説明

電子部品の実装構造および電子部品の実装方法

【課題】 クラックの発生を防止するのに好適な電子部品の実装構造を提供する。
【解決手段】 まず、絶縁層10〜14を介して複数の配線層20〜24を積層してなる多層プリント配線板を製造する。この際、第3配線層24にランド24aを形成する。次いで、この多層プリント配線板に対して、表層の上面からランド24aに到達するスルーホール14aを形成する。そして、この多層プリント配線板に対して、はんだペースト42を印刷してスルーホール14a内に充填し、はんだペースト42上に電子部品30を載置し、はんだ付けを行う。これにより、電子部品30の電極32およびランド24aは、スルーホール14a内に充填されたはんだ40により接続され、多層プリント配線板100が完成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層プリント配線板に電子部品を表面実装する電子部品の実装構造および実装方法に係り、特に、クラックの発生を防止するのに好適な電子部品の実装構造および電子部品の実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品の実装方法としては、例えば、特許文献1記載の実装方法が知られている。
特許文献1記載の実装方法は、はんだ付け用のランドが形成された実装基板に、はんだペーストを印刷するはんだペースト印刷工程と、電子部品をはんだペースト上に接着し、小型電子部品をはんだペースト上に接着する電子部品接着工程と、はんだチップをフラックス容器に移送して浸し、フラックスを塗布し、電子部品の端子電極に、フラックスを塗布したはんだチップを接着するはんだチップ接着工程と、リフロー炉ではんだペーストおよびはんだチップを溶融させて実装基板をはんだ付けするリフロー工程とを有する。
【特許文献1】特開2006−261573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1記載の実装方法により製造されるプリント配線板にあっては、使用環境下による熱履歴や、通電による電子部品の発熱が原因で、はんだ接合部に熱応力が加わり、はんだ接合部にクラックが発生し、接合不良を引き起こす可能性があった。
この熱応力は、プリント配線板、電子部品が熱膨張または収縮し、その変位差がはんだ接合部に働くために作用する。特に、表面実装された電子部品の場合、サイズが大きくなるにつれて、電子部品の電極下のはんだ接合部においてクラックが発生しやすく、熱応力に対する接合寿命が弱くなる傾向がある。
【0004】
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、クラックの発生を防止するのに好適な電子部品の実装構造および電子部品の実装方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔発明1〕 上記目的を達成するために、発明1の電子部品の実装構造は、絶縁層を介して複数の配線層を積層してなる多層プリント配線板に電子部品を表面実装する電子部品の実装構造であって、前記電子部品の電極を接続するためのランドが前記多層プリント配線板の表層よりも下位の配線層に形成され、前記表層の上面から前記下位の配線層のランドに到達するスルーホールが前記多層プリント配線板に形成され、前記電子部品の電極および前記下位の配線層のランドが、前記スルーホール内に充填されたはんだにより接続されている。
【0006】
このような構成であれば、表層の上面から下位の配線層のランドに到達するスルーホール内に充填されたはんだにより、電子部品の電極および下位の配線層のランドが接続されているので、電子部品と多層プリント配線板の熱膨張差による変位が発生しても、はんだ接合部に作用する熱応力が緩和される。したがって、はんだ接合部にクラックが発生する可能性が低減される。
【0007】
〔発明2〕 一方、上記目的を達成するために、発明2の電子部品の実装方法は、絶縁層を介して複数の配線層を積層してなる多層プリント配線板に電子部品を表面実装する電子部品の実装方法であって、前記電子部品の電極を接続するためのランドを前記多層プリント配線板の表層よりも下位の配線層に形成し、前記表層の上面から前記下位の配線層のランドに到達するスルーホールを前記多層プリント配線板に形成し、前記スルーホール内にはんだを充填して前記電子部品の電極および前記下位の配線層のランドを接続する。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、発明1の電子部品の実装構造によれば、表層の上面から下位の配線層のランドに到達するスルーホール内に充填されたはんだにより、電子部品の電極および下位の配線層のランドが接続されているので、電子部品と多層プリント配線板の熱膨張差による変位が発生しても、はんだ接合部に作用する熱応力を緩和することができる。したがって、従来に比して、はんだ接合部にクラックが発生する可能性を低減することができるという効果が得られる。また、電子部品の実装を従来と同様に表層で行うことができるので、作業性を損なう可能性を低減することができるという効果も得られる。さらに、電子部品の電極および下位の配線層のランドに接合されるはんだ量を増すことができるので、接合寿命の低下を抑制することができるという効果も得られる。さらに、はんだ量を増しても、フィレット形状を大きくせず従来とほぼ同様に維持することができるという効果も得られる。
【0009】
一方、発明2の電子部品の実装方法によれば、発明1の電子部品の実装構造と同等の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。図1および図2は、本発明に係る電子部品の実装構造および電子部品の実装方法の実施の形態を示す図である。
まず、本実施の形態に係る多層プリント配線板100の構造を説明する。
図1は、多層プリント配線板100の厚さ方向の断面図である。
多層プリント配線板100は、図1に示すように、第1絶縁層10と、第1絶縁層10の下面に形成された第1配線層20と、第1絶縁層10の上面に形成された第2配線層22と、第1絶縁層10および第2配線層22の上に形成された第2絶縁層12と、第2絶縁層12の上面に形成された第3配線層24と、第2絶縁層12および第3配線層24の上に形成された第3絶縁層14とを有して構成されている。ここで、第3絶縁層14は、多層プリント配線板100の表層を構成し、これよりも下位の配線層20〜24および絶縁層10、12は、多層プリント配線板100の内層を構成する。
【0011】
第3配線層24には、電子部品(チップ部品)30の電極32を接続するためのランド24aが形成されている。多層プリント配線板100には、表層の上面からランド24aに到達するスルーホール14aが形成されている。電子部品30の電極32およびランド24aは、スルーホール14a内に充填されたはんだ40により接続されている。
このような構成であれば、電子部品30とランド24aの間に上下方向の間隔ができるので、その結果、電子部品30と多層プリント配線板100の熱膨張差による変位が発生しても、電子部品30の電極32下のはんだ接合部40aに作用する熱応力が緩和される。したがって、はんだ接合部40aにクラックが発生する可能性が低減される。特に、サイズが大きい電子部品(例えば、5025、3225サイズの電子部品)に対して有効である。
【0012】
次に、多層プリント配線板100の製造方法を説明する。
図2は、多層プリント配線板100の製造方法を示す図である。
まず、図2(a)に示すように、ビルドアップ工法や貼り合わせ工法等により、絶縁層10〜14を介して複数の配線層20〜24を積層してなる多層プリント配線板を製造する。この際、第3配線層24にランド24aを形成する。ランド24aは、電子部品30の2つの電極32に対応する位置にそれぞれ形成する。なお、多層プリント配線板の製造方法については特に限定せず、他の公知の製造方法を採用することもできる。
【0013】
次いで、この多層プリント配線板に対して、表層の上面からランド24aに到達するスルーホール14aを形成する。スルーホール14aは、電子部品30の2つの電極32に対応する位置にそれぞれ形成する。これにより、ランド24aは、内層側で露出した格好となる。
そして、図2(b)〜(d)に示すように、この多層プリント配線板に対して、公知の表面実装工法により、はんだペースト42を印刷してスルーホール14a内に充填し、はんだペースト42上に電子部品30を載置し、はんだ付けを行う。これにより、電子部品30の電極32およびランド24aは、スルーホール14a内に充填されたはんだ40により接続され、多層プリント配線板100が完成する。
【0014】
このようにして、本実施の形態では、表層よりも下位の第3配線層24にランド24aを形成し、表層の上面からランド24aに到達するスルーホール14aを多層プリント配線板100に形成し、スルーホール14a内にはんだ40を充填して電子部品30の電極32およびランド24aを接続する。
これにより、電子部品30と多層プリント配線板100の熱膨張差による変位が発生しても、はんだ接合部40aに作用する熱応力を緩和することができるので、従来に比して、はんだ接合部40aにクラックが発生する可能性を低減することができる。また、電子部品30の実装を従来と同様に表層で行うことができるので、作業性を損なう可能性を低減することができる。さらに、電子部品30の電極32およびランド24aに接合されるはんだ量を増すことができるので、接合寿命の低下を抑制することができる。さらに、はんだ量を増しても、フィレット形状を大きくせず従来とほぼ同様に維持することができる。
【0015】
なお、上記実施の形態においては、第3配線層24にランド24aを形成するように構成したが、これに限らず、第1配線層20または第2配線層22にランドを形成し、表層の上面からランドに到達するスルーホールを形成し、スルーホール内にはんだを充填して電子部品30の電極32およびランドを接続するように構成することもできる。
また、上記実施の形態においては、電子部品30を表層に実装するように構成したが、これに限らず、電子部品30の外周と同径のスルーホールを表層よりも下位の階層まで形成し、形成したスルーホール内に電子部品30を実装するように構成することもできる。
【0016】
これにより、電子部品30の実装高さが小さくなるので、多層プリント配線板100の厚さを小さくすることができる。
また、上記実施の形態においては、ランド24aを水平に形成したが、これに限らず、スルーホール14aの壁面に垂直に形成してよい。また、スルーホール14aの電子部品30側の壁面を、下方が外開きとなる斜面として形成するか、または反対側の壁面を、下方が内開きとなる斜面として形成し、斜面となる壁面にランド24aを形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】多層プリント配線板100の厚さ方向の断面図である。
【図2】多層プリント配線板100の製造方法を示す図である。
【符号の説明】
【0018】
100 多層プリント配線板
10、12、14 絶縁層
14a スルーホール
20、22、24 配線層
24a ランド
30 電子部品
32 電極
40 はんだ
40a はんだ接合部
42 はんだペースト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層を介して複数の配線層を積層してなる多層プリント配線板に電子部品を表面実装する電子部品の実装構造であって、
前記電子部品の電極を接続するためのランドが前記多層プリント配線板の表層よりも下位の配線層に形成され、前記表層の上面から前記下位の配線層のランドに到達するスルーホールが前記多層プリント配線板に形成され、前記電子部品の電極および前記下位の配線層のランドが、前記スルーホール内に充填されたはんだにより接続されていることを特徴とする電子部品の実装構造。
【請求項2】
絶縁層を介して複数の配線層を積層してなる多層プリント配線板に電子部品を表面実装する電子部品の実装方法であって、
前記電子部品の電極を接続するためのランドを前記多層プリント配線板の表層よりも下位の配線層に形成し、前記表層の上面から前記下位の配線層のランドに到達するスルーホールを前記多層プリント配線板に形成し、前記スルーホール内にはんだを充填して前記電子部品の電極および前記下位の配線層のランドを接続することを特徴とする電子部品の実装方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−206120(P2009−206120A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43957(P2008−43957)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】