説明

電子機器およびその測距方法

【課題】電子機器本体側で測距時に撮像された測距光の円状パターンにおける輝度が均一で比較的レベルを高くすることによって、制御端末と電子機器本体との距離を高精度に測定する。
【解決手段】撮像デバイス32を含む電子機器本体(表示装置2およびカメラ部3)と、これを制御するリモートコントローラ4とを有し、リモートコントローラ4は、赤外線LED41と、赤外線LED41を外部からの操作に応じて円を描くように回転移動する駆動部42とを有し、カメラ部3は、撮像デバイス32の撮影像を画像処理部33が画像処理することによって、撮影像内で赤外線LED41の回転移動によるピーク光量部分の軌跡が描く円状パターンの最大径を検出し、最大径に基づいてカメラ部3とリモートコントローラ4との距離を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像デバイスを含む電子機器本体と、電子機器本体を制御する制御端末とを有し、制御端末からの赤外線に基づいて制御端末と電子機器本体との距離を測定する機能を有する電子機器と、その測距方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線を利用して2点間の距離を測定する最も一般的な方法として、一方の機器から送信した赤外線と、その赤外線が他方の機器(または物体)に反射して戻ってくる赤外線(反射赤外線)とを用いる方法が知られている。この方法においては、赤外線を送信した機器が反射赤外線を受信し、送信から受信までにかかった時間を測定して距離を算出する。
しかし、この方法においては赤外線の送信後から受信完了まで光軸をずらすことができず、たとえばリモートコントローラ(以下「リモコン」と略記する)のように、これをある場所に固定して使用することが稀な端末機器に、この方法を適用することが困難である。
また赤外線と超短波光など、複数の伝送速度の異なる電磁波を利用して、伝播速度の差分から距離を求める方法も提案されている。ただし、この方法においては受信時のサンプリング精度による誤差が大きく、また2種類の電磁波を受信する受信手段間で同期をとる必要があるなどの理由により機器が複雑化することから、精度よく簡単に利用するには課題が多い。
【0003】
ところで、電子スチルカメラあるいはデジタルビデオカメラなどのように撮像デバイスを有する機器本体に、リモコンなどの制御端末を付属品として備えることが多い。このような機器では、リモコン側から機器本体を制御してリモコンと機器本体の距離を測定し、その測距情報を撮影時の、たとえばズーム倍率の自動調整あるいはオートフォーカスに役立てることができれば便利である。
【0004】
このような場合においてリモコン側から赤外線による円状パターンを機器本体に送信し、これを機器本体の撮像デバイスで受光し、その撮影像の形状に基づいてリモコンと機器本体の距離を測定する測距方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
この特許文献1には、円環状のライトガイドまたは複数(たとえば8個)のLEDを円状に配置した発光部が開示されている。また、この発光部からのLED光を電子カメラで撮像したときの円状パターンの最大径を測定し、その値に基づいて、リモコンなどの制御端末と電子カメラとの距離を算出する例が開示されている。
この方法によれば、本来別の目的で設けられている撮像デバイスの機能を利用して距離の測定が可能であることから、機器が複雑化することなく比較的簡単に測距機能を付加することが可能である。
【特許文献1】特開2001−346090号公報([0068]〜[0071]の記載ならびに図14,図15)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、円環状のライトガイドを用いる場合は、LED光が分散してライトガイド全体を均一に明るく照らすことが困難であることから、距離が離れると撮像側の入射LED光のレベルが低くなりやすく、このことによって測距誤差が大きくなる。
一方、複数のLED光を円状に配置する場合は、発光部の発光側面が電子カメラの撮像面に対して傾いている場合に、撮像された円状パターンにおいて精度よく長径の真値を求めるにはLEDの数を多くする必要があり、そのことがコスト増となる。また、複数のLEDの発光照度にばらつきがあると、このことが測距時の誤差要因となる。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、制御端末における発光部の構成が簡素で低コストであるにもかかわらず、電子機器本体側で測距時に撮像された円状パターンにおける輝度が均一で比較的レベルを高くでき、このため制御端末と電子機器本体との距離を高精度に測定可能な電子機器およびその測距方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電子機器は、撮像デバイスを含む電子機器本体と、電子機器本体を制御する制御端末とを有する電子機器であって、前記制御端末は、発光デバイスと、前記発光デバイスを外部からの操作に応じて円を描くように回転移動する駆動部とを有し、前記電子機器本体は、前記撮像デバイスの撮影像を画像処理することによって、撮影像内で前記発光デバイスの回転移動によるピーク光量部分の軌跡が描く円状パターンの最大径を検出し、最大径に基づいて当該電子機器本体と前記制御端末との距離を測定する測距部を有する。
【0009】
本発明に係る電子機器の測距方法は、撮像デバイスを含む第1の機器と、発光デバイスを有する第2の機器との距離を測定する電子機器の測距方法であって、前記第2の機器において前記発光デバイスを、円を描くように回転移動させ、前記第1の機器において、前記撮像デバイスの撮影像を画像処理することによって、撮影像内で前記発光デバイスの回転移動によるピーク光量部分の軌跡が描く円状パターンの最大径を検出し、最大径に基づいて当該第1の機器と前記第2の機器との距離を測定する。
【0010】
本発明によれば、制御端末において発光デバイスを回転移動させ、そのとき電子機器本体内の撮像デバイスが、その発光デバイスのピーク光量部分の軌跡が描く円状パターンを撮像する。このとき撮像デバイスが取得する円状パターンにおいて、1つの発光デバイスが回転移動した結果の画像であることから、そのピーク光量部分の輝度が一定であり、輝度レベルも高い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、撮像デバイスが取得した円状パターンのピーク光量部分の輝度が一定で輝度レベルが高いことから、制御端末と電子機器本体との距離(または、第1および第2の機器間の距離)を高精度に測定することができる。また、発光デバイスを回転移動させることから、測定用の高輝度の発光デバイスを多数設ける必要がなくコスト面でも有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、電子機器本体と、制御端末、たとえばリモコンとを有し、電子機器本体に撮像デバイスを含む電子機器一般に広く適用できる。このような電子機器として、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、テレビ電話(英会話や講義のため双方向対話が可能な遠隔モニタシステムを含む)、または、テレビ会議システムなどがある。
以下、本発明の実施の形態を、本発明をテレビ会議システムの端末として、画像を撮影して相手方に送り、また相手方の画像を表示する会議モニタ機器に適用した例を用いて記述する。
【0013】
[第1の実施の形態]
図1は、本実施の形態におけるテレビ会議システムのモニタ機器の斜視図である。
図示例のテレビ会議システムのモニタ機器1は、会議室などに据え置かれる大型の表示装置2(直視型か投射型かを問わない)と、表示装置2に内蔵または固定されているカメラ部3と、表示装置1およびカメラ部3を遠隔操作するための制御端末(リモコン)4とを有する。表示装置1およびカメラ部3は、本発明における「電子機器本体」に相当する。
モニタ機器1は、操作者100が会議の進行に合わせてリモコン4を操作することによって、会議内容に応じた表示操作、たとえば複数の画面(議長、発言者の映像あるいは資料映像)を切り替え、あるいは、映し出された資料の文字などを拡大する操作を行うことができる。
【0014】
本例においてカメラ部3が、表示装置の上部中央に固定されている。カメラ部3を、発言者の表情を追うことが可能な構成にしてもよい。また、カメラ部3は会議全体の様子を映すようにし、とくに図示していないが各人の表情を座卓に固定された小型のカメラで映すようにしてもよい。
リモコン4は測距モード時に赤外線などの特定光を発光する発光デバイス、たとえば赤外線LED41と、これを駆動する駆動部42とを有する。駆動部42は、その回転軸を中心に赤外線LED41が円を描いて回転するように、赤外線LED41に駆動力を付与する。カメラ部3は、発光した赤外線LED41の軌跡(円状パターン)を撮影することができる。
【0015】
図2に、本実施の形態におけるモニタ機器の、とくにカメラ部のブロック図を示す。
カメラ部3内に、赤外線透過フィルタ31、撮像デバイス32、画像処理部33、メモリ34、および、これらを制御するマイクロコンピュータ(μ−com.)35を有する。また、図示を省略しているが、光学レンズを含むレンズブロックと、撮像デバイス32からの信号をデジタルに変換し信号処理する回路もカメラ部3に内蔵されている。これらの構成は、本来は会議の様子などを撮影するために設けられているものであるが、本実施の形態において、その機能を利用してリモコン4と当該カメラ部3(厳密には、光学レンズ)との距離を測定する。赤外線透過フィルタ31、撮像デバイス32、画像処理部33、メモリ34およびマイクロコンピュータ35は、本発明の「測距部」の実施例を構成する。
【0016】
このときリモコン4において、前述したように赤外線LED41が、測距モードにおける外部からの操作により発光し円を描くように回転移動する。この回転移動する赤外線LED41の位置は、現在市場に出回っているリモコンの用い方との兼ね合いを考慮すると、操作パネルを上にして正視したときにリモコン4の先端側とすることが望ましい。これは、リモコンの操作パネル面と平行な中心軸を表示装置側に向けて操作を行うことが電子機器の制御を行うリモコンの操作時の状態として定着しているとの理由に基づくものである。その場合、赤外線LED41の回転移動の軌跡を含む面(以下、発光側面という)は、リモコン4の中心軸と直交することが望ましい。
【0017】
駆動部42は、赤外線LEDに上述した円を描くような回転移動力を付与するものであれば、その具体的構成に限定はない。
駆動部42として、たとえば、小型のモータと、モータの回転軸に固定され先端に赤外線LED41を保持する連結部と、赤外線LED41のガイド部とを備えるものを採用できる。これらモータ、連結部、ガイド部および赤外線LED41をリモコン4の筐体内に収容してもよいし、連結部や赤外線LED41を測距時に筐体から引き出すようにしてもよい。
前者のように全ての構成を筐体内に収容すると、回転する赤外線LED41に外部から触れることができないことから回転動作が物に当たって邪魔されない利点があるが、リモコン4の筐体の先端部が大型化する。
後者の場合、たとえば赤外線LED41の回転を必要としない通常の操作時にはモータの回転軸と連結部はリモコン4の筐体内に収容されている。測距時には、たとえば携帯電話のアンテナのように、赤外線が出射する突起を操作者が外側に引き出すと、モータの回転軸が多段階で延び、このときパラソルを開くときのように付勢力によって、連結部と、その先端の赤外線LED41とがモータの回転軸より一定距離(回転半径)となる位置に移動する。これによって、リモコン4の筐体外部で赤外線LED41がモータの回転軸を中心に回転可能な状態となる。この後者の構成は、赤外線LED41の回転が物に当たって邪魔されないように注意する必要があるが、リモコン4の筐体自体を小型にできるという利点がある。
なお、駆動部42は、これら以外の構成とすることも可能である。
【0018】
赤外線透過フィルタ31は、測距時にのみ光学レンズと撮像デバイス32との間に移動可能になっている。このため、通常の撮像時に赤外線透過フィルタ31を介さない撮像が可能となっている。測距時には赤外線透過フィルタ31を通した赤外線の像が撮像デバイス32の撮像面で結像し、この赤外線の像に対応した信号が撮像デバイス32から出力され、不図示のAD変換器によりデジタルに変換された後にメモリ34に格納される。なお、赤外線透過フィルタ31を設けることなく撮像デバイス32により撮像され、デジタルに変換された後にメモリ34に格納されている画像から、画像処理部33が赤外線に対応した特定色を抽出するようにしてもよい。
画像処理部33は、メモリ34に格納されている画像を読み出して、これを解析し、赤外線LED41の回転面(発光側面)とカメラ部3との距離を測定する。以下、この距離の測定について記述する。
【0019】
図3は、距離の測定を説明するための図である。
図3において、長さ「X1」が求めようとするリモコン4とカメラ部3との距離、すなわち厳密には、リモコン4の赤外線LED41が回転する面(発光側面)とカメラ部3の光学レンズとの距離を示す。長さ「X2」が光学レンズの中心と撮像デバイス32の撮像面との距離(焦点距離)を示す。さらに長さ「Y1」を赤外線LED41が回転したときに描く円の最大径に対応するとした場合、長さ「Y2」が撮像面上における赤外線発光点の軌跡(円状パターン)の最大径に対応する。通常のカメラにおいて焦点距離X2は可変であるが、焦点距離X2がある値をとるとき丁度、撮像デバイス32の撮像面でピントが合っている場合を考える。このときレンズの屈折率を考慮しないとすると、ピンホールカメラの場合と同様に、以下の式が成り立つ。
【0020】
[数1]
X1:Y1=X2:Y2…(1)
【0021】
上記式(1)より、求めたい距離X1は以下の式(2)により導出できる。
【0022】
[数2]
X1=(Y1/Y2)* X2…(2)
【0023】
撮像デバイス32を固定画素型の撮像デバイス(たとえばCCDまたはCMOSセンサ)とした場合、長さ「Y2」は画素ピッチの倍数で表現される離散的数値であることから、ある程度の誤差が生じる。上記(2)式の係数(Y1/Y2)の誤差を小さくするには、撮像デバイス32の有効画素領域のサイズに対してできるだけ大きく円状パターンを撮像するように、マイクロコンピュータ35の制御により自動ピント合わせの機能を用いて焦点距離X2を最適化することが望ましい。この焦点距離X2と、係数(Y1/Y2)との対応関係は、その都度計算により求めてもよいが、予めメモリ34内(あるいはマイクロコンピュータ35のメモリ領域など別のメモリ内)にテーブルとして保持しておくことが迅速な測距のために望ましい。レンズの屈折率が無視できない場合、このときのテーブルにレンズ補正を加味したものとすることがさらに望ましい。また、レンズが着脱式の場合、レンズごとにテーブルを備えることが望ましい。
いずれにしても長さ「Y1」と「Y2」の関係は基本的に線形であり、撮像デバイス32とマイクロコンピュータ35を含めて電子機器の設計が行われることから、上述のように撮像デバイス32に応じたテーブルをマイクロコンピュータ35などのメモリ領域に予め格納しておくことによって正確な測定のための係数(Y1/Y2)を用意することが可能である。
以上より、撮像デバイス32上の距離Y2を求めると、上記式(2)にしたがって、リモコン4とカメラ部3との距離X1が自動的に算出される。
【0024】
本実施の形態によれば、測距時に1つの赤外線LED41を回転移動させて測距のための円状パターンを撮像デバイス32が取得することから、当該円状パターンにおける発光点の輝度が均一となる。
より詳細には、撮像デバイス32により取得された円状パターンにおいて発光点(ピーク光量部分)の軌跡を画像処理部33がエッジ検出(たとえば輪郭抽出処理による二値化)により求める。このとき発光点の軌跡がある幅を持つ場合には、ある閾値レベルより高い点を検出し、たとえばその幅中心を発光点と認定する。このとき閾値レベルを発光点の輝度に近づけるほど、閾値レベルより高い領域の幅が小さくなり、より精度が高い検出が可能である。ところが、背景技術のようにライトガイドを用いると輝度レベルが極めて低くなり、また複数のLEDを円状に配置すると輝度のばらつきが大きくなり、その何れの場合にも閾値レベルを下げざるを得ないことから、検出精度が低下する。本実施の形態においては、1つ(後述するように二つでも可)のLEDを回転移動させることから、このような輝度の低下あるいはばらつきがなく、撮像画像における発光点を非常に高い精度で検出でき、長さ「Y2」の検出精度が向上する。その結果として、距離X1の測定精度が背景技術より高くなる。
【0025】
なお、赤外線LED41を回転する間に発光点の位置が変化する場合は、複数回の測定により平均化する、あるいは、カメラ部3に手振れ補正機能を有する場合、その機能を利用することによって、発光点の時間変化による誤差は十分抑圧することが可能である。また、赤外線LEDを対極に2つ対で設けると、その回転軌跡が対称に変化することから、発光点の時間変化を画像処理により容易に補正することができる。
【0026】
[第2の実施の形態]
図3における距離X1の測定可能な範囲は、第1の実施の形態において記述したように焦点距離X2の調整によってある程度変化させることができる。しかし、測定誤差を抑圧する意味で、撮像デバイス32の有効画素領域にできるだけ大きく円状パターンを入射させたい要請があり、このため焦点距離X2の調整による測定範囲の変化には限界がある。
【0027】
そこで、本実施の形態においては、測定範囲の範囲を大きくすることを目的として、リモコン側に回転半径が異なる2つの赤外線LEDを設けるようにしている。なお、電子機器1の全体構成(図1)およびカメラ部3の基本構成(図2)は、第1の実施の形態と共通する。
【0028】
図4に、本実施の形態におけるリモコンの赤外線LED対と、その駆動部の構成例を示す。
図4に示すように、駆動部を構成するモータ43は、その回転軸45に連結部44Aと44Bが固定され、連結部44Aの先端部に赤外線LED41Aが固定され、連結部44Bの先端部に赤外線LED41Bが固定されている。連結部44Aと44Bの長さに応じて、赤外線LED41Aと41Bの回転半径が異なっている。本例では、赤外線LED41Aの回転半径が赤外線LED41Bの2倍となっている。他の構成は、第1の実施の形態と同じであることから、ここでの説明を省略する。
【0029】
つぎに、本実施の形態における測距方法について記述する。
図5に、撮像デバイスで取得された円状パターンの像を模式的に示す。
図4に示すような駆動部により赤外線LED41Aと41Bを同時に回転させると、赤外線LEDの回転面(回転側面)と撮像デバイス32の撮像面とが平行な場合、図5において破線で示すように、撮像デバイス32(図2)により取得される円状パターンは半径が2:1の二重の円、すなわち外側の真円36Aおよび内側の真円36Bとなる。一方、回転側面が撮像面に対して斜めに傾いている場合、赤外線LED対の回転軌跡は、図5において実線で示すように二重の楕円、すなわち外側の楕円37Aおよび内側の楕円37Bとして撮像されることになる。ただし、二重の楕円の長径は、傾きがない真円の直径と一致することから、この長径を求めることによって図3に示す長さ「Y2」を求めることができる。
【0030】
撮像された楕円から距離を演算する場合、1つの方法として、図2に示す画像処理部33が、メモリ34から楕円37Aと37Bのパターン画像を読み出して、最初に、各楕円37A,37Bに内接するようガイド円(真円36A,36B)をメモリ空間で創出する。この二重のガイド円の直径を各楕円37A,37Bの長径として検出する。検出した楕円37A,37Bの長径(またはその半分の半径)が、図3における長さ「Y2」に相当することから、第1の実施の形態と同様にしてリモコン4とカメラ部3との距離X1を求めることができる。このとき、外側の楕円37Aが撮像デバイス32の有効画素領域をはみ出した場合でも内側の楕円37Bの長径により距離X1の測定が可能であり、両方の楕円37A,37Bが有効画素領域に入る場合は、より誤差が少ない外側の楕円37Aの長径により距離X1の測定が可能である。このように、本実施の形態においては、測定誤差の向上と測定範囲の拡大の両立が可能である。以下、このことを具体例により定量的に説明する。
【0031】
図6は、測定範囲の説明のための図であり、図7は、撮像デバイスで認識可能な最小パターン例を示す図である。ここでは発光側面と撮像面とは平行であると仮定する。
図6において、焦点距離Xfが一定値に固定され、発光部側の垂直方向の距離(以下、発光径という)Ytは赤外線LEDの回転移動の直径に対応する。また、撮像側の垂直方向の距離Yfは撮像デバイスの必要な有効画素領域の一辺の長さ(以下、「必要な撮像領域長」という)に対応する。この必要な撮像領域長Yfと、焦点位置から必要な撮像領域長Yfを見た角度(以下、単に画角という)θは、発光径Ytと、焦点位置から発光部までの距離(以下、測定距離という)Xtとによって変化する。つまり、発光径Ytが比較的小さい場合は、画角θおよび必要な撮像領域長Yfも相対的に小さく、発光径Ytが比較的大きいと、画角θおよび必要な撮像領域長Yfも相対的に大きい。同様に、測定距離Xtが比較的短い場合は、画角θおよび必要な撮像領域長Yfも相対的に小さく、測定距離Xtが比較的長いと、画角θおよび必要な撮像領域長Yfも相対的に大きい。図6においては、一例として、焦点距離Xfが10mm、画角θが30°、撮像領域長Yfに対応して撮像デバイスの必要な画面寸法Ysが5.36mmの場合を示している。
【0032】
図6において、必要な撮像領域長Yfは円状パターンを認識可能な図7に示す最小寸法Ysmin、たとえば3画素ピッチにより最小値が既定され、また、その最大値は用いる撮像デバイスの有効画素領域のサイズにより制限される。
ここで、発光径Ytが20mmの場合に測定距離Xtが=37.32mm、発光径Ytが40mmの場合に測定距離Xtが74.64mmとなる。したがって、近距離での測定では小径の円、すなわち図5における内側の真円36Bまたは楕円37Bを用いる方が、外側の真円36Aまたは楕円37Aを用いる場合より望ましい。
また撮像素子の画素ピッチを0.01mmとした場合、円として認識できるパターンの最小画素パターンを図7のように定義すると、円を認識するのに3画素四方を要することになる。このため、直径20mmの円を認識できる最大の測定距離Xtは3573mm、直径40mmの円を認識できる最大の測定距離Xtは7146mmとなる。したがって、遠距離での測定では大径の円、すなわち図5における外側の真円36Aまたは楕円37Aを用いる方が、内側の真円36Bまたは楕円37Bを用いる場合よりも望ましいことが分かる。
本実施の形態においては、遠距離を測定するか近距離を測定するかに応じて用いる円を選択し、結果として、範囲が広く高精度な距離の測定が可能である。
【0033】
なお、ガイド円を用いない方法によって長径を検出することが可能である。
この方法において、第1の実施の形態と同様に画像処理部33における輪郭抽出処理において二値化を行い、輪郭を抽出する。そして、抽出された輪郭データを(x,y)座標に変換し、輪郭上の2点間の距離を算出し、最大値となる2点の座標を求めると、長径の両端が算出される。抽出された輪郭データは二重の円または楕円になっているはずなので、まずは外側の円または楕円を用いて測定距離Xtを算出し、その後同様にして、内側の円または楕円を用いて測定距離Xtを算出する。このとき一方の測定距離Xtしか得られないときは、その測定距離Xtを採用し、両方得られるときに外側の円または楕円を用いた測定距離Xtを採用してもよいし、両方の平均値を求めてもよい。これは、外側の円または楕円を用いた測定距離Xtを採用する方が、測定誤差が小さい意味で好ましく、両方の平均値を求める場合は、どちらかが誤って測定されている場合に、その誤差の影響を小さくして測定値の信頼性をより高める点で好ましいからである。
【0034】
ガイド円を創出する方法は、上記輪郭データを(x,y)座標に変換する方法に比べ画像処理負担が大きいが、ガイド円を創出する過程で発光側面と撮像面との傾きを求めることができる意味では望ましい方法である。
以下、リモコンの発光側面と撮像デバイスの撮像面との傾きを算出する方法を説明する。なお、図2おいて画像処理部33、メモリ34およびマイクロコンピュータ35は、本発明の「傾き測定部」の実施例を構成する。
【0035】
図8は、この傾きの算出を含む測距方法のフローチャートである。
ステップST1においてリモコン4の赤外線LED41Aおよび41B(図4参照)を外部からの操作により発光させ、ステップST2において、この赤外線LEDの回転移動の像を、赤外線透過フィルタ31を通して撮像デバイス32(たとえばCCD)によって撮像(露光)する。撮像された二重の円状パターンの像をデジタルデータに変換してメモリ34に一旦格納する。
【0036】
つぎのステップST3〜ST8において、画像処理部33およびマイクロコンピュータ35がメモリ34内からデータを適宜読み出して画像処理を行い、また必要な演算を実行する。
ステップST3において、撮像された二重の円状パターンの像を画像処理部33がメモリ34から読み出して輪郭抽出処理を実行する。
ステップST4においてマイクロコンピュータ35および画像処理部33は、予め設定されている閾値を用い、あるいは、当該閾値を適宜変更しながら輪郭データから長径を算出する。
ステップST5において画像処理部33は、長径の両端点の中点を中心として、長径の半分を半径とする円をガイド円として描画する。この時、抽出された輪郭データは、ガイド円に内接しているはずである。
ガイド円の輪郭データを(x,y)座標に変換し、ステップST6において、ガイド円のデータと楕円の輪郭データとを(x,y)座標で比較する。
この比較の結果、データ同士が一致する(ステップST6の判断が「Yes」の)場合、撮像された円は真円であることから角度は0度(平行)として、つぎのステップST8において距離と角度を確定する。
【0037】
一方、データ同士が一致しない(ステップST6の判断が「No」の)場合、長径を軸としてガイド円をメモリ空間上で回転させた際にできる楕円を再描画する(ステップST5)。この回転処理では、回転角のパラメータを所定の単位で微小変化させて(ステップST7)、再描画(ステップST5)し、ステップST6において円の一致判断を行う。このパラメータ変化のステップST7、再描画のステップST5および一致判断のステップST6を、ガイド円を回転させた楕円と撮像による楕円が一致すると判断されるまで必要な回数繰り返す。ステップST7における回転角のパラメータ変化の累積値は、たとえばマイクロコンピュータ35が、その内部のレジスタなどに保持内容を更新可能に保持している。
マイクロコンピュータ35は、円の一致を判断したときの回転角を、マイコン4の発光側面とカメラ部3の撮像面との角度としてステップST8において確定し、距離とともに出力する。
以上により、リモコンの発光側面のカメラ部3に対する傾きを算出することが可能となる。
【0038】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態における利益に加え、以下の利益が得られる。
二重円を利用して距離測定を行うことから、近距離では小径の円、遠距離では大径の円を利用するなどの選択が可能で、結果として、範囲が広く精度が高い距離測定ができる。また、第1の実施の形態において同じ回転径のLED対を用いた場合と同様に、LEDの回転により時間内にリモコンの軸が変化した場合でも、対称に変化する2つの円の軌跡から正確に発光点(ピーク光量部分)パターンの補正が行える。また、2つの円の一方に基づく距離の測定値の信頼性が低い場合でも、その影響を全体として低減することが可能である。
【0039】
また、二重円に限らず第1の実施の形態に示す一重の円の場合でも可能であるが、本実施の形態で述べた方法などによってリモコンの発光側面の撮像面に対する傾きを算出することができる。このことは、つぎのような広範な応用が可能である。
第1の応用としては、この傾きに応じてユーザを視聴最適位置に誘導することができる。この場合、たとえば、楕円の長径の(x,y)座標上の傾きの大きさおよび極性と、ガイド円を回転処理し一致判断したときの傾きとから報知手段によって、視野角や音響特性が好ましい範囲内にユーザが移動するにはどの向きに移動すればよいかを知らせることができる。
第2の応用としては、リモコンを傾けるだけで、パーソナルコンピュータのマウスや十字キーのようにカーソル、画面間、あるいは、メニュー間の移動が可能になる。たとえば、複数の画面を表示している場合に、拡大表示したい画面に対応した向きにリモコンを傾けると、その画面の表示領域が拡大するようにできる。このとき距離情報に応じてメニュー項目を増減させ、文字などの倍率を自動的に変える処理が可能である。つまり、リモコンから表示装置までの距離が遠い場合はメニュー項目を減らし、文字を拡大し、逆に近距離の場合はメニュー項目を増やして文字を縮小するなどの操作を自動で実行できる。さらに、通常十字キーなどで行うメニュー項目間の移動を、リモコンを傾けるだけで行うことができる。この場合、ユーザはリモコンの傾き具体を操作して所望の項目を選択可能にハイライトさせ、後は、一定時間その状態を保持するか、決定ボタンを押すだけで容易にメニュー項目の選択が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、一方に撮像デバイスを含み、他方に発光デバイスを含む2つの機器の距離測定に広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1および第2の実施の形態におけるテレビ会議システムのモニタ機器の斜視図である。
【図2】第1の実施の形態においてモニタ機器の、とくにカメラ部のブロック図を示す図である。
【図3】距離の測定を説明するための図である。
【図4】第2の実施の形態においてリモコンの赤外線LED対と、その駆動部の構成例を示す図である。
【図5】第2の実施の形態において撮像デバイスで取得された円状パターンの像を模式的に示す図である。
【図6】第2の実施の形態において測定範囲の説明のための図である。
【図7】第2の実施の形態において撮像デバイスで認識可能なパターン例を示す図である。
【図8】第2の実施の形態においてリモコンとカメラ部の傾きの算出を含む測距方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
1…モニタ機器、2…表示装置、3…カメラ部、4…リモコン、31…赤外線透過フィルタ、32…撮像デバイス、33…画像処理部、34…メモリ、35…マイクロコンピュータ、36A,36B…円状パターンの真円(またはガイド円)、37A,37B…円状パターンの楕円、41,41A,41B…赤外線LED、42…駆動部、43…モータ、44A,44B…連結部、45…回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像デバイスを含む電子機器本体と、電子機器本体を制御する制御端末とを有する電子機器であって、
前記制御端末は、発光デバイスと、前記発光デバイスを外部からの操作に応じて円を描くように回転移動する駆動部とを有し、
前記電子機器本体は、前記撮像デバイスの撮影像を画像処理することによって、撮影像内で前記発光デバイスの回転移動によるピーク光量部分の軌跡が描く円状パターンの最大径を検出し、最大径に基づいて当該電子機器本体と前記制御端末との距離を測定する測距部を有する
電子機器。
【請求項2】
前記制御端末において前記発光デバイスに前記回転移動の駆動力を付与する前記駆動部に対し、その回転軸を中心に当該回転軸からの距離が同じ対称な位置に第1および第2の発光デバイスが固定されている
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記制御端末において前記発光デバイスに前記回転移動の駆動力を付与する前記駆動部の回転軸に、回転軸からの距離が一定な第1の発光デバイスと、回転軸からの距離が一定で、かつ、前記第1の発光デバイスの前記距離より短い第2の発光デバイスとが固定されている
請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記電子機器本体は、前記撮像デバイスの撮像面に光が入射する側に赤外線フィルタを備える
請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
前記発光デバイスが発光時に描く円を含む発光側面が前記撮像デバイスの撮像面に対し傾いている場合に、前記撮影像内の楕円パターンを真円に戻す画像処理時のパラメータ変化量から前記発光側面と前記撮像面との傾きを測定する傾き測定部を
さらに有する請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】
撮像デバイスを含む第1の機器と、発光デバイスを有する第2の機器との距離を測定する電子機器の測距方法であって、
前記第2の機器において前記発光デバイスを、円を描くように回転移動させ、
前記第1の機器において、前記撮像デバイスの撮影像を画像処理することによって、撮影像内で前記発光デバイスの回転移動によるピーク光量部分の軌跡が描く円状パターンの最大径を検出し、最大径に基づいて当該第1の機器と前記第2の機器との距離を測定する
電子機器の測距方法。
【請求項7】
前記第2の機器において、前記回転移動の軸を中心に対称に2つの前記発光デバイスを同時に回転させ、
2つの発光デバイスの軌跡に基づいて前記円状パターンの形状を補正し、補正後の円状パターンから前記最大径を検出する
請求項6に記載の電子機器の測距方法。
【請求項8】
前記第2の機器において、前記回転移動の軸を中心に当該軸からの距離が異なる2つの前記発光デバイスを同時に回転させ、
2つの発光デバイスの軌跡に基づいて二重の円状パターンの形状をそれぞれ補正し、補正後の二重の円状パターンの各々において最大径を検出する
請求項6に記載の電子機器の測距方法。
【請求項9】
前記発光デバイスが発光時に描く円を含む発光側面が前記撮像デバイスの撮像面に対し傾いている場合に、前記撮影像内の楕円パターンを真円に戻す画像処理時のパラメータ変化量から前記発光側面と前記撮像面との傾きを測定する
請求項6に記載の電子機器の測距方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−153807(P2006−153807A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−348624(P2004−348624)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】