説明

配線部材、その製造方法及びそれを用いた電子部品

【課題】600℃〜700℃の高温であっても高い耐酸化性と低抵抗を両立し、かつ低コストで形成可能な配線材料を提供する。
【解決手段】基板上に形成される銅配線と、銅配線上に50nm以上200nm以下の膜厚で形成される50重量%以上のアルミニウムを含有する銅合金薄膜と、を具備する配線部材を用いる。上記銅配線の膜厚は、1μm以上50μm以下である。基板と銅配線の間には下地層が配置されている。配線部材の電気抵抗率は、4×10-6Ωcm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温の酸化雰囲気中の焼成に対する高い耐酸化性を有し、かつ低抵抗で低コストな配線部材、その製造方法及びそれを用いた電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイや液晶等のフラットパネルディスプレイやLSIに代表される半導体素子,太陽電池パネルなどのいわゆる電子部品の配線材料として、広く銀や銅などの金属配線材料が使用されている。このうち、特にプラズマディスプレイパネルや液晶表示装置,太陽電池などの素子の作製工程中に600℃〜700℃程度の高温の熱処理が必要な場合には、このような工程を経ても酸化せず、高い電気導電率を有する銀配線が使用されている。
【0003】
近年、地球資源の循環的利用が叫ばれる中、このような貴金属材料の使用を抑制する動きが高まっており、また電子部品の低コスト化に対応するためにも資源の豊富な銅等の材料を使用することが検討されている。しかしながら、純度の高い銅は、上記のような高温の熱処理プロセスで酸素が混入すると容易に酸化されて高抵抗となり、配線としての機能が得られ難くなる。そこで、この銅材料に耐酸化性を付与するアルミ,チタン,金,銀,ニッケル,モリブデン等の第二元素を銅中に添加することにより、その耐酸化性を向上させるという技術が報告されている。
【0004】
また特許文献1,特許文献2,特許文献3に記載のように、LSIなどの電子回路のような配線として銅を用いる電子部品であり、かつ400℃程度の加熱処理工程を経る電子部品の場合には、その工程における酸化を抑制するために、アルミニウムを含有する銅薄膜で銅配線を覆う構造が提案されている。
【0005】
しかしながら、銅中にこれらの元素を添加させると、添加元素の存在箇所が電子の散乱中心となり、電気抵抗が増大するという問題があった。従って、高い耐酸化性と低い抵抗値は相反する特性であり、これらを両立することが困難であった。
【0006】
さらにアルミニウム等の耐酸化性を有する材料で銅配線を覆っても、加熱温度が600℃〜700℃程度の高い加熱工程を経る電子部品に対してはその組成や膜厚が不十分であると加熱時の酸化が抑制できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭62−290150号公報
【特許文献2】特開平5−102155号公報
【特許文献3】特開2007−188982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、600℃〜700℃の高温であっても高い耐酸化性と低抵抗を両立し、かつ低コストで形成可能な配線部材、その製造方法及びそれを用いた電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の配線部材は、基板上に直接または他の層を介して形成される銅配線と、その上部に50nm以上200nm以下の膜厚で形成される少なくとも50重量%以上のアルミニウムを含有する銅合金薄膜とを具備する。上記銅配線の膜厚が1μm以上50μm以下であり、上記配線部材の電気抵抗率が4×10-6Ωcm以下である。また上記基板と銅配線の間に、クロム,チタン,アルミニウム,モリブデン,タングステンより選ばれる金属薄膜が形成される。
【0010】
さらに本発明の配線部材の製造方法は、少なくとも基板上に直接または他の層を介して銅配線を形成する第一の工程と、その上部に50nm以上200nm以下の膜厚を有する50重量%以上のアルミニウムを含有する銅合金薄膜を形成する第二の工程と、配線形成後に酸化雰囲気中600℃以上700℃以下の温度で全体を加熱する第三の工程とを含む。上記第一の工程或いは第二の工程の、双方またはいずれかがスパッタリング法,エアロゾルデポジション法,スクリーン印刷法,めっき法である。
【0011】
また本発明の電子部品は、基板上に直接または他の層を介して形成される銅配線と、その上部に50nm以上200nm以下の膜厚で形成される少なくとも50重量%以上のアルミニウムを含有する銅合金薄膜とを具備する配線部材を有し、上記電子部品がプラズマディスプレイパネル,液晶表示装置,太陽電池パネルである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高温の酸化雰囲気中の焼成に対しても高い耐酸化性を有し、かつ低抵抗で低コストな配線材料が得られるため、電子部品材料の製造において還元雰囲気や真空雰囲気等の高コストなプロセスを経由することが無くなり、低コスト化に貢献できる。また希少な銀等の貴金属を使用しないため、材料コストの低減が図れ、かつ安定的な材料供給が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の配線部材の断面の模式図。
【図2】本発明の配線部材の断面の模式図。
【図3】いろいろなAl濃度を有する本発明の配線部材のCuAl層膜厚と抵抗率の関係を示す図。
【図4】本発明のプラズマディスプレイパネルの断面の模式図。
【図5】本発明のプラズマディスプレイパネルの断面の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
約30mm角のガラス基板上にCr等のガラス基板との親和性の高い薄膜を約10nmで形成した後、Cu薄膜を3μm形成した。さらに50Cu−50Al(重量比)薄膜を120nm形成した。いずれの薄膜もDCマグネトロンスパッタ法を用いた。その後、フォトレジストを形成して配線幅100μmとなるようにマスキングを施したのち、紫外線によりパターン露光し、硝酸液に塗布して化学エッチングを行った。これにより配線幅100μm,配線高さ3μm,配線長さ30mmの試験用の銅配線を形成した。これを600℃−1時間大気中で加熱して電極を酸化状態とした。
【0015】
得られた薄膜の概観は加熱前後でほとんど変化しておらず、酸化している様子は観察されなかった。さらに加熱前後の配線抵抗率を4端子法で測定したところ、加熱前の配線抵抗はそれぞれ1.9×10-6Ωcm,3.7×10-6Ωcmであり、加熱後の比抵抗は加熱前に比べると若干高い値を示したが、配線の抵抗値としては十分使用可能な抵抗値を示した。
【0016】
上記は大気中での焼成結果であるが、この配線上にたとえば誘電体ガラスなどの材料を形成した電子部品であっても同等の耐酸化性を得ることができる。
【0017】
以下、実施例を詳細に述べる。
【実施例1】
【0018】
図1に、本発明で作製した配線部材の断面構成図を示す。
【0019】
図1において、1は基板、2は下地層、3は銅配線、4はCuAl系合金薄膜である。本実施例では、1の基板として高歪点のアルミノシリケート系ガラス基板を用いた。本実施例では試験的に30mm角に基板を切断して用いた。その表面に、2の下地層(第一層)としてCr膜を10nm形成した。さらにその上部に3の銅薄膜を3μm形成した(第二層)。そしてその上部に50Cu−50Al(重量比)薄膜を30〜120nm形成した(第三層)。2〜4の薄膜は、DCマグネトロンスパッタリング法を用いて形成した。Cr,Cuのターゲットには各膜の単層金属ターゲット(152.4mmφ)を用いた。ターゲットの純度は99.9%以上のものを使用した。成膜ガスは純Arガス(99.9999%)を用い、成膜時のガス圧は0.7Paとした。また到達真空圧力は4×10-5Pa以下とした。また成膜パワーはいずれのターゲットも500Wと一定にした。
【0020】
成膜後、電極上部にフォトレジスト材を塗布し、100μmの線幅を形成可能なマスク材越しに紫外線を照射した。その後、除去液にて配線部上のみ残してレジストを除去し、さらに硝酸水溶液中にサンプルを投下して配線部以外の銅配線部を除去した。これにより配線幅100μm,配線高さ3μm,配線長さ30mmの試験用の銅配線を形成した。本実施例では、50Cu−50Al薄膜の膜厚を30,60,120nmとした。さらに比較例として、最上部の50Cu−50Al薄膜を形成せず、Cu薄膜3のみを形成した電極、及びCu薄膜3の変わりに98Cr−2Al(重量比)を3μm形成したのみの電極も作製した。得られた薄膜を大気中400℃,500℃,600℃,700℃で1時間加熱し、評価に供した。
【0021】
図2に、加熱後の断面構造の模式図を示す。
【0022】
図2において、5は酸化層、6はCuの酸化部、7はCu配線へのAl拡散部である。600℃で1時間加熱した試料の走査型電子顕微鏡を用いて断面観察を行ったところ、加熱処理後は、CuAl薄膜4の表面にAl,Cuの酸化層が5nm〜10nm形成されていた。さらにCuAl中のAlがCu中に拡散し、拡散部7を形成していたこの拡散部のCu電極側面からの厚さは約100nmであった。この拡散部では、元のCuAl薄膜に近いところほどAl濃度が高かった。さらにCu配線3の側面はCuAlが覆われないため、Cuの酸化層6が約200nm形成されていた。
【0023】
表面の酸化状態を光学顕微鏡で観察して酸化の有無を評価した。さらに四端子法を用いて薄膜の電気抵抗率を評価した。また参考のため真空中(真空度:約1×10-4Pa)、500℃で加熱処理した場合についても抵抗値を評価した。
【0024】
表1に評価結果を示す。
【0025】
【表1】

【0026】
表1において、「外観」の欄は加熱等の処理後の外観を観察し、金属光沢の薄膜が得られた場合には○を、酸化によって黒色に変色する部位が観察された場合には×を記した。また抵抗率は得られた配線の抵抗を四探針法で測定し、配線長さと断面積から抵抗率に換算して表記した。
【0027】
表1の比較例1に示すように、Cuを3μm形成した試料では、成膜後に加熱をしない場合には1.91×10-6Ωcmと、Cuの理論抵抗率である1.55×10-6Ωcmに近い値を示した。また真空中500℃での加熱では、抵抗率は1.88×10-6Ωcmと低い抵抗率が得られた。大気中で400℃〜700℃で加熱すると表面が黒く酸化され、抵抗率は104〜105オーダとなり、配線材料としては使用できないことが分かった。
【0028】
比較例2に示した98Cu−2Alを用いた場合は、成膜後、加熱工程を経ない場合の抵抗率は7.22×10-6Ωcmと、純Cuに比べて抵抗率が上昇していた。また400℃における抵抗率は1.26×10-5Ωcmと加熱前に比べると高い値を示したものの、純Cuに比べて大きく抵抗率が低下していた。500℃以上の焼成では酸化が進行し、抵抗配線材料として好ましくなかった。
【0029】
一方、実施例1〜3に記載した、Cu上に50Cu−50Al(重量比)を形成した試料では、成膜後、加熱していない試料の抵抗率は、50Cu−50Al薄膜の膜厚によらず約1.9×10-6Ωcmであり、Cuのみの抵抗値とほぼ同程度であった。いずれの試料も400℃,500℃の大気中加熱後も外観は金属光沢であり、抵抗率も4×10-6Ωcm以下と配線材料として十分低い抵抗率が得られた。
【0030】
大気中で600℃及び700℃で焼成した場合、50Cu−50Al薄膜を30nm,60nm形成した試料(実施例1,2)では外観上も酸化物の形成を示す黒色の斑点が試料表面に生じ始め、このときの抵抗率は103オーダと高い値になった。一方、50Cu−50Al薄膜を120nm形成した試料では、600℃,700℃で大気中焼成しても外観上は金属光沢であり、抵抗率も3.77×10-6Ωcm,3.75×10-6Ωcmと小さい値を示した。これは500℃真空中で焼成したときよりも低い抵抗率であった。
【0031】
以上より、純Cu配線材料に50Cu−50Al薄膜を120nm程度形成することにより、極めて高い耐酸化性を付与できることが明らかになった。
【0032】
次に、形成するCuAl薄膜の組成と膜厚の関係を調べるため、種々のAl組成の合金をいろいろな膜厚で形成した場合の600℃で大気中焼成処理に対する抵抗率の変化を調べた。結果を表2に示す。薄膜の評価方法は表1に示す方法と同じとした。
【0033】
【表2】

【0034】
表2に示す比較例3の2重量%Alを含有した薄膜を形成した場合では、600℃の焼成により外観上も黒色に酸化しており、抵抗値も103以上と高く、配線材料として適切ではなかった。比較例4〜6の5〜30重量%Alを含有した薄膜を形成した場合では、膜厚が薄い場合には外観上も黒色に酸化しており、抵抗も高く不適切であった。また膜厚が厚い場合には薄膜の外観が金属光沢を維持しているものの、抵抗値が4×10-6Ωcmを超えているため、配線材料として好ましくなかった。
【0035】
一方、実施例4に示す50重量%のAlを含有する薄膜を70nm以上形成した場合には、外観上も金属光沢を維持しており、かつ抵抗率も4×10-6Ωcm以下となり、配線材料として好適であった。さらに実施例5,6に示す70〜100重量%のAlを含有する薄膜を形成した場合には、膜厚が50nm以上とすると4×10-6Ωcm以下の抵抗率が得られ、好適であった。
【0036】
表2に示した抵抗率と膜厚の関係を図3に示す。図3では、600℃で1時間熱処理した場合について示す。太陽電池やプラズマディスプレイパネルの高効率化のためには、配線材料の抵抗率が4×10-6Ωcm以下であることが望まれる。そのため、この図から600℃酸化雰囲気中で熱処理しても上記抵抗率以下になる条件を検討した。
【0037】
図3より、Al濃度が50重量%未満の場合には、CuAlの膜厚を厚くしても上記抵抗率以下になる領域は存在しなかった。これは、Al濃度が少ない場合には酸化層が形成されやすく、酸化層が抵抗を増大させるためと考えられる。
【0038】
またAl濃度が50重量%以上の場合には、膜厚が50nm以上200nm以下であれば抵抗率が4×10-6Ωcm以下となる領域が存在した。膜厚が50nm未満の場合、Al濃度が多くても抵抗率が4×10-6Ωcm以下となる領域が存在しなかった。これは、膜厚が薄い場合、Cuの酸化が抑制されず、酸化層が形成されたためである。
【0039】
また膜厚が厚くなると酸化は抑制されるが、CuAl層の抵抗が配線抵抗に影響を及ぼし、配線の抵抗が膜厚の増加とともに大きくなるためと考えられる。
【0040】
以上の検討結果より、本発明の配線部材は、銅配線材料上に少なくとも50重量%以上のアルミニウムを含有する銅合金薄膜が50nm以上200nm以下の膜厚で形成されることが好ましい。
【0041】
上記実施例は、スパッタ法で作製した薄膜について記載したが、薄膜の成膜法に関してはスパッタ法に限定されない。例として、エアロゾルデポジション法,スクリーン印刷法,めっき法などが挙げられる。またこれらの手法の組み合わせでもよい。すなわち、Cu配線をこれらの手法で形成した後、CuAl膜をスパッタ法で形成するという手段でも良い。
【0042】
また本実施例では、ガラスとCu配線との間に密着性を高める目的でクロム(Cr)の薄膜を形成したが、用途によってはこの膜を形成しなくても良い。また密着性を高める目的であれば、クロムのほか、チタン,アルミニウム,モリブデン,タングステンを形成しても同様の効果が得られた。
【実施例2】
【0043】
次に、本発明で作製したプラズマディスプレイパネルに関する実施例を説明する。本発明をプラズマディスプレイパネルに適用した例を説明する。プラズマディスプレイパネルの断面図の概要を図4に示す。
【0044】
本発明のプラズマディスプレイパネルでは、前面板10,背面板11が100〜150μmの間隙をもって対向させて配置され、各基板の間隙は隔壁12で維持されている。前面板10と背面板11の周縁部は封着材料13で気密に封止され、パネル内部に希ガスが充填されている。隔壁12により区切られた微小空間(セル14)には蛍光体が充填される。赤色,緑色,青色の蛍光体15,16,17がそれぞれ充填された3色のセルで1画素を構成する。各画素は信号に応じ各色の光を発光する。
【0045】
前面板10,背面板11には、ガラス基板上に規則的に配列した電極が設けられている。前面板10の表示電極18と背面板11のアドレス電極19が対となり、この間に表示信号に応じて選択的に100〜200Vの電圧が印加され、電極間の放電により紫外線20を発生させて蛍光体15,16,17を発光させ、画像情報を表示する。表示電極18,アドレス電極19は、これら電極の保護と、放電時の壁電荷の制御等のために、誘電体層21,22で被覆される。誘電体層21,22には、ガラスの厚膜が使用される。
【0046】
背面板11には、セル14を形成するために、アドレス電極19の誘電体層22の上に隔壁12が設けられる。この隔壁12はストライプ状あるいはボックス状の構造体である。
【0047】
表示電極18,アドレス電極19としては、現在一般的にはAg厚膜配線が使用されている。前述したごとく、コスト低減とAgのマイグレーション対策のためには、Ag厚膜配線からCu厚膜配線への変更が好ましいが、そのためには、酸化雰囲気においてCu厚膜配線の形成,焼成時にCuが酸化され電気抵抗が低下しないこと、酸化雰囲気において誘電体層の形成,焼成時にCuと誘電体層とが反応してCuが酸化され電気抵抗が低下しないこと、さらにCu厚膜配線近傍に空隙(気泡)が発生し耐圧が低下しないこと等の条件が挙げられる。表示電極18及びアドレス電極19の形成は、スパッタリング法によっても可能であるが、価格低減のためには印刷法が有利である。また、誘電体層21,22は、一般的には印刷法で形成される。印刷法で形成される表示電極18,アドレス電極19,誘電体層21,22は、酸化雰囲気中で450〜620℃の温度範囲で焼成されることが一般的である。
【0048】
背面板11のアドレス電極19に直交するように、前面板10の表面に表示電極18を形成した後に、誘電体層21を全面に形成する。その誘電体層21の上には、放電から表示電極18等を保護するために、保護層23が形成される。一般的には、その保護層23には、MgOの蒸着膜が使用される。一方、背面板11には、アドレス電極19を形成した後、セル形成領域に誘電体層22を形成し、その上に隔壁12が設けられる。ガラス構造体よりなる隔壁は、少なくともガラス組成物とフィラーを含む構造材料よりなり、その構造材料を焼結した焼成体から構成される。隔壁12は、隔壁部に溝が切られた揮発性シートを貼り付け、その溝に隔壁用のペーストを流し込み、約600℃で焼成することによって、シートを揮発させるとともに隔壁12を形成することができる。また、印刷法にて隔壁用ペーストを全面に塗布し、乾燥後にマスクして、サンドブラストや化学エッチングによって、不要な部分を除去し、500〜600℃で焼成することにより隔壁12を形成することもできる。隔壁12で区切られたセル14内には、各色の蛍光体15,16,17のペーストをそれぞれ充填し、450〜500℃で焼成することによって、蛍光体15,16,17をそれぞれ形成する。
【0049】
通常、別々に作製した前面板10と背面板11を対向させ、正確に位置合わせし、周縁部を420〜500℃でガラス封着する。封着材料13は、ディスペンサー法あるいは印刷法により事前に前面板10或いは背面板11のどちらか一方の周縁部に形成される。一般的には、封着材料13は背面板11の方に形成される。また、封着材料13は蛍光体15,16,17の焼成と同時に事前に仮焼成されることもある。この方法を取ることによって、ガラス封着部の気泡を著しく低減でき、気密性の高い、すなわち信頼性の高いガラス封着部が得られる。ガラス封着は、加熱しながらセル14内部のガスを排気し、希ガスを封入し、パネルが完成する。封着材料13の仮焼成時やガラス封着時に、封着材料13が表示電極18やアドレス電極19と直接的に接触することがあり、電極を形成する配線材料と封着材料13が反応して、配線材料の電気抵抗を増加させることは好ましくなく、この反応を防止する必要がある。
【0050】
完成したパネルを点灯するには、表示電極18とアドレス電極19の交差する部位で電圧を印加して、セル14内の希ガスを放電させ、プラズマ状態とする。そして、セル14内の希ガスがプラズマ状態から元の状態に戻る際に発生する紫外線20を利用して、蛍光体15,16,17を発光させて、パネルを点灯させ、画像情報を表示する。各色を点灯させるときには、点灯させたいセル14の表示電極18とアドレス電極19との間でアドレス放電を行い、セル内に壁電荷を蓄積する。次に表示電極対に一定の電圧を印加することで、アドレス放電で壁電荷が蓄積されたセルのみ表示放電が起こり、紫外線20を発生させることによって、蛍光体を発光させる仕組みで画像情報の表示が行われる。
【0051】
本実施例では、まずアドレス電極19に本発明のCu配線上に被覆されたCuAl合金配線の有効性を検証した。Cu配線として、平均粒径が1〜2μmのCu粉末を85体積%、平均粒径が1μmのガラス粉末を15vol.%からなる配線材料を形成後、さらにその上部に同様に平均粒径が1〜2μmの50Cu−50Al粉末を85体積%、平均粒径が1μmのガラス粉末を15vol.%からなる配線材料を形成し、前面板10の表示電極18と背面板11のアドレス電極19へ適用することによって、図4で示したプラズマディスプレイパネルを試作した。
【0052】
この配線材料は、上記と同様にバインダーとしてエチルセルロース、溶剤としてブチルカルビトールアセテートを混合し、配線用ペーストとした。これを印刷法にて前面板10及び背面板11へ塗布し、大気中530℃で30分焼成することによって表示電極18とアドレス電極19を形成した。さらにその上に誘電体層21,22のガラスを被覆した。誘電体層21,22のガラスも同様に平均粒径が1μmのガラス粉末に、バインダーと溶剤を加え、ペーストとし、それを印刷法によりほぼ全面に塗布し、大気中610℃で30分焼成した。ガラス粉末としては軟化点が560℃前後の無鉛ガラス、バインダーとしてエチルセルロース、溶剤としてブチルカルビトールアセテートを用いた。そして、前面板10と背面板11を別々に作製し、外周部をガラス封着することによって、プラズマディスプレイパネルを作製した。本発明の配線材料を用いた表示電極18,アドレス電極19は酸化による変色もなく、また表示電極18と誘電体層21,アドレス電極19と誘電体層22の界面部に空隙の発生もなく、パネルに搭載できることが分かった。
【0053】
続いて、作製したプラズマディスプレイパネルの点灯試験を行った。表示電極18,アドレス電極19の電気抵抗が大きくなることもなく、また耐圧が低下することもなく、さらにAgのようにマイグレーションすることなく、パネル点灯できた。その他においても支障がある点は認められなかった。
【0054】
本発明の配線材料は、プラズマディスプレイパネルに限らず、太陽電池等の配線材料としても適用できる。現状では太陽電池の配線にもAg粉末とガラス粉末からなる配線材料が使用されており、本発明の配線材料に変更することで大きなコスト低減を図ることができた。
【実施例3】
【0055】
実施例2で作製した図4のプラズマディスプレイパネルで、表示電極18とアドレス電極19にスパッタリング法にて配線材料を形成した。図5に示すように配線材料としては金属Cr膜24,Cu配線膜25、そして50Cu−50Al薄膜26を順次形成し、三層構造とした。それぞれの膜厚は一層目の金属Cr膜24が0.2μm、二層目のCu配線膜25が3.0μm、三層目のCuAl合金膜26が0.1μmとし、実施例2と同様にプラズマディスプレイパネルを作製して評価した。なお、スパッタターゲットには、金属Cr,金属Cuのバルク材料とCu−Al合金のバルク材料からなる円板を、各々の層の形成に用いた。
【0056】
本発明の配線材料を用いた表示電極18,アドレス電極19の側面部分には空隙の発生
もなく、パネルに搭載できることが分かった。続いて、作製したプラズマディスプレイパ
ネルの点灯試験を行った結果、表示電極18,アドレス電極19の電気抵抗が大きくなる
こともなく、また耐圧が低下することもなく、さらにAgのようにマイグレーションする
ことなく、パネル点灯できた。その他においても支障がある点は認められなかった。
【0057】
比較例として、確認のため、配線材料の三層目のCu−Al合金膜26を形成しない場合について、表示電極18とアドレス電極19へ搭載し、上記同様にパネル試作した。表示電極18,アドレス電極19の側面部分と誘電体層21,22との界面部には、空隙が発生する箇所が多々認められ、耐電圧が半減した。
【0058】
以上のように、最下層をCrとし、Cu−Al合金で覆われたCu配線による表示電極を用いることにより、最上層のCrの有無にかかわらず、誘電体との反応による気泡発生を抑制できる。同様に、最下層を酸化Cr層としてもCu−Al合金と背面板の密着性を保つことができる。最下層に、厚みを調整した酸化Cr層を用い、酸化Cr層表面反射光とCu−Al合金面反射光を干渉させる事により、正面から見た表示電極の色調を調整することができ、例えば黒色〜暗色や褐色にする事が可能である。
【0059】
以上の実施例では、プラズマディスプレイパネルについて述べたが、このような耐酸化性の強い銅配線を用いる電子部品であればどのようなものにも効果がある。一例として、加熱温度が600℃以上となるプロセスを有する太陽電池パネルや液晶ディスプレイパネル,半導体回路などに適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 基板
2 下地層
3 銅配線
4 CuAl系合金薄膜
5 酸化層
6 Cuの酸化部
7 Cu配線へのAl拡散部
10 前面板
11 背面板
12 隔壁
13 封着材料
15,16,17 赤色,緑色,青色の蛍光体
18 表示電極
19 アドレス電極
20 紫外線
21,22 誘電体層
23 保護層
24 金属クロム膜
25 Cu配線膜
26 CuAl合金膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成される銅配線と、
前記銅配線上に50nm以上200nm以下の膜厚で形成され、50重量%以上のアルミニウムを含有する銅合金薄膜と、
を具備することを特徴とする配線部材。
【請求項2】
前記銅配線の膜厚が、1μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の配線部材。
【請求項3】
前記配線部材の電気抵抗率が、4×10-6Ωcm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の配線部材。
【請求項4】
前記基板と銅配線との間には、下地層が配置されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の配線部材。
【請求項5】
前記下地層は、クロム,チタン,アルミニウム,モリブデン及びタングステンより選ばれる少なくとも1種の金属薄膜であることを特徴とする請求項4に記載の配線部材。
【請求項6】
基板上に銅配線を形成する第一の工程と、
前記銅配線上に、50nm以上200nm以下の膜厚を有する50重量%以上のアルミニウムを含有する銅合金薄膜を形成する第二の工程と、
配線形成後に酸化雰囲気中で600℃以上700℃以下の温度で全体を加熱する第三の工程と
を含むことを特徴とする配線部材の製造方法。
【請求項7】
前記第一の工程及び/または第二の工程において、スパッタリング法,エアロゾルデポジション法,スクリーン印刷法及びめっき法から選ばれる少なくとも1種を用いることを特徴とする請求項6に記載の配線部材の製造方法。
【請求項8】
基板上に形成される銅配線と、前記銅配線上に50nm以上200nm以下の膜厚で形成され、50重量%以上のアルミニウムを含有する銅合金薄膜と、を具備する配線部材を有することを特徴とする電子部品。
【請求項9】
前記電子部品が、プラズマディスプレイパネル,液晶表示装置,太陽電池パネルであることを特徴とする請求項8に記載の電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−283096(P2010−283096A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134610(P2009−134610)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】