説明

露光装置及びフォトマスク

【課題】要求解像力の異なる2種類の露光パターンを同一の露光工程で同時に形成し、露光処理効率を向上する。
【解決手段】TFT用基板8を一方向に搬送しながら、フォトマスク3を介してTFT用基板8に光源光24を間欠的に照射し、フォトマスク3に形成された複数のマスクパターンに対応してTFT用基板8上に露光パターンを形成するもので、フォトマスク3は、一面に要求解像力が異なる電極配線パターン14と信号配線パターン17とを形成し、複数の電極配線パターン14から成る電極配線パターン群16と複数の信号配線パターン17から成る信号配線パターン群18とをTFT用基板8の搬送方向に先後して形成し、他面には、要求解像力の高い電極配線パターン14に対応して該パターンをTFT用基板8上に縮小投影するマイクロレンズ19を形成し、該マイクロレンズ19側がTFT用基板8側となるように配置されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被露光体を一方向に搬送しながら、該被露光体に露光光を間欠的に照射して露光パターンを形成する露光装置に関し、詳しくは、要求解像力の異なる2種類の露光パターンを同一の露光工程で同時に形成し、露光処理効率を向上しようとする露光装置及びフォトマスクに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来の露光装置は、一定速度で搬送される被露光体に対してフォトマスクを介して露光光を間欠的に照射し、フォトマスクのマスクパターンを所定位置に露光する露光装置であって、撮像手段によりフォトマスクによる露光位置の被露光体の搬送方向手前側の位置を撮像し、この撮像画像に基づいて被露光体とフォトマスクとの位置合わせをすると共に、露光光の照射タイミングを制御するようになっていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2008−76709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このような従来の露光装置においては、フォトマスクを垂直に透過する露光光によりフォトマスクに形成されたマスクパターンを被露光体上にそのまま転写するものであったので、フォトマスクに照射される光源光における視角(コリメーション半角)の存在により、被露光体上のパターンの像がぼやけて解像力が低下し、微細なパターンを露光形成することができないというおそれがあった。したがって、要求解像力の異なる2種類のパターンを同一の露光工程で同時に形成することができなかった。
【0004】
このような問題に対しては、要求解像力の高い微細なパターンは、解像力の高い例えば縮小投影露光装置を使用して露光形成し、要求解像力の低いパターンは、上記露光装置を使用して露光形成するという2工程に分けて行えば可能であるが、露光処理効率が悪いという問題がある。
【0005】
なお、上記縮小投影露光装置を使用して、要求解像力の異なる2種類の露光パターンを共に解像力の高い状態で同時に形成することも可能であるが、この場合、被露光体を二次元平面内をステップ移動させながら多面露光することになる。したがって、特に、大面積の被露光体に対しては、露光処理効率が極めて悪くなるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、要求解像力の異なる2種類の露光パターンを同一の露光工程で同時に形成し、露光処理効率を向上しようとする露光装置及びフォトマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明による露光装置は、被露光体を一方向に搬送しながら、フォトマスクを介して前記被露光体に光源光を間欠的に照射し、前記フォトマスクに形成された複数のマスクパターンに対応して前記被露光体上に露光パターンを形成する露光装置であって、前記フォトマスクは、透明基板の一面に形成された遮光膜に、要求解像力が異なる2種類のマスクパターンからなる二つのマスクパターン群を前記被露光体の搬送方向に先後して形成し、他面には、前記要求解像力が異なる2種類のマスクパターンのうち、要求解像力の高い一方のマスクパターンに対応して該一方のマスクパターンを前記被露光体上に縮小投影するマイクロレンズを形成し、該マイクロレンズ側が前記被露光体側となるように配置されたものである。
【0008】
このような構成により、被露光体を一方向に搬送しながら、透明基板の一面に形成された遮光膜に、要求解像力が異なる2種類のマスクパターンからなる二つのマスクパターン群を被露光体の搬送方向に先後して形成したフォトマスクを介して被露光体に光源光を間欠的に照射し、要求解像力が異なる2種類のマスクパターンのうち、要求解像力の高い一方のマスクパターンに対応して透明基板の他面に形成されたマイクロレンズで一方のマスクパターンを被露光体上に縮小投影して、該一方のマスクパターンに対応する露光パターンを形成し、要求解像力が異なる2種類のマスクパターンのうち、要求解像力の低い他方のマスクパターンに対応した露光パターンを被露光体上に形成する。
【0009】
また、前記要求解像力の高い一方のマスクパターンから成るマスクパターン群は、前記被露光体の搬送方向に略直交する方向に前記複数のマスクパターンを所定ピッチで並べて形成した複数のマスクパターン列を備え、前記被露光体の搬送方向先頭側に位置する前記マスクパターン列により形成される複数の露光パターンの間を後続のマスクパターン列により形成される複数の露光パターンにより補完可能に、前記後続のマスクパターン列を前記複数のマスクパターンの前記並び方向に夫々所定寸法だけずらして形成したものである。これにより、被露光体の搬送方向に略直交する方向に複数のマスクパターンを所定ピッチで並べて形成した複数のマスクパターン列を備え、被露光体の搬送方向先頭側に位置するマスクパターン列に対して後続のマスクパターン列を複数のマスクパターンの並び方向に夫々所定寸法だけずらして形成した要求解像力の高い一方のマスクパターンから成るマスクパターン群により、被露光体の搬送方向先頭側に位置するマスクパターン列により形成される複数の露光パターンの間を後続のマスクパターン列により形成される複数の露光パターンにより補完する。
【0010】
そして、前記被露光体は、液晶表示装置のTFT用基板であり、前記要求解像力が異なる2種類のマスクパターンのうち、前記一方のマスクパターンは、薄膜トランジスタの電極配線パターンであり、前記2種類のマスクパターンのうち、他方のマスクパターンは、前記薄膜トランジスタに信号を供給する信号配線パターンであり、前記電極配線パターンの露光パターンと前記信号配線パターンの露光パターンとが互いに接続するように前記電極配線パターンと前記信号配線パターンとを形成した。これにより、液晶表示装置のTFT用基板上に薄膜トランジスタの電極配線パターンを縮小投影して電極配線パターンに対応した露光パターンを形成し、薄膜トランジスタに信号を供給する信号配線パターンに対応する露光パターンを形成して、TFT用基板上で両露光パターンを互いに接続する。
【0011】
また、本発明によるフォトマスクは、透明基板の一面に形成された遮光膜に、要求解像力が異なる2種類のマスクパターンからなる二つのマスクパターン群を横に並べて形成し、他面には、前記要求解像力が異なる2種類のマスクパターンのうち、要求解像力の高い一方のマスクパターンに対応して、該一方のマスクパターンを対向して配置される被露光体上に縮小投影するマイクロレンズを形成したものである。
【0012】
このような構成により、透明基板の一面に形成された遮光膜に横に並べて形成した二つのマスクパターン群を夫々構成する要求解像力が異なる2種類のマスクパターンのうち、要求解像力の高い一方のマスクパターンに対応して透明基板の他面に形成されたマイクロレンズで対向して配置される被露光体上に上記一方のマスクパターンを縮小投影し、要求解像力の低い他方のマスクパターンをそのまま転写する。
【0013】
そして、前記要求解像力の高い一方のマスクパターンから成るマスクパターン群は、前記複数のマスクパターンを所定ピッチで一直線状に並べて形成した複数のマスクパターン列を備え、任意の一つのマスクパターン列に対して他のマスクパターン列を前記複数のマスクパターンの前記並び方向に夫々所定寸法だけずらして形成したものである。これにより、マスクパターン列に略直交する方向に搬送される被露光体に対して、任意の一つのマスクパターン列により形成される複数の露光パターンの間を他のマスクパターン列により形成される複数の露光パターンにより補完する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、同一のフォトマスク上に形成された要求解像力の異なる2種類のマスクパターンのうち、要求解像力の高い一方のマスクパターンをマイクロレンズで縮小投影して解像力の高い微細な露光パターンを形成し、要求解像力の低い他方のマスクパターンは、そのまま転写して広い領域をカバーする露光パターンを形成することができる。したがって、被露光体上に要求解像力の異なる2種類の露光パターンをそれらが混在した状態で形成する場合にも、同一の露光工程で同時に形成することができ、露光処理効率を向上することができる。
【0015】
また、請求項2に係る発明によれば、マイクロレンズの存在によりマスクパターン列の複数のマスクパターンの配列ピッチを狭くすることができない場合にも、被露光体の搬送方向先頭側に位置するマスクパターン列により形成される複数の露光パターンの間を後続のマスクパターン列により形成される複数の露光パターンにより補完することができる。したがって、要求解像力の高い露光パターンも稠密に形成することができる。
【0016】
そして、請求項3に係る発明によれば、液晶表示装置のTFT用基板に対して、高い解像力が要求される薄膜トランジスタの電極配線パターン、及び解像力は低くてもよい信号配線パターンの夫々に対応する要求解像力の異なる2種類の露光パターンを同一の露光工程で互いに接続させた状態で形成することができる。したがって、TFT用基板の配線パターンを効率よく形成することができる。
【0017】
また、請求項4に係る発明によれば、同一の透明基板上に形成された要求解像力の異なる2種類のマスクパターンのうち、要求解像力の高い一方のマスクパターンをマイクロレンズで縮小投影して解像力の高い微細な露光パターンを形成し、要求解像力の低い他方のマスクパターンは、そのまま転写して広い領域をカバーする露光パターンを形成することができる。したがって、被露光体上に要求解像力の異なる2種類の露光パターンをそれらが混在した状態で形成する場合にも、同一の露光工程で同時に形成することができ、露光処理効率を向上することができる。
【0018】
そして、請求項5に係る発明によれば、マイクロレンズの存在によりマスクパターン列の複数のマスクパターンの配列ピッチを狭くすることができない場合にも、マスクパターン列に略直交する方向に搬送される被露光体に対して、任意の一つのマスクパターン列により形成される複数の露光パターンの間を他のマスクパターン列により形成される複数の露光パターンにより補完することができる。したがって、要求解像力の高い露光パターンも稠密に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明による露光装置の実施形態を示す概略構成図である。この露光装置は、被露光体を一方向に搬送しながら、該被露光体に光源光を間欠的に照射して露光パターンを形成するもので、搬送手段1と、マスクステージ2と、フォトマスク3と、露光光学系4と、撮像手段5と、照明手段6と、制御手段7とを備えて構成されている。なお、ここで使用する被露光体は、透明な基板の一面に、薄膜トランジスタの例えばゲート、ドレイン、ソース電極及びそれらに接続する配線から成る電極配線パターンを所定の関係で繰り返し形成し、上記薄膜トランジスタに信号を供給する信号配線パターンを形成しようとする液晶表示装置のTFT用基板8である。
【0020】
上記搬送手段1は、ステージ9の上面に感光性樹脂を塗布したTFT用基板8を載置して所定速度で一方向(矢印A方向)に搬送するものであり、例えばモータとギア等を組み合わせて構成した移動機構によりステージ9を移動するようになっている。また、搬送手段1には、ステージ9の移動速度を検出するための速度センサーやステージ9の移動距離を検出するための位置センサー(図示省略)が設けられている。
【0021】
上記搬送手段1の上方には、マスクステージ2が設けられている。このマスクステージ2は、搬送手段1に載置されて搬送されるTFT用基板8に近接対向して後述のフォトマスク3を保持するものであり、フォトマスク3のマスクパターンの形成領域10及び覗き窓11を含む領域(図2参照)に対応して中央部を開口し、フォトマスク3の周縁部を位置決めして保持できるようになっている。そして、ステージ9の面に平行な面内にてTFT用基板8の矢印Aで示す搬送方向に略直交する方向に後述の撮像手段5と一体的に移動可能に形成されている。また、必要に応じてマスクステージ2の中心を軸として所定の角度範囲内で回動可能に形成されてもよい。
【0022】
上記マスクステージ2には、フォトマスク3が着脱可能に保持されている。このフォトマスク3は、透明基板の一面に形成された遮光膜に、要求解像力が異なる2種類のマスクパターンからなる二つのマスクパターン群をTFT用基板8の搬送方向に先後して形成し、他面には、上記2種類のマスクパターンのうち、要求解像力の高い一方のマスクパターンに対応して該一方のマスクパターンをTFT用基板8上に縮小投影するマイクロレンズを形成したものであり、該マイクロレンズ側がTFT用基板8側となるようにマスクステージ2に保持されている。
【0023】
具体的には、フォトマスク3は、図2(b)に示すように、例えば石英ガラスから成る透明基板12の一方の面12aに遮光膜となる不透明なクロム(Cr)膜13を形成し、該クロム(Cr)膜13には、同図(a)に破線で示すパターン形成領域10内に所定形状の開口パターンから成る要求解像力の高い薄膜トランジスタの複数の電極配線パターン14(図3参照)をTFT用基板8の搬送方向(矢印A方向)に略直交する方向に所定ピッチで一直線状に並べて形成して電極配線パターン列15とし、これを複数列備えて電極配線パターン群16としている。また、パターン形成領域10内にて電極配線パターン群16の側方には、電極配線パターン14に対応してTFT用基板8上に形成される露光パターンに接続すると共に、薄膜トランジスタに信号を供給するための要求解像力の低い複数の信号配線パターン17(図4参照)からなる信号配線パターン群18が形成されている。なお、同図(a)においては、図面が煩雑になるのを避けるために、電極配線パターン14及び信号配線パターン17は、四角形で簡略化して示している。さらに、上記透明基板12の他方の面12bには、同図(c)に示すように、複数の電極配線パターン14に対応して複数のマイクロレンズ19が形成されている。そして、TFT用基板8の搬送方向先頭側に位置する電極配線パターン列15aにより形成される複数の露光パターンの間を後続の電極配線パターン列15b,15c,15dにより形成される複数の露光パターンにより補完可能に、後続の電極配線パターン列15b〜15dを複数の電極配線パターン14の並び方向に夫々所定寸法だけずらして形成している。
【0024】
なお、本実施形態において、フォトマスク3は、図3に示すように各電極配線パターン列15a〜15dの複数の電極配線パターン14がWピッチで形成されている場合、搬送方向(矢印A方向)先頭側の第1の電極配線パターン列15aの後続の第2、第3、第4の電極配線パターン列15b,15c,15dは、第1の電極配線パターン列15aに対して、夫々W/n(nは整数)、即ち、W/4,W/2,3W/4だけ電極配線パターン列15の電極配線パターン14の並び方向(矢印Aに略直交する方向)にずらして形成し、第1〜第4の電極配線パターン列15a〜15dを配列ピッチLで平行に形成したものである。なお、上記配列ピッチLは、TFT用基板8の薄膜トランジスタ形成部の矢印Aの配列ピッチに等しい。
【0025】
また、図2(a)に示すように、TFT用基板8の搬送方向(矢印A方向)に先後して、電極配線パターン群16の側方には、距離mL(mは整数)だけ離れて図4に示す複数の信号配線パターン17から成る信号配線パターン群18が形成されている。なお、図4において、符号20はTFT用基板8の薄膜トランジスタ形成部に対応した部分であり、TFT用基板8が矢印A方向に移動することにより、上記部分20と図3に示す電極配線パターン14とが重ね露光するように信号配線パターン17を形成している。
【0026】
さらに、フォトマスク3のクロム(Cr)膜13には、図2(a)に示すように、パターン形成領域10の側方にて第1の電極配線パターン列15aから距離Dだけ離れて電極配線パターン列15に略平行に細長状の開口部が形成されている。この開口部は、後述の撮像手段5によりTFT用基板8表面の観察を可能にする覗き窓11となるものである。
【0027】
そして、フォトマスク3は、図1に示すように、マイクロレンズ19側をTFT用基板8側とすると共に、覗き窓11をTFT用基板8の搬送方向(矢印A方向)手前側としてマスクステージ2上に位置決めして固定される。
【0028】
上記マスクステージ2の上方には、露光光学系4が形成されている。この露光光学系4は、フォトマスク3に対して均一な光源光24を照射するものであり、光源21と、ロッドレンズ22と、コンデンサレンズ23とを備えて構成されている。
【0029】
上記光源21は、例えば355nmの紫外線を放射するもので、後述の制御手段7によって発光が制御される例えばフラッシュランプ、紫外線発光レーザ光源等である。また、上記ロッドレンズ22は、光源21から放射される光源光24の放射方向前方に設けられ、光源光24の光軸に直交する断面内の輝度分布を均一にするためのものである。なお、光源光24の輝度分布を均一化する手段としては、ロッドレンズ22に限られず、ライトパイプやフライアイレンズ等の公知の手段を適用してもよい。そして、上記コンデンサレンズ23は、その前焦点をロッドレンズ22の出力端面22aに一致させて設けられており、ロッドレンズ22から射出した光源光24を平行光にしてフォトマスク3に照射させるものである。
【0030】
上記露光光学系4のTFT用基板8の矢印Aで示す搬送方向手前側には、撮像手段5が設けられている。この撮像手段5は、フォトマスク3による露光位置の搬送方向手前側の位置にて、TFT用基板8上に形成された位置決め基準となる例えば薄膜トランジスタ形成部の基準位置及びフォトマスク3の覗き窓11内に形成された基準マークを同時に撮像するもので、受光素子をステージ9の上面に平行な面内にてTFT用基板8の搬送方向(矢印A方向)に略直交する方向に一直線状に並べて設けたラインカメラであり、その長手中心軸をフォトマスク3の覗き窓11の長手中心軸と合致させて配置されている。なお、図1において、符号25は、撮像手段5の光路を折り曲げる全反射ミラーである。
【0031】
上記搬送手段1のステージ9の下側には、撮像手段5による撮像領域に対応して照明手段6が設けられている。この照明手段6は、TFT用基板8に紫外線をカットした可視光から成る照明光を下面側から照射して、TFT用基板8表面に形成された薄膜トランジスタ形成部を撮像手段5により観察可能にさせるものであり、例えばハロゲンランプ等である。なお、照明手段6は、ステージ9の上方に設けて落射照明としてもよい。
【0032】
上記搬送手段1、撮像手段5、光源21、マスクステージ2、及び照明手段6に接続して制御手段7が設けられている。この制御手段7は、TFT用基板8を一方向に搬送させながら、フォトマスク3を介してTFT用基板8に露光光34を間欠的に照射させ、TFT用基板8上に形成された薄膜トランジスタ形成部に重ね合わせてフォトマスク3の複数の電極配線パターン14を縮小投影させると共に、複数の信号配線パターン17の露光パターンを電極配線パターン14の露光パターンに接続されるように露光タイミングを制御するものであり、図5に示すように、画像処理部26と、演算部27と、メモリ28と、搬送手段駆動コントローラ29と、光源駆動コントローラ30と、マスクステージ駆動コントローラ31と、照明手段駆動コントローラ32と、制御部33とを備えている。
【0033】
画像処理部26は、撮像手段5で取得されたTFT用基板8表面及びフォトマスク3の基準マークの撮像画像を画像処理して、TFT用基板8上の薄膜トランジスタ形成部に予め設定された基準位置とフォトマスク3の基準マークの位置とを検出するものである。
【0034】
また、演算部27は、画像処理部26で検出されたTFT用基板8上の基準位置とフォトマスク3の基準マークの位置との間の距離を算出し、その結果を後述のメモリ28に保存された目標値と比較し、その差分を補正値としてマスクステージ駆動コントローラ31に出力すると共に、搬送手段1の位置センサーの出力を入力してステージ9の移動距離を算出し、その結果をメモリ28に保存されたTFT用基板8の薄膜トランジスタ形成部の矢印A方向(搬送方向)の配列ピッチLと比較してステージ9が距離Lだけ移動する毎に光源駆動コントローラ30に光源21を点灯させる点灯指令を出力するようになっている。
【0035】
さらに、メモリ28は、演算部27における演算結果を一時的に保存すると共に、ステージ9の移動速度V、TFT用基板8上の基準位置とフォトマスク3の基準マークの位置との間の距離の目標値、及びその他初期設定値を記憶するものである。
【0036】
さらにまた、搬送手段駆動コントローラ29は、搬送手段1のステージ9を矢印Aで示す方向に一定速度で移動させるものであり、搬送手段1の速度センサーの出力を入力してメモリ28に保存されたステージ9の移動速度Vと比較し、両者が一致するように搬送手段1を制御するようになっている。
【0037】
そして、光源駆動コントローラ30は、光源21を間欠的に発光させるものであり、演算部27から入力する点灯指令に従って光源21に駆動信号を送信するようになっている。
【0038】
また、マスクステージ駆動コントローラ31は、マスクステージ2を撮像手段5と一体的に矢印Aで示す搬送方向と略直交する方向に移動させるものであり、演算部27から入力した補正値に基づいてマスクステージ2の移動を制御するようになっている。
【0039】
さらに、照明手段駆動コントローラ32は、照明手段6を点灯及び消灯させるものであり、露光開始スイッチが投入されると照明手段6を点灯させ、TFT用基板8上への全ての露光が終了すると消灯させるように制御するようになっている。そして、制御部33は、上記各構成要素が適切に駆動するように各構成要素間を仲立ちして制御するものである。
【0040】
次に、このように構成された露光装置の動作について説明する。
先ず、例えばキーボード等から成る図示省略の操作手段を操作してステージ9の移動速度V、露光開始から露光終了までのステージ9の移動距離、光源21のパワー及び発光時間、フォトマスク3の第1の電極配線パターン列15と覗き窓11との間の距離D、TFT用基板8上に形成された薄膜トランジスタ形成部の矢印A方向(搬送方向)の配列ピッチL、TFT用基板8の上記薄膜トランジスタ形成部に予め設定された基準位置とフォトマスク3に形成された基準マークとの間の距離の目標値等を入力してメモリ28に保存し、初期設定を行う。
【0041】
次に、表面に感光性樹脂(例えば、ポジレジスト)を塗布したTFT用基板8をその塗布面を上にしてステージ9上の所定位置に位置決めして載置する。そして、図示省略の露光開始スイッチが投入されると、制御手段7の搬送手段駆動コントローラ29が起動して、ステージ9を速度Vで矢印A方向に移動させる。この際、搬送手段駆動コントローラ29は、搬送手段1の速度センサーの出力を入力し、メモリ28に保存された速度Vと比較してステージ9の移動速度がVとなるように搬送手段1を制御する。また、露光開始スイッチが投入されると、照明手段駆動コントローラ32が起動して照明手段6を点灯させる。同時に、撮像手段5が起動して撮像を開始する。
【0042】
ステージ9の移動に伴ってTFT用基板8が搬送され、TFT用基板8に形成された薄膜トランジスタ形成部のうち搬送方向(矢印A方向)先頭側に位置する薄膜トランジスタ形成部が撮像手段5の撮像領域に達すると、撮像手段5は、フォトマスク3の覗き窓11を通して上記薄膜トランジスタ形成部を撮像し、同時にフォトマスク3の基準マークを撮像する。そして、その撮像画像の電気信号を制御手段7の画像処理部26に出力する。
【0043】
画像処理部26においては、撮像手段5から入力した撮像画像の電気信号を画像処理し、TFT用基板8の薄膜トランジスタ形成部に予め設定された基準位置及びフォトマスク3の基準マークの位置を検出して、それら位置データを演算部27に出力する。
【0044】
演算部27においては、画像処理部26から入力した上記基準位置の位置データとフォトマスク3の基準マークの位置データとに基づいて両者間の距離を演算し、メモリ28から読み出した両者間の距離の目標値と比較し、その差分を補正値としてマスクステージ駆動コントローラ31に出力する。
【0045】
マスクステージ駆動コントローラ31は、演算部27から入力した補正値分だけ、マスクステージ2をステージ9の面に平行な面内にて矢印A方向(搬送方向)と略直交する方向に移動してTFT用基板8とフォトマスク3との位置決めを行う。なお、この動作は、TFT用基板8の全面に対する露光動作中常時行われ、TFT用基板8の矢印Aと直交する方向へのヨーイングによる位置ずれが抑えられる。
【0046】
また、撮像手段5から入力する撮像画像の電気信号を画像処理部26で画像処理して、TFT用基板8の搬送方向(矢印A方向)先頭側の薄膜トランジスタ形成部が検出されると、演算部27は、搬送手段1の位置センサーの出力に基づいて上記薄膜トランジスタ形成部検出時点からのステージ9の移動距離を算出し、これをメモリ28に保存されたフォトマスク3の第1の電極配線パターン列15aと覗き窓11との間の距離Dと比較する。そして、ステージ9の移動距離が上記距離Dに合致すると演算部27は、光源21を点灯させる点灯指令を光源駆動コントローラ30に出力する。光源駆動コントローラ30は、上記点灯指令に従って駆動信号を光源21に出力する。これにより、光源21は、上記初期設定値に従って所定のパワーで所定時間だけ点灯する。
【0047】
光源21から放射された紫外線の光源光24は、ロッドレンズ22により輝度分布が均一化された後、コンデンサレンズ23により平行光にされてフォトマスク3に照射する。フォトマスク3を通過した露光光34は、マイクロレンズ19によりTFT用基板8上に集光され、図3に示すフォトマスク3の電極配線パターン14を縮小投影してこの電極配線パターン14に対応する露光パターン35を形成し(図6参照)、同時に、図4に示す信号配線パターン17に対応する露光パターン36を形成する(図6参照)。
【0048】
さらに、演算部27は、搬送手段1の位置センサーの出力に基づいて取得したステージ9の移動距離をメモリ28に保存された初期設定値のうち、TFT用基板8上に形成された薄膜トランジスタ形成部の矢印A方向(搬送方向)の配列ピッチLと比較し、両者が合致すると光源21の点灯指令を光源駆動コントローラ30に出力する。これにより、光源21は、上記初期設定値に従って所定のパワーで所定時間だけ点灯する。
【0049】
光源21から放射された紫外線の光源光24は、上述と同様にしてフォトマスク3に照射する。そして、フォトマスク3を通過した露光光34は、上述と同様にTFT用基板8上にフォトマスク3の電極配線パターン14及び信号配線パターン17の露光パターン35,36を形成する。以後、ステージ9が距離Lだけ移動する毎に光源21が所定時間だけ発光して露光パターン35,36が形成される。これにより、図6に示すように、TFT用基板8の搬送方向(矢印A方向)先頭側に位置する第1の電極配線パターン列15aの複数の電極配線パターン14に対応する複数の露光パターン35aの間を、後続の第2〜第4の電極配線パターン列15b〜15dの電極配線パターン14に対応する複数の露光パターン35b,35c,35dで補完して形成すると共に、信号配線パターン17に対応する露光パターン36をTFT用基板8の全面に亘って形成することができる。この場合、信号配線パターン17の露光パターン36にて薄膜トランジスタ形成部37には、電極配線パターン14の露光パターン35が重ね露光される。しかし、信号配線パターン17の薄膜トランジスタ形成部37に対応する部分20は、クロム(Cr)膜13で遮光されているため、薄膜トランジスタ形成部37には、電極配線パターン14による露光パターン35のみが形成されることになる。したがって、図6に示すように、電極配線パターン14の各露光パターン35を、信号配線パターン17の各露光パターン36に接続させた状態で形成することができる。
【0050】
なお、上記第1〜第4の電極配線パターン列15a〜15dの並び順序は、上述したものに限定されず、適宜入れ替えてもよい。
【0051】
また、上記実施形態においては、フォトマスク3が複数の電極配線パターン14を透明基板12の一方の面12aに形成し、複数のマイクロレンズ19を透明基板12の他方の面12bに形成したものである場合について説明したが、本発明はこれに限られず、フォトマスク3は、複数の電極配線パターン14及び信号配線パターン17を一面に形成したマスク用基板と、複数のマイクロレンズ19を一面に形成したレンズ用基板とを、複数の電極配線パターン14と複数のマイクロレンズ19とが互いに対応するように重ね合わせて形成したものであってもよい。
【0052】
そして、以上の説明においては、被露光体がTFT用基板8である場合について述べたが、本発明はこれに限られず、要求解像力が異なる2種類のマスクパターンを混在させた状態で形成しようとする如何なる基板に対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明による露光装置の実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明の露光装置に使用するフォトマスクの構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。
【図3】上記フォトマスクの第1のマスクパターン群を示す拡大平面図である。
【図4】上記フォトマスクの第2のマスクパターン群を示す拡大平面図である。
【図5】上記露光装置の制御手段の構成を示すブロック図である。
【図6】上記フォトマスクを使用して被露光体上に形成された露光パターンを示す平面図である。
【符号の説明】
【0054】
1…搬送手段
3…フォトマスク
8…TFT用基板
12…透明基板
12a…一方の面
12b…他方の面
13…クロム(Cr)膜(遮光膜)
14…電極配線パターン(一方のマスクパターン)
15…電極配線パターン列(マスクパターン列)
15a…第1の電極配線パターン列
15b…第2の電極配線パターン列
15c…第3の電極配線パターン列
15d…第4の電極配線パターン列
16…電極配線パターン群(マスクパターン群)
17…信号配線パターン(他方のマスクパターン)
18…信号配線パターン群(マスクパターン群)
19…マイクロレンズ
21…光源
24…光源光
34…露光光
35,35a〜35d…電極配線パターンの露光パターン
36…信号配線パターンの露光パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被露光体を一方向に搬送しながら、フォトマスクを介して前記被露光体に光源光を間欠的に照射し、前記フォトマスクに形成された複数のマスクパターンに対応して前記被露光体上に露光パターンを形成する露光装置であって、
前記フォトマスクは、透明基板の一面に形成された遮光膜に、要求解像力が異なる2種類のマスクパターンからなる二つのマスクパターン群を前記被露光体の搬送方向に先後して形成し、他面には、前記要求解像力が異なる2種類のマスクパターンのうち、要求解像力の高い一方のマスクパターンに対応して該一方のマスクパターンを前記被露光体上に縮小投影するマイクロレンズを形成し、該マイクロレンズ側が前記被露光体側となるように配置されたことを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記要求解像力の高い一方のマスクパターンから成るマスクパターン群は、前記被露光体の搬送方向に略直交する方向に前記複数のマスクパターンを所定ピッチで一直線状に並べて形成した複数のマスクパターン列を備え、前記被露光体の搬送方向先頭側に位置する前記マスクパターン列により形成される複数の露光パターンの間を後続のマスクパターン列により形成される複数の露光パターンにより補完可能に、前記後続のマスクパターン列を前記複数のマスクパターンの前記並び方向に夫々所定寸法だけずらして形成したことを特徴とする請求項1記載の露光装置。
【請求項3】
前記被露光体は、液晶表示装置のTFT用基板であり、
前記要求解像力が異なる2種類のマスクパターンのうち、前記一方のマスクパターンは、薄膜トランジスタの電極配線パターンで、他方のマスクパターンは、前記薄膜トランジスタに信号を供給する信号配線パターンであり、
前記電極配線パターンの露光パターンと前記信号配線パターンの露光パターンとが互いに接続するように前記電極配線パターンと前記信号配線パターンとを形成したことを特徴とする請求項2記載の露光装置。
【請求項4】
透明基板の一面に形成された遮光膜に、要求解像力が異なる2種類のマスクパターンからなる二つのマスクパターン群を横に並べて形成し、他面には、前記要求解像力が異なる2種類のマスクパターンのうち、要求解像力の高い一方のマスクパターンに対応して、該一方のマスクパターンを対向して配置される被露光体上に縮小投影するマイクロレンズを形成したことを特徴とするフォトマスク。
【請求項5】
前記要求解像力の高い一方のマスクパターンから成るマスクパターン群は、前記複数のマスクパターンを所定ピッチで一直線状に並べて形成した複数のマスクパターン列を備え、任意の一つのマスクパターン列に対して他のマスクパターン列を前記複数のマスクパターンの前記並び方向に夫々所定寸法だけずらして形成したことを特徴とする請求項4記載のフォトマスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−102149(P2010−102149A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273863(P2008−273863)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(500171707)株式会社ブイ・テクノロジー (283)
【Fターム(参考)】