説明

選択エピタキシャル成長プロセスの改良方法

【課題】選択エピタキシャル成長プロセスの特性を改良する方法を提供する。
【解決手段】選択エピタキシャル成長工程を用いた半導体装置の製造方法であって、少なくとも、半導体基板を供給する工程と、半導体基板の上に絶縁性材料のパターンを形成し、これによりカバーされおよびカバーされない表面を形成する工程と、形成された絶縁性材料のパターンを有する半導体基板の、カバーされたおよびカバーされない表面を洗浄する工程と、絶縁性材料のパターンを有する基板をエピタキシャルリアクタの反応チャンバ中に入れる工程と、可能であれば少なくとも1つの第1キャリアガスと共に、少なくとも1つの半導体ソースガスを、エピタキシャルリアクタの反応チャンバ中に導入する工程を含む選択エピタキシャル成長を開始する工程とを含み、選択エピタキシャル成長を開始する工程に先立って、反応チャンバ中で、可能であれば第2キャリアガスと共に、ハロゲン含有エッチングガスを導入して、基板の表面にその場前処理が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびエピタキシャル半導体層を選択的に形成する方法を用いたその製造の分野に関する。
【0002】
更に、本発明は、選択エピタキシャル成長(SEG)を用いた半導体装置の改良された製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エピタキシャル成長は、単結晶基板上に、単結晶材料の薄層(一般には0.5から20μm)を堆積させるプロセスであり、通常、化学気相成長(CVD)が用いられる。エピタキシャル成長は、成長/堆積する層の結晶構造と、基板の結晶構造との間の整合の程度により定義される。
【0004】
半導体製造において、様々な形態に材料を堆積するためにCVDが広く用いられる。例えば、半導体産業において、CVDは、高純度および高性能の固体材料の薄膜を形成するために用いられる化学プロセスである。一般的なCVDプロセスでは、基板が、1またはそれ以上の、基板の表面上で反応および/または分解して要求された材料の所望の薄膜を形成する揮発性前駆体(半導体ソースガス)に晒される。
【0005】
低温エピタキシャル成長は、先端の相補型金属酸化物半導体(CMOS)およびバイポーラ相補型金属酸化物半導体(BiCMOS)の電気的特性を改良するために、デバイス製造において非常に魅力的である。CMOSは、デジタルロジックおよびアナログ回路の双方をカバーできる集積回路の主要クラスである。
【0006】
特に、シリコン、シリコン−ゲルマニウム、純粋のゲルマニウム、およびGaAsやInGaAsのようなIII/V族の選択エピタキシャル成長(SEG)は、3次元バイポーラ、金属酸化物半導体(MOS)、バイポーラ相補型金属酸化物半導体(BiCMOS)、およびシリコンオンインシュレータ(SOI)装置に用いられる超集積回路(VLSI)や超々集積回路(ULSI)の製造に重要な役割を果たす。絶縁体/誘電体マスク材料に形成されたパターニング構造を有する半導体基板の場合、SEGは、半導体材料のエピタキシャル成長が、半導体基板の露出した(カバーされていない)領域のみで起きるプロセスである。絶縁体/誘電体マスクで覆われた領域で堆積/成長が起きない場合、このプロセスは「選択的」と呼ばれる。この技術は、非常に先端的なデバイスのセルフアライメント処理の可能性により、魅力的な多くの興味を有する。SEGの幾つかの重要な適用は、(i)BiCMOS技術でのヘテロ接合バイポーラトランジスタのベース層スタック、(ii)シリコンオンインシュレータ(SOI)ウエハ上と同様にバルクSi上の高くなったソース/ドレイン領域、(iii)パターニングされたSiウエハのSi上またはシャロートレンチ分離(STI)上へのGeの成長、(iv)GeまたはSTIパターニングされたウエハ上へのIII/Vの成長、である。STIは、隣接する半導体装置要素の間の電流リークを防止する集積回路構造である。
【0007】
SEGは、2つのクラスに分離可能な、即ち塩素を用いるものと用いないもののような、様々な堆積化学のために使用されている。一般には、塩素の無い雰囲気での無制限のSEGは、1100℃より高い温度でのみ可能となる。この温度より低い場合、絶縁表面上に、一定のSiの核成長が起き、多結晶シリコンの堆積が起きる。多結晶シリコンの堆積は、基板上の多結晶シリコン層の堆積プロセスである。
【0008】
低い温度における、SEGプロセスの選択性(SEG中に、材料はベア基板の上には成長/堆積するが、絶縁体/誘電体材料の上には成長/堆積しないことを意味する)は、例えばSiHとHCl、またはHClを含むまたは含まないSiHCl(DCS)、を含む塩素混合物について示されている。かかる塩素成分は、絶縁体表面から、核の大きさが臨界に達する前に核を除去することができる。絶縁体表面でSi核形成が無い場合、選択性が増加する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、Caymaxらが"Proceedings of the 206th Meeting of the Electrochemical Society (Abs 1363, 2004)"で述べたように、塩素ベースの化学薬品を用いた場合でも、完全な選択性が常に保証されるわけではない。Si核形成を抑制するために、エッチングガス(例えばHCl)が半導体ソースガス/前駆体に加えられる。
【0010】
エッチングは、製造中にウエハの表面から化学的に層を除去するために、微細加工で用いられる。
【0011】
前処理の変化(例えばウエット洗浄工程中に用いられる化学薬品の濃度の変化、堆積された窒化層材料の組成/ストイキオメトリの変化、ウエット化学薬品またはキャリアガスやプロセスガスに起因する一般的な汚染(湿気、有機物、金属))は、絶縁体の組成の変化と同様に、選択性の低下に至ることが知られている。絶縁体の表面の欠陥、汚染、または不均一は、Siの核形成を促進する。拡大されたSiの核形成を補償するために、エッチングガスのより高い流れが必要となる。これは成長速度に負の影響を与え、他の望まない影響(例えばファセッティング)に対するプロセスを制御する。これは、特に製造において、重要な問題を引き起こす。
【0012】
このように、SEGプロセスの選択性は、絶縁体材料の選択、堆積される方法、およびSEG前の工程により影響されるため、SEGに先立つ工程の変化や汚染に対して、より強いSEGプロセスを提供することが望まれる。
【0013】
本発明は、従来技術の欠点が存在しない、選択エピタキシャル成長を用いた半導体装置を製造するための改良された方法の提供を目的とする。
【0014】
特に、本発明は、深いサブミクロンCMOS用のSEG工程の熱量を強く制限した処理を目的とする。
【0015】
本発明の好ましい目的は、半導体基板の表面処理の方法を提供することであり、より少ない反応性の表面にし、選択エピタキシャルプロセスのためのより広いプロセスウインドウを維持することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、ファセッティングまたはn型とp型に注入された基板で異なる成長速度を調整する余地を与える改良された方法を提供することにある。
【0017】
本発明は、例えば選択性の増加のような、選択エピタキシャル成長プロセスの特性を改良する方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、更には、以下のような、選択エピタキシャル成長(SEG)工程を用いた半導体装置の製造方法の提供を目的とする。
かかる製造方法は、少なくとも、
半導体基板を供給する工程と、
半導体基板の上に絶縁性材料のパターンを形成し、これによりカバーされおよびカバーされない表面を形成する工程と、
形成された絶縁性材料のパターンを有する半導体基板の、カバーされたおよびカバーされない表面を洗浄する工程と、
絶縁性材料のパターンを有する基板をエピタキシャルリアクタの反応チャンバ中に入れる工程と、
可能であれば少なくとも1つの第1キャリアガスと共に、少なくとも1つの半導体ソースガスを、エピタキシャルリアクタの反応チャンバ中に導入する工程を含む選択エピタキシャル成長を開始する工程とを含む。
【0019】
本発明によれば、かかるプロセスは、選択エピタキシャル成長を開始する工程に先立って、反応チャンバ中で、可能であれば第2キャリアガスと共にハロゲン含有エッチングガスを導入して、基板の表面にその場前処理が行われることを特徴とする。
【0020】
更には、本発明によれば、基板をエピタキシャルリアクタに導入するのに先立って、基板に洗浄工程が行われる。
【0021】
更には、洗浄工程は、ウエット洗浄および/またはウエットエッチング処理を含む。
【0022】
好適には、半導体基板は、単結晶シリコン基板、単結晶ゲルマニウム基板、単結晶シリコンゲルマニウム基板、単結晶シリコンゲルマニウムカーバイド基板、単結晶シリコンカーバイド基板、およびシリコンオンインシュレータ(SOI)基板からなる組から選択される。
【0023】
好適には、絶縁性材料は、誘電体材料であり、好ましくは、二酸化シリコン(SiO)または窒化シリコン(Si)である。
【0024】
好適には、主な半導体ソースガスは、シリコンソースガス、ゲルマニウムソースガス、シリコンゲルマニウムソースガス、III/Vソースガス、カーボンソースガス、およびゲルミルシランガスおよびその混合ガスの組から選択されるソースガス、からなる組から選択される。
【0025】
好適には、ハロゲン含有エッチングガスは、FまたはClを含有するガスであり、更に好適には、HClガス、Clガス、希釈されたHClガス、および希釈されたClガスのようなCl含有ガス、または他のフッ素含有ガス、またはそれらの混合ガスである。
【0026】
好適には、差異1および/または第2のキャリアガスは、Hガスまたは不活性ガスである。
【0027】
好適な具体例では、ハロゲン含有エッチングガスの導入は、少なくとも1つの半導体ソースガスの導入に先立って少なくとも1回行われ、少なくとも1つの半導体ソースガスの導入する間に、ハロゲン含有エッチングガスの導入は、中断すること無く続けられる。
【0028】
他の好適な具体例では、ハロゲン含有エッチングガスの導入は、少なくとも1つの半導体ソースガスの導入に先立って少なくとも1回行われ、少なくとも1つの半導体ソースガスの導入しながら、ハロゲン含有エッチングガスの導入は、停止し、再開される。
【0029】
他の好適な具体例では、少なくとも1つの半導体ソースガスの導入と、ハロゲン含有エッチングガスの導入とが、繰り返し行われる。
【0030】
好適には、選択エピタキシャル成長工程に先立って行われるハロゲン含有エッチングガスを用いたその場前処理は、その場H熱アニールにより行われる。
【0031】
より好適には、その場H熱アニールの温度は、ハロゲン含有エッチングガスを用いたその場前処理の温度より高い。
【0032】
より好適には、その場H熱アニールは、700℃と900℃の間の温度、より好ましくは700℃と850℃の間の温度で行われる。
【0033】
好適な具体例では、ハロゲン含有エッチングガスを用いたその場前処理の温度は、選択エピタキシャル成長工程の温度より高い温度で行われる。
【0034】
他の好適な具体例では、ハロゲン含有エッチングガスを用いたその場前処理の温度は、選択エピタキシャル成長工程の温度より低い温度で行われる。
【0035】
好適には、選択エピタキシャル成長は、500℃と900℃の間の温度で行われる。
【0036】
好適には、選択エピタキシャル成長は、減圧(LPCVD)または大気圧で行われる。
【0037】
より好適には、ハロゲン含有エッチングガスを用いたその場前処理は、500℃と900℃の間の温度、好ましくは550℃と750℃の間の温度で行われる。
【0038】
より好適には、ハロゲン含有エッチングガスを用いたその場前処理の温度は、900℃より低い。
【0039】
より好適には、ハロゲン含有エッチングガスを用いたその場前処理の最小継続時間は、少なくとも1秒で、好適には少なくとも1分である。
【0040】
好適には、ハロゲン含有エッチングガスを用いたその場前処理は、少なくとも30秒、より好ましくは1〜10分間、より好ましくは1〜8分間、より好ましくは2〜4分間行われる。
【0041】
有利には、ハロゲン含有エッチングガスを用いたその場前処理中に必要とされるエッチングの量が、0.5Å〜10Åの半導体材料のエッチングより少ないか同じとなるように、処理の温度と時間が決められるべきである。
【0042】
好適には、前処理中に、10Åより少なく、より好適には5Åより少ない半導体材料が、カバーされていない表面から除去される。
【0043】
本発明で使用される「その場(in situ)」の語は、エピタキシャルリアクタの反応チャンバの内側を意味する。
【0044】
本発明で使用される「絶縁(insulating)」は、非導電性材料で囲むことにより電流経路を妨げる特性をいう。
【0045】
本発明で使用される「絶縁体(insulator)」の語は、絶縁性の、即ち非電気伝導性の材料をいう。
【0046】
本発明で使用される「誘電体(dielectric)」は、非電気伝導性を意味する。
【0047】
本発明において、「絶縁体(insulator)」と「誘電体(dielectric)」の語は等価であることが理解される。
【0048】
本発明で使用される「導入(injection)」の語は、ガスの導入を開始し、所定の期間この導入を続ける行動を意味する。
【0049】
期間は、開始時間と終了時間により定義されることが理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
本発明の目的は、限定されない具体例や図面を用いて更に詳細に説明されるであろう。
【0051】
一の形態では、本発明はCMOS装置のような半導体装置の製造方法に関する。非単結晶パターンが単結晶半導体基板の上に形成される。CMOSの場合、絶縁体スペーサが非単結晶パターンの側壁上に形成される。
【0052】
絶縁性スペーサを有する基板の表面は、反応チャンバに導入される前に、洗浄され、自然酸化膜を除去するためのウエットエッチング処理が行われても良い。周囲の環境に晒された場合に(ベアの)基板の上に自然酸化膜が成長するため、洗浄および/またはウエットエッチング処理であるこの処理は、エピタキシャル成長の直前に必要である。
【0053】
例えば希釈されたHF工程のようなウエットエッチ処理は、絶縁性材料の反応性を増幅させ、選択エピタキシャル成長中の選択性の低下に繋がる。洗浄処理(ウエットエッチング)の後に、絶縁性スペーサを有する基板が、エピタキシャル装置の反応チャンバに入れられる。
【0054】
第1のアニール工程が、次に、選択的に基板に適用される。アニール工程は、反応チャンバ中にキャリアガスを導入して行われる。水素がキャリアガスとして用いられ、アニール工程が、好適には700℃と900℃の間の温度で行われる。
【0055】
次に、アニール工程が終了した後に、エッチングガスを用いたその場前処理が行われる。半導体ソースガスの導入に先立って、エッチングガスが反応チャンバ中に導入される。これにより、絶縁性材料の増幅された反応性の補正が行われる。少なくとも1つの半導体ソースガスが反応チャンバに導入された時に、選択エピタキシャル成長が始まる。その場前処理中や選択エピタキシャル成長中に、中断することなくエッチングガスを続けて供給しても良いが、使用される流速は、工程によって異なる。
【0056】
一の具体例では、スペーサは、一般には、酸化シリコンや窒化シリコンのようなシリコンベースの誘電体材料を含む。
【0057】
幾つかの具体例では、単結晶半導体基板は、以下の基板、即ち、異なった組成のSi、Ge、SiGe、SiGeC、およびSiC、またはシリコンオンインシュレータ(SOI)基板の1つであっても良い。
【0058】
他の具体例では、非単結晶半導体誘電体パターンが、アモルファス半導体層または多結晶半導体層から形成される。アモルファス半導体層または多結晶半導体層は、シリコン層、ガリウム層、シリコンガリウム層、または金属ゲート材料でも良い。
【0059】
他の好適な具体例では、エッチングガスは、エピタキシャル半導体層と反応し、バルク絶縁体材料をエッチングしないハロゲン成分を含むことが好ましい。従って、その場処理は、絶縁性材料の薄い表面層のみに影響する。ハロゲン含有エッチングガスは、HClガス、Clガス、希釈されたHCl、または希釈されたClガスであっても良い。希釈されたHClガスは、HClとHの混合ガス、またはHClと不活性ガス(例えばArまたはHe)の混合ガスであっても良い。希釈されたClガスは、ClとHの混合ガス、またはClと不活性ガス(例えばArまたはHe)の混合ガスであっても良い。
【0060】
他の具体例では、半導体ソースガスは、シリコンソースガス、ゲルマニウムソースガス、およびシリコンゲルマソースガスの内の1つ、またはIII/V又はそれらの混合でも良い。シリコンソースガスは、シラン(SiH)ガス、ジシラン(Si)ガス、ジクロロシラン(SiHCl)ガス、SiHClガス、およびSiClガスのうちの1つであっても良く、ゲルマニウムソースガスはGeHガスであっても良い。半導体ソースガスは、また、例えばHGeSiH、(HGe)SiH、(HGe)SiH、(HGe)Siのようなゲルミルシランのファミリーのより先端的なガスの1つでも良く、または、SiCおよびSiGeCの成長のために炭素ソースガスを含んでも良い、炭素ソースガスは、CガスまたはCHSiHガスであっても良い。半導体ソースガスは、n型ドーピングのためにはフォスフィン(PH)のようなドーピングガスを含み、p型ドーピングのためにはジボラン(B)のようなドーピングガスを含むことが好ましい。
【0061】
絶縁性材料(例えばSiO、Si、SiC、または重合体材料)の選択、およびこれが堆積される方法のほかに、洗浄や希釈されたHFへの浸責のようなSEGに先立つ処理工程が、SEGプロセスの選択性に重要な影響を与えることも注意すべきである。
【0062】
ディープサブミクロンCMOSプロセスの選択エピタキシャル成長の熱量に対する強い制限のため、成長に先立って、ほとんどの自然酸化物を除去するためにHF浸責を行うことが必要となる。負の副作用として、HF浸責は、絶縁性材料の表面をより反応性にし、これは、成長が選択されるプロセスウインドウを狭くする。拡張された反応性は、窒化シリコンおよび酸化シリコンのような絶縁性材料で観察される。
【0063】
特に、窒化シリコンの場合、エピタキシャル成長に先立って行われ、自然酸化物を除去する希釈されたHF工程がそれに続く、洗浄工程は、Si表面をより反応性にし、SEG中の選択性の低下を導くこと注意すべきである。更には、希釈されたHFで処理されたSi表面では、未洗浄の表面より多くの核成長が起きることが観察されている。形成された核の数の増加は、表面の反応性の直接的な測定である。
【0064】
HF後の窒化物表面の増加した反応性は、以下の実験により観察される。窒化物表面上への、ジクロロシラン(DCS)を用いた短時間の堆積である。DCSは、Clを含むため、余分にHClを加えることなくほぼ選択性を有するSi前駆体ガスである。堆積時間が非常に短時間であるため、詰まった層の代わりに、分離した核のみが窒化物の表面に形成される。所定の堆積時間に形成される核の数を数えることができ、これは表面の反応性や反応性ガスおよび反応管の状態の、直接的な測定となる。
【0065】
この方法を用いることにより、DCS堆積に先立って窒化物の表面がHF浸責された場合、少なくとも桁のオーダでの核の数の増加が観察される。
【0066】
拡張された窒化物の反応性は、以下の実験により示される。即ち、3つのシリコンウエハに対して、最初に20nmのPECVD窒化物が堆積され、続いて、過酸化アンモニウム混合液(HOH/H/HO=1:1:5)からなる標準的なSC1洗浄が行われ、続いてDIリンスと乾燥が行われる。
【0067】
全てのウエハは、短時間のDCSを用いた堆積のために、エピタキシャル(エピ)リアクタに入れられる。エピタキシャル成長工程に先立って、ウエハ2、3は、2%HF中で30秒間、余分のHF浸責処理が行われる。DCS堆積に先立って、ウエハ3は、エピリアクタ中でその場HCl前処理が行われる。表1は、全てのこれらの場合の、エピ堆積の前後における粒子測定の結果をまとめたものである。
【0068】
堆積前において、全てのウエハは、同程度の光点欠陥(LPD:Light Point Defect)を示す。表1から分かるように、異なるビン(ビン(bin)は、粒子直径に基づく粒子サイズのばらつきの特定の範囲をいう)についての分布は等しく、ヘイズ(haze:粒子測定ツールにより与えられるバックグラウンドのスキャッタリング情報であり、例えば直径が50nm以下の小さな粒子の存在のような、表面の小さな寸法の変化を測定する)は、同様の値を示している。3つのウエハ全てについて、0.1ミクロンより大きい直径のLPDに対応して、ビン1について約250カウントが測定され、ヘイズは、0.15ppmより低い値を示す。
【0069】
堆積の後、ビン1におけるLPDの数は、ウエハ2、3でずっと大きくなり、これらは堆積前に希釈されたHF浸責を行ったものである。ウエハ2の場合、ビン1および2の双方が飽和し、平均ヘイズは約8.089ppmであり、窒化物表面において、多数の小さな核が存在することを示している。
【0070】
エピリアクタ中のその場HCl前処理が続いて行われる、最初の希釈されたHF浸責をDCS堆積に先立って行ったウエハ3は、堆積後において、LPDの数が十分に低減されている。ヘイズは、約30%低くなり、ビン2の値(0.150ミクロンより大きな直径を有するLPD)は、20802から530に減っており、これはウエハ1の値と実際に似ている。この場合、窒化物表面の増加した反応性は、その場HCl前処理により減少した。
【0071】
それゆえに、SEGプロセスに先立つその場HCl前処理は、最初に希釈されたHF処理により影響された、窒化物の上面層のストイキオメトリを回復させる。
【0072】
更に、その場HCl処理はプロセスパラメータの他の変動を補正できるため、SEGプロセスはより確固となる。
【0073】
例えば、SEGプロセス中に加えられる(HCl)エッチングガス流のために、臨界値より低い値が使用される。臨界値は、その場HCl前処理無しに、窒化物に対して十分な選択性を有するために必要とされる、最小エッチングガスの流速をいう。その場HCl前処理の他の特徴は、エッチングガス(HCl)の流速を低くすることにより、ファセッティングやn型とp型の注入基板上の成長遅速度の差について、プロセスを調整する余地が大きくなるということである。
【0074】
同時に、その場HCl前処理を導入することにより、SEGプロセスが、洗浄により導入される変化、堆積された窒化物層のストイキオメトリ、キャリアガス/プロセスガスから、または洗浄バスからの金属または水分の汚染に対してより確固となる。
【0075】
更に、表面の高ドープ層をエッチングすることにより、n型およびp型の半導体基板上の成長速度の差の低減が、達成される。
【0076】
HF浸責に先立って、アズデポ(as-deposited)層上の窒化物層の上に薄い酸化層がありそうであり、これは実際にXPS測定により確認されている。薄い酸化層は、HP浸責によりほぼ完全に除去され、SEG中の選択性低下に潜在的に繋がる。なぜなら、酸化物に対する選択性が、窒化物に対する選択性より良好であることが知られているためである。
【0077】
好ましい具体例では、プロセスフローは、少なくとも以下の工程を含む。
(I)ウエット洗浄工程、(標準的なRCA洗浄の第1工程として良く知られている)SC1洗浄でも良い。
(II)希釈されたHF処理(浸責)、一般にはHF2%で30秒。
(III)温度が700〜900℃のH雰囲気中で1〜10分の熱アニール。
(IV)20〜40slm水素中で希釈された50〜100sccmのHCl流を用いた、500〜900℃の間の温度でのその場HCl前処理、それぞれの時間は2〜4分の間が好ましい。
(V)エッチングガス(例えばHCl)と少なくとも1つのソースガス(例えばSiH、SiCl)とを同時に供給することにより選択エピタキシャル成長。
【0078】
それらの工程は、好ましくは連続的な工程である。
【0079】
その場HCl前処理(上記手順および図1の工程IV)は、選択エピタキシャル成長(V)に先立って行われ、選択的には、その場Hアニール(III)が、その前に行われる。工程(I)、(II)は、好ましくはエピリアクタ外でのウエット処理操作である。工程(III)〜(V)は、エピリアクタ中でその場で行われる。
【0080】
図2は、その場HCl前処理が、少なくとも1つの半導体ソースガスの導入の直前に行われる場合を示す。本発明によれば、エッチングガス(HCl)の導入は、少なくとも1つの半導体ソースガスの導入(t0)前に時間間隔δ0をおいて始められる。
【0081】
図2のAに示された好ましい具体例によれば、エッチングガス(HCl)の導入は、少なくとも1つの半導体ソースガスの導入後も中断することなく続けられる。
【0082】
図2のBに示す他の具体例によれば、エッチングガス(HCl)の導入は、少なくとも1つの半導体ソースガスの導入(t0)前に時間間隔δ0をおいて始められるが、続いて中断され、少なくとも1つの半導体ソースガスの導入とともに再開される。
【0083】
図2のBの場合、エピタキシャル工程の堆積温度は、その場前処理温度より低くなり、ハロゲン種の脱着を防止し、保護効果を持続させる。
【0084】
図2のCは、複数の工程(n)の堆積を示し、エッチングガス(HCl)の導入は、少なくとも1つの半導体ソースガスの導入(ti、i=0〜n)前に毎回、時間間隔δiをおいて始められる。図2のCの場合、堆積工程(i)は、堆積工程(i−1)が終了した直後に開始することができる。
【0085】
工程(2)、(2)’または(2)’’中のいずれかの半導体ソースガスの導入温度に比較して、工程(1)、(1)’または(1)’’中のハロゲン含有エッチングガスの導入温度は、同じまたは異なって、より高くてもより低くても良い。
【0086】
工程(1)、(1)’および(1)’’中のハロゲン含有エッチングガスは、工程(2)、(2)’ および(2)’’中の半導体ソースガスと同様に、同じまたは異なって、より高くてもより低くても良い。
【0087】
工程(2)、(2)’ および(2)’’中のいずれかの半導体ソースガスの導入中に、工程(1)、(1)’ および(1)’’中のガスが、メインエッチングガスとして供給される。
【0088】
好ましい具体例では、図1の工程VIに対応する工程(1)、(1)’ および(1)’’に記載されたその場(HCl)前処理が、好適には500〜900℃の間の温度で行われ、より好適には500〜850℃の間の温度で行われ、更により好適には550〜750℃の温度で行われる。
【0089】
好ましい具体例では、図1の工程VIに対応する工程(1)、(1)’ および(1)’’に記載されたその場(HCl)前処理の温度は、Cl保護種の脱着を防止するために、900℃より低くすべきである。
【0090】
好ましい具体例では、図1の工程VIに対応する工程(1)、(1)’ および(1)’’に記載されたその場(HCl)前処理は、少なくとも30秒の継続時間を有し、好適には1〜10分間であり、より好適には1〜8分間であり、更に好適には、2〜4分間である。
【0091】
他の好ましい具体例では、図1の工程VIに対応する工程(1)、(1)’ および(1)’’に記載されたその場(HCl)前処理の最小の継続期間は、少なくとも1秒であり、好適には少なくとも1分である。
【0092】
その場前処理中に必要とあれるエッチング料は、半導体材料の0.5Å〜2Åのエッチングより少ないかまたは等しく、これは最も先進的なプロセスフローにも適用可能である。
【0093】
表2および図3は、1秒のHCl前処理(希釈されたHFで処理された窒化物表面で行われる)が、表面の初期ヘイズ値(ジクロロシラン(DCS)の短時間堆積で窒化物表面の上に形成された、50nmより小さな直径を有する核の数により測定される)の改良に繋がることを示す。ヘイズ値は、更に、前処理時間を増加することにより改良され、30秒後に最も低い値が得られる。(所定の前処理時間の間の)HClの流れの増加は、またヘイズ値を改良する。
【0094】
得られた有利な効果は、(1)希釈されたHFによる非常に薄い酸化層を除去した後に窒化物表面に存在する表面ダングリングボンドをClが保護するという事実、または(2)その場HCl処理は余分のSiをエッチングし、表面ストイキオメトリを回復させるのに対し、希釈されたHFは、優先的なNのエッチングによりSiリッチな表面にするという事実、のいずれかで説明できる。
【0095】
【表1】

堆積前後において、LPCVD窒化物の上で測定された粒子数
【0096】
【表2】

異なったHClその場前処理時間についてのヘイズの測定(50nmより小さい直径を有する核の反射数)
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】反応チャンバに半導体ソースガスを導入するのに先立つ、その場(HCl)前処理を備えたプロセスシーケンスであって、工程III〜Vはエピリアクタ中で行われるプロセスシーケンスを示す。
【図2】本発明の異なる具体例のタイムスケジュールの概要を示す。
【図3】異なるHClその場前処理にかかるヘイズの測定を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択エピタキシャル成長(SEG)工程を用いた半導体装置の製造方法であって、少なくとも、
半導体基板を供給する工程と、
半導体基板の上に絶縁性材料のパターンを形成し、これによりカバーされおよびカバーされない表面を形成する工程と、
形成された絶縁性材料のパターンを有する半導体基板の、カバーされたおよびカバーされない表面を洗浄する工程と、
絶縁性材料のパターンを有する基板をエピタキシャルリアクタの反応チャンバ中に入れる工程と、
少なくとも1つの第1キャリアガスと共に少なくとも1つの半導体ソースガスを、エピタキシャルリアクタの反応チャンバ中に導入する工程を含む選択エピタキシャル成長を開始する工程と、を含み、
選択エピタキシャル成長を開始する工程に先立って、反応チャンバ中で、第2キャリアガスと共にハロゲン含有エッチングガスを導入して、基板の表面にその場前処理が行われることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
半導体基板は、単結晶シリコン基板、単結晶ゲルマニウム基板、単結晶シリコンゲルマニウム基板、単結晶シリコンゲルマニウムカーバイド基板、単結晶シリコンカーバイド基板、およびシリコンオンインシュレータ(SOI)基板からなる組から選択される請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
絶縁性材料は、誘電体材料であり、好適には、二酸化シリコン(SiO)または窒化シリコン(Si)である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
洗浄工程は、ウエット洗浄処理および/またはウエットエッチング処理を含む請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
主な半導体ソースガスは、シリコンソースガス、ゲルマニウムソースガス、シリコンゲルマニウムソースガス、III/Vソースガス、カーボンソースガス、およびゲルミルシランガスおよびその混合ガスの組から選択されるソースガス、からなる組から選択される請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
第1および/または第2のキャリアガスは、Hガスまたは不活性ガスである請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
ハロゲン含有エッチングガスは、HClガス、Clガス、希釈されたHClガス、および希釈されたClガスからなる組から選択される請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
希釈されたHClガスは、HClとHガスの混合ガス、またはHClと不活性ガスである請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
希釈されたClガスは、ClとHの混合ガス、またはClと不活性ガスの混合ガスである請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
ハロゲン含有エッチングガスの導入は、少なくとも1つの半導体ソースガスの導入に先立って少なくとも1回行われ、
少なくとも1つの半導体ソースガスの導入する間に、ハロゲン含有エッチングガスの導入は、中断すること無く続けられる請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
ハロゲン含有エッチングガスの導入は、少なくとも1つの半導体ソースガスの導入に先立って少なくとも1回行われ、
少なくとも1つの半導体ソースガスの導入しながら、ハロゲン含有エッチングガスの導入は、停止し、再開される請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
少なくとも1つの半導体ソースガスの導入と、ハロゲン含有エッチングガスの導入とが、繰り返し行われる請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
選択エピタキシャル成長工程に先立つハロゲン含有エッチングガスを用いたその場前処理は、その場H熱アニールで行われる請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
その場H熱アニールの温度は、ハロゲン含有エッチングガスを用いたその場前処理の温度より高い請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
ハロゲン含有エッチングガスを用いたその場前処理は、500℃と900℃の間の温度、好適には550℃と750℃の間の温度で行われる請求項1〜14のいずれかに記載の製造方法。
【請求項16】
ハロゲン含有エッチングガスを用いたその場前処理は、少なくとも1秒行われる請求項1〜15のいずれかに記載の製造方法。
【請求項17】
ハロゲン含有エッチングガスを用いたその場前処理の継続時間は、少なくとも30秒で、好適には少なくとも1分である請求項1〜16のいずれかに記載の製造方法。
【請求項18】
ハロゲン含有エッチングガスを用いたその場前処理は、1〜10分間、好適には1〜8分間、より好適には2〜4分間行われる請求項1〜17のいずれかに記載の製造方法。
【請求項19】
ハロゲン含有エッチングガスを用いたその場前処理中に必要とされるエッチングの量は、0.5Å〜10Åの半導体材料のエッチングより少ないか同じである請求項1〜18のいずれかに記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−160123(P2008−160123A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−328923(P2007−328923)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(591060898)アンテルユニヴェルシテール・ミクロ−エレクトロニカ・サントリュム・ヴェー・ゼッド・ドゥブルヴェ (302)
【氏名又は名称原語表記】INTERUNIVERSITAIR MICRO−ELEKTRONICA CENTRUM VZW
【Fターム(参考)】