説明

車両運動制御装置及びプログラム

【課題】簡単な構成のマップを用いて、所望の位置及び速度の方向に到達するときの速度の大きさを最小化する車体合成力及び回避軌道を導出する。
【解決手段】所望の位置、該位置での速度の方向、及び車体合成力の最大値を設定し、自車両の速度のx成分vx0、y成分vy0、自車両と所望の位置との距離のx成分X、距離のy成分Y、及び車体合成加速度の最大値F/mを用いた各々異なる3つのパラメータを演算し、3つのパラメータと、所望の位置及び速度の方向に到達するときの速度の大きさを最小化する車体合成力を求めるために導入した第1の導入パラメータηの特定仮定下での値η’との関係、第2の導入パラメータηの特定仮定下での値η’との関係、第3の導入パラメータηの特定仮定下での値η’との関係を定めた低速化3次元マップを用いて、所望の位置及び速度の方向に到達するときの速度の大きさを最小化する車体合成力を導出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運動制御装置及びプログラムに係り、特に、簡単な構成のマップを用いて、最適軌道に基づく車体合成力及び回避軌道を導出する車両運動制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体に加える目標合成力と、各車輪の限界摩擦円の大きさから推定される限界合成力との比をμ利用率として設定し、限界摩擦円の大きさとμ利用率とからタイヤ発生力の大きさ、及び各制御対象車輪で発生するタイヤ発生力の方向を設定し、設定されたタイヤ発生力の大きさ、及び設定されたタイヤ発生力の方向に基づいて、各制御対象車輪の操舵と制動又は操舵と駆動との協調制御を行なう車両制御装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、車両よりも前方の道路上に存在する障害物を回避するための回避操作量を、車両に生じる加速力、減速力及び横力の合成力が車両のタイヤのグリップ力の最大値よりも小さくなる範囲内で算出する回避操作算出装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
また、車両が走行する道路上に存在する障害物を検出し、検出現時刻から評価終了時刻後の自車両の予測位置及び外部環境に基づいて、自車両の回避後の目標姿勢角を設定し、現時刻の外部環境及び障害物の状態量に基づいてリスクポテンシャル関数を設定し、そのリスクと運転操作量の時間積分値、目標姿勢角と自車両の姿勢角との差などに基づく評価値を算出し、評価値が最小となる軌道を導出する回避操作算出装置が提案されている(特許文献3参照)。
【0005】
また、自車両と障害物との間の距離及び自車両の障害物に対する相対速度、そして回避するための横移動距離に基づいて定まる物理量を導入し、その物理量と自車両の重量及び車体合成力の最大値により最短距離で回避するための車体合成力の向きを導出するマップを予め記憶しておき、直進制動での最短回避距離と単純横移動における最短回避距離と、現時刻の自車両と障害物の状態に基づいてマップより得られる最短回避距離を比較して、最も短くなる回避軌道を選択し、その軌道に基づいて現時刻の車体合成力を算出する車両制御装置が提案されている(特許文献4参照)。
【0006】
また、ロボットの位置、ロボットが到達目標とする目標到達位置、ロボットが目標到達位置へ到達する時に目標とする目標速度、及びロボットの制限最高速度又は制限最高加速度の各値を用いて、ロボットが制限最高速度又は制限最高加速度を越えない速度をとると共にロボットの初期位置から目標位置へ到達するのに要する時間が等しい軌道の中ではロボットの加速度の二乗総和が最小となるようにするロボットの制御装置が提案されている(特許文献5参照)。
【0007】
また、車両がスタート位置Pに停止したとき、物体検出手段で検出した周囲の物体の状況から最適目標位置と、最適目標位置を通る一定半径rの円弧よりなる第1の移動軌跡とを設定し、第1の移動軌跡上に所定位置Sを選択し、スタート位置Pから所定位置Sまでの第2の移動軌跡を設定し、所定位置Sは、第2の移動軌跡での車両の移動距離が最小になるように選択される車両の自動操舵装置が提案されている(特許文献6参照)。
【0008】
また、自車両と障害物との間の距離、自車両の障害物に対する相対速度、及び回避するための目標位置に基づいて定まる物理量を導入し、その物理量により回避動作時に最大値が最小となる車体合成力の向きと大きさを出力するマップを予め記憶しておき、そのマップより現時刻の車体合成力を求めて車両運動を制御する車両運動制御装置が提案されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−249971号公報
【特許文献2】特開2007−253746号公報
【特許文献3】特開2007−253745号公報
【特許文献4】特開2006−347236号公報
【特許文献5】特開平7−32277号公報
【特許文献6】特開2001−63597号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】日本機械学会、第18回交通・物流部門大会講演論文集、障害物回避のための車両の最適軌道制御、pp.145−148(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1の技術では、目標の車体合成力が与えられた場合に、最適な各輪のタイヤ発生力を導出しているが、ある時間区間やある距離を走行する間の最適な目標車体合成力の与え方については記載されていない。
【0012】
また、特許文献2の技術では、所望の位置に到達する車体合成力を導出しているが、所望の位置及び速度方向に到達したときの車速を最小にする方法や所望の位置における速度の大きさを所望の大きさにする方法は記載されていない。
【0013】
また、特許文献3の技術では、所望の位置及び姿勢角に近づく軌道を導出しているものの、所望の位置及び速度方向に到達したときの車速を最小にする軌道や所望の位置における速度の大きさを所望の大きさにする軌道の導出については記載されていない。
【0014】
また、特許文献4の技術では、自車両の障害物に対する相対速度、回避するための横移動距離、車重、及び車体合成力の最大値が設定された場合に、回避距離を最短にする回避軌道を導出しているが、所望の位置及び速度方向に到達したときの車速を最小にする軌道や所望の位置における速度の大きさを所望の大きさにする軌道の導出については記載されていない。
【0015】
また、特許文献5の技術では、ロボットを所望の位置及び速度に到達させる上で加速度の2乗和が最小化される軌道を導出しているが、所望の位置及び速度方向に到達したときの車速を最小にする軌道や所望の位置における速度の大きさを所望の大きさにする軌道の導出については記載されていない。
【0016】
また、特許文献6の技術では、自車両を所望の位置に到達させるための移動距離を最小にする軌道を導出しているが、所望の位置及び速度方向に到達したときの車速を最小にする軌道や所望の位置における速度の大きさを所望の大きさにする軌道の導出については記載されていない。
【0017】
また、非特許文献1の技術では、相対的な意味における所望の位置及び速度方向に対して車体合成力の最大値を最小化する軌道を導出し、その軌道に基づいたマップを記憶しておくことで現時刻の車体合成力を導出しているが、所望の位置及び速度方向に到達したときの車速を最小にする軌道や所望の位置における速度の大きさを所望の大きさにする軌道の導出については記載されていない。
【0018】
本発明は、簡単な構成のマップを用いて、所望の位置及び速度方向に到達したときの車速を最小にする車体合成力及び軌道、または所望の位置における速度の大きさを所望の大きさにする車体合成力及び軌道を導出することができる車両運動制御装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、第1の発明の車両運動制御装置は、所望の位置及び該位置における所望の速度の方向、並びに車体合成力の最大値を設定する設定手段と、自車両と前記所望の位置との距離、及び自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、・前記所望の速度の方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記距離の車体前後方向の成分X、前記距離の車体横方向の成分Y、及び車体合成加速度の最大値F/mを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の位置及び該位置における所望の速度の方向に到達するときの速度の大きさを最小化する車体合成力を求めるために導入した第1の導入パラメータηの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分X、前記成分Y、及び前記最大値F/mのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での値η’と、の関係を定めた第1の3次元マップ、・前記3つのパラメータと、前記所望の位置及び該位置における所望の速度の方向に到達するときの速度の大きさを最小化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータηと異なる第2の導入パラメータηの、前記仮定の下での値η’と、の関係を定めた第2の3次元マップ、並びに・前記3つのパラメータと、前記所望の位置及び該位置における所望の速度の方向に到達するときの速度の大きさを最小化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータη及び前記第2の導入パラメータηと異なる第3の導入パラメータηの、前記仮定の下での値η’と、の関係を定めた第3の3次元マップからなる低速化3次元マップを記憶した記憶手段と、前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記低速化3次元マップを用いて、前記所望の位置及び該位置における所望の速度の方向に到達するときの速度の大きさを最小化する車体合成力を導出する導出手段と、を含んで構成されている。
【0020】
また、第2の発明の車両運動制御装置は、所望の位置及び該位置における所望の速度の方向、並びに車体合成力の最大値を設定する設定手段と、自車両と前記所望の位置との距離、及び自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、・前記所望の速度の方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記距離の車体前後方向の成分X、前記距離の車体横方向の成分Y、及び車体合成加速度の最大値F/mを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の位置及び該位置における所望の速度の方向に到達するときの速度の大きさを最小化する車体合成加速度の方向θの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分X、前記成分Y、及び前記最大値F/mのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での方向θ’と、の関係を定めた低速化3次元マップを記憶した記憶手段と、前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記低速化3次元マップを用いて、前記所望の位置及び該位置における所望の速度の方向に到達するときの速度の大きさを最小化する現時刻の車体合成力を導出する導出手段と、を含んで構成されている。
【0021】
また、第3の発明の車両運動制御装置は、所望の横移動距離移動した位置、該位置における所望の速度の方向及び大きさ、並びに車体合成力の最大値を設定する設定手段と、自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、・前記所望の速度の方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記自車両と前記所望の横移動距離移動した位置との距離の車体横方向の成分Y、前記所望の速度の大きさV、及び車体合成加速度の最大値F/mを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した第1の導入パラメータηの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Y、前記大きさV、及び前記最大値F/mのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での値η’と、の関係を定めた第1の3次元マップ、・前記3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータηと異なる第2の導入パラメータηの、前記仮定の下での値η’と、の関係を定めた第2の3次元マップ、並びに・前記3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータη及び前記第2の導入パラメータηと異なる第3の導入パラメータηの、前記仮定の下での値η’と、の関係を定めた第3の3次元マップから選択された2つの3次元マップからなる最短3次元マップを記憶した記憶手段と、前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記最短3次元マップを用いて、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を導出する導出手段と、を含んで構成されている。
【0022】
また、第4の発明の車両運動制御装置は、所望の横移動距離移動した位置、該位置における所望の速度の方向及び大きさ、並びに車体合成力の最大値を設定する設定手段と、自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、・前記所望の速度の方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記自車両と前記所望の横移動距離移動した位置との距離の車体横方向の成分Y、前記所望の速度の大きさV、及び車体合成加速度の最大値F/mを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成加速度の方向θの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Y、前記大きさV、及び前記最大値F/mのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での方向θ’と、の関係を定めた最短3次元マップを記憶した記憶手段と、前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記最短3次元マップを用いて、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の縦移動距離を最小化する現時刻の車体合成力を導出する導出手段と、を含んで構成されている。
【0023】
また、第5の発明の車両運動制御装置は、所望の位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさを設定する設定手段と、自車両と前記所望の位置との距離、及び自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、・前記所望の速度の方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記距離の車体前後方向の成分X、前記距離の車体横方向の成分Y、及び前記所望の速度の大きさVを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の車体合成力の最大値を最小化する車体合成力を求めるために導入した第1の導入パラメータηの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分X、前記成分Y、及び前記大きさVのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での値η’と、の関係を定めた第1の3次元マップ、・前記3つのパラメータと、前記所望の位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の車体合成力の最大値を最小化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータηと異なる第2の導入パラメータηの、前記仮定の下での値η’と、の関係を定めた第2の3次元マップ、並びに・前記3つのパラメータと、前記所望の位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の車体合成力の最大値を最小化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータη及び前記第2の導入パラメータηと異なる第3の導入パラメータηの、前記仮定の下での値η’と、の関係を定めた第3の3次元マップからなる最適3次元マップを記憶した記憶手段と、前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記最適3次元マップを用いて、前記所望の位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の車体合成力の最大値を最小化する車体合成力を導出する導出手段と、を含んで構成されている。
【0024】
また、第6の発明の車両運動制御装置は、所望の位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさを設定する設定手段と、自車両と前記所望の位置との距離、及び自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、・前記所望の速度の方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記距離の車体前後方向の成分X、前記距離の車体横方向の成分Y、及び前記所望の速度の大きさVを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の車体合成力の最大値を最小化する車体合成加速度の方向θの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分X、前記成分Y、及び前記大きさVのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での方向θ’と、の関係を定めた最適3次元マップを記憶した記憶手段と、前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記最適3次元マップを用いて、前記所望の位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の車体合成力の最大値を最小化する現時刻の車体合成力を導出する導出手段と、を含んで構成されている。
【0025】
また、第7の発明の車両運動制御装置は、所望の縦移動距離移動した位置、該位置における所望の速度の方向及び大きさ、並びに車体合成力の最大値を設定する設定手段と、自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、・前記所望の速度の方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記自車両と前記所望の縦移動距離移動した位置との距離の車体前後方向の成分X、前記所望の速度の大きさV、及び車体合成加速度の最大値F/mを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の縦移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の横移動距離を最大化する車体合成力を求めるために導入した第1の導入パラメータηの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分X、前記大きさV、及び前記最大値F/mのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での値η’と、の関係を定めた第1の3次元マップ、・前記3つのパラメータと、前記所望の縦移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の横移動距離を最大化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータηと異なる第2の導入パラメータηの、前記仮定の下での値η’と、の関係を定めた第2の3次元マップ、並びに・前記3つのパラメータと、前記所望の縦移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の横移動距離を最大化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータη及び前記第2の導入パラメータηと異なる第3の導入パラメータηの、前記仮定の下での値η’と、の関係を定めた第3の3次元マップから選択された2つの3次元マップからなる最大3次元マップを記憶した記憶手段と、前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記最大3次元マップを用いて、前記所望の縦移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の横移動距離を最大化する車体合成力を導出する導出手段と、を含んで構成されている。
【0026】
また、第8の発明の車両運動制御装置は、所望の縦移動距離移動した位置、該位置における所望の速度の方向及び大きさ、並びに車体合成力の最大値を設定する設定手段と、自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、・前記所望の速度の方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記自車両と前記所望の縦移動距離移動した位置との距離の車体前後方向の成分X、前記所望の速度の大きさV、及び車体合成加速度の最大値F/mを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の縦移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の横移動距離を最大化する車体合成加速度の方向θの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分X、前記大きさV、及び前記最大値F/mのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での方向θ’と、の関係を定めた最大3次元マップを記憶した記憶手段と、前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記最大3次元マップを用いて、前記所望の縦移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の横移動距離を最大化する現時刻の車体合成力を導出する導出手段と、を含んで構成されている。
【0027】
また、第3及び第4の発明において、前記設定手段は、前記所望の速度の大きさとして、第1または第2の発明の車両運動制御装置で用いられる低速化3次元マップに基づいて導出された最小化された速度を設定すると共に、複数の前記所望の横移動距離移動した位置を設定し、前記設定手段により設定された横移動距離の各々に対応する最小化された縦移動距離を、前記最短3次元マップから導出し、導出した縦移動距離及び設定された横移動距離に基づいて、前記最小化された速度と同じ速度になる位置を示すラインを作成する作成手段と、前記作成手段により作成されたライン上から所望の位置を決定する決定手段と、を含み、前記導出手段は、前記決定手段により決定された位置に到達するための前記車体合成力を導出することができる。
【0028】
また、第7及び第8の発明において、前記設定手段は、前記所望の速度の大きさとして、第1または第2の発明の車両運動制御装置で用いられる低速化3次元マップに基づいて導出された最小化された速度を設定すると共に、複数の前記所望の縦移動距離移動した位置を設定し、前記設定手段により設定された縦移動距離の各々に対応する最大化された横移動距離を、前記最大3次元マップから導出し、導出した横移動距離及び設定された縦移動距離に基づいて、前記最小化された速度と同じ速度になる位置を示すラインを作成する作成手段と、前記作成手段により作成されたライン上から所望の位置を決定する決定手段と、を含み、前記導出手段は、前記決定手段により決定された位置に到達するための前記車体合成力を導出することができる。
【0029】
また、前記検出手段は、前記自車両に対する前記位置の相対距離及び相対速度を検出するようにすることができる。
【0030】
また、前記導出手段で導出された前記車体合成力に基づいて、操舵角、制動力、及び駆動力の少なくとも一つを制御する制御手段を更に含んで構成することができる。
【0031】
また、前記導出手段で導出された前記車体合成力に基づいて、ドライバに車両運動状態を報知する報知手段を更に含んで構成することができる。
【0032】
また、第9の発明の車両運動制御プログラムは、コンピュータを、第1〜第8の発明の車両運動制御装置を構成する各手段として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、本発明によれば、検出手段により検出した状態量及び設定手段により設定した設定値をパラメータとする簡単な構成の3次元マップを用いて、所望の位置及び速度の方向に到達したときの車速を最小化する車体合成力及び回避軌道、所望の横移動距離及び所望の速度の方向及び大きさに到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力及び回避軌道、所望の位置及び速度の方向及び大きさに到達する際の車体合成力の最大値を最小化する車体合成力及び回避軌道、または所望の縦移動距離及び所望の速度の方向及び大きさに到達する際の横移動距離を最大化する車体合成力及び回避軌道を導出することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】車両運動制御の概略を示す図である。
【図2】xy座標の設定を説明するための図である。
【図3】第1の実施の形態の車両運動制御装置で用いられる低速化3次元マップを表す線図である。
【図4】第1の実施の形態の車両運動制御装置の構成を示すブロック図である。
【0035】

【図5】第1の実施の形態の車両運動制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図6】第2の実施の形態の車両運動制御装置で用いられる低速化3次元マップを表す線図である。
【図7】第2の実施の形態の車両運動制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図8】第3の実施の形態の車両運動制御装置で用いられる最短3次元マップを表す線図である。
【図9】第3の実施の形態の車両運動制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図10】第4の実施の形態の車両運動制御装置で用いられる最短3次元マップを表す線図である。
【図11】第4の実施の形態の車両運動制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図12】第5の実施の形態の車両運動制御装置で用いられる最適3次元マップを表す線図である。
【図13】第5の実施の形態の車両運動制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図14】第6の実施の形態の車両運動制御装置で用いられる最適3次元マップを表す線図である。
【図15】第6の実施の形態の車両運動制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図16】第7の実施の形態の車両運動制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図17】第8の実施の形態の車両運動制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図18】同じ速度となる位置を示すラインの作成を説明するための図である。
【図19】第9の実施の形態の車両運動制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態では、車両が走行する道路上の障害物を回避する場合を想定し、所望の位置を障害物の横を通過する位置とし、所望の速度方向を車体前後方向とする場合について説明する。
【0037】
第1の実施の形態の車両運動制御装置における車体合成力及び回避軌道の導出の概略について説明する。
【0038】
図1に示すように、設定したxy座標での時刻t(現時刻をt=0として、現時刻からt秒後)における車体合成加速度のx成分をu(t)、車体合成加速度のy成分をu(t)、車体合成力の大きさをF(t)、車体合成力の方向をθ(t)、及び自車両の重量をmとすると、車体合成加速度u(t)及びu(t)は、下記(1)式及び(2)式で示される。また、(1)式及び(2)式を積分して、下記(3)式及び(4)式に示すように、自車両の路面に対する速度のx成分v(t)、及び速度のy成分v(t)が得られる。また、(3)式及び(4)式を積分して、下記(5)式及び(6)式に示すように、自車両のt秒後のx軸方向の位置X(t)、及びy軸方向の位置Y(t)が得られる。このX(t)及びY(t)により回避軌道が得られる。
【0039】
【数1】

【0040】
なお、xy座標は、t=0における自車両の位置を原点とし、障害物の横を通過する位置における速度方向(車体前後方向)をx軸、x軸に直交する軸(車体横方向)をy軸として設定する(図2参照)。
【0041】
そして、現時刻(t=0)におけるxy座標上の所望の位置を(X,Y)、自車両の速度をv(0)=vx0、v(0)=vy0とした場合に、車体合成力の最大値F=maxF(t)を設定した場面において、所望の位置における速度(終端速度V)を最小化するための3次元マップ(以下、低速化3次元マップという)を用いて、所望の速度方向に対して終端速度を最小化する車体合成加速度u(t)及びu(t)((1)式、及び(2)式)を導出する。
【0042】
ここで、図1に示すように、自車両の速度、所望の速度、所望の速度方向、及び車体合成力の最大値が既知の場合において、最適軌道を求める低速化3次元マップの導出例について説明する。
【0043】
まず、x=X(t)、x=v(t)、x=Y(t)、x=v(t)、u=u(t)、u=u(t)とおくと、(1)式及び(2)式の運動方程式は、下記(7)式及び(8)式のような状態方程式に変形できる。なお、Tはベクトル及び行列の転置記号である。
【0044】
【数2】

【0045】
次に、設定された車体合成力の最大値Fの範囲内で、所望の位置及び速度方向へ到達したときの車速を最小化する最適制御問題として考えると、現時刻をt=0とし、回避に要する時間をtとおいて、評価関数Iを下記(9)式で表した場合、下記(10)式で表される座標軸における終端条件、及び下記(11)式で表される車体合成力の大きさに関する入力制約条件の下で、評価関数Iを最小化する制御入力を求めよという制御問題に帰着される。
【0046】
【数3】

【0047】
この最適制御問題を公知の技術(特開2007-283910号公報等)を参考に解いていく。まず、ラグランジュ乗数関数ベクトルΨ(t)、λ(t)、ハミルトン関数Hを下記(12)式のようにおくと、オイラー方程式を用いて最適解x(t),u(t)は、下記(13)〜(15)式を満足する。
【0048】
【数4】

【0049】
また、終端条件に関しては、S(x,t)=x(t)とおき、定数ベクトルη=(η,η,ηを導出することで、下記(16)式及び(17)式のような関係が成り立つ。
【0050】
【数5】

【0051】
ただし、(13)式〜(17)式内の右下添え字x,u,tは偏微分を意味する。
【0052】
ここで、(13)〜(15)式を変形すると、下記(18)〜(20)式のような関係が得られる。
【0053】
【数6】

【0054】
また、終端条件より、下記(21)式及び(22)式の関係が得られる。
【0055】
【数7】

【0056】
(19)式及び(20)式より、下記(23)式が得られ、u(t)は下記(24)式となる。
【0057】
【数8】

【0058】
また(18)式及び(21)式によりΨ(t)を求めると下記(25)式となり、x(t)の終端は(22)式より下記(26)式の関係を満たすので、下記(27)式の終端条件が新たに出てくる。
【0059】
【数9】

【0060】
このとき、制御問題は下記(28)式のように書き換えられる。
【0061】
【数10】

【0062】
(28)式を(7)式及び(8)式のu(t)に代入して時間積分し、初期条件((7)式の第2式)と終端条件((10)式及び(27)式を適用すると、t、η、η、ηを導出する非線形方程式(下記(29)式〜(32)式))が求まる。なお、η、η、ηは本発明の第1の導入パラメータ、第2の導入パラメータ、及び第3の導入パラメータに相当する。
【0063】
(28)式において必要となるt、η、η、ηは、(29)式〜(32)式の非線形方程式にm、vx0、vy0、F、X及びYを代入して解くことにより得られる。
【0064】
【数11】

【0065】
ここで、(29)式×η+(30)式×ηの計算を行うと、下記(33)式が得られ、(33)式の両辺を2乗してtに関して解くと、下記(34)式が得られる。
【0066】
【数12】

【0067】
従って、上記非線形方程式の解をマップとして持つ場合には、η、η、ηに関して持てばよい。上記非線形方程式は、公知の演算ソフトウエアで十分計算可能である。この方程式の解を求めるために、低次元化したマップを導出する。
【0068】
まず、(29)〜(32)式に対して、任意の正数aを導入して下記(35)式の関係を満足する2組のパラメータP及びP’を考えると、P及びP’に対応する解{η,η,η,t}及び{η’,η’,η’,t’}は、下記(36)式の関係を満たす。
【0069】
【数13】

【0070】
(35)式の最後の式より、aを下記(37)式のようにおくと、(35)式よりvx0’、vy0’及びX’は下記(38)式のように変形できる。
【0071】
【数14】

【0072】
この関係より、F’/m’及びY’に任意の正数を設定することにより、現時刻のパラメータPによってvx0’、vy0’及びX’が求まる。よって、F’/m’及びY’をある値に設定した場合において、vx0’、vy0’及びX’をパラメータとした低速化3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このF’/m’及びY’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。
【0073】
ここでは、一例として、F’/m’=Y’=1とした場合のvx0’、vy0’及びX’に関する低速化3次元マップを作成する。図3に示すように、vx0’、vy0’及びX’をパラメータとして(29)式〜(32)式に基づいて得られるη’の値をマッピングした第1の3次元マップ、η’の値をマッピングした第2の3次元マップ、及びη’の値をマッピングした第3の3次元マップを作成する。また、例えば、X’について、X’=X’、X’=X’、X’=X’の3値(X’<X’<X’)を用い、X’〜 X’間、及びX’〜 X’間は、各々線形近似などで内挿する。
【0074】
そして、これらのマップを用いて{η,η,η}を求めるには、F’/m’=Y’=1、既知のm、vx0、vy0、X、Y及びFから(38)式に従ってパラメータvx0’、vy0’及びX’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{η’,η’,η’}を各3次元マップから得て、(36)式及び(37)式に従って{η’,η’,η’}を{η,η,η}に変換し、さらに、(34)式に代入してtを得る。そして、これらのパラメータを(28)式に適用して入力の時間関数を得る。また、(27)式に代入して終端速度Vが得られる。
【0075】
ただし、Y<0の場合は、vy0→−vy0、Y→−Yに変換して、低速化3次元マップより{η’、−η’、−η’}を求め、−η’→η’、−η’→η’の処理を行って{η,η,η}を得ればよい。
【0076】
この結果、現時刻の自車両の位置及び速度から、所望の位置及び速度方向に到達したときの車速を最小化する制御入力関数が得られ、また(1)式〜(6)式の積分計算により回避軌道が導出される。
【0077】
なお、上記の低速化3次元マップではパラメータvx0’、vy0’及びX’を(38)式のように定め、F’/m’=Y’=1とした場合について説明したが、このパラメータの取り方は、上記以外にも複数存在する。例えば、パラメータaの取り方を変更したり、F’/m’、vx0’、vy0’、X’、Y’のそれぞれに着目して式を変形したりすれば、上記の場合とは異なる3つのパラメータを選ぶことができる。そして、それぞれのパラメータに応じて残る2つのパラメータに任意の値を設定すれば、新たな低速化3次元マップが作成できる。3次元マップの異なる軸の取り方の例を、下記(39)〜(45)式に示す。
【0078】
【数15】

【0079】
また、上記では、(34)式を用いてtに関して解いたが、これをη、η、またはηに関して解き、tを含む残りの3つのパラメータについて低速化3次元マップを作成してもよい。
【0080】
以下、上記の低速化3次元マップを用いた第1の実施の形態について詳細に説明する。図4に示すように、第1の実施の形態の車両運動制御装置には、自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段として車両に搭載されたセンサ群、外部環境状態を検出する外部環境検出手段として車両に搭載されたセンサ群、及びこれらのセンサ群からの検出データに基づいて、自車両が運動するように自車両に搭載された車載機器を制御することによって目標位置へ到達するように車両運動を制御する制御装置20、ドライバに車両運動制御状態を報知する表示装置30が設けられている。
【0081】
車両運動制御装置の自車両の走行状態を検出するセンサ群としては、車速を検出する車速センサ10、操舵角を検出する操舵角センサ12、及びスロットル弁の開度を検出するスロットル開度センサ14が設けられている。また、図示しないGPS装置からの情報を加えるようにしてもよい。
【0082】
また、外部環境状態を検出するセンサ群としては、自車両の前方を撮影する前方カメラ16、及び自車両の前方の障害物を検出するレーザレーダ18が設けられている。なお、レーザレーダ18に代えて、又はレーザレーダ18と共にミリ波レーダを設けるようにしてもよい。また、図示しないGPS装置からの情報を加えるようにしてもよい。
【0083】
前方カメラ16は、車両の前方を撮影するように車両のフロントウインドウ上部等に取り付けられている。前方カメラ16は、小型のCCDカメラ又はCMOSカメラで構成され、自車両の前方の道路状況を含む領域を撮影し、撮影により得られた画像データを出力する。出力された画像データは、マイクロコンピュータ等で構成された制御装置20に入力される。なお、カメラとして、前方カメラ16に加えて、前方赤外線カメラを設けるのが好ましい。赤外線カメラを用いることにより、歩行者を障害物として確実に検出することができる。なお、上記の赤外線カメラに代えて近赤外線カメラを用いることができ、この場合においても同様に歩行者を確実に検出することができる。
【0084】
レーザレーダ18は、赤外光パルスを照射する半導体レーザからなる発光素子、赤外光パルスを水平方向に走査する走査装置、及び前方の障害物(歩行者、前方車両等)から反射された赤外光パルスを受光する受光素子を含んで構成され、車両の前方グリル又はバンパに取り付けられている。このレーザレーダ18では、発光素子から発光された時点を基準として受光素子で受光されるまでの反射赤外光パルスの到達時間に基づいて、自車両から前方の障害物までの距離を検出することができる。レーザレーダ18で検出された障害物までの距離を示すデータは制御装置20に入力される。制御装置20は、RAM、ROM、及びCPUを含むマイクロコンピュータ等で構成され、ROMには以下で説明する車両運動制御ルーチンのプログラムが記憶されている。
【0085】
また、制御装置20は、自車両の操舵角、制動力、及び駆動力の少なくとも1つを制御することによって、目標位置へ到達するように車両運動を制御するための車両搭載機器に接続されている。この車両搭載機器としては、車輪の操舵角を制御するための電動パワーステアリング等の操舵角制御装置22、ブレーキ油圧を制御することによって制動力を制御する制動力制御装置24、及び駆動力を制御する駆動力制御装置26が設けられている。制動力制御装置24には、制動力を検出する検出センサ24Aが取り付けられている。また、制御装置20には、演算された制御入力の方向θ等を表示することによって車両運動制御情報をドライバに報知する表示装置30が接続されている。なお、車両運動制御を行なっていることを、ドライバだけでなく車両外部の目標位置方向に向かって報知するようにしてもよい。また、最短回避距離が自車両と障害物との距離よりも短い場合には、ドライバに回避の必要性を予め報知するようにしてもよい。
【0086】
操舵角制御装置22としては、ドライバのステアリングホイール操作に重畳して前輪及び後輪の少なくとも一方の車輪の操舵角を制御する制御手段、ドライバ操作とは機械的に分離され、ステアリングホイールの操作とは独立して前輪及び後輪の少なくとも一方の車輪の操舵角を制御する制御手段(いわゆるステア・バイ・ワイヤ)等を用いることができる。
【0087】
制動力制御装置24としては、ドライバ操作とは独立して各車輪の制動力を個別に制御する、いわゆるESC(Electronic Stability Control)に用いられる制御装置、ドライバ操作とは機械的に分離され、各車輪の制動力を信号線を介して任意に制御する制御装置(いわゆるブレーキ・バイ・ワイヤ)等を用いることができる。
【0088】
駆動力制御装置26としては、スロットル開度、点火進角の遅角、又は燃料噴射量を制御することによって駆動力を制御する制御装置、変速機の変速位置を制御することによって駆動力を制御する制御装置、トルクトランスファを制御することによって前後方向及び左右方向の少なくとも一方の駆動力を制御する制御装置等を用いることができる。
【0089】
また、制御装置20には、制御入力を求めるための3次元マップを記憶したマップ記憶装置28が接続されている。
【0090】
また、制御装置20には、ドライバに警報を発する図示しない警報装置が接続されている。警報装置としては、音や音声によって警報を発する装置、光や視覚的な表示によって警報を発する装置、振動によって警報を発する装置、又は操舵反力のような物理量をドライバに与えてドライバの操作を誘導する物理量付与装置を用いることができる。また、表示装置30を警報装置として用いるようにしてもよい。
【0091】
以下、図5を参照して第1の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンについて説明する。ここでは、図3の低速化3次元マップを用いる場合について説明する。
【0092】
ステップ100で、車速センサ10等で検出された自車両の走行状態、及びレーザレーダ18等で検出された外部環境状態に関する検出データを取り込む。次に、ステップ102で、取り込んだ検出データに基づいて、車両が走行している道路上の障害物の位置及び大きさを含む環境マップを作成する。
【0093】
次に、ステップ104で、障害物の横を通過する位置を所望の位置として設定し、また、所望の位置における速度方向を環境マップに基づいて設定し、さらに自車両の現時刻の位置を原点に、また設定した速度方向をx軸(車体前後方向)に取り、x軸に直交する方向をy軸とするxy座標を設定する。
【0094】
次に、ステップ106で、上記ステップ100で走行状態として取り込まれた自車両及び障害物の状態量を設定された座標に対応させて変換し、現在の自車両の速度のx成分vx0、自車両の速度のy成分vy0、自車両と障害物との距離のx成分(縦移動距離)X、及び自車両と障害物との距離のy成分(横移動距離)Yを演算する。
【0095】
次に、ステップ108で、外部環境及び自車両の構造と状態に基づいて、車体合成力の最大値Fを設定する。
【0096】
次に、ステップ110で、上記ステップ106で演算した自車両及び障害物の状態量m、vx0、vy0、X、Y、及び上記ステップ108で設定した車体合成力の最大値Fを用いて、(38)式に従ってパラメータvx0’、vy0’及びX’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{η’,η’,η’}を低速化3次元マップから得て、(36)式及び(37)式に従って{η’,η’,η’}を{η,η,η}に変換し、さらに、(34)式に代入してtを得る。そして、これらのパラメータを(28)式に適用して車体合成力を得る。また、(1)式〜(6)式に従って、所望の位置及び速度方向に到達したときの車速を最小化する回避軌道を導出する。
【0097】
次に、ステップ112で、上記ステップ110で導出された車体合成力に従って、回避軌道に沿った走行を実現するために必要な各車輪のタイヤ発生力を演算し、各車輪のタイヤ発生力が得られるように操舵角制御装置22、制動力制御装置24、及び駆動力制御装置26の少なくとも1つを制御すると共に、車両運動制御情報を表示装置30に表示する。また、障害物を回避するように制御する際には無条件で警報装置から警報を発したり、障害物を回避するための車両運動制御を行っていることを表示装置30に表示したりすることにより警報を行ってもよい。各車輪のタイヤ発生力が得られるように制御することにより、目的とする車体合成力が得られるように制御することができる。
【0098】
以上説明したように、第1の実施の形態の車両運動制御装置によれば、現在の自車両の速度のx成分vx0、自車両の速度のy成分vy0、縦移動距離X、横移動距離Y、及び車体合成力の最大値Fをパラメータとする簡単な構成の3次元マップを用いて、所望の位置及び速度方向に到達するときの車速を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出することができる。
【0099】
次に、第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、車体合成力及び回避軌道を求めるために{η’,η’,η’}を導出する低速化3次元マップを用いる場合について説明したが、現時刻の入力(車体合成力の向き)のみを求めたい場合には、1つのパラメータを出力する低速化3次元マップで導出が可能となる。第2の実施の形態ではこの場合について説明する。なお、第2の実施の形態の車両運動制御装置の構成は、第1の実施の形態の車両運動制御装置の構成と同一であるので説明を省略する。
【0100】
ここで、第2の実施の形態で用いられる低速化3次元マップについて説明する。
【0101】
まず、第1の実施の形態と同様に、(38)式まで展開する。そして、一例として、F’/m’=Y’=1とした場合のvx0’、vy0’及びX’に関する低速化3次元マップを作成する。図6に示すように、vx0’、vy0’及びX’をパラメータとして、(28)式及び(34)式に基づいて得られる車体合成加速度の方向θ’の値をマッピングした低速化3次元マップを作成する。
【0102】
そして、この低速化3次元マップを用いて{θ}を求めるには、F’/m’=Y’=1、既知のm、vx0、vy0、X、Y及びFから(38)式に従ってパラメータvx0’、vy0’及びX’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{θ’}を低速化3次元マップから得て、下記(46)式により、所望の位置及び速度方向に到達したときの車速を最小化する現時刻の車体合成力の大きさ及び向きが得られる。
【0103】
【数16】

【0104】
ただし、Y<0の場合には、vy0→−vy0、Y→−Yに変換して低速化3次元マップより{−θ’}を求め、さらに−θ’→θ’の処理を行って{θ’}を得ればよい。
【0105】
また、図6のように{V’}も出力する低速化3次元マップを導入して、下記(47)式によりVに変換して、終端速度を求めてもよい。
【0106】
【数17】

【0107】
なお、上記の低速化3次元マップでは、パラメータを(38)式のように定めた場合について説明したが、第1の実施の形態と同様に、(39)〜(45)式の各々に示すパラメータに対応する{θ’}及び{V’}を出力する低速化3次元マップを作成してもよい。
【0108】
以下、図7を参照して第2の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンについて説明する。ここでは、図6の低速化3次元マップを用いる場合について説明する。なお、第1の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンと同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0109】
ステップ100〜108を経て、次に、ステップ200で、上記ステップ106で演算した自車両及び障害物の状態量m、vx0、vy0、X、Y、及び上記ステップ108で設定した車体合成力の最大値Fを用いて、(38)式に従ってパラメータvx0’、vy0’及びX’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{θ’}を低速化3次元マップから得て、(46)式に適用することにより車体合成力の向き及び大きさを導出する。
【0110】
次に、ステップ112で、上記ステップ200で導出した車体合成力に従って車両運動を制御する。
【0111】
以上説明したように、第2の実施の形態の車両運動制御装置によれば、現在の自車両の速度のx成分vx0、自車両の速度のy成分vy0、縦移動距離X、横移動距離Y、及び車体合成力の最大値Fをパラメータとする簡単な構成の3次元マップを用いて、所望の位置及び速度方向に到達したときの車速を最小化する現時刻の車体合成力の向き及び大きさを導出することができる。また、第1の実施の形態の場合の低速化3次元マップに比べ、用いるマップが少ないため、マップを記憶するための容量を削減できる。
【0112】
次に、第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態では、所望の横移動距離、及びその横移動距離移動した位置における速度(方向及び大きさ)に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出する場合について説明する。なお、第3の実施の形態の車両運動制御装置の構成は、第1の実施の形態の車両運動制御装置の構成と同一であるので説明を省略する。
【0113】
ここで、所望の横移動距離、及びその横移動距離移動した位置における速度(方向及び大きさ)に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出するためのマップ(以下、最短3次元マップという)について説明する。
【0114】
所望の横移動距離及び速度(方向及び大きさ)に到達する際の縦移動距離を最小化する最適制御問題は、第1の実施の形態と同様に、(7)式〜(11)式で定式化することができる。なぜなら、最小の速度x(t)が所望の大きさと等しくなる縦方向の距離Xを逆算できれば、そのときの(28)式で示される制御入力は、縦移動距離最小化問題の解になるためである。よって、所望の速度Vに対して、x(t)=Vの関係を導入することにより、下記(48)式及び(29)式〜(32)式からt、η、η、η、及びXが求まる。
【0115】
【数18】

【0116】
従って、(29)式〜(31)式及び(48)式にm、vx0、vy0、F、V、及びYを代入して、t、η、η、η、及びXを求めていく。また、ここでも(34)式より(29)式〜(31)式及び(48)式の解をマップとして持つ際は、η、ηに関して持てばよい。
【0117】
まず、(29)式〜(32)式に対して、任意の正数aを導入して下記(49)式の関係を満足する2組のパラメータP及びP’を考えると、P及びP’に対応する解{η,η,η,t,Y}及び{η’,η’,η’,t’ ,Y’}は、(36)式の関係を満たす。
【0118】
【数19】

【0119】
ここで、(49)式の第2〜4式を第1式で割ると、(49)式は下記(50)式のように変形され、(50)式の第1式より、aを下記(51)式のようにおくと、vy0’、V’、及びY’は下記(52)式のように変形できる。
【0120】
【数20】

【0121】
この関係より、F’/m’及びvx0’に任意の正数を設定することにより、現時刻のパラメータPによってvy0’、V’、及びY’が求まる。よって、F’/m’及びvx0’をある値に設定した場合において、vy0’、V’、及びY’をパラメータとした最短3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このF’/m’及びvx0’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。
【0122】
ここでは、一例として、F’/m’=vx0’=1とした場合のvy0’、V’、及びY’に関する最短3次元マップを作成する。図8に示すように、vy0’、V’、及びY’をパラメータとして、(29)式〜(32)式に基づいて得られるη’の値をマッピングした第1の3次元マップ、及びη’の値をマッピングした第2の3次元マップを作成する。
【0123】
そして、これらのマップを用いて{η,η}を求めるには、F’/m’=vx0’=1、既知のm、vx0、vy0、Y、V、及びFから(52)式に従ってパラメータvy0’、V’、及びY’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{η’,η’}を各3次元マップから得て、(36)式及び(51)式に従って{η’,η’}を{η,η}に変換し、さらに、(34)式に代入してtを、(48)式に代入してηを得る。そして、これらのパラメータを(28)式に適用して入力の時間関数を得る。また、(32)式に代入して縦移動距離Xが得られる。
【0124】
なお、この最短3次元マップの領域は、vy0’及びY’のいずれかにおいて0以上に限定してもよい。例えば、Y≧0の最短3次元マップを作成した場合は、検出値がY<0であったとしても、vy0→−vy0、Y→−Yに変換して最短3次元マップより{−η’,−η’}を求め、さらに−η’→η’、−η’→η’の処理を行えば{η,η}が得られる。
【0125】
この結果、現時刻の自車両の位置及び速度から、所望の横移動距離及び速度(方向及び大きさ)に到達する際の縦移動距離を最小化する制御入力関数が得られ、また(1)式〜(6)式の積分計算により回避軌道が導出される。
【0126】
なお、上記の最短3次元マップではパラメータvy0’、V’、及びY’を(52)式のように定め、F’/m’=vx0’=1とした場合について説明したが、このパラメータの取り方は、上記以外にも複数存在する。例えば、パラメータaの取り方を変更したり、F’/m’、vx0’、vy0’ 、Y’、V’のそれぞれに着目して式を変形したりすれば、上記の場合とは異なる3つのパラメータを選ぶことができる。そして、それぞれのパラメータに応じて残る2つのパラメータに任意の値を設定すれば、新たな最短3次元マップが作成できる。3次元マップの異なる軸の取り方の例を、下記(53)〜(58)式に示す。
【0127】
【数21】

【0128】
また、上記では、(34)式及び(48)式を用いてtをη及びηで表現した場合について説明したが、ηをt及びηで表現したり、ηをt及びηで表現したりした場合の最短3次元マップを作成してもよい。
【0129】
以下、図9を参照して第3の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンについて説明する。ここでは、図8の最短3次元マップを用いる場合について説明する。なお、第1の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンと同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0130】
ステップ100〜102を経て、次にステップ300で、障害物の横を通過するための所望の横移動距離を設定し、また、所望の横移動距離移動した位置における速度方向を環境マップに基づいて設定し、さらに自車両の現時刻の位置を原点に、また設定した速度方向をx軸に取り、x軸に直交する方向をy軸とするxy座標を設定する。
【0131】
次に、ステップ106で、上記ステップ100で走行状態として取り込まれた自車両及び障害物の状態量を設定された座標に対応させて変換し、現在の自車両の速度のx成分vx0、自車両の速度のy成分vy0、及び横移動距離Yを演算する。
【0132】
次に、ステップ302で、外部環境及び自車両の構造と状態に基づいて、車体合成力の最大値Fを設定し、所望の横移動距離移動した位置での所望の速度の大きさ(終端速度)Vを設定する。
【0133】
次に、ステップ304で、上記ステップ106で演算した自車両及び障害物の状態量m、vx0、vy0、Y、及び上記ステップ302で設定した車体合成力の最大値F、及び終端速度の大きさVを用いて、(52)式に従ってパラメータvy0’、V’、及びY’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{η’,η’}を各3次元マップから得て、(36)式及び(51)式に従って{η’,η’}を{η,η}に変換し、さらに、(34)式に代入してtを、(48)式に代入してηを得る。そして、これらのパラメータを(28)式に適用して車体合成力を得る。また、(1)式〜(6)式に従って、所望の横移動距離及び速度(方向及び大きさ)に到達する際の縦移動距離を最小化する回避軌道を導出する。
【0134】
次に、ステップ112で、上記ステップ304で導出された車体合成力に従って、回避軌道に沿った走行を実現するように制御する。
【0135】
以上説明したように、第3の実施の形態の車両運動制御装置によれば、現在の自車両の速度のx成分vx0、自車両の速度のy成分vy0、横移動距離Y、車体合成力の最大値F、及び終端速度Vをパラメータとする簡単な構成の3次元マップを用いて、所望の横移動距離及び速度(方向及び大きさ)に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出することができる。
【0136】
次に、第4の実施の形態について説明する。第3の実施の形態では、車体合成力及び回避軌道を求めるために{η’,η’}を導出する最短3次元マップを用いる場合について説明したが、現時刻の入力(車体合成力の向き)のみを求めたい場合には、1つのパラメータを出力する最短3次元マップで導出が可能となる。第4の実施の形態ではこの場合について説明する。なお、第4の実施の形態の車両運動制御装置の構成は、第1の実施の形態の車両運動制御装置の構成と同一であるので説明を省略する。
【0137】
ここで、第4の実施の形態で用いられる最短3次元マップについて説明する。
【0138】
まず、第3の実施の形態と同様に、(52)式まで展開する。そして、一例として、F’/m’=Y’=1とした場合のvx0’、vy0’及びV’に関する最短3次元マップを作成する。図10に示すように、vx0’、vy0’及びV’をパラメータとして、(28)式、(34)式及び(48)式に基づいて得られる車体合成加速度の方向θ’の値をマッピングした最短3次元マップを作成する。
【0139】
そして、この最短3次元マップを用いて{θ}を求めるには、F’/m’=Y’=1、既知のm、vx0、vy0、Y、F、及びVから(52)式に従ってパラメータvx0’、vy0’及びV’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{θ’}を最短3次元マップから得て、(46)式により、所望の横移動距離及び速度(方向及び大きさ)に到達する際の縦移動距離を最小化する現時刻の車体合成力の大きさ及び向きが得られる。
【0140】
ただし、Y<0の場合には、vy0→−vy0、Y→−Yに変換して最短3次元マップより{−θ’}を求め、さらに−θ’→θ’の処理を行って{θ’}を得ればよい。
【0141】
また、図10のように{X’}も出力する最短3次元マップを導入して、下記(59)式によりXに変換して、縦移動距離を求めてもよい。
【0142】
【数22】

【0143】
なお、上記の最短3次元マップでは、パラメータを(52)式のように定めた場合について説明したが、第3の実施の形態と同様に、(53)〜(58)式の各々に示すパラメータに対応する{θ’}及び{X’}を出力する最短3次元マップを作成してもよい。
【0144】
以下、図11を参照して第4の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンについて説明する。ここでは、図10の最短3次元マップを用いる場合について説明する。なお、第1及び第3の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンと同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0145】
ステップ100〜302を経て、次に、ステップ400で、上記ステップ106で演算した自車両及び障害物の状態量m、vx0、vy0、Y、及び上記ステップ302で設定した車体合成力の最大値F、及び終端速度の大きさVを用いて、(52)式に従ってパラメータvx0’、vy0’及びV’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{θ’}を最短3次元マップから得て、(46)式により、所望の横移動距離及び速度(方向及び大きさ)に到達する際の縦移動距離を最小化する現時刻の車体合成力の大きさ及び向きを導出する。
【0146】
次に、ステップ112で、上記ステップ400で導出した車体合成力に従って車両運動を制御する。
【0147】
以上説明したように、第4の実施の形態の車両運動制御装置によれば、現在の自車両の速度のx成分vx0、自車両の速度のy成分vy0、横移動距離Y、車体合成力の最大値F、及び終端速度Vをパラメータとする簡単な構成の3次元マップを用いて、所望の横移動距離及び速度(方向及び大きさ)に到達する際の縦移動距離を最小化する現時刻の車体合成力の向き及び大きさを導出することができる。また、第3の実施の形態の場合の最短3次元マップに比べ、用いるマップが少ないため、マップを記憶するための容量を削減できる。
【0148】
次に、第5の実施の形態について説明する。第5の実施の形態では、所望の位置、及びその所望の位置における速度(方向及び大きさ)に到達する際の車体合成力の最大値を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出する場合について説明する。なお、第5の実施の形態の車両運動制御装置の構成は、第1の実施の形態の車両運動制御装置の構成と同一であるので説明を省略する。
【0149】
ここで、所望の位置、及びその所望の位置における速度(方向及び大きさ)に到達する際の車体合成力の最大値を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出するためのマップ(以下、最適3次元マップという)について説明する。
【0150】
所望の位置及び速度(方向及び速度)に到達する際の車体合成力の最大値を最小化する最適制御問題は、第1の実施の形態と同様に、(7)式〜(11)式で定式化することができる。なぜなら、最小の速度x(t)が所望の大きさと等しくなる車体合成力を逆算できれば、そのときの(28)式で示される制御入力は、車体合成力の最大値最小化問題の解になるためである。よって、所望の速度Vに対して、x(t)=Vの関係を導入することにより、下記(60)式及び(29)式〜(32)式からt、η、η、η、及びFが求まる。
【0151】
【数23】

【0152】
従って、(29)式〜(32)式に(60)式を代入した下記(61)式〜(64)式に、m、vx0、vy0、V、X、及びYを代入して、t、η、η、η、及びFを求めていく。
【0153】
【数24】

【0154】
また、ここでも(34)式より(61)式〜(64)式の解をマップとして持つ際は、η、η、ηに関して持てばよい。
【0155】
まず、(61)式〜(64)式に対して、任意の正数aを導入して下記(65)式の関係を満足する2組のパラメータP及びP’を考えると、P及びP’に対応する解{η,η,η,t}及び{η’,η’,η’,t}は、(36)式の関係を満たす。
【0156】
【数25】

【0157】
ここで、(65)式の第2〜3式を第1式で割ると、(65)式は下記(66)式のように変形され、(66)式の第1式より、aを下記(67)式のようにおくと、vy0’、V’、及びY’は下記(68)式のように変形できる。
【0158】
【数26】

【0159】
この関係より、vx0’及びX’に任意の正数を設定することにより、現時刻のパラメータPによってvy0’、V’、及びY’が求まる。よって、vx0’及びX’をある値に設定した場合において、vy0’、V’、及びY’をパラメータとした最適3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このvx0’及びX’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。
【0160】
ここでは、一例として、vx0’=X’=1とした場合のvy0’、V’、及びY’に関する最適3次元マップを作成する。図12に示すように、vy0’、V’、及びY’をパラメータとして、(61)式〜(64)式に基づいて得られるη’の値をマッピングした第1の3次元マップ、η’の値をマッピングした第2の3次元マップ、及びη’の値をマッピングした第3の3次元マップを作成する。
【0161】
そして、これらのマップを用いて{η,η,η}を求めるには、vx0’=X’=1、既知のm、vx0、vy0、V、X、及びYから(68)式に従ってパラメータvy0’、V’、及びY’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{η’,η’,η’}を各3次元マップから得て、(36)式及び(67)式に従って{η’η’,η’}を{η,η,η}に変換し、さらに、(60)式に代入してFを得る。そして、これらのパラメータを(28)式に適用して入力の時間関数を得る。
【0162】
なお、この最適3次元マップの領域は、vy0’及びY’のいずれかにおいて0以上に限定してもよい。例えば、Y≧0の最適3次元マップを作成した場合は、検出値がY<0であったとしても、vy0→−vy0、Y→−Yに変換して最適3次元マップより{η’,−η’,−η’}を求め、さらに−η’→η’、−η’→η’の処理を行えば{η,η,η}が得られる。
【0163】
この結果、現時刻の自車両の位置及び速度から、所望の位置及び速度(方向及び大きさ)に到達する際の車体合成力の最大値を最小化する制御入力関数が得られ、また(1)式〜(6)式の積分計算により回避軌道が導出される。
【0164】
なお、上記の最適3次元マップではパラメータvy0’、V’、及びY’を(68)式のように定め、vx0’=X’=1とした場合について説明したが、このパラメータの取り方は、上記以外にも複数存在する。例えば、パラメータaの取り方を変更したり、vx0’、vy0’、V’、X’、Y’のそれぞれに着目して式を変形したりすれば、上記の場合とは異なる3つのパラメータを選ぶことができる。そして、それぞれのパラメータに応じて残る2つのパラメータに任意の値を設定すれば、新たな最適3次元マップが作成できる。3次元マップの異なる軸の取り方の例を、下記(69)〜(73)式に示す。
【0165】
【数27】

【0166】
また、上記では、(34)式を用いてtに関して解いたが、これをη、η、またはηに関して解き、tを含む残りの3つのパラメータについて最適3次元マップを作成してもよい。
【0167】
以下、図13を参照して第5の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンについて説明する。ここでは、図12の最適3次元マップを用いる場合について説明する。なお、第1の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンと同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0168】
ステップ100〜106を経て、次にステップ500で、所望の位置での所望の速度の大きさ(終端速度)Vを設定する。
【0169】
次に、ステップ502で、上記ステップ106で演算した自車両及び障害物の状態量m、vx0、vy0、X、Y、及び上記ステップ500で設定した終端速度の大きさVを用いて、(68)式に従ってパラメータvy0’、V’、及びY’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{η’,η’,η’}を各3次元マップから得て、(36)式及び(67)式に従って{η’,η’,η’}を{η,η,η}に変換し、さらに、(60)式に代入してFを得る。そして、これらのパラメータを(28)式に適用して車体合成力を得る。また、(1)式〜(6)式に従って、所望の位置及び速度(方向及び大きさ)に到達する際の車体合成力の最大値を最小化する回避軌道を導出する。
【0170】
次に、ステップ112で、上記ステップ502で導出された車体合成力に従って、回避軌道に沿った走行を実現するように制御する。
【0171】
以上説明したように、第5の実施の形態の車両運動制御装置によれば、現在の自車両の速度のx成分vx0、自車両の速度のy成分vy0、縦移動距離X、横移動距離Y、及び終端速度Vをパラメータとする簡単な構成の3次元マップを用いて、所望の位置及び速度(方向及び大きさ)に到達する際の車体合成力の最大値を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出することができる。
【0172】
次に、第6の実施の形態について説明する。第5の実施の形態では、車体合成力及び回避軌道を求めるために{η’,η’,η’}を導出する最適3次元マップを用いる場合について説明したが、現時刻の入力(車体合成力の向き)のみを求めたい場合には、2つのパラメータを出力する最適3次元マップで導出が可能となる。第6の実施の形態ではこの場合について説明する。なお、第6の実施の形態の車両運動制御装置の構成は、第1の実施の形態の車両運動制御装置の構成と同一であるので説明を省略する。
【0173】
ここで、第6の実施の形態で用いられる最適3次元マップについて説明する。
【0174】
まず、第5の実施の形態と同様に、(68)式まで展開する。そして、一例として、vxo’=X’=1とした場合のvy0’、V’及びY’に関する最適3次元マップを作成する。図14に示すように、vy0’、V’及びY’をパラメータとして、(28)式、(34)式及び(60)式に基づいて得られる車体合成加速度の方向θ’の値をマッピングした第1の3次元マップ、及び車体合成加速度の大きさF’/m’の値をマッピングした第2の3次元マップを作成する。
【0175】
そして、この最適3次元マップを用いて{θ,F/m}を求めるには、vx0’=X’=1、既知のm、vx0、vy0、V、X、及びYから(68)式に従ってパラメータvy0’、V’、及びY’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{θ’,F’/m’}を最適3次元マップから得て、(36)式及び(67)式により、所望の位置及び速度(方向及び大きさ)に到達する際の車体合成力の最大値を最小化する現時刻の車体合成力の大きさ及び向きが得られる。
【0176】
また、下記(74)式によりF’/m’をF/mに変換して、車体合成力の最大値を求める。
【0177】
【数28】

【0178】
なお、上記の最適3次元マップでは、パラメータを(68)式のように定めた場合について説明したが、第5の実施の形態と同様に、(69)〜(73)式の各々に示すパラメータに対応する{θ’,F’/m’}を出力する最適3次元マップを作成してもよい。
【0179】
以下、図15を参照して第6の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンについて説明する。ここでは、図14の最適3次元マップを用いる場合について説明する。なお、第1及び第5の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンと同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0180】
ステップ100〜500を経て、次に、ステップ600で、上記ステップ106で演算した自車両及び障害物の状態量m、vx0、vy0、X、Y、及び上記ステップ500で設定した終端速度の大きさVを用いて、(68)式に従ってパラメータvy0’、V’、及びY’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{θ’,F’/m’}を最適3次元マップから得て、(36)式及び(67)式により、所望の位置及び速度(方向及び大きさ)に到達する際の車体合成力の最大値を最小化する現時刻の車体合成力の大きさ及び向きを導出する。
【0181】
次に、ステップ112で、上記ステップ600で導出した車体合成力に従って車両運動を制御する。
【0182】
以上説明したように、第6の実施の形態の車両運動制御装置によれば、現在の自車両の速度のx成分vx0、自車両の速度のy成分vy0、縦移動距離X、横移動距離Y、及び終端速度Vをパラメータとする簡単な構成の3次元マップを用いて、所望の位置及び速度(方向及び大きさ)に到達する際の車体合成力の最大値を最小化する現時刻の車体合成力の向き及び大きさを導出することができる。また、第5の実施の形態の場合の最適3次元マップに比べ、用いるマップが少ないため、マップを記憶するための容量を削減できる。
【0183】
次に、第7の実施の形態について説明する。第7の実施の形態では、所望の縦移動距離、及びその縦移動距離移動した位置における速度(方向及び大きさ)に到達する際の横移動距離を最大化する車体合成力及び回避軌道を導出する場合について説明する。なお、第7の実施の形態の車両運動制御装置の構成は、第1の実施の形態の車両運動制御装置の構成と同一であるので説明を省略する。
【0184】
ここで、所望の縦移動距離、及びその縦移動距離移動した位置における速度(方向及び大きさ)に到達する際の横移動距離を最大化する車体合成力及び回避軌道を導出するためのマップ(以下、最大3次元マップという)について説明する。
【0185】
所望の縦移動距離及び速度(方向及び大きさ)に到達する際の横移動距離を最大化する最適制御問題は、第1の実施の形態と同様に、(7)式〜(11)式で定式化することができる。なぜなら、最小の速度x(t)が所望の大きさと等しくなる横方向の距離Yを逆算できれば、そのときの(28)式で示される制御入力は、横移動距離最大化問題の解になるためである。よって、所望の速度Vに対して、x(t)=Vの関係を導入することにより、(29)式、(31)式、(32)式、及び(48)式からt、η、η、η、及びYが求まる。
【0186】
従って、(29)式、(31)式、(32)式、及び(48)式にm、vx0、vy0、F、V、及びXを代入して、t、η、η、η、及びYを求めていく。また、ここでも(34)式より(29)式、(31)式、(32)式、及び(48)式の解をマップとして持つ際は、η、ηに関して持てばよい。
【0187】
まず、(29)式〜(32)式に対して、任意の正数aを導入して下記(75)式の関係を満足する2組のパラメータP及びP’を考えると、P及びP’に対応する解{η,η,η,t,Y}及び{η’,η’,η’,t’ ,Y’}は、(36)式の関係を満たす。
【0188】
【数29】

【0189】
また、(75)式の最後の式より、aを下記(76)式ようにおくと、vx0’、vy0’、及びV’は下記(77)式のように変形できる。
【0190】
【数30】

【0191】
この関係より、F’/m’及びX’に任意の正数を設定することにより、現時刻のパラメータPによってvx0’、vy0’、及びV’が求まる。よって、F’/m’及びX’をある値に設定した場合において、vx0’、vy0’、及びV’をパラメータとした最大3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このF’/m’及びX’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。
【0192】
ここでは、一例として、F’/m’=X’=1とした場合のvx0’、vy0’、及びV’に関する最大3次元マップを作成する。具体的には、vx0’、vy0’、及びV’をパラメータとして、(29)式〜(32)式に基づいて得られるη’の値をマッピングした第1の3次元マップ、及びη’の値をマッピングした第2の3次元マップを作成する。
【0193】
そして、これらのマップを用いて{η,η}を求めるには、F’/m’=X’=1、既知のm、vx0、vy0、X、V、及びFから(77)式に従ってパラメータvx0’、vy0’、及びV’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{η’,η’}を各3次元マップから得て、(36)式及び(76)式に従って{η’,η’}を{η,η}に変換し、さらに、(34)式に代入してtを、(48)式に代入してηを得る。そして、これらのパラメータを(28)式に適用して入力の時間関数を得る。また、(31)式に代入して横移動距離Yが得られる。
【0194】
この結果、現時刻の自車両の位置及び速度から、所望の縦移動距離及び速度(方向及び大きさ)に到達する際の横移動距離を最大化する制御入力関数が得られ、また(1)式〜(6)式の積分計算により回避軌道が導出される。
【0195】
なお、上記の最大3次元マップではパラメータvx0’、vy0’、及びV’を(77)式のように定め、F’/m’=X’=1とした場合について説明したが、このパラメータの取り方は、上記以外にも複数存在する。例えば、パラメータaの取り方を変更したり、F’/m’、vx0’、vy0’ 、X’、V’のそれぞれに着目して式を変形したりすれば、上記の場合とは異なる3つのパラメータを選ぶことができる。そして、それぞれのパラメータに応じて残る2つのパラメータに任意の値を設定すれば、新たな最大3次元マップが作成できる。3次元マップの異なる軸の取り方の例を、下記(78)〜(83)式に示す。
【0196】
【数31】

【0197】
また、上記では、(34)式及び(48)式を用いてtをη及びηで表現した場合について説明したが、ηをt及びηで表現したり、ηをt及びηで表現したりした場合の最大3次元マップを作成してもよい。
【0198】
以下、図16を参照して第7の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンについて説明する。ここでは、(77)式で示されるパラメータを用いた最大3次元マップを用いる場合について説明する。なお、第1の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンと同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0199】
ステップ100〜102を経て、次にステップ700で、障害物の横を通過するための所望の縦移動距離を設定し、また、所望の縦移動距離移動した位置における速度方向を環境マップに基づいて設定し、さらに自車両の現時刻の位置を原点に、また設定した速度方向をx軸に取り、x軸に直交する方向をy軸とするxy座標を設定する。
【0200】
次に、ステップ106で、上記ステップ100で走行状態として取り込まれた自車両及び障害物の状態量を設定された座標に対応させて変換し、現在の自車両の速度のx成分vx0、自車両の速度のy成分vy0、及び縦移動距離Xを演算する。
【0201】
次に、ステップ702で、外部環境及び自車両の構造と状態に基づいて、車体合成力の最大値Fを設定し、所望の縦移動距離移動した位置での所望の速度の大きさ(終端速度)Vを設定する。
【0202】
次に、ステップ704で、上記ステップ106で演算した自車両及び障害物の状態量m、vx0、vy0、X、及び上記ステップ702で設定した車体合成力の最大値F、及び終端速度の大きさVを用いて、(77)式に従ってパラメータvx0’、vy0’、及びV’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{η’,η’}を各3次元マップから得て、(36)式及び(76)式に従って{η’,η’}を{η,η}に変換し、さらに、(34)式に代入してtを、(48)式に代入してηを得る。そして、これらのパラメータを(28)式に適用して車体合成力を得る。また、(1)式〜(6)式に従って、所望の縦移動距離及び速度(方向及び大きさ)に到達する際の横移動距離を最大化する回避軌道を導出する。
【0203】
次に、ステップ112で、上記ステップ704で導出された車体合成力に従って、回避軌道に沿った走行を実現するように制御する。
【0204】
以上説明したように、第7の実施の形態の車両運動制御装置によれば、現在の自車両の速度のx成分vx0、自車両の速度のy成分vy0、縦移動距離X、車体合成力の最大値F、及び終端速度Vをパラメータとする簡単な構成の3次元マップを用いて、所望の縦移動距離及び速度(方向及び大きさ)に到達する際の横移動距離を最大化する車体合成力及び回避軌道を導出することができる。
【0205】
次に、第8の実施の形態について説明する。第7の実施の形態では、車体合成力及び回避軌道を求めるために{η’,η’}を導出する最大3次元マップを用いる場合について説明したが、現時刻の入力(車体合成力の向き)のみを求めたい場合には、1つのパラメータを出力する最大3次元マップで導出が可能となる。第8の実施の形態ではこの場合について説明する。なお、第8の実施の形態の車両運動制御装置の構成は、第1の実施の形態の車両運動制御装置の構成と同一であるので説明を省略する。
【0206】
ここで、第8の実施の形態で用いられる最大3次元マップについて説明する。
【0207】
まず、第7の実施の形態と同様に、(77)式まで展開する。そして、一例として、F’/m’=X’=1とした場合のvx0’、vy0’及びV’に関する最大3次元マップを作成する。具体的には、vx0’、vy0’及びV’をパラメータとして、(28)式、(34)式及び(48)式に基づいて得られる車体合成加速度の方向θ’の値をマッピングした最大3次元マップを作成する。
【0208】
そして、この最大3次元マップを用いて{θ}を求めるには、F’/m’=X’=1、既知のm、vx0、vy0、X、F、及びVから(77)式に従ってパラメータvx0’、vy0’及びV’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{θ’}を最大3次元マップから得て、(46)式により、所望の縦移動距離及び速度(方向及び大きさ)に到達する際の横移動距離を最大化する現時刻の車体合成力の大きさ及び向きが得られる。
【0209】
また、{Y’}も出力する最大3次元マップを導入して、下記(84)式によりYに変換して、横移動距離を求めてもよい。
【0210】
【数32】

【0211】
なお、上記の最大3次元マップでは、パラメータを(77)式のように定めた場合について説明したが、第7の実施の形態と同様に、(78)〜(83)式の各々に示すパラメータに対応する{θ’}及び{Y’}を出力する最大3次元マップを作成してもよい。
【0212】
以下、図17を参照して第8の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンについて説明する。ここでは、(77)式で示されるパラメータを用いた最大3次元マップを用いる場合について説明する。なお、第1及び第7の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンと同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0213】
ステップ100〜702を経て、次に、ステップ800で、上記ステップ106で演算した自車両及び障害物の状態量m、vx0、vy0、X、及び上記ステップ702で設定した車体合成力の最大値F、及び終端速度の大きさVを用いて、(77)式に従ってパラメータvx0’、vy0’及びV’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{θ’}を最大3次元マップから得て、(46)式により、所望の縦移動距離及び速度(方向及び大きさ)に到達する際の横移動距離を最大化する現時刻の車体合成力の大きさ及び向きを導出する。
【0214】
次に、ステップ112で、上記ステップ800で導出した車体合成力に従って車両運動を制御する。
【0215】
以上説明したように、第8の実施の形態の車両運動制御装置によれば、現在の自車両の速度のx成分vx0、自車両の速度のy成分vy0、縦移動距離X、車体合成力の最大値F、及び終端速度Vをパラメータとする簡単な構成の3次元マップを用いて、所望の縦移動距離及び速度(方向及び大きさ)に到達する際の横移動距離を最大化する現時刻の車体合成力の向き及び大きさを導出することができる。また、第7の実施の形態の場合の最大3次元マップに比べ、用いるマップが少ないため、マップを記憶するための容量を削減できる。
【0216】
次に、第9の実施の形態について説明する。第9の実施の形態では、終端速度が同じ速度になるラインを作成する場合について説明する。なお、第9の実施の形態の車両運動制御装置の構成は、第1の実施の形態の車両運動制御装置の構成と同一であるので説明を省略する。
【0217】
第9の実施の形態の車両運動制御装置では、第2(または第1)の実施の形態で説明した低速化3次元マップと第4(または第3)の実施の形態で説明した最短3次元マップとを併用して、所望の位置において最小化された速度と同じ車速になる位置のラインを作成する。例えば、図18に破線で示すv(t)=Vとなるラインを求めことを意味する。
【0218】
ここでは、まず所望の位置に対して第2の実施の形態の低速化3次元マップから最小化された終端速度Vを求める。次に、所望の位置とは異なる横移動距離Yと、算出済のVとを第4の実施の形態の最短3次元マップに適用し、最小化された縦移動距離Xを導出する。そして、現時刻の自車両の位置から(X,Y)の位置をプロットする。この処理をYの値を変更しながら繰り返すことにより、所望の位置において最小化された終端速度Vと同じ速度になる位置のラインが作成される。
【0219】
以下、図19を参照して第9の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンについて説明する。ここでは、図6の低速化3次元マップ及び図10の最短3次元マップを用いる場合について説明する。なお、第1の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンと同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0220】
ステップ100〜108を経て、次に、ステップ900で、図6の低速化3次元マップより導出したV’を(47)式に従って終端速度Vに変換する。
【0221】
次に、ステップ902で、上記ステップ900で導出した終端速度Vを、第4の実施の形態における所望の終端速度の大きさとして設定し、次に、ステップ904で、任意の横移動距離Yを設定する。
【0222】
次に、ステップ906で、図10の最短3次元マップより導出したX’を(59)式に従って最小化された縦移動距離Xに変換する。
【0223】
次に、ステップ908で、上記ステップ906で導出された縦移動距離X、及び上記ステップ904で設定した横移動距離Yで表される位置(X,Y)をプロットし、同じ速度になる位置のラインが作成できたか否かを判定する。この判定は、例えば、ラインを作成するために必要なプロット数を予め定めておき、必要な数だけ位置がプロットされた否かにより判定することができる。ラインが作成できていない場合には、ステップ910へ移行し、新たな横移動距離Yを設定して、ステップ906へ戻る。
【0224】
上記ステップ908で、ラインが作成できたと判定された場合には、ステップ912へ移行し、作成されたラインを、上記ステップ102で作成した環境マップ上に表示して、処理を終了する。
【0225】
以上説明したように、第9の実施の形態の車両運動制御装置によれば、最小化された終端速度と同じ速度になる位置のラインを作成することができるため、この作成されたラインを用いて、どのような回避軌道を取るかを柔軟に選択することができる。
【0226】
なお、第9の実施の形態では、第2(または第1)の実施の形態の低速化3次元マップと第4(または第3)の実施の形態の最短3次元マップとを併用する場合について説明したが、第2(または第1)の実施の形態低速化3次元マップと第8(または第7)の実施の形態の最大3次元マップとを併用して、ラインを作成するようにしてもよい。この場合、任意の縦移動距離を設定したときの最大化された横移動距離を求めて、終端速度が同じになる位置を求めてラインを作成すればよい。
【0227】
また、第1〜第9の実施の形態では、現時刻の道路に対する自車両の速度及び所望の位置を用いる場合について説明したが、自車両と所望の位置との相対距離及び相対速度を用いてもよい。
【0228】
また、第1〜第9の実施の形態では、導出された車体合成力に基づいて回避車両運動制御を行ったり、警報を発したりする場合について説明したが、車体合成力の導出の過程で得られる縦移動距離や横移動距離に基づいて、回避車両運動制御の開始タイミングを決定したり、警報を発したりするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0229】
10 車速センサ
12 操舵角センサ
14 スロットル開度センサ
16 前方カメラ
18 レーザレーダ
20 制御装置
22 操舵角制御装置
24 制動力制御装置
26 駆動力制御装置
28 マップ記憶装置
30 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の位置及び該位置における所望の速度の方向、並びに車体合成力の最大値を設定する設定手段と、
自車両と前記所望の位置との距離、及び自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、
・前記所望の速度の方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記距離の車体前後方向の成分X、前記距離の車体横方向の成分Y、及び車体合成加速度の最大値F/mを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の位置及び該位置における所望の速度の方向に到達するときの速度の大きさを最小化する車体合成力を求めるために導入した第1の導入パラメータηの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分X、前記成分Y、及び前記最大値F/mのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での値η’と、の関係を定めた第1の3次元マップ、
・前記3つのパラメータと、前記所望の位置及び該位置における所望の速度の方向に到達するときの速度の大きさを最小化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータηと異なる第2の導入パラメータηの、前記仮定の下での値η’と、の関係を定めた第2の3次元マップ、並びに
・前記3つのパラメータと、前記所望の位置及び該位置における所望の速度の方向に到達するときの速度の大きさを最小化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータη及び前記第2の導入パラメータηと異なる第3の導入パラメータηの、前記仮定の下での値η’と、の関係を定めた第3の3次元マップからなる低速化3次元マップを記憶した記憶手段と、
前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記低速化3次元マップを用いて、前記所望の位置及び該位置における所望の速度の方向に到達するときの速度の大きさを最小化する車体合成力を導出する導出手段と、
を含む車両運動制御装置。
【請求項2】
所望の位置及び該位置における所望の速度の方向、並びに車体合成力の最大値を設定する設定手段と、
自車両と前記所望の位置との距離、及び自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、
・前記所望の速度の方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記距離の車体前後方向の成分X、前記距離の車体横方向の成分Y、及び車体合成加速度の最大値F/mを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の位置及び該位置における所望の速度の方向に到達するときの速度の大きさを最小化する車体合成加速度の方向θの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分X、前記成分Y、及び前記最大値F/mのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での方向θ’と、の関係を定めた低速化3次元マップを記憶した記憶手段と、
前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記低速化3次元マップを用いて、前記所望の位置及び該位置における所望の速度の方向に到達するときの速度の大きさを最小化する現時刻の車体合成力を導出する導出手段と、
を含む車両運動制御装置。
【請求項3】
所望の横移動距離移動した位置、該位置における所望の速度の方向及び大きさ、並びに車体合成力の最大値を設定する設定手段と、
自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、
・前記所望の速度の方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記自車両と前記所望の横移動距離移動した位置との距離の車体横方向の成分Y、前記所望の速度の大きさV、及び車体合成加速度の最大値F/mを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した第1の導入パラメータηの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Y、前記大きさV、及び前記最大値F/mのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での値η’と、の関係を定めた第1の3次元マップ、
・前記3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータηと異なる第2の導入パラメータηの、前記仮定の下での値η’と、の関係を定めた第2の3次元マップ、並びに
・前記3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータη及び前記第2の導入パラメータηと異なる第3の導入パラメータηの、前記仮定の下での値η’と、の関係を定めた第3の3次元マップから選択された2つの3次元マップからなる最短3次元マップを記憶した記憶手段と、
前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記最短3次元マップを用いて、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を導出する導出手段と、
を含む車両運動制御装置。
【請求項4】
所望の横移動距離移動した位置、該位置における所望の速度の方向及び大きさ、並びに車体合成力の最大値を設定する設定手段と、
自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、
・前記所望の速度の方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記自車両と前記所望の横移動距離移動した位置との距離の車体横方向の成分Y、前記所望の速度の大きさV、及び車体合成加速度の最大値F/mを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成加速度の方向θの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Y、前記大きさV、及び前記最大値F/mのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での方向θ’と、の関係を定めた最短3次元マップを記憶した記憶手段と、
前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記最短3次元マップを用いて、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の縦移動距離を最小化する現時刻の車体合成力を導出する導出手段と、
を含む車両運動制御装置。
【請求項5】
所望の位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさを設定する設定手段と、
自車両と前記所望の位置との距離、及び自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、
・前記所望の速度の方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記距離の車体前後方向の成分X、前記距離の車体横方向の成分Y、及び前記所望の速度の大きさVを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の車体合成力の最大値を最小化する車体合成力を求めるために導入した第1の導入パラメータηの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分X、前記成分Y、及び前記大きさVのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での値η’と、の関係を定めた第1の3次元マップ、
・前記3つのパラメータと、前記所望の位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の車体合成力の最大値を最小化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータηと異なる第2の導入パラメータηの、前記仮定の下での値η’と、の関係を定めた第2の3次元マップ、並びに
・前記3つのパラメータと、前記所望の位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の車体合成力の最大値を最小化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータη及び前記第2の導入パラメータηと異なる第3の導入パラメータηの、前記仮定の下での値η’と、の関係を定めた第3の3次元マップからなる最適3次元マップを記憶した記憶手段と、
前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記最適3次元マップを用いて、前記所望の位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の車体合成力の最大値を最小化する車体合成力を導出する導出手段と、
を含む車両運動制御装置。
【請求項6】
所望の位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさを設定する設定手段と、
自車両と前記所望の位置との距離、及び自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、
・前記所望の速度の方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記距離の車体前後方向の成分X、前記距離の車体横方向の成分Y、及び前記所望の速度の大きさVを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の車体合成力の最大値を最小化する車体合成加速度の方向θの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分X、前記成分Y、及び前記大きさVのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での方向θ’と、の関係を定めた最適3次元マップを記憶した記憶手段と、
前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記最適3次元マップを用いて、前記所望の位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の車体合成力の最大値を最小化する現時刻の車体合成力を導出する導出手段と、
を含む車両運動制御装置。
【請求項7】
所望の縦移動距離移動した位置、該位置における所望の速度の方向及び大きさ、並びに車体合成力の最大値を設定する設定手段と、
自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、
・前記所望の速度の方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記自車両と前記所望の縦移動距離移動した位置との距離の車体前後方向の成分X、前記所望の速度の大きさV、及び車体合成加速度の最大値F/mを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の縦移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の横移動距離を最大化する車体合成力を求めるために導入した第1の導入パラメータηの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分X、前記大きさV、及び前記最大値F/mのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での値η’と、の関係を定めた第1の3次元マップ、
・前記3つのパラメータと、前記所望の縦移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の横移動距離を最大化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータηと異なる第2の導入パラメータηの、前記仮定の下での値η’と、の関係を定めた第2の3次元マップ、並びに
・前記3つのパラメータと、前記所望の縦移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の横移動距離を最大化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータη及び前記第2の導入パラメータηと異なる第3の導入パラメータηの、前記仮定の下での値η’と、の関係を定めた第3の3次元マップから選択された2つの3次元マップからなる最大3次元マップを記憶した記憶手段と、
前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記最大3次元マップを用いて、前記所望の縦移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の横移動距離を最大化する車体合成力を導出する導出手段と、
を含む車両運動制御装置。
【請求項8】
所望の縦移動距離移動した位置、該位置における所望の速度の方向及び大きさ、並びに車体合成力の最大値を設定する設定手段と、
自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、
・前記所望の速度の方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記自車両と前記所望の縦移動距離移動した位置との距離の車体前後方向の成分X、前記所望の速度の大きさV、及び車体合成加速度の最大値F/mを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の縦移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の横移動距離を最大化する車体合成加速度の方向θの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分X、前記大きさV、及び前記最大値F/mのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での方向θ’と、の関係を定めた最大3次元マップを記憶した記憶手段と、
前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記最大3次元マップを用いて、前記所望の縦移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度の方向及び大きさに到達する際の横移動距離を最大化する現時刻の車体合成力を導出する導出手段と、
を含む車両運動制御装置。
【請求項9】
前記設定手段は、前記所望の速度の大きさとして、請求項1または請求項2記載の車両運動制御装置で用いられる低速化3次元マップに基づいて導出された最小化された速度を設定すると共に、複数の前記所望の横移動距離移動した位置を設定し、
前記設定手段により設定された横移動距離の各々に対応する最小化された縦移動距離を、前記最短3次元マップから導出し、導出した縦移動距離及び設定された横移動距離に基づいて、前記最小化された速度と同じ速度になる位置を示すラインを作成する作成手段と、
前記作成手段により作成されたライン上から所望の位置を決定する決定手段と、を含み、
前記導出手段は、前記決定手段により決定された位置に到達するための前記車体合成力を導出する
請求項3または請求項4記載の車両運動制御装置。
【請求項10】
前記設定手段は、前記所望の速度の大きさとして、請求項1または請求項2記載の車両運動制御装置で用いられる低速化3次元マップに基づいて導出された最小化された速度を設定すると共に、複数の前記所望の縦移動距離移動した位置を設定し、
前記設定手段により設定された縦移動距離の各々に対応する最大化された横移動距離を、前記最大3次元マップから導出し、導出した横移動距離及び設定された縦移動距離に基づいて、前記最小化された速度と同じ速度になる位置を示すラインを作成する作成手段と、
前記作成手段により作成されたライン上から所望の位置を決定する決定手段と、を含み、
前記導出手段は、前記決定手段により決定された位置に到達するための前記車体合成力を導出する
請求項7または請求項8記載の車両運動制御装置。
【請求項11】
前記検出手段は、前記自車両に対する前記位置の相対距離及び相対速度を検出する請求項1〜請求項10のいずれか1項記載の車両運動制御装置。
【請求項12】
前記導出手段で導出された前記車体合成力に基づいて、操舵角、制動力、及び駆動力の少なくとも一つを制御する制御手段を更に含む請求項1〜請求項11のいずれか1項記載の車両運動制御装置。
【請求項13】
前記導出手段で導出された前記車体合成力に基づいて、ドライバに車両運動状態を報知する報知手段を更に含む請求項1〜請求項12のいずれか1項記載の車両運動制御装置。
【請求項14】
コンピュータを、請求項1〜請求項13のいずれか1項記載の車両運動制御装置を構成する各手段として機能させるための車両運動制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−188021(P2012−188021A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53455(P2011−53455)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】