説明

通信装置、通信制御方法および通信制御プログラム

【課題】 通信品質を向上させること。
【解決手段】 ナビゲーション装置は、それぞれが水平方向に互いに異なる角度の指向性を有し、ビームを送信する第1〜第4アンテナ19A〜19Dと、第1〜第4アンテナ19A〜19Dを切り替えてビームを送信させる送信制御部と、を備える。水平方向に互いに異なる角度で4つのビームが送信されるので、複数のビームが側方に存在する反射物で反射するまで距離を異ならせることができ、4つのビームのうち反射回数の少ないビームを交差点に存在する他の車両まで到達させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通信装置、通信制御方法および通信制御プログラムに関し、特に車両に搭載される通信装置、通信制御方法および通信制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両間で無線通信する技術が開発されている。特開2006−352189号公報には、基地局装置と移動局装置とを具備する無線通信システムであって、前記基地局装置は、指向性ビームを形成可能なアンテナを備え、前記基地局装置は、自身と通信する移動局装置との間に、自身の通信に障害を与えると推測される通信障害車両が存在するか否かを判定する通信障害車両存在判定部と、前記通信障害車両存在判定部の判定結果に基づいて前記指向性ビームを形成可能なアンテナの指向性ビーム照射方向を制御するアンテナ制御部と、を備え、前記アンテナ制御部は、通信障害車両が存在する場合に該通信障害車両が存在する指向性ビームを形成可能なアンテナの指向性ビーム照射方向における指向性ビームの送信時間率を低減/増加させるとともに、他の指向性ビームを形成可能なアンテナにおける指向性ビームの送信時間率を増加/低減させることを特徴とする無線通信システムが記載されている。
【0003】
しかしながら、特開2006−352189号公報に記載の基地局装置は、地上に接地されるものであり、それの周辺に位置する反射物を事前に登録することができる。このため、移動する車両に適用することができないといった問題があった。
【特許文献1】特開2006−352189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は上述した問題点を解決するためになされたもので、この発明の目的の1つは、通信品質を向上させた通信装置、通信制御方法および通信制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上述した目的を達成するためになされたもので、この発明のある局面によれば、通信装置は、それぞれが水平方向に互いに異なる角度の指向性を有し、ビームを送信する複数のビーム送信手段と、複数のビーム送信手段を切り替えてビームを送信させる送信制御手段と、を備える。
【0006】
この局面に従えば、水平方向に互いに異なる角度で複数のビームが送信されるので、複数のビームが側方に存在する反射物で反射するまで距離を異ならせることができる。このため、ビームが反射することにより減衰するが、複数のビームのうち反射回数の少ないビームを目標まで到達させることができる。その結果、通信品質を向上させた通信装置を提供することができる。
【0007】
好ましくは、地図上の現在位置を検出する位置検出手段と、検出された現在位置と地図上の予め定められた種類の場所の位置との間の距離を検出する距離検出手段と、をさらに備え、送信制御手段は、検出された距離に基づいて、複数のビーム送信手段のうちから少なくとも1つを選択する選択手段を含み、複数のビーム送信手段のうちから選択された少なくとも1つがビームを送信する時間の割合を、選択されなかったビーム送信手段がビームを送信する時間の割合よりも大きくし、複数のビーム送信手段に時分割でビームを送信させる。
【0008】
この局面に従えば、現在位置と地図上の予め定められた種類の場所の位置との間の距離が検出され、検出された距離に基づいて、複数のビームのうちから少なくとも1つが送信される時間の割合が、他のビームが送信される時間の割合よりも大きくなる。このため、地図上の予め定められた種類の場所に、反射回数の少ないビームを到達させることができる。
【0009】
好ましくは、車両の両側方の距離を取得する側方距離取得手段をさらに備え、選択手段は、検出された距離に加えて、取得された距離に基づいて、複数のビーム送信手段のうちから少なくとも1つを選択する。
【0010】
この局面に従えば、現在位置と地図上の予め定められた種類の場所の位置との間の距離と、車両の両側方の距離とに基づいて、複数のビームのうちから少なくとも1つが選択されるので、複数のビームのうちから送信時間の割合を大きくするビームを正確に選択することができる。
【0011】
好ましくは、選択手段は、複数のビーム送信手段のうちからビームの送信方向と車両の進行方向との角度が小さいものから順に選択する。
【0012】
この発明の他の局面によれば、送信制御方法は、それぞれが水平方向に互いに異なる角度の指向性を有し、ビームを送信する複数のビーム送信手段を備えた通信装置で実行される送信制御方法であって、地図上の現在位置を検出するステップと、検出された現在位置と地図上の予め定められた種類の場所の位置との間の距離を検出するステップと、検出された距離に基づいて、複数のビーム送信手段のうちから少なくとも1つを選択するステップと、検出された距離に基づいて、複数のビーム送信手段のうちから選択された少なくとも1つがビームを送信する時間の割合を、選択されなかったビーム送信手段がビームを送信する時間の割合よりも大きくなるように、複数のビーム送信手段を切り替えて時分割でビームを送信させるステップと、を含む。
【0013】
この局面に従えば、通信品質を向上させた送信制御方法を提供することができる。
【0014】
この発明のさらに他の局面によれば、送信制御プログラムは、それぞれが水平方向に互いに異なる角度で指向性を有するビームを送信する複数のビーム送信手段を備えた通信装置を制御するコンピュータで実行される送信制御プログラムであって、地図上の現在位置を検出するステップと、検出された現在位置と地図上の予め定められた種類の場所の位置との間の距離を検出するステップと、検出された距離に基づいて、複数のビーム送信手段のうちから少なくとも1つを選択するステップと、検出された距離に基づいて、複数のビーム送信手段のうちから選択された少なくとも1つがビームを送信する時間の割合を、選択されなかったビーム送信手段がビームを送信する時間の割合よりも大きくなるように、複数のビーム送信手段を切り替えて時分割でビームを送信させるステップと、をコンピュータに実行させる。
【0015】
この局面に従えば、通信品質を向上させた送信制御プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。しがたってそれらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおけるナビゲーション装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図1を参照して、通信装置としてのナビゲーション装置1は、ナビゲーション装置1の全体を制御するための中央演算装置(CPU)11と、GPS受信機13と、ジャイロ15と、車速センサ17と、第1〜第4アンテナ19A〜19Dと接続されるアンテナ制御部19と、メモリインターフェース(I/F)21と、シリアル通信I/F23と、表示制御部25と、液晶表示装置(LCD)27と、タッチスクリーン29と、CPU11が実行するプログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)31と、CPU11の作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)33と、データを不揮発的に記憶するEEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)35と、操作キー37と、を含む。
【0018】
GPS受信機13は、全地球測位システム(GPS)におけるGPS衛星から送信される電波を受信し、現在の地図上の位置を計測する。そして、計測した位置をCPU11に出力する。
【0019】
ジャイロ15は、ナビゲーション装置1が搭載される車両の方位を検出し、検出した方位をCPU11に出力する。車速センサ17は、ナビゲーション装置が搭載される車両の速度を検出し、検出した速度をCPU11に出力する。なお車速センサ17は、車両に搭載されてもよく、この場合には、CPU11には、車両に搭載された車速センサ17から車両の速度が入力される。
【0020】
アンテナ制御部19は、第1〜第4アンテナ19A〜19Dが接続される。4つの第1〜第4アンテナ19A〜19Dは、それぞれ指向性を有する。アンテナ制御部19は、CPU11により制御され、第1〜第4アンテナ19A〜19Dのいずれか1つを選択し、CPU11から入力される信号を、第1〜第4アンテナ19A〜19Dのうちから選択したアンテナから送信する。また、アンテナ制御部19は、第1〜第4アンテナ19A〜19Dのいずれかで受信された信号を、CPU11に出力する。なお、ここでは、ナビゲーション装置1が第1〜第4アンテナ19A〜19Dを備える例を説明するが、アンテナの数はこれに限定されることなく、指向する方向の異なる複数のアンテナを備えていればよい。
【0021】
表示制御部25は、LCD27を制御してLCD27に画像を表示させる。LCD27は、TFT(Thin Film Transistor)型であり、表示制御部25に制御され、表示制御部25より出力される画像を表示する。なお、LCD27に代えて、有機EL(ElectroLuminescence)ディスプレイを用いてもよい。
【0022】
タッチスクリーン29は、透明な部材からなり、LCD27の表示面上に設けられる。タッチスクリーン29は、ユーザが指等で指示したLCD27の表示面における位置を検出し、CPU11に出力する。CPU11は、LCD27に各種ボタンを表示することにより、タッチスクリーンにより検出される指示位置と組み合わせて、各種の操作を受け付ける。CPU11がLCD27に表示する操作画面は、ナビゲーション装置1を操作するための操作画面を含む。操作キー37は、ボタンスイッチであり、主電源のオンとオフとを切換える電源キーを含む。
【0023】
メモリI/F21には、着脱可能なメモリカード21Aが装着される。CPU11は、メモリカード21Aに記憶された地図データを読み出し、GPS受信機13から入力される現在位置とジャイロ15により検出された方位とを示す印を地図上に記した画像をLCD27に表示する。また、CPU11は、車速センサ17およびジャイロ15からそれぞれ入力される車速と方位とに基づいて、車両が移動するに伴って地図上に示す印の位置を移動させる画像をLCD27に表示させる。
【0024】
なお、ここではCPU11が実行するプログラムをROM31に記憶しておく例を説明するが、プログラムをメモリカード21Aに記憶しておき、メモリカード21Aからプログラムを読み出して、CPU11で実行するようにしてもよい。プログラムを記憶する記録媒体としては、メモリカード21Aに限らず、フレキシブルディスク、カセットテープ、光ディスク(CD−ROM(Compact Disc
−ROM)/MO(Magnetic Optical Disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc))、ICカード(メモリカードを含む)、光カード、マスクROM、EPROM、EEPROMなどの半導体メモリ等でもよい。
【0025】
また、シリアル通信I/F23に接続されるコンピュータからからプログラムを読み出して、CPU11で実行するようにしてもよい。ここでいうプログラムは、CPU11により直接実行可能なプログラムだけでなく、ソースプログラム、圧縮処理されたプログラム、暗号化されたプログラム等を含む。
【0026】
図2は、ナビゲーション装置が備える第1〜第4アンテナの方向の一例を示す図である。図2を参照して、第1〜第4アンテナ19A〜19Dは、車両の前方方向に対して、それぞれ異なる方向に指向性を有するように装着される。具体的には、第1〜第4アンテナ19A〜19Dの装着角度は、−θ1度、−θ2度、θ2度、θ1度の指向性となるように装着される。但し、装着角度は、車両の前方方向を0度とし、時計回りを正の値、反時計回りを負の値としている。θ1>θ2である。第1〜第4アンテナ19A〜19Dは、指向方向が異なるため、車両の側方に建物の壁などの反射物が存在する場合、前方の所定の位置にビームが到達するまでに、反射物で反射する回数が異なる。ビームは、反射すると減衰するため、目標地点に到達するまでの反射回数が少ないほうが好ましい。
【0027】
図3は、ナビゲーション装置が備えるCPUの機能の概要を示す機能ブロック図である。図3を参照して、CPU11は、現在位置を検出するための位置検出部51と、現在位置から目標地点までの距離を検出する距離検出部53と、現在位置から側方の反射物までの距離を検出する側方距離検出部55と、アンテナ制御部19を制御してビームを送信させる送信制御部57と、アンテナ制御部19から出力されるビームが入力される受信制御部61と、を含む。
【0028】
位置検出部51は、GPS受信機13が衛星から受信する信号に基づいて、現在位置を検出する。位置検出部51は、取得した現在位置を距離検出部53に出力する。現在位置は、たとえば緯度と経度とを含む。なお、位置検出部51は、GPS受信機13が衛星から受信する信号から緯度と経度とを算出してもよいが、インターネット等のネットワークに接続するための無線通信回路を備えるようにし、GPS受信機13が出力する信号を、インターネットに接続されたサーバに送信し、サーバが返信する緯度と経度とを受信するようにしてもよい。
【0029】
距離検出部53は、位置検出部51から入力される現在位置と、メモリカード21Aに記憶された地図データとに基づいて、車両の進行方向に位置する目標地点までの間の距離を検出する。ここでは、目標地点は、複数の道路が交差する交差点としている。距離検出部53は、検出した目標地点までの距離dを送信制御部57に出力する。
【0030】
側方距離検出部55は、位置検出部51から入力される現在位置と、メモリカード21Aに記憶された地図データとに基づいて、車両の側方の反射物までの側方距離を検出する。ここでは、地図データに含まれる現在位置が属する道路種別に対して予め定められた距離を定義する側方距離テーブルをEEPROM35に予め記憶しておき、道路種別に対して側方距離テーブルで定義された側方距離を取得する。側方距離は、車両の左側方の反射物までの距離を示す左側方距離lと、車両の右側方の反射物までの距離を示す右側方距離rとを含む。側方距離検出部55は、検出した左側方距離lと右側方距離rとを送信制御部57に出力する。
【0031】
なお、側方の反射物までの距離を計測するセンサーを車両の左右に設けるようにしてもよい。この場合、側方距離検出部55は、センサーの出力から左側方距離lと右側方距離rとを取得する。
【0032】
図4は、道路種別と側方距離との関係を定義する側方距離テーブルの一例を示す図である。図4を参照して、道路種別と、現在位置とに対して、車両の左側の反射物までの左側方距離lと、車両の右側の反射物までの右側方距離rとをそれぞれ定義する。ここでは、道路種別は、片側3車線道、片側2車線道および片側1車線道とを含む。側方距離テーブルは、道路種別に対して、左側方距離lおよび右側方距離rとをそれぞれ定義する。道路種別が複数車線の場合に、車両の現在位置から定まる車線それぞれに対して、左側方距離lおよび右側方距離rとをそれぞれ定義する。例えば、現在位置から定まる道路種別が片側3車線で、現在位置から定まる走行車線が第1車線の場合、左側方距離lは2m、右側方距離8mがそれぞれ定義される。
【0033】
図5は、第1〜第4アンテナが送出するビームの進路を示す模式図である。図5を参照して、4つの第1〜第4アンテナ19A〜19Dは側方の建物で反射するが、ビームを送出する方向が異なるため、反射するまでの距離が異なる。図5に示す例においては、第3アンテナ19Cが送出するビームが車両から最も遠くで反射し、第1アンテナ19Aが送出するビームが車両から最も近くで反射する。ここでは、第1〜第4アンテナ19A〜19Dが送出するビームが2回目に反射するまでの距離をそれぞれX1〜X4として示している。この例の場合、X3>X2>X4>X1となり、第3アンテナ19C、第2アンテナ19B、第4アンテナ19D、第1アンテナ19Aの順に、それらが送出するビームが車両から2回目に反射する地点までの距離が長い。
【0034】
車両Aから交差点までの距離dがX3以下X2より大きいとき、第3アンテナ19Cから送出されるビームは1回の反射で交差点に到達するが、他の第1、第2および第4アンテナ19A,19B,19Dから送出されるビームは2回以上反射して交差点に到達する。したがって、第3アンテナ19Cから送出されるビームの減衰が最も少なく、他のビームに比較して車両Bまたは車両Cにいて良好に受信される。
【0035】
車両Aから交差点までの距離dがX2以下X4より大きいとき、第3および第2アンテナ19C,19Bから送出されるビームは1回の反射で交差点に到達するが、他の第1および第4アンテナ19A,19Dから送出されるビームは2回以上反射して交差点に到達する。したがって、第3および第2アンテナ19C,19Bから送出されるビームの減衰が他のビームに比較して減衰が少なく、車両Bまたは車両Cにいて良好に受信される。
【0036】
車両Aから交差点までの距離dがX4以下X1より大きいとき、第3、第2および第4アンテナ19C,19B,19Dから送出されるビームは1回の反射で交差点に到達するが、他の第1アンテナ19Aから送出されるビームは2回以上反射して交差点に到達する。したがって、第3、第2および第4アンテナ19C,19Bから送出されるビームの減衰が第1アンテナ19Aから送出されるビームに比較して減衰が少なく、車両Bまたは車両Cにいて良好に受信される。
【0037】
車両から第1〜第4アンテナ19A〜19Dが送出するビームが2回目に反射する位置までの距離X1〜X4は、左側方距離をl、右側方距離をrとすれば、次式で算出される。なお、θ1、θ2は、車両の前方方向と第1〜第4アンテナ19A〜19Dそれぞれの指向方向とのなす角である。
【0038】
X1=l/tanθ1+(l+r)/tanθ1 … (1)
X2=l/tanθ2+(l+r)/tanθ2 … (2)
X3=r/tanθ2+(l+r)/tanθ2 … (3)
X4=r/tanθ1+(l+r)/tanθ1 … (4)
なお、式(1)〜式(4)は、4つの第1〜第4アンテナ19A〜19Dが車両の横方向の同一場所、ここでは中央に取り付けられている場合の例であるが、第1〜第4アンテナ19A〜19Dが横方向に異なる位置に配置される場合には、第1〜第4アンテナ19A〜19Dそれぞれについて車両の中央からそれが配置される位置までの距離で左側方距離lおよび右側方距離rを補正すればよい。
【0039】
図3に戻って、送信制御部57は、アンテナ制御部19を制御して第1〜第4アンテナ19A〜19のいずれかを選択してビームを送信する。送信制御部57は、選択部59を含み、選択部59は、距離検出部53から入力される車両から目標地点(ここでは交差点)までの距離dと、側方距離検出部55から入力される左側方距離lおよび右側方距離rとに基づいて、第1〜第4アンテナ19A〜19Dのうちから少なくとも1つを選択する。選択するアンテナは、目標地点に到達するまでの反射回数の少ないものから順に選択する。ここでは、第1〜第4アンテナ19A〜19Dのうち送信するビームが反射する回数が1回のものから順に選択する。具体的には、第1〜第4アンテナ19A〜19Dそれぞれについて、それから送出されるビームが2回目に反射する位置までの車両からの距離X1〜X4を算出し、距離X1〜X4のちから車両から目標地点までの距離d以下のものに対応するアンテナを選択する。
【0040】
図5に示す例の場合、X3>X2>X4>X1である。この場合、距離dがX3以下かつX2より大きければ第3アンテナ19Cを選択し、距離dがX2以下かつX4より大きければ第3アンテナ19Cおよび第2アンテナ19Bを選択し、距離dがX4以下かつX1より大きければ第3アンテナ19C、第2アンテナ19Bおよび第4アンテナ19Dを選択する。
【0041】
送信制御部57は、第1〜第4アンテナ19A〜19Dのうち選択部59により選択されたものがビームを送信する時間の割合(以下「送信時間率」という)を、選択されなかった他のもの送信時間率よりも大きくなるように、アンテナ制御部19に指示を出力する。アンテナ制御部19は、送信制御部57からの指示に従った送信時間率で第1〜第4アンテナ19A〜19Dを切り換えて、ビームを送信する。例えば、第1〜第4アンテナ19A〜19Dのうち選択部59により選択されたもの送信時間率を、選択されなかったもの送信時間率の倍にする。
【0042】
図6は、送信制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。送信制御処理は、CPU11が送信制御プログラムを実行することにより、CPU11により実行される処理である。図6を参照して、CPU11は、第1〜第4アンテナ19A〜19Dの送信時間率を同じに設定する(ステップS01)。同じバケットを送信する場合、第1〜第4アンテナ19A〜19Dが所定時間内に送信するパケット数は同じになるように、アンテナ制御部19を制御する。
【0043】
そして、現在位置を検出する(ステップS02)。具体的には、GPS受信機13が衛星から受信する信号に基づいて、現在位置を検出する。次に目標地点までの距離dを検出する(ステップS03)。具体的には、メモリカード21Aに記憶された地図データを参照して、ステップS02により検出された現在位置から車両の進行方向に最も近い交差点を目標地点に設定し、現在位置から目標地点までの距離dを算出する。
【0044】
次のステップS04においては、左側方距離lおよび右側方距離rを検出する。具体的には、メモリカード21Aに記憶された地図データを算出し、ステップS02において検出された現在位置が属する道路種別を取得する。そして、EEPROM35に記憶されている側方距離テーブルを参照して、取得された道路種別に対して側方距離テーブルで定義された左側方距離lおよび右側方距離rを検出する。
【0045】
そして、ステップS04において検出された左側方距離lおよび右側方距離rと、式(1)〜式(4)とを用いて、X1〜X4を算出する(ステップS05)。次に、ステップS03で検出された車両から目標地点までの距離dが、X1〜X4の最小値以下か否かを判断する(ステップS06)。距離dがX1〜X4の最小値以下ならば処理をステップS13に進め、そうでなければ処理をステップS07に進める。
【0046】
ステップS07においては、ステップS03で検出された車両から目標地点までの距離dが、X1〜X4で最大値以下か否かを判断する。距離dがX1〜X4の最大値以下ならば処理をステップS08に進め、そうでなければ処理をステップS13に進める。ステップS08においては、X1〜X4の最大値に対応するアンテナの送信時間率を増加させる。図5に示した例の場合、X3が最大値なので第3アンテナ19Cの送信時間率を増加させ、他の第1、第2および第4アンテナ19A,19B,19Dの送信時間率よりも大きくする。
【0047】
一方、ステップS13においては、送信処理を実行し、第1〜第4アンテナ19A〜19Dを順に切り換えてビームを送信させる。ステップS13においては、処理がステップS06またはステップS07から進む場合、ステップS01で設定された送信時間率、すなわち第1〜第4アンテナ19A〜19Dで同じ送信時間率でビームが送信される。
【0048】
ステップS09においては、ステップS03で検出された車両から目標地点までの距離dが、X1〜X4で第2番目に大きな値以下か否かを判断する。距離dがX1〜X4の第2番目に大きな値以下ならば処理をステップS10に進め、そうでなければ処理をステップS13に進める。ステップS10においては、X1〜X4の第2番目に大きな値に対応するアンテナの送信時間率を増加させる。図5に示した例の場合、X2が第2番目に大きな値なので第2アンテナ19Bの送信時間率を増加させる。ステップS09が実行される場合、ステップS08が実行されるので、第3アンテナ19Cと第2アンテナ19Bの送信時間率が、他の第1および第4アンテナ19A,19Dの送信時間率よりも大きく設定される。
【0049】
一方、ステップS13においては、処理がステップS09から進む場合、ステップS08で設定された送信時間率、すなわち第3アンテナ19Cの送信時間率を、他の第1、第2および第4アンテナ19A,19B,19Dの送信時間率よりも大きく設定し、ビームが送信される。
【0050】
ステップS11においては、ステップS03で検出された車両から目標地点までの距離dが、X1〜X4で第3番目に大きな値以下か否かを判断する。距離dがX1〜X4の第3番目に大きな値以下ならば処理をステップS12に進め、そうでなければ処理をステップS13に進める。ステップS12においては、X1〜X4の第3番目に大きな値に対応するアンテナの送信時間率を増加させる。図5に示した例の場合、X4が第3番目に大きな値なので第4アンテナ19Dの送信時間率を増加させる。ステップS12が実行される場合、ステップS08およびステップS10が実行されるので、第4アンテナ19D、第3アンテナ19Cおよび第2アンテナ19Bの送信時間率が、他の第1アンテナ19Aの送信時間率よりも大きく設定される。
【0051】
一方、ステップS13においては、処理がステップS11から進む場合、ステップS10で設定された送信時間率、すなわち第3アンテナ19Cと第2アンテナ19Bの送信時間率を、他の第1および第4アンテナ19A、19Dの送信時間率よりも大きく設定し、第1〜第4アンテナ19A〜19Dを順に切り換えてビームを送信させる。
【0052】
なお、本実施の形態においては、第1〜第4アンテナ19A〜19Dを順に切り換えてビームを送信する例を示したが、第1〜第4アンテナ19A〜19DのうちからCPU11により選択されたアンテナのみを順に切り換えてビームを送信するようにしてもよい。換言すれば、第1〜第4アンテナ19A〜19DのうちCPU11により選択されなかったアンテナからビームを送信しないようにしてもよい。
【0053】
以上説明したように本実施の形態におけるナビゲーション装置1は、それぞれが指向性を有し、水平方向に互いに異なる角度でビームを送信する第1〜第4アンテナ19A〜19Dを備える。送信制御部57は、第1〜第4アンテナ19A〜19Dを切り替えて水平後方に異なる角度でビームを送信される。このため、4つのビームが側方に存在する反射物で反射するまで距離を異ならせることができるので、4つのビームのうち反射回数の少ないビームを目標まで到達させることができる。
【0054】
また、地図上の現在位置と地図上の目標地点(交差点)との間の距離を検出し、検出された距離に基づいて、第1〜第4アンテナ19A〜19Dのうちから少なくとも1つがビームを送信する時間の割合を、他のアンテナがビームを送信する時間の割合よりも大きくし、第1〜第4アンテナ19A〜19Dから時分割でビームを送信させる。このため、交差点に、反射回数の少ないビームを到達させることができる。
【0055】
また、現在位置と交差点との間の距離と、車両の両側方の距離(左側方距離lおよび右側方距離)とに基づいて、第1〜第4アンテナ19A〜19Dのうちから少なくとも1つを選択するので、第1〜第4アンテナ19A〜19Dうちから送信時間率を大きくするビームを正確に選択することができる。
【0056】
さらに、第1〜第4アンテナ19A〜19Dのうちからビームの送信方向と車両の進行方向との角度が小さいものから順に選択するので、交差点に、反射回数の少ないビームを到達させることができる。
【0057】
なお、上述した実施の形態においては、通信装置の一例としてナビゲーション装置1を例に説明したが、指向性の異なる複数のアンテナを備えた装置であればよく、単にビーム(電波)を送出する送信装置であってもよい。
【0058】
また、図6に示した処理をナビゲーション装置1に実行させるための送信制御方法、およびその送信制御方法をコンピュータに実行させるための送信制御プログラムとして発明を捉えることができるのは言うまでもない。
【0059】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態の1つにおけるナビゲーション装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図2】ナビゲーション装置が備える第1〜第4アンテナの方向の一例を示す図である。
【図3】ナビゲーション装置が備えるCPUの機能の概要を示す機能ブロック図である。
【図4】道路種別と側方距離との関係を定義する側方距離テーブルの一例を示す図である。
【図5】第1〜第4アンテナが送出するビームの進路を示す模式図である。
【図6】送信制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0061】
1 ナビゲーション装置、11 CPU、13 受信機、15 ジャイロ、17 車速センサ、19 アンテナ制御部、19A〜19D 第1〜第4アンテナ、21 メモリI/F、21A メモリカード、23 シリアル通信I/F、25 表示制御部、29 タッチスクリーン、31 ROM、33 RAM、35 EEPROM、37 操作キー、51 位置検出部、53 距離検出部、55 側方距離検出部、57 送信制御部、59 選択部、61 受信制御部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される通信装置であって、
それぞれが水平方向に互いに異なる角度の指向性を有し、ビームを送信する複数のビーム送信手段と、
前記複数のビーム送信手段を切り替えてビームを送信させる送信制御手段と、を備えた通信装置。
【請求項2】
地図上の現在位置を検出する位置検出手段と、
検出された現在位置と地図上の予め定められた種類の場所の位置との間の距離を検出する距離検出手段と、をさらに備え、
前記送信制御手段は、前記検出された距離に基づいて、前記複数のビーム送信手段のうちから少なくとも1つを選択する選択手段を含み、
前記複数のビーム送信手段のうちから選択された少なくとも1つがビームを送信する時間の割合を、選択されなかったビーム送信手段がビームを送信する時間の割合よりも大きくし、前記複数のビーム送信手段に時分割でビームを送信させる、通信装置。
【請求項3】
車両の両側方の距離を取得する側方距離取得手段をさらに備え、
前記選択手段は、前記検出された距離に加えて、前記取得された距離に基づいて、前記複数のビーム送信手段のうちから少なくとも1つを選択する、請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記選択手段は、前記複数のビーム送信手段のうちからビームの送信方向と車両の進行方向との角度が小さいものから順に選択する、請求項2に記載の通信装置。
【請求項5】
それぞれが水平方向に互いに異なる角度の指向性を有し、ビームを送信する複数のビーム送信手段を備えた通信装置で実行される送信制御方法であって、
地図上の現在位置を検出するステップと、
検出された現在位置と地図上の予め定められた種類の場所の位置との間の距離を検出するステップと、
前記検出された距離に基づいて、前記複数のビーム送信手段のうちから少なくとも1つを選択するステップと、
前記検出された距離に基づいて、前記複数のビーム送信手段のうちから選択された少なくとも1つがビームを送信する時間の割合を、選択されなかったビーム送信手段がビームを送信する時間の割合よりも大きくなるように、前記複数のビーム送信手段を切り替えて時分割でビームを送信させるステップと、を含む送信制御方法。
【請求項6】
それぞれが水平方向に互いに異なる角度で指向性を有するビームを送信する複数のビーム送信手段を備えた通信装置を制御するコンピュータで実行される送信制御プログラムであって、
地図上の現在位置を検出するステップと、
検出された現在位置と地図上の予め定められた種類の場所の位置との間の距離を検出するステップと、
前記検出された距離に基づいて、前記複数のビーム送信手段のうちから少なくとも1つを選択するステップと、
前記検出された距離に基づいて、前記複数のビーム送信手段のうちから選択された少なくとも1つがビームを送信する時間の割合を、選択されなかったビーム送信手段がビームを送信する時間の割合よりも大きくなるように、前記複数のビーム送信手段を切り替えて時分割でビームを送信させるステップと、を前記コンピュータに実行させる送信制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−296132(P2009−296132A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145768(P2008−145768)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】