説明

電気部品用固定用接着シート、電気部品の固定方法

【課題】電気部品を固定するに際しては粘着性を有していて作業性が良く、その後加熱することで硬化し、高い接着強度で電気部品を固定できる接着シートを提供する
【解決手段】無機フィラーを含有するエポキシ樹脂からなり、硬化後に、熱伝導率が1.5W/mK以上の硬化体を与えるBステージ状態の接着シートであり、好ましくは、絶縁破壊耐力が500V以上の硬化体を与え、その樹脂が、主鎖がポリエーテル骨格を有し直鎖状であるエポキシ樹脂であることを特徴し、更に無機フィラーが酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化硼素からなる群から選ばれる1種以上であり、更に好ましくは、少なくとも一主面に熱可塑性樹脂フィルムからなるライナーを設けてなることを特徴とする電気部品用固定用の接着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱性、応力緩和性に優れ、しかも絶縁信頼性に優れた電気部品固定用の接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の小型化が要求され、高密度実装化および高性能化が要求され、更には、半導体素子等の小型化、ハイパワー化により、狭いスペースの中で、半導体素子等から発生した熱を如何に放熱するかといったことが問題となっている。例えば混成集積回路用途に用いられるプリント配線板の製造などにBステージ状態のプリプレグが使用されている。
【0003】
プリプレグの室温におけるハンドリング性を改善させるため、樹脂シート用の樹脂組成物に、ブタジエン−アクリロニトリル共重合ゴムを加えるBステージ状態(半硬化状態)における可とう性(応力緩和性)に優れたプリプレグが公知となっているが、放熱性が乏しいため、発熱する分野では使用できない問題がある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−123043号公報
【0004】
一方、放熱性を改善させたシートとして、シリコーン樹脂に無機フィラーを充填した構成が提案されているが、Bステージ状態ではないため、加熱しても接着性が発現しないため、プリント配線板分野では使用できない問題がある。
【特許文献2】特開平7−14950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、電気部品を固定するに際しては粘着性を有していて作業性が良く、その後加熱することで硬化させ、高い接着強度で電気部品を固定できる接着シートを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、無機フィラーを含有するエポキシ樹脂からなり、硬化後に、熱伝導率が1.5W/mK以上の硬化体を与えるBステージ状態の接着シートであり、好ましくは、絶縁破壊耐力が500V以上の硬化体を与え、その樹脂が、主鎖がポリエーテル骨格を有し直鎖状であるエポキシ樹脂であることを特徴し、更に無機フィラーが酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化硼素からなる群から選ばれる1種以上であり、更に好ましくは、少なくとも一主面に熱可塑性樹脂フィルムからなるライナーを設けてなることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、電気部品と他の電気部品又は放熱部品若しくは筐体とを、前記の接着シートを介して接着し、100℃以上に加熱することで接着シートを硬化することを特徴とする電気部品の固定方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の接着シートは、熱伝導性、絶縁性、低弾性率に優れる硬化体を与えるので、半導体素子等の小型化、ハイパワー化に発熱に対応でき、半導体素子、半導体装置、回路用金属板、前記金属板からなる回路、回路基板、混成集積回路分野といった電気部品の固定に使用することができる。また、本発明の電気部品の固定方法によれば、電気部品の固定作業を作業性良く、しかもしっかりと電気部品を固定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明の接着シートは、無機フィラーを含有するエポキシ樹脂からなり、硬化後に熱伝導率が1.5W/mK以上である硬化体を与える、しかもBステージ状態の接着シートである。また、好ましい実施態様に於いて、絶縁破壊耐力が500V以上の硬化体を与える。従い、電気部品を他の電気部品や放熱部品若しくは筐体と接して固定することができ、しかも、当該電気部品と他の電気部品や放熱部品若しくは筐体と高い電気絶縁性を確保しながらも優れた伝熱特性を発揮し、電気部品が高い信頼性をもって稼働することができるようにする効果を発揮する。
【0011】
エポキシ樹脂としては、例えばナフタレン型、フェニルメタン型、テトラキスフェノールメタン型、ビフェニル型、およびビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物型のエポキシ樹脂等があげられるが、このうち応力緩和性という理由で、主鎖がポリエーテル骨格を有し直鎖状であるエポキシ樹脂が好ましい。主鎖がポリエーテル骨格を有し主鎖状であるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型の水素添加エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、ポリテトラメチレングリコール型エポキシ樹脂、およびポリサルファイド変性エポキシ樹脂等が挙げられ、これらを複数組み合わせて用いることもできる。
【0012】
エポキシ樹脂には硬化剤を添加することが一般的である。硬化剤としては、芳香族アミン系樹脂、酸無水物系樹脂、フェノール系樹脂及びジシアンアミドからなる群から選ばれる1種類以上好ましくを用いることができる。
【0013】
硬化剤の添加量については、エポキシ樹脂100質量部に対して、5〜50質量部であることが好ましく、10〜35質量部であることが一層好ましい。
【0014】
必要に応じて硬化触媒を使用することもできるが、硬化触媒としては、一般にイミダゾール化合物、有機リン酸化合物、第三級アミン、第四級アンモニウム等が使用され、いずれか1種類以上を選択することができる。添加量については、硬化温度により変化するため特に制限はないが、一般にエポキシ樹脂100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましい。0.01質量部以上ならば十分に硬化するし、5質量部以下ならばBステージ状態からCステージ状態にすぐに変化することもない。
【0015】
エポキシ樹脂に含有される無機フィラーとしては、電気絶縁性で熱伝導性に優れるものであればどのようなものでも構わない。このような物質として、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化硼素等が挙げられる。このうち窒化アルミウムおよび窒化硼素が高熱伝導性であるという理由で好ましい。更に、ハンドリング性および流動性を向上させるため、前記無機フィラーの粒子形状はアスペクト比が1に近いものが好ましい。球状粗粒子と球状微粒子を混ぜ合わせると破砕粒子や球状粒子を単独で用いた場合よりも高充填が可能となり、更に好ましい。
【0016】
無機フィラーのエポキシ樹脂への配合割合は、エポキシ樹脂100質量部に対して70〜95質量部が好ましく、80〜90質量部が一層好ましい。
【0017】
本発明の接着シートは、前記エポキシ樹脂に無機フィラーと、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤を特定量配合することで得られ、Bステージ状態の接着シートである。
ここで、「Bステージ状態」とは、接着シートを構成するエポキシ樹脂が室温で乾いた状態を示し、高温に加熱すると再び溶融する状態を言うが、より厳密には、DSC(示差走査型熱量計)を用いて、硬化時に発生する熱量から計算した値である硬化度が70%未満の状態を示す。尚、絶縁層のCステージ状態とは、エポキシ樹脂の硬化がほぼ終了している状態を示し、高温に加熱しても再度溶融することはない状態を言い、硬化度が70%以上のである状態をいう。そして本発明の接着シートは、電気部品を固定する際に、位置決めができる程度の粘着性を発揮し、その結果作業性が格段に向上できる。
【0018】
さらに、本発明の接着シートは、硬化後に、熱伝導率が1.5W/mK以上の硬化体を与えるものである。そして、この特性を有しているが故に、電気不分を他の電気部品又は放熱部品若しくは筐体に強固に接着し熱放散路を形成し、半導体素子、半導体装置、回路、回路基板、混成集積回路などの電気部品からの放熱を促進し、当該電気部品の過熱を防止でき、信頼性高く稼働できるようにすることができる。熱伝導率が低くなると、電子部品の放熱が不足するため使用が限られてしまう。
【0019】
本発明の接着シートは、その好ましい実施態様において、絶縁破壊耐力が500V以上の硬化体を与えることができる。この場合には、特に電気部品が回路基板、混成集積回路、あるいは回路、回路用金属板を含む場合に、高い電気的信頼性をもって電気部品を固定することができ、好ましい。特に、産業用用途では高電圧、高電流が印加されるため、1500V以上あることがさらに好ましい。
【0020】
接着シートはBステージ状態であるため、通常は、少なくとも一主面にライナーを設けて取り扱いが容易とする。発明者検討によれば、前記ライナーとして樹脂フィルムを選択することがコストおよび作業性の理由から好ましい。
【0021】
樹脂フィルムは、Bステージ化するときの耐熱性に問題なければ特に制限はなく、PE、PET、PEN、OPP等が用いられる。フィルムの厚さは、一般的に0.025〜0.5mmものが用いられ、剥離性を考慮してシリコーン樹脂、フッ素樹脂、またはオレフィン樹脂の被覆、サンドブラスト処理、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施すことが好ましい。
【0022】
本発明の接着シートは、100℃以上で加熱することで硬化することが好ましい。一般に硬化温度と高くすることで硬化時間が短くすることができる。100℃未満の場合は、5時間以上の硬化時間が必要となり生産性が低下する。150℃以上で硬化した場合は硬化時間が1時間程度となり生産性が格段によくなり一層好ましい。また、加熱温度の上限については、電気部品やエポキシ樹脂が劣化しないことを考慮して、××℃以下とすることが好ましい。

【0023】
接着シートの厚さは、硬化後に、電気部品と他の電気部品又は放熱部品若しくは筐体との電気絶縁性と熱放散性とを確保するために0.05mm以上0.5mm以下にすることが好ましい。0.05mm以上であれば電気絶縁性が確保できるし、0.5以下であればシート形成が難しくなることもない。
【実施例】
【0024】
(実施例1)
ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂(東都化成社製、「PG208GS」)とビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、「EP828」)を35:65の割合(質量比)とを混合し、前記エポキシ樹脂10質量部に対して、フェノールノボラック系硬化剤(明和化成社製、「H−1」)を5質量部添加し、更に添加剤としてカップリング剤(信越化学工業社製、「KBM403」)を1質量部添加し、更に、酸化アルミニウム(アドマテック社製、「AO802」)および窒化アルミニウム(電気化学工業社製)を硬化後の絶縁層中に60体積%となるように充填(酸化アルミニウムと窒化アルミニウムとの配合(質量)比が6:4)して絶縁物組成物を作製した。さらに硬化触媒として2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ(1,2−a)ベンズイミダゾール(四国化成社製、「TBZ」)を0.5重量部配合した。
【0025】
厚さ0.075mmのPETフィルム上に、前記絶縁層組成物を硬化後の厚さが0.15mmとなるように塗布し、130℃10分加熱乾燥して、前記絶縁層をBステージ状態にし、接着シートを得た。
【0026】
つぎに、あらかじめ脱脂処理して付着部を除去した厚さ1.5mmアルミニウム板上に、前記接着シートを介して厚さ0.035mmの銅箔を配置し、30kgf/cmの圧力をかけながら150℃60分加熱することにより前記接着シートを熱硬化し、一体化させた。この接合体について、以下に示す方法で、(1)絶縁層の熱伝導率(2)耐電圧(3)接着強度(4)弾性率を測定、評価した。
【0027】
(1)絶縁層の熱伝導率は、樹脂シートの樹脂を別途直径10mm×厚さ2mmの円板状硬化体に加工し、レーザーフラッシュ法により求めた。
【0028】
(2)耐電圧は、接合体の銅箔部に直径20mmの円電極をエッチング法により作製し、JIS C 2110に規定された段階昇圧法により、アルミ板と銅箔の間の耐電圧を測定した。
【0029】
(3)接着強度(ピール強度)は、接合体の銅箔部を10mm幅の帯状に加工し、JIS C 6481に規定された方法により求めた。
【0030】
(4)弾性率は、動的粘弾性測定器(T&Aインスツルメント社製、RSA3)を用い、周波数10Hz、昇温速度10℃/分の条件下で測定した。
【0031】
これらの結果を表1に示した。
【0032】
【表1】

【0033】
(実施例2)
ポリプレングリコール型エポキシ樹脂(阪本薬品工業社製、「SR−PTMG」)とビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、「EP828」)とビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、「EP4004P」)を35:35:30の割合(質量比)を用いる他は、実施例1と同様に試験した。結果を表1に示した。
【0034】
(実施例3)
ポリプレングリコール型エポキシ樹脂(阪本薬品工業社製、「SR−PTMG」)とビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、「EP828」)とビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、「EP4004P」)を35:35:30の割合(質量比)を用い、樹脂の組成の硬化触媒としてトリフェニルフォスフィン(北興化学社製、「TPP」)を0.4質量部用いる他は、実施例1と同様に試験した。結果を表1に示した。
【0035】
(実施例4)
ポリプレングリコール型エポキシ樹脂(阪本薬品工業社製、「SR−PTMG」)とビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、「EP828」)とビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、「EP4004P」)を35:35:30の割合(質量比)を用い、樹脂の組成の硬化剤としてビスフェノールA型ノボラック樹脂(大日本インキ社製「VH4240」)を用いる他は、実施例1と同様に試験した。結果を表1に示した。
【0036】
(実施例5)
ポリプレングリコール型エポキシ樹脂(阪本薬品工業社製、「SR−PTMG」)とビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、「EP828」)とビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、「EP4004P」)を35:35:30の割合(質量比)を用い、樹脂の組成の無機フィラーをアルミナ(昭和電工社製、「AL−173」)を用い総量を50体積%になるように配合した以外は、実施例1同様に試験した。結果を表1に示した。
【0037】
(比較例1)
無機フィラーである酸化アルミニウムと窒化アルミニウムを除いたこと以外は、実施例1と同様に試験した。結果を表1に示した。
無機フィラーがないため放熱性が大幅に低下した。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の接着シートは、特定組成のエポキシ樹脂からなるので、電位部品を他の電気部品や放熱部品若しくは筐体に容易に接着し、固定できるとともに、100℃以上に加熱することで前記エポキシ樹脂が硬化して、放熱性、応力緩和性に優れ、しかも絶縁信頼性に優れた硬化体を提供できるので、電気部品の固定用としていろいろな用途に適用できるので、産業上非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機フィラーを含有するエポキシ樹脂からなり、硬化後に、熱伝導率が1.5W/mK以上の硬化体を与えるBステージ状態の電気部品用固定用の接着シート。
【請求項2】
硬化後に、絶縁破壊耐力が500V以上の硬化体を与える請求項1記載の電気部品用固定用の接着シート。
【請求項3】
樹脂が、主鎖がポリエーテル骨格を有し直鎖状であるエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電気部品用固定用の接着シート。
【請求項4】
無機フィラーが酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化硼素からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電気部品用固定用の接着シート。
【請求項5】
少なくとも一主面に樹脂フィルムからなるライナーを設けてなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電気部品用固定用の接着シート。
【請求項6】
電気部品と他の電気部品又は放熱部品若しくは筐体とを、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の接着シートを介して接着し、100℃以上に加熱して、前記接着シートを硬化することを特徴とする電気部品の固定方法。

【公開番号】特開2008−280436(P2008−280436A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−125804(P2007−125804)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】