説明

車両用ナビゲーション装置

【課題】 使用者がよく知っている地域を走行する際の音声案内を煩わしく感じることを回避する車両用ナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】 車両の現在位置を検出する位置検出手段と、目的地を設定する目的地設定手段と、現在位置から目的地に到るまでの案内経路を探索する経路探索手段と、案内経路について音声による案内を行なう音声案内手段と、現在位置と目的地との距離を演算する演算手段と、演算された距離の減少に応じて音声による案内を制限する音声案内制限手段と、を有することを特徴とする車両用ナビゲーション装置として提供可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて用いられ、車両を設定された経路に沿って誘導すべく、車両の乗員に対して、設定された経路についての音声案内を行なう機能を備えた車両用ナビゲーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の走行に伴ってGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)等により現在位置を検出し、その現在位置を表示装置上に道路地図と共に表示して、現在地から目的地までの適切な経路を設定し、表示装置や音声出力装置などによって案内する車両用ナビゲーション装置は、運転者の効率的で安全な運転に貢献している。
【0003】
車両用ナビゲーション装置では、従来、経路案内を行なうナビゲーション装置においては、出発地点から目的地点までの経路を探索し、探索した経路に沿って案内する際には、右左折する交差点等の注意点では音声や表示により案内を行っている。例えば、交差点から700m手前、300m手前、交差点直前というように複数回の音声案内を行い、目印となる施設を報知することにより、運転者がより確実に右左折できるように案内している。まず「700m先右折です。」と報知し、次いで「300m先右折です。」と報知し、右折直前には「間もなく右折です。○○印が目印です。」のように案内して、運転者が間違いなく右折できるように案内している。
【0004】
しかし、経路案内を行なう場合、目的地までの経路の一部に使用者がよく知っている道路がある場合には、その道路は詳細な案内がなくても進むことができる。しかし、従来のナビゲーション装置は、全ての道路で同じ案内が行われるため、案内が煩わしく感じられる場合があった。なお、現在位置から案内経路の出発点、あるいは案内経路の終点から最終の目的地点までの経路以外については案内を行なわないものもあるが、このようなものにおいても探索した経路上においては全ての道路で同じ案内が行われている。
【0005】
そこで、音声案内部によって行われる設定された経路に応じた音声案内が、車両の設定された経路についての過去の通行回数が所定回数以下であるとき、第1の内容をもつものとされ、車両の設定された経路についての過去の通行回数が所定回数を越えているときには、第1の内容より簡略化された第2の内容をもつ車両用ナビゲーション装置が考案されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、音声による交差点案内の頻度を、運転者の意志により、あるいは運転環境に応じて任意に変更設定することができるようにした車両用ナビゲーション装置が考案されている(特許文献2参照)。
【0007】
また、各道路について簡略案内の対象となる道路であるか否かを判断し、簡略案内の対象となる道路であると判断された道路の音声案内出力を簡略化する、あるいは一定回数以上走行した道路の音声案内を簡略化する車両用ナビゲーション装置が考案されている(特許文献3参照)。
【0008】
【特許文献1】特開平11−201767号公報
【特許文献2】特開2001−280990号公報
【特許文献3】特開2003−57059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の例は、通常時あるいは簡略時等のそれぞれの条件に応じた音声案内用のメッセージを準備しておく必要がある。このため、相応の記憶領域が必要となり製造コスト上昇の要因となる。また、過去の走行回数の閾値を設定する必要があり、使用者の負担を増大させるという問題がある。
【0010】
また、特許文献2の例は、昼夜の別,天候,渋滞の度合い,車速,経路上の交差点数等の運転環境によって音声案内の内容を変更しているが、使用者がよく知っている道路においては却って煩わしく感じるという問題がある。
【0011】
さらに、特許文献3の例は、音声案内の簡略化の対象が道路単位となっているので、簡略化の設定を行なうという使用者の負担を増大させるという問題がある。
【0012】
上記問題を背景として、本発明の課題は、使用者がよく知っている地域を走行する際の音声案内を煩わしく感じることを回避する車両用ナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するための車両用ナビゲーション装置を提供するものである。即ち、請求項1によれば、車両の現在位置を検出する位置検出手段と、目的地を設定する目的地設定手段と、現在位置から目的地に到るまでの案内経路を探索する経路探索手段と、案内経路について音声による案内を行なう音声案内手段と、現在位置と目的地との距離を演算する演算手段と、演算された距離の減少に応じて音声による案内を制限する音声案内制限手段と、を有することを特徴とする車両用ナビゲーション装置として構成される。
【0014】
本発明は、自宅周辺などの使用者が道路状況をよく知っている地域では音声案内を詳しく行なう必要がない点に着目し、例えば自宅を目的地として設定した場合に、現在位置と目的地である自宅との距離の減少に応じて、音声案内を制限するものである。上記構成によって、使用者が音声案内を煩わしく感じることを回避することが可能である。
【0015】
本発明の構成では、従来技術のようにそれぞれの条件に応じた音声案内用のメッセージを準備しておく必要がないため、製造コストは上昇しない。また、過去の走行回数の閾値を設定する必要もなく、使用者の負担は増大しない。また、昼夜の別,天候,渋滞の度合い,車速,経路上の交差点数等の運転環境によって変更する構成ではないため、簡単な制御処理によって実行できるので、制御プログラムの開発費用を低減できる。さらに、音声案内の簡略化の対象が道路単位ではなく道路の選択も不要であるため、使用者の負担を増大させることなく音声案内を制限することが可能となる。
【0016】
請求項2によれば、本発明の車両用ナビゲーション装置は、演算された距離が所定の値を下回るかを判定する距離判定手段を有し、音声案内制限手段は、演算された距離が所定の値を下回ると判定された場合に音声による案内を制限する構成をとることもできる。本構成によって、例えば自宅付近のような使用者がよく知っている目的地周辺の所定の距離の範囲内では音声案内が制限されるため、運転者が音声案内を煩わしく感じることを回避することが可能である。
【0017】
請求項3によれば、本発明の車両用ナビゲーション装置は、現在位置が音声による案内を行なう地点にあるかどうかを判定する地点判定手段を有し、演算手段は、現在位置が音声による案内を行なう地点にあると判定された場合に、現在位置と目的地との距離を演算する構成をとることもできる。本構成によっても、使用者がよく知っている目的地周辺の所定の距離の範囲内では音声案内が制限されるため、使用者が音声案内を煩わしく感じることを回避することが可能である。
【0018】
請求項4によれば、本発明の車両用ナビゲーション装置における音声案内制限手段は、音声による案内の回数を減少させる構成をとることもできる。従来の車両用ナビゲーション装置では、目的地等の音声案内を行なう地点までの距離が例えば700m、300m、100mになった場合に計3回の音声案内を行なっている。本構成によって、例えば「目的地までの距離が200m以内の地点では音声案内を行なわない」設定がなされている場合、目的地までの距離が100mになったときには音声案内を行なわず計2回の音声案内となり、使用者が音声案内を煩わしく感じることを回避することが可能である。
【0019】
請求項5によれば、本発明の車両用ナビゲーション装置における音声案内制限手段は、音声による案内を行なう地点についての案内を行なわない構成をとることもできる。本構成によって、運転者がよく知っている目的地周辺での音声案内を行なわなくすることも可能となり、運転者が音声案内を煩わしく感じることを回避することが可能である。
【0020】
請求項6によれば、本発明の車両用ナビゲーション装置は、音声による案内の制限を行なうか否かを使用者に選択させる選択操作手段を有する構成をとることもできる。本構成によって、運転者がよく知っている目的地周辺での音声案内を行なうかどうかを個別に選択するが可能となり、木目の細かい音声案内を行なうことが可能となる。また、運転者がよく知っている目的地周辺では音声案内を制限することも可能となり、運転者が音声案内を煩わしく感じることを回避することが可能である。
【0021】
請求項7によれば、本発明の車両用ナビゲーション装置は、音声による案内の制限の態様を使用者に設定させる音声案内制限態様設定手段を有する構成をとることもできる。音声案内には目的地までの案内情報の他に、天候情報,交通情報,案内経路周辺の施設情報を含むこともある。本構成によって、使用者は目的地周辺を走行し音声案内制限状態であっても、所望の内容についての音声案内を聞くことが可能となる。
【0022】
請求項8によれば、本発明の車両用ナビゲーション装置は、目的地を電子地図上で指示して記憶させる目的地記憶手段と、目的地が記憶される種別として自宅設定とそれ以外のメモリ地点設定とを有し、目的地として自宅が設定された場合に、音声による案内の制限を開始する該自宅と現在位置との距離は、目的地としてメモリ地点が設定された場合の距離よりも大きく設定され、目的地が自宅の場合は、目的地がメモリ地点の場合より早い段階で音声による案内の制限が開始される構成をとることもできる。使用者は自宅周辺の地理的状況あるいは道路の状況を熟知している。本構成によって、運転者が自宅周辺を走行中に音声案内を煩わしく感じることを回避することが可能である。また、自宅周辺よりも地理的状況が分かりにくいメモリ地点では木目の細かい音声案内を行なうことが可能となる。
【0023】
請求項9によれば、本発明の車両用ナビゲーション装置は、音声による案内が制限される状況下において、その音声による案内の制限を現在位置に対して一時的に解除する制限解除操作手段を有し、その制限解除操作が行なわれた場合には、本来は制限されるはずの音声による案内が行なわれる構成をとることもできる。本構成によって、目的地周辺に関する使用者の記憶が曖昧な場合、例えば同乗者が音声案内を聞きたい場合、あるいは通常の使用者以外の者が運転を代行している場合は通常どおりの音声案内を行なうことができ、案内経路を逸脱することなく目的地まで到達することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
使用者がよく知っている地域を走行する際の音声案内を煩わしく感じることを回避する車両用ナビゲーション装置を提供するという目的を、現在位置と目的地の距離が所定の距離を下回るときには、音声案内の回数を減らす車両用ナビゲーション装置により実現した。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施の形態である車両用ナビゲーション装置について、図面を参照しながら説明する。図1は車両用ナビゲーション装置(以下、ナビゲーション装置と略称する)100の全体構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置100は、位置検出器1,地図データ入力器6,操作スイッチ群7,リモートコントロール(以下リモコンと称する)センサ11,音声案内などを行なう音声合成回路24およびスピーカ15,半導体記憶装置9,表示装置10,ハードディスク装置(HDD)21,これらの接続された制御回路8,リモコン端末12を備えている。
【0026】
本発明の位置検出手段である位置検出器1は、周知の地磁気センサ2,ジャイロスコープ3,距離センサ4,および衛星からの電波に基づいて車両の位置を検出するGPSのためのGPS受信機5を有している。これらのセンサ等2,3,4,5は各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、精度によっては前述したうちの一部センサで構成してもよく、さらに、ステアリングの回転センサや各転動輪の車輪センサ等を用いてもよい。
【0027】
地図データ入力器6は、位置検出の精度向上のためのいわゆるマップマッチング用データ、道路の接続を表した道路データを含む各種データを記憶媒体20から入力するための装置である。記憶媒体としては、そのデータ量からCD−ROMやDVDを用いるのが一般的であるが、例えばメモリカード等の他の媒体を用いてもよい。
【0028】
地図データは、表示用となる所定の地図画像情報を記憶すると共に、リンク情報やノード情報等を含む道路網情報を記憶する。リンク情報は、各道路を構成する所定の区間情報であって、位置座標、距離、所要時間、道幅、車線数、制限速度等から構成される。また、ノード情報は、交差点(分岐路)等を規定する情報であって、位置座標、右左折車線数、接続先道路リンク等から構成される。また、リンク間接続情報には、通行の可不可を示すデータなどが設定されている。
【0029】
操作スイッチ群7は、例えば表示装置10と一体になったタッチスイッチもしくはメカニカルなスイッチ等が用いられる。タッチスイッチは、表示装置10の画面上に縦横に微細に配置された赤外線センサ、赤外線センサが検出した指等の接触を電気信号に変えるパネル部分、電気信号を外部機器へ送るための信号処理回路、および、これらを制御するコントローラを含んで構成される。例えば指やタッチペンなどでその赤外線を遮断すると、その遮断した位置が2次元座標値(X,Y)として検出される。タッチスイッチとして、ガラス基盤と透明なフィルムにスペーサと呼ばれる隙間を介してX軸方向、Y軸方向に電気回路が配線し、フィルム上を使用者がタッチすると、押された部分の配線がショートして電圧値が変わるため、これを2次元座標値(X,Y)として検出する、いわゆる抵抗膜方式を用いてもよい。あるいは、透明な導電性基盤のガラス面に電気信号を受ける物質を塗布し、指をガラス面に近づけると静電容量の変化を電気信号としてセンサで検知する、いわゆる静電容量方式を用いてもよい。
【0030】
タッチスイッチの他に、マウスやカーソル等のポインティングデバイスを用いてもよい。また、音声認識ユニット30を用いて種々の指示を入力することも可能である。これは、音声認識ユニット30に接続されるマイク31から音声を入力することによって、その音声信号を周知の音声認識技術により音声認識処理して、その結果に応じた操作コマンドに変換するものである。音声認識ユニット30は、マイク31から入力された音声信号を適切なレベルに増幅する増幅器と、増幅後の音声信号をA/D変換した後、周知の隠れマルコフモデル等の音声認識アルゴリズムにより音声を識別するための音声信号処理装置(DSP:Digital Signal Processor)、音声を識別するための基準データが記憶されているメモリ等で構成されており、DSPにより音声信号がその音声に対応した数値情報に変換された後、制御回路8に送られる。これら操作スイッチ群7、リモコン端末12、および音声認識ユニット30,マイク31によって、種々の指示を入力することが可能である。なお、操作スイッチ群7、リモコン端末12、および音声認識ユニット30,マイク31が、本発明の目的地設定手段,選択操作手段,音声案内制限態様設定手段,制限解除操作手段に相当する。
【0031】
送受信機13は、例えばVICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム)センタ14から道路交通情報を受信するための装置である。
【0032】
また、通信ユニット19に携帯電話機17あるいは自動車電話機等の移動体通信機器を接続することによっても、外部ネットワークとの接続が可能で、インターネット等に接続することができる。さらに、ETC(自動料金収受システム,ETC:Electronic Toll Collection)車載器16と通信することにより、ETC車載器16がETC路上器から受信した料金情報などを本ナビゲーション装置100に取り込むことができる。また、ETC車載器16によって外部ネットワークと接続することも可能である。これら携帯電話機17あるいはETC車載器16を介してVICSセンタ14との通信を行なう構成をとってもよい。
【0033】
本発明のである制御回路8は通常のコンピュータとして構成されており、周知のCPU81,ROM82,RAM83,入出力回路であるI/O84およびこれらの構成を接続するバスライン85が備えられている。CPU81は、HDD21に記憶されたナビプログラム21pおよびデータにより制御を行なう。また、HDD21へのデータの読み書きの制御はCPU81によって行なわれる。
【0034】
A/D変換部86は周知のA/D(アナログ/デジタル)変換回路を含み、例えば位置検出器1などから制御回路8に入力されるアナログデータをCPU81で演算可能なデジタルデータに変換するものである。
【0035】
HDD21に地図データを記憶する構成をとってもよい。また、HDD21には経路案内の補助情報や娯楽情報、その他にユーザが独自にデータを書き込むことができる。これらのデータは、操作スイッチ群7およびリモコン端末12の操作あるいはマイク31からの音声入力によって内容の書き換えが可能である。また、地図データ入力器6を用いて記憶媒体20から地図データ等を読み込んでHDD21の内容を更新することも可能である。また、車内の他の制御装置との間でデータの遣り取りを行なう車内LAN(Local Area Network)22を介して受信したデータを記録する構成をとってもよい。
【0036】
本発明の目的地記憶手段である半導体記憶装置9はフラッシュメモリ等の書き換え可能な半導体メモリによって構成され、ナビゲーション装置100の動作に必要な情報およびデータが記憶されている。なお、半導体記憶装置9は、車両のアクセサリスイッチがオフ状態(即ち、ナビゲーション装置100がオフ状態)になっても、記憶内容が保持されるようになっている。
【0037】
また、半導体記憶装置9の代わりにナビゲーション装置100の動作に必要な情報およびデータをHDD21に記憶してもよい。さらに、ナビゲーション装置100の動作に必要な情報およびデータを半導体記憶装置9とHDD21に分けて記憶してもよい。この場合、HDD21よりも半導体記憶装置9へのアクセス速度の方が速いため、読み書きの頻度が比較的多いものを半導体記憶装置9に記憶し、読み書きの頻度が比較的少ないものをHDD21に記憶するとよい。半導体記憶装置9に記憶された内容をHDD21にバックアップ保存するようにしてもよい。
【0038】
表示装置10は周知のカラー液晶表示器で、例えばドット・マトリックスLCD(Liquid Crystal Display)およびLCD表示制御を行なうためのドライバ回路を含んで構成されている。ドライバ回路は、例えば、画素毎にトランジスタを付けて目的の画素を確実に点灯させたり消したりすることができるアクティブマトリックス駆動方式が用いられ、制御回路8から送られる表示指示および表示画面データに基づいて表示を行なう。表示装置10の画面には位置検出器1から入力された車両の現在位置マークと、記憶媒体20から入力された地図データと、更に地図上に表示する誘導経路等付加データとを重ね合わせて表示すると共に、本画面に経路案内の設定および経路誘導中の案内や画面の切り換え操作を行なうためのメニューボタンが表示される。
【0039】
スピーカ15は制御回路8のI/O34に接続される周知の音声合成回路24に接続され、ナビプログラム21pの指令によって半導体記憶装置9あるいはHDD21に記憶されるデジタル音声データを音声合成回路24においてアナログ音声に変換されたものが送出される。なお、音声合成の方法には、音声波形をそのままあるいは符号化して蓄積しておき、必要に応じて繋ぎあわせる録音編集方式、音声波形を分析してパラメータに変換された形で蓄積し、それを繋ぎ合せて音声合成回路を駆動し音声を作り出すパラメータ編集方式、文字列あるいは音素記号列から、音声学的・言語学的規則に基づいて、音声を作り出す規則合成方式などがある。なお、スピーカ15および音声合成回路24が本発明の音声案内手段に相当する。
【0040】
車速センサ23は周知のロータリエンコーダ等の回転検出部を含み、例えば車輪取り付け部付近に設置されて車輪の回転を検出してパルス信号として制御回路8に送るものである。制御回路8では、その車輪の回転数を車両の速度に換算して、車両の現在位置と所定の場所までの予想到達時間を算出したり、車両の走行区間毎の平均車速を算出する。車速データを車内LAN(Local Area Network)22を介して他の車載機器から取得する方法をとってもよい。
【0041】
外部データ入出力器26は、例えば取り外し可能な外部記憶装置と接続するための入出力回路,コネクタを含むものである。外部記憶装置を介して光磁気ディスク等に半導体記憶装置9あるいはHDD21に記憶されている内容の少なくとも一部をバックアップデータとして記憶することができる。
【0042】
このような構成を持つことにより、ナビゲーション装置100は、制御回路8のCPU81によりナビプログラム21pが起動されると、運転者が操作スイッチ群7あるいはリモコン端末12の操作あるいはマイク31からの音声入力によって、表示装置10上に表示されるメニューから目的地経路を表示装置10に表示させるための経路案内処理を選択した場合、次のような処理を実施する。
【0043】
即ち、運転者が表示装置10上の地図に基づいて目的地を入力すると、GPS受信機5から得られる衛星のデータに基づき車両の現在位置が求められ、該現在位置から目的地までの最適な案内経路を求める処理が行われる。そして、表示装置10上の道路地図に案内経路を重ねて表示し、運転者に適切な経路を案内する。このような自動的に最適な案内経路を設定する手法は、ダイクストラ法等の手法が知られている。また、表示装置10およびスピーカ15の少なくとも一方によって、操作時のガイダンスや動作状態に応じたメッセージの報知を行なう。
【0044】
ナビゲーション装置100は前述のように操作スイッチ群7,リモコン端末12あるいは音声認識ユニット30により使用者が目的地の位置を入力すると、現在地からその目的地までの誘導経路を形成し表示装置10の表示画面上に表示する。同時に、経路上の交差点等の分岐点等に対し、使用者を経路どおりに走行させるための案内対象点として設定する。制御回路8は設定された案内対象点に対し、車両がある一定距離まで近づいたときに音声により案内すべきポイントとして、案内実施点を決定する。案内実施点は、例えば、案内対象点が交差点の場合、一般道では700m手前,300m手前,100m手前、高速道路では2km手前,1km手前,500m手前といったように複数設定することができる。
【0045】
図2のフロー図を用いて、本発明の音声案内制限処理について説明する。なお、本処理はCPU81により実行されるナビプログラム21pに含まれ、ナビプログラム21pの他の処理とともに繰り返し実行される。
【0046】
まず、車両の現在位置が音声案内終了条件に一致する位置にあるかどうかを判定し、案内終了条件に一致する位置にある場合(S1:YES)は何もせずに本処理を終了する。つまり、音声案内を行なわない。
【0047】
なお、案内終了条件としては以下のようなものが挙げられ、少なくとも一つ以上を用いる。また、いずれを用いるかは使用者によって設定可能である。
(1)経路案内を行なっていない。
(2)使用者によって音声案内を行なわないように設定されている。
(3)目的地に到着して音声案内を行なう必要がない。
【0048】
一方、車両の現在位置が音声案内終了条件に一致する位置にない場合(S1:NO)は、車両の現在位置と目的地までの距離を求め、車両の現在位置が音声案内を行なう案内実施点すなわち案内ポイントにあるかどうかを調べ、案内ポイントにある場合(S2:YES)は、車両の目的地が案内回数制限条件に合致するかを調べる。
【0049】
なお、案内回数制限条件としては以下のようなものが挙げられ、いずれを用いるかは使用者によって設定可能である。
(1)自宅として登録してある地点。
(2)メモリ地点として登録してある地点かつ複数回走行したことがある地点。
(3)メモリ地点の属性として使用者が案内回数制限と設定した地点。
(4)新しく設定した目的地に対して、使用者が案内回数制限と設定した地点。
【0050】
目的地が案内回数制限条件に合致する場合(S3:YES)は、車両の現在位置と目的地までの距離を求め、該距離が所定の値として設定される案内回数制限距離を下回るかどうかを調べる。その結果、該距離が案内回数制限距離を下回る場合(S4:YES)は、案内制限条件を参照し、当該案内ポイントにおける音声案内を実施してもよいと判断された場合(S5:YES)は、制御回路8から音声合成回路24に対し案内指令とともに半導体記憶装置9あるいはHDD21の所定の領域に記憶される音声データを送る。音声合成回路24は該音声データをデジタル/アナログ変換してスピーカ15から出力する(S6)。
【0051】
図2のフロー図では、音声案内出力後ステップS1に戻っているが、無限ループ処理を意味するのではなく、ナビプログラム21pに含まれる他の定期処理,割り込み処理を実行可能な構成となっている。
【0052】
音声案内回数制限の例としては、現在地と自宅の距離が2km以下になった場合に通常3回行なっている右左折案内を1回にする、あるいは、通常、目的地周辺に到達したときに行なう、「目的地周辺です。音声案内を終了します」という音声案内を行なわない、等が挙げられる。
【0053】
なお、案内制限条件としては以下のようなものが挙げられ、少なくとも一つ以上を用いる。また、いずれを用いるかは使用者によって設定可能である。
(1)原則として例えば交差点のような全ての案内ポイントに対して通常3回の音声案内を行なうが、予め指定された案内ポイントに対しては1回のみ音声案内を行なうように設定されている。
(2)信号がない交差点や複合交差点などの特殊な案内ポイントのみ音声案内を行なうように設定されている。
(3)案内回数制限条件に合致する場合は音声案内を行なわないように設定されている。
(4)事故が多い交差点のような危険地点のみ音声案内を行なうように設定されている。なお、危険地点かどうかは記憶媒体20の地図データに記憶されているものとする。
(5)カーブの手前での警告、踏切の手前での警告などの音声による警告を制限するように設定されている。なお、警告実施地点かどうかは記憶媒体20の地図データに記憶されているものとする。
【0054】
案内回数制限距離は、予め車両用ナビゲーション装置100の半導体記憶装置9あるいはHDD21の所定の領域に初期設定値が記憶されているが、使用者によって変更可能である。また、地点毎に案内回数制限距離を設定することも可能である。例えば、走行頻度の高い自宅付近は案内回数制限距離を大きく設定し、走行頻度の低い地点は案内回数制限距離を小さく設定するものである。
【0055】
音声案内制限処理を実施中でも、使用者が経路の度忘れ等によって案内を必要と感じた場合は、操作スイッチ群7あるいはリモコン端末12の操作、あるいはマイク31からの音声入力によって音声案内低減処理を解除して通常の音声案内を行なう構成をとってもよい。また、通常の音声案内中に使用者が目的地付近の状況を十分に把握した場合には、操作スイッチ群7あるいはリモコン端末12の操作、あるいはマイク31からの音声入力によって音声案内制限処理を実施可能とする構成をとってもよい。
【0056】
図2のフロー図による実施の形態の他に、まず車両の現在位置と目的地までの距離を求め、該距離が所定の値として設定される案内回数制限距離を下回るかどうかを調べ、案内回数制限距離を下回らない場合はステップS1に戻るようにしてもよい。つまり、ステップS1:NO→ステップS4→ステップS2→ステップS3→ステップS5の順に処理を行なうものである。
【0057】
上記の実施の形態において、使用者による各種設定は以下のように行なう。使用者が操作スイッチ群7あるいはリモコン端末12の操作、あるいはマイク31からの音声入力によって、表示装置10上に表示されるメニューから機能設定メニューを表示装置10に表示させ、その中から音声案内制限に関する設定画面を選択して表示させる。そして、それぞれの項目について選択・設定を行なう。選択・設定された内容は、半導体記憶装置9あるいはHDD21の所定の領域に記憶される。
【0058】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】ナビゲーション装置の構成を示すブロック図。
【図2】音声案内制限処理について説明するためのフロー図。
【符号の説明】
【0060】
1 位置検出器(位置検出手段)
7 操作スイッチ群(目的地設定手段,選択操作手段,音声案内制限態様設定手段,制限解除操作手段)
8 制御回路(経路探索手段,演算手段,音声案内制限手段,距離判定手段,地点判定手段)
9 半導体記憶装置(目的地記憶手段)
10 表示装置
12 リモコン端末(目的地設定手段,選択操作手段,音声案内制限態様設定手段,制限解除操作手段)
15 スピーカ(音声案内手段)
20 記憶媒体
21 ハードディスク装置
24 音声合成回路(音声案内手段)
30 音声認識ユニット(目的地設定手段,選択操作手段,音声案内制限態様設定手段,制限解除操作手段)
31 マイク(目的地設定手段,選択操作手段,音声案内制限態様設定手段,制限解除操作手段)
100 ナビゲーション装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在位置を検出する位置検出手段と、
目的地を設定する目的地設定手段と、
前記現在位置から前記目的地に到るまでの案内経路を探索する経路探索手段と、
前記案内経路について音声による案内を行なう音声案内手段と、
前記現在位置と前記目的地との距離を演算する演算手段と、
前記演算された距離の減少に応じて前記音声による案内を制限する音声案内制限手段と、
を有することを特徴とする車両用ナビゲーション装置。
【請求項2】
前記演算された距離が所定の値を下回るかを判定する距離判定手段を有し、
前記音声案内制限手段は、前記演算された距離が所定の値を下回ると判定された場合に前記音声による案内を制限するものである請求項1に記載の車両用ナビゲーション装置。
【請求項3】
前記現在位置が前記音声による案内を行なう地点にあるかどうかを判定する地点判定手段を有し、
前記演算手段は、前記現在位置が前記音声による案内を行なう地点にあると判定された場合に、前記現在位置と前記目的地との距離を演算するものである請求項1または2に記載の車両用ナビゲーション装置。
【請求項4】
前記音声案内制限手段は、前記音声による案内の回数を減少させるものである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車両用ナビゲーション装置。
【請求項5】
前記音声案内制限手段は、前記音声による案内を行なう地点についての案内を行なわないものである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の車両用ナビゲーション装置。
【請求項6】
前記音声による案内の制限を行なうか否かを使用者に選択させる選択操作手段を有するものである請求項1ないし5のいずれか1項に記載の車両用ナビゲーション装置。
【請求項7】
前記音声による案内の制限の態様を使用者に設定させる音声案内制限態様設定手段を有するものである請求項1ないし6のいずれか1項に記載の車両用ナビゲーション装置。
【請求項8】
前記目的地を電子地図上で指示して記憶させる目的地記憶手段と、
前記目的地が記憶される種別として自宅設定とそれ以外のメモリ地点設定とを有し、
前記目的地として自宅が設定された場合に、前記音声による案内の制限を開始する該自宅と前記現在位置との距離は、目的地として前記メモリ地点が設定された場合の前記距離よりも大きく設定され、前記目的地が自宅の場合は、前記目的地が前記メモリ地点の場合より早い段階で前記音声による案内の制限が開始されるものである請求項1ないし7のいずれか1項に記載の車両用ナビゲーション装置。
【請求項9】
前記音声による案内が制限される状況下において、その音声による案内の制限を前記現在位置に対して一時的に解除する制限解除操作手段を有し、
その制限解除操作が行なわれた場合には、本来は制限されるはずの前記音声による案内が行なわれるものである請求項1ないし8のいずれか1項に記載の車両用ナビゲーション装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−226956(P2006−226956A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−44153(P2005−44153)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】