説明

車載通信装置

【課題】運転者が車載通信装置のからの情報を必要としない場合、車載通信装置の消費電力を低減する。
【解決手段】車載通信装置205は、光ビーコンの通信エリア206の中であるか否かを判定する。光ビーコンの通信エリアの中であると判定された場合、カーナビゲーションが現在経路誘導を行っているか否かを判定する。経路誘導を行っている状態の場合、車載通信装置はアップリンク処理204を行う。アップリンクを光ビーコン路上機202に送信することにより、光ビーコン路上機はダウンリンク203を経路誘導に有効な情報に切り替える。車載通信装置は、切り替わったダウンリンクデータの受信処理を行い、受信した情報をカーナビ制御部に伝えるナビへの送信処理を行う。カーナビゲーションが経路誘導を行っていない状態の場合、車載通信装置はアップリンク処理を行わない。従って、光ビーコン路上機ではデータ切り替えは行われない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通情報を車両に伝達する交通情報システムに用いられる車載通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から社会問題の1つとなっている交通渋滞の解決手段の一つとして、VICS(Vehicle Information and Communication System)がある。VICSは、1996年4月に実用化された情報通信システムであり、路上に設置された電波ビーコン路上機、光ビーコン路上機及びFM多重放送の複数の通信メディアにより、渋滞情報、緊急情報等を車両に設置した車載通信装置に伝達するものである。この車載通信装置は、カーナビゲーションシステムに接続され、交通情報を、文字、図象、音声等を用いて運転者に伝える。運転者は、その情報を参照して、目的地まで最適な経路を知ることにより、安全かつ快適なドライブを行うことが可能となる。
【0003】
近年、カーナビゲーションシステムが高機能化しており、上記VICSを始め、ETCS(Electric Toll Collection System)等の接続可能な外部機器が増えてきている。
【0004】
その一方で、カーナビゲーションシステムにおいては、外部機器の増加により全体の消費電力が増え、車両に設けられているバッテリーの消費電力が増加するため、カーナビゲーションシステムの省電力化が望まれている。
【0005】
尚、VICSにおいては、複数メディアでのサービスが同時に常にサービスされていないことを利用し、サービス時間や受信可能エリアで一部メディアの機能のみを送受信状態にして、省電力化を図ることが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平9−116447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、受信可能エリアやサービス時間帯によって特定メディアの回路の動作状態を制御する方法の場合、運転者が情報を必要としないような状況でも受信可能エリアやサービス時間帯にいれば送受信動作を行うため、余分な電力消費が生じるという問題があった。特に、製品の小型化の要請により、発熱量の低減が必要になっていた。
【0008】
本発明の目的は、受信可能エリアやサービス時間帯などの情報を知らなくても、運転者が情報を必要としていない状況においては、車載通信装置の低消費電力化を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、車載装置の動作状態を車載通信装置に伝え、その情報を元に車載通信装置の回路やソフトウェアの電力供給に関する制御を行い車載通信装置の消費電力を低減することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車載通信装置は、運転者がカーナビゲーションの経路誘導機能を動作させていないとき、光ビーコン路上機への送信を停止でき、また音楽表示等の地図画面以外でカーナビゲーションを使用している場合に車載通信装置への電力を停止する事ができる。これにより、受信可能エリアやサービス時間帯などの情報が分からなくても、運転者が情報を必要としていない状況において、車載通信装置の余分な電力消費を節減する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態による車載通信装置について以下に図面を参照しつつ説明を行う。本実施の形態による車載通信装置は、その電力消費を可能な限り節減するという目的を、運転者のカーナビゲーションの画面操作を反映したカーナビゲーションの動作状態を利用することにより実現した。
【0012】
まず、本発明の第1の実施の形態による車載通信装置について図面を参照しつつ説明を行う。まず、本発明の第1の実施の形態による車載通信装置について図面を参照しつつ説明を行う。図1は、本実施の形態による車載通信装置のシステム構成例を示す機能ブロック図である。図1に示すように、本実施の形態による車載通信装置は、光信号を受光する受光部1と、受光部1に入力された信号を増幅・波形整形する光信号受信部2と、光信号を発光する発光部3と、発光部3を駆動する光信号送信部4と、を有する光ビーコン部100と、電波ビーコン信号を受信する電波アンテナ5と、電波アンテナ5に受信された信号を増幅・検波・復調する電波信号受信部6と、を有する電波ビーコン部101と、光ビーコン部100及び電波ビーコン部101の信号を受け入れ交通情報を復元(デコード)したり、送信する情報を光信号データに変換(エンコード)したり、カーナビゲーションと通信・制御データのやり取りを行うビーコン信号処理部7と、車両の位置を計算し経路誘導を行うカーナビ制御部11と、運転者がカーナビ制御部11への動作指示を行うための操作部10と、地図・位置・交通情報等を運転者に伝達する表示・音声部12と、を有する。さらに、カーナビ制御部11は、カーナビの情報を報知するカーナビ情報通知手段11aを有している。尚、操作部10は、リモコンなどの別筐体で無線や赤外線でカーナビ制御部11と接続されていてもよく、タッチパネルのような操作部10と表示・音声部12とが一体化した形態でもよい。
【0013】
次に、本実施の形態による光ビーコンの通信方法の概略について説明する。図2は、本実施の形態による光ビーコンの通信方法の概略を示す図である。図2に示すように、光ビーコン路上機202は通信エリア206を有している。車両201が路上を走行することにより通信エリア206に入ると、車両201と光ビーコン路上機202との通信が開始される。車両201が通信エリア206に入ったか否かは、通信エリア206内において送出されている交通情報などのダウンリンク情報203を車載情報装置205が受信するか否かより判断し認識することができる。通信エリア206内に入った車載情報装置205は、光ビーコン路上機202へ車両201の車種等の固有情報をアップリンク204する。
【0014】
車載情報装置205からのアップリンク204を受信した光ビーコン路上機202は、情報内容の一部を切り替える。これにより、車両201の車載情報装置205からのアップリンク204の情報内容に応じてダウンリンク203を切り替え、情報サービスの変更が行うことが可能となる。
【0015】
図3は、本実施の形態による光ビーコンのデータ構成例を示す図である。図1、図2も適宜参照する。図3に示すように、本実施の形態による光ビーコンの情報切り替えは、車載情報装置205からのアップリンク204受信前の送信データ301をアップリンク204受信後の送信データ302に置き換える形で行う。図3の例では情報の一部となっているが、全ての情報を置き換えてもよい。より具体的には、例えば図3に示すように、地図表示による渋滞表示を行うための渋滞リンク情報301を、渋滞表示に加え経路誘導の計算に使用するための旅行時間も入った渋滞旅行時間リンク情報302に置き換える。このようなダウンリンク203の切り替えでは、カーナビ制御部11(図1)は経路誘導を行わないが、渋滞表示は表示・音声部12(図1)で行う場合、アップリンク204受信前の渋滞リンク情報301の受信のみで処理可能であるため、車載通信装置205からのアップリンク204は任意である。
【0016】
一方、運転者が目的地までの経路誘導を必要とする場合は、運転者が操作部10を用いてカーナビ制御部11に目的地を設定することにより指示を行う。従って、運転者が経路誘導を必要としているか否かをカーナビ制御部11が知ることができ、その情報をビーコン信号処理部7に伝えることにより経路誘導中か否かによるアップリンク204の制御を行うことが出来る。
【0017】
以上のように、運転者が経路誘導を必要としていないときには、車両201からのアップリンク204動作を中止することができるため、アップリンク204動作による消費電力の削減が可能となる。
【0018】
次に、図4を参照しつつ処理の詳細について説明を行う。図4は、アップリンクの動作の流れを示すフローチャート図である。図1から図3までも参照して説明する。図4に示すように、まず、処理を開始すると(START)、車載通信装置205は、光ビーコンの通信エリア206の中であるか否かを判定する(ステップS11)。これは光ビーコンからのダウンリンク203を受信したか否かにより判定が可能である。また、一定時間に数回受信することを受信確認の条件とすることにより、通信エリア206であるか否かに関する判定の信頼性を一層向上することができる。ステップS11において、光ビーコンの通信エリア206の中であると判定された場合、ステップS12において、カーナビゲーションが現在経路誘導を行っているか否かを判定する。操作部10を介してカーナビ制御部11に運転者が経路誘導の指示を行ったか否かを記憶しておき、その記憶に基づく情報をビーコン信号処理部7にデータとして伝達することにより判定を行うことができる。カーナビゲーションが経路誘導を行っている状態の場合は、車載通信装置205はアップリンク処理(ステップS13)を行う。アップリンク204を光ビーコン路上機202に送信することにより、光ビーコン路上機202はダウンリンク203を図3に示すように渋滞旅行時間リンク情報を含んだ経路誘導に有効な情報に切り替える。車載通信装置205は、切り替わったダウンリンクデータ302の受信処理(ステップS14)を行い、受信した情報をカーナビ制御部11に伝えるナビへの送信処理(ステップS15)を行う。カーナビゲーションが経路誘導を行っていない状態の場合は(ステップS12のN)、車載通信装置205はアップリンク処理(ステップS13)を行わない。従って、光ビーコン路上機202ではデータ切り替えは行われない。車載通信装置205は経路誘導に使用しない情報が含まれる切り替え前のダウンリンクデータ301の受信処理(ステップS14)を行い、受信した情報をカーナビ制御部11に伝えるナビへの送信処理(ステップS15)を行う。
【0019】
以上により処理を終了する(END)。受信情報をビーコン信号処理部7から受信したカーナビ制御部11は、情報を表示・音声部12を通じて運転者に伝える。
【0020】
このようにして、運転者が経路誘導を指示していない場合に、アップリンク204動作をしないという制御を行うことにより、車載通信装置205の消費電力の削減が可能となる。
【0021】
尚、上記の例では、情報を必要としないと判断された場合にアップリンク処理は行わないが受信自体は行っている例について説明したが、情報を必要としないと判断された場合に、受信自体を停止する処理を行うようにしても良い。この場合には、図4のステップS12において、Nの場合に、処理を終了することになる。
【実施例1】
【0022】
次に、本発明の第2実施例による車載通信装置について図面を参照しつつ説明を行う。図5において、図1と同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。図5に示す車載通信装置は、光信号を受光する受光部1と、受光部1に入力された信号を増幅・波形整形する光信号受信部2と、光信号を発光する発光部3と、発光部3を駆動する光信号送信部4とを有する光ビーコン部100と、電波ビーコン信号を受信する電波アンテナ5と、電波アンテナ5に受信された信号を増幅・検波・復調する電波信号受信部6と、を有する電波ビーコン部101と、光ビーコン部100および電波ビーコン部101の信号を受け入れ、交通情報を復元(デコード)したり、送信する情報を光信号データに変換(エンコード)したり、カーナビゲーションと通信・制御データのやり取りを行うビーコン信号処理部7と、車両201(図2)の位置を計算し経路誘導を行うカーナビゲーションの機能と音楽やTV、DVDの鑑賞を楽しむ為のAV(オーディオ・ヴィジュアル)機能を有したカーナビ/AV制御部13と、運転者がカーナビ/AV制御部13への動作指示を行う操作部10と、地図・位置・交通情報に加え音楽情報、TV情報等を運転者に伝達する表示・音声部12と、を有する。
【0023】
本実施例による車載通信装置は、運転者又は同乗者が音楽鑑賞を行う場合、操作部10を通じてカーナビ/AV制御部13に音楽再生の指示を行い、指示に応じた曲名等のナビゲーション機能以外の情報表示を表示・音声部12において行う。さらに、カーナビ/AV制御部13は、カーナビ/AVの情報を報知するカーナビ/AV情報通知手段13aを有している。
【0024】
運転者が、表示・音声部12において、ナビゲーション機能以外を使用している旨をカーナビ/AV制御部13で判断できる。従って、その情報をカーナビ/AV情報通知手段13aによりビーコン信号処理部7に伝えることで、受光部1と、光信号受信部2と、発光部3と、光信号送信部4と、電波アンテナ5と、電波信号受信部6と、の電源供給の一部、又は全てを停止することができ、車載通信装置205の消費電力を大幅に削減することが可能となる。
【0025】
以上、本実施例による車載通信装置は、運転者がカーナビゲーションの経路誘導機能を動作させていないとき、光ビーコン路上機への送信を停止でき、また音楽表示等の地図画面以外でカーナビゲーションを使用している場合に車載通信装置への電力を停止することができる。これにより、受信可能エリアやサービス時間帯などの情報が分からなくても、運転者が情報を必要としていない状況において、車載通信装置の余分な電力消費を低減することにより省エネルギー化を図ることができるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、カーナビゲーション装置を有する車両の車載通信装置に利用できる。カーナビゲーションの動作状態を利用して消費電力の低減の制御を行うことは、車載通信装置のみならず、ディスプレイ等、車両内の種々の接続機器に広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態による車載通信装置の一構成例を示す機能ブロック図である(実施例1)。
【図2】光ビーコンの通信方式を示す図である。
【図3】光ビーコンのデータ切り替えの例を示す図である。
【図4】車載通信装置のアップリンクの動作の流れを示すフローチャート図である。
【図5】本発明の実施の形態による車載通信装置の一構成例を示す機能ブロック図である(実施例2)。
【符号の説明】
【0028】
1…受光部、2…光信号受光部、3…発光部、4…光信号送信部、5…電波アンテナ、6…電波信号受光部、7…ビーコン信号処理部、10…操作部、
11…カーナビ制御部、
12…表示・音声部、
13…カーナビ/AV制御部、
100…光ビーコン部、101…電波ビーコン部、201…車両、202…光ビーコン路上機、203…ダウンリンク、204…アップリンク、301…アップリンク受信前の送信データ、302…アップリンク受信後の送信データ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車外からの情報を受信する受信部と、車載機器との接続部と、を備える車載通信装置であって、
前記車載機器の動作状態を前記接続部から取得し、前記車載機器が前記車載通信装置からの情報を必要としていない状態にあると判断された場合に、前記受信部への電力供給を制限する制御を行うことを特徴とする車載通信装置。
【請求項2】
前記制御は、受信部における受信動作を間欠的に停止する制御を含むことを特徴とする請求項1に記載の車載通信装置。
【請求項3】
前記車載機器が前記車載通信装置からの情報を必要としていない場合に出力される前記車載機器からの指示を前記接続部から取得し、前記受信部における受信部動作への電力供給を制限する制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の車載通信装置。
【請求項4】
さらに、車外に情報を送信する送信部を備え、前記車載機器が前記車載通信装置からの情報を必要としていないと判断した場合、前記送信部及び前記受信部における送受信部への電力供給を制限する制御を行うことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の車載通信装置。
【請求項5】
前記車載機器が前記車載通信装置からの情報を必要としていないと判断した場合、前記送信部及び前記受信部への電力供給を間欠的に停止する制御を行うことを特徴とする請求項4に記載の車載通信装置。
【請求項6】
前記車載機器が前記車載通信装置からの情報を必要としていない場合に、前記車載機器からの指示を前記接続部から取得し、前記送信部及び前記受信部への電力供給を制限する制御を行うことを有することを特徴とする請求項4に記載の車載通信装置。
【請求項7】
車外からの情報を受信する受信部と、車載機器との接続部と、を備える車載通信装置との通信に基づいて動作するカーナビゲーション装置であって、
前記接続部を介して前記車載通信装置に自己の動作状態を伝達する情報通知手段を有していることを特徴とするカーナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−203330(P2006−203330A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−10388(P2005−10388)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】