説明

電圧制御発振装置

【課題】高いC/N及び周波数安定度を確保できると共に、周波数可変幅を広くしても帯域外の不要信号の漏れ出しを抑制でき、かつ同時にインピーダンスマッチングもとることができるようにすること。
【解決手段】この電圧制御発振装置は、制御電圧信号に応じて発振周波数が制御される電圧制御発振回路1と、電圧制御発振回路に供給する制御電圧信号を生成するPLL回路2と、電圧制御発振回路1の出力する発振信号を逓倍する逓倍回路3と、逓倍回路3の出力する逓倍信号のうち所定逓倍数の信号を通過させる通過帯域と逓倍回路3に入力した発振信号と同一周波数をトラップするトラップ周波数とが設定された帯域通過フィルタ兼トラップ回路4とを備える。制御電圧信号を分岐して段間結合兼トラップ回路15へ入力し、発振周波数に同期させて段間結合兼トラップ回路15の通過帯域及びトラップ周波数を可変させると共に段間結合量を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振信号を逓倍して所望周波数の発振信号を得る電圧制御発振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体無線通信の分野では、局部発振器で生成した発振信号を混合器に入力して周波数変換を行っている。最近は、移動体無線通信用途として、周波数が高く、可変幅の広い局部発振器が求められている。従来、電圧制御発振器の可変幅を広げるために電圧制御発振器の出力を逓倍してからバンドバスフィルタを通して所望周波数の逓倍信号を取り出す電圧制御発振装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は特許文献1に記載された電圧制御発振装置の回路構成図である。VCO101から周波数f0の源発振信号S1を出力し、逓倍器102で源発振信号S1の周波数fを2f,3f,4f,…と逓倍した高周波信号S2を出力する。逓倍器102は、増幅部111、増幅部111の出力端とアース間に接続された自己バイアス用の抵抗器112、ステップリカバリーダイオード113で構成されている。逓倍器102における逓倍作用はダイオード113によるものであり、逆方向電圧に対する容量の変化より、ダイオード113に印加される高周波電圧が逆方向から順方向にまでオーバドライブしたときに生ずる容量の急激な変化により行われる。逓倍器102から出力された高周波信号S2は可変周波数バンドパスフィルタ103へ入力される。可変周波数バンドパスフィルタ103は、コイル114、コンデンサ115及びバラクタダイオード116からなるLC共振回路で構成されており、コイル117を介して印加されるコントロール電圧V1によってフィルタの通過帯域を設定する。たとえば、周波数3fの信号を通過するように通過帯域が設定されているとすると、逓倍器102から出力される周波数3fの逓倍信号S3が通過してアンプ104、105に入力され、設定通過帯域外の信号は不要信号として減衰される。なお、アンプ104及び105は、コントロール電圧V2,V3に応じてオン/オフするトランジスタスイッチ(スイッチ)118,119によって電源のオン/オフが制御されるようになっている。
【0004】
以上のように、逓倍方式の発振回路を採用することにより、Q値の高い部品を使用して発振回路を構成することができ、C/Nが高くて、周波数安定度の高い発振器を構成することができる。
【特許文献1】特開平6−164445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、トランジスタ等の入出力特性の非線形性を利用して逓倍信号を得る逓倍器を利用した発振回路の場合、1/2倍波(源発振信号)及び高調波の発生量が多くなるので、RF出力側のフィルタ機能を強化して、所望通過帯域外の不要信号(例えば、上記例では1/2倍波(源発振信号)、3f、4f…)を十分に除去する必要がある。1/2倍波(源発振信号)を除去するトラップ回路と3f、4f…の高調波を減衰させるバンドパス回路とを組み合わせたフィルタを構成した場合、発振器の周波数可変幅が広くなる程、周波数可変範囲内でインピーダンスマッチングが困難になるといった問題が新たに生じる。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、逓倍方式の発振回路を採用することによる高いC/N及び周波数安定度を確保できると共に、周波数可変幅を広くしても帯域外の不要信号の漏れ出しを抑制でき、かつインピーダンスマッチングが容易な電圧制御発振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電圧制御発振装置は、供給される制御電圧信号に応じて発振周波数が制御される電圧制御発振回路と、前記電圧制御発振回路に供給する制御電圧信号を生成するPLL回路と、前記電圧制御発振回路の出力する発振信号を逓倍する逓倍回路と、前記逓倍回路の出力する逓倍信号のうち所定逓倍数の信号を通過させる通過帯域と前記逓倍回路に入力した発振信号と同一周波数をトラップするトラップ周波数とが設定され、前記制御電圧信号に同期して前記通過帯域及びトラップ周波数を可変させる帯域通過フィルタ兼トラップ回路とを具備したことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、電圧制御発振回路の出力する発振信号を逓倍した逓倍信号を発振信号として出力するので、高いC/N及び周波数安定度を確保できる。また、逓倍回路に入力した発振信号と同一周波数をトラップするので、源発振信号の漏れ出しを抑制することができる。しかも、電圧制御発振回路の発振周波数を決める制御電圧信号に同期して前記通過帯域及びトラップ周波数を可変させることができる。
【0009】
また本発明は、上記電圧制御発振装置において、前記PLL回路の制御電圧信号の出力端子に、前記電圧制御発振回路及び前記帯域通過フィルタ兼トラップ回路の制御電圧信号の入力端子をそれぞれ接続したことを特徴とする。
【0010】
この構成により、PLL回路から出力される制御電圧信号を分岐して電圧制御発振回路及び前記帯域通過フィルタ兼トラップ回路へ並列に印加することができ、簡単な構成で制御電圧信号に同期した電圧制御発振装置を実現できる。
【0011】
また本発明は、上記電圧制御発振装置において、前記帯域通過フィルタ兼トラップ回路は、前記逓倍回路の出力信号が印加される入力端子と、前記通過帯域を通過した信号を出力する出力端子と、一端が前記帯域通過フィルタ兼トラップ回路の入力端子に接続され他端がグラウンドに接続され前記通過帯域で並列同調する第1の並列共振回路と、一端が前記帯域通過フィルタ兼トラップ回路の出力端子に接続され他端がグラウンドに接続され前記通過帯域で並列同調する第2の並列共振回路と、一端が前記帯域通過フィルタ兼トラップ回路の入力端子に接続され他端が前記帯域通過フィルタ兼トラップ回路の出力端子に接続され前記第1の並列共振回路と前記第2の並列共振回路とを段間結合すると共に前記トラップ周波数で並列同調する第3の並列共振回路と、前記第3の並列共振回路に対して直列に接続されたインダクタとを有し、前記第3の並列共振回路は、前記制御電圧信号によって段間結合量が調整されると共に前記インダクタと共にインピーダンスマッチングを行うことを特徴とする。
【0012】
この構成により、第1の並列共振回路と第2の並列共振回路とを段間結合する第3の並列共振回路でトラップ回路を構成し、発振周波数を決定している制御電圧信号の電圧値に対応して段間結合量及びトラップ周波数を自動的に調整するので、通過帯域とトラップ周波数とを同時に変化させることができると共に、発振周波数に合わせてインピーダンスマッチングも同時に補正することができる。
【0013】
また本発明は、上記電圧制御発振装置において、前記第1、第2及び第3の並列共振回路は、バラクタダイオードをそれぞれ有しており、前記各バラクタダイオードのアノードが前記PLL回路の出力端子に接続されていることを特徴とする。
【0014】
この構成により、簡単な回路構成で発振周波数に同期して通過帯域とトラップ周波数を連動してシフトさせることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、逓倍方式の発振回路を採用することによる高いC/N及び周波数安定度を確保できると共に、周波数可変幅を広くしても帯域外の不要信号の漏れ出しを抑制でき、かつインピーダンスマッチングも同時に補正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る電圧制御発振装置の機能ブロック図である。本実施の形態に係る電圧制御発振装置は、電圧制御発振回路1、該電圧制御発振回路1の発振周波数を所定周波数に制御するPLL回路2、電圧制御発振回路1の出力する発振信号を逓倍する逓倍回路3、該逓倍回路3の出力信号(逓倍出力信号及び源発振信号)が入力しトラップ周波数及び通過帯域を制御電圧信号に同期して可変させる帯域通過フィルタ兼トラップ回路4を主な構成要素として備えている。
【0017】
電圧制御発振回路1は、PLL回路2から入力される制御電圧信号によって発振信号の周波数を制御するように構成されている。PLL回路2は、水晶発振器で構成される基準周波数発振器5で発生させた基準周波数と当該電圧制御発振装置の出力信号をフィードバックしたRFフィードバック信号との位相を位相比較器6で比較する。基準周波数とRFフィードバック信号との位相差に対応した制御電圧信号がチャージポンプ7から出力されるようにチャージポンプ7を位相比較器6から出力される位相差信号にてチャージする。なお、位相比較器6において不図示の分周器でRFフィードバック信号及び基準周波数を別々に分周して低周波数の状態で位相比較するように構成することができる。逓倍回路3は、トランジスタ等の入出力特性の非線形性を利用して、入力信号の周波数の整数倍の周波数信号(即ち、逓倍出力信号)を出力するように構成されている。
【0018】
ここで、電圧制御発振装置の出力信号には、逓倍信号の電力をより大きくすると共に、不要信号の電力をより小さくすることが要求される。不要出力とは、逓倍回路3を構成するトランジスタ等の増幅器から出力される出力信号のうちの所望の逓倍出力信号以外の信号である低次及び高次の周波数信号のことである。この不要出力の中で、入力信号の周波数と同じ周波数の出力信号を源発振信号という。この源発振信号の出力電力は逓倍信号の出力電力よりも大きい場合が多い。このため、帯域通過フィルタ兼トラップ回路4は、所望帯域の逓倍信号を通過帯域に設定したバンドパスフィルタと、源発振信号をトラップするように設定したトラップフィルタとを組み合わせたフィルタ構成としている。
【0019】
図2は帯域通過フィルタ兼トラップ回路4の回路構成図である。
帯域通過フィルタ兼トラップ回路4の入力端子Port1に逓倍回路3の出力信号が入力し、帯域通過フィルタ兼トラップ回路4の出力端子Port2から所要周波数の発振信号が出力される。本実施の形態では、PLL回路2から出力される制御電圧信号Vct1を電圧制御発振回路1へ入力すると共に周波数可変用端子Port3に印加している。
【0020】
帯域通過フィルタ兼トラップ回路4は、入力端子Port1に接続される外部回路とのマッチングをとる入力側マッチング回路11と、出力端子Port2に接続される外部回路とのマッチングをとる出力側マッチング回路12とを備えている。マッチング回路11は、一端が入力端子Port1に接続されたコンデンサC1と、一端がコンデンサC1の他端に接続されたインダクタL1との直列回路で構成されている。マッチング回路12は、後述する同調回路に一端が接続されたインダクタL5と、インダクタL5の他端に一端が接続され、他端が出力端子Port2に接続されたコンデンサC5との直列回路で構成されている。なお、インダクタL1,L5のうちいずれか一方のインダクタを用いてインピーダンスマッチングを行うようにしても良い。
【0021】
入力側マッチング回路11と出力側マッチング回路12との間に周波数可変型の第1及び第2の同調回路13,14が接続されている。第1の同調回路13と第2の同調回路14との間に、第1及び第2の同調回路13,14を段間結合する共に源発振信号をトラップする段間結合兼トラップ回路15が構成されている。第1の同調回路13が第1の並列同調回路を構成し、第2の同調回路14が第2の並列同調回路を構成している。また、段間結合兼トラップ回路15が第3の並列同調回路を構成している。
【0022】
第1の同調回路13は、インダクタL1の端部とグラウンドとの間にインダクタL2が直列に接続され、該インダクタL2に対してコンデンサC2及びバラクタダイオードD1からなる直列回路が並列に接続されてLC並列共振回路を構成している。第2の同調回路14は、インダクタL5の端部とグラウンドとの間にインダクタL4が直列に接続され、該インダクタL4に対してコンデンサC4及びバラクタダイオードD3からなる直列回路が並列に接続されてLC並列共振回路を構成している。段間結合兼トラップ回路15は、第1の同調回路13のインダクタL1の端部に一端が接続されたコンデンサC3と、コンデンサC3の他端にカソードが接続されたバラクタダイオードD2と、コンデンサC3のマッチング回路11側の端部とバラクタダイオードD2のアノードとの間に接続されたインダクタL3とで構成されている。
【0023】
本実施の形態では、第1及び第2の同調回路13,14が電圧制御発振回路1の2次高調波に同調するように同調周波数を設定し、段間結合兼トラップ回路15が電圧制御発振回路1の源発振信号の周波数でトラップ周波数を可変するように設定している。ここでは、第1及び第2の同調回路13,14の通過帯域の1/2周波数を段間結合兼トラップ回路15のトラップ周波数としている。
【0024】
第1及び第2の同調回路13,14の通過帯域は電圧制御発振回路1の2次高調波の周波数に同期させて可変させると共に、段間結合兼トラップ回路15のトラップ周波数は電圧制御発振回路1の源発振信号に合わせて可変させるようにしている。このため、第1の同調回路13におけるバラクタダイオードD1のカソードにチョークインダクタL6を介して周波数可変用端子Port3を接続し、第2の同調回路14におけるバラクタダイオードD3のカソードにチョークインダクタL8を介して周波数可変用端子Port3を接続している。また、段間結合兼トラップ回路15におけるバラクタダイオードD2のカソードにチョークインダクタL7を介して周波数可変用端子Port3を接続している。なお、周波数可変用端子Port3はバイパスコンデンサC6にて高周波的に接地されている。
【0025】
次に、以上のように構成された本実施の形態の動作について説明する。
本実施の形態に係る電圧制御発振装置は、電圧制御発振回路1の発振周波数を950〜1050MHzとし、外部出力する発振信号の周波数範囲を1.9GHzから2.1GHzとしている。第1及び第2の同調回路13,14の通過帯域は1.9GHzから2.1GHzであり、段間結合兼トラップ回路15のトラップ周波数は950〜1050MHzとなしている。
【0026】
PLL回路2において、位相比較器6に対して基準周波数発振器5で発生させた基準周波数信号が入力されると共に、当該電圧制御発振装置の出力信号がRFフィードバック信号として入力される。基準周波数信号とRFフィードバック信号との位相差に応じた位相差信号がチャージポンプ7に供給され、当該位相差に対応した電圧の制御電圧信号Vct1が生成される。制御電圧信号Vct1は電圧制御発振装置の出力信号が所要周波数のところで維持されるように制御される。
【0027】
PLL回路2から出力された制御電圧信号Vct1は電圧制御発振回路1へ入力すると共に分岐されて帯域通過フィルタ兼トラップ回路4へ入力される。電圧制御発振回路1では制御電圧信号Vct1によって発振周波数が制御される。たとえば、周波数可変幅が950MHz〜1050MHzであるとすると、最低の制御電圧信号Vct1=Loの時に発振周波数=950MHzを出力し、最大の制御電圧信号Vct1=Hiの時に最大の発振周波数=1050MHzを出力する。
【0028】
逓倍回路3では、電圧制御発振回路1から出力される発振信号を、不図示の増幅器(トランジスタ等)の入出力特性の非線形性を利用して整数倍の周波数信号に変換する。たとえば、電圧制御発振回路1の出力信号が周波数=950MHzであれば、電圧制御発振回路1の出力信号と同一周波数(950MHz)の源発振信号、2次高調波(1.9GHz)、3次、4次…の高調波が生成される。
【0029】
帯域通過フィルタ兼トラップ回路4では、通過帯域及びトラップ周波数が制御電圧信号Vct1によって制御される。第1の同調回路13にはチョークインダクタL6を介してバラクタダイオードD1のカソードに制御電圧信号Vct1が印加される。制御電圧信号Vct1の電圧値に応じてバラクタダイオードD1の容量が変化して第1の同調回路13の同調周波数が変化する。ここでは、制御電圧信号Vct1=Loの時に共振周波数が1.9GHzとなり、制御電圧信号Vct1=Hiの時に共振周波数が2.1GHzとなる。第2の同調回路14は、チョークインダクタL8を介してバラクタダイオードD3のカソードに制御電圧信号Vct1が印加され、第1の同調回路13と同様に制御電圧信号Vct1=Loの時に共振周波数が1.9GHzとなり、制御電圧信号Vct1=Hiの時に共振周波数が2.1GHzとなる。これら第1及び第2の同調回路13,14によって帯域通過フィルタ兼トラップ回路4の通過帯域となるバンドパスフィルタを構成する。例えば、制御電圧信号Vct1=Loの場合、通過帯域が1.9GHzに設定され、逓倍回路3から出力される2次高調波(1.9GHz)が選択されて出力端子Port2から出力される。また、制御電圧信号Vct1=Hiの場合、通過帯域が2.1GHzに設定され、逓倍回路3から出力される2次高調波(2.1GHz)が選択されて出力端子Port2から出力される。
【0030】
一方、段間結合兼トラップ回路15によって第1の同調回路13と第2の同調回路14とが結合されている。段間結合兼トラップ回路15のバラクタダイオードD2のカソードに印加される制御電圧信号Vct1によって段間結合量が調整されると共にトラップ周波数が変化する。上記した通り、制御電圧信号Vct1がLoからHiに高くなるのに応じて、通過帯域が1.9GHzから2.1GHzへと変化する。段間結合兼トラップ回路15は、バラクタダイオードD2のカソードに印加される制御電圧信号Vct1がLoからHiに高くなるのに応じて、段間結合量が小さくなると共にトラップ周波数が大きくなる。すなわち、第1及び第2の同調回路13,14の通過帯域の変化に追従して外部回路とのインピーダンスマッチングが補正されるように段間結合量が変化するので、可変幅に応じてインピーダンスマッチングが困難になるといった不具合を解消できる。しかも、第1及び第2の同調回路13,14の通過帯域の変化に追従してトラップ周波数も変化するので、源発振信号が常にトラップ周波数となるように可変させることができる。
【0031】
図3(a)(b)に帯域通過フィルタ兼トラップ回路4の回路構成を有する段間結合兼トラップ回路15を用いた通過帯域及びトラップ周波数のシミュレーション結果を示す図である。図3(a)は制御電圧信号Vct1=Loの場合のシミュレーション結果であり、図3(b)は制御電圧信号Vct1=Hiの場合のシミュレーション結果である。
【0032】
図3(a)に示すように、制御電圧信号Vct1=Loの場合、逓倍回路3の入力信号(950MHz)に対する2次高調波(1.9GHz)が通過帯域の中心周波数となっており、2次よりも高い高調波(3次、4次・・・)に対しては十分な減衰量を確保できている。また、制御電圧信号Vct1=Loでの電圧制御発振回路1における発振周波数(源発振信号)と同一周波数の950MHzがトラップ周波数となっていることが判る。
【0033】
図3(b)に示すように、制御電圧信号Vct1=Hiの場合、逓倍回路3の入力信号(1050MHz)に対する2次高調波(2.1GHz)が通過帯域の中心周波数となっており、2次よりも高い高調波(3次、4次・・・)に対しては十分な減衰量を確保できている。また、制御電圧信号Vct1=Hiでの電圧制御発振回路1における発振周波数(源発振信号)と同一周波数の1050MHzがトラップ周波数となっていることが判る。
【0034】
以上のシミュレーション結果から、段間結合兼トラップ回路15では制御電圧信号Vct1に同期して逓倍回路2の2次高調波の帯域に通過帯域がシフトすると共に、逓倍回路2の1次高調波(源発振信号)の位置にトラップ周波数がシフトすることが確認できた。
【0035】
このように本実施の形態によれば、PLL回路2から電圧制御発振回路1へ供給する制御電圧信号Vct1を分岐して段間結合兼トラップ回路15へ入力し、発振周波数に同期させて段間結合兼トラップ回路15の通過帯域及びトラップ周波数を可変させるようにしたので、狭帯域でかつ帯域外の減衰特性に優れたフィルタを構成することができ、逓倍方式の発振回路を採用することによる高いC/N及び周波数安定度を確保でき、周波数可変幅を広くしても帯域外の不要信号の漏れ出しを抑制できる。しかも、段間結合兼トラップ回路15の段間結合量を、制御電圧信号Vct1を用いて通過帯域に応じて可変させるようにしたので、従来は可変幅を広げた場合に困難であったインピーダンスマッチングも容易にとることができる。
【0036】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変形実施可能である。例えば、帯域通過フィルタ兼トラップ回路4における同調回路を3段以上に構成しても上記同様の効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、逓倍方式の発振回路を採用した電圧制御発振装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態に係る電圧制御発振装置の機能ブロック図
【図2】上記実施の形態の電圧制御発振装置に備えた帯域通過フィルタ兼トラップ回路の回路構成図
【図3】(a)制御電圧信号Vct1=Loの場合の通過帯域及びトラップ周波数のシミュレーション結果を示す図、(b)制御電圧信号Vct1=Hiの場合の通過帯域及びトラップ周波数のシミュレーション結果を示す図
【図4】従来の電圧制御発振装置の構成図
【符号の説明】
【0039】
1…電圧制御発振回路、2…PLL回路、3…逓倍回路、4…帯域通過フィルタ兼トラップ回路、5…基準周波数発振器、6…位相比較器、7…チャージポンプ、11…入力側マッチング回路、12…出力側マッチング回路、13…第1の同調回路、14…第2の同調回路、15…段間結合兼トラップ回路、L1,L2,L3,L4,L5…インダクタ、L6,L7,L8…チョークインダクタ、C1,C2,C3,C4,C5…コンデンサ、D1,D2,D3…バラクタダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御電圧信号に応じて発振周波数が制御される電圧制御発振回路と、
前記電圧制御発振回路に供給する制御電圧信号を生成するPLL回路と、
前記電圧制御発振回路の出力する発振信号を逓倍する逓倍回路と、
前記逓倍回路の出力する逓倍信号のうち所定逓倍数の信号を通過させる通過帯域と前記逓倍回路に入力した発振信号と同一周波数のトラップ周波数とが設定され、前記制御電圧信号に同期して前記通過帯域及びトラップ周波数を可変させる帯域通過フィルタ兼トラップ回路と、
を具備したことを特徴とする電圧制御発振装置。
【請求項2】
前記PLL回路の制御電圧信号の出力端子に、前記電圧制御発振回路及び前記帯域通過フィルタ兼トラップ回路の制御電圧信号の入力端子をそれぞれ接続したことを特徴とする請求項1記載の電圧制御発振装置。
【請求項3】
前記帯域通過フィルタ兼トラップ回路は、前記逓倍回路の出力信号が印加される入力端子と、前記通過帯域を通過した信号を出力する出力端子と、一端が前記帯域通過フィルタ兼トラップ回路の入力端子に接続され他端がグラウンドに接続され前記通過帯域で並列同調する第1の並列共振回路と、一端が前記帯域通過フィルタ兼トラップ回路の出力端子に接続され他端がグラウンドに接続され前記通過帯域で並列同調する第2の並列共振回路と、一端が前記帯域通過フィルタ兼トラップ回路の入力端子に接続され他端が前記帯域通過フィルタ兼トラップ回路の出力端子に接続され前記第1の並列共振回路と前記第2の並列共振回路とを段間結合すると共に前記トラップ周波数で並列同調する第3の並列共振回路と、前記第3の並列共振回路に対して直列に接続されたインダクタとを有し、
前記第3の並列共振回路は、前記制御電圧信号によって段間結合量が調整されると共に前記インダクタと共にインピーダンスマッチングを行うことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電圧制御発振装置。
【請求項4】
前記第1、第2及び第3の並列共振回路は、バラクタダイオードをそれぞれ有しており、前記各バラクタダイオードのアノードが前記PLL回路の出力端子に接続されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の電圧制御発振装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−278150(P2009−278150A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124546(P2008−124546)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】