説明

電子ビーム検出器,電子ビーム応用装置およびそれを用いた観察方法

【課題】
電子ビーム応用装置では,複数の電子ビーム検出器および電磁波発生手段をもつことにより性能向上が図れるが,空間的制約により同時に配置することが困難である。
【解決手段】
電子ビーム検出器(102,105)と電磁波発生手段(102,104,108,109)を両立した構成100により,電子ビーム応用装置内部に多数の電子ビーム検出器及び電磁波発生手段を配置することができ,電磁波発生手段による試料表面の電位の制御やコンタミネーションの除去により,長期間安定した像観察が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,微細な試料の観察,検査,加工を行うための電子ビーム応用装置およびそれを用いた観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細な試料の観察,検査,加工を行う電子ビーム応用装置においては,電子顕微鏡,電子ビーム検査および計測装置,電子ビーム描画装置等がある。これらの装置は電子ビームを検出する手段を有し,試料を透過する電子や試料から発生する2次電子,オージェ電子,後方散乱電子等を検出することで,試料の形状,表面状態,内部構造の観察,検査,加工を行っている。
【0003】
さらに,高精度な観察,検査,加工を行うために,1次電子や後方散乱電子等の検出から電子ビーム自体の形状・位置・電流の校正を行っている。特に,半導体デバイス等の観察,検査,加工においては,年々進む微細化や多様化に対応するため電子ビームの高い分解能および計測精度を向上し,生産性を維持するために高いスループットでかつ長時間の安定性を実現する必要がある。このため,電子ビーム検出器には高感度で低ノイズ,長期安定性,かつ高速な応答が必要とされる。
【0004】
従来,電子ビームを検出する手段として,ファラデーカップ,蛍光体と光増倍管(例えば,特許文献2参照),半導体検出器,MCP(Microchannel Plate)等が利用されている。さらに,特許文献1にあるように,化合物半導体に電子線を照射し,発生する電磁波を検出する方式の電子ビーム検出器が提案されている。さらに,走査電子顕微鏡(SEM)や電子線検査装置等では,発生した電子の出射エネルギ・出射角度により,様々な試料情報が得られるため,高S/N,長期安定,高い応答の検出器を複数配置することが電子顕微鏡では有効である。
【0005】
一方,絶縁物を含む試料に電子ビームを照射すると,試料帯電が起こり,電子ビームの位置ずれや検出可能な2次電子量の変化等が発生し,これらも高精度な観察,検査,加工にとって大きな弊害となる。特に,試料の電位状態により電位コントラスト像を取得する場合,試料の帯電電位の変化に敏感であるため,照射中の像変化が大きく,安定した観察が難しくなる。
【0006】
さらに,SEMや電子線検査装置では,試料の電位状態を積極的に制御することにより,試料の電気特性などを取得することが可能となる。これらの手段としては,特許文献3にあるように,さまざまな波長の電磁波を用いた帯電制御手段が有効である。さらに,特許文献4にあるように,紫外光等の電磁波は電子ビームによるコンタミネーション除去としても有効であり,電子ビーム応用装置では紫外光等の電磁波光源を有することは装置性能を大幅に向上させる。
【0007】
紫外光やその他の電磁波照射手段においては,レーザ光源等が提案されている。レーザ光源は一般的に,励起源および励起源からの発光により誘導放出を起こすレーザ媒質,それらの増幅された発光を反射鏡等により共振させる共振器からなる。小型で比較的に安価な半導体レーザは空間的制約が大きい電子ビーム応用装置に搭載できる光源として,有利である。近年,特許文献5にあるように,電子ビーム励起による半導体レーザも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第04246995号公報
【特許文献2】特許第04365255号公報
【特許文献3】特開2008−16858号公報
【特許文献4】特開2004−14960号公報
【特許文献5】特許第3667188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし,電子ビーム応用装置において,高性能な電子ビーム検出器と光源を適切な位置に配置することは以下の理由で著しく困難である。電子ビーム検出器および光源は,どの目的に使用する場合においても試料および電子の光路付近に配置される必要がある。これらの光路は,1次ビームでは高い分解能を保つレンズ配置,電流調整機構やビームのON/OFF機構,試料上の帯電電位の制御機構,2次電子や後方散乱電子等のエネルギや角度による信号弁別機構(複数の電子ビーム検出器)などがあり,空間的な制約が非常に大きい。
【0010】
電子ビーム応用装置では,これらの様々な機能を持たせることで装置の性能向上を図っているため,適切な位置に複数の電子ビーム検出器と紫外光等の電磁波発生手段を配置することは著しく困難である。
【0011】
前述のとおり,電子ビーム応用装置では,複数の電子ビーム検出器および電磁波発生を有することで,性能向上を図ることでできる。しかし,それらを1次電子および検出する電子の光路に適切に配置することは非常に困難である。
【0012】
本発明の目的は,電子ビーム検出器と電磁波発生手段とを備えた電子ビーム応用装置および電磁波を照射しながら観察することのできる電子ビーム観察方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための一実施形態として,電子ビームを照射することにより発光する半導体デバイスと,前記半導体デバイスから発光される電磁波を分離または選択する手段と,前記電磁波の一部を検出する手段と,前記電磁波の他の一部を放出する手段を有し,電子ビーム検出器と電磁波発生手段を両立させた,電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器を有する電子ビーム応用装置とする。
【0014】
また,前記電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器を搭載した電子ビーム応用装置による電子ビーム観察方法とする。
【発明の効果】
【0015】
電磁波発生手段を電子ビーム検出器に内蔵させることにより,電子ビーム検出器と電磁波発生手段を両立した構成を有する電子ビーム応用装置および電磁波を照射しながら観察することのできる電子ビーム観察方法を提供することができる。これにより例えば,従来は空間的制約によって配置できない箇所に,多数の電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器が配置され,そこから電磁波を放出することにより,試料表面の電位を制御することが可能となる。これにより,電子ビームの分解能を落とすことなく,電子ビーム応用装置の用途に応じて様々な材料からなる試料を同時に観察できる。また,観察中の試料の電位を一定に制御することが可能なため,画像ドリフトや試料情報の変化が少ない安定した画像を取得することが可能となる。さらに,電子ビーム照射による試料や反射板のコンタミネーションを除去し,長期間安定した像観察が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施例に係る,電子ビーム応用装置用の電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器の概略断面図である。
【図2】本発明の第2の実施例に係る,電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器を備えた電子ビーム半導体検査および解析装置の概略断面図である。
【図3】本発明の第2の実施例に係る,アウトレンズ型対物レンズを有する電子顕微鏡の概略断面図である。
【図4】本発明の第2の実施例に係る,インレンズ型対物レンズを有する電子顕微鏡の概略断面図である。
【図5】本発明の第3の実施例に係る,電子ビーム応用装置用の電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器の概略断面図である。
【図6】本発明の第4の実施例に係る,図5で示した電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器を備えた電子ビーム半導体検査および解析装置の概略断面図である。
【図7】本発明の第5の実施例に係る,ガス導入手段を有する電子ビーム応用装置の概略断面図である。
【図8】本発明の第6の実施例に係るマルチビーム方式の半導体検査および解析装置の概略断面図である。
【図9】本発明の第7の実施例に係る,電子ビーム応用装置用の電磁波発生手段内蔵のレーザ励起構造体を有する電子ビーム検出器の概略断面図である。
【図10】レーザ励起におけるバイアス電流とレーザ出力との相関図である。
【図11】半導体検査装置における2次電子画像の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
筐体内は空間的な制約があり,別途電磁波発生手段を設けることは困難である。発明者等はこの課題について検討した結果,電子線により電磁波を発生する電子ビーム検出器において,発生した電磁波の一部を電磁波発生手段に利用できることに思い至った。本発明はこの知見により生まれたものである。
【0018】
以下,実施例により説明する。
【実施例1】
【0019】
第1の実施例について,図1を用いて説明する。図1は第1の実施例に係る,電子ビーム応用装置用の電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器の概略断面図である。電子ビーム101が半導体デバイス102に照射されると,電磁波103が発生する。半導体デバイス102はメタル層102a,半導体ドープ層と活性層102b,基板層102cで構成される。ここで,半導体デバイス102は電子ビーム101に対する感度を有するため,表面から入射した電子ビーム101が半導体ドープ層と活性層102bに到達する必要がある。このため,半導体デバイス内のメタル層102aと半導体ドープ層と活性層102bを重ねた厚さは,照射される電子ビームの飛程以下で形成されている。
【0020】
メタル層102aは電磁波103を反射するように構成され,半導体デバイス102bは窒化物半導体などの直接遷移型の化合物半導体で構成される。なお,ここでは化合物半導体を用いたが,電子ビーム照射により電磁波を発生する半導体であれば用いることができる。基板層102cは電磁波103に対して透過率が高いもので構成される。とくに,半導体ドープ層と活性層102b中の活性層に量子井戸構造を有するInGaNなどは発光効率が良く,応答性や長期安定性が期待できる。電磁波103は波長域が紫外から赤外である。
【0021】
発生した電磁波103はハーフミラー等の電磁波分離手段104により電磁波107a,107bに分離される。電磁波107aは電磁波検出手段105で検出され,検出信号に基づき,電子線の電流量やエネルギを計測することが可能となる。なお,符号106は検出信号伝達手段である。電磁波107bは電磁波反射手段108を介して,電磁波放出手段109に入る。電磁波放出手段109は,電磁波107bに対して透過率が高いもので構成され,電磁波に指向性をもたせられ,電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器100から外部へ放射される。なお,電磁波放出手段109は,電磁波が透過できる透過窓であり,当該部分にレンズを配置してもよい。
【0022】
さらに,電磁波分離手段104は,材質を選択することで,透過・反射率を変化させ,電磁波107a,107bの強度を調整する。本実施例は上記形態に限定されるものではなく,様々な変形が可能である。たとえば,電磁波分離手段104は,フィルター等の電磁波選択手段でもよく,電磁波107a,107bを自由に選択できる構成でも良い。また,半導体デバイス102からの発光を電子線に対して垂直方向に取り出す構成でも良く,半導体デバイス102と電磁波分離手段104を併用し,発光を半導体デバイスの表面と裏面から取り出すことで分離を行う方法も有効である。さらに,半導体デバイス102の活性層には量子井戸構造以外に,ダブルへテロ構造により形成されていても良い。
【0023】
以上述べたように,本実施例によれば,電子ビーム検出器と電磁波発生手段を両立した構成を有する電子ビーム応用装置および電磁波を照射しながら観察することのできる電子ビーム観察方法に用いることのできる電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器を提供することができる。
【実施例2】
【0024】
本発明の第2の実施例について,図2〜図4を用いて説明する。なお,実施例1に記載の内容は特段の事情がない限り,本実施例にも適用できる。
【0025】
図2は本実施例に係る,電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器を有する電子ビーム応用装置(電子ビーム半導体検査および解析装置)の概略断面図のである。電子ビーム半導体検査および解析装置200は,真空筐体201,電子源203,二つのコンデンサレンズ204a,204b,電流制限絞り205,ブランキング電極206aとブランキング絞り206bからなるブランキング機構206,反射板207,E×B偏向器208,偏向器209,セミインレンズ型の対物レンズ210,帯電制御電極211,試料を搭載したステージ212,電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器100a,100b,検出信号増幅回路213a,213b,二つ以上の増幅回路からの信号を選択し,増幅回路からのアナログ信号をデジタル信号に変換する手段214,これらを制御し,画像を出力する手段(制御用計算機)215により構成される。
【0026】
電子源から照射される電子ビームは二つのコンデンサレンズと対物レンズを用いて,試料上に焦点を結ぶように調整され,偏向器209を用いて試料上で走査される。電子ビームの加速電圧は試料を搭載したステージ212に印加されたリターディング電圧により調整される。試料上に照射された電子ビームにより,試料から2次電子,後方散乱電子等が発生する。試料の帯電電位は試料での電子の収支で決まり,2次電子の試料に戻される割合を調整することで帯電電位を調整する。
【0027】
試料から発生した後方散乱電子の一部は,電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器100aに到達する。実施例1で記したとおり,電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器100aの半導体デバイス102は入射した電子量に応じた発光が生じる。この発光の一部を電磁波検出手段105で検出し,その検出信号は検出信号増幅回路213aで増幅され,後段に伝送される。
【0028】
さらに発光の一部は,電磁波放出手段109により電磁波107cとして,試料に戻される。ここで,半導体デバイス102の材質を変えることで電磁波の波長を選択することにより,特定の絶縁物のみを導電化させることができ,帯電を除去することができる。また,特許文献3のように,特定の材質のみに吸収する波長を選択し,光電子を発生させて,帯電制御電極の電界により光電子を試料に戻す割合を調整することで,帯電を制御することが可能となる。
【0029】
一方,試料から発生した2次電子は帯電制御電極211による電界で,一部が引き上げられ,一部が試料に戻される。帯電制御電界で対物レンズ210を通過し,引き上げられた2次電子や後方散乱電子の一部は,リターディング電界による加速を受けてE×B偏向器208により偏向作用を受け,反射板207に照射される。反射板207に衝突した電子により,新たに2次電子(以下,3次電子と記述)が発生する。電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器100b中の半導体デバイス102には,反射板に対して正電圧が印加されている。この電界により,反射板からの3次電子は,電子ビーム検出器および電磁波発生手段100bに到達する。ここで,電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器100bの正電圧は半導体デバイス102にのみ印加することが可能である。
【0030】
半導体デバイス102は3次電子量に応じた発光が生じる。実施例1で記したとおり,この発光の一部を電磁波検出手段105で検出し,検出信号は検出信号増幅回路213で増幅され,後段に伝送される。さらに発光の一部は,電磁波放出手段109により電磁波107cとして,反射板207に戻される。
【0031】
反射板上には電子ビームによりコンタミネーションが付着し,それが帯電することで検出率や反射板207の電子イールドを低下させる。紫外線等の電磁波を反射板に照射することで,反射板207の帯電を除去し,安定した検出率を保つことが可能である。
【0032】
また,紫外光は真空内の微量のガスを電離化させるため,電離ガスによりコンタミネーションを除去し,反射板の電子イールドの低下を抑制し,長時間安定した画像を取得することが可能となる。
【0033】
これらの二つの電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器100a,100bで得られた検出信号は,後方散乱電子が主な信号源の100aは試料の形状や材質情報を含み,2次電子が主な信号源の100bは,試料の電位情報を得ることが可能である。これらは装置ユーザが自由に選択でき,画像出力と制御手段(制御用計算機)215に入力することで,信号選択手段(およびアナログ−デジタル変換手段)214により信号選択を行い,制御用計算機215上に所望な画像を出力することが可能になる。
【0034】
本実施例は上記形態に限定されるものではなく,様々な変形が可能である。たとえば,本実施例では2つの電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器100a,100bを用いたが,出射角度ごとの2次電子や後方散乱電子のもつ試料情報を分離するために,2つ以上の検出器をもつ構成においても有効である。検出器の数が増える場合は,SEM筐体内の空間的な制約が多くなるため,電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器の適用が特に有効となる。さらに,図2ではセミインレンズ型対物レンズを示したが,電子ビームの分解能や検出器の配置により,図3,図4に示されるアウトレンズ型対物レンズ301,インレンズ型対物レンズ401の構成があり,いずれにおいても電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器を適用することができる。また,電子ビームが複数本照射される電子ビーム応用装置においても,有効である。
【0035】
以上述べたように,本実施例によれば,電磁波発生手段を電子ビーム検出器に内蔵させることにより,電子ビーム検出器と電磁波発生手段を両立した構成を有する電子ビーム応用装置および電磁波を照射しながら観察することのできる電子ビーム観察方法を提供することができる。特に,対物レンズのタイプによらず本電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器を用いることができる。
【実施例3】
【0036】
第3の実施例について図5を用いて説明する。図5は実施例1における電子ビームによる発光機能を半導体デバイス102の両側に持たせた際の一実施例の概略図である。なお,実施例1又は実施例2に記載の内容は特段の事情がない限り,本実施例にも適用できる。
【0037】
原理は実施例1とほぼ同様であり,電子ビーム501a,501bが半導体デバイス502に照射されると,電磁波503が発生する。なお,符号501cは半導体デバイスに照射されずに通過した電子を示す。発生した電磁波503は電磁波分離手段504により電磁波507a,507bに分離される。電磁波507aは電磁波検出手段505で検出され,検出信号に基づき,電子線の電流量やエネルギを計測することが可能となる。なお,符号506は検出信号伝達手段である。電磁波507bは電磁波放出手段508に入り,電磁波に指向性をもたせられ,電磁波発生手段内蔵の両面型電子ビーム検出器500から外部へ放射される。
【0038】
半導体デバイス502はメタル層502a,ドープ層502b,活性層502c,502bと逆極性にドープされた502d,基板層502eで構成される。ここで,半導体デバイス502は両側から電子ビーム501a,501bに対する感度を有するため,表面および裏面から入射した電子ビーム501a,501bが活性層502cに到達する必要がある。このため,半導体デバイス内のメタル層502aとドープ層502bを重ねた厚さt1と,基板層502eとドープ層502dを重ねた厚さt2とはともに照射される電子ビームの飛程以下で形成されている。
【0039】
電子ビームの飛程は,照射時の加速電圧と,照射される物質の原子番号でもほぼ決まるため,検出する電子ビームに最適化する。たとえば,材質がGaN系で構成される場合は,電子ビームが到達する飛程は600nm以下となり,もっとも散乱されるのは200nm付近である。このため,t1,t2には600nm以下にすることで,電子ビームに対する感度を向上することが可能となる。
【0040】
本実施例は上記形態に限定されるものではなく,様々な変形が可能である。たとえば,半導体デバイスの表面と裏面に入射する電子ビームの加速電圧が違う場合,t1,t2それぞれで最適値が存在する。また,材質が異なる場合は,それぞれに最適値が異なる。いずれにせよ,所望の電子ビームを検出するために,t1,t2を作製することが重要である。
【0041】
以上述べたように,本実施例によれば,電子ビーム検出器と電磁波発生手段を両立した構成を有する電子ビーム応用装置および電磁波を照射しながら観察することのできる電子ビーム観察方法に用いることのできる電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器を提供することができる。特に,本検出器は受光面を両面に有するため,電子ビームを有効に利用することができる。
【実施例4】
【0042】
第4の実施例について,図6を用いて説明する。図6は実施例3における電磁波発生機能内蔵の電子ビーム検出器を,電子ビーム応用装置に適用した例である。なお,これまでに記載の実施例は特段の事情がない限り,本実施例にも適用できる。
【0043】
図6に示した本実施例に係る電子ビーム応用装置は,図2で示した二つのコンデンサレンズ204a,204bの間に,電流制限絞り205とブランキング絞り206bの代わりに電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器500a,500bを設置したものである。試料からの2次電子および後方散乱電子等の検出については,実施例2とほぼ同様であるため,説明を省略する。
【0044】
図2において,試料に到達する電子ビームの電流量は,コンデンサレンズ204aを変化させ,電流制限絞り205を通過する電流量を調整することで決定されるが,図6においては電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器500aにこの機能を併用させる。
【0045】
また,図2において,電子ビームを偏向させる際に,1走査ごともしくは1ショットごとに所定の位置に戻るまでの時間に試料に電子ビームを照射させないため,ブランキング電極206aとブランキング絞り206bにより電子ビームを遮断している。図6においては,このブランキング絞り206bの機能を電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器500bに併用させる。
【0046】
通常,電流制限絞りやブランキング絞りは,数百nAの大きな電子ビームが照射されており,この部分に付着するコンタミネーションは電子ビームのドリフトを発生させ,安定した画像取得の妨げになる。しかし,ここに電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器を配置し,半導体デバイス502から発生した電磁波の一部507cをコンタミネーションが付着する箇所に照射することにより,コンタミネーションの低減もしくは除去が可能となる。
【0047】
さらに,照射される電子ビームの電流量を電磁波検出手段505で検出し,検出信号増幅回路601a,601bを介して,検出することで,照射される電子ビームの状態をリアルタイムで観察することが可能となる。
【0048】
図6で2次電子もしくは後方散乱電子を観察することで新たに付加される機能として,電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器500a,500bは,反射板を通過した高角度のみの電子を検出するため,図2の電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器100aおよび100bとは違う試料情報を得ることが可能になる点である。さらに,すべての検出器からの画像を比較することで,従来観察が難しかったアスペクトの高い穴底や溝底を観察する場合,特に有効である。
【0049】
本実施例は上記形態に限定されるものではなく,様々な変形が可能である。たとえば,図6ではセミインレンズ型対物レンズを示したが,電子ビームの分解能や検出器の配置により,図3,図4に示されるアウトレンズ型対物レンズ301,インレンズ型対物レンズ401の構成があり,いずれにおいても電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器を適用することができる。また,電子ビームが複数本照射される電子ビーム応用装置においても,有効である。
【0050】
以上述べたように,本実施例によれば,電磁波発生手段を電子ビーム検出器に内蔵させることにより,電子ビーム検出器と電磁波発生手段を両立した構成を有する電子ビーム応用装置および電磁波を照射しながら観察することのできる電子ビーム観察方法を提供することができる。特に,電流制限絞りやブランキング絞りのコンタミネーションの低減もしくは除去が可能となる。
【実施例5】
【0051】
第5の実施例について図7を用いて説明する。本実施例では,実施例2もしくは実施例4にガス導入手段を有する電子ビーム応用装置について説明する。なお,実施例1〜5のいずれかに記載の内容は特段の事情がない限り,本実施例にも適用できる。
【0052】
図7は本実施例に係る,ガス導入手段を有する電子ビーム応用装置の概略断面図である。試料から発生した後方散乱電子は,電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器100aに到達する。一方,試料から発生した2次電子は反射板207に衝突し,3次電子を発生させ,それらが電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器100bに到達する。また,電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器500a,500bにも電子源からの電子ビームや反射板を通過した電子が照射される。
【0053】
いずれの場合において,これまでの実施例で記したとおり,半導体デバイスからの発光の一部が電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器の電磁波放出手段109,508により電磁波として,試料および反射板に戻される。電磁波の波長は紫外付近となるように,半導体デバイスを選択する。この際,ガスタンク702より供給されたガス703をガス導入手段701により真空筐体201内へ導入する。ガス703としては,窒素,ヘリウム,ネオン,アルゴン等の不活性ガスおよび酸素,水素等が良い。
【0054】
ガス導入手段701は真空筐体201の圧力を著しく低下させない程度に調整する。紫外域の電磁波はガス703を電離化させるため,電離ガスにより試料および反射板に付着するコンタミネーションを除去することが可能となる。コンタミネーションによる試料情報の変化および反射板イールドの低下を抑制し,長時間安定した観察画像を取得することが可能となる。
【0055】
以上述べたように,本実施例によれば,電磁波発生手段を電子ビーム検出器に内蔵させることにより,電子ビーム検出器と電磁波発生手段を両立した構成を有する電子ビーム応用装置および電磁波を照射しながら観察することのできる電子ビーム観察方法を提供することができる。特に,真空筐体内へのガス導入により,効率的なコンタミネーションの除去や安定画像の取得が可能となる。
【実施例6】
【0056】
第6の実施例について図8を用いて説明する。図8は,本実施例に係るマルチ電子ビーム検査および解析装置の概略断面図である。
【0057】
真空筐体(カラム)800内において電子源801から発した電子ビーム802は,二つのコンデンサレンズ803a,803b,電流制限絞り804,アパーチャアレイ805,レンズアレイ806により複数の電子ビーム807が形成される。
【0058】
この複数の電子ビーム807は,第1投影レンズ808および第2投影レンズ809により,ステージ813に載せられた試料812上に投影される。このとき,複数の電子ビーム807の試料812上での位置は,偏向器810を用いて一斉に走査される。また,ステージ813により試料812を移動させる。
【0059】
この際,発生する2次電子814は,E×B偏向器815により偏向作用を受け,それぞれ検出器アレイ816に導かれる。検出器アレイ816にそれぞれ分離された2次電子を電子ビームの走査に合わせて画像化し,複数の箇所を同時に観察することが可能となる。電流制限絞り804またはアパーチャアレイ805に,実施例1または3記載の電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器を置くことで,実施例4の効果を得ることができる。
【0060】
また,複数本のうちの1本を電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出811に導く。これにより電磁波883を発生させ,試料の帯電電位を制御することが可能となる。ステージ813を移動することにより,試料表面全面に電磁波883を照射することができる。2次電子や後方散乱電子が試料のイールドや原子番号によって変化するのに対して,1次電子ビームは電流が一定であるため,電磁波放射が一定となり,安定した帯電制御が可能となる。また,同時にその電流量を検出することで,試料に照射される直前の他の電子ビームの電流量を予測することが可能である。これにより,マルチビーム検査および解析装置においても,電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器により安定した観察が可能となる。
【0061】
以上述べたように,本実施例によれば,電磁波発生手段を電子ビーム検出器に内蔵させることにより,電子ビーム検出器と電磁波発生手段を両立した構成を有する電子ビーム応用装置および電磁波を照射しながら観察することのできる電子ビーム観察方法を提供することができる。特に,マルチビーム検査および解析装置において,安定した試料観察が可能となる。
【実施例7】
【0062】
第7の実施例について図9を用いて説明する。なお,実施例1〜6に記載され,本実施例に未記載の事項は特段の事情がない限り本実施例にも適用することができる。図9は,本実施例に係る電子ビーム応用装置用の電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器の概略断面図であり,本電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器900においては,実施例3の図5に記載の半導体デバイス502内にレーザ励起する機構を有する。
【0063】
本実施例は,レーザ励起する機構が付加されており,実施例1記載の電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出にも同様に適用できるものである。図9に示すように,半導体デバイス(電子線励起レーザ構造体)902は,発生した電磁波に対して反射率が高いもので構成されるメタル層902aと基板層902e,ドープ層902bと逆極性にドープされた902dの間に発光およびレーザ励起を起こす活性層902c,発生した電磁波を反射する反射鏡902fおよび902gにより構成される。
【0064】
反射鏡902fおよび902g間を電磁波が往復することで誘導放出が促され,レーザ発振を起こし,レーザ光903が放出される。放出されたレーザ光903はレーザ光分離または選択手段904により,分離もしくは選択されたレーザ光907a,907bとなり,レーザ光907aはレーザ光検出手段905で検出され,レーザ光907bはレーザ光放出手段908により放出される。ここで,レーザ光分離または選択手段の透過率および反射率を選択することで,分離されたレーザ光907a,907bの強度を調整できる。なお,符号906は検出信号伝達手段を,符号907cは電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器から放出される電磁波を示す。
【0065】
本実施例は上記形態に限定されるものではなく,様々な変形が可能である。例えば,本実施例では実施例5で示した半導体デバイスの側面に反射鏡を付加したものを示したが,実施例1で示した構造に反射鏡を付加した場合でも良く,反射鏡の位置は表面裏面の間でも良い。また,本実施例を図2,3,4,6,7に示した電子ビーム応用装置に適用することで,実施例1および実施例5の場合よりも,志向性に優れ,高出力で波長がそろった電磁波を発生することが可能となり,実施例2,4,5,6よりも,さらに高S/Nな電子線検出と,長時間安定な観察を行うことが可能となる。
【0066】
なお,電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器において,電子ビームにより発生する電磁波の強度が弱い場合,本実施例に示したレーザ励起の機能を付加することにより,所望の強度を有する電磁波を得ることができる。特に,電子線を照射することにより帯電する絶縁物の除電に有効である。
【0067】
以上述べたように,本実施例によれば,電磁波発生手段を電子ビーム検出器に内蔵させることにより,電子ビーム検出器と電磁波発生手段を両立した構成を有する電子ビーム応用装置および電磁波を照射しながら観察することのできる電子ビーム観察方法を提供することができる。特に,電子ビームが微弱な場合,レーザ励起の機能を付加した電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器は有用である。
【実施例8】
【0068】
第8の実施例について図9〜図11を用いて説明する。なお,実施例1〜7に記載され,本実施例に未記載の事項は特段の事情がない限り本実施例にも適用することができる。本実施例では,実施例7において示した構成を用いた別の実施例を示す。
【0069】
本実施例では,図9に示されるように電子線励起レーザ構造体902にバイアス電流を調整する機構を有する。これにより,電子ビーム901a,901bのエネルギもしくは電流量に応じて,レーザ発振が起きるよう,バイアス電流を調整することが可能となる。バイアス電流源910からレーザ励起が起きる程度のバイアス電流を,伝達経路909a,909bを介して電子線励起レーザ構造体902に供給する。
【0070】
図10にバイアス電流とレーザ出力の関係1001を示す。レーザ発振は,閾値電流I1002以上の電流により起こる。たとえば,入射される電子ビーム901a,901bの電子数に応じて,リニアな発光が必要なリニアモードの場合,バイアス電流を閾値電流I1002以上のリニアモード電流I1003を供給する(I<I)。これにより,電流量に応じた発光が実現できる。
【0071】
さらに,ユーザが設定した値以上の電流量が照射されたときにのみレーザ発振がおきる閾値モードでは,閾値電流I1002以下の設定電流I1004を供給する(I>I)。これにより,設定した電流以上の電子が入射したときのみ,電子ビーム901a,901bの電流量に応じて,レーザ発振が起きることになる。
【0072】
この実施例による効果を説明する。発生したレーザ光により帯電制御やコンタミネーション除去を行う場合,必要以上の電磁波を入射すると,照射箇所のダメージが増加してしまう。電子ビーム照射による帯電やコンタミネーションは,照射する電流量によって変化するため,特に電流量が大きいときに,帯電は大きくなり,コンタミネーションが増加する。よって,必要以上の電磁波を試料に照射しないために,照射された電流量に応じて電磁波が発生するように,バイアス電流を調整することで,帯電を制御でき,試料ダメージを最低限に抑えることが可能となる。
【0073】
さらに,本実施例を用いると,電子ビーム検出においてもノイズ低減が可能となる。通常,電子ビーム検出器にはX線等の電磁波にも感度があり,SEM筐体内の電磁波によりバックグラウンドノイズが発生する。これらの電磁波ノイズによる検出信号を遮断するには,必要な検出信号のみに感度がある検出器が有効である。本実施例を用いることで,設定した値以上の電子が入射したときにのみレーザ発振が起こるため,電磁波によるバックグラウンドノイズを低減することが可能である。
【0074】
また,電子ビーム検査装置では,試料の欠陥部を判定する際に,欠陥信号の閾値を決めて,それ以上(または以下の)信号に対して,正常部か欠陥部かを判定する。通常,図11のように,2次電子画像1100を取得し,画像からパターンを認識して,正常部1101と欠陥部1102の信号強度の差をデジタル処理することで検査を行っている。この手法は,デジタルフィルタ処理等を用いて,複雑なパターンの認識にも優れているが,複数本の電子ビームを用いる場合や,検査領域が大きい場合に,莫大なデータ処理を必要とするため,スループットの低下や高コスト化を招く。本実施例を用いることにより,電子を検出する際にアナログ的な閾値判定が可能になり,スループットの向上,コストの低減が可能となる。
【0075】
以上述べたように,本実施例によれば,電磁波発生手段を電子ビーム検出器に内蔵させることにより,電子ビーム検出器と電磁波発生手段を両立した構成を有する電子ビーム応用装置および電磁波を照射しながら観察することのできる電子ビーム観察方法を提供することができる。特に,バイアス電流を調整することにより,コンタミネーション除去の際の試料ダメージの低減,電子ビーム検出の際のバックグラウンドノイズの低減,欠陥判定におけるスループットの向上やコスト低減が可能となる。
【0076】
以上,本願発明を詳細に説明したが,以下に主な発明の形態を列挙する。
(1)電子ビームを照射することにより電磁波を発生する半導体デバイスと,前記半導体デバイスから発生される電磁波を二つ以上に分離する手段と,分離された電磁波を検出する手段と,分離された電磁波を照射する手段を有する電子ビーム検出手段または電磁波発生手段を有することを特徴とする電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器。
(2)前項(1)に記載の電子ビーム検出器において,
前記半導体デバイスは,直接遷移型の半導体により構成されていることを特徴とする電子ビーム検出器。
(3)前項(1)記載の電子ビーム検出器において,
前記半導体デバイスは内部に活性層を有し,前記半導体デバイスの表面および裏面から前記活性層までの厚さが,照射する前記電子ビームの飛程以下で構成されることを特徴とする電子ビーム検出器。
(4)電子源と,前記電子源から放出された電子に起因する電子ビームを検出する電子ビーム検出器とを備えた電子ビーム応用装置において,
前記電子ビーム検出器は,前項(1)記載の電子ビーム検出器であることを特徴とする電子ビーム応用装置。
(5)前項(4)記載の電子ビーム応用装置において,
前記半導体デバイスは,直接遷移型の半導体により構成されていることを特徴とする電子ビーム応用装置。
(6)電子ビームを発生する手段と,前記電子ビームを試料上に収束させるレンズと,前記電子ビームの試料上での位置を決める偏向器と,前記試料を搭載して移動する可動ステージと,種々のデータを処理するデータ制御手段と,それらの機器を制御する制御用計算機とを具備した電子ビーム応用装置において,
前記試料から発生する2次電子や後方散乱電子を照射することにより電磁波を発生する半導体デバイスと,前記半導体デバイスからの電磁波を分離もしくは選択する手段と,前記半導体デバイスから発生される電磁波の一部を検出する手段と,前記半導体デバイスから発生される電磁波の一部を試料に戻すための手段を備えた電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器を有することを特徴とする電子ビーム応用装置。
(7)前項(3)記載の電子ビーム応用装置において,
前記電子ビームを発生する手段と,前記電子ビームを試料上に収束させるレンズと,前記電子ビームの試料上での位置を決める偏向器と,前記試料を搭載して移動する可動ステージと,を収納する真空筐体の内部にガスを導入するためのガス導入手段を更に有することを特徴とする電子ビーム応用装置。
(8)電子ビームを発生する手段と,前記電子ビームを試料上に収束させるレンズと,前記電子ビームの試料上での位置を決める偏向器と,前記試料を搭載して移動する可動ステージと,種々のデータを処理するデータ制御手段と,それらの機器を制御する制御用計算機と,試料から発生した2次電子や後方散乱電子を照射する反射板とを具備した電子ビーム応用装置において,
前記反射板から発生する電子を検出することで電磁波を発生する半導体デバイスと,前記半導体デバイスからの電磁波を分離もしくは選択する手段と,前記半導体デバイスから発生される電磁波の一部を検出する電磁波検出器と,前記半導体デバイスから発生される電磁波の一部を前記試料もしくは前記反射板に戻すための手段を備えた電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器と,
前記電子ビームを発生する手段と,前記電子ビームを試料上に収束させるレンズと,前記電子ビームの試料上での位置を決める偏向器と,前記試料を搭載して移動する可動ステージと,を収納する真空筐体の内部にガスを導入するためのガス導入手段とを更に有することを特徴とする電子ビーム応用装置。
(9)前項(1)記載の電子ビーム応用装置において,
前記半導体デバイスは内部に活性層を有し,前記半導体デバイスの表面および裏面から内部の前記活性層までの厚さが,照射する前記電子ビームの飛程以下で構成されることを特徴とする電子ビーム応用装置。
(10)電子ビームを発生する手段と,前記電子ビームを試料上に収束させるレンズと,前記電子ビームの試料上での位置を決める偏向器と,前記電子ビームの試料上での電流量を決定する電流制限絞りと,前記電子ビームを偏向し遮断する手段と,前記試料を搭載して移動する可動ステージと,種々のデータを処理するデータ制御手段と,それらの機器を制御する制御用計算機と,前記試料から発生した2次電子や後方散乱電子を照射する反射板とを具備した電子ビーム応用装置において,
前記電流制限絞りもしくは前記電子ビームを変更し遮断する手段として,前項(1)記載の電子ビーム検出器を用いることを特徴とする電子ビーム応用装置。
(11)複数の電子ビームを発生する手段と,前記電子ビームの少なくとも一本のビームを試料上に収束させるレンズと,前記電子ビームの少なくとも一本のビームの試料上での位置を決める偏向器と,前記試料を搭載して移動する可動ステージと,種々のデータを処理するデータ制御手段と,それらの機器を制御する制御用計算機とを具備した電子ビーム応用装置において,
前記試料上に照射する前記電子ビームとは異なる電子ビームが,前項(1)記載の電子ビーム検出器に照射されることを特徴とする電子ビーム応用装置。
(12)前項(6)記載の電子ビーム応用装置を用いた観察方法において,
前記試料から発生した2次電子や後方散乱電子を,電磁波発生手段内蔵の前記電子ビーム検出器に照射し,前記半導体デバイスから発生する電磁波を分割し,その一部を試料上に照射することにより試料の電位を制御すると同時に,半導体デバイスから発生する電磁波の他の一部を検出し,検出された前記電磁波の他の一部を用いて前記試料を観察することを特徴とする観察方法。
(13)前項(8)記載の電子ビーム応用装置を用いた観察方法において,
前記試料もしくは前記反射板から発生した電子を,前記電子ビーム検出器に照射し,前記半導体デバイスから発生する電磁波を分割し,その一部を試料上に照射することにより,試料もしくは反射板のコンタミネーションを抑制することを特徴とする観察方法。
(14)前項(11)記載の電子ビーム応用装置を用いた観察方法において,
前記複数の電子ビームの少なくとも1本を前記試料上に照射し,前記試料を観察すると同時に,前記複数の電子ビームの少なくとも他の1本を前記電子ビーム検出器に照射し,前記半導体デバイスから発生する電磁波を前記試料上に照射することにより,前記試料の電位状態を制御することを特徴とする観察方法。
(15)前項(8)記載の電子ビーム応用装置において,
前記半導体デバイスから発生した電磁波を増幅し,レーザ励起構造体を有することを特徴とする電子ビーム応用装置。
(16)前項(15)記載の電子ビーム応用装置において,
前記レーザ励起構造体にバイアス電流を供給する手段を有することを特徴とする電子ビーム応用装置。
(17)前項(16)記載の電子ビーム応用装置を用いた観察方法において,
前記電子ビーム検出器に内蔵された電磁波発生手段により,事前に設定した範囲以上の電子を検出したときにのみレーザ発振が起こるようにバイアス電流を調整し,レーザ励起した電磁波を電磁波検出器もしくは試料または反射板に照射することを特徴とする観察方法。
(18)前項(4)に記載の電子ビーム応用装置において,
前記半導体デバイスから発生した電磁波を増幅し,レーザ励起構造体を有することを特徴とする電子ビーム応用装置。
(19)前項(18)記載の電子ビーム応用装置において,
前記レーザ励起構造体にバイアス電流を供給する手段を有することを特徴とする電子ビーム応用装置。
【符号の説明】
【0077】
100,100a,100b:電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器,101:電子ビーム,102:半導体デバイス,103:電磁波,104:電磁波分離手段,105:電磁波検出手段,106:検出信号伝達手段,107a,100b:分離された電磁波,108:電磁波反射手段,109:電磁波放出手段,200:電子ビーム半導体検査および解析装置,201:真空筐体,203:電子源,204,204a,204b:コンデンサレンズ,205:電流制限絞り,206:ブランキング機構,207:反射板,208:E×B偏向器,209:偏向器,210:セミインレンズ型対物レンズ,211:帯電制御電極,212:試料搭載ステージ,213:検出信号増幅回路,214:信号選択およびアナログ−デジタル変換手段,215:制御用計算機,301:アウトレンズ型対物レンズ,401:インレンズ型対物レンズ,500,500a,500b:電磁波発生手段内蔵の両面型の電子ビーム検出,501:電子ビーム,502:半導体デバイス,503:電磁波,504:電磁波分離手段,505:電磁波検出手段,506:検出信号伝達手段,507a,507b:分離された電磁波,508:電磁波放出手段,601a,601b:検出信号増幅回路,701:ガス導入手段,702:ガスタンク,703:ガス,800:真空筐体,801:電子源,802:電子ビーム,803a,803b:コンデンサレンズ,804:電流制限絞り,805:アパーチャアレイ,806:レンズアレイ,807:複数の電子ビーム,808:第1投影レンズ,809:第2投影レンズ,810:偏向器,811:電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器,812:試料,813:ステージ,814:2次電子,815:E×B偏向器,816:検出器アレイ,900:電磁波発生手段内蔵のレーザ励起を搭載した両面型の電子ビーム検出器,901a,901b:電子ビーム,902:電子線励起レーザ構造体,903:レーザ光,904:レーザ光分離または選択手段,905:レーザ光検出手段,906:検出信号伝達手段,907a,907b:分離または選択されたレーザ光,908:レーザ光放出手段,909:バイアス電流伝達経路,910:バイアス電流源,1001:バイアス電流とレーザ出力の相関,1002:閾値電流I,1003:リニアモード電流I,1004:設定電流I,1100:2次電子画像,1101:正常部,1102:欠陥部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームを照射することにより電磁波を発生する半導体デバイスと,前記半導体デバイスから発生される電磁波を二つ以上に分離する手段と,分離された電磁波を検出する手段と,分離された電磁波を照射する手段を有することを特徴とする電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子ビーム検出器において,
前記半導体デバイスは,直接遷移型の半導体により構成されていることを特徴とする電子ビーム検出器。
【請求項3】
請求項1記載の電子ビーム検出器において,
前記半導体デバイスは内部に活性層を有し,前記半導体デバイスの表面および裏面から前記活性層までの厚さが,照射する前記電子ビームの飛程以下で構成されることを特徴とする電子ビーム検出器。
【請求項4】
電子源と,前記電子源から放出された電子に起因する電子ビームを検出する電子ビーム検出器とを備えた電子ビーム応用装置において,
前記電子ビーム検出器は,請求項1記載の電子ビーム検出器であることを特徴とする電子ビーム応用装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電子ビーム応用装置において,
前記半導体デバイスは,直接遷移型の半導体により構成されていることを特徴とする電子ビーム応用装置。
【請求項6】
電子ビームを発生する手段と,前記電子ビームを試料上に収束させるレンズと,前記電子ビームの試料上での位置を決める偏向器と,前記試料を搭載して移動する可動ステージと,種々のデータを処理するデータ制御手段と,それらの機器を制御する制御用計算機とを具備した電子ビーム応用装置において,
前記試料から発生する2次電子や後方散乱電子を照射することにより電磁波を発生する半導体デバイスと,前記半導体デバイスからの電磁波を分離もしくは選択する手段と,前記半導体デバイスから発生される電磁波の一部を検出する手段と,前記半導体デバイスから発生される電磁波の一部を試料に戻すための手段を備えた電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器を有することを特徴とする電子ビーム応用装置。
【請求項7】
請求項3記載の電子ビーム応用装置において,
前記電子ビームを発生する手段と,前記電子ビームを試料上に収束させるレンズと,前記電子ビームの試料上での位置を決める偏向器と,前記試料を搭載して移動する可動ステージと,を収納する真空筐体の内部にガスを導入するためのガス導入手段を更に有することを特徴とする電子ビーム応用装置。
【請求項8】
電子ビームを発生する手段と,前記電子ビームを試料上に収束させるレンズと,前記電子ビームの試料上での位置を決める偏向器と,前記試料を搭載して移動する可動ステージと,種々のデータを処理するデータ制御手段と,それらの機器を制御する制御用計算機と,試料から発生した2次電子や後方散乱電子を照射する反射板とを具備した電子ビーム応用装置において,
前記反射板から発生する電子を検出することで電磁波を発生する半導体デバイスと,前記半導体デバイスからの電磁波を分離もしくは選択する手段と,前記半導体デバイスから発生される電磁波の一部を検出する電磁波検出器と,前記半導体デバイスから発生される電磁波の一部を前記試料もしくは前記反射板に戻すための手段を備えた電磁波発生手段内蔵の電子ビーム検出器と,
前記電子ビームを発生する手段と,前記電子ビームを試料上に収束させるレンズと,前記電子ビームの試料上での位置を決める偏向器と,前記試料を搭載して移動する可動ステージと,を収納する真空筐体の内部にガスを導入するためのガス導入手段とを更に有することを特徴とする電子ビーム応用装置。
【請求項9】
請求項1記載の電子ビーム応用装置において,
前記半導体デバイスは内部に活性層を有し,前記半導体デバイスの表面および裏面から内部の前記活性層までの厚さが,照射する前記電子ビームの飛程以下で構成されることを特徴とする電子ビーム応用装置。
【請求項10】
電子ビームを発生する手段と,前記電子ビームを試料上に収束させるレンズと,前記電子ビームの試料上での位置を決める偏向器と,前記電子ビームの試料上での電流量を決定する電流制限絞りと,前記電子ビームを偏向し遮断する手段と,前記試料を搭載して移動する可動ステージと,種々のデータを処理するデータ制御手段と,それらの機器を制御する制御用計算機と,前記試料から発生した2次電子や後方散乱電子を照射する反射板とを具備した電子ビーム応用装置において,
前記電流制限絞りもしくは前記電子ビームを変更し遮断する手段として,請求項1記載の電子ビーム検出器を用いることを特徴とする電子ビーム応用装置。
【請求項11】
複数の電子ビームを発生する手段と,前記電子ビームの少なくとも一本のビームを試料上に収束させるレンズと,前記電子ビームの少なくとも一本のビームの試料上での位置を決める偏向器と,前記試料を搭載して移動する可動ステージと,種々のデータを処理するデータ制御手段と,それらの機器を制御する制御用計算機とを具備した電子ビーム応用装置において,
前記試料上に照射する前記電子ビームとは異なる電子ビームが,請求項1記載の電子ビーム検出器に照射されることを特徴とする電子ビーム応用装置。
【請求項12】
請求項6記載の電子ビーム応用装置を用いた観察方法において,
前記試料から発生した2次電子や後方散乱電子を,電磁波発生手段内蔵の前記電子ビーム検出器に照射し,前記半導体デバイスから発生する電磁波を分割し,その一部を試料上に照射することにより試料の電位を制御すると同時に,半導体デバイスから発生する電磁波の他の一部を検出し,検出された前記電磁波の他の一部を用いて前記試料を観察することを特徴とする観察方法。
【請求項13】
請求項8記載の電子ビーム応用装置を用いた観察方法において,
前記試料もしくは前記反射板から発生した電子を,前記電子ビーム検出器に照射し,前記半導体デバイスから発生する電磁波を分割し,その一部を試料上に照射することにより,試料もしくは反射板のコンタミネーションを抑制することを特徴とする観察方法。
【請求項14】
請求項11記載の電子ビーム応用装置を用いた観察方法において,
前記複数の電子ビームの少なくとも1本を前記試料上に照射し,前記試料を観察すると同時に,前記複数の電子ビームの少なくとも他の1本を前記電子ビーム検出器に照射し,前記半導体デバイスから発生する電磁波を前記試料上に照射することにより,前記試料の電位状態を制御することを特徴とする観察方法。
【請求項15】
請求項8に記載の電子ビーム応用装置において,
前記半導体デバイスから発生した電磁波を増幅し,レーザ励起構造体を有することを特徴とする電子ビーム応用装置。
【請求項16】
請求項15記載の電子ビーム応用装置において,
前記レーザ励起構造体にバイアス電流を供給する手段を有することを特徴とする電子ビーム応用装置。
【請求項17】
請求項16記載の電子ビーム応用装置を用いた観察方法において,
前記電子ビーム検出器に内蔵された電磁波発生手段により,事前に設定した範囲以上の電子を検出したときにのみレーザ発振が起こるようにバイアス電流を調整し,レーザ励起した電磁波を電磁波検出器もしくは試料または反射板に照射することを特徴とする観察方法。
【請求項18】
請求項4に記載の電子ビーム応用装置において,
前記半導体デバイスから発生した電磁波を増幅し,レーザ励起構造体を有することを特徴とする電子ビーム応用装置。
【請求項19】
請求項18記載の電子ビーム応用装置において,
前記レーザ励起構造体にバイアス電流を供給する手段を有することを特徴とする電子ビーム応用装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−258509(P2011−258509A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134039(P2010−134039)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】