電子部品が搭載されたフレキシブル基板及びそれを備えた記録装置
【課題】回路素子50を搭載したフレキシブル基板23を屈曲したとき、回路素子50の外周を封止するアンダーフィル樹脂57が回路素子50の角部50aの外方のコーナ部で剥離し始めるのを防止する。
【解決手段】フレキシブル基板23におけるベース基板51には、回路素子50の搭載領域53よりも外周側に、配線パターン52を覆うソルダーレジスト膜54が形成されている。ソルダーレジスト膜54における第1の開口部55は、平面視ほぼ矩形状の回路素子50の角部50aの外方に形成されている。アンダーフィル樹脂57は回路素子50の端子部と配線パターン52との接続部を封止するとともに、第1の開口部55を通してベース基板51に密着している。アンダーフィル樹脂57とベース基板51との接着強度は、アンダーフィル樹脂57とソルダーレジスト膜54とのそれよりも大きい。
【解決手段】フレキシブル基板23におけるベース基板51には、回路素子50の搭載領域53よりも外周側に、配線パターン52を覆うソルダーレジスト膜54が形成されている。ソルダーレジスト膜54における第1の開口部55は、平面視ほぼ矩形状の回路素子50の角部50aの外方に形成されている。アンダーフィル樹脂57は回路素子50の端子部と配線パターン52との接続部を封止するとともに、第1の開口部55を通してベース基板51に密着している。アンダーフィル樹脂57とベース基板51との接着強度は、アンダーフィル樹脂57とソルダーレジスト膜54とのそれよりも大きい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が搭載されたフレキシブル基板及びそれを備えた記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品(回路素子)が搭載されたフレキシブル基板として、例えば、インクを吐出する記録ヘッドのアクチュエータを負荷として、印字データに基づく駆動信号を送る配線用のフレキシブル基板(COF)が知られている。記録ヘッド100は、特許文献1等に記載され、図9に示されているように、多数のノズルとインク供給路とを有するキャビティ部101と、各ノズル毎に対応する活性部を有するアクチュエータ102とを備えており、アクチュエータ102の上面には、外部信号源と繋ぐように、電子部品(回路素子)104が搭載されたフレキシブル基板103が接合されている。
【0003】
回路素子104とフレキシブル基板103上の配線パターン107との接続部は、通常、特許文献2に記載されているように、ポッティング材によって封止される。
【特許文献1】特開2005−219337号公報(図3参照)
【特許文献2】特開平9−323414号公報(図6参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記フレキシブル基板103と回路素子104との接続部は、一般的に図10(a)〜図11(b)に示すような構造となっている。
【0005】
即ち、フレキシブル基板103において、ポリイミド樹脂製などのフィルムからなる可撓性を有するベース基板106の片面には、複数の細幅の銅箔線からなる配線パターン107がプリント形成されている。回路素子104の搭載領域108を囲む開口を残し、配線パターン107を覆ってベース基板106の片面にソルダーレジスト膜(絶縁被覆膜)109が形成されている(図10(a)、図10(b)参照)。従って、符号109aは搭載領域108を囲むソルダーレジスト膜109の開口の縁となる。なお、ソルダーレジスト膜を構成する樹脂の粘度が低いため、ソルダーレジスト膜109の開口の縁109aは、図10(b)に示すように搭載領域108の外周方向に近づくように垂れ(流れ)て、搭載領域108に向かって厚みが薄くなる断面傾斜状に形成されている。
【0006】
ソルダーレジスト膜109の開口の縁109aから露出した配線パターン107の端部107aと、回路素子104の下面に形成された端子とは、導電材で形成されたバンプ110を介して接続される。
【0007】
その後、回路素子104の外周とソルダーレジスト膜109とアンダーフィル樹脂111が注入される。これにより、アンダーフィル樹脂111は回路素子104の端子と配線パターン107の端部107aとの接続部や、配線パターン107の端部107aを封止する。
【0008】
このように構成されたフレキシブル基板103のベース基板106は可撓性を有しているが、回路素子104は固体であるので、ベース基板106が屈曲するとき、回路素子104の外周であって、アンダーフィル樹脂111とソルダーレジスト膜109との重複箇所近傍に、屈曲時の応力が集中する。しかも、回路素子104が平面視で矩形状である場合には、互いに隣接する2辺が交差する角部(コーナ部)を囲むアンダーフィル樹脂111の外側の縁112(図11(a)参照)は、平面視で略四分の一の凸円弧状に形成され、このコーナ部112には、曲げ、ねじれなどの屈曲時の応力が集中し易い。
【0009】
一般に、アンダーフィル樹脂111は熱硬化性のエポキシ系樹脂で、ソルダーレジスト膜109はウレタン系樹脂であるため、アンダーフィル樹脂111と、ソルダーレジスト膜109との密着性が良くない。その結果、フレキシブル基板103が屈曲することによって、上記コーナ部112の外周縁から、アンダーフィル樹脂111がソルダーレジスト膜109に対して剥がれ始める。その剥がれが進行することにより、フレキシブル基板103が屈曲したとき、回路素子104の外周縁とソルダーレジスト膜(絶縁被覆膜)109の形成領域の縁109aとの間の領域で、配線パターン107が破断したり(図12参照)、バンプ110と配線パターン107の端部107aとの接続部が破断するなどの不都合が生じるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記問題を解消するものであり、フレキシブル基板におけるアンダーフィル樹脂による被覆部分の接着強度を向上させてフレキシブル基板の屈曲による、配線パターン部分や回路素子との接続部が破断することを防止できる構成を提供すること、及びそのようなフレキシブル基板を備えた記録装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明におけるフレキシブル基板は、片面に電子部品を搭載したフレキシブル基板であって、前記フレキシブル基板におけるベース基板には、前記電子部品の端子部と接続する配線パターンと、前記電子部品の搭載領域を除いて前記配線パターンを覆う絶縁被覆膜とが形成され、前記電子部品の端子部と前記配線パターンとの接続部を封止するように、少なくとも前記電子部品の外周と前記絶縁被覆膜との間に充填されるアンダーフィル樹脂が設けられ、前記絶縁被覆膜には、前記電子部品の搭載領域よりも外側に、前記ベース基板を露出させる第1の開口部が形成され、前記アンダーフィル樹脂と前記ベース基板との接着強度は、前記アンダーフィル樹脂と前記絶縁被覆膜とのそれよりも大きく、前記アンダーフィル樹脂は、前記第1の開口部を通して前記ベース基板に密着していることを特徴とするものである。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のフレキシブル基板において、前記電子部品は、平面視ほぼ矩形状に形成されており、該矩形の角部の外方に、前記第1の開口部が形成されているものである。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のフレキシブル基板において、前記絶縁被覆膜は、前記電子部品の端子部と接続する配線パターンの端部を露出させる第2の開口部を有し、その第2の開口部よりも外に前記第1の開口部を有しているものである。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載のフレキシブル基板において、前記配線パターンは、前記電子部品の矩形の辺部に対応する前記ベース基板上の位置から外方に延びるように形成され、前記第1の開口部は、前記配線パターンが配置されていない位置で、前記ベース基板を露出させるよう形成されているものである。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載のフレキシブル基板において、前記第1の開口部に囲まれる前記ベース基板の面には、前記アンダーフィル樹脂との接着強度が前記絶縁被覆膜とのそれよりも大きいダミーパターンが形成されているものである。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載のフレキシブル基板において、前記アンダーフィル樹脂の形成領域は、前記電子部品の外周縁より平面視で外方であって前記絶縁被覆膜との重複部と、前記絶縁被覆膜と重複しない前記第1の開口部とにわたって連続的に形成されているものである。
【0017】
請求項7に記載の発明は、前記電子部品が、記録動作を行う記録ヘッドにおけるアクチュエータの選択的駆動のための回路素子であり、請求項1乃至6のいずれかに記載のフレキシブル基板の配線パターンが前記アクチュエータに接続されていることを特徴とする記録装置である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、第1の開口部においては、アンダーフィル樹脂がベース基板の表面に直接密着し、且つ、ベース基板の表面に対するアンダーフィル樹脂の接着強度が大きい。従って、フレキシブル基板が屈曲したときにも、ベース基板の表面に対するアンダーフィル樹脂の剥離が開始されない。その結果、配線パターンが上記屈曲により破断したり、配線パターンの端部と電子部品との接続部が剥がれる(電気的にオープンになる)などの事故を確実に防止できるのである。また、アンダーフィル樹脂により、配線パターンの端部や、その端部と電子部品との接続部が封止されて露出しないから、外部の環境、例えばインクミストに晒されず、腐食なども発生しないという効果を奏する。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、電子部品は、平面視ほぼ矩形状に形成されており、該矩形の角部の外方に、前記第1の開口部が形成されているものである。
【0020】
従って、電子部品の4つの角部の外方である第1の開口部は、フレキシブル基板が屈曲したときの、アンダーフィル樹脂の剥離が始まり易い箇所(屈曲の応力が大きくなる箇所)であるところ、この第1の開口部において、アンダーフィル樹脂がベース基板の表面に直接密着しているので、アンダーフィル樹脂の剥離が発生し難くなるという効果を奏する。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、絶縁被覆膜は、前記電子部品の端子部と接続する配線パターンの端部を露出させる第2の開口部を有し、その第2の開口部よりも外に前記第1の開口部を有しているものである。このようにすれば、電子部品の端子部と配線パターンとが接続する位置よりも外において、アンダーフィル樹脂がベース基板の表面に密着するので、電子部品の端子部と配線パターンとの接続部分を剥離から保護できるとともにその部分を封止することが容易にできる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、配線パターンは、前記電子部品の矩形の辺部に対応する前記ベース基板上の位置から外方に延びるように形成され、前記第1の開口部は、前記配線パターンが配置されていない位置で、前記ベース基板を露出させるよう形成されているものであるので、電子部品の端子部を辺部に対応する配線パターンに接続し、電子部品の角部の外方即ち配線パターンのない位置で第1の開口部を広い面積で確保してアンダーフィル樹脂をベース基板に密着させることができ、電子部品の端子部と配線パターンとの接続部分を剥離から確実に保護することができる。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、前記第1の開口部に囲まれる前記ベース基板の面には、前記アンダーフィル樹脂との接着強度が前記絶縁被覆膜とのそれよりも大きいダミーパターンが形成されているものであるので、第1の開口部でアンダーフィル樹脂の剥離が一層発生し難くなる。従って、電子部品に対する接続用の配線パターンが上記屈曲により破断したり、配線パターンの端部と電子部品との接続部が剥がれるなどの事故を確実に防止できる効果が向上できる。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、前記アンダーフィル樹脂は、前記電子部品の外周縁より平面視で外方であって前記絶縁被覆膜との重複部と、前記絶縁被覆膜と重複しない第1の開口部とにわたって連続的に形成されているものである。従って、第1の開口部における、アンダーフィル樹脂とベース基板との接着部分で、アンダーフィル樹脂の剥離が開始しないので、この剥離させない影響を、絶縁被覆膜とアンダーフィル樹脂との重複部まで引き継がせることができ、アンダーフィル樹脂による封止性が向上するという効果を奏する。
【0025】
請求項7に記載の発明によれば、前記電子部品が、記録動作を行う記録ヘッドにおけるアクチュエータの選択的駆動のための回路素子であり、請求項1乃至6に記載のフレキシブル基板の配線パターンが前記アクチュエータに接続されていることを特徴とする記録装置であるので、記録装置の組立に際しフレキシブル基板が屈曲されることに伴うトラブルを少なくすることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は、本発明のフレキシブル基板を備える記録装置1の概略平面図である。この記録装置1は、単独のプリンタ装置に適用しても、あるいは、ファクシミリ機能やコピー機能等の複数の機能を備えた多機能装置のプリンタ機能(記録部)に適用してもよい。
【0027】
記録装置1には、図1及び図2に示すように、キャリッジ2を構成する箱状のヘッドホルダ3が備えられている。このヘッドホルダ3の下面側には、記録ヘッド4がそのノズル(図示せず)を下向きに露出させて搭載されている。キャリッジ2は、第1ガイド部材5及び第2ガイド部材6に主走査方向(Y軸方向)に往復移動可能に支持され、キャリッジモータ8に連結された駆動プーリ9と、従動プーリ10とに掛け渡されたタイミングベルト11によってY軸方向に沿って往復移動する。
【0028】
記録媒体である用紙は、キャリッジ2の下方に配置された平板状のプラテン7の上面に載った状態で、主走査方向(Y軸方向)に直交する副走査方向(X軸方向)に搬送される。
【0029】
記録装置本体12内には、交換式のインクカートリッジ13が静置されており、ここではインク色の数に応じて、ブラックインク用、シアンインク用、マゼンタインク用、イエローインク用の4つのインクカートリッジ13が備えられている。各インクカートリッジ13のインクは、可撓性を有する樹脂製のインク供給チューブ15を介して、それぞれ独立してキャリッジ2の後述するインク貯留部24に供給される。
【0030】
図1及び図2に示すように、記録装置1の装置本体12内で、用紙のY軸方向の幅(記録領域)よりも外側における一方の側(図1の右側)には、メンテナンスユニット16が設けられている。メンテナンスユニット16は、後述する記録ヘッド4の吐出機能を回復させるための回復動作(パージング)を行う。
【0031】
次に、キャリッジ2の構成について説明すると、図3に示すように、上面が開放された箱状のヘッドホルダ3の下面に記録ヘッド4が固定され、ヘッドホルダ3内にて記録ヘッド4の上側にインク貯留部24が配置され、さらにその上側であって、ヘッドホルダ3の上面を塞ぐように、電気回路基板30が配置されている。ヘッドホルダ3は合成樹脂製の射出成形品であり、4方の側壁3aと底板3bとからなり、上面開口部3cを有する。
【0032】
電気回路基板30の下面30aには、その面30aに沿って公知のプリント配線により電気回路(図示せず)が形成され、その電気回路に接続して、バイパス用のコンデンサ、抵抗器等の複数の回路素子31、第1コネクタ34、及び第2コネクタ35が設けられている。電気回路基板30自体は、ガラス繊維とエポキシ樹脂等からなる電気絶縁性材料にてほぼ剛体の板状に構成されている。電気回路基板30の上記と反対側の上面30bには、上記電気回路及び回路素子31と電気的に導通する部位が露出されていないものとする。なお、回路素子31の端子部が電気回路基板30を貫通して上面30bに露出している場合には、それを電気絶縁性材料の絶縁膜47で覆うようにしてもよい。
【0033】
そして、電気回路、回路素子31及びコネクタ34,35がヘッドホルダ3の内部になるように、つまり下面30aを下向きにした電気回路基板30が、ヘッドホルダ3の上面開口部3cを塞ぐように装着される。このとき、ヘッドホルダ3の上端面3dと電気回路基板30の外周との間には、平面視枠状のシール体33が介挿され、電気回路基板30がねじ32等の締結手段にてヘッドホルダ3に固定されている。
【0034】
記録ヘッド4は、特開2005−322850号公報に記載の公知のものと同様で、図4に示すように、下面側にノズルを開口し且つ上面側に圧力室を有する平板状のキャビティ部21と、アクチュエータ22とを積層して構成されている。アクチュエータ22の上面には、可撓性を有するフレキシブル基板23が接続され、さらに、フレキシブル基板23におけるアクチュエータ22と重なる上面に金属板からなる放熱板25が積層接合されている。
【0035】
キャビティ部21は、複数の薄いプレートを積層して形成されており、その内部にはインク供給路が形成されている。インク供給路は、インク取入口21aからインク貯留部24内のインクの供給を受け、多数ノズルにインクを分配する。
【0036】
アクチュエータ22は、図4に示すように、全てのノズルにわたる大きさを有する扁平形状で且つその扁平な方向と直交する方向に積層された複数のセラミックス層と、この複数のセラミックス層間に配置された複数の内部電極とから構成されている。
【0037】
内部電極は、多数のノズルに対応する位置毎に、セラミックス層を挟む対の電極として構成され、その一方は、アクチュエータ22の最上面に形成された個別外部電極22aに、他方はコモン外部電極22bにそれぞれ接続されている。これら個別外部電極22a、コモン外部電極22bはそれぞれフレキシブル基板23の配線パターンに接続されている。
【0038】
このように電極が設けられたアクチュエータ22では、公知のように個別外部電極とコモン外部電極との間に電圧を印加することで、内部電極に挟まれたセラミックス層の部分が伸長し対応するノズル内のインクに圧力を加え、ノズルからインク(液滴)を吐出することができる。
【0039】
ヘッドホルダ3の底板3bの下面側には、補強フレーム36を介在させて、記録ヘッド4が接着剤40にて固着されている。そのため、底板3bには、接着剤40を流し込むための貫通孔41が複数個穿設されている(図3参照)。
【0040】
なお、ヘッドホルダ3の下面には、記録ヘッド4を囲むように、記録媒体側(下側)に突出するリブ3eが設けられている。換言すれば、記録ヘッド4は、底板3bの下面側に形成された凹所の内側に配置されている。
【0041】
ヘッドホルダ3の下面(記録媒体と対向する面)側における段差(凹凸)を緩和させるために、リブ3eの内側において記録ヘッド4を囲むようにフロントフレーム37が設けられている。このフロントフレーム37は補強フレーム36の下面に接着剤にて貼着されている。
【0042】
フロントフレーム37の外周及び記録ヘッド4の外周と、ヘッドホルダ3の下縁部との間の隙間は、シリコーン樹脂等のインクにより侵されない材料のシール38により封止されている。このようにして記録ヘッド4の外周はヘッドホルダ3に外部と気密的に閉鎖するように固定されている。
【0043】
フレキシブル基板23は、記録ヘッド4の上面から、ヘッドホルダ3の底板3bに穿設されたスリット孔42に挿通され、ヘッドホルダ3内に引き回される。フレキシブル配線材23の端部の端子23b(図4参照)は、複数の配線が平行状に配置されたフレキシブル配線材46の一端に接続され、このフレキシブル配線材46の他端46aが電気回路基板30の下面30aに設けられた第1コネクタ34に接続される(図3参照)。そして、電気回路基板30は、装置本体12に静置された制御装置(図示せず)からフレキシブルな配線ケーブル39(図2参照)を介して駆動信号を受ける。そのため、配線ケーブル39はその端部の端子39aを電気回路基板30の下面30aに設けられた第2コネクタ35に接続し、ヘッドホルダ3の一側壁3aの上端面3dと電気回路基板30との間からヘッドホルダ3の外に引き出され、制御装置に接続される。
【0044】
フレキシブル基板23の中途部には、アクチュエータ22を駆動するための電子部品の一例としてのICチップ化された駆動回路素子50が実装されている(図3及び図4参照)。駆動回路素子50は、ヘッドホルダ3の上面開口部を塞ぐ電気回路基板30からシリアル伝送された駆動信号を、多数のノズルに対応したパラレル信号に変換し、セラミックス層の駆動に適した電圧として出力する。
【0045】
駆動回路素子50の熱を放熱するために、放熱体43が底板3bの上面側に図示しないピンに固定されている。駆動回路素子50を放熱体43に熱伝導可能に密着させるように底板3bとフレキシブル配線材23との間に、ゴム状の弾性部材44が配置されている。この放熱体43の熱をヘッドホルダ3の外に導いて外気に放散するため、ヘッドホルダ3の側壁3aを貫通して放熱体43の側部43bに接続する接続部45aと側壁3aの外面に平行な放散部45bとからなる放散板45が設けられている(図3参照)。
【0046】
次に、上記フレキシブル基板23における電子部品としての回路素子50の搭載箇所の構成の第1実施形態について、図5及び図6を参照しながら詳細に説明する。フレキシブル基板23の基本的構成は、前述の従来記述と同様に、ポリイミド樹脂製などのフィルムからなる可撓性を有するベース基板51の片面には、回路素子50の入力及び出力の端子に接続する複数の細幅の銅箔線からなる配線パターン52が公知のプリント形成にて設けられている。この配線パターン52の端部52aは、回路素子50の搭載領域53内まで延びている。実施形態における回路素子50は、平面視で実質的に矩形のチップ体である(図6(a)及び図6(b)参照)。回路素子50は端子部を下面の外周に沿って備えているので、搭載領域53は、回路素子50の平面視形状と一致する。
【0047】
搭載領域53の外周縁から適宜距離だけ外方に離れた、当該搭載領域53を囲む外側の領域に、ベース基板51の片面全体に一様な厚みの絶縁被覆膜の一例としてのソルダーレジスト膜54が、配線パターン52を覆って形成されている(図5(a)、図5(b)参照)。従って、符号54aはソルダーレジスト膜54の形成領域の縁、つまり後述する開口部55,56の縁となる。なお、ソルダーレジスト膜54は、粘度が低いため、ソルダーレジスト膜54の形成領域の縁部分が搭載領域53の外周方向に近づくように垂れ(流れ)て、図5(b)及び図6(b)に示すように搭載領域53に向かって厚みが薄くなる断面傾斜状に形成される。
【0048】
つまり、ソルダーレジスト膜54には、搭載領域53を囲み、内側に配線パターン52の端部52aを露出させる第2の開口部56が形成され、この第2の開口部56の4方の角部、すなわち矩形状の回路素子50の角部50aの外方に第1の開口部55が形成されている。これらの開口部55,56の外側がソルダーレジスト膜54の上記形成領域である。これらの開口部55,56は、1つの連続した開口をなしており、かつベース基板51を露出させている。第1の開口部55の平面積は、後述するアンダーフィル樹脂57とベース基板51との接着面積を確保するために、できるだけ大きいことが好ましい。
【0049】
配線パターン52は、回路素子50の矩形の辺部に対応する前記ベース基板上の位置、すなわち搭載領域53から外方に延びるように形成されている。第1の開口部55は、配線パターン52が配置されていない位置で、ベース基板51を露出させるよう形成されている(図5(a)及び図5(b)参照)。
【0050】
回路素子50の下面に形成された端子部(図示せず)と、配線パターン52の端部52aとは、金または半田などの導電材で形成されたバンプ59を介して、加熱及び加圧などのバンプ59の材質に応じた方法にて接続される(図6(a)及び図6(b)参照)。
【0051】
その後、回路素子50の端子部と配線パターンとの接続部を封止するように、少なくとも回路素子50の外周とソルダーレジスト膜54との間にアンダーフィル樹脂57が充填される(図6(a)及び図6(b)参照)。
【0052】
アンダーフィル樹脂57は、第2の開口部56の4辺部(角部を除く)では、配線パターン52の端部52aやベース基板51に密着し、かつ平面視で第2の開口部56の縁を越えてソルダーレジスト膜54の上面に重複している。その重複部の幅寸法(第2の開口部56の辺と直交する方向の幅寸法)はW2である。他方、アンダーフィル樹脂57は、第1の開口部55の箇所では、ソルダーレジスト膜54に重複することなくベース基板51に密着している。
【0053】
一般的にアンダーフィル樹脂57は、エポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂である。ベース基板51はポリイミド樹脂、ソルダーレジスト膜54はウレタン樹脂である。このため、アンダーフィル樹脂57とベース基板51との接着強度は、アンダーフィル樹脂57とソルダーレジスト膜54とのそれよりも大きい。また、アンダーフィル樹脂57と回路素子50の外周面との接着強度は、アンダーフィル樹脂57とソルダーレジスト膜54とのそれよりも大きい。したがって、第1の開口部55においては、アンダーフィル樹脂57がベース基板51の表面に直接密着し、且つ、ベース基板51の表面に対するアンダーフィル樹脂57の接着強度は、仮に第1の開口部55がなくその位置をソルダーレジスト膜54が覆っている場合そのソルダーレジスト膜54の表面に対するアンダーフィル樹脂57の接着強度よりも大きい。
【0054】
フレキシブル基板23は、記録装置1への組付けのために運ばれたり、ヘッドホルダ3内に引き回されると、屈曲される。このとき、回路素子50の4つの角部50aに対応するベース基板51上の位置に最も応力が集中する。しかし、その角部50aの外方である第1の開口部55において、ベース基板51とアンダーフィル樹脂57とが強固に接着されているので、ベース基板51からアンダーフィル樹脂57が剥離することが抑えられる。また、回路素子50の角部50aとアンダーフィル樹脂57とも強固に接着されているので、上記屈曲にともなってその箇所で剥離することも抑えられる。回路素子50の4辺部(第2の開口部56)での配線パターン52の端部52aと回路素子50の端子部との接続箇所が、4つの第1の開口部55にそれぞれ挟まれるように位置しているため、それらの接続箇所に上記の剥離が進行することから保護される。その結果、配線パターン52の端部52aと回路素子50の端子部との接続箇所が剥がれたり(電気的にオープンになる)、その近傍の配線パターン52が破断するなどの事故を確実に防止できるのである。また、アンダーフィル樹脂57により、配線パターン52の端部52aや、その端部52aと回路素子50の端子部との接続部が封止されて露出しないから、外部の環境、例えばインクミストに晒されず、腐食なども発生しない。なお、ソルダーレジスト膜54は、ベース基板51と同種のポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂などを用いることができる。ソルダーレジスト膜54とベース基板51とが同種の材料であっても、ベース基板51の表面には、配線パターン52との接着性を向上させるために、粗面化するなどの処理が施されているので、アンダーフィル樹脂57は、ソルダーレジスト膜54よりもベース基板51との接着強度が大きい。
【0055】
上記実施形態では、第1の開口部55と第2の開口部56とが連続していることで、アンダーフィル樹脂57が両開口部55,56にわたってベース基板51に連続して密着している。しかし、第1の開口部55と第2の開口部56とは、互いに独立して形成、つまり両者間をソルダーレジスト膜54で分離して形成しても良い。
【0056】
図7(a)、図7(b)、図8(a)及び図8(b)は、上記第1の開口部55でのアンダーフィル樹脂57の接着強度を向上させるための、第2実施形態を示す。この実施形態では、図7(a)及び図8(a)で示すように、第1の開口部55に囲まれるベース基板51の表面には、アンダーフィル樹脂57との接着強度の大きいダミーパターン60が形成されているものである。ダミーパターン60は、配線パターン52と同じく銅などの導電材で形成することが好ましい。また、ベース基板51の表面に対して配線パターン52をプリント形成するときに、同時にダミーパターン60を形成することで、余分の工程を無くすることができる。ダミーパターン60の平面視の面積は、アンダーフィル樹脂57との接着面積を大きく確保するために、できるだけ大きいことが好ましく、ダミーパターン60の外周は第1の開口部55の内周縁にできるだけ近接して形成される。
【0057】
また、ベース基板51の表面に対するダミーパターン60の接着強度が、ダミーパターン60の表面に対するアンダーフィル樹脂57の接着強度よりも大きく、ダミーパターン60の表面に対するアンダーフィル樹脂57の接着強度は、ベース基板51の表面に対するものと同程度か、それよりも大きい。好ましくは、ダミーパターン60の表面を薬剤などを使って粗く形成することで一層、ダミーパターン60の表面に対するアンダーフィル樹脂57の接着強度を大きくすることができる。第2実施形態においては、アンダーフィル樹脂57はダミーパターン60の表面に接着されることになる。なお、その他の構成は、第1実施形態と同じであるので、同じ構成については同じ符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0058】
このように構成することにより、フレキシブル基板23が大きく屈曲して回路素子50の角部50aに対応するベース基板51上の位置に応力が集中しても、前述の第1実施形態と同様に、ダミーパターン60とアンダーフィル樹脂57とが強固に接着されているので、フレキシブル基板23からアンダーフィル樹脂57が剥離することが抑えられる。その結果、回路素子50の4辺部配線パターン52の端部52aと回路素子50の端子部との接続箇所が剥がれたり(電気的にオープンになる)、その近傍の配線パターン52が破断するなどの事故を確実に防止できるのである。
【0059】
第2実施形態において、第1開口部55内にダミーパターン60とベース基板51とを露出させ、アンダーフィル樹脂57がその両者に接着するように構成することもできる。また、ダミーパターン60は、配線パターン52のうちの一部の信号線、またはグラント線を兼ねることもできる。
【0060】
本発明においては、電子部品の平面視形態は矩形状の他、円形、三角形、多角形のいずれであっても良い。
【0061】
上述した実施形態では、記録装置を例示して説明したが、本発明は、自動車部品、家庭用電気装置など各種装置に適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明を適用する記録装置の概略平面図である。
【図2】記録部の斜視図である。
【図3】液滴吐出装置のヘッドホルダの内部を示す一部切欠き断面図である。
【図4】記録ヘッドの分解斜視図である。
【図5】(a)は第1実施形態における第1の開口部及び第2の開口部を示す平面図、(b)は図5(a)のVb−Vb線矢視拡大断面図である。
【図6】(a)は回路素子を搭載し、アンダーフィル樹脂により封止した状態の平面図、(b)は図6(a)のVIb −VIb 線矢視拡大断面図である。
【図7】(a)は第2実施形態における第1の開口部及び第2の開口部におけるダミーパターンを示す平面図、(b)は図7(a)のVIIb−VIIb線矢視拡大断面図である。
【図8】(a)は回路素子を搭載し、アンダーフィル樹脂により封止した状態の平面図、(b)は図8(a)のVIIIb −VIIIb 線矢視拡大断面図である。
【図9】従来技術における記録ヘッドの分解斜視図である。
【図10】(a)は従来技術における回路素子の搭載領域と、ソルダーレジスト膜の形成領域を示す平面図、(b)は図10(a)のXb−Xb線矢視拡大断面図である。
【図11】(a)は回路素子を搭載し、アンダーフィル樹脂により封止した状態の平面図、(b)は図11(a)のXIb −XIb 線矢視拡大断面図である。
【図12】従来技術におけるアンダーフィル樹脂の剥離による配線パターンの破断を示す断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 記録装置
4 記録ヘッド
23、103 フレキシブル基板
50、104 電子部品としての回路素子
51、106 ベース基板
52、107 配線パターン
53、108 回路素子の搭載領域
54、109 絶縁被覆膜としてのソルダーレジスト膜
55 第1の開口部
56 第2の開口部
57、111 アンダーフィル樹脂
60、110 バンプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が搭載されたフレキシブル基板及びそれを備えた記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品(回路素子)が搭載されたフレキシブル基板として、例えば、インクを吐出する記録ヘッドのアクチュエータを負荷として、印字データに基づく駆動信号を送る配線用のフレキシブル基板(COF)が知られている。記録ヘッド100は、特許文献1等に記載され、図9に示されているように、多数のノズルとインク供給路とを有するキャビティ部101と、各ノズル毎に対応する活性部を有するアクチュエータ102とを備えており、アクチュエータ102の上面には、外部信号源と繋ぐように、電子部品(回路素子)104が搭載されたフレキシブル基板103が接合されている。
【0003】
回路素子104とフレキシブル基板103上の配線パターン107との接続部は、通常、特許文献2に記載されているように、ポッティング材によって封止される。
【特許文献1】特開2005−219337号公報(図3参照)
【特許文献2】特開平9−323414号公報(図6参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記フレキシブル基板103と回路素子104との接続部は、一般的に図10(a)〜図11(b)に示すような構造となっている。
【0005】
即ち、フレキシブル基板103において、ポリイミド樹脂製などのフィルムからなる可撓性を有するベース基板106の片面には、複数の細幅の銅箔線からなる配線パターン107がプリント形成されている。回路素子104の搭載領域108を囲む開口を残し、配線パターン107を覆ってベース基板106の片面にソルダーレジスト膜(絶縁被覆膜)109が形成されている(図10(a)、図10(b)参照)。従って、符号109aは搭載領域108を囲むソルダーレジスト膜109の開口の縁となる。なお、ソルダーレジスト膜を構成する樹脂の粘度が低いため、ソルダーレジスト膜109の開口の縁109aは、図10(b)に示すように搭載領域108の外周方向に近づくように垂れ(流れ)て、搭載領域108に向かって厚みが薄くなる断面傾斜状に形成されている。
【0006】
ソルダーレジスト膜109の開口の縁109aから露出した配線パターン107の端部107aと、回路素子104の下面に形成された端子とは、導電材で形成されたバンプ110を介して接続される。
【0007】
その後、回路素子104の外周とソルダーレジスト膜109とアンダーフィル樹脂111が注入される。これにより、アンダーフィル樹脂111は回路素子104の端子と配線パターン107の端部107aとの接続部や、配線パターン107の端部107aを封止する。
【0008】
このように構成されたフレキシブル基板103のベース基板106は可撓性を有しているが、回路素子104は固体であるので、ベース基板106が屈曲するとき、回路素子104の外周であって、アンダーフィル樹脂111とソルダーレジスト膜109との重複箇所近傍に、屈曲時の応力が集中する。しかも、回路素子104が平面視で矩形状である場合には、互いに隣接する2辺が交差する角部(コーナ部)を囲むアンダーフィル樹脂111の外側の縁112(図11(a)参照)は、平面視で略四分の一の凸円弧状に形成され、このコーナ部112には、曲げ、ねじれなどの屈曲時の応力が集中し易い。
【0009】
一般に、アンダーフィル樹脂111は熱硬化性のエポキシ系樹脂で、ソルダーレジスト膜109はウレタン系樹脂であるため、アンダーフィル樹脂111と、ソルダーレジスト膜109との密着性が良くない。その結果、フレキシブル基板103が屈曲することによって、上記コーナ部112の外周縁から、アンダーフィル樹脂111がソルダーレジスト膜109に対して剥がれ始める。その剥がれが進行することにより、フレキシブル基板103が屈曲したとき、回路素子104の外周縁とソルダーレジスト膜(絶縁被覆膜)109の形成領域の縁109aとの間の領域で、配線パターン107が破断したり(図12参照)、バンプ110と配線パターン107の端部107aとの接続部が破断するなどの不都合が生じるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記問題を解消するものであり、フレキシブル基板におけるアンダーフィル樹脂による被覆部分の接着強度を向上させてフレキシブル基板の屈曲による、配線パターン部分や回路素子との接続部が破断することを防止できる構成を提供すること、及びそのようなフレキシブル基板を備えた記録装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明におけるフレキシブル基板は、片面に電子部品を搭載したフレキシブル基板であって、前記フレキシブル基板におけるベース基板には、前記電子部品の端子部と接続する配線パターンと、前記電子部品の搭載領域を除いて前記配線パターンを覆う絶縁被覆膜とが形成され、前記電子部品の端子部と前記配線パターンとの接続部を封止するように、少なくとも前記電子部品の外周と前記絶縁被覆膜との間に充填されるアンダーフィル樹脂が設けられ、前記絶縁被覆膜には、前記電子部品の搭載領域よりも外側に、前記ベース基板を露出させる第1の開口部が形成され、前記アンダーフィル樹脂と前記ベース基板との接着強度は、前記アンダーフィル樹脂と前記絶縁被覆膜とのそれよりも大きく、前記アンダーフィル樹脂は、前記第1の開口部を通して前記ベース基板に密着していることを特徴とするものである。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のフレキシブル基板において、前記電子部品は、平面視ほぼ矩形状に形成されており、該矩形の角部の外方に、前記第1の開口部が形成されているものである。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のフレキシブル基板において、前記絶縁被覆膜は、前記電子部品の端子部と接続する配線パターンの端部を露出させる第2の開口部を有し、その第2の開口部よりも外に前記第1の開口部を有しているものである。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載のフレキシブル基板において、前記配線パターンは、前記電子部品の矩形の辺部に対応する前記ベース基板上の位置から外方に延びるように形成され、前記第1の開口部は、前記配線パターンが配置されていない位置で、前記ベース基板を露出させるよう形成されているものである。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載のフレキシブル基板において、前記第1の開口部に囲まれる前記ベース基板の面には、前記アンダーフィル樹脂との接着強度が前記絶縁被覆膜とのそれよりも大きいダミーパターンが形成されているものである。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載のフレキシブル基板において、前記アンダーフィル樹脂の形成領域は、前記電子部品の外周縁より平面視で外方であって前記絶縁被覆膜との重複部と、前記絶縁被覆膜と重複しない前記第1の開口部とにわたって連続的に形成されているものである。
【0017】
請求項7に記載の発明は、前記電子部品が、記録動作を行う記録ヘッドにおけるアクチュエータの選択的駆動のための回路素子であり、請求項1乃至6のいずれかに記載のフレキシブル基板の配線パターンが前記アクチュエータに接続されていることを特徴とする記録装置である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、第1の開口部においては、アンダーフィル樹脂がベース基板の表面に直接密着し、且つ、ベース基板の表面に対するアンダーフィル樹脂の接着強度が大きい。従って、フレキシブル基板が屈曲したときにも、ベース基板の表面に対するアンダーフィル樹脂の剥離が開始されない。その結果、配線パターンが上記屈曲により破断したり、配線パターンの端部と電子部品との接続部が剥がれる(電気的にオープンになる)などの事故を確実に防止できるのである。また、アンダーフィル樹脂により、配線パターンの端部や、その端部と電子部品との接続部が封止されて露出しないから、外部の環境、例えばインクミストに晒されず、腐食なども発生しないという効果を奏する。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、電子部品は、平面視ほぼ矩形状に形成されており、該矩形の角部の外方に、前記第1の開口部が形成されているものである。
【0020】
従って、電子部品の4つの角部の外方である第1の開口部は、フレキシブル基板が屈曲したときの、アンダーフィル樹脂の剥離が始まり易い箇所(屈曲の応力が大きくなる箇所)であるところ、この第1の開口部において、アンダーフィル樹脂がベース基板の表面に直接密着しているので、アンダーフィル樹脂の剥離が発生し難くなるという効果を奏する。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、絶縁被覆膜は、前記電子部品の端子部と接続する配線パターンの端部を露出させる第2の開口部を有し、その第2の開口部よりも外に前記第1の開口部を有しているものである。このようにすれば、電子部品の端子部と配線パターンとが接続する位置よりも外において、アンダーフィル樹脂がベース基板の表面に密着するので、電子部品の端子部と配線パターンとの接続部分を剥離から保護できるとともにその部分を封止することが容易にできる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、配線パターンは、前記電子部品の矩形の辺部に対応する前記ベース基板上の位置から外方に延びるように形成され、前記第1の開口部は、前記配線パターンが配置されていない位置で、前記ベース基板を露出させるよう形成されているものであるので、電子部品の端子部を辺部に対応する配線パターンに接続し、電子部品の角部の外方即ち配線パターンのない位置で第1の開口部を広い面積で確保してアンダーフィル樹脂をベース基板に密着させることができ、電子部品の端子部と配線パターンとの接続部分を剥離から確実に保護することができる。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、前記第1の開口部に囲まれる前記ベース基板の面には、前記アンダーフィル樹脂との接着強度が前記絶縁被覆膜とのそれよりも大きいダミーパターンが形成されているものであるので、第1の開口部でアンダーフィル樹脂の剥離が一層発生し難くなる。従って、電子部品に対する接続用の配線パターンが上記屈曲により破断したり、配線パターンの端部と電子部品との接続部が剥がれるなどの事故を確実に防止できる効果が向上できる。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、前記アンダーフィル樹脂は、前記電子部品の外周縁より平面視で外方であって前記絶縁被覆膜との重複部と、前記絶縁被覆膜と重複しない第1の開口部とにわたって連続的に形成されているものである。従って、第1の開口部における、アンダーフィル樹脂とベース基板との接着部分で、アンダーフィル樹脂の剥離が開始しないので、この剥離させない影響を、絶縁被覆膜とアンダーフィル樹脂との重複部まで引き継がせることができ、アンダーフィル樹脂による封止性が向上するという効果を奏する。
【0025】
請求項7に記載の発明によれば、前記電子部品が、記録動作を行う記録ヘッドにおけるアクチュエータの選択的駆動のための回路素子であり、請求項1乃至6に記載のフレキシブル基板の配線パターンが前記アクチュエータに接続されていることを特徴とする記録装置であるので、記録装置の組立に際しフレキシブル基板が屈曲されることに伴うトラブルを少なくすることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は、本発明のフレキシブル基板を備える記録装置1の概略平面図である。この記録装置1は、単独のプリンタ装置に適用しても、あるいは、ファクシミリ機能やコピー機能等の複数の機能を備えた多機能装置のプリンタ機能(記録部)に適用してもよい。
【0027】
記録装置1には、図1及び図2に示すように、キャリッジ2を構成する箱状のヘッドホルダ3が備えられている。このヘッドホルダ3の下面側には、記録ヘッド4がそのノズル(図示せず)を下向きに露出させて搭載されている。キャリッジ2は、第1ガイド部材5及び第2ガイド部材6に主走査方向(Y軸方向)に往復移動可能に支持され、キャリッジモータ8に連結された駆動プーリ9と、従動プーリ10とに掛け渡されたタイミングベルト11によってY軸方向に沿って往復移動する。
【0028】
記録媒体である用紙は、キャリッジ2の下方に配置された平板状のプラテン7の上面に載った状態で、主走査方向(Y軸方向)に直交する副走査方向(X軸方向)に搬送される。
【0029】
記録装置本体12内には、交換式のインクカートリッジ13が静置されており、ここではインク色の数に応じて、ブラックインク用、シアンインク用、マゼンタインク用、イエローインク用の4つのインクカートリッジ13が備えられている。各インクカートリッジ13のインクは、可撓性を有する樹脂製のインク供給チューブ15を介して、それぞれ独立してキャリッジ2の後述するインク貯留部24に供給される。
【0030】
図1及び図2に示すように、記録装置1の装置本体12内で、用紙のY軸方向の幅(記録領域)よりも外側における一方の側(図1の右側)には、メンテナンスユニット16が設けられている。メンテナンスユニット16は、後述する記録ヘッド4の吐出機能を回復させるための回復動作(パージング)を行う。
【0031】
次に、キャリッジ2の構成について説明すると、図3に示すように、上面が開放された箱状のヘッドホルダ3の下面に記録ヘッド4が固定され、ヘッドホルダ3内にて記録ヘッド4の上側にインク貯留部24が配置され、さらにその上側であって、ヘッドホルダ3の上面を塞ぐように、電気回路基板30が配置されている。ヘッドホルダ3は合成樹脂製の射出成形品であり、4方の側壁3aと底板3bとからなり、上面開口部3cを有する。
【0032】
電気回路基板30の下面30aには、その面30aに沿って公知のプリント配線により電気回路(図示せず)が形成され、その電気回路に接続して、バイパス用のコンデンサ、抵抗器等の複数の回路素子31、第1コネクタ34、及び第2コネクタ35が設けられている。電気回路基板30自体は、ガラス繊維とエポキシ樹脂等からなる電気絶縁性材料にてほぼ剛体の板状に構成されている。電気回路基板30の上記と反対側の上面30bには、上記電気回路及び回路素子31と電気的に導通する部位が露出されていないものとする。なお、回路素子31の端子部が電気回路基板30を貫通して上面30bに露出している場合には、それを電気絶縁性材料の絶縁膜47で覆うようにしてもよい。
【0033】
そして、電気回路、回路素子31及びコネクタ34,35がヘッドホルダ3の内部になるように、つまり下面30aを下向きにした電気回路基板30が、ヘッドホルダ3の上面開口部3cを塞ぐように装着される。このとき、ヘッドホルダ3の上端面3dと電気回路基板30の外周との間には、平面視枠状のシール体33が介挿され、電気回路基板30がねじ32等の締結手段にてヘッドホルダ3に固定されている。
【0034】
記録ヘッド4は、特開2005−322850号公報に記載の公知のものと同様で、図4に示すように、下面側にノズルを開口し且つ上面側に圧力室を有する平板状のキャビティ部21と、アクチュエータ22とを積層して構成されている。アクチュエータ22の上面には、可撓性を有するフレキシブル基板23が接続され、さらに、フレキシブル基板23におけるアクチュエータ22と重なる上面に金属板からなる放熱板25が積層接合されている。
【0035】
キャビティ部21は、複数の薄いプレートを積層して形成されており、その内部にはインク供給路が形成されている。インク供給路は、インク取入口21aからインク貯留部24内のインクの供給を受け、多数ノズルにインクを分配する。
【0036】
アクチュエータ22は、図4に示すように、全てのノズルにわたる大きさを有する扁平形状で且つその扁平な方向と直交する方向に積層された複数のセラミックス層と、この複数のセラミックス層間に配置された複数の内部電極とから構成されている。
【0037】
内部電極は、多数のノズルに対応する位置毎に、セラミックス層を挟む対の電極として構成され、その一方は、アクチュエータ22の最上面に形成された個別外部電極22aに、他方はコモン外部電極22bにそれぞれ接続されている。これら個別外部電極22a、コモン外部電極22bはそれぞれフレキシブル基板23の配線パターンに接続されている。
【0038】
このように電極が設けられたアクチュエータ22では、公知のように個別外部電極とコモン外部電極との間に電圧を印加することで、内部電極に挟まれたセラミックス層の部分が伸長し対応するノズル内のインクに圧力を加え、ノズルからインク(液滴)を吐出することができる。
【0039】
ヘッドホルダ3の底板3bの下面側には、補強フレーム36を介在させて、記録ヘッド4が接着剤40にて固着されている。そのため、底板3bには、接着剤40を流し込むための貫通孔41が複数個穿設されている(図3参照)。
【0040】
なお、ヘッドホルダ3の下面には、記録ヘッド4を囲むように、記録媒体側(下側)に突出するリブ3eが設けられている。換言すれば、記録ヘッド4は、底板3bの下面側に形成された凹所の内側に配置されている。
【0041】
ヘッドホルダ3の下面(記録媒体と対向する面)側における段差(凹凸)を緩和させるために、リブ3eの内側において記録ヘッド4を囲むようにフロントフレーム37が設けられている。このフロントフレーム37は補強フレーム36の下面に接着剤にて貼着されている。
【0042】
フロントフレーム37の外周及び記録ヘッド4の外周と、ヘッドホルダ3の下縁部との間の隙間は、シリコーン樹脂等のインクにより侵されない材料のシール38により封止されている。このようにして記録ヘッド4の外周はヘッドホルダ3に外部と気密的に閉鎖するように固定されている。
【0043】
フレキシブル基板23は、記録ヘッド4の上面から、ヘッドホルダ3の底板3bに穿設されたスリット孔42に挿通され、ヘッドホルダ3内に引き回される。フレキシブル配線材23の端部の端子23b(図4参照)は、複数の配線が平行状に配置されたフレキシブル配線材46の一端に接続され、このフレキシブル配線材46の他端46aが電気回路基板30の下面30aに設けられた第1コネクタ34に接続される(図3参照)。そして、電気回路基板30は、装置本体12に静置された制御装置(図示せず)からフレキシブルな配線ケーブル39(図2参照)を介して駆動信号を受ける。そのため、配線ケーブル39はその端部の端子39aを電気回路基板30の下面30aに設けられた第2コネクタ35に接続し、ヘッドホルダ3の一側壁3aの上端面3dと電気回路基板30との間からヘッドホルダ3の外に引き出され、制御装置に接続される。
【0044】
フレキシブル基板23の中途部には、アクチュエータ22を駆動するための電子部品の一例としてのICチップ化された駆動回路素子50が実装されている(図3及び図4参照)。駆動回路素子50は、ヘッドホルダ3の上面開口部を塞ぐ電気回路基板30からシリアル伝送された駆動信号を、多数のノズルに対応したパラレル信号に変換し、セラミックス層の駆動に適した電圧として出力する。
【0045】
駆動回路素子50の熱を放熱するために、放熱体43が底板3bの上面側に図示しないピンに固定されている。駆動回路素子50を放熱体43に熱伝導可能に密着させるように底板3bとフレキシブル配線材23との間に、ゴム状の弾性部材44が配置されている。この放熱体43の熱をヘッドホルダ3の外に導いて外気に放散するため、ヘッドホルダ3の側壁3aを貫通して放熱体43の側部43bに接続する接続部45aと側壁3aの外面に平行な放散部45bとからなる放散板45が設けられている(図3参照)。
【0046】
次に、上記フレキシブル基板23における電子部品としての回路素子50の搭載箇所の構成の第1実施形態について、図5及び図6を参照しながら詳細に説明する。フレキシブル基板23の基本的構成は、前述の従来記述と同様に、ポリイミド樹脂製などのフィルムからなる可撓性を有するベース基板51の片面には、回路素子50の入力及び出力の端子に接続する複数の細幅の銅箔線からなる配線パターン52が公知のプリント形成にて設けられている。この配線パターン52の端部52aは、回路素子50の搭載領域53内まで延びている。実施形態における回路素子50は、平面視で実質的に矩形のチップ体である(図6(a)及び図6(b)参照)。回路素子50は端子部を下面の外周に沿って備えているので、搭載領域53は、回路素子50の平面視形状と一致する。
【0047】
搭載領域53の外周縁から適宜距離だけ外方に離れた、当該搭載領域53を囲む外側の領域に、ベース基板51の片面全体に一様な厚みの絶縁被覆膜の一例としてのソルダーレジスト膜54が、配線パターン52を覆って形成されている(図5(a)、図5(b)参照)。従って、符号54aはソルダーレジスト膜54の形成領域の縁、つまり後述する開口部55,56の縁となる。なお、ソルダーレジスト膜54は、粘度が低いため、ソルダーレジスト膜54の形成領域の縁部分が搭載領域53の外周方向に近づくように垂れ(流れ)て、図5(b)及び図6(b)に示すように搭載領域53に向かって厚みが薄くなる断面傾斜状に形成される。
【0048】
つまり、ソルダーレジスト膜54には、搭載領域53を囲み、内側に配線パターン52の端部52aを露出させる第2の開口部56が形成され、この第2の開口部56の4方の角部、すなわち矩形状の回路素子50の角部50aの外方に第1の開口部55が形成されている。これらの開口部55,56の外側がソルダーレジスト膜54の上記形成領域である。これらの開口部55,56は、1つの連続した開口をなしており、かつベース基板51を露出させている。第1の開口部55の平面積は、後述するアンダーフィル樹脂57とベース基板51との接着面積を確保するために、できるだけ大きいことが好ましい。
【0049】
配線パターン52は、回路素子50の矩形の辺部に対応する前記ベース基板上の位置、すなわち搭載領域53から外方に延びるように形成されている。第1の開口部55は、配線パターン52が配置されていない位置で、ベース基板51を露出させるよう形成されている(図5(a)及び図5(b)参照)。
【0050】
回路素子50の下面に形成された端子部(図示せず)と、配線パターン52の端部52aとは、金または半田などの導電材で形成されたバンプ59を介して、加熱及び加圧などのバンプ59の材質に応じた方法にて接続される(図6(a)及び図6(b)参照)。
【0051】
その後、回路素子50の端子部と配線パターンとの接続部を封止するように、少なくとも回路素子50の外周とソルダーレジスト膜54との間にアンダーフィル樹脂57が充填される(図6(a)及び図6(b)参照)。
【0052】
アンダーフィル樹脂57は、第2の開口部56の4辺部(角部を除く)では、配線パターン52の端部52aやベース基板51に密着し、かつ平面視で第2の開口部56の縁を越えてソルダーレジスト膜54の上面に重複している。その重複部の幅寸法(第2の開口部56の辺と直交する方向の幅寸法)はW2である。他方、アンダーフィル樹脂57は、第1の開口部55の箇所では、ソルダーレジスト膜54に重複することなくベース基板51に密着している。
【0053】
一般的にアンダーフィル樹脂57は、エポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂である。ベース基板51はポリイミド樹脂、ソルダーレジスト膜54はウレタン樹脂である。このため、アンダーフィル樹脂57とベース基板51との接着強度は、アンダーフィル樹脂57とソルダーレジスト膜54とのそれよりも大きい。また、アンダーフィル樹脂57と回路素子50の外周面との接着強度は、アンダーフィル樹脂57とソルダーレジスト膜54とのそれよりも大きい。したがって、第1の開口部55においては、アンダーフィル樹脂57がベース基板51の表面に直接密着し、且つ、ベース基板51の表面に対するアンダーフィル樹脂57の接着強度は、仮に第1の開口部55がなくその位置をソルダーレジスト膜54が覆っている場合そのソルダーレジスト膜54の表面に対するアンダーフィル樹脂57の接着強度よりも大きい。
【0054】
フレキシブル基板23は、記録装置1への組付けのために運ばれたり、ヘッドホルダ3内に引き回されると、屈曲される。このとき、回路素子50の4つの角部50aに対応するベース基板51上の位置に最も応力が集中する。しかし、その角部50aの外方である第1の開口部55において、ベース基板51とアンダーフィル樹脂57とが強固に接着されているので、ベース基板51からアンダーフィル樹脂57が剥離することが抑えられる。また、回路素子50の角部50aとアンダーフィル樹脂57とも強固に接着されているので、上記屈曲にともなってその箇所で剥離することも抑えられる。回路素子50の4辺部(第2の開口部56)での配線パターン52の端部52aと回路素子50の端子部との接続箇所が、4つの第1の開口部55にそれぞれ挟まれるように位置しているため、それらの接続箇所に上記の剥離が進行することから保護される。その結果、配線パターン52の端部52aと回路素子50の端子部との接続箇所が剥がれたり(電気的にオープンになる)、その近傍の配線パターン52が破断するなどの事故を確実に防止できるのである。また、アンダーフィル樹脂57により、配線パターン52の端部52aや、その端部52aと回路素子50の端子部との接続部が封止されて露出しないから、外部の環境、例えばインクミストに晒されず、腐食なども発生しない。なお、ソルダーレジスト膜54は、ベース基板51と同種のポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂などを用いることができる。ソルダーレジスト膜54とベース基板51とが同種の材料であっても、ベース基板51の表面には、配線パターン52との接着性を向上させるために、粗面化するなどの処理が施されているので、アンダーフィル樹脂57は、ソルダーレジスト膜54よりもベース基板51との接着強度が大きい。
【0055】
上記実施形態では、第1の開口部55と第2の開口部56とが連続していることで、アンダーフィル樹脂57が両開口部55,56にわたってベース基板51に連続して密着している。しかし、第1の開口部55と第2の開口部56とは、互いに独立して形成、つまり両者間をソルダーレジスト膜54で分離して形成しても良い。
【0056】
図7(a)、図7(b)、図8(a)及び図8(b)は、上記第1の開口部55でのアンダーフィル樹脂57の接着強度を向上させるための、第2実施形態を示す。この実施形態では、図7(a)及び図8(a)で示すように、第1の開口部55に囲まれるベース基板51の表面には、アンダーフィル樹脂57との接着強度の大きいダミーパターン60が形成されているものである。ダミーパターン60は、配線パターン52と同じく銅などの導電材で形成することが好ましい。また、ベース基板51の表面に対して配線パターン52をプリント形成するときに、同時にダミーパターン60を形成することで、余分の工程を無くすることができる。ダミーパターン60の平面視の面積は、アンダーフィル樹脂57との接着面積を大きく確保するために、できるだけ大きいことが好ましく、ダミーパターン60の外周は第1の開口部55の内周縁にできるだけ近接して形成される。
【0057】
また、ベース基板51の表面に対するダミーパターン60の接着強度が、ダミーパターン60の表面に対するアンダーフィル樹脂57の接着強度よりも大きく、ダミーパターン60の表面に対するアンダーフィル樹脂57の接着強度は、ベース基板51の表面に対するものと同程度か、それよりも大きい。好ましくは、ダミーパターン60の表面を薬剤などを使って粗く形成することで一層、ダミーパターン60の表面に対するアンダーフィル樹脂57の接着強度を大きくすることができる。第2実施形態においては、アンダーフィル樹脂57はダミーパターン60の表面に接着されることになる。なお、その他の構成は、第1実施形態と同じであるので、同じ構成については同じ符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0058】
このように構成することにより、フレキシブル基板23が大きく屈曲して回路素子50の角部50aに対応するベース基板51上の位置に応力が集中しても、前述の第1実施形態と同様に、ダミーパターン60とアンダーフィル樹脂57とが強固に接着されているので、フレキシブル基板23からアンダーフィル樹脂57が剥離することが抑えられる。その結果、回路素子50の4辺部配線パターン52の端部52aと回路素子50の端子部との接続箇所が剥がれたり(電気的にオープンになる)、その近傍の配線パターン52が破断するなどの事故を確実に防止できるのである。
【0059】
第2実施形態において、第1開口部55内にダミーパターン60とベース基板51とを露出させ、アンダーフィル樹脂57がその両者に接着するように構成することもできる。また、ダミーパターン60は、配線パターン52のうちの一部の信号線、またはグラント線を兼ねることもできる。
【0060】
本発明においては、電子部品の平面視形態は矩形状の他、円形、三角形、多角形のいずれであっても良い。
【0061】
上述した実施形態では、記録装置を例示して説明したが、本発明は、自動車部品、家庭用電気装置など各種装置に適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明を適用する記録装置の概略平面図である。
【図2】記録部の斜視図である。
【図3】液滴吐出装置のヘッドホルダの内部を示す一部切欠き断面図である。
【図4】記録ヘッドの分解斜視図である。
【図5】(a)は第1実施形態における第1の開口部及び第2の開口部を示す平面図、(b)は図5(a)のVb−Vb線矢視拡大断面図である。
【図6】(a)は回路素子を搭載し、アンダーフィル樹脂により封止した状態の平面図、(b)は図6(a)のVIb −VIb 線矢視拡大断面図である。
【図7】(a)は第2実施形態における第1の開口部及び第2の開口部におけるダミーパターンを示す平面図、(b)は図7(a)のVIIb−VIIb線矢視拡大断面図である。
【図8】(a)は回路素子を搭載し、アンダーフィル樹脂により封止した状態の平面図、(b)は図8(a)のVIIIb −VIIIb 線矢視拡大断面図である。
【図9】従来技術における記録ヘッドの分解斜視図である。
【図10】(a)は従来技術における回路素子の搭載領域と、ソルダーレジスト膜の形成領域を示す平面図、(b)は図10(a)のXb−Xb線矢視拡大断面図である。
【図11】(a)は回路素子を搭載し、アンダーフィル樹脂により封止した状態の平面図、(b)は図11(a)のXIb −XIb 線矢視拡大断面図である。
【図12】従来技術におけるアンダーフィル樹脂の剥離による配線パターンの破断を示す断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 記録装置
4 記録ヘッド
23、103 フレキシブル基板
50、104 電子部品としての回路素子
51、106 ベース基板
52、107 配線パターン
53、108 回路素子の搭載領域
54、109 絶縁被覆膜としてのソルダーレジスト膜
55 第1の開口部
56 第2の開口部
57、111 アンダーフィル樹脂
60、110 バンプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面に電子部品を搭載したフレキシブル基板であって、
前記フレキシブル基板におけるベース基板には、前記電子部品の端子部と接続する配線パターンと、前記電子部品の搭載領域を除いて前記配線パターンを覆う絶縁被覆膜とが形成され、
前記電子部品の端子部と前記配線パターンとの接続部を封止するように、少なくとも前記電子部品の外周と前記絶縁被覆膜との間に充填されるアンダーフィル樹脂が設けられ、 前記絶縁被覆膜には、前記電子部品の搭載領域よりも外側に、前記ベース基板を露出させる第1の開口部が形成され、
前記アンダーフィル樹脂と前記ベース基板との接着強度は、前記アンダーフィル樹脂と前記絶縁被覆膜とのそれよりも大きく、前記アンダーフィル樹脂は、前記第1の開口部を通して前記ベース基板に密着していることを特徴とするフレキシブル基板。
【請求項2】
前記電子部品は、平面視ほぼ矩形状に形成されており、該矩形の角部の外方に、前記第1の開口部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル基板。
【請求項3】
前記絶縁被覆膜は、前記電子部品の端子部と接続する配線パターンの端部を露出させる第2の開口部を有し、その第2の開口部よりも外に前記第1の開口部を有していることを特徴とする請求項1または2に記載のフレキシブル基板。
【請求項4】
前記配線パターンは、前記電子部品の矩形の辺部に対応する前記ベース基板上の位置から外方に延びるように形成され、
前記第1の開口部は、前記配線パターンが配置されていない位置で、前記ベース基板を露出させるよう形成されていることを特徴とする請求項2に記載のフレキシブル基板。
【請求項5】
前記第1の開口部に囲まれる前記ベース基板の面には、前記アンダーフィル樹脂との接着強度が前記絶縁被覆膜とのそれよりも大きいダミーパターンが形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のフレキシブル基板。
【請求項6】
前記アンダーフィル樹脂は、前記電子部品の外周縁より平面視で外方であって前記絶縁被覆膜との重複部と、前記絶縁被覆膜と重複しない前記第1の開口部とにわたって連続的に形成されていることを特徴とする請求項請求項1乃至5のいずれかに記載のフレキシブル基板。
【請求項7】
前記電子部品は、記録動作を行う記録ヘッドにおけるアクチュエータの選択的駆動のための回路素子であり、請求項1乃至6のいずれかに記載のフレキシブル基板の配線パターンが前記アクチュエータに接続されていることを特徴とする記録装置。
【請求項1】
片面に電子部品を搭載したフレキシブル基板であって、
前記フレキシブル基板におけるベース基板には、前記電子部品の端子部と接続する配線パターンと、前記電子部品の搭載領域を除いて前記配線パターンを覆う絶縁被覆膜とが形成され、
前記電子部品の端子部と前記配線パターンとの接続部を封止するように、少なくとも前記電子部品の外周と前記絶縁被覆膜との間に充填されるアンダーフィル樹脂が設けられ、 前記絶縁被覆膜には、前記電子部品の搭載領域よりも外側に、前記ベース基板を露出させる第1の開口部が形成され、
前記アンダーフィル樹脂と前記ベース基板との接着強度は、前記アンダーフィル樹脂と前記絶縁被覆膜とのそれよりも大きく、前記アンダーフィル樹脂は、前記第1の開口部を通して前記ベース基板に密着していることを特徴とするフレキシブル基板。
【請求項2】
前記電子部品は、平面視ほぼ矩形状に形成されており、該矩形の角部の外方に、前記第1の開口部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル基板。
【請求項3】
前記絶縁被覆膜は、前記電子部品の端子部と接続する配線パターンの端部を露出させる第2の開口部を有し、その第2の開口部よりも外に前記第1の開口部を有していることを特徴とする請求項1または2に記載のフレキシブル基板。
【請求項4】
前記配線パターンは、前記電子部品の矩形の辺部に対応する前記ベース基板上の位置から外方に延びるように形成され、
前記第1の開口部は、前記配線パターンが配置されていない位置で、前記ベース基板を露出させるよう形成されていることを特徴とする請求項2に記載のフレキシブル基板。
【請求項5】
前記第1の開口部に囲まれる前記ベース基板の面には、前記アンダーフィル樹脂との接着強度が前記絶縁被覆膜とのそれよりも大きいダミーパターンが形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のフレキシブル基板。
【請求項6】
前記アンダーフィル樹脂は、前記電子部品の外周縁より平面視で外方であって前記絶縁被覆膜との重複部と、前記絶縁被覆膜と重複しない前記第1の開口部とにわたって連続的に形成されていることを特徴とする請求項請求項1乃至5のいずれかに記載のフレキシブル基板。
【請求項7】
前記電子部品は、記録動作を行う記録ヘッドにおけるアクチュエータの選択的駆動のための回路素子であり、請求項1乃至6のいずれかに記載のフレキシブル基板の配線パターンが前記アクチュエータに接続されていることを特徴とする記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−4710(P2009−4710A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166759(P2007−166759)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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