説明

通路および管路を内側ライニングするための樹脂含浸させられた繊維チューブの製作

本発明は、含浸の間、200〜20000mPasの粘度を有していて、含浸後、50000〜2000000mPasの粘度に増粘される反応樹脂を含浸させることによって、通路および管路を内側ライニングするための樹脂含浸させられた繊維チューブを製作するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維チューブまたは繊維束への反応樹脂の含浸によって、通路および管路を内側ライニングするための樹脂含浸させられた繊維チューブを製作するための方法に関する。
【0002】
土壌敷設された汚水通路、水管路およびこれに類する管系を更正するための特に洗練された方法は、反応樹脂が含浸させられたフレキシブルな繊維チューブが管内に導入され、そこで、膨らまされ、その後、樹脂が硬化させられることにある。この場合、問題となるのは、液状の樹脂が繊維チューブから含浸後に流出し得るかまたは少なくともチューブの下側に集まり得ることである。
【0003】
したがって、欧州特許第799397号明細書には、大体積の繊維マットから成る1つの内側層と、繊維織物から成る2つの外側層とを備えた三層のガラス繊維チューブに低粘性の反応樹脂を含浸させ、外側層をUV照射によってゲル化することが提案される。当然ながら、三層の繊維チューブの製作には手間がかかる。さらに、大体積の内側層内の樹脂が貯蔵時に下方に沈降し、これによって、不均一な含浸が得られる危険がある。
【0004】
同刊行物には、択一的な作業形式も記載されている。これによれば、流出を阻止するために、樹脂の粘度を含浸後にチキソトロピ剤または増粘剤によって増加させることができる。しかし、この方法形式は不利であると見なされる。なぜならば、この場合、含浸の速度が著しく制動される恐れがあり、個々の繊維の不完全な湿潤が行われる恐れがあるからである。さらに、樹脂含浸させられたチューブの巻上げ時にまたは折畳み時に、樹脂が折畳み領域で押し出される恐れがある。
【0005】
この方法原理から出発して、本発明の課題は、前述した欠点を回避し、樹脂含浸させられた繊維チューブを製作するための簡単な方法を開発することである。この課題は、本発明によれば、出発樹脂だけでなく、増粘された樹脂でも、最適な粘度が生ぜしめられることによって解決される。
【0006】
したがって、本発明の対象は、繊維束に反応樹脂を含浸させ、繊維束を巻成心棒に巻き付けるかまたは既製された繊維チューブに反応樹脂を含浸させることによって、通路および管路を内側ライニングするための樹脂含浸させられた繊維チューブを製作するための方法において、反応樹脂が、含浸の間、200〜20000mPasの粘度を有しており、含浸後、反応樹脂の粘度が、50000〜2000000mPasとなるように、反応樹脂を増粘することである。
【0007】
繊維束および繊維チューブを、以下、共通して「繊維形成物」と呼ぶ。この繊維形成物は、たとえば織物、敷物、マット、ニードルパンチフリースまたはフェルトまたはこれらの組合せであってよく、ガラス繊維または合成繊維から成っていてよい。
【0008】
反応樹脂は、スチロールおよび/またはアクリルエステルに不飽和ポリエステルまたはビニルエステルを溶かした溶液であってよい。
【0009】
有利な実施態様では、繊維形成物がガラス繊維織物またはガラス繊維マットまたはこれらの組合せから成っている。この事例では、化学的な増粘剤、有利にはマグネシウムまたはカルシウムの酸化物または水酸化物、たとえばLehmann&Voss社のLUVATOR(登録商標)が、樹脂に対して、有利には0.2〜5質量%、特に0.3〜1質量%の量の固形物質で使用される。増粘剤は粉末状の固形物質として使用されてもよいし、液状の担持材料中に分散されたペーストとして使用されてもよい。増粘剤は含浸の直前に樹脂に導入される。
【0010】
含浸は、有利には、繊維形成物が、「適正」な粘度に調整された液状の樹脂で充填された浴に緩速で引き通されるかまたは繊維形成物に樹脂がドクタ塗布されるかまたは吹付け塗布されるかまたは液状の膜として塗布されることによって行われる。その後、樹脂含浸させられた繊維形成物がより長い時間、有利には少なくとも一日、特に数日かけて室温で放置されるかまたは数時間かけて最大80℃の温度に加熱されることによって、樹脂を増粘することができる。
【0011】
別の実施態様では、繊維形成物がポリエステル繊維フェルトである。フェルトは極めて密であるので、ここでは、増粘剤を省略することができ、粘度増加に対して、増粘のためにはチキソトロピ剤、たとえばWacker−Chemie社のWACKER HDK(登録商標)またはDegussa社のAEROSIL(登録商標)で十分である。このチキソトロピ剤は、物理的な増粘剤として水素架橋結合によって作用する。
【0012】
本発明の主要な特徴は、含浸の間のかつ含浸後の粘度の最適な調整である。含浸の間、粘度は、本発明によれば、200〜20000mPasの間にあることが望ましい。粘度が過度に低い場合には、樹脂溶液が繊維形成物内で分離され、粘度が過度に高い場合には、繊維形成物に十分に樹脂が含浸させられない。
【0013】
粘度は、樹脂の種類と含浸時の温度とに関連している。粘度は、たとえばポリエステルもしくはビニルエステルの選択と、樹脂溶液の濃度とによって適切に調整することができる。含浸時の浴の温度が高ければ高いほど、粘度はますます低くなる。有利には、15〜30℃の間で含浸させられる。
【0014】
含浸後、粘度は、本発明によれば、50000〜2000000mPasに増加していることが望ましい。ここでは、粘度が過度に低い場合には、管路内での含浸させられた繊維チューブの膨らまし時に、樹脂が繊維チューブから押し出され、粘度が過度に高い場合には、含浸させられた繊維チューブ内の樹脂の流動性が過度に僅かとなり、これによって、樹脂の硬化時に空洞と表面欠陥とが生ぜしめられる。最適な最終粘度は、増粘剤の種類と量との選択によって適切に調整することができる。
【0015】
有利な実施態様の変化形では、液状の樹脂から出発し、この樹脂にチキソトロピ剤が、有利には樹脂に対して0.5〜5質量%の量で添加される。チキソトロピ剤の添加後、粘度が、1000〜10000mPas、特に2000〜8000mPasの有利な含浸粘度に極めて迅速に増加する。含浸後、化学的な増粘剤の作用によって、100000〜1000000mPas、特に200000〜800000mPasの有利な最終粘度に増粘される。
【0016】
物理的な増粘剤による択一的な実施態様では、有利な最終粘度が50000〜200000mPasである。この有利な最終粘度も同じくチキソトロピ剤の種類と量とによって調整することができる。
【0017】
増粘剤とチキソトロピ剤との最適な種類と量とは、予試験によって簡単に検出することができる。
【0018】
反応樹脂として、有利には光硬化性の樹脂が使用される。この樹脂は、たとえば欧州特許第23634号明細書に記載されているように、光開始剤を含有している。同明細書には、反応樹脂と、増粘剤と、増粘と、UV光による樹脂の硬化とに関する更なる詳細も記載されている。
【0019】
別の実施態様では、ラジカル硬化可能な反応樹脂が使用される。この反応樹脂は過酸化物開始剤を含有している。ここでは、硬化は、過酸化物の分解温度を上回る温度の上昇によって行われるかもしくは常温硬化性の樹脂の場合には促進剤の添加によって行われる。
【0020】
本発明による方法では、たとえば欧州特許第712352号明細書に記載されているように、繊維束から出発し、この繊維束に樹脂を含浸させ、増粘し、繊維束を巻成心棒に巻き付けて、繊維チューブを形成することができる。択一的には、完成した繊維チューブから出発し、この繊維チューブに樹脂を直接含浸させ、増粘することもできる。含浸させられた繊維チューブは内外にシートを備えることができ、貯蔵することができる。管路および通路を更正するためには、繊維チューブが管路および通路に引き込まれ、そこで、膨らまされ、これによって、繊維チューブが内壁に適合され、樹脂がUV照射によって硬化させられるかまたは、たとえば高温の水による温度上昇によってラジカル硬化させられる。
【0021】
本発明の方法は、繊維束に反応樹脂を含浸させ、繊維束を巻成心棒に巻き付けるかまたは既製された繊維チューブに反応樹脂を含浸させることによって、通路および管路を内側ライニングするための樹脂含浸させられた繊維チューブを製作するための方法において、反応樹脂が、含浸の間、200〜20000mPasの粘度を有しており、含浸後、反応樹脂の粘度が、50000〜2000000mPasとなるように、反応樹脂を増粘することによって特徴付けられる。
【0022】
本発明の有利な実施態様によれば、含浸のために、繊維束もしくは繊維チューブ(「繊維形成物」)を、樹脂を備えた浴に引き通すかまたは樹脂を繊維形成物にドクタ塗布するかまたは吹付け塗布する。
【0023】
本発明の有利な実施態様によれば、繊維形成物が、織物、敷物、マット、ニードルパンチフリース、フェルト、これらの組合せ、ガラス繊維または合成繊維から成っている。
【0024】
本発明の有利な実施態様によれば、樹脂が、スチロールおよび/またはアクリルエステルに不飽和ポリエステルまたはビニルエステルを溶かした溶液である。
【0025】
本発明の有利な実施態様によれば、繊維形成物が、ガラス繊維から成っており、樹脂が、増粘剤としてマグネシウムまたはカルシウムの酸化物または水酸化物を含有している。
【0026】
本発明の有利な実施態様によれば、樹脂が、粉末状の固形物質の形のまたは液状の担持材料中に分散されたペーストの形の0.2〜5質量%の増粘剤を含有している。
【0027】
本発明の有利な実施態様によれば、増粘を、室温での含浸させられた繊維チューブの数日の貯蔵または数時間の加熱によって行う。
【0028】
本発明の有利な実施態様によれば、まず、液状の樹脂にチキソトロピ剤を添加し、この場合、1000〜10000mPasの有利な含浸粘度を生ぜしめ、含浸後、増粘剤の作用によって、有利には100000〜1000000mPasの最終粘度に増粘する。
【0029】
本発明の有利な実施態様によれば、繊維形成物が、ポリエステル繊維から成るフェルトであり、樹脂が、増粘のために、チキソトロピ剤を含有している。
【0030】
本発明の有利な実施態様によれば、チキソトロピ剤が、ヒュームドシリカである。
【0031】
本発明の有利な実施態様によれば、反応樹脂が、光硬化性の樹脂であり、光開始剤を含有している。
【0032】
本発明の有利な実施態様によれば、反応樹脂が、ラジカル硬化可能な樹脂であり、過酸化物開始剤を含有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維束に反応樹脂を含浸させ、繊維束を巻成心棒に巻き付けるかまたは既製された繊維チューブに反応樹脂を含浸させることによって、通路および管路を内側ライニングするための樹脂含浸させられた繊維チューブを製作するための方法において、
反応樹脂が、含浸の間、200〜20000mPasの粘度を有しており、含浸後、反応樹脂の粘度が、50000〜2000000mPasとなるように、反応樹脂を増粘することを特徴とする、通路および管路を内側ライニングするための樹脂含浸させられた繊維チューブを製作するための方法。
【請求項2】
含浸のために、繊維束もしくは繊維チューブ(「繊維形成物」)を、樹脂を備えた浴に引き通すかまたは樹脂を繊維形成物にドクタ塗布するかまたは吹付け塗布する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
繊維形成物が、織物、敷物、マット、ニードルパンチフリース、フェルト、これらの組合せ、ガラス繊維または合成繊維から成っている、請求項1記載の方法。
【請求項4】
樹脂が、スチロールおよび/またはアクリルエステルに不飽和ポリエステルまたはビニルエステルを溶かした溶液である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
繊維形成物が、ガラス繊維から成っており、樹脂が、増粘剤としてマグネシウムまたはカルシウムの酸化物または水酸化物を含有している、請求項1記載の方法。
【請求項6】
樹脂が、粉末状の固形物質の形のまたは液状の担持材料中に分散されたペーストの形の0.2〜5質量%の増粘剤を含有している、請求項5記載の方法。
【請求項7】
増粘を、室温での含浸させられた繊維チューブの数日の貯蔵または数時間の加熱によって行う、請求項5記載の方法。
【請求項8】
まず、液状の樹脂にチキソトロピ剤を添加し、この場合、1000〜10000mPasの有利な含浸粘度を生ぜしめ、含浸後、増粘剤の作用によって、有利には100000〜1000000mPasの最終粘度に増粘する、請求項5記載の方法。
【請求項9】
繊維形成物が、ポリエステル繊維から成るフェルトであり、樹脂が、増粘のために、チキソトロピ剤を含有している、請求項1記載の方法。
【請求項10】
チキソトロピ剤が、ヒュームドシリカである、請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
反応樹脂が、光硬化性の樹脂であり、光開始剤を含有している、請求項1記載の方法。
【請求項12】
反応樹脂が、ラジカル硬化可能な樹脂であり、過酸化物開始剤を含有している、請求項1記載の方法。

【公表番号】特表2008−522866(P2008−522866A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544775(P2007−544775)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012792
【国際公開番号】WO2006/061129
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(507191717)ブランデンブルガー パテントフェアヴェルトゥング ゲゼルシャフト デス ビュルガーリッヒェン レヒツ (2)
【氏名又は名称原語表記】Brandenburger Patentverwertung GdbR
【住所又は居所原語表記】Taubensuhlstrasse 6, D−76829 Landau, Germany
【Fターム(参考)】