説明

駆動装置

【課題】ロータ軸の軸芯精度を高く維持しつつ駆動装置全体の小型化を図る。
【解決手段】回転電機MG1と、回転電機MG1の径方向内側に当該回転電機MG1と軸方向に重複して配置される遊星歯車装置P1と、遊星歯車装置P1のサンギヤs1の径方向内側を貫通する貫通軸Iと、回転電機MG1及び遊星歯車装置P1を収容するケースDCと、を備え、貫通軸Iは、遊星歯車装置P1に対して軸方向両側においてケースDCに支持され、回転電機MG1のロータRo1は、サンギヤs1と一体的に連結されるとともに、軸方向の二箇所で回転可能に支持され、当該二箇所の内の一方ではロータRo1はケースDCに支持され、他方ではロータRo1はサンギヤs1の径方向内側で貫通軸Iに支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電動車両やハイブリッド車両等のように、回転電機を駆動力源として備える車両に用いる駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題や原油埋蔵量の枯渇化等の影響により、各種の電動車両やハイブリッド車両が開発されている。例えばハイブリッド車両に用いられる駆動装置においては、エンジンに連結される入力軸と、回転電機と、遊星歯車装置と、出力部材とを備え、これらを同軸上に配置した構成が知られている。このような駆動装置においては、軸方向寸法を短縮して駆動装置全体の小型化を図るため、同軸上に配置される一の構成部品を他の構成部品と軸方向に重複して配置する構成が好ましく採用される。
【0003】
例えば下記の特許文献1には、二つの遊星歯車装置のリングギヤと出力部材とが一体化され、出力部材の径方向内側に、二つの遊星歯車装置が出力部材と軸方向に重複して配置された車両用駆動装置が記載されている。このような構成を採用したことにより、二つの遊星歯車装置と出力部材とを軸方向に沿って並べて配置した場合に比べて、駆動装置全体の軸方向寸法の短縮化を可能としている。この車両用駆動装置が備える回転電機のロータ軸の支持構造に関しては、ロータ軸は軸方向両側において軸受を介してケースに回転可能に支持されている。このような構成を採用したことにより、ロータ軸の軸芯精度を高く維持し、回転電機のロータとステータとの間のクリアランスを常に適切に確保することを可能としている。これにより、回転電機の回転に伴う振動やノイズの発生が抑制される。
【0004】
また、例えば下記の特許文献2には、回転電機の径方向内側に、遊星歯車装置が回転電機と軸方向に重複して配置された車両用駆動装置が記載されている。このような構成を採用したことにより、回転電機と遊星歯車装置とを軸方向に沿って並べて配置した場合に比べて、駆動装置全体の軸方向寸法の短縮化を可能としている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−262553号公報(図2等)
【特許文献2】特開平6−328950号公報(段落0055、図6等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された車両用駆動装置では、二つの遊星歯車装置のリングギヤと一体化された出力部材が、さらにその径方向外側で軸受を介して支持される構成となっていることから、出力部材を回転可能に支持する軸受が大径化することによりコストが高くなってしまう、ケース外にノイズが伝播しやすくなってしまう等の問題があった。そのため、低コスト、低ノイズを実現した上で駆動装置全体の小型化を図るためには、遊星歯車装置と出力部材とを軸方向に重複配置することは適当とは言えなかった。
【0007】
一方、特許文献2に記載された車両用駆動装置では、軸方向寸法を短縮するために遊星歯車装置と回転電機とが軸方向に重複配置されるので、上記したような問題の発生は抑制される。しかし、遊星歯車装置の各回転要素には、回転電機のロータ以外にもさまざまな部材が連結されることから、それらが物理的な障害となって回転電機のロータ軸を軸方向両側でケースに回転可能に支持することが不可能となってしまう。そのため、回転電機のロータ軸の軸芯精度が犠牲となってしまう虞があった。この点に関しては、特許文献2においては特段の考慮がなされておらず、軸芯精度を高く維持するためのロータ軸の支持構造については改善の余地が残されていた。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ロータ軸の軸芯精度を高く維持しつつ駆動装置全体の小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するための、本発明に係る駆動装置の特徴構成は、回転電機と、前記回転電機の径方向内側に当該回転電機と軸方向に重複して配置される遊星歯車装置と、前記遊星歯車装置のサンギヤの径方向内側を貫通する貫通軸と、前記回転電機及び前記遊星歯車装置を収容するケースと、を備え、前記貫通軸は、前記遊星歯車装置に対して軸方向両側において前記ケースに支持され、前記回転電機のロータは、前記サンギヤと一体的に連結されるとともに、軸方向の二箇所で回転可能に支持され、当該二箇所の内の一方では前記ロータは前記ケースに支持され、他方では前記ロータは前記サンギヤの径方向内側で前記貫通軸に支持されている点にある。
【0010】
なお、本願では、「連結」とは、連結対象の2つの部材を直接的に連結する構造を含むほか、当該2つの部材間に他の1又は2以上の部材を介して間接的に連結する構造も含む。また、本願では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
【0011】
また、「ケースに支持される」形態には、直接的に支持される形態と間接的に支持される形態の、いずれの形態も含まれる。また、「ケースに直接的に支持される」とは、当該支持される部材が、ケースに直接固定支持されていること、又は、ケースとの間に軸受のみを介在させて支持されていることを意味し、「ケースに間接的に支持されている」とは、当該支持される部材が、ケースとの間に軸受以外の部材を介在させて支持されていることを意味する。
【0012】
上記の特徴構成によれば、遊星歯車装置が回転電機の径方向内側に当該回転電機と軸方向に重複して配置されるので、駆動装置全体の軸方向寸法を短くすることができ、小型化を図ることができる。このとき、貫通軸は遊星歯車装置に対して軸方向両側においてケースに支持されるので、貫通軸の軸芯精度を高く確保することができる。また、回転電機のロータは、軸方向一方側ではケースに支持されるとともに、軸方向他方側では軸芯精度を高く確保された貫通軸に支持されるので、ロータ軸の軸芯精度の低下を最小限に抑制することができる。
したがって、ロータ軸の軸芯精度を高く維持しつつ、駆動装置全体の小型化を図ることが可能となる。
【0013】
ここで、前記貫通軸は、前記サンギヤの軸心部に設けられたサンギヤ貫通孔を貫通し、前記ロータは、前記サンギヤ貫通孔の内周面と前記貫通軸の外周面との間に設けられたロータ軸受を介して前記貫通軸に支持されている構成とすると好適である。
【0014】
この構成によれば、サンギヤの径方向内側で、ロータ軸受を介して回転電機のロータを貫通軸に対して確実に回転可能に支持することができる。
【0015】
また、前記回転電機のロータは、前記遊星歯車装置に対して軸方向一方側に配置され、当該ロータから径方向内側に延出されるロータ連結部材を介して前記サンギヤに連結され、前記ロータ連結部材は、軸方向で前記遊星歯車装置とは反対側に突出する軸方向突出部を有し、前記ロータは、前記軸方向突出部の内周面を支持するように設けられたロータ軸受を介して前記ケースに支持されている構成とすると好適である。
【0016】
この構成によれば、遊星歯車装置に対して軸方向一方側において、ロータ連結部材に設けられた軸方向突出部の径方向内側で、ロータ軸受を介して回転電機のロータをケースに対して回転可能に支持することができる。また、遊星歯車装置に対して軸方向他方側において、遊星歯車装置のキャリヤ及びリングギヤに他の部材を連結することができる。
【0017】
また、前記貫通軸は、前記遊星歯車装置に対して少なくとも軸方向一方側において、前記ケースに直接的に支持されている構成とすると好適である。
【0018】
この構成によれば、少なくとも軸方向一方側において貫通軸が固定部材であるケースに直接固定支持されるか、又は、ケースとの間に軸受のみを介在させて支持されるので、軸方向両側でケースに間接的に支持される場合と比べて、貫通軸の軸芯精度を高くすることができる。よって、ロータ軸の軸芯精度も高く維持することができる。
【0019】
また、前記ケースは、前記回転電機に対して軸方向一方側に配置された支持壁を備え、前記支持壁は、軸方向で前記回転電機側に突出する軸方向突出部を有し、前記貫通軸は、前記支持壁の軸方向突出部の径方向内側に設けられた貫通軸受を介して前記支持壁に支持され、前記ロータは、前記支持壁の軸方向突出部の径方向外側に設けられたロータ軸受を介して前記支持壁に支持されている構成とすると好適である。
【0020】
この構成によれば、支持壁に設けられた軸方向突出部の径方向の両側で、貫通軸受を介して貫通軸をケースに対して回転可能に支持すると同時に、ロータ軸受を介して回転電機のロータをケースに対して回転可能に支持することができる。またこのとき、貫通軸及び回転電機のロータが、軸方向突出部を介して径方向の両側から固定部材であるケースに直接的に支持されるので、全体として貫通軸及び回転電機のロータの軸芯精度を高くすることができる。
【0021】
また、前記支持壁の軸方向突出部の径方向内側に設けられた前記貫通軸受と径方向外側に設けられた前記ロータ軸受とが、軸方向に重複して配置された構成とすると好適である。
【0022】
この構成によれば、貫通軸受とロータ軸受とが、支持壁の軸方向突出部の径方向両側において軸方向で重複して配置されるので、当該重複配置された分だけ、駆動装置全体の軸方向寸法を短くすることができる。
【0023】
また、前記ロータ連結部材の軸方向突出部の径方向外側に、前記ロータの回転位置を検出する回転センサが配置された構成とすると好適である。
【0024】
この構成によれば、ロータ連結部材の軸方向突出部の径方向外側に生じる空間を利用して回転センサを配置することで、ケース内の空間を有効利用して駆動装置全体の小型化を図ることができる。
【0025】
また、前記回転センサと前記回転電機のステータとが、軸方向に重複して配置された構成とすると好適である。
【0026】
この構成によれば、回転センサと回転電機のロータとが、軸方向で重複して配置されるので、重複配置された分だけ駆動装置全体の軸方向寸法を短くすることができる。
【0027】
また、前記遊星歯車装置の出力回転要素に連結されるとともに軸心部に軸挿通孔が設けられた出力部材を備え、前記出力部材は、前記軸挿通孔に対して径方向外側において前記ケースに支持された出力軸受を介して前記ケースに回転可能に支持され、前記貫通軸の一端部が、前記軸挿通孔に挿通され、前記軸挿通孔の内周面と前記貫通軸の外周面との間に配置された貫通軸受を介して前記軸挿通孔の内周面に回転可能に支持されている構成とすると好適である。
【0028】
この構成によれば、遊星歯車装置の出力回転要素から出力される回転駆動力を、出力部材を介して動力伝達経路上の下流側へ出力することができる。また、出力部材の軸心部に設けられた軸挿通孔内に挿入された貫通軸の一端部を、貫通軸受、出力部材、及び出力軸受を介して間接的にケースに支持することができる。したがって、出力部材と軸方向に重複する位置において、貫通軸をケースに適切に支持することができる。
【0029】
また、前記遊星歯車装置の出力回転要素に連結されるとともに軸心部に軸挿通孔が設けられた出力部材を備え、前記貫通軸の一端部が、前記軸挿通孔を貫通し、軸方向で前記出力部材に対して前記遊星歯車装置側とは反対側において前記ケースに支持された貫通軸受を介して前記ケースに回転可能に支持されている構成とすると好適である。
【0030】
この構成によれば、遊星歯車装置の出力回転要素から出力される回転駆動力を、出力部材を介して動力伝達経路上の下流側へ出力することができる。また、出力部材の軸心部に設けられた軸挿通孔内を貫通した貫通軸の一端部を、貫通軸受を介して直接的にケースに支持することができる。したがって、貫通軸をケースに適切に支持することができる。
【0031】
また、前記貫通軸はエンジンに連結される入力軸であり、動力伝達経路上で前記入力軸及び前記回転電機に対して車輪側に配置された出力部材を備え、前記遊星歯車装置は、前記サンギヤに前記回転電機が連結され、キャリアに前記入力軸が連結され、リングギヤに前記出力部材が連結されている構成とすると好適である。
【0032】
この構成によれば、遊星歯車装置を介して、入力軸から入力されるエンジンの回転駆動力を出力部材及び回転電機に分配することができる。よって、回転電機の回転速度を制御することにより、入力軸から入力されるエンジンの回転駆動力を無段階に変速して、出力部材を介して車輪側に動力を伝達することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
1.第一の実施形態
まず、本発明の第一の実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hについて図面に基づいて説明する。ここで、ハイブリッド駆動装置Hは、車両の駆動力源としてエンジン及び回転電機の双方を用いるハイブリッド車両の駆動装置である。図1は、このハイブリッド駆動装置Hの要部断面図であり、図2は、このハイブリッド駆動装置Hの全体断面図である。また、これらの図に示すように、このハイブリッド駆動装置Hは、エンジンに連結された入力軸Iと、第一モータ・ジェネレータMG1と、第二モータ・ジェネレータMG2と、動力伝達経路上で入力軸I、第一モータ・ジェネレータMG1、及び第二モータ・ジェネレータMG2に対して車輪(図示せず)側に配置された出力ギヤOと、第一遊星歯車装置P1及び第二遊星歯車装置P2と、を備えている。そして、このハイブリッド駆動装置Hは、第一モータ・ジェネレータMG1の回転を制御することにより、第一遊星歯車装置P1を介して入力軸Iの回転駆動力を無段階に変速して出力ギヤOに伝達する電気的無段変速装置を構成している。第二モータ・ジェネレータMG2は、第二遊星歯車装置P2を介して出力ギヤOに回転駆動力を伝達可能に構成されている。本実施形態においては、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2が本発明における「回転電機」に相当する。
【0034】
また、これらの第一モータ・ジェネレータMG1、第二モータ・ジェネレータMG2、出力ギヤO、第一遊星歯車装置P1、及び第二遊星歯車装置P2は、入力軸Iと同軸上に配置され、非回転部材としてのケースDC内に収納されている。更に、図2に示すように、本実施形態においては、出力ギヤOは、カウンタ減速機構CR及びディファレンシャル装置DEを介して図示しない車輪に駆動連結されている。カウンタ減速機構CR及びディファレンシャル装置DEは、それぞれ入力軸Iと異なる軸上に互いに平行に配置されている。すなわち、このハイブリッド駆動装置Hは、入力軸I、第一モータ・ジェネレータMG1、第二モータ・ジェネレータMG2、出力ギヤO、第一遊星歯車装置P1、及び第二遊星歯車装置P2が配置される第一軸、カウンタ減速機構CRが配置される第二軸、並びにディファレンシャル装置DEが配置される第三軸を備えた3軸構成とされている。そして、ケースDCは、これらのカウンタ減速機構CR及びディファレンシャル装置DEも共通に収容する構成となっている。すなわち、このハイブリッド駆動装置Hは、前記電気的無段変速装置とディファレンシャル装置DEとがケースDC内に一体的に収容されたトランスアクスル構成の駆動装置とされている。以下、このハイブリッド駆動装置Hの各部の構成について詳細に説明する。
【0035】
1−1.各部の機能及び連結構成
まず、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hの各部の機能及び連結構成について説明する。入力軸Iは、ダンパを介してエンジンに連結されている。ここでは、ダンパ及びエンジンの図示は省略する。エンジンとしては、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の各種の内燃機関を用いることができる。なお、入力軸Iがエンジンと直接連結され、或いはダンパ以外のクラッチ等の構成を介して連結された構成としても好適である。また、入力軸Iは、第一遊星歯車装置P1のキャリアca1と一体回転するように連結されている。
【0036】
出力ギヤOは、動力伝達経路上で入力軸I、第一モータ・ジェネレータMG1、及び第二モータ・ジェネレータMG2に対して車輪側に配置され、入力軸I、第一モータ・ジェネレータMG1、及び第二モータ・ジェネレータMG2の回転駆動力を車輪側へ伝達する。そのため、出力ギヤOは、第一遊星歯車装置P1の出力回転要素としてのリングギヤr1及び第二遊星歯車装置P2の出力回転要素としてのリングギヤr2の双方に、一体回転するように連結されている。そして、図2に示すように、出力ギヤOは、カウンタ減速機構CR及びディファレンシャル装置DEを介して図示しない車輪に駆動連結されている。具体的には、出力ギヤOは、カウンタ減速機構CRのカウンタドリブンギヤcr2と噛み合っている。したがって、出力ギヤOは、入力軸I及び第一モータ・ジェネレータMG1から第一遊星歯車装置P1を介して伝達され、或いは第二モータ・ジェネレータMG2から第二遊星歯車装置P2を介して伝達される回転駆動力を、車輪側へ出力する出力部材として機能する。
【0037】
カウンタ減速機構CRは、入力軸Iに平行に配置されたカウンタシャフトcr1を備えるとともに、当該カウンタシャフトcr1と一体回転するカウンタドリブンギヤcr2及びデフドライブギヤcr3を備えている。デフドライブギヤcr3は、カウンタドリブンギヤcr2よりも小径とされている。また、デフドライブギヤcr3は、ディファレンシャル装置DEのデフ入力ギヤ(デフリングギヤ)de1に噛み合っている。ディファレンシャル装置DEは、デフ入力ギヤde1の回転駆動力を左右の車輪に分配する。以上の連結構成により、出力ギヤOと車輪とが駆動連結されている。なお、本実施形態においては、出力ギヤOにパーキングギヤpaが一体的に設けられている。
【0038】
図1及び2に示すように、第一モータ・ジェネレータMG1は、ケースDCに固定された第一ステータSt1と、この第一ステータSt1の径方向内側に回転自在に支持された第一ロータRo1と、を有している。この第一ロータRo1は、第一遊星歯車装置P1のサンギヤs1と一体回転するように連結されている。また、第二モータ・ジェネレータMG2は、ケースDCに固定された第二ステータSt2と、この第二ステータSt2の径方向内側に回転自在に支持された第二ロータRo2と、を有している。この第二ロータRo2は、第二遊星歯車装置P2のサンギヤs2と一体回転するように連結されている。第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2は、それぞれ図示しないインバータを介してバッテリやキャパシタ等の蓄電装置に電気的に接続されている。そして、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2は、それぞれ電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを果すことが可能とされている。
【0039】
本例では、第一モータ・ジェネレータMG1は、主に第一遊星歯車装置P1を介して入力される入力軸I(エンジン)の駆動力により発電を行い、蓄電装置を充電し、或いは第二モータ・ジェネレータMG2を駆動するための電力を供給するジェネレータとして機能する。ただし、車両の高速走行時やエンジンの始動時等には第一モータ・ジェネレータMG1は力行して駆動力を出力するモータとして機能する場合もある。一方、第二モータ・ジェネレータMG2は、主に車両の走行用の駆動力を補助するモータとして機能する。ただし、車両の減速時等には第二モータ・ジェネレータMG2はジェネレータとして機能し、車両の慣性力を電気エネルギとして回生するジェネレータとして機能する場合もある。
【0040】
第一遊星歯車装置P1は、シングルピニオン型の遊星歯車機構により構成されている。すなわち、第一遊星歯車装置P1は、複数のピニオンギヤを支持するキャリアca1と、前記ピニオンギヤにそれぞれ噛み合うサンギヤs1及びリングギヤr1とを回転要素として有している。サンギヤs1は、第一モータ・ジェネレータMG1の第一ロータRo1と一体回転するように連結されている。キャリアca1は、入力軸Iと一体回転するように連結されている。リングギヤr1は、出力ギヤOと一体回転するように連結されている。これにより、リングギヤr1は、出力ギヤOを介して、第二遊星歯車装置P2のリングギヤr2とも一体回転するように連結されている。
【0041】
第二遊星歯車装置P2は、第一遊星歯車装置P1と同様に、シングルピニオン型の遊星歯車機構により構成されている。すなわち、第二遊星歯車装置P2は、複数のピニオンギヤを支持するキャリアca2と、前記ピニオンギヤにそれぞれ噛み合うサンギヤs2及びリングギヤr2とを回転要素として有している。サンギヤs2は、第二モータ・ジェネレータMG2の第二ロータRo2と一体回転するように連結されている。キャリアca2は、非回転部材としてのケースDCに連結され、回転しないように固定されている。リングギヤr2は、出力ギヤOと一体回転するように連結されている。
【0042】
図3は、車両の走行時における第一遊星歯車装置P1及び第二遊星歯車装置P2の動作状態を表す速度線図である。これらの速度線図において、縦軸は、各回転要素の回転速度に対応しており、横軸上は回転速度がゼロ、上側が正、下側が負となっている。そして、並列配置された複数本の縦線のそれぞれが、第一遊星歯車装置P1及び第二遊星歯車装置P2の各回転要素に対応している。すなわち、図3の各縦線の上側に記載されている「s1」、「ca1」、「r1」はそれぞれ第一遊星歯車装置P1のサンギヤs1、キャリアca1、リングギヤr1に対応し、「s2」、「ca2」、「r2」はそれぞれ第二遊星歯車装置P2のサンギヤs2、キャリアca2、リングギヤr2に対応している。図3における、各回転要素に対応する縦線の間隔は、第一遊星歯車装置P1及び第二遊星歯車装置P2のそれぞれの歯数比(サンギヤとリングギヤとの歯数比=〔サンギヤの歯数〕/〔リングギヤの歯数〕)に対応している。また、これらの速度線図上において、「△」は入力軸I(エンジン)の回転速度、「☆」は出力ギヤOの回転速度、「○」は第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度、「□」は第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度、「×」は非回転部材としてのケースDCへの固定状態をそれぞれ示している。なお、これらの記号に隣接して示される矢印は、各回転要素に伝達されるトルクの方向の一例を示している。
【0043】
第一遊星歯車装置P1は、図3に直線L1として示されるように、入力軸I(エンジン)の回転駆動力を出力ギヤO及び第一モータ・ジェネレータMG1に分配する機能を果たす。すなわち、第一遊星歯車装置P1は、回転速度の順で中間となるキャリアca1が入力軸I(エンジン)と一体的に回転する。そして、このキャリアca1の回転が、第一遊星歯車装置P1における回転速度の順で一方端となるサンギヤs1、及び回転速度の順で他方端となるリングギヤr1に分配される。リングギヤr1に分配された回転は出力ギヤOに伝達され、サンギヤs1に分配された回転は第一モータ・ジェネレータMG1の第一ロータRo1に伝達される(図1参照)。この際、エンジンは、効率が高く排気ガスの少ない状態に(一般に最適燃費特性に沿うように)維持されるよう制御されつつ車両側からの要求駆動力に応じた正方向のトルクを出力し、このトルクが入力軸Iを介してキャリアca1に伝達される。一方、第一モータ・ジェネレータMG1は、負方向のトルクを出力することにより、入力軸Iのトルクの反力をサンギヤs1に伝達する。すなわち、第一モータ・ジェネレータMG1は、入力軸Iのトルクの反力を支持する反力受けとして機能し、それにより入力軸Iのトルクが出力ギヤOに分配される。この際、第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度により出力ギヤOの回転速度が決定される。通常の走行状態では、第一モータ・ジェネレータMG1は、正回転(回転速度が正)しつつ負方向のトルクを発生して発電を行う。一方、車速が高く(出力ギヤOの回転速度が高く)なると第一モータ・ジェネレータMG1は、負回転(回転速度が負)しつつ負方向のトルクを発生して力行を行う場合がある。
【0044】
第二遊星歯車装置P2は、図3に直線L2として示されるように、第二モータ・ジェネレータMG2の回転を減速して出力ギヤOに伝達する機能を果たす。これにより、第二モータ・ジェネレータMG2の回転駆動力は増幅されて出力ギヤOに伝達される。上記のとおり、第二遊星歯車装置P2は、第二遊星歯車装置P2における回転速度の順で中間となるキャリアca2がケースDCに固定されており回転速度がゼロとされる。この場合、回転速度の順で一方端となるサンギヤs2の回転は、当該第二遊星歯車装置P2の歯数比に応じて減速されて回転速度の順で他方端となるリングギヤr2に伝達される。これにより、第二遊星歯車装置P2は、サンギヤs2に連結された第二モータ・ジェネレータMG2の回転を減速し、リングギヤr2に連結された出力ギヤOに伝達する。そして、第二モータ・ジェネレータMG2は、車両側からの要求駆動力や車両の走行状態等に応じて、第一遊星歯車装置P1から出力ギヤOに分配された駆動力を補助すべく、適宜正方向又は負方向のトルクを出力する。
【0045】
1−2.各部の詳細な構造
次に、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hの各部の詳細な構造について、主に図1を用いて説明する。上記のとおり、このハイブリッド駆動装置Hでは、入力軸Iと同軸上に、第一モータ・ジェネレータMG1、第二モータ・ジェネレータMG2、出力ギヤO、第一遊星歯車装置P1、及び第二遊星歯車装置P2が配置されている。この際、第一遊星歯車装置P1が、第一モータ・ジェネレータMG1の径方向内側に、当該第一モータ・ジェネレータMG1と軸方向に重複して配置され、第二遊星歯車装置P2が、第二モータ・ジェネレータMG2の径方向内側に、当該第二モータ・ジェネレータMG2と軸方向に重複して配置されている。そして、これらは、入力軸Iに連結されるエンジン側(図1における右側)から、第一モータ・ジェネレータMG1及び第一遊星歯車装置P1、出力ギヤO、第二モータ・ジェネレータMG2及び第二遊星歯車装置P2の順に配置されている。以下、各部の配置、形状、及び軸支持構造等の詳細について、順に説明する。
【0046】
1−2−1.ケース
このハイブリッド駆動装置Hは、第一モータ・ジェネレータMG1、第二モータ・ジェネレータMG2、第一遊星歯車装置P1、第二遊星歯車装置P2、及び出力ギヤOを収容するケースDCを備えている。また上記のとおり、本実施形態においては、ケースDCは、カウンタ減速機構CR及びディファレンシャル装置DEも、これらと共通に収容する構成となっている。そして、ケースDCは、その内部に収容する各収容部品の外周を覆うケース周壁d3と、当該ケース周壁d3の軸方向一方側の端部開口を塞ぐ第一端部支持壁d4と、ケース周壁d3の軸方向他方側の端部開口を塞ぐ第二端部支持壁d5とを備えている。ここで、第一端部支持壁d4は、第一モータ・ジェネレータMG1に対して軸方向一方側(図1における右側)に配置され、第二端部支持壁d5は、第二モータ・ジェネレータMG2に対して軸方向他方側(図1における左側)に配置されている。更に、このケースDCは、軸方向における出力ギヤOと第一遊星歯車装置P1との間に配置される第一中間支持壁d1と、軸方向における出力ギヤOと第二遊星歯車装置P2との間に配置される第二中間支持壁d2とを備えている。
【0047】
また、本実施形態においては、ケースDCは、主ケースDC1と、当該主ケースDC1の軸方向一方側に取り付けられる第一カバーDC2と、主ケースDC1の軸方向他方側に取り付けられる第二カバーDC3とに分割可能に構成されている。ここで、主ケースDC1は、ケース周壁d3が形成され、ハイブリッド駆動装置Hの主要な構成部品を収容する構成となっている。また、図示の例では、第二中間支持壁d2は、主ケースDC1(ケースDC)と一体的に形成されている。一方、第一中間支持壁d1は、主ケースDC1(ケースDC)とは別部品で構成されるとともに、主ケースDC1の内周面に設けられた段差部に軸方向一方側から当接され、一体的に取り付けられる構成となっている。また、この主ケースDC1の軸方向両側の端部は開口部とされており、それらの開口部からケースDCの内部に収容する各収容部品が収容されて組みつけられる。ここでは、主ケースDC1の軸方向一方側からは、出力ギヤO、第一中間支持壁d1、第一遊星歯車装置P1、及び第一モータ・ジェネレータMG1が順に収容されて組みつけられる。また、主ケースDC1の軸方向他方側からは、第二遊星歯車装置P2及び第二モータ・ジェネレータMG2が順に収容されて組みつけられる。
【0048】
そして、これらの各収容部品が収容された後、主ケースDC1の軸方向一方側に第一カバーDC2が取り付けられ、主ケースDC1の軸方向他方側に第二カバーDC3が取り付けられる。ここで、第一カバーDC2には、第一端部支持壁d4が形成されている。また、第二カバーDC3には、第二端部支持壁d5が形成されている。主ケースDC1に対する第一カバーDC2、第二カバーDC3、及び第一中間支持壁d1の取り付けは、例えばボルト等の締結部材を用いて行う。なお、第一端部支持壁d4、第二端部支持壁d5、第一中間支持壁d1、及び第二中間支持壁d2の形状及び構成については、以下に詳細に説明する。
【0049】
1−2−2.出力ギヤ
出力ギヤOは、軸方向における第一遊星歯車装置P1と第二遊星歯車装置P2との間に、これらと軸方向に重複することなく配置されている。また、出力ギヤOは、第一遊星歯車装置P1(及び第一モータ・ジェネレータMG1)及び第二遊星歯車装置P2(及び第二モータ・ジェネレータMG2)と同軸上に配置されている。出力ギヤOは、カウンタ減速機構CRのカウンタドリブンギヤcr2と噛み合う出力ギヤ本体o1と、当該出力ギヤ本体o1に対して軸方向両側に延出され、出力ギヤ本体o1よりも小径の延出軸部o2を備えている。ここで、出力ギヤ本体o1と延出軸部o2とは一部品で構成されている。出力ギヤ本体o1は、第一遊星歯車装置P1及び第二遊星歯車装置P2の外径よりも大きい外径を有する比較的大径のギヤとして形成されている。図示の例では、出力ギヤ本体o1は、第一モータ・ジェネレータMG1の第一ロータRo1及び第二モータ・ジェネレータMG2の第二ロータRo2と略同一径を有している。この出力ギヤ本体o1は、外周面が歯面とされたリム部と、当該リム部に対して小さい幅のウェブ部とを有している。図示の例では、ウェブ部の側面から軸方向に突出するようにパーキングギヤpaが形成されている。
【0050】
延出軸部o2は、第一遊星歯車装置P1及び第二遊星歯車装置P2の外径よりも小さい外径を有する比較的小径の円筒状の軸部として形成されている。本例では、延出軸部o2の外周面は、軸方向両端へ向かうに従って2段階に径が小さくなる段付き形状とされている。そして、延出軸部o2の外周面の中で最も大径となる軸方向中央部に出力ギヤ本体o1が接続され、当該軸方向中央部に対して両側に位置する中間径となる中間部にそれぞれ出力軸受11、12が外嵌され、延出軸部o2の両端の小径部に連結部31、32が形成されている。これらの連結部31、32は、第一遊星歯車装置P1のリングギヤr1及び第二遊星歯車装置P2のリングギヤr2とそれぞれ連結される。そして、延出軸部o2は、出力軸受11、12を介してケースDCに回転可能に支持される。また、延出軸部o2の軸心部には貫通孔が設けられており、この貫通孔は、入力軸I及び固定軸Fが挿通される軸挿通孔o3とされる。後述するように、この軸挿通孔o3内には、入力軸Iの一端部及び固定軸Fの一端部が回転可能に支持される。なお、固定軸Fは、ケースDCに固定された非回転部材としての軸であり、第二遊星歯車装置P2のキャリアca2に連結される。
【0051】
出力ギヤOは、一対の出力軸受11、12により回転可能に支持されている。ここで、一対の出力軸受11、12は、第一遊星歯車装置P1及び第二遊星歯車装置P2に対して出力ギヤO側において出力ギヤOを軸方向両側から支持している。そのため、一対の出力軸受11、12は、軸方向における、出力ギヤ本体o1と第一遊星歯車装置P1との間、及び出力ギヤ本体o1と第二遊星歯車装置P2との間にそれぞれ配置されている。また、上記のとおり、出力ギヤ本体o1に対して軸方向両側に位置する延出軸部o2が、それぞれ出力軸受11、12を介してケースDCに回転可能に支持されている。本実施形態においては、一対の出力軸受11、12は、延出軸部o2の外周面を支持するように設けられている。これにより、出力ギヤOは、軸心部に設けられた軸挿通孔o3に対して径方向外側においてケースDCに支持された出力軸受11、12を介してケースDCに回転可能に支持されている。そして、これら一対の出力軸受11、12は、第一遊星歯車装置P1及び第二遊星歯車装置P2と径方向に重複して配置されている。ここで、一対の出力軸受11、12は、第一遊星歯車装置P1及び第二遊星歯車装置P2と同軸上に配置されている。したがって、これら一対の出力軸受11、12は、それぞれ、内径を第一遊星歯車装置P1及び第二遊星歯車装置P2の双方の外径よりも小径とすることにより、第一遊星歯車装置P1及び第二遊星歯車装置P2と径方向に重複して配置することができる。図示の例では、一対の出力軸受11、12は、いずれも外径を第一遊星歯車装置P1及び第二遊星歯車装置P2の双方の外径よりも小径としている。これにより、一対の出力軸受11、12は、第一遊星歯車装置P1及び第二遊星歯車装置P2と径方向に完全に重複するように配置されている。なお、図示の例では、出力軸受11、12として、比較的大きな荷重を支持可能なボールベアリングを用いている。
【0052】
上記のとおり、ケースDCは、軸方向における出力ギヤOと第一遊星歯車装置P1との間に配置される第一中間支持壁d1と、軸方向における出力ギヤOと第二遊星歯車装置P2との間に配置される第二中間支持壁d2とを備えている。一対の出力軸受11、12は、第一中間支持壁d1と第二中間支持壁d2とにそれぞれ支持される。すなわち、軸方向一方側(第一モータ・ジェネレータMG1側、図1における右側、以下同じ)の第一出力軸受11は第一中間支持壁d1に支持され、軸方向他方側(第二モータ・ジェネレータMG2側、図1における左側、以下同じ)の第二出力軸受12は第二中間支持壁d2に支持される。これにより、出力ギヤOは、軸方向両側において第一中間支持壁d1と第二中間支持壁d2とによりそれぞれ出力軸受11、12を介して回転可能に支持されている。ところで、第一中間支持壁d1は、出力ギヤO(の延出軸部o2)の周囲に、軸方向で出力ギヤO側に突出するボス状の軸方向突出部d1aを備え、当該軸方向突出部d1aの径方向内側に第一出力軸受11が支持されている。同様に、第二中間支持壁d2は、出力ギヤO(の延出軸部o2)の周囲に、軸方向で出力ギヤO側に突出するボス状の軸方向突出部d2aを備え、当該軸方向突出部d2aの径方向内側に第二出力軸受12が支持されている。そして、図示の例では、第二出力軸受12が、出力ギヤOの歯面と軸方向に重複して配置されている。すなわち、第二出力軸受12及びそれを支持する第二中間支持壁d2の軸方向突出部d2aが、出力ギヤ本体o1における外周面に歯面が形成されたリム部と軸方向に重複する位置に配置されている。
【0053】
出力ギヤOは、第一遊星歯車装置P1のリングギヤr1及び第二遊星歯車装置P2のリングギヤr2のそれぞれと別部品で構成されている。そして、軸方向一方側において第一連結部31を介して第一遊星歯車装置P1のリングギヤr1と一体回転するように連結され、軸方向他方側において第二連結部32を介して第二遊星歯車装置P2のリングギヤr2と一体回転するように連結されている。本実施形態においては、第一遊星歯車装置P1のリングギヤr1は、第一出力連結部材33を介して第一連結部31に連結され、第二遊星歯車装置P2のリングギヤr2は、第二出力連結部材34を介して第二連結部32に連結されている。第一出力連結部材33は、第一遊星歯車装置P1のリングギヤr1から径方向内側に向かって延出されるように設けられた部材であり、本実施形態においては、径方向に沿って配置され、径方向中心部にボス部が形成された円板状部材とされている。この第一出力連結部材33は、第一遊星歯車装置P1に対して第二遊星歯車装置P2側(軸方向他方側)に隣接して配置されている。そして、第一出力連結部材33の径方向外側端部にリングギヤr1の軸方向他方側端部が連結され、径方向内側端部に第一連結部31を介して出力ギヤOが連結されている。第二出力連結部材34は、第二遊星歯車装置P2のリングギヤr2から径方向内側に向かって延出されるように設けられた部材であり、本実施形態においては、径方向に沿って配置され、径方向中心部にボス部が形成された円板状部材とされている。この第二出力連結部材34は、第二遊星歯車装置P2に対して第一遊星歯車装置P1側(軸方向一方側)に隣接して配置されている。そして、第二出力連結部材34の径方向外側端部にリングギヤr2の軸方向一方側端部が連結され、径方向内側端部に第二連結部32を介して出力ギヤOが連結されている。
【0054】
第一連結部31及び第二連結部32は、出力ギヤOと第一遊星歯車装置P1のリングギヤr1及び第二遊星歯車装置P2のリングギヤr2とを、少なくとも軸周方向(回転方向)に係合可能な構成であればよく、公知の各種の連結構造を用いることができる。本実施形態においては、第一連結部31及び第二連結部32は、出力ギヤOと第一遊星歯車装置P1のリングギヤr1、及び出力ギヤOと第二遊星歯車装置P2のリングギヤr2をそれぞれスプライン係合して連結するスプライン係合部としている。ここでは、延出軸部o2における出力ギヤ本体o1に対して軸方向一方側の端部に第一連結部31が設けられ、出力ギヤ本体o1に対して軸方向他方側の端部に第二連結部32が設けられている。具体的には、出力ギヤO側では、延出軸部o2の軸方向両端の小径部の外周面に、第一連結部31及び第二連結部32を構成するスプライン係合溝が形成されている。また、第一遊星歯車装置P1のリングギヤr1から径方向内側に延出された第一出力連結部材33のボス部の内周面、及び第二遊星歯車装置P2のリングギヤr2から径方向内側に延出された第二出力連結部材34のボス部の内周面に、同じく第一連結部31及び第二連結部32を構成するスプライン係合溝が形成されている。そして、これらのスプライン係合溝が係合することにより、出力ギヤOの延出軸部o2における軸方向両端部に、第一遊星歯車装置P1のリングギヤr1及び第二遊星歯車装置P2のリングギヤr2がそれぞれ一体回転するように連結される。
【0055】
第一連結部31は、出力ギヤOに対して第一遊星歯車装置P1側の第一出力軸受11よりも第一遊星歯車装置P1側に配置される。これにより、第一中間支持壁d1及び第一出力軸受11よりも第一遊星歯車装置P1側から、第一出力連結部材33及び第一遊星歯車装置P1のリングギヤr1を出力ギヤOに連結することが可能となっている。同様に、第二連結部32は、出力ギヤOに対して第二遊星歯車装置P2側の第二出力軸受12よりも第二遊星歯車装置P2側に配置される。これにより、第二中間支持壁d2及び第二出力軸受12よりも第二遊星歯車装置P2側から、第二出力連結部材34及び第二遊星歯車装置P2のリングギヤr2を出力ギヤOに連結することが可能となっている。
【0056】
そこで、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hは、出力ギヤOがケースDCに支持された状態で、軸方向一方側から第一連結部31に第一遊星歯車装置P1及び第一モータ・ジェネレータMG1が組み付けられ、軸方向他方側から第二連結部32に第二遊星歯車装置P2及び第二モータ・ジェネレータMG2が組み付けられて構成される。ここでは、出力ギヤOの延出軸部o2が、軸方向一方側において第一出力軸受11を介して第一中間支持壁d1に支持され、軸方向他方側において第二出力軸受12を介して第二中間支持壁d2に支持されることにより、出力ギヤOがケースDCに支持される。この状態で、延出軸部o2の第一連結部31は、第一中間支持壁d1に支持された第一出力軸受11よりも第一遊星歯車装置P1側に突出するように配置され、第二連結部32は、第二中間支持壁d2に支持された第二出力軸受12よりも第二遊星歯車装置P2側に突出するように配置される。
【0057】
そこで、これらの第一連結部31及び第二連結部32に対して、軸方向両側からそれぞれ、第一遊星歯車装置P1及び第一モータ・ジェネレータMG1、並びに第二遊星歯車装置P2及び第二モータ・ジェネレータMG2が組み付けられる。より詳細には、まず、軸方向一方側から第一連結部31に第一遊星歯車装置P1のリングギヤr1を連結する。具体的には、第一出力軸受11よりも第一遊星歯車装置P1側に突出している出力ギヤO側の第一連結部31のスプライン係合溝に対して、リングギヤr1に連結された第一出力連結部材33側のスプライン係合溝を係合させて連結される。その後、第一遊星歯車装置P1のキャリアca1及びサンギヤs1と、当該サンギヤs1に連結された第一モータ・ジェネレータMG1の第一ロータRo1とが予め組み付けられてなる第一サブユニットが、軸方向一方側から第一遊星歯車装置P1のリングギヤr1に対して組み付けられる。同様に、軸方向他方側からは、第二連結部32に第二遊星歯車装置P2のリングギヤr2を連結する。具体的には、第二出力軸受12よりも第二遊星歯車装置P2側に突出している出力ギヤO側の第二連結部32のスプライン係合溝に対して、リングギヤr2に連結された第二出力連結部材34側のスプライン係合溝を係合させて連結される。その後、第二遊星歯車装置P2のキャリアca2及びサンギヤs2と、当該サンギヤs2に連結された第二モータ・ジェネレータMG2の第二ロータRo2とが予め組み付けられてなる第二サブユニットが、軸方向他方側から第二遊星歯車装置P2のリングギヤr2に対して組み付けられる。
【0058】
このように、第一連結部31を第一出力軸受11よりも第一遊星歯車装置P1側に配置し、第二連結部32を第二出力軸受12よりも第二遊星歯車装置P2側に配置したことにより、ケースDCに支持された出力ギヤOに対して、両側からサブユニットを組み付けることが可能となっている。これにより、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hは、製造工程を簡略化することが可能となっている。
【0059】
1−2−3.入力軸、固定軸
入力軸Iは、エンジンの回転駆動力をキャリアca1に伝達するための軸であり、軸方向一方側においてエンジンに連結され、軸方向他方側において第一遊星歯車装置P1のキャリアca1に連結されている。入力軸Iは、ケースDCの軸方向一方側の端壁である第一端部支持壁d4を貫通してケースDC内に挿入されている。また、入力軸Iは、第一遊星歯車装置P1のサンギヤs1の径方向内側を貫通する貫通軸とされている。すなわち、入力軸Iは、サンギヤs1の軸心部に設けられた第一サンギヤ貫通孔41を貫通し、第一遊星歯車装置P1に対して軸方向両側においてケースDCに支持されている。ここでは、入力軸Iは、第一遊星歯車装置P1に対して軸方向一方側で第一入力軸受13を介して回転可能な状態でケースDCに支持され、第一遊星歯車装置P1に対して軸方向他方側で第二入力軸受14を介して回転可能な状態でケースDCに支持されている。図示の例では、第一入力軸受13及び第二入力軸受14として、径方向の厚さを比較的小さくすることが可能なニードルベアリングを用いている。
【0060】
本実施形態においては、ケースDCは、第一モータ・ジェネレータMG1に対して軸方向一方側に配置された第一端部支持壁d4を備えている。そして、この第一端部支持壁d4に第一入力軸受13が支持されている。第一端部支持壁d4は、入力軸Iの周囲に、軸方向で第一モータ・ジェネレータMG1側に突出するボス状(円筒状)の軸方向突出部d4aを備え、当該軸方向突出部d4aの径方向内側に第一入力軸受13が支持されている。そして、入力軸Iは、この第一入力軸受13を介して第一端部支持壁d4に回転可能に支持されている。より具体的には、入力軸Iは、第一端部支持壁d4の軸方向突出部d4aの内周面と入力軸Iの外周面との間に設けられた第一入力軸受13を介してケースDCの第一端部支持壁d4に支持されている。
【0061】
また、入力軸Iの一端部、ここでは、入力軸Iの軸方向他方側の端部が、出力ギヤOを介してケースDCに支持されている。具体的には、入力軸Iの軸方向他方側の端部が、出力ギヤOの軸心部に設けられた軸挿通孔o3に挿入され、当該軸挿通孔o3の内周面と入力軸Iの外周面との間に配置された第二入力軸受14を介して軸挿通孔o3の内周面に回転可能に支持されている。上記のとおり、出力ギヤOの軸挿通孔o3は、延出軸部o2の軸心部に設けられており、当該延出軸部o2は、その外周面が出力軸受11、12を介してケースDCの第一中間支持壁d1又は第二中間支持壁d2にそれぞれ回転可能に支持されている。また、図示のように、延出軸部o2の軸方向一方側を支持する第一出力軸受11は、第二入力軸受14の径方向外側において、当該第二入力軸受14と軸方向に重複する位置に配置されている。これにより、入力軸Iの軸方向他方側の端部は、第二入力軸受14、出力ギヤOの延出軸部o2、及び第一出力軸受11を介してケースDCの第一中間支持壁d1に回転可能に支持されている。
【0062】
固定軸Fは、第二遊星歯車装置P2のキャリアca2をケースDCに固定するための非回転部材としての軸であり、軸方向一方側において第二遊星歯車装置P2のキャリアca2に連結され、軸方向他方側においてケースDCに連結されている。固定軸Fは、第二遊星歯車装置P2のサンギヤs2の径方向内側を貫通する貫通軸とされている。すなわち、固定軸Fは、サンギヤs2の軸心部に設けられた第二サンギヤ貫通孔42を貫通し、第二遊星歯車装置P2に対して軸方向両側においてケースDCに支持されている。本実施形態においては、固定軸Fは、第二遊星歯車装置P2に対して軸方向他方側でケースDCに対して回転不可能な状態で支持され、第二遊星歯車装置P2に対して軸方向一方側で固定軸受15を介して出力ギヤOに対して相対回転可能な状態でケースDCに支持されている。図示の例では、固定軸受15として、径方向の厚さを比較的小さくすることが可能なニードルベアリングを用いている。
【0063】
本実施形態においては、ケースDCは、第二モータ・ジェネレータMG2に対して軸方向他方側に配置された第二端部支持壁d5を備えている。そして、この第二端部支持壁d5に固定軸Fが直接支持されている。ここでは、固定軸Fと第二端部支持壁d5とは、スプライン係合部により連結されている。具体的には、第二端部支持壁d5は、固定軸Fの周囲に、軸方向で第二モータ・ジェネレータMG2側に突出するボス状(円筒状)の軸方向突出部d5aを備え、当該軸方向突出部d5aの内周面にスプライン係合溝が形成されている。また、固定軸Fの軸方向他方側端部の外周面にもスプライン係合溝が形成されている。そして、これらのスプライン係合溝が係合することにより、固定軸Fが第二端部支持壁d5に対して回転不可能な状態で固定支持されている。
【0064】
また、固定軸Fの一端部、ここでは、固定軸Fの軸方向一方側の端部が、出力ギヤOを介してケースDCに支持されている。具体的には、固定軸Fの軸方向一方側の端部が、出力ギヤOの軸心部に設けられた軸挿通孔o3に挿入され、当該軸挿通孔o3の内周面と固定軸Fの外周面との間に配置された固定軸受15を介して軸挿通孔o3の内周面に回転可能に支持されている。上記のとおり、出力ギヤOの軸挿通孔o3は、延出軸部o2の軸心部に設けられており、当該延出軸部o2は、その外周面が出力軸受11、12を介してケースDCの第一中間支持壁d1又は第二中間支持壁d2にそれぞれ回転可能に支持されている。また、図示のように、延出軸部o2の軸方向他方側を支持する第二出力軸受12は、固定軸受15の径方向外側において、当該固定軸受15と軸方向に重複する位置に配置されている。これにより、固定軸Fの軸方向一方側の端部は、固定軸受15、出力ギヤOの延出軸部o2、及び第二出力軸受12を介してケースDCの第二中間支持壁d2に回転可能に支持されている。
【0065】
以上のとおり、本実施形態においては、貫通軸としての入力軸Iは、第一遊星歯車装置P1に対して軸方向一方側においては軸受を介してケースDCに直接的に支持され、軸方向他方側においては軸受の他に出力ギヤOの延出軸部o2を介してケースDCに間接的に支持されている。一方、貫通軸としての固定軸Fは、第二遊星歯車装置P2に対して軸方向他方側(本発明における軸方向一方側)においては軸受を介することなくケースDCに直接的に支持され、軸方向一方側においては軸受の他に出力ギヤOの延出軸部o2を介してケースDCに間接的に支持されている。ここで、入力軸I又は固定軸FがケースDCに直接的に支持される状態とは、入力軸I又は固定軸Fが、ケースDCに直接接するように支持され、又は軸受のみを介して支持される状態を意味する。一方、入力軸I又は固定軸FがケースDCに間接的に支持される状態とは、入力軸I又は固定軸Fが、ケースDCとの間に軸受以外の部材(本例では出力ギヤOの延出軸部o2)を介してケースDCにされる状態を意味する。なお、本実施形態においては、貫通軸としての入力軸I及び固定軸Fをそれぞれ支持する第一入力軸受13、第二入力軸受14、及び固定軸受15が、本発明における貫通軸受に相当する。
【0066】
また、本実施形態においては、入力軸Iの軸方向他方側の端部に、ポンプ駆動軸61が連結されている。このポンプ駆動軸61は、軸方向一方側の端部が入力軸Iに連結されているとともに、固定軸Fの軸心部に設けられた貫通孔を貫通し、軸方向他方側の端部がケースDCの第二端部支持壁d5に設けられたオイルポンプ62のロータに連結されている。また、このポンプ駆動軸61の軸心部には、オイルポンプ62から吐出されたオイルが流通する流路が軸方向に貫通するように形成されている。オイルポンプ62は、第二端部支持壁d5の軸方向他方側の側面(外側面)と、当該側面に対向するように取り付けられたポンプカバー63との間にポンプ室が形成され、当該ポンプ室内にロータが配置された構成となっている。
【0067】
1−2−4.モータ・ジェネレータ
第一モータ・ジェネレータMG1は、出力ギヤOに対して軸方向一方側であって、同じく出力ギヤOに対して軸方向一方側に配置された第一遊星歯車装置P1の径方向外側に配置されている。第一モータ・ジェネレータMG1の第一ステータSt1は、ケースDCのケース周壁d3の内周面に固定されている。第一ロータRo1は、第一ロータ連結部材51を介して第一遊星歯車装置P1のサンギヤs1と一体的に連結されるとともに、当該第一ロータ連結部材51により第一遊星歯車装置P1の径方向外側に支持されている。
【0068】
第一ロータ連結部材51は、第一ロータRo1から径方向内側に向かって延出されるように設けられた部材であり、本実施形態においては、径方向に沿って配置され、径方向中心部に円形孔が形成された円板状部材とされている。この第一ロータ連結部材51は、第一遊星歯車装置P1に対して第二遊星歯車装置P2側とは反対側(軸方向一方側、図1における右側)に隣接して配置されている。そして、第一ロータ連結部材51の径方向外側端部に第一ロータRo1が固定され、径方向内側端部に第一遊星歯車装置P1のサンギヤs1が固定されている。この際、第一ロータ連結部材51は、第一ロータRo1の軸方向一方側端部及びサンギヤs1の軸方向一方側端部にそれぞれ固定されている。また、本実施形態においては、第一ロータ連結部材51は、第一ロータRo1の内周面を支持するために、前記円板状部材から軸方向に突出する円筒部51aを一体的に備えた形状とされている。ここでは、円筒部51aは、第一遊星歯車装置P1側(軸方向他方側、図1における左側)に突出するように設けられ、その外周面に第一ロータRo1の内周面が接している。
【0069】
上記のように、第一ロータ連結部材51の径方向外側端部に第一ロータRo1の軸方向一方側端部を固定したことにより、第一ロータRo1の径方向内側に、当該第一ロータRo1の内周面(本例では円筒部51aの内周面)と第一ロータ連結部材51とに囲まれた第一空間SP1が形成される。この第一空間SP1は、第二遊星歯車装置P2側(軸方向他方側)に開口する空間となっている。そして、この第一空間SP1内に、第一遊星歯車装置P1の全体又は一部が収容される。
【0070】
第一モータ・ジェネレータMG1の第一ロータRo1は、軸方向の二箇所で回転可能に支持され、当該二箇所の内の一方では第一ロータRo1はケースDCに支持され、他方では第一ロータRo1は第一遊星歯車装置P1のサンギヤs1の径方向内側で入力軸Iに支持されている。本実施形態においては、第一ロータRo1は、軸方向一方側の支持部において第一ロータ軸受16を介してケースDCの第一端部支持壁d4に回転可能に支持され、軸方向他方側の支持部においてサンギヤs1の径方向内側で第三ロータ軸受18を介して入力軸Iに回転可能に支持されている。なお、図示の例では、第一ロータ軸受16として、比較的大きな荷重を支持可能なボールベアリングを用いている。一方、第三ロータ軸受18としては、径方向の厚さを比較的小さくすることが可能なニードルベアリングを用いている。
【0071】
本実施形態においては、第一ロータ連結部材51は、当該第一ロータ連結部材51及び第一ロータRo1をケースDCに支持するために、前記円板状部材から軸方向に突出するボス状(円筒状)の軸方向突出部51bを一体的に備えた形状とされている。ここでは、軸方向突出部51bは、第一遊星歯車装置P1とは反対側(軸方向一方側、図1における右側)に突出するように設けられている。そして、この軸方向突出部51bの内周面を支持するように第一ロータ軸受16が設けられている。また、この第一ロータ軸受16は、上述した第一端部支持壁d4の軸方向突出部d4aの径方向外側に設けられている。本例では、当該第一端部支持壁d4の軸方向突出部d4aの外周面に、第一ロータ軸受16が支持されている。すなわち、第一ロータRo1は、第一ロータ連結部材51、及び当該第一ロータ連結部材51の軸方向突出部51bの内周面と第一端部支持壁d4の軸方向突出部d4aの外周面との間に設けられた第一ロータ軸受16を介して、ケースDCの第一端部支持壁d4に回転可能に支持されている。
【0072】
上記のとおり、ケースDCの第一端部支持壁d4に設けられた軸方向突出部d4aの径方向内側に、入力軸Iを支持するための第一入力軸受13が設けられている。そこで、本実施形態においては、第一端部支持壁d4の軸方向突出部d4aの径方向内側に設けられた第一入力軸受13と、当該軸方向突出部d4aの径方向外側に設けられた第一ロータ軸受16とが、軸方向に重複して配置されている。図示の例では、第一入力軸受13と第一ロータ軸受16とは、径方向に軸方向突出部d4aを挟んで同軸配置され、かつ軸方向に一部重複するように配置されている。また、本実施形態においては、第一ロータ連結部材51の軸方向突出部51bの径方向外側に、第一ロータRo1の回転位置を検出する第一回転センサ53が配置されている。具体的には、第一回転センサ53としてはレゾルバ等が用いられる。そして、第一ロータ連結部材51の軸方向突出部51bの外周面に、第一回転センサ53のロータが固定され、ケースDCの第一端部支持壁d4における第一モータ・ジェネレータMG1側の面に第一回転センサ53のステータが固定されている。ここで、第一ロータ連結部材51の軸方向突出部51bは、第一ロータ軸受16、第一入力軸受13、及び第一端部支持壁d4の軸方向突出部d4aと軸方向に重複して配置されている。したがって、本例では、第一回転センサ53も、これらと軸方向に重複して配置されている。また、軸方向に互いに重複するように配置された、第一ロータ軸受16、第一入力軸受13、第一端部支持壁d4の軸方向突出部d4a、第一ロータ連結部材51の軸方向突出部51b、及び第一回転センサ53は、第一モータ・ジェネレータMG1の第一ステータSt1と軸方向に重複して配置されている。本例では、これらは、第一ステータSt1のコアから軸方向一方側に突出しているコイルエンドと軸方向に重複して配置されている。このような配置とすることにより、ハイブリッド駆動装置Hの軸方向寸法を小さく抑えることが可能となっている。
【0073】
また、第一モータ・ジェネレータMG1の第一ロータRo1は、軸方向他方側の支持部においては、第一遊星歯車装置P1のサンギヤs1の径方向内側で入力軸Iに支持されている。具体的には、第一遊星歯車装置P1のサンギヤs1が、当該サンギヤs1の軸心部に設けられた第一サンギヤ貫通孔41の内周面と入力軸Iの外周面との間に設けられた第三ロータ軸受18を介して入力軸Iに支持されている。そして、このように入力軸Iに回転支持された第一遊星歯車装置P1のサンギヤs1に、第一ロータ連結部材51を介して第一ロータRo1が一体的に連結され支持されている。言い換えれば、第一ロータRo1は、第一ロータ連結部材51及び第一遊星歯車装置P1のサンギヤs1、並びに第三ロータ軸受18を介して入力軸Iに回転可能に支持されている。ここで、第一遊星歯車装置P1のサンギヤs1は、第一モータ・ジェネレータMG1の径方向内側に配置されていることから、当該サンギヤs1を回転可能に支持する第三ロータ軸受18も、第一モータ・ジェネレータMG1の径方向内側に配置されている。したがって、第一モータ・ジェネレータMG1の第一ロータRo1は、軸方向に関して、当該第一ロータRo1に対して軸方向一方側の位置、及び当該第一ロータRo1と軸方向に重複する位置の2箇所で支持されている。
【0074】
第二モータ・ジェネレータMG2は、出力ギヤOに対して軸方向他方側であって、同じく出力ギヤOに対して軸方向他方側に配置された第二遊星歯車装置P2の径方向外側に配置されている。第二モータ・ジェネレータMG2の第二ステータSt2は、ケースDCのケース周壁d3の内周面に固定されている。第二ロータRo2は、第二ロータ連結部材52を介して第二遊星歯車装置P2のサンギヤs2と一体的に連結されるとともに、当該第二ロータ連結部材52により第二遊星歯車装置P2の径方向外側に支持されている。
【0075】
第二ロータ連結部材52は、第二ロータRo2から径方向内側に向かって延出されるように設けられた部材であり、本実施形態においては、径方向に沿って配置され、径方向中心部に円形孔が形成された円板状部材とされている。この第二ロータ連結部材52は、第二遊星歯車装置P2に対して第一遊星歯車装置P1側とは反対側(軸方向他方側、図1における左側)に隣接して配置されている。そして、第二ロータ連結部材52の径方向外側端部に第二ロータRo2が固定され、径方向内側端部に第二遊星歯車装置P2のサンギヤs2が固定されている。この際、第二ロータ連結部材52は、第二ロータRo2の軸方向他方側端部及びサンギヤs2の軸方向他方側端部にそれぞれ固定されている。また、本実施形態においては、第二ロータ連結部材52は、第二ロータRo2の内周面を支持するために、前記円板状部材から軸方向に突出する円筒部52aを一体的に備えた形状とされている。ここでは、円筒部52aは、第二遊星歯車装置P2側(軸方向一方側、図1における右側)に突出するように設けられ、その外周面に第二ロータRo2の内周面が接している。
【0076】
上記のように、第二ロータ連結部材52の径方向外側端部に第二ロータRo2の軸方向他方側端部を固定したことにより、第二ロータRo2の径方向内側に、当該第二ロータRo2の内周面(本例では円筒部52aの内周面)と第二ロータ連結部材52とに囲まれた第二空間SP2が形成される。この第二空間SP2は、第一遊星歯車装置P1側(軸方向一方側)に開口する空間となっている。そして、この第二空間SP2内に、第二遊星歯車装置P2の全体又は一部が収容される。
【0077】
第二モータ・ジェネレータMG2の第二ロータRo2は、軸方向の二箇所で回転可能に支持され、当該二箇所の内の一方では第二ロータRo2はケースDCに支持され、他方では第二ロータRo2は第二遊星歯車装置P2のサンギヤs2の径方向内側で固定軸Fに支持されている。本実施形態においては、第二ロータRo2は、軸方向他方側の支持部において第二ロータ軸受17を介してケースDCの第二端部支持壁d5に回転可能に支持され、軸方向一方側の支持部においてサンギヤs2の径方向内側で第四ロータ軸受19を介して固定軸Fに回転可能に支持されている。なお、図示の例では、第二ロータ軸受17として、比較的大きな荷重を支持可能なボールベアリングを用いている。一方、第四ロータ軸受19としては、径方向の厚さを比較的小さくすることが可能なニードルベアリングを用いている。
【0078】
本実施形態においては、第二ロータ連結部材52は、当該第二ロータ連結部材52及び第二ロータRo2をケースDCに支持するために、前記円板状部材から軸方向に突出するボス状(円筒状)の軸方向突出部52bを一体的に備えた形状とされている。ここでは、軸方向突出部52bは、第二遊星歯車装置P2とは反対側(軸方向他方側、図1における左側)に突出するように設けられている。そして、この軸方向突出部52bの内周面を支持するように第二ロータ軸受17が設けられている。また、この第二ロータ軸受17は、上述した第二端部支持壁d5の軸方向突出部d5aの径方向外側に設けられている。本例では、当該第二端部支持壁d5の軸方向突出部d5aの外周面に、第二ロータ軸受17が支持されている。すなわち、第二ロータRo2は、第二ロータ連結部材52、及び当該第二ロータ連結部材52の軸方向突出部52bの内周面と第二端部支持壁d5の軸方向突出部d5aの外周面との間に設けられた第二ロータ軸受17を介して、ケースDCの第二端部支持壁d5に回転可能に支持されている。
【0079】
本実施形態においては、第二ロータ連結部材52の軸方向突出部52bの径方向外側に、第二ロータRo2の回転位置を検出する第二回転センサ54が配置されている。具体的には、第二回転センサ54としてはレゾルバ等が用いられる。そして、第二ロータ連結部材52の軸方向突出部52bの外周面に、第二回転センサ54のロータが固定され、ケースDCの第二端部支持壁d5における第二モータ・ジェネレータMG2側の面に第二回転センサ54のステータが固定されている。ここで、第二ロータ連結部材52の軸方向突出部52bは、第二ロータ軸受17、及び第二端部支持壁d5の軸方向突出部d5aと軸方向に重複して配置されている。したがって、本例では、第二回転センサ54も、これらと軸方向に重複して配置されている。また、軸方向に互いに重複するように配置された、第二ロータ軸受17、第二端部支持壁d5の軸方向突出部d5a、第二ロータ連結部材52の軸方向突出部52b、及び第二回転センサ54は、第二モータ・ジェネレータMG2の第二ステータSt2と軸方向に重複して配置されている。本例では、これらは、第二ステータSt2のコアから軸方向他方側に突出しているコイルエンドと軸方向に重複して配置されている。このような配置とすることにより、ハイブリッド駆動装置Hの軸方向寸法を小さく抑えることが可能となっている。
【0080】
また、第二モータ・ジェネレータMG2の第二ロータRo2は、軸方向一方側の支持部においては、第二遊星歯車装置P2のサンギヤs2の径方向内側で固定軸Fに支持されている。具体的には、第二遊星歯車装置P2のサンギヤs2が、当該サンギヤs2の軸心部に設けられた第二サンギヤ貫通孔42の内周面と固定軸Fの外周面との間に設けられた第四ロータ軸受19を介して固定軸Fに支持されている。そして、このように固定軸Fに回転支持された第二遊星歯車装置P2のサンギヤs2に、第二ロータ連結部材52を介して第二ロータRo2が一体的に連結され支持されている。言い換えれば、第二ロータRo2は、第二ロータ連結部材52及び第二遊星歯車装置P2のサンギヤs2、並びに第四ロータ軸受19を介して固定軸Fに回転可能に支持されている。ここで、第二遊星歯車装置P2のサンギヤs2は、第二モータ・ジェネレータMG2の径方向内側に配置されていることから、当該サンギヤs2を回転可能に支持する第四ロータ軸受19も、第二モータ・ジェネレータMG2の径方向内側に配置されている。したがって、第二モータ・ジェネレータMG2の第二ロータRo2は、軸方向に関して、当該第二ロータRo2に対して軸方向他方側の位置、及び当該第二ロータRo2と軸方向に重複する位置の2箇所で支持されている。
【0081】
このハイブリッド駆動装置Hでは、上記のとおり、第一モータ・ジェネレータMG1の第一ロータRo1を第一遊星歯車装置P1の径方向外側に配置するとともに、第一ロータ連結部材51を第一遊星歯車装置P1に対して第二遊星歯車装置P2側とは反対側に隣接して配置し、第二モータ・ジェネレータMG2の第二ロータRo2を第二遊星歯車装置P2の径方向外側に配置するとともに、第二ロータ連結部材52を第二遊星歯車装置P2に対して第一遊星歯車装置P1側とは反対側に隣接して配置している。これにより、第一モータ・ジェネレータMG1の径方向内側に形成されて第一遊星歯車装置P1を収容する第一空間SP1と、第二モータ・ジェネレータMG2の径方向内側に形成されて第二遊星歯車装置P2を収容する第二空間SP2とが、軸方向に互いに対向する側に開口するように形成されている。すなわち、第一ロータRo1の内周面(本例では円筒部51aの内周面)と第一ロータ連結部材51とに囲まれた第一空間SP1と、第二ロータRo2の内周面(本例では円筒部52aの内周面)と第二ロータ連結部材52とに囲まれた第二空間SP2とは、互いに出力ギヤO側に開口するように、第一ロータRo1及び第一ロータ連結部材51、並びに第二ロータRo2及び第二ロータ連結部材52が配置されている。
【0082】
また、上記のとおり、第一ロータRo1を回転可能に支持する第一ロータ軸受16は、第一端部支持壁d4の軸方向突出部d4aの外周面に配置され、第一ロータ連結部材51から軸方向に突出形成された軸方向突出部51bの内周面を支持するように設けられている。また、第二ロータRo2を回転可能に支持する第二ロータ軸受17は、第二端部支持壁d5の軸方向突出部d5aの外周面に配置され、第二ロータ連結部材52から軸方向に突出形成された軸方向突出部2bの内周面を支持するように設けられている。一方、一対の出力軸受11、12は、出力ギヤOの延出軸部o2の外周面を支持するように設けられている。各軸受11、12、16、17をこのように配置することにより、本実施形態においては、一対のロータ軸受16、17と一対の出力軸受11、12とを、ほぼ同径とすることが可能となっている。したがって、これらの軸受として、同一径の同一部品を共用することにより、部品種類数を減少させ、コストダウンを図ることが可能となっている。
【0083】
1−2−5.遊星歯車装置
第一遊星歯車装置P1は、第一モータ・ジェネレータMG1の径方向内側に、当該第一モータ・ジェネレータMG1と軸方向に重複して配置されている。したがって、第一遊星歯車装置P1は、第一モータ・ジェネレータMG1と同様に、出力ギヤOに対して軸方向一方側(図1における右側)に配置されている。図示の例では、第一遊星歯車装置P1は、第一モータ・ジェネレータMG1の第一ロータRo1及び第一ステータSt1と一部重複するように配置されている。
【0084】
第一遊星歯車装置P1のサンギヤs1は、第一ロータ連結部材51を介して第一ロータRo1と連結されている。上記のとおり、第一ロータ連結部材51は、第一遊星歯車装置P1に対して第二遊星歯車装置P2側とは反対側(軸方向一方側)に隣接して配置されている。したがって、第一遊星歯車装置P1のサンギヤs1は、第二遊星歯車装置P2側とは反対側(軸方向一方側)の端部において、第一ロータ連結部材51と連結されている。第一遊星歯車装置P1のキャリアca1は、ピニオンギヤに対して第二遊星歯車装置P2側(軸方向他方側)において入力軸Iと連結されている。図示の例では、ピニオンギヤに対して第二遊星歯車装置P2側(軸方向他方側)の位置において、入力軸Iの外周面から突出するように一体的に形成されたフランジ部i1にキャリアca1が一体的に固定されている。フランジ部i1の軸方向両側には、第一遊星歯車装置P1のサンギヤs1及びリングギヤr1に作用する軸方向荷重を支持するためのスラスト軸受20が配置されている。
【0085】
第一遊星歯車装置P1のリングギヤr1は、第一出力連結部材33を介して出力ギヤOに連結されている。上記のとおり、第一出力連結部材33は、第一遊星歯車装置P1に対して第二遊星歯車装置P2側(軸方向他方側)に隣接して配置されている。したがって、第一遊星歯車装置P1のリングギヤr1は、第二遊星歯車装置P2側(軸方向他方側)の端部において、第一出力連結部材33と連結されている。本例では、リングギヤr1と第一出力連結部材33との連結は、スプライン係合により行う構成とされている。そして、第一遊星歯車装置P1のリングギヤr1は、第一出力連結部材33を介して出力ギヤOの延出軸部o2における軸方向一方側の端部に設けられた第一連結部31に連結されている。
【0086】
第二遊星歯車装置P2は、第二モータ・ジェネレータMG2の径方向内側に、当該第二モータ・ジェネレータMG2と軸方向に重複して配置されている。したがって、第二遊星歯車装置P2は、第二モータ・ジェネレータMG2と同様に、出力ギヤOに対して軸方向他方側(図1における左側)に配置されている。図示の例では、第二遊星歯車装置P2の全体が、第二モータ・ジェネレータMG2の第二ロータRo2及び第二ステータSt2と重複するように配置されている。
【0087】
第二遊星歯車装置P2のサンギヤs2は、第二ロータ連結部材52を介して第二ロータRo2と連結されている。上記のとおり、第二ロータ連結部材52は、第二遊星歯車装置P2に対して第一遊星歯車装置P1側とは反対側(軸方向他方側)に隣接して配置されている。したがって、第二遊星歯車装置P2のサンギヤs2は、第一遊星歯車装置P1側とは反対側(軸方向他方側)の端部において、第二ロータ連結部材52と連結されている。第二遊星歯車装置P2のキャリアca2は、ピニオンギヤに対して第一遊星歯車装置P1側(軸方向一方側)において固定軸Fと連結されている。図示の例では、ピニオンギヤに対して第一遊星歯車装置P1側(軸方向一方側)の位置において、固定軸Fの外周面から突出するように一体的に形成されたフランジ部f1にキャリアca2が一体的に固定されている。フランジ部f1の軸方向両側には、第二遊星歯車装置P2のサンギヤs2及びリングギヤr2に作用する軸方向荷重を支持するためのスラスト軸受21が配置されている。
【0088】
第二遊星歯車装置P2のリングギヤr2は、第二出力連結部材34を介して出力ギヤOに連結されている。上記のとおり、第二出力連結部材34は、第二遊星歯車装置P2に対して第一遊星歯車装置P1側(軸方向一方側)に隣接して配置されている。したがって、第二遊星歯車装置P2のリングギヤr2は、第一遊星歯車装置P1側(軸方向一方側)の端部において、第二出力連結部材34と連結されている。本例では、リングギヤr2と第二出力連結部材34との連結は、スプライン係合により行う構成とされている。そして、第二遊星歯車装置P2のリングギヤr2は、第二出力連結部材34を介して出力ギヤOの延出軸部o2における軸方向他方側の端部に設けられた第二連結部32に連結されている。本実施形態においては、第二遊星歯車装置P2として、第一遊星歯車装置P1と比べて、軸方向及び径方向にやや大きい寸法のものが用いられている。
【0089】
2.第二の実施形態
次に、本発明の第二の実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hについて図面に基づいて説明する。図4は、このハイブリッド駆動装置Hの要部断面図であり、図5は、このハイブリッド駆動装置Hの全体断面図である。これらの図に示すように、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hは、上記第一の実施形態と比べて、第二遊星歯車装置P2の各回転要素に対する出力ギヤO及び非回転部材としてケースDCの連結関係が相違する。また、これに伴い、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hは、上記第一の実施形態における固定軸Fを備えておらず、入力軸Iの支持構造も上記第一の実施形態と相違する。一方、このハイブリッド駆動装置Hは、出力ギヤOの出力ギヤ本体o1に対して軸方向一方側(図4における右側)の構成は、上記第一の実施形態と同一である。以下では、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hについて、上記第一の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第一の実施形態と同様である。
【0090】
第二遊星歯車装置P2は、上記第一の実施形態と同様に、シングルピニオン型の遊星歯車機構により構成されており、第二遊星歯車装置P2のサンギヤs2は、第二モータ・ジェネレータMG2の第二ロータRo2と一体回転するように連結されている。一方、本実施形態においては、第二遊星歯車装置P2のキャリアca2が、出力ギヤOと一体回転するように連結されている。また、リングギヤr2が、非回転部材としてのケースDCに連結され、回転しないように固定されている。第二遊星歯車装置P2の各回転要素の連結関係がこのようにされたことにより、本実施形態においては、出力ギヤOは、軸方向一方側では第一遊星歯車装置P1の出力回転要素としてのリングギヤr1に連結されているが、軸方向他方側では第二遊星歯車装置P2の出力回転要素としてのキャリアca2に連結されている。
【0091】
図6は、車両の走行時における第一遊星歯車装置P1及び第二遊星歯車装置P2の動作状態を表す速度線図である。これらの速度線図の記載方法は、上記第一の実施形態と同様である。図6に直線L1として示されるように、第一遊星歯車装置P1に関する各部の動作は、上記第一の実施形態と同様である。一方、第二遊星歯車装置P2については、図6に直線L2として示されるように、第二モータ・ジェネレータMG2の回転を減速して出力ギヤOに伝達する機能については同様であるが、その実現方法が上記第一の実施形態と相違する。すなわち、第二遊星歯車装置P2は、第二遊星歯車装置P2における回転速度の順で一方端となるリングギヤr2がケースDCに固定されており回転速度がゼロとされる。この場合、回転速度の順で他方端となるサンギヤs2の回転は、当該第二遊星歯車装置P2の歯数比に応じて減速されて回転速度の順で中間となるキャリアca2に伝達される。これにより、第二遊星歯車装置P2は、サンギヤs2に連結された第二モータ・ジェネレータMG2の回転を減速し、キャリアca2に連結された出力ギヤOに伝達する。そして、第二モータ・ジェネレータMG2は、車両側からの要求駆動力や車両の走行状態等に応じて、第一遊星歯車装置P1から出力ギヤOに分配された駆動力を補助すべく、適宜正方向又は負方向のトルクを出力する。なお、本実施形態に係る第二遊星歯車装置P2の構成によれば、上記第一の実施形態と比べて、第二モータ・ジェネレータMG2の回転を減速する際の減速比を大きくすることが可能である。したがって、本例では、図4に示すように、第二モータ・ジェネレータMG2には、上記第一の実施形態(図1参照)と比べて体格の小さいもの、具体的には軸方向寸法が小さいものが用いられている。
【0092】
本実施形態においても、出力ギヤOは、軸方向における第一遊星歯車装置P1と第二遊星歯車装置P2との間に配置されており、カウンタ減速機構CRのカウンタドリブンギヤcr2と噛み合う出力ギヤ本体o1と、当該出力ギヤ本体o1に対して軸方向両側に延出され、出力ギヤ本体o1よりも小径の延出軸部o2を備えている。但し、出力ギヤOの延出軸部o2の軸心部に設けられた貫通孔である軸挿通孔o3内には、入力軸Iが貫通するように配置される。すなわち、本実施形態においては、軸挿通孔o3内に入力軸I等の軸端部が回転可能に支持される構成とはなっておらず、入力軸Iは、軸挿通孔o3を貫通するだけの構成となっている。
【0093】
また、本実施形態においては、出力ギヤOの延出軸部o2における軸方向他方側に設けられる第二連結部32は、第二遊星歯車装置P2のキャリアca2と連結される。すなわち、出力ギヤOは、第二遊星歯車装置P2のキャリアca2と別部品で構成され、軸方向他方側において第二連結部32を介して第二遊星歯車装置P2のリングギヤr2と一体回転するように連結されている。本実施形態においては、第二遊星歯車装置P2のキャリアca2が直接出力ギヤOに連結されている。すなわち、第二遊星歯車装置P2のキャリアca2は、第二遊星歯車装置P2に対して第一遊星歯車装置P1側(軸方向一方側)において、ピニオンギヤの軸部材から径方向内側に向かって延出されるように形成されている。そして、このキャリアcaの径方向内側に向かって延出された部分における、径方向中心部にボス部が形成されている。そして、このボス部に第二連結部32を介して出力ギヤOが連結されている。これにより、第二遊星歯車装置P2のキャリアca2は、直接的に第二連結部32に連結されている。
【0094】
本実施形態においても、第二連結部32は、出力ギヤOと第二遊星歯車装置P2のキャリアca2をそれぞれスプライン係合して連結するスプライン係合部としている。具体的には、出力ギヤO側では、延出軸部o2の軸方向両端の小径部の外周面に、第二連結部32を構成するスプライン係合溝が形成されている。また、第二遊星歯車装置P2のキャリアca2に設けられたボス部の内周面に、同じく第二連結部32を構成するスプライン係合溝が形成されている。そして、これらのスプライン係合溝が係合することにより、出力ギヤOの延出軸部o2における軸方向他方側の端部に、第二遊星歯車装置P2のキャリアca2が一体回転するように連結される。上記第一の実施形態と同様に、第二連結部32は、出力ギヤOに対して第二遊星歯車装置P2側の第二出力軸受12よりも第二遊星歯車装置P2側に配置される。
【0095】
本実施形態においても、入力軸Iは、エンジンの回転駆動力をキャリアca1に伝達するために、第一遊星歯車装置P1のキャリアca1に連結されている。また、入力軸Iは、第一遊星歯車装置P1のサンギヤs1の径方向内側を貫通する貫通軸とされている。但し、本実施形態ではそれだけでなく、入力軸Iは、出力ギヤOの径方向内側及び第二遊星歯車装置P2のサンギヤs2の径方向内側も貫通する構成となっている。すなわち、この入力軸Iは、第一遊星歯車装置P1のサンギヤs1の軸心部に設けられた第一サンギヤ貫通孔41を貫通するだけでなく、出力ギヤOの延出軸部o2の軸心部に設けられた貫通孔である軸挿通孔o3、及び第二遊星歯車装置P2のサンギヤs2の軸心部に設けられた第二サンギヤ貫通孔42を貫通するように配置されている。そして、入力軸Iは、第一遊星歯車装置P1及び第二遊星歯車装置P2に対して軸方向両側、具体的には、第一遊星歯車装置P1に対して軸方向一方側及び第二遊星歯車装置P2に対して軸方向他方側においてケースDCに支持されている。ここでは、入力軸Iは、第一遊星歯車装置P1に対して軸方向一方側で第一入力軸受13を介して回転可能な状態でケースDCに支持され、第二遊星歯車装置P2に対して軸方向他方側で第二入力軸受14を介して回転可能な状態でケースDCに支持されている。これにより、本実施形態においては、入力軸Iの一端部が、出力ギヤOの軸心部に設けられた軸挿通孔o3を貫通し、出力ギヤOに対して第二モータ・ジェネレータMG2側に配置された第二入力軸受14によって回転可能に支持される構成となっている。
【0096】
そして、本実施形態においては、第二入力軸受14の配置及び支持構造が、上記第一の実施形態と相違している。すなわち、第二入力軸受14は、第二モータ・ジェネレータMG2に対して軸方向他方側に配置された第二端部支持壁d5に支持されている。すなわち、第二端部支持壁d5は、入力軸Iの周囲に、軸方向で第二モータ・ジェネレータMG2側に突出するボス状(円筒状)の軸方向突出部d5aを備えており、当該軸方向突出部d5aの径方向内側に第二入力軸受14が支持されている。そして、入力軸Iは、この第二入力軸受14を介して第二端部支持壁d5に回転可能に支持されている。より具体的には、入力軸Iは、第二端部支持壁d5の軸方向突出部d5aの内周面と入力軸Iの外周面との間に設けられた第二入力軸受14を介してケースDCの第二端部支持壁d5に支持されている。
【0097】
以上のとおり、本実施形態においては、貫通軸としての入力軸Iは、第一遊星歯車装置P1及び第二遊星歯車装置P2の双方に対して軸方向両側、具体的には、第一遊星歯車装置P1に対して軸方向一方側及び第二遊星歯車装置P2に対して軸方向他方側において、軸受を介してケースDCに直接的に支持されている。なお、本実施形態においては、貫通軸としての入力軸Iを支持する第一入力軸受13及び第二入力軸受14が、本発明における貫通軸受に相当する。また、本実施形態においては、入力軸Iの軸方向他方側の端部が、ケースDCの第二端部支持壁d5に設けられたオイルポンプ62のロータに直接連結されている。そのため、入力軸Iの軸心部には、オイルポンプ62から吐出されたオイルが流通する流路が軸方向に沿って形成されている。
【0098】
上記第一の実施形態と同様に、第二モータ・ジェネレータMG2の第二ロータRo2は、軸方向の二箇所で回転可能に支持され、当該二箇所の内の一方では第二ロータRo2はケースDCに支持されている。一方、本実施形態においては、当該二箇所の内の他方では第二ロータRo2は第二遊星歯車装置P2のサンギヤs2の径方向内側で、当該サンギヤs2の径方向内側を貫通するように配置されている入力軸Iに支持されている。すなわち、第二ロータRo2は、軸方向一方側の支持部においてサンギヤs2の径方向内側で第四ロータ軸受19を介して入力軸Iに回転可能に支持されている。具体的には、第二遊星歯車装置P2のサンギヤs2が、当該サンギヤs2の軸心部に設けられた第二サンギヤ貫通孔42の内周面と入力軸Iの外周面との間に設けられた第四ロータ軸受19を介して入力軸Iに支持されている。そして、このように入力軸Iに回転支持された第二遊星歯車装置P2のサンギヤs2に、第二ロータ連結部材52を介して第二ロータRo2が一体的に連結され支持されている。言い換えれば、第二ロータRo2は、第二ロータ連結部材52及び第二遊星歯車装置P2のサンギヤs2、並びに第四ロータ軸受19を介して入力軸Iに回転可能に支持されている。
【0099】
上記のとおり、ケースDCの第二端部支持壁d5に設けられた軸方向突出部d5aの径方向内側に、入力軸Iを支持するための第二入力軸受14が設けられている。そこで、本実施形態においては、第二端部支持壁d5の軸方向突出部d5aの径方向内側に設けられた第二入力軸受14と、当該軸方向突出部d5aの径方向外側に設けられた第二ロータ軸受17とが、軸方向に重複して配置されている。図示の例では、第二入力軸受14と第二ロータ軸受17とは、径方向に軸方向突出部d5aを挟んで同軸配置され、かつ軸方向に一部重複するように配置されている。また、本実施形態においては、第二ロータ連結部材52の軸方向突出部52bの径方向外側に、第二ロータRo2の回転位置を検出する第二回転センサ54が配置されている。具体的には、第二ロータ連結部材52の軸方向突出部52bの外周面に、第二回転センサ54のロータが固定され、ケースDCの第二端部支持壁d5における第二モータ・ジェネレータMG2側の面に第二回転センサ54のステータが固定されている。ここで、第二ロータ連結部材52の軸方向突出部52bは、第二ロータ軸受17、第二入力軸受14、及び第二端部支持壁d5の軸方向突出部d5aと軸方向に重複して配置されている。したがって、本例では、第二回転センサ54も、これらと軸方向に重複して配置されている。また、軸方向に互いに重複するように配置された、第二ロータ軸受17、第二入力軸受14、第二端部支持壁d5の軸方向突出部d5a、第二ロータ連結部材52の軸方向突出部52b、及び第二回転センサ54は、第二モータ・ジェネレータMG2の第二ステータSt2と軸方向に重複して配置されている。本例では、これらは、第二ステータSt2のコアから軸方向他方側に突出しているコイルエンドと軸方向に重複して配置されている。このような配置とすることにより、ハイブリッド駆動装置Hの軸方向寸法を小さく抑えることが可能となっている。
【0100】
第二遊星歯車装置P2は、サンギヤs2が第二ロータ連結部材52を介して第二ロータRo2と連結されている点は、上記第一の実施形態と同様である。一方、第二遊星歯車装置P2のキャリアca2は出力ギヤOに連結されている。第二遊星歯車装置P2のキャリアca2は、ピニオンギヤに対して第一遊星歯車装置P1側(軸方向一方側)において、径方向内側に向かって延出されるように形成されている。そして、第二遊星歯車装置P2のキャリアca2は、出力ギヤOの延出軸部o2における軸方向他方側の端部に設けられた第二連結部32に連結されている。この第二遊星歯車装置P2のキャリアca2の軸方向他方側の端面と、第二遊星歯車装置P2のサンギヤs2に連結された第二ロータ連結部材52の軸方向一方側の側面との間には、第二遊星歯車装置P2のサンギヤs2に作用する軸方向荷重を支持するためのスラスト軸受21が配置されている。
【0101】
第二遊星歯車装置P2のリングギヤr2は、非回転部材としてのケースDCに連結され、回転しないように固定されている。本実施形態においては、ケースDCの第二中間支持壁d2に第二遊星歯車装置P2のリングギヤr2が係合されて固定されている。具体的には、第二中間支持壁d2は、軸方向で第二遊星歯車装置P2側へ突出するボス部d2bを備え、当該ボス部d2bの内周面にスプライン係合溝が形成されている。第二遊星歯車装置P2のリングギヤr2の軸方向一方側の端部の外周面にもスプライン係合溝が形成されている。そして、これらのスプライン係合溝が係合することにより、リングギヤr2が第二中間支持壁d2に対して回転不可能な状態で固定支持されている。
【0102】
3.その他の実施形態
(1)上記第一の実施形態では、第一遊星歯車装置P1のリングギヤr1が、第一遊星歯車装置P1に対して第二遊星歯車装置P2側に配置される第一出力連結部材33を介して出力ギヤOに連結され、第二遊星歯車装置P2のリングギヤr2が、第二遊星歯車装置P2に対して第一遊星歯車装置P1側に配置される第二出力連結部材34を介して出力ギヤOに連結された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。したがって、例えば上記第二の実施形態に係る第二遊星歯車装置P2のキャリアca2のように、第一遊星歯車装置P1及び第二遊星歯車装置P2の一方又は双方の出力ギヤOに連結される回転要素が、出力連結部材を介することなく直接的に出力ギヤOに連結された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0103】
(2)上記の各実施形態では、出力ギヤOが、連結対象となる第一遊星歯車装置P1及び第二遊星歯車装置P2の第三回転要素と別部品で構成され、第一連結部31及び第二連結部32を介して連結された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。したがって、出力ギヤOを、第一遊星歯車装置P1の第三回転要素及び第二遊星歯車装置P2の第三回転要素の一方又は双方と同一部品として一体的に形成することも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0104】
(3)上記の各実施形態では、出力ギヤOと第一遊星歯車装置P1の第三回転要素及び第二遊星歯車装置P2の第三回転要素とをそれぞれ連結する第一連結部31及び第二連結部32が、スプライン係合により2つの部材を互いに一体回転するように連結する構成である場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。したがって、例えば、第一連結部31及び第二連結部32の一方又は双方を、キー及びキー溝を用いて2つの部材を互いに一体回転するように連結する構成とし、或いは2つの部材にそれぞれ設けられたフランジ部を対向させるとともにこれらを互いにボルト等の締結部材により締結固定する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0105】
(4)上記の各実施形態では、第一連結部31及び第二連結部32が、出力ギヤOの延出軸部o2の両端部の外周面にそれぞれ設けられる構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。したがって、例えば、第一連結部31及び第二連結部32を、出力ギヤOの延出軸部o2の軸心部に設けられた軸挿通孔o3の両端部の内周面にそれぞれ設けられる構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0106】
(5)上記の各実施形態では、第一連結部31が第一出力軸受11よりも第一遊星歯車装置P1側に配置され、第二連結部32が第二出力軸受12よりも第二遊星歯車装置P2側に配置された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。したがって、例えば、第一連結部31及び第二連結部32が、軸挿通孔o3の両端部の内周面に設けられる場合等には、第一連結部31を第一出力軸受11と軸方向で重複する位置に配置し、第二連結部32を第二出力軸受12と軸方向で重複する位置に配置することも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0107】
(6)上記の各実施形態では、出力ギヤOが、出力ギヤ本体o1に対して軸方向両側に延出され、第一遊星歯車装置P1及び第二遊星歯車装置P2よりも小径の延出軸部o2を備え、当該延出軸部o2の軸方向両側の端部にそれぞれ連結部が設けられた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。したがって、例えば、出力ギヤOの軸方向両側又は軸方向のいずれか一方側に延出される延出軸部o2が、第一遊星歯車装置P1及び第二遊星歯車装置P2の一方又は双方と略同径又はこれより大きい径とされることも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、出力ギヤOが、延出軸部o2を備えず、出力ギヤ本体o1と同径の円筒状とされることも本発明の好適な実施形態の一つである。そして、これらのいずれの構成においても、出力ギヤOの軸方向両側の端部にそれぞれ連結部が設けられる。
【0108】
(7)上記の各実施形態では、第一モータ・ジェネレータMG1の第一ロータRo1から径方向内側に延出される第一ロータ連結部材51が第一遊星歯車装置P1に対して第二遊星歯車装置P2側とは反対側に配置され、第二モータ・ジェネレータMG2の第二ロータRo2から径方向内側に延出される第二ロータ連結部材52が第二遊星歯車装置P2に対して第一遊星歯車装置P1側とは反対側に配置されることにより、第一遊星歯車装置P1を収容する第一空間SP1と、第二遊星歯車装置P2を収容する第二空間SP2とが、軸方向に互いに対向する側に開口する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。したがって、第一ロータ連結部材51を第一遊星歯車装置P1に対して第二遊星歯車装置P2側に配置し、或いは第二ロータ連結部材52を第二遊星歯車装置P2に対して第一遊星歯車装置P1側に配置することにより、第一空間SP1と第二空間SP2とが軸方向に同じ向きに開口する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、第一ロータ連結部材51を第一遊星歯車装置P1に対して第二遊星歯車装置P2側に配置し、かつ第二ロータ連結部材52を第二遊星歯車装置P2に対して第一遊星歯車装置P1側に配置することにより、第一空間SP1と第二空間SP2とが軸方向に互いに反対向きに開口する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0109】
(8)上記の各実施形態では、第一中間支持壁d1及び第二中間支持壁d2の双方が、軸方向で出力ギヤO側に突出する軸方向突出部を備え、当該軸方向突出部に出力軸受11、12が支持される構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。したがって、第一中間支持壁d1及び第二中間支持壁d2のいずれか一方が、出力軸受11、12を支持するために、軸方向で出力ギヤO側に突出する軸方向突出部を備える構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、第一中間支持壁d1及び第二中間支持壁d2のいずれか他方は、出力ギヤOとは反対側に突出する軸方向突出部を備え、或いは、壁自体が十分な厚さを備えている場合には両側に軸方向突出部を備えない構成とすることも可能である。
【0110】
(9)上記の各実施形態では、第一中間支持壁d1が主ケースDC1(ケースDC)と別部品で構成されるとともに、ケースDCに一体的に取り付けられ、第二中間支持壁d2が主ケースDC1(ケースDC)と一体的に形成されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。したがって、例えば、第一中間支持壁d1がケースDCと一体的に形成され、第二中間支持壁d2がケースDCと別部品で構成されるとともに、ケースDCに一体的に取り付けられる構成とし、或いは、第一中間支持壁d1及び第二中間支持壁d2の双方がケースDCと別部品で構成されるとともに、ケースDCに一体的に取り付けられる構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0111】
(10)上記の各実施形態では、一対の出力軸受11、12の内の一方が出力ギヤOの歯面と軸方向に重複して配置されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。したがって、一対の出力軸受11、12の双方が出力ギヤOの歯面と軸方向に重複して配置され、或いは、いずれもが出力ギヤOの歯面と軸方向に重複しないように配置された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0112】
(11)上記の各実施形態では、第一モータ・ジェネレータMG1の第一ロータRo1を回転可能に支持する第一ロータ軸受16が、第一ロータ連結部材51を径方向内側から支持するように設けられ、第二モータ・ジェネレータMG2の第二ロータRo2を回転可能に支持する第二ロータ軸受17が、第二ロータ連結部材52を径方向内側から支持するように設けられている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。したがって、第一ロータ軸受16が、第一ロータ連結部材51を径方向外側から支持するように設けられ、或いは、第二ロータ軸受17が、第二ロータ連結部材52を径方向外側から支持するように設けられた構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、例えば、第一ロータ軸受16が、第一ロータ連結部材51から軸方向に突出形成された軸方向突出部の外周面を支持するように設けられ、或いは、第二ロータ軸受17が、第二ロータ連結部材52から軸方向に突出形成された軸方向突出部の外周面を支持するように設けられていると好適である。
【0113】
(12)上記の各実施形態では、一対の出力軸受11、12が、出力ギヤOの延出軸部o2の外周面を支持するように設けられている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。したがって、一対の出力軸受11、12の一方又は双方が、出力ギヤOの延出軸部o2の内周面を支持するように設けられた構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0114】
(13)上記の各実施形態では、ケースDCの第一端部支持壁d4に設けられた軸方向突出部d4aの径方向内側に入力軸Iを支持するための第一入力軸受13が設けられ、当該軸方向突出部d4aの径方向外側に第一ロータRo1を支持するための第一ロータ軸受16が設けられ、これらが軸方向に重複するように配置されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。したがって、例えば、第一入力軸受13と第一ロータ軸受16とを軸方向に重複しないように配置し、或いは、第一入力軸受13及び第一ロータ軸受16を、ケースDCの第一端部支持壁d4に2つの軸方向突出部を設け、各軸方向突出部の径方向内側(又は内周面)或いは径方向外側(又は外周面)にそれぞれ第一入力軸受13と第一ロータ軸受16とを設けた構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。なお、この点は、上記第二の実施形態における入力軸Iの軸方向他方側(図4における左側)の支持構造についても同様である。
【0115】
(14)上記の各実施形態では、第一遊星歯車装置P1がシングルピニオン型の遊星歯車機構で構成され、サンギヤs1に第一モータ・ジェネレータMG1、キャリアca1に入力軸I、リングギヤr1に出力ギヤOが連結された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。したがって、第一遊星歯車装置P1をダブルピニオン型の遊星歯車機構で構成し、或いは、シングルピニオン型又はダブルピニオン型の複数の遊星歯車機構を組み合わせて構成することも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、第一遊星歯車装置P1の各回転要素に対する、入力軸I、及び出力ギヤOの連結関係についても、上記の各実施形態と相違する構成とすることが可能である。したがって、例えば、第一遊星歯車装置P1をダブルピニオン型の遊星歯車機構で構成する場合において、サンギヤs1に第一モータ・ジェネレータMG1、リングギヤr1に入力軸I、キャリアca1に出力ギヤOが連結された構成としても好適である。また、例えば、シングルピニオン型の遊星歯車機構で構成された第一遊星歯車装置P1において、サンギヤs1に第一モータ・ジェネレータMG1、キャリアca1に出力ギヤO、リングギヤr1に入力軸Iが連結された構成とすることも可能である。
【0116】
(15)上記の第一の実施形態では、第二遊星歯車装置P2がシングルピニオン型の遊星歯車機構で構成され、サンギヤs2に第二モータ・ジェネレータMG2、キャリアca2に非回転部材、リングギヤr2に出力ギヤOが連結された構成を例として説明した。また、上記の第二の実施形態では、第二遊星歯車装置P2がシングルピニオン型の遊星歯車機構で構成され、サンギヤs2に第二モータ・ジェネレータMG2、キャリアca2に出力ギヤO、リングギヤr2に非回転部材が連結された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。したがって、第二遊星歯車装置P2をダブルピニオン型の遊星歯車機構で構成し、或いは、シングルピニオン型又はダブルピニオン型の複数の遊星歯車機構を組み合わせて構成することも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、第二遊星歯車装置P2の各回転要素に対する、非回転部材、及び出力ギヤOの連結関係についても、上記の各実施形態と相違する構成とすることが可能である。したがって、例えば、第二遊星歯車装置P2をダブルピニオン型の遊星歯車機構で構成する場合において、サンギヤs2に第二モータ・ジェネレータMG2、リングギヤr1に出力ギヤO、キャリアca1に非回転部材が連結された構成としても好適である。
【0117】
(16)上記の各実施形態では、本発明をFF(Front Engine Front Drive)車両やRR(Rear Engine Rear Drive)車両等に搭載されるハイブリッド駆動装置Hに適用することを念頭において、入力軸I、第一モータ・ジェネレータMG1、第二モータ・ジェネレータMG2、出力部材としての出力ギヤO、第一遊星歯車装置P1、及び第二遊星歯車装置P2が配置される第一軸、カウンタ減速機構CRが配置される第二軸、並びにディファレンシャル装置DEが配置される第三軸を備えた3軸構成のハイブリッド駆動装置Hを例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。したがって、例えば、FR(Front Engine Rear Drive)車両に搭載されるハイブリッド駆動装置Hに好適に適用可能な、入力軸I、第一モータ・ジェネレータMG1、第二モータ・ジェネレータMG2、第一遊星歯車装置P1、出力部材、及びディファレンシャル装置DEの全てが同軸上に配置された1軸構成のハイブリッド駆動装置Hとすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合のハイブリッド駆動装置Hの一例を図7に示す。この例にあっては、入力軸I、第一モータ・ジェネレータMG1、及び第一遊星歯車装置P1の配置・連結関係や、第一モータ・ジェネレータMG1の第一ロータRo1の支持構造は、基本的には上記の第一の実施形態と同様であるが、第一遊星歯車装置P1のリングギヤr1が連結される部材が相違している。すなわち、第一遊星歯車装置P1の出力回転要素としてのリングギヤr1は、入力軸Iと同軸上に配置された出力部材としての出力軸Oaに連結されており、貫通軸としての入力軸Iは、第二入力軸受14、出力軸Oa及び出力軸受11を介してケースDCに回転可能に支持されている。出力軸Oaには第二モータ・ジェネレータMG2が連結され、第一遊星歯車装置P1を介して出力された入力軸I及び第一モータ・ジェネレータMG1の回転駆動力を第二モータ・ジェネレータMG2が補助可能な構成となっている。出力軸Oaにはさらにディファレンシャル装置DEが連結され、ディファレンシャル装置DEは出力軸Oaの回転駆動力を左右の車輪に分配する。なお、図7においては、本発明の要部のみを詳細に示し、動力伝達経路上で出力軸Oaよりも車輪側については省略して図示している。
【0118】
(17)上記の各実施形態では、本発明を、駆動力源としてエンジンと回転電機とを備える、ハイブリッド車両用のハイブリッド駆動装置Hに適用する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。したがって、例えば電動車両等のように、駆動力源として回転電機のみを備える電動車両用の駆動装置に適用することも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、例えば電動車両やハイブリッド車両等のように、回転電機を駆動力源として備える車両に用いる駆動装置に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るハイブリッド駆動装置の要部断面図
【図2】本発明の第一の実施形態に係るハイブリッド駆動装置の全体断面図
【図3】本発明の第一の実施形態に係るハイブリッド駆動装置における第一遊星歯車装置及び第二遊星歯車装置の動作状態を表す速度線図
【図4】本発明の第二の実施形態に係るハイブリッド駆動装置の要部断面図
【図5】本発明の第二の実施形態に係るハイブリッド駆動装置の全体断面図
【図6】本発明の第二の実施形態に係るハイブリッド駆動装置における第一遊星歯車装置及び第二遊星歯車装置の動作状態を表す速度線図
【図7】その他の実施形態に係るハイブリッド駆動装置の要部断面図
【符号の説明】
【0121】
H:ハイブリッド駆動装置
I:入力軸(貫通軸)
MG1:第一モータ・ジェネレータ(回転電機)
St1:第一ステータ
Ro1:第一ロータ
MG2:第二モータ・ジェネレータ(回転電機)
St2:第二ステータ
Ro2:第二ロータ
O:出力ギヤ(出力部材)
o3:軸挿通孔
P1:第一遊星歯車装置
s1:サンギヤ
ca1:キャリア
r1:リングギヤ
P2:第二遊星歯車装置
s2:サンギヤ
ca2:キャリア
r3:リングギヤ
DC:ケース
d4:第一端部支持壁
d4a:軸方向突出部
d5:第二端部支持壁
d5a:軸方向突出部
F:固定軸(貫通軸)
Oa:出力軸(出力部材)
11:第一出力軸受
12:第二出力軸受
13:第一入力軸受(貫通軸受)
14:第二入力軸受(貫通軸受)
15:固定軸受(貫通軸受)
16:第一ロータ軸受
17:第二ロータ軸受
18:第三ロータ軸受
19:第四ロータ軸受
41:第一サンギヤ貫通孔
42:第二サンギヤ貫通孔
51:第一ロータ連結部材
51b:軸方向突出部
52:第二ロータ連結部材
52b:軸方向突出部
53:第一回転センサ
54:第二回転センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機と、前記回転電機の径方向内側に当該回転電機と軸方向に重複して配置される遊星歯車装置と、前記遊星歯車装置のサンギヤの径方向内側を貫通する貫通軸と、前記回転電機及び前記遊星歯車装置を収容するケースと、を備え、
前記貫通軸は、前記遊星歯車装置に対して軸方向両側において前記ケースに支持され、
前記回転電機のロータは、前記サンギヤと一体的に連結されるとともに、軸方向の二箇所で回転可能に支持され、当該二箇所の内の一方では前記ロータは前記ケースに支持され、他方では前記ロータは前記サンギヤの径方向内側で前記貫通軸に支持されている駆動装置。
【請求項2】
前記貫通軸は、前記サンギヤの軸心部に設けられたサンギヤ貫通孔を貫通し、
前記ロータは、前記サンギヤ貫通孔の内周面と前記貫通軸の外周面との間に設けられたロータ軸受を介して前記貫通軸に支持されている請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記回転電機のロータは、前記遊星歯車装置に対して軸方向一方側に配置され、当該ロータから径方向内側に延出されるロータ連結部材を介して前記サンギヤに連結され、
前記ロータ連結部材は、軸方向で前記遊星歯車装置とは反対側に突出する軸方向突出部を有し、
前記ロータは、前記軸方向突出部の内周面を支持するように設けられたロータ軸受を介して前記ケースに支持されている請求項1又は2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記貫通軸は、前記遊星歯車装置に対して少なくとも軸方向一方側において、前記ケースに直接的に支持されている請求項1から3のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記ケースは、前記回転電機に対して軸方向一方側に配置された支持壁を備え、
前記支持壁は、軸方向で前記回転電機側に突出する軸方向突出部を有し、
前記貫通軸は、前記支持壁の軸方向突出部の径方向内側に設けられた貫通軸受を介して前記支持壁に支持され、
前記ロータは、前記支持壁の軸方向突出部の径方向外側に設けられたロータ軸受を介して前記支持壁に支持されている請求項1から4のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記支持壁の軸方向突出部の径方向内側に設けられた前記貫通軸受と径方向外側に設けられた前記ロータ軸受とが、軸方向に重複して配置された請求項5に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記ロータ連結部材の軸方向突出部の径方向外側に、前記ロータの回転位置を検出する回転センサが配置された請求項3に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記回転センサと前記回転電機のステータとが、軸方向に重複して配置された請求項7に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記遊星歯車装置の出力回転要素に連結されるとともに軸心部に軸挿通孔が設けられた出力部材を備え、
前記出力部材は、前記軸挿通孔に対して径方向外側において前記ケースに支持された出力軸受を介して前記ケースに回転可能に支持され、
前記貫通軸の一端部が、前記軸挿通孔に挿通され、前記軸挿通孔の内周面と前記貫通軸の外周面との間に配置された貫通軸受を介して前記軸挿通孔の内周面に回転可能に支持されている請求項1から8のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記遊星歯車装置の出力回転要素に連結されるとともに軸心部に軸挿通孔が設けられた出力部材を備え、
前記貫通軸の一端部が、前記軸挿通孔を貫通し、軸方向で前記出力部材に対して前記遊星歯車装置側とは反対側において前記ケースに支持された貫通軸受を介して前記ケースに回転可能に支持されている請求項1から8のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記貫通軸はエンジンに連結される入力軸であり、
動力伝達経路上で前記入力軸及び前記回転電機に対して車輪側に配置された出力部材を備え、
前記遊星歯車装置は、前記サンギヤに前記回転電機が連結され、キャリアに前記入力軸が連結され、リングギヤに前記出力部材が連結されている請求項1から10のいずれか一項に記載の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−291053(P2009−291053A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143846(P2008−143846)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】