フラグをリセットする処理を実施し、本制御を終了する。操舵入力判断フラグは、車両直進状態および車両安定状態の検出によりリセットする。
ステップS108では、操舵入力判断フラグをリセットすると共に、操舵状態変数をゼロとし、本制御を終了する。
【0019】
(舵角信号生成処理)
図6は、ステップS103の舵角信号生成処理であり、ステップS1031では、舵角符号と操舵入力判別用舵角速度信号を算出し、本制御を終了する。ここで、舵角符号は、右転舵を正、左転舵を負とし、舵角速度は、右転舵時の舵角速度を正、左転舵時の舵角速度を負とする。また、操舵入力判別用舵角速度信号は、
操舵入力判別用舵角速度信号=舵角符号×舵角速度
とする。
例えば、図7に示すように、ハンドル12を右転舵→左転舵→直進状態とした場合には、舵角符号は時点t1から時点t4まで正、時点t4以降は負となる。一方、舵角速度は、時点t1から時点t2までの切増し時は正、時点t2から時点t3までの保舵時はゼロ、時点t3から時点t5までの切戻し時は負となる。よって、操舵入力判別用舵角速度信号は、時点t1から時点t2まで正、時点t2から時点t3までゼロ、時点t3から時点t4まで負、時点t4から時点t5まで正となる。
【0020】
また、図8に示すように、ハンドル12を左転舵→右転舵→直進状態とした場合には、舵角符号は時点t1から時点t4まで負、時点t4以降は正となる。一方、舵角速度は、時点t1から時点t2までの切増し時は負、時点t2から時点t3までの保舵時はゼロ、時点t3から時点t5までの切戻し時は正となる。よって、操舵入力判別用舵角速度信号は、右転舵→左転舵→直進状態の場合と同様、時点t1から時点t2まで正、時点t2から時点t3までゼロ、時点t3から時点t4まで負、時点t4から時点t5まで正となる。つまり、操舵入力判断用舵角速度信号は、操舵方向にかかわらず、切増し時は正、保舵時はゼロ、切戻し時は負となる。
なお、実施例1において、各タイムチャートで用いる時点を示す符号(t1,t2,t3,…)は、同一フローチャート上で異なる時点を示すためのもので、各フローチャート間で同一の符号を付しているとしても、特に明示していない限り、それらは同一の時点を示すものではない。
【0021】
(操舵入力判断予備カウンタ1の算出処理)
図9は、ステップS104の操舵入力判断予備カウンタ1の算出処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS1041では、操舵状態変数がゼロ(リセット)であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1042へ移行し、NOの場合にはステップS1046へ移行する。
ステップS1042では、操舵入力判別用舵角速度が、操舵入力判別用舵角速度下限値1を下限とし、操舵入力判別用舵角速度上限値1を上限とする所定範囲内であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1043へ移行し、NOの場合にはステップS1046へ移行する。操舵入力判別用舵角速度下限値1は、回避操舵による切増しと判断できる舵角速度を設定する。操舵入力判別用舵角速度上限値1は、実際に起こり得る舵角速度の上限値を設定する。
ステップS1043では、操舵入力判断予備カウンタ1が所定値(操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値1)以上であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1044へ移行し、NOの場合にはステップS1045へ移行する。操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値1は、例えば、回避操舵による切増しと判断可能な時間を設定する。
ステップS1044では、操舵状態変数を1、操舵入力判断予備カウンタ1をゼロとし、本制御を終了する。
【0022】
図10は、操舵入力時の操舵状態変数と操舵入力判断予備カウンタ1の変化を示すタイムチャートであり、時点t1では操舵入力判別用舵角速度が操舵入力判別用舵角速度下限値1以上となったため、操舵入力判断予備カウンタ1のカウントアップを開始する。時点t2では操舵入力判断予備カウンタ1が操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値1以上となったため、操舵状態変数を1とし、操舵入力判断予備カウンタ1をリセットする。
(操舵入力判断予備カウンタ2の算出処理)
図11は、ステップS105の操舵入力判断予備カウンタ2の算出処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS1501では、操舵状態変数が1であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1502へ移行し、NOの場合にはステップS1510へ移行する。
【0023】
ステップS1502では、操舵入力判別用舵角速度が、操舵入力判別用舵角速度下限値2を下限とし、操舵入力判別用舵角速度上限値2を上限とする所定範囲内であり、かつ、路面μ推定値が所定値(操舵入力判別路面μ判断閾値)以上であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1503へ移行し、NOの場合にはステップS1506へ移行する。操舵入力判別用舵角速度下限値2は、回避操舵による切戻しと判断できる舵角速度を設定する。操舵入力判別用舵角速度上限値2は、実際に起こり得る舵角速度の上限値を設定する。操舵入力判別路面μ判断閾値は、高μを示す路面μを設定する。
ステップS1503では、操舵入力判断予備カウンタ2が所定値(操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値2)以上であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1054へ移行し、NOの場合にはステップS1055へ移行する。操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値2は、例えば、回避操舵による第1切戻しと判断可能な時間であって、通常走行で誤判断しない限り出来るだけ速く検出できる時間を設定する。
ステップS1504では、操舵状態変数を2とし、操舵入力判断予備カウンタ2をゼロとすると共に、舵角符号を記憶して本制御を終了する。
ステップS1505では、操舵入力判断予備カウンタ2をインクリメントし、本制御を終了する。
ステップS1506では、舵角符号をゼロとすると共に、操舵入力判断予備カウンタ2をゼロとし、ステップS1507へ移行する。
【0024】
ステップS1507では、操舵入力判断クリアカウンタ2が所定値(操舵入力判別用クリア条件閾値2)以上であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1508へ移行し、NOの場合にはステップS1509へ移行する。操舵入力判別用クリア条件閾値2は、切増し検出後に1次切戻しが検出されるまでの待機時間である。
ステップS1508では、操舵状態変数をゼロとし、本制御を終了する。すなわち、切増し検出後、待機時間(操舵入力判別用クリア条件閾値2)内に1次切戻しが検出されない場合、操舵入力ではないと判断し、誤判断防止のために操舵状態変数をゼロとする。
ステップS1509では、操舵入力判断クリアカウンタ2をインクリメントし、本制御を終了する。
ステップS1510では、操舵入力判断予備カウンタ2をゼロとすると共に、操舵入力判断クリアカウンタ2をゼロとし、本制御を終了する。
【0025】
図12は、横転が予測される操舵入力時の操舵状態変数と操舵入力判断予備カウンタ2の変化を示すタイムチャートであり、時点t1では操舵入力判別用舵角速度が操舵入力判別用舵角速度上限値2以下となり、かつ、路面μ推定値が操舵入力判別路面μ判断閾値以上であるため、操舵入力判断予備カウンタ2のカウントアップを開始する。時点t2では操舵入力判断予備カウンタ2が操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値2以上となったため、操舵状態変数を2とし、操舵入力判断予備カウンタ2をリセットする。
【0026】
(操舵入力判断フラグセット処理)
図13は、ステップS106の操舵入力判断フラグセット処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS1601では、操舵状態変数が2であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1602へ移行し、NOの場合にはステップS1613へ移行する。
ステップS1602では、操舵入力判別用舵角速度が、操舵入力判別用舵角速度下限値3を下限とし、操舵入力判別用舵角速度上限値3を上限とする所定範囲内であり、かつ、路面μ推定値が所定値(操舵入力判別路面μ判断閾値)以上であり、かつ、舵角符号の記憶値と現在値とが逆であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1603へ移行し、NOの場合にはステップ1607へ移行する。操舵入力判別用舵角速度下限値3は、回避操舵による切戻しと判断できる舵角速度を設定する。操舵入力判別用舵角速度上限値3は、実際に起こり得る舵角速度の上限値を設定する。操舵入力判別路面μ判断閾値は、高μを示す路面μを設定する。
【0027】
ステップS1603では、操舵入力判断クリアカウンタをゼロとし、ステップS1604へ移行する。
ステップS1604では、操舵入力予備カウンタ3が所定値(操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値3)以上であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1605へ移行し、NOの場合にはステップ1606へ移行する。操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値3は、例えば、回避操舵による第2切戻しと判断可能な時間を設定する。
ステップS1605では、操舵状態変数をゼロ、操舵入力判断フラグをセット、操舵入力予備カウンタ3をゼロとし、本制御を終了する。
ステップS1606では、操舵入力判断予備カウンタ3をインクリメントし、本制御を終了する。
ステップS1607では、操舵入力判断予備カウンタ3をゼロとし、ステップS1608へ移行する。
【0028】
ステップS1608では、操舵入力判断クリアカウンタが所定値(操舵入力判別用クリア条件閾値3)以上であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1609へ移行し、NOの場合にはステップS1610へ移行する。操舵入力判別用クリア条件閾値3は、1次切戻し後に2次切戻しが検出されるまでの待機時間である。
ステップS1609では、操舵入力判断予備カウンタ3をゼロ、操舵入力判断クリアカウンタをゼロ、操舵状態変数をゼロ、操舵入力判断フラグをリセットおよび舵角符号の記憶値をゼロとし、本制御を終了する。すなわち、待機時間(操舵入力判別用クリア条件閾値3)内に2次切戻しが検出されない場合、操舵入力ではないと判断し、誤判断防止のために操舵状態変数をゼロとする。
ステップS1610では、ARPカウンタがゼロであるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1611へ移行し、NOの場合にはステップS1612へ移行する。
ステップS1611では、操舵入力判断クリアカウンタをインクリメントし、本制御を終了する。
ステップS1612では、操舵入力判断予備カウンタ3をゼロ、操舵入力判断クリアカウンタをゼロ、操舵状態変数をゼロ、操舵入力判断フラグをリセットおよび舵角符号の記憶値をゼロとし、本制御を終了する。
【0029】
図14は、横転が予測される操舵入力時の操舵状態変数と操舵入力判断予備カウンタ3の変化を示すタイムチャートであり、時点t1では操舵入力判別用舵角速度が操舵入力判別用舵角速度下限値3以上、かつ、路面μ推定値が操舵入力判別路面μ判断閾値以上、かつ、舵角符号の記憶値(+)と現在値(-)が逆であるため、操舵入力判断予備カウンタ3のカウントアップを開始する。時点t2では操舵入力判断予備カウンタ3が操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値3以上となったため、操舵状態変数を3とし、操舵入力判断予備カウンタ3をリセットする。
【0030】
(操舵入力判断フラグリセット処理)
図15は、ステップS107の操舵入力判断フラグリセット処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS1701では、ARPカウンタがゼロであるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1072へ移行し、NOの場合にはステップS1073へ移行する。
ステップS1702では、操舵入力判断フラグリセットカウンタをゼロ、舵角符号の記憶値をゼロ、操舵状態変数をゼロ、操舵入力判断フラグをリセットし、本制御を終了する。
ステップS1073では、操舵状態変数が3であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1704へ移行し、NOの場合にはステップS1078へ移行する。
ステップS1074では、直進状態であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1075へ移行し、NOの場合にはS1077へ移行する。ここで、直進状態の判定は、下記4条件全ての成立時とするが、4つのいずれかまたは任意の複数を組み合わせて直進状態を判定してもよい。
・舵角信号が所定値(車両直進状態判断舵角閾値)以内
・ヨーレイト信号が所定値(車両直進状態判断ヨーレイト閾値)以内
・車輪速から求めたヨーレイトが所定値(車両直進状態判断ヨーレイト閾値)以内
・ヨーレイト信号と車輪速から求めたヨーレイトとの差分値が所定値(車両直進状態判断ヨーレイト差分値閾値1)以内
【0031】
ステップS1075では、操舵入力判断フラグリセットカウンタが所定値(操舵入力判断フラグリセット判断閾値)以上であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1072へ移行し、NOの場合にはステップS1077へ移行する。
ステップS1076では、車両挙動安定状態であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1075へ移行し、NOの場合にはステップS1078へ移行する。ここで、車両挙動安定状態の判定は、下記3条件全ての成立時とするが、3つのいずれかまたは任意の複数を組み合わせて車両挙動安定状態を判定してもよい。
・ヨーレイト信号と舵角から求めたヨーレイトの差分値が所定値(車両直進状態判断ヨーレイト差分値閾値1)以内
・舵角から求めたヨーレイトと横加速度から求めたヨーレイトとの差分値が所定値(車両直進状態判断ヨーレイト差分値閾値1)以内
・ヨーレイト信号と横加速度から求めたヨーレイトとの差分値が所定値(車両直進状態判断ヨーレイト差分値閾値1)以内
ステップS1077では、操舵入力判断フラグリセットカウンタをインクリメントし、本制御を終了する。
ステップS1078では、操舵入力判断フラグリセットカウンタをゼロとし、本制御を終了する。
【0032】
図16は、横転が予測される操舵入力後に車両が直進状態となった場合の操舵状態変数と操舵入力判断フラグリセットカウンタの変化を示すタイムチャートであり、時点t1では、舵角信号が車両直進状態判断舵角閾値以内、かつ、ヨーレイト信号が車両直進状態判断ヨーレイト閾値以内、かつ、車輪速から求めたヨーレイトが車両直進状態判断ヨーレイト閾値以内、かつ、ヨーレイト信号と車輪速から求めたヨーレイトとの差分値が車両直進状態判断ヨーレイト差分値閾値1以内となったため、直進状態と判定し、操舵入力判断フラグリセットカウンタのカウントアップを開始する。時点t2では、操舵入力判断フラグリセットカウンタが操舵入力判断フラグリセット判断閾値以上となったため、操舵状態変数をゼロとし、操舵入力判断フラグをリセットする。
【0033】
図17は、横転が予測される操舵入力後に車両挙動安定状態となった場合の操舵状態変数と操舵入力判断フラグリセットカウンタの変化を示すタイムチャートであり、時点t1では、ヨーレイト信号と舵角から求めたヨーレイトの差分値が車両直進状態判断ヨーレイト差分値閾値1以内、かつ、舵角から求めたヨーレイトと横加速度から求めたヨーレイトとの差分値が車両直進状態判断ヨーレイト差分値閾値1以内、かつ、ヨーレイト信号と横加速度から求めたヨーレイトとの差分値が車両直進状態判断ヨーレイト差分値閾値1以内となったため、車両挙動安定状態と判定し、操舵入力判断フラグリセットカウンタのカウントアップを開始する。時点t2では、操舵入力判断フラグリセットカウンタが操舵入力判断フラグリセット判断閾値以上となったため、操舵状態変数をゼロとし、操舵入力判断フラグをリセットする。
【0034】
〔ARP制御実行判断処理〕
ARP制御実行判断部25によるARP制御実行判断処理は、図18に示すように、ステップS21でARP挙動不安定判断部27によりARP挙動不安定判断処理を行い、ステップS22で目標車速および目標減速度算出部28により目標車速および目標減速度算出処理を行い、ステップS23でARP制御介入判断部29によりARP制御介入判断処理を行うという流れとなる。以下、各処理について順に説明する。
【0035】
(ARP挙動不安定判断処理)
図19は、ARP挙動不安定判断処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS2101では、VDC制御が禁止状態であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2102へ移行し、NOの場合にはステップS2103へ移行する。なお、VDC制御の許可/禁止にかかわらず、ARP制御を実行する場合には、本ステップを省略し、ステップS2103から開始してもよい。
ステップS2102では、ARPカウンタをゼロとし、本制御を終了する。
ステップS2103では、操舵状態変数がゼロであるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2102へ移行し、NOの場合にはステップS2104へ移行する。
【0036】
ステップS2104では、車両挙動が不安定状態であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2105へ移行し、NOの場合にはステップS2106へ移行する。ここで、車両挙動の不安定状態は、下記5条件全ての成立時とするが、5つのいずれかまたは任意の複数を組み合わせて車両挙動の不安定状態を判定してもよい。
・横加速度の絶対値から算出されるヨーレイト信号にゲイン(1以上の値)をかけた信号とヨーレイト信号の絶対値とを比較し、ヨーレイト信号の絶対値の方が大きい
・ヨーレイト信号の符号と横加速度の符号とが同一
・操舵状態変数=1
・ヨーレイトを横加速度に換算した横加速度信号と横加速度信号との差分値の絶対値が所定値(ARPカウンタセット閾値1)以上
・舵角から横加速度へ換算した横加速度信号と横加速度信号の差分値の絶対値が所定値(ARPカウンタセット閾値2)以上
【0037】
ステップS2105では、ARPカウンタに値(不安定判断閾値)をセットし、本制御を終了する。
ステップS2106では、車両挙動が安定状態であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2107へ移行し、NOの場合には本制御を終了する。ここで、車両挙動の安定状態は、下記4条件全ての成立時とするが、4つのいずれかまたは任意の複数を組み合わせて車両挙動が安定状態であるか否かを判定してもよい。
・横加速度の絶対値から算出されるヨーレイト信号にゲイン(1以下の値)をかけた信号とヨーレイト信号の絶対値とを比較し、ヨーレイト信号の絶対値の方が小さい
・舵角信号の符号と横加速度信号の符号が同一
・ARPカウンタがゼロ以上の値
・操舵状態変数が2以上の値
ステップS2107では、ヨーレイト信号の絶対値が所定のヨーレイト閾値よりも小さいか否かを判定する。YESの場合にはステップS2109へ移行し、NOの場合にはステップS2108へ移行する。これは、車両挙動が安定している場合に制御を早期に終了するためである。
ステップS2108では、ARPカウンタをデクリメントし、本制御を終了する。
ステップS2109では、ARPカウンタから所定値を減算し、本制御を終了する。
【0038】
図20は、横転が予測される操舵入力時のARPカウンタの変化を示すタイムチャートである。
時点t1では、横加速度の絶対値から算出されるヨーレイト信号にゲイン(1以上の値)をかけた信号よりもヨーレイト信号の絶対値が大きく、かつ、ヨーレイト信号の符号と横加速度の符号とが同一、かつ、操舵状態変数=1、かつ、ヨーレイトを横加速度に換算した横加速度信号と横加速度信号との差分値の絶対値がARPカウンタセット閾値1以上、かつ、舵角から横加速度へ換算した横加速度信号と横加速度信号の差分値の絶対値がARPカウンタセット閾値2以上となったため、車両挙動が不安定状態と判定し、ARPカウンタを不安定判断閾値にセットする。
時点t2では、横加速度の絶対値から算出されるヨーレイト信号にゲイン(1以上の値)をかけた信号よりもヨーレイト信号の絶対値が小さく、かつ、舵角信号の符号と横加速度信号の符号が同一、かつ、ARPカウンタがゼロ以上、かつ、操舵状態変数が2以上の値となったため、車両挙動が安定状態とし、ARPカウンタの減算を開始する。
【0039】
(目標車速および目標減速度算出処理)
図21は、目標横加速度算出処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS2201では、目標横加速度ゲインおよび目標横加速度生値を算出し、ステップS2202へ移行する。なお、実施例1の「生値」とは、演算後、デジタル処理やフィルタ処理を施す前のアナログ値を示す。
目標横加速度ゲインは、目標ヨーレイト信号とヨーレイト信号との差分最大値の絶対値(以下、絶対値を省略し、単に差分最大値と記載する。)から、あらかじめ差分最大値に対応した目標横加速度ゲインを複数定めておき、それらを横軸に差分最大値、縦軸に目標横加速度ゲインをとったテーブルにプロットし、各点間を直線補間して生成した目標横加速度ゲインテーブルを参照して算出する。
【0040】
実施例1の目標ヨーレイト信号は、横加速度信号から求めたヨーレイト信号と舵角から求めたヨーレイト信号とを合成して算出する(図22(a))。横転が予測される操舵入力時の目標ヨーレイト信号とヨーレイト信号は、図22(b)のような波形を示し、その差分最大値は、図22(c)のような波形となる。
図23は、目標横加速度ゲインテーブルであり、横軸に最大差分値、縦軸に目標横加速度ゲインをとり、上述したように、あらかじめ定められた複数(5つ)の点をプロットし、各点間を直線補間したものである。この目標横加速度ゲインテーブルでは、目標ヨーレイト信号とヨーレイト信号の差分最大値が大きいほど、目標横加速度ゲインが小さくなる特性としている。
【0041】
また、ステップS2201において、目標横加速度生値は、路面μ推定値に目標横加速度ゲインを乗算して算出する。
目標横加速度生値=路面μ推定値×目標横加速度ゲイン
これにより、目標ヨーレイト信号とヨーレイト信号の差分最大値が図24(a)のとき、目標横加速度生値は、図24(b)となる。
【0042】
ステップS2202では、ARPカウンタがゼロであるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2203へ移行し、NOの場合にはステップS2204へ移行する。
ステップS2203では、路面μ推定値を目標横加速度とし、本制御を終了する。
目標横加速度=路面μ推定値
ステップS2204では、ARP制御中であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2205へ移行し、NOの場合にはステップS2206へ移行する。
ステップS2205では、目標横加速度生値と10ms前(1制御周期前)の目標横加速度とのセレクトローにより目標横加速度1を決定し、目標横加速度1に目標横加速度上限値と目標横加速度下限値とでリミッタ処理を行った値を目標横加速度とし、本制御を終了する。
ここで、目標横加速度上限値は、2次側の制御時に減速度および横加速度が大きくなると目標横加速度が過大となるのを防止するためのものである。また、目標横加速度下限値は、目標横加速度が過小となるのを防止するためのものである。
ステップS2206では、目標横加速度生値に目標横加速度上限値と目標横加速度下限値とでリミッタ処理を行った値を目標横加速度とし、本制御を終了する。
【0043】
次に、上記手順で求めた目標横加速度を目標車速生値算出ヨーレイトで除することで、目標車速生値を算出する。
目標車速生値=目標横加速度/目標車速生値算出ヨーレイト
なお、目標車速生値算出ヨーレイトは、ヨーレイト信号の絶対値と舵角から求めたヨーレイト信号の絶対値とのセレクトハイにより決定する。
すなわち、目標車速生値は、舵角から想定される車両挙動と実際の車両挙動とから設定する。
【0044】
次に、目標減速度の算出方法を説明する。
図25は、目標減速度算出処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS2211では、目標車速生値算出ヨーレイトを算出し、ステップS2212へ移行する。目標車速生値算出ヨーレイトは、上述したように、ヨーレイト信号の絶対値と舵角から求めたヨーレイト信号の絶対値とのセレクトハイにより決定する。
ステップS2212では、下記3条件全ての成立時か否かを判定する。YESの場合はステップS2213へ移行し、NOの場合にはステップS2218へ移行する。
・目標車速生値算出ヨーレイトが所定値(目標車速生値算出ヨーレイト閾値)以上
・車速が所定値以上(横転が発生することがない程度の車速)
・ARPカウンタがゼロよりも大きい
【0045】
ステップS2213では、目標車速生値を算出し、ステップS2214へ移行する。目標車速生値は、目標横加速度を目標車速生値算出ヨーレイトで除した値と、目標車速上限値255km/hとのセレクトローにより決定する。
ステップS2214では、目標車速生値と目標車速との差が所定値1(目標車速増加勾配)以上であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2215へ移行し、NOの場合にはステップS2217へ移行する。
【0046】
ステップS2215では、目標車速生値に所定値1(目標車速増加勾配)を加えた値を目標車速とし、ステップS2216へ移行する。
目標車速=目標車速生値+所定値1
ステップS2216では、目標減速度を算出し、本制御を終了する。目標減速度は、車輪速から算出した推定車体速から目標車速を減算して目標減速度算出車速差を算出し、目標減速度算出車速差を減速させる時間(目標減速度算出車速差を何秒で減速させるかという時間)で除した値と、目標減速度上限値とのセレクトローにより決定する。
ステップS2217では、目標車速生値を目標車速とし、ステップS2216へ移行する。
ステップS2218では、目標車速上限値、例えば255km/hを目標車速とし、ステップS2216へ移行する。
【0047】
実施例1のARP制御(前輪ホイルシリンダ圧の増圧制御)では、目標液圧がマスタシリンダ圧以上となった場合にONし、目標液圧がマスタシリンダ圧よりも小さくなった時点でOFFする(詳細については後述する。)。したがって、図26に示すように、時点t1でARP制御ONを示すARP制御信号をセットしてから時点t5で推定車体速と目標車速とが一致し、その後、図29に示すARP目標液圧が0になるタイミング(図29のt10)までの間、ARP制御信号はセットした状態を維持するため、ARP制御は継続したままである。
【0048】
図27は、ARP制御中の目標車速と目標減速度の変化を示すタイムチャートである。
時点t1では、目標車速生値算出ヨーレイトが目標車速生値算出ヨーレイト閾値以上、かつ、車速が所定値以上、かつ、ARPカウンタがゼロよりも大きいため、目標車速および目標減速度の算出を開始し、時点t7でARPカウンタがゼロとなるまでの間、目標減速度に応じて前輪2FL,2FRのホイルシリンダ圧を増減圧する。
ここで、目標車速の増加側(時点t2から時点t3の区間,時点t4から時点t5の区間,時点t6から時点t7の区間)では、目標車速の増加に対し目標車速増加勾配によるリミッタ処理を行っている。よって、目標車速の増加側では、目標横加速度と目標車速生値算出ヨーレイトとから算出する目標車速生値に対して目標車速に遅れが生じている。
【0049】
(ARP制御介入判断処理)
図28は、ARP制御介入判断処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS2301では、下記の3条件全ての成立時であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2032へ移行し、NOの場合にはステップS2311へ移行する。
・路面μ推定値が所定値(操舵入力判別路面μ判断閾値)以上
・目標減速度が減速側
・操舵状態変数が2以上
ステップS2302では、ARP目標液圧生値およびARP目標液圧変化量を算出し、ステップS2303へ移行する。
ARP目標液圧生値は、ブレーキ係数と目標減速度との乗算値と、目標液圧上限値とのセレクトローにより決定する。
また、ARP目標液圧変化量は、ARP目標液圧生値からARP目標液圧を減算した値とする。
【0050】
ステップS2303では、ARP目標液圧変化量が第1の所定量以上、すなわち、ARP目標液圧が増加側であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2304へ移行し、NOの場合にはステップS2308へ移行する。
ステップS2304では、1制御周期前のARP目標液圧値に第1の所定量を加えた値をARP目標液圧値とし、ステップS2305へ移行する。
【0051】
ステップS2305では、ARP目標液圧値にオフセット値を加算した値が推定マスタシリンダ圧よりも小さいか否かを判定する。YESの場合にはステップS2306へ移行し、NOの場合にはステップS2307へ移行する。なお、推定マスタシリンダ圧は、ブレーキペダルストロークセンサ5からのストローク信号に基づいて推定してもよい。
ステップS2306では、ARP制御をOFFし、本制御を終了する。
ステップS2307では、ARP制御をONし、本制御を終了する。
ステップS2308では、ARP目標液圧変化量が第2の所定量以下、すなわち、ARP目標液圧が減少側であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2309へ移行し、NOの場合にはステップS2310へ移行する。
【0052】
ステップS2309では、1制御周期前のARP目標液圧値から第2の所定量を減じた値をARP目標液圧値とし、ステップS2305へ移行する。
ステップS2310では、ARP目標液圧生値にARP目標液圧変化量を加えた値をARP目標液圧値とし、ステップS2305へ移行する。
ステップS2311では、ARP制御がONであるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2312へ移行し、NOの場合にはステップS2315へ移行する。
ステップS2312では、1制御周期前のARP目標液圧値から第2の所定量を減じた値と、ゼロとのセレクトハイによりARP目標液圧値を決定し、ステップS2313へ移行する。
ステップS2313では、ARP目標液圧値が推定マスタシリンダ圧以下であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2314へ移行し、NOの場合には本制御を終了する。
ステップS2314では、ARP制御をOFFし、本制御を終了する。
ステップS2315では、ARP目標液圧値をゼロとし、本制御を終了する。
【0053】
図29は、ARP制御中のARP目標液圧(値)とARP制御信号の変化を示すタイムチャートである。
時点t1では、目標車速生値算出ヨーレイトが目標車速生値算出ヨーレイト閾値以上、かつ、車速が所定値以上、かつ、ARPカウンタがゼロよりも大きいため、目標減速度の算出が開始される。時点t2では、ARP制御がONとなる。
時点t2から時点t3までの区間では、ARP目標車速生値とARP目標液圧値との差であるARP目標液圧変化量が第1の所定量以上であるため、ARP目標液圧値は、第1の所定量によって増加率を制限されながら徐々に増加する。
時点t3では、ARP目標液圧変化量が第1の所定量よりも小さく、かつ、第2の所定量よりも大きくなるため、時点t3から時点t4までの区間では、ARP目標液圧値は、ARP目標液圧生値に追従しながら徐々に減少する。
【0054】
時点t4から時点t5までの区間では、目標減速度が減速側であり、次の時点t5から時点t6までの区間では、ARP目標液圧変化量が第1の所定量よりも小さく、かつ、第2の所定量よりも大きいため、ARP目標液圧値は、ARP目標液圧生値に追従して変化する。
時点t6から時点t7までの区間では、ARP目標液圧変化量が第1の所定量以上であるため、ARP目標液圧値は、第1の所定量によって増加率を制限されながら徐々に増加する。時点t7から時点t8までの区間では、ARP目標液圧変化量が第2の所定量以下であるため、ARP目標液圧値は、第2の所定量によって減少率を制限されながら徐々に減少する。
時点t8では、1制御周期前の目標液圧値から第2の所定量を減じた値がゼロよりも小さいため、ARP目標液圧値は、第2の所定量によって減少率を制限されながら徐々に減少する。
時点t9では、ARP目標液圧生値がゼロとなってその後ARP目標液圧が制限されながらゼロになる時点t10でARP制御信号はOFFされる。
【0055】
〔初期サスペンション横転防止制御〕
ARP制御部22は、操舵入力判断部23が操舵状態変数=1を出力した場合、旋回外輪側のサスペンションの圧側減衰力を高減衰力に変更する初期サスペンション横転防止制御を実行する。この初期サスペンション横転防止制御は、操舵入力判断部23により操舵入力判断フラグがリセットされるまで継続する。
【0056】
〔初期ステアリング横転防止制御〕
ARP制御部22は、ARP挙動不安定判断部27がARPフラグをセットした場合、操舵アシスト力を通常アシスト力よりも小さくする初期ステアリング横転防止制御を実行する。この初期ステアリング横転防止制御は、初期サスペンション横転防止制御同様、操舵入力判断部23により操舵入力判断フラグがリセットされるまで継続する。
【0057】
次に、作用を説明する。
図30は、実施例1の横転防止制御作用を示すタイムチャートである。
時点t1では、ドライバが障害物回避のために切増しを開始する。
時点t2では、舵角符号と舵角速度から求めた操舵入力判別用舵角速度が操舵入力判別用舵角速度下限値1以上である状態が、操舵入力判断予備カウンタ1が操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値1以上となるまで継続したため、操舵入力判断部23では、操舵状態変数=1を出力する。すなわち、操舵状態(操舵パターン)を示す舵角および舵角速度に基づいて、車両に対し所定のロールが発生することを予測する(横転予測)。
ここで、舵角速度が設定された速度(操舵入力判別用舵角速度下限値1)以上の場合に横転予測を行っているため、横転を伴う可能性のある所定のロールの発生の予測精度を高めることができる。また、横転予測はドライバによる操舵開始から所定時間経過後(操舵入力判断予備カウンタ1≧操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値1)に開始するため、センサノイズ等による誤判断を防止でき、予測精度をより高めることができる。
また、ARP制御部22では、操舵状態変数=1の出力に応じて、旋回外輪側のサスペンションの圧側減衰力を高減衰力に変更する初期サスペンション横転防止制御を開始する。このため、旋回時のロール剛性を高めることができ、車体の姿勢変化、すなわちロール量を抑制できると共に、車両挙動を安定させることができる。
【0058】
時点t3では、ドライバが舵角を一定に保持する。
時点t4では、横加速度の絶対値から算出されるヨーレイト信号にゲインをかけた信号よりもヨーレイト信号の絶対値が大きく、かつ、ヨーレイト信号の符号と横加速度の符号とが同一、かつ、操舵状態変数=1、かつ、ヨーレイトを横加速度に換算した横加速度信号と横加速度信号との差分値の絶対値がARPカウンタセット閾値1以上、かつ、舵角から横加速度へ変換した横加速度信号と横加速度信号の差分値の絶対値がARPカウンタセット閾値2以上となったため、ARP挙動不安定判断部27では、車両挙動が不安定状態であると判定し、ARPカウンタに不安定判断閾値をセットする。ARPカウンタに不安定判断閾値がセットされることで、目標車速および目標減速度算出部28では、目標車速および目標減速度の算出を開始する。
【0059】
また、時点t4において、ARP挙動不安定判断部27では、ARPカウンタに応じて操舵アシスト力を通常アシスト力よりも小さくする初期ステアリング横転防止制御を開始する。すなわち、車両挙動が不安定となった場合には、ハンドル12を切りにくくしてハンドル12の切増し量を抑えることで、切戻し時の車両挙動がより不安定となるのを抑制することができる。
時点t5では、ドライバが切戻しを開始する。
時点t6では、操舵入力判別用舵角速度が操舵入力判別用舵角速度上限値2以下である状態が、操舵入力判断予備カウンタ2が操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値2以上となるまで継続したため、操舵入力判断部23では、操舵状態変数=2を出力する。これにより、目標減速度が減速側、かつ、操舵状態変数が2以上となるため、ARP制御介入判断部29では、車両が横転すると判断(横転判断)してARP制御をONし、目標減速度に応じて左右前輪2FL,2FRに制動力を付与する横転防止制御を開始する。
すなわち、実施例1の横転防止制御では、横転予測後、所定の車両挙動(車両不安定状態)検出中に操舵の切戻しが検出されたときに横転判断を行い、横転判断成立時に横転防止制御を行う。このため、横転予測直後に制動力の付与による横転防止制御を実施する従来の横転防止制御に対し、横転判断精度が高く、不要な横転防止制御の介入に伴う過大な制動力の発生を抑制できる。
【0060】
また、実施例1の横転防止制御では、左右前輪2FL,2FRに対して制動力を付与しているため、旋回外輪に制動力を付与する従来の横転防止制御に対し、車速をより速く低下させることができ、車両挙動の早期安定化を図ることができる。
ARP制御介入判断部29は、操舵入力判断部23が操舵状態変数=2を出力したとき、路面μ推定値が操舵入力判別路面μ判断閾値よりも小さい場合には、目標減速度が減速側であってもARP制御をOFFのままとする。ここで、横転が予測される操舵入力による車両の横転は、車両の旋回時、タイヤのグリップ限界よりも先に車両の横転限界に至ることに起因している。
つまり、走行路面が低μ路である場合には、タイヤのグリップ限界が小さいため、タイヤのグリップ限界よりも先に車両の横転限界に至ることは稀であり、横転が予測される操舵入力による車両の横転は発生しにくい。そこで、路面μが所定値以上となる高μ路走行中に横転防止制御を実施し、低μ路走行中には横転防止制御を実施しないことにより、横転判断精度を高めることができる。
【0061】
時点t7では、操舵入力判別用舵角速度が操舵入力判別用舵角速度下限値3以上、かつ、路面μ推定値が操舵入力判別路面μ判断閾値以上、かつ、舵角符号の記憶値(+)と現在値(-)が逆である状態が、操舵入力判断予備カウンタ3が操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値3以上となるまで継続したため、操舵入力判断部23では、操舵状態変数=3を出力する。
ここで、実施例1では、操舵状態変数=1となってから操舵入力判断クリアカウンタ2が操舵入力判別用クリア条件閾値2以上となるまでの間に、操舵入力判断予備カウンタ2が操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値2以上とならない場合、操舵入力判断部23は、操舵状態変数=0を出力する。同様に、操舵状態変数=2となってから操舵入力判断クリアカウンタが操舵入力判別用クリア条件閾値3以上となるまでの間に、操舵入力判断予備カウンタ3が操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値3以上とならない場合、操舵入力判断部23は、操舵状態変数=0を出力する。すなわち、所定のロールの発生が予測されてから所定時間経過後に操舵の切戻しを行わない場合、横転予測をキャンセルするため、横転が予測される操舵入力ではない場合に横転予測を継続することに伴う横転の誤判断を抑制できる。
時点t8では、ドライバが舵角を一定に保持する。
時点t9では、車両挙動が安定状態となったため、ARP挙動不安定判断部27では、ARPカウンタの減少を開始する。
時点t10では、ARPカウンタがゼロとなったため、操舵入力判断部23では、操舵状態変数=0を出力し、操舵入力判断フラグをリセットする。これにより、横転防止制御、初期サスペンション横転防止制御および初期ステアリング横転防止制御を終了する。
なお、本実施例においては、サスペンション制御、ステアリング制御、ブレーキ制御を協調するようにしたが、ブレーキ制御のみでも横転防止制御は実現可能である。この場合、前述したVDC制御ユニットを搭載している車両であれば、ソフト追加のみで対応可能であり、コストアップを抑制できる。
【0062】
図31は、実施例1のARP(横転防止)制御作用を示すイメージ図である。ここでは、説明の簡単のため、初期サスペンション横転防止制御および初期ステアリング横転防止制御は考慮しないこととする。
(ヨーモーメント制御領域)
状態aでは、ドライバが障害物回避のためにハンドル12を右方向に素早く切り増すことにより、車両のオーバーステア傾向が強まったため、VDC制御を開始する。VDC制御では、目標横滑り角に応じて左側車輪に制動力を付与することで、車両回転方向と反対方向にヨーモーメントを発生させる。
このとき、ARP(横転防止)制御では、舵角速度に基づいて横転予測を行うものの、左右前輪に制動力を付与することはない。ハンドル12の切増しのみで横転判断を行い、左右前輪に制動力を付与した場合、その後ドライバが切戻し操舵を行わなかった場合、車両に不要な制動力が発生するからである。
【0063】
(ヨーモーメント制御+減速制御領域)
状態bでは、ドライバがハンドル12を素早く切り戻したため、ARP制御では、操舵パターンから横転判断し、目標減速度に応じて左右前輪に制動力(左右均等)を付与する減速制御を開始する。このとき、VDC制御では、車両回転方向と反対方向にヨーモーメントを発生させるべく、左前輪に制動力を付与する。よって、左前輪に付与される制動力は、右前輪に付与される制動力よりも大きくなる。つまり、横転判断した場合、VDCによるヨーモーメント制御と、ARPによる減速制御とを同時に行う。
状態c,dでは、ドライバの操舵切り返しにより車両回転方向が状態bとは反対方向となるため、VDC制御では、目標滑り角に応じて右前輪に制動力を付与する。このとき、ARP制御では、左右前輪に均等な制動力を付与するため、左前輪に付与される制動力は、右前輪に付与される制動力よりも大きくなる。
【0064】
(減速制御領域)
状態eでは、車両のオーバーステア傾向が弱まり、車両が安定状態となったため、VDC制御による制動力の付与を終了する。このとき、ARP制御では、左右前輪に付与する制動力を徐々に小さくしていく。
状態fでは、ARP制御を終了し、状態gでは、車両が減速している。
VDC制御では、左右片側1輪または2輪に制動力を付与することにより、車両の横滑り量を抑制できるが、VDC制御は、走行の継続を前提とし、車両の旋回軌道をドライバの狙ったラインに近付けることを目的としたヨーモーメント制御であり、車両を積極的に減速させるものではない。また、車両に発生したヨーレイトおよび横加速度に基づいて目標横滑り量を決めているため、急操舵時のような車両回転方向が急変する車両挙動変化には対応できず、横転の発生を抑制できない。
これに対し、実施例1のARP制御は、横転判断した場合、車両の左右前輪に対して制動力を付与することにより、車両回転方向が急変する急操舵時であっても、車両を積極的に減速させることで、車両挙動の早期安定化を図ることができる。
また、ARP制御では、横転判断をドライバの操舵パターンに基づいて行うため、車両に発生したヨーレイトや横加速度等に基づいて横転判断を行うVDC制御の場合と比較して、横転の発生を効果的に抑制できる。
さらに、実施例1のように、ARP制御をVDC制御と併用することにより、車両のオーバーステア傾向を抑制するヨーモーメントを発生させつつ、車両を減速させることができるため、車両挙動の早期安定化を図ることができる。
【0065】
次に、効果を説明する。
実施例1の車両横転防止制御装置では、以下に列挙する効果を奏する。
【0066】
(1) 車両挙動を制御するために作動するブレーキ装置と、ドライバの操舵に基づいて車両に対し所定のロールが発生することを予測すると共に、ドライバによる操舵の切戻しを検出する操舵入力判断部23と、操舵の切戻しが検出されたときに横転判断を行うARP制御介入判断部29と、操舵入力判断部23により所定のロールが発生すると予測され、かつ、ARP制御介入判断部29により横転判断された場合、アクチュエータであるブレーキ装置を制御し横転防止制御を行うARP制御部22と、を備えた。これにより、横転判断精度を高めることができる。また、不要な横転防止制御の介入を抑制できる。
(2) ドライバによる操舵の切増し時の操舵角速度を検出する操舵角速度検出部として、操舵角センサ17の後段に微分器26を設け、操舵入力判断部23は、微分器26により検出された舵角速度が設定された速度よりも高い場合に横転予測を行う。これにより、横転を伴う可能性のある所定のロールの発生の予測精度を高めることができる。
【0067】
(3) 操舵入力判断部23は、ドライバによる操舵開始から所定時間経過後に横転予測を開始するため、センサノイズ等による誤判断を防止でき、予測精度をより高めることができる。
(4) ARP制御介入判断部29は、操舵入力判断部23により所定のロールの発生が予測されてから所定時間経過後に操舵の切戻しを検出しない場合は横転予測をキャンセルするため、横転が予測される操舵入力ではない場合に横転予測を継続することに伴う横転の誤判断を抑制できる。
【0068】
(5) ARP制御部22は、横転防止制御時、車両の左右前輪2FL,2FRに対して制動力を付与するため、車速を素早く低下させて車両挙動の早期に安定させ、横転の発生を抑制できる。
(6) 路面μ推定値を算出する路面μ判断部24を備え、ARP制御部22は、路面μ判断部24により算出された路面μ推定値が所定値以上のときに横転防止制御を実施し、所定値未満の場合は横転防止制御を実施しない。すなわち、横転が発生しやすい高μ路走行時には横転防止制御を実施し、横転が発生しにくい低μ路走行時には横転防止制御の実施を禁止することで、横転判断精度を高めることができる。
【0069】
(7) 減衰力可変型制御サスペンション14FL,14FR,14RL,14RRを備え、ARP制御部22は、操舵入力判断部23により所定のロールが発生すると予測された場合、旋回外輪側サスペンションの圧側減衰力を高減衰力に変更する初期サスペンション横転防止制御を行う。これにより、切戻し前にロール量を抑制でき、切戻し時における車両の横転を抑制できる。また、サスペンション制御は車両の減速度ほとんど影響を及ぼさないため、ドライバに違和感を与えにくい。
(8) 操舵アシスト力を調整できるアシスト力可変型操舵装置を備え、ARP制御部22は、操舵入力判断部23により所定のロールが発生すると予測された場合、切増し側の操舵アシスト力を現在よりも小さく変更する初期ステアリング横転防止制御を行う。これにより、ハンドル12の切増し量を抑えることができ、切戻し時における車両の横転を抑制できる。また、アシスト力の制御は車両の減速度ほとんど影響を及ぼさないため、ドライバに違和感を与えにくい。
【0070】
(9) 車両挙動を制御するためのブレーキ装置と、ドライバによる操舵の切増し時の舵角速度を検出する微分器26と、舵角を検出する操舵角センサ17と、車両に発生するヨーレイトを検出するヨーレイトセンサ15と、車両に発生する横加速度を検出する加速度センサ16と、少なくとも微分器26からの信号と操舵角センサ17からの信号とに基づいて車両のロールの発生を予測する操舵入力判断部23と、少なくともヨーレイトセンサ15および加速度センサ16からの情報により車両挙動を検出するARP挙動不安定判断部27と、ARP挙動不安定判断部27による所定の車両挙動検出中に操舵の切戻しが検出されたときに横転判断を行うARP制御介入判断部29と、ARP制御介入判断部29によって横転判断された場合、ブレーキ装置を制御し横転防止制御を行うARP制御部22と、を備えた。すなわち、舵角速度と舵角に基づいて横転の可能性を予測し、その後車両挙動が不安定状態である場合、ハンドル12が切り戻されたときに横転防止制御を行うため、横転判断精度を高め、不要な横転防止制御の介入を抑制できる。
【0071】
(10) 減衰力可変型制御サスペンション14FL,14FR,14RL,14RRと、操舵アシスト力を調整できるアシスト力可変型操舵装置と、を備え、ARP制御部22は、操舵入力判断部23により所定のロールが発生すると予測された場合、旋回外輪側サスペンションの圧側減衰力を高減衰力に変更する初期サスペンション横転防止制御を行うと共に、切増し側の操舵アシスト力を現在よりも小さく変更する初期ステアリング横転防止制御を行う。これにより、ハンドル12の切増し量および車体のロール量を抑制でき、切戻し時における車両の横転を抑制できる。また、サスペンション制御およびステアリング制御は、車両の減速度にほとんど影響を及ぼさないため、ドライバに違和感を与えにくい。
(11) ドライバによる操舵の切増し時の操舵角速度に基づいて大きなロールの発生を予測する横転予測を実行し、横転予測成立後、操舵の切戻しが検出されたときに横転防止制御を実行する。これにより、横転判断精度を高め、不要な横転防止制御の介入を抑制できる。
【0072】
(12) 横転予測成立後であって横転防止制御の前にサスペンションの可変制御または操舵アシスト可変制御の少なくとも一方を実行するため、横転判断する前の段階で車両挙動を安定させることができ、切戻し時における車両の横転を抑制できる。
(13) 車両挙動を制御するために作動するブレーキ装置と、ドライバの操舵パターンに基づいて車両に対し所定のロールが発生することを予測すると共に、ドライバの操舵パターンとして切戻しを検出する操舵入力判断部23と、操舵入力判断部23により切戻しが検出された場合、ブレーキ装置を車両の左右前輪に対して制動力を発生させるように制御するARP制御部22と、を備えた。これにより、横転判断精度を高めることができる。また、不要な横転防止制御の介入を抑制できる。
【0073】
〔他の実施例〕
以上、本発明を実施するための形態を、実施例に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成は実施例に限定されるものではない。
例えば、前輪をインホイールモータ等の電動モータで駆動する車両では、車両挙動を制御するために作動するアクチュエータとして、電動モータの回生ブレーキを用いてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 油圧コントロールユニット(ブレーキ装置)
2FL 左前輪
2FR 右前輪
2RL 左後輪
2RR 右後輪
6FL,6FR,6RL,6RR ディスクブレーキ(ブレーキ装置)
7 電動パワーステアリングモータ(アシスト力可変型操舵装置)
8 舵取り機構(アシスト力可変型操舵装置)
11 コラムシャフト(アシスト力可変型操舵装置)
12 ハンドル(アシスト力可変型操舵装置)
14FL,14FR,14RL,14RR 減衰力可変型制御サスペンション
15 ヨーレイトセンサ(ヨーレイト検出部)
16 加速度センサ(横加速度検出部)
17 操舵角センサ(操舵角検出部)
22 ARP制御部(横転防止制御部)
23 操舵入力判断部(横転予測部,切戻し検出部)
24 路面μ判断部(路面摩擦係数算出部)
26 微分器(操舵角速度検出部)
27 ARP挙動不安定判断部(車両挙動検出部)
29 ARP制御介入判断部(横転判断部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両横転防止制御装置および車両横転防止制御方法の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、操舵角と切増し方向の操舵角速度から車両の横転を判断し、旋回外輪に制動力を付与する車両横転防止制御装置がある。この技術に関係する一例が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−28918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来装置において、横転判断精度をさらに高めて欲しいとのニーズがある。
本発明の目的は、横転判断精度を高めることができる車両横転防止制御装置および車両横転防止制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、ドライバによる操舵の切増し時の操舵角速度に基づいて大きなロールの発生を予測する横転予測を実行し、横転予想成立後、操舵の切戻しが検出されたときに横転防止制御を実行する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、横転判断精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1の車両横転防止制御装置を適用した車両の構成図である。
【図2】実施例1のコントロールユニット10の横転防止制御に係る制御ブロック図である。
【図3】実施例1のARP制御判断の流れを示すフローチャートである。
【図4】操舵入力判断フラグのセット/リセット処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】横転が予測される操舵入力時の舵角信号を示すタイムチャートである。
【図6】ステップS103の舵角信号生成処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】横転が予測される操舵入力時(右転舵→左転舵→直進状態)の操舵入力判別用舵角速度信号を示すタイムチャートである。
【図8】横転が予測される操舵入力時(左転舵→右転舵→直進状態)の操舵入力判別用舵角速度信号を示すタイムチャートである。
【図9】ステップS104の操舵入力判断予備カウンタ1の算出処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】操舵入力時の操舵状態変数と操舵入力判断予備カウンタ1の変化を示すタイムチャートである。
【図11】ステップS105の操舵入力判断予備カウンタ2の算出処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】横転が予測される操舵入力時の操舵状態変数と操舵入力判断予備カウンタ2の変化を示すタイムチャートである。
【図13】ステップS106の操舵入力判断フラグセット処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】横転が予測される操舵入力時の操舵状態変数と操舵入力判断予備カウンタ3の変化を示すタイムチャートである。
【図15】ステップS107の操舵入力判断フラグリセット処理の流れを示すフローチャートである。
【図16】横転が予測される操舵入力後に車両が直進状態となった場合の操舵状態変数と操舵入力判断フラグリセットカウンタの変化を示すタイムチャートである。
【図17】横転が予測される操舵入力後に車両挙動安定状態となった場合の操舵状態変数と操舵入力判断フラグリセットカウンタの変化を示すタイムチャートである。
【図18】実施例1のARP制御実行判断の流れを示すフローチャートである。
【図19】ARP挙動不安定判断処理の流れを示すフローチャートである。
【図20】横転が予測される操舵入力時のARPカウンタの変化を示すタイムチャートである。
【図21】目標横加速度算出処理の流れを示すフローチャートである。
【図22】実施例1の目標ヨーレイト信号の生成方法および目標ヨーレイト信号とヨーレイト信号との差分最大値の算出方法を示すタイムチャートである。
【図23】実施例1の目標横加速度ゲインテーブルである。
【図24】実施例1の目標横加速度生値の算出方法を示すタイムチャートである。
【図25】目標減速度算出処理の流れを示すフローチャートである。
【図26】ARP制御の作動状態を示すタイムチャートである。
【図27】ARP制御中の目標車速と目標減速度の変化を示すタイムチャートである。
【図28】ARP制御介入判断処理の流れを示すフローチャートである。
【図29】ARP制御中のARP目標液圧(値)とARP制御信号の変化を示すタイムチャートである。
【図30】実施例1の横転防止制御作用を示すタイムチャートである。
【図31】実施例1の横転防止制御作用を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の車両横転防止制御装置および車両横転防止制御方法を実現するための形態を、図面に基づく実施例により説明する。
なお、以下に説明する実施例は多くのニーズに適用できるように検討されており、横転判断精度を高めることは検討されたニーズの1つである。以下の実施例では、不要な横転防止制御の介入を抑制できるとのニーズにも適用している。また、車両挙動を早期に安定化できるとのニーズにも適用している。
【実施例1】
【0009】
図1は、実施例1の車両横転防止制御装置を適用した車両の構成図である。
油圧コントロールユニット1は、各車輪2FL,2FR,2RL,2RRに設けられた各車輪速センサ3FL,3FR,3RL,3RRからの車輪速信号およびブレーキペダル4に設けられたブレーキペダルストロークセンサ5からのストローク信号に基づいて、各車輪2FL,2FR,2RL,2RRに設けられたディスクブレーキ6FL,6FR,6RL,6RRのホイルシリンダ圧を調整する。油圧コントロールユニット1としては、例えば、従来のアンチロックブレーキシステムの油圧コントロールユニットを適用できる。
この油圧コントロールユニット1は、後述する横転防止制御であるActive Rollover Prevention(ARP)制御時、コントロールユニット10からの指令に応じて、左右前輪2FL,2FRのホイルシリンダ圧を増圧する。油圧コントロールユニット1とディスクブレーキ6FL,6FR,6RL,6RRとにより、車両の各輪に制動力を与えるブレーキ装置が構成される。ブレーキ装置は、車両挙動を制御するために作動するアクチュエータである。
【0010】
電動パワーステアリングモータ7は、舵取り機構8のラック軸9にドライバの操舵力を補助する操舵アシスト力を出力する。電動パワーステアリングモータ7は、コントロールユニット10により制御される。コントロールユニット10は、通常制御時、コラムシャフト11に設けられた操舵トルクセンサ13からの操舵トルク信号と、油圧コントロールユニット1により算出された車速(車体速)とに基づいて、電動パワーステアリングモータ7を駆動する。
この電動パワーステアリングモータ7は、後述する初期ステアリング横転防止制御時、コントロールユニット10からの指令に応じて、切増し時の操舵アシスト力を通常制御時の操舵アシスト力よりも小さくする。ハンドル12と、コラムシャフト11と、舵取り機構8と、電動パワーステアリングモータ7とにより、操舵アシスト力を調整できるアシスト力可変型操舵装置が構成される。
【0011】
減衰力可変型制御サスペンション14FL,14FR,14RL,14RRは、車輪2FL,2FR,2RL,2RRを車体に懸架し、サスペンションの減衰力を調整する。減衰力可変型制御サスペンション14FL,14FR,14RL,14RRは、コントロールユニット10により制御される。コントロールユニット10は、通常制御時、ヨーレイトセンサ(ヨーレイト検出部)15からヨーレイト信号、加速度センサ(横加速度検出部)16からの前後加速度,横加速度信号等に基づいて、減衰力可変型制御サスペンション14FL,14FR,14RL,14RRを駆動する。この減衰力可変型制御サスペンション14FL,14FR,14RL,14RRは、後述する初期サスペンション横転防止制御時、コントロールユニット10からの指令に応じて、旋回外輪側のサスペンションの圧側減衰力を通常制御時よりも高減衰力に変更する。
【0012】
コントロールユニット10は、各センサ信号および油圧コントロールユニット1により算出された車速等に基づいて、車両が障害物回避等の急な操舵を行った際、横加速度の増加を抑制することでロールオーバが発生するのを防止する横転防止制御を実行する。また、コントロールユニット10は、横転防止制御よりも先に、車体のロール量を抑制する初期サスペンション横転防止制御と、ハンドル12の切増し量を抑制する初期ステアリング横転防止制御とを実行する。
また、コントロールユニット10は、上記横転防止制御とは独立して、車両のオーバーステア傾向またはアンダーステア傾向を抑制するVDC(Vehicle Dynamics Control)制御を実行する。このVDC制御では、操舵角センサ17およびブレーキペダルストロークセンサ5などの情報から得られるハンドル12の舵角およびブレーキペダルストロークにより目標横滑り量を演算し、ヨーレイトセンサ15、加速度センサ16および車輪速センサ3FL,3FR,3RL,3RRから得られる車両のヨーレイト、横加速度および各車輪速から演算した車両の横滑り量と比較する。コントロールユニット10は、目標横滑り量と車両の横滑り量との差に応じて油圧コントロールユニット1に駆動信号を出力し、各輪のホイルシリンダ圧を個々に増減および保持することにより、車両のヨーモーメントを制御する。これにより、車両をドライバの狙ったラインに近付けることができ、走行安定性の向上を図ることができる。
このVDC制御の許可/禁止は、ドライバのスイッチ操作により切り替え可能とする。
【0013】
図2は、実施例1のコントロールユニット10の横転防止制御に係る制御ブロック図であり、コントロールユニット10は、各センサ信号等に基づいて、ARP制御の可否を判断するARP制御判断部21と、ARP制御判断部21の判断結果に基づいて、油圧コントロールユニット1、減衰力可変型制御サスペンション14および電動パワーステアリングモータ7を駆動するARP制御部(横転防止制御部)22を備える。
ARP制御判断部21は、操舵入力判断部(横転予測部,切戻し検出部)23と、路面μ判断部(路面摩擦係数算出部)24と、ARP制御実行判断部25とを有する。
操舵入力判断部23は、操舵角センサ(操舵角検出部)17からの舵角(操舵角)信号および舵角信号を微分器(操舵角速度検出部)26により1階微分した舵角速度(操舵角速度)信号を用いて操舵入力の判断を行い、操舵入力状態に応じた操舵状態変数を出力する操舵入力判断処理を実施する。ここで、操舵とは、横転を予想するもので、ドライバがハンドル12を切増した後、操舵中立位置を超えてハンドル12を切り戻す操舵をいい、以下、操舵中立位置までの切戻しを1次切戻し、操舵中立位置を超えた切戻しを2次切戻しという。
【0014】
路面μ判断部24は、加速度センサ16からの前後加速度信号および横加速度信号から路面μ推定値(路面摩擦係数の推定値)を演算する。路面μ推定値をRM、前後加速度をXg、横加速度をYgとすると、RMは、下記の式を参照して算出できる。
RM = ( xg2 + yg2 )1/2
なお、上記路面μ推定方法は一例であって、他の方法を用いてもよい。
ARP制御実行判断部25は、操舵入力判断部23の判断結果と、路面μ推定値と、ヨーレイトセンサ15からのヨーレイト信号と、加速度センサ16からの横加速度信号とからARP制御を実行するか否かを判断するARP制御実行判断処理を実施するもので、ARP挙動不安定判断部(車両挙動検出部)27と、目標車速および目標減速度算出部28と、ARP制御介入判断部(横転判断部)29とを備える。
【0015】
ARP挙動不安定判断部27は、ヨーレイト信号、横加速度信号、舵角信号および操舵状態変数から車両挙動が不安定であるか判断するARP挙動不安定判断処理を実施する。
目標車速および目標減速度算出部28は、ヨーレイト信号および舵角信号から求めたヨーレイト信号、路面μ推定値から目標車速および目標減速度を算出する目標車速および目標減速度算出処理を実施する。
ARP制御介入判断部29は、目標減速度、路面μ推定値、操舵状態変数から制御介入判断を実施し、目標減速度から左右前輪2FL,2FRのホイルシリンダ圧の目標液圧(ARP目標液圧値)を算出するARP制御介入判断を実施する。
ARP制御部22では、ARP制御介入判断部29により算出されたARP目標液圧値が得られるように、油圧コントロールユニット1に対し指令を出力するARP制御を実施する。
【0016】
また、ARP制御部22は、操舵入力判断部23により操舵状態変数=1が出力された場合、ARP制御に先立ち、旋回外輪側のサスペンションの圧側減衰力を通常制御時よりも高減衰力とする初期サスペンション横転防止制御を実行する。
さらに、ARP制御部22は、ARP挙動不安定判断部27により車両挙動が不安定であると判定された(ARPカウンタに不安定判断閾値がセットされた)場合、ARP制御に先立ち、切増し時の操舵アシスト力が通常制御時のアシスト力よりも小さくなるように、電動パワーステアリングモータ7に対し指令を出力する初期ステアリング横転防止制御を実行する。
ARP制御判断部21では、図3に示すように、ステップS1で操舵入力判断部23により操舵入力判断処理を行い、ステップS2でARP制御実行判断部25によるARP制御実行判断処理を行う。
以下、操舵入力判断処理とARP制御実行判断処理の詳細について説明する。
【0017】
〔操舵入力判断処理〕
(操舵入力判断フラグのセット/リセット処理)
図4は、操舵入力判断フラグのセット/リセット処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。操舵入力判断フラグは、横転が予測される操舵入力であることを判定するためのフラグである。
ステップS101では、ARP制御の許可するARPスイッチ(不図示)がONされているか否かを判定する。YESの場合にはステップS102へ移行し、NOの場合にはステップS108へ移行する。ARPスイッチは、例えば、ハンドル12等、ドライバの手の届く位置に設けられ、ドライバによりON/OFF操作される。
ステップS102では、車速が10km/h以下であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS108へ移行し、NOの場合にはステップS103へ移行する。
ステップS103では、操舵入力判断に使用する舵角信号を生成する処理を実施し、ステップS104へ移行する。
【0018】
ステップS104では、操舵入力判断予備カウンタ1を算出し、ステップS105へ移行する。操舵入力予備カウンタ1は、図5の切増し状態を検出するためのカウンタである。
ステップS105では、操舵入力判断予備カウンタ2を算出し、ステップS106へ移行する。操舵入力判断予備カウンタ2は、図5の1次切戻しを検出するためのカウンタである。
ステップS106では、操舵入力判断フラグをセットする処理を実施し、ステップS107へ移行する。操舵入力判断フラグは、図5の2次切戻しを検出するためのフラグである。
ステップS107では、操舵入力判断フラグをリセットする処理を実施し、本制御を終了する。操舵入力判断フラグは、車両直進状態および車両安定状態の検出によりリセットする。
ステップS108では、操舵入力判断フラグをリセットすると共に、操舵状態変数をゼロとし、本制御を終了する。
【0019】
(舵角信号生成処理)
図6は、ステップS103の舵角信号生成処理であり、ステップS1031では、舵角符号と操舵入力判別用舵角速度信号を算出し、本制御を終了する。ここで、舵角符号は、右転舵を正、左転舵を負とし、舵角速度は、右転舵時の舵角速度を正、左転舵時の舵角速度を負とする。また、操舵入力判別用舵角速度信号は、
操舵入力判別用舵角速度信号=舵角符号×舵角速度
とする。
例えば、図7に示すように、ハンドル12を右転舵→左転舵→直進状態とした場合には、舵角符号は時点t1から時点t4まで正、時点t4以降は負となる。一方、舵角速度は、時点t1から時点t2までの切増し時は正、時点t2から時点t3までの保舵時はゼロ、時点t3から時点t5までの切戻し時は負となる。よって、操舵入力判別用舵角速度信号は、時点t1から時点t2まで正、時点t2から時点t3までゼロ、時点t3から時点t4まで負、時点t4から時点t5まで正となる。
【0020】
また、図8に示すように、ハンドル12を左転舵→右転舵→直進状態とした場合には、舵角符号は時点t1から時点t4まで負、時点t4以降は正となる。一方、舵角速度は、時点t1から時点t2までの切増し時は負、時点t2から時点t3までの保舵時はゼロ、時点t3から時点t5までの切戻し時は正となる。よって、操舵入力判別用舵角速度信号は、右転舵→左転舵→直進状態の場合と同様、時点t1から時点t2まで正、時点t2から時点t3までゼロ、時点t3から時点t4まで負、時点t4から時点t5まで正となる。つまり、操舵入力判断用舵角速度信号は、操舵方向にかかわらず、切増し時は正、保舵時はゼロ、切戻し時は負となる。
なお、実施例1において、各タイムチャートで用いる時点を示す符号(t1,t2,t3,…)は、同一フローチャート上で異なる時点を示すためのもので、各フローチャート間で同一の符号を付しているとしても、特に明示していない限り、それらは同一の時点を示すものではない。
【0021】
(操舵入力判断予備カウンタ1の算出処理)
図9は、ステップS104の操舵入力判断予備カウンタ1の算出処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS1041では、操舵状態変数がゼロ(リセット)であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1042へ移行し、NOの場合にはステップS1046へ移行する。
ステップS1042では、操舵入力判別用舵角速度が、操舵入力判別用舵角速度下限値1を下限とし、操舵入力判別用舵角速度上限値1を上限とする所定範囲内であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1043へ移行し、NOの場合にはステップS1046へ移行する。操舵入力判別用舵角速度下限値1は、回避操舵による切増しと判断できる舵角速度を設定する。操舵入力判別用舵角速度上限値1は、実際に起こり得る舵角速度の上限値を設定する。
ステップS1043では、操舵入力判断予備カウンタ1が所定値(操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値1)以上であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1044へ移行し、NOの場合にはステップS1045へ移行する。操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値1は、例えば、回避操舵による切増しと判断可能な時間を設定する。
ステップS1044では、操舵状態変数を1、操舵入力判断予備カウンタ1をゼロとし、本制御を終了する。
【0022】
図10は、操舵入力時の操舵状態変数と操舵入力判断予備カウンタ1の変化を示すタイムチャートであり、時点t1では操舵入力判別用舵角速度が操舵入力判別用舵角速度下限値1以上となったため、操舵入力判断予備カウンタ1のカウントアップを開始する。時点t2では操舵入力判断予備カウンタ1が操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値1以上となったため、操舵状態変数を1とし、操舵入力判断予備カウンタ1をリセットする。
(操舵入力判断予備カウンタ2の算出処理)
図11は、ステップS105の操舵入力判断予備カウンタ2の算出処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS1501では、操舵状態変数が1であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1502へ移行し、NOの場合にはステップS1510へ移行する。
【0023】
ステップS1502では、操舵入力判別用舵角速度が、操舵入力判別用舵角速度下限値2を下限とし、操舵入力判別用舵角速度上限値2を上限とする所定範囲内であり、かつ、路面μ推定値が所定値(操舵入力判別路面μ判断閾値)以上であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1503へ移行し、NOの場合にはステップS1506へ移行する。操舵入力判別用舵角速度下限値2は、回避操舵による切戻しと判断できる舵角速度を設定する。操舵入力判別用舵角速度上限値2は、実際に起こり得る舵角速度の上限値を設定する。操舵入力判別路面μ判断閾値は、高μを示す路面μを設定する。
ステップS1503では、操舵入力判断予備カウンタ2が所定値(操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値2)以上であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1054へ移行し、NOの場合にはステップS1055へ移行する。操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値2は、例えば、回避操舵による第1切戻しと判断可能な時間であって、通常走行で誤判断しない限り出来るだけ速く検出できる時間を設定する。
ステップS1504では、操舵状態変数を2とし、操舵入力判断予備カウンタ2をゼロとすると共に、舵角符号を記憶して本制御を終了する。
ステップS1505では、操舵入力判断予備カウンタ2をインクリメントし、本制御を終了する。
ステップS1506では、舵角符号をゼロとすると共に、操舵入力判断予備カウンタ2をゼロとし、ステップS1507へ移行する。
【0024】
ステップS1507では、操舵入力判断クリアカウンタ2が所定値(操舵入力判別用クリア条件閾値2)以上であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1508へ移行し、NOの場合にはステップS1509へ移行する。操舵入力判別用クリア条件閾値2は、切増し検出後に1次切戻しが検出されるまでの待機時間である。
ステップS1508では、操舵状態変数をゼロとし、本制御を終了する。すなわち、切増し検出後、待機時間(操舵入力判別用クリア条件閾値2)内に1次切戻しが検出されない場合、操舵入力ではないと判断し、誤判断防止のために操舵状態変数をゼロとする。
ステップS1509では、操舵入力判断クリアカウンタ2をインクリメントし、本制御を終了する。
ステップS1510では、操舵入力判断予備カウンタ2をゼロとすると共に、操舵入力判断クリアカウンタ2をゼロとし、本制御を終了する。
【0025】
図12は、横転が予測される操舵入力時の操舵状態変数と操舵入力判断予備カウンタ2の変化を示すタイムチャートであり、時点t1では操舵入力判別用舵角速度が操舵入力判別用舵角速度上限値2以下となり、かつ、路面μ推定値が操舵入力判別路面μ判断閾値以上であるため、操舵入力判断予備カウンタ2のカウントアップを開始する。時点t2では操舵入力判断予備カウンタ2が操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値2以上となったため、操舵状態変数を2とし、操舵入力判断予備カウンタ2をリセットする。
【0026】
(操舵入力判断フラグセット処理)
図13は、ステップS106の操舵入力判断フラグセット処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS1601では、操舵状態変数が2であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1602へ移行し、NOの場合にはステップS1613へ移行する。
ステップS1602では、操舵入力判別用舵角速度が、操舵入力判別用舵角速度下限値3を下限とし、操舵入力判別用舵角速度上限値3を上限とする所定範囲内であり、かつ、路面μ推定値が所定値(操舵入力判別路面μ判断閾値)以上であり、かつ、舵角符号の記憶値と現在値とが逆であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1603へ移行し、NOの場合にはステップ1607へ移行する。操舵入力判別用舵角速度下限値3は、回避操舵による切戻しと判断できる舵角速度を設定する。操舵入力判別用舵角速度上限値3は、実際に起こり得る舵角速度の上限値を設定する。操舵入力判別路面μ判断閾値は、高μを示す路面μを設定する。
【0027】
ステップS1603では、操舵入力判断クリアカウンタをゼロとし、ステップS1604へ移行する。
ステップS1604では、操舵入力予備カウンタ3が所定値(操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値3)以上であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1605へ移行し、NOの場合にはステップ1606へ移行する。操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値3は、例えば、回避操舵による第2切戻しと判断可能な時間を設定する。
ステップS1605では、操舵状態変数をゼロ、操舵入力判断フラグをセット、操舵入力予備カウンタ3をゼロとし、本制御を終了する。
ステップS1606では、操舵入力判断予備カウンタ3をインクリメントし、本制御を終了する。
ステップS1607では、操舵入力判断予備カウンタ3をゼロとし、ステップS1608へ移行する。
【0028】
ステップS1608では、操舵入力判断クリアカウンタが所定値(操舵入力判別用クリア条件閾値3)以上であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1609へ移行し、NOの場合にはステップS1610へ移行する。操舵入力判別用クリア条件閾値3は、1次切戻し後に2次切戻しが検出されるまでの待機時間である。
ステップS1609では、操舵入力判断予備カウンタ3をゼロ、操舵入力判断クリアカウンタをゼロ、操舵状態変数をゼロ、操舵入力判断フラグをリセットおよび舵角符号の記憶値をゼロとし、本制御を終了する。すなわち、待機時間(操舵入力判別用クリア条件閾値3)内に2次切戻しが検出されない場合、操舵入力ではないと判断し、誤判断防止のために操舵状態変数をゼロとする。
ステップS1610では、ARPカウンタがゼロであるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1611へ移行し、NOの場合にはステップS1612へ移行する。
ステップS1611では、操舵入力判断クリアカウンタをインクリメントし、本制御を終了する。
ステップS1612では、操舵入力判断予備カウンタ3をゼロ、操舵入力判断クリアカウンタをゼロ、操舵状態変数をゼロ、操舵入力判断フラグをリセットおよび舵角符号の記憶値をゼロとし、本制御を終了する。
【0029】
図14は、横転が予測される操舵入力時の操舵状態変数と操舵入力判断予備カウンタ3の変化を示すタイムチャートであり、時点t1では操舵入力判別用舵角速度が操舵入力判別用舵角速度下限値3以上、かつ、路面μ推定値が操舵入力判別路面μ判断閾値以上、かつ、舵角符号の記憶値(+)と現在値(-)が逆であるため、操舵入力判断予備カウンタ3のカウントアップを開始する。時点t2では操舵入力判断予備カウンタ3が操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値3以上となったため、操舵状態変数を3とし、操舵入力判断予備カウンタ3をリセットする。
【0030】
(操舵入力判断フラグリセット処理)
図15は、ステップS107の操舵入力判断フラグリセット処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS1701では、ARPカウンタがゼロであるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1072へ移行し、NOの場合にはステップS1073へ移行する。
ステップS1702では、操舵入力判断フラグリセットカウンタをゼロ、舵角符号の記憶値をゼロ、操舵状態変数をゼロ、操舵入力判断フラグをリセットし、本制御を終了する。
ステップS1073では、操舵状態変数が3であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1704へ移行し、NOの場合にはステップS1078へ移行する。
ステップS1074では、直進状態であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1075へ移行し、NOの場合にはS1077へ移行する。ここで、直進状態の判定は、下記4条件全ての成立時とするが、4つのいずれかまたは任意の複数を組み合わせて直進状態を判定してもよい。
・舵角信号が所定値(車両直進状態判断舵角閾値)以内
・ヨーレイト信号が所定値(車両直進状態判断ヨーレイト閾値)以内
・車輪速から求めたヨーレイトが所定値(車両直進状態判断ヨーレイト閾値)以内
・ヨーレイト信号と車輪速から求めたヨーレイトとの差分値が所定値(車両直進状態判断ヨーレイト差分値閾値1)以内
【0031】
ステップS1075では、操舵入力判断フラグリセットカウンタが所定値(操舵入力判断フラグリセット判断閾値)以上であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1072へ移行し、NOの場合にはステップS1077へ移行する。
ステップS1076では、車両挙動安定状態であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS1075へ移行し、NOの場合にはステップS1078へ移行する。ここで、車両挙動安定状態の判定は、下記3条件全ての成立時とするが、3つのいずれかまたは任意の複数を組み合わせて車両挙動安定状態を判定してもよい。
・ヨーレイト信号と舵角から求めたヨーレイトの差分値が所定値(車両直進状態判断ヨーレイト差分値閾値1)以内
・舵角から求めたヨーレイトと横加速度から求めたヨーレイトとの差分値が所定値(車両直進状態判断ヨーレイト差分値閾値1)以内
・ヨーレイト信号と横加速度から求めたヨーレイトとの差分値が所定値(車両直進状態判断ヨーレイト差分値閾値1)以内
ステップS1077では、操舵入力判断フラグリセットカウンタをインクリメントし、本制御を終了する。
ステップS1078では、操舵入力判断フラグリセットカウンタをゼロとし、本制御を終了する。
【0032】
図16は、横転が予測される操舵入力後に車両が直進状態となった場合の操舵状態変数と操舵入力判断フラグリセットカウンタの変化を示すタイムチャートであり、時点t1では、舵角信号が車両直進状態判断舵角閾値以内、かつ、ヨーレイト信号が車両直進状態判断ヨーレイト閾値以内、かつ、車輪速から求めたヨーレイトが車両直進状態判断ヨーレイト閾値以内、かつ、ヨーレイト信号と車輪速から求めたヨーレイトとの差分値が車両直進状態判断ヨーレイト差分値閾値1以内となったため、直進状態と判定し、操舵入力判断フラグリセットカウンタのカウントアップを開始する。時点t2では、操舵入力判断フラグリセットカウンタが操舵入力判断フラグリセット判断閾値以上となったため、操舵状態変数をゼロとし、操舵入力判断フラグをリセットする。
【0033】
図17は、横転が予測される操舵入力後に車両挙動安定状態となった場合の操舵状態変数と操舵入力判断フラグリセットカウンタの変化を示すタイムチャートであり、時点t1では、ヨーレイト信号と舵角から求めたヨーレイトの差分値が車両直進状態判断ヨーレイト差分値閾値1以内、かつ、舵角から求めたヨーレイトと横加速度から求めたヨーレイトとの差分値が車両直進状態判断ヨーレイト差分値閾値1以内、かつ、ヨーレイト信号と横加速度から求めたヨーレイトとの差分値が車両直進状態判断ヨーレイト差分値閾値1以内となったため、車両挙動安定状態と判定し、操舵入力判断フラグリセットカウンタのカウントアップを開始する。時点t2では、操舵入力判断フラグリセットカウンタが操舵入力判断フラグリセット判断閾値以上となったため、操舵状態変数をゼロとし、操舵入力判断フラグをリセットする。
【0034】
〔ARP制御実行判断処理〕
ARP制御実行判断部25によるARP制御実行判断処理は、図18に示すように、ステップS21でARP挙動不安定判断部27によりARP挙動不安定判断処理を行い、ステップS22で目標車速および目標減速度算出部28により目標車速および目標減速度算出処理を行い、ステップS23でARP制御介入判断部29によりARP制御介入判断処理を行うという流れとなる。以下、各処理について順に説明する。
【0035】
(ARP挙動不安定判断処理)
図19は、ARP挙動不安定判断処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS2101では、VDC制御が禁止状態であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2102へ移行し、NOの場合にはステップS2103へ移行する。なお、VDC制御の許可/禁止にかかわらず、ARP制御を実行する場合には、本ステップを省略し、ステップS2103から開始してもよい。
ステップS2102では、ARPカウンタをゼロとし、本制御を終了する。
ステップS2103では、操舵状態変数がゼロであるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2102へ移行し、NOの場合にはステップS2104へ移行する。
【0036】
ステップS2104では、車両挙動が不安定状態であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2105へ移行し、NOの場合にはステップS2106へ移行する。ここで、車両挙動の不安定状態は、下記5条件全ての成立時とするが、5つのいずれかまたは任意の複数を組み合わせて車両挙動の不安定状態を判定してもよい。
・横加速度の絶対値から算出されるヨーレイト信号にゲイン(1以上の値)をかけた信号とヨーレイト信号の絶対値とを比較し、ヨーレイト信号の絶対値の方が大きい
・ヨーレイト信号の符号と横加速度の符号とが同一
・操舵状態変数=1
・ヨーレイトを横加速度に換算した横加速度信号と横加速度信号との差分値の絶対値が所定値(ARPカウンタセット閾値1)以上
・舵角から横加速度へ換算した横加速度信号と横加速度信号の差分値の絶対値が所定値(ARPカウンタセット閾値2)以上
【0037】
ステップS2105では、ARPカウンタに値(不安定判断閾値)をセットし、本制御を終了する。
ステップS2106では、車両挙動が安定状態であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2107へ移行し、NOの場合には本制御を終了する。ここで、車両挙動の安定状態は、下記4条件全ての成立時とするが、4つのいずれかまたは任意の複数を組み合わせて車両挙動が安定状態であるか否かを判定してもよい。
・横加速度の絶対値から算出されるヨーレイト信号にゲイン(1以下の値)をかけた信号とヨーレイト信号の絶対値とを比較し、ヨーレイト信号の絶対値の方が小さい
・舵角信号の符号と横加速度信号の符号が同一
・ARPカウンタがゼロ以上の値
・操舵状態変数が2以上の値
ステップS2107では、ヨーレイト信号の絶対値が所定のヨーレイト閾値よりも小さいか否かを判定する。YESの場合にはステップS2109へ移行し、NOの場合にはステップS2108へ移行する。これは、車両挙動が安定している場合に制御を早期に終了するためである。
ステップS2108では、ARPカウンタをデクリメントし、本制御を終了する。
ステップS2109では、ARPカウンタから所定値を減算し、本制御を終了する。
【0038】
図20は、横転が予測される操舵入力時のARPカウンタの変化を示すタイムチャートである。
時点t1では、横加速度の絶対値から算出されるヨーレイト信号にゲイン(1以上の値)をかけた信号よりもヨーレイト信号の絶対値が大きく、かつ、ヨーレイト信号の符号と横加速度の符号とが同一、かつ、操舵状態変数=1、かつ、ヨーレイトを横加速度に換算した横加速度信号と横加速度信号との差分値の絶対値がARPカウンタセット閾値1以上、かつ、舵角から横加速度へ換算した横加速度信号と横加速度信号の差分値の絶対値がARPカウンタセット閾値2以上となったため、車両挙動が不安定状態と判定し、ARPカウンタを不安定判断閾値にセットする。
時点t2では、横加速度の絶対値から算出されるヨーレイト信号にゲイン(1以上の値)をかけた信号よりもヨーレイト信号の絶対値が小さく、かつ、舵角信号の符号と横加速度信号の符号が同一、かつ、ARPカウンタがゼロ以上、かつ、操舵状態変数が2以上の値となったため、車両挙動が安定状態とし、ARPカウンタの減算を開始する。
【0039】
(目標車速および目標減速度算出処理)
図21は、目標横加速度算出処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS2201では、目標横加速度ゲインおよび目標横加速度生値を算出し、ステップS2202へ移行する。なお、実施例1の「生値」とは、演算後、デジタル処理やフィルタ処理を施す前のアナログ値を示す。
目標横加速度ゲインは、目標ヨーレイト信号とヨーレイト信号との差分最大値の絶対値(以下、絶対値を省略し、単に差分最大値と記載する。)から、あらかじめ差分最大値に対応した目標横加速度ゲインを複数定めておき、それらを横軸に差分最大値、縦軸に目標横加速度ゲインをとったテーブルにプロットし、各点間を直線補間して生成した目標横加速度ゲインテーブルを参照して算出する。
【0040】
実施例1の目標ヨーレイト信号は、横加速度信号から求めたヨーレイト信号と舵角から求めたヨーレイト信号とを合成して算出する(図22(a))。横転が予測される操舵入力時の目標ヨーレイト信号とヨーレイト信号は、図22(b)のような波形を示し、その差分最大値は、図22(c)のような波形となる。
図23は、目標横加速度ゲインテーブルであり、横軸に最大差分値、縦軸に目標横加速度ゲインをとり、上述したように、あらかじめ定められた複数(5つ)の点をプロットし、各点間を直線補間したものである。この目標横加速度ゲインテーブルでは、目標ヨーレイト信号とヨーレイト信号の差分最大値が大きいほど、目標横加速度ゲインが小さくなる特性としている。
【0041】
また、ステップS2201において、目標横加速度生値は、路面μ推定値に目標横加速度ゲインを乗算して算出する。
目標横加速度生値=路面μ推定値×目標横加速度ゲイン
これにより、目標ヨーレイト信号とヨーレイト信号の差分最大値が図24(a)のとき、目標横加速度生値は、図24(b)となる。
【0042】
ステップS2202では、ARPカウンタがゼロであるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2203へ移行し、NOの場合にはステップS2204へ移行する。
ステップS2203では、路面μ推定値を目標横加速度とし、本制御を終了する。
目標横加速度=路面μ推定値
ステップS2204では、ARP制御中であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2205へ移行し、NOの場合にはステップS2206へ移行する。
ステップS2205では、目標横加速度生値と10ms前(1制御周期前)の目標横加速度とのセレクトローにより目標横加速度1を決定し、目標横加速度1に目標横加速度上限値と目標横加速度下限値とでリミッタ処理を行った値を目標横加速度とし、本制御を終了する。
ここで、目標横加速度上限値は、2次側の制御時に減速度および横加速度が大きくなると目標横加速度が過大となるのを防止するためのものである。また、目標横加速度下限値は、目標横加速度が過小となるのを防止するためのものである。
ステップS2206では、目標横加速度生値に目標横加速度上限値と目標横加速度下限値とでリミッタ処理を行った値を目標横加速度とし、本制御を終了する。
【0043】
次に、上記手順で求めた目標横加速度を目標車速生値算出ヨーレイトで除することで、目標車速生値を算出する。
目標車速生値=目標横加速度/目標車速生値算出ヨーレイト
なお、目標車速生値算出ヨーレイトは、ヨーレイト信号の絶対値と舵角から求めたヨーレイト信号の絶対値とのセレクトハイにより決定する。
すなわち、目標車速生値は、舵角から想定される車両挙動と実際の車両挙動とから設定する。
【0044】
次に、目標減速度の算出方法を説明する。
図25は、目標減速度算出処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS2211では、目標車速生値算出ヨーレイトを算出し、ステップS2212へ移行する。目標車速生値算出ヨーレイトは、上述したように、ヨーレイト信号の絶対値と舵角から求めたヨーレイト信号の絶対値とのセレクトハイにより決定する。
ステップS2212では、下記3条件全ての成立時か否かを判定する。YESの場合はステップS2213へ移行し、NOの場合にはステップS2218へ移行する。
・目標車速生値算出ヨーレイトが所定値(目標車速生値算出ヨーレイト閾値)以上
・車速が所定値以上(横転が発生することがない程度の車速)
・ARPカウンタがゼロよりも大きい
【0045】
ステップS2213では、目標車速生値を算出し、ステップS2214へ移行する。目標車速生値は、目標横加速度を目標車速生値算出ヨーレイトで除した値と、目標車速上限値255km/hとのセレクトローにより決定する。
ステップS2214では、目標車速生値と目標車速との差が所定値1(目標車速増加勾配)以上であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2215へ移行し、NOの場合にはステップS2217へ移行する。
【0046】
ステップS2215では、目標車速生値に所定値1(目標車速増加勾配)を加えた値を目標車速とし、ステップS2216へ移行する。
目標車速=目標車速生値+所定値1
ステップS2216では、目標減速度を算出し、本制御を終了する。目標減速度は、車輪速から算出した推定車体速から目標車速を減算して目標減速度算出車速差を算出し、目標減速度算出車速差を減速させる時間(目標減速度算出車速差を何秒で減速させるかという時間)で除した値と、目標減速度上限値とのセレクトローにより決定する。
ステップS2217では、目標車速生値を目標車速とし、ステップS2216へ移行する。
ステップS2218では、目標車速上限値、例えば255km/hを目標車速とし、ステップS2216へ移行する。
【0047】
実施例1のARP制御(前輪ホイルシリンダ圧の増圧制御)では、目標液圧がマスタシリンダ圧以上となった場合にONし、目標液圧がマスタシリンダ圧よりも小さくなった時点でOFFする(詳細については後述する。)。したがって、図26に示すように、時点t1でARP制御ONを示すARP制御信号をセットしてから時点t5で推定車体速と目標車速とが一致し、その後、図29に示すARP目標液圧が0になるタイミング(図29のt10)までの間、ARP制御信号はセットした状態を維持するため、ARP制御は継続したままである。
【0048】
図27は、ARP制御中の目標車速と目標減速度の変化を示すタイムチャートである。
時点t1では、目標車速生値算出ヨーレイトが目標車速生値算出ヨーレイト閾値以上、かつ、車速が所定値以上、かつ、ARPカウンタがゼロよりも大きいため、目標車速および目標減速度の算出を開始し、時点t7でARPカウンタがゼロとなるまでの間、目標減速度に応じて前輪2FL,2FRのホイルシリンダ圧を増減圧する。
ここで、目標車速の増加側(時点t2から時点t3の区間,時点t4から時点t5の区間,時点t6から時点t7の区間)では、目標車速の増加に対し目標車速増加勾配によるリミッタ処理を行っている。よって、目標車速の増加側では、目標横加速度と目標車速生値算出ヨーレイトとから算出する目標車速生値に対して目標車速に遅れが生じている。
【0049】
(ARP制御介入判断処理)
図28は、ARP制御介入判断処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS2301では、下記の3条件全ての成立時であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2032へ移行し、NOの場合にはステップS2311へ移行する。
・路面μ推定値が所定値(操舵入力判別路面μ判断閾値)以上
・目標減速度が減速側
・操舵状態変数が2以上
ステップS2302では、ARP目標液圧生値およびARP目標液圧変化量を算出し、ステップS2303へ移行する。
ARP目標液圧生値は、ブレーキ係数と目標減速度との乗算値と、目標液圧上限値とのセレクトローにより決定する。
また、ARP目標液圧変化量は、ARP目標液圧生値からARP目標液圧を減算した値とする。
【0050】
ステップS2303では、ARP目標液圧変化量が第1の所定量以上、すなわち、ARP目標液圧が増加側であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2304へ移行し、NOの場合にはステップS2308へ移行する。
ステップS2304では、1制御周期前のARP目標液圧値に第1の所定量を加えた値をARP目標液圧値とし、ステップS2305へ移行する。
【0051】
ステップS2305では、ARP目標液圧値にオフセット値を加算した値が推定マスタシリンダ圧よりも小さいか否かを判定する。YESの場合にはステップS2306へ移行し、NOの場合にはステップS2307へ移行する。なお、推定マスタシリンダ圧は、ブレーキペダルストロークセンサ5からのストローク信号に基づいて推定してもよい。
ステップS2306では、ARP制御をOFFし、本制御を終了する。
ステップS2307では、ARP制御をONし、本制御を終了する。
ステップS2308では、ARP目標液圧変化量が第2の所定量以下、すなわち、ARP目標液圧が減少側であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2309へ移行し、NOの場合にはステップS2310へ移行する。
【0052】
ステップS2309では、1制御周期前のARP目標液圧値から第2の所定量を減じた値をARP目標液圧値とし、ステップS2305へ移行する。
ステップS2310では、ARP目標液圧生値にARP目標液圧変化量を加えた値をARP目標液圧値とし、ステップS2305へ移行する。
ステップS2311では、ARP制御がONであるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2312へ移行し、NOの場合にはステップS2315へ移行する。
ステップS2312では、1制御周期前のARP目標液圧値から第2の所定量を減じた値と、ゼロとのセレクトハイによりARP目標液圧値を決定し、ステップS2313へ移行する。
ステップS2313では、ARP目標液圧値が推定マスタシリンダ圧以下であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2314へ移行し、NOの場合には本制御を終了する。
ステップS2314では、ARP制御をOFFし、本制御を終了する。
ステップS2315では、ARP目標液圧値をゼロとし、本制御を終了する。
【0053】
図29は、ARP制御中のARP目標液圧(値)とARP制御信号の変化を示すタイムチャートである。
時点t1では、目標車速生値算出ヨーレイトが目標車速生値算出ヨーレイト閾値以上、かつ、車速が所定値以上、かつ、ARPカウンタがゼロよりも大きいため、目標減速度の算出が開始される。時点t2では、ARP制御がONとなる。
時点t2から時点t3までの区間では、ARP目標車速生値とARP目標液圧値との差であるARP目標液圧変化量が第1の所定量以上であるため、ARP目標液圧値は、第1の所定量によって増加率を制限されながら徐々に増加する。
時点t3では、ARP目標液圧変化量が第1の所定量よりも小さく、かつ、第2の所定量よりも大きくなるため、時点t3から時点t4までの区間では、ARP目標液圧値は、ARP目標液圧生値に追従しながら徐々に減少する。
【0054】
時点t4から時点t5までの区間では、目標減速度が減速側であり、次の時点t5から時点t6までの区間では、ARP目標液圧変化量が第1の所定量よりも小さく、かつ、第2の所定量よりも大きいため、ARP目標液圧値は、ARP目標液圧生値に追従して変化する。
時点t6から時点t7までの区間では、ARP目標液圧変化量が第1の所定量以上であるため、ARP目標液圧値は、第1の所定量によって増加率を制限されながら徐々に増加する。時点t7から時点t8までの区間では、ARP目標液圧変化量が第2の所定量以下であるため、ARP目標液圧値は、第2の所定量によって減少率を制限されながら徐々に減少する。
時点t8では、1制御周期前の目標液圧値から第2の所定量を減じた値がゼロよりも小さいため、ARP目標液圧値は、第2の所定量によって減少率を制限されながら徐々に減少する。
時点t9では、ARP目標液圧生値がゼロとなってその後ARP目標液圧が制限されながらゼロになる時点t10でARP制御信号はOFFされる。
【0055】
〔初期サスペンション横転防止制御〕
ARP制御部22は、操舵入力判断部23が操舵状態変数=1を出力した場合、旋回外輪側のサスペンションの圧側減衰力を高減衰力に変更する初期サスペンション横転防止制御を実行する。この初期サスペンション横転防止制御は、操舵入力判断部23により操舵入力判断フラグがリセットされるまで継続する。
【0056】
〔初期ステアリング横転防止制御〕
ARP制御部22は、ARP挙動不安定判断部27がARPフラグをセットした場合、操舵アシスト力を通常アシスト力よりも小さくする初期ステアリング横転防止制御を実行する。この初期ステアリング横転防止制御は、初期サスペンション横転防止制御同様、操舵入力判断部23により操舵入力判断フラグがリセットされるまで継続する。
【0057】
次に、作用を説明する。
図30は、実施例1の横転防止制御作用を示すタイムチャートである。
時点t1では、ドライバが障害物回避のために切増しを開始する。
時点t2では、舵角符号と舵角速度から求めた操舵入力判別用舵角速度が操舵入力判別用舵角速度下限値1以上である状態が、操舵入力判断予備カウンタ1が操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値1以上となるまで継続したため、操舵入力判断部23では、操舵状態変数=1を出力する。すなわち、操舵状態(操舵パターン)を示す舵角および舵角速度に基づいて、車両に対し所定のロールが発生することを予測する(横転予測)。
ここで、舵角速度が設定された速度(操舵入力判別用舵角速度下限値1)以上の場合に横転予測を行っているため、横転を伴う可能性のある所定のロールの発生の予測精度を高めることができる。また、横転予測はドライバによる操舵開始から所定時間経過後(操舵入力判断予備カウンタ1≧操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値1)に開始するため、センサノイズ等による誤判断を防止でき、予測精度をより高めることができる。
また、ARP制御部22では、操舵状態変数=1の出力に応じて、旋回外輪側のサスペンションの圧側減衰力を高減衰力に変更する初期サスペンション横転防止制御を開始する。このため、旋回時のロール剛性を高めることができ、車体の姿勢変化、すなわちロール量を抑制できると共に、車両挙動を安定させることができる。
【0058】
時点t3では、ドライバが舵角を一定に保持する。
時点t4では、横加速度の絶対値から算出されるヨーレイト信号にゲインをかけた信号よりもヨーレイト信号の絶対値が大きく、かつ、ヨーレイト信号の符号と横加速度の符号とが同一、かつ、操舵状態変数=1、かつ、ヨーレイトを横加速度に換算した横加速度信号と横加速度信号との差分値の絶対値がARPカウンタセット閾値1以上、かつ、舵角から横加速度へ変換した横加速度信号と横加速度信号の差分値の絶対値がARPカウンタセット閾値2以上となったため、ARP挙動不安定判断部27では、車両挙動が不安定状態であると判定し、ARPカウンタに不安定判断閾値をセットする。ARPカウンタに不安定判断閾値がセットされることで、目標車速および目標減速度算出部28では、目標車速および目標減速度の算出を開始する。
【0059】
また、時点t4において、ARP挙動不安定判断部27では、ARPカウンタに応じて操舵アシスト力を通常アシスト力よりも小さくする初期ステアリング横転防止制御を開始する。すなわち、車両挙動が不安定となった場合には、ハンドル12を切りにくくしてハンドル12の切増し量を抑えることで、切戻し時の車両挙動がより不安定となるのを抑制することができる。
時点t5では、ドライバが切戻しを開始する。
時点t6では、操舵入力判別用舵角速度が操舵入力判別用舵角速度上限値2以下である状態が、操舵入力判断予備カウンタ2が操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値2以上となるまで継続したため、操舵入力判断部23では、操舵状態変数=2を出力する。これにより、目標減速度が減速側、かつ、操舵状態変数が2以上となるため、ARP制御介入判断部29では、車両が横転すると判断(横転判断)してARP制御をONし、目標減速度に応じて左右前輪2FL,2FRに制動力を付与する横転防止制御を開始する。
すなわち、実施例1の横転防止制御では、横転予測後、所定の車両挙動(車両不安定状態)検出中に操舵の切戻しが検出されたときに横転判断を行い、横転判断成立時に横転防止制御を行う。このため、横転予測直後に制動力の付与による横転防止制御を実施する従来の横転防止制御に対し、横転判断精度が高く、不要な横転防止制御の介入に伴う過大な制動力の発生を抑制できる。
【0060】
また、実施例1の横転防止制御では、左右前輪2FL,2FRに対して制動力を付与しているため、旋回外輪に制動力を付与する従来の横転防止制御に対し、車速をより速く低下させることができ、車両挙動の早期安定化を図ることができる。
ARP制御介入判断部29は、操舵入力判断部23が操舵状態変数=2を出力したとき、路面μ推定値が操舵入力判別路面μ判断閾値よりも小さい場合には、目標減速度が減速側であってもARP制御をOFFのままとする。ここで、横転が予測される操舵入力による車両の横転は、車両の旋回時、タイヤのグリップ限界よりも先に車両の横転限界に至ることに起因している。
つまり、走行路面が低μ路である場合には、タイヤのグリップ限界が小さいため、タイヤのグリップ限界よりも先に車両の横転限界に至ることは稀であり、横転が予測される操舵入力による車両の横転は発生しにくい。そこで、路面μが所定値以上となる高μ路走行中に横転防止制御を実施し、低μ路走行中には横転防止制御を実施しないことにより、横転判断精度を高めることができる。
【0061】
時点t7では、操舵入力判別用舵角速度が操舵入力判別用舵角速度下限値3以上、かつ、路面μ推定値が操舵入力判別路面μ判断閾値以上、かつ、舵角符号の記憶値(+)と現在値(-)が逆である状態が、操舵入力判断予備カウンタ3が操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値3以上となるまで継続したため、操舵入力判断部23では、操舵状態変数=3を出力する。
ここで、実施例1では、操舵状態変数=1となってから操舵入力判断クリアカウンタ2が操舵入力判別用クリア条件閾値2以上となるまでの間に、操舵入力判断予備カウンタ2が操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値2以上とならない場合、操舵入力判断部23は、操舵状態変数=0を出力する。同様に、操舵状態変数=2となってから操舵入力判断クリアカウンタが操舵入力判別用クリア条件閾値3以上となるまでの間に、操舵入力判断予備カウンタ3が操舵入力判別用舵角速度状態変数判断閾値3以上とならない場合、操舵入力判断部23は、操舵状態変数=0を出力する。すなわち、所定のロールの発生が予測されてから所定時間経過後に操舵の切戻しを行わない場合、横転予測をキャンセルするため、横転が予測される操舵入力ではない場合に横転予測を継続することに伴う横転の誤判断を抑制できる。
時点t8では、ドライバが舵角を一定に保持する。
時点t9では、車両挙動が安定状態となったため、ARP挙動不安定判断部27では、ARPカウンタの減少を開始する。
時点t10では、ARPカウンタがゼロとなったため、操舵入力判断部23では、操舵状態変数=0を出力し、操舵入力判断フラグをリセットする。これにより、横転防止制御、初期サスペンション横転防止制御および初期ステアリング横転防止制御を終了する。
なお、本実施例においては、サスペンション制御、ステアリング制御、ブレーキ制御を協調するようにしたが、ブレーキ制御のみでも横転防止制御は実現可能である。この場合、前述したVDC制御ユニットを搭載している車両であれば、ソフト追加のみで対応可能であり、コストアップを抑制できる。
【0062】
図31は、実施例1のARP(横転防止)制御作用を示すイメージ図である。ここでは、説明の簡単のため、初期サスペンション横転防止制御および初期ステアリング横転防止制御は考慮しないこととする。
(ヨーモーメント制御領域)
状態aでは、ドライバが障害物回避のためにハンドル12を右方向に素早く切り増すことにより、車両のオーバーステア傾向が強まったため、VDC制御を開始する。VDC制御では、目標横滑り角に応じて左側車輪に制動力を付与することで、車両回転方向と反対方向にヨーモーメントを発生させる。
このとき、ARP(横転防止)制御では、舵角速度に基づいて横転予測を行うものの、左右前輪に制動力を付与することはない。ハンドル12の切増しのみで横転判断を行い、左右前輪に制動力を付与した場合、その後ドライバが切戻し操舵を行わなかった場合、車両に不要な制動力が発生するからである。
【0063】
(ヨーモーメント制御+減速制御領域)
状態bでは、ドライバがハンドル12を素早く切り戻したため、ARP制御では、操舵パターンから横転判断し、目標減速度に応じて左右前輪に制動力(左右均等)を付与する減速制御を開始する。このとき、VDC制御では、車両回転方向と反対方向にヨーモーメントを発生させるべく、左前輪に制動力を付与する。よって、左前輪に付与される制動力は、右前輪に付与される制動力よりも大きくなる。つまり、横転判断した場合、VDCによるヨーモーメント制御と、ARPによる減速制御とを同時に行う。
状態c,dでは、ドライバの操舵切り返しにより車両回転方向が状態bとは反対方向となるため、VDC制御では、目標滑り角に応じて右前輪に制動力を付与する。このとき、ARP制御では、左右前輪に均等な制動力を付与するため、左前輪に付与される制動力は、右前輪に付与される制動力よりも大きくなる。
【0064】
(減速制御領域)
状態eでは、車両のオーバーステア傾向が弱まり、車両が安定状態となったため、VDC制御による制動力の付与を終了する。このとき、ARP制御では、左右前輪に付与する制動力を徐々に小さくしていく。
状態fでは、ARP制御を終了し、状態gでは、車両が減速している。
VDC制御では、左右片側1輪または2輪に制動力を付与することにより、車両の横滑り量を抑制できるが、VDC制御は、走行の継続を前提とし、車両の旋回軌道をドライバの狙ったラインに近付けることを目的としたヨーモーメント制御であり、車両を積極的に減速させるものではない。また、車両に発生したヨーレイトおよび横加速度に基づいて目標横滑り量を決めているため、急操舵時のような車両回転方向が急変する車両挙動変化には対応できず、横転の発生を抑制できない。
これに対し、実施例1のARP制御は、横転判断した場合、車両の左右前輪に対して制動力を付与することにより、車両回転方向が急変する急操舵時であっても、車両を積極的に減速させることで、車両挙動の早期安定化を図ることができる。
また、ARP制御では、横転判断をドライバの操舵パターンに基づいて行うため、車両に発生したヨーレイトや横加速度等に基づいて横転判断を行うVDC制御の場合と比較して、横転の発生を効果的に抑制できる。
さらに、実施例1のように、ARP制御をVDC制御と併用することにより、車両のオーバーステア傾向を抑制するヨーモーメントを発生させつつ、車両を減速させることができるため、車両挙動の早期安定化を図ることができる。
【0065】
次に、効果を説明する。
実施例1の車両横転防止制御装置では、以下に列挙する効果を奏する。
【0066】
(1) 車両挙動を制御するために作動するブレーキ装置と、ドライバの操舵に基づいて車両に対し所定のロールが発生することを予測すると共に、ドライバによる操舵の切戻しを検出する操舵入力判断部23と、操舵の切戻しが検出されたときに横転判断を行うARP制御介入判断部29と、操舵入力判断部23により所定のロールが発生すると予測され、かつ、ARP制御介入判断部29により横転判断された場合、アクチュエータであるブレーキ装置を制御し横転防止制御を行うARP制御部22と、を備えた。これにより、横転判断精度を高めることができる。また、不要な横転防止制御の介入を抑制できる。
(2) ドライバによる操舵の切増し時の操舵角速度を検出する操舵角速度検出部として、操舵角センサ17の後段に微分器26を設け、操舵入力判断部23は、微分器26により検出された舵角速度が設定された速度よりも高い場合に横転予測を行う。これにより、横転を伴う可能性のある所定のロールの発生の予測精度を高めることができる。
【0067】
(3) 操舵入力判断部23は、ドライバによる操舵開始から所定時間経過後に横転予測を開始するため、センサノイズ等による誤判断を防止でき、予測精度をより高めることができる。
(4) ARP制御介入判断部29は、操舵入力判断部23により所定のロールの発生が予測されてから所定時間経過後に操舵の切戻しを検出しない場合は横転予測をキャンセルするため、横転が予測される操舵入力ではない場合に横転予測を継続することに伴う横転の誤判断を抑制できる。
【0068】
(5) ARP制御部22は、横転防止制御時、車両の左右前輪2FL,2FRに対して制動力を付与するため、車速を素早く低下させて車両挙動の早期に安定させ、横転の発生を抑制できる。
(6) 路面μ推定値を算出する路面μ判断部24を備え、ARP制御部22は、路面μ判断部24により算出された路面μ推定値が所定値以上のときに横転防止制御を実施し、所定値未満の場合は横転防止制御を実施しない。すなわち、横転が発生しやすい高μ路走行時には横転防止制御を実施し、横転が発生しにくい低μ路走行時には横転防止制御の実施を禁止することで、横転判断精度を高めることができる。
【0069】
(7) 減衰力可変型制御サスペンション14FL,14FR,14RL,14RRを備え、ARP制御部22は、操舵入力判断部23により所定のロールが発生すると予測された場合、旋回外輪側サスペンションの圧側減衰力を高減衰力に変更する初期サスペンション横転防止制御を行う。これにより、切戻し前にロール量を抑制でき、切戻し時における車両の横転を抑制できる。また、サスペンション制御は車両の減速度ほとんど影響を及ぼさないため、ドライバに違和感を与えにくい。
(8) 操舵アシスト力を調整できるアシスト力可変型操舵装置を備え、ARP制御部22は、操舵入力判断部23により所定のロールが発生すると予測された場合、切増し側の操舵アシスト力を現在よりも小さく変更する初期ステアリング横転防止制御を行う。これにより、ハンドル12の切増し量を抑えることができ、切戻し時における車両の横転を抑制できる。また、アシスト力の制御は車両の減速度ほとんど影響を及ぼさないため、ドライバに違和感を与えにくい。
【0070】
(9) 車両挙動を制御するためのブレーキ装置と、ドライバによる操舵の切増し時の舵角速度を検出する微分器26と、舵角を検出する操舵角センサ17と、車両に発生するヨーレイトを検出するヨーレイトセンサ15と、車両に発生する横加速度を検出する加速度センサ16と、少なくとも微分器26からの信号と操舵角センサ17からの信号とに基づいて車両のロールの発生を予測する操舵入力判断部23と、少なくともヨーレイトセンサ15および加速度センサ16からの情報により車両挙動を検出するARP挙動不安定判断部27と、ARP挙動不安定判断部27による所定の車両挙動検出中に操舵の切戻しが検出されたときに横転判断を行うARP制御介入判断部29と、ARP制御介入判断部29によって横転判断された場合、ブレーキ装置を制御し横転防止制御を行うARP制御部22と、を備えた。すなわち、舵角速度と舵角に基づいて横転の可能性を予測し、その後車両挙動が不安定状態である場合、ハンドル12が切り戻されたときに横転防止制御を行うため、横転判断精度を高め、不要な横転防止制御の介入を抑制できる。
【0071】
(10) 減衰力可変型制御サスペンション14FL,14FR,14RL,14RRと、操舵アシスト力を調整できるアシスト力可変型操舵装置と、を備え、ARP制御部22は、操舵入力判断部23により所定のロールが発生すると予測された場合、旋回外輪側サスペンションの圧側減衰力を高減衰力に変更する初期サスペンション横転防止制御を行うと共に、切増し側の操舵アシスト力を現在よりも小さく変更する初期ステアリング横転防止制御を行う。これにより、ハンドル12の切増し量および車体のロール量を抑制でき、切戻し時における車両の横転を抑制できる。また、サスペンション制御およびステアリング制御は、車両の減速度にほとんど影響を及ぼさないため、ドライバに違和感を与えにくい。
(11) ドライバによる操舵の切増し時の操舵角速度に基づいて大きなロールの発生を予測する横転予測を実行し、横転予測成立後、操舵の切戻しが検出されたときに横転防止制御を実行する。これにより、横転判断精度を高め、不要な横転防止制御の介入を抑制できる。
【0072】
(12) 横転予測成立後であって横転防止制御の前にサスペンションの可変制御または操舵アシスト可変制御の少なくとも一方を実行するため、横転判断する前の段階で車両挙動を安定させることができ、切戻し時における車両の横転を抑制できる。
(13) 車両挙動を制御するために作動するブレーキ装置と、ドライバの操舵パターンに基づいて車両に対し所定のロールが発生することを予測すると共に、ドライバの操舵パターンとして切戻しを検出する操舵入力判断部23と、操舵入力判断部23により切戻しが検出された場合、ブレーキ装置を車両の左右前輪に対して制動力を発生させるように制御するARP制御部22と、を備えた。これにより、横転判断精度を高めることができる。また、不要な横転防止制御の介入を抑制できる。
【0073】
〔他の実施例〕
以上、本発明を実施するための形態を、実施例に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成は実施例に限定されるものではない。
例えば、前輪をインホイールモータ等の電動モータで駆動する車両では、車両挙動を制御するために作動するアクチュエータとして、電動モータの回生ブレーキを用いてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 油圧コントロールユニット(ブレーキ装置)
2FL 左前輪
2FR 右前輪
2RL 左後輪
2RR 右後輪
6FL,6FR,6RL,6RR ディスクブレーキ(ブレーキ装置)
7 電動パワーステアリングモータ(アシスト力可変型操舵装置)
8 舵取り機構(アシスト力可変型操舵装置)
11 コラムシャフト(アシスト力可変型操舵装置)
12 ハンドル(アシスト力可変型操舵装置)
14FL,14FR,14RL,14RR 減衰力可変型制御サスペンション
15 ヨーレイトセンサ(ヨーレイト検出部)
16 加速度センサ(横加速度検出部)
17 操舵角センサ(操舵角検出部)
22 ARP制御部(横転防止制御部)
23 操舵入力判断部(横転予測部,切戻し検出部)
24 路面μ判断部(路面摩擦係数算出部)
26 微分器(操舵角速度検出部)
27 ARP挙動不安定判断部(車両挙動検出部)
29 ARP制御介入判断部(横転判断部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両挙動を制御するために作動するアクチュエータと、
ドライバの操舵に基づいて車両に対し所定のロールが発生することを予測する横転予測部と、
ドライバによる操舵の切戻しを検出する切戻し検出部と、
前記切戻し検出部により操舵の切戻しが検出されたときに横転判断を行う横転判断部と、
前記横転予測部により所定のロールが発生すると予測され、かつ、前記横転判断部により横転判断された場合、前記アクチュエータを制御し横転防止制御を行う横転防止制御部と、
を備えたことを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両横転防止制御装置において、
ドライバによる操舵の切増し時の操舵角速度を検出する操舵角速度検出部を備え、
前記横転予測部は、前記操舵角速度検出部により検出された操舵角速度が設定された速度よりも高い場合に横転予測を行うことを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両横転防止制御装置において、
前記横転予測部は、ドライバによる操舵開始から所定時間経過後に横転予測を開始することを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項4】
請求項2に記載の車両横転防止制御装置において、
前記横転判断部は、前記横転予測部により所定のロールの発生が予測されてから所定時間経過後に操舵の切戻しを検出しない場合は横転予測をキャンセルすることを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両横転防止制御装置において、
前記アクチュエータは、車両の各輪に制動力を与えるブレーキ装置であり、
前記横転防止制御部は、横転防止制御時、車両の左右前輪に対して制動力を付与することを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両横転防止制御装置において、
走行路面の路面摩擦係数を算出する路面摩擦係数算出部を備え、
前記横転防止制御部は、前記路面摩擦係数算出部により算出された路面摩擦係数が所定値以上のときに横転防止制御を実施し、所定値未満の場合は横転防止制御を実施しないことを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載の車両横転防止制御装置において、
減衰力可変型制御サスペンションを備え、
前記横転防止制御部は、前記横転予測部により所定のロールが発生すると予測された場合、旋回外輪側サスペンションの圧側減衰力を高減衰力に変更する初期サスペンション横転防止制御を行うことを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項8】
請求項1に記載の車両横転防止制御装置において、
操舵アシスト力を調整できるアシスト力可変型操舵装置を備え、
前記横転防止制御部は、前記横転予測部により所定のロールが発生すると予測された場合、切増し側の操舵アシスト力を現在よりも小さく変更する初期ステアリング横転防止制御を行うことを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項9】
車両挙動を制御するためのアクチュエータと、
ドライバによる操舵の切増し時の操舵角速度を検出する操舵角速度検出部と、
操舵角を検出する操舵角検出部と、
車両に発生するヨーレイトを検出するヨーレイト検出部と、
車両に発生する横加速度を検出する横加速度検出部と、
少なくとも前記操舵角速度検出部からの信号と前記操舵角検出部からの信号とに基づいて車両のロールの発生を予測する横転予測部と、
少なくとも前記ヨーレイト検出部および前記横加速度検出部からの情報により車両挙動を検出する車両挙動検出部と、
前記車両挙動検出部による所定の車両挙動検出中に操舵の切戻しが検出されたときに横転判断を行う横転判断部と、
前記横転判断部によって横転判断された場合、前記アクチュエータを制御し横転防止制御を行う横転防止制御部と、
を備えたことを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載の車両横転防止制御装置おいて、
前記横転予測部は、ドライバによる操舵開始から所定時間経過後に横転予測を開始することを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項11】
請求項9に記載の車両横転防止制御装置において、
前記横転判断部は、前記横転予測部により所定のロールの発生が予測されてから所定時間経過後に操舵の切戻しを検出しない場合は横転予測をキャンセルすることを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項12】
請求項9に記載の車両横転防止制御装置において、
前記アクチュエータは、車両の各輪に制動力を与えるブレーキ装置であり、
前記横転防止制御部は、横転防止制御時、車両の左右前輪に対して制動力を付与することを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項13】
請求項12に記載の車両横転防止制御装置において、
走行路面の路面摩擦係数を算出する路面摩擦係数算出部を備え、
前記横転防止制御部は、前記路面摩擦係数算出部により算出された路面摩擦係数が所定値以上のときに横転防止制御を実施し、所定値未満の場合は横転防止制御を実施しないことを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項14】
請求項12に記載の車両横転防止制御装置において、
減衰力可変型制御サスペンションを備え、
前記横転防止制御部は、前記横転予測部により所定のロールが発生すると予測された場合、旋回外輪側サスペンションの圧側減衰力を高減衰力に変更する初期サスペンション横転防止制御を行うことを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項15】
請求項12に記載の車両横転防止制御装置において、
操舵アシスト力を調整できるアシスト力可変型操舵装置を備え、
前記横転防止制御部は、前記横転予測部により所定のロールが発生すると予測された場合、切増し側の操舵アシスト力を現在よりも小さく変更する初期ステアリング横転防止制御を行うことを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項16】
請求項12に記載の車両横転防止制御装置において、
減衰力可変型制御サスペンションと、
操舵アシスト力を調整できるアシスト力可変型操舵装置と、
を備え、
前記横転防止制御部は、前記横転予測部により所定のロールが発生すると予測された場合、旋回外輪側サスペンションの圧側減衰力を高減衰力に変更する初期サスペンション横転防止制御を行うと共に、切増し側の操舵アシスト力を現在よりも小さく変更する初期ステアリング横転防止制御を行うことを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項17】
ドライバによる操舵の切増し時の操舵角速度に基づいて大きなロールの発生を予測する横転予測を実行し、前記横転予測成立後、操舵の切戻しが検出されたときに横転防止制御を実行することを特徴とする車両横転防止制御方法。
【請求項18】
請求項17に記載の車両横転防止制御方法において、
前記横転防止制御は、車両の左右前輪に対して制動力を付与することを特徴とする車両横転防止制御方法。
【請求項19】
請求項18に記載の車両横転防止制御方法において、
横転予測から所定時間経過後に操舵の切戻しを検出しない場合には横転予測をキャンセルすることを特徴とする車両横転防止制御方法。
【請求項20】
請求項18に記載の車両横転防止制御方法において、
前記横転予測成立後であって横転防止制御の前にサスペンションの可変制御または操舵アシスト可変制御の少なくとも一方を実行することを特徴とする車両横転防止制御方法。
【請求項21】
車両挙動を制御するために作動するアクチュエータと、
ドライバの操舵パターンに基づいて車両に対し所定のロールが発生することを予測する横転予測部と、
ドライバの操舵パターンとして切戻しを検出する切戻し検出部と、
前記切戻し検出部により切戻しが検出された場合、前記アクチュエータを車両の左右前輪に対して制動力を発生させるように制御する横転防止制御部と、
を備えたことを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項1】
車両挙動を制御するために作動するアクチュエータと、
ドライバの操舵に基づいて車両に対し所定のロールが発生することを予測する横転予測部と、
ドライバによる操舵の切戻しを検出する切戻し検出部と、
前記切戻し検出部により操舵の切戻しが検出されたときに横転判断を行う横転判断部と、
前記横転予測部により所定のロールが発生すると予測され、かつ、前記横転判断部により横転判断された場合、前記アクチュエータを制御し横転防止制御を行う横転防止制御部と、
を備えたことを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両横転防止制御装置において、
ドライバによる操舵の切増し時の操舵角速度を検出する操舵角速度検出部を備え、
前記横転予測部は、前記操舵角速度検出部により検出された操舵角速度が設定された速度よりも高い場合に横転予測を行うことを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両横転防止制御装置において、
前記横転予測部は、ドライバによる操舵開始から所定時間経過後に横転予測を開始することを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項4】
請求項2に記載の車両横転防止制御装置において、
前記横転判断部は、前記横転予測部により所定のロールの発生が予測されてから所定時間経過後に操舵の切戻しを検出しない場合は横転予測をキャンセルすることを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両横転防止制御装置において、
前記アクチュエータは、車両の各輪に制動力を与えるブレーキ装置であり、
前記横転防止制御部は、横転防止制御時、車両の左右前輪に対して制動力を付与することを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両横転防止制御装置において、
走行路面の路面摩擦係数を算出する路面摩擦係数算出部を備え、
前記横転防止制御部は、前記路面摩擦係数算出部により算出された路面摩擦係数が所定値以上のときに横転防止制御を実施し、所定値未満の場合は横転防止制御を実施しないことを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載の車両横転防止制御装置において、
減衰力可変型制御サスペンションを備え、
前記横転防止制御部は、前記横転予測部により所定のロールが発生すると予測された場合、旋回外輪側サスペンションの圧側減衰力を高減衰力に変更する初期サスペンション横転防止制御を行うことを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項8】
請求項1に記載の車両横転防止制御装置において、
操舵アシスト力を調整できるアシスト力可変型操舵装置を備え、
前記横転防止制御部は、前記横転予測部により所定のロールが発生すると予測された場合、切増し側の操舵アシスト力を現在よりも小さく変更する初期ステアリング横転防止制御を行うことを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項9】
車両挙動を制御するためのアクチュエータと、
ドライバによる操舵の切増し時の操舵角速度を検出する操舵角速度検出部と、
操舵角を検出する操舵角検出部と、
車両に発生するヨーレイトを検出するヨーレイト検出部と、
車両に発生する横加速度を検出する横加速度検出部と、
少なくとも前記操舵角速度検出部からの信号と前記操舵角検出部からの信号とに基づいて車両のロールの発生を予測する横転予測部と、
少なくとも前記ヨーレイト検出部および前記横加速度検出部からの情報により車両挙動を検出する車両挙動検出部と、
前記車両挙動検出部による所定の車両挙動検出中に操舵の切戻しが検出されたときに横転判断を行う横転判断部と、
前記横転判断部によって横転判断された場合、前記アクチュエータを制御し横転防止制御を行う横転防止制御部と、
を備えたことを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載の車両横転防止制御装置おいて、
前記横転予測部は、ドライバによる操舵開始から所定時間経過後に横転予測を開始することを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項11】
請求項9に記載の車両横転防止制御装置において、
前記横転判断部は、前記横転予測部により所定のロールの発生が予測されてから所定時間経過後に操舵の切戻しを検出しない場合は横転予測をキャンセルすることを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項12】
請求項9に記載の車両横転防止制御装置において、
前記アクチュエータは、車両の各輪に制動力を与えるブレーキ装置であり、
前記横転防止制御部は、横転防止制御時、車両の左右前輪に対して制動力を付与することを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項13】
請求項12に記載の車両横転防止制御装置において、
走行路面の路面摩擦係数を算出する路面摩擦係数算出部を備え、
前記横転防止制御部は、前記路面摩擦係数算出部により算出された路面摩擦係数が所定値以上のときに横転防止制御を実施し、所定値未満の場合は横転防止制御を実施しないことを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項14】
請求項12に記載の車両横転防止制御装置において、
減衰力可変型制御サスペンションを備え、
前記横転防止制御部は、前記横転予測部により所定のロールが発生すると予測された場合、旋回外輪側サスペンションの圧側減衰力を高減衰力に変更する初期サスペンション横転防止制御を行うことを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項15】
請求項12に記載の車両横転防止制御装置において、
操舵アシスト力を調整できるアシスト力可変型操舵装置を備え、
前記横転防止制御部は、前記横転予測部により所定のロールが発生すると予測された場合、切増し側の操舵アシスト力を現在よりも小さく変更する初期ステアリング横転防止制御を行うことを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項16】
請求項12に記載の車両横転防止制御装置において、
減衰力可変型制御サスペンションと、
操舵アシスト力を調整できるアシスト力可変型操舵装置と、
を備え、
前記横転防止制御部は、前記横転予測部により所定のロールが発生すると予測された場合、旋回外輪側サスペンションの圧側減衰力を高減衰力に変更する初期サスペンション横転防止制御を行うと共に、切増し側の操舵アシスト力を現在よりも小さく変更する初期ステアリング横転防止制御を行うことを特徴とする車両横転防止制御装置。
【請求項17】
ドライバによる操舵の切増し時の操舵角速度に基づいて大きなロールの発生を予測する横転予測を実行し、前記横転予測成立後、操舵の切戻しが検出されたときに横転防止制御を実行することを特徴とする車両横転防止制御方法。
【請求項18】
請求項17に記載の車両横転防止制御方法において、
前記横転防止制御は、車両の左右前輪に対して制動力を付与することを特徴とする車両横転防止制御方法。
【請求項19】
請求項18に記載の車両横転防止制御方法において、
横転予測から所定時間経過後に操舵の切戻しを検出しない場合には横転予測をキャンセルすることを特徴とする車両横転防止制御方法。
【請求項20】
請求項18に記載の車両横転防止制御方法において、
前記横転予測成立後であって横転防止制御の前にサスペンションの可変制御または操舵アシスト可変制御の少なくとも一方を実行することを特徴とする車両横転防止制御方法。
【請求項21】
車両挙動を制御するために作動するアクチュエータと、
ドライバの操舵パターンに基づいて車両に対し所定のロールが発生することを予測する横転予測部と、
ドライバの操舵パターンとして切戻しを検出する切戻し検出部と、
前記切戻し検出部により切戻しが検出された場合、前記アクチュエータを車両の左右前輪に対して制動力を発生させるように制御する横転防止制御部と、
を備えたことを特徴とする車両横転防止制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2010−167946(P2010−167946A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13254(P2009−13254)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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