説明

車両用運転支援装置

【課題】運転者による自発的な安全運転の実行を適切に促す。
【解決手段】車両用運転支援装置10は、適切運転検出部22又は危険運転検出部23により各運転動作が検出された場合に、この検出時前後の所定時間に亘って車両状態センサ13により検出された車両情報を記憶する車両情報記憶部24と、適切運転検出部22により適切な運転動作が検出された場合のみに適切な運転動作に対する報知を行なう報知制御部26と、適切運転検出部22により適切な運転動作が検出された場合に、車両情報記憶部24に記憶された車両情報に基づき、自車両の運転終了後において、適切な運転動作の回顧を支援する適切運転回顧支援部25と、危険運転検出部23により危険な運転動作が検出された場合に、車両情報記憶部24に記憶された車両情報に基づき、自車両の運転終了後において、危険な運転動作の回顧を支援する危険運転回顧支援部27とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両の運転者の運転結果情報を平均的な運転結果情報と比較し、この比較結果に基づく評価を運転者に通知する運転支援装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、従来、例えば運転規範と運転者の運転行動との差分と、運転者の運転意思とに基づき、運転者に運転アドバイスを通知する装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−171060号公報
【特許文献2】特開2006−350567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る各装置によれば、運転者の運転動作の良し悪しにかかわらずに通知が行なわれることから、例えば運転中に運転動作の悪い点が指摘されると、運転者の感情が乱されるだけで、運転者の運転動作を向上させることができない虞がある。また、例えば運転終了時であっても、一方的に運転動作の悪い点が指摘されるだけでは、運転者が認識困難な場合があり、運転動作を適正に向上させることができないという問題が生じる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、運転者による自発的な安全運転の実行を適切に促すことが可能な車両用運転支援装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係る車両用運転支援装置は、自車両の車両状態を検出する自車両状態検出手段(例えば、実施の形態での車両状態センサ13)と、前記自車両状態検出手段により検出された前記車両状態に基づき自車両の走行中に運転者により実行される適切な運転動作を検出する適切運転検出手段(例えば、実施の形態での適切運転検出部22)と、前記自車両状態検出手段により検出された前記車両状態に基づき自車両の危険な運転動作を検出する危険運転検出手段(例えば、実施の形態での危険運転検出部23)と、前記適切運転検出手段または前記危険運転検出手段により各前記運転動作が検出された場合に、各前記運転動作の検出時前後の所定時間に亘って前記自車両状態検出手段により検出された前記車両情報を記憶する記憶手段(例えば、実施の形態での車両情報記憶部24)と、前記適切運転検出手段により前記適切な運転動作が検出された場合のみに報知を行なう適切運転報知手段(例えば、実施の形態での報知制御部26および報知装置15)と、前記適切運転検出手段により前記適切な運転動作が検出された場合に、前記記憶手段に記憶された前記車両情報に基づき、自車両の運転終了後において、前記適切な運転動作の運転者による回顧を支援する適切運転回顧支援手段(例えば、実施の形態での適切運転回顧支援部25)と、前記危険運転検出手段により前記危険な運転動作が検出された場合に、前記記憶手段に記憶された前記車両情報に基づき、自車両の運転終了後において、前記危険な運転動作の運転者による回顧を支援する危険運転回顧支援手段(例えば、実施の形態での危険運転回顧支援部27)とを備える。
【0006】
さらに、本発明の第2態様に係る車両用運転支援装置は、前記適切運転回顧支援手段または前記危険運転回顧支援手段により各前記運転動作の運転者による回顧が支援された場合に前記適切運転報知手段の作動を許可する許可手段(例えば、実施の形態での報知制御部26が兼ねる)を備える。
【0007】
さらに、本発明の第3態様に係る車両用運転支援装置では、前記危険運転回顧支援手段は、走行中の運転動作に対する運転者の感想を照会し、該照会に対して運転者が危険を感じたと回答した場合に、前記危険な運転動作の運転者による回顧を支援する。
【0008】
さらに、本発明の第4態様に係る車両用運転支援装置では、前記適切運転回顧支援手段および前記危険運転回顧支援手段は、自車両の速度がゼロである継続時間が所定時間以上である場合と、自車両のパーキングブレーキの作動時と、自車両の動力伝達機構がニュートラル状態である場合と、自車両の前記動力伝達機構がロック状態である場合とのうち、少なくとも何れか1つの場合かつ運転者が情報提供可能な場合に動作可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1態様に係る車両用運転支援装置によれば、適切な運転動作が検出された場合には、運転中であっても報知を行なうことから、適切な運転動作の実行をより一層促すことができる。また、危険な運転動作が検出された場合には、運転中の報知は行なわないことから、運転者の感情を乱して運転動作の悪化を招いてしまうことを防止することができる。
また、運転終了後に、適切な運転動作および危険な運転動作の運転者による自発的な回顧を支援することから、運転者による冷静な認識が伴った運転動作の向上を適切に促すことができる。
【0010】
さらに、本発明の第2態様に係る車両用運転支援装置によれば、運転者の自発的な意思に応じて各運転動作の回顧が支援された場合に、適切な運転動作に対する報知を許可することから、運転者による運転動作の改善意欲を適切に向上させることができ、運転中の報知に運転者が違和感を感じてしまうことを防止することができる。
【0011】
さらに、本発明の第3態様に係る車両用運転支援装置によれば、走行中の運転動作に危険を感じたにもかかわらずに自発的な運転動作の回顧を行なわない運転者に対しても、一方的な指摘を行なわずに、走行中の運転動作に対する運転者の感想を照会することで、自発的に運転動作の回顧を行なうように誘導することができ、運転者による冷静な認識が伴った運転動作の向上を適切に促すことができる。
【0012】
さらに、本発明の第4態様に係る車両用運転支援装置によれば、自車両の運転が終了し、運転者に余裕がある状態で各運転動作の回顧を支援することから、運転者による冷静な分析を促し、運転動作の改善の認識を深めさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用運転支援装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る自車両のカーブ通過時の位置および各種の車両情報の目標値の例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る自車両のカーブ通過時の前後加速度および横加速度の摩擦円データの例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る自車両の交差点通過時の位置および各種の車両情報の目標値の例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る自車両の踏切通過時の位置および各種の車両情報の目標値の例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る車両用運転支援装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る車両用運転支援装置について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による車両用運転支援装置10は、例えば図1に示すように、スイッチおよびキーボードおよび音声入力装置などの入力装置11と、ナビゲーション装置12と、車両状態センサ13と、処理装置14と、報知装置15とを備えて構成されている。
【0015】
ナビゲーション装置12は、例えば人工衛星を利用して車両の位置を測定するためのGPS(Global Positioning System)信号などの測位信号を受信すると共に、車両状態センサ13から出力される車両の速度およびヨーレートなどの検出信号を取得する。そして、受信した測位信号によって、あるいは、速度およびヨーレートなどの検出信号に基づく自律航法の算出処理によって、車両の現在位置を算出する。
【0016】
また、ナビゲーション装置12は、報知装置15のモニタ(図示略)に地図を表示するための地図表示用のデータおよび車両の現在位置に基づくマップマッチングの処理に必要とされる道路座標データを地図データとして備えている。さらに、ナビゲーション装置12は、経路探索や経路誘導などの処理に必要とされるデータ、例えば交差点および分岐点などの所定位置の緯度および経度からなる点であるノードと各ノード間を結ぶ線であるリンクとからなる道路データを地図データとして備えている。そして、ノードおよびリンクには各種の情報が付加されている。
なお、ノードおよびリンクに対する各種の付加情報は、例えば各地点での過去の事故発生情報、交通量、操作者により入力された危険情報などを備えている。
【0017】
そして、ナビゲーション装置12は、道路データに対して、測位信号および自律航法の算出処理のそれぞれ、又は、何れか一方から得られる車両の現在位置の情報に基づいてマップマッチングを行ない、現在位置の検出結果を補正する。
また、ナビゲーション装置12は、例えば車両の経路探索や経路誘導などの処理を実行し、道路データと共に、例えば目的地までの経路情報や各種の付加情報を報知装置15のモニタに出力すると共に、各種の音声メッセージを報知装置15のスピーカ(図示略)から出力する。
【0018】
車両状態センサ13は、例えば、自車両の速度(車速)を検出する車速センサと、車体に作用する加速度を検知する加速度センサと、車体の姿勢や進行方向を検知するジャイロセンサと、ヨーレート(車両重心の上下方向軸回りの回転角速度)を検知するヨーレートセンサと、例えば運転者による運転操作(例えば、アクセルペダルの踏み込み操作量、ブレーキペダルの踏み込み操作量、ステアリングホイールの舵角、方向指示器の作動開始および作動停止、シフトポジション、ワイパースイッチの作動開始および作動停止など)を検出する各センサとなどを備えて構成され、自車両の各種の車両情報の検出結果の信号を出力する。
【0019】
処理装置14は、例えば、走行位置情報取得部21と、適切運転検出部22と、危険運転検出部23と、車両情報記憶部24と、適切運転回顧支援部25と、報知制御部26と、危険運転回顧支援部27とを備えて構成されている。
【0020】
走行位置情報取得部21は、ナビゲーション装置12に記憶されている地図データと、ナビゲーション装置12により取得あるいは検出された各種情報とに基づき、自車両の走行位置に係る情報を取得する。そして、走行位置情報取得部21は、取得した情報が所定情報である場合に環境フラグのフラグ値に「1」を設定する。
【0021】
例えば、走行位置情報取得部21は、走行位置の種別が所定種別(交差点、カーブ、車線変更可能な走行路、踏切、合流箇所、規制区間、市街地、細街路、生活道路、悪天候箇所など)である場合に環境フラグのフラグ値に「1」を設定する。そして、走行位置に係る情報として、道路形状(交差点の大きさ、カーブの曲率、車線数、幅員など)および規制情報などと、自車両の外界に存在する物体を検出するレーダ装置やカメラなどの外界センサ(図示略)による検知結果(例えば、他車両や歩行者や障害物の有無など)の情報とを取得する。
【0022】
適切運転検出部22は、車両状態センサ13から出力される自車両の各種の車両情報の検出結果の信号と、走行位置情報取得部21により取得された自車両の走行位置に係る情報とに基づき、自車両の走行中に運転者により実行される適切な運転動作を検出しており、例えば目標運転動作算出部22aと安全運転度算出部22bとを備えている。
【0023】
目標運転動作算出部22aは、例えば走行位置情報取得部21により取得された自車両の走行位置に係る情報に基づき、自車両が走行位置にて適正な走行を維持するために必要とされる目標運転動作を算出する。
安全運転度算出部22bは、例えば走行位置情報取得部21により取得された自車両の走行位置に係る情報と、目標運転動作算出部22aにより算出された目標運転動作と、車両状態センサ13から出力される自車両の各種の車両情報の検出結果の信号とに基づき、走行位置での運転者の運転動作の安全運転度を算出する。
【0024】
この安全運転度は、例えば、走行位置情報取得部21により取得された自車両の走行位置に係る情報に応じた走行環境に対して目標運転動作算出部22aにより算出された目標運転動作と、車両状態センサ13から出力される検出結果に応じた実際の運転動作との偏差に基づき算出される。
例えば下記数式(1)に示す安全運転度Scoreは、各運転動作(例えば、カーブ通過時の運転動作、交差点通過時の運転動作など)毎に変化するタスク変数taskと、安全運転度前回値ZScoreと、ヨーレートゲインKyawと、目標ヨーレートdyawと、ヨーレート検出値yawと、横加速度ゲインKygと、目標横加速度dygと、横加速度検出値ygと、速度ゲインKvelと、目標速度dvelと、速度検出値velと、前後加速度ゲインKgと、目標前後加速度dgと、前後加速度検出値gと、停止時間の偏差(例えば、踏切などの停止位置での停止時間の目標値と検出値との偏差など)stop_tとにより記述される。
【0025】
【数1】

【0026】
例えば図2(A)〜(C)に示すように、自車両Pのカーブの通過時おいては、走行位置情報取得部21により取得されたカーブの形状値(例えば、カーブの曲率、長さなど)に応じた横加速度およびアクセルペダル操作量APおよびブレーキペダルの操作量BPおよびステアリングホイールの操作量SWの各目標値(つまり、カーブを適正に通過するための各目標値)と、実際に運転者により実行された運転動作に応じた各実値との偏差が所定タイミング(例えば、カーブ通過時の各時刻t1,t2,t3毎など)で算出される。そして、各偏差が所定値以下となって小さい場合に、運転者による適切な運転動作が検出されたと判定される。
【0027】
なお、自車両のカーブの通過時おいては、例えば図2(A)〜(C)に示すような各車両状態量の目標値と実値との時系列データでの比較に限らず、例えば図3(A),(B)に示すような前後加速度と横加速度との摩擦円データにおいて、前後加速度および横加速度の実値によるデータが、予め設定された所定の領域(例えば、図3(A)に示す安全領域など)内に存在するか否か、さらに、前後加速度および横加速度の実値によるデータの変動(例えば、図3(B)に示す実線のデータに対する点線のデータの変動など)が、所定の変動範囲内であるか否かなどが判定されてもよい。
【0028】
また、例えば図4(A)〜(C)に示すように、自車両Pの交差点の通過時おいては、走行位置情報取得部21により取得された交差点の形状値(例えば、交差点の大きさなど)および外界センサ(図示略)による検知結果(例えば、他車両や歩行者や障害物の有無など)の情報に応じた方向指示器の操作開始タイミング(例えば、時刻t1など)および速度Velおよび一時停止期間に係るブレーキペダルの操作量BPの変化および横加速度の各目標値(つまり、滑らかな減速および一時停止および加速などにより交差点を適正に通過するための各目標値)と、実際に運転者により実行された運転動作に応じた各実値との偏差が所定タイミング(例えば、交差点通過時の各時刻t1,t2,t3,t4毎など)で算出される。そして、各偏差が所定値以下となって小さい場合に、運転者による適切な運転動作が検出されたと判定される。
【0029】
また、例えば図5(A),(B)に示すように、自車両Pの踏切の通過時おいては、走行位置情報取得部21により取得された踏切の形状値(例えば、踏切の長さなど)および外界センサ(図示略)による検知結果(例えば、遮断機の作動有無など)の情報に応じた速度Velおよび一時停止期間に係るブレーキペダルの操作量BPの変化の各目標値(つまり、滑らかな減速および一時停止および再発進などにより踏切を適正に通過するための各目標値)と、実際に運転者により実行された運転動作に応じた各実値との偏差が所定タイミング(例えば、踏切通過時の各時刻t1,t2毎など)で算出される。そして、各偏差が所定値以下となって小さい場合に、運転者による適切な運転動作が検出されたと判定される。
【0030】
また、例えば車線変更可能な走行路での車線変更の実行時においては、走行位置情報取得部21により取得された走行路の形状値(例えば、幅員、車線数など)および外界センサ(図示略)による検知結果(例えば、他車両の有無など)の情報に応じた方向指示器の操作開始タイミングおよび速度Velおよびステアリングホイールの操作量SWの各目標値(つまり、車線変更を適正に実行するための各目標値)と、実際に運転者により実行された運転動作に応じた各実値との偏差が所定タイミングで算出される。そして、各偏差が所定値以下となって小さい場合に、運転者による適切な運転動作が検出されたと判定される。
【0031】
また、例えば走行路の合流箇所の通過時においては、走行位置情報取得部21により取得された走行路の形状値(例えば、幅員、車線数など)および外界センサ(図示略)による検知結果(例えば、他車両の有無など)の情報に応じた方向指示器の操作開始タイミングおよび速度Velおよびステアリングホイールの操作量SWの各目標値(つまり、自車両の合流あるいは他車両の合流を適正に実行するための各目標値)と、実際に運転者により実行された運転動作に応じた各実値との偏差が所定タイミングで算出される。そして、各偏差が所定値以下となって小さい場合に、運転者による適切な運転動作が検出されたと判定される。
【0032】
また、例えば規制区間、市街地、細街路、生活道路、悪天候箇所などの通過時においては、走行位置情報取得部21により取得された走行路の情報および外界センサ(図示略)による検知結果(例えば、他車両や歩行者の有無など)の情報に応じた速度Velなどの目標値(つまり、適正に走行するための各目標値)と、実際に運転者により実行された運転動作に応じた各実値との偏差が所定タイミングで算出される。そして、各偏差が所定値以下となって小さい場合に、運転者による適切な運転動作が検出されたと判定される。
【0033】
さらに、この安全運転度は運転者の運転動作の技量および技量の上達状態に応じて補正される。例えば、運転者の運転動作の技量が高くなることに伴い、安全運転度の算出結果が安全側に評価され難くなるように、運転者が安全運転度に応じて褒められ過ぎることが無いようにして補正される。また、例えば運転者の運転動作の技量の上達が鈍い場合には、安全運転度の算出結果が安全側に評価され易くなるように、運転者が安全運転度に応じて褒められ易くなるようにして補正される。
【0034】
危険運転検出部23は、車両状態センサ13から出力される自車両の各種の車両情報の検出結果の信号、または、走行位置情報取得部21により取得された自車両の走行位置に係る情報に基づき、自車両の走行中に運転者が危険を感じる危険な運転動作を検出する。
例えば、危険運転検出部23は、車両状態センサ13により急激な加減速や過大な横加速度などが検出された場合、あるいは、曲率が大きなカーブや狭い交差点の通過などが検出された場合などにおいて、危険な運転動作が実行されたと検出する。
【0035】
車両情報記憶部24は、適切運転検出部22または危険運転検出部23により適切な運転動作または危険な運転動作が検出された場合に、各運転動作の検出時前後の所定時間に亘って車両状態センサ13から出力される自車両の各種の車両情報の検出結果を記憶する。
【0036】
適切運転回顧支援部25は、自車両の走行中に適切運転検出部22により適切な運転動作が検出された場合に、自車両の走行中での報知装置15による報知の実行を制御することを指示する指令信号を報知制御部26に出力する。
なお、報知制御部26は、適切運転回顧支援部25または危険運転回顧支援部27により各運転動作の運転者による回顧が支援された場合、あるいは、所定時点(例えば、車両の出荷時など)から初めて自車両の走行中に適切運転検出部22により適切な運転動作が検出された場合、あるいは、運転者による所定の入力操作が実行された場合などにおいて、自車両の走行中での報知装置15による報知の実行を許可する。そして、車両の出荷時などにおける初期設定では、自車両の走行中での報知装置15による報知の実行を禁止に設定している。
【0037】
そして、報知制御部26は、自車両の走行中での報知装置15による報知の実行が許可された状態で、自車両の走行中に適切運転検出部22により適切な運転動作が検出された場合には、自車両の走行中での報知装置15による報知の実行を制御する。
また、報知制御部26は、自車両の走行中において、例えばカーブ通過時などの車体姿勢が安定していない状態では、自車両の走行中での報知装置15による報知の実行を禁止してもよい。
また、報知制御部26は、車両の始動時などにおいて、運転者の気分を和らげるための適宜のコミュニケーションからなる報知の実行を制御してもよい。
【0038】
自車両の走行中に適切運転検出部22により適切な運転動作が検出されたことに起因する自車両の走行中での報知装置15による報知は、例えば運転者の運転操作の操作負荷が所定値以上に大きい場合などにおいて、スピーカ(図示略)から出力される所定の音(例えば、オルゴールや鳥のさえずりなど)や音声などによる聴覚的な報知と、例えば運転者の運転操作の操作負荷が所定値未満に小さい場合などにおいて、モニタ(図示略)に表示される所定の表示や灯体(図示略)の点灯や点滅などによる視覚的な報知となどである。
なお、これらの報知の形態は、所望の興趣性を維持するために、例えば操作者により適宜に変更可能とされてもよいし、例えば報知回数などに応じて適宜に変更されてもよい。
【0039】
また、適切運転回顧支援部25は、自車両の走行中に適切運転検出部22により適切な運転動作が検出された場合に、自車両の運転終了後において、車両情報記憶部24に記憶された車両情報に基づき、適切な運転動作の運転者による回顧を支援する。
この支援の実行が許可されるのは、例えば、車両状態センサ13により検出される自車両の速度がゼロである継続時間が所定時間以上である場合と、車両状態センサ13により検出される自車両のパーキングブレーキの状態が作動状態である場合と、車両状態センサ13により検出される自車両の動力伝達機構(変速機など)の状態がニュートラル状態である場合と、車両状態センサ13により検出される自車両の動力伝達機構の状態がロック状態である場合とのうち、少なくとも何れか1つの場合、かつ運転者が情報提供可能な場合である。
【0040】
例えば、適切運転回顧支援部25は、自車両の走行中に適切運転検出部22により適切な運転動作が検出された場合に、自車両の運転終了後に、適切な運転動作が検出されたことを示す所定の報知(例えば、所定の灯体の点灯など)を行なう。そして、この報知に応じて、操作者による所定の入力操作(例えば、所定スイッチの操作など)が行なわれると、適切運転回顧支援部25は、例えば、順次、操作者に対する適宜のコミュニケーションと、自車両の走行中に適切運転検出部22により検出された適切な運転動作の内容説明と、この適切な運転動作の作用効果の内容説明と、関連情報リンクの提示となどからなる報知の実行の制御を報知制御部26に指示する。
なお、関連情報リンクは、例えば、適切な運転動作の実行および向上を促す各種の情報からなる知恵袋と、事故統計のデータと、事故多発地点などの情報からなる危険予知マップと、交通規則に係るデータと、実走データと推奨走行データとの比較データとなどである。
【0041】
危険運転回顧支援部27は、自車両の走行中に危険運転検出部23により危険な運転動作が検出された場合に、自車両の走行中での報知装置15による報知の実行を禁止することを指示する指令信号を報知制御部26に出力する。
【0042】
危険運転回顧支援部27は、自車両の走行中に危険運転検出部23により危険な運転動作が検出された場合に、自車両の運転終了後において、車両情報記憶部24に記憶された車両情報に基づき、危険な運転動作の運転者による回顧を支援する。
この支援の実行が許可されるのは、例えば、車両状態センサ13により検出される自車両の速度がゼロである継続時間が所定時間以上である場合と、車両状態センサ13により検出される自車両のパーキングブレーキの状態が作動状態である場合と、車両状態センサ13により検出される自車両の動力伝達機構(変速機など)の状態がニュートラル状態である場合と、車両状態センサ13により検出される自車両の動力伝達機構の状態がロック状態である場合とのうち、少なくとも何れか1つの場合、かつ運転者が情報提供可能な場合である。さらに、危険運転回顧支援部27は、運転者が提供可能な情報として、例えば、自車両の運転終了後において、走行中の運転動作に対する運転者の感想を照会したことに対して、危険を感じたという運転者による回答を取得した場合に、危険な運転動作の運転者による回顧を支援する。
【0043】
例えば、危険運転回顧支援部27は、自車両の走行中に危険運転検出部23により危険な運転動作が検出された場合に、自車両の運転終了後に、危険な運転動作が検出されたことを示す所定の報知(例えば、所定の灯体の点灯など)を行なう。そして、この報知に応じて、操作者による所定の入力操作(例えば、所定スイッチの操作など)が行なわれると、危険運転回顧支援部27は、例えば、順次、操作者に対する適宜のコミュニケーションと、走行中の運転動作に対する運転者の感想の照会と、該照会に対して運転者が危険を感じたと回答した場合に、自車両の走行中に危険運転検出部23により検出された危険な運転動作の内容を運転者に選択可能に提示する内容説明と、運転者の心理状態の照会および心理状態に係る各種情報の提示となどからなる報知の実行の制御を報知制御部26に指示する。
【0044】
なお、適切運転回顧支援部25および危険運転回顧支援部27は、自車両の走行中に適切運転検出部22および危険運転検出部23により検出された各運転動作などの各種の情報を外部のサーバ装置などに格納し、これらの情報およびこれらの情報に基づき生成された新たな情報などを、例えば運転者の自宅などに設置された適宜の端末装置によって取得可能としてもよい。
【0045】
なお、報知装置17は、例えば、視覚的伝達装置と、聴覚的伝達装置とを備えて構成されている。
視覚的伝達装置は、例えば車両に搭載されたナビゲーション装置12のモニタなどであって、報知制御部26から出力される制御信号に応じて、例えばモニタに所定の文字情報や画像情報を表示したり、灯体を点灯あるいは点滅させる。
聴覚的伝達装置は、例えばスピーカなどであって、報知制御部26から出力される制御信号に応じて所定の警報音や音声などを出力する。
【0046】
本実施の形態による車両用運転支援装置10は上記構成を備えており、次に、この車両用運転支援装置10の動作について説明する。
【0047】
先ず、例えば図6に示すステップS01においては、環境フラグのフラグ値が「1」であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS02に進む。
そして、ステップS02においては、車両状態センサ13により検出された各種の車両情報を記憶する。
そして、ステップS03においては、走行位置情報取得部21により取得された自車両の走行位置に係る情報に基づき、自車両が走行位置にて適正な走行を維持するために必要とされる目標運転動作を算出する。
【0048】
そして、ステップS04においては、例えば走行位置情報取得部21により取得された自車両の走行位置に係る情報と、目標運転動作算出部22aにより算出された目標運転動作と、車両状態センサ13から出力される自車両の各種の車両情報の検出結果の信号とに基づき、走行位置での運転者の運転動作の安全運転度を算出する。
そして、ステップS05においては、自車両の走行中に運転者による適切な運転動作が検出されたか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS10に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS06に進む。
【0049】
そして、ステップS06においては、車両状態センサ13により検出された各種の車両情報を記憶する。
そして、ステップS07においては、運転者による適切な運転動作に対して、自車両の走行中での報知の実行が許可されているか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS13に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS08に進む。
そして、ステップS08においては、自車両の車体姿勢が安定しているか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS08の判定処理の実行を繰り返す。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS09に進む。
そして、ステップS09においては、運転者による適切な運転動作に対して、自車両の走行中での報知装置15による報知を実行し、後述するステップS13に進む。
【0050】
また、ステップS10においては、自車両の走行中に運転者による危険な運転動作(ヒヤリハット;「ひやり」とする、「はっと」する運転動作)が検出されたか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS11に進み、このステップS11においては、車両状態センサ13により検出された各種の車両情報を記憶し、後述するステップS13に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS12に進み、このステップS12においては、この時点で記憶している各種の車両情報を消去してリセットし、エンドに進む。
【0051】
そして、ステップS13においては、運転終了であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS14に進む。
そして、ステップS14においては、運転者による運転動作の回顧要求があるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS15に進む。
そして、ステップS15においては、運転者による運転動作の回顧を支援する報知を実行する。
そして、ステップS16においては、運転者による適切な運転動作に対して、報知の実行が許可されているか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS17に進み、このステップS17においては、運転者による適切な運転動作に対して、報知の実行を許可し、エンドに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、エンドに進む。
【0052】
上述したように、本実施の形態による車両用運転支援装置10によれば、適切な運転動作が検出された場合には、運転中であっても報知を行なうことから、適切な運転動作の実行をより一層促すことができる。
また、危険な運転動作(ヒヤリハット;「ひやり」とする、「はっと」する運転動作)が検出された場合には、運転中の報知は行なわないことから、運転者の感情を乱して運転動作の悪化を招いてしまうことを防止することができる。
また、運転終了後に、適切な運転動作および危険な運転動作の運転者による自発的な回顧を支援することから、運転者による冷静な認識が伴った運転動作の向上を適切に促すことができる。
【0053】
さらに、運転者の自発的な意思に応じて各運転動作の回顧が支援された場合に、適切な運転動作に対する報知を許可することから、運転者による運転動作の改善意欲を適切に向上させることができ、運転中の報知に運転者が違和感を感じてしまうことを防止することができる。
さらに、走行中の運転動作に危険を感じたにもかかわらずに自発的な運転動作の回顧を行なわない運転者に対しても、一方的な指摘を行なわずに、走行中の運転動作に対する運転者の感想を照会することで、自発的に運転動作の回顧を行なうように誘導することができ、運転者による冷静な認識が伴った運転動作の向上を適切に促すことができる。
さらに、自車両の運転が終了し、運転者に余裕がある状態で各運転動作の回顧を支援することから、運転者による冷静な分析を促し、運転動作の改善の認識を深めさせることができる。
【0054】
なお、上述した実施の形態において、安全運転度は運転者の運転動作の技量および技量の上達状態に応じて補正されるとしたが、これに限定されず、例えば運転者による運転動作が適切な運転動作であるか否か、あるいは危険な運転動作であるか否かを判定するための閾値を運転者の運転動作の技量および技量の上達状態に応じて補正してもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 車両用運転支援装置
12 ナビゲーション装置(地図データ記憶手段)
13 車両状態センサ(自車両状態検出手段)
15 報知装置(適切運転報知手段)
21 走行位置情報取得部(走行位置情報取得手段)
22 適切運転検出部(適切運転検出手段)
23 危険運転検出部(危険運転検出手段)
24 車両情報記憶部(記憶手段)
25 適切運転回顧支援部(適切運転回顧支援手段)
26 報知制御部(適切運転報知手段、許可手段)
27 危険運転回顧支援部(危険運転回顧支援手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の車両状態を検出する自車両状態検出手段と、
前記自車両状態検出手段により検出された前記車両状態に基づき自車両の走行中に運転者により実行される適切な運転動作を検出する適切運転検出手段と、
前記自車両状態検出手段により検出された前記車両状態に基づき自車両の危険な運転動作を検出する危険運転検出手段と、
前記適切運転検出手段または前記危険運転検出手段により各前記運転動作が検出された場合に、各前記運転動作の検出時前後の所定時間に亘って前記自車両状態検出手段により検出された前記車両情報を記憶する記憶手段と、
前記適切運転検出手段により前記適切な運転動作が検出された場合のみに報知を行なう適切運転報知手段と、
前記適切運転検出手段により前記適切な運転動作が検出された場合に、前記記憶手段に記憶された前記車両情報に基づき、自車両の運転終了後において、前記適切な運転動作の運転者による回顧を支援する適切運転回顧支援手段と、
前記危険運転検出手段により前記危険な運転動作が検出された場合に、前記記憶手段に記憶された前記車両情報に基づき、自車両の運転終了後において、前記危険な運転動作の運転者による回顧を支援する危険運転回顧支援手段とを備えることを特徴とする車両用運転支援装置。
【請求項2】
前記適切運転回顧支援手段または前記危険運転回顧支援手段により各前記運転動作の運転者による回顧が支援された場合に前記適切運転報知手段の作動を許可する許可手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用運転支援装置。
【請求項3】
前記危険運転回顧支援手段は、走行中の運転動作に対する運転者の感想を照会し、該照会に対して運転者が危険を感じたと回答した場合に、前記危険な運転動作の運転者による回顧を支援することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用運転支援装置。
【請求項4】
前記適切運転回顧支援手段および前記危険運転回顧支援手段は、自車両の速度がゼロである継続時間が所定時間以上である場合と、自車両のパーキングブレーキの作動時と、自車両の動力伝達機構がニュートラル状態である場合と、自車両の前記動力伝達機構がロック状態である場合とのうち、少なくとも何れか1つの場合かつ運転者が情報提供可能な場合に動作可能であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1つに記載の車両用運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−33532(P2011−33532A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181604(P2009−181604)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】