説明

遅延ロックループ回路、タイミング発生器、半導体試験装置、半導体集積回路及び遅延量校正方法

【課題】 遅延量の測定に代わる手法で、カウンタの初期設定値を決めて、遅延回路の校正にかかる時間を短縮可能とする。
【解決手段】 複数のカウンタ設定値の中から一つのカウンタ設定値がロードされ、遅延ロックループ回路10−1がロックモードに切り替えられ、サイクルスリップ検出回路20−1の順序回路22がリセットされ、その後、順序回路22から出力されるサイクルスリップ検出信号が読み込まれると、このサイクルスリップ検出信号にもとづき、遅延回路11の出力信号がサイクルスリップを起こしているか否かが判定され、起こしているときはカウンタ設定値が切り替えられ、一方起こしていないときは、ロックされて完了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遅延回路の出力信号に与えられた遅延量が所定値になるように制御する遅延ロックループ回路(DLL)、このDLLを利用したタイミング発生器、このタイミング発生器を備えた半導体試験装置、前述のDLLを備えた半導体集積回路、さらに、出力信号に与えられた遅延量を校正する遅延量校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から周波数逓倍器などの一手段としてDLL(Delay Locked Loop)回路が知られている。
DLLは、外部から与えられた基準クロック信号(入力信号)と内部のクロック信号との間に生じる時間差(位相差)を回路的に制御して調整し、高速なクロックアクセス時間や高い動作周波数を実現する回路である。
DLLは、その機能や使用目的などからロックアップタイムの短縮化や遅延量の精度の向上などが命題となっているが、それら命題を解決する観点から、従来のアナログ制御のDLLに代えて、デジタル制御のDLLが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ここで、従来のDLLの回路構成例について、図19(i),(ii)を参照して説明する。
同図(i)は、従来のDLLの回路構成を示すブロック図、同図(ii)は、従来のDLLにおける各信号の経時変化を示すグラフである。
【0004】
同図(i)に示すように、従来のDLL100は、遅延回路110と、位相比較器120と、カウンタ130と、DAコンバータ(DAC)140とを備えている。
遅延回路110は、同一の遅延量を有する複数の遅延素子が縦続接続された構成となっており、入力信号(基準信号、同図では入力クロック)に所定の遅延量を与え、これを出力信号として出力する。
【0005】
位相比較器120は、入力信号(入力波形)とともに、遅延回路110の出力信号(出力波形)を入力する。そして、出力信号の値を入力信号に同期して検出する。この検出結果が、入力信号に対する出力信号の位相の進み又は遅れを示す位相信号として出力される(同図(ii)の(a),(b),(c))。
カウンタ130は、プライオリティエンコーダの機能を有しており、複数のビットで構成された制御信号を、位相比較器120からの位相信号により制御して出力する(同図(ii)の(c),(d))。
【0006】
DAコンバータ(遅延時間取得部)140は、カウンタ130から制御信号を入力し、この入力した制御信号のビット値に対応した遅延時間を示す遅延時間信号を出力する。
そして、遅延回路110は、DAコンバータ140から入力した遅延時間信号にもとづいて、出力信号に所定の遅延量を与えて出力する。ここで、遅延回路110は、遅延時間信号中の「H」を示すビット数が多いほど、入力信号に対する出力信号の遅延時間を長くする。一方、遅延時間信号中の「H」を示すビット数が少ないほど、入力信号に対する出力信号の遅延時間を短くする。このような動作により、入力信号に対して一定の遅延量を有した出力信号を出力することができる。
【0007】
ところで、従来のDLLにおいては、ロックレンジ(Lock Range)を広げるためにカウンタのビット数を増やそうとすると、そのビット数が膨大になるという問題があった。
一方、カウンタのビット数が膨大とならないようにするために、カウンタ値の1ビットの変化に対する遅延時間の変化量(分解能)を大きくすると、今度は、ジッタの低減を十分図ることができないという問題があった。
【0008】
そこで、従来のDLLを改良した技術が提案されている。
この改良技術のDLLの構成を図20に示す。
同図に示すように、DLL200−1は、例えば、同一の遅延量を有する複数の遅延素子が縦続接続された遅延回路210と、遅延回路210の入力信号と出力信号とを入力し、位相信号を出力する複数の位相比較器220a、220bと、対応する位相比較器220から位相信号を入力し、制御信号を出力する複数のカウンタ230a、230bと、対応するカウンタ230から制御信号を入力し、この入力した制御信号のビット値に対応した遅延時間を示す遅延時間信号を出力する複数の遅延時間取得部(DAコンバータ(DAC))240a、240bと、これら複数の遅延時間取得部240からそれぞれ出力された各遅延時間信号の示す遅延時間を加算する加算部250と、この加算部250で加算された遅延時間の和を遅延回路210における各遅延素子の遅延時間に変換する遅延時間制御部(バイアス回路)260とを備えた構成としてある。
【0009】
そして、位相比較器220、カウンタ230、DAコンバータ240が、それぞれ二つずつ備えられ、一方がfine(細分解能)の系を構成し、他方がcoarse(粗分解能)の系を構成している。ここで、図21に示すように、入力信号1周期からのずれが小さいときはfine部で追従し、一方、fine部の桁上げまたは桁下げが起こった場合や、1周期からのずれが大きいときはcoarse部で追従するようにしてある。
【0010】
これにより、遅延回路210の遅延量が入力信号のちょうど1周期になるようにコントロールされ、しかも、カウンタ230のビット数を増大させることなく、ロックレンジを拡張できる。
さらに、粗い分解能の遅延時間と細かい分解能の遅延時間との総和が遅延量のずれの補償に反映されるため、単にカウンタ230の分解能を大きくした場合に比べて、ロックアップタイムを飛躍的に短縮できる。
【0011】
ただし、振幅が大きいノイズに追従する場合には、カウンタ230ではオーバーフロー(カウント値が所定範囲より上方に超過)またはアンダーフロー(カウント値が所定範囲より下方に超過)が生じてしまう。これを避けるために、カウンタ230のビット数を増やすことが考えられるが、これでは回路規模が大きくなるというデメリットがある。
【0012】
そこで、図22に示すように、DLL200−2が、各系の有する各カウンタ230a、230bの動作について制御を行うコントロール回路(Controller)270を備える構成とした。そして、fine系のカウンタ(第一カウンタ)230aでカウント値が所定範囲を超過し、coarse系のカウンタ(第二カウンタ)230bでHOLDの位相信号が出力されている場合には、第一カウンタ230aに対してカウント値を半値にさせ、また、第二カウンタ230bに対してカウントをアップ(桁上げ)又はダウン(桁下げ)させることとした。
このように、分解能が小さい遅延成分と分解能が大きい遅延成分の桁上げ/桁下げ処理を行うことで、カウンタの回路規模を増大させることなく、ロック範囲を広げることができ、そのカウンタ230でのオーバーフローやアンダーフローを避けることができる。
【特許文献1】国際公開WO03/036796公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このようにfine部とcoarse部とを有する従来のDLL200−1、200−2は、位相比較器等が一つずつしか備えられていない従前のDLL100に比べて、カウンタの回路規模を増大させることなくロック範囲を広げることができるなど上述した各種問題を解決する手段として非常に有効である。
ただし、DLLでは、CMOSプロセスのばらつき、電圧、温度によって遅延回路210の遅延量が大きく変動することがあり、例えば、同じDAコンバータの設定値でも遅延量が1.5周期を超えるものや、0.5周期に満たないものが出てくることがある。そうすると、遅延回路の出力信号にサイクルスリップが起こることが考えられた。
【0014】
サイクルスリップとは、図23、図24に示すように、遅延回路の出力信号が本来有すべき遅延量(例えば1周期遅れの遅延量)を含む所定の範囲(例えば1.5周期遅れから0.5周期遅れまでの範囲)よりも速いあるいは遅い遅延量を有するため、本来補償されるべき方向とは逆の方向に補償されて、その遅延量が増大又は固定(はりつき)してしまう現象をいう。
なお、図23は、遅延回路の遅延量が1.5周期より長い場合にサイクルスリップを起こしている状態、図24は、遅延回路の遅延量が0.5周期より短い場合にサイクルスリップを起こしている状態をそれぞれ示す。
【0015】
このようなサイクルスリップを回避するために、従来では、各DLL回路毎に遅延回路の遅延量を測定し、この遅延量が入力信号の1周期遅れ近辺の値になるように適切なカウンタの初期設定値を決めていた。
しかし、従来の遅延量の測定方法は、カウンタの設定値を1つずつ切り替えてロードし、その都度遅延量を測定していたため、遅延回路の校正に時間がかかっていた。
【0016】
本発明は、上記の事情にかんがみなされたものであり、遅延量の測定に代わる手法で、カウンタの初期設定値を決めて、遅延回路の校正にかかる時間を短縮可能とする遅延ロックループ回路、タイミング発生器、半導体試験装置、半導体集積回路及び遅延量校正方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的を達成するため、本発明の遅延ロックループ回路は、同一の遅延量を有する複数の遅延素子を縦続接続するとともに、入力信号に所定の遅延量を与え出力信号として出力する遅延回路と、入力信号と出力信号との位相差にもとづく位相信号を出力する位相比較器と、この位相比較器から位相信号を入力し、制御信号を出力するカウンタと、このカウンタから制御信号を入力し、遅延時間信号を出力する遅延時間取得部とを備えた遅延ロックループ回路であって、出力信号がサイクルスリップを起こしているか否かを検出するサイクルスリップ検出回路と、サイクルスリップを起こしていることが検出されるとカウンタのカウント値を制御するカウント制御手段とを備えた構成としてある。
【0018】
遅延ロックループ回路をこのような構成とすると、遅延回路の出力信号がサイクルスリップを起こしているか否かをサイクルスリップ検出回路で自動的に検出でき、この検出結果にもとづいてカウント制御手段がカウンタのカウント値を自動的に制御できる。これにより、カウンタの初期設定値の切り替えやその設定値のロード、そしてロックモードの実行を数回程度行うだけで、適切な設定値を簡単に見つけ出すことができる。
このことから、カウンタの設定値をロードするたびに遅延回路の遅延量を測定するという作業が不要となる。したがって、遅延量の測定に代わる手法として上述のサイクルスリップ検出回路やカウント制御手段を備えることで、適切なカウンタの初期設定値を簡便かつ即座に決めることができ、遅延回路の校正にかかる時間を短縮できる。
【0019】
また、本発明の遅延ロックループ回路は、サイクルスリップ検出回路が、入力信号と出力信号とを入力し、それら入力信号と出力信号との位相が一致しているか否かを示す位相差検出信号を出力する論理回路と、この論理回路からの位相差検出信号にもとづき、出力信号がサイクルスリップを起こしているか否かを示すサイクルスリップ検出信号を出力する順序回路とを有した構成としてある。
【0020】
遅延ロックループ回路をこのような構成とすれば、順序回路から出力されたサイクルスリップ検出回路にもとづいて出力信号がサイクルスリップを起こしているか否かを判定できる。
例えば、カウンタの初期設定値がロードされ、DLLをロックモードにして、順序回路をリセットすると、その順序回路から出力されたサイクルスリップ検出信号は、出力信号がサイクルスリップを起こしているときと起こしていないときとで異なる値となる。例えば、サイクルスリップを起こしているときは「H」と示す信号、起こしていないときは「L」を示す信号となる。
このため、論理回路と順序回路とを組み合わせたサイクルスリップ検出回路により、サイクルスリップの発生の有無を検出でき、これに応じた遅延回路の校正を可能とする。
【0021】
また、本発明の遅延ロックループ回路は、論理回路が、論理積回路とこの論理積回路の一方の入力信号を否定する否定回路とを組み合わせた回路、又は、排他的論理和回路を有した構成としてある。
【0022】
遅延ロックループ回路をこのような構成とすると、出力信号にサイクルスリップが起きているときには、論理回路の出力波形が「H」と「L」とを繰り返すグリッジの波形を出力することができる。このため、順序回路では、サイクルスリップが起きていないときには「L」、起きているときには「H」の信号を出力することができる。これにより、サイクルスリップ検出回路にて、サイクルスリップの検出が可能となる。
【0023】
また、本発明の遅延ロックループ回路は、順序回路が、S−Rラッチ回路、Dフリップフロップ回路、D−ラッチ回路のうちの一つ以上を含む構成としてある。
遅延ロックループ回路をこのような構成とすれば、論理回路から出力された信号にもとづいて、順序回路は、サイクルスリップが起きていないときに「L」の信号を、一方起きているときには「H」の信号をそれぞれ出力することができる。
【0024】
また、本発明の遅延ロックループ回路は、遅延時間取得部が、分解能の異なる複数の遅延時間取得部を有し、カウンタが、複数の遅延時間取得部にそれぞれ対応して備えられ、カウント制御手段が、粗い分解能の遅延時間取得部に対応して備えられたカウンタにおけるカウント値を制御する構成としてある。
遅延ロックループ回路をこのような構成とすると、カウンタの初期設定値を自動的に切り替えて、ロックモードでロックする適切な設定値を容易に見つけ出すことができる。
【0025】
また、本発明の遅延ロックループ回路は、サイクルスリップ検出回路が、カウンタのカウント値が最大値又は最小値を示しているか否かを検出する最大値/最小値検出回路を有した構成としてある。
【0026】
遅延ロックループ回路をこのような構成とすれば、出力信号がサイクルスリップを起こしているか否かを容易に検出できる。
サイクルスリップが起こっている状態とは、すなわち、出力信号の位相が入力信号に対して大きく遅れ又は進んでいるために、カウンタのカウント値が最大値又は最小値を示したところで固定され(はりついて)、ロックされない状態をいう。
このため、カウンタのカウント値が最大値又は最小値を示していることを検出することで、出力信号がサイクルスリップを起こしているか否かを判定できる。
【0027】
また、本発明のタイミング発生器は、同一の遅延量を有する複数の遅延素子が縦続接続された遅延回路を含む遅延ロックループ回路と、いずれかの遅延素子の出力を選択し、これを遅延信号として出力する遅延選択部とを備えたタイミング発生器であって、遅延ロックループ回路が、上記請求項1〜請求項6のいずれかに記載の遅延ロックループ回路からなる構成としてある。
【0028】
タイミング発生器をこのような構成とすると、そのタイミング発生器に一以上のDLLが備えられている場合に、それらDLLの校正(キャリブレーション)に要する時間を短縮できる。
【0029】
また、本発明の半導体試験装置は、基準クロック信号を所定時間遅延した遅延クロック信号を出力するタイミング発生器と、基準クロック信号に同期して試験パターン信号を出力するパターン発生器と、試験パターン信号を被試験デバイスに応じて整形し、当該被試験デバイスへ送る波形整形器と、被試験デバイスの応答出力信号と期待値データ信号とを比較する論理比較器とを備えた半導体試験装置であって、タイミング発生器が、請求項7記載のタイミング発生器からなる構成としてある。
半導体試験装置をこのような構成とすれば、タイミング発生器に備えられた一以上のDLLの校正を短時間で行うことができる。
【0030】
また、本発明の半導体集積回路は、発振周波数が互いに等しい複数の遅延ロックループ回路と、各遅延ロックループ回路へ、発振周波数よりも低周波数の基準クロック信号を分配する配線とを備えた半導体集積回路であって、遅延ロックループ回路が、上記請求項1〜請求項6のいずれかに記載の遅延ロックループ回路からなる構成としてある。
【0031】
半導体集積回路をこのような構成とすると、この半導体集積回路に搭載された一以上のDLLがタイミング発生器に備えられている場合に、それらDLLの校正(キャリブレーション)に要する時間を短縮できる。
【0032】
しかも、遠距離のCLK伝送を低周波で行い、ローカル部分でDLLを用いて逓倍するため、伝送部分の回路規模・消費電力を削減することができ、全体のバッファ段数が少なくてすむため、スキューも小さくすることができる。
これは、LSIの内部の長距離を高周波のCLK伝送を行うと、低周波のCLK伝送に比べて、バッファ間隔を短縮して負荷容量を減らすか、バッファの駆動能力を増やすかの処置が必要になり、どちらも、回路規模増大・消費電力増大となるためである。また、各ブロックまでのバッファ段数の差も大きくなるため、スキューも増大するためである。
【0033】
また、本発明の遅延量校正方法は、遅延ロックループ回路の遅延回路が出力信号に与えた遅延量を校正する遅延量校正方法であって、カウンタにおける複数の初期設定値のうちの一つの初期設定値をロードし、出力信号の遅延量が遅延回路の入力信号に対する所定の遅延量となるようにロックモードを実行し、サイクルスリップ検出回路でサイクルスリップが検出されると、他の初期設定値をロードしてロックモードを実行し、サイクルスリップ検出回路でサイクルスリップが検出されなくなると、出力信号の遅延量がロックされて終了する方法としてある。
半導体集積回路をこのような方法とすれば、簡易な手順で、短時間に遅延回路の校正を行うことができる。
【発明の効果】
【0034】
以上のように、本発明によれば、遅延回路の出力信号がサイクルスリップを起こしているか否かをサイクルスリップ検出回路で自動的に検出でき、この検出結果にもとづいてカウント制御手段がカウンタのカウント値を自動的に制御できる。これにより、カウンタの初期設定値の切り替えやその設定値のロード、そしてロックモードの実行を数回程度行うだけで、適切な設定値を簡単に見つけ出すことができる。
このため、カウンタの設定値をロードするたびに遅延回路の遅延量を測定するという作業が不要となる。したがって、遅延量の測定に代わる手法として上述のサイクルスリップ検出回路やカウント制御手段を備えることで、適切なカウンタの初期設定値を簡便かつ即座に決めることができ、遅延回路の校正にかかる時間を短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明に係る遅延ロックループ回路、タイミング発生器、半導体試験装置、半導体集積回路及び遅延量校正方法の好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
【0036】
[遅延ロックループ回路の第一実施形態]
まず、本発明の遅延ロックループ回路の第一実施形態について、図1を参照して説明する。
同図は、本実施形態の遅延ロックループ回路の構成を示すブロック図である。
【0037】
同図に示すように、遅延ロックループ回路10−1は、遅延回路11と、位相比較器12a、12bと、カウンタ13a、13bと、DAC14a、14bと、加算部15と、バイアス回路16と、コントロール回路17と、サイクルスリップ検出回路20−1と、カウント制御手段30とを有している。
【0038】
なお、遅延回路11、位相比較器12a、12b、カウンタ13a、13b、DAC14a、14b、加算部15、バイアス回路16、コントロール回路17については、図22に示した従来の遅延ロックループ回路200−2における遅延回路210、位相比較器220a、220b、カウンタ230a、230b、DAC240a、240b、加算部250、バイアス回路260、コントロール回路270と同様の機能を有しているため、それらの詳細な説明は省略する。
【0039】
ここで、サイクルスリップ検出回路20−1は、遅延回路11の入力信号と出力信号とを比較して、その出力信号がサイクルスリップを起こしているか否かを検出する回路である。
【0040】
このサイクルスリップ検出回路20−1は、図2に示すように、論理回路21と、順序回路22とを有している。
論理回路21は、遅延回路11の入力信号(入力クロックA)と、その出力信号(遅延回路出力B)とを入力し、それら入力信号と出力信号との間に位相差が生じているときには、「H」と「L」とを繰り返すグリッジを有した信号(位相差検出信号)を出力し、一方、位相差が生じていないときには、「L」を示す位相差検出信号を出力する。
【0041】
この論理回路22は、図3(i)に示すように、例えば、排他的論理和回路(XOR回路、第一論理回路)21−1で構成できる。この第一論理回路21−1の論理式は、例えば(A・NOT(B))+(NOT(A)・B)などとされる。
また、論理回路21は、図3(ii)に示すように、例えば、論理積回路と、この論理積回路の一方の入力を否定する否定回路とを組み合わせた回路(第二論理回路21−2)で構成できる。この第二論理回路21−2の論理式は、NOT(A)・Bとなる。
なお、第二論理回路21−2においては、入力クロックAと遅延回路Bとが逆になっていてもよい。すなわち、論理式をA・NOT(B)とすることができる。
【0042】
順序回路22は、論理回路21からの位相差検出信号にもとづいてサイクルスリップ検出信号を出力する。例えば、位相差検出信号が「L」を示す信号の場合、サイクルスリップ検出信号は、「L」を示す信号となる。一方、位相差検出信号が「H」と「L」とを繰り返すグリッジを有した信号の場合、サイクルスリップ検出信号は、「H」を示す信号となる。
【0043】
この順序回路22は、図4(i)に示すように、S−Rラッチ回路(第一順序回路)22−1で構成できる。このS−Rラッチ回路22−1においては、S(セット)側に論理回路21の出力(位相差検出信号)が入力され、R(リセット)側にリセット信号が入力される。
また、順序回路22は、図4(ii)に示すように、D−フリップフロップ回路(第二順序回路)22−2で構成できる。このD−フリップフロップ回路22−2においては、D端子にHレベルの信号が入力され、CK端子に論理回路21の出力信号が入力され、リセット端子にリセット信号が入力される。そして、CK端子に論理回路21の出力(位相差検出信号)が入力されると、D端子に入力されたHレベルの信号がQ端子から出力される。
【0044】
さらに、順序回路22は、図4(iii)に示すように、D−ラッチ回路(第三順序回路)22−3で構成できる。このD−ラッチ回路22−3においては、D端子にHレベルの信号が入力され、反転された論理回路21の出力(位相差検出信号)が入力され、リセット端子にリセット信号が入力される。そして、反転された論理回路21の出力(位相差検出信号)が入力されると、D端子に入力されたHレベルの信号がQ端子から出力される。
【0045】
カウント制御手段30は、サイクルスリップ検出回路20からのサイクルスリップ検出信号にもとづいて、coarseのカウンタ13bに対し新たな初期設定値をロードさせる。
このカウント制御手段30は、ハードウエア処理で実行するものと、ソフトウエア処理で実行するものとがある。
【0046】
ハードウエア処理で実行するカウント制御手段30は、図5に示すように、シーケンサ/カウンタ31と、デコーダ32と、DA値(1〜N)実現論理回路33−1〜33−nと、論理回路34と、リセット信号生成論理回路35とを備えている。
なお、シーケンサ/カウンタ31とデコーダ32とは、シーケンサ回路として構成される。
【0047】
ここで、シーケンサ/カウンタ31は、サイクルスリップ検出回路20−1からのシーケンサ制御信号(サイクルスリップ検出信号)を入力し、このシーケンサ制御信号の示す値にもとづいてカウントを行い、このカウント結果を出力する。
例えば、シーケンサ制御信号が「1」を示す場合(遅延ロックループ回路10−1がサイクルスリップを起こしている場合)は、シーケンサ/カウンタ31は、+1のカウントを行う。このカウント動作後のカウント値は、入力信号(入力クロック)の入力タイミングに応じてデコーダ32へ送られる。
一方、シーケンサ制御信号が「0」を示す場合(遅延ロックループ回路10−1がサイクルスリップを起こしていない場合)は、シーケンサ/カウンタ31は、カウント動作を行わない。
【0048】
デコーダ32は、シーケンサ/カウンタ31からのカウント値にもとづいて、DA値(1〜N)実現論理回路33−1〜33−n又はリセット信号生成論理回路35のいずれかへ選択信号を送る。
このデコーダ32の動作を図6を参照して説明する。同図は、シーケンサ/カウンタ31の出力とカウント制御手段(ハードウエア処理手段)30の動作との関係を示す波形図である。
【0049】
シーケンサ/カウンタ31の出力(カウント値)は、同図に示すように、「1」、「2」、「3」、・・・「30」、「31」・・・のような値を示す。
例えば、そのカウント値が「1」のときは、対応する動作は「DA1 SET」であって、選択信号がDA値1実現論理回路33−1へ送られる。カウント値が「11」のときは、対応する動作は「DA2 SET」であって、選択信号がDA値2実現論理回路33−2へ送られる。カウント値が「21」のときは、対応する動作は「DA3 SET」であって、選択信号がDA値3実現論理回路33−3へ送られる。このように、カウント値が「10m+1」のときは、カウンタ13aのDA値を切り替えるように、選択信号がDA値(1〜N)実現論理回路33−1〜33−nのいずれか対応するものに送られる。
【0050】
カウント値が「9」、「19」、「29」・・・のように「10m+9」であるときは、対応する動作は「CLR」であって、選択信号がリセット信号生成論理回路35へ送られる。
カウント値が「10m+1」又は「10m+9」以外の場合は、選択信号は、DA値(1〜N)実現論理回路33−1〜33−n又はリセット信号生成論理回路35へは送られない。すなわち、カウント値が「2」〜「8」、「12」〜「18」、「22」〜「28」・・・のときのDA値保持動作については、DA値を設定してから遅延ロックループ回路10−1がロックするまでの時間である。
また、カウント値が「10」、「20」、「30」・・・のときのDA値保持動作については、サイクルスリップしているかどうかの判断となる。
なお、図6における「DA値保持」とは、現在カウンタ13aにセットされているDA値をそのまま保持することをいう。
【0051】
DA値(1〜N)実現論理回路33−1〜33−n及び論理回路34は、デコーダ32から選択信号が送られてくると、所定のDA値をカウンタ13aにセットする(カウンタ制御信号の送信)。
ここで、選択信号がDA値1実現論理回路33−1に送られてきたときは、「DA1」がカウンタ13aにセットされ、選択信号がDA値2実現論理回路33−2に送られてきたときは、「DA2」がカウンタ13aにセットされ、選択信号がDA値3実現論理回路33−3に送られてきたときは、「DA3」がカウンタ13aにセットされる。そして、選択信号がDA値N実現論理回路33−nに送られてきたときは、「DA N」がカウンタ13aにセットされる。
【0052】
リセット信号生成論理回路35は、デコーダ32から選択信号が送られてくると、サイクルスリップリセット信号をサイクルスリップ検出回路20−1の順序回路22へ送る。これにより、サイクルスリップ検出回路20−1では、順序回路22のリセットが行われる。
【0053】
次に、サイクルスリップ検出回路の動作について、図7〜図9を参照して説明する。
図7は、ロックした場合のサイクルスリップ検出回路の各波形、図8は、遅延量が短くなる方向にサイクルスリップが起こった場合のサイクルスリップ検出回路の各波形、図9は、遅延量が長くなる方向にサイクルスリップが起こった場合のサイクルスリップ検出回路の各波形を示す。
【0054】
まず、DLLロック時におけるサイクルスリップ検出回路の動作について、図7を参照して説明する。
DLLロック時とは、遅延回路11の出力信号Bが基準信号Aに比べてちょうど1サイクル遅れている状態をいう。なお、基準信号Aは、遅延回路11の入力信号(図1に示したDLL10−1のA点の信号)である。また、出力信号Bは、遅延回路11の出力信号(図1に示したDLL10−1のB点の信号)である。
【0055】
この場合は、図7に示すように、基準信号Aと出力信号Bの位相は一致しており、サイクルスリップは起こっていない(同図(i),(ii))。このとき、論理回路21からは「L」レベルの信号が出力され(同図(iii))、順序回路22からも「L」レベルの信号が出力される(同図(iv))。
【0056】
次いで、遅延量が短くなる方向にサイクルスリップが起こったときのサイクルスリップ検出回路の動作について、図8を参照して説明する。
同図では、coarseカウンタ13bの値が最大値又は最小値になるまでサイクルスリップした状態となるので位相は一致しない(同図(i),(ii))。このとき、論理回路21の出力信号は、細いパルス幅のグリッジを有する「H」レベルの信号が出力される(同図(iii))。これにより、順序回路22の出力信号は、「H」レベルが出力される(同図(iv))。
【0057】
次いで、遅延量が長くなる方向にサイクルスリップが起こったときのサイクルスリップ検出回路の動作について、図9を参照して説明する。
同図に示した場合と図8に示した場合とを比較すると、基準信号Aに対する遅延回路出力Bの位相差が大きく異なるという点で相違するものの、遅延回路11の出力信号Bにサイクルスリップが起こっている点では共通する。このため、図9に示した場合においても、coarseカウンタ13bの値が最大値又は最小値になるまでサイクルスリップした状態となるので位相は一致しない(同図(i),(ii))。このとき、論理回路21の出力信号は、細いパルス幅のグリッジを有する「H」レベルの信号が出力される(同図(iii))。これにより、順序回路22の出力信号は、「H」レベルが出力される(同図(iv))。
【0058】
このように、サイクルスリップが起こるときは、サイクルスリップ検出回路20は、“H”レベルを出力する。一方、サイクルスリップが起こっていないときは、サイクルスリップ検出回路20は、“L”レベルを出力する。
これにより、カウント制御手段30では、そのサイクルスリップ検出回路20から出力されたサイクルスリップ検出信号にもとづき、カウンタ13bにカウントの初期設定値を切り替えさせることができる。
【0059】
次に、カウンタの値を設定してからDLLをロックさせるまでの動作(遅延量校正方法)について、図10を参照して説明する。
前提として、カウンタの初期設定値(DA値)については、CMOSのいかなるプロセスにおいても、どれか一つのDA値でDLLが必ずロックできるように、二つ以上のDA値が用意されている(このDA値は、シミュレーションで決める)。
【0060】
まず、複数のDA値の中から最初のDA値が選択的にロードされると(ステップ10)、そのロードされたDA値がカウンタ(coarse)13bに設定され、DLL10−1がロックモードに切り替えられる(ロックモード/非ロックモード切替機能、ステップ11)。
ここで、ロックするまでの状態が順序回路22に残っているため、順序回路22のリセットが行われ(ステップ12)、WAIT TIME経過後、順序回路22の出力が読み込まれる(ステップ13)。
【0061】
この読み込まれた順序回路22の出力(サイクルスリップ検出信号)がどの値を示しているかが判定される(ステップ14)。
判定の結果、サイクルスリップ検出信号が「H」を示しているとき、すなわちサイクルスリップが起こっていることを示しているときは、DA値が切り替えられ(カウンタ設定値の切り替え、ステップ15)、この切り替えられたDA値においてステップ11〜ステップ15の動作が実行される。
一方、サイクルスリップ検出信号が「L」を示しているとき、すなわちサイクルスリップが起こっていないことを示しているときは、DLLのロックが完了する(ステップ16)。
【0062】
このような手順で、DLLのロックが完了するまでDA値を2〜3回切り替えることで、最適なDA値を容易かつ簡便に見つけ出すことができる。
【0063】
次に、カウンタ初期設定値の選択方法について、図11を参照して説明する。
まず、DA値は、二つ以上用意される(同図においては、DA1,DA2,DA3の三つ)。これは、CMOSのいかなるプロセスにおいても、どれか一つのDA値でDLLが必ずロックできるようにするためであり、設計時(シミュレーション時)に定められる。
【0064】
ここで、DA1,DA2,DA3を図11のように定めたものとする。
この場合、DA1をカウンタ13bに設定したときは、プロセスfastはロックするが、プロセスtypとプロセスslowはロックしない。
また、DA2をカウンタ13bに設定したときは、プロセスfastとプロセスtypはロックするが、プロセスslowはロックしない。
さらに、DA3をカウンタ13bに設定したときは、プロセスtypとプロセスslowはロックするが、プロセスfastはロックしない。
【0065】
このように、すべてのプロセスにおいてDLLがロックできるようカウンタ初期設定値がシミュレーションで定められる。
そして、サイクルスリップが検出されると、DA1→DA2→DA3のようにDA値の切り替えを行う。
これにより、CMOSのいかなるプロセスにおいても、どれか一つのDA値でDLLが必ずロックできるようになる。
【0066】
以上説明したように、本実施形態の遅延ロックループ回路によれば、遅延回路の遅延量を測定することなく、DLLをロックできるので、遅延回路の校正にかかる時間を短縮することができる。
【0067】
[遅延ロックループ回路の第二実施形態]
次に、本発明の遅延ロックループ回路の第二の実施形態について、図12を参照して説明する。
同図は、本実施形態の遅延ロックループ回路の構成を示すブロック図である。
本実施形態は、第一実施形態と比較して、サイクルスリップ検出回路の構成が相違する。すなわち、第一実施形態では、論理回路と順序回路とを備えた構成としたのに対し、本実施形態では、カウンタの最大値あるいは最小値を検出してカウンタ制御を行う最大値/最小値検出回路を備えた構成としている。他の構成要素は第一実施形態と同様である。
したがって、図12において、図1と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0068】
図12に示すように、遅延ロックループ回路10−2は、遅延回路11と、位相比較器12a、12bと、カウンタ13a、13bと、DAC14a、14bと、加算部15と、バイアス回路16と、コントロール回路17と、最大値/最小値検出回路20−2と、カウント制御手段30とを有している。
【0069】
なお、遅延回路11、位相比較器12a、12b、カウンタ13a、13b、DAC14a、14b、加算部15、バイアス回路16、コントロール回路17については、図22に示した従来の遅延ロックループ回路200における遅延回路210、位相比較器220a、220b、カウンタ230a、230b、DAC240a、240b、加算部250、バイアス回路260、コントロール回路270と同様の機能を有しているため、それらの詳細な説明は省略する。
また、カウント制御手段30についても、遅延ロックループ回路の第一実施形態におけるカウント制御手段30と同様の機能を有しているため、詳細な説明は省略する。
【0070】
ここで、サイクルスリップ検出回路20の一実施形態である最大値/最小値検出回路20−2は、カウンタ(coarse)13bのカウント値を読み出し、このカウント値が最大値又は最小値であるか否かを判定する。
判定の結果、カウント値が最大値又は最小値であるときは、出力信号がサイクルスリップを起こしているものと判定される。この場合は、カウント制御手段30でカウンタ13bに対しDA値の切り替え制御が行われる。
一方、カウント値が最大値又は最小値でないときは、出力信号がサイクルスリップを起こしていないものと判定される。この場合は、ロック可能な状態であるため、DA値の切り替えは行われない。
【0071】
次に、カウンタの値を設定してからDLLをロックさせるまでの動作(遅延量校正方法)について、図13を参照して説明する。
なお、前提として、第一実施形態と同様に、カウンタの初期設定値(DA値)については、CMOSのいかなるプロセスにおいても、どれか一つのDA値でDLLが必ずロックできるように、二つ以上のDA値が用意されている(このDA値は、シミュレーションで決める)。
【0072】
まず、複数のDA値の中から最初のDA値が選択的にロードされると(ステップ20)、そのロードされたDA値がカウンタ(coarse)13bに設定され、DLL10−2がロックモードに切り替えられる(ロックモード/非ロックモード切替機能、ステップ21)。WAIT TIME経過後、カウンタ13bのカウント値が読み込まれる(ステップ22)。
【0073】
この読み込まれたカウント値が最大値又は最小値を示しているかが判定される(ステップ23)。
判定の結果、最大値又は最小値を示しているときは、サイクルスリップが起こっているものとされて、DA値が切り替えられ(ステップ24)、この切り替えられたDA値においてステップ21〜ステップ23の動作が実行される。
一方、最大値又は最小値を示していないときは、サイクルスリップが起こっておらず、DLLのロックが完了する(ステップ25)。
【0074】
このような手順で、DLLのロックが完了するまでDA値を2〜3回切り替えることで、最適なDA値を容易かつ簡便に見つけ出すことができる。
【0075】
以上説明したように、サイクルスリップ検出回路として最大値/最小値検出回路を備えた構成とすることで、遅延回路の遅延量を測定することなく、DLLをロックでき、遅延回路の校正にかかる時間を短縮することができる。
【0076】
[タイミング発生器及び半導体試験装置]
次に、本実施形態のタイミング発生器及びそれを備えた半導体試験装置について、図14を参照して説明する。
同図に示すように、本実施形態の半導体試験装置40は、タイミング発生器41と、パターン発生器42と、波形整形器43と、論理比較回路44とを備えて構成されている。
【0077】
タイミング発生器41は、基準クロック信号を所定時間遅延した遅延クロック信号を出力する。パターン発生器42は、基準クロック信号に同期して試験パターン信号を出力する。波形整形器43は、試験パターン信号を被試験デバイス(DUT)45に応じて整形し、そのDUT45へ送る。論理比較器44は、DUT45の応答出力信号と期待値データ信号とを比較する。
【0078】
ここで、タイミング発生器41は、遅延ロックループ回路(DLL)41−1と、遅延選択部41−2とを備えている。
このタイミング発生器41の具体的な回路構成を図15に示す。
同図に示すように、タイミング発生器41のDLL41−1は、上述した本発明のDLL(例えば、図1に示すDLL10−1、図12に示すDLL10−2など)と同じ構成を有しており、複数段の論理ゲートを直列に接続した可変遅延回路を含んでいる。ただし、図1における入力信号(入力クロック)は、本実施形態の基準クロック信号に相当する。
遅延選択部41−2は、いずれかのインバータの出力を選択して遅延信号として出力する。さらに、図15に示す例では、250ps以下の遅延時間を生じさせる遅延素子41−3を備えている。
【0079】
タイミング発生器をこのような構成とすることにより、そのタイミング発生器に一以上のDLLが備えられている場合に、それらDLLの校正(キャリブレーション)に要する時間を短縮できる。
【0080】
[半導体集積回路]
次に、本実施形態の半導体集積回路について、図16を参照して説明する。
本実施形態の半導体集積回路50は、同図に示すように、例えば、四つの遅延ロックループ回路(DLL)51−1〜51−4と、各DLL51−1〜51−4へ低周波数の基準クロック信号を分配する配線52とを備えている。
各DLL51−1〜51−4の構成は、上述した本発明のDLL(例えば、図1に示すDLL10−1、図12に示すDLL10−2など)の構成と同一である。
【0081】
そして、スキューの小さな低周波数の基準クロック信号を入力信号として各DLL51−1〜51−4へ入力し、各DLL51−1〜51−4で高周波数の動作クロックをそれぞれ逓倍させることができる。その結果、クロック信号の中継バッファが不要となり、クロック信号のスキューを低減し、設計を容易化することができる。
また、基準クロック信号のスキューは、事実上、基準クロックの入力端子53から各DLL51−1〜51−4までの配線52の伝送時間により主に発生することになる。このため、本実施形態では、基準クロックの入力端子52から各DLL51−1〜51−4までの配線長を等しくしている。
【0082】
半導体集積回路をこのような構成とすると、この半導体集積回路に搭載された一以上のDLLがタイミング発生器に備えられている場合に、それらDLLの校正(キャリブレーション)に要する時間を短縮できる。
しかも、遠距離のCLK伝送を低周波で行い、ローカル部分でDLLを用いて逓倍するため、伝送部分の回路規模・消費電力を削減することができる。しかも、全体のバッファ段数が少なくてすむため、スキューも小さくすることができる。
【0083】
以上、本発明の遅延ロックループ回路、タイミング発生器、半導体試験装置、半導体集積回路及び遅延量校正方法の好ましい実施形態について説明したが、本発明に係る遅延ロックループ回路、タイミング発生器、半導体試験装置、半導体集積回路及び遅延量校正方法は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0084】
例えば、上述した第一実施形態及び第二実施形態の遅延ロックループ回路においては、位相比較器12、カウンタ13、DAコンバータ14をそれぞれ二つずつ備え、さらにコントロール回路17を備えた構成としたが、本発明の遅延ロックループ回路は、このような構成に限定されるものではない。
例えば、図17に示すように、コントロール回路17を備えない遅延ロックループ回路10−3においても、サイクルスリップ検出回路20やカウント制御手段30を備えて、サイクルスリップを自動的に検出し、遅延回路の校正を迅速に行うことができる。
【0085】
さらに、図18に示すように、位相比較器12、カウンタ13、DAコンバータ14をそれぞれ一つずつ備え、加算部15、バイアス回路16、コントロール回路17を備えない遅延ロックループ回路10−4においても、サイクルスリップ検出回路20やカウント制御手段30を備えて同様の効果を得ることができる。
【0086】
すなわち、fine系のみ備えた遅延ロックループ回路10−4にサイクルスリップ検出回路20を備え、fineのカウンタ13に少なくとも2〜3通りのDA値をロードする機能を備えれば動作は可能である。
例えば、最大カウント値1000のカウンタで、「0」,「500」,「1000」と値をロードでき、いかなるプロセス等のばらつきでもロック可能なカウント値(1〜1000の間)を有し、これらの3つのカウント値の中で、少なくとも1つの設定において、サイクルスリップしないという条件を備えれば動作可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、遅延ロックループ回路における遅延回路の校正に関する発明であるため、遅延ロックループ回路を搭載した装置や機器に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の第一実施形態における遅延ロックループ回路の構成を示すブロック図である。
【図2】サイクルスリップ検出回路の構成を示すブロック図である。
【図3】サイクルスリップ検出回路を構成する論理回路の具体例を示す回路図であって、(i)は、第一論理回路である排他的論理和回路、(ii)は、第二論理回路である否定回路及び論理積回路を示す。
【図4】サイクルスリップ検出回路を構成する順序回路の具体例を示す回路図であって、(i)は、S−Rラッチ回路、(ii)は、D−フリップフロップ回路、(iii)は、D−ラッチ回路を示す。
【図5】カウント制御手段の具体的な構成を示す回路図である。
【図6】カウント制御手段におけるシーケンサ/カウンタの出力と、この出力の各値に対応するハードウエア処理手順の動作を示す波形図である。
【図7】ロックした場合のサイクルスリップ検出回路における各波形を示す波形図である。
【図8】遅延量が短くなる方向にサイクルスリップが起こった場合のサイクルスリップ検出回路における各波形を示す波形図である。
【図9】遅延量が長くなる方向にサイクルスリップが起こった場合のサイクルスリップ検出回路における各波形を示す波形図である。
【図10】第一実施形態の遅延ロックループ回路における遅延回路の構成の動作を示すフローチャートである。
【図11】カウンタの初期設定値を示すグラフである。
【図12】本発明の第二実施形態における遅延ロックループ回路の構成を示すブロック図である。
【図13】第二実施形態の遅延ロックループ回路における遅延回路の構成の動作を示すフローチャートである。
【図14】本発明の半導体試験装置の構成を示すブロック図である。
【図15】本発明のタイミング発生器の構成を示すブロック図である。
【図16】本発明の半導体集積回路の構成を示すブロック図である。
【図17】本発明の遅延ロックループ回路の他の構成を示すブロック図である。
【図18】本発明の遅延ロックループ回路のさらに他の構成を示すブロック図である。
【図19】従来の遅延ロックループ回路の構成を示す回路図と、この遅延ロックループ回路における各信号の経時変化を示す波形図である。
【図20】従来の遅延ロックループ回路の他の構成を示す回路図である。
【図21】従来の遅延ロックループ回路において出力信号をロックする状況を説明するためのグラフである。
【図22】従来の遅延ロックループ回路のさらに他の構成を示す回路図である。
【図23】遅延回路の遅延量が1.5周期より長い場合にサイクルスリップを起こしている状態を示す波形図である。
【図24】遅延回路の遅延量が0.5周期より短い場合にサイクルスリップを起こしている状態を示す波形図である。
【符号の説明】
【0089】
10−1、10−2、10−3、10−4 遅延ロックループ回路(DLL)
11 遅延回路
12a、12b 位相比較器
13a、13b カウンタ
14a、14b DAコンバータ(DAC)
15 加算部
16 バイアス回路
17 コントロール回路
20−1 サイクルスリップ検出回路
21 論理回路
21−1 排他的論理和回路(第一論理回路)
21−2 第二論理回路
22 順序回路
22−1 S−Rラッチ回路
22−2 D−フリップフロップ回路
22−3 D−ラッチ回路
20−2 最大値/最小値検出回路
30 カウント制御手段
31 シーケンサ/カウンタ
32 デコーダ
33−1〜33−n DA値(1〜N)実現論理回路
34 論理回路
35 リセット信号生成論理回路
40 半導体試験装置
41 タイミング発生器
41−1 DLL
50 半導体集積回路
51−1〜51−4 DLL

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の遅延量を有する複数の遅延素子を縦続接続するとともに、入力信号に所定の遅延量を与えて、これを出力信号として出力する遅延回路と、
前記入力信号と前記出力信号との位相差にもとづく位相信号を出力する位相比較器と、
この位相比較器から前記位相信号を入力し、制御信号を出力するカウンタと、
このカウンタから前記制御信号を入力し、遅延時間信号を出力する遅延時間取得部とを備えた遅延ロックループ回路であって、
前記出力信号がサイクルスリップを起こしているか否かを検出するサイクルスリップ検出回路と、
前記サイクルスリップを起こしていることが検出されると前記カウンタのカウント値を制御するカウント制御手段とを備えた
ことを特徴とする遅延ロックループ回路。
【請求項2】
前記サイクルスリップ検出回路が、
前記入力信号と前記出力信号とを入力し、それら入力信号と出力信号との位相が一致しているか否かを示す位相差検出信号を出力する論理回路と、
この論理回路からの前記位相差検出信号にもとづき、前記出力信号がサイクルスリップを起こしているか否かを示すサイクルスリップ検出信号を出力する順序回路とを有した
ことを特徴とする請求項1記載の遅延ロックループ回路。
【請求項3】
前記論理回路が、
論理積回路とこの論理積回路の一方の入力信号を否定する否定回路とを組み合わせた回路、
又は排他的論理和回路を有した
ことを特徴とする請求項2記載の遅延ロックループ回路。
【請求項4】
前記順序回路が、
S−Rラッチ回路、Dフリップフロップ回路、D−ラッチ回路のうちの一つ以上を含む
ことを特徴とする請求項2又は3記載の遅延ロックループ回路。
【請求項5】
前記遅延時間取得部が、異なる分解能で複数備えられ、
前記カウンタが、前記複数の遅延時間取得部にそれぞれ対応して複数備えられ、
前記カウント制御手段が、粗い分解能の遅延時間取得部に対応して備えられたカウンタにおけるカウント値を制御する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の遅延ロックループ回路。
【請求項6】
前記サイクルスリップ検出回路が、
前記カウンタのカウント値が最大値又は最小値を示しているか否かを検出する最大値/最小値検出回路を有し、
前記カウント制御手段が、前記カウント値が最大値又は最小値を示していると前記サイクルスリップを起こしているものとして、前記カウンタのカウント値を制御する
ことを特徴とする請求項1記載の遅延ロックループ回路。
【請求項7】
同一の遅延量を有する複数の遅延素子が縦続接続された遅延回路を含む遅延ロックループ回路と、
いずれかの遅延素子の出力を選択し、これを遅延信号として出力する遅延選択部とを備えたタイミング発生器であって、
前記遅延ロックループ回路が、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の遅延ロックループ回路からなる
ことを特徴とするタイミング発生器。
【請求項8】
基準クロック信号を所定時間遅延した遅延クロック信号を出力するタイミング発生器と、
前記基準クロック信号に同期して試験パターン信号を出力するパターン発生器と、
前記試験パターン信号を被試験デバイスに応じて整形し、当該被試験デバイスへ送る波形整形器と、
前記被試験デバイスの応答出力信号と期待値データ信号とを比較する論理比較器とを備えた半導体試験装置であって、
前記タイミング発生器が、請求項7記載のタイミング発生器からなる
ことを特徴とする半導体試験装置。
【請求項9】
発振周波数が互いに等しい複数の遅延ロックループ回路と、
各遅延ロックループ回路へ、前記発振周波数よりも低周波数の基準クロック信号を分配する配線とを備えた半導体集積回路であって、
前記遅延ロックループ回路が、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の遅延ロックループ回路からなる
ことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項10】
遅延ロックループ回路の遅延回路が出力信号に与えた遅延量を校正する遅延量校正方法であって、
カウンタにおける複数の初期設定値のうちの一つの初期設定値をロードし、
前記出力信号の遅延量が前記遅延回路の入力信号に対する所定の遅延量となるようにロックモードを実行し、
前記サイクルスリップ検出回路でサイクルスリップが検出されると、他の初期設定値をロードして前記ロックモードを実行し、
前記サイクルスリップ検出回路でサイクルスリップが検出されなくなると、前記出力信号の遅延量がロックされて終了する
ことを特徴とする遅延量校正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2007−124141(P2007−124141A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311661(P2005−311661)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【Fターム(参考)】