説明

雨判定システム

【課題】条件に係わらずにより正確に雨が発生したことを判定することができる雨判定システムを提供すること。
【解決手段】本発明による雨判定システム1は、車両に備えられた複数のドアに設置されたロック及びアンロック用の複数のタッチセンサ11と、複数のタッチセンサ11の出力電圧Vの基準電圧VBに対する減少分ΔVが第一閾値αより小さい第二閾値βよりも大きいか否かを判定する第一判定処理を行う第一判定手段2cと、減少分ΔVが第一閾値αより大きいか否かを判定する第二判定処理を行う第二判定手段2dと、第一判定手段2cが肯定と判定し、第二判定手段2dが否定と判定する場合に、複数のタッチセンサ11にそれぞれ対応するカウンタ値CAを増加させる増加処理を行う増加手段2eと、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車、トラック、バス等の車両に適用されて好適な雨判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の車両においては、運転者の利便性をより向上させるため、運転者が携帯機を所持して車両に接近して、車両側の複数箇所に設置された送信用アンテナにより形成される受信可能領域に進入した場合に、車載機の制御に基づいて送信用アンテナにより送信されるリクエスト信号を携帯機が受信して、携帯機が認証コードを含むアンサー信号を車載機に向けて送信し、車載機がアンサー信号に含まれる認証コードを認証した場合で、さらに、運転者が車両のドアに設けられたタッチセンサに指を接触させた場合に、車両のドアのロック及びアンロックを行う所謂スマートエントリーシステムが導入されている。
【0003】
このようなスマートエントリーシステムに用いられるタッチセンサとしては、通常、静電容量式のものが使用されている。このような静電容量式のタッチセンサは、例えばドアのドアノブの把持部分にコンデンサに相当する検出部が設けられて、検出部に運転者の指が触れると、指の有する浮遊容量によりコンデンサの静電容量が変化することに起因して、出力電圧が低下することを利用して、指の接触を検知している。このような静電容量式のタッチセンサにおいては、雨が有する浮遊容量によっても静電容量が変化して出力電圧が低下するが、人の指と雨とを峻別する技術としては、例えば、特許文献1に記載されたようなものが提案されている。
【特許文献1】特開2002−57564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の従来技術においては、指が触れた場合の出力電圧の低下時間と、雨が触れた場合の出力電圧の低下時間とを比較した場合に、多くの場合には前者の指が触れた場合の低下時間の方が後者の雨が触れた場合の低下時間よりも長いことを利用して、人の指の接触と雨の接触とを峻別している。
【0005】
ところが、このような特許文献1に記載の従来技術においては、人の指が有する浮遊容量が個人差によりばらつきが大きく、雨の有する浮遊容量が地理的条件又は工場等の有無に伴う周辺条件、気象条件により同じくばらつきが大きいことから、条件によっては、必ずしも正確に、人の指の接触と雨の接触との峻別を行うことができず、どのような条件においてもより正確に雨が発生したことを判定して、指と雨との峻別を行うことが困難であるという問題が依然としてあった。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑み、より正確に雨が発生したことを判定することができる雨判定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の問題を解決するため、本発明に係る雨判定システムは、
車両に備えられた複数のドアに設置されたロック及びアンロック用の複数のタッチセンサと、
前記複数のタッチセンサの出力電圧の基準電圧に対する減少分が第一閾値より小さい第二閾値よりも大きいか否かを判定する第一判定処理を行う第一判定手段と、
前記減少分が前記第一閾値より大きいか否かを判定する第二判定処理を行う第二判定手段と、
前記第一判定手段が肯定と判定し、前記第二判定手段が否定と判定する場合に、前記複数のタッチセンサにそれぞれ対応するカウンタ値を増加させる増加処理を行う増加手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
ここで、前記タッチセンサは静電容量式のセンサであって、運転者の指が触れる部分にコンデンサに相当する検出部を備えて、指の有する浮遊容量によりコンデンサの静電容量が変化することに伴い、出力電圧が低下し、雨の有する浮遊容量によってもコンデンサの静電容量が変化して、出力電圧が低下するものである。また、前記基準電圧とは、指及び雨がともに接触していない場合の前記出力電圧である。
【0009】
なお、前記第一閾値は前記タッチセンサの検出部に指が触れたとみなせる前記出力電圧の前記基準電圧に対する減少分であり、前記第二閾値は前記タッチセンサの検出部に雨が触れたとみなせる前記出力電圧の前記基準電圧に対する減少分である。ここでは前記減少分は、前記基準電圧から前記出力電圧を減じた正の値とする。
【0010】
また、ゲリラ豪雨等の激しい雨でない通常の雨であれば雨の有する浮遊容量よりも指の有する浮遊容量の方が大きいため、指が触れた場合の、前記出力電圧の基準電圧に対する減少分は、雨が触れた場合の、前記出力電圧の基準電圧に対する減少分よりも大きい。このため、前記第一閾値は前記第二閾値より大きく設定される。
【0011】
これによれば、前記出力電圧の基準電圧に対する減少分が前記第二閾値よりも大きく肯定であると前記第一判定手段が判定し、前記出力電圧の基準電圧に対する減少分が前記第一閾値以下であって否定であると前記第二判定手段が判定する場合に、前記増加手段により前記複数のタッチセンサにそれぞれ対応するカウント値を一ずつ増加させることができる。
【0012】
これにより、指の操作による前記タッチセンサへの接触は通常は一回であり、前記雨の前記タッチセンサへの接触は通常複数回継続して行われることを利用して、前記出力電圧の減少分により指と雨の峻別を直接行うことなく、前記カウント値を用いて後述するように雨の発生を判定して、指の接触と雨の接触との峻別を行うことができる。
【0013】
ここで、前記雨判定システムにおいて、
前記カウンタ値が、前記カウンタ値にそれぞれ対応する前記タッチセンサの設置位置の種類を属性情報として含むことが好ましい。
【0014】
すなわち、
前記設置位置の種類が、運転席側、助手席側、右後部席側、左後部座席側を含むこととする。
【0015】
これによれば、車両の前後左右に位置する、運転席側のドア、助手席側のドア、見後部座席側のドア、左後部座席側のドアがそれぞれ有するドアノブに設置された、前記タッチセンサのそれぞれに対応させて、前記カウント値を計算し格納することができる。
【0016】
このことにより、後述するように、前記カウント値がそれぞれ単独で規定回数以上であるかを判定することに加えて、運転者又は他の乗員の指が前記タッチセンサの検出部に同時に接触することが不自然な所定の組合せの設置位置において、接触が発生した場合には、指による接触ではないとみなせることを利用して、より確実に雨の発生を判定することができる。
【0017】
加えて、前記雨判定システムにおいて、
要求信号を送信する通信手段と、
前記要求信号に応答して認証情報を含む応答信号を送信する応答手段と、
前記応答信号の含む認証情報を認証する認証処理を行う認証手段と、
前記第二判定手段が肯定と判定する場合であって、前記認証手段が認証した場合に、前記複数のドアのロック及びアンロックを含む施解錠処理を行う施解錠手段、
を備えることが好ましい。
【0018】
なお、前記応答手段は運転者が所持する携帯機側に設置され、前記通信手段、前記認証手段、前記施解錠手段は車載機側に設置される。これによれば、所謂スマートエントリーシステムを用いて、前記雨判定システムを以下のように構成することができる。
【0019】
つまり、前記第一判定手段が肯定と判定し、前記第二判定手段が肯定と判定する場合、すなわち前記減少分が前記第一閾値より大きく、前記認証手段が認証した場合においては、前記携帯機を所持した運転者が前記通信手段の構成する受信可能領域に進入して、前記タッチセンサの検出部を指で触れたとみなせるため、前記検出部がアンロック用であればアンロックを実施し、前記検出部がロック用であればロックを実施する。
【0020】
また、前記雨判定システムにおいて
前記第二判定手段が肯定と判定する場合であって、前記認証手段が認証しない場合に、前記増加手段が、前記カウンタ値を増加させる増加処理を行うこととすることができる。
【0021】
すなわち前記第一判定手段が肯定と判定し、前記第二判定手段が肯定と判定する場合、すなわち前記減少分が前記第一閾値より大きく、前記認証手段が認証しない場合においては、前記携帯機を所持した運転者が前記通信手段の構成する受信可能領域に進入していても、前記タッチセンサの検出部を指で触れておらず、通常の雨でないゲリラ豪雨のような激しい雨が発生して、雨滴がタッチセンサの検出部に接触したとみなせるため、前記カウンタ値を増加させて、計算し格納することができる。
【0022】
ここで、前記雨判定システムにおいて、
前記カウンタ値が零から一となった時間からの経過時間が規定時間よりも大きくなった場合に、前記カウンタ値を零にリセットするリセット手段を備えることが好ましい。
【0023】
これによれば、雨が発生した場合は、前記タッチセンサの検出部への接触が短い周期で継続して行われると考えられることを利用して、前記規定時間を前記経過時間が超過した場合においては、前記カウンタ値をリセットすることにより、雨が発生したと判定しないようにすることができる。なお、前記規定時間は例えば一分、十分等の適宜の値に設定可能である。
【0024】
ここで、前記雨判定システムにおいて、
前記カウンタ値が規定回数よりも大きくなった場合に、雨が発生したと判定し、前記カウンタ値が前記規定回数以下である場合に、雨が発生していないと判定し、前記第一判定手段に第一判定処理を実行させ、前記第二判定手段に前記第二判定処理を実行させる雨判定手段を備えることが好ましい。
【0025】
これによれば、前記カウンタ値が前記規定回数よりも大きくなった場合に、雨が発生したと判定することができるので、前記減少分を前記第一閾値及び第二閾値と比較することのみに基づいて、雨が発生したことを判定することに比較して、運転者の指の有する浮遊容量のばらつきや、雨の浮遊容量のばらつきにより、判定が不正確になることを回避して、より確実に雨が発生したことを判定することができる。
【0026】
加えて、前記雨判定システムにおいて、
前記雨判定手段が、前記規定回数よりも大きくなった前記カウンタ値の含む前記設置位置の種類が規定種類以上である場合に、雨が発生したと判定し、前記種類が前記規定種類に満たない場合に、雨が発生していないと判定し、前記第一判定手段に前記第一判定処理を実行させ、前記第二判定手段に前記第二判定処理を実行させることが好ましい。
【0027】
なお、前記設置位置の種類が規定種類以上である場合とは、前述した、運転席側、助手席側、右後部席側、左後部座席側の四種類の内、例えば二種類以上、三種類以上、四種類以上であることを示す。
【0028】
これによれば、運転者及び他の乗員の指が前記規定種類以上の前記設置位置の前記タッチセンサの検出部に同時に接触することは不自然であり、同時の接触が発生した場合には、雨が発生したとみなせることを利用して、より確実に雨の発生を判定することができる。なお、雨が発生していないと判定する場合には、前記第一判定手段に前記第一判定処理を実行させ、前記第二判定手段に前記第二判定処理を実行させることとし、上述した処理を繰り返し行うことができる。
【0029】
さらに、前記雨判定システムにおいて、
前記雨判定手段が、前記規定回数よりも大きくなった前記カウンタ値の含む前記設置位置の種類の組合せが所定の組合せを含む場合に、雨が発生したと判定し、前記種類の組合せが前記所定の組合せを含まない場合に、雨が発生していないと判定し、前記第一判定手段に前記第一判定処理を実行させ、前記第二判定手段に前記第二判定処理を実行させることが好ましい。
【0030】
なお、
前記所定の組合せが、運転席側と助手席側、運転席側と左後部席側、助手席側と右後部席側、右後部席側と左後部席側の組合せを含むこととすることができる。
【0031】
これによれば、運転者又は他の乗員の指が前記タッチセンサの検出部に同時に接触することが不自然な前記所定の組合せの設置位置において、同時に接触が発生した場合には、雨が発生したとみなせることを利用して、より確実に雨の発生を判定することができる。
【0032】
加えて、前記雨判定システムにおいて、
前記雨判定手段が、雨が発生したと判定した場合に、前記複数のドアの窓の開閉状態を検出して、前記複数のドアの窓のいずれかが開状態である場合に、運転者に通知を行う通知手段を備えることが好ましい。
【0033】
これによれば、前記雨判定手段の判定に基づいて、運転者に通知を行い、運転者に窓を閉とすることを促すことができる。
【0034】
また、前記雨判定システムにおいて、
前記雨判定手段が、雨が発生したと判定した場合に、前記複数のドアの窓の開閉状態を検出して、前記複数のドアの窓のいずれかが開状態である場合に、前記開状態である窓を閉状態とする窓開閉手段を備えることが好ましい。
【0035】
これによれば、前記雨判定手段の判定に基づいて、自動的に前記開状態である窓を閉状態とすることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、条件に係わらずにより正確に雨が発生したことを判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0038】
図1は、本発明に係わる雨判定システムの一実施形態を示す模式図である。
【0039】
本実施例1に係わる雨判定システム1は、スマートECU2と、送受信回路3と、送信用アンテナ4と、受信用アンテナ5と、送受信用アンテナ6と、送受信回路7と、制御回路8とにより構成される。
【0040】
ここで、スマートECU2と送受信回路3と送信用アンテナ4と受信用アンテナ5とにより車載機9が構成され、送受信用アンテナ6と送受信回路7と制御回路8とにより携帯機10が構成される。車載機9と携帯機10とは以下に示すように双方向通信を行う。さらに、スマートECU2にはタッチセンサ11が接続され、通信モジュール12がCAN(Controller Area Network)等の通信規格により接続される。
【0041】
この通信モジュール12を用いてスマートECU2が通信を行う相手である、図示しないサーバと、基地局とは、ネットワークを介して接続されるとともに、スマートECU2はネットワークに接続された基地局と通信モジュール12により無線で通信可能に構成されている。
【0042】
このネットワークは、例えば、公衆電話交換網(PSTN)やデジタル通信ネットワーク(ISDN)、光ファイバ等の有線、又は、携帯電話網、PHS(Personal Handy-phone System)網、無線LAN網、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)網、衛星電話、ビーコン等の無線にて構成されるものである。
【0043】
なお、このネットワークによる、サーバ及びスマートECU2間の通信は、PPPプロトコル(Point to Point Protocol)に従うものでありPPPプロトコルによりこれらの間でデータリンクを確立し、上位層であるTCP/IPプロトコル(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)、TCP/IPと上位互換であるHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)やFTP(File Transfer Protocol)を実現するものであって、インターネットやWAN(Wide Area Network)を構成して、サーバとスマートECU2との間におけるデータの送受信を可能とするものである。
【0044】
送信用アンテナ4は、車両の前後左右すなわち運転席側、助手席側、右後部席側、左後部座席側のドア近傍に四箇所設けられ、それぞれの送信用アンテナ4を中心として例えば半径Amの受信可能領域を形成して、その受信可能領域にスマートECU2の通信手段2aの制御に基づく送受信回路3の制御に基づいて、通信用周波数にてリクエスト信号を送信する。
【0045】
送受信回路3はスマートECU2の通信手段2aの制御に基づいて、送信用アンテナ4により同時に通信用周波数にて受信可能領域に対してリクエスト信号を送信する。さらに、携帯機10が受信可能領域に位置していて、携帯機10の送受信回路7が送受信用アンテナ6を介してそのリクエスト信号を受信して、そのリクエスト信号に制御回路8の応答手段8aが応答してアンサー信号を送信した場合には、そのアンサー信号を受信するものである。この送受信回路3は、周知の変調回路、復調回路、送信回路、受信回路を含んで構成されるものである。
【0046】
送受信回路7は、通信用周波数にて車載機9の送受信回路3が送信用アンテナ4を介してリクエスト信号を、携帯機10が受信可能領域に位置している場合に送受信用アンテナ6を介して受信し、リクエスト信号に対応する認証コードを含んだアンサー信号を車載機9に対して送信するものであり、これも、周知の変調回路、復調回路、送信回路、受信回路を含んで構成されるものである。
【0047】
制御回路8は例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが以下に述べる所定の処理を行うものであり、応答手段8aを構成するものである。
【0048】
応答手段8aは、車載機9から送信されたリクエスト信号を送受信用アンテナ6および送受信回路7を介して受信すると、予め登録された認証コードを含んだアンサー信号を送受信回路7および送受信用アンテナ6を介して、車載機9に対して送信する。
【0049】
タッチセンサ11(D、P、RR、RL)は静電容量式のセンサであって、運転席側、助手席側、右後部席側、左後部座席側の四箇所のドアのそれぞれのドアノブに設けられており、ロック及びアンロック用の検知部をそれぞれ備えており、出力電圧をスマートECU2に対して出力している。なお、Dは設置位置の種類が運転席側のドアであることを指し、Pは設置位置の種類が助手席側のドアであることを指す。また、RRは設置位置の種類が右後部席側のドアであることを指し、RLは設置位置の種類が左後部座席のドアであることを指す。
【0050】
スマートECU2(Electronic Control Unit)は例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが以下に述べる所定の処理を行うものであり、通信手段2aと、認証手段2bと、第一判定手段2cと、第二判定手段2dと、増加手段2eと、施解錠手段2fと、リセット手段2gと、雨判定手段2hと、通知手段2iと、窓開閉手段2jを構成する。
【0051】
スマートECU2の通信手段2aは、受信可能領域に対して送受信回路3及び送信用アンテナ4を介してリクエスト信号を送信し、携帯機10が受信可能領域に位置していて、制御回路8の応答手段8aがそのリクエスト信号に応答して送信した認証コードを含むアンサー信号を受信して、スマートECU2の認証手段2bがアンサー信号に含まれる認証コードと予め登録されている認証コードと照合して合致している場合は認証を行い、合致していない場合は認証を行わない。
【0052】
スマートECU2の第一判定手段2cは、複数のタッチセンサ11(D、P、RR、RL)の出力電圧Vの基準電圧VBに対する減少分ΔV(D、P、RR、RL)=VB−Vが第一閾値αより小さい第二閾値β(α>β)よりも大きいか(ΔV>β)否かを判定する第一判定処理を行う。加えて、スマートECU2の第二判定手段2dは、複数のタッチセンサ11の出力電圧Vの基準電圧VBに対する減少分ΔVが第一閾値αより大きいか(ΔV>α)否かを判定する第二判定処理を行う。
【0053】
また、スマートECU2の増加手段2eは、第一判定手段2cが肯定と判定し、第二判定手段2dが否定と判定する場合、つまりは、β<ΔV≦αである場合に、複数のタッチセンサ11にそれぞれ対応するカウンタ値CA(D、P、RR、L)を一ずつ増加させる増加処理を行い、内蔵するRAMにおいて分割して割り当てられた、複数のタッチセンサ11にそれぞれ対応する四つのセクタ(D、P、RR、L)に、増加されたカウンタ値CAを格納する。
【0054】
加えて、スマートECU2の施解錠手段2fは、第二判定手段2dが肯定と判定し、認証手段2bの照合結果が一致して認証した場合に、図示しない車両のドアハンドルのスイッチの運転者による操作に基づいて、図示しないドアのロック及びアンロックを行うアクチュエータを制御して、車両の前後左右のドアのアンロックを行う。
【0055】
さらに、スマートECU2の増加手段2eは、第二判定手段2dが肯定と判定する場合であって、認証手段2bが認証しない場合に、カウンタ値CAを一ずつ増加させる。また、スマートECU2のリセット手段2gは、カウンタ値CAが零から一となった時間からの経過時間が規定時間よりも大きくなった場合に、カウンタ値CAを零にリセットする。
【0056】
加えて、スマートECU2の雨判定手段2hは、上述した処理内容を繰り返し行って、カウンタ値CAが規定回数よりも大きくなった場合であって、規定回数よりも大きくなったカウンタ値CAの含む設置位置の種類つまりは上述したセクタの種類(D、P、RR、L)が規定種類以上(ここでは二種類)である場合に、雨が発生したと判定し、カウンタ値CAが規定回数以下である場合、又は、規定回数よりも大きくなったカウンタ値CAの含む設置位置の種類が規定種類未満である場合に、雨が発生していないと判定し、第一判定手段2cに第一判定処理を実行させ、第二判定手段2dに第二判定処理を実行させる。
【0057】
さらに、スマートECU2の通知手段2iは、雨判定手段2hが、雨が発生したと判定した場合に、複数のドアの窓の開閉状態をCAN上においてボディECUから送信されるデータフレームにより検出して、複数のドアの窓のいずれかが開状態である場合に、運転者に、車室内の通信モジュール12、図示しない基地局及び路側のセンタを介して通知を行う。
【0058】
この通知を行っても運転者がある程度の時間、開状態であるドアの窓を閉状態とする操作を行わない場合には、スマートECU2の窓開閉手段2jは、開状態である窓を、ドア内部に設けられた図示しないウィンドウアクチュエータにより閉状態とする。
【0059】
以下、本実施例1の雨判定システム1の制御内容についてフローチャートを用いて説明する。図2は、本発明による雨判定システム1の制御内容を示すフローチャートである。
【0060】
S1において、スマートECU2の第一判定手段2cは、減少分ΔVが第二閾値βより大きいか否かを判定し、肯定である場合にはS2にすすみ、否定である場合には、S1に戻る。
【0061】
S2において、スマートECU2の第二判定手段2dは減少分ΔVが第一閾値αより大きいかどうかを判定し、肯定である場合には、S9にすすみ、否定である場合にはS3にすすむ。
【0062】
S9において、スマートECU2の施解錠手段2fは、認証手段2bにより認証がされたか否かを判定し、肯定である場合には、S10にすすんで、ロック又はアンロックを行い、否定である場合にはS3にすすむ。S10において施解錠手段2fによるロック又はアンロックが実行された後は、S8にすすんで、スマートECU2のリセット手段2gは、カウンタ値CAを零にクリアする。
【0063】
S3において、スマートECU2の増加手段2eは、カウンタ値CAを一だけ増加即ちインクリメント(n=n+1)して、つづいて、S4において、スマートECU2のリセット手段2gは、カウンタ値CAが零から一となった初回のタッチセンサ11の接触の検知からの経過時間が規定時間を超えているか否かを判定し、肯定である場合にはS8にすすんで、スマートECU2のリセット手段2gは、カウンタ値CAを零にクリアする。
【0064】
S4において、スマートECU2のリセット手段2gが否定と判定した場合には、S5にすすんで、S5において、スマートECU2の雨判定手段2hは、カウンタ値CAが規定回数よりも大きいか否かを判定し、肯定である場合にはS6にすすみ、否定である場合には、S1に戻る。さらに、S6において、雨判定手段2hは、規定回数よりも大きくなったカウンタ値CAの含む設置位置の種類が二種類以上であるか否かを判定し、肯定である場合にはS7にすすみ、否定である場合にはS1に戻る。
【0065】
S7において、スマートECU2の通知手段2iは、複数のドアの窓の開閉状態をCAN上においてボディECUから送信されるデータフレームにより検出して、複数のドアの窓のいずれかが開状態である場合に、運転者に、図示しない車室内通信モジュール、路側のセンタを介して通知を行うとともに、この通知を行っても運転者によりある程度の時間、開状態であるドアの窓を閉状態とする操作が行われない場合には、スマートECU2の窓開閉手段2jは、開状態である窓を、ドア内部に設けられた図示しないウィンドウアクチュエータにより閉状態とする。S7の処理が終了した後はS8のリセット処理を行い、S1に戻る。
【0066】
このようにカウンタ値CAが規定回数より大きくなり、規定回数よりも大きくなったカウンタ値CAの含む設置位置の種類が二種類以上となるまでのあいだは、S1の第一判定処理、S2の第二判定処理、S3の増加処理は繰り返して実行されることとなる。
【0067】
以上述べた制御内容により実現される本実施例1の雨判定システム1によれば、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、出力電圧Vの基準電圧VBに対する減少分ΔVが第二閾値βよりも大きく、減少分ΔVが第一閾値α以下である場合に、増加手段2eにより複数のタッチセンサ11(D、P、RR、RL)にそれぞれ対応するカウント値CA(D、P、RR、RL)を一ずつ増加させることにより、以下のように雨が発生したか否かの判定ができる。
【0068】
つまり、雨による接触は指による接触よりも継続的に発生する性質を利用して、カウント値CAがそれぞれ単独で規定回数以上であるかを判定することに加えて、運転者又は他の乗員の指が前記タッチセンサの検出部に同時に接触することが不自然な所定の組合せの設置位置において、接触が発生した場合には、指による接触ではないとみなせることを利用して判定を行うことにより、より確実に雨の発生を判定することができる。
【0069】
また、図2のS9で否定と判定される場合、つまり、図2のS2において第二判定手段2dが肯定と判定して、認証手段2bが認証しない場合に、増加手段2eが、カウンタ値CAを増加させる増加処理を行うこととすることにより、携帯機10を所持した運転者が通信手段2a及び送信用アンテナ4の構成する受信可能領域に進入していても、タッチセンサ11の検出部を指で触れておらず、通常の雨でないゲリラ豪雨のような激しい雨が発生して、雨滴がタッチセンサの検出部に接触したとみなせることを利用して、カウンタ値CAを増加させて、計算し格納してそれを用いて雨の発生を判定することができる。
【0070】
また、リセット手段2gを備えることにより、雨が発生した場合は、タッチセンサ11の検出部への接触が短い周期で継続して行われることを利用して、規定時間を経過時間が超過した場合においては、図2S8に示すように、カウンタ値CAをリセットすることにより、雨が発生したと判定しないようにすることができる。
【0071】
さらに、雨判定手段2hが、カウンタ値CAが規定回数よりも大きくなり、規定回数よりも大きくなったカウンタ値CAが含む設置位置の種類が二種類以上である場合に雨が発生していると判定することにより、減少分ΔVを第一閾値α及び第二閾値βと比較することのみに基づいて、雨が発生したことを判定することに比較して、運転者の指の有する浮遊容量のばらつきや、雨の浮遊容量のばらつきにより、判定が不正確になることを回避して、より確実に雨が発生したことを判定することができる。
【0072】
つまり本実施例1によれば、運転者及び他の乗員の指が二種類以上の設置位置のタッチセンサ11の検出部に同時に接触することは不自然であり、同時の接触が発生した場合には、雨が発生したとみなせることを利用して、より確実に雨の発生を判定することができる。
【0073】
加えて、通知手段2iにおいて、雨判定手段2hが、雨が発生したと判定した場合に、複数のドアの窓の開閉状態を検出して、複数のドアの窓のいずれかが開状態である場合に、運転者に通知を行うことにより、雨判定手段2hの判定に基づいて、運転者に通知を行い、運転者に窓を閉とすることを促すことができる。
【0074】
また、その場合において運転者が適切な行動を取らない場合に、窓開閉手段2jが、開状態である窓を閉状態とすることにより、よりユーザフレンドリーなシステムを実現することができる。
【0075】
上述した実施例1においては、雨判定手段2hが、タッチセンサ11の出力電圧の基準電圧に対する減少分が閾値を超える回数、つまりカウンタ値が規定回数以上で、減少分が閾値を超えたタッチセンサ11の設置位置の種類が規定種類以上である場合に、雨が発生したことを判定しているが、後者の条件を、減少分が閾値を超えたタッチセンサ11の設置位置の組合せが、同時に指が接触することが不自然である組合せであるか否かとすることもできる。以下、それについての実施例2について述べる。
【実施例2】
【0076】
実施例2の雨判定システム1はシステムの構成要素そのものについては実施例1に示したものと同様であるため、共通する構成要素については同一の符号を付して、重複する個々の説明は割愛する。
【0077】
以下、本実施例2の雨判定システム1の制御内容についてフローチャートを用いて説明する。図3は、本発明による雨判定システム1の制御内容を示すフローチャートである。
【0078】
つまり、図2で示したフローチャートのS6に換えて、図3においてはS6−1の処理を実行する。S6においては、雨判定手段2hは、規定回数よりも大きくなったカウンタ値CAの含む設置位置の種類の組合せが所定の組合せを含む場合に、雨が発生したと判定する。
【0079】
この所定の組合せは、前述したように、運転席側と助手席側(D−P)、運転席側と左後部席側(D−RL)、助手席側と右後部席側(P−RR)、右後部席側と左後部席側(RR−RL)の組合せである。
【0080】
本実施例2によれば、運転者又は他の乗員の指がタッチセンサ11の検出部に同時に接触することが不自然な所定の組合せの設置位置において、同時に接触が発生した場合には、指による接触ではなく、雨が発生したとみなせることを利用して、より確実に雨の発生を判定することができる。
【0081】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明によれば、条件に係わらずにより確実に雨の発生を判定することができる雨判定システムを提供することができるので、乗用車、トラック、バス等の様々な車両に適用して有益なものである。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明に係る雨判定システムの一実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明に係る雨判定システムの一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係る雨判定システムの一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0084】
1 雨判定システム
2 スマートECU
2a 通信手段
2b 認証手段
2c 第一判定手段
2d 第二判定手段
2e 増加手段
2f 施解錠手段
2g リセット手段
2h 雨判定手段
2i 通知手段
2j 窓開閉手段
3 送受信回路
4 送信用アンテナ
5 受信用アンテナ
6 送受信用アンテナ
7 送受信回路
8 制御回路
9 車載機
10 携帯機
11 タッチセンサ
12 通信モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に備えられた複数のドアに設置されたロック及びアンロック用の複数のタッチセンサと、前記複数のタッチセンサの出力電圧の基準電圧に対する減少分が第一閾値より小さい第二閾値よりも大きいか否かを判定する第一判定処理を行う第一判定手段と、前記減少分が前記第一閾値より大きいか否かを判定する第二判定処理を行う第二判定手段と、前記第一判定手段が肯定と判定し、前記第二判定手段が否定と判定する場合に、前記複数のタッチセンサにそれぞれ対応するカウンタ値を増加させる増加処理を行う増加手段と、を備えることを特徴とする雨判定システム。
【請求項2】
前記カウンタ値が、前記カウンタ値にそれぞれ対応する前記タッチセンサの設置位置の種類を属性情報として含むことを特徴とする請求項1に記載の雨判定システム。
【請求項3】
前記設置位置の種類が、運転席側、助手席側、右後部席側、左後部座席側を含むことを特徴とする請求項2に記載の雨判定システム。
【請求項4】
要求信号を送信する通信手段と、前記要求信号に応答して認証情報を含む応答信号を送信する応答手段と、前記応答信号の含む認証情報を認証する認証処理を行う認証手段と、前記第二判定手段が肯定と判定する場合であって、前記認証手段が認証した場合に、前記複数のドアのロック及びアンロックを含む施解錠処理を行う施解錠手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の雨判定システム。
【請求項5】
前記第二判定手段が肯定と判定する場合であって、前記認証手段が認証しない場合に、前記増加手段が、前記カウンタ値を増加させる増加処理を行うことを特徴とする請求項4に記載の雨判定システム。
【請求項6】
前記カウンタ値が零から一となった時間からの経過時間が規定時間よりも大きくなった場合に、前記カウンタ値を零にリセットするリセット手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の雨判定システム。
【請求項7】
前記カウンタ値が規定回数よりも大きくなった場合に、雨が発生したと判定し、前記カウンタ値が前記規定回数以下である場合に、雨が発生していないと判定し、前記第一判定手段に第一判定処理を実行させ、前記第二判定手段に前記第二判定処理を実行させる雨判定手段を備えることを特徴とする請求項6に記載の雨判定システム。
【請求項8】
前記雨判定手段が、前記規定回数よりも大きくなった前記カウンタ値の含む前記設置位置の種類が規定種類以上である場合に、雨が発生したと判定し、前記種類が前記規定種類に満たない場合に、雨が発生していないと判定し、前記第一判定手段に前記第一判定処理を実行させ、前記第二判定手段に前記第二判定処理を実行させることを特徴とする請求項7に記載の雨判定システム。
【請求項9】
前記雨判定手段が、前記規定回数よりも大きくなった前記カウンタ値の含む前記設置位置の種類の組合せが所定の組合せを含む場合に、雨が発生したと判定し、前記種類の組合せが前記所定の組合せを含まない場合に、雨が発生していないと判定し、前記第一判定手段に前記第一判定処理を実行させ、前記第二判定手段に前記第二判定処理を実行させることを特徴とする請求項7に記載の雨判定システム。
【請求項10】
前記所定の組合せが、運転席側と助手席側、運転席側と左後部席側、助手席側と右後部席側、右後部席側と左後部席側の組合せを含むことを特徴とする請求項9に記載の雨判定システム。
【請求項11】
前記雨判定手段が、雨が発生したと判定した場合に、前記複数のドアの窓の開閉状態を検出して、前記複数のドアの窓のいずれかが開状態である場合に、運転者に通知を行う通知手段を備えることを特徴とする請求項7〜10のいずれか一項に記載の雨判定システム。
【請求項12】
前記雨判定手段が、雨が発生したと判定した場合に、前記複数のドアの窓の開閉状態を検出して、前記複数のドアの窓のいずれかが開状態である場合に、前記開状態である窓を閉状態とする窓開閉手段を備えることを特徴とする請求項11に記載の雨判定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−77636(P2010−77636A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245593(P2008−245593)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】