説明

車載装置

【課題】 速走行時の正確な走行距離を取得する技術を提供する。
【解決手段】 低速走行時において、路面を撮影するカメラにより撮影された画像から、路面に描かれた点線間を走行する所要時間を取得し、取得した所要時間から車輪の回転数を算出する。又は、タイヤホイールを撮影するカメラにより撮影された画像データから車軸の回転数を算出する。算出された回転数から、走行距離を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーションシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される車載装置は、現在位置を算出するために、ジャイロ等の方位センサにより測定した車両の進行方向と、車速センサまたは距離センサにより測定した車両の走行距離に基づいて算出することが行われている。
【0003】
また、車両の走行距離は、一般的には、トランスミッションの出力軸、または、タイヤの回転数を計測して、その回転数に、タイヤ1回転あたりに車両が進む距離である距離係数を乗ずることにより求められている。
【0004】
ところで、従来の車載装置は、低速走行時に、トランスミッションの出力軸、または、タイヤの回転数の誤差が大きくなる。このため、走行距離の算出において誤差が発生し、現在位置の算出が高精度に行えなくなる。
【0005】
このような低速走行時の走行距離を補正する技術が、特許文献1に記載されている。特許文献1には、所定の閾値前後の加速度から、走行距離を推測する技術が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−97713号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術は、所定速度となる直前の加速度が、その所定速度以下の間の加速度と等しいことを前提として、走行距離を推測している。しかし、実際には、所定速度となる直前の加速度が、その所定速度以下の間の加速度と同じであるとは限らない。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、低速走行時の正確な走行距離を取得する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の目的を達成するためになされたもので、車両の走行速度が所定値以下の場合に、距離の明確なものの間を走行する所要時間から車輪の回転数を算出し、この回転数から、走行距離を算出することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、車両の走行速度が所定値以下の場合に、撮影された画像データから車軸の回転数を算出し、この回転数から、走行距離を算出することを特徴とする。
【0011】
本発明は、車輪の回転に伴い移動する車両に搭載され、車輪の回転数と、設定された距離係数とに応じて車両の走行距離を算出する車載装置であって、前記車両の走行する道路の路面を撮影するカメラと、前記車両が高速道路を走行しており、かつ、該車両の走行速度が所定値以下である場合、前記カメラにより取得された画像データから、該高速道路上の路面に描かれた点線の白線部及び空白部のうち少なくとも一方を走行する間の時間から、前記車軸の回転数を算出する回転数取得手段と、を有し、前記算出された車軸の回転数から、前記車両の走行距離を算出することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、車輪の回転に伴い移動する車両に搭載され、車輪の回転数と、設定された距離係数とに応じて車両の走行距離を算出する車載装置であって、前記車両のタイヤホイールを撮影するカメラと、前記車両の走行速度が所定値以下である場合、前記カメラにより取得された画像データから、所定時間内の前記車両の車軸の回転数を算出する回転数取得手段と、を有し、前記算出した車輪の回転数により、前記車両の走行距離を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の技術によれば、低速走行時でも、正確な走行距離を取得することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
以下で説明する実施形態は、低速走行時等のパルス数が正確にカウントできない場合に、発生するであろうと想定されるパルス数(以下、擬似パルスという)を与えることにより、車両の走行距離を算出するものである。ここでは、擬似パルスを取得するために、距離の明確なものの間を走行する間に発生すると想定されるパルス数を取得する場合の例と、タイヤホイールの回転数から直接パルス数を取得する場合の例とを説明する。
<第1の実施形態>
まず、距離の明確なものの間を走行する間に発生すると想定されるパルス数を取得する実施形態の例を説明する。ここでは、この、距離が明確なものの例として、高速道路上の路面に描かれた点線を用いる場合の例を説明する。なお、ここでいう「点線」とは、高速道路において、車線を示すために路面に描かれている点線である。この点線は、追い越し可能な車線を示す。高速道路では、点線のうち、白線部が8m、白線部に続く空白部は12mで描かれており、この距離はどこでも一定である。
【0016】
図1を参照し、本実施形態のナビゲーションシステム1の構成例を説明する。ナビゲーションシステム1は、車両(図示略)に搭載されている。図1において、ナビゲーションシステム1は、角速度センサ101、車速センサ102、演算部103、GPS(Global Positioning System)受信装置104、記憶装置105、入力装置106、ディスプレイ107、音声出力装置108、通信インタフェース109、カメラ110等を有する。
【0017】
角速度センサ101は、車両のヨーレイトを検出することでナビゲーションシステム1の搭載されている車両の方位の変化を検出する。車速センサ102は、車両のトランスミッションの出力軸の回転に比例した時間間隔で出力されるパルスを出力する。
【0018】
GPS受信装置104は、GPS衛星からの信号を受信し、ナビゲーションシステム1の搭載されている車両とGPS衛星間との距離及び距離の変化率を測定することで、ナビゲーションシステム1の搭載されている車両の位置、進行方位、進行速度等を測定する。
【0019】
記憶装置105は、例えば、CD-R(Compact Disc-Recordable)やDVD-RAM(Digital Versatile Disk-Random Access Memory)等の記憶メディア及び当該記憶メディアの駆動装置、HDD(Hard Disk Drive)等であり、地図データ等を記憶する。
【0020】
入力装置106は、例えば、リモコン及びリモコン受信部、タッチパネル、スイッチ等である。
【0021】
ディスプレイ107は、地図を表示し、表示した地図上に、現在位置、経路等を合成して表示する。音声出力装置108は、例えばスピーカ等であり、誘導案内のための音声等を出力する。
【0022】
カメラ110は、例えば、車両前方、車両後方、車両横方向等を撮影するカメラである。このカメラ110は、以下で説明する擬似パルス数算出のために備えられるものでもよく、また、レーンキープ用、バックビューモニタ用、サイドブラインドモニタ用等他の機能のために備えられるものであってもよい。ここでは、カメラ110は、サイドブラインドモニタ用であるものとして説明する。
【0023】
演算部103は、上述した各周辺装置の動作の制御を行うためのものであり、AD変換器121、カウンタ122、RAM123、ROM124、CPU(Central Processing Unit)125等を有する。
【0024】
AD変換器121は、角速度センサ101の信号(アナログ)をデジタル信号に変換する。カウンタ122は、車速センサ102から出力されるパルス数を例えば0.1秒毎にカウントする。RAM123は、CPU125による演算データ、記憶装置105から読み出したデータ等を格納する。ROM124は、プログラムやデータ等を格納する。
【0025】
CPU125は、ROM124内のプログラム(図示略)を実行することにより、現在位置算出部141、起動判定部142、カメラ制御部143、点線検出部144、パルス数算出部145、パルス数提供部146等を実現する。現在位置算出部141は、ナビゲーションシステム1の搭載されている車両の現在位置を算出する。この現在位置算出部141の現在位置算出処理は、従来技術と同じである。起動判定部142は、車両の現在位置が高速道路上であり、車両速度が閾値以下であり、かつ、パルス値のカウントが不可であるか否かにより、以降の処理を行なうか否か判定する。カメラ制御部143は、カメラ110による撮影を制御する。点線検出部144は、カメラ110により撮影された画像データを画像処理して、高速道路の点線を検出し、高速道路の点線のうち、ある白線部と、その白線部に続く空白部とを通過する間の時間を取得する。この点線検出部144が、画像処理により点線を検出する技術は、従来技術と同じである。パルス数算出部145は、点線検出部144により取得された時間から、例えば0.1秒毎等の所定時毎の擬似パルス数を算出する。パルス数提供部146は、パルス数算出部145により算出された擬似パルス数をカウンタ122に与える。
【0026】
また、図示しないが、ナビゲーションシステム1は、CPU125がROM124から読み出したプログラムを実行することにより、ダイクストラ法等による経路探索機能、推奨経路の誘導機能、住所、電話番号、地名やランドマーク等の検索機能等、従来技術のナビゲーションシステムの有する機能を有していてもよい。ここで、検索機能とは、例えば、記憶装置105に、予め、住所とその住所の位置を示す住所データ、電話番号とその電話番号の位置を示す電話帳データ、地名とその地名の位置を示す地名データ、主要な建築物や場所等の名称及び詳細情報とその位置を示すランドマークデータ等が格納されており、検索機能により、入力された住所、電話番号、地名、ランドマーク等から、該当する位置や詳細情報等を検索して表示等するものである。
【0027】
次に、記憶装置105に格納されている地図データ等について説明する。
【0028】
本実施形態では、地図データは、緯度及び経度により一意に決定される複数のメッシュ、及び、各メッシュ内の位置を示すXY座標を含むものとする。各メッシュは、メッシュIDで示される。地図データは、メッシュID、及び、そのメッシュIDにおけるXY座標を含む複数の地図の画像データ、道路データ、住所データ、地名データ等を含む。地図データ上の位置は、メッシュID、及び、XY座標により一意に示される。
【0029】
道路データは、2点間を結ぶ1つ以上の線分で近似し、それらの線分を、その始点と終点のXY座標によって示すものとする。以下、この線分をリンクといい、リンクの両端の点をノードという。
【0030】
図2は、記憶装置105に格納されている地図データの一例である。図2において、地図データは、複数の地図情報テーブル201を有する。各地図情報テーブル201は、1つのメッシュID202、1つ以上のリンク情報203等を含む。メッシュID202、リンク情報203等は互いに対応付けられている。メッシュID202は、メッシュの識別コードである。リンク情報203は、対応するメッシュID202のメッシュに含まれる道路を構成する各リンクに関する情報である。
【0031】
リンク情報203は、リンクID211、開始ノード座標212、終了ノード座標213、道路種別214、リンク長情報215、規制速度情報216、開始接続リンク217、終了接続リンク218等を含む。リンクID211、開始ノード座標212、終了ノード座標213、道路種別214、リンク長情報215、規制速度情報216、開始接続リンク217、終了接続リンク218等は互いに対応付けられている。リンクID211は、リンクの識別コードである。開始ノード座標212及び終了ノード座標213は、対応するリンクID211のリンクを構成する2つのノード(開始ノード、終了ノード)の緯度及び経度である。道路種別214は、対応するリンクID211のリンクを含む道路の種別である。図2の例では、道路種別214は、「一般道」、「高速道路」等があるものとする。リンク長情報215は、対応するリンクID211のリンクの長さを示す。規制速度情報216は、対応するリンクID211のリンクの規制速度(制限速度)を示す。開始接続リンク217及び終了接続リンク218は、対応するリンクID211のリンクの2つのノードのそれぞれ接続するリンクのリンクIDである。なお、ここでは、リンクを構成する2つのノードについて開始ノードと終了ノードとを区別することで、同じ道路の上り方向と下り方向とを、それぞれ別のリンクとして管理するようにしている。また、図示していないが、地図情報テーブル201には、メッシュID202に示されるメッシュに含まれている道路以外の地図構成物の情報(住所、電話番号、名称、XY座標など)、地図の画像情報等も含まれていてもよい。
【0032】
図2に一例を示す地図データは、予めナビゲーションシステム1の記憶装置105に格納されているものとする。
【0033】
次に、動作例を説明する。
【0034】
まず、現在位置を算出する動作例を説明する。
【0035】
図3に示す動作は、現在位置算出部141が、一定周期、例えば100mS毎等に実行する動作である。
【0036】
まず、現在位置算出部141は、AD変換器121から角速度センサ101の出力値を読み込む(S301)。次に、現在位置算出部141は、角速度センサ101の出力値から、車両の進行方位を計算する(S302)。
【0037】
現在位置算出部141は、車速センサ102の出力するパルス数を、0.1秒毎等の所定時間毎にカウンタ122で計数し、その計数値を読み込む(S303)。現在位置算出部141は、読み込んだ値に距離係数を乗算することで、0.1秒間等の所定時間内に進んだ距離を算出する(S304)。具体的には、例えば、カウンタ122による計測値を「Cp」、距離係数を「R」とすると、0.1秒間に進んだ距離「lu」は、以下の式で表される。
【0038】
lu=Cp×R
現在位置算出部141は、このように取得した所定時間毎の進行方位及び距離を、RAM123に順次格納しておく。
【0039】
次に、現在位置算出部141は、上記S304で算出した所定の時間内にナビゲーションシステム1の搭載されている車両の走行した距離値を、前回までの距離値に加算し、加算した距離が所定距離(例えば20m)以上となるか否か判定する(S305)。
【0040】
S305の判定の結果、所定距離に満たない場合、現在位置算出部141は、今回の処理を終了し、一定周期後に上記処理を再度行なう。
【0041】
S305の判定の結果、所定距離以上である場合、現在位置算出部141は、その時点での進行方向と距離とをRAM123に格納し、後述するマップマッチ処理を実行する(S306)。なお、現在位置算出部141がRAM123に格納する距離とは、上記S305の処理で判定に用いた所定距離であり、例えば20m等である。
【0042】
次に、図4を参照し、マップマッチの動作例を説明する。
【0043】
まず、現在位置算出部141は、RAM123から、進行方位及び距離等を読み出す(S401)。次に、現在位置算出部141は、読み出した進行方位及び距離等に基づいて、ナビゲーションシステム1の搭載されている車両の移動量を、緯度方向、経度方向、別々に算出する。さらに、現在位置算出部141は、算出した各方向における移動量を、前回のマップマッチ処理で求められた候補点の位置に加算して、現在、車両が存在すると推定される位置である仮想現在位置を算出する(S402)。
【0044】
次に、現在位置算出部141は、算出した仮想現在位置と、地図データに含まれる道路データとから、1つ以上の候補点を算出し(S403)、さらに、各候補点の信頼度を算出する(S404)。
【0045】
ここで、候補点及び信頼度について説明する。現在位置算出部141は、仮想現在位置の周辺の地図を、記憶装置105から読み出し、仮想現在位置を中心とする予め設定された距離D内にある道路データ(線分)を選択して、これらを取り出す。本実施形態においては、仮想現在位置を中心とする長さL1の正方形に対応する領域に含まれる地図を、記憶装置105から読み出す。
【0046】
次に、現在位置算出部141は、取り出された線分の中から、その線分の方位が、上述の処理で取得された進行方向と、所定値以内にある線分だけを選択し、選択されたn個すべての線分に対して、仮想現在位置から垂線をおろし、その垂線L(n)の長さを求める。次いで、次に、これら垂線の長さに基づき、選択された各線分に対して、以下の式によりに定義されるエラーコスト値ec(n)を算出する。
【0047】
ec(n)=α×|θcar−θ(n)|+β|L(n)|
ここで、θcarは、仮想現在位置における車両方位、θ(n)は、線分の方位、L(n)は、仮想現在位置から線分までの距離、すなわち垂線の長さ、αおよびβは、重み係数である。これら重み係数の値は、進行方向と道路の方位のずれと現在位置と道路のずれのどちらを、現在位置が、その上にある道路を選択する上で重視するかによって変化させてよい。
【0048】
次に、現在位置算出部141は、算出されたエラーコストec(n)と、前回の処理において算出された候補点に関連する累算エラーコストesとにしたがって、下記の式により定義される、今回の処理における累算エラーコストes(n)を算出する。
【0049】
es(n)=(1−k)×es+k×ec(n)
ここで、kは、0より大きく1より小さな重み係数である。次に、現在位置算出部141は、算出された累算エラーコストes(n)に基づき、下記の式に定義される信頼度trst(n)を算出する。
【0050】
trst(n)=100/(1+es(n))
次に、現在位置算出部141は、算出した信頼度trst(n)に基づき、ある候補点から、対応する線分にそって 車両の進行した距離Rに対応する長さだけ進められた点を、新たな候補点C(n)とする。したがって、ある候補点に対する現在位置Aより所定の範囲Dに存在し、かつその方位と車両方位との差が所定値以下であるような線分の本数がnである場合には、n個の新たな候補点C(n)が生成されることになる。
【0051】
候補点、及び、各候補点の信頼度を算出すると、現在位置算出部141は、各々の候補点うち最も信頼度の値の大きな候補点を選択し、該候補点を表示候補点とする(S405)。この表示候補点が、ディスプレイ107に表示される現在位置を示す情報となる。現在位置算出部141は、該表示候補点の位置を示す情報を、RAM123に格納する。
【0052】
次に、現在位置算出部141は、RAM123の所定の領域から読み出した表示候補点を、地図に位置付けて、ディスプレイ107に表示する(S406)。
【0053】
なお、現在位置の算出は、上述のように、センサにより取得した進行方位、距離及び地図データ等から算出してもよく、GPS受信装置104により受信した位置、進行方向、進行方位等から算出してもよい。また、上述のセンサにより取得した進行方位、距離及び地図データ等から算出した現在位置を、GPS受信装置104により受信した位置等により補正してもよい。このような現在位置の算出処理は、従来技術のナビゲーションシステムと同じである。
【0054】
次に、擬似パルス数を取得して提供する動作例を、図5を参照して説明する。
【0055】
以下で説明する動作例は、例えば、所定の時間毎に起動する。
【0056】
起動判定部142は、起動すると、車両の現在位置が高速道路上であるか否か判定する(S501)。そのために、起動判定部142は、例えば、地図情報テーブル201から、上述の処理で算出された表示候補点の存在するリンクのリンクID211を含むリンク情報203を選択し、選択したリンク情報に含まれる道路種別214が「高速道路」であるか否か判定する。
【0057】
S501の判定の結果、車両の現在位置が高速道路上である場合、起動判定部142は、車両速度が所定閾値以上であるか否か判定する(S502)。
【0058】
S501の判定の結果、車両の現在位置が高速道路上でない場合、又は、S502の判定の結果、車両速度が所定閾値以上である場合、起動判定部142は処理を終了する。
【0059】
S502の判定の結果、車両速度が所定閾値以上でない場合、起動判定部142は、カメラ制御部143にカメラ110の起動を指示する。カメラ制御部143は、その指示に従い、所定コマンドを出力等してカメラ110に撮影開始を指示する。カメラ110は、撮影を開始する(S503)。なお、上述のように、カメラ110は、ここでは、サイドブラインドモニタ用であるので、カメラ110は、所定の角度等となるようにして、路面の白線がフレーム画像に写るようにするとよい。
【0060】
カメラ110は、順次、撮影したフレーム画像をナビゲーションシステム1に入力する。
【0061】
点線検出部144は、入力されたフレーム画像を画像処理して、点線の白線部及び空白部が検出されるか否か判定する(S504)。この画像処理は従来技術と同じであり、具体的な手法な任意であるが、例えば、パターンマッチングにより、路面に描かれた点線を検出するとよい。この詳細については後述する。点線検出部144は、例えば、フレーム画像の入力が開始されてから所定時間内に点線が検出されるか否かにより、点線が検出されるか否か判定してもよい。
【0062】
S504の判定の結果、白線部及び空白部を検出しない場合、点線検出部144は、後述するS508の処理を行なう。
【0063】
S504の判定の結果、白線部及び空白部を検出した場合、パルス数算出部145は、検出した点線のうち、白線部又は空白部の開始位置から、次の白線部又は空白部の開始検出までの間の走行時間「T」を取得する(S505)。
【0064】
ここで、点線検出部144が白線部及び空白部を検出する処理の一例を説明する。
【0065】
上述のように、点線検出部144は、撮影された各画像にパターンマッチング等の処理を行なうことにより点線を検出する。この具体的な例として、例えば、リファレンスパターンが、点線の白線部及び空白部を有するものと、白線部のみを有するものとが考えられる。
【0066】
まず、リファレンスパターンが点線の白線部及び空白部を有する場合の例を説明する。
【0067】
点線検出部144は、例えば、撮影された画像にリファレンスパターンと一致する部位が含まれているか否かにより、白線部及び空白部を検出したか否か判定する。点線検出部144は、連続して撮影された複数の画像のうち、各画像の所定位置に、リファレンスパターンの白線部の端部がある第1の画像を選択する。次に、点線検出部144は、その画像以降に撮影された画像であって、その画像と同じ所定位置に、リファレンスパターンの白線部の端部がある第2の画像を選択する。点線検出部144は、第1の画像が撮影されたときから、第2の画像が撮影されたときまでの間の時間を取得する。なお、ここで、第1の画像と、第2の画像とは、例えば、「n」番目(n≧1の整数)に撮影された画像と「n+1」番目に撮影された画像とでもよく、また、「n」番目に撮影された画像と「n+m」番目(m>1の整数)に撮影された画像とでもよい。この「m」の値は、予め定められた値でもよく、また、車両の走行速度が早いほど小さな値にする等、車両速度に応じて変更してもよい。
【0068】
次に、リファレンスパターンが点線の白線部のみを有する場合の例を説明する。
【0069】
点線検出部144は、まず、撮影された画像にリファレンスパターンと一致する部位が含まれているか否かにより、白線部を検出したか否か判定する。この判定の結果、白線部を検出した場合、点線検出部144は、この白線部に続く空白部を検出する。この処理は特に限定するものではないが、点線検出部144は、例えば、白線部を検出した画像と、その画像以降に撮影された画像との差分画像を取得し、パターンマッチング等により、その差分画像に白線部が存在するか否か判定する。この判定の結果、差分画像に白線部が存在する場合、点線検出部144は、白線部に続く空白部があると判定する。なお、ここで、差分画像を取得する画像は、例えば、「n」番目に撮影された画像と「n+1」番目に撮影された画像とでもよく、また、「n」番目に撮影された画像と「n+m」番目に撮影された画像とでもよい。この「m」の値は、予め定められた値でもよく、また、車両の走行速度が早いほど小さな値にする等、車両速度に応じて変更してもよい。
【0070】
S504の処理において、点線検出部144は、所定時間内に撮影されたフレーム画像の各々に対し上述の画像処理を行い、白線部及び空白部が検出されるか否か判定する。
【0071】
S505の処理において、点線検出部144は、連続して撮影された複数の画像のうち、各画像の所定位置に、リファレンスパターンの白線部の端部がある第1の画像を選択する。次に、点線検出部144は、その画像以降に撮影された画像であって、その画像と同じ所定位置に、ファレンスパターンの白線部の端部がある第2の画像を選択する。点線検出部144は、第1の画像が撮影されたときから、第2の画像が撮影されたときまでの間の時間を取得する。
【0072】
ここで、ある空白部から次の空白部までを走行する間の時間を取得する具体的な例を、図6を参照して説明する。
【0073】
図6に、所定時間毎に連続して撮影されたフレーム画像例の一部を示す。図6の例では、(a)、(b)、(c)、(d)の順で撮影されたものとする。
【0074】
例えば、図6(a)の画像611の場合、点線検出部144は、パターンマッチング等により、位置601の位置において、白線部612と白線部613との存在を検出する。このように、白線部の存在を検出すると、点線検出部144は、次に撮影された画像にて、この白線部に続く空白部を検出する。
【0075】
図6(b)の画像621の場合、点線検出部144は、位置601の位置において、白線部22のみを検出する。この画像621の位置601の位置は、上記画像611の位置601と同じ位置である。図6(b)の場合、点線検出部144は、画像621の位置601において、直前の画像611にて検出された白線部612の位置近傍に白線部622を検出し、直前の画像611にて検出された白線部613の位置近傍に白線部を検出できない。従って、点線検出部144は、画像611で検出した白線部612に続く白線部を検出したと判定する。また、点線検出部144は、画像611で検出した白線部613に続く空白部を検出したと判定する。
【0076】
図6(c)の画像631の場合、点線検出部144は、位置601の位置において、白線部631のみを検出する。この画像631の位置601の位置は、上記画像611、画像621の位置601と同じ位置である。図6(c)の場合、点線検出部144は、画像631の位置601において、直前の画像621にて検出された白線部622の位置近傍に白線部632を検出する。従って、点線検出部144は、画像621で検出した白線部622に続く白線部を検出したと判定する。
【0077】
図6(d)の画像641の場合、点線検出部144は、位置601の位置において、白線部611、白線部642を検出する。この画像641の位置601の位置は、上記画像611、画像621、631の位置601と同じ位置である。図6(d)の場合、点線検出部144は、画像641の位置601において、直前の画像631にて検出された白線部632の位置近傍に白線部642を検出し、直前の画像631にて検出されていない白線部643を検出する。ここで、それまでの各画像に対する判定において、以前の画像(画像611)にて検出されていた白線部(白線613)に続く空白部をそれ以後の画像(画像622)において検出しており、かつ、今回新たに検出された白線部(643)が、先の画像で空白部の検出された白線部(白線613)の位置近傍である。従って、点線検出部144は、画像641の白線部643は、画像611の白線部613の空白部に続く白線部である、即ち、車線を示す点線の一部であると判定する。
【0078】
このように、白線部及びその白線部に続く空白部を検出すると、パルス数算出部145は、空白部を検出した画像を撮影した時刻と、その空白部に続く白線部を検出した画像を撮影した時刻との差分から、距離の明確なものの間を走行する時間「T」を取得する。次に、パルス数算出部145は、距離と、その距離を走行するのに要した時間と、上述の距離係数「R」等とから、擬似パルス数を算出する(S506)。具体的には、例えば、図6の例では、パルス数算出部145は、画像611を撮影した日時と、画像641を撮影した日時との差分から、距離20m(白線部8m+空白部12m)を走行するのに要した時間「T」を算出する。次に、パルス数算出部145は、距離20mを、時間「T」、距離係数「R」で割り、さらに、例えば0.1秒等の所定時間を掛けることにより、擬似パルス数を算出する。
【0079】
図5において、パルス数提供部146は、上述のS504の処理で取得した擬似パルス数を、カウンタ122に与える(S507)。カウンタ122は、与えられた擬似パルスを、自身のカウントしたパルス数として出力する。現在位置算出部141は、カウンタ122から出力された値を用いて、現在位置を算出する。なお、パルス数提供部146は、擬似パルス数をカウンタ122に与えた場合、現在位置算出部141に、現在位置の算出を指示してもよい。
【0080】
パルス数提供部146は、カメラ制御部143に、撮影終了を指示する。カメラ制御部143は、その指示に従い、カメラ110に対し所定のコマンドを出力等して、撮影を終了させる(S508)。
【0081】
このように、低速走行時等でも、距離の明確なものの間を走行する時間から、正確なパルス数を取得することが可能となる。取得したパルス数(擬似パルス数)をカウンタに与えるので、従来技術の現在位置算出処理のアルゴリズム等を変更等することなく用いることが可能となる。
<第2の実施形態>
第2の実施形態は、擬似パルスを取得するために、タイヤホイールの回転数から直接パルス数を取得するものである。本実施形態では、タイヤホイールの回転数を、車両に設置されたカメラにより撮影された画像から取得するものとする。
【0082】
以下、第2の実施形態では、上述の第1の実施形態と同じ構成のものには同じ符号を付与して説明を省略し、異なる構成のみ詳細に説明する。
【0083】
図7を参照し、第2の実施形態のナビゲーションシステム701の構成例を説明する。ナビゲーションシステム701は、車両(図示略)に搭載されている。図7において、ナビゲーションシステム701のCPU125は、ROM124内のプログラムを実行することにより、現在位置算出部141、起動判定部142、カメラ制御部143、回転数取得部711、パルス数算出部712、パルス数提供部713等を実現する。現在位置算出部141、起動判定部142、カメラ制御部143は、上述の第1の実施形態と同じである。回転数取得部711は、カメラ110により撮影された映像から、例えば0.1秒毎等の所定時間毎のタイヤホイールの回転数を検出する。パルス数算出部712は、擬似パルス数を算出する。パルス数提供部713は、回転数取得部711により算出された擬似パルス数をカウンタ122に与える。
【0084】
次に、動作例を説明する。
【0085】
現在位置算出部141が現在位置を算出する動作例は、上述の第1の実施形態と同じであるので省略する。
【0086】
次に、擬似パルス数を取得して提供する動作例を、図8を参照して説明する。
【0087】
以下で説明する動作例は、例えば、所定の時間毎に起動する。
【0088】
起動判定部142は、起動すると、車両速度が所定閾値以上であるか否か判定する(S801)。
【0089】
S801の判定の結果、車両速度が所定閾値以上である場合、起動判定部142は処理を終了する。
【0090】
S801の判定の結果、車両速度が所定閾値以上でない場合、起動判定部142は、カメラ制御部143にカメラ110の起動を指示する。カメラ制御部143は、その指示に従い、所定コマンドを出力等してカメラ110に撮影開始を指示する。カメラ110は、撮影を開始する(S802)。
【0091】
カメラ110は、撮影した画像をナビゲーションシステム701に入力する。
【0092】
回転数取得部711は、入力された画像を画像処理して、所定時間内のタイヤホイールの回転数を算出する(S803)。この画像処理は従来技術と同じであり、具体的な手法な任意であるが、例えば、パターンマッチングにより、タイヤホイールのボルト穴やスポーク等の目標となる任意の点を検出する。回転数取得部711は、このような処理を、カメラ110から順次入力される各フレーム画像に対して行い、あるフレーム画像(以下、第1のフレーム画像という)で検出された目標となる点の位置とタイヤホイールの中心点とからなる線分と、以降に撮影されたフレーム画像(以下、第2のフレーム画像という)で検出された目標となる点の位置とタイヤホイールの中心点とからなる線分との角度を算出する。さらに、回転数取得部711は、第1のフレーム画像の撮影された時刻と、第2のフレーム画像の撮影された時刻との差分から、上記処理で算出した角度となるまでの時間を算出し、この角度と、時間とから、タイヤホイールの所定時間内の回転数「St」を算出する。
【0093】
パルス数算出部712は、上述のS803の処理で取得したタイヤホイールの回転数から、擬似パルス数を算出する(S804)。具体的には、例えば、上述の現在位置算出において0.1秒毎にカウンタ122のカウントしたパルス数を取得し、S803の処理で時間「St」の間のタイヤホイール回転数を取得する場合、パルス数算出部712は、時間「St」を0.1秒で割るとよい。パルス数提供部713は、S804で算出した擬似パルス数をカウンタ122に与える(S805)。カウンタ122は、与えられた擬似パルスを、自身のカウントしたパルス数として出力する。現在位置算出部141は、カウンタ122から出力された値を用いて、現在位置を算出する。なお、パルス数提供部713は、擬似パルス数をカウンタ122に与えた場合、現在位置算出部141に、現在位置の算出を指示してもよい。
【0094】
パルス数提供部713は、カメラ制御部143に、撮影終了を指示する。カメラ制御部143は、その指示に従い、カメラ110に対し所定のコマンドを出力等して、撮影を終了させる(S806)。
【0095】
これにより、低速走行時等でも正確なパルス数を取得することが可能となる。取得したパルス数(擬似パルス数)をカウンタに与えるので、従来技術の現在位置算出処理のアルゴリズム等を変更等することなく用いることが可能となる。
【0096】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0097】
例えば、上述の第1の実施形態では、白線の、ある空白部から次の空白部までの間のパルス数を取得するものとしたが、これに限られる分けではなく、ある白線部から次の白線部までの間のパルス数を取得しても良い。また、1つの空白部間を走行する間のパルス数、又は、1つの白線部を走行する間のパルス数を取得しても良い。さらに、ある空白部から複数後の空白部までの間のパルス数を取得しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の、第1の実施形態のナビゲーションシステムの構成例を示す図である。
【図2】同実施形態において、地図情報の一例を示す図である。
【図3】同実施形態において、現在位置を算出する動作例を示す図である。
【図4】同実施形態において、現在位置を算出する動作例を示す図である。
【図5】同実施形態において、擬似パルスを算出して提供する動作例を示す図である。
【図6】同実施形態において、点線を検出する動作例を説明するための図である。
【図7】第2の実施形態のナビゲーションシステムの構成例を示す図である。
【図8】同実施形態において、擬似パルスを算出して提供する動作例を示す図である。
【符号の説明】
【0099】
1:ナビゲーションシステム、101:角速度センサ、102:車速センサ、103:演算部、104:GPS受信装置、105:記録装置、106:入力装置、107:ディスプレイ、108:音声出力装置、109:通信インタフェース、110:カメラ、121:AD変換器、122:カウンタ、123:RAM、124:ROM、125:CPU、141:現在位置算出部、142:起動判定部、143:カメラ制御部、144:点線検出部、145:パルス数算出部、146:パルス数提供部、701:ナビゲーションシステム、711:回転数取得部、712:パルス数算出部、713:パルス数提供部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の回転に伴い移動する車両に搭載され、車輪の回転数と、設定された距離係数とに応じて車両の走行距離を算出する車載装置であって、
前記車両の走行する道路の路面を撮影するカメラと、
前記車両が高速道路を走行しており、かつ、該車両の走行速度が所定値以下である場合、前記カメラにより取得された画像データから、該高速道路上の路面に描かれた点線の白線部及び空白部のうち少なくとも一方を走行する間の時間から、前記車軸の回転数を算出する回転数取得手段と、を有し、
前記算出された車軸の回転数から、前記車両の走行距離を算出すること
を特徴とする車載装置。
【請求項2】
車輪の回転に伴い移動する車両に搭載され、車輪の回転数と、設定された距離係数とに応じて車両の走行距離を算出する車載装置であって、
前記車両のタイヤホイールを撮影するカメラと、
前記車両の走行速度が所定値以下である場合、前記カメラにより取得された画像データから、所定時間内の前記車両の車軸の回転数を算出する回転数取得手段と、を有し、
前記算出した車輪の回転数により、前記車両の走行距離を算出すること
を特徴とする車載装置。
【請求項3】
車輪の回転に伴い移動する車両に搭載される車載装置であって、
前記車軸の回転数をカウントするカウンタと、
前記カウントされた回転数と、設定された距離係数とから、前記車両の走行距離を算出する走行距離算出手段と、
前記車両の走行する道路の路面を撮影するカメラと、
前記車両が高速道路を走行しており、かつ、該車両の走行速度が所定値以下である場合、前記カメラにより取得された画像データから、該高速道路上の路面に描かれた点線の白線部及び空白部のうち少なくとも一方を走行する間の時間から、前記車軸の回転数を算出する回転数取得手段と、を有し、
前記算出された車軸の回転数を前記カウンタに出力し、該回転数を前記カウンタによりカウントされた回転数とすること
を特徴とする車載装置。
【請求項4】
車輪の回転に伴い移動する車両に搭載される車載装置であって、
前記車軸の回転数をカウントするカウンタと、
前記カウントされた回転数と、設定された距離係数とから、前記車両の走行距離を算出する走行距離算出手段と、
前記車両のタイヤホイールを撮影するカメラと、
前記車両の走行速度が所定値以下である場合、前記カメラにより取得された画像データから、所定時間内の前記車両の車軸の回転数を算出する回転数取得手段と、を有し、
前記算出された車軸の回転数を前記カウンタに出力し、該回転数を前記カウンタによりカウントされた回転数とすること
を特徴とする車載装置。
【請求項5】
車輪の回転に伴い移動する車両に搭載される車載装置であって、
前記車軸の回転に伴い発生するパルス数をカウントするカウンタと、
前記カウントされたパルス数と、設定された距離係数とから、前記車両の走行距離を算出する走行距離算出手段と、
前記車両の走行する道路の路面を撮影するカメラと、
前記車両が高速道路を走行しており、かつ、該車両の走行速度が所定値以下である場合、前記カメラにより取得された画像データから、該高速道路上の路面に描かれた点線の白線部及び空白部のうち少なくとも一方を含む所定距離を走行する間の時間を取得し、前記所定距離と、前記取得した時間と、前記距離係数とから、擬似パルス数を算出する擬似パルス数取得手段と、
前記算出された擬似パルス数を、前記カウンタに出力するパルス数提供手段と、を有し、
前記カウンタは、入力された擬似パルス数を、自身がカウントしたパルス数とすること
を特徴とする車載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−101987(P2008−101987A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283911(P2006−283911)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】