説明

車両用制動装置

【課題】ビルドアップ制御を行う車両制動装置において、ビルドアップによる制動力を適切に設定する。
【解決手段】モータ駆動シリンダ8と、ペダルストロークセンサ11aと、ディスクブレーキ3と、制御ユニット6とを有するブレーキ装置であって、ブレーキ液圧を検出する液圧センサ16を有し、制御ユニットが、ブレーキペダル操作量の変化量に応じて、通常マップと、ビルドアップマップとのいずれかを選択し、ブレーキペダル操作量に基づいて選択したマップを参照し、ブレーキ液圧規範値を設定するブレーキ液圧規範値設定部23と、ブレーキ液圧規範値とブレーキ液圧との差に基づいてブレーキ液圧規範値を補正する補正値設定部25および加算器26と、補正されたブレーキ液圧規範値に応じて目標値を設定するストローク目標値設定部28とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ・バイ・ワイヤ形式の車両用ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキドラムにブレーキシューまたはブレーキディスクにパッドを押さえ付けることによって生じる摩擦抵抗を利用して制動を行う摩擦ブレーキでは、制動時にパッドをブレーキディスク等に押さえ付ける力が一定であっても、時間の経過とともに制動力が次第に増大あるいは低下する現象が生じることが確認されている。制動力が次第に増大する現象は、ビルドアップと呼ばれ、運転者は制動後期にブレーキの効き増し感を得ることができ、操作感覚の点から好ましい。このようなビルドアップを意図的に生じさせるべく、制動時において運転者のブレーキ操作量が一定に維持された場合に、その制動後期においてパッドの操作量を次第に増大させ、制動力を増大させるようにしたビルドアップ制御がある(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−76468号公報
【特許文献2】特開2006−160130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のビルドアップ制御では、パッドとブレーキディスク等との摩擦による温度上昇に伴う摩擦係数の変化やパッド等の膨張による摩擦抵抗の増減(すなわち、制動力の増減)を考慮していないため、ビルドアップ制御による制動力の増加が過剰または不足となる問題が生じる。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑みてなされたものであって、ビルドアップ制御を行う車両制動装置において、ビルドアップによる制動力を適切に設定することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、与えられた目標値に応じて駆動され、ブレーキ液圧を発生する液圧発生手段(8)と、運転者によるブレーキペダル操作量を検出するブレーキペダル操作量検出手段(11a)と、前記ブレーキ液圧を検出するブレーキ液圧検出手段(16)と、前記ブレーキペダル操作量に応じて定められた前記目標値を前記液圧発生手段に供給する制御手段(6)とを有する車両用ブレーキ装置(1)であって、前記制御手段は、前記ブレーキペダル操作量の変化量に応じて、通常マップと、前記ブレーキペダル操作量が同じ場合に通常マップよりも大きい値のブレーキ液圧規範値を設定するビルドアップマップとのいずれかを選択し、前記ブレーキペダル操作量に基づいて前記選択したマップを参照し、前記ブレーキ液圧規範値を設定するブレーキ液圧規範値設定手段(23)と、前記ブレーキ液圧規範値と前記ブレーキ液圧検出手段によって検出された前記ブレーキ液圧とに基づいて前記ブレーキ液圧規範値を補正する補正手段(25、26)と、補正された前記ブレーキ液圧規範値に応じて前記目標値を設定する目標値設定手段(28)とを有することを特徴とする。
【0007】
ペダルストロークからブレーキ液圧規範値を設定し、このブレーキ液圧規範値に対応する液圧発生手段の目標値(例えば、電動サーボモータの場合には回転角)に基づいて制御を行う車両用ブレーキ装置では、摩擦制動手段を構成するパッドの温度変化に伴う摩擦係数の変化や膨張を考慮していないため、ブレーキ液圧が液圧規範値に対して過剰または不足となる場合があるが、本発明の上記の構成によれば、ブレーキ液圧とブレーキ液圧規範値との差に基づいてブレーキ液圧規範値を補正するため、ブレーキ液圧をブレーキ液圧規範値に近づけることができる。
【0008】
また、本発明の他の側面は、車輪の回転を制動すべく、電動機からなる回生制動手段(5)を更に有し、前記補正手段は、前記回生制動手段が制動力を発生する場合には、前記ブレーキ液圧規範値を増大させる方向に補正することを特徴とする。
【0009】
回生制動を行い、摩擦制動が減少する場合には、回生制動を行わず摩擦制動のみで制動を行う場合より、摩擦制動手段を構成するパッドの温度が低下し、摩擦制動による制動力が期待する値よりも低下する現象が発生するが、本発明の上記の構成によれば、摩擦制動による制動力を期待する値に近づけることができる。
【0010】
また、本発明の他の側面は、前記液圧発生手段は、電動モータによって駆動されるピストンを備えたモータ駆動シリンダであり、前記目標値は、電動モータの回転角または前記モータ駆動シリンダのストロークであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上の構成によれば、ビルドアップ制御を行う車両制動装置において、ビルドアップによる制動力を適切に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】自動車のブレーキ系の要部系統図である。
【図2】制御ユニットを模式的に示すブロック図である。
【図3】制御ユニットが行う制御フローである。
【図4】摩擦制動分ストロークに対してブレーキ液圧規範値を設定するためのマップである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は本発明のブレーキ装置1が適用された電気自動車またはハイブリッド自動車のブレーキ系の要部系統図である。
【0014】
図1に示される自動車は、車両100の前側に配設された左右一対の前輪2aと、車両100の後側に配設された左右一対の後輪2bとを有する。左右の前輪2aに連結された前輪車軸4にはモータ・ジェネレータ5がトルク伝達関係で連結されている。なお、前輪車軸4に設けられる差動機構は図示省略する。
【0015】
モータ・ジェネレータ5は、車両走行用の電動機と回生用の発電機とを兼ねたものであり、二次電池であるバッテリ7を電源としてインバータ10によってバッテリ7よりの電力供給とバッテリ7に対する電力供給(充電)とを制御され、減速時には減速エネルギを電力に変換回生して回生制動力を発生する回生制動手段をなす。
【0016】
また、CPUを用いた制御回路を備えることにより車両100の各種制御を行うと共に制動力配分手段としての制御ユニット6が設けられている。制御ユニット6には、上記インバータ10が電気的に接続されている。なお、電気自動車の場合にはこの構成のまま、または後輪2bを駆動するモータ・ジェネレータを設けても良いが、ハイブリッド自動車の場合には前輪車軸4には図の二点鎖線で示されるエンジン(内燃機関)Eの出力軸が連結される。図のエンジンEの場合には前輪駆動の例であるが、四輪駆動とすることもできる。
【0017】
前輪2a及び後輪2bの各車輪には、摩擦制動を行う摩擦制動手段としてのディスクブレーキ3が設けられている。各ディスクブレーキ3は、公知のディスクブレーキであってよく、各車輪2a・2bとともに回転するブレーキディスク3aと、ブレーキディスク3aに摺接するブレーキパッド3bと、ブレーキパッド3bをディスク側へと押圧するホイールシリンダ(キャリパ)3cとを備えている。ホイールシリンダ3cは、ブレーキ配管を介してブレーキ液圧発生装置8に接続されている。ブレーキ液圧発生装置8は、図2に示すように、電動サーボモータ12に駆動されるピストン13を備えたモータ駆動シリンダ14からなり、電動サーボモータ12の回転角(以下、モータ回転角という)に対応してピストンのストロークが変化し、各ホイールシリンダ3cにブレーキ圧を供給する。電動サーボモータ12には、モータ角θを検出するためのモータ角センサ15が設けられている。モータ角センサ15は、公知のロータリエンコーダやレゾルバであってよい。
【0018】
また、車両100には、車軸の回転数から車速Vを検出する車速センサ9が設けられている。運転者が操作するブレーキペダル11には、その操作量(踏み込み量)であるペダルストロークSpを検出するペダルストロークセンサ(ブレーキペダル操作量検出手段)11aが設けられている。ブレーキ液圧発生装置8とホイールシリンダ3cとを連通する油路上には、ホイールシリンダ3cに供給されるブレーキ液圧Bを検出する液圧センサ16が設けられている。車速センサ9、ペダルストロークセンサ11a、液圧センサ16およびモータ角センサ15の各検出信号は制御ユニット6に入力する。
【0019】
制御ユニット6は、ブレーキペダル11のペダルストロークセンサ11aの出力信号が0から増大した場合に制動の指令が発生したと判断し、制動時の制御を行う。本実施形態では、制御ユニット6は、回生制動と油圧制動(摩擦制動)とを組み合わせた回生協調制御を行う。
【0020】
次に、図2を参照して制御ユニット6の構成について説明する。制御ユニット6は、摩擦制動割合設定部21と、各制動分ストローク設定部22と、ブレーキ液圧規範値設定部23と、減算器24と、補正値設定部25と、加算器26と、ストローク目標値設定部28と、変換器29と、減算器30と、モータ角フィードバック部31と、トルク目標値設定部32と、変換器33とを有している。
【0021】
摩擦制動割合設定部21は、ペダルストロークセンサ11aからのペダルストロークSpおよび車速センサ9からの車速Vを受けて、摩擦制動手段としてのディスクブレーキ3と回生制動手段としてのモータ・ジェネレータ5とが発生する全制動力に対してディスクブレーキ3が発生する制動力の割合である摩擦制動割合Kを設定する。摩擦制動割合Kは、ペダルストロークSpと車速Vとに基づいて所定のマップを参照して設定する。摩擦制動割合Kは、0〜1の値であり、摩擦制動のみを行う場合には1となる。例えば、マップはペダルストロークSpの値が大きい(踏み込み量が大きい)ほど、摩擦制動割合Kの値が大きくなるように設定されている。また、0.2G以上の減速度に対応するペダルストロークSpが検出された場合には、摩擦制動割合Kを1にするように設定してもよい。
【0022】
各制動分ストローク設定部22は、ペダルストロークセンサ11aからのペダルストロークSpと、摩擦制動割合設定部21が設定した摩擦制動割合Kとに基づいて、ペダルストロークSpの内で摩擦制動分に対する摩擦制動分ストロークSpfと、ペダルストロークSpの内で回生制動分に対する回生制動分ストロークSprとを設定する。摩擦制動分ストロークSpfは、ペダルストロークSpと摩擦制動割合Kとを乗じることによって、回生制動分ストロークSprは、ペダルストロークSpと1から摩擦制動割合Kを減じた値とを乗じることによって、算出してよい。
【0023】
ブレーキ液圧規範値設定部23は、各制動分ストローク設定部22が設定した摩擦制動分ストロークSpfに基づき、所定のマップや関数を用いて、ホイールシリンダ3cに発生させるべき液圧をブレーキ液圧規範値Boとして設定する。本実施形態では、ブレーキ液圧規範値設定部23は、図4に示すように、通常制御に使用される通常マップとビルドアップ制御に使用されるビルドアップマップとの2つのマップを有し、条件に応じて各マップを選択して使用する。通常マップおよびビルドアップマップは、ともに摩擦制動分ストロークSpfに対してブレーキ液圧規範値Boを定めたものであり、摩擦制動分ストロークSpfの値が同じ場合には、ビルドアップマップの方が通常マップよりもブレーキ液圧規範値Boを高く設定する。
【0024】
ブレーキ液圧規範値設定部23は、通常時には通常マップを選択する。ビルドアップマップは、摩擦制動分ストロークSpfが0ではなく、かつ摩擦制動分ストロークSpfの変化量が所定値以下である状態が一定期間継続したとき、すなわち摩擦制動分ストロークSpfの値が一定、或いは変化量が微小なとき(概ね一定とみなせるとき)に選択される。本実施形態では、ブレーキ液圧規範値設定部23は、値が0ではない摩擦制動分ストロークSpfを受けた際に、摩擦制動分ストロークSpfの変化量が所定の判定値Aの範囲内に時間Tの間留まり続けた場合に条件が成就したとしてビルドアップマップを選択する。なお、他の実施形態では、摩擦制動分ストロークSpfが0ではなく、単位時間当たりの変化量が所定値以下である状態が所定期間経過したときにビルドアップマップを選択するようにしてもよい。また、他の実施形態では、摩擦制動分ストロークSpfに代えて、ペダルストロークSpに基づいてマップの選択を行ってもよい。
【0025】
ビルドアップマップを選択した後に、摩擦制動分ストロークSpfが判定値を越えた場合や摩擦制動分ストロークSpfが0になった場合は、ビルドアップマップに代えて通常マップを選択する。
【0026】
減算器24は、ブレーキ液圧規範値設定部23が設定したブレーキ液圧規範値Boと、液圧センサ16が検出したブレーキ液圧Bとの差分ΔBを算出し、補正値設定部25に入力する。
【0027】
補正値設定部25は、摩擦制動割合設定部21からの摩擦制動割合Kに基づいて補正ゲインGを設定し、減算器24からの差分ΔBに補正ゲインGを乗じることによって補正値Cを設定する。補正ゲインGは、摩擦制動割合Kを考慮することによって、回動制動が行われている場合には補正値Cが正の値で大きくなるように設定される。
【0028】
加算器26は、ブレーキ液圧規範値設定部23からのブレーキ液圧規範値Boと、補正値設定部25からの補正値Cとを加算し、補正ブレーキ液圧規範値Bo´を設定する。
【0029】
ストローク目標値設定部28は、加算器26からの補正ブレーキ液圧規範値Bo´に基づいて所定のマップを参照し、モータ駆動シリンダ14のストローク目標値Smを設定する。
【0030】
変換器29は、ストローク目標値設定部28からのモータ駆動シリンダ14のストローク目標値Smを、対応する電動サーボモータ12のモータ角目標値θtに変換する。
【0031】
減算器30は、変換器29からのモータ角目標値θtに対して、モータ角センサ15からのモータ角θを減算して差分Δθを算出し、差分Δθをモータ角フィードバック部31に入力する。
【0032】
モータ角フィードバック部31は、差分Δθに基づいて、モータ制御量Mtを設定し、このモータ制御量Mtに基づいてモータ角θがモータ角目標値θtに近づくように電動サーボモータ12を駆動する。これにより、モータ駆動シリンダ14が駆動され、液圧を発生する。
【0033】
トルク目標値設定部32は、各制動分ストローク設定部22からの回生制動分ストロークSprに基づいて、モータ・ジェネレータ5に発生させるトルクの目標値であるトルク目標値Tmを所定のマップに基づいて設定する。トルク目標値設定部32は、通常制御に使用される通常マップとビルドアップ制御に使用されるビルドアップマップとの2つのマップを有し、条件に応じて各マップを選択して使用する。通常マップおよびビルドアップマップは、ともに回生制動分ストロークSprに対してモータ・ジェネレータ5に発生させるトルクを定めたものであり、回生制動分ストロークSprの値が同じ場合には、ビルドアップマップの方が通常マップよりもブレーキ液圧規範値Boを高く設定する。本実施形態では、通常時においては通常マップを選択し、Spfの値が0ではなく、回生制動分ストロークSprがほぼ一定に一定期間維持された場合にビルドアップマップを選択する。
【0034】
変換器33は、トルク目標値Tmを電圧目標値Vmに変換する。モータ・ジェネレータ5は、電圧目標値Vmに基づいて制御される。
【0035】
次に、図3のフロー図を参照して制御ユニット6が行う摩擦制動手順について説明する。制御ユニット6は、車両100が運転を開始すると、制御ユニット6は、所定の制御インターバル(例えば、2ms)をもって、図3に示す摩擦制動制御を実行する。
【0036】
最初に、ステップS1では、摩擦制動割合設定部21において、ペダルストロークSpおよび車速Vに基づいて摩擦制動割合Kを設定する。続いて、ステップS2では、各制動分ストローク設定部22において、ペダルストロークSpに摩擦制動割合Kを乗じることによって摩擦制動分ストロークSpfを設定する。
【0037】
続くステップS3では、ブレーキ液圧規範値設定部23において、Spfの値が0ではなく、摩擦制動分ストロークSpfの変化量が、所定の判定値Aの範囲内にある状態で所定期間Tを経過したか否か、すなわち摩擦制動分ストロークSpfが一定であるか否かを判定する。判定がYesの場合は、ステップS4に進み、ブレーキ液圧規範値設定部23において、通常マップを参照し、摩擦制動分ストロークSpfに応じたブレーキ液圧規範値Boを設定する。一方、判定がNoの場合は、ステップS5に進み、ブレーキ液圧規範値設定部23において、ビルドアップマップを参照し、摩擦制動分ストロークSpfに応じたブレーキ液圧規範値Boを設定する。
【0038】
ステップS4およびS5に続くステップS6では、減算器24および補正値設定部25において、ブレーキ液圧規範値Boとブレーキ液圧Bの差分ΔBを算出し、摩擦制動割合Kに応じて設定された補正ゲインGを差分ΔBに乗じて補正値Cを設定する。この補正値Cは温度変化などによって生じる負荷剛性の大きさを判断するものであり、例えばストローク目標値Smに対してのブレーキ液圧Bが高ければ負荷剛性が大きいと判定し、ストローク目標値Smに対してのブレーキ液圧Bが低ければ負荷剛性が小さいと判定し、この負荷剛性に応じて液圧規範値を変えるものである。また、予めストロークに対する負荷剛性の最大値と最小値を計測または算出して、ビルドアップマップに切り替わった際に、この最大値と最小値の間の液圧を発生させることによってペダルフィーリングを向上させることができる。
【0039】
続くステップS7では、加算器26において、ブレーキ液圧規範値Boに補正値Cを加算し、補正ブレーキ液圧規範値Bo´を設定する。そして、ステップS8では、ストローク目標値設定部28において、補正ブレーキ液圧規範値Bo´に基づいて所定のマップを参照し、モータ駆動シリンダ14のストローク目標値Smを設定する。
【0040】
ステップS9では、変換器29において、モータ駆動シリンダ14のストローク目標値Smを対応する電動サーボモータ12のモータ角目標値θtに変換し、減算器30およびモータ角フィードバック部31において、モータ角目標値θtおよびモータ角θに基づいて電動サーボモータ12のフィードバック制御を行う。
【0041】
本実施形態では、ブレーキ液圧規範値Boとブレーキ液圧Bとの差分ΔBに基づいてブレーキ液圧規範値Boを補正するため、ブレーキ液圧Bを適正な値に設定することができる。ブレーキディスク3aおよびブレーキパッド3bは、温度に依存して摩擦係数および体積が変化するため、単に、ブレーキ液圧規範値Boに対してモータ駆動シリンダ14のストローク目標値Smを予め設定したマップに基づいてモータ駆動シリンダ14を駆動制御する場合には、温度変化に伴ってブレーキ液圧Bとブレーキ液圧規範値Boとの間にずれが生じる。本実施形態では、差分ΔBに基づいてブレーキ液圧規範値Boを補正するため、ブレーキ液圧Bをブレーキ液圧規範値Boに近づけることができる。特に、ビルドアップ制御時には、ブレーキ液圧規範値Boが高められ、ブレーキディスク3aおよびブレーキパッド3bの温度上昇が顕著となるため、差分ΔBに基づいてブレーキ液圧規範値Boを補正することは、有効である。
【0042】
また、回生制動制御が実行される場合には、ディスクブレーキ3に加わる液圧が低下し、ブレーキディスク3aおよびブレーキパッド3bの温度が低下するため、補正ブレーキ液圧規範値Bo´を高める方向に補正することによって、ブレーキ液圧Bをブレーキ液圧規範値Boに近づけることができる。
【0043】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、摩擦制動装置はディスクブレーキ3に限らず、公知のドラムブレーキを適用してもよい。また、回生制動制御を行わない場合には、摩擦制動割合設定部21、各制動分ストローク設定部22、トルク目標値設定部32および変換器33を省略し、ブレーキ液圧規範値設定部23がペダルストロークSpに基づいてブレーキ液圧規範値Boを設定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…ブレーキ装置(車両用ブレーキ装置)、3…ディスクブレーキ(摩擦制動手段)、3a…ブレーキディスク、3b…ブレーキパッド、3c…ホイールシリンダ、5…モータ・ジェネレータ(回生制動手段)、6…制御ユニット(制御手段)、7…バッテリ、8…ブレーキ液圧発生装置(液圧発生手段)、9…車速センサ、11…ブレーキペダル、11a…ペダルストロークセンサ(ブレーキペダル操作量検出手段)、12…電動サーボモータ、13…ピストン、14…モータ駆動シリンダ、15…モータ角センサ、16…液圧センサ、21…摩擦制動割合設定部、22…摩擦制動分ストローク設定部、23…ブレーキ液圧規範値設定部(ブレーキ液圧規範値設定手段)、24…減算器、25…補正値設定部(補正手段)、26…加算器(補正手段)、28…ストローク目標値設定部(目標値設定手段)、29…変換器、30…減算器、31…モータ角フィードバック部、32…トルク目標値設定部、33…変換器、100…車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
与えられた目標値に応じて駆動され、ブレーキ液圧を発生する液圧発生手段と、
運転者によるブレーキペダル操作量を検出するブレーキペダル操作量検出手段と、
前記ブレーキ液圧を検出するブレーキ液圧検出手段と、
前記ブレーキペダル操作量に応じて定められた前記目標値を前記液圧発生手段に供給する制御手段とを有する車両用ブレーキ装置であって、
前記制御手段は、
前記ブレーキペダル操作量の変化量に応じて、通常マップと、前記ブレーキペダル操作量が同じ場合に通常マップよりも大きい値のブレーキ液圧規範値を設定するビルドアップマップとのいずれかを選択し、前記ブレーキペダル操作量に基づいて前記選択したマップを参照し、前記ブレーキ液圧規範値を設定するブレーキ液圧規範値設定手段と、
前記ブレーキ液圧規範値と前記ブレーキ液圧検出手段によって検出された前記ブレーキ液圧とに基づいて前記ブレーキ液圧規範値を補正する補正手段と、
補正された前記ブレーキ液圧規範値に応じて前記目標値を設定する目標値設定手段と
を有することを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【請求項2】
車輪の回転を制動すべく、電動機からなる回生制動手段を更に有し、
前記補正手段は、前記回生制動手段が制動力を発生する場合には、前記ブレーキ液圧規範値を増大させる方向に補正することを特徴とする請求項1に記載の車両用制動装置。
【請求項3】
前記液圧発生手段は、電動モータによって駆動されるピストンを備えたモータ駆動シリンダであり、
前記目標値は、電動モータの回転角または前記モータ駆動シリンダのストロークであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用制動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−144059(P2012−144059A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1475(P2011−1475)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】