車体前部構造
【課題】障害物と接触(衝突)した際の衝撃を十分吸収する車体前部構造を提供する。
【解決手段】車体前部構造11では、障害物Mに接触した時の荷重でフロントバンパ16(バンパフェイス37)は、中間位置(S1)でフロントバンパ16の最大反力Fmbを発生し、降下した後、一定のフロントバンパ残留反力Fbを発生し、フロントグリル15及びフード21は、中間位置(S1)以降に、降下反力に連続して上昇反力を一定の傾斜で上昇させ、所望の変形量(S4、S5)に達した時点でフロントグリル15最大反力Fmg、フード21最大反力Fmfを発生して、残りの変形量の間一定に保ち続け、フロントグリル15最大反力Fmgとフード21最大反力Fmfとフロントバンパ16残留反力Fbとを合計した総合最大反力Fmは、一定で且つ所望の規定値Fuを超えない。
【解決手段】車体前部構造11では、障害物Mに接触した時の荷重でフロントバンパ16(バンパフェイス37)は、中間位置(S1)でフロントバンパ16の最大反力Fmbを発生し、降下した後、一定のフロントバンパ残留反力Fbを発生し、フロントグリル15及びフード21は、中間位置(S1)以降に、降下反力に連続して上昇反力を一定の傾斜で上昇させ、所望の変形量(S4、S5)に達した時点でフロントグリル15最大反力Fmg、フード21最大反力Fmfを発生して、残りの変形量の間一定に保ち続け、フロントグリル15最大反力Fmgとフード21最大反力Fmfとフロントバンパ16残留反力Fbとを合計した総合最大反力Fmは、一定で且つ所望の規定値Fuを超えない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両正面に位置するフロントグリル及びフロントバンパと、これらの後に配置されたラジエータと、ラジエータなどの装置を上方でカバーするフードと、を有し、障害物に対応する車体前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造には、車両正面のフロントバンパに歩行者を保護するエネルギー吸収部材を設けたものがあり、エネルギー吸収部材の下方に、エネルギー吸収部材より車両前方へ突出させた突出部で歩行者の足を払い、歩行者がボンネット(フード)側へ倒れるときに、歩行者の膝部の衝撃エネルギーを、ボンネット(フード)の先端と突出部の先端を結ぶラインよりも車両前方に突出させたエネルギー吸収部材で吸収するものがある(例えば、特許文献1(図1、図2)参照)。
【0003】
しかし、従来技術(特許文献1)は、エネルギー吸収部材によって歩行者の衝撃エネルギーを吸収するが、エネルギー吸収部材をフードの先端から車両前方へ向け大きく出せない車両には採用できないという問題がある。
同様に、フロントバンパの車幅方向部材(バンパビーム)から車両前方へ向け大きく出せない車両にも適さない。このような車両、例えば、SUV車など車高の高い車両では、フロントバンパと不整地の急斜面との干渉を防止するために、フロントバンパを高く且つ前輪に近接させる必要があり、足払いプレートの設置は困難であるという問題がある。
また、SUV車など車高の高い車両では、車両の側面視で、フロントバンパの先端から車両後方のフードの先端又はフロントグリルまでの車両前後方向の長さが短いため、フロントバンパ内の空間に十分なエネルギー吸収部材を収納できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3740901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、フロントバンパからフロントグリルまでの距離が短く、フロントバンパに衝撃吸収部材を収納できない車両でも、障害物と接触(衝突)した際の衝撃を十分吸収する車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、車両正面に位置するフロントバンパ及びフロントグリルと、フロントグリルの上方から車両後方へ延びるフードと、を備えた車体前部構造において、車両正面が障害物に接触した時の荷重でフロントバンパは、フードの先端の下方まで後退する過程の中間位置でフロントバンパ最大反力を発生し、さらに後退するのに伴い降下していく降下反力を発生した後、一定のフロントバンパ残留反力を発生し、 フロントグリル及びフードは、中間位置以降に、フロントバンパとともに後退する過程において、降下反力に連続して上昇反力を一定の傾斜で上昇させ、所望の後退量に達した時点でフロントグリル最大反力、フード最大反力を発生して、残りの後退量の間一定に保ち続け、フロントグリル最大反力とフード最大反力とフロントバンパ残留反力とを合計した総合最大反力は、一定で、且つ所望の規定値を超えないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明では、障害物に接触した時の荷重でフロントバンパは、フードの先端の下方まで後退する過程の中間位置でフロントバンパ最大反力を発生し、さらに後退するのに伴い降下していく降下反力を発生した後、一定のフロントバンパ残留反力を発生し、フロントグリル及びフードは、中間位置以降に、フロントバンパとともに後退する過程において、降下反力に連続して上昇反力を一定の傾斜で上昇させ、所望の後退量に達した時点でフロントグリル最大反力、フード最大反力を発生して、残りの後退量の間一定に保ち続け、フロントグリル最大反力とフード最大反力とフロントバンパ残留反力とを合計した総合最大反力は、一定で、且つ所望の規定値を超えないので、反力を急激に上昇させず、且つ、最大の反力を小さくすることができるという利点がある。
つまり、フロントバンパからフロントグリル(フロントグリルの平均)までの距離が短く、フロントバンパに衝撃吸収部材を収納できない車両でも、障害物と接触(衝突)した際の衝撃を十分吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例に係る車体前部構造の概要を説明する図である。
【図2】実施例に係る車体前部構造の斜視図である。
【図3】実施例に係る車体前部構造の断面図である。
【図4】車体前部構造のフロントバンパに含まれる保護プレートの斜視図である。
【図5】車体前部構造の保護プレートの断面図である。
【図6】車体前部構造のフロントグリルに設けたグリルブラケットの斜視図である。
【図7】車体前部構造のグリルブラケットの背面図である。
【図8】車体前部構造のフードを下方から見た図である。
【図9】車体前部構造のフロントグリルの裏側に配置されたフロントバルクヘッド及びラジエータ・コンデンサ支持機構の斜視図である。
【図10】図9の10部詳細図である。
【図11】車体前部構造のフロントバンパに設けられた保護プレートの反力を低減する機構を説明する図である。
【図12】車体前部構造のフロントグリルの反力を低減する機構を説明する図である。
【図13】車体前部構造のバンパフェイス、ラジエータ・コンデンサ支持機構及びフードの反力を低減する機構を説明する図である。
【図14】車体前部構造のラジエータ・コンデンサ支持機構の反力を低減する機構を詳しく説明する図である。
【図15】車体前部構造の総合反力を低減する機構を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、実施例で詳細に説明する。
【実施例】
【0010】
実施例に係る車体前部構造11は、図1、図2に示すように、車両12の正面13に位置するフロントグリル15及びフロントバンパ16と、これらの後に配置されたラジエータ17と、ラジエータ17などの装置を上方でカバーするフード21と、を有する。以降で具体的に説明していく。
【0011】
車体前部構造11は、図1〜図3に示しているように、車両12の前部23に採用され、フロントバンパ16からフロントグリル15(フロントグリル15の平均)までの距離Lfが短く、フロントバンパ16には衝撃吸収部材を収納していないが、障害物M、例えば歩行者と接触したときに、歩行者を保護するようにしたものである。
【0012】
そして、車体前部構造11は、車両12のフロントボデー25内のエンジン26などの装置をカバーするフード21と、左右のフロントサイドフレーム27の前端部28に架け渡されたバンパビーム31と、フロントバルクヘッド33と、フロントグリル15の撓みを抑えるようにフロントグリル15の裏に設けられたグリルブラケット35と、バンパビーム31の車体前方に設けられたバンパフェイス37と、バンパビーム31とフロントバルクヘッド33のフロントロアクロスメンバ38に設けられた保護プレート41と、を備えている。
【0013】
車両12は、車高の高いSUV車で、車室43と、車室43の前に連なるエンジンルーム44と、フロントサイドフレーム27の上方へ連なるフロントサイドアッパメンバ45と、フードロック装置46と、左右のフロントフェンダ47の下方に設けられた左右の前輪51と、を備える。
【0014】
バンパビーム31は、左右の前輪51の車体前方において車幅方向に延出され、図5に示す断面コ字形に形成され、開口を車両後方へ向け配置され、バンパフェイス37を支持している。
【0015】
バンパフェイス37は、樹脂製で、図3に示すように、断面L形に成形され、バンパビーム31から車両前方へ所定距離だけ離すことで空間を形成し、天部37aを略水平に配置し、正面部37bを略垂直に配置してバンパビーム31にブラケット(図に示していない)で取付けられている。
バンパフェイス37に用いる樹脂の特性は、任意である。
バンパフェイス37の厚さ(肉厚)は、任意である。
【0016】
フロントバルクヘッド33は、図2〜図4に示しているように、左右のフロントサイドフレーム27に左右のバルクヘッドサイドフレーム52が設けられ、左右のバルクヘッドサイドフレーム52の下端部にフロントロアクロスメンバ38が架け渡されている。そして、バンパビーム31の下方で保護プレート41を支持している。
【0017】
保護プレート41は、バンパビーム31及びフロントロアクロスメンバ38に取付けられ、車両側面視で、バンパビーム31及びフロントロアクロスメンバ38から車体前方へ向けて膨出するように略V字状に折り曲げられた板状(プレート状)の部材である。
【0018】
そして、保護プレート41は、図3〜図5のバンパビーム31に取付けられた上端取付部54と、上端取付部54から車体前方に向けて張り出された上面部55と、上面部55から下方に向けて屈曲された前面部56と、前面部56から車体後方に向けて屈曲された下面部57と、下面部57の後端に設けられてフロントロアクロスメンバ38に取付けられた下端取付部58と、を備えている。
【0019】
上端取付部54は、バンパビーム31のビーム前壁に溶接で固定されている(取付けられている)。
上面部55は、上端取付部54の下端で折り曲げられることで、車体前方に向けて下り勾配で張り出されている。
【0020】
前面部56は、上面部55の前端55aで折り曲げられることで、下方に向け、且つ、車体後方に向けて屈曲されている。
【0021】
下面部57は、前面部56の下端で折り曲げられることで、車体後方に向けて屈曲されている。
この下面部57は、略中央に下方へ突出する折曲部61が設けられている。よって、折曲部61の前方の下面前部62と折曲部61の後方の下面後部63とが下向きに略く字状に折り曲げられている。
【0022】
また、下面部57は、左右の前輪51の接地点65(図1参照)からフロントバンパ16の前端下部66を結ぶアプローチ傾斜線67(図1も参照)の上方に配置されている。
下面部57をアプローチ傾斜線67の上方に配置することで、アプローチアングルθを好適に確保することができる。
図1に示すように、アプローチアングルθは、水平線に対するアプローチ傾斜線67の傾斜角である。
【0023】
さらに、この下面部57は、前面部56に車体前方から衝撃荷重が矢印a1(図11参照)の如く作用した場合に、折曲部61が下方に折り曲げられて下面前部62を車体下方に向けて張り出させ、且つ、下面後部63を略水平に保つように形成されている。
【0024】
下面部57は、図5に示すように、下面前部62に複数の下面前部ビード(剛性部)71が備えられ、下面後部63に複数の下面後部ビード(剛性部)72が備えられている。
【0025】
下面前部ビード71は、略矩形の形状で下方に向けて膨出され、折曲部61を回避して折曲部61の上方に形成されている。下面前部62に複数の下面前部ビード71を設けることで、下面前部62の剛性を高めることができる。
【0026】
下面後部ビード72は、略矩形の形状で下方に向けて膨出され、折曲部61近傍から下面部57の後端近傍まで形成され、折曲部61を回避して折曲部61の下方に形成されている。下面後部63に複数の下面後部ビード72を設けることで、下面後部63の剛性を高めることができる。
【0027】
上端取付部54は、複数の上ビード(剛性部)74が備えられている。
上ビード74は、車体後方に向けて膨出され、上面部55の上端から上端取付部54の下端を経て上端取付部54の上端まで形成されている。
【0028】
下端取付部58は、複数の下ビード(剛性部)75が備えられている。
下ビード75は、車体前方に向けて膨出され、下面部57の後端近傍から下端取付部58の下端まで形成されている。
【0029】
上端取付部54及び下端取付部58は、上端取付部54に複数の上ビード74が設けられるとともに、下端取付部58に複数の下ビード75が設けられているので、保護プレート41のうち、下面前部62及び下面後部63を除いた部位に比較して高強度に設定されている。
【0030】
次に、フロントグリル15、フード21及びラジエータ17関係を説明する。
フードロック装置46は、図3、図6、図9に示すように、フロントバルクヘッド33に配置したフードロック機構78と、フードロック機構78に係合(ロック)・施錠されるストライカ81と、を備え、取扱いは既存のものと同様である。
【0031】
エンジンルーム44は、図2、図3、図9に示す前端の骨格をなす、フロントバルクヘッド33と、フロントバルクヘッド33から垂下している左右のバルクヘッドサイドフレーム52と、バルクヘッドサイドフレーム52の下部に支持されているフロントロアクロスメンバ38と、を有し、車体前部構造11に含まれる。
【0032】
フロントバルクヘッド33は、図2、図3、図9に示しているように、フロントサイドアッパメンバ45に連なり先端部84をエンジンルーム44の高さの中位近傍へ配置したバルクヘッドコーナ部85と、バルクヘッドコーナ部85の先端部84に連なり上方へ延在させたバルクヘッドサイド部86と、バルクヘッドサイド部86の上端を車両12後方へ延ばした後退部87に取付けられたバルクヘッドアッパ部91と、を備え、バルクヘッドアッパ部91のうち車両12後方へ向いている後面92にフード21をフロントボデー25にロックするフードロック機構78が設けられている。
【0033】
フロントグリル15は、図1、図3、図7に示す上グリル95と、下グリル96と、グリルブラケット35を有し、グリルブラケット35は、フロントグリル15の背面97に配置され、且つ、フロントバルクヘッド33のバルクヘッドサイド部86に支持されている支持ステー98に上下方向に延びる縦ステー101が設けられている。
【0034】
縦ステー101は、左右一対で、左右間距離Wsを設定することで、フロントグリル15の強度を変化させる。すなわち、左右間距離Wsが大きくなると、フロントグリル15がラジエータ17やコンデンサ102に接触するまでの変形量が大きくなり、結果的にフロントグリル15の強度は小さくなる。
【0035】
縦ステー101は、左右を連結する連結ステー104で連結されている。
支持ステー98は、フロントバルクヘッド33に連結してフロントグリル15近傍まで延びる座屈ステー部105と、座屈ステー部105のフロントグリル15近傍に連なり縦ステー101に連結した横ステー部106と、からなる。
【0036】
グリルブラケット35は、中心線C(図7)を基準に左右がほぼ対称である。
また、バルクヘッドサイド部86の下部に座屈ステー部105の下ステー107、横ステー部106の下横ステー108が連なり、縦ステー101に接続している。
【0037】
縦ステー101は、図7に示す上縁に連ねて車両12後方へ延出させた後延出部111が形成され、後延出部111の先端を上グリル95の裏の下方へ向いている下面に固定し、下縁に連ねて車両12前方へ延出させた下端(前延出部112)が形成され、下端(前延出部112)の先端を下グリル96の下面及びバンパフェイス上面部114に固定している。
【0038】
フード21は、図2、図3、図8に示しているように、フード21の少なくともエンジンルーム44のエンジンルーム前部116の上方に配置されたカバー前部117が、カバー前部117に連なるカバー後部118に比べ強度を低く形成されている。
【0039】
フード21はまた、鋼板製のアウタパネル121と、アウタパネル121の裏のうちカバー前部117の範囲に設けられた樹脂製の前部インナフレーム122と、残りの裏に設けられた鋼板製の後部インナフレーム123と、後部インナフレーム123の前部に溶接で結合し、且つアウタパネル121に接着剤で一体的に結合しているフード補強ステー125と、を備え、後部インナフレーム123の先端近傍にフロントボデー25側のバルクヘッドアッパ部91に取付けられたフードロック機構78にロックされるストライカ81が設けられている。
【0040】
アウタパネル121は、既存の形状(デザイン)であり、従来と同様の製造方法を確保したものである。
アウタパネル121には、既に述べた後部インナフレーム123と前部インナフレーム122とからなるインナフレーム127が取付けられている。
【0041】
カバー前部117は、前部インナフレーム122を用いた範囲である。
カバー前部117の車両12前後方向の長さは、平均でLfである。
前部インナフレーム122に用いる樹脂の特性は任意である。
【0042】
フード補強ステー125は、前脚部131を前部インナフレーム122及び後部インナフレーム123に結合し、後脚部132を後部インナフレーム123を介してストライカ81に結合している。
【0043】
次に、ラジエータ17及びコンデンサ102を支持しているラジエータ・コンデンサ支持機構135を図9、図10を用いて説明する。
ラジエータ・コンデンサ支持機構135は、車体前方からラジエータ17及びコンデンサ102に入力される衝撃によってラジエータ17及びコンデンサ102を車体後方へ傾倒(図13、14の矢印a2の方向)させる。
【0044】
ラジエータ・コンデンサ支持機構135はまた、ラジエータ17へ向いているバルクヘッドサイド部86の内側面136に回動自在(矢印a5の方向)に重ねられたブラケット取付部137と、ブラケット取付部137に設けられてブラケット取付部137の回動を規制する回動規制爪138と、ブラケット取付部137に連なり延びる延出嵌合部141と、延出嵌合部141に開けられ、ラジエータ17の突起142及びコンデンサ102の突起143と嵌合し、車両正面13に衝撃を受けたときに、回動規制爪138に抗して回動することによって突起142、143の嵌合が外れる嵌合孔144と、を備えている。
【0045】
ラジエータ・コンデンサ支持機構135は、詳しくは、ラジエータ17に用いる第1ブラケット146と、コンデンサ102に用いる第2ブラケット147と、からなり、それぞれが、ブラケット取付部137、回動規制爪138、延出嵌合部141、嵌合孔144を有する。
回動規制爪138はバルクヘッドサイド部86に開けた孔148に嵌合している。
【0046】
ブラケット取付部137は、中央に支点孔151が開けられ、支点孔151及びバルクヘッドサイド部86の孔(支点孔151と同様)に通したボルト(図に示していない)によって取付けられている。
嵌合孔144には、緩衝部材152を介して突起142、143が嵌合している。
【0047】
次に、本発明の実施例に係る車体前部構造11の保護プレート41の作用を図11で説明する。
保護プレート41の前面部56に車体前方から衝撃荷重が作用した場合を図11に基づいて説明する。なお、図11においては保護プレート41の変形について理解を容易にするためにバンパフェイス37を除去した状態で説明する。
【0048】
車体前部構造11は、障害物Mに保護プレート41が衝突した場合、上面部55の前端55aに当接する。障害物Mが上面部55の前端55aに当たることで、上面部55の前端55aに衝撃荷重が矢印a1の如く作用するので、折曲部61が下方に向けて、くの字に折り曲げられる。そして、折曲部61が下方に向けて折り曲げられることで、下面前部62が車体下方に向けて張り出す(突出する)。
このように、下面前部62が車体下方に向けて変形することにより、障害物Mを前面部56で受けることができる。
この状態で、下面前部62が車体下方に向けてさらに変形する。これにより、保護プレート41を車体後方に向けてL寸法潰して、障害物Mに作用する衝撃荷重を吸収することができる。
つまり、歩行者Mへの衝撃の反力を低減することができる。
【0049】
さらに、下面前部62を車体下方に向けて変形させることで、車体下方に向けて変形した下面前部62や前面部56の広い面積で障害物Mを受けることができる。
これにより、障害物Mに作用する衝撃荷重の面圧を小さく抑えることができ、障害物Mを良好に保護することができる。
【0050】
加えて、下面前部62が車体下方に向けてH寸法張り出すことで、張り出した下面前部62で、障害物Mが車体(すなわち、車体前部構造11)の下方に巻き込まれることを防ぐことができる。
【0051】
ここで、保護プレート41は、障害物Mが前面部56(詳しくは、上面部55の前端55a)に衝突した場合に、下面後部63を略水平に保つようにした。
下面後部63を略水平に保つことで、下面後部63に座屈荷重が作用するようにした。よって、下面後部63に曲げ荷重が作用した場合と比較して、下面後部63で大きな荷重を支えることができる。
【0052】
これにより、衝撃荷重で下面後部63が変形することを抑え、車体下方に張り出した下面前部62を下面後部63で保持することができる。
これにより、張り出した下面前部62で、障害物Mが車体の下方に巻き込まれることを一層良好に防ぐことができる。
【0053】
さらに、下面部57の下面前部62及び下面後部63に、複数の下面前部ビード71及び複数の下面後部ビード72をそれぞれ備えることで、衝撃荷重が作用した当初において、下面前部62及び下面後部63が座屈変形することを防ぐことができる。
一方、下面部57の折曲部61には補強のビードを設けないようにして、下面前部62及び下面後部63と比較して折り曲げやすくした。
【0054】
加えて、上端取付部54に複数の上ビード74を設けるとともに、下端取付部58に複数の下ビード75を設けることで、上端取付部54及び下端取付部58を高強度に設定した。
よって、上端取付部54及び下端取付部58をバンパビーム31やフロントロアクロスメンバ38で確実に支えることが可能になり、保護プレート41のうち下面部57の折曲部61に応力を集中させることができる。
【0055】
次に、本発明の実施例に係る車体構造11のフロントグリル15(グリルブラケット35)の作用を図12で説明する。
車体構造11は、車両12と障害物(例えば歩行者)M(図1)が矢印a6のように接触したときに、グリルブラケット35が変形しつつフロントグリル15を保持することで、フロントグリル15の撓みを抑える。
【0056】
具体的には、車両12の正面13の中央が障害物(例えば歩行者)に接触(衝突)すると、フロントグリル15(上グリル95、下グリル96)が車両12後方へ変形しつつ、グリルブラケット35を押圧する。グリルブラケット35は、変形が進行しているフロントグリル15をフロントグリル15の中央から左右にそれぞれ距離W1だけ離した縦ステー101で支持するので、フロントグリル15の中央を変形させつつ、衝撃吸収をも確保し、且つフロントグリル15の撓みを抑制することができる。
【0057】
縦ステー101は、車両12の正面13の中央が障害物(例えば歩行者)に接触(衝突)すると、連結ステー104に荷重が伝達・分散されるので、車幅方向(矢印a7の方向)の力に対する強度を向上させて衝撃吸収の効率を高めることができる。
【0058】
支持ステー98では(図7参照)、車両12の正面13の中央が障害物(例えば歩行者)に接触(衝突)すると、座屈ステー部105に圧縮荷重が加わり、座屈ステー部105が座屈するので、座屈ステー部105の座屈によって衝撃を吸収することができる。
このように、歩行者Mへの衝撃の反力を低減することができる。
【0059】
次に、本発明の実施例に係る車体前部構造11のバンパフェイス37、フード21及びラジエータ・コンデンサ支持機構135の作用を図13、図14で説明する。
【0060】
車体前部構造11は、図13に示すように、車両12と障害物(例えば歩行者)M(図1)が接触したときに、バンパフェイス37が変形する、主に、略水平に配置した天部37aの変形によって、歩行者Mへの衝撃の反力を低減することができる。
【0061】
車体前部構造11は、図13に示すように、車両12と障害物(例えば歩行者)M(図1)が接触したときに、フード21のカバー前部117が変形することで、歩行者Mへの衝撃の反力を低減することができる。
【0062】
具体的には、バンパフェイス37の変形によるバンパフェイス37の車両後方への後退に伴い、続けてフード21のカバー前部117が変形・後退し始める。カバー前部117は、フード21の全体に対して、樹脂製の前部インナフレーム122によって強度を低く設定した部位なので、強度を低く設定しないフード21に比べ、変形開始の荷重を小さくすることができ、且つその変形範囲(ストローク)を(例えば距離Sまで)大きくすることができる。従って、歩行者Mに加わる衝撃を軽減することができる。
つまり、歩行者Mへの衝撃の反力を低減することができる。
【0063】
その際、フロントバルクヘッド33(バルクヘッドサイド部86、バルクヘッドアッパ部91)によって、フードロック機構78を車両12後方へ後退させることができ、フード21のカバー前部117の車両12前後方向の長さLf(図8)を大きく確保することができる。従って、車両正面13の衝撃吸収ストロークSをより一層増加させることができる。
【0064】
車体前部構造11では、図14に示しているラジエータ・コンデンサ支持機構135は、車両正面13に障害物(歩行者)Mによる衝撃を入力されると、矢印a6のように回動してラジエータ17及びコンデンサ102を車両12後方へ矢印a2のように傾倒させることができ、ラジエータ17及びコンデンサ102を車両12後方へ傾倒させる車体前部構造11の構造は簡単になる。
また、車両正面13に障害物(歩行者)Mによる衝撃が発生しないときには、ラジエータ・コンデンサ支持機構135は回動規制爪138(図10)によって、通常走行時の振動によるラジエータ・コンデンサ支持機構135の回転を防止することができる。
【0065】
次に、本発明の実施例に係る車体前部構造11の総合反力を低減する機構を図11〜図15で説明する。図15(a)は図3に基づく概念図、(b)はバンパフェイス37の反力とバンパフェイス37の変形量の関係を示すグラフ、(c)はフロントグリル15の反力とフロントグリル15の変形量の関係を示すグラフ、(d)はフード21の反力とフード21の変形量の関係を示すグラフ、(e)は車体前部構造11の総合反力と車体前部構造11の変形量の関係を示すグラフである。これらのグラフは横軸を車幅方向の中央が障害物Mに接触(衝突)したときのそれぞれの変形量とし、縦軸を反力とした。
【0066】
(b):バンパフェイス37は、図13に示すように、障害物Mに接触(衝突)し荷重が入力され、変形量S1だけ変形すると、反力は、最大反力Fmbに達する。引き続き変形して変形量S3だけ変形すると、反力はフロントバンパ残留反力Fbまで降下し、フロントバンパ残留反力Fbを一定に保つ。
【0067】
なお、変形量S1はフロントグリル15まで(距離Lf)のほぼ中間位置であり、変形量S3はフロントグリル15の位置である。
バンパフェイス37は、変形する際に、保護プレート41とともに変形(図11参照)している。
バンパフェイス37は、バンパビーム31に当接(変形量S2の少し前付近)した後、天部37aが反力を発生している。
【0068】
(c):フロントグリル15は、図13に示すように、障害物Mにフロントグリル15の先端が接触(衝突)する(変形量S2の位置)と変形し始めるとともに、反力はほぼ一定の上昇速度で上昇し、変形量がS4になると、反力は、最大反力Fmgに達し、以降、変形し続けても反力Fmgを一定に保つ。
【0069】
なお、フロントグリル15は、変形量がS4に達すると、グリルブラケット35に接触して(図12参照)グリルブラケット35とともに車両後方へ後退(変形)する。さらに後退すると、図14のラジエータ・コンデンサ支持機構135によってラジエータ17並びにコンデンサ102とともに車両後方へ後退(変形)する。
【0070】
(d):フード21は、図13に示すように、障害物Mにフード21の先端が接触(衝突)する(変形量S3の位置)と変形し始めるとともに、反力はほぼ一定の上昇速度で上昇し、変形量がS5になると、反力は、最大反力Fmfに達し、以降、変形し続けても反力Fmfを一定に保つ。
【0071】
(e):車体前部構造11は、既に(b)、(c)、(d)で説明したそれぞれの反力を合計した反力を変形量S5までの過程で発生するとともに、変形量S5で最大反力Fmを発生し、変形量S5以降の変形の過程で最大反力Fmを一定に保持する。
反力Fmは、所望の上限の規定値Fu未満である。
【0072】
その結果、車体前部構造11は、フロントバンパ16からフロントグリル15(フロントグリル15の平均)までの距離Lfが短く、フロントバンパ16に衝撃吸収部材を収納できない車両でも、車体前部構造11の反力は急激に上昇しないという利点がある。
【0073】
このように、実施例に係る車体前部構造11は、車両12の正面13に位置するフロントバンパ16及びフロントグリル15と、フロントグリル15の上方から車両12後方へ延びるフード21と、を備え、車両12正面13が障害物Mに接触した時の荷重でフロントバンパ16(具体的には主にバンパフェイス37で保護プレート41を含む)は、フード21の先端の下方まで後退する(変形量S3の位置)過程の中間位置(変形量S1の位置)でフロントバンパ16(具体的にはバンパフェイス37)の最大反力Fmbを発生し、さらに車両後方へ後退するのに伴い降下していく降下反力(変形量S1から変形量S3までの間の反力)を発生した後、一定のフロントバンパ残留反力Fbを発生し、フロントグリル15及びフード21は、中間位置(変形量S1の位置)以降に、フロントバンパ16、具体的にはバンパフェイス37とともに後退する過程において、降下反力(変形量S1から変形量S3までの間の反力)に連続し(変形量S2から変形量S3までの間で)て上昇反力((c)の変形量S2〜S4、(d)の変形量S3〜S5)を一定の傾斜で上昇させ、所望の後退量であるところの変形量((c)の変形量S4、(d)の変形量S5)に達した時点でフロントグリル15最大反力Fmg、フード21最大反力Fmfを発生して、残りの後退量であるところの変形量((c)の変形量S4以降、(d)の変形量S5以降)の間一定に保ち続け、フロントグリル15最大反力Fmgとフード21最大反力Fmfとフロントバンパ16残留反力Fbとを合計した総合最大反力Fmは、一定で、且つ所望の規定値Fuを超えないので、車体前部構造11の反力を低減することができる。従って、フロントバンパ16からフロントグリル15(フロントグリル15の平均)までの距離Lfが短く、フロントバンパ16に衝撃吸収部材を収納できない車両でも、障害物Mと接触(衝突)した際の衝撃を十分吸収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の車体前部構造は、フロントバンパからフロントグリルまでの距離が短く、フロントバンパに衝撃吸収部材を収納できない車両に好適である。
【符号の説明】
【0075】
11…車体前部構造、12…車両、13…車両の正面、15…フロントグリル、16…フロントバンパ、21…フード、37…バンパフェイス、41…保護プレート、Fb…フロントバンパ残留反力、Fm…総合最大反力、Fmb…最大反力、Fmf…フード最大反力、Fmg…フロントグリル最大反力、Fu…規定値、M…障害物、S1…中間位置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両正面に位置するフロントグリル及びフロントバンパと、これらの後に配置されたラジエータと、ラジエータなどの装置を上方でカバーするフードと、を有し、障害物に対応する車体前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造には、車両正面のフロントバンパに歩行者を保護するエネルギー吸収部材を設けたものがあり、エネルギー吸収部材の下方に、エネルギー吸収部材より車両前方へ突出させた突出部で歩行者の足を払い、歩行者がボンネット(フード)側へ倒れるときに、歩行者の膝部の衝撃エネルギーを、ボンネット(フード)の先端と突出部の先端を結ぶラインよりも車両前方に突出させたエネルギー吸収部材で吸収するものがある(例えば、特許文献1(図1、図2)参照)。
【0003】
しかし、従来技術(特許文献1)は、エネルギー吸収部材によって歩行者の衝撃エネルギーを吸収するが、エネルギー吸収部材をフードの先端から車両前方へ向け大きく出せない車両には採用できないという問題がある。
同様に、フロントバンパの車幅方向部材(バンパビーム)から車両前方へ向け大きく出せない車両にも適さない。このような車両、例えば、SUV車など車高の高い車両では、フロントバンパと不整地の急斜面との干渉を防止するために、フロントバンパを高く且つ前輪に近接させる必要があり、足払いプレートの設置は困難であるという問題がある。
また、SUV車など車高の高い車両では、車両の側面視で、フロントバンパの先端から車両後方のフードの先端又はフロントグリルまでの車両前後方向の長さが短いため、フロントバンパ内の空間に十分なエネルギー吸収部材を収納できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3740901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、フロントバンパからフロントグリルまでの距離が短く、フロントバンパに衝撃吸収部材を収納できない車両でも、障害物と接触(衝突)した際の衝撃を十分吸収する車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、車両正面に位置するフロントバンパ及びフロントグリルと、フロントグリルの上方から車両後方へ延びるフードと、を備えた車体前部構造において、車両正面が障害物に接触した時の荷重でフロントバンパは、フードの先端の下方まで後退する過程の中間位置でフロントバンパ最大反力を発生し、さらに後退するのに伴い降下していく降下反力を発生した後、一定のフロントバンパ残留反力を発生し、 フロントグリル及びフードは、中間位置以降に、フロントバンパとともに後退する過程において、降下反力に連続して上昇反力を一定の傾斜で上昇させ、所望の後退量に達した時点でフロントグリル最大反力、フード最大反力を発生して、残りの後退量の間一定に保ち続け、フロントグリル最大反力とフード最大反力とフロントバンパ残留反力とを合計した総合最大反力は、一定で、且つ所望の規定値を超えないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明では、障害物に接触した時の荷重でフロントバンパは、フードの先端の下方まで後退する過程の中間位置でフロントバンパ最大反力を発生し、さらに後退するのに伴い降下していく降下反力を発生した後、一定のフロントバンパ残留反力を発生し、フロントグリル及びフードは、中間位置以降に、フロントバンパとともに後退する過程において、降下反力に連続して上昇反力を一定の傾斜で上昇させ、所望の後退量に達した時点でフロントグリル最大反力、フード最大反力を発生して、残りの後退量の間一定に保ち続け、フロントグリル最大反力とフード最大反力とフロントバンパ残留反力とを合計した総合最大反力は、一定で、且つ所望の規定値を超えないので、反力を急激に上昇させず、且つ、最大の反力を小さくすることができるという利点がある。
つまり、フロントバンパからフロントグリル(フロントグリルの平均)までの距離が短く、フロントバンパに衝撃吸収部材を収納できない車両でも、障害物と接触(衝突)した際の衝撃を十分吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例に係る車体前部構造の概要を説明する図である。
【図2】実施例に係る車体前部構造の斜視図である。
【図3】実施例に係る車体前部構造の断面図である。
【図4】車体前部構造のフロントバンパに含まれる保護プレートの斜視図である。
【図5】車体前部構造の保護プレートの断面図である。
【図6】車体前部構造のフロントグリルに設けたグリルブラケットの斜視図である。
【図7】車体前部構造のグリルブラケットの背面図である。
【図8】車体前部構造のフードを下方から見た図である。
【図9】車体前部構造のフロントグリルの裏側に配置されたフロントバルクヘッド及びラジエータ・コンデンサ支持機構の斜視図である。
【図10】図9の10部詳細図である。
【図11】車体前部構造のフロントバンパに設けられた保護プレートの反力を低減する機構を説明する図である。
【図12】車体前部構造のフロントグリルの反力を低減する機構を説明する図である。
【図13】車体前部構造のバンパフェイス、ラジエータ・コンデンサ支持機構及びフードの反力を低減する機構を説明する図である。
【図14】車体前部構造のラジエータ・コンデンサ支持機構の反力を低減する機構を詳しく説明する図である。
【図15】車体前部構造の総合反力を低減する機構を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、実施例で詳細に説明する。
【実施例】
【0010】
実施例に係る車体前部構造11は、図1、図2に示すように、車両12の正面13に位置するフロントグリル15及びフロントバンパ16と、これらの後に配置されたラジエータ17と、ラジエータ17などの装置を上方でカバーするフード21と、を有する。以降で具体的に説明していく。
【0011】
車体前部構造11は、図1〜図3に示しているように、車両12の前部23に採用され、フロントバンパ16からフロントグリル15(フロントグリル15の平均)までの距離Lfが短く、フロントバンパ16には衝撃吸収部材を収納していないが、障害物M、例えば歩行者と接触したときに、歩行者を保護するようにしたものである。
【0012】
そして、車体前部構造11は、車両12のフロントボデー25内のエンジン26などの装置をカバーするフード21と、左右のフロントサイドフレーム27の前端部28に架け渡されたバンパビーム31と、フロントバルクヘッド33と、フロントグリル15の撓みを抑えるようにフロントグリル15の裏に設けられたグリルブラケット35と、バンパビーム31の車体前方に設けられたバンパフェイス37と、バンパビーム31とフロントバルクヘッド33のフロントロアクロスメンバ38に設けられた保護プレート41と、を備えている。
【0013】
車両12は、車高の高いSUV車で、車室43と、車室43の前に連なるエンジンルーム44と、フロントサイドフレーム27の上方へ連なるフロントサイドアッパメンバ45と、フードロック装置46と、左右のフロントフェンダ47の下方に設けられた左右の前輪51と、を備える。
【0014】
バンパビーム31は、左右の前輪51の車体前方において車幅方向に延出され、図5に示す断面コ字形に形成され、開口を車両後方へ向け配置され、バンパフェイス37を支持している。
【0015】
バンパフェイス37は、樹脂製で、図3に示すように、断面L形に成形され、バンパビーム31から車両前方へ所定距離だけ離すことで空間を形成し、天部37aを略水平に配置し、正面部37bを略垂直に配置してバンパビーム31にブラケット(図に示していない)で取付けられている。
バンパフェイス37に用いる樹脂の特性は、任意である。
バンパフェイス37の厚さ(肉厚)は、任意である。
【0016】
フロントバルクヘッド33は、図2〜図4に示しているように、左右のフロントサイドフレーム27に左右のバルクヘッドサイドフレーム52が設けられ、左右のバルクヘッドサイドフレーム52の下端部にフロントロアクロスメンバ38が架け渡されている。そして、バンパビーム31の下方で保護プレート41を支持している。
【0017】
保護プレート41は、バンパビーム31及びフロントロアクロスメンバ38に取付けられ、車両側面視で、バンパビーム31及びフロントロアクロスメンバ38から車体前方へ向けて膨出するように略V字状に折り曲げられた板状(プレート状)の部材である。
【0018】
そして、保護プレート41は、図3〜図5のバンパビーム31に取付けられた上端取付部54と、上端取付部54から車体前方に向けて張り出された上面部55と、上面部55から下方に向けて屈曲された前面部56と、前面部56から車体後方に向けて屈曲された下面部57と、下面部57の後端に設けられてフロントロアクロスメンバ38に取付けられた下端取付部58と、を備えている。
【0019】
上端取付部54は、バンパビーム31のビーム前壁に溶接で固定されている(取付けられている)。
上面部55は、上端取付部54の下端で折り曲げられることで、車体前方に向けて下り勾配で張り出されている。
【0020】
前面部56は、上面部55の前端55aで折り曲げられることで、下方に向け、且つ、車体後方に向けて屈曲されている。
【0021】
下面部57は、前面部56の下端で折り曲げられることで、車体後方に向けて屈曲されている。
この下面部57は、略中央に下方へ突出する折曲部61が設けられている。よって、折曲部61の前方の下面前部62と折曲部61の後方の下面後部63とが下向きに略く字状に折り曲げられている。
【0022】
また、下面部57は、左右の前輪51の接地点65(図1参照)からフロントバンパ16の前端下部66を結ぶアプローチ傾斜線67(図1も参照)の上方に配置されている。
下面部57をアプローチ傾斜線67の上方に配置することで、アプローチアングルθを好適に確保することができる。
図1に示すように、アプローチアングルθは、水平線に対するアプローチ傾斜線67の傾斜角である。
【0023】
さらに、この下面部57は、前面部56に車体前方から衝撃荷重が矢印a1(図11参照)の如く作用した場合に、折曲部61が下方に折り曲げられて下面前部62を車体下方に向けて張り出させ、且つ、下面後部63を略水平に保つように形成されている。
【0024】
下面部57は、図5に示すように、下面前部62に複数の下面前部ビード(剛性部)71が備えられ、下面後部63に複数の下面後部ビード(剛性部)72が備えられている。
【0025】
下面前部ビード71は、略矩形の形状で下方に向けて膨出され、折曲部61を回避して折曲部61の上方に形成されている。下面前部62に複数の下面前部ビード71を設けることで、下面前部62の剛性を高めることができる。
【0026】
下面後部ビード72は、略矩形の形状で下方に向けて膨出され、折曲部61近傍から下面部57の後端近傍まで形成され、折曲部61を回避して折曲部61の下方に形成されている。下面後部63に複数の下面後部ビード72を設けることで、下面後部63の剛性を高めることができる。
【0027】
上端取付部54は、複数の上ビード(剛性部)74が備えられている。
上ビード74は、車体後方に向けて膨出され、上面部55の上端から上端取付部54の下端を経て上端取付部54の上端まで形成されている。
【0028】
下端取付部58は、複数の下ビード(剛性部)75が備えられている。
下ビード75は、車体前方に向けて膨出され、下面部57の後端近傍から下端取付部58の下端まで形成されている。
【0029】
上端取付部54及び下端取付部58は、上端取付部54に複数の上ビード74が設けられるとともに、下端取付部58に複数の下ビード75が設けられているので、保護プレート41のうち、下面前部62及び下面後部63を除いた部位に比較して高強度に設定されている。
【0030】
次に、フロントグリル15、フード21及びラジエータ17関係を説明する。
フードロック装置46は、図3、図6、図9に示すように、フロントバルクヘッド33に配置したフードロック機構78と、フードロック機構78に係合(ロック)・施錠されるストライカ81と、を備え、取扱いは既存のものと同様である。
【0031】
エンジンルーム44は、図2、図3、図9に示す前端の骨格をなす、フロントバルクヘッド33と、フロントバルクヘッド33から垂下している左右のバルクヘッドサイドフレーム52と、バルクヘッドサイドフレーム52の下部に支持されているフロントロアクロスメンバ38と、を有し、車体前部構造11に含まれる。
【0032】
フロントバルクヘッド33は、図2、図3、図9に示しているように、フロントサイドアッパメンバ45に連なり先端部84をエンジンルーム44の高さの中位近傍へ配置したバルクヘッドコーナ部85と、バルクヘッドコーナ部85の先端部84に連なり上方へ延在させたバルクヘッドサイド部86と、バルクヘッドサイド部86の上端を車両12後方へ延ばした後退部87に取付けられたバルクヘッドアッパ部91と、を備え、バルクヘッドアッパ部91のうち車両12後方へ向いている後面92にフード21をフロントボデー25にロックするフードロック機構78が設けられている。
【0033】
フロントグリル15は、図1、図3、図7に示す上グリル95と、下グリル96と、グリルブラケット35を有し、グリルブラケット35は、フロントグリル15の背面97に配置され、且つ、フロントバルクヘッド33のバルクヘッドサイド部86に支持されている支持ステー98に上下方向に延びる縦ステー101が設けられている。
【0034】
縦ステー101は、左右一対で、左右間距離Wsを設定することで、フロントグリル15の強度を変化させる。すなわち、左右間距離Wsが大きくなると、フロントグリル15がラジエータ17やコンデンサ102に接触するまでの変形量が大きくなり、結果的にフロントグリル15の強度は小さくなる。
【0035】
縦ステー101は、左右を連結する連結ステー104で連結されている。
支持ステー98は、フロントバルクヘッド33に連結してフロントグリル15近傍まで延びる座屈ステー部105と、座屈ステー部105のフロントグリル15近傍に連なり縦ステー101に連結した横ステー部106と、からなる。
【0036】
グリルブラケット35は、中心線C(図7)を基準に左右がほぼ対称である。
また、バルクヘッドサイド部86の下部に座屈ステー部105の下ステー107、横ステー部106の下横ステー108が連なり、縦ステー101に接続している。
【0037】
縦ステー101は、図7に示す上縁に連ねて車両12後方へ延出させた後延出部111が形成され、後延出部111の先端を上グリル95の裏の下方へ向いている下面に固定し、下縁に連ねて車両12前方へ延出させた下端(前延出部112)が形成され、下端(前延出部112)の先端を下グリル96の下面及びバンパフェイス上面部114に固定している。
【0038】
フード21は、図2、図3、図8に示しているように、フード21の少なくともエンジンルーム44のエンジンルーム前部116の上方に配置されたカバー前部117が、カバー前部117に連なるカバー後部118に比べ強度を低く形成されている。
【0039】
フード21はまた、鋼板製のアウタパネル121と、アウタパネル121の裏のうちカバー前部117の範囲に設けられた樹脂製の前部インナフレーム122と、残りの裏に設けられた鋼板製の後部インナフレーム123と、後部インナフレーム123の前部に溶接で結合し、且つアウタパネル121に接着剤で一体的に結合しているフード補強ステー125と、を備え、後部インナフレーム123の先端近傍にフロントボデー25側のバルクヘッドアッパ部91に取付けられたフードロック機構78にロックされるストライカ81が設けられている。
【0040】
アウタパネル121は、既存の形状(デザイン)であり、従来と同様の製造方法を確保したものである。
アウタパネル121には、既に述べた後部インナフレーム123と前部インナフレーム122とからなるインナフレーム127が取付けられている。
【0041】
カバー前部117は、前部インナフレーム122を用いた範囲である。
カバー前部117の車両12前後方向の長さは、平均でLfである。
前部インナフレーム122に用いる樹脂の特性は任意である。
【0042】
フード補強ステー125は、前脚部131を前部インナフレーム122及び後部インナフレーム123に結合し、後脚部132を後部インナフレーム123を介してストライカ81に結合している。
【0043】
次に、ラジエータ17及びコンデンサ102を支持しているラジエータ・コンデンサ支持機構135を図9、図10を用いて説明する。
ラジエータ・コンデンサ支持機構135は、車体前方からラジエータ17及びコンデンサ102に入力される衝撃によってラジエータ17及びコンデンサ102を車体後方へ傾倒(図13、14の矢印a2の方向)させる。
【0044】
ラジエータ・コンデンサ支持機構135はまた、ラジエータ17へ向いているバルクヘッドサイド部86の内側面136に回動自在(矢印a5の方向)に重ねられたブラケット取付部137と、ブラケット取付部137に設けられてブラケット取付部137の回動を規制する回動規制爪138と、ブラケット取付部137に連なり延びる延出嵌合部141と、延出嵌合部141に開けられ、ラジエータ17の突起142及びコンデンサ102の突起143と嵌合し、車両正面13に衝撃を受けたときに、回動規制爪138に抗して回動することによって突起142、143の嵌合が外れる嵌合孔144と、を備えている。
【0045】
ラジエータ・コンデンサ支持機構135は、詳しくは、ラジエータ17に用いる第1ブラケット146と、コンデンサ102に用いる第2ブラケット147と、からなり、それぞれが、ブラケット取付部137、回動規制爪138、延出嵌合部141、嵌合孔144を有する。
回動規制爪138はバルクヘッドサイド部86に開けた孔148に嵌合している。
【0046】
ブラケット取付部137は、中央に支点孔151が開けられ、支点孔151及びバルクヘッドサイド部86の孔(支点孔151と同様)に通したボルト(図に示していない)によって取付けられている。
嵌合孔144には、緩衝部材152を介して突起142、143が嵌合している。
【0047】
次に、本発明の実施例に係る車体前部構造11の保護プレート41の作用を図11で説明する。
保護プレート41の前面部56に車体前方から衝撃荷重が作用した場合を図11に基づいて説明する。なお、図11においては保護プレート41の変形について理解を容易にするためにバンパフェイス37を除去した状態で説明する。
【0048】
車体前部構造11は、障害物Mに保護プレート41が衝突した場合、上面部55の前端55aに当接する。障害物Mが上面部55の前端55aに当たることで、上面部55の前端55aに衝撃荷重が矢印a1の如く作用するので、折曲部61が下方に向けて、くの字に折り曲げられる。そして、折曲部61が下方に向けて折り曲げられることで、下面前部62が車体下方に向けて張り出す(突出する)。
このように、下面前部62が車体下方に向けて変形することにより、障害物Mを前面部56で受けることができる。
この状態で、下面前部62が車体下方に向けてさらに変形する。これにより、保護プレート41を車体後方に向けてL寸法潰して、障害物Mに作用する衝撃荷重を吸収することができる。
つまり、歩行者Mへの衝撃の反力を低減することができる。
【0049】
さらに、下面前部62を車体下方に向けて変形させることで、車体下方に向けて変形した下面前部62や前面部56の広い面積で障害物Mを受けることができる。
これにより、障害物Mに作用する衝撃荷重の面圧を小さく抑えることができ、障害物Mを良好に保護することができる。
【0050】
加えて、下面前部62が車体下方に向けてH寸法張り出すことで、張り出した下面前部62で、障害物Mが車体(すなわち、車体前部構造11)の下方に巻き込まれることを防ぐことができる。
【0051】
ここで、保護プレート41は、障害物Mが前面部56(詳しくは、上面部55の前端55a)に衝突した場合に、下面後部63を略水平に保つようにした。
下面後部63を略水平に保つことで、下面後部63に座屈荷重が作用するようにした。よって、下面後部63に曲げ荷重が作用した場合と比較して、下面後部63で大きな荷重を支えることができる。
【0052】
これにより、衝撃荷重で下面後部63が変形することを抑え、車体下方に張り出した下面前部62を下面後部63で保持することができる。
これにより、張り出した下面前部62で、障害物Mが車体の下方に巻き込まれることを一層良好に防ぐことができる。
【0053】
さらに、下面部57の下面前部62及び下面後部63に、複数の下面前部ビード71及び複数の下面後部ビード72をそれぞれ備えることで、衝撃荷重が作用した当初において、下面前部62及び下面後部63が座屈変形することを防ぐことができる。
一方、下面部57の折曲部61には補強のビードを設けないようにして、下面前部62及び下面後部63と比較して折り曲げやすくした。
【0054】
加えて、上端取付部54に複数の上ビード74を設けるとともに、下端取付部58に複数の下ビード75を設けることで、上端取付部54及び下端取付部58を高強度に設定した。
よって、上端取付部54及び下端取付部58をバンパビーム31やフロントロアクロスメンバ38で確実に支えることが可能になり、保護プレート41のうち下面部57の折曲部61に応力を集中させることができる。
【0055】
次に、本発明の実施例に係る車体構造11のフロントグリル15(グリルブラケット35)の作用を図12で説明する。
車体構造11は、車両12と障害物(例えば歩行者)M(図1)が矢印a6のように接触したときに、グリルブラケット35が変形しつつフロントグリル15を保持することで、フロントグリル15の撓みを抑える。
【0056】
具体的には、車両12の正面13の中央が障害物(例えば歩行者)に接触(衝突)すると、フロントグリル15(上グリル95、下グリル96)が車両12後方へ変形しつつ、グリルブラケット35を押圧する。グリルブラケット35は、変形が進行しているフロントグリル15をフロントグリル15の中央から左右にそれぞれ距離W1だけ離した縦ステー101で支持するので、フロントグリル15の中央を変形させつつ、衝撃吸収をも確保し、且つフロントグリル15の撓みを抑制することができる。
【0057】
縦ステー101は、車両12の正面13の中央が障害物(例えば歩行者)に接触(衝突)すると、連結ステー104に荷重が伝達・分散されるので、車幅方向(矢印a7の方向)の力に対する強度を向上させて衝撃吸収の効率を高めることができる。
【0058】
支持ステー98では(図7参照)、車両12の正面13の中央が障害物(例えば歩行者)に接触(衝突)すると、座屈ステー部105に圧縮荷重が加わり、座屈ステー部105が座屈するので、座屈ステー部105の座屈によって衝撃を吸収することができる。
このように、歩行者Mへの衝撃の反力を低減することができる。
【0059】
次に、本発明の実施例に係る車体前部構造11のバンパフェイス37、フード21及びラジエータ・コンデンサ支持機構135の作用を図13、図14で説明する。
【0060】
車体前部構造11は、図13に示すように、車両12と障害物(例えば歩行者)M(図1)が接触したときに、バンパフェイス37が変形する、主に、略水平に配置した天部37aの変形によって、歩行者Mへの衝撃の反力を低減することができる。
【0061】
車体前部構造11は、図13に示すように、車両12と障害物(例えば歩行者)M(図1)が接触したときに、フード21のカバー前部117が変形することで、歩行者Mへの衝撃の反力を低減することができる。
【0062】
具体的には、バンパフェイス37の変形によるバンパフェイス37の車両後方への後退に伴い、続けてフード21のカバー前部117が変形・後退し始める。カバー前部117は、フード21の全体に対して、樹脂製の前部インナフレーム122によって強度を低く設定した部位なので、強度を低く設定しないフード21に比べ、変形開始の荷重を小さくすることができ、且つその変形範囲(ストローク)を(例えば距離Sまで)大きくすることができる。従って、歩行者Mに加わる衝撃を軽減することができる。
つまり、歩行者Mへの衝撃の反力を低減することができる。
【0063】
その際、フロントバルクヘッド33(バルクヘッドサイド部86、バルクヘッドアッパ部91)によって、フードロック機構78を車両12後方へ後退させることができ、フード21のカバー前部117の車両12前後方向の長さLf(図8)を大きく確保することができる。従って、車両正面13の衝撃吸収ストロークSをより一層増加させることができる。
【0064】
車体前部構造11では、図14に示しているラジエータ・コンデンサ支持機構135は、車両正面13に障害物(歩行者)Mによる衝撃を入力されると、矢印a6のように回動してラジエータ17及びコンデンサ102を車両12後方へ矢印a2のように傾倒させることができ、ラジエータ17及びコンデンサ102を車両12後方へ傾倒させる車体前部構造11の構造は簡単になる。
また、車両正面13に障害物(歩行者)Mによる衝撃が発生しないときには、ラジエータ・コンデンサ支持機構135は回動規制爪138(図10)によって、通常走行時の振動によるラジエータ・コンデンサ支持機構135の回転を防止することができる。
【0065】
次に、本発明の実施例に係る車体前部構造11の総合反力を低減する機構を図11〜図15で説明する。図15(a)は図3に基づく概念図、(b)はバンパフェイス37の反力とバンパフェイス37の変形量の関係を示すグラフ、(c)はフロントグリル15の反力とフロントグリル15の変形量の関係を示すグラフ、(d)はフード21の反力とフード21の変形量の関係を示すグラフ、(e)は車体前部構造11の総合反力と車体前部構造11の変形量の関係を示すグラフである。これらのグラフは横軸を車幅方向の中央が障害物Mに接触(衝突)したときのそれぞれの変形量とし、縦軸を反力とした。
【0066】
(b):バンパフェイス37は、図13に示すように、障害物Mに接触(衝突)し荷重が入力され、変形量S1だけ変形すると、反力は、最大反力Fmbに達する。引き続き変形して変形量S3だけ変形すると、反力はフロントバンパ残留反力Fbまで降下し、フロントバンパ残留反力Fbを一定に保つ。
【0067】
なお、変形量S1はフロントグリル15まで(距離Lf)のほぼ中間位置であり、変形量S3はフロントグリル15の位置である。
バンパフェイス37は、変形する際に、保護プレート41とともに変形(図11参照)している。
バンパフェイス37は、バンパビーム31に当接(変形量S2の少し前付近)した後、天部37aが反力を発生している。
【0068】
(c):フロントグリル15は、図13に示すように、障害物Mにフロントグリル15の先端が接触(衝突)する(変形量S2の位置)と変形し始めるとともに、反力はほぼ一定の上昇速度で上昇し、変形量がS4になると、反力は、最大反力Fmgに達し、以降、変形し続けても反力Fmgを一定に保つ。
【0069】
なお、フロントグリル15は、変形量がS4に達すると、グリルブラケット35に接触して(図12参照)グリルブラケット35とともに車両後方へ後退(変形)する。さらに後退すると、図14のラジエータ・コンデンサ支持機構135によってラジエータ17並びにコンデンサ102とともに車両後方へ後退(変形)する。
【0070】
(d):フード21は、図13に示すように、障害物Mにフード21の先端が接触(衝突)する(変形量S3の位置)と変形し始めるとともに、反力はほぼ一定の上昇速度で上昇し、変形量がS5になると、反力は、最大反力Fmfに達し、以降、変形し続けても反力Fmfを一定に保つ。
【0071】
(e):車体前部構造11は、既に(b)、(c)、(d)で説明したそれぞれの反力を合計した反力を変形量S5までの過程で発生するとともに、変形量S5で最大反力Fmを発生し、変形量S5以降の変形の過程で最大反力Fmを一定に保持する。
反力Fmは、所望の上限の規定値Fu未満である。
【0072】
その結果、車体前部構造11は、フロントバンパ16からフロントグリル15(フロントグリル15の平均)までの距離Lfが短く、フロントバンパ16に衝撃吸収部材を収納できない車両でも、車体前部構造11の反力は急激に上昇しないという利点がある。
【0073】
このように、実施例に係る車体前部構造11は、車両12の正面13に位置するフロントバンパ16及びフロントグリル15と、フロントグリル15の上方から車両12後方へ延びるフード21と、を備え、車両12正面13が障害物Mに接触した時の荷重でフロントバンパ16(具体的には主にバンパフェイス37で保護プレート41を含む)は、フード21の先端の下方まで後退する(変形量S3の位置)過程の中間位置(変形量S1の位置)でフロントバンパ16(具体的にはバンパフェイス37)の最大反力Fmbを発生し、さらに車両後方へ後退するのに伴い降下していく降下反力(変形量S1から変形量S3までの間の反力)を発生した後、一定のフロントバンパ残留反力Fbを発生し、フロントグリル15及びフード21は、中間位置(変形量S1の位置)以降に、フロントバンパ16、具体的にはバンパフェイス37とともに後退する過程において、降下反力(変形量S1から変形量S3までの間の反力)に連続し(変形量S2から変形量S3までの間で)て上昇反力((c)の変形量S2〜S4、(d)の変形量S3〜S5)を一定の傾斜で上昇させ、所望の後退量であるところの変形量((c)の変形量S4、(d)の変形量S5)に達した時点でフロントグリル15最大反力Fmg、フード21最大反力Fmfを発生して、残りの後退量であるところの変形量((c)の変形量S4以降、(d)の変形量S5以降)の間一定に保ち続け、フロントグリル15最大反力Fmgとフード21最大反力Fmfとフロントバンパ16残留反力Fbとを合計した総合最大反力Fmは、一定で、且つ所望の規定値Fuを超えないので、車体前部構造11の反力を低減することができる。従って、フロントバンパ16からフロントグリル15(フロントグリル15の平均)までの距離Lfが短く、フロントバンパ16に衝撃吸収部材を収納できない車両でも、障害物Mと接触(衝突)した際の衝撃を十分吸収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の車体前部構造は、フロントバンパからフロントグリルまでの距離が短く、フロントバンパに衝撃吸収部材を収納できない車両に好適である。
【符号の説明】
【0075】
11…車体前部構造、12…車両、13…車両の正面、15…フロントグリル、16…フロントバンパ、21…フード、37…バンパフェイス、41…保護プレート、Fb…フロントバンパ残留反力、Fm…総合最大反力、Fmb…最大反力、Fmf…フード最大反力、Fmg…フロントグリル最大反力、Fu…規定値、M…障害物、S1…中間位置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両正面に位置するフロントバンパ及びフロントグリルと、該フロントグリルの上方から車両後方へ延びるフードと、を備えた車体前部構造において、
前記車両正面が障害物に接触した時の荷重で前記フロントバンパは、前記フードの先端の下方まで後退する過程の中間位置でフロントバンパ最大反力を発生し、さらに後退するのに伴い降下していく降下反力を発生した後、一定のフロントバンパ残留反力を発生し、 前記フロントグリル及び前記フードは、前記中間位置以降に、前記フロントバンパとともに後退する過程において、前記降下反力に連続して上昇反力を一定の傾斜で上昇させ、所望の後退量に達した時点でフロントグリル最大反力、フード最大反力を発生して、残りの後退量の間一定に保ち続け、
前記フロントグリル最大反力と前記フード最大反力と前記フロントバンパ残留反力とを合計した総合最大反力は、一定で、且つ所望の規定値を超えないことを特徴とする車体前部構造。
【請求項1】
車両正面に位置するフロントバンパ及びフロントグリルと、該フロントグリルの上方から車両後方へ延びるフードと、を備えた車体前部構造において、
前記車両正面が障害物に接触した時の荷重で前記フロントバンパは、前記フードの先端の下方まで後退する過程の中間位置でフロントバンパ最大反力を発生し、さらに後退するのに伴い降下していく降下反力を発生した後、一定のフロントバンパ残留反力を発生し、 前記フロントグリル及び前記フードは、前記中間位置以降に、前記フロントバンパとともに後退する過程において、前記降下反力に連続して上昇反力を一定の傾斜で上昇させ、所望の後退量に達した時点でフロントグリル最大反力、フード最大反力を発生して、残りの後退量の間一定に保ち続け、
前記フロントグリル最大反力と前記フード最大反力と前記フロントバンパ残留反力とを合計した総合最大反力は、一定で、且つ所望の規定値を超えないことを特徴とする車体前部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−188966(P2010−188966A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38024(P2009−38024)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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