車両用電源装置
【課題】モータの力行運転と回生運転の切り替え時に、モータに対する電力供給の不足、及び回生電力の回収不足が生じることを抑制した車両用電源装置を提供する。
【解決手段】第1の入出力部3a,3bがPDU4の第2の入出力部4d,4eと接続されると共に、第2の入出力部3c,3dが燃料電池1及びキャパシタ2と接続された双方向性の第1のDC/DCコンバータ3と、第1の入出力部20a,20bがPDU4の第2の入出力部4d,4eと接続されると共に、第2の入出力部20c,20dがリチウムバッテリ21と接続された第2のDC/DCコンバータ20と、モータ5の力行運転時及び回生運転時に、第1のDC/DCコンバータ3又は第2のDC/DCのコンバータ20を直結状態とし、直結状態とした一方のDC/DCコンバータの出力電圧に応じて他方のDC/DCコンバータの出力電圧を制御する電圧制御手段31とを備える。
【解決手段】第1の入出力部3a,3bがPDU4の第2の入出力部4d,4eと接続されると共に、第2の入出力部3c,3dが燃料電池1及びキャパシタ2と接続された双方向性の第1のDC/DCコンバータ3と、第1の入出力部20a,20bがPDU4の第2の入出力部4d,4eと接続されると共に、第2の入出力部20c,20dがリチウムバッテリ21と接続された第2のDC/DCコンバータ20と、モータ5の力行運転時及び回生運転時に、第1のDC/DCコンバータ3又は第2のDC/DCのコンバータ20を直結状態とし、直結状態とした一方のDC/DCコンバータの出力電圧に応じて他方のDC/DCコンバータの出力電圧を制御する電圧制御手段31とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて出力部が駆動輪と連動して回転するモータと接続され、該モータの力行運転時に該モータに駆動用電力を供給すると共に、該モータの回生運転時に該モータの回生電力を回収する車両用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば燃料電池車両の動力源として、図11(a)に示したように、燃料電池100をコンタクタ101及びインバータ102を介して走行用モータ103に接続すると共に、バッテリ105をDC/DCコンバータ104を介して燃料電池100と並列に接続した車両用電源装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる車両用電源装置においては、モータ103の力行運転時は、コンタクタ101をオン(閉成状態)として燃料電池100からインバータ102に電力供給すると共に、バッテリ105の出力電圧をDC/DCコンバータ104により昇圧若しくは降圧して、インバータ102に供給する。そして、これにより、燃料電池100の出力電力が不足するときに、バッテリ105からの出力電力によってアシストしている。
【0004】
一方、モータ103の回生運転時には、コンタクタ101をオフして燃料電池100とインバータ102間を遮断した状態で、DC/DCコンバータ104を直結することにより、モータ103の回生電力をインバータ102及びDC/DCコンバータ104を介して、バッテリ105に回収する。
【0005】
図11(a)に示した車両用電源装置の構成は、燃料電池100の出力電圧の使用範囲がバッテリ105の出力電圧が高く、バッテリ105の出力電圧をDC/DCコンバータ104で降圧して使用する場合に有利である。そして、この場合は、燃料電池100のスタック数を増やして出力電圧を高める必要があるため、燃料電池100のコストが高くなるという不都合があった。
【0006】
また、図11(b)に示したように、図11(a)のコンタクタ101に代えてDC/DCコンバータ106を備え、バッテリ105をDC/DCコンバータを介さずに該DC/DCコンバータ106及びインバータ102と直結した車両用電源装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
図11(b)に示した車両用電源装置の構成では、バッテリ105の電圧調整手段がないため、バッテリ105から電圧を出力するときには、常にDC/DCコンバータ106により燃料電池100の出力電圧をバッテリ105の出力電圧に合わせる制御を行う必要がある。そのため、DC/DCコンバータ106において電圧変換に伴なう電力損失が大きくなるという不都合があった。
【0008】
また、図11(b)に示した構成によれば、DC/DCコンバータ106を用いることで、燃料電池100の出力電圧を下げることができるため、燃料電池100の積層数を減少させて小型化を図ることができる。しかし、このように燃料電池100の積層数を減少させたときには、燃料電池100の出力電流を急増させるときの応答性が低くなるという不都合がある。
【特許文献1】特開2006−73506号公報(第4−5頁、第1図)
【特許文献2】特開2000−12059号公報(第5−6頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した従来の不都合を回避するために、図12に示したように、DC/DCコンバータ112を介して燃料電池100をインバータ113に接続し、また、燃料電池100の出力端子間にキャパシタ101を接続した構成とすることが考えられる。
【0010】
図12の構成によれば、モータ103の力行運転時には、キャパシタ111から出力される電力により燃料電池100の過渡的な応答性の低さを補うと共に、バッテリ105から出力される電力により、燃料電池100及びキャパシタ111からの出力電力の不足分をアシストすることによって、燃料電池100の小型化を図ることができる。
【0011】
一方、モータ103の回生運転時には、インバータ102の出力電圧をDC/DCコンバータ111により昇圧若しくは降圧して、キャパシタ111を充電することができる。また、PDU102の出力をDC/DCコンバータ104により昇圧若しくは降圧して、バッテリ105を充電することができる。
【0012】
しかし、図12の構成においては、モータ103が回生運転をし、DC/DCコンバータ104,110が昇圧又は降圧動作してインバータ102からキャパシタ111及びバッテリ105に通電した状態から、DC/DCコンバータ104,110の通電方向を逆転させて、インバータ102からモータ103への通電を可能としてモータ103を力行運転に切り替えるときに、DC/DCコンバータ104,110の通電方向の切り替えの制御応答性の相違により、DC/DCコンバータ104,110からインバータ102への出力電圧がハンチングする場合がある。
【0013】
そして、この場合には、例えば加速指令に応じたモータ103の要求電力に対して、インバータ102からモータ103への電力供給が遅れ、車両の加速応答性が低下してドライバビィティ及び回生効率が悪化する。
【0014】
また、モータ103が力行運転をし、DC/DCコンバータ104,110が昇圧又は降圧動作してインバータ102からモータ103に通電した状態から、DC/DCコンバータ104,110の通電方向を逆転させて、インバータ102からキャパシタ111,バッテリ105への通電を可能としてモータ103を回生運転に切り換えるときに、DC/DCコンバータ104,110における通電方向の切り替えが遅れると、回生電力の回収が不十分になる。
【0015】
そこで、本発明は、DC/DCコンバータを介して、燃料電池、キャパシタ、及び二次電池とインバータ間を接続して、モータの力行運転と回生運転を切り替えるときに、回生運転から力行運転への切り替え時にモータに対する電力供給が不足すること、及び力行運転から回生運転への切り替え時にモータの回生電力の回収が不十分となることを抑制することができる車両用電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、車両に搭載されて外部入出力部が駆動輪と連動して回転するモータと接続され、該モータの力行運転時に該モータに駆動用電力を供給すると共に、該モータの回生運転時に該モータの回生電力を回収する車両用電源装置に関する。
【0017】
そして、第1の入出力部が前記外部入出力部と接続されて、前記モータの力行運転時は、第2の入出力部に入力される直流電圧から前記モータの駆動電圧を生成して該第1の入出力部から出力し、前記モータの回生運転時には、該第1の入出力部に入力される前記モータの回生電圧を直流電圧に変換して該第2の入出力部から出力するインバータと、燃料電池と、該燃料電池と並列に接続されたキャパシタと、第1の入出力部が前記インバータの第2の入出力部と接続されると共に、第2の入出力部が前記燃料電池及び前記キャパシタと接続された双方向性の第1のDC/DCコンバータと、二次電池と、第1の入出力部が前記インバータの第2の入出力部と接続されると共に、第2の入出力部が前記二次電池と接続された双方向性の第2のDC/DCコンバータと、前記モータの力行運転時と回生運転時の少なくともいずれか一方において、前記第1のDC/DCコンバータと前記第2のDC/DCコンバータのいずれか一方を直結状態とし、該直結状態としたDC/DCコンバータの出力電圧に応じて、他方のDC/DCコンバータの出力電圧を制御する電圧制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0018】
かかる本発明によれば、前記燃料電池及び前記キャパシタが前記第1のDC/DCコンバータを介して前記インバータと接続されると共に、前記二次電池が前記第2のDC/DCコンバータを介して前記インバータと接続されている。そして、前記電圧制御手段は、前記モータの力行運転時と回生運転時の少なくともいずれか一方において、前記第1のDC/DCコンバータと前記第2のDC/DCコンバータのいずれか一方を直結状態とする。なお、DC/DCコンバータを直結状態とするとは、DC/DCコンバータにおけるスイッチング動作を停止して、DC/DCコンバータの第1の入出力端子と第2の入出力端子間を双方向に導通状態とすることをいう。
【0019】
このように、前記第1のDC/DCコンバータと前記第2のDC/DCコンバータのいずれか一方を直結状態とすることにより、前記モータを回生運転から力行運転に切り替えるときに、前記第1のDC/DCのコンバータと前記第2のDC/DCコンバータのうち、直結状態とされているDC/DCコンバータについては、通電方向の切り替えを不要とすることができる。この場合、通電方向の切り替えに伴う待ち時間が生じないため、前記インバータへの電力供給を速やかに開始することができる。そして、直結状態とされていないDC/DCコンバータについては、前記電圧制御手段により、直結状態とされているDC/DCコンバータの出力電圧に応じて、その出力電圧を制御することにより、前記インバータに入力される電圧のハンチングを抑制しつつ、前記インバータから前記モータへの供給電圧を上昇させることができる。そのため、前記モータを回生運転から力行運転に切り替えるときに、前記インバータから前記モータへの電力供給が不足することを抑制することができる。
【0020】
また、前記モータを力行運転から回生運転に切り替えるときに、前記第1のDC/DCのコンバータと前記第2のDC/DCコンバータのうち、直結状態とされているDC/DCコンバータについては、通電方向の切り替えを要しないため、前記インバータからの電力の回収を速やかに開始することができる。そして、直結状態とされていないDC/DCコンバータについては、前記電圧制御手段により、直結状態とされているDC/DCコンバータの出力電圧に応じてその出力電圧を制御することによって、該直結状態とされていないDC/DCコンバータを介して回収される電力の電圧を、回収先(直結状態とされていないDC/DCコンバータと接続された前記キャパシタ又は前記バッテリ)の状態に合わせて調節することができる。そのため、前記モータを力行運転から回生運転に切り替えるときに、前記インバータから前記キャパシタ及び前記二次電池への回収電力が不十分となることを抑制することができる。
【0021】
また、前記二次電池の出力電圧が前記燃料電池の出力電圧範囲よりも高く設定され、前記電圧制御手段は、前記モータの力行運転時に、前記第1のDC/DCコンバータを直結状態とすると共に、前記第2のDC/DCコンバータを降圧動作させて、前記第1のDC/DCコンバータの出力電圧と前記第2のDC/DCコンバータの出力電圧との差を減少させることを特徴とする。
【0022】
かかる本発明において、一般に、DC/DCコンバータは、降圧動作をさせたときの電力損失は、昇圧動作させたときの電力損失よりも少なくなる。そのため、前記モータの力行運転時に、前記電圧制御手段により、前記第1のDC/DCコンバータを直結状態とすると共に、前記第2のDC/DCコンバータを降圧動作させることで、前記第2のDC/DCコンバータにおける電力損失を抑制して、前記二次電池から前記インバータに電力供給をすることができる。
【0023】
また、前記キャパシタの端子間電圧を検出するキャパシタ電圧検出手段を備え、前記電圧制御手段は、前記モータの回生運転時に、前記インバータの第2の入出力部からの出力電圧が、前記キャパシタの端子間電圧よりも所定レベル高くなるように前記インバータを制御して、前記第1のDC/DCコンバータを直結状態とすることを特徴とする。
【0024】
かかる本発明によれば、前記電圧制御手段は、前記モータの回生運転時に、前記インバータを制御して、前記インバータの第2の入出力部からの出力電圧が、前記キャパシタの端子間電圧よりも所定レベル高い状態とする。そして、この状態で前記第1のDC/DCコンバータを直結状態とすることで、前記第1のDC/DCコンバータにおけるスイッチング損失を生じることなく、前記モータの回生電力によって前記キャパシタを充電することができる。また、前記モータを回生運転から力行運転に切り替えるときに、前記第1のDC/DCコンバータを介して直ちに前記燃料電池及び前記キャパシタから前記インバータに電力を供給することができるため、回生運転から力行運転への切り替えの応答性を高めることができる。
【0025】
また、前記二次電池の端子間電圧を検出する二次電池電圧検出手段を備え、前記電圧制御手段は、前記モータの回生運転時に、前記インバータの第2の入出力部からの出力電圧が、前記キャパシタの端子間電圧よりも所定レベル高くなるように前記インバータを制御して、前記第1のDC/DCコンバータを直結状態としたときに、前記第2のDC/DCコンバータの第2の入出力部の出力電圧が、前記二次電池の端子間電圧よりも所定レベル高くなるように、前記第2のDC/DCコンバータを制御することを特徴とする。
【0026】
かかる本発明によれば、前記電圧制御手段により、前記第1のDC/DCコンバータを直結状態として前記キャパシタを充電しているときに、前記第2のDC/DCコンバータの第2の入出力部の出力電圧が、前記二次電池の端子間電圧よりも所定レベル高くなるように制御することによって、前記第2のDC/DCコンバータを介して前記二次電池を充電することができる。
【0027】
また、前記二次電池の端子間電圧を検出する二次電池電圧検出手段を備え、前記電圧制御手段は、前記モータの回生運転時に、前記インバータの第2の入出力部からの出力電圧が、前記二次電池の端子間電圧よりも所定レベル高くなるように前記インバータを制御して、前記第2のDC/DCコンバータを直結状態とすることを特徴とする。
【0028】
かかる本発明によれば、前記電圧制御手段は、前記モータの回生運転時に、前記インバータを制御して、前記インバータの第2の入出力部からの出力電圧が、前記二次電池の端子間電圧よりも所定レベル高い状態とする。そして、前記電圧制御手段は、この状態で前記第2のDC/DCコンバータを直結状態とする。このように、第2のDC/DCコンバータを直結状態とすることにより、前記第2のDC/DCコンバータにおけるスイッチング損失を生じることなく、前記モータの回生電力によって前記二次電池を充電することができる。また、前記モータを回生運転から力行運転に切り替えるときに、前記第2のDC/DCコンバータを介して直ちに前記二次電池から前記インバータに電力を供給することができるため、回生運転から力行運転への切り替えの応答性を高めることができる。
【0029】
また、キャパシタの端子間電圧を検出するキャパシタ電圧検出手段を備え、前記電圧制御手段は、前記モータの回生運転時に、前記インバータの第2の入出力部からの出力電圧が、前記キャパシタの端子間電圧よりも所定レベル高くなるように前記インバータを制御して、前記第2のDC/DCコンバータを直結状態としたときに、前記第1のDC/DCコンバータの第2の入出力部の出力電圧が、前記キャパシタの端子間電圧よりも所定レベル高くなるように、前記第1のDC/DCコンバータを制御することを特徴とする。
【0030】
かかる本発明によれば、前記電圧制御手段により、前記第2のDC/DCコンバータを直結状態として前記二次電池を充電しているときに、前記第1のDC/DCコンバータの第2の入出力部の出力電圧が、前記キャパシタの端子間電圧よりも所定レベル高くなるように制御することによって、前記第1のDC/DCコンバータを介して前記キャパシタを充電することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の実施の形態について、図1〜図10を参照して説明する。図1は本実施の形態における車両用電源装置の全体構成図、図2は図1に示した車両用電源装置における出力制御の実行手順を示したフローチャート、図3は図2に示したフローチャートによる出力制御時のDC/DCコンバータの作動態様を示した説明図、図4は図1に示した車両用電源装置における出力制御の実行手順を示したフローチャート、図5は図4に示したフローチャートによる出力制御時のDC/DCコンバータの作動態様を示した説明図、図6〜図7は図1に示した車両用電源装置における回生制御の実行手順を示したフローチャート、図8〜図10は回生制御時のDC/DCコンバータの作動態様を示した説明図である。
【0032】
図1を参照して、本実施の形態の車両用電源装置は、燃料電池車両(本発明の車両に相当する)に搭載されるものである。そして、該車両用電源装置は、燃料電池1、燃料電池1と並列に接続された電気二重層キャパシタ2(以下、単にキャパシタ2という)、第1の入出力部4a,4b,4cが外部入出力部11a,11b,11cを介してモータ5と接続されたPDU(Power Drive Unit、本発明のインバータの機能を含む)、第1の入出力部3a,3bがPDU4の第2の入出力部4d,4eと接続されると共に、第2の入出力部3c,3dが燃料電池1及びキャパシタ2と接続された第1のDC/DCコンバータ3、第1の入出力部20a,20bがPDU4の第2の入出力部4d,4eと接続されると共に、第2の入出力部20c,20dがリチウムイオンバッテリ21(本発明の二次電池に相当する。以下、単にバッテリ21という)に接続された第2のDC/DCコンバータ20、及び燃料電池1への反応ガス(水素及び酸素)の供給量等を制御して燃料電池1の発電量を調節するFC(Fuel Cell)補機22を備えている。
【0033】
また、車両用電源装置は、マイクロコンピュータ(図示しない)等により構成された電子ユニットであって車両用電源装置の全体的な作動を制御するコントローラ30を備えている。そして、該マイクロコンピュータが車両用電源装置の制御用プログラムを実行することにより、コントローラ30は、モータ5の力行運転時に、燃料電池1とキャパシタ2とバッテリ21とによる電力供給のマネージメントを行う出力制御と、モータ5の回生運転時に、キャパシタ2とバッテリ電池21とによる電力回収のマネージメントを行う回生制御とを実行する電圧制御手段31として機能する。
【0034】
さらに、コントローラ30は、電圧制御手段31が電力回収のマネージメントを行って、キャパシタ2とバッテリ21を充電する際に使用される各種のデータ等を保持したメモリ33を有している。
【0035】
ここで、コントローラ30には、燃料電池1に備えられた各種センサによる検出信号(燃料電池1の温度、端子間電圧、出力電流、反応ガスの供給圧力等の検出信号)Fc_s、キャパシタ2に備えられた各種センサによる検出信号(キャパシタ2の温度、端子間電圧、入出力電流等の検出信号)Uc_s、バッテリ21に備えられた各種センサによる検出信号(バッテリ21の温度、端子間電圧、入出力電流等の検出信号)Li_s、PDU4に備えられた各種センサによる検出信号(モータ5への供給電流・電圧、モータ5の回生電流・電流等の検出信号)Pd_sが入力される。
【0036】
また、コントローラ30から出力される制御信号Fc_cにより、FC補機22による反応ガスの供給量が調節されて、燃料電池1の発電量が制御される。また、制御信号Ps_cにより第1のDC/DCコンバータ3の通電方向と出力電圧が制御され、制御信号Bi_cにより第2のDC/DCコンバータ20の通電方向と出力電圧が制御される。さらに、制御信号Pd_cにより、PDU4とモータ5間の通電量が調節されてモータ5の力行トルク及び回生トルクが制御される。
【0037】
電圧制御手段31は、各種センサによる検出信号Fc_s,Uc_s,Li_sから燃料電池1とキャパシタ2とバッテリ21の状態を検知し、出力可能なトータルの最大電力Wmaxを決定する。また、電圧制御手段31は、車両の走行状況(車速、加減速等)や運転者による操作状況(アクセルべダルの操作量等)に応じて決定されるモータ5の目標トルクTr_c、FC補機22の消費電力、図示しない他の電装補機(空調機器、オーディオ機器等)の消費電力等に基づいて、車両用電源装置から出力する電圧及び目標電力Wcを最大電力Wmaxを超えない範囲で決定する。
【0038】
そして、電圧制御手段31は、モータ5の目標トルクTr_cが正(Tr_c>0)であるときに、目標電力Wcが得られ、且つ、燃料電池1とキャパシタ2とバッテリ21のトータルの効率が最良となる(燃料電池1の発電効率と燃料電池1の加湿状態から判断した内部抵抗損失、さらにキャパシタ2とリチイムイオン電池21の温度状態を考慮した内部抵抗損失を考量して、トータルの内部抵抗損失が最小となる)ように、燃料電池1とキャパシタ2とバッテリ21の出力電力を分配する割合を決定して、モータ5の力行運転を行なう出力制御を実行する。
【0039】
また、電圧制御手段31は、モータ5の目標トルクTr_cが負であるときに、モータ5の回生運転を実行して、モータ5から出力される回生電力をキャパシタ2とバッテリ21に回収し、キャパシタ2とバッテリ21を充電する回生制御を実行する。
【0040】
[出力制御]先ず、図2,図4に示したフローチャートに従って、出力制御について説明する。
【0041】
図2に示したフローチャートは、バッテリ21側の第2のDC/DCコンバータ20を直結状態に制御して、第2のDC/DCコンバータ20におけるスイッチングによる電力損失を回避するようにしたものである。電圧制御手段31は、図2のSTEP50でモータ5の目標トルクTr_cが0以上(0≦Tr_c)となったときにSTEP51に進み、要求負荷(モータ5や燃料電池補機22等の電気負荷の動作に必要となる総電力)が基準値PL以下であるときはSTEP60に進む。
【0042】
ここで、基準値PLは、バッテリ21からの出力のみによって燃料電池車両を走行させることで、総合的な燃費効率を向上させることができる範囲の上限値に設定されている。そして、電圧制御手段31は、STEP60で燃料電池1の発電を停止若しくはアイドル発電(発電量を微小とした状態)として、バッテリ21からの出力のみによって走行するバッテリ走行ルーチンを実行する。
【0043】
また、STEP51で、要求負荷が基準値PLよりも大きいときにはSTEP52に進み、電圧制御手段31は、要求負荷が基準値PLよりも大きく基準値PMよりも小さい範囲(PL<要求負荷<PM)にあるか否かを判断する。
【0044】
ここで、基準値PMは、燃料電池1の出力電圧Vfcを昇圧してPDU4に供給し、バッテリ21の出力電圧Vbatを変圧せずにPDU4に供給して燃料電池1の出力をアシストすることによって、総合的な燃費効率を向上させることができる範囲の下限値に設定されている。そして、STEP52で、要求負荷が基準値PLよりも大きく基準値PMよりも小さい範囲(PL<要求負荷<PM)にあるときはSTEP70に分岐する。
【0045】
この場合は、要求負荷が小さく燃料電池1及びキャパシタ2の出力電力で対応可能であるため、電圧制御手段31は、バッテリ21によるアシストを行なわずに、燃料電池1及びキャパシタ2の出力のみによって走行する燃料電池走行ルーチンを実行する。
【0046】
一方、STEP52で要求負荷が基準値PM以上であるときにはSTEP53に進み、電圧制御手段31は、要求負荷が基準値PMから基準値PHまでの範囲(PM≦要求負荷≦PH)にあるか否かを判断する。ここで、基準値PHは、燃料電池1の出力電圧Vfcを昇圧してPDU4に供給し、バッテリ21の出力電圧Vbatを変圧せずにPDU4に供給して燃料電池1の出力をアシストすることによって、総合的な燃費効率を向上させることができる範囲の上限値に設定されている。
【0047】
そこで、STEP53で要求負荷が基準値PMから基準値PHまでの範囲にあるときは、STEP80に分岐し、電圧制御手段31は、第1のDC/DCコンバータ3により、燃料電池1の出力電圧Vfcをバッテリ21の出力電圧Vbatまで昇圧する。そして、続くSTEP81で、電圧制御手段31は、第2のDC/DCコンバータ20を直結状態(第1の入出力部20a,20bと第2の入出力部20c,20d間が双方向に導通した状態)とする。これにより、バッテリ21からPDU4に電力供給されて、燃料電池1及びキャパシタ2からの出力電力の不足分がアシストされる。
【0048】
一方、STEP53で要求負荷が基準値PHよりも大きいときにはSTEP54に進み、電圧制御手段31は、第1のDC/DCコンバータ3により燃料電池1の出力電圧Vfc(=キャパシタ2の出力電圧Vcap)を昇圧する。また、続くSTEP55で、電圧制御手段31は、第2のDC/DCコンバータ20によりバッテリ21の出力電圧Vbatを昇圧する。
【0049】
これにより、燃料電池1及びキャパシタ2から第1のDC/DCコンバータ3を介してPDU4に供給される電圧Vx1と、バッテリ21から第2のDC/DCコンバータ20を介してPDU4に供給される電圧Vy1を上昇させて、PDU4からモータ5に印加する駆動電圧を高めてモータ5の出力を増大させることができる。
【0050】
ここで、図3は、以上説明した図2のフローチャートによる出力制御を行ったときの、第1のDC/DCコンバータ3の出力電圧Vx1と第2のDC/DCコンバータ20の出力電圧Vy1の推移の例を示したものである。図3の上段は、縦軸を電圧(V)に設定して横軸を時間(t)に設定したものである。また、図3の下段は、縦軸を第1のDC/DCコンバータ3及び第2のDC/DCコンバータ20におけるスイッチングによる電力損失に設定し、横軸を時間(t)に設定したものである。
【0051】
図3のt50は、第1のDC/DCコンバータ3による燃料電池1の出力電圧Vfcの昇圧を開始する時点を示している。そして、t51で第1のDC/DCコンバータ3の出力電圧Vx1がバッテリ21の出力電圧Vbatまで上昇している。t50〜t52の間は、第2のDC/DCコンバータ20は直結状態とされているため、第2のDC/DCコンバータ20では、スイッチングによる電力損失は発生せず、第1のDC/DCコンバータ3の電力損失A50のみが発生している。
【0052】
t52は要求負荷が基準値PHよりも大きくなった時点を示しており、燃料電池1の出力電圧Vfcが第1のDC/DCコンバータ3により昇圧されると共に、バッテリ21の出力電圧Vbatが第2のDC/DCコンバータ20により昇圧されている。そして、t53で第1のDC/DCコンバータ3の出力電圧Vx1と第2のDC/DCコンバータ20の出力電圧Vy1が、要求負荷に応じたVpduに達している。
【0053】
t52〜t54の間は、第1のDC/DCコンバータ3と第2のDC/DCコンバータ20が共にスイッチングによる昇圧動作をしているため、第1のDC/DCコンバータ3における電力損失A50と第2のDC/DCコンバータ20における電力損失A51が発生している。
【0054】
次に、図4に示したフローチャートは、燃料電池1側の第1のDC/DCコンバータ3を直結状態に制御するものである。電圧制御手段31は、図4のSTEP100でモータ5の目標トルクTr_cが0以上(0≦Tr_c)となったときにSTEP101に進み、要求負荷が基準値PL以下であるときはSTEP110に進む。
【0055】
ここで、基準値PLは、上述した図2の場合と同様に、バッテリ21からの出力のみによって燃料電池車両を走行させることで、総合的な燃費効率が向上する範囲の上限値に設定されている。そして、電圧制御手段31は、STEP110で燃料電池1の発電を停止若しくはアイドル発電として、バッテリ21からの出力のみによって走行するバッテリ走行ルーチンを実行する。
【0056】
また、STEP101で、要求負荷が基準値PLよりも大きいときにはSTEP102に進み、電圧制御手段31は、要求負荷が基準値PLよりも大きく基準値PMよりも小さい範囲(PL<要求負荷<PM)にあるか否かを判断する。
【0057】
ここで、基準値PMは、燃料電池1の出力電圧Vfcを昇圧せずに、バッテリ21の出力電圧Vbatを降圧してPDU4への出力電力をアシストすることにより、総合的な燃費効率が向上する範囲の下限値に設定されている。そして、STEP102で、要求負荷が基準値PLよりも大きく基準値PMよりも小さい範囲(PL<要求負荷<PM)にあるときはSTEP120に分岐する。この場合は、要求負荷が小さく燃料電池1及びキャパシタ2の出力電力で対応可能であるため、電圧制御手段31は、バッテリ21によるアシストは行なわずに、燃料電池1及びキャパシタ2の出力のみによって走行する燃料電池走行ルーチンを実行する。
【0058】
一方、STEP103で要求負荷が基準値PMを超えていたときにはSTEP103に進み、電圧制御手段31は、要求負荷が基準値PMから基準値PHまでの範囲(PM≦要求負荷≦PH)にあるか否かを判断する。ここで、基準値PHは、燃料電池1の出力電圧Vfcを昇圧せずに、バッテリ21の出力電圧Vbatを降圧してPDU4への出力電力をアシストすることにより、総合的な燃費効率が向上する範囲の上限値に設定されている。
【0059】
そこで、STEP103で要求負荷が基準値PMから基準値PHまでの範囲にあるときは、STEP130に分岐し、電圧制御手段31は、第2のDC/DCコンバータ20により、バッテリ21の出力電圧Vbatを燃料電池1の出力電圧Vfcまで降圧する。そして、続くSTEP131で、電圧制御手段31は、第1のDC/DCコンバータ3を直結状態(第1の入出力部3a,3bと第2の入出力部3c,3d間が双方向に導通した状態)とする。これにより、バッテリ21からPDU4に電力供給されて、燃料電池1及びキャパシタ2からの出力電力の不足分をアシストする。
【0060】
一方、STEP103で要求負荷が基準値PHよりも大きいときにはSTEP104に進み、電圧制御手段31は、第1のDC/DCコンバータ3により燃料電池1の出力電圧Vfcを、バッテリ21の出力電圧Vbatまで昇圧する。また、続くSTEP105で、電圧制御手段31は、第2のDC/DCコンバータ21を直結状態とする。
【0061】
これにより、燃料電池1及びキャパシタ2から第1のDC/DCコンバータ3を介してPDU4に供給される電圧Vx1と、バッテリ21から第2のDC/DCコンバータ20を介してPDU4に供給される電圧Vy1を上昇させて、PDU4からモータ5に印加する駆動電圧を高めてモータ5の出力を増大させることができる。
【0062】
ここで、図5は、以上説明した図3のフローチャートによる出力制御を行ったときの、第1のDC/DCコンバータ3の出力電圧Vx1と第2のDC/DCコンバータ20の出力電圧Vy1の推移の例を示したものである。図5の上段は、縦軸を電圧(V)に設定して横軸を時間(t)に設定したものである。また、図5の下段は、縦軸を第1のDC/DCコンバータ3及び第2のDC/DCコンバータ20におけるスイッチング損失に設定し、横軸を時間(t)に設定したものである。
【0063】
図5のt60は、第2のDC/DCコンバータ20によるバッテリ21の出力電圧Vbatの降圧を開始する時点を示している。そして、t61で第2のDC/DCコンバータ20の出力電圧Vy1が燃料電池1の出力電圧Vfcまで低下している。t60〜t62の間は、第1のDC/DCコンバータ3は直結状態とされているため、第1のDC/DCコンバータ3では、スイッチングによる電力損失は発生せず、第2のDC/DCコンバータ20の電力損失A60のみが発生している。
【0064】
t62は要求負荷が基準値PHよりも大きくなった時点を示しており、t62から燃料電池1の出力電圧Vfcが第1のDC/DCコンバータ3により昇圧され、t65で第1のDC/DCコンバータ3の出力電圧Vx1がバッテリ21の出力電圧Vbatに達している。また、第1のDC/DCコンバータ3の出力電圧Vx1に合わせて、第2のDC/DCコンバータ20の出力電圧Vy1が調節されている。t62〜t65の間は、第1のDC/DCコンバータ3の電力損失A61と第2のDC/DCコンバータ20の電力損失A60が共に発生している。
【0065】
そして、第1のDC/DCコンバータ3の出力電圧Vx1がバッテリ21の出力電圧Vbatに達したt65で、第2のDC/DCコンバータ20が直結状態とされている。これにより、t65以降は、第1のDC/DCコンバータ3の電力損失A61のみが発生し、第2のDC/DCコンバータ20の電力損失は発生していない。
【0066】
[回生制御]次に、図6〜図7に示したフローチャートに従って、回生制御について説明する。
【0067】
電圧制御手段31は、図6のSTEP1でモータ5の目標トルクTr_cが負(Tr_c<0)となったときにSTEP2に進み、モータ5の回生電流(PDU4からの検出信号Pd_sにより検知される)が分配基準値(分配基準値のデータは予めメモリ33に保持されている)よりも小さいか否かを判断する。そして、モータ5の回生電流が分配基準値よりも小さいときはSTEP2に進み、モータ5の回生電流が分配基準値以上であるときには図7のSTEP20に分岐する。
【0068】
STEP3で、電圧制御手段31は、モータ5の回生電流がバッテリー基準値(バッテリ基準値のデータは予めメモリ33に保持されている)よりも大きいか否かを判断する。そして、モータ5の回生電流がバッテリ基準値よりも大きいときはSTEP4に進み、モータ5の回生電流がバッテリ基準値以下であるときにはSTEP7に分岐する。
【0069】
STEP4で、電圧制御手段31は、PDU4の第2の入出力部4d,4e間の電圧Vpduが、燃料電池1の端子間電圧Vfc(=キャパシタ2の端子間電圧Vcap)よりも高く、且つ、キャパシタ2の上限電圧Vcap_lmtよりも低くなるように、PDU4を制御する。具体的には、PDU4に備えられたインバータを構成するトランジスタのスイッチングにより、PDU4の第2の入出力部4d,4e間の出力VpduがVcapよりも高く且つVcap_lmtよりも低い範囲(Vcap<Vpdu<Vcap_lmt)に制御される。
【0070】
そして、続くSTEP5で、電圧制御手段31は、第1のDC/DCコンバータ3を直結状態とする。これにより、第1のDC/DCコンバータ3のスイッチング動作が停止して、第1のDC/DCコンバータ3の第1の入出力部3a,3bと第2の入出力部3c,3d間が常時導通した状態となる。
【0071】
ここで、図8は、第1のDC/DCコンバータ3を直結状態とする場合のキャパシタ2の端子間電圧Vcap(=燃料電池1の端子間電圧Vfc)と、バッテリ21の端子間電圧Vbatと、第1のDC/DCコンバータ3の第1の入出力部3a,3b間の電圧Vx1の推移の例を示したものである。図8の上段は、縦軸を電圧(V)に設定して横軸を時間(t)に設定したものである。また、図8の下段は、縦軸の上側を第1のDC/DCコンバータ3におけるスイッチング損失に設定し、縦軸の下側をキャパシタ2に充電される回生電力に設定し、横軸を時間(t)に設定したものである。
【0072】
図8のt10は、燃料電池1の出力電圧Vfcを第1のDC/DCコンバータ3により昇圧してPDU4に供給すると共に、バッテリ21から直結状態とされた第2のDC/DCコンバータ20を介してPDU4に供給することにより、モータ5を力行運転させた状態から、バッテリ21によるアシスト出力が減少し始める時点を示している。
【0073】
電圧制御手段31は、t11で第2のDC/DCコンバータ21をオフ状態(第1の入出力部20a,20bと第2の入出力部20c,20dの間を遮断した状態)とし、t11からt12に向かって、第1のDC/DCコンバータ3の第1の出力部3a,3b間の電圧Vx1を次第に減少させて、t12で第1のDC/DCコンバータ3を直結状態(Vx2=Vx1)としている。
【0074】
これにより、第1のDC/DCコンバータ3におけるスイッチング損失A10が、t11からt21にかけて次第に減少し、t12で第1のDC/DCコンバータ3におけるスイッチング損失A10がゼロとなっている。
【0075】
そして、燃料電池1の出力電流の減少に伴なって、t12からt13にかけて第1のDC/DCコンバータ3の第1の入出力部3a,3b間の電圧Vx1が次第に上昇する。電圧制御手段31は、t13でPDU4によるモータ5の回生電力の出力を開始し、PDU4の第2の入出力部4d,4e間の電圧Vpduを、キャパシタ2の端子間電圧Vcapよりも高く且つキャパシタ2の上限電圧Vcap_lmtよりも低い範囲(Vcap<Vpdu<Vcap_lmt)に制御する。
【0076】
これにより、キャパシタ2がモータ5の回生電力B10により充電されて、キャパシタ2の端子間電圧Vcapが次第に上昇する。なお、この場合のPDU4の第2の入出力部4d,4e間の電圧Vpduは、本発明におけるキャパシタ2の端子間電圧よりも所定レベル高い電圧に相当する。
【0077】
次に、電圧制御手段31は、STEP6で、キャパシタ2の充電状態(キャパシタ2の端子間電圧Vcap、キャパシタ2への充電電流等により判断する)からキャパシタ2の充電を継続するか否かを判断する。そして、キャパシタ2の充電を終了するときはSTEP7に進み、キャパシタ2の充電を継続するときにはSTEP1に分岐する。
【0078】
STEP7で、電圧制御手段31は、第1のDC/DCコンバータ3をオフ状態(第2のDC/DCコンバータ20の第1の入出力部3a,3bと第2の入出力部3c,3d間を遮断した状態)として、第2のDC/DCコンバータ20を直結状態とする。これにより、第2のDC/DCコンバータ20のスイッチング動作が停止して、第2のDC/DCコンバータ20の第1の入出力部20a,20bと第2の入出力部20c,20d間が常時導通した状態となる。
【0079】
そして、続くSTEP8で、充電制御制御手段32は、PDU4の第2の入出力部4d,4e間の電圧Vpduがバッテリ21の端子間電圧Vbatよりも所定レベル高くなるように、PDU4を制御してバッテリ21を充電する。このように、第2のDC/DCコンバータ20を直結状態とすることにより、第2のDC/DCコンバータ20におけるスイッチング損失の発生を回避して、バッテリ21を充電することができる。
【0080】
次のSTEP9で、電圧制御手段31は、バッテリ21の充電状態(バッテリ21の端子間電圧Vbat、バッテリ21はの充電電流等により判断する)から、モータ5の回生運転を終了するか否かを判断する。回生運転を終了するときはSTEP10に進み、回生運転を継続するときにはSTEP1に分岐する。
【0081】
次に、図7のSTEP20以降は、モータ5の回生電力により、キャパシタ2とバッテリ21の充電を同時に行う処理である。電圧制御手段は、STEP20で、PDU4の第2の入出力部4d,4e間の電圧Vpduが、第1のDC/DCコンバータ3を直結状態としてキャパシタ2を充電可能な状態、又は第2のDC/DCコンバータ20を直結状態としてバッテリ21を充電可能な状態であるか否かを判断する。
【0082】
そして、第1のDC/DCコンバータ3を直結状態としてキャパシタ2を充電可能な状態、又は第2のDC/DCコンバータ20を直結状態としてバッテリ21を充電可能な状態であるときはSTEP21に進み、第1のDC/DCコンバータ3と第2のDC/DCコンバータ20のいずれも直結状態とすることができないときにはSTEP20に分岐すする。
【0083】
STEP21で、電圧制御手段31は、第1のDC/DCコンバータ3を直結状態とするときには、上述した図6のSTEP4,STEP5と同様にして、PDU4の第2の入出力部4d,4e間の電圧Vpduを制御して第1のDC/DCコンバータ3を直結状態とする。そして、電圧制御手段31は、第2のDC/DCコンバータ20の第2の入出力部20d,20e間の電圧が、バッテリ21の端子間電圧Vbatよりも所定レベル高くなるように第2のDC/DCコンバータ20の作動を制御する。
【0084】
これにより、STEP22で、PDU4から直結状態の第1のDC/DCコンバータ3を介して供給される電力によって、キャパシタ2が充電されると共に、PDU4から変圧動作状態の第2のDC/DCコンバータ20を介して供給される電力によって、バッテリ21が充電される。
【0085】
また、第2のDC/DCコンバータ20を直結状態とするときには、電圧制御手段31は、STEP21で、上述した図6のSTEP7,STEP8と同様にして、PDU4の第2の入出力部4d,4e間の電圧Vpduを制御して第2のDC/DCコンバータ20を直結状態とする。そして、電圧制御手段31は、第1のDC/DCコンバータ3の第2の入出力部3c,3d間の電圧Vx2を、キャパシタ2の端子間電圧Vcapよりも高く且つキャパシタ2の上限電圧Vcap_lmtよりも低い範囲(Vcap<Vx2<Vcap_lmt)に制御する。
【0086】
これにより、STEP22で、PDU4から直結状態の第2のDC/DCコンバータ20を介して供給される電力によって、バッテリ21が充電されると共に、PDU4から変圧動作状態の第1のDC/DCコンバータ3を介して供給される電力によって、キャパシタ2が充電される。
【0087】
ここで、図9は、第2のDC/DCコンバータ20を直結状態として、バッテリ21とキャパシタ2を充電する場合のキャパシタ2の端子間電圧Vcap(=燃料電池1の端子間電圧Vfc)と、バッテリ21の端子間電圧Vbatと、第1のDC/DCコンバータ3の第1の入出力部3a,3b間の電圧Vx1及び第2の入出力部3c,3d間の電圧Vx2と、PDU4の第2の入出力部4d,4e間の電圧Vpduの推移の例を示したものである。
【0088】
図9の上段は、縦軸を電圧(V)に設定して横軸を時間(t)に設定したものである。また、図9の下段は、縦軸の上側を第1のDC/DCコンバータ3におけるスイッチング損失に設定し、縦軸の下側をバッテリ21に充電される回生電力に設定し、横軸を時間(t)に設定したものである。
【0089】
図9のt20は、燃料電池1の出力Vfc(=キャパシタ2の端子間電圧Vcap)を第1のDC/DCコンバータ3により昇圧してPDU4に供給すると共に、バッテリ21から直結状態とされた第2のDC/DCコンバータ20を介してPDU4に供給することにより、モータ5を力行運転させた状態から、バッテリ21によるアシスト出力が減少し始める時点を示している。
【0090】
電圧制御手段31は、t21で第2のDC/DCコンバータ21をオフ状態(第1の入出力部20a,20bと第2の入出力部20c,20d間を遮断した状態)とし、t21からt22に向かって、第1のDC/DCコンバータ3の第1の出力部3a,3b間の電圧Vx1を次第に減少させて、t22で第1のDC/DCコンバータ3を直結状態としている。
【0091】
これにより、第1のDC/DCコンバータ3におけるスイッチング損失A20が、t21からt22にかけて次第に減少し、t22で第1のDC/DCコンバータ3におけるスイッチング損失A20がゼロになっている。
【0092】
そして、燃料電池1の出力電流の減少に伴なって、t22からt23にかけて第1のDC/DCコンバータ3の第1の入出力部3a,3b間の電圧が次第に上昇する。電圧制御手段31は、t23以降、第1のDC/DCコンバータ3の第2の入出力部3c,3d間の電圧Vx2を、キャパシタ2の端子間電圧Vcapよりも高く、且つキャパシタ2の上限電圧Vcap_lmtよりも低い範囲(Vcap<Vpdu<Vcap_lmt)に制御する。
【0093】
電圧制御手段31は、t24でPDU4による回生電力の出力を開始し、PDU4の第2の入出力部4d,4e間の電圧が、バッテリ21の端子間電圧Vbatよりも所定レベル高くなるようにPDU4を制御する。これにより、バッテリ21が、第2のDC/DCコンバータ20を介して供給されるモータ5の回生電力B20により充電される。
【0094】
また、キャパシタ3が、第1のDC/DCコンバータ3を介して供給されるモータ5の回生電力B20により充電される。この場合、第1のDC/DCコンバータ3においてはスイッチング損失A21が生じるが、第2のDC/DCコンバータ20は直結状態とされているため、スイッチング損失は生じない。
【0095】
次に、STEP30〜STEP32は、第1のDC/DCコンバータ3と第2のDC/DCコンバータ20のいずれも、直結状態とすることができない場合の処理である。STEP30で、電圧制御手段31は、PDU4の第2の入出力部4d,4e間の電圧を制御して、キャパシタ2及びバッテリ21を同時に充電可能な電圧とする。
【0096】
そして、続くSTEP31で、電圧制御手段31は、第1のDC/DCコンバータ3の作動を制御して、第1のDC/DCコンバータ3の第2の入出力部3c,3d間の電圧Vx2が、キャパシタ2の端子間電圧Vcapよりも高く、且つキャパシタ2の上限端子間電圧Vcap_lmtよりも低い範囲(Vcap<Vx2<Vcap_lmt)とする。
【0097】
また、電圧制御手段31は、第2のDC/DCコンバータ20の作動を制御して、第2のDC/DCコンバータ20の第2の入出力部20c,20d間の電圧Vy2が、バッテリ21の端子間電圧Vbatよりも所定レベル高くなるようにする。
【0098】
これにより、STEP32で、PDU4から変圧動作状態の第1のDC/DCコンバータ3を介して供給されるモータ5の回生電力によって、キャパシタ2が充電される。また、PDU4から変圧動作状態の第2のDC/DCコンバータ20を介して供給されるモータ5の回生電力によって、バッテリ21が充電される。
【0099】
ここで、図10は上述したSTEP30〜STEP32の処理により、第1のDC/DCコンバータ3と第2のDC/DCコンバータ20を、共にスイッチングによる変圧動作状態として、キャパシタ2及びバッテリ21を充電する場合のキャパシタ2の端子間電圧Vcap(=燃料電池1の端子間電圧Vfc)と、バッテリ21の端子間電圧Vbatと、第1のDC/DCコンバータ3の第1の入出力部3a,3b間の電圧Vx1と、第2のDC/DCコンバータ20の第1の入出力部20c,20d間の電圧Vy1と、PDU4の第2の入出力部4d,4e間の電圧Vpduの推移を示したものである。
【0100】
図10の上段は、縦軸を電圧(V)に設定して横軸を時間(t)に設定したものである。また、図10の下段は、縦軸の上側を第1のDC/DCコンバータ3及び第2のDC/DCコンバータ20におけるスイッチング損失に設定し、縦軸の下側をキャパシタ2及びバッテリ21に充電される回生電力に設定し、横軸を時間(t)に設定したものである。
【0101】
図10のt30は、燃料電池1の出力電圧Vfcを第1のDC/DCコンバータ3により昇圧してPDU4に供給すると共に、バッテリ21から直結状態とされた第2のDC/DCコンバータ20を介してPDU4に供給することにより、モータ5を力行運転させた状態から、バッテリ21によるアシストが減少し始める時点を示している。
【0102】
電圧制御手段31は、t31で第2のDC/DCコンバータ21をオフ状態(第1の入出力部20a,20bと第2の入出力部20c,20d間を遮断した状態)とし、t31からt32に向かって、第1のDC/DCコンバータ3の第1の入出力部3a,3b間の電圧Vx1を次第に減少させて、t32で第1のDC/DCコンバータ3を直結状態としている。
【0103】
これにより、第1のDC/DCコンバータ3におけるスイッチング損失A30が、t31からt32にかけて次第に減少し、t32で第1のDC/DCコンバータ3におけるスイッチング損失A30がゼロになっている。
【0104】
そして、燃料電池1の出力電流の低下に伴なって、t32からt33にかけて第1のDC/DCコンバータ3の第1の入出力部3a,3b間の電圧Vx1(=Vfc,Vcap)が次第に上昇する。電圧制御手段31は、t33からt34にかけてPDU4の第2の入出力部4d,4e間の電圧Vpduを上昇させ、これにより、第1のDC/DCコンバータ3の第1の入出力部3a,3b間の電圧Vx1と、第2のDC/DCコンバータ20の第1の入出力部20a,20b間の電圧Vy1が、Vpduに向かって上昇している。
【0105】
そし、電圧制御手段31は、t34以降は、第1のDC/DCコンバータ3の第2の入出力部3c,3d間の電圧Vx2を、キャパシタ2の端子間電圧Vcapよりも高く且つキャパシタ2の上限端子間電圧Vcap_lmtよりも低い範囲(Vcap<Vx2<Vcap_lmt)に制御する。また、電圧制御手段31は、t34以降は、第2のDC/DCコンバータ20の第2の入出力部20c,20d間の電圧を、バッテリ21の端子間電圧Vbatよりも所定レベル高い電圧に制御する。
【0106】
これにより、PDU4から変圧動作状態の第1のDC/DCコンバータ3を介して供給されるモータ5の回生電力(B30の一部)によって、キャパシタ2が充電される。また、PDU4から変圧動作状態の第2のDC/DCコンバータ20を介して供給されるモータ5の回生電力(B30の一部)によって、バッテリ21が充電される。この場合は、第1のDC/DCコンバータ3においてスイッチング損失A31が生じると共に、第2のDC/DCコンバータ20においてスイッチング損失A32が生じる。
【0107】
なお、本実施の形態では本発明の二次電池としてリチウムイオン電池を示し、また、本発明のキャパシタとして電気二重層キャパシタを示したが、本発明の二次電池及びキャパシタの仕様はこれらに限定されず、他の仕様の二次電池及びキャパシタを用いてもよい。
【0108】
また、本実施の形態では、PDU4とキャパシタ2間の第1のDC/DCコンバータ3を直結状態として、PDU4とバッテリ21間の第2のDC/DCコンバータ20を変圧動作させる制御態様と、PDU4とバッテリ21間の第2のDC/DCコンバータ20を直結状態として、PDU4とキャパシタ2間の第1のDC/DCコンバータ3を変圧動作させる制御態様との双方を行う構成を示したが、いずれか一方の制御態様のみを行う場合であっても本発明の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本実施の形態における車両用電源装置の全体構成図。
【図2】図1に示した車両用電源装置における出力制御の実行手順を示したフローチャート。
【図3】出力制御の実行時におけるDC/DCコンバータの作動態様を示した説明図。
【図4】図1に示した車両用電源装置における出力制御の実行手順を示したフローチャート。
【図5】出力制御の実行時におけるDC/DCコンバータの作動態様を示した説明図。
【図6】図1に示した車両用電源装置における回生制御の実行手順を示したフローチャート。
【図7】図1に示した車両用電源装置における回生制御の実行手順を示したフローチャート。
【図8】回生制御の実行時におけるDC/DCコンバータの作動態様を示した説明図。
【図9】回生制御の実行時におけるDC/DCコンバータの作動態様を示した説明図。
【図10】回生制御の実行時におけるDC/DCコンバータの作動態様を示した説明図。
【図11】従来の車両用電源装置の構成図。
【図12】想定した車両用電源装置の構成図。
【符号の説明】
【0110】
1…燃料電池、2…キャパシタ、3…第1のDC/DCコンバータ、4…PDU(インバータ)、5…モータ、20…第2のDC/DCコンバータ、21…リチウムイオンバッテリ(二次電池)、22…燃料電池補機、30…コントローラ、31…電圧制御手段、33…メモリ
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて出力部が駆動輪と連動して回転するモータと接続され、該モータの力行運転時に該モータに駆動用電力を供給すると共に、該モータの回生運転時に該モータの回生電力を回収する車両用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば燃料電池車両の動力源として、図11(a)に示したように、燃料電池100をコンタクタ101及びインバータ102を介して走行用モータ103に接続すると共に、バッテリ105をDC/DCコンバータ104を介して燃料電池100と並列に接続した車両用電源装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる車両用電源装置においては、モータ103の力行運転時は、コンタクタ101をオン(閉成状態)として燃料電池100からインバータ102に電力供給すると共に、バッテリ105の出力電圧をDC/DCコンバータ104により昇圧若しくは降圧して、インバータ102に供給する。そして、これにより、燃料電池100の出力電力が不足するときに、バッテリ105からの出力電力によってアシストしている。
【0004】
一方、モータ103の回生運転時には、コンタクタ101をオフして燃料電池100とインバータ102間を遮断した状態で、DC/DCコンバータ104を直結することにより、モータ103の回生電力をインバータ102及びDC/DCコンバータ104を介して、バッテリ105に回収する。
【0005】
図11(a)に示した車両用電源装置の構成は、燃料電池100の出力電圧の使用範囲がバッテリ105の出力電圧が高く、バッテリ105の出力電圧をDC/DCコンバータ104で降圧して使用する場合に有利である。そして、この場合は、燃料電池100のスタック数を増やして出力電圧を高める必要があるため、燃料電池100のコストが高くなるという不都合があった。
【0006】
また、図11(b)に示したように、図11(a)のコンタクタ101に代えてDC/DCコンバータ106を備え、バッテリ105をDC/DCコンバータを介さずに該DC/DCコンバータ106及びインバータ102と直結した車両用電源装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
図11(b)に示した車両用電源装置の構成では、バッテリ105の電圧調整手段がないため、バッテリ105から電圧を出力するときには、常にDC/DCコンバータ106により燃料電池100の出力電圧をバッテリ105の出力電圧に合わせる制御を行う必要がある。そのため、DC/DCコンバータ106において電圧変換に伴なう電力損失が大きくなるという不都合があった。
【0008】
また、図11(b)に示した構成によれば、DC/DCコンバータ106を用いることで、燃料電池100の出力電圧を下げることができるため、燃料電池100の積層数を減少させて小型化を図ることができる。しかし、このように燃料電池100の積層数を減少させたときには、燃料電池100の出力電流を急増させるときの応答性が低くなるという不都合がある。
【特許文献1】特開2006−73506号公報(第4−5頁、第1図)
【特許文献2】特開2000−12059号公報(第5−6頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した従来の不都合を回避するために、図12に示したように、DC/DCコンバータ112を介して燃料電池100をインバータ113に接続し、また、燃料電池100の出力端子間にキャパシタ101を接続した構成とすることが考えられる。
【0010】
図12の構成によれば、モータ103の力行運転時には、キャパシタ111から出力される電力により燃料電池100の過渡的な応答性の低さを補うと共に、バッテリ105から出力される電力により、燃料電池100及びキャパシタ111からの出力電力の不足分をアシストすることによって、燃料電池100の小型化を図ることができる。
【0011】
一方、モータ103の回生運転時には、インバータ102の出力電圧をDC/DCコンバータ111により昇圧若しくは降圧して、キャパシタ111を充電することができる。また、PDU102の出力をDC/DCコンバータ104により昇圧若しくは降圧して、バッテリ105を充電することができる。
【0012】
しかし、図12の構成においては、モータ103が回生運転をし、DC/DCコンバータ104,110が昇圧又は降圧動作してインバータ102からキャパシタ111及びバッテリ105に通電した状態から、DC/DCコンバータ104,110の通電方向を逆転させて、インバータ102からモータ103への通電を可能としてモータ103を力行運転に切り替えるときに、DC/DCコンバータ104,110の通電方向の切り替えの制御応答性の相違により、DC/DCコンバータ104,110からインバータ102への出力電圧がハンチングする場合がある。
【0013】
そして、この場合には、例えば加速指令に応じたモータ103の要求電力に対して、インバータ102からモータ103への電力供給が遅れ、車両の加速応答性が低下してドライバビィティ及び回生効率が悪化する。
【0014】
また、モータ103が力行運転をし、DC/DCコンバータ104,110が昇圧又は降圧動作してインバータ102からモータ103に通電した状態から、DC/DCコンバータ104,110の通電方向を逆転させて、インバータ102からキャパシタ111,バッテリ105への通電を可能としてモータ103を回生運転に切り換えるときに、DC/DCコンバータ104,110における通電方向の切り替えが遅れると、回生電力の回収が不十分になる。
【0015】
そこで、本発明は、DC/DCコンバータを介して、燃料電池、キャパシタ、及び二次電池とインバータ間を接続して、モータの力行運転と回生運転を切り替えるときに、回生運転から力行運転への切り替え時にモータに対する電力供給が不足すること、及び力行運転から回生運転への切り替え時にモータの回生電力の回収が不十分となることを抑制することができる車両用電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、車両に搭載されて外部入出力部が駆動輪と連動して回転するモータと接続され、該モータの力行運転時に該モータに駆動用電力を供給すると共に、該モータの回生運転時に該モータの回生電力を回収する車両用電源装置に関する。
【0017】
そして、第1の入出力部が前記外部入出力部と接続されて、前記モータの力行運転時は、第2の入出力部に入力される直流電圧から前記モータの駆動電圧を生成して該第1の入出力部から出力し、前記モータの回生運転時には、該第1の入出力部に入力される前記モータの回生電圧を直流電圧に変換して該第2の入出力部から出力するインバータと、燃料電池と、該燃料電池と並列に接続されたキャパシタと、第1の入出力部が前記インバータの第2の入出力部と接続されると共に、第2の入出力部が前記燃料電池及び前記キャパシタと接続された双方向性の第1のDC/DCコンバータと、二次電池と、第1の入出力部が前記インバータの第2の入出力部と接続されると共に、第2の入出力部が前記二次電池と接続された双方向性の第2のDC/DCコンバータと、前記モータの力行運転時と回生運転時の少なくともいずれか一方において、前記第1のDC/DCコンバータと前記第2のDC/DCコンバータのいずれか一方を直結状態とし、該直結状態としたDC/DCコンバータの出力電圧に応じて、他方のDC/DCコンバータの出力電圧を制御する電圧制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0018】
かかる本発明によれば、前記燃料電池及び前記キャパシタが前記第1のDC/DCコンバータを介して前記インバータと接続されると共に、前記二次電池が前記第2のDC/DCコンバータを介して前記インバータと接続されている。そして、前記電圧制御手段は、前記モータの力行運転時と回生運転時の少なくともいずれか一方において、前記第1のDC/DCコンバータと前記第2のDC/DCコンバータのいずれか一方を直結状態とする。なお、DC/DCコンバータを直結状態とするとは、DC/DCコンバータにおけるスイッチング動作を停止して、DC/DCコンバータの第1の入出力端子と第2の入出力端子間を双方向に導通状態とすることをいう。
【0019】
このように、前記第1のDC/DCコンバータと前記第2のDC/DCコンバータのいずれか一方を直結状態とすることにより、前記モータを回生運転から力行運転に切り替えるときに、前記第1のDC/DCのコンバータと前記第2のDC/DCコンバータのうち、直結状態とされているDC/DCコンバータについては、通電方向の切り替えを不要とすることができる。この場合、通電方向の切り替えに伴う待ち時間が生じないため、前記インバータへの電力供給を速やかに開始することができる。そして、直結状態とされていないDC/DCコンバータについては、前記電圧制御手段により、直結状態とされているDC/DCコンバータの出力電圧に応じて、その出力電圧を制御することにより、前記インバータに入力される電圧のハンチングを抑制しつつ、前記インバータから前記モータへの供給電圧を上昇させることができる。そのため、前記モータを回生運転から力行運転に切り替えるときに、前記インバータから前記モータへの電力供給が不足することを抑制することができる。
【0020】
また、前記モータを力行運転から回生運転に切り替えるときに、前記第1のDC/DCのコンバータと前記第2のDC/DCコンバータのうち、直結状態とされているDC/DCコンバータについては、通電方向の切り替えを要しないため、前記インバータからの電力の回収を速やかに開始することができる。そして、直結状態とされていないDC/DCコンバータについては、前記電圧制御手段により、直結状態とされているDC/DCコンバータの出力電圧に応じてその出力電圧を制御することによって、該直結状態とされていないDC/DCコンバータを介して回収される電力の電圧を、回収先(直結状態とされていないDC/DCコンバータと接続された前記キャパシタ又は前記バッテリ)の状態に合わせて調節することができる。そのため、前記モータを力行運転から回生運転に切り替えるときに、前記インバータから前記キャパシタ及び前記二次電池への回収電力が不十分となることを抑制することができる。
【0021】
また、前記二次電池の出力電圧が前記燃料電池の出力電圧範囲よりも高く設定され、前記電圧制御手段は、前記モータの力行運転時に、前記第1のDC/DCコンバータを直結状態とすると共に、前記第2のDC/DCコンバータを降圧動作させて、前記第1のDC/DCコンバータの出力電圧と前記第2のDC/DCコンバータの出力電圧との差を減少させることを特徴とする。
【0022】
かかる本発明において、一般に、DC/DCコンバータは、降圧動作をさせたときの電力損失は、昇圧動作させたときの電力損失よりも少なくなる。そのため、前記モータの力行運転時に、前記電圧制御手段により、前記第1のDC/DCコンバータを直結状態とすると共に、前記第2のDC/DCコンバータを降圧動作させることで、前記第2のDC/DCコンバータにおける電力損失を抑制して、前記二次電池から前記インバータに電力供給をすることができる。
【0023】
また、前記キャパシタの端子間電圧を検出するキャパシタ電圧検出手段を備え、前記電圧制御手段は、前記モータの回生運転時に、前記インバータの第2の入出力部からの出力電圧が、前記キャパシタの端子間電圧よりも所定レベル高くなるように前記インバータを制御して、前記第1のDC/DCコンバータを直結状態とすることを特徴とする。
【0024】
かかる本発明によれば、前記電圧制御手段は、前記モータの回生運転時に、前記インバータを制御して、前記インバータの第2の入出力部からの出力電圧が、前記キャパシタの端子間電圧よりも所定レベル高い状態とする。そして、この状態で前記第1のDC/DCコンバータを直結状態とすることで、前記第1のDC/DCコンバータにおけるスイッチング損失を生じることなく、前記モータの回生電力によって前記キャパシタを充電することができる。また、前記モータを回生運転から力行運転に切り替えるときに、前記第1のDC/DCコンバータを介して直ちに前記燃料電池及び前記キャパシタから前記インバータに電力を供給することができるため、回生運転から力行運転への切り替えの応答性を高めることができる。
【0025】
また、前記二次電池の端子間電圧を検出する二次電池電圧検出手段を備え、前記電圧制御手段は、前記モータの回生運転時に、前記インバータの第2の入出力部からの出力電圧が、前記キャパシタの端子間電圧よりも所定レベル高くなるように前記インバータを制御して、前記第1のDC/DCコンバータを直結状態としたときに、前記第2のDC/DCコンバータの第2の入出力部の出力電圧が、前記二次電池の端子間電圧よりも所定レベル高くなるように、前記第2のDC/DCコンバータを制御することを特徴とする。
【0026】
かかる本発明によれば、前記電圧制御手段により、前記第1のDC/DCコンバータを直結状態として前記キャパシタを充電しているときに、前記第2のDC/DCコンバータの第2の入出力部の出力電圧が、前記二次電池の端子間電圧よりも所定レベル高くなるように制御することによって、前記第2のDC/DCコンバータを介して前記二次電池を充電することができる。
【0027】
また、前記二次電池の端子間電圧を検出する二次電池電圧検出手段を備え、前記電圧制御手段は、前記モータの回生運転時に、前記インバータの第2の入出力部からの出力電圧が、前記二次電池の端子間電圧よりも所定レベル高くなるように前記インバータを制御して、前記第2のDC/DCコンバータを直結状態とすることを特徴とする。
【0028】
かかる本発明によれば、前記電圧制御手段は、前記モータの回生運転時に、前記インバータを制御して、前記インバータの第2の入出力部からの出力電圧が、前記二次電池の端子間電圧よりも所定レベル高い状態とする。そして、前記電圧制御手段は、この状態で前記第2のDC/DCコンバータを直結状態とする。このように、第2のDC/DCコンバータを直結状態とすることにより、前記第2のDC/DCコンバータにおけるスイッチング損失を生じることなく、前記モータの回生電力によって前記二次電池を充電することができる。また、前記モータを回生運転から力行運転に切り替えるときに、前記第2のDC/DCコンバータを介して直ちに前記二次電池から前記インバータに電力を供給することができるため、回生運転から力行運転への切り替えの応答性を高めることができる。
【0029】
また、キャパシタの端子間電圧を検出するキャパシタ電圧検出手段を備え、前記電圧制御手段は、前記モータの回生運転時に、前記インバータの第2の入出力部からの出力電圧が、前記キャパシタの端子間電圧よりも所定レベル高くなるように前記インバータを制御して、前記第2のDC/DCコンバータを直結状態としたときに、前記第1のDC/DCコンバータの第2の入出力部の出力電圧が、前記キャパシタの端子間電圧よりも所定レベル高くなるように、前記第1のDC/DCコンバータを制御することを特徴とする。
【0030】
かかる本発明によれば、前記電圧制御手段により、前記第2のDC/DCコンバータを直結状態として前記二次電池を充電しているときに、前記第1のDC/DCコンバータの第2の入出力部の出力電圧が、前記キャパシタの端子間電圧よりも所定レベル高くなるように制御することによって、前記第1のDC/DCコンバータを介して前記キャパシタを充電することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の実施の形態について、図1〜図10を参照して説明する。図1は本実施の形態における車両用電源装置の全体構成図、図2は図1に示した車両用電源装置における出力制御の実行手順を示したフローチャート、図3は図2に示したフローチャートによる出力制御時のDC/DCコンバータの作動態様を示した説明図、図4は図1に示した車両用電源装置における出力制御の実行手順を示したフローチャート、図5は図4に示したフローチャートによる出力制御時のDC/DCコンバータの作動態様を示した説明図、図6〜図7は図1に示した車両用電源装置における回生制御の実行手順を示したフローチャート、図8〜図10は回生制御時のDC/DCコンバータの作動態様を示した説明図である。
【0032】
図1を参照して、本実施の形態の車両用電源装置は、燃料電池車両(本発明の車両に相当する)に搭載されるものである。そして、該車両用電源装置は、燃料電池1、燃料電池1と並列に接続された電気二重層キャパシタ2(以下、単にキャパシタ2という)、第1の入出力部4a,4b,4cが外部入出力部11a,11b,11cを介してモータ5と接続されたPDU(Power Drive Unit、本発明のインバータの機能を含む)、第1の入出力部3a,3bがPDU4の第2の入出力部4d,4eと接続されると共に、第2の入出力部3c,3dが燃料電池1及びキャパシタ2と接続された第1のDC/DCコンバータ3、第1の入出力部20a,20bがPDU4の第2の入出力部4d,4eと接続されると共に、第2の入出力部20c,20dがリチウムイオンバッテリ21(本発明の二次電池に相当する。以下、単にバッテリ21という)に接続された第2のDC/DCコンバータ20、及び燃料電池1への反応ガス(水素及び酸素)の供給量等を制御して燃料電池1の発電量を調節するFC(Fuel Cell)補機22を備えている。
【0033】
また、車両用電源装置は、マイクロコンピュータ(図示しない)等により構成された電子ユニットであって車両用電源装置の全体的な作動を制御するコントローラ30を備えている。そして、該マイクロコンピュータが車両用電源装置の制御用プログラムを実行することにより、コントローラ30は、モータ5の力行運転時に、燃料電池1とキャパシタ2とバッテリ21とによる電力供給のマネージメントを行う出力制御と、モータ5の回生運転時に、キャパシタ2とバッテリ電池21とによる電力回収のマネージメントを行う回生制御とを実行する電圧制御手段31として機能する。
【0034】
さらに、コントローラ30は、電圧制御手段31が電力回収のマネージメントを行って、キャパシタ2とバッテリ21を充電する際に使用される各種のデータ等を保持したメモリ33を有している。
【0035】
ここで、コントローラ30には、燃料電池1に備えられた各種センサによる検出信号(燃料電池1の温度、端子間電圧、出力電流、反応ガスの供給圧力等の検出信号)Fc_s、キャパシタ2に備えられた各種センサによる検出信号(キャパシタ2の温度、端子間電圧、入出力電流等の検出信号)Uc_s、バッテリ21に備えられた各種センサによる検出信号(バッテリ21の温度、端子間電圧、入出力電流等の検出信号)Li_s、PDU4に備えられた各種センサによる検出信号(モータ5への供給電流・電圧、モータ5の回生電流・電流等の検出信号)Pd_sが入力される。
【0036】
また、コントローラ30から出力される制御信号Fc_cにより、FC補機22による反応ガスの供給量が調節されて、燃料電池1の発電量が制御される。また、制御信号Ps_cにより第1のDC/DCコンバータ3の通電方向と出力電圧が制御され、制御信号Bi_cにより第2のDC/DCコンバータ20の通電方向と出力電圧が制御される。さらに、制御信号Pd_cにより、PDU4とモータ5間の通電量が調節されてモータ5の力行トルク及び回生トルクが制御される。
【0037】
電圧制御手段31は、各種センサによる検出信号Fc_s,Uc_s,Li_sから燃料電池1とキャパシタ2とバッテリ21の状態を検知し、出力可能なトータルの最大電力Wmaxを決定する。また、電圧制御手段31は、車両の走行状況(車速、加減速等)や運転者による操作状況(アクセルべダルの操作量等)に応じて決定されるモータ5の目標トルクTr_c、FC補機22の消費電力、図示しない他の電装補機(空調機器、オーディオ機器等)の消費電力等に基づいて、車両用電源装置から出力する電圧及び目標電力Wcを最大電力Wmaxを超えない範囲で決定する。
【0038】
そして、電圧制御手段31は、モータ5の目標トルクTr_cが正(Tr_c>0)であるときに、目標電力Wcが得られ、且つ、燃料電池1とキャパシタ2とバッテリ21のトータルの効率が最良となる(燃料電池1の発電効率と燃料電池1の加湿状態から判断した内部抵抗損失、さらにキャパシタ2とリチイムイオン電池21の温度状態を考慮した内部抵抗損失を考量して、トータルの内部抵抗損失が最小となる)ように、燃料電池1とキャパシタ2とバッテリ21の出力電力を分配する割合を決定して、モータ5の力行運転を行なう出力制御を実行する。
【0039】
また、電圧制御手段31は、モータ5の目標トルクTr_cが負であるときに、モータ5の回生運転を実行して、モータ5から出力される回生電力をキャパシタ2とバッテリ21に回収し、キャパシタ2とバッテリ21を充電する回生制御を実行する。
【0040】
[出力制御]先ず、図2,図4に示したフローチャートに従って、出力制御について説明する。
【0041】
図2に示したフローチャートは、バッテリ21側の第2のDC/DCコンバータ20を直結状態に制御して、第2のDC/DCコンバータ20におけるスイッチングによる電力損失を回避するようにしたものである。電圧制御手段31は、図2のSTEP50でモータ5の目標トルクTr_cが0以上(0≦Tr_c)となったときにSTEP51に進み、要求負荷(モータ5や燃料電池補機22等の電気負荷の動作に必要となる総電力)が基準値PL以下であるときはSTEP60に進む。
【0042】
ここで、基準値PLは、バッテリ21からの出力のみによって燃料電池車両を走行させることで、総合的な燃費効率を向上させることができる範囲の上限値に設定されている。そして、電圧制御手段31は、STEP60で燃料電池1の発電を停止若しくはアイドル発電(発電量を微小とした状態)として、バッテリ21からの出力のみによって走行するバッテリ走行ルーチンを実行する。
【0043】
また、STEP51で、要求負荷が基準値PLよりも大きいときにはSTEP52に進み、電圧制御手段31は、要求負荷が基準値PLよりも大きく基準値PMよりも小さい範囲(PL<要求負荷<PM)にあるか否かを判断する。
【0044】
ここで、基準値PMは、燃料電池1の出力電圧Vfcを昇圧してPDU4に供給し、バッテリ21の出力電圧Vbatを変圧せずにPDU4に供給して燃料電池1の出力をアシストすることによって、総合的な燃費効率を向上させることができる範囲の下限値に設定されている。そして、STEP52で、要求負荷が基準値PLよりも大きく基準値PMよりも小さい範囲(PL<要求負荷<PM)にあるときはSTEP70に分岐する。
【0045】
この場合は、要求負荷が小さく燃料電池1及びキャパシタ2の出力電力で対応可能であるため、電圧制御手段31は、バッテリ21によるアシストを行なわずに、燃料電池1及びキャパシタ2の出力のみによって走行する燃料電池走行ルーチンを実行する。
【0046】
一方、STEP52で要求負荷が基準値PM以上であるときにはSTEP53に進み、電圧制御手段31は、要求負荷が基準値PMから基準値PHまでの範囲(PM≦要求負荷≦PH)にあるか否かを判断する。ここで、基準値PHは、燃料電池1の出力電圧Vfcを昇圧してPDU4に供給し、バッテリ21の出力電圧Vbatを変圧せずにPDU4に供給して燃料電池1の出力をアシストすることによって、総合的な燃費効率を向上させることができる範囲の上限値に設定されている。
【0047】
そこで、STEP53で要求負荷が基準値PMから基準値PHまでの範囲にあるときは、STEP80に分岐し、電圧制御手段31は、第1のDC/DCコンバータ3により、燃料電池1の出力電圧Vfcをバッテリ21の出力電圧Vbatまで昇圧する。そして、続くSTEP81で、電圧制御手段31は、第2のDC/DCコンバータ20を直結状態(第1の入出力部20a,20bと第2の入出力部20c,20d間が双方向に導通した状態)とする。これにより、バッテリ21からPDU4に電力供給されて、燃料電池1及びキャパシタ2からの出力電力の不足分がアシストされる。
【0048】
一方、STEP53で要求負荷が基準値PHよりも大きいときにはSTEP54に進み、電圧制御手段31は、第1のDC/DCコンバータ3により燃料電池1の出力電圧Vfc(=キャパシタ2の出力電圧Vcap)を昇圧する。また、続くSTEP55で、電圧制御手段31は、第2のDC/DCコンバータ20によりバッテリ21の出力電圧Vbatを昇圧する。
【0049】
これにより、燃料電池1及びキャパシタ2から第1のDC/DCコンバータ3を介してPDU4に供給される電圧Vx1と、バッテリ21から第2のDC/DCコンバータ20を介してPDU4に供給される電圧Vy1を上昇させて、PDU4からモータ5に印加する駆動電圧を高めてモータ5の出力を増大させることができる。
【0050】
ここで、図3は、以上説明した図2のフローチャートによる出力制御を行ったときの、第1のDC/DCコンバータ3の出力電圧Vx1と第2のDC/DCコンバータ20の出力電圧Vy1の推移の例を示したものである。図3の上段は、縦軸を電圧(V)に設定して横軸を時間(t)に設定したものである。また、図3の下段は、縦軸を第1のDC/DCコンバータ3及び第2のDC/DCコンバータ20におけるスイッチングによる電力損失に設定し、横軸を時間(t)に設定したものである。
【0051】
図3のt50は、第1のDC/DCコンバータ3による燃料電池1の出力電圧Vfcの昇圧を開始する時点を示している。そして、t51で第1のDC/DCコンバータ3の出力電圧Vx1がバッテリ21の出力電圧Vbatまで上昇している。t50〜t52の間は、第2のDC/DCコンバータ20は直結状態とされているため、第2のDC/DCコンバータ20では、スイッチングによる電力損失は発生せず、第1のDC/DCコンバータ3の電力損失A50のみが発生している。
【0052】
t52は要求負荷が基準値PHよりも大きくなった時点を示しており、燃料電池1の出力電圧Vfcが第1のDC/DCコンバータ3により昇圧されると共に、バッテリ21の出力電圧Vbatが第2のDC/DCコンバータ20により昇圧されている。そして、t53で第1のDC/DCコンバータ3の出力電圧Vx1と第2のDC/DCコンバータ20の出力電圧Vy1が、要求負荷に応じたVpduに達している。
【0053】
t52〜t54の間は、第1のDC/DCコンバータ3と第2のDC/DCコンバータ20が共にスイッチングによる昇圧動作をしているため、第1のDC/DCコンバータ3における電力損失A50と第2のDC/DCコンバータ20における電力損失A51が発生している。
【0054】
次に、図4に示したフローチャートは、燃料電池1側の第1のDC/DCコンバータ3を直結状態に制御するものである。電圧制御手段31は、図4のSTEP100でモータ5の目標トルクTr_cが0以上(0≦Tr_c)となったときにSTEP101に進み、要求負荷が基準値PL以下であるときはSTEP110に進む。
【0055】
ここで、基準値PLは、上述した図2の場合と同様に、バッテリ21からの出力のみによって燃料電池車両を走行させることで、総合的な燃費効率が向上する範囲の上限値に設定されている。そして、電圧制御手段31は、STEP110で燃料電池1の発電を停止若しくはアイドル発電として、バッテリ21からの出力のみによって走行するバッテリ走行ルーチンを実行する。
【0056】
また、STEP101で、要求負荷が基準値PLよりも大きいときにはSTEP102に進み、電圧制御手段31は、要求負荷が基準値PLよりも大きく基準値PMよりも小さい範囲(PL<要求負荷<PM)にあるか否かを判断する。
【0057】
ここで、基準値PMは、燃料電池1の出力電圧Vfcを昇圧せずに、バッテリ21の出力電圧Vbatを降圧してPDU4への出力電力をアシストすることにより、総合的な燃費効率が向上する範囲の下限値に設定されている。そして、STEP102で、要求負荷が基準値PLよりも大きく基準値PMよりも小さい範囲(PL<要求負荷<PM)にあるときはSTEP120に分岐する。この場合は、要求負荷が小さく燃料電池1及びキャパシタ2の出力電力で対応可能であるため、電圧制御手段31は、バッテリ21によるアシストは行なわずに、燃料電池1及びキャパシタ2の出力のみによって走行する燃料電池走行ルーチンを実行する。
【0058】
一方、STEP103で要求負荷が基準値PMを超えていたときにはSTEP103に進み、電圧制御手段31は、要求負荷が基準値PMから基準値PHまでの範囲(PM≦要求負荷≦PH)にあるか否かを判断する。ここで、基準値PHは、燃料電池1の出力電圧Vfcを昇圧せずに、バッテリ21の出力電圧Vbatを降圧してPDU4への出力電力をアシストすることにより、総合的な燃費効率が向上する範囲の上限値に設定されている。
【0059】
そこで、STEP103で要求負荷が基準値PMから基準値PHまでの範囲にあるときは、STEP130に分岐し、電圧制御手段31は、第2のDC/DCコンバータ20により、バッテリ21の出力電圧Vbatを燃料電池1の出力電圧Vfcまで降圧する。そして、続くSTEP131で、電圧制御手段31は、第1のDC/DCコンバータ3を直結状態(第1の入出力部3a,3bと第2の入出力部3c,3d間が双方向に導通した状態)とする。これにより、バッテリ21からPDU4に電力供給されて、燃料電池1及びキャパシタ2からの出力電力の不足分をアシストする。
【0060】
一方、STEP103で要求負荷が基準値PHよりも大きいときにはSTEP104に進み、電圧制御手段31は、第1のDC/DCコンバータ3により燃料電池1の出力電圧Vfcを、バッテリ21の出力電圧Vbatまで昇圧する。また、続くSTEP105で、電圧制御手段31は、第2のDC/DCコンバータ21を直結状態とする。
【0061】
これにより、燃料電池1及びキャパシタ2から第1のDC/DCコンバータ3を介してPDU4に供給される電圧Vx1と、バッテリ21から第2のDC/DCコンバータ20を介してPDU4に供給される電圧Vy1を上昇させて、PDU4からモータ5に印加する駆動電圧を高めてモータ5の出力を増大させることができる。
【0062】
ここで、図5は、以上説明した図3のフローチャートによる出力制御を行ったときの、第1のDC/DCコンバータ3の出力電圧Vx1と第2のDC/DCコンバータ20の出力電圧Vy1の推移の例を示したものである。図5の上段は、縦軸を電圧(V)に設定して横軸を時間(t)に設定したものである。また、図5の下段は、縦軸を第1のDC/DCコンバータ3及び第2のDC/DCコンバータ20におけるスイッチング損失に設定し、横軸を時間(t)に設定したものである。
【0063】
図5のt60は、第2のDC/DCコンバータ20によるバッテリ21の出力電圧Vbatの降圧を開始する時点を示している。そして、t61で第2のDC/DCコンバータ20の出力電圧Vy1が燃料電池1の出力電圧Vfcまで低下している。t60〜t62の間は、第1のDC/DCコンバータ3は直結状態とされているため、第1のDC/DCコンバータ3では、スイッチングによる電力損失は発生せず、第2のDC/DCコンバータ20の電力損失A60のみが発生している。
【0064】
t62は要求負荷が基準値PHよりも大きくなった時点を示しており、t62から燃料電池1の出力電圧Vfcが第1のDC/DCコンバータ3により昇圧され、t65で第1のDC/DCコンバータ3の出力電圧Vx1がバッテリ21の出力電圧Vbatに達している。また、第1のDC/DCコンバータ3の出力電圧Vx1に合わせて、第2のDC/DCコンバータ20の出力電圧Vy1が調節されている。t62〜t65の間は、第1のDC/DCコンバータ3の電力損失A61と第2のDC/DCコンバータ20の電力損失A60が共に発生している。
【0065】
そして、第1のDC/DCコンバータ3の出力電圧Vx1がバッテリ21の出力電圧Vbatに達したt65で、第2のDC/DCコンバータ20が直結状態とされている。これにより、t65以降は、第1のDC/DCコンバータ3の電力損失A61のみが発生し、第2のDC/DCコンバータ20の電力損失は発生していない。
【0066】
[回生制御]次に、図6〜図7に示したフローチャートに従って、回生制御について説明する。
【0067】
電圧制御手段31は、図6のSTEP1でモータ5の目標トルクTr_cが負(Tr_c<0)となったときにSTEP2に進み、モータ5の回生電流(PDU4からの検出信号Pd_sにより検知される)が分配基準値(分配基準値のデータは予めメモリ33に保持されている)よりも小さいか否かを判断する。そして、モータ5の回生電流が分配基準値よりも小さいときはSTEP2に進み、モータ5の回生電流が分配基準値以上であるときには図7のSTEP20に分岐する。
【0068】
STEP3で、電圧制御手段31は、モータ5の回生電流がバッテリー基準値(バッテリ基準値のデータは予めメモリ33に保持されている)よりも大きいか否かを判断する。そして、モータ5の回生電流がバッテリ基準値よりも大きいときはSTEP4に進み、モータ5の回生電流がバッテリ基準値以下であるときにはSTEP7に分岐する。
【0069】
STEP4で、電圧制御手段31は、PDU4の第2の入出力部4d,4e間の電圧Vpduが、燃料電池1の端子間電圧Vfc(=キャパシタ2の端子間電圧Vcap)よりも高く、且つ、キャパシタ2の上限電圧Vcap_lmtよりも低くなるように、PDU4を制御する。具体的には、PDU4に備えられたインバータを構成するトランジスタのスイッチングにより、PDU4の第2の入出力部4d,4e間の出力VpduがVcapよりも高く且つVcap_lmtよりも低い範囲(Vcap<Vpdu<Vcap_lmt)に制御される。
【0070】
そして、続くSTEP5で、電圧制御手段31は、第1のDC/DCコンバータ3を直結状態とする。これにより、第1のDC/DCコンバータ3のスイッチング動作が停止して、第1のDC/DCコンバータ3の第1の入出力部3a,3bと第2の入出力部3c,3d間が常時導通した状態となる。
【0071】
ここで、図8は、第1のDC/DCコンバータ3を直結状態とする場合のキャパシタ2の端子間電圧Vcap(=燃料電池1の端子間電圧Vfc)と、バッテリ21の端子間電圧Vbatと、第1のDC/DCコンバータ3の第1の入出力部3a,3b間の電圧Vx1の推移の例を示したものである。図8の上段は、縦軸を電圧(V)に設定して横軸を時間(t)に設定したものである。また、図8の下段は、縦軸の上側を第1のDC/DCコンバータ3におけるスイッチング損失に設定し、縦軸の下側をキャパシタ2に充電される回生電力に設定し、横軸を時間(t)に設定したものである。
【0072】
図8のt10は、燃料電池1の出力電圧Vfcを第1のDC/DCコンバータ3により昇圧してPDU4に供給すると共に、バッテリ21から直結状態とされた第2のDC/DCコンバータ20を介してPDU4に供給することにより、モータ5を力行運転させた状態から、バッテリ21によるアシスト出力が減少し始める時点を示している。
【0073】
電圧制御手段31は、t11で第2のDC/DCコンバータ21をオフ状態(第1の入出力部20a,20bと第2の入出力部20c,20dの間を遮断した状態)とし、t11からt12に向かって、第1のDC/DCコンバータ3の第1の出力部3a,3b間の電圧Vx1を次第に減少させて、t12で第1のDC/DCコンバータ3を直結状態(Vx2=Vx1)としている。
【0074】
これにより、第1のDC/DCコンバータ3におけるスイッチング損失A10が、t11からt21にかけて次第に減少し、t12で第1のDC/DCコンバータ3におけるスイッチング損失A10がゼロとなっている。
【0075】
そして、燃料電池1の出力電流の減少に伴なって、t12からt13にかけて第1のDC/DCコンバータ3の第1の入出力部3a,3b間の電圧Vx1が次第に上昇する。電圧制御手段31は、t13でPDU4によるモータ5の回生電力の出力を開始し、PDU4の第2の入出力部4d,4e間の電圧Vpduを、キャパシタ2の端子間電圧Vcapよりも高く且つキャパシタ2の上限電圧Vcap_lmtよりも低い範囲(Vcap<Vpdu<Vcap_lmt)に制御する。
【0076】
これにより、キャパシタ2がモータ5の回生電力B10により充電されて、キャパシタ2の端子間電圧Vcapが次第に上昇する。なお、この場合のPDU4の第2の入出力部4d,4e間の電圧Vpduは、本発明におけるキャパシタ2の端子間電圧よりも所定レベル高い電圧に相当する。
【0077】
次に、電圧制御手段31は、STEP6で、キャパシタ2の充電状態(キャパシタ2の端子間電圧Vcap、キャパシタ2への充電電流等により判断する)からキャパシタ2の充電を継続するか否かを判断する。そして、キャパシタ2の充電を終了するときはSTEP7に進み、キャパシタ2の充電を継続するときにはSTEP1に分岐する。
【0078】
STEP7で、電圧制御手段31は、第1のDC/DCコンバータ3をオフ状態(第2のDC/DCコンバータ20の第1の入出力部3a,3bと第2の入出力部3c,3d間を遮断した状態)として、第2のDC/DCコンバータ20を直結状態とする。これにより、第2のDC/DCコンバータ20のスイッチング動作が停止して、第2のDC/DCコンバータ20の第1の入出力部20a,20bと第2の入出力部20c,20d間が常時導通した状態となる。
【0079】
そして、続くSTEP8で、充電制御制御手段32は、PDU4の第2の入出力部4d,4e間の電圧Vpduがバッテリ21の端子間電圧Vbatよりも所定レベル高くなるように、PDU4を制御してバッテリ21を充電する。このように、第2のDC/DCコンバータ20を直結状態とすることにより、第2のDC/DCコンバータ20におけるスイッチング損失の発生を回避して、バッテリ21を充電することができる。
【0080】
次のSTEP9で、電圧制御手段31は、バッテリ21の充電状態(バッテリ21の端子間電圧Vbat、バッテリ21はの充電電流等により判断する)から、モータ5の回生運転を終了するか否かを判断する。回生運転を終了するときはSTEP10に進み、回生運転を継続するときにはSTEP1に分岐する。
【0081】
次に、図7のSTEP20以降は、モータ5の回生電力により、キャパシタ2とバッテリ21の充電を同時に行う処理である。電圧制御手段は、STEP20で、PDU4の第2の入出力部4d,4e間の電圧Vpduが、第1のDC/DCコンバータ3を直結状態としてキャパシタ2を充電可能な状態、又は第2のDC/DCコンバータ20を直結状態としてバッテリ21を充電可能な状態であるか否かを判断する。
【0082】
そして、第1のDC/DCコンバータ3を直結状態としてキャパシタ2を充電可能な状態、又は第2のDC/DCコンバータ20を直結状態としてバッテリ21を充電可能な状態であるときはSTEP21に進み、第1のDC/DCコンバータ3と第2のDC/DCコンバータ20のいずれも直結状態とすることができないときにはSTEP20に分岐すする。
【0083】
STEP21で、電圧制御手段31は、第1のDC/DCコンバータ3を直結状態とするときには、上述した図6のSTEP4,STEP5と同様にして、PDU4の第2の入出力部4d,4e間の電圧Vpduを制御して第1のDC/DCコンバータ3を直結状態とする。そして、電圧制御手段31は、第2のDC/DCコンバータ20の第2の入出力部20d,20e間の電圧が、バッテリ21の端子間電圧Vbatよりも所定レベル高くなるように第2のDC/DCコンバータ20の作動を制御する。
【0084】
これにより、STEP22で、PDU4から直結状態の第1のDC/DCコンバータ3を介して供給される電力によって、キャパシタ2が充電されると共に、PDU4から変圧動作状態の第2のDC/DCコンバータ20を介して供給される電力によって、バッテリ21が充電される。
【0085】
また、第2のDC/DCコンバータ20を直結状態とするときには、電圧制御手段31は、STEP21で、上述した図6のSTEP7,STEP8と同様にして、PDU4の第2の入出力部4d,4e間の電圧Vpduを制御して第2のDC/DCコンバータ20を直結状態とする。そして、電圧制御手段31は、第1のDC/DCコンバータ3の第2の入出力部3c,3d間の電圧Vx2を、キャパシタ2の端子間電圧Vcapよりも高く且つキャパシタ2の上限電圧Vcap_lmtよりも低い範囲(Vcap<Vx2<Vcap_lmt)に制御する。
【0086】
これにより、STEP22で、PDU4から直結状態の第2のDC/DCコンバータ20を介して供給される電力によって、バッテリ21が充電されると共に、PDU4から変圧動作状態の第1のDC/DCコンバータ3を介して供給される電力によって、キャパシタ2が充電される。
【0087】
ここで、図9は、第2のDC/DCコンバータ20を直結状態として、バッテリ21とキャパシタ2を充電する場合のキャパシタ2の端子間電圧Vcap(=燃料電池1の端子間電圧Vfc)と、バッテリ21の端子間電圧Vbatと、第1のDC/DCコンバータ3の第1の入出力部3a,3b間の電圧Vx1及び第2の入出力部3c,3d間の電圧Vx2と、PDU4の第2の入出力部4d,4e間の電圧Vpduの推移の例を示したものである。
【0088】
図9の上段は、縦軸を電圧(V)に設定して横軸を時間(t)に設定したものである。また、図9の下段は、縦軸の上側を第1のDC/DCコンバータ3におけるスイッチング損失に設定し、縦軸の下側をバッテリ21に充電される回生電力に設定し、横軸を時間(t)に設定したものである。
【0089】
図9のt20は、燃料電池1の出力Vfc(=キャパシタ2の端子間電圧Vcap)を第1のDC/DCコンバータ3により昇圧してPDU4に供給すると共に、バッテリ21から直結状態とされた第2のDC/DCコンバータ20を介してPDU4に供給することにより、モータ5を力行運転させた状態から、バッテリ21によるアシスト出力が減少し始める時点を示している。
【0090】
電圧制御手段31は、t21で第2のDC/DCコンバータ21をオフ状態(第1の入出力部20a,20bと第2の入出力部20c,20d間を遮断した状態)とし、t21からt22に向かって、第1のDC/DCコンバータ3の第1の出力部3a,3b間の電圧Vx1を次第に減少させて、t22で第1のDC/DCコンバータ3を直結状態としている。
【0091】
これにより、第1のDC/DCコンバータ3におけるスイッチング損失A20が、t21からt22にかけて次第に減少し、t22で第1のDC/DCコンバータ3におけるスイッチング損失A20がゼロになっている。
【0092】
そして、燃料電池1の出力電流の減少に伴なって、t22からt23にかけて第1のDC/DCコンバータ3の第1の入出力部3a,3b間の電圧が次第に上昇する。電圧制御手段31は、t23以降、第1のDC/DCコンバータ3の第2の入出力部3c,3d間の電圧Vx2を、キャパシタ2の端子間電圧Vcapよりも高く、且つキャパシタ2の上限電圧Vcap_lmtよりも低い範囲(Vcap<Vpdu<Vcap_lmt)に制御する。
【0093】
電圧制御手段31は、t24でPDU4による回生電力の出力を開始し、PDU4の第2の入出力部4d,4e間の電圧が、バッテリ21の端子間電圧Vbatよりも所定レベル高くなるようにPDU4を制御する。これにより、バッテリ21が、第2のDC/DCコンバータ20を介して供給されるモータ5の回生電力B20により充電される。
【0094】
また、キャパシタ3が、第1のDC/DCコンバータ3を介して供給されるモータ5の回生電力B20により充電される。この場合、第1のDC/DCコンバータ3においてはスイッチング損失A21が生じるが、第2のDC/DCコンバータ20は直結状態とされているため、スイッチング損失は生じない。
【0095】
次に、STEP30〜STEP32は、第1のDC/DCコンバータ3と第2のDC/DCコンバータ20のいずれも、直結状態とすることができない場合の処理である。STEP30で、電圧制御手段31は、PDU4の第2の入出力部4d,4e間の電圧を制御して、キャパシタ2及びバッテリ21を同時に充電可能な電圧とする。
【0096】
そして、続くSTEP31で、電圧制御手段31は、第1のDC/DCコンバータ3の作動を制御して、第1のDC/DCコンバータ3の第2の入出力部3c,3d間の電圧Vx2が、キャパシタ2の端子間電圧Vcapよりも高く、且つキャパシタ2の上限端子間電圧Vcap_lmtよりも低い範囲(Vcap<Vx2<Vcap_lmt)とする。
【0097】
また、電圧制御手段31は、第2のDC/DCコンバータ20の作動を制御して、第2のDC/DCコンバータ20の第2の入出力部20c,20d間の電圧Vy2が、バッテリ21の端子間電圧Vbatよりも所定レベル高くなるようにする。
【0098】
これにより、STEP32で、PDU4から変圧動作状態の第1のDC/DCコンバータ3を介して供給されるモータ5の回生電力によって、キャパシタ2が充電される。また、PDU4から変圧動作状態の第2のDC/DCコンバータ20を介して供給されるモータ5の回生電力によって、バッテリ21が充電される。
【0099】
ここで、図10は上述したSTEP30〜STEP32の処理により、第1のDC/DCコンバータ3と第2のDC/DCコンバータ20を、共にスイッチングによる変圧動作状態として、キャパシタ2及びバッテリ21を充電する場合のキャパシタ2の端子間電圧Vcap(=燃料電池1の端子間電圧Vfc)と、バッテリ21の端子間電圧Vbatと、第1のDC/DCコンバータ3の第1の入出力部3a,3b間の電圧Vx1と、第2のDC/DCコンバータ20の第1の入出力部20c,20d間の電圧Vy1と、PDU4の第2の入出力部4d,4e間の電圧Vpduの推移を示したものである。
【0100】
図10の上段は、縦軸を電圧(V)に設定して横軸を時間(t)に設定したものである。また、図10の下段は、縦軸の上側を第1のDC/DCコンバータ3及び第2のDC/DCコンバータ20におけるスイッチング損失に設定し、縦軸の下側をキャパシタ2及びバッテリ21に充電される回生電力に設定し、横軸を時間(t)に設定したものである。
【0101】
図10のt30は、燃料電池1の出力電圧Vfcを第1のDC/DCコンバータ3により昇圧してPDU4に供給すると共に、バッテリ21から直結状態とされた第2のDC/DCコンバータ20を介してPDU4に供給することにより、モータ5を力行運転させた状態から、バッテリ21によるアシストが減少し始める時点を示している。
【0102】
電圧制御手段31は、t31で第2のDC/DCコンバータ21をオフ状態(第1の入出力部20a,20bと第2の入出力部20c,20d間を遮断した状態)とし、t31からt32に向かって、第1のDC/DCコンバータ3の第1の入出力部3a,3b間の電圧Vx1を次第に減少させて、t32で第1のDC/DCコンバータ3を直結状態としている。
【0103】
これにより、第1のDC/DCコンバータ3におけるスイッチング損失A30が、t31からt32にかけて次第に減少し、t32で第1のDC/DCコンバータ3におけるスイッチング損失A30がゼロになっている。
【0104】
そして、燃料電池1の出力電流の低下に伴なって、t32からt33にかけて第1のDC/DCコンバータ3の第1の入出力部3a,3b間の電圧Vx1(=Vfc,Vcap)が次第に上昇する。電圧制御手段31は、t33からt34にかけてPDU4の第2の入出力部4d,4e間の電圧Vpduを上昇させ、これにより、第1のDC/DCコンバータ3の第1の入出力部3a,3b間の電圧Vx1と、第2のDC/DCコンバータ20の第1の入出力部20a,20b間の電圧Vy1が、Vpduに向かって上昇している。
【0105】
そし、電圧制御手段31は、t34以降は、第1のDC/DCコンバータ3の第2の入出力部3c,3d間の電圧Vx2を、キャパシタ2の端子間電圧Vcapよりも高く且つキャパシタ2の上限端子間電圧Vcap_lmtよりも低い範囲(Vcap<Vx2<Vcap_lmt)に制御する。また、電圧制御手段31は、t34以降は、第2のDC/DCコンバータ20の第2の入出力部20c,20d間の電圧を、バッテリ21の端子間電圧Vbatよりも所定レベル高い電圧に制御する。
【0106】
これにより、PDU4から変圧動作状態の第1のDC/DCコンバータ3を介して供給されるモータ5の回生電力(B30の一部)によって、キャパシタ2が充電される。また、PDU4から変圧動作状態の第2のDC/DCコンバータ20を介して供給されるモータ5の回生電力(B30の一部)によって、バッテリ21が充電される。この場合は、第1のDC/DCコンバータ3においてスイッチング損失A31が生じると共に、第2のDC/DCコンバータ20においてスイッチング損失A32が生じる。
【0107】
なお、本実施の形態では本発明の二次電池としてリチウムイオン電池を示し、また、本発明のキャパシタとして電気二重層キャパシタを示したが、本発明の二次電池及びキャパシタの仕様はこれらに限定されず、他の仕様の二次電池及びキャパシタを用いてもよい。
【0108】
また、本実施の形態では、PDU4とキャパシタ2間の第1のDC/DCコンバータ3を直結状態として、PDU4とバッテリ21間の第2のDC/DCコンバータ20を変圧動作させる制御態様と、PDU4とバッテリ21間の第2のDC/DCコンバータ20を直結状態として、PDU4とキャパシタ2間の第1のDC/DCコンバータ3を変圧動作させる制御態様との双方を行う構成を示したが、いずれか一方の制御態様のみを行う場合であっても本発明の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本実施の形態における車両用電源装置の全体構成図。
【図2】図1に示した車両用電源装置における出力制御の実行手順を示したフローチャート。
【図3】出力制御の実行時におけるDC/DCコンバータの作動態様を示した説明図。
【図4】図1に示した車両用電源装置における出力制御の実行手順を示したフローチャート。
【図5】出力制御の実行時におけるDC/DCコンバータの作動態様を示した説明図。
【図6】図1に示した車両用電源装置における回生制御の実行手順を示したフローチャート。
【図7】図1に示した車両用電源装置における回生制御の実行手順を示したフローチャート。
【図8】回生制御の実行時におけるDC/DCコンバータの作動態様を示した説明図。
【図9】回生制御の実行時におけるDC/DCコンバータの作動態様を示した説明図。
【図10】回生制御の実行時におけるDC/DCコンバータの作動態様を示した説明図。
【図11】従来の車両用電源装置の構成図。
【図12】想定した車両用電源装置の構成図。
【符号の説明】
【0110】
1…燃料電池、2…キャパシタ、3…第1のDC/DCコンバータ、4…PDU(インバータ)、5…モータ、20…第2のDC/DCコンバータ、21…リチウムイオンバッテリ(二次電池)、22…燃料電池補機、30…コントローラ、31…電圧制御手段、33…メモリ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されて外部入出力部が駆動輪と連動して回転するモータと接続され、該モータの力行運転時に該モータに駆動用電力を供給すると共に、該モータの回生運転時に該モータの回生電力を回収する車両用電源装置であって、
第1の入出力部が前記外部入出力部と接続されて、前記モータの力行運転時は、第2の入出力部に入力される直流電圧から前記モータの駆動電圧を生成して該第1の入出力部から出力し、前記モータの回生運転時には、該第1の入出力部に入力される前記モータの回生電圧を直流電圧に変換して該第2の入出力部から出力するインバータと、
燃料電池と、
該燃料電池と並列に接続されたキャパシタと、
第1の入出力部が前記インバータの第2の入出力部と接続されると共に、第2の入出力部が前記燃料電池及び前記キャパシタと接続された双方向性の第1のDC/DCコンバータと、
二次電池と、
第1の入出力部が前記インバータの第2の入出力部と接続されると共に、第2の入出力部が前記二次電池と接続された双方向性の第2のDC/DCコンバータと、
前記モータの力行運転時と回生運転時の少なくともいずれか一方において、前記第1のDC/DCコンバータと前記第2のDC/DCコンバータのいずれか一方を直結状態とし、該直結状態としたDC/DCコンバータの出力電圧に応じて、他方のDC/DCコンバータの出力電圧を制御する電圧制御手段とを備えたことを特徴とする車両用電源装置。
【請求項2】
前記二次電池の出力電圧が前記燃料電池の出力電圧範囲よりも高く設定され、
前記電圧制御手段は、前記モータの力行運転時に、前記第1のDC/DCコンバータを直結状態とすると共に、前記第2のDC/DCコンバータを降圧動作させて、前記第1のDC/DCコンバータの出力電圧と前記第2のDC/DCコンバータの出力電圧との差を減少させることを特徴とする請求項1記載の車両用電源装置。
【請求項3】
前記キャパシタの端子間電圧を検出するキャパシタ電圧検出手段を備え、
前記電圧制御手段は、前記モータの回生運転時に、前記インバータの第2の入出力部からの出力電圧が、前記キャパシタの端子間電圧よりも所定レベル高くなるように前記インバータを制御して、前記第1のDC/DCコンバータを直結状態とすることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用電源装置。
【請求項4】
前記二次電池の端子間電圧を検出する二次電池電圧検出手段を備え、
前記電圧制御手段は、前記モータの回生運転時に、前記インバータの第2の入出力部からの出力電圧が、前記キャパシタの端子間電圧よりも所定レベル高くなるように前記インバータを制御して、前記第1のDC/DCコンバータを直結状態としたときに、前記第2のDC/DCコンバータの第2の入出力部の出力電圧が、前記二次電池の端子間電圧よりも所定レベル高くなるように、前記第2のDC/DCコンバータを制御することを特徴とする請求項3記載の車両用電源装置。
【請求項5】
前記二次電池の端子間電圧を検出する二次電池電圧検出手段を備え、
前記電圧制御手段は、前記モータの回生運転時に、前記インバータの第2の入出力部からの出力電圧が、前記二次電池の端子間電圧よりも所定レベル高くなるように前記インバータを制御して、前記第2のDC/DCコンバータを直結状態とすることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用電源装置。
【請求項6】
キャパシタの端子間電圧を検出するキャパシタ電圧検出手段を備え、
前記電圧制御手段は、前記モータの回生運転時に、前記インバータの第2の入出力部からの出力電圧が、前記キャパシタの端子間電圧よりも所定レベル高くなるように前記インバータを制御して、前記第2のDC/DCコンバータを直結状態としたときに、前記第1のDC/DCコンバータの第2の入出力部の出力電圧が、前記キャパシタの端子間電圧よりも所定レベル高くなるように、前記第1のDC/DCコンバータを制御することを特徴とする請求項5記載の車両用電源装置。
【請求項1】
車両に搭載されて外部入出力部が駆動輪と連動して回転するモータと接続され、該モータの力行運転時に該モータに駆動用電力を供給すると共に、該モータの回生運転時に該モータの回生電力を回収する車両用電源装置であって、
第1の入出力部が前記外部入出力部と接続されて、前記モータの力行運転時は、第2の入出力部に入力される直流電圧から前記モータの駆動電圧を生成して該第1の入出力部から出力し、前記モータの回生運転時には、該第1の入出力部に入力される前記モータの回生電圧を直流電圧に変換して該第2の入出力部から出力するインバータと、
燃料電池と、
該燃料電池と並列に接続されたキャパシタと、
第1の入出力部が前記インバータの第2の入出力部と接続されると共に、第2の入出力部が前記燃料電池及び前記キャパシタと接続された双方向性の第1のDC/DCコンバータと、
二次電池と、
第1の入出力部が前記インバータの第2の入出力部と接続されると共に、第2の入出力部が前記二次電池と接続された双方向性の第2のDC/DCコンバータと、
前記モータの力行運転時と回生運転時の少なくともいずれか一方において、前記第1のDC/DCコンバータと前記第2のDC/DCコンバータのいずれか一方を直結状態とし、該直結状態としたDC/DCコンバータの出力電圧に応じて、他方のDC/DCコンバータの出力電圧を制御する電圧制御手段とを備えたことを特徴とする車両用電源装置。
【請求項2】
前記二次電池の出力電圧が前記燃料電池の出力電圧範囲よりも高く設定され、
前記電圧制御手段は、前記モータの力行運転時に、前記第1のDC/DCコンバータを直結状態とすると共に、前記第2のDC/DCコンバータを降圧動作させて、前記第1のDC/DCコンバータの出力電圧と前記第2のDC/DCコンバータの出力電圧との差を減少させることを特徴とする請求項1記載の車両用電源装置。
【請求項3】
前記キャパシタの端子間電圧を検出するキャパシタ電圧検出手段を備え、
前記電圧制御手段は、前記モータの回生運転時に、前記インバータの第2の入出力部からの出力電圧が、前記キャパシタの端子間電圧よりも所定レベル高くなるように前記インバータを制御して、前記第1のDC/DCコンバータを直結状態とすることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用電源装置。
【請求項4】
前記二次電池の端子間電圧を検出する二次電池電圧検出手段を備え、
前記電圧制御手段は、前記モータの回生運転時に、前記インバータの第2の入出力部からの出力電圧が、前記キャパシタの端子間電圧よりも所定レベル高くなるように前記インバータを制御して、前記第1のDC/DCコンバータを直結状態としたときに、前記第2のDC/DCコンバータの第2の入出力部の出力電圧が、前記二次電池の端子間電圧よりも所定レベル高くなるように、前記第2のDC/DCコンバータを制御することを特徴とする請求項3記載の車両用電源装置。
【請求項5】
前記二次電池の端子間電圧を検出する二次電池電圧検出手段を備え、
前記電圧制御手段は、前記モータの回生運転時に、前記インバータの第2の入出力部からの出力電圧が、前記二次電池の端子間電圧よりも所定レベル高くなるように前記インバータを制御して、前記第2のDC/DCコンバータを直結状態とすることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用電源装置。
【請求項6】
キャパシタの端子間電圧を検出するキャパシタ電圧検出手段を備え、
前記電圧制御手段は、前記モータの回生運転時に、前記インバータの第2の入出力部からの出力電圧が、前記キャパシタの端子間電圧よりも所定レベル高くなるように前記インバータを制御して、前記第2のDC/DCコンバータを直結状態としたときに、前記第1のDC/DCコンバータの第2の入出力部の出力電圧が、前記キャパシタの端子間電圧よりも所定レベル高くなるように、前記第1のDC/DCコンバータを制御することを特徴とする請求項5記載の車両用電源装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−142098(P2009−142098A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317043(P2007−317043)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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