説明

電子部品の製造方法およびセラミックグリーンシート積層体用導体ペースト

【課題】デラミネーションの発生を低減させ、かつ寸法精度を向上させる電子部品の製造方法およびセラミックグリーンシート積層体用導体ペーストを提供すること。
【解決手段】第1のセラミックグリーンシート層2と第2のセラミックグリーンシート層3とが積層されたセラミックグリーンシート4を準備する工程と、セラミックグリーンシート4上に導体層5を形成する工程と、導体層5が形成された複数のセラミックグリーンシート4を積層して加熱することによってセラミックグリーンシート積層体6を作製する工程と、セラミックグリーンシート積層体6を焼成する工程とを有し、前記第1のセラミックグリーンシート層2および前記導体層5が、前記セラミックグリーンシート積層体6を作製する工程における加熱により溶融状態となる溶融成分を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層コンデンサや積層セラミック配線基板等のような電子部品の製造方法およびセラミックグリーンシート積層体用導体ペーストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化に伴い、積層コンデンサや積層セラミック配線基板のような電子部品において、小型化および高性能化が望まれている。例えば、積層コンデンサにおいては小型化および高容量化のためにより薄い誘電体層および導体層を多層化したものが求められている。また、積層セラミック配線基板においては小型化および配線導体の高密度化のためにより薄い絶縁層および配線導体層を多層に形成し、配線導体層の幅および間隔や、貫通導体の形状もより微細なものが求められている。
【0003】
このような電子部品は、セラミック粉末に有機バインダー、溶剤等を加えてスラリーとし、ドクターブレード等によりセラミックグリーンシート(以下、グリーンシートともいう)を成形した後、金属粉末を含有する導体ペーストを印刷するなどして前記グリーンシート上に導体層を形成し、ついで複数枚の導体層が形成されたグリーンシートを積層して加圧することにより圧着して積層体を得て、この積層体を焼成することで得られる。
【0004】
また、電子部品の製造方法として、セラミックグリーンシート間のデラミネーションの発生を低減させることを目的に、セラミックグリーンシートを積層する工程における加熱により溶融する溶融成分を含有するセラミックグリーンシート層を含むセラミックグリーンシートを用いたものが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−277167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の電子部品の製造方法は、セラミックグリーンシートの積層体において、セラミックグリーンシートに形成された導体層と他のセラミックグリーンシートとが重なる部分や、異なるセラミックグリーンシートに形成された導体層同士が重なる部分でデラミネーションが発生しやすくなるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点を解決するために案出されたものであり、その目的は、デラミネーションの発生を低減させ、かつ寸法精度を向上させる電子部品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子部品の製造方法は第1のセラミックグリーンシート層と第2のセラミックグリーンシート層とが積層されたセラミックグリーンシートを準備する工程と、前記セラミックグリーンシート上に導体層を形成する工程と、前記導体層が形成された複数の前記セラミックグリーンシートを積層して加熱することによってセラミックグリーンシート積層体を作製する工程と、前記セラミックグリーンシート積層体を焼成する工程とを有し、前記第1のセラミックグリーンシート層および前記導体層が、前記セラミックグリーンシート積層体を作製する工程における加熱により溶融状態となる溶融成分を含むことを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の電子部品の製造方法は、好ましくは前記導体層に含有された溶融成分の融点が35乃至100℃であることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の電子部品の製造方法は、前記導体層は、導体材料粉末と前記溶融成分とバインダーとからなり、前記溶融成分の量は前記有機バインダー100質量%に対して50乃至100質量%であり、かつ、前記溶融成分と前記有機バインダーとからなる有機成分の配合量は前記導体材料粉末100体積%に対して1乃至5体積%であることを特徴とするものである。
【0010】
本発明のセラミックグリーンシート積層体用導体ペーストは、セラミックグリーンシート積層体を作製する工程における熱処理の温度で溶融状態となる溶融成分を含むことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のセラミックグリーンシート積層体用導体ペーストは、前記熱処理の温度が35乃至100℃であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電子部品の製造方法は、前記第1のセラミックグリーンシート層および前記導体層が、前記セラミックグリーンシート積層体を作製する工程における加熱により溶融状態となる溶融成分を含むことにより、導体層が積層時の加熱で導体層の表面に接着性を発現するので、セラミックグリーンシートに形成された導体層および他のセラミックグリーンシートや、異なるセラミックグリーンシートに形成された導体層同士を、低圧力でも十分に密着させることができる。
【0013】
また、本発明の電子部品の製造方法は、前記導体層に含有された溶融成分の融点が35乃至100℃であることにより、室温で導体ペーストをスクリーン印刷法等により塗布することで導体層を形成する際に、導体ペーストの粘着性が大きくなることがないので、通常の導体ペーストと同様に導体層を形成することが可能である。また、形成された導体層が積層工程までは接着性を発現しないので、ハンドリングが容易であり、加工クズ等のダストが付着することもない。また、積層体を作製する工程における加熱はセラミックグリーンシート中の有機バインダーや可塑剤等の有機成分が分解するような温度(120℃以上)で加熱しなくてもよいので、分解ガスによりデラミネーションの発生を低減させることができる。
【0014】
また、前記導体層は、導体材料粉末と前記溶融成分とバインダーとからなり、前記溶融成分の量は前記有機バインダー100質量%に対して50乃至100質量%であり、かつ、前記溶融成分と前記有機バインダーとからなる有機成分の配合量は前記導体材料粉末100体積%に対して1乃至5体積%であることにより、溶融成分がセラミックグリーンシート積層体を作製する工程における加熱により溶融状態となった際に、導体層の表面が接着性を発現するにとどまり、溶融した第2の溶融成分が流動することにより変形してしまうことはない。
【0015】
このように、本発明の製造方法によれば、セラミックグリーンシート間に空隙を発生させることがなく、セラミックグリーンシートや導体層の変形を抑えたセラミックグリーンシート積層体を得ることが可能となり、また、セラミックグリーンシート状に形成された導体層同士が上下に位置するように載置された場合においても、本発明の製造方法により作製された電子部品はデラミネーションがなく、高い寸法精度を有する電子部品となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の電子部品の製造方法について以下に詳細に説明する。図1は本発明の電子部品の製造方法の実施の形態の一例を示す工程毎の断面図であり、1は支持体、2は第1のセラミックグリーンシート層、3は第2のセラミックグリーンシート層、4はセラミックグリーンシート、5は導体層、6はセラミックグリーンシート積層体である。
【0017】
まず図1(a)に示すように、支持体1上に第1のセラミックグリーンシート層2を形成し、ついで図1(b)に示すように、第1のセラミックグリーンシート層2上に第2のセラミックグリーンシート層3を形成することにより第1のセラミックグリーンシート層と第2のセラミックグリーンシート層3とが積層されたセラミックグリーンシート4を準備する。
【0018】
本発明における第1のセラミックグリーンシート層2および第2のセラミックグリーンシート層3は、セラミック粉末、有機バインダー、溶剤等を混合したものを用いて形成される。第1のセラミックグリーンシート層はさらに加熱時に溶融状態となる溶融成分を含有する。
【0019】
セラミック粉末としては、例えばセラミック配線基板であれば、Al,AlN,ガラスセラミック粉末(ガラス粉末とフィラー粉末との混合物)等が挙げられ、積層コンデンサであればBaTiO系,PbTiO系等の複合ペロブスカイト系セラミック粉末が挙げられ、電子部品に要求される特性に合わせて適宜選択される。
【0020】
ガラスセラミック粉末のガラス成分としては、例えばSiO−B系、SiO−B−Al系,SiO−B−Al−MO系(ただし、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO−Al−MO−MO系(ただし、MおよびMは同じまたは異なっていて、Ca,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO−B−Al−MO−MO系(ただし、MおよびMは上記と同じである),SiO−B−MO系(ただし、MはLi、NaまたはKを示す,SiO−B−Al−MO系(ただし、Mは上記と同じである),Pb系ガラス,Bi系ガラス等が挙げられる。
【0021】
また、ガラスセラミック粉末のフィラー粉末としては、例えばAl,SiO,ZrOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、TiOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,AlおよびSiOから選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等のセラミック粉末が挙げられる。
【0022】
第1のセラミックグリーンシート層2に配合される第1の有機バインダーおよび第2のセラミックグリーンシート層3に配合される第2の有機バインダーとしては、従来よりセラミックグリーンシートに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラール系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。焼成工程での分解、揮発性を考慮すると、アクリル系バインダーがより好ましい。さらに第1のセラミックグリーンシート層2に配合される第1の有機バインダーは共重合によりプラスの極性を示す官能基を導入することができるので好ましい。例えば、プラスの極性を示す官能基としては、アルキル基,アミド基,アミノ基等が挙げられる。第1のセラミックグリーンシート層2に配合される加熱時に溶融状態となる溶融成分は官能基にマイナスとなるヒドロキシル基を有しているので、第1の有機バインダーの官能基がプラスとなる官能基を有する場合、極性が異なることから、第1の有機バインダーの官能基と溶融成分の官能基とが結びつき、溶融成分が凝集することなく第1の有機バインダー中に良好に分散させることできるので、積層時に加熱した際に第1のセラミックグリーンシート層2が全体にわたり均一に軟化することとなる。その結果、導体層周囲や導体層間に空隙が発生することなくセラミックグリーンシート同士が全面にわたり密着することとなり、セラミックグリーンシート積層体6を焼成して得られる電子部品はデラミネーションの発生のないものとなる。
【0023】
第1のセラミックグリーンシート層2に含有される溶融成分は、セラミックグリーンシート積層体7を作製する際の加熱時に溶融状態となるものであり、焼成工程での分解、揮発性を考慮すると、二重結合を含まない高級アルコール、脂肪族アルコールおよび多価アルコールがより好ましい。
【0024】
また、溶融成分の官能基がヒドロキシル基を有し、第1のバインダーの官能基がアミド基を有していることが好ましい。焼成工程での分解、揮発性を考慮すると、溶融成分は脂肪族アルコールや多価アルコールが好ましく、第1のバインダーはアクリル系バインダーが好ましい。この脂肪族アルコールや多価アルコールはマイナスの極性を示すヒドロキシル基を有するものであるので、バインダーの官能基はプラスの極性を示すものがよい。アクリル系バインダーに導入される、プラスの極性を示す官能基としてはアクリル系バインダーのアクリル酸、メタクリル酸との合成の容易さ、溶剤への分散性からアミド基が好ましい。
【0025】
溶融成分は上記のものの中でも、その融点が35乃至100℃であるものが好ましい。これは、この範囲の融点のものを用いると、常温では第1のセラミックグリーンシート層2が軟化して変形することはないので、積層工程までのハンドリングが容易となり、セラミックグリーンシート積層体6を作製する工程における加熱時にセラミックグリーンシート4中の有機バインダーや可塑剤等の有機成分が分解することがないので、分解ガスによりデラミネーションが発生してしまうことがないからである。融点が35乃至100℃である溶融成分としては具体的には、ヘキサデカノール,ポリエチレングリコール,ポリグリセロール,ステアリルアミド,オレイルアミド,エチレングリコールモノステアレート,パラフィン,ステアリン酸,シリコーン等が挙げられる。これらの中で焼成工程での分解、揮発性がよく、ヒドロキシル基を有するものは、ヘキサデカノール,ポリエチレングリコール,ポリグリセロールである。
【0026】
好ましくは、第1のセラミックグリーンシート層2に含有される溶融成分の含有量は、第1の有機バインダー100質量%に対して50乃至100質量%とするのがよい。溶融成分の量が50質量%より少ないと、第1の有機バインダーと結びつき第1の有機バインダー中に分散する溶融成分の絶対量が足りなくなるので、積層体6を作製する工程の加熱時に第1のセラミックグリーンシート層2が全体にわたり軟化せず粘着性が得られない、または第1のセラミックグリーンシート層2が均一に軟化せず粘着性のない部分ができてしまうこととなり、焼成して得られる電子部品はデラミネーションが発生してしまう。溶融成分が100質量%より多いと、第1の有機バインダーと結びつく溶融成分が過多となり、第1の有機バインダー中に分散しきれない溶融成分が凝集してしまう部分が発生し、この部分は第1の有機のバインダーが存在せず粘着性を有さない部分となるので、この部分に焼成して得られるセラミック電子部品のデラミネーションが発生してしまうこととなる。
【0027】
さらに好ましくは第1のセラミックグリーンシート層2の有機成分の配合量は、第1のセラミックグリーンシート層2に含まれる無機粉末100質量%に対して10乃至50質量%であるのがよい。有機成分の量が10質量%より少ないと、無機成分と結びつくことで第1のセラミックグリーンシート層2中に分散させる役割をもつ有機成分の絶対量が足りなくなるので、積層体6を作製する工程の加熱時に第1のセラミックグリーンシート層2が全体にわたり粘着性が得られないか、または第1のセラミックグリーンシート層2の粘着性が均一でない部分ができることとなり、焼成して得られる電子部品はデラミネーションが発生してしまう。有機成分が50質量%より多いと、無機成分と結びつく有機成分が過多となり、第1のセラミックグリーンシート層2中に分散しきれない有機成分が凝集してしまう部分が発生する。この部分は有機成分が存在し粘着性を有するものの、無機成分が存在しない部分となるので、焼成時における有機成分の除去によって得られる電子部品の中に空隙や空隙に起因するデラミネーションが発生することとなる。ここで、有機成分とは第1の有機バインダーと溶融成分とのことである。第1のセラミックグリーンシート層2を形成する際には、溶剤および可塑剤や分散剤等も含むスラリーを用いるが、スラリーを乾燥させて第1のセラミックグリーンシート層2とするので第1のセラミックグリーンシート層2の有機成分には蒸発してしまう溶剤は含まれず、可塑剤や分散剤等はその量が少ないため、有機成分とは第1の有機バインダーと溶融成分としている。
【0028】
第1のセラミックグリーンシート層2は、上記無機粉末,有機バインダー,溶融成分に溶剤(有機溶剤,水等)、必要に応じて所定量の可塑剤や分散剤を加えてスラリーを得、これをPETフィルム等の支持体上にドクターブレード法,リップコーター法,ダイコーター法等により成形することによって得られる。第1のセラミックグリーンシート層2の厚さは、導体層とセラミックグリーンシートとの段差を埋めるために、導体層の厚みより厚くなるように形成される。セラミックグリーンシート4の積層時に変形させないように、好ましくは、第1のセラミックグリーンシート層2の厚みは第2のセラミックグリーンシート層3より薄く、さらに好ましくは第1のセラミックグリーンシート層2の厚みを出来るだけ薄くするほうがよく、導体層5の厚みより若干厚い程度10μm〜100μmとすればよい。
【0029】
また、第1のセラミックグリーンシート層2および第2のセラミックグリーンシート層3ともに、さらに可塑剤を添加してセラミックグリーンシート4の硬度や強度を調整してもよく、好ましくは第2のグリーンシート層3の引っ張り特性が降伏点強度0.5MPa以上でかつ降伏点伸度50%以下とするとよい。これは、積層体7を作製する工程において、第2のセラミックグリーンシート層3の引っ張り特性が降伏点強度0.5MPa以上であれば、加熱時に軟化した第1のセラミックグリーンシート層2を第2のセラミックグリーンシート層3でクラックや欠陥なく保持でき、かつ降伏点伸度50%以下であれば第1のセラミックグリーンシート層2が軟化しても、セラミックグリーンシート4は積層時に変形することなく高精度の寸法を保てるからである。
【0030】
第2のセラミックグリーンシート層3は、第1のセラミックグリーンシート層2に用いるスラリーに対して、溶融成分を含まないスラリーを用いて形成される。
【0031】
第1のセラミックグリーンシート層2上に第2のセラミックグリーンシート層3を形成する方法は、(1)第1のセラミックグリーンシート層2となる第1のセラミックスラリーを支持体1上に塗布・乾燥して第1のセラミックグリーンシート層2のみからなる第1のセラミックグリーンシートを作製し、同様に作製した第2のセラミックグリーンシート層3のみからなる第2のセラミックグリーンシートを第1のセラミックグリーンシートの上に積層し加熱して接着することにより形成する方法、(2)支持体1上に形成された第1のセラミックグリーンシート層2上に第2のセラミックグリーンシート3となる第2のセラミックスラリーを塗布・乾燥して形成する方法、(3)支持体1上に塗布された第1のセラミックスラリー上に第2のセラミックスラリーを塗布して乾燥することにより形成する方法が挙げられる。
【0032】
(1)の方法においては、第1のセラミックグリーンシート層2のみからなる第1のセラミックグリーンシートは比較的厚みが薄くなるのでリップコーター法等の薄い厚みを精度よく成形できる方法を使えばよく、逆に第2のセラミックグリーンシート層3のみからなる第2のセラミックグリーンシートは厚みを厚く成形できるドクターブレード法等で成形すればよい。
【0033】
(2)の方法においては、(1)と同様にリップコーター法等を用い第1のセラミックグリーンシート層2のみからなる第1のセラミックグリーンシートを成形した上にダイコーター法やリップコーター法等の押し出し式の方法を用いるとよい。第1のセラミックグリーンシート層2の第1のセラミックグリーンシートが第2のセラミックスラリーの溶剤によって若干溶解しても、これらの非接触式の塗布方法であり、また溶剤の少ないスラリーを用いることができるので、第1のセラミックグリーンシート層2と第2のセラミックグリーンシート層3のスラリーが混ざり合うことなくセラミックグリーンシート4を形成することができるのでよい。また、第1のセラミックグリーンシート層2の溶解度パラメータと第2のスラリーの溶解度パラメータとの差を3乃至8とすることによって、第1のセラミックグリーンシート層2上に第2のセラミックスラリーを塗布した際、第1のセラミックグリーンシート層2と第2のセラミックスラリーが互いに溶解することを抑制するので、第1のセラミックグリーンシート層2と第2のセラミックグリーンシート層3が混合、同一化してしまうことを防ぐことができ好ましい。また、第1のセラミックグリーンシート層2上に第2のセラミックスラリーを塗布した際、第1のセラミックグリーンシート層2上の第2のセラミックスラリーがはじかれること無く塗布することができるので、第2のセラミックスラリーの塗布時に気泡の巻き込みによる空隙も無くデラミネーションの発生を防ぐことが出来るので好ましい。
【0034】
(3)の方法においては、第1のセラミックスラリーも第2のセラミックスラリーも共にダイコーター法やリップコーター法等の押し出し式の方法を用いるとよく、これらは非接触式の塗布方法であり、また溶剤の少ない、比較的粘度の高いスラリーを用いることができるので、第1のセラミックスラリーと第2のセラミックスラリーが混ざり合うことなくセラミックグリーンシート4を形成することができるのでよい。また、第1のセラミックスラリーの溶解度パラメータと第2のセラミックスラリーの溶解度パラメータとを2以上離すことによって、支持体1に第1のセラミックスラリーを塗布し、塗布された第1のセラミックスラリー上に第2のセラミックスラリーを塗布した際、第1のセラミックスラリーと第2のセラミックスラリーが互いに溶解することを抑制するので、第1のセラミックグリーンシート層2と第2のセラミックグリーンシート層3が混合、同一化してしまうことを防ぐことが出来るのでより好ましい。
【0035】
ここで、溶解度パラメータ(Solubility Parameter)とは、有機成分の性質が似通ったものは相溶けやすいという性質をもとに数値化したものであり、SP値とも呼ばれるものである。溶解度パラメータの値が近いもの同士は溶解しやすいことを示すものであるので、有機成分の溶解力を示す指標として用いられる。本発明のセラミックスラリーの溶解度パラメータは、セラミックグリーンシート及びセラミックスラリー中の各有機成分の溶解度パラメータと各有機成分の体積分率から算出される。例えば、セラミックスラリー中に2つの有機成分が含まれ、それぞれの溶解度パラメータが5および7で、体積分率がそれぞれ70%および30%である場合のセラミックスラリーの溶解度パラメータは5×0.7+7×0.3=5.6とする。なお、有機成分の溶解度パラメータは、講談社出版「溶剤ハンドブック」(浅原昭三ほか編、1976年初版)による溶解度パラメータのデータを使用すればよい。
【0036】
第1のセラミックグリーンシート層2上への第2のセラミックグリーンシート層3の積層の際に、第1のセラミックグリーンシート層2と第2のセラミックグリーンシート層3との間に空隙を発生させる可能性があり、また第1のセラミックグリーンシート層2と第2のセラミックグリーンシート層3との密着性を向上させるためには上記(2)または(3)の方法が好ましい。さらには、上記(3)の方法では第1のセラミックグリーンシート層2と第2のセラミックグリーンシート層3の形成がほぼ同時に行なわれるので、工程が簡略化されるのでより好ましい。
【0037】
上記(1)〜(3)の方法はいずれも支持体1上に第1のセラミックグリーンシート層2を形成し、その上に第2のセラミックグリーンシート層3を形成しているが、支持体1上に第2のセラミックグリーンシート層3を形成し、その上に第1のセラミックグリーンシート層2を形成しても構わない。しかし、後述するように導体層は主に第2のセラミックグリーンシート層3上に形成され、セラミックグリーンシート4は支持体1で支持した状態で導体層を形成するのが好ましいことから、支持体1に対して第1のセラミックグリーンシート層2次に第2のセラミックグリーンシート層3の順で積層するほうが好ましい。また、上述したように第1のセラミックグリーンシート層2の厚みは薄いほうが好ましいことから、上記(1)の方法において厚みの厚い第2のセラミックグリーンシート層3を支持体1から剥がし、支持体1上に形成されている厚みの薄い第1のセラミックグリーンシート層2上に積層するほうが、支持体1から剥がすことが容易であり、厚みの薄い第1のセラミックグリーンシート層2が破損することを防ぐことが出来るので好ましい。
【0038】
次に図1(c)に示すように、セラミックグリーンシート4上に導体層を形成する。
【0039】
このとき、導体層は主にセラミックグリーンシート4の第2のセラミックグリーンシート層3の上に形成されるのが好ましい。これは、第2のセラミックグリーンシート層3は加熱時に溶融する溶融成分を含有しないことから、第2のセラミックグリーンシート層3は積層時の加熱により変形することはないので、その上に形成された導体層も変形しにくいものとなり、より高寸法精度の電子部品を得ることができるからである。また、セラミックグリーンシート4は支持体1で支持した状態で導体層を形成するのが好ましい。これは、導体層形成時の加圧などの負荷によるセラミックグリーンシート4の変形や破損を防ぐことができ、また次工程に進めるまでのハンドリング性が容易となるからである。
【0040】
ここで、後述する図1(d)に示すセラミックグリーンシート積層体を作製する工程において第2のセラミックグリーンシート層3上に重ねられる導体層5’および導体層が上下に重なり合う部分の上下いずれかの導体層5”は、後述するセラミックグリーンシート積層体を作製する工程における加熱により溶融状態となる第2の溶融成分を含有することが重要である。これにより、導体層5’および導体層5”は積層時の加熱で導体層の表面に接着性を発現するものとなるので、積層したセラミックグリーンシートが位置ずれしないように押さえる程度の低圧力でも十分に密着することができる。また、加熱しない状態では接着性を有するものではないので、室温で導体ペーストをスクリーン印刷法等により塗布することで導体層5’および導体層5”を形成する際に、導体ペーストの粘着性が大きくなることがないので通常の導体ペーストと同様に形成することが可能であり、形成された導体層5’および導体層5”は積層工程までは接着性を発現しないので、ハンドリングが容易であり、加工クズ等のダストが付着することがなくよい。
【0041】
セラミックグリーンシート4上に導体層5を形成する方法としては、導体ペーストをスクリーン印刷法やグラビア印刷法等により印刷する方法、めっき法や蒸着法等により所定パターン形状の金属膜を形成するようなセラミックグリーンシート4上に直接形成する方法、あるいは導体ペーストを印刷により所定パターン形状に形成した導体厚膜や所定パターン形状に加工した金属箔、めっき法や蒸着法等により形成した所定パターン形状の金属膜をセラミックグリーンシート4上に転写する方法がある。
【0042】
導体層5’および導体層5”は上記の導体ペーストを用いる2つ方法により形成され、導体ペーストとして第2の溶融成分を含む第2の導体ペーストを用いる。第2の導体ペーストは導体材料粉末に有機バインダー、第2の溶融成分、有機溶剤、および必要に応じて分散剤や消泡剤を加えてボールミル、プラネタリーミキサー、三本ロールミル等の混合機により混合および混練して作製される。なお、導体層5を導体ペーストを用いて形成する場合は、これに対して第2の溶融成分を含まないものを用いる。
【0043】
導体材料としては、例えばW,Mo,Mn,Au,Ag,Cu,Pd(パラジウム),Pt(白金)等の1種または2種以上が挙げられ、2種以上の場合は混合、合金、コーティング等のいずれの形態であってもよい。
【0044】
導体ペーストに配合される有機バインダーとしては、従来より導体ペーストに使用されてきた有機バインダーが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラール系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。焼成工程での分解、揮発性を考慮すると、アクリル系バインダーがより好ましい。
【0045】
第2の導体ペーストに含まれる第2の溶融成分として使用されるものは、上述した第1のセラミックグリーンシート層に含まれる溶融成分と同じものが挙げられる。
【0046】
第2の導体ペーストに配合される第2の溶融成分と有機バインダーとは互いに異なる極性を示すものが好ましい。これにより、有機バインダーの官能基と溶融成分の官能基とが結びつき、溶融成分が凝集することなく有機バインダー中に良好に分散させることできるので、積層時に加熱した際に導体層5’および導体層5”の表面に粘着性が均一に発現することとなる。例えば、有機バインダーがプラスの極性を示す官能基としてアルキル基,アミド基,アミノ基等を有し、第2の溶融成分がマイナスの極性を示す官能基としてドロキシル基を有するというものがある。より具体的には、第2の溶融成分としてヒドロキシル基を有する脂肪族アルコールや多価アルコール、有機バインダーとしてアミド基を有するアクリル系バインダーを用いると、焼成工程での分解、揮発性が良好なものとなるので好ましい。
【0047】
第2の溶融成分の融点は35乃至100℃であることが好ましい。このことにより、室温で導体ペーストをスクリーン印刷法等により塗布することで導体層5’および導体層5”を形成する際に、導体ペーストの粘着性が大きくなることがないので通常の導体ペーストと同様に形成することが可能であり、形成された導体層5’および導体層5”は積層工程までは接着性を発現しないので、ハンドリングが容易であり、加工クズ等のダストが付着することもない。また、積層体を作製する工程における加熱はセラミックグリーンシート中の有機バインダーや可塑剤等の有機成分が分解するような温度(120℃以上)で加熱しなくてもよいので、分解ガスによりデラミネーションが発生してしまうことがない。
【0048】
また、第2の溶融成分は第1のセラミックグリーンシート層2に含まれる溶融成分の融点と同程度の融点を有すること、より具体的には第2の溶融成分の融点と溶融成分の融点との差が10℃以内であることが望ましい。第2の溶融成分の融点が溶融成分の融点に対して低すぎると、第2の溶融成分を含む導体層5’および導体層5”が第1のセラミックグリーンシート層2より先に軟化してその下に位置する第2のセラミックグリーンシート層3および導体層5に接着してしまうので、隣接する導体層5’間の間隔が小さい、または導体層5’のパターン形状が環状である場合などは、導体層5’および導体層5”の付近にエアを巻き込むといった問題を発生させることになる。また逆に第2の溶融成分の融点が溶融成分の融点に対して高すぎると、第1のセラミックグリーンシート層2が先に軟化し変形することにより、まだ接着されていない導体層5’および導体層5”と導体層5との間に入ってしまう場合があり、これにより電気的接続ができなくなってしまうといった問題を発生させることになる。
【0049】
また、溶融成分の量は、第1のセラミックグリーンシート層2の下に位置する第2のセラミックグリーンシート層3、およびその上に形成された導体層5の形状に追従することが可能な程度に軟化するように調整されているのに対し、第2の溶融成分の量は導体層5’および導体層5”が変形することなく、導体層5’および導体層5”がその表面に粘着性を発現するように調整されるのが好ましい。具体的には、第2の溶融成分の量は導体層5’または導体層5”中のバインダー100質量%に対して50乃至100質量%で、かつ導体層5’または導体層5”中の第2の溶融成分と前記有機バインダーとからなる有機成分の配合量は導体層5’または導体層5”に含まれる導体材料粉末100体積%に対して1乃至5体積%であるのがよい。
【0050】
第2の溶融成分の量が50質量%より少ないと、有機バインダーと結びつき有機バインダー中に分散する溶融成分の絶対量が足りなくなるので、積層体6を作製する工程の加熱時に導体層5’および導体層5”の表面に均一な粘着性が発現せず、粘着性のない部分ができてしまうこととなる。また、第2の溶融成分が100質量%より多いと、有機バインダーと結びつく第2の溶融成分が過多となり、有機バインダー中に分散しきれない第2の溶融成分が凝集してしまう部分が発生し、この部分は有機バインダーが存在せず粘着性を有さない部分となるので、これらの部分は焼成して得られるセラミック電子部品の導体層間で剥がれが生じてしまう。
【0051】
また、有機成分の量が1体積%より少ないと、導体層5’および導体層5”中に導体材料粉末を分散させる役割をもつ有機成分の絶対量が足りなくなることから、導体層5’および導体層5”の表面において導体材料粉末(または第2の溶融成分を含む有機成分)が均一に分布しなくなるので、導体層5’および導体層5”の表面に均一な粘着性が発現しない、つまり粘着性が発現しない領域ができることとなり、デラミネーションが発生してしまう場合がある。また、導体ペーストとしても有機成分量が十分な量ではないため、印刷時にかすれや、印刷が出来ないもしくは、形成した導体が所定のパターンを保持することができないといった不具合が発生してしまうおそれがある。有機成分が5体積%より多いと所望の形状に形成された導体層5’および導体層5”が変形しやすくなってしまい、例えば導体層5’同士の間隔が狭い場合などはショートしてしまうおそれがある。また、導体材料粉末と結びつく有機成分が過多となり、導体層5中に分散しきれない有機成分が凝集してしまう部分が発生しやすくなる。この部分は有機成分が存在し粘着性を有するものの、無機成分が存在しない部分となるので、この部分が大きいと焼成時に有機成分が除去されることにより導体中に空隙が発生してしまうこととなり、この空隙に起因するデラミネーションが発生しやすくなる。なお、導体層5’および導体層5”を形成する際に用いる第2の導体ペーストは、有機成分として有機バインダーと第2の溶融成分以外に溶剤や分散剤等も含むが、第2の導体ペーストが乾燥して導体層5’および導体層5”となるので有機成分には蒸発してしまう溶剤は含まれず、分散剤等はその量が極めて少ないためその影響は極めて小さいので、省いて考えることができる。
【0052】
導体層が上下に重なり合う部分において第2の溶融成分を含有するのは、上下いずれか一方でもよいし、上下の両方でもよい。上述したように導体層5は第2のセラミックグリーンシート層3の上に形成されることから、この導体層5と同時に形成すると生産効率が良いので、下に位置する導体層は第2の溶融成分を含まず、上に位置する導体層のみが第2の溶融成分を含むようにすればよい。また、図1(d)のように第2の溶融成分を含む導体層5’が同一面内に形成される場合も同様に、上に位置する導体層が第2の溶融成分を含むようにすればよく、下に位置する導体層は第2の溶融成分を含まない導体層5であってもよい。第2の溶融成分および有機バインダーの量を少なくすることでより導体層5”の変形を抑える場合は、上下ともに第2の溶融成分を含むようにして接着性を補うこともできる。
【0053】
なお、導体層5、導体層5’および導体層5”を形成する前に、必要に応じてセラミックグリーンシート4を介して上下に位置する導体層5、導体層5’および導体層5”を接続するためのビアホール導体やスルーホール導体等の貫通導体を形成してもよい。これら貫通導体は、パンチング加工やレーザ加工等によりセラミックグリーンシート4に形成した貫通孔に、貫通導体用の導体ペーストを印刷やプレス充填により埋め込むもしくは側面に塗布する等の手段によって形成される。貫通導体用の導体ペーストは、第2の導体ペーストに対して第2の溶融成分を含まず、充填性を考慮して有機バインダーや溶剤の量を調整することにより粘度を調整したものであり、第2の導体ペーストと同様にして作製され、また、セラミックグリーンシート4の焼成収縮挙動に合わせるためにガラスやセラミックの粉末を添加してもよい。
【0054】
次に、図1(d)に示すように、導体層5、導体層5’および導体層5”が形成された複数のセラミックグリーンシート4を位置合わせして積層して加熱することによってセラミックグリーンシート積層体6を作製する。加熱の温度は、溶融成分が溶融状態となり第1のセラミックグリーンシート層2が軟化して変形するとともに、第2の溶融成分が溶融状態となり導体層5’および導体層5”の表面に接着性が発現する程度の温度、つまり溶融成分および第2の溶融成分の融点以上の温度である。このとき、積層したセラミックグリーンシート4が位置ずれしないように、また、軟化した第1のセラミックグリーンシート層2を第2のセラミックグリーンシート層3およびその上に形成された導体層5のパターン形状に追従して変形するのを補助するために押さえる程度の加圧を行なうと、より精度よく確実な圧着が可能となる。
【0055】
セラミックグリーンシート積層体6を作製する工程において、第1のセラミックグリーンシート層2は加熱時に溶融する溶融成分を含有することから、導体層5、導体層5’および導体層5”が形成されたセラミックグリーンシート4を積層して加熱した際に第1のセラミックグリーンシート層2が軟化するので、第1のセラミックグリーンシート層2はその下に位置するセラミックグリーンシート4の第2のセラミックグリーンシート層3およびその上に形成された導体層5の形状に追従して変形することとなる。
【0056】
また、第1のセラミックグリーンシート層2は、加熱時に溶融する溶融成分を含有することから、加熱のみで第1のセラミックグリーンシート層2が軟化して接着性を有するものとなるので、大きな加圧力によりセラミックグリーンシート4を圧着させる必要がない。そして、第2のセラミックグリーンシート層3は加熱時に溶融する溶融成分を含有しないことから、第2のセラミックグリーンシート層3は加熱時に変形することはなく、積層したセラミックグリーンシート4が位置ずれしないように、また、軟化した第1のセラミックグリーンシート層2を第2のセラミックグリーンシート層3およびその上に形成された導体層6のパターンの形状に追従して変形するのを補助するために押さえる程度では変形しないものである。よって、セラミックグリーンシート4およびその上に形成された導体層5、導体層5’および導体層5”の形状が変形することがなく、さらに加圧によるセラミックグリーンシート4への歪がなく得られるセラミックグリーンシート積層体6およびそれを焼成して得られる電子部品は高い寸法精度を有するものとなる。
【0057】
さらに、導体層5’および導体層5”は、積層時の加熱により溶融状態となる第2の溶融成分を含有することから、積層時の加熱で導体層5’および導体層5”の表面は粘着性を発現するので、低圧力によりセラミックグリーンシート4を圧着させても、溶融成分を含まない第2のセラミックグリーンシート層3や導体層5と十分に密着することができる。これにより、導体層5’および導体層5”の周囲に空隙が発生することがなくなるので、セラミックグリーンシート積層体7を焼成して得られる電子部品はデラミネーションの発生のないものとなる。
【0058】
セラミックグリーンシート4の加熱条件は、溶融成分の融点以上の温度に保持される時間を0.3秒以上5秒以下とするのが望ましい。加熱条件を上記のようにすると、セラミックグリーンシート4の第1のセラミックグリーンシート層2の溶融成分が過剰に溶融することがなく、第1のセラミックグリーンシート層2の流動を抑えることができるので、キャビティ構造やビアホール等に第1のセラミックグリーンシート層2が流れ込んでしまうこともなく、その結果、キャビティ内に配置された電極パターン上を覆ったり、ビアホールの穴を塞ぐことなく、これらの電気的接続を確保することが可能となる。
【0059】
なお、セラミックグリーンシート4の加熱温度が、第1のセラミックグリーンシート層2の溶融成分の融点よりも低い場合や溶融成分の融点以上の温度における加熱時間が0.3秒に満たない場合には、溶融成分の溶融が不十分となりセラミックグリーンシート4の第1のセラミックグリーンシート層2が軟化して発生する接着性が低下することから、積層体7内部の導体層5、導体層5’および導体層5”の周囲に空隙が生じデラミネーションが部分的に発生し、溶融成分の融点以上の温度に保持される時間が5秒を超えてしまうと、加熱による溶融成分の流動が大きくなってしまい、セラミックグリーンシート積層体6が変形してしまったり、軟化した第1のセラミックグリーンシート層2が、キャビティやビアホール等に流れ込んでしまったりする場合がある。さらにはセラミックグリーンシート4の加熱温度が100℃を超えるような場合は、セラミックグリーンシート積層体6中の有機バインダーや可塑剤等の有機成分が分解しやすくなり、分解ガスによりデラミネーションが発生しやすくなってしまう。
【0060】
セラミックグリーンシート積層体7を作製する工程の加圧力は3〜20kgf/cm(2.94×10〜19.6×10Pa)にすることが好ましい。加圧力が3kgf/cm(2.94×10Pa)未満だと、圧着面との接触が不均一になり、セラミックグリーンシート積層体6に均一な温度をかけにくくなるので、セラミックグリーンシート積層体7内部の導体層5の周囲に空隙が生じデラミネーションが部分的に発生してしまう場合がある。一方、加圧力が20kgf/cm(19.6×10Pa)を超えると軟化した第1のセラミックグリーンシート層2が押出される形で流動するので、キャビティ内やビアホール等に第1のセラミックグリーンシート層2が流れ込んでしまい、キャビティ内に配置された電極パターン上を覆ったり、ビアホールの穴を塞ぐこととなってしまいやすい。
【0061】
セラミックグリーンシート4を積層するための積層装置は、圧着面に加熱部を有し内部に冷却部を有した上パンチ部と、セラミックグリーンシート4に導体層5、導体層5’および導体層5”が形成された積層体7を支持する下パンチ部とからなるものを用いることが好ましい。上パンチ部の加熱部は、通電することによって板状の抵抗体を発熱させる構造をとっているものすることにより、セラミックグリーンシート積層体6を均一に加熱することが容易となり、さらに、抵抗体の発熱量を抵抗体材料の種類や厚みにより調整できるため、セラミックグリーンシート積層体6の形状などに応じて加熱量を調整することができ、セラミックグリーンシート積層体6の変形や、キャビティ構造やビアホール等に溶融成分を含んだ軟化した第1のセラミックグリーンシート層2が流れ込んでしまうことを一層効果的に抑えることができる。また、冷却部を有することから上パンチを発熱させたのちに瞬時に冷却できるので、上記のような好ましい短時間の加熱がより容易となる。
【0062】
また、積層装置は、油圧サーボ方式や電気サーボ方式を用いて、上パンチ部や下パンチ部がセラミックグリーンシート4の圧着の際に可動する構造のものが好ましい。このような積層装置によれば、パンチの加圧力を所望に応じて調整できるのでセラミックグリーンシート積層体6の積層時の加圧力を小さくできる。さらに、圧着した状態でセラミックグリーンシート積層体6のパンチの加圧力を細かく制御することができるので、セラミックグリーンシート積層体6の変形や、キャビティ構造や貫通導体等に溶融成分を含んだ軟化した第1のセラミックグリーンシート層2が流れ込んでしまうことをさらに効果的に抑えることができる。
【0063】
図1(d)の最下部に位置するセラミックグリーンシートとしては、第2のセラミックグリーンシート層3のみで構成されるセラミックグリーンシート4’を用いればよい。積層コンデンサのように表面に導体層5、導体層5’および導体層5”が露出しないような電子部品の場合は、図1(d)の最上部に位置するセラミックグリーンシート4には導体層5、導体層5’および導体層5”が形成されていないセラミックグリーンシート4を用いればよく、積層セラミック配線基板のような両面に導体層5が露出するような電子部品の場合は、最下部のセラミックグリーンシート4’のセラミックグリーンシート積層体6の表面となる面にも導体層5を形成したものを用いればよい。
【0064】
そして最後に、セラミックグリーンシート積層体6を焼成することにより本発明の電子部品が作製される。焼成する工程は有機成分の除去と無機粉末の焼結とから成る。有機成分の除去は100〜800℃の温度範囲でセラミックグリーンシート積層体6を加熱することによって行い、有機成分を分解、揮発させ、焼結温度はセラミック組成により異なり、約800〜1600℃の範囲内で行なう。焼成雰囲気は無機粉末や導体材料により異なり、大気中、還元雰囲気中、非酸化性雰囲気中等で行なわれ、有機成分の除去を効果的に行なうために水蒸気等を含ませてもよい。
【0065】
セラミック材料としてガラスセラミックスのような低温焼結材料を用いる場合は、セラミックグリーンシート積層体6の上下面にさらに拘束グリーンシートを積層して焼成し、焼成後に拘束シートを除去するようにすれば、より高寸法精度のセラミック基板を得ることが可能となる。拘束グリーンシートは、Al等の難焼結性無機材料を主成分とするグリーンシートであり、焼成時に収縮しないものである。この拘束グリーンシートが積層された積層体は、収縮しない拘束グリーンシートにより積層平面方向(xy平面方向)の収縮が抑制され、積層方向(z方向)にのみ収縮するので、焼成収縮に伴う寸法ばらつきが抑制される。このときの拘束グリーンシートも本発明のセラミックグリーンシート4と同様の第1のセラミックグリーンシート層2と第2のセラミックグリーンシート層3とを有する構成にすると、拘束グリーンシートを積層して圧着する際にも大きな加圧力を必要とせず、得られる電子部品はより高寸法精度のものとなるのでよい。
【0066】
また、拘束グリーンシートには難焼結性無機成分に加えて、焼成温度以下の軟化点を有するガラス成分、例えばセラミックグリーンシート4中のガラスと同じガラスを含有させるとよい。焼成中にこのガラスが軟化してセラミックグリーンシート4と結合することによりセラミックグリーンシート4と拘束グリーンシートとの結合が強固なものとなり、より確実な拘束力が得られるからである。このときのガラス量は難焼結性無機成分とガラス成分を合わせた無機成分に対して0.5〜15質量%とすると拘束力が向上し、かつ拘束グリーンシートの焼成収縮が0.5%以下に抑えられる。
【0067】
焼成後、拘束シートを除去する。除去方法としては、例えば研磨、ウォータージェット、ケミカルブラスト、サンドブラスト、ウェットブラスト(砥粒と水とを空気圧により噴射させる方法)等が挙げられる。
【0068】
焼成後の電子部品はその表面に露出した導体層5の表面には、導体層5の腐食防止のために、または半田や金属ワイヤ等の外部基板や電子部品との接続手段の良好な接続のために、NiやAuのめっきを施すとよい。
【0069】
以上のような方法で作製された電子部品は、その内部にデラミネーションを有さず寸法精度の高いものであるので、電子部品として要求される優れた電気特性や気密性の高いものとなる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明の方法を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0071】
〈実施例1〉
まず、第1のセラミックグリーンシート層2用に、平均粒径1μmのアルミナを90質量%、焼結助剤としてシリカ、マグネシア、カルシアと、着色顔料として遷移金属の酸化物とを合わせて10質量%の割合で調合したセラミック粉末100質量%に対して、有機バインダーとしてメタクリル酸メチル−アクリル酸エチル共重合体樹脂を19質量%の割合で、溶融成分として融点が48℃のヘキサデカノールを10質量%の割合で調合し、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、第1のスラリーを調整した。
【0072】
また、第2のセラミックグリーンシート層3用に、第1のスラリーと同様のセラミック粉末100質量%に対して有機バインダーとしてメタクリル酸メチル−アクリル酸エチル共重合体樹脂を固形分で10質量%、可塑剤としてフタル酸ジブチルを1質量%添加し、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、第2のスラリーを調整した。
【0073】
次に、ダイコーターシート成形機を用いて、成形速度2m/分にて250mmの幅でPET(ポリエチレンテレフタレート)製の支持体1上に第1のスラリーを塗工し、その上に第2のスラリーを塗工して乾燥することにより、第1のセラミックグリーンシート層2の厚みが150μm、第2のセラミックグリーンシート層3の厚みが150μmのセラミックグリーンシート4を作製した。作製されたセラミックグリーンシート4は所定の大きさ(198mm×198mm)に切断した。
【0074】
次に、モリブデン粉末を導体材料とし焼結助剤としてマグネシア、アルミナとを合わせて5質量%の割合で調合した無機材料粉末に対して、有機バインダーとしてメタクリル酸メチル−アクリル酸エチル共重合体樹脂を固形分で2.0質量%、粘度調整剤としてα―テルピネオールを0.2質量%の割合で配合し、三本ロールで混練することにより導体ペーストを作製し、この導体ペーストをスクリーン印刷法によりセラミックグリーンシート4の第2のセラミックグリーンシート層3上に印刷して第1の導体層5を形成し、第1のセラミックグリーンシートとした。
【0075】
また、導体ペーストと同様の無機材料粉末に対して、有機バインダーとしてメタクリル酸メチル−アクリル酸エチル共重合体樹脂および溶融成分として融点が48℃のヘキサデカノールを表1のような体積割合で配合し、三本ロールで混練することにより第2の導体ペーストを作製し、この第2の導体ペーストを、一部が上記導体層と重なり合うようなパターンで別のセラミックグリーンシート4の第1のセラミックグリーンシート層2上にスクリーン印刷法により印刷して第2の導体層5’(5”)を形成し、第2のセラミックグリーンシートとした。
【0076】
次に、第2の導体層5”の一部が第1の導体層5に重なるように位置合わせして第2のセラミックグリーンシートを第1のセラミックグリーンシート上に積層し、厚み方向に0.5MPa(5kg/cm)の圧力および80℃の温度で加熱圧着してセラミックグリーンシート積層体6を作製した。また、第2の導体層の一部5’は第1のセラミックグリーンシートの第2のセラミックグリーンシート層3上に重なっていた。
【0077】
最後に、得られたセラミックグリーンシート積層体6を、水蒸気を含んだ窒素雰囲気中に約1000℃の温度で1時間保持することにより有機成分を除去した後、還元雰囲気中にて約1600℃の温度で1時間焼成することで評価用のセラミック配線基板を作製した。
【0078】
〈実施例2乃至6〉
第2の導体層5’(5”)の有機バインダーと溶融成分の配合量を表1のような割合とした以外は実施例1と同様の方法でセラミック配線基板を作製した。
【0079】
〈比較例1および5乃至12〉
第2の導体層5’(5”)の有機バインダーと溶融成分の配合量を表1のような割合とした以外は実施例1と同様の方法でセラミック配線基板を作製した。
【0080】
〈比較例2乃至4〉
第2の溶融成分として融点が20℃のラウリルアルコールを用い、第2の導体層5’(5”)の有機バインダーと溶融成分の配合量を表1のような割合とした以外は実施例1と同様の方法でセラミック配線基板を作製した。
【0081】
作製されたセラミック配線基板は、セラミック配線基板の断面(クロスセクション)観察を行い、導体層5および導体層5’周囲および導体層5と導体層5”の積層界面のデラミネーションの発生、ならびに第1の導体層5’および導体層5”の形状について評価した。また、第2の導体層を形成する際に、第2の導体ペーストを所望の形状への印刷のしやすさ(印刷性)についても確認した。これらの評価結果をまとめて表1に示す。
【表1】

【0082】
表1の結果から分かるように、実施例1では、作製したセラミックグリーンシート積層体のセラミック層間や導体層周囲のデラミネーションが発生しておらず、セラミックグリーンシート積層体内部の導体層の形状も加熱、積層による変化はなく所定の形状だった。また、第2の導体ペーストを印刷する際も、通常の導体層と同等のレベルの印刷性を保持していた。
【0083】
また、第2の導体層用の有機バインダーと溶融成分の配合量を変化させた実施例2乃至5の第2の導体層においても、接着性を発現するのに十分な量の有機バインダーと溶融成分が配合されているため、作製したセラミックグリーンシート積層体のセラミック層間や導体層周囲のデラミネーションが発生していないことを確認した。また、セラミックグリーンシート積層体内部の第2の導体層の形状も加熱、積層による変化はなく所定の形状で、第2の導体ペーストを印刷する際も、通常の導体層と同等のレベルの印刷性を保持していた。
【0084】
これに対し、比較例1の第2の導体層は、その下に位置する第2のグリーンシート層もしくは導体層と接着できず、導体層の周囲や導体層間にデラミネ−ションが発生していた。これは、第2の導体層中に溶融成分が含まれていないため、加熱、積層した際に第2の導体層の表面に接着性が発現せずに、第2の導体層とセラミック層の間もしくは第1の導体層と第2の導体層の間で剥がれてしまい、デラミネーションが発生していた。
【0085】
また、比較例2の第2の導体層の一部は、その下に位置する第2のグリーンシート層もしくは導体層と接着できず、導体層の周囲や導体層間にデラミネ−ションが発生していた。これは、有機バインダーと結びつき有機バインダー中に分散する溶融成分の絶対量が足りないため、第2の導体層の表面に均一な粘着性が発現せず、粘着性のない部分ができてしまったため、導体層の周囲や導体層間に空隙が発生し、デラミネ−ションに至ったと考えられる。また、溶融成分の融点が低いため、スクリーン印刷法により第2の導体層を形成する際、第2の導体ペーストは、高い粘着性を発現し、製版枠から掻き出されにくく、印刷性が悪かった。そのため、特に微細な形状のパターンは所定の形状に印刷されなかった。
【0086】
また、比較例3の第2の導体層は、作製したセラミックグリーンシート積層体のセラミック層間や導体層周囲のデラミネーションが発生しておらず、セラミックグリーンシート積層体内部の第1の導体層の形状も加熱、積層による変化はなく所定の形状だった。しかし、比較例2の第2の導体層と同様に、溶融成分の融点が低いため、スクリーン印刷法により第2の導体層を形成する際、第2の導体ペーストは、高い粘着性を発現し、製版枠から掻き出されにくく、印刷性が悪かった。
【0087】
また、比較例4の第2の導体層の一部は、その下に位置する第2のグリーンシート層もしくは導体層と接着できず、導体層の周囲や導体層間にデラミネ−ションが発生していた。これは有機バインダーに対する溶融成分の配合量が多く、有機バインダーと結びつく溶融成分が過多となり、有機バインダー中に分散しきれない溶融成分が凝集してしまう部分が発生し、この部分は有機バインダーが存在せず粘着性を有さない部分となり、導体層の周囲や導体層間に空隙が発生し、デラミネ−ションに至ったと考えられる。また、比較例2の第2の導体層と同様に、溶融成分の融点が低いため、スクリーン印刷法により第2の導体層を形成する際、第2の導体ペーストは、高い粘着性を発現し、製版枠から掻き出されにくく、印刷性が悪かった。さらに導体粉末に対する有機成分の量が多く、加熱、積層により第2の導体層はスクリーン印刷法にて形成した所定の形状より変形してしまっていた。
【0088】
また、比較例5の第2の導体層の一部は、その下に位置する第2のグリーンシート層もしくは導体層と接着できず、導体層の周囲や導体層間にデラミネ−ションが発生していた。これは導体粉末に対する有機成分の配合量が、接着性を発現するのに十分な量で配合されていないため、第2の導体層の表面に均一に接着性が発現せずに、セラミック層間もしくは導体層間で剥がれてしまっている部分が存在した。また、導体ペーストとしても有機成分量が十分な量ではないため、微細な導体パターンにおいて印刷時にかすれや、印刷が出来ないといった不具合が発生した。
【0089】
また、比較例6の第2の導体層は、その下に位置する第2のグリーンシート層もしくは導体層と接着しており、導体層の周囲や導体層間にデラミネ−ションは発生していなかった。しかし、比較例5の導体層と同様に、導体ペーストとして、有機成分量が十分な量ではないため、微細な導体パターンにおいて印刷時にかすれや、印刷が出来ないといった不具合が発生した。
【0090】
また、比較例7および8の第2の導体層の一部は、その下に位置する第2のグリーンシート層もしくは導体層と接着できず、一部、導体層の周囲や導体層間にデラミネ−ションが発生していた。これは、導体粉末に対する有機バインダーと溶融成分の配合量が、接着性を発現するのに十分な量で配合されていないため、第2の導体層の表面に均一に接着性が発現せずに第2の導体層とセラミック層の間もしくは第1の導体層と第2の導体層間の一部分が剥がれてしまって小さなデラミネーションが存在した。
【0091】
また、比較例9の第2の導体層の一部は、その下に位置する第2のグリーンシート層もしくは導体層と接着できず、導体層の周囲や導体層間にデラミネ−ションが発生していた。これは有機バインダーに対する溶融成分の配合量が多く、有機バインダーと結びつく溶融成分が過多となり、有機バインダー中に分散しきれない溶融成分が凝集してしまう部分が発生し、この部分は有機バインダーが存在せず粘着性を有さない部分となり、導体層の周囲や導体層間に空隙が発生し、デラミネ−ションに至ったと考えられる。
【0092】
また、比較例10の第2の導体層は、その下に位置する第2のグリーンシート層もしくは導体層と接着しており、導体層の周囲や導体層間にデラミネ−ションは発生していなかった。しかし、スクリーン印刷法により形成した所定パターンが変形していた。これは導体材料粉末と結びつく有機成分が過多となり、加熱、積層の際によってスクリーン印刷法により形成した所定パターンが変形してしまったと考えられる。
【0093】
また、比較例11および12の第2の導体層の一部は、その下に位置する第2のグリーンシート層もしくは導体層と接着できず、導体層の周囲や導体層間にデラミネ−ションが発生したり、スクリーン印刷法により形成した所定パターンが変形していた。これは導体材料粉末と結びつく有機成分が過多となり、導体層中に分散しきれない有機成分が凝集してしまう部分が発生し、この部分は有機成分が存在し粘着性を有するものの、無機成分が存在しない部分となるので、焼成時における有機成分の除去によって得られる電子部品の中に空隙や空隙に起因するデラミネーションが発生してしまったと考えられる。また、有機成分が導体層中に分散し、有機成分の凝集が発生していない部分においては、加熱に溶融する溶融成分の量が多いことより、積層の加圧によってスクリーン印刷法により形成した所定パターンが変形してしまったと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の電子部品の製造方法の実施の形態の一例を示す工程毎の断面図
【符号の説明】
【0095】
1・・・支持体
2・・・第1のセラミックグリーンシート層
3・・・第2のセラミックグリーンシート層
4・・・セラミックグリーンシート
5・・・セラミックグリーンシート上の導体層
6・・・セラミックグリーンシート積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のセラミックグリーンシート層と第2のセラミックグリーンシート層とが積層されたセラミックグリーンシートを準備する工程と、
前記セラミックグリーンシート上に導体層を形成する工程と、
前記導体層が形成された複数の前記セラミックグリーンシートを積層して加熱することによってセラミックグリーンシート積層体を作製する工程と、
前記セラミックグリーンシート積層体を焼成する工程とを有し、
前記第1のセラミックグリーンシート層および前記導体層が、前記セラミックグリーンシート積層体を作製する工程における加熱により溶融状態となる溶融成分を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記導体層に含有された溶融成分の融点が35乃至100℃であることを特徴とする請求項1記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記導体層は、導体材料粉末と前記溶融成分とバインダーとからなり、
前記溶融成分の量は前記有機バインダー100質量%に対して50乃至100質量%であり、かつ、前記溶融成分と前記有機バインダーとからなる有機成分の配合量は前記導体材料粉末100体積%に対して1乃至5体積%であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
セラミックグリーンシート積層体の作製工程における熱処理の温度で溶融状態となる溶融成分を含むことを特徴とするセラミックグリーンシート積層体用導体ペースト。
【請求項5】
前記熱処理の温度が35乃至100℃であることを特徴とする請求項4記載のセラミックグリーンシート積層体用導体ペースト。

【図1】
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【公開番号】特開2007−149994(P2007−149994A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−342888(P2005−342888)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】