説明

車両用走行抵抗監視装置

【課題】 本発明は、運転者に対し走行抵抗を抑制するように促す車両用走行抵抗監視装置の提供を目的とする。
【解決手段】 車両に発生する走行抵抗を算出する算出手段と、前記算出手段により算出された走行抵抗を前記車両が走行した区間毎に記憶する記憶手段と、前記算出手段により算出された今回の走行抵抗と前記記憶手段に記憶された過去の走行抵抗とを同一の走行区間同士や同一の走行環境条件(天候等)同士で比較する比較手段と、前記比較手段による比較結果を前記車両の運転者に報知する報知手段とを備えることを特徴とする車両用走行抵抗監視装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行抵抗を監視する車両用走行抵抗監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、走行抵抗を用いて駆動力制御する車両制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。本車両制御装置は、変速機のフリクション、走行風等を考慮して測定された基準走行抵抗に基づいて駆動力制御することによって、その駆動力制御の精度を向上させるものである。
【特許文献1】特開2000−257491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、走行抵抗が大きくなるにつれて燃費が悪くなる等の問題が発生する。それにもかかわらず、運転者は、不要な荷物を搭載したまま運転したりする等の走行抵抗に影響を与える車両状態で運転操作をしてしまいがちであり、結果として燃費が悪くなってしまう。従来技術の車両制御装置は、運転者からの運転操作入力と現在の車両状態を前提として最適な駆動力制御を行うものであるため、このような懸念を解決することはできなかった。
【0004】
そこで、本発明は、運転者に対し走行抵抗を抑制するように促す車両用走行抵抗監視装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の一局面によれば、
車両に発生する走行抵抗を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された走行抵抗を前記車両が走行した区間毎に記憶する記憶手段と、
前記算出手段により算出された今回の走行抵抗と前記記憶手段に記憶された過去の走行抵抗とを同一走行区間同士で比較する比較手段と、
前記比較手段による比較結果を前記車両の運転者に報知する報知手段とを備えることを特徴とする車両用走行抵抗監視装置が提供される。
【0006】
これによって、今回の走行に影響する走行抵抗の度合いを運転者が認識することができるようになるので、運転者に対し走行抵抗を抑制するように促すことができる。
【0007】
また、前記比較手段により比較された同一走行区間は、日時や気象のような走行環境条件も同一であるようにしてもよい。これによって、走行区間が同じでも走行環境条件が異なる場合には算出された走行抵抗が異なることがあるため、同一の走行環境条件で比較することによって、本車両用走行抵抗監視装置の精度をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、運転者に対し走行抵抗を抑制するように促すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。図1は、本発明における車両用走行抵抗監視装置のシステム構成を示す図の一例である。
【0010】
走行抵抗監視ECU10の機能の一つとして、車両に発生する走行抵抗を算出する機能を有する。走行抵抗Rは、例えば、数式『R=Kr・W+W・sinθ+Cd・ρ・(A・V/2)』に基づいて算出される。Krは転がり抵抗係数、Wは車体重量、θは道路勾配、Cdは空気抵抗係数、ρは空気密度、Aは車体前面投影面積、Vは車速を表す。空気密度ρは、気温T、湿度Hまたは気圧Pによって変化するため、所定の関係式によって補正が必要である。また、道路勾配θは、予め求められた所定の関数F(a,W,Th,N)によって算出される。Fは、実際の加速度a、実際のスロットル弁開度Th、実際のエンジン回転数Nの関数である。
【0011】
また、走行抵抗監視ECU10の機能の一つとして、算出された今回の走行抵抗と後述する走行抵抗データベース16に記憶された過去に算出された走行抵抗の比較結果を運転者に対しディスプレイ13やスピーカ14によって案内する機能も有する。
【0012】
ナビゲーションECU11は、GPS(Global Positioning System)受信機によるGPS衛星からの受信情報と地図データベース内の地図情報に基づいて、自車の地図上での位置を認識することができる。自車の地図上での位置を認識したナビゲーションECU11は、経路案内機能を使って、目的地までの所望の最適経路を探索することができる。
【0013】
また、ナビゲーションECU11は、経路案内機能のほかにも乗員に対する各種情報提供機能を有しており、その機能に関する情報を複数有している。それらの情報の中には、例えば、気象情報(天候情報、気温情報、気圧情報)、日時情報、運転者情報がある。なお、気象情報は、日照センサ、温度センサ及びレインセンサ等から得られる。必ずしも気象情報を検出するセンサが必要というわけではなく、ワイパーをある一定時間動作させた場合には、天気は雨と判断することによって、代用することもできる。また、車両外部から無線通信回線を介して受信した気象情報に基づいて天気を判断することによって、代用することもできる。運転者情報は、今回及び過去において車両を運転していたときの運転者を特定するための情報である。
【0014】
エンジンECU15は、車速センサ、エンジン回転数センサ及びアクセルセンサ等による検出値や他のECUからの制御信号に基づいて車両の走行を制御する。エンジンECU15は、自身が有する車速情報、エンジン回転数情報、アクセル開度情報及び燃料噴射量情報等を走行抵抗監視ECU10に走行抵抗の算出のため提供する。
【0015】
走行抵抗データベース16は、走行抵抗監視ECU10によって算出された走行抵抗をその際に車両が走行した区間毎に記憶する。また、その際の日時や気象のような走行環境情報も共に記憶する。これらの走行環境情報は、ナビゲーションECU11から入手される。タッチパネルディスプレイ等の所定の入力手段を介して、運転者がこれらの走行環境情報を入力するようにしてもよい。例えば、図2に示されるように、出発地から目的地までの区間毎(区間A,B,・・・)に走行抵抗が記憶されるとともに、その走行の際の、晴や雨等の天候情報、運転者を特定する情報及び走行時間帯情報が記憶される。なお、区間は、出発地から目的地までの所定距離毎、交差点毎等に基づいて設定される。図2の走行抵抗の欄に記載された「a*」「b*」は、*の値が大きいほど走行抵抗が大きくなることを示す。また、データベースを簡略するため、例えば、区間毎の走行抵抗とともに記憶されるものとして、天候情報のみが記憶されるようにしてもよい。
【0016】
それでは、本発明の車両用走行抵抗監視装置の実施例について図を参照しながら説明する。
【0017】
まず、走行抵抗データベース16に走行抵抗等の情報を記憶する過程について図2及び図3を参照しながら説明する。図3は走行抵抗データベース16に走行抵抗等の情報を記憶するフローの一例である。走行抵抗等の情報を記憶させようとする区間が運転者からタッチパネル等を介して入力されると、走行抵抗監視ECU10は、ナビゲーションECU11から、走行抵抗等の情報を記憶する走行区間に関する情報を読み込む。(ステップ110)。それとともに、走行抵抗監視ECU10は、その走行区間を走行する際の走行環境情報(気象情報(天候情報、気温情報、気圧情報)、日時情報及び運転者情報)をナビゲーションECU11等から読み込む(ステップ120)。そして、走行抵抗監視ECU10は、エンジンECU15からの車速情報、エンジン回転数情報、アクセル開度情報及び燃料噴射量情報等に基づいてその走行区間の走行抵抗の平均値を算出する(ステップ130)。そして、走行抵抗監視ECU10は、算出した走行抵抗を走行区間毎に走行環境情報とともに走行抵抗データベース16に記憶する(ステップ140)。なお、すでに同条件の走行抵抗が走行抵抗データベース16に記憶されている場合には、今回算出された走行抵抗とすでに記憶されている走行抵抗の平均をとった走行抵抗を走行抵抗データベース16に記憶する。また、今回算出された走行抵抗を走行抵抗データベース16に記憶させるか否かを任意に選択できるようにしてもよい。以上の記憶フローが走行区間毎に実行されることによって、図2に示されるように、実際の走行により得られる各走行区間の走行抵抗のデータベースが構築される。
【0018】
次に、今回と過去の走行抵抗の比較結果を運転者に報知するまでの過程について説明する。図4は、今回と過去の走行抵抗の比較結果を運転者に報知するまでのフローの一例である。走行抵抗監視ECU10は、走行区間に関する情報と走行環境情報をナビゲーションECU11等から読み込むと(ステップ200)、それらの情報に基づいてその走行区間の今回の走行抵抗の平均値を算出する(ステップ210)。そして、走行抵抗監視ECU10は、ステップ200で読み込んだ今回の走行区間及び走行環境情報と一致する過去の走行抵抗を走行抵抗データベース16から読み込む(ステップ220)。そして、走行抵抗監視ECU10は、ステップ210で算出された今回の走行抵抗とステップ220で読み込まれた過去の走行抵抗とを比較する(ステップ230)。今回の走行抵抗のほうが大きければ、今回の走行区間の走行抵抗が過去に比べ大きいことを知らせるため、走行抵抗監視ECU10は、ディスプレイ13及びスピーカ14を介して運転者にその旨の案内やウォーニングを行う(ステップ240)。なお、車両が目的地まで達していない間は、走行抵抗データベース16内の過去の情報に基づいてその目的地までの走行抵抗の予測値を算出することによって、上記のような案内やウォーニングを行う。
【0019】
図2を用いて具体的に説明すると、例えば、今回の走行区間が「区間A」であり、その際の、天候が「雨」、運転者が「甲」、走行時間帯が「7:00台」という条件の場合、その走行区間の今回の走行抵抗の平均値が「a7」と算出されたとする。そして、図2の中から、今回の走行区間及び走行環境情報と一致する条件であるNo.2の走行抵抗「a5」が過去の走行抵抗として読み込まれる。そして、今回の走行抵抗「a7」と過去の走行抵抗「a5」が比較され、今回の走行抵抗のほうが大きいので、運転者に対しその旨の案内やウォーニングが行われる。
【0020】
以上のことによって、今回の走行に影響する走行抵抗の度合いを運転者が認識することができるようになるので、運転者に対し走行抵抗を抑制するように促すことができる。例えば、運転者は、走行抵抗が大きいことに気づくことができるので、不要な荷物を車から降ろしたり、タイヤの空気圧や駆動系に異常がないかをチェックしたり、運転操作を滑らかにして、走行抵抗を減らして燃費を良くしようとすることができる。
【0021】
また、天候、運転者、走行時間帯等、細かく区別して走行抵抗を記憶しておくことによって、その状況に合わせた過去と今回の走行抵抗をより細かく比較することができるようになる。
【0022】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0023】
走行抵抗を算出する走行区間は、出発地から目的地までの任意の区間で行われるようにしてもよい。例えば、アクセル操作の安定した区間での走行抵抗の比較をしたい場合には、ナビゲーションECU11の地図情報やエンジンECU15のアクセル開度情報に基づいて走行抵抗監視ECU10がその区間での走行抵抗の算出を行い、その比較結果を運転者にディスプレイ13等を介して提示する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明における車両用走行抵抗監視装置のシステム構成を示す図の一例である。
【図2】走行抵抗データベース16内の情報を示す図の一例である。
【図3】走行抵抗データベース16に走行抵抗等の情報を記憶するフローの一例である。
【図4】今回と過去の走行抵抗の比較結果を運転者に報知するまでのフローの一例である。
【符号の説明】
【0025】
10 走行抵抗監視ECU
11 ナビゲーションECU
13 ディスプレイ
14 スピーカ
15 エンジンECU
16 走行抵抗データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に発生する走行抵抗を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された走行抵抗を前記車両が走行した区間毎に記憶する記憶手段と、
前記算出手段により算出された今回の走行抵抗と前記記憶手段に記憶された過去の走行抵抗とを同一走行区間同士で比較する比較手段と、
前記比較手段による比較結果を前記車両の運転者に報知する報知手段とを備えることを特徴とする車両用走行抵抗監視装置。
【請求項2】
前記比較手段により比較された同一走行区間は、日時や気象のような走行環境条件も同一である請求項1記載の車両用走行抵抗監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−168474(P2006−168474A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−361792(P2004−361792)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】