説明

金属溶湯の調製装置、金属溶湯の調製方法、金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去装置、金属溶湯の製造方法および金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去方法

【課題】金属溶湯中に含まれる水素または酸化物等の非金属介在物を効率的に除去できる金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去を提供する。
【解決手段】金属溶湯を収容する容体(10)と、金属溶湯中に含まれる水素または非金属介在物を除去する作用ガスを金属溶湯中で噴出させる噴孔(42)を有する導気管(40)と、導気管に該作用ガスを供給するガス供給源と、導気管の噴孔から噴出した作用ガスを金属溶湯中で微細分散させる撹拌手段(50)と、を備える金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去装置であって、金属溶湯の湯面上にできる湯上空間から容体外へ流出する出向気流を許容すると共に容体の外界にある外気が湯上空間へ流入する入向気流を規制する外気規制手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳巣や非金属介在物等を低減した高品質鋳物の製造に適した、金属溶湯の調製装置および金属溶湯の調製方法とそれらを具体化した金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去装置(以下適宜、単に「脱ガス装置」という。)、金属溶湯の製造方法および金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去方法(以下適宜、単に「脱ガス方法」という。)に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳物の製造に必要となる金属溶湯には、不純物である水素や酸化物等の非金属介在物が含まれることが多い。金属溶湯中の溶存水素は鋳物中に鋳巣(ポロシティー)を形成し、金属溶湯中の酸化物等は鋳物中の介在物となる。いずれも鋳物の破壊起点となり好ましくない。このような非金属介在物等の存在を低減するために従来から種々の提案がなされており、例えば、下記の特許文献にそれに関する開示がある。
このような金属溶湯中の水素や非金属介在物に起因する鋳造欠陥を少なくするために、代表的なものとして、従来からいわゆる金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去処理(以下適宜、単に「脱ガス処理」という。)がなされてきた。この脱ガス処理は、金属溶湯に不活性ガス等を導入しつつ撹拌させ、微細に分散させた不活性ガス等に金属溶湯中の水素や非金属介在物を吸着させて、金属溶湯中から水素等を除去する方法である。この脱ガス処理に関しては、例えば下記の特許文献5〜7に具体的な脱ガス処理の装置や方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−66302号公報
【特許文献2】特開2007−167863号公報
【特許文献3】特開2000−226621号公報
【特許文献4】特開2003−129143号公報
【特許文献5】特開昭63−307224号公報
【特許文献6】特開平5−156377号公報
【特許文献7】特開2007−39744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、Mg合金の溶湯が空気と接触することを防止するために、溶湯上に遮蔽層となるSFとCOの混合ガスの注入し、その注入圧力を溶解炉の酸素濃度に応じて調節することを提案している。また、特許文献2は、アルミニウム合金の溶湯上に不活性ガスからなる保護ガス雰囲気を形成することを提案している。
しかし、本発明者の研究によれば、そのようにガス層を単に設けるだけでは、非金属介在物等のない高品質な鋳物を得ることはできない。また、非金属介在物等の発生原因となる水分(湿度)についても何ら記載がされていない。
【0005】
特許文献3は、SF−CO−Dry Airの保護ガス雰囲気中で、マグネシウム系廃材の溶湯中にArガスやNガス等の清浄化ガスを吹き込んで、マグネシウム系廃材を清浄化する方法を提案している。もっとも、溶湯上の酸素濃度や湿度濃度に応じて、溶湯上の雰囲気を制御することに関しては何ら記載がない。
特許文献4は、NおよびHOの濃度を著しく低減したArガス等を、真空溶解炉に充填した高純度不活性ガス雰囲気中で鋳造する方法を提案し、これにより不純物元素であるC、N、S等を著しく低減した純FeまたはFe合金からなる鋳塊が得られるとしている。もっとも、このような方法は高純度金属を得る方法に過ぎず、鋳造中に生じる非金属介在物等の低減を目的としたものではない。また、このようは方法は、Al合金やMg合金等の金属溶湯を連続的に処理して、Al合金等の高品質鋳物を大量生産する場合には適さない。
【0006】
特許文献5は、金属溶湯中に吹き込んだバブリングガスを回収するガス回収器を金属溶湯の上方に配置することを提案している。しかしこの方法では、バブリングガスが粗大化し溶湯中に均一分散されないので脱ガスおよび非金属介在物の除去効果が著しく低いという根本課題がある。また、バブリングガスが大気へ放出される際に、湯面付近で金属溶湯と大気とが接触して金属溶湯が酸化されることを抑制している。しかし、坩堝の上部開口は大気開放状態となっている。このため、金属溶湯の上面に生じる上昇気流に対向した大気の下降気流(対流)が金属溶湯の湯面に流れ込み、結局、金属溶湯の酸化はあまり抑制されない。
特許文献5の図3には溶湯保持炉に上蓋を設けて、金属溶湯の上面を完全に大気と遮断した脱ガス装置が開示されている。しかし、その装置では金属溶湯中から脱ガスした後のバブリングガスが外部へ放出されないため、一旦金属溶湯中から除去された水素が再度金属溶湯中に取り込まれることになる。従って、金属溶湯全体を効率的に脱ガス処理することはできない。
【0007】
特許文献6は、金属溶湯中に不活性ガスを噴出させると共にそのガスを回転羽根で撹拌して不活性ガスを金属溶湯中に微細分散させる脱ガス装置において、回転羽根の回転を定期的に反転させることを提案している。これにより、金属溶湯は旋回流から乱流に移行し、金属溶湯中に微細分散した不活性ガスの遊動距離が伸びるとしている。しかし、この場合も結局、金属溶湯の上面に生じる上昇気流に対向した大気の下降気流(対流)が金属溶湯の湯面に流れ込み、金属溶湯の酸化は十分に抑制されない。
【0008】
特許文献7は、金属溶湯中に吹き込んだ不活性ガスをロータで粉砕し微細に分散させる脱ガス装置において、渦流発生の抑制(消波作用)と非金属介在物の捕捉をする整流ブロックを溶湯の湯面付近に設けることを提案している。
ここで特許文献7の図1には、保持炉上に設けられた炉蓋(10)が描かれている。しかし、この炉蓋は、あくまでも整流ブロックを支持ロッドを介して吊下げるために設けられているにすぎない。そして、その形状や機能について特許文献7中に何ら記載がない。すると、その炉蓋(10)が、金属溶湯の湯面上への大気の流込みを抑制する機能を果たすとは到底考えられない。
【0009】
本発明はこのような事情の下になされたものである。すなわち、本発明は、溶解炉から鋳型へ注湯されるまでの間の金属溶湯に、鋳造欠陥の原因となる水素や非金属介在物等が取り込まれることを極力防止して、高品質の鋳物が得るようにすることを目的とする。具体的には、溶解炉から保持炉に至る間の金属溶湯が接触し得る雰囲気を効率的に制御する金属溶湯の調製装置またはその調製方法を提供することを目的とする。
また、それらをより具体化したものとして、金属溶湯中に溶存するガス成分の脱ガスまたは非金属介在物除去処理の効率化を図り、さらには非金属介在物の除去効果を十分に得られる金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去装置、金属溶湯の製造方法または金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段およびその効果】
【0010】
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し試行錯誤を重ねた結果、金属溶湯の湯面上にできる湯上空間へ外界から流れ込む気流を規制することで、従来になく効率的に金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去処理を行えることを知見し、さらには金属溶湯が接する雰囲気を全体的に調製、制御することで、高品質な鋳物を安定して得ることを知見して、本発明を完成するに至った。
【0011】
〈金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去装置〉
(構成)
先ず本発明の金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去装置は、金属溶湯を収容する容体と、該金属溶湯中に含まれる水素または非金属介在物を除去する作用ガスを該金属溶湯中で噴出させる噴孔を有する導気管と、該導気管に該作用ガスを供給するガス供給源と、該導気管の噴孔から噴出した作用ガスを該金属溶湯中で微細分散させる撹拌手段とを備える金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去装置であって、
前記金属溶湯の湯面上にできる湯上空間から前記容体外へ流出する出向気流を許容すると共に該容体の外界にある外気が該湯上空間へ流入する入向気流を規制する外気規制手段を有することを特徴とする。
【0012】
(作用効果)
本発明の金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去装置(以降、単に「脱ガス装置」という。)によれば、脱ガスまたは非金属介在物除去処理(以降、単に「脱ガス処理」という。)を効率的に行うことができる。特に、脱ガスのみで非金属介在物の除去が十分に行える。この理由は現状次のように考えられる。
(1)金属溶湯中に不活性ガス等の作用ガスを吹き込んで脱ガス処理を行う以上、金属溶湯中に噴出された作用ガスは、いずれ金属溶湯の湯面上から外界(大気中)へ放出または排出されなければならない。そこで従来は当然のように、金属溶湯を収容した坩堝等の容体の上部開口を外界に解放した状態で脱ガス処理が行われてきた。このため従来は、金属溶湯の酸化を抑制するためにその湯面を安静状態に保つ工夫等をすることはあっても、湯面上の雰囲気や状況に関する管理や制御といった配慮は全くされてこなかった。
本発明者が鋭意研究したところ、脱ガス処理中、高温な金属溶湯の湯面上から作用ガスを含む上昇気流が激しく生じ、これに対向するように、外界から金属溶湯の湯面上へ激しい下降気流が生じていることが解った。この下降気流は通常、酸素や水蒸気を含む空気からなるため、金属溶湯の表面付近で新たな酸化反応や水の分解反応が生じ得る。その結果新たにできた酸化物や水素は、再び金属溶湯中に取り込まれたり、金属溶湯上を浮遊したりすることになる。
そうすると、従来の脱ガス処理は、一方で水素や非金属介在物の除去を行いつつも、他方で新たな酸化物や水素の吸収を誘発するという、矛盾した非効率な状況下で脱ガス処理が行われていたことになる。
(2) これに対して本発明の金属溶湯の脱ガス装置は外気規制手段を備える。この外気規制手段は、金属溶湯中へ導入された作用ガス等が湯上空間から出て行くことを許容しつつも、外界から酸素や水蒸気を含んだ空気等が湯上空間へ入ってくることを制限する。このため、湯上空間内では、外気が新たに取り込まれることなく、湯上空間内の水蒸気や水素を吸着した作用ガスがほぼ一方的に外界へ放出または排出されることとなる。
このように本発明によれば、実質的に、金属溶湯中へ吹き込んだ作用ガスが水素や水蒸気を伴いつつ、湯上空間を経て外部へ放出または排出されるだけの一方通行的な気流を形成することで、酸化物(滓)等の生成と巻込みを従来よりも格段に抑制しつつ、効率的な脱ガス処理を可能とした。
【0013】
〈金属溶湯の製造方法〉
本発明は、上記の脱ガス装置等を用いた金属溶湯の製造方法としても把握できる。
すなわち本発明は、容体に収容された金属溶湯内に含まれる水素または非金属介在物を除去する作用ガスを該金属溶湯中へ導入するガス導入工程と、
該ガス導入工程によって導入された作用ガスを該金属溶湯中に微細分散させる撹拌工程とを備える該金属溶湯の製造方法であって、
前記撹拌工程は、前記金属溶湯の湯面上にできる湯上空間から前記容体外へ流出する出向気流を許容すると共に該容体の外界にある外気が該湯上空間へ流入する入向気流を規制してなされることを特徴とする金属溶湯の製造方法であってもよい。
【0014】
〈金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去方法〉
本発明は、単に金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去方法としても把握できる。
すなわち本発明は、容体に収容された金属溶湯内に含まれる水素または非金属介在物を除去する作用ガスを該金属溶湯中へ導入するガス導入工程と、
該ガス導入工程によって導入された作用ガスを該金属溶湯中に微細分散させる撹拌工程とを備える該金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去方法であって、
前記撹拌工程は、前記金属溶湯の湯面上にできる湯上空間から前記容体外へ流出する出向気流を許容すると共に該容体の外界にある外気が該湯上空間へ流入する入向気流を規制してなされることを特徴とする金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去方法(以降、単に「脱ガスまたは非金属介在物除去方法」という。)であってもよい。
【0015】
〈金属溶湯の調製装置〉
(構成)
次に本発明者は、上記のような脱ガス処理時のみならず、金属溶湯が工業的に溶解から注湯に至る各過程でも、水素等のガスや酸化物等の非金属介在物が金属溶湯に混入することを抑制することを考え、次のような発明を完成させた。
すなわち、本発明は、金属溶湯を収容する容体と、前記金属溶湯の湯面上にできる湯上空間へ乾燥ガスを給気する給気手段と、前記湯上空間から前記容体外へ流出する出向気流を許容すると共に該容体の外界にある外気が該湯上空間へ流入する入向気流を規制する外気規制手段と、を備えることを特徴とする金属溶湯の調製装置としても把握される。
(作用効果)
工業的に鋳物を製造する場合、原料を溶解してから鋳型へ注湯するまでの間で、金属溶湯は各種炉体内に収容または保持されると共に、異なる炉体間は湯道を流れて移送される。ここで従来であれば、Al合金やMg合金等の溶湯の場合、表面に酸化被膜等が形成され、それより内部の金属溶湯が酸素等に直接接触することがなく、金属溶湯中に酸化物等の非金属介在物が混入することが実質的に抑制されるように思われていた。
しかし、現実には金属溶湯が各種炉体間を移動する途中を考えると、金属溶湯の湯面が必ずしも静的な状態にある訳でもなく、また安定している訳でもない。このため金属溶湯は、溶解から注湯に至る過程で酸素や水蒸気等とむしろ接触し易くなっており、鋳造欠陥の原因となる非金属介在物等を内部に取り込む可能性が高かった。
そこで本発明では、金属溶湯が外界と接触する可能性のある各過程で、湯上空間に乾燥ガスを導入し、湯上空間への外気の流入を規制しつつ、湯上空間からの排気を許容して、金属溶湯の湯上空間中の湿度や酸素濃度を積極的に低減することとした。
これにより、前述した脱ガス処理の場合以上に、鋳造過程全体として、金属溶湯中に混入し得る非金属介在物が著しく低減され、高品質な鋳物を安定して製造することが可能となった。
【0016】
〈金属溶湯の調製方法〉
さらに本発明は、金属溶湯の調製装置としてのみならず、金属溶湯の調製方法としても把握される。
すなわち、本発明は、容体に収容した金属溶湯の湯面上にできる湯上空間へ乾燥ガスを給気し、該湯上空間から前記容体外へ流出する出向気流を許容すると共に該容体の外界にある外気が該湯上空間へ流入する入向気流を規制することを特徴とする金属溶湯の調製方法としても良い。
なお、これらの雰囲気改善は、金属溶湯が溶解から注湯される全ての段階で行われるのが好ましいが、本発明は金属溶湯の湯面変動が激しい過程の一部であっても有効であることは当然である。
すなわち、本発明の金属溶湯の調製は、原料を加熱溶解して金属溶湯とする溶解工程、該金属溶湯中へ導入した作用ガスを微細分散させて該金属溶湯中に含まれる水素または非金属介在物を除去する脱ガス工程、鋳型へ注湯する前の金属溶湯を保持する溶湯保持工程または該金属溶湯を別の容体へ移送する溶湯移送工程の少なくともいずれか一つの工程でなされれば好適である。これを換言すれば、前記容体は、例えば、原料を加熱溶解して金属溶湯とする溶解炉、該金属溶湯中へ導入した作用ガスを微細分散させて該金属溶湯中に含まれる水素または非金属介在物を除去する脱ガス炉、鋳型へ注湯する前の金属溶湯を保持する保持炉または該金属溶湯を別の容体へ移送する通路である湯道の少なくともいずれか一つであれば好適である。勿論、それら以外の工程または炉体にも本発明が有効であることはいうまでもない。
〈鋳物およびその製造方法〉
上述した脱ガスまたは非金属介在物除去処理により得られた良質な金属溶湯を用いることで、鋳造欠陥等の少ない鋳物が工業的に歩留まりよく得られる。そこで本発明は、さらに、そのような鋳物およびその製造方法としても把握することができる。
すなわち、本発明は、前述したような方法により得られた金属溶湯を鋳型に注湯する注湯工程と、前記注湯工程後の金属溶湯を冷却して凝固させる凝固工程と、前記凝固工程後に得られた鋳物を前記鋳型から取り出す取出工程と、を備えることを特徴とする鋳物の製造方法であっても良い。
また、本発明は、当然に、それらの製造方法により得られた鋳物としても把握される。本発明の鋳物は、水素や不純物の含有量が従来の金属溶湯よりも明確に少ない金属溶湯からなるため、工業的レベルで観れば従来の鋳物よりも鋳造欠陥等が著しく少なく、歩留まりに優れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の金属溶湯の脱ガス装置に係る一実施例を示す図である。
【図2】各種の脱ガス方法を用いて金属溶湯を製造した場合における滓量(酸化物量)を示す図である。
【図3】本発明の一実施例に係る湯上空間の湿度と時間の関係を示す図である。
【図4】本発明の一実施例に係る金属溶湯の製造システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の実施形態を挙げて、本発明をより詳しく説明する。なお、以下では便宜的に、鋳物の製造過程の一例である金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去処理を主に取上げて説明するが、以降の実施形態を含め、本明細書で説明する内容は全て、適宜、本発明に係る金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去装置や金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去方法のみならず、金属溶湯の調製装置、金属溶湯の調製方法または金属溶湯の製造方法にも適用され得ることを断っておく。また、いずれの実施形態が最良であるか否かは、鋳物や金属溶湯の組成、鋳物の要求性能等によって異なることを断っておく。
【0019】
〈金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去装置〉
(1)金属溶湯および作用ガス
金属溶湯の主要な化学成分は、例えば、Al、Mg、Fe、Tiなどである。具体的には、一般的な金属溶湯として、例えば、純Al溶湯、Al合金溶湯、純Mg溶湯、Mg合金溶湯、純Fe溶湯、Fe合金溶湯などがある。本発明の場合、対象とする金属溶湯の組成は特に限定されない。
ここで純Al溶湯またはAl合金溶湯の場合、表面に安定な酸化膜が生成して酸化の進行が進まないので、これまでは大気開放で溶湯処理が行われる場合がほとんどであったが、溶湯表面が乱れて未酸化の上記のAl溶湯が外気と接触するとAl溶湯の酸化は著しく進む。そこで本発明の脱ガス装置等は、このよう事情が存在する純Al溶湯またはAl合金溶湯の場合に特に大きな効果を発揮すると考えられる。
【0020】
作用ガスは、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスが代表的であるが、この他、塩素ガス、フレオン等さらにはそれらの混合ガスでもよい。もっとも不活性ガスであれば、金属溶湯の組成等と関係なく使用できる。
ここで、脱ガス処理の目的が金属溶湯中の水素や非金属介在物の除去であるから、水素、酸素または水分を含むガスは作用ガスとしては本来好ましくない。しかし、Fe系の金属溶湯等の場合、酸化鉄などが沈殿等しないため、空気などの酸素を含むガスを作用ガスとして利用することも可能である。従って、作用ガスの種類は金属溶湯の組成等を考慮して決定するのが好ましい。これにより鋳物の製造コストの低減を図れ得る。
作用ガスは湿度の低い乾燥ガスが好ましい。作用ガス中に水分が含まれると、その水分が分解して金属溶湯中で水素や酸化物となり、金属溶湯の脱ガス処理を効率的に行えないからである。この乾燥ガスは当然に非酸化性であるのが好ましい。
【0021】
(2)容体
容体は、金属溶湯を収容するものである。代表的な容体は坩堝である。また容体は内表面が耐火物製の容器でもよい。もっとも、坩堝を金属溶湯の温度を保持する筐体(保持炉や加熱炉等)に入れている場合、その筐体が本発明でいう容体となる。要するに容体は、外気規制手段と併せて、金属溶湯と大気などの外界とを区画可能なものであれば足りる。
【0022】
(3)導気管およびガス供給源
導気管は、ガス供給源から供給される作用ガスを金属溶湯中へ導入するパイプである。その端部には金属溶湯中に浸漬される噴孔が形成されている。金属溶湯中に導入された作用ガスは撹拌手段により微細化されるので、導気管の噴孔は単なる開口でもよい。もっとも、噴孔が多数の細孔からなると、作用ガスの微細化が促進され易く好ましい。
【0023】
ガス供給源は作用ガスを収容した高圧ボンベやコンプレッサなどである。ガス供給源から導気管へ印加される気圧は、導気管の端部形状、金属溶湯中に浸漬する導気管の長さ、金属溶湯中に導入する作用ガス量などに応じて決定される。
【0024】
(4)撹拌手段
撹拌手段は、金属溶湯中に導入された作用ガスを撹拌して微細分散させる。この撹拌手段は、例えば、金属溶湯中で回転、往復動等をする撹拌子と、撹拌子を駆動する撹拌駆動源とからなる。より具体的には、回転羽根(撹拌子)とそれを回転するモータ(撹拌駆動源)が代表的な撹拌手段である。撹拌手段は、撹拌子を上下動させたり微振動させたりするものでもよい。
【0025】
まお、本発明の場合、本来、導気管と撹拌手段は別の装置であるが、撹拌子の軸に導気管を兼用させるなどして両装置を一体化してもよい。ちなみに、撹拌手段の機能上、導気管の噴孔が撹拌子より下方に配設されることはいうまでもない。
【0026】
(5)外気規制手段
外気規制手段は、前述したように、金属溶湯の湯面上にできる湯上空間から容体外へ流出する出向気流を許容しつつ、容体の外界にある外気が湯上空間へ流入する入向気流を規制する手段である。
【0027】
そもそも従来、入向気流と出向気流は、対流関係にあったことから、本発明の外気規制手段は、入向気流と出向気流との対流を抑止する対流抑止手段とも考えることができる。
いずれにしろ、外気規制手段や対流抑止手段の具体的な形態は、容体の種類や形状に応じて決定される。例えば、坩堝などの容体の場合であれば、対流抑止手段は出向気流を許容する排気孔を残しつつ容体の上部開口を閉塞する対流防止板とできる。より具体的にいえば、例えば、対流防止板は坩堝などの上部開口に配設される蓋体である。
【0028】
もっとも、対流防止板は、外界から湯上空間への入向気流を実質的に遮蔽するものである点で金属溶湯の保温目的で設けられる従来の通気性のある多孔質的な蓋とは異なる。一方、対流防止板は、湯上空間から外界への出向気流を許容する排気孔を残す点で、容体を完全密封する単なる蓋でもない。
【0029】
なお、排気孔は、容体または他部材と対流防止板との間で形成されれば良く、例えば、いずれか一方または双方にできる間隙でもよい。具体的には、対流防止板に設けた貫通孔とそこに挿通した導気管や撹拌子の回転軸との環状隙間などでもよい。さらには、坩堝の環状上端面とその上に載置した対流防止板との間にできる載置隙間でもよい。
【0030】
(6)湿度低減手段
本発明の金属溶湯の脱ガス装置は、さらに、湿度低減手段を備えると好適である。
湿度低減手段は、湯上空間の湿度を低減するものである。例えば、湿度低減手段は、少なくとも容体の外界よりも絶対湿度が低い乾燥ガスを湯上空間へ導入する乾燥ガス導入手段である。
【0031】
湯上空間に存在する水(水蒸気)は、金属溶湯と反応して溶存水素と酸化物を生じ得るため、脱ガス処理の効率低下要因となる。そこで、脱ガス処理を行う前に湯上空間の湿度を予め低減させておくことで、効率的な脱ガス処理が可能となる。
本発明の脱ガス装置では、基本的に湯上空間から外界への気流しか生じないので、湯上空間へ乾燥ガスを導入することで、湯上空間内の湿度を急激に低下させ得る。
【0032】
ここで乾燥ガスは、湿度が0%近傍である方が好ましいが、脱ガス処理に実質的に影響のない範囲内であれば完全な乾燥ガスである必要はない。例えば、室温における相対湿度で10%以下さらには5%以下程度であれば好適である。
【0033】
湯上空間へ導入する乾燥ガスは、前述した不活性ガスであると好ましい。これにより湯上空間内をパージでき、湯上空間の湿度低減と酸素濃度低減の両方を行える。もっとも、乾燥ガスは、低コストな窒素ガスや乾燥空気でもよい。湯上空間へ乾燥空気を導入する場合、少なくとも水蒸気に起因した脱ガス処理の効率低下を抑制できる。
乾燥ガスの湯上空間への導入は、脱ガス処理前から脱ガス処理完了まで行う方が好ましい。もっとも、脱ガス処理前と脱ガス処理中のいずれか一方だけでも、脱ガス処理の効率を向上させ得る。また、乾燥空気を導入する場合であれば、脱ガス処理前だけにすることで、脱ガス処理中における湯上空間内への酸素の導入が抑制される。
【0034】
(7)湿度検出手段および酸素濃度検出手段
本発明の金属溶湯の脱ガス装置は、さらに、湯上空間内の湿度または湿度変化を検出する湿度検出手段を備えると好適である。この湿度検出手段は、例えば、湿度センサとその検出信号をデジタル変換等して湿度(変化)を表示する表示装置からなる。湿度センサはより具体的にいうと、抵抗変化型湿度センサ、静電容量型湿度センサ、乾湿計、鏡面冷却式露点計等である。なお、温度と湿度の両方を測定できるものが好ましい。これにより温度に影響されない絶対湿度を把握できる。
【0035】
前述のように湯上空間内の湿度が脱ガス処理の効率に影響するため、湯上空間内の湿度をモニタリングする意義は大きい。例えば、脱ガス処理前から乾燥ガスを湯上空間へ導入する場合であれば、湿度または湿度変化を観察することで脱ガス処理の開始時期や脱ガス処理の終了時期を適切に把握できる。なお、本発明では、絶対的な湿度が問題ではないから、湿度変化を検出してそれにより湯上空間内の状況を判断すれば足る。
【0036】
また、本発明の金属溶湯の脱ガス装置は、さらに、湯上空間内の酸素濃度または酸素濃度変化を検出する酸素濃度検出手段を備えると好適である。湯上空間内の酸素は、金属溶湯と湯面付近で反応して酸化物を形成したり、また、脱ガス処理された水素と即座に反応して水蒸気となったりする。このような酸化物や水蒸気が脱ガス処理に好ましくないことは既述の通りである。
【0037】
脱ガス処理の開始前に予め、導気管または乾燥ガス導入手段から湯上空間内へ不活性ガス等を導入して湯上空間をパージする場合、湯上空間内の酸素濃度を直接または間接にモニタリングすることで、脱ガス処理の開始時期を適切に判断できる。具体的には、湯上空間をパージする場合であれば、酸素濃度が予め設定した所定値以下となったときを脱ガス処理の開始時期と判断すればよい。
【0038】
また、脱ガス処理の終了時期についても、酸素濃度をモニタリングすることにより適切に判断し得る。例えば、酸素濃度の変化が予め設定した所定値以下となり安定したときを脱ガス処理の終了時期と判断することもできる。
【0039】
湿度検出手段または酸素濃度検出手段のいずれか一方でも、前述のように脱ガス処理の進捗状況を管理できるが、両方を使用することでより安定した脱ガス処理の管理ができる。
【0040】
もっとも、脱ガス処理を適切に管理するという観点から、湯上空間の状況を的確に判断するのに好ましいのは、変動幅の大きい湿度を検出する湿度検出手段である。そこで、湿度検出手段をメインとし酸素濃度検出手段をサブとするとより好ましい。こうすると、例えば、乾燥ガス導入手段の乾燥ガスとして、乾燥空気等を用いることも可能となる。
【0041】
〈金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去方法およびその製造方法〉
上述した内容を踏まえると、ガス導入工程および撹拌工程からなる本発明の金属溶湯の脱ガス方法や金属溶湯の製造方法においても同様に、その撹拌工程前または撹拌工程中に、湯上空間の湿度を低減する湿度低減工程を有すると好適である。そしてこの湿度低減工程は、撹拌工程前より開始され、撹拌工程は湯上空間の湿度または湿度変化が予め設定した所定値以下となったときを撹拌開始時とするとより好適である。さらに、撹拌工程の開始後に湯上空間の湿度が一旦増加した後減少して湯上空間の湿度または湿度変化が予め設定した所定値以下となったときを撹拌終了時とすると一層好適である。
【0042】
なお、前述したように、本発明の作用ガスと乾燥ガスは本来異なる概念である。しかし、導気管の噴孔が金属溶湯中へ浸漬される前の湯上空間中にあるときを考えると、その噴孔から湯上空間内に噴出した不活性ガスは、乾燥ガスとして機能していることにもなる。
【0043】
また、本発明の場合、必ずしも、脱ガス処理(撹拌工程)の開始前から終了後まで継続して乾燥ガスが湯上空間に導入されている必要はない。従って、湿度低減工程(乾燥ガス導入工程)は、特別な装置等によらずとも、導気管を用いて撹拌工程前に効率的に行うこともできる。このことは、湿度低減手段(乾燥ガス導入手段)を導気管およびガス供給源で兼用可能であることを意味する。
〈金属溶湯の調製装置および金属溶湯の調製方法〉
上述したような、外気規制手段、対流抑止手段、湿度低減手段、酸素濃度低減手段、乾燥ガス導入手段、湿度検出手段、酸素濃度検出手段またはそれらを用いた工程やそれらに関連する工程も、当然、本発明の金属溶湯の調製装置や調製方法にも適用され得る。なお、本発明でいう給気手段は、上記の湿度低減手段または乾燥ガス導入手段に対応している。
本発明は基本的に、湯上空間内へ不活性ガス等からなる乾燥ガスを導入して、湯上空間内のガス交換を一方通行的に行うことで、湯上空間内の雰囲気を調整、改善するものである。
もっとも、単に湯上空間の湿度のみならず酸素濃度についても積極的に低減させるために、酸素濃度低減手段または酸素濃度低減工程を備えるのが好ましい。その一つとして、本発明の金属溶湯の調製装置または調製方法が、湯上空間へ酸素と反応して燃焼する燃焼ガスを導入する燃焼ガス導入手段または燃焼ガス導入工程を備えると有効である。これにより、湯上空間内の酸素を積極的に消費させて、湯上空間内の酸素濃度を急減することができる。ちなみに、燃焼した後にできる生成ガスは、外気規制手段を通じて外部へ排出される。
ところで、上述のような手段または方法による湿度低減または酸素濃度低減による金属溶湯の高品質化をより高めるために、金属溶湯が接触する部材または湯上空間を形成する部材若しくは湯上空間内に配設される部材等から、それらに吸着している水分や酸素等を予め除去しておくと好適である。
すなわち、本発明の金属溶湯の調製方法は、さらに、前記湿度低減工程前または前記酸素濃度低減工程前に、金属溶湯が接触する接触部材、前記湯上空間の周壁を形成する周壁部材または湯上空間内に配設される配設部材に吸着している水分または酸素を除去する予備処理工程を備えると好適である。
また、この予備処理工程は、例えば、接触部材、周壁部材または配設部材を少なくとも容体の外界よりも絶対湿度が低いドライ環境内に保持する予備乾燥工程である。さらに、この予備乾燥工程は、例えば、接触部材、周壁部材または配設部材を少なくとも容体の外界よりも高温に加熱する予備加熱工程である。この予備加熱工程により、容体に含まれる水分が蒸発、脱水反応などによって減少する。
このように、これらの部材をドライ環境に保管する予備乾燥(事前乾燥)により、それら部材から雰囲気へ排出される水分等が少なくなり、湯上空間中の湿度が効率的に低減される。従って、金属溶湯ひいては鋳物の高品質化をより一層安定して行える。
本発明により湯上空間の湿度を制御する場合、室温における相対湿度が50%以下、20%以下さらには10%以下であると好ましい。また本発明により湯上空間の酸素濃度を制御する場合、10%以下、5%以下さらには1%以下であると好ましい。
本発明でいう乾燥ガスは、湿度が0%近傍である方が好ましいが、脱ガス処理に実質的に影響のない範囲内であれば完全な乾燥ガスである必要はない。例えば、室温における相対湿度で10%以下さらには5%以下程度であれば好適である。湯上空間へ導入する乾燥ガスは、前述した不活性ガスであると好ましい。これにより湯上空間内をパージでき、湯上空間の湿度低減と酸素濃度低減の両方を行える。もっとも、乾燥ガスは、低コストな窒素ガスや乾燥空気でもよい。湯上空間へ乾燥空気を導入する場合、少なくとも水蒸気に起因した脱ガス処理の効率低下を抑制できる。乾燥ガスは、Arガス、Nガス等の乾燥した不活性ガス(非酸化性ガス)であると好ましい。この乾燥ガスは、脱ガス処理で用いられる作用ガスと本来異なるが、結果的に通常、両者は同じになる。
【実施例】
【0044】
次に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
〈金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去装置〉
本発明に係る一実施例である金属溶湯の脱ガス装置1を図1に示す。
この脱ガス装置1は、金属溶湯Mを収容・保持する坩堝10と、この坩堝10を囲繞する筐体である保温炉20と、坩堝10と保温炉20との間に配設されて坩堝10内の原料または金属溶湯Mを加熱するヒータ30と、中空軸40と、撹拌子50と、乾燥ガス導入管60と、坩堝10内の金属溶湯Mの湯面上にできる湯上空間Sから試料となる雰囲気ガスを吸引する試料ガス吸引管70と、湯上空間Sの雰囲気を検出する検出装置80とからなる。
【0045】
坩堝10は黒鉛製または磁器製であり、保温炉20内に載置される。その坩堝10の上面にはセラミックス製の中実の蓋体である対流防止板11が載置される。この対流防止板11は、保温炉20と共に坩堝10内の金属溶湯Mの冷却を抑制する断熱材としても機能する。本実施例では、坩堝10が本発明でいう容体に相当するが、坩堝10に保温炉20を加えたものを容体と考えてもよい。対流防止板11は、本発明でいう外気規制手段であると共に対流抑止手段でもある。
【0046】
中空軸40は、作用ガスが内部を通過する導気管であると共に撹拌子50の回転軸となっている。中空軸40の最先端部には噴孔42があり、作用ガスは噴孔42から吹き出す。撹拌子50も中空軸40の先端部に取付けられているが、噴孔42よりも僅か上方に位置する。これにより中空軸40をモータで回転駆動すると、中空軸40に固定された撹拌子50は高速回転し、中空軸40の先端から噴出した作用ガスは撹拌子50によって粉砕されて金属溶湯M中に微細分散する。なお、作用ガスは、ガスボンベ(ガス供給源)から流量制御弁41、中空軸40を経て、金属溶湯M中へ適量供給される。
【0047】
本実施例の図1では、乾燥ガスと作用ガスとを同一ガスとした場合を例示している。ちなみに、乾燥ガスは、ガスボンベから流量制御弁61、乾燥ガス導入管60を経て湯上空間Sへ適量供給される。乾燥ガス導入管60、流量制御弁61およびガス供給源であるガスボンベが本発明でいう乾燥ガス導入手段(湿度低減手段)に相当する。
【0048】
湯上空間S内の雰囲気ガスは試料ガス吸引管70から吸引されて、湿度センサおよび酸素センサに導かれる。湿度センサおよび酸素センサからの検出信号はAD変換されてモニタに湿度および酸素濃度が表示される。湿度センサ、酸素センサおよびモニタにより検出装置80が構成される。ここで湿度センサおよびモニタが本発明でいう湿度検出手段に相当し、酸素センサおよびモニタが本発明でいう酸素濃度検出手段に相当する。
【0049】
なお、図1中に矢印で示した出向気流gは、中空軸40の噴孔42から噴出して金属溶湯Mの湯面上から放出された作用ガスや乾燥ガス導入管60から導入された乾燥ガスが、坩堝10と対流防止板11との間隙や中空軸40の挿通孔と対流防止板11との間隙からなる排気孔から外界へ排出される様子を模式的に示したものである。
【0050】
〈金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去方法〉
金属溶湯の原料としてアルミニウム合金(JIS−AC8A)のインゴットを35kgを用意した。これを坩堝10(#100の黒煙坩堝)に入れて、ヒータ30で加熱して溶解した。こうして得た金属溶湯M(Al合金溶湯)を溶湯温度750℃に保持して、上記の脱ガス装置1を用いて脱ガス処理を行った。具体的には次のようにして脱ガス処理を行った。
【0051】
先ず、撹拌子50の噴孔42から作用ガスであるアルゴン(Ar)ガスを噴出させつつ、撹拌子50を湯上空間S中に暫く保持して撹拌子50を暖機した(暖機工程)。次に、噴孔42からArガスを噴出させつつ撹拌子50をAl合金溶湯中へ入れた。撹拌子50が坩堝10の下方付近に位置したところで、Arガスを内径4mmx外径27mmの中空軸40へ3L/minの割合でガスボンベから供給してAl合金溶湯中へ噴出させた(ガス導入工程)。Arガスを噴孔42から噴出させつつ、撹拌子50を中空軸40を介してモータで回転させた。このときの回転数は300rpmとした(撹拌工程)。
【0052】
〈評価試験〉
上述の脱ガス装置1を用いて上述の脱ガス方法により、次の3種類の評価試験用のAl合金溶湯を製造した。
(1)試験例1(対流防止板11無し)
試験例1は、対流防止板11を載置せず、坩堝10の上部を開放状態として、10L/minのArガスをAl合金溶湯の湯面上に吹き付けつつ脱ガス処理をした場合である。撹拌子50を回転させて脱ガス処理を開始してから終了までの時間は20分であった。このとき、坩堝10の上部に滞留した滓量を回収してその重量を測定した。この結果を図2に示す。
【0053】
(2)試験例2および3(対流防止板11あり)
試験例2および3は、対流防止板11を載置して、坩堝10の上部をほぼ閉塞状態として脱ガス処理をした場合である。撹拌子50を回転させて脱ガス処理を開始してから終了までの時間は20分であった。
【0054】
ここで試験例3は、さらに、脱ガス処理の開始前から終了後まで湯上空間Sに乾燥ガスでもあるArガスを10L/min供給しつつ脱ガス処理を行った場合である(乾燥ガス導入工程、湿度低減工程)。
これらの場合についても、坩堝10の上部に滞留した滓量を回収してその重量を測定した。この結果を図2に併せて示す。
【0055】
〈評価〉
(1)図2から明らかなように試験例1〜3では、坩堝10の上部に生じる滓量に大きな差異が見られた。すなわち、試験例1のように対流防止板11がない場合、Al合金溶湯の湯面にArガスを吹き付けていたとしても、酸化物等からなる滓量が400g超となった。
【0056】
一方、試験例2や試験例3のように対流防止板11がある場合、滓量が大きく低減した。特に、試験例3のように湯上空間Sに乾燥ガスを導入して脱ガス処理前に湯上空間S内の湿度を低減した場合、滓量は試験例1の約半分以下である200g程度にまで低減した。
【0057】
(2)このように脱ガス処理の際に対流防止板等の外気規制手段を設け、湯上空間の内気と外気との間のガス交換である対流を抑止することで、脱ガス処理中に金属溶湯が余計に酸化されることが有効に確実に抑制される。
【0058】
このような滓は主に酸化物からなるため、生じる滓量が少ないということは湯上空間内で溶湯が酸素または水蒸気と反応して生成した酸化物量が少ないことを意味する。従って、酸化物の巻込みも少なく溶湯中に浮遊する酸化物が少ないと判断できる。
【0059】
(3)上記の試験例3の場合について、湯上空間内の湿度を湿度センサ(神栄製ハイブロクリップIC1)で検出して、その時間変化をプロットしたものを図3に示す。この図3から解るように、対流防止板11を設けた湯上空間にArガス(乾燥ガス)を導入した場合、先ず、湯上空間内に当初から存在した空気がArガスでパージされて急激に湿度が低下する(ステージI)。そして湿度が下限値付近まで低下したときを脱ガス処理開始時(撹拌開始時)とすると、水蒸気による溶存水素や酸化物の生成を抑制しつつ、効率的な脱ガス処理を行うことができる。
【0060】
脱ガス処理開始時以降、間もなく、湯上空間内の湿度は極大を示す。これは、脱ガス処理により湯上空間内に移動した金属溶湯中の水素が、湯上空間内で残留酸素と即座に反応して水(水蒸気)となるからである。もっとも、金属溶湯中の水素濃度の低下と共に湯上空間内で発生する水蒸気も減少して、やがて湯上空間内の湿度は、乾燥ガス導入時の下限湿度レベルに収束し、脱ガス完了となる(ステージII)。
【0061】
乾燥ガス導入時の下限湿度近傍に設定した所定の閾値以下に湿度が低下したときを脱ガス処理終了とすると、脱ガス処理を無駄に継続されることがなく、作用ガスや乾燥ガスの節約、脱ガス処理の工程時間短縮等を図ることができる。
【0062】
(4)試験例3の場合、ステージIには180秒、ステージIIには180秒要した。ステージI中に中空軸40や撹拌子50を湯上空間内で暖機することを考慮し、ステージIIの所用時間にステージIの所用時間を加えたとしても約20分以内で脱ガス処理を終了できる。最適な脱ガス処理時間は処理前の溶湯のガス含有量等により異なるが、本発明の方法では脱ガス処理の完了を容易に検出できるので、溶湯の状態に応じた脱ガス時間の最適化を図れる。
【0063】
試験例3の場合、室温における相対湿度で、脱ガス処理開始時の湿度は5%、ピーク時の湿度は6%、脱ガス処理終了時の湿度は5%であった。本発明者が種々実験したところ、湯上空間内の室温における相対湿度は10%以下さらには5%以下にするのが好ましいといえる。湯上空間の露点でいえば、露点が−10℃以下さらには−15℃以下であると好ましい。
【0064】
外気規制手段を設けることを前提に、湯上空間へ導入する乾燥ガスとしてArガスなどの高比重ガスを用いた場合、乾燥ガスは金属溶湯の湯面付近で濃化し易くなり、金属溶湯の酸化はより効果的に抑止され得る。勿論、窒素ガスを乾燥ガスとして使用すれば安価であり、金属溶湯ひいては鋳物の製造コストを低減できる。
【0065】
ちなみに、湯上空間内の酸素濃度を酸素センサ(新コスモス電機製、XPO−318)で検出し観察したところ、脱ガス処理開始時以降の酸素濃度は1%以下で比較的安定していた。
【0066】
(5)以上のように本発明の脱ガス装置や脱ガス方法により脱ガス処理を行った場合、外気規制手段の存在により、少なくとも湯上空間内の湿度または酸素濃度が外界よりも低下した状態が作出され得る。そして、金属溶湯中からの水素の除去と相乗して、介在物となる浮遊酸化物の除去が生じるとともに新たに生成する酸化物が抑制されるため、金属溶湯中への酸化物の巻込みが効率的に抑制される。なお本発明によれば、従来、非金属介在物を除去するために行われていた、脱ガス処理後のフラックスによる脱酸処理を省略することもできる。これは、本発明による脱ガス処理のみで十分に非金属介在物の除去ができるからである。
いずれにしても本発明に係る金属溶湯を用いて鋳造を行うと、酸化物からなる介在物や水素に起因した気孔等からなる鋳造欠陥が非常に少ない鋳物が得られる。
【0067】
〈金属溶湯の製造と金属溶湯の雰囲気改善〉
上述した金属溶湯の脱ガス処理を踏まえて、さらに、金属溶湯の製造過程全体について、金属溶湯中へ巻込まれる非金属介在物等をさらに低減するできる金属溶湯の製造システム2を図4に示した。便宜上、上述した脱ガス装置1と同様な機能をもつ部材には、図1で付した符号と共通の符号を付した。但し、適宜、形状、形態等が異なることは当然である。
【0068】
この金属溶湯の製造システム2は、金属塊や添加物等の原料を加熱溶解して金属溶湯Mとする溶解炉21と、その金属溶湯M中から水素等を除去する前述の脱ガス処理を行う脱ガス炉23と、注湯前の金属溶湯Mを一時的に保持する保持炉25と、溶解炉21と脱ガス炉23との移送通路となる第1湯道22と、脱ガス炉23と保持炉25との移送通路となる第2湯道24とからなる。
溶解炉21、第1湯道22、脱ガス炉23、第2湯道24および保持炉25は、それぞれ、それらの上部にある湯上空間Sを外界とほぼ遮蔽する対流防止板11と、その湯上空間Sへ乾燥ガス(Arガス)を導入する乾燥ガス導入管60(給気手段)と、湯上空間S内の雰囲気ガスを吸引する試料ガス吸引管70と、その吸引した雰囲気ガスの湿度および酸素濃度を検出すると共にモニタする検出装置80を備える。
なお、脱ガス炉23は、基本的に脱ガス装置1と同様の構成である。また、金属溶湯の製造システム2の対流防止板11も、脱ガス装置1の対流防止板11と同様である。すなわち、湯上空間S内への外気の流入は規制されるが、湯上空間S内のガスは外部へ排気される。
このようにして、乾燥ガス導入管60から給気された乾燥ガスが湯上空間Sに満たされ、湯上空間S内のガス交換作用によって、金属溶湯Mから生じた僅かなガスや水蒸気等も湯上空間Sから外部へ排出される。この結果、金属溶湯Mの湯面は、金属溶湯Mの流動にも拘らず、乾燥ガスであるArガスで保護された状態となる。
なお、乾燥ガス導入管60から湯上空間Sへ給気される乾燥ガス量は、検出装置80の検出結果に基づいて行われる。これにより、金属溶湯Mが接する湯上空間Sの雰囲気は、一定基準以下の湿度や酸素濃度に無駄なく調整される。こうして、高品質な金属溶湯が効率的に得られ、ひいては鋳造欠陥等のない高品質な鋳物が効率的に得られる。
【0069】
〈予備乾燥工程、予備加熱工程〉
上記の脱ガス炉23の湯上空間Sの周壁を形成する坩堝10(周壁部材)および湯上空間S内に配設される対流防止板11(配設部材)に、予備加熱工程(予備処理工程、予備乾燥工程)を行わなかった場合と行った場合とで、湯上空間Sの相対湿度がどのように変化するかを比較した。
【0070】
先ず、それらの部材の予備加熱を行わなかった場合、露点−60℃以下の乾燥Arガスを乾燥ガス導入管60から湯上空間Sへ10L/minの割合で給気しても、湯上空間Sの室温における相対湿度は60%以上であった。一方、前記対流防止板11および坩堝10の予備加熱を行った場合、上記と同条件下で、湯上空間Sの室温における相対湿度が10%以下にまで低下した。
なお、上記の予備加熱工程は、上記の坩堝10および対流防止板11に対して、電気ヒータによる加熱により行った。この予備加熱に要した時間(予備加熱時間)は8時間以上であった。
【0071】
もっとも、前述の鋳造後に、上記の坩堝10および対流防止板11を、その周囲に露点−10℃以下の空気を供給して低湿度状態で保管した場合、4時間以内の予備加熱時間でも、湯上空間Sの室温における相対湿度が10%以下に低減した。
このような予備加熱を行うことで、金属溶湯の直上の湯上空間Sの湿度をより効率的に低減でき、高品質な鋳物を得ることができる。また、湯上空間Sの湿度等の雰囲気を検出する検出装置80を利用すれば、湯上空間Sを形成する接触部材、周壁部材または配設部材などの乾燥が十分か否かも解る。これにより、金属溶湯の供給をより適正に管理された状態下で行える。
【符号の説明】
【0072】
M 金属溶湯
1 脱ガス装置
2 金属溶湯の製造システム
10 坩堝(容体)
20 保温炉
21 溶解炉
22 第1湯道
23 脱ガス炉
24 第2湯道
25 保持炉
30 ヒータ
40 中空軸(導気管)
50 撹拌子
60 乾燥ガス導入管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属溶湯を収容する容体と、
前記金属溶湯の湯面上にできる湯上空間へ乾燥ガスを給気する給気手段と、
前記湯上空間から前記容体外へ流出する出向気流を許容すると共に該容体の外界にある外気が該湯上空間へ流入する入向気流を規制する外気規制手段と、
を備えることを特徴とする金属溶湯の調製装置。
【請求項2】
さらに、前記湯上空間内の湿度若しくは湿度変化を検出する湿度検出手段または該湯上空間内の酸素濃度若しくは酸素濃度変化を検出する酸素濃度検出手段を備え、
前記給気手段は、該湿度検出手段または酸素濃度検出手段の検出結果に基づき前記乾燥ガスの給気量を調整する請求項1に記載の金属溶湯の調製装置。
【請求項3】
さらに、酸素と反応して燃焼する燃焼ガスを前記湯上空間へ導入する燃焼ガス導入手段を備える請求項1に記載の金属溶湯の調製装置。
【請求項4】
前記外気規制手段は、前記出向気流と前記入向気流との対流を抑止する対流抑止手段である請求項1に記載の金属溶湯の調製装置。
【請求項5】
前記対流抑止手段は、前記出向気流を許容する排気孔を残しつつ前記容体の上部開口を閉塞する対流防止板である請求項4に記載の金属溶湯の調製装置。
【請求項6】
前記容体は、原料を加熱溶解して金属溶湯とする溶解炉、該金属溶湯中へ導入した作用ガスを微細分散させて該金属溶湯中に含まれる水素または非金属介在物を除去する脱ガスまたは非金属介在物除去炉、鋳型へ注湯する前の金属溶湯を保持する保持炉または該金属溶湯を別の容体へ移送する通路である湯道の少なくともいずれか一つである請求項1に記載の金属溶湯の調製装置。
【請求項7】
容体に収容した金属溶湯の湯面上にできる湯上空間へ乾燥ガスを給気し、該湯上空間から前記容体外へ流出する出向気流を許容すると共に該容体の外界にある外気が該湯上空間へ流入する入向気流を規制することを特徴とする金属溶湯の調製方法。
【請求項8】
さらに、前記湯上空間内の湿度若しくは湿度変化の検出結果または該湯上空間内の酸素濃度若しくは酸素濃度変化の検出結果に基づき前記乾燥ガスの給気量を調整する請求項7に記載の金属溶湯の調製方法。
【請求項9】
さらに、酸素と反応して燃焼する燃焼ガスを前記湯上空間へ導入する燃焼ガス導入工程を備える請求項7に記載の金属溶湯の調製方法。
【請求項10】
さらに、前記湯上空間への乾燥ガスの導入前または導入中に、前記金属溶湯が接触する接触部材、前記湯上空間の周壁を形成する周壁部材または該湯上空間内に配設される配設部材に吸着している水分または酸素を除去する予備処理工程を備える請求項7に記載の金属溶湯の調製方法。
【請求項11】
前記予備処理工程は、前記接触部材、前記周壁部材または前記配設部材を少なくとも前記容体の外界よりも絶対湿度が低いドライ環境内に保持する予備乾燥工程である請求項10に記載の金属溶湯の調製方法。
【請求項12】
前記予備乾燥工程は、前記接触部材、前記周壁部材または前記配設部材を少なくとも前記容体の外界よりも高温に加熱する予備加熱工程である請求項11に記載の金属溶湯の調製方法。
【請求項13】
原料を加熱溶解して金属溶湯とする溶解工程、該金属溶湯中へ導入した作用ガスを微細分散させて該金属溶湯中に含まれる水素または非金属介在物を除去する脱ガスまたは非金属介在物除去工程、鋳型へ注湯する前の金属溶湯を保持する溶湯保持工程または該金属溶湯を別の容体へ移送する溶湯移送工程の少なくともいずれか一つの工程で行われる請求項7に記載の金属溶湯の調製方法。
【請求項14】
金属溶湯を収容する容体と、
該金属溶湯中に含まれる水素または非金属介在物を除去する作用ガスを該金属溶湯中で噴出させる噴孔を有する導気管と、
該導気管に該作用ガスを供給するガス供給源と、
該導気管の噴孔から噴出した作用ガスを該金属溶湯中で微細分散させる撹拌手段と、
を備える金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去装置であって、
前記金属溶湯の湯面上にできる湯上空間から前記容体外へ流出する出向気流を許容すると共に該容体の外界にある外気が該湯上空間へ流入する入向気流を規制する外気規制手段を有することを特徴とする金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去装置。
【請求項15】
前記外気規制手段は、前記出向気流と前記入向気流との対流を抑止する対流抑止手段である請求項14に記載の金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去装置。
【請求項16】
前記対流抑止手段は、前記出向気流を許容する排気孔を残しつつ前記容体の上部開口を閉塞する対流防止板である請求項15に記載の金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去装置。
【請求項17】
さらに、前記湯上空間の湿度を低減する湿度低減手段を備える請求項14に記載の金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去装置。
【請求項18】
前記湿度低減手段は、少なくとも前記容体の外界よりも絶対湿度が低い乾燥ガスを前記湯上空間へ導入する乾燥ガス導入手段である請求項17に記載の金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去装置。
【請求項19】
さらに、前記湯上空間内の湿度または湿度変化を検出する湿度検出手段を備える請求項14に記載の金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去装置。
【請求項20】
さらに、前記湯上空間内の酸素濃度または酸素濃度変化を検出する酸素濃度検出手段を備える請求項14に記載の金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去装置。
【請求項21】
容体に収容された金属溶湯内に含まれる水素または非金属介在物を除去する作用ガスを該金属溶湯中へ導入するガス導入工程と、
該ガス導入工程によって導入された作用ガスを該金属溶湯中に微細分散させる撹拌工程とを備える該金属溶湯の製造方法であって、
前記撹拌工程は、前記金属溶湯の湯面上にできる湯上空間から前記容体外へ流出する出向気流を許容すると共に該容体の外界にある外気が該湯上空間へ流入する入向気流を規制してなされることを特徴とする金属溶湯の製造方法。
【請求項22】
前記撹拌工程前または前記撹拌工程中に、前記湯上空間の湿度を低減する湿度低減工程を有する請求項21に記載の金属溶湯の製造方法。
【請求項23】
前記湿度低減工程は、少なくとも前記撹拌工程前より開始され、
前記撹拌工程は前記湯上空間の湿度または湿度変化が予め設定した所定値以下となったときを撹拌開始時とする請求項21に記載の金属溶湯の製造方法。
【請求項24】
前記撹拌工程の開始後に前記湯上空間の湿度が一旦増加した後減少して該湯上空間の湿度または湿度変化が予め設定した所定値以下となったときを撹拌終了時とする請求項21に記載の金属溶湯の製造方法。
【請求項25】
容体に収容された金属溶湯内に含まれる水素または非金属介在物を除去する作用ガスを該金属溶湯中へ導入するガス導入工程と、
該ガス導入工程によって導入された作用ガスを該金属溶湯中に微細分散させる撹拌工程とを備える該金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去方法であって、
前記撹拌工程は、前記金属溶湯の湯面上にできる湯上空間から前記容体外へ流出する出向気流を許容すると共に該容体の外界にある外気が該湯上空間へ流入する入向気流を規制してなされることを特徴とする金属溶湯の脱ガスまたは非金属介在物除去方法。
【請求項26】
請求項7〜13のいずれかに記載の調製方法により得られた金属溶湯を鋳型に注湯する注湯工程と、
前記注湯工程後の金属溶湯を冷却して凝固させる凝固工程と、
前記凝固工程後に得られた鋳物を前記鋳型から取り出す取出工程と、
を備えることを特徴とする鋳物の製造方法。
【請求項27】
請求項21〜24のいずれかに記載の調製方法により得られた金属溶湯を鋳型に注湯する注湯工程と、
前記注湯工程後の金属溶湯を冷却して凝固させる凝固工程と、
前記凝固工程後に得られた鋳物を前記鋳型から取り出す取出工程と、
を備えることを特徴とする鋳物の製造方法。
【請求項28】
請求項26または27に記載の製造方法により得られたことを特徴とする鋳物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−67389(P2012−67389A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218820(P2011−218820)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【分割の表示】特願2007−281957(P2007−281957)の分割
【原出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】