説明

車両用キー装置

【課題】エンジン始動後であっても車両の操作を制限し、盗難防止効果を向上させることができる車両用キー装置を提供すること。
【解決手段】エンジンの始動操作を行う携帯機10を、車両に設けられた接続機20に接続すると共に、この携帯機10により車両のシフト操作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの始動操作を行う携帯機と、車両に設けられてこの携帯機が接続される接続機とを備えた車両用キー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯機から送信されたID番号を、車両にあらかじめ記憶しておいたID番号と照合し、ID番号同士が一致すれば車両ドアの施開錠を行う車両用キー装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、いわゆるイモビライザーシステムのように、携帯機に内蔵されたトランスポンダからID信号を読み取り、車両の接続部内にあらかじめ記憶しておいたID信号と照合し、ID信号同士が一致すればエンジンの始動をする車両用キー装置も知られている。
【特許文献1】特開2003−127831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の車両用キー装置では、ドアが破壊されて車内に侵入されたり、何らかの手段によりイモビライザーシステムが解除されたりしてエンジンが始動してしまうと、車両の操作や移動が可能となり、そのまま車両が盗難されてしまうという問題があった。
【0005】
そこで、この発明は、エンジン始動後であっても車両の操作を制限し、盗難防止効果を向上させることができる車両用キー装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、エンジンの始動操作を行う携帯機を、車両に設けられた接続機に接続し、この携帯機により車両のシフト操作を行うことを最も主な特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
このように構成された本発明によると、携帯機を使用せずに何らかの手段によりエンジンを始動させたとしても、携帯機が接続機に接続されていなければ車両のシフト操作を行うことができない。そのため、エンジン始動後であっても車両が自走できず、車両の操作を制限することが可能となると共に、車両の盗難防止効果を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係る車両用キー装置1の最良の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0009】
この車両用キー装置1は、図1に示すように、携帯可能な携帯機10と、この携帯機10が接続される接続機20とを備えている。
【0010】
携帯機10は、図2に示すように、嵌合部11と、シフト操作部12と、メモリ部13と、表示部14と、解除/切替ノブ15と、図示しない電池(電源部)とを有している。
【0011】
嵌合部11は、接続機20との接続部分であり、接続機20に形成された後述する被嵌合部21に嵌合可能な形状を呈している。
【0012】
シフト操作部12は、車両駆動装置Eの変速操作を行うものであり、携帯機10の嵌合部11を接続機20に接続した後、後述する所定の操作を行うことにより所定のシフト信号を出力する。
【0013】
なお、このシフト操作部12は、パーキングレンジ信号を出力するP接点12a、リバースレンジ信号を出力するR接点12b、ニュートラルレンジ信号を出力するN接点12c、ドライブレンジ信号を出力するD接点12dとを有している。
【0014】
メモリ部13は、携帯機10固有のID番号を記憶した記憶手段であり、あらかじめ所定のID番号が入力されている。
【0015】
表示部14は、携帯機10の上面のほぼ一面に設けられた液晶パネルであり(図3参照)、携帯機10による操作状態等を表示する。なお、図示しない電池からの電力供給により表示される。
【0016】
解除/切替ノブ15は、図示しない車両のドアに設けられたロック機構にロック信号を送信してこのロック機構の施開錠をしたり、シフト操作部12の各接点の解除や切り替えを行ったりする。
【0017】
この解除/切替ノブ15は、図3に示すように、携帯機10から出没可能に設けられ、通常突出状態となるように付勢されている。
【0018】
一方、接続部20は、図2に示すように、被嵌合部21と、信号判定部22と、制御部23とを有している。
【0019】
被嵌合部21は、ここではインストルメントパネルPに形成され、携帯機10の嵌合部11が嵌合するようになっている。なお、この被嵌合部21には、図示しない係止手段が設けられており、嵌合部11が嵌合すると、この係止手段により携帯機10が係止するようになっている。
【0020】
信号判定部22は、携帯機10のメモリ部13から入力されるID番号に照合される照合ID番号を記憶しており、メモリ部13からのID番号と自身が記憶した照合ID番号とを照合し、その結果を制御部23に出力する。
【0021】
制御部23は、エンジン始動判定部24と、シフト信号判定部25とを有しており、エンジンや変速装置を有する車両駆動装置Eを制御する。
【0022】
エンジン始動判定部24は、信号判定部22から入力されたID番号と照合ID番号との照合結果に基づき、車両駆動装置Eにエンジンを始動させるイグニッション信号を出力する。
【0023】
シフト信号判定部25は、シフト操作部12から入力されたシフト信号に基づき、車両駆動装置Eの変速装置のレンジ制御を行う制御信号を出力する。
【0024】
そして、この発明の車両用キー装置1では、まず、操作者は、携帯機10の解除/切替ノブ15をON操作して、車両のドアに設けられたロック機構(図示せず)にロック解除信号を出力する。ロック解除信号を受信したロック機構はドアロックを解除し、車両のドアは開錠される。
【0025】
このとき、携帯機10の表示部14には、「LOCK OFF」の表示がなされ、ロック機構が解除されたことを示す。
【0026】
次に、操作者は車内に乗り込み、携帯機10の嵌合部11を接続部20の被嵌合部21に挿入して嵌合させる。
【0027】
このとき、携帯機10の表示部14には、「SET」の表示がなされ、嵌合部11と被嵌合部21とが嵌合したことを示す。
【0028】
そして、嵌合部11が被嵌合部21に嵌合すると、携帯機10のメモリ部13からID番号が出力される。
【0029】
このID番号は、接続部20の信号判定部22に入力される。信号判定部22では、入力されたID番号と、自身が記憶している照合ID番号とを照合し、その結果を制御部23に入力する。
【0030】
制御部23のエンジン始動判定部24は、入力された照合結果が合致した場合には、車両駆動装置Eにエンジン始動をさせるイグニッション信号を出力する。イグニッション信号が入力された車両駆動装置Eは、エンジンを始動する。
【0031】
また、このとき、携帯機10の表示部14には、「SET OK」の表示がなされ、ID番号と照合ID番号とが合致したことを示す。
【0032】
一方、入力された判定信号が合致していない場合には、イグニッション信号は出力されず、携帯機10の表示部14には、「SET NG」の表示がなされ、ID番号と照合ID番号とが合致しなかったことを示す。この場合、エンジンは始動せず、携帯機10からシフト信号も出力されない。
【0033】
イグニッション信号が出力されてエンジンが始動した場合には、携帯機10のシフト操作部12から所定のシフト信号が出力される。ここで、携帯機10を接続部20に接続した段階では、P接点12aがON操作され、携帯機10からパーキングレンジ信号が出力される。このパーキングレンジ信号は、接続部20の制御部23に入力される。
【0034】
制御部23のシフト信号判定部25は、入力されたシフト信号(ここでは、パーキングレンジ信号)に基づき、車両駆動装置Eに変速装置のロックを継続する制御信号を出力する。
【0035】
このとき、携帯機10の表示部14には、「P」の表示がなされ、パーキングレンジにシフトされていることを示す。
【0036】
そして、図4(c)に示すように、解除/切替ノブ15を押しながら、この解除/切替ノブ15を上方に引き上げるように携帯機10を傾ける。
【0037】
これにより、D接点12dがON操作され、携帯機10からドライブレンジ信号が出力される。このドライブレンジ信号は、接続部20の制御部23に入力され、シフト信号判定部25から、車両駆動装置Eに変速装置を駆動させる制御信号を出力し、車両が走行する。
【0038】
また、このとき、携帯機10の表示部14には、「D」の表示がなされ、ドライブレンジにシフトされていることを示す。
【0039】
そして、図4(b)に示すように、解除/切替ノブ15を2秒以上押しつづけると、N接点12cがON操作され、携帯機10からニュートラルレンジ信号が出力される。このニュートラルレンジ信号は、接続部20の制御部23に入力され、シフト信号判定部25から、車両駆動装置Eに変速装置をフリーにさせる制御信号を出力する。
【0040】
また、このとき、携帯機10の表示部14には、「N」の表示がなされ、ニュートラルレンジにシフトされていることを示す。
【0041】
さらに、図4(d)に示すように、解除/切替ノブ15を押しながら、この解除/切替ノブ15を下方に押し下げるように携帯機10を傾ける。
【0042】
これにより、R接点12bがON操作され、携帯機10からリバースレンジ信号が出力される。このリバースレンジ信号は、接続部20の制御部23に入力され、シフト信号判定部25から、車両駆動装置Eに変速装置を後退させる制御信号を出力し、車両が後退する。
【0043】
また、このとき、携帯機10の表示部14には、「R」の表示がなされ、リバースレンジにシフトされていることを示す。
【0044】
そして、図4(a)に示すように、解除/切替ノブ15を押さずに携帯機10を垂直下方に押し下げると、P接点12aがON操作され、携帯機10からパーキングレンジ信号が出力される。このパーキングレンジ信号は、接続部20の制御部23に入力され、シフト信号判定部25から、車両駆動装置Eに変速装置をロックする制御信号を出力し、車両が停止する。
【0045】
また、このとき、携帯機10の表示部14には、「P」の表示がなされ、パーキングレンジにシフトされていることを示す。
【0046】
そして、この携帯機10を接続機20の被嵌合部21から引き抜くことで車両駆動装置EがOFFされ、エンジンが停止する。さらに、操作者が車外にて解除/切替ノブ15をON操作してドアのロック機構をON操作すれば、ドアが施錠されると共に、携帯機10の表示部14に「LOCK ON」の表示がなされる。なお、この場合、一定時間表示されたのち、自動的に消えるようになっている。
【0047】
このように、本発明に係る車両用キー装置10は、エンジンの始動操作を行う携帯機10と、車両に設けられて携帯機10が接続される接続機20とを備え、携帯機10を接続機20に接続し、この携帯機10により車両のシフト操作を行うようになっている。
【0048】
これにより、携帯機10がなければ接続機20のシフト信号判定部25に所定のシフト信号を入力することができず、車両駆動装置Eのシフト操作を行うことが不可能となっている。
【0049】
そのため、何らかの手段によりエンジンが始動された場合であっても、携帯機10がなければ車両が自走できないため、車両の操作を制限することが可能となると共に、車両の盗難防止効果を向上させることができる。
【0050】
また、上述の実施の形態では、携帯機10と接続機20とには、相互に認証したときに、携帯機10によるエンジンの始動操作を許容する認証システムであるメモリ部13と、信号判定部22とがそれぞれ設けられている。
【0051】
これにより、さらに盗難防止効果を向上させることが可能となる。
【0052】
さらに、上述の実施の形態では、携帯機10は、この携帯機10による操作状態を表示する表示部14を有している。
【0053】
これにより、状況に応じて携帯機10による操作状態を容易に目視確認することが可能となる。
【0054】
特に、上述の実施の形態では、表示部14が携帯機10の上面のほぼ一面に設けられているので、目視確認しやすく、操作性を向上することができる。
【0055】
以上、この発明にかかる実施の形態を図面により詳述してきたが、具体的な構成は上述の実施の形態に限らない。この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等はこの発明に含まれる。
【0056】
例えば、上述の実施の形態では、接続機20に接続した携帯機10を上下方向に傾けたり、下方に押し下げたりすることでシフト操作を行っているが、これに限らず、図5(a),(b)に示す携帯機30であってもよい。
【0057】
この携帯機30は、切替ノブ31と、表示部32と、複数の表示ランプ33,…とが設けられている。
【0058】
そして、切替ノブ31を矢印方向に傾けることにより、携帯機30内部に設けられた接点が切り替わってシフト操作ができる。なお、複数の表示ランプ33,…は、レンジ状態に応じて所定の位置が点灯するようになっている。この場合では、指先の操作によりシフト切替を行うことが可能となる。
【0059】
また、携帯機10の嵌合部11と、接続機20の被嵌合部21との接触面に、シフト操作を行う接点を設けてもよい。
【0060】
この場合、携帯機10を嵌合部11を中心に回動させることで接点を切り替えて、シフト操作を行うことができる。
【0061】
さらに、上述の実施の形態では、認証システムとしてメモリ部13と信号判定部22とを備え、あらかじめ記憶されたID番号と照合ID番号とを照合することで認証しているが、例えば、指紋や静脈等を利用して乗員を特定するいわゆる生態認証システムであってもよいし、携帯機10を接続後にパスワードを入力することにより認証するものであってもよい。
【0062】
なお、パスワードを入力する場合には、表示部14がタッチパネルディスプレイになっており、この表示部14を介して入力するものであってもよい。
【0063】
また、嵌合部11と被嵌合部21とに、それぞれ噛み合う鍵山面が形成され、相互の鍵山面が一致しなければ接続不可能となる構成であってもよい。
【0064】
いずれの場合であっても、あらかじめ認定された所定の携帯機10と接続機20との組み合わせでなければ、容易にエンジン始動、あるいは携帯機10の接続を行うことができないので、盗難防止効果を向上させることができる。
【0065】
さらに、携帯機10と接続機20と接続部分は、USB等の汎用コネクタであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る車両用キー装置を示す外観図である。
【図2】本発明に係る車両用キー装置の構成を示すブロック図である。
【図3】携帯機を示す上面図である。
【図4】(a)はパーキングレンジへのシフト操作を示す説明図であり、(b)はニュートラルレンジへのシフト操作を示す説明図であり、(c)はドライブレンジへのシフト操作を示す説明図であり、(d)はリバースレンジへのシフト操作を示す説明図である。
【図5】(a)は携帯機の他の実施例を示す上面図であり、(b)は図5(a)に示す携帯機と接続機とを示す側面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 車両用キー装置
10 携帯機
20 接続機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの始動操作を行う携帯機と、車両に設けられて前記携帯機が接続される接続機とを備えた車両用キー装置であって、
前記携帯機を前記接続機に接続し、この携帯機により前記車両のシフト操作を行うことを特徴とする車両用キー装置。
【請求項2】
前記携帯機と前記接続機とには、相互に認証したときに、前記携帯機による前記エンジンの始動操作、又は、前記携帯機と前記接続機との接続を許容する認証システムが設けられたことを特徴とする請求項1に記載の車両用キー装置。
【請求項3】
前記携帯機は、該携帯機による操作状態を表示する表示部を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用キー装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−208531(P2009−208531A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51584(P2008−51584)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】