説明

通信装置、発振器、並びに周波数シンセサイザ

【課題】CDMAやOFDMといった大きな包絡線変動を伴う変調方式を使用することができ、送信機に線形性と高効率を両立するLINC送信機を提供する。
【解決手段】変調データの周波数変換を行なうPLLにおいて2ポイント変調方式を採用することで、発振器に入力される変調データはPLLにとって外乱とは見えなくなり、PLLのループ帯域幅に制限されない広帯域変調を実現することが可能となる。また、発振器の積分効果により、サンプリング周波数付近におけるレプリカを、アナログ・スムージング・フィルタを追加することなく大幅に抑制することができ、回路のリコンフィギャラビリティを高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばデジタル無線などの高度化した無線通信や放送に適用される通信装置、発振器、並びに周波数シンセサイザに係り、特に、CDMAやOFDMといった大きな包絡線変動を伴う変調方式を使用する通信装置、発振器、並びに周波数シンセサイザに関する。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、送信機に線形性と高効率を両立するLINC(Linear Amplification using Non−linear Components)増幅器を用いた通信装置、発振器、並びに周波数シンセサイザに係り、特に、広帯域変調信号を扱うとともに帯域外へのスプリアス放射を抑制した通信装置、発振器、並びに周波数シンセサイザに関する。
【背景技術】
【0003】
無線技術は、地上放送、地上マイクロ波通信、衛星通信、衛星放送など大容量基幹回線から、移動体通信などのアクセス回線に至るまで幅広い役割を果たしている。無線送信機は、送信信号を高周波(RF)帯にアップコンバートし、さらに電力増幅してアンテナから空中に放出する。最近では、無線通信や放送のデジタル化などの高度化に伴って、CDMAやOFDMなどの周波数利用効率の高い変調方式が広く適用されている。
【0004】
ここで、CDMA(Code Division Multiple Access:符号分割多重接続)方式は、デジタル信号を高速の疑似ランダムの拡散符号で変調し、周波数拡散して送信するが、ユーザ毎に異なる拡散符号を与えることで1つの周波数チャネルを複数のユーザで共有することができる。
【0005】
また、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)変調方式では、シンボル周期毎にシリアル/パラレル変換して出力される複数のデータを相互に直交する各サブキャリアに割り当てて逆FFTを行なうことで周波数軸での各サブキャリアを時間軸の信号に変換してデータ伝送される。また、受信側では、この逆の操作、すなわちFFT(Fast Fourier Transform)を行なって時間軸の信号を周波数軸の信号に変換して各サブキャリアについてそれぞれの変調方式に対応した復調を行ない、パラレル/シリアル変換して元のシリアル信号で送られた情報を再生する。ここで、サブキャリアが互いに直交するとは、任意のサブキャリアのスペクトラムのピーク点が常に他のサブキャリアのスペクトラムのゼロ点と一致し、互いにクロストークがないことを意味する。したがって、送信データを周波数が直交する複数のキャリアに分配して伝送するので、各キャリアの帯域が狭帯域となり、周波数利用効率が非常に高く、周波数選択性フェージング妨害に強いという特徴がある。OFDM伝送方式は、無線LAN(Local Area Network)、地上波デジタル放送、第4世代移動通信、電力線搬送通信などのさまざまな広帯域デジタル通信システムに適用されている。
【0006】
ここで、CDMAやOFDMは、大きな包絡線変動を伴う変調方式である。このような変調信号を扱う増幅器には、非常に高い線形性が要求される。何故ならば、包絡線変動が大きい(すなわち、ピーク・ファクタが大きい)信号が増幅されると、包絡線の強度が大きくなるピーク部分で、増幅器の非線形性を原因とする信号の歪みが発生してしまうからである。通常、高い線形性を得るには、増幅器の動作点を飽和状態から十分にバックオフさせて使用する。このため、本来出力すべきRF電力以外の余分な電力が熱として消費され、増幅器の電力効率は著しく低下するという問題がある。携帯電話などに代表される移動無線通信端末においては、電力効率の低下は電池持続時間の低下に直結し、ユーザの利便性を損ねる。また、移動体、固定を問わず、消費電力の削減は環境面からも配慮されるべき重要な課題である。
【0007】
LINC(Linear Amplification using Non−linear Components)は、電力合成により線形変調波を高効率に増幅して、線形性と高効率を両立するために提案されている1つの方法である(例えば、特許文献1を参照のこと)。LINCは、2つの定振幅ベクトルの合成によって複素平面上の任意のシンボル点を表現する考え方に基づくものであり、増幅器を飽和電力で動作させて、当該増幅器の消費電力を低減する。
【0008】
図9には、一般的なLINC送信機の構成を示している。信号分解手段902は、線形振幅信号を少なくとも2つの定振幅角度変調信号成分に分解する。図示の例では、信号分解手段902は入力された線形変調信号901を2つの定振幅信号成分905a、905bに分解する。増幅器903a及び903bは、定振幅信号905a、905bをGの利得にてそれぞれ増幅する。そして、合成手段904は、各増幅器903a、903bの出力信号906a、906bを合成して、線形変調信号907を出力する。但し、増幅器903a及び903bに線形性は要求されず、C級、F級などの非線形で高効率の電力増幅器を使用することができる。
【0009】
図示のLINC送信機の動作について、図10を参照しながら説明する。信号分解手段902に入力される一般的な変調信号s(t)は、下式(1)のように表すことができる。但し、a(t)は時間変動を伴う振幅成分、ωcはキャリア周波数、φ(t)は変調による位相成分である。
【0010】
【数1】

【0011】
信号分解手段902は、下式(2)〜(4)で表される定振幅信号s1(t)及びs2(t)を生成する。但し、Amaxは、想定する最大振幅であり、扱う信号の種類などに応じてあらかじめ適切な値に設定する。
【0012】
【数2】

【0013】
【数3】

【0014】
【数4】

【0015】
これら定振幅信号s1(t)及びs2(t)を、利得Gを持つ各増幅器903a及び903bによりそれぞれ増幅した後、合成手段904により合成することで、G・s(t)が出力として得られる。
【0016】
各変調信号成分906a、906bは定振幅であるから、各幅器903a及び903bの出力電圧は一定値を持つ。そして、LINC増幅器の出力電力は、振幅成分{cosθ(t)}2を持ち、θ(t)=0度のときにピーク値を持つ。したがって、2系統の定振幅信号を高効率で非線形な増幅器903a及び903bで増幅した後に合成することで、線形に増幅することができる。
【0017】
なお、ここでは入力信号901はRFキャリア周波数に変調が施された信号として説明したが、入力信号901がベースバンド信号である場合には、信号分解手段902の出力する定振幅信号905a、905bを、変調器(図示しない)によってRF周波数帯にアップコンバートした上で、各増幅器903a、903bに入力する。変調器としては、直交変調器や、PLL(Phase Locked Loop)などを用いた角度変調器を使用することができる。また、信号分解手段902を例えばDSP(Digital Signal Processor)などのデジタル信号処理回路として実装する場合には、さらにD/A変換器が必要となる場合がある。
【0018】
例えば、第1の振幅データが所定値よりも大きい場合には、所定値以上の第1のデータ値を有する第2の振幅データを生成し、第1のデータ値を有する第2の振幅データを含んだ第1及び第2の出力信号に入力信号を分解して新たな位相データを生成するようにして、ピーク・ファクタが大きな信号を、歪みを発生させることなく且つ高い電力効率で増幅することを可能としたデータ変換装置について提案がなされている(例えば、特許文献2を参照のこと)。
【0019】
本発明者らは、上述したような従来のLINC送信機には幾つかの課題があると考えている。
【0020】
第1に、D/A変換器(例えば、信号分解手段902をデジタル信号処理回路で実装した場合)と、ベースバンド信号をRF周波数帯にアップコンバートする直交変調器を使用する場合、D/A変換器の出力するサンプリング周波数付近のレプリカ(エイリアス)が問題となる。このような問題を回避するために、D/A変換器の出力にアナログ・スムージング・フィルタ(再構成フィルタ)を挿入することが一般的であるが、これは回路規模の増大につながる。また、近年急速に要望が高まっている、異なる複数の無線システム間の回路共通化を図る(若しくは、リコンフィギャラビリティを高める)上でも妨げとなる。サンプリング周波数を大幅に上げれば、スムージング・フィルタを不要とできる可能性があるが、高速に動作する回路ブロックが増えることは好ましくない。
【0021】
また、第2に、ベースバンド信号をRF周波数帯にアップコンバートするための角度変調器にPLLを用いた場合には、扱う変調信号の帯域幅がPLLのループ帯域幅よりも狭い必要がある。言い換えれば、広帯域のPLLが必要となる。LINC送信機の場合、定振幅信号の帯域幅は元の線形変調信号の帯域幅よりも大幅に広いため、大きな困難を伴う。
【0022】
また、第3に、ベースバンド信号をRF周波数帯にアップコンバートするための角度変調器にPLLを用いた場合には、複素平面上の原点付近に存在するサンプル点が正確に再生されないことがあり、その結果、合成後のスペクトラムに歪みが生ずるという問題がある。帯域外放射に関する規格が厳格なシステムに適用する際には、この問題は深刻となりかねない。
【0023】
【特許文献1】特開2000−349575号公報
【特許文献2】特開2005−39725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、CDMAやOFDMといった大きな包絡線変動を伴う変調方式を使用することができ、送信機に線形性と高効率を両立するLINC増幅器を用いた、優れた通信装置、発振器、並びに周波数シンセサイザを提供することにある。
【0025】
本発明のさらなる目的は、広帯域変調信号を扱うことが可能で、帯域外へのスプリアス放射が少なく、リコンフィギャラビリティに優れた通信装置、発振器、並びに周波数シンセサイザを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、上記課題を参酌してなされたものであり、その第1の側面は、
第1の周波数帯の線形変調信号を入力して少なくとも2つの定振幅角度信号成分に分解する信号分解手段と、
前記の第1の周波数帯の各定振幅角度信号成分をそれぞれ第2の周波数帯に周波数変換する、少なくとも2つの周波数変換手段と、
前記の周波数変換された各定振幅角度信号成分をそれぞれ電力増幅する、少なくとも2つの増幅器と、
前記の増幅された各定振幅角度信号成分同士を合成する合成手段とを送信機に備えた通信装置である。
【0027】
また、本発明の第2の側面は、周波数シンセサイザの一構成要素となる発振器であって、
固定小数点数のデジタル周波数制御信号を受け入れる入力端子と、
該入力したデジタル周波数制御信号をフィルタリングするデジタル・フィルタと、
前記デジタル・フィルタを通過した後のデジタル周波数制御信号の整数部データに基づき制御され発振器の共振周波数を離散的に変化させる第1の共振周波数可変手段と、
前記デジタル周波数制御信号の小数部データを受けて該小数部データと同一の平均値を有する整数データ列を発生するディザ処理部と、
前記ディザ処理部によって制御される第2の共振周波数可変手段と、
発振を持続するための能動回路と、
を具備することを特徴とする発振器である。
【0028】
また、本発明の第3の側面は、位相比較器と、低域通過フィルタと、本発明の第2の側面に係る発振器とをループ状に接続し、所定のキャリア周波数を生成するPLLで構成されることを特徴とする周波数シンセサイザである。
【0029】
高度化された無線通信や放送ではCDMAやOFDMなどの大きな包絡線変動を伴う変調方式が採用され、このような変調信号を扱う増幅器には非常に高い線形性が求められる。消費電力を増大させることなく線形性を実現する増幅器を構成する方法として、電力合成により線形変調波を高効率に増幅するLINCが知られている。
【0030】
LINC増幅器を適用したLINC送信機は、線形変調信号を2つの定振幅信号成分に分解してそれぞれ増幅した後、これらを合成して線形変調信号を出力する。入力される線形変調信号がベースバンド信号である場合、信号分解した後の各低振幅信号をRF周波数帯に変換する必要がある。また、入力信号の信号分解をデジタル信号処理により行なう場合には、さらにD/A変換器が必要である。
【0031】
ところが、PLLを用いた角度変調器などにより変調信号の周波数変換を行なう場合には、扱う変調信号の帯域幅がPLLのループ帯域幅よりも狭い必要がある。LINC送信機の場合、定振幅信号の帯域幅は元の線形変調信号の帯域幅よりも大幅に広いため、大きな困難を伴う。また、複素平面上の原点付近に存在するサンプル点が正確に再生されないことがあり、その結果、電力合成した後のスペクトラムに歪みが生ずるという問題がある。
【0032】
本発明に係る通信装置は、LINC送信機を備えるが、第1の周波数帯としてのベースバンドの定振幅角度信号成分を第2の周波数帯としてのRF周波数に変換する各周波数変換手段は、位相比較器と低域通過フィルタと発振器をループ状に接続し、所定のキャリア周波数を生成するPLLで構成される。
【0033】
このデジタルPLL回路内の発振器は、固定小数点数のデジタル周波数制御信号を受け入れる入力端子と、該入力したデジタル周波数制御信号をフィルタリングするデジタル・フィルタと、前記デジタル・フィルタを通過した後のデジタル周波数制御信号の整数部データに基づき制御され発振器の共振周波数を離散的に変化させる第1の共振周波数可変手段と、前記デジタル周波数制御信号の小数部データを受けて該小数部データと同一の平均値を有する整数データ列を発生するディザ処理部と、前記ディザ処理部によって制御される第2の共振周波数可変手段と、発振を持続するための能動回路を備えたデジタル制御発振器である。
【0034】
このように、発振器を制御するデータをFIRフィルタなどのデジタル・フィルタで線形補間することで、サンプリング周波数付近におけるレプリカを低減することが可能である。また、PLLを変調器として用いるLINC送信機に特有の問題(複素平面上の原点付近のサンプル点が正確に再生されないことに起因するスペクトラム歪み)を回避し、帯域外放射に関する規格が厳格なシステムへの適用が可能となる。
【0035】
ここで、発振を持続するための能動回路は、負性抵抗値を有する能動回路で構成することができる。あるいは、発振を持続するための能動回路は、複数の遅延素子を従属させた帰還回路であってもよい。
【0036】
また、第1及び第2の共振周波数制御手段は、複数の容量切り替えによって共振周波数を変化させることができる。
【0037】
あるいは、能動回路が複数の遅延素子を従属させた帰還回路である場合には、第1及び第2の共振周波数制御手段は、前記複数の遅延素子の段数の切り替えによって共振周波数を変化させることができる。また、第1及び第2の共振周波数制御手段は、前記複数の遅延素子の遅延量の切り替えによって共振周波数を変化させることができる。
【0038】
また、本発明の第1の側面に係るLINC送信機において、デジタルPLLで構成される各周波数変換手段は、前記PLLへのキャリア周波数データ入力端子と、前記発振器への周波数制御信号入力端子の2ポイントにおいて、前記の第1の周波数帯の各定振幅角度信号成分を用いて変調を施すようにしている。
【0039】
通常のPLLでは、ループに入力された外乱を抑圧するように作用するため、変調信号はループ帯域幅によって制限される。これに対し、本発明では、上述のような2ポイント変調方式を採用することにより、発振器に入力される変調データはPLLにとって外乱とは見えなくなり、PLLのループ帯域幅に制限されない広帯域変調を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、CDMAやOFDMといった大きな包絡線変動を伴う変調方式を使用することができ、送信機に線形性と高効率を両立するLINC増幅器を用いた、優れた通信装置、発振器、並びに周波数シンセサイザを提供することができる。
【0041】
また、本発明によれば、広帯域変調信号を扱うことが可能で、帯域外へのスプリアス放射が少なく、リコンフィギャラビリティに優れた通信装置、発振器、並びに周波数シンセサイザを提供することができる。
【0042】
本発明に係る通信装置は、LINC送信機を採用することにより線形変調波を高効率に増幅して線形性と高効率を両立して増幅器の消費電力の低減を図っているが、LINC増幅器の2系統において、ベースバンドの入力信号をRF周波数帯に変換するための角度変調器を、2ポイント変調方式を適用したPLLで構成している。したがって、発振器に入力される変調データはPLLにとって外乱とは見えなくなり、PLLのループ帯域幅に制限されない広帯域変調を実現することが可能となる。
【0043】
また、変調データの周波数変換にPLLを採用することで、周波数次元のデータを時間積分するという発振器の積分効果により、従来のLINC送信機で問題となるサンプリング周波数付近におけるレプリカを、アナログ・スムージング・フィルタを追加することなく大幅に抑制することができ、回路のリコンフィギャラビリティを高めることができる。
【0044】
また、発振器を制御するデータをFIRフィルタで線形補間することで、サンプリング周波数付近におけるレプリカを低減することが可能である。
【0045】
また、発振器を制御するデータをFIRフィルタで線形補間することで、PLLを変調器として用いるLINC送信機に特有の問題(複素平面上の原点付近のサンプル点が正確に再生されないことに起因するスペクトラム歪み)を回避し、帯域外放射に関する規格が厳格なシステムへの適用が可能となる。
【0046】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳解する。
【0048】
図1には、本発明の一実施形態に係るLINC送信機の構成を示している。図示のLINC送信機は、信号分解手段110と、位相変調器としてのPLL120a、120bと、増幅器130a、130bと、合成手段140とからなる。既に述べたように、LINCは、2つの定振幅ベクトルの合成によって複素平面上の任意のシンボル点を表現することによって、線形変調波を高効率に増幅して線形性と高効率を両立するものであり、増幅器を飽和電力で動作させて、当該増幅器の消費電力を低減する。
【0049】
信号分解手段110には、参照番号101で示されるベースバンド変調信号データs(t)が入力され、少なくとも2つの定振幅角度信号成分に分解する。このベースバンド変調信号データs(t)は、リファレンス・クロック(図示しない)の周期で更新される。図示の例では、信号分解手段110は、ベースバンド変調信号データs(t)を、2つの定振幅信号に分解し、参照番号102a、102bでそれぞれ示される変調データs1(t)及びs2(t)に変換して、後段のPLL120a、120bにそれぞれ入力する。これらの変調データs1(t)及びs2(t)は、PLL120a、120bの周波数を制御するのに適切な様式で表現されている。
【0050】
PLL120a、120bは、ベースバンド帯の定振幅信号成分102a、102bをRF周波数帯に変換する。これらの出力104a、104bは、キャリア周波数データ103で与えられる周波数を中心とし、変調データ102a、102bによって変調されたRF位相変調信号sRF1(t)、sRF2(t)である。発振器124a、124bの制御感度のバラツキを補償する処理(図示せず)を施すことが好ましい。
【0051】
PLL120a、120bの出力104a、104bは、各増幅器130a、130bに入力されて、それぞれGの利得にて増幅される。そして、合成手段140は、各増幅器130a、130bの出力信号を合成して、線形変調信号105を出力する。増幅器130a、130bに線形性は要求されず、C級、F級などの非線形で高効率の電力増幅器を使用することができる。
【0052】
PLLは、キャリア周波数を正確な周波数にロックする回路である。本実施形態では、デジタル構成の位相比較器と低域通過フィルタと発振器をループ状に接続したデジタルPLLで構成され、デジタル位相比較器が基準信号と発振器の出力信号とを位相比較し、その位相差が小さくなるように動作する。また、発振器として、入力電圧に応じて発振周波数をリニアに変化させる電圧制御発振器Voltage Controlled Oscillator:VCO)に代えて、離散的に周波数を切り換えるデジタル制御発振器(Digital Controlled Oscillator:DCO)を用いた、フルデジタル構成のPLL回路とすることができる。該デジタルPLLでは、分周比の少数成分に相当する時間差を時間デジタル変換(Time−to−Digital Converter:TDC)回路で、整数成分をアキュムレータ回路でそれぞれデジタル値に変換し、検出したこれらの分周比に相当するデジタル値をさまざまな手法でフィードバックし、発振周波数をデジタル的に制御する。
【0053】
ここで、通常のPLLでは、ループに入力された外乱を抑圧するように作用するため、変調信号はループ帯域幅によって制限されることになる。これに対し、本実施形態では、変調器として利用するPLLのループ上で少なくとも2箇所において周波数変調データを注入する2ポイント変調方式を採用して、発振器とって変調信号が外乱とは見えなくすることにより、ループ帯域幅に制限されない広帯域変調を実現している。
【0054】
図1に示した例では、PLL120a、120bはそれぞれ、基準位相累積器121a、121bと、位相比較器122a、122bと、ループ・フィルタ123a、123bと、発振器124a、124bと、可変位相累積器125a、125bで構成される。デジタル構成の位相比較器122a、122bは、基準信号と発振器124a、124bの出力信号とを位相比較し、その位相差が小さくなるようにそれぞれ動作する。また、基準位相累積器121a、121b、並びに、可変位相累積部125a、125bは、内部で保持する位相データと入力される位相差データとの加算又は減算を行なう演算を通じて位相データを生成する。
【0055】
ここで、発振器124a、124bに入力された変調データs1(t)及びs2(t)がそれぞれのPLL120a、120bに対する外乱に相当する。各PLL120a、120bでは、変調データ102a、102bは、キャリア周波数データ103と加算され、基準位相累積器121a、121bにも入力される。比較すべき基準信号が変調されているため、発振器124a、124bに入力された変調データは、PLLにとって外乱とは見えなくなる。したがって、PLLのループ帯域幅に制限されない広帯域変調を実現することが可能となる。
【0056】
PLL120a、120bの内部動作について、数学的に考察してみる。基準位相累積器121a、121bの入力から、PLL出力104a、104bまでの、変調データ102a、102bに対する伝達関数は、低域通過型であり、次式(5)のように表される。
【0057】
【数5】

【0058】
但し、G(s)はオープン・ループ・ゲインである。ここで、位相比較器ゲインをKφ、ループ・フィルタの伝達関数をZ(s)、発振器のゲインをKDCO、出力周波数と基準周波数との比をNとすると、ゲインG(s)は次式(6)のように表される。
【0059】
【数6】

【0060】
一方、発振器124a、124bに入力される変調データ102a、102bに対しては、PLL120a、120bは、次式(7)に示す高域通過型の伝達関数を呈する。
【0061】
【数7】

【0062】
上式(5)と(7)を足し合わせたものが、PLL120a、120bの変調信号に対するトータルの応答であり、これが1になることは明らかである。つまり、全帯域通過の伝達関数となる。
【0063】
このように、PLL120a、120bに入力されるキャリア周波数データ103と、発振器124a、124bへの入力(ループ・フィルタ123a、123bを通過した後の位相差データ)の各々に変調データ102a、102bを加算するという2ポイント変調方式を採用することによって、PLL帯域幅に制限されない広帯域変調をかけることが可能になる。
【0064】
また、発振器124a、124bは、周波数次元のデータを時間積分し、位相として出力するので、1/sが掛かり、出力スペクトラムは6dB/octの傾きで抑圧される。その結果、リファレンス周波数付近に発生するレプリカは抑圧され、レプリカ抑圧用フィルタが不要、若しくは簡単なもので十分となる。
【0065】
図2には、発振器124a、124bの内部構成を示している。図示の発振器124a、124bは、デジタル・フィルタとしてのFIR(Finite Impulse Response:有限インパルス応答)フィルタ202と、離散的な制御データによって制御され、離散的な発振周波数を取り得る発振器コア206と、ディザ処理部207と、分周器210で構成される。
【0066】
発振器124a、124に入力される発振器制御データ201は、nビットの整数部とkビットの小数部とからなる固定小数点数で表現される、(n+k)ビットのデータであり、リファレンス・クロックの周期毎に更新される。
【0067】
FIRフィルタ202は、発振器コア206の出力を分周器210で分周したクロック211(リファレンス・クロックよりも高速)によって動作し、発振器制御データ201をアップサンプルし、線形補間する。なお、本発明の要旨は補間手法として線形補間に限定されるものではなく、ハードウェア規模の制限が許せば、レイズド・コサインなどの、他の手法を用いても構わない。
【0068】
FIRフィルタ202の出力203は、nビットの整数部データ204と、kビットの小数部データ205に分けられる。整数部データ204は、発振器コア206の備える共振周波数制御手段(後述)を制御し、発振周波数を決定する。
【0069】
整数部データ204の最下位ビット(LSB)は、共振周波数制御手段の最小制御単位に対応し、発振器コア206にそのまま入力される。例えば、共振周波数制御手段を並列接続された複数のキャパシタで構成する場合、整数部データ204の各ビットは対応するキャパシタ1個に相当する。また、小数部データ205は、キャパシタ1個分以下を表現するものであり、ディザ処理部207に入力して平均化することにより所望値とすることができる。
【0070】
ディザ処理部207は、FIRフィルタ202と同様に、発振器コア206の出力を分周器210で分周したクロック211により動作する。ディザ処理部207は、入力としての小数部データ205に応じたmビットのデータ208を、発振器コア206に出力する。ディザ処理部207の出力208は、発振器コア206の共振周波数制御手段を制御し、共振周波数制御手段の最小制御単位(LSBに対応するキャパシタ)よりも細かい周波数設定を、平均的に実現する。ディザ処理部207は、例えば、ΔΣ変調器を使用することで実現できる。
【0071】
必要であれば、発振器コア206は、共振周波数制御手段を構成する素子のミスマッチに起因する非線形性を動的に除去する仕組みを持つことができる。
【0072】
図3には、発振器コア206の実現例を示している。図示の発振器コア206は、n型MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタM1、M2のクロス・カップルにより形成される負性抵抗性の能動回路と、この能動回路にバイアス電流を供給するp型MOSトランジスタM3と、インダクタL1及びバラクタ・バンク301によって構成されるタンク回路と、整数部データ204及びディザ処理部207の出力208をバラクタ制御信号303に変換する制御部302で構成される、共振型の発振器である。
【0073】
図示のように、バラクタ・バンク301は、MOSトランジスタのゲートへの印加電圧に応じてゲート容量が変わることを利用したMOSバラクタを複数並列接続したものである。タンク回路は、インダクタL1が持つインダクタンスと、タンク回路が持つ容量によって、共振周波数が決定される共振回路である。能動回路は、この発振を持続する作用があり、共振周波数が発振器コア206の出力周波数となる。そして、制御部302は、整数部データ204に応じて各MOSバラクタの容量切り替えを制御して共振周波数を離散的に変化させるとともに、小数部データ205と同一の平均値を有する整数データ列(すなわち、ディザ処理部207の出力208)に応じてMOSバラクタの容量切り替えを制御する。
【0074】
なお、図3ではn型MOSトランジスタのクロス・カップルによる構成を示したが、さらにp型MOSトランジスタのクロス・カップルを追加した構成や、バイアス電流供給をn型MOSトランジスタのテイル電流源により行なう構成、MOSのバラクタの代わりにバラクタ・ダイオードを使用した構成などの、幾つかの変形例は当業者であれば容易に実現可能であることを十分理解されたい。
【0075】
また、図4には、発振器コア206の他の実現例を示している。図示の発振器コア206は、複数の遅延素子を従属接続した遅延チェーン401及びマルチプレクサ404とで構成されるリング・オシレータと、整数部データ204及びディザ処理部出力208をマルチプレクサ制御信号303に変換する制御部302で構成される。
【0076】
遅延チェーン401の遅延素子としては、例えば、インバータやバッファを使用することができる。マルチプレクサ404が選択する経路により、リング・オシレータを一周する遅延時間が異なることから、発振周波数を変化させることができる。すなわち、複数の遅延素子を従属させた帰還回路は、能動回路として発振を持続させる作用があり、共振周波数が発振器コア206の出力周波数となる。
【0077】
なお、図示の例では、リング・オシレータを構成する遅延素子の段数を制御する方法を示したが、遅延素子1段のゲート・サイズを変化させる方法や、両者を併用する方法など、他の実現方法を採っても構わない。さらに、別の実現手段として、アナログ遅延セルを使用し、トランスコンダクタンスを変化させる方法や、負荷容量を変化させる方法などを採っても構わない。
【0078】
図1に示したLINC送信機において、発振器124a、124b以外の、PLL120a、120bを構成する要素である、基準位相累積器121a、121b、位相比較器122a、122b、ループ・フィルタ123a、123b、並びに、可変位相累積器125a、125bは、デジタル・ハードウェアで実現することが好ましい。何故ならば、アナログ・ハードウェアで上記の2ポイント変調を実現する際、素子間のミスマッチが問題となり、十分な性能が得るために困難を伴うことが多いからである。また、リコンフィギャラビリティを高める観点からも、デジタル・ハードウェアによる実現が好ましいと本発明者らは思料する。但し、本発明の要旨はこれらの回路コンポーネントがデジタル・ハードウェアで実現することに限定する訳ではない、ということを十分理解されたい。
【0079】
続いて、シミュレーション結果を参照しながら、図1に示したLINC送信機の性能について詳解する。
【0080】
ここでは、テスト信号として、IEEE802.11aに準拠するOFDM信号を使用した。本シミュレーションでの条件は、サブキャリア数は52本、1次変調方式は64QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、データレートは54Mbps、変調帯域幅は20MHz、リファレンス・クロックは変調帯域幅の8倍(160MHz)である。また、シミュレーションの簡素化のため、ディザ処理部207としてのΔΣ変調器をドライブするクロックは、リファレンス・クロックの4倍に等しい周波数を選んだ。同様に、デジタル・フィルタとしてのFIRフィルタ202の動作クロックも、リファレンス・クロックの4倍に等しい周波数である。FIRフィルタ202のパラメータは、タップ数=4、すべてのタップ係数=1/4とした。
【0081】
図5には、図1に示したLINC送信機に変調をかけたときのスペクトラムのシミュレーション結果を示している。比較のために、D/A変換器と直交変調器よって構成された従来のLINC送信機の出力スペクトラムも併せて示している。
【0082】
従来のLINC送信機では、図5右に示すように、D/A変換器の出力するサンプリング周波数付近のレプリカ(エイリアス)が大きなレベルで存在し、D/A変換器出力のスムージング・フィルタ無しでは、IEEE802.11aが定めるスペクトラム・マスク規格を満足することができない。
【0083】
これに対し、図1に示した2ポイント変調方式のLINC送信機では、各発振器124a、124bが周波数次元のデータを時間積分するという積分効果によって、図5左に示すようにレプリカが低減され、スムージング・フィルタなどのアナログ回路が不要となることを理解できよう。これは、異なる複数の無線システムに対応する装置において、回路の共通化を図る(リコンフィギャラビリティを高める)上で非常に有利であることを意味する。また、必要なアナログ回路が少なくなるので、バラツキの面で有利であり、回路の歩留まりを上げ、製造コストを下げるという効果も得られる。
【0084】
また、図6には、発振器コア206においてFIRフィルタ202による周波数制御データ補間の効果を表すシミュレーション結果を示している。
【0085】
図6上段には、PLL124a、124bに入力される発振器制御データ201のFIRフィルタ202の入力前と出力後の波形を示している。FIRフィルタは、インパルスを入力したときの出力信号を有限時間で0に収束させる作用を有し、多くの場合は非再帰型の差分方程式で実現される。
【0086】
図6下段には、FIRフィルタ202を通過後の発振器制御データ203による発振器コア206の出力波形の位相を示している。比較のため、FIRフィルタ202による周波数制御データ補間を行なわない場合のシミュレーション結果も併せて示している。補間なしの場合にはリファレンス・クロック周期でゼロ次ホールドされていた周波数データが、FIRフィルタ202で補間をかけることで4倍だけアップサンプル及び線形補間され、その結果、発振器206の出力209での位相波形が滑らかになっていることが分かる。つまり、リファレンス・クロック周波数付近の成分が少なくなっていることを意味する。
【0087】
さらに参考データとして、図7には、発振器コア206においてFIRフィルタ202によるデータ補間を行なわない場合のスペクトラムのシミュレーション結果を示している。リファレンス・クロック周波数付近の成分が、図5の結果と比較して大きくなっていることが分かる。変調データの周波数変換にPLLを使用したLINC送信機は、周波数次元のデータを時間積分するという発振器の積分効果(前述)によって、リファレンス・レプリカが元来少ないので、IEEE802.11aの仕様を十分満足することができる。しかしながら、より厳格な仕様が規定されているシステムに対応することを考慮すると、発振器コア206においてFIRフィルタ202によるデータ補間が有効な効果を持つことに変わりはない。
【0088】
図8には、本発明の他の実施形態に係るLINC送信機の構成を示している。図示のLINC送信機は、信号分解手段810と、位相変調器としてのPLL820a、820bと、増幅器830a、830bと、合成手段140とからなり、2つの定振幅ベクトルの合成によって複素平面上の任意のシンボル点を表現して、線形変調波を高効率に増幅して線形性と高効率を両立する(同上)。
【0089】
信号分解手段810は、参照番号801で示されるベースバンド変調信号データs(t)を2つの定振幅信号に分解し、参照番号802a、802bでそれぞれ示される変調データs1(t)及びs2(t)に変換して、後段のPLL820a、820bにそれぞれ入力する。PLL820a、820bは、ベースバンド帯の定振幅信号成分802a、802bをRF周波数帯に変換する。これらの出力805a、805bは、キャリア周波数データ803で与えられる周波数を中心とし、変調データ802a、802bによって変調されたRF位相変調信号sRF1(t)、sRF2(t)であり、各増幅器830a、830bに入力され、それぞれGの利得にて増幅される。そして、合成手段840は、各増幅器830a、830bの出力信号を合成して、線形変調信号806を出力する。
【0090】
図8に示したLINC送信機では、変調器として用いるPLL820a、820bのループ上の少なくとも2ポイントで周波数変調データを注入するという2ポイント変調方式を採用して、発振器とって変調信号が外乱とは見えなくすることにより、ループ帯域幅に制限されない広帯域変調を実現している点は、図1と同様である。但し、2ポイント変調のかけ方が図1とは相違するので、この点について以下で詳解する。
【0091】
変調データ802a802bの周波数変換を行なうPLL820a、820bはそれぞれ、位相比較器821a、821bと、ループ・フィルタ822a、822bと、発振器823a、823bと、分周器824a、824bと、ΔΣ変調器825a、825bで構成されるデジタルPLLである。デジタル構成の位相比較器821a、821bと低域通過フィルタ822a、822bと発振器823a、823bからなるループでは、位相比較器821a、821bが基準信号と発振器823a、823bの出力信号とを位相比較し、その位相差が小さくなるようにそれぞれ動作する。
【0092】
信号分解手段810の出力する変調データ802a、802bは、キャリア周波数データ804と加算された後、ΔΣ変調器825a、825bに入力される。ΔΣ変調器825a、825bは、入力されたデータに基づいて、分周器824a、824bを変調する。この結果、PLL820a、820bの出力805a、805bでは、キャリア周波数データ804で与えられる周波数を中心とし、変調データ802a、802bによって変調されたRF位相変調信号が得られる。
【0093】
ここで、分周器824a、824bの入力から、PLL出力805a、805bまでの、変調データ802a、802bに対する伝達関数は、低域通過型である。また、変調データ802a、802bは、発振器823a、823bにも入力される。この際、発振器823a、823bの制御感度のバラツキを補償する処理(図示せず)を施すことが好ましい。発振器823a、823bに入力される変調データ802a、802bに対しては、PLLは、高域通過型の伝達関数を呈する。
【0094】
このように、PLL820a、820bに入力されるキャリア周波数データ804と、発振器823a、823bへの入力(ループ・フィルタ822a、822bを通過した後の位相差データ)の各々に変調データ802a、802bを加算するという2ポイント変調方式をとることにより、PLLのループ帯域幅に制限されない広帯域変調をかけることが可能となる。
【0095】
なお、発振器823a、823bの構成は、図3又は図4のいずれかに示したデジタル制御発振器のうちいずれかを、対応する通信システムに応じて適切なものを選択すればよい。
【0096】
また、LINC送信機に変調をかけたときのスペクトラムのシミュレーション結果や、発振器コア206においてFIRフィルタ202による周波数制御データ補間の効果を表すシミュレーション結果は図5、図6に示したものと同様となるので、ここでは説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0098】
本発明は、無線LAN、地上波デジタル放送、第4世代移動通信、電力線搬送通信などのさまざまな広帯域無線技術に適用することができる。
【0099】
要するに、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るLINC送信機の構成を示した図である。
【図2】図2は、発振器124a、124bの内部構成を示した図である。
【図3】図3は、発振器コア206の1つの実現例を示した図である。
【図4】図4は、発振器コア206の他の実現例を示した図である。
【図5】図5は、図1に示したLINC送信機に変調をかけたときのスペクトラムのシミュレーション結果を示した図である。
【図6】図6は、発振器コア206においてFIRフィルタ202による周波数制御データ補間の効果を表すシミュレーション結果を示した図である。
【図7】図7は、発振器コア206においてFIRフィルタ202によるデータ補間を行なわない場合のスペクトラムのシミュレーション結果を示した図である。
【図8】図8は、本発明の他の実施形態に係るLINC送信機の構成を示した図である。
【図9】図9は、一般的なLINC送信機の構成を示したブロック図である。
【図10】図10は、図9に示したLINC送信機の動作を説明するための図であり、具体的には、複素平面上で2つの定振幅ベクトルを合成してシンボル点を表現する様子を示した図である。
【符号の説明】
【0101】
110…信号分解手段
120a、120b…PLL
121a、121b…基準位相累積器
122a、122b…位相比較器
123a、123b…ループ・フィルタ
124a、124b…発振器
125a、125b…可変位相累積器
130a、130b…増幅器
140…合成手段
202…FIRフィルタ
206…発振器コア
207…ディザ処理部
210…分周器
301…バラクタ・バンク
302…制御部
401…遅延チェーン
402…制御部
404…マルチプレクサ
810…信号分解手段
820a、820b…PLL
821a、821b…位相比較器
822a、822b…ループ・フィルタ
823a、823b…発振器
824a、824b…分周器
825a、825b…ΔΣ変調器
830a、830b…増幅器
840…合成手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の周波数帯の線形変調信号を入力して少なくとも2つの定振幅角度信号成分に分解する信号分解手段と、
前記の第1の周波数帯の各定振幅角度信号成分をそれぞれ第2の周波数帯に周波数変換する、少なくとも2つの周波数変換手段と、
前記の周波数変換された各定振幅角度信号成分をそれぞれ電力増幅する、少なくとも2つの増幅器と、
前記の増幅された各定振幅角度信号成分同士を合成する合成手段と、
を送信機に備え、
前記の各周波数変換手段は、位相比較器と低域通過フィルタと発振器をループ状に接続し、所定のキャリア周波数を生成するPLLで構成され、
前記発振器は、固定小数点数のデジタル周波数制御信号を受け入れる入力端子と、該入力したデジタル周波数制御信号をフィルタリングするデジタル・フィルタと、前記デジタル・フィルタを通過した後のデジタル周波数制御信号の整数部データに基づき制御され発振器の共振周波数を離散的に変化させる第1の共振周波数可変手段と、前記デジタル周波数制御信号の小数部データを受けて該小数部データと同一の平均値を有する整数データ列を発生するディザ処理部と、前記ディザ処理部によって制御される第2の共振周波数可変手段と、発振を持続するための能動回路を備える、
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記の各周波数変換手段は、前記PLLへのキャリア周波数データ入力端子と、前記発振器への周波数制御信号入力端子の2ポイントにおいて、前記の第1の周波数帯の各定振幅角度信号成分を用いて変調を施す、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記の発振を持続するための能動回路は、負性抵抗値を有する能動回路である、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記の発振を持続するための能動回路は、複数の遅延素子を従属させた帰還回路である、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の共振周波数制御手段は、複数の容量切り替えによって共振周波数を変化させる、
ことを特徴とする請求項3又は4のいずれかに記載の通信装置。
【請求項6】
前記第1及び第2の共振周波数制御手段は、前記複数の遅延素子の段数の切り替えによって共振周波数を変化させる、
ことを特徴とする請求項4に記載の通信装置。
【請求項7】
前記第1及び第2の共振周波数制御手段は、前記複数の遅延素子の遅延量の切り替えによって共振周波数を変化させる、
ことを特徴とする請求項4に記載の通信装置。
【請求項8】
周波数シンセサイザの一構成要素となる発振器であって、
固定小数点数のデジタル周波数制御信号を受け入れる入力端子と、
該入力したデジタル周波数制御信号をフィルタリングするデジタル・フィルタと、
前記デジタル・フィルタを通過した後のデジタル周波数制御信号の整数部データに基づき制御され発振器の共振周波数を離散的に変化させる第1の共振周波数可変手段と、
前記デジタル周波数制御信号の小数部データを受けて該小数部データと同一の平均値を有する整数データ列を発生するディザ処理部と、
前記ディザ処理部によって制御される第2の共振周波数可変手段と、
発振を持続するための能動回路と、
を具備することを特徴とする発振器。
【請求項9】
前記の発振を持続するための能動回路は、負性抵抗値を有する能動回路である、
ことを特徴とする請求項8に記載の発振器。
【請求項10】
前記の発振を持続するための能動回路は、複数の遅延素子を従属させた帰還回路である、
ことを特徴とする請求項8に記載の発振器。
【請求項11】
前記第1及び第2の共振周波数制御手段は、複数の容量切り替えによって共振周波数を変化させる、
ことを特徴とする請求項9又は10のいずれかに記載の発振器。
【請求項12】
前記第1及び第2の共振周波数制御手段は、前記複数の遅延素子の段数の切り替えによって共振周波数を変化させる、
ことを特徴とする請求項10に記載の発振器。
【請求項13】
前記第1及び第2の共振周波数制御手段は、前記複数の遅延素子の遅延量の切り替えによって共振周波数を変化させる、
ことを特徴とする請求項10に記載の発振器。
【請求項14】
位相比較器と、低域通過フィルタと、請求項8乃至13のいずれかに記載の発振器とをループ状に接続し、所定のキャリア周波数を生成する、
ことを特徴とする周波数シンセサイザ。
【請求項15】
前記PLLのループ内の少なくとも2箇所において周波数変調データを注入する2ポイント変調方式を採用する、
ことを特徴とする請求項14に記載の周波数シンセサイザ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−171460(P2009−171460A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9721(P2008−9721)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】