説明

金型

【課題】支持部材に対して確実に脚部を成型することのできる金型を提供すること。
【解決手段】型を閉めた際にキャビティ内の圧力を圧力センサ58で計測し、キャビティ内に充填されたゴム材料Gの圧力が予め設定した所定圧力(脚部20A、20Bにゴム材料Gが確実に加硫接着されるに必要な圧力)に至ったか否かを判定し、型を閉めた際のキャビティ内の圧力が所定圧力以上であると判定された場合には、所定時間、所定温度で加硫成形を行う。これにより、支持部材16の両縁部18A、18Bにそれぞれ脚部20A、20Bを確実に加硫接着できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの内側に配置して、内圧低下時の走行を可能とする支持体を製造する金型に関する。
【背景技術】
【0002】
リムに組み付けられた支持体を空気入りタイヤの内側に設けることが、パンク等の緊急走行時にランフラット走行する上で有用である。
この支持体として、リング状の支持部材(金属性の環状体)と、この支持部材の幅方向両縁部に加硫によりそれぞれ接合されたリング状のゴム製の脚部とを有するものがある。このような支持体を製造する際、予め支持部材を製造しておき、支持部材に接着剤を塗布してゴムを加硫接着している。
【0003】
支持部材に脚部を成型する場合の製法としては、インジェクション、トランスファー、コンプレッション等がある。
インジェクション加硫は、金型に直結された押出機等からゴムをキャビティに注入させて加硫成型を行う。
トランスファー加硫、コンプレッション加硫は、キャビティ及びオーバーフロー部分を考慮した所定量のゴムを入れ、加硫と成型を同時に行う。
【0004】
ゴムをインジェクション加硫するものとしては、例えば特許文献1に記載されているものがあり、ゴムをコンプレッション加硫するものとしては、例えば特許文献2に記載されているものがある。また、ゴムをトランスファー加硫するものとしては、例えば特許文献3に記載されているものがある。
【特許文献1】特開昭48−021765号公報
【特許文献2】特開昭62−032038号公報
【特許文献3】特開昭62−240519号公報
【特許文献4】特開平04−267117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
支持部材とゴムとの加硫接着には、一定以上の圧力が必要であり、加硫成型後の製品外観は異常がなくとも、ゴムと接着剤界面で剥離が発生する場合がある。また、ゴムと支持部材との接着の良し悪しは加硫成型後の製品で判断することが困難である。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、支持部材に対して確実に脚部を成型することのできる金型を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、空気入りタイヤの内側に配置され、内圧低下により前記空気入りタイヤが潰れた際に前記空気入りタイヤのトレッド部内側を外周面に当接させて支えるリング状の支持部材と、前記支持部材の幅方向の両縁部にそれぞれ接合された弾性材料からなる脚部と、を有する支持体を製造する際に用いられ、前記支持部材に前記脚部を一体的に成型するための金型であって、前記金型は、前記脚部を成型するためのキャビティと、前記キャビティ内の圧力を検出する圧力センサと、を有する、ことを特徴としている。
【0008】
次に、請求項1に記載の金型の作用を説明する。
請求項1に記載の金型では、キャビティ内に弾性材料を充填して脚部を成型する際に、圧力センサでキャビティ内の圧力を検出することができるので、加硫中の該圧力を検出することで、弾性材料が支持部材に確実に加硫接着可能か否かを判断でき、支持部材と脚部との接着力不足の支持体が製造されることを防止できる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の金型において、前記金型はコンプレッション加硫成型用の金型である、ことを特徴としている。
【0010】
次に、請求項2に記載の金型の作用を説明する。
請求項2の金型を用いることで、脚部のコンプレッション加硫成型を行うことができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の金型において、前記金型はトランスファー加硫成型用の金型である、ことを特徴としている。
【0012】
次に、請求項3に記載の金型の作用を説明する。
請求項3に記載の金型を用いることで、脚部のトランスファー加硫成型を行うことができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の金型において、前記金型はインジェクション加硫成型用の金型である、ことを特徴としている。
【0014】
次に、請求項4に記載の金型の作用を説明する。
請求項4に記載の金型を用いることで、脚部のインジェクション加硫成型を行うことができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の金型において、前記センサには、前記センサで検出した前記キャビティ内の圧力に応じて前記キャビティに弾性材料を注入する押出し機の押出し量を制御する制御装置が連結されている、ことを特徴としている。
【0016】
次に、請求項5に記載の金型の作用を説明する。
請求項5に記載の金型では、制御装置は、キャビティ内の圧力に応じてキャビティに弾性材料を注入する押出し機の押出し量を制御する。即ち、支持部材に対して弾性材料が確実に加硫接着可能な圧力を予め設定しておき、キャビティ内の圧力が予め設定した圧力以上となるように押出し機をフィードバック制御することで、脚部のインジェクション加硫成型を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の金型は上記構成としたので、支持部材と脚部とが確実に接着された支持体を確実に製造できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、実施形態を挙げ、本発明の実施の形態について説明する。
[第1実施形態]
まず、第1実施形態について説明する。第1実施形態では、加硫成形可能な加硫成型装置12(図3参照)を用いて、空気入りタイヤ10(図2参照)の内側に配置する支持体14を製造する。
【0019】
本実施形態の支持体14は、板状部材で構成されるリング状の支持部材16と、支持部材16の幅方向の両縁部18A、18Bに加硫によりそれぞれ接合されたゴムからなるリング状の脚部20A、20Bとで構成されている。
【0020】
図3に示すように、加硫成型装置12は、両縁部18A、18Bに非接触の状態で支持部材16を内側から支えるリング状のコア金型26を備えている。また、加硫成型装置12は、コア金型26を軸方向から挟んで一対の金型となるように設けられた昇降動可能な上中間金型28及び下中間金型30を備えている。更に、加硫成型装置12は、上中間金型28の上側に設けられ、ゴム材料をトランスファーさせる上金型32と、下中間金型30の下側に設けられ、ゴム材料をトランスファーさせる下金型34と、を備えている。
これらコア金型26、上中間金型28、下中間金型30、上金型32、及び下金型34によってトランスファー金型が構成されている。
【0021】
上中間金型28はコア金型26の上側に、下中間金型30はコア金型26の下側に、それぞれ配置されている。下中間金型30は、押し上げシリンダー36によって昇降動可能になっている。また、上金型32、上中間金型28、下中間金型30、及び下金型34は、シャフト40A1、40A2、40B1、40B2によって芯合わせされた状態になっており、上中間金型28及び下中間金型30は、上下方向からコア金型26を挟むようにして開閉動作を行うようになっている。
【0022】
上中間金型28は、コア金型26との間に脚部20Aを形成するためのキャビティ42Aを形成する壁面部29Aを有しており、下中間金型30は、コア金型26との間に脚部20Bを形成するためのキャビティ42Bを形成する壁面部29Bを有する。
【0023】
上中間金型28には、キャビティ42Aに連通するランナー44A1、44A2が形成されている。下中間金型30にも、同様に、キャビティ42Bに連通するランナー44B1、44B2が形成されている。上中間金型28には、ランナー44A1、44A2にそれぞれ連通し、キャビティ内へトランスファーさせるゴム材料Gを収容するためのポッド部46A1、46A2が形成されている。
【0024】
上金型32及び下金型34は、それぞれ、加硫成型装置12を構成する上面盤50及び下面盤52に固定されている。また、上記のシャフト40A1、40A2は、何れも上面盤50に進退動可能に保持され、シャフト40B1、40B2は、何れも下面盤52に進退動可能に保持されている。
【0025】
上金型32には、ポッド部46A1、46A2の寸法に応じた凸部54A1、A2が形成されており、上金型32が上中間金型28に重ね合わされると、凸部54A1、54A2がそれぞれポッド部46A1、46A2に挿入し、ポッド部46A1、46A2内のゴム材料Gがランナー44A1、44A2へ押し出されてキャビティ内へトランスファーするようになっている。
【0026】
下金型34には、ポッド部46A1と同じ寸法でポッド部46B1、46B2が形成されている。
下中間金型30には、ポッド部46B1、46B2の寸法に応じた凸部54B1、B2が形成されており、ランナー44B1、44B2はそれぞれ凸部54B1、54B2を貫通している。そして、下中間金型30が下金型34に重ね合わせられると、凸部54B1、54B2がそれぞれポッド部46B1、46B2に挿入し、ポッド部46B1、46B2内のゴム材料Gがそれぞれランナー44B1、44B2へ押し出されてキャビティ内へトランスファーするようになっている。
【0027】
下中間金型30には、コア金型26を構成する各部材をスライド移動可能に載せると共にこの各部材を所定位置で固定できる載置台部56が形成されている。また、下中間金型30には、支持部材16に径方向外側から当接して支持部材16を支えるリング状の外側当接部57が設けられている。支持部材16のセットや支持体14の取り出しが可能なように、外側当接部57の当接面は短円筒内面状になっている。そして、この外側当接部57とコア金型26とで支持部材16を挟持できるようになっている。
上中間金型28及び下中間金型30には、それぞれ、スチームチャンバー59、60が設けられている。
【0028】
図1に示すように、上中間金型28には、キャビティ内の圧力を検出するための圧力センサ58が壁面部29Aに取り付けられている。なお、図示はしないが、下中間金型30にもキャビティ内の圧力を検出するための圧力センサ58が壁面部29Bに取り付けられている。
これらの圧力センサ58は、圧力計60に接続されている。
【0029】
(作用)
以下、加硫成型装置12で、支持部材16に脚部20A、20Bを加硫成形により接合して支持体14を製造する工程について説明する。
まず、上金型32、上中間金型28、下中間金型30、及び、下金型34をそれぞれ離隔させ、ポッド部46A1、46A2に、それぞれゴム材料(ゴム生地)Gを入れる。ゴム材料Gの量は、何れも、脚部20Aの成形に必要な量だけキャビティ内にゴム材料が注入されるように、ランナー44A1、44A2の容積も考慮して決定する。同様に、ポッド部46B1、46B2に、それぞれゴム材料Gを入れる。
【0030】
この状態でコア金型26の径を拡大させて支持部材16に内側から当接させることにより、コア金型26の位置を固定する。この結果、支持部材16が下中間金型30とコア金型26とによって挟持され、また、支持部材16の縁部18Bの周囲にキャビティ42Bが形成される。
【0031】
その後、上面盤50を下降させることにより上中間金型28を下降させ、コア金型26に対して閉じた状態にする。この結果、支持部材16の縁部18Aの周囲にキャビティ42Aが形成される。
更に、押し上げシリンダー36を下降させることにより上面盤50及び下中間金型30を同じ距離だけ下降させ、所定高さ位置で下降を停止する。停止高さ位置は、ポッド部46A1、46A2に収容したゴム材料Gを凸部54A1、54A2でそれぞれ押し出す直前の高さ位置、及び、ポッド部46B1、46B2に収容したゴム材料Gを凸部54B1、54B2でそれぞれ押し出す直前の高さ位置とする。
【0032】
そして、この状態から上金型32、上中間金型28、及び下中間金型30を同時に下降させることにより、凸部54A1、54A2、54B1、54B2でそれぞれゴム材料Gを同時に押圧し、各ランナーを経由させてキャビティ内に同時にトランスファーさせる。
【0033】
ここで、キャビティ内の圧力を圧力センサ58で計測し、所定時間、所定温度で加硫成形を行った後、キャビティ内に充填されたゴム材料Gの圧力が、予め設定した所定圧力(脚部20A、20Bにゴム材料Gが確実に加硫接着されるに必要な圧力)に至ったか否かを判定する。
そして所定時間経過後、支持部材16の両縁部18A、18Bにそれぞれ脚部20A、20Bが接合されてなる支持体14を取り出す。
【0034】
なお、キャビティ内の圧力が所定圧力未満の場合には、ゴム材料Gが不足していることが考えられるので、以後、ゴム材料Gの量を調整すれば良い。
【0035】
以上説明したように、本実施形態では、型を閉めた際のキャビティ内の圧力を測定することで、支持部材16の両縁部18A、18Bにそれぞれ脚部20A、20Bを確実に加硫接着できるようになる。
【0036】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
第2実施形態では、図4に示すようなコア金型62、上金型64、及び下金型66からなるコンプレッション成型用金型によって支持部材16の両縁部18A、18Bにそれぞれ脚部20A、20Bを加硫接着するようになっている。
【0037】
このコンプレッション成形用金型は、上金型64とコア金型62とでゴム材料Gを圧縮して脚部20Aを成形し、下金型66とコア金型62とでゴム材料Gを圧縮して脚部20Bを成形する構造にされている。なお、上金型64、及び下金型66には、加硫用の図示しないジャケット(ヒータ)が設けられている。
【0038】
本実施形態では、上金型64とコア金型62に、キャビティ内の圧力を検出するための圧力センサ58が取り付けられている。
本実施形態においても、所定時間、所定温度で加硫成形を行った後、キャビティ内に充填されたゴム材料Gの圧力が、予め設定した所定圧力(脚部20A、20Bにゴム材料Gが確実に加硫接着されるに必要な圧力)に至ったか否かを判定する。
【0039】
これにより、支持部材16の両縁部18A、18Bにそれぞれ脚部20A、20Bを確実に加硫接着できるようになる。
なお、キャビティ内の圧力が所定圧力未満の場合には、ゴム材料Gが不足していることが考えられるので、以後、ゴム材料Gの量を調整すれば良い。
【0040】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。
第3実施形態では、図5に示すようなコア金型68、上金型70、及び図示しない下金型からなるインジェクション成型用金型によって支持部材16の両縁部18A、18B(図示せず)にそれぞれ脚部20A、20B(図示せず)を加硫接着するようになっている。
【0041】
上金型70には、キャビティ内にゴム材料Gを充填するための押出し機72が連結されている。
上金型70、及び下金型には、前述した実施形態と同様に、各々圧力センサ58が取り付けられている。
【0042】
押出し機72、及び圧力センサ58は、制御装置74に接続されており、制御装置74は、キャビティ内の圧力に応じて押出し機72の押出し量を制御する。より具体的には、支持部材16に対してゴム材料Gが確実に加硫接着可能な圧力を予め設定しておき、キャビティ内の圧力が予め設定した圧力以上となるように押出し機72をフィードバック制御することで、脚部20A、20Bのインジェクション加硫成型を確実に行うことができる。
【0043】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0044】
上記実施形態では、弾性材料としてゴム材料を用いたが、成形可能な材料であればゴム以外のエラストマーを用いても良い。
また、上記実施形態では上金型、及び下金型に圧力センサ58を設けたが、脚部を成形するキャビティの圧力を直接計測できる位置であれば圧力センサ58は他の部位(例えば、コア金型)に設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1実施形態に係る金型の要部を示す断面図である。
【図2】支持体の装着された空気入りタイヤ及びリムの断面図である。
【図3】(A)及び(B)は、それぞれ第1実施形態の金型でゴム材料をトランスファーする前の状態、及びトランスファーさせた後の状態を示す断面図である。
【図4】(A)は第2実施形態に係る金型でコンプレッション成形する前の状態を示す断面図であり、(B)は下金型を閉めた状態を示す断面図である。
【図5】インジェクション成形を行う金型を含む加硫成形システムの構成図である。
【符号の説明】
【0046】
10 空気入りタイヤ
12 加硫成型装置
14 支持体
16 支持部材
20A 脚部
20B 脚部
26 コア金型
28 上中間金型
30 下中間金型
32 上金型
34 下金型
42A キャビティ
42B キャビティ
62 コア金型
64 上金型
66 下金型
68 コア金型
70 上金型
72 押出し機
74 制御装置
G ゴム材料(弾性材料)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤの内側に配置され、内圧低下により前記空気入りタイヤが潰れた際に前記空気入りタイヤのトレッド部内側を外周面に当接させて支えるリング状の支持部材と、前記支持部材の幅方向の両縁部にそれぞれ接合された弾性材料からなる脚部と、を有する支持体を製造する際に用いられ、前記支持部材に前記脚部を一体的に成型するための金型であって、
前記金型は、前記脚部を成型するためのキャビティと、前記キャビティ内の圧力を検出する圧力センサと、を有する、ことを特徴とする金型。
【請求項2】
前記金型はコンプレッション加硫成型用の金型である、ことを特徴とする請求項1に記載の金型。
【請求項3】
前記金型はトランスファー加硫成型用の金型である、ことを特徴とする請求項1に記載の金型。
【請求項4】
前記金型はインジェクション加硫成型用の金型である、ことを特徴とする請求項1に記載の金型。
【請求項5】
前記センサには、前記センサで検出した前記キャビティ内の圧力に応じて前記キャビティに弾性材料を注入する押出し機の押出し量を制御する制御装置が連結されている、ことを特徴とする請求項4に記載の金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−173828(P2008−173828A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8437(P2007−8437)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】