説明

電子機器および監視システム

【課題】 電子機器において使用者等によって指示された処理を効率よく実行できるようにしつつ、電子機器が正常に稼動しているか否かも通信回線を介して正確に監視できるようにすること。
【解決手段】 複合機10は、定期通報の際、自己診断処理と保守情報取得処理よりも優先順位の高い処理が実行中または実行待ちであれば、自己診断処理と保守情報取得処理の実行を延期し、延期通知のみを送信する。また、監視サーバ50は、延期通知を受信した場合であっても予め定められた待受期間内で受信できていれば、複合機10からの定期通報は途絶えていないので複合機10は正常に稼動していると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器が正常に稼動しているか否かを通信回線を介して監視する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、監視センタに対し、客先で使用されている機器から定期的に接続を行わせるようにして、監視センタでは定期接続の有無により客先で使用されている機器が正常に稼動しているか否かを監視することが記載されている。また、特許文献2には、客先で使用されている機器1に自己診断処理を実行させて、その結果得られるメンテナンスに関連する情報が顧客機器情報収集・管理装置11を介して遠隔定期診断装置12へ転送され、遠隔定期診断装置12では、このようにして転送されてきたメンテナンスに関連する情報を用いて機器1の定期診断を行うことが記載されている。また、特許文献3には、定期診断処理を実行する場合に制御部の負荷状態を確認し、高負荷の場合は主処理に影響を及ぼさない負荷状態になるのを待って定期診断処理を実行させることが記載されている。
【特許文献1】特開2001−325123号公報
【特許文献2】特開2003−022125号公報
【特許文献3】特開平10−290289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載された技術によれば、客先で使用されている機器が正常に稼動しているか否かを通信回線を介して監視することができる。また、特許文献2に記載された技術を利用して、客先で使用されている機器に、自己診断処理の実行と、その結果得られるメンテナンスに関連する情報の通報とを定期的に行わせるようにすることが考えられる。しかしながら、このような場合、客先で使用されている機器では、定期的に自己診断処理を行わなければならないから、例えば、複写機における複写処理やプリンタにおける印刷処理等、使用者によって指示された処理の実行期間と、自己診断処理の実行期間とが重なってしまうと、使用者によって指示された処理の実行に要する時間が長引いてしまう。一方で、このような事態を回避するため、例えば、特許文献3に記載された技術を利用して、客先で使用されている機器において自己診断処理を実行する場合、制御部の負荷状態を確認し、高負荷の場合は複写処理や印刷処理等に影響を及ぼさない負荷状態になるのを待って自己診断処理を実行させることが考えられるが、この場合は、監視装置に対する定期通報が途絶えてしまい、監視装置では客先で使用されている機器に故障や異常が発生したとして警告を出力してしまう場合がある。
【0004】
本発明は、以上説明した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電子機器において使用者等によって指示された処理を効率よく実行できるようにしつつ、電子機器が正常に稼動しているか否かも通信回線を介して正確に監視できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、通信機能を有する電子機器において、予め定められた処理を実行し、定期通報する情報を生成する生成手段と、前記生成手段により生成された情報を定期通報先へ送信する送信手段と、前記生成手段により実行される処理よりも優先順位の高い処理が当該電子機器において実行中または実行待ちであるか否かを定期的に判別する判別手段と、前記判別手段により前記優先順位の高い処理が実行中または実行待ちでないと判別された場合は、前記生成手段による情報の生成と、前記送信手段による情報の送信とを行わせる一方、前記判別手段により前記優先順位の高い処理が実行中または実行待ちであると判別された場合は、前記生成手段による処理の実行を延期させ、定期通報する情報の代わりに前記情報の送信が延期されたことを前記送信手段により送信させる制御手段とを具備することを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、電子機器は、定期通報の際、定期通報する情報を生成する処理よりも優先順位の高い処理が実行中または実行待ちであれば、定期通報する情報を生成する処理の実行を延期し、定期通報する情報の送信が延期されたことを示す情報を送信する。
【0007】
また、本発明は、通信機能を有する電子機器において、予め定められた処理を実行し、定期通報する情報を生成する生成手段と、前記生成手段により生成された情報を定期通報先へ送信する送信手段と、当該電子機器において実行されている処理の負荷を定期的に算出する算出手段と、前記算出手段により算出された負荷が予め定められた閾値未満の場合は、前記生成手段による情報の生成と、前記送信手段による情報の送信とを行わせる一方、前記負荷が前記閾値以上の場合は、前記生成手段による処理の実行を延期させ、定期通報する情報の代わりに前記情報の送信が延期されたことを前記送信手段により送信させる制御手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、電子機器は、定期通報の際に、当該電子機器において実行されている処理の負荷が予め定められた閾値以上であれば、定期通報する情報を生成する処理の実行を延期し、定期通報する情報の送信が延期されたことを示す情報を送信する。
【0009】
また、本発明は、通信機能を有する電子機器において、処理要求を受信する受信手段と、前記受信手段によって受信された処理要求により指定される処理を実行する実行手段と、前記実行手段により実行された処理の結果を前記処理要求の送信元へ送信する送信手段と、前記受信手段により処理要求が受信されると、前記実行手段により実行される処理よりも優先順位の高い処理が当該電子機器において実行中または実行待ちであるか否かを判別する判別手段と、前記判別手段により前記優先順位の高い処理が実行中または実行待ちでないと判別された場合は、前記実行手段による処理の実行と、前記送信手段による処理結果の送信とを行わせる一方、前記判別手段により前記優先順位の高い処理が実行中または実行待ちであると判別された場合は、前記実行手段による処理の実行を延期させ、処理結果の代わりに前記処理の実行が延期されたことを前記送信手段により送信させる制御手段とを具備することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、電子機器は、受信した処理要求により指定される処理よりも優先順位の高い処理が実行中または実行待ちであれば、処理要求により指定される処理の実行を延期し、処理を延期したことを処理要求の送信元へ送信する。
【0011】
また、本発明は、通信機能を有する電子機器において、処理要求を受信する受信手段と、前記受信手段によって受信された処理要求により指定される処理を実行する実行手段と、前記実行手段により実行された処理の結果を前記処理要求の送信元へ送信する送信手段と、前記受信手段により処理要求が受信されると、当該電子機器において実行されている処理の負荷を算出する算出手段と、前記算出手段により算出された負荷が予め定められた閾値未満の場合は、前記実行手段による処理の実行と、前記送信手段による処理結果の送信とを行わせる一方、前記負荷が前記閾値以上の場合は、前記実行手段による処理の実行を延期させ、処理結果の代りに前記処理の実行が延期されたことを前記送信手段により送信させる制御手段とを具備することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、電子機器は、当該電子機器において実行されている処理の負荷が予め定められた閾値以上であれば、受信した処理要求により指定される処理の実行を延期し、処理を延期したことを処理要求の送信元へ送信する。
【0013】
また、本発明は、通信機能を有する電子機器と、監視装置とを具備する監視システムにおいて、前記電子機器は、予め定められた処理を実行し、定期通報する情報を生成する生成手段と、前記生成手段により生成された情報を前記監視装置へ送信する送信手段と、前記生成手段により実行される処理よりも優先順位の高い処理が当該電子機器において実行中または実行待ちであるか否かを定期的に判別する判別手段と、前記判別手段により前記優先順位の高い処理が実行中または実行待ちでないと判別された場合は、前記生成手段による情報の生成と、前記送信手段による情報の送信とを行わせる一方、前記判別手段により前記優先順位の高い処理が実行中または実行待ちであると判別された場合は、前記生成手段による処理の実行を延期させ、定期通報する情報の代わりに前記情報の送信が延期されたことを前記送信手段により送信させる制御手段とを具備し、前記監視装置は、前記電子機器からの定期通報が途絶えたか否かに基づいて、前記電子機器が正常に稼動しているか否かを判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果を出力する出力手段とを具備することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、通信機能を有する電子機器と、監視装置とを具備する監視システムにおいて、前記電子機器は、予め定められた処理を実行し、定期通報する情報を生成する生成手段と、前記生成手段により生成された情報を前記監視装置へ送信する送信手段と、当該電子機器において実行されている処理の負荷を定期的に算出する算出手段と、前記算出手段により算出された負荷が予め定められた閾値未満の場合は、前記生成手段による情報の生成と、前記送信手段による情報の送信とを行わせる一方、前記負荷が前記閾値以上の場合は、前記生成手段による処理の実行を延期させ、定期通報する情報の代わりに前記情報の送信が延期されたことを前記送信手段により送信させる制御手段とを具備し、前記監視装置は、前記電子機器からの定期通報が途絶えたか否かに基づいて、前記電子機器が正常に稼動しているか否かを判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果を出力する出力手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電子機器において使用者等によって指示された処理を効率よく実行しつつ、電子機器が正常に稼動しているか否かも通信回線を介して正確に監視できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、監視システム1の構成を例示する図である。複合機10は、例えば、プリンタ、ファクシミリ、コピー、スキャナ等の機能を有する画像形成装置である。この複合機10は、社内LAN20およびインターネット30を介して監視サーバ50に接続される。また、複合機10は、モデム10aを備え、公衆電話交換回線網(以下「PSTN」と記載する)40を介して監視サーバ50と通信を行うことができる。これに加え、複合機10は、電子メールを送受信する機能を有しており、監視サーバ50との間で電子メールを送受信することもできる。また、複合機10は、例えば、24時間毎や1週間毎等、予め定められた期間毎に監視サーバ50に対して定期通報を行う。
【0017】
この複合機10においては、例えば、受信した印刷ジョブに基づく印刷処理や、原稿の複写処理、ファクシミリデータの送受信処理、原稿のスキャン処理等が実行される。これに加え、この複合機10においては、故障や異常の有無を診断する自己診断処理、用紙別複写枚数や、トナーの残量、紙詰まりが発生した回数や場所等、メンテナンスの要否を判定する際に利用されるメンテナンス関連情報を取得する処理(以下「保守情報取得処理」と記載する)が実行される。これらの各処理には、予め処理の優先順位が割り当てられており、例えば、ファクシミリデータの送受信処理と複写処理に対しては優先順位「1」が、印刷処理とスキャン処理に対しては優先順位「2」が、自己診断処理と保守情報取得処理に対しては優先順位「3」が割り当てられている。なお、本明細書においては、数値が小さいほど優先順位が高いものとする。
【0018】
次に、監視サーバ50は、インターネット30やPSTN40等の通信回線を介して複合機10が正常に稼動しているか否かを監視する装置である。例えば、監視サーバ50は、複合機10からの定期通報が途絶えた場合や、定期通報された自己診断処理の診断結果が故障や異常の発生を示している場合に、複合機10に故障や異常が発生したと判定する。この場合、監視サーバ50は、故障や異常についての詳細や、複合機10の元へ保守要員を派遣するよう指示するメッセージを出力する。また、監視サーバ50は、制御ソフトウェアのダウンロード要求や制御パラメータの変更要求等、複合機10に対する処理要求を送信した後、予め定められた制限時間内に複合機10から処理応答が受信できなかった場合に、複合機10に故障や異常が発生したと判定する。
【0019】
図2は、複合機10と監視サーバ50の動作について例示する図である。
同図に示すように複合機10では、定期通報のタイミングが近づくと、まず、自己診断処理と保守情報取得処理を実行する必要がある。この際、複合機10は、自己診断処理と保守情報取得処理に割り当てられている優先順位「3」よりも高い優先順位が割り当てられている処理(例えば、ファクシミリデータの送受信処理や複写処理、印刷処理等)が、複合機10において実行中または実行待ちの状態にあるか否かを調べる。なお、実行待ちの状態とは、例えば、複数の印刷ジョブが受信された場合に、そのうちの幾つかが未だ印刷されずに複合機10のメモリに残っている状態等を指す。
【0020】
ここで、図2に示す定期通報1,2は、自己診断処理や保守情報取得処理よりも優先順位の高い処理が複合機10において実行中でなく、かつ実行待ちの状態でもない場合を示している。このような場合、複合機10は、まず、自己診断処理を実行して故障や異常の有無を診断し、診断結果を取得する。また、複合機10は、保守情報取得処理を実行し、用紙別複写枚数や、トナーの残量、紙詰まりが発生した回数や場所等のメンテナンス関連情報をメモリから読み出す。そして、複合機10は、自己診断処理の診断結果やメンテナンス関連情報を含んだ定期通報用の情報を生成し、これを監視サーバ50へ送信する。監視サーバ50は、複合機10から定期通報された情報を予め定められた待受期間内で受信できたか否かを監視しており、待受期間内で受信できた場合は、自己診断処理の診断結果が故障や異常の発生を示していない限り、複合機10は正常に稼動していると判定し、次の定期通報を受けるための待受期間を設定する。
【0021】
次に図2に示す定期通報3は、定期通報のタイミングが近づき、自己診断処理と保守情報取得処理を実行しようとした場合に、例えば、ファクシミリデータの送受信処理等の、自己診断処理や保守情報取得処理よりも優先順位の高い処理が実行中または実行待ちの状態であった場合を示している。この場合、複合機10は、自己診断処理と保守情報取得処理の実行を延期し、自己診断処理の診断結果とメンテナンス関連情報の送信を次回に延期(スキップ)したことを示す延期通知を監視サーバ50へ送信する。なお、延期通知のデータ量は、自己診断処理の診断結果とメンテナンス関連情報に比べて、データ量が非常に少なく、生成や送信に必要となる処理の負荷も僅かで済む。
【0022】
監視サーバ50は、複合機10から延期通知を受信した場合であっても待受期間内で受信できていれば、定期通報は途絶えていないので複合機10は正常に稼動していると判定し、次の定期通報を受けるための待受期間を設定する。一方、複合機10は、延期通知を送信した後は、自己診断処理や保守情報取得処理よりも優先順位の高い処理の実行が終了するのを監視している。そして、複合機10は、自己診断処理や保守情報取得処理よりも優先順位の高い処理の実行が終了すると、延期していた自己診断処理や保守情報取得処理を実行し、自己診断処理の診断結果やメンテナンス関連情報を取得する。なお、ここで取得された情報は、次回の定期通報時までメモリに記憶される。そして、複合機10は、定期通報4のタイミングが訪れると、メモリに記憶しておいた前回分の情報と、今回分の情報を監視サーバ50へ送信する。
【0023】
なお、監視サーバ50は、予め定められた待受期間内で複合機10から何らかの信号を受信できず、複合機10からの定期通報が途絶えたと判定した場合は、複合機10に故障や異常が発生したと判定し、その詳細や、複合機10の元へ保守要員を派遣するよう指示するメッセージを出力する。このようなメッセージは、例えば、監視サーバ50に接続されている図示を省略した表示装置やプリンタから出力されてもよいし、複合機10の管理者や、複合機10のメンテナンスを担当する保守要員に対して電子メール等を用いて通知されてもよい。
【0024】
また、複合機10は、例えば、ネットワークインターフェースの故障や、社内LAN20における障害の発生等で、監視サーバ50に対して定期通報等を行っても監視サーバ50から応答がなく、監視サーバ50との通信ができなくなったことを検出した場合は、監視サーバ50との通信を、PSTN40を介した通信や、電子メールによる通信に切り換える。例えば、監視サーバ50に対して電子メールを用いて定期通報を行う場合は、自己診断処理の診断結果やメンテナンス関連情報を添付ファイルとして電子メールに付与し、監視サーバ50へ送信する。
【0025】
次に、図3は、複合機10からの定期通報に対し、監視サーバ50が制御ソフトウェアのダウンロード要求や制御パラメータの変更要求等の複合機10に対する処理要求を返信した場合について示している。同図に示すように、監視サーバ50は、複合機10に対して処理要求を送信すると、この処理要求に対する複合機10からの処理応答の待受制限期間を設定する。一方、複合機10は、監視サーバ50から処理要求を受信すると、この処理要求によって指定される処理を実行することとなるが、この際、まず、複合機10は、処理要求によって指定された処理に割り当てられている優先順位を特定する。例えば、処理要求によって指定された処理が制御ソフトウェアのダウンロード処理であり、この処理に対して優先順位「4」が割り当てられていた場合、複合機10は、「4」よりも高い優先順位が割り当てられている処理が、複合機10において実行中または実行待ちの状態にあるか否かを調べる。
【0026】
ここで、図3に示す処理1の場合は、優先順位が「4」より高い処理(例えば、複写処理や印刷処理、自己診断処理等)が複合機10において実行中でなく、かつ実行待ちの状態でもない場合を示している。このような場合、複合機10は、処理要求によって指定された制御ソフトウェアのダウンロード処理を実行し、この処理1を終えると、処理1を終えたことを示す処理応答を監視サーバ50へ送信する。監視サーバ50は、複合機10からの処理応答が予め定められた待受制限期間内で受信できたか否かを監視しており、待受制限期間内で処理応答が受信できた場合は、複合機10は正常に稼動していると判定する。
【0027】
次に図3に示す処理2の場合は、複合機10が、監視サーバ50からの処理要求を受信した場合に、この処理要求によって指定される処理2よりも優先順位の高い処理が複合機10において実行中であるか、または実行待ちの状態であった場合を示している。この場合、複合機10は、処理要求によって指定される処理2の実行を延期し、処理応答の代わりに、処理要求によって指定された処理の実行を延期したことを示す延期通知を返信する。
【0028】
監視サーバ50は、複合機10から延期通知を受信した場合であっても待受制限期間内であれば、複合機10からの応答があったため複合機10は正常に稼動していると判定し、次の待受制限期間を設定する。一方、複合機10は、延期通知を監視サーバ50へ送信した後、処理要求によって指定される処理よりも優先順位の高い処理の実行が終了するのを監視している。複合機10は、処理要求によって指定された処理よりも優先順位の高い処理の実行が終了すると、今まで延期していた、処理要求によって指定される処理2を実行する。そして、複合機10は、処理2を終えると、処理2が終了したことを示す処理応答を監視サーバ50へ送信する。
【0029】
なお、図3の場合、監視サーバ50は、予め定められた待受制限期間内で複合機10から処理応答や延期通知が受信できなかった場合に、複合機10に故障や異常が発生したと判定し、その詳細や、複合機10の元へ保守要員を派遣するよう指示するメッセージを出力する。
【0030】
以上説明したように本実施形態によれば、複合機10は、定期通報の際、自己診断処理と保守情報取得処理よりも優先順位の高い処理が実行中または実行待ちであれば、自己診断処理と保守情報取得処理の実行を延期し、延期通知のみを送信する。監視サーバ50は、延期通知を受信した場合であっても予め定められた待受期間内で受信できていれば、複合機10からの定期通報は途絶えていないので複合機10が正常に稼動していると判定する。また、本実施形態によれば、複合機10は、監視サーバ50から処理要求を受信した際に、この処理要求により指定される処理よりも優先順位の高い処理が実行中または実行待ちであれば、処理要求により指定される処理の実行を延期し、処理応答の代わりに延期通知のみを監視サーバ50へ送信する。監視サーバ50は、延期通知を受信した場合であっても予め定められた待受制限期間内で受信できていれば、複合機10からの応答があったため複合機10は正常に稼動していると判定する。
【0031】
よって、複合機10において、例えば、複写処理の実行期間と、自己診断処理や保守情報取得処理の実行期間とが重なってしまったとしても、複写処理の実行が優先され、自己診断処理や保守情報取得処理の実行は延期される。しかしながら、延期通知が監視サーバ50へ送信されるので、監視サーバ50に対する定期通報が途絶えてしまうことはないから、監視サーバ50によって複合機10に故障や異常が発生したと検知されてしまうこともない。
【0032】
なお、上述した実施形態において、定期通報の際に、ワークメモリの使用率や単位時間当たりのCPUの稼動率を求めて複合機10において実行されている処理の負荷を算出し、算出された負荷が予め定められた閾値未満の場合は、自己診断処理と保守情報取得処理を実行し、自己診断処理の診断結果とメンテナンス関連情報を監視サーバ50へ送信する一方、算出された負荷が予め定められた閾値以上の場合は、自己診断処理と保守情報取得処理の実行を延期し、延期通知のみを監視サーバ50へ送信する構成としてもよい。同様に、上述した実施形態において、監視サーバ50から処理要求を受信すると、ワークメモリの使用率や単位時間当たりのCPUの稼動率を求めて複合機10において実行されている処理の負荷を算出し、算出された負荷が予め定められた閾値未満の場合は、処理要求によって指定される処理を実行して処理応答を監視サーバ50へ返信する一方、算出された負荷が予め定められた閾値以上の場合は、処理要求によって指定される処理の実行を延期させ、処理応答の代わりに延期通知のみを監視サーバ50へ送信する構成としてもよい。
【0033】
また、上述した実施形態では、定期通報する情報として、自己診断処理の診断結果やメンテナンス関連情報を例示したが、定期通報する情報は、例えば、複合機10の操作ログであってもよい。この場合、複合機10では、メモリ内に記憶されている操作ログの中から監視サーバ50へ送信する特定の機能や特定のモードにおける操作ログのみを抽出する処理を行い、定期通報用の操作ログファイルを生成する。また、複合機10をリースしているような場合、定期通報する情報は、複写枚数等に応じて定まる課金情報であってもよい。この場合、複合機10では、メモリに記憶されている複写枚数等の、複合機10の使用情報を取得したり、課金料金を計算する処理を行い、定期通報用の課金ファイルを生成する。
【0034】
また、複合機10には予備電源(バッテリー)が備わっており、ユーザによって主電源がOFFにされても、一定期間、監視サーバ50に対する定期通報を続けられる。また、複合機10は、ユーザによって主電源がOFFにされた場合に、主電源がOFFになったことを監視サーバ50へ通知する構成であってもよい。このような構成とすれば、主電源が切れたために定期通報が途絶えてしまった複合機10を、監視サーバ50が誤って故障や異常が発生したと判定してしまうことがない。なお、監視サーバ50の監視対象は、複合機10等の画像形成装置に限定されず、通信機能を有する電子機器であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】監視システム1の構成を例示する図である。
【図2】複合機10と監視サーバ50の動作について例示する図(その1)である。
【図3】複合機10と監視サーバ50の動作について例示する図(その2)である。
【符号の説明】
【0036】
1…監視システム、10…複合機、10a…モデム、20…社内LAN、30…インターネット、40…公衆電話交換回線網(PSTN)、50…監視サーバ、50a…モデム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信機能を有する電子機器において、
予め定められた処理を実行し、定期通報する情報を生成する生成手段と、
前記生成手段により生成された情報を定期通報先へ送信する送信手段と、
前記生成手段により実行される処理よりも優先順位の高い処理が当該電子機器において実行中または実行待ちであるか否かを定期的に判別する判別手段と、
前記判別手段により前記優先順位の高い処理が実行中または実行待ちでないと判別された場合は、前記生成手段による情報の生成と、前記送信手段による情報の送信とを行わせる一方、前記判別手段により前記優先順位の高い処理が実行中または実行待ちであると判別された場合は、前記生成手段による処理の実行を延期させ、定期通報する情報の代わりに前記情報の送信が延期されたことを前記送信手段により送信させる制御手段と
を具備することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
通信機能を有する電子機器において、
予め定められた処理を実行し、定期通報する情報を生成する生成手段と、
前記生成手段により生成された情報を定期通報先へ送信する送信手段と、
当該電子機器において実行されている処理の負荷を定期的に算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された負荷が予め定められた閾値未満の場合は、前記生成手段による情報の生成と、前記送信手段による情報の送信とを行わせる一方、前記負荷が前記閾値以上の場合は、前記生成手段による処理の実行を延期させ、定期通報する情報の代わりに前記情報の送信が延期されたことを前記送信手段により送信させる制御手段と
を具備することを特徴とする電子機器。
【請求項3】
通信機能を有する電子機器において、
処理要求を受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信された処理要求により指定される処理を実行する実行手段と、
前記実行手段により実行された処理の結果を前記処理要求の送信元へ送信する送信手段と、
前記受信手段により処理要求が受信されると、前記実行手段により実行される処理よりも優先順位の高い処理が当該電子機器において実行中または実行待ちであるか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段により前記優先順位の高い処理が実行中または実行待ちでないと判別された場合は、前記実行手段による処理の実行と、前記送信手段による処理結果の送信とを行わせる一方、前記判別手段により前記優先順位の高い処理が実行中または実行待ちであると判別された場合は、前記実行手段による処理の実行を延期させ、処理結果の代りに前記処理の実行が延期されたことを前記送信手段により送信させる制御手段と
を具備することを特徴とする電子機器。
【請求項4】
通信機能を有する電子機器において、
処理要求を受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信された処理要求により指定される処理を実行する実行手段と、
前記実行手段により実行された処理の結果を前記処理要求の送信元へ送信する送信手段と、
前記受信手段により処理要求が受信されると、当該電子機器において実行されている処理の負荷を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された負荷が予め定められた閾値未満の場合は、前記実行手段による処理の実行と、前記送信手段による処理結果の送信とを行わせる一方、前記負荷が前記閾値以上の場合は、前記実行手段による処理の実行を延期させ、処理結果の代りに前記処理の実行が延期されたことを前記送信手段により送信させる制御手段と
を具備することを特徴とする電子機器。
【請求項5】
通信機能を有する電子機器と、監視装置とを具備する監視システムにおいて、
前記電子機器は、
予め定められた処理を実行し、定期通報する情報を生成する生成手段と、
前記生成手段により生成された情報を前記監視装置へ送信する送信手段と、
前記生成手段により実行される処理よりも優先順位の高い処理が当該電子機器において実行中または実行待ちであるか否かを定期的に判別する判別手段と、
前記判別手段により前記優先順位の高い処理が実行中または実行待ちでないと判別された場合は、前記生成手段による情報の生成と、前記送信手段による情報の送信とを行わせる一方、前記判別手段により前記優先順位の高い処理が実行中または実行待ちであると判別された場合は、前記生成手段による処理の実行を延期させ、定期通報する情報の代わりに前記情報の送信が延期されたことを前記送信手段により送信させる制御手段とを具備し、
前記監視装置は、
前記電子機器からの定期通報が途絶えたか否かに基づいて、前記電子機器が正常に稼動しているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果を出力する出力手段とを具備する
ことを特徴とする監視システム。
【請求項6】
通信機能を有する電子機器と、監視装置とを具備する監視システムにおいて、
前記電子機器は、
予め定められた処理を実行し、定期通報する情報を生成する生成手段と、
前記生成手段により生成された情報を前記監視装置へ送信する送信手段と、
当該電子機器において実行されている処理の負荷を定期的に算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された負荷が予め定められた閾値未満の場合は、前記生成手段による情報の生成と、前記送信手段による情報の送信とを行わせる一方、前記負荷が前記閾値以上の場合は、前記生成手段による処理の実行を延期させ、定期通報する情報の代わりに前記情報の送信が延期されたことを前記送信手段により送信させる制御手段とを具備し、
前記監視装置は、
前記電子機器からの定期通報が途絶えたか否かに基づいて、前記電子機器が正常に稼動しているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果を出力する出力手段とを具備する
ことを特徴とする監視システム。
【請求項7】
前記電子機器と前記監視装置は、互いに共通する通信プロトコルを複数具備しており、
前記電子機器は、
前記監視装置との通信の可否を監視する監視手段と、
前記監視手段により前記監視装置との通信ができなくなったことが検出された場合に、前記監視装置との通信に用いる通信プロトコルを切り換える切換手段とを具備し、
前記送信手段は、前記切換手段により切り換えられた通信プロトコルに従って定期通報する情報を前記監視装置へ送信する
ことを特徴とする請求項5または6に記載の監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−93855(P2006−93855A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−273744(P2004−273744)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】