説明

電子デバイス、および電子デバイスの製造方法

【課題】ベース基板に切断用パターンを有する場合に、この切断用パターンの切断状態を確実なものとすることのできる電子デバイスを提供する。
【解決手段】振動片110とICチップ114とを水平方向に並べて実装したベース基板12を備える電子デバイス10であって、ベース基板12の一方の主面に、振動片110を実装するための振動片実装用パッド24と、振動片実装用パッド24と電気的に接続されている振動片接続用第1パッド36(振動片接続用第2パッド38)と、ベース基板12の他方の面に形成された実装用端子と電気的に接続されたVcパッド40(Vddパッド42)と、振動片接続用第1パッド36とVcパッド40とを電気的に接続する切断用パターン66(68)とを有し、前記切断用パターン66は、ICチップ114を実装した状態において切断されており、切断用パターン66の切断位置であるベース基板12の表面に凹陥部を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の面に振動片と半導体素子とを水平方向に並べて実装可能なベース基板を備えた電子デバイスと、この電子デバイスの製造方法に係り、特に、振動片実装後に前記ベース基板の他方の面から振動特性の検出を行うことを可能としたタイプの電子デバイス、および電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶発振器やSAWフィルタなどに代表される電子デバイスは、励振が成される振動子と、この振動子を発振させるための発振回路を備えた半導体集積回路(半導体素子)を主要な構成としている。
これらの構成を有する電子デバイスでは、実装面積の小型化や、低背化といった目的に応じて、構成要素の配置形態を異ならせたものが種々開発されている。例えば、実装面積の小型化を主目的とした電子デバイスでは、圧電素子と半導体素子を垂直方向に配置する形態が採られることが多い。一方、低背化を主目的とした電子デバイスでは、圧電素子と半導体素子を水平方向に配置する形態が採られることが多い。このような電子デバイスでは、いずれの配置形態を採る場合であっても、振動片の実装、封止をして振動子を構成した後、この振動子の共振周波数やCI値などの電気的特性を検査し、必要に応じて調整が行われる。このような要求を満たすため、電子デバイスには、振動子固有の振動特性を検出するためのモニター用電極端子が設けられることとなる。こうしたモニター用電極端子は従来、電子デバイスを構成するパッケージの側面に配置されていたが、パッケージの側面に端子を配置することは、電子デバイスの小型化や低背化を妨げる要素となるとして、種々技術開発が進められている。
【0003】
例えば特許文献1に開示されている技術は、図9に示すように、振動子と半導体素子とを垂直方向に配置する構成とし、いわゆるH型構造のパッケージベースを採用した電子デバイスである。この電子デバイス1では、振動片3を実装する中間基板2の裏面側、すなわち半導体素子5を実装する面に、振動片実装用パッド4と、電子デバイス1を実装するための外部端子7とを電気的に接続するパターン(不図示)を形成している。そして、振動子としての振動特性の検査を、外部端子7を介して行うことが可能な構成としている。振動特性の検査調整後には、外部端子7と振動片実装用パッド4を電気的に接続するパターンを切断し、外部端子7を固有の機能を有する端子として独立させることができる。
【0004】
また、特許文献2に開示されている技術は、図10に示すように、振動子と半導体素子とを水平方向に配置する構成としたものである。なお、図10(A)は電子デバイスの断面構成を示す図であり、図10(B)は電子デバイスの平面構成を示す図である。特許文献2に開示されている電子デバイス1aでは、振動片3aの実装スペースの横に設けられた半導体素子5aの実装スペースに、振動片実装用パッド4aと電気的に接続されたモニター用電極端子8aを形成している。このような配置形態とされるモニター用電極端子8aは、半導体素子5aが実装された後、樹脂9aで被覆されることにより、外部に晒されることが無くなる。
【0005】
さらに、特許文献3に開示されている技術は、図11に示すような形態をしている。なお、図11(A)は電子デバイスの平面形態を示す図であり、図11(B)は電子デバイスの裏面形態を示す図である。この様な形態を有する電子デバイス1bは、半導体素子の実装スペースに中径パッド6bを形成している。そして、中径パッド6bは、振動片実装用パッド4bと電気的に接続された半導体素子実装用パッド5bと、切断用パターン6b1を介して接続されている。そして、中径パッド6bを設けたベース基板2bの裏面には、外部端子7bの他に、モニター用電極端子8bを形成している。このような形態のパッケージを有する電子デバイス1bでは、振動子を構成した後、モニター用電極端子8bを介して振動子の振動特性の検査調整を行った後、切断用パターン6b1を切断することでモニター用電極端子8bを電気的に切断し、電子デバイス1bを構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−223640号公報
【特許文献2】特開2009−27465号公報
【特許文献3】特開2008−301196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献に開示されているような技術では、それぞれモニター用電極端子の配置箇所や利用形態に工夫を凝らし、小型化、低背化といったそれぞれの目的に適した構造とされている。しかし、特許文献1に開示されている技術は、本願発明の対象とされる低背化には適さない構造である。また、特許文献2に開示されっている技術は、モニター用電極端子を振動子や半導体素子を実装する側の主面に配置しているため、振動特性を調整する際に、ベース基板の裏面側からモニター用電極端子にプローブを当接させるという事ができない。このため、振動特性の調整を行う際には、端子を備えた専用のホルダが必要となってしまう。
【0008】
特許文献3に開示された技術では、ベース基板の裏面側(他方の主面側)からモニター用電極端子にプローブを当接させることができる構成である。しかし、振動特性の検査、調整を終えた後に切断する切断用パターンの切断が不完全であった場合には、浮遊容量の発生による振動特性の悪化や、実装時の短絡が生ずる虞がある。
【0009】
本実施形態では、上記のような問題を解決し、ベース基板に切断用パターンを有する場合に、この切断用パターンの切断状態を確実なものとすることのできる電子デバイスを提供すると共に、この電子デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]振動片と半導体素子とを水平方向に並べて実装したベース基板を備える電子デバイスであって、前記ベース基板の一方の主面に、前記振動片を実装するための振動片実装用パッドと、前記振動片実装用パッドと電気的に接続されている第1半導体素子接続用パッドと、前記ベース基板の他方の主面に形成されたモニター用電極端子と電気的に接続されている中継パッドと、前記第1半導体素子接続用パッドと前記中継パッドとを電気的に接続する切断用パターンとを有し、前記切断用パターンは、前記半導体素子を実装した状態において切断されており、前記切断用パターンの切断位置である前記ベース基板の表面に凹陥部を有することを特徴とする電子デバイス。
【0011】
このような特徴を有する電子デバイスによれば、切断用パターンの切断状態を確実なものとすることができる。
【0012】
[適用例2]適用例1に記載の電子デバイスであって、前記中継パッドは、前記半導体素子を実装するための第2半導体素子接続用パッドであり、前記モニター用電極端子は、前記ベース基板の他方の面に形成された実装端子であることを特徴とする電子デバイス。
【0013】
実装端子(外部実装端子)を、いわゆるモニター用電極端子として利用することとなるため、パッケージが小型化された場合であっても、確実にプローブ当接面を確保することが可能となる。
【0014】
[適用例3]一方の面に、振動片を実装するための振動片実装用パッドと、前記振動片実装用パッドと電気的に接続されている第1半導体素子接続用パッドと、他方の面に形成されたモニター用電極端子と電気的に接続されている中継パッドと、前記第1半導体素子接続用パッドと前記中継パッドとを電気的に接続する切断用パターンを有し、前記振動片と半導体素子とを水平方向に並べて実装可能とするベース基板を備える電子デバイスの製造方法であって、前記振動片実装用パッドに対して振動片を実装する振動片実装工程と、前記モニター用電極端子を介して前記振動片の発振と共振周波数の調整を行う周波数調整工程と、前記周波数調整工程後、前記切断用パターンを切断し、前記ベース基板の表面に凹陥部を形成するパターン切断工程とを有することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【0015】
このような特徴を有する電子デバイスの製造方法により電子デバイスを製造すれば、切断用パターンの切断状態を確実なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る電子デバイスの構成を示す図である。
【図2】第2の基板、および第3の基板の構成を示す分解斜視図である。
【図3】電子デバイスの製造工程を示すフロー図である。
【図4】電子デバイスの振動特性検査と、共振周波数の調整の様子を示す図である。
【図5】切断用パターンの切断痕の形態を示す断面図である。
【図6】実施形態に係る電子デバイスの第1の応用形態を示す図である。
【図7】実施形態に係る電子デバイスの第2の応用形態を示す図である。
【図8】発明に係る電子デバイスの他の実施形態を示す図である。
【図9】従来の電子デバイスであって、H型断面を有するパッケージを利用した物の形態を示す図である。
【図10】従来の電子デバイスであって、モニター用電極端子が一方の主面側に配置された形態を示す図である。
【図11】従来の電子デバイスであって、切断用パターンを備えた形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の電子デバイス、および電子デバイスの製造方法についての実施の形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1(A)は、電子デバイスの平面構造を示す図であり、図1(B)は、同図(A)におけるA−A断面を示す図であり、図1(C)は、電子デバイスの裏面構造を示す図である。
【0018】
本実施形態に係る電子デバイス10は、振動片110と、半導体素子としてのICチップ114、およびパッケージ11を基本として構成される。
振動片110は、ATカット水晶振動片などの水晶振動片を用いることができる。なお振動片110は、この他にも、水晶素板のカット角や主振動の形態に違いを有する音叉型水晶振動片や、弾性表面波水晶振動片などでもよい。また振動片の材料としては水晶以外にもタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムなどを用いてもよい。さらに水晶振動片の代わりに圧電振動片以外の各種振動片を用いることも可能であり、例えばシリコン基板を加工して形成されたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)振動片等を用いた場合であっても、本実施形態に係る電子デバイス10を構成することができる。
【0019】
ICチップ114としては、振動子(振動片110として圧電素板を実装した場合には圧電振動子)を発振させる回路構造を有する半導体素子から構成された集積回路等を採用することができる。ICチップ114には複数の電極パッド(不図示)が設けられている。
【0020】
パッケージ11は、ベース基板12と、このベース基板12に実装した振動片110を封止して振動子を構成するための蓋体112を基本として構成される。本実施形態に係るベース基板12は、第1の基板14、第2の基板16、および第3の基板18を積層させて構成される。各基板の構成材料としては、アルミナセラミックスやガラスセラミックス等のセラミックス材料から成り、グリーンシート法により積層焼結されて一体化される。第2の基板16、および第3の基板18には、金属パターンが形成されている。このため図2には、第2の基板16と第3の基板18に形成された金属パターンの構成が明確となるように、第2の基板16、および第3の基板18の分解斜視図を示すこととする。
【0021】
第1の基板14は、ベース基板12を構成する基板の最上層であり、振動片110とICチップ114の外周を囲む第1の凹部20、および第2の凹部22を形成する枠体である。第1の凹部20は、内部に振動片110を収容する内部空間を形成する。第2の凹部22は、内部にICチップ114を収容する空間を形成している。なお第1の基板14の厚みは、少なくとも振動片110の厚みよりも厚く形成している。第1の凹部20に振動片110を収容した後に、詳細を後述する蓋体112により、第1の凹部20を封止することを可能とするためである。
【0022】
第2の基板16は、ベース基板12を構成する基板の中間層であり、上述した第1の基板14との接合面である第1の主面には、金属パターンと、第1の主面に形成された金属パターンを第1の主面の裏面側である第2の主面に落とし込むビアホールを有する。第1の主面に形成された金属パターンには、振動片110を実装するための振動片実装用パッド24やICチップ114を実装するためのICチップ実装パッド30、およびこれらの金属パターンとビアホールを電気的に接続する接続パターン56,58,60,61,62,64が存在する。本実施形態に係る第2の基板16には、振動片実装用パッド24として、第1振動片実装用パッド26と、第2振動片実装用パッド28が存在する。また、ICチップ実装パッド30としては、GNDパッド32、foutパッド34、振動片接続用第1パッド36(第1半導体素子接続用パッド)、振動片接続用第2パッド38(第1半導体素子接続用パッド)、Vcパッド40(第2半導体素子接続用パッド)、およびVddパッド42(第2半導体素子接続用パッド)などを有する。
【0023】
また、ビアホールとしては、第1のビアホール44から第6のビアホール54を有する。ビアホールのうち、第1のビアホール44は、第1振動片実装用パッド26の直下に設けられている。また、第2のビアホール46は、GNDパッド32と振動片接続用第1パッド36との間に設けられ、GNDパッド32と接続パターン58により接続されている。また、第3のビアホール48は、foutパッド34と、このfoutパッド34に最寄の角部との間に設けられ、接続パターン60によりfoutパッド34と接続されている。また、第4のビアホール50は、振動片接続用第1パッド36から振動片実装位置側へ延設された接続パターン61の先端位置に設けられている。また、第5のビアホール52は、Vcパッド40を基点として、振動片接続用第1パッド36と点対称となる位置に設けられ、接続パターン62によりVcパッド40と接続されている。さらに第6のビアホール54は、Vddパッド42を基点として振動片接続用第2パッド38と点対称となる位置に設けられ、接続パターン64によりVddパッド42と接続されている。
【0024】
また、本実施形態に係る電子デバイス10のパッケージ11を構成する第2基板16では、振動片接続用第1パッド36とVcパッド40、および振動片接続用第2パッド38とVddパッド42とをそれぞれ電気的に接続する切断用パターン66,68を有する。
【0025】
第3の基板18は、ベース基板12を構成する基板の最下層であり、第2の基板16と接合する第1の主面と、パッケージの外部に晒されることとなる第2の主面とを有する。また、第3の基板18の四隅には切欠きが形成され、第1〜第4のキャスタレーション82〜88が形成されている。第3の基板18における第1の主面には、第2の基板16におけるビアホールの落とし込み位置に対応したビアホール対応パッドと、接続パターンが形成されている。ビアホール対応パッドには、第1のビアホール対応パッド70〜第6のビアホール対応パッド80が存在し、それぞれ第1のビアホール44〜第6のビアホール54の対応位置に配置形成される。
【0026】
第1のビアホール対応パッド70と、第4のビアホール対応パッド76とは、接続パターン90により接続されている。これにより、第1振動片実装用パッド26と、振動片接続用第1パッド36とが電気的に接続されることとなる。また、第2のビアホール対応パッド72は、接続パターン92を介して第3のキャスタレーション86と接続されている。また、第3のビアホール対応パッド74は、接続パターン94を介して第2のキャスタレーション84と接続されている。また、第5のビアホール対応パッド78は、接続パターン96を介して第4のキャスタレーション88と接続されている。さらに、第6のビアホール対応パッド80は、接続パターン98を介して第1のキャスタレーション82と接続されている。
【0027】
第3の基板18における第2の主面には、4つの外部実装用端子が形成されている。4つの外部実装用端子はそれぞれ、第3の基板18の四隅に形成された第1〜第4のキャスタレーション82〜88のいずれか1つに接続されており、キャスタレーションおよび接続電極を介して電気的に接続されたパッド(GNDパッド32、foutパッド34、Vcパッド40、Vddパッド42)の属性によりそれぞれ、GND端子104、fout端子102、Vc端子106、Vdd端子100を構成する。
【0028】
蓋体112は、第1の基板14における第1の凹部20の上部開口部を覆う部材である。蓋体112は、平板状又は第1の凹部20の外周に沿ってキャップ状、即ち第1の凹部20を凸状に覆う形状とすることができる。本実施形態では、蓋体112の一例として、板状の金属リッドを採用することとする。なお、蓋体112と第1の基板14との接合には、図示しないシームリングなどの金属ロウ材や、低融点ガラスなどのロウ材などを用いることができる。
【0029】
このような構成とした本実施形態に係るパッケージ11では、切断用パターン66,68が切断されていない状態においては、Vc端子106と第1振動片実装用パッド26、Vdd端子100と第2振動片実装用パッド28がそれぞれ電気的に接続されることとなり、Vc端子106とVdd端子100とが、モニター用電極端子としての役割を担うこととなる。一方、切断用パターン66,68が切断された後には、振動片接続用第1パッド36とVcパッド40、振動片接続用第2パッド38とVddパッド42が、それぞれ電気的に分離されるため、Vc端子106とVdd端子100とは、それぞれ固有の役割を担う端子となり、パッケージ11の外部(外部実装用端子形成面側)から直接、振動片110の振動特性を検出することは出来なくなる。
【0030】
振動片110は、第1振動片実装用パッド26、および第2振動片実装用パッド28に対し、導電性接着剤等を介して実装される。これにより、振動片接続用第1パッド36と、振動片接続用第2パッド38とが、振動片110における図示しない励振電極と電気的に接続されることとなる。ここで、振動片110を弾性表面波水晶振動片などとした場合には、導電性接着剤を介した実装の替わりに、ワイヤボンディングなどの手法を採るようにすれば良い。
【0031】
ICチップ114は、第2の凹部22に設けられたICチップ実装パッド30(GNDパッド32、foutパッド34、振動片接続用第1パッド36、振動片接続用第2パッド38、Vcパッド40、およびVddパッド42)に対して、金属バンプなどを介したフリップチップボンディングにより実装される。これにより、振動片接続用第1パッド36と振動片接続用第2パッド38と、foutパッド34とVddパッド42とは、ICチップ114を介して接続されることとなり、振動片110は、ICチップ114に記録された動作条件に基づいて発振することとなる。
【0032】
ICチップ114の外周であって、ICチップ114を実装した第2の凹部22の内部領域には、樹脂部材116が充填される。樹脂部材116の充填により、ICチップ114の実装面に水分が付着することによる振動特性の劣化や、塵埃が付着することによる短絡等を防止することができる。このため、樹脂部材116は絶縁性とし、一例としては、一般的なモールド樹脂を採用することができる。
【0033】
次に、上記のような構成の電子デバイスの製造方法について図3を参照して説明する。
まず、ベース基板12は、各基板形状に形成された第1の基板14、第2の基板16、および第3の基板18のうち、第2の基板16と第3の基板18に対して、金属パターンの形成を行う。金属パターンの形成は、スクリーン印刷などの手法により行われ、金属パターンは、タングステンやモリブデン等を下地層とし、第2、第3の基板16,18は、第1の基板14と共に焼成されることにより一体化される(ベース基板製造工程:S100)。そして焼成後に、金属パターンに対してメッキ処理を施し、ニッケル層、および金層を形成する。
【0034】
形成されたベース基板12の第1の凹部20に設けられた第1振動片実装用パッド26と第2振動片実装用パッド28に対し、導電性接着剤の塗布を行う。導電性接着剤が塗布された第1振動片実装用パッド26と第2振動片実装用パッド28に対して振動片110を搭載し、振動片110の実装を行う(振動片実装工程:S110)。
【0035】
振動片110を実装したベース基板12を図4に示すようなホルダ150にセットする。ホルダ150には、底面に開口部152を有する凹部154が形成されており、ベース基板12は、この開口部152から振動片110の励振電極(不図示)が覗くこととなるように、ホルダ150に対してセットされる。このようにセットされたベース基板12のVc端子106とVdd端子100に対して、ネットワークアナライザ等の特性試験装置160のプローブ162を当接させる。ここで、特性試験装置160としては、ベース基板12に実装された振動片110の共振周波数やCI(クリスタルインピーダンス)値、インダクタンス、容量等の等価パラメータを測定することができるものであれば良い。
【0036】
Vc端子106とVdd端子100に対して特性試験装置160のプローブ162を当接させ、振動片110の共振周波数等の特性を検出すると共に、ホルダ150の開口部152を介して振動片110の励振電極に対してレーザーを照射し、共振周波数の調整を行う(周波数調整工程:S120)。
【0037】
周波数調整工程終了後、第1の凹部20における上部開口部を蓋体112で封止する。蓋体112の接合は、図示しないシームリングを用いたシーム溶接や、金属系ロウ材を用いた液相拡散接合法などを採用することができる。第1の凹部20を蓋体112により封止することにより、振動子が構成される。詳細を後述するパターン切断工程の前に第1の凹部20を封止することにより、切断用パターン66,68の切断によって生じた塵埃が振動片110に付着して、振動特性を劣化させることを防止することができる(封止工程:S130)。
【0038】
周波数調整工程を終えた後、振動片110を実装したベース基板12をホルダ150から取り外し、切断用パターン66,68の切断を行う。切断用パターン66,68の切断は、Nd−YAGレーザーやNd−YVO4レーザーなどのレーザーを照射することにより行うことができる。レーザーにより切断された切断用パターン66,68の切断痕16aは、図5に示すように、ベース基板12における第2の基板16の一方の主面、すなわち表面をえぐるように凹陥させた形態となる。
【0039】
レーザーの照射は、1回であっても、複数回であっても良い。レーザーを複数回照射する場合、照射位置を切断用パターン66,68の配線方向に沿ってずらす事で、切断部の幅を広げる事ができる。なお、レーザーの照射を複数回行う場合には、レーザーの照射により生ずる塵埃を吸引除去しながら行うようにすることが望ましい。レーザーにより切断された切断痕16aが残る箇所に、複数回目のレーザー照射によって生じた金属パターンを含む塵埃が付着し、切断用パターン66,68の電気的な切断が妨げられる可能性が生ずるからである(パターン切断工程:S140)。
【0040】
パターン切断工程の後、第2の凹部22に対してICチップ114を実装する。ICチップ114は、金バンプなどを介したフリップチップボンディングにより実装する(ICチップ実装工程:S150)。ICチップ114を実装した後、第2の凹部22の隙間部分に、樹脂部材116を充填し、固化させる(樹脂充填工程:S160)。
【0041】
このようにして形成される電子デバイス10によれば、振動片110とICチップ114を水平方向に配置した、低背化に適した構成であると言える。また、振動片110の振動特性の検査、調整時においては、外部実装端子をモニター用電極端子として利用することにより、小型化された場合であっても確実に、プローブ162を当接させる面積を確保することができる。さらに、外部実装端子をモニター用電極端子として利用するため、振動片110を実装したベース基板12をホルダ150にセットした状態で裏面側から、プローブ162をモニター用電極端子に当接させることが可能となる。このため、振動特性等を検出しながら、共振周波数の調整を行うことができる。
【0042】
上記実施形態では、切断用パターン66,68のパターン幅も、他の金属パターンのパターン幅と等しいように図に示した。しかしながら、図6に示すように、切断用パターン66,68のパターン幅を、他の金属パターンのパターン幅に比べて狭くするようにしても良い。このような構成とすることにより、切断用パターン66,68の切断が容易となり、切断の確実性を向上させることができる。
【0043】
また、上記実施形態に係る電子デバイスでは、図7に示すように、切断用パターン66(または切断用パターン68)をGNDパッド32に接続するようにしても良い。このような構成とした場合、GNDパッド32が第2半導体素子接続用パッドとしての役割を担い、周波数調整工程においては、GND端子104とVdd端子100が、モニター用電極端子としての役割を担うこととなる。このように、本実施形態に係るパッケージ11では、外部実装端子をモニター用電極端子として利用する構成としたことにより、切断用パターン66,68の接続先の組み合わせを変える事ができ、金属パターンの設計的な規制を緩和することができる。
【0044】
また、上記実施形態に係る電子デバイスは、外部実装端子がモニター用電極端子の役割を担う構成としていた。しかしながら、外部実装端子とモニター用電極端子とを別体として設けた、図8に示すような形態の電子デバイスであっても、本発明の一部とみなすことができる。なお、図8において、図8(A)は電子デバイスの平面構成を示す図であり、図8(B)は電子デバイスの裏面側構成を示す図である。
【0045】
図8に示す電子デバイス10aは、その基本的構成は、上述した実施形態に係る電子デバイス10と同様である。相違点としてはベース基板の構成において、ICチップ114と電気的に接続されることが無い中径パッド37,39を設けた点にある。そして、中径パッド37,39は、第3の基板18の第2の主面に形成したモニター用電極端子と電気的に接続されている。
【0046】
さらに、振動片接続用第1パッド36と中径パッド37との間には、切断用パターン66が設けられ、振動片接続用第2パッド38と中径パッド39との間には、切断用パターン68が設けられている。このような構成とされるベース基板12を有する電子デバイス10aでは、上述した周波数調整工程終了後、ベース基板12の表面をえぐるような凹陥部を形成するように、切断用パターン66,68を切断し、ICチップ114を実装する。このような構成の電子デバイスであっても、切断用パターン66,68を切断する際、凹陥状となる切断痕を形成することで、切断用パターン66,68の切断を確実なものとすることができる。
【0047】
なお、図1、図6、図7に示す電子デバイス10、および図8に示す電子デバイス10aは、説明を理解し易くするために、切断用パターン66,68が切断されていない状態を示しているが、実際に構成される電子デバイス10,10aでは、切断用パターン66,68は、切断状態とされる。
【符号の説明】
【0048】
10………電子デバイス、11………パッケージ、12………ベース基板、14………第1の基板、16………第2の基板、18………第3の基板、20………第1の凹部、22………第2の凹部、24………振動片実装用パッド、26………第1振動片実装用パッド、28………第2振動片実装用パッド、30………ICチップ実装パッド、32………GNDパッド、34………foutパッド、36………振動片接続用第1パッド、38………振動片接続用第2パッド、40………Vcパッド、42………Vddパッド、44………第1ビアホール、46………第2ビアホール、48………第3ビアホール、50………第4ビアホール、52………第5ビアホール、54………第6ビアホール、56,58,60,61,62,64………接続パターン、66,68………切断用パターン、70………第1ビアホール対応パッド、72………第2ビアホール対応パッド、74………第3ビアホール対応パッド、76………第4ビアホール対応パッド、78………第5ビアホール対応パッド、80………第6ビアホール対応パッド、82………第1のキャスタレーション、84………第2のキャスタレーション、86………第3のキャスタレーション、88………第4のキャスタレーション、90,92,94,96,98………接続パターン、100………Vdd端子、102………fout端子、104………GND端子、106………Vc端子。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動片と半導体素子とを水平方向に並べて実装したベース基板を備える電子デバイスであって、
前記ベース基板の一方の主面に、
前記振動片を実装するための振動片実装用パッドと、
前記振動片実装用パッドと電気的に接続されている第1半導体素子接続用パッドと、
前記ベース基板の他方の主面に形成されたモニター用電極端子と電気的に接続されている中継パッドと、
前記第1半導体素子接続用パッドと前記中継パッドとを電気的に接続する切断用パターンと
を有し、
前記切断用パターンは、前記半導体素子を実装した状態において切断されており、前記切断用パターンの切断位置である前記ベース基板の表面に凹陥部を有することを特徴とする電子デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の電子デバイスであって、
前記中継パッドは、前記半導体素子を実装するための第2半導体素子接続用パッドであり、前記モニター用電極端子は、前記ベース基板の他方の面に形成された実装端子であることを特徴とする電子デバイス。
【請求項3】
一方の面に、振動片を実装するための振動片実装用パッドと、前記振動片実装用パッドと電気的に接続されている第1半導体素子接続用パッドと、他方の面に形成されたモニター用電極端子と電気的に接続されている中継パッドと、前記第1半導体素子接続用パッドと前記中継パッドとを電気的に接続する切断用パターンを有し、前記振動片と半導体素子とを水平方向に並べて実装可能とするベース基板を備える電子デバイスの製造方法であって、
前記振動片実装用パッドに対して振動片を実装する振動片実装工程と、
前記モニター用電極端子を介して前記振動片の発振と共振周波数の調整を行う周波数調整工程と、
前記周波数調整工程後、前記切断用パターンを切断し、前記ベース基板の表面に凹陥部を形成するパターン切断工程とを有することを特徴とする電子デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−199579(P2011−199579A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63876(P2010−63876)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】