説明

高さ検出装置

【目的】対象物のパターンに依存することなくビームスプリッタの反射率を安定させることが可能な高さ検出装置を提供することを目的とする。
【構成】本発明の一態様の高さ検出装置100は、対象物101面に照明光を照明する照明光学系200と、対象物101面から反射された反射光を入射するλ/4板270と、λ/4板270を通過した反射光を分岐するビームスプリッタ222と、ビームスプリッタ222によって分岐された反射光の一方を前記反射光の結像点の前側で受光して、光量を検出する光量センサ252と、結像点の後側で受光して、光量を検出する光量センサ254と、光量センサ252,254の出力に基づいて対象物101面の高さを演算する演算回路260と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高さ検出装置に係り、例えば、半導体製造に用いる試料となる物体のパターン欠陥を検査するパターン検査装置のオートフォーカス技術に関し、半導体素子や液晶ディスプレイ(LCD)を製作する際に使用するリソグラフィ用マスクの欠陥を検査するためのパターン検査装置のオートフォーカス技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物の表面に光を照射して、その反射光から対象物面の高さを測定するには、以下のような手法が用いられていた。光源からの光を集光して対象物にビームスポットを形成する。そして、この反射光を結像し、結像点の手前で光束を分離して一方は結像点の手前に光束を制限するための円形ピンホールを設置し、他方は結像点の後に光束を制限するための円形ピンホールを設置する。そして、それぞれの円形ピンホールを透過した光量を別個のセンサで検出し、この光量から対象物の高さを検出するといった手法である(例えば、特許文献1参照)。また、ピンホールの代わりにスリットを用いて、それぞれのスリットを透過した光量を別個のセンサで検出し、この光量から対象物の高さを検出するといった手法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
これらの技術では、結像点の前側に置かれたピンホール(或いはスリット)を通過した光の強度と後側に置かれたピンホール(或いはスリット)を通過した光の強度からマスクの高さを算出するため、それらのピンホールの手前に光線を分岐するための分岐用ビームスプリッタを必要とする。ここで、ビームスプリッタの反射率は入射する光線の偏光方向に依存する。ほとんどの材料は、S偏光入射の反射率が高く、P偏光入射の反射率が低いため、入射する光のS偏光成分とP偏光成分の比率が変化すると反射率が変化する結果になる。そのため、高さ検出手法において、高さ検出を高精度で行なうためには、分岐用ビームスプリッタに入射する光線の偏光がどのようなパターンが形成された対象物の場合でも一定であることが必要となる。
【0004】
一方、近年のLSI等の半導体装置の高集積化に伴い、露光装置や検査装置で対象となるマスクやシリコンウェハ上に形成されるパターンの微細化が進んできている。このような微細パターンに対して光を入射すると、パターンよる回折や複屈折の影響により偏光が大きく崩れることが知られている。
【0005】
そのため、ビームスプリッタに入射する光線の偏光がパターンによって一定とならず、従来の高さ検出手法においては、分岐用ビームスプリッタでの分岐比が測定する対象物によって、変化してしまう。その結果、異なる対象物が仮に同じ高さ位置に配置されていた場合であっても、それぞれを測定する際の各センサで得られる光量が同じようには検出できず、高さ位置が異なる結果となってしまう。これでは、高さ検知を高精度で行なうことが困難となってしまう。かかる問題を解消すべく、例えば、分岐用ビームスプリッタの手前に単に偏光子ないしは偏光ビームスプリッタ(PBS)を設置することにより分岐用ビームスプリッタに入射する光の偏光方向を一方向にそろえる方法も考えられるが、かかる構成では次の問題が発生する。具体的には、対象物のパターンが極端に微細になると対象物の反射光の偏光方向がほとんど一方向にそろい、その方向がパターン方向に依存する。そのため、対象物の反射光がそのまま偏光子ないしはPBSを通過してしまうと、通過する光量がパターン方向によって著しく変動してしまう。場合によっては光量が実質的に0となってしまう場合もあり得る。これでは、良好なS/Nを得ることができず、高さ検出が困難になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】公開平5−297262号公報
【特許文献2】公開2008−233342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題点を克服し、対象物のパターンに依存することなくビームスプリッタの反射率を安定させることが可能な高さ検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の高さ検出装置は、
対象物面に照明光を照明する照明光学系と、
前記対象物面から反射された反射光を入射する1/4波長板と、
前記1/4波長板を通過した前記反射光を分岐するビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタによって分岐された反射光の一方を前記反射光の結像点の前側で受光して、光量を検出する第1の光量センサと、
前記ビームスプリッタによって分岐された反射光の他方を前記反射光の結像点の後側で受光して、光量を検出する第2の光量センサと、
前記第1と第2の光量センサの出力に基づいて前記対象物面の高さを演算する演算部と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の他の態様の高さ検出装置は、
光源と、
系内に配置される対象物と共役な位置に配置された、スリット状或いはピンホール状に開口された照明側開口部と、前記照明側開口部を通過した前記光源から発した照明光を光路内に導入する照明光導入用ビームスプリッタと、前記照明光導入用ビームスプリッタによって導入された前記照明光を前記対象物面に照明する対物レンズとを有する照明光学系と、
前記対象物面から反射され、前記対物レンズと前記照明光導入用ビームスプリッタとを通過した反射光を結像する結像光学系と、
前記照明光導入用ビームスプリッタを通過した反射光を入射する1/4波長板と、
前記1/4波長板を通過した反射光を分岐する分岐用ビームスプリッタと、
前記分岐用ビームスプリッタによって分岐された前記反射光の一方が前記結像光学系によって結像される結像点の前側に配置された、スリット状或いはピンホール状に開口された検出前側開口部と、
前記分岐用ビームスプリッタによって分岐された前記反射光の他方が前記結像光学系によって結像される結像点の後側に配置された、スリット状或いはピンホール状に開口された検出後側開口部と、
前記検出前側開口部を通過した前記反射光の一方の光量を検出する第1の光量センサと、
前記検出後側開口部を通過した前記反射光の他方の光量を検出する第2の光量センサと、
前記第1と第2の光量センサの出力の差と和とに基づいて前記対象物面の高さを演算する演算部と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、対象物のパターンに依存することなくビームスプリッタの反射率を安定させることができる。その結果、高精度な高さ検出を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態1における高さ検出装置の構成を示す概念図である。
【図2】実施の形態1におけるλ/4板の前後における光の偏光方向を説明するための概念図である。
【図3】実施の形態1におけるλ/4板とビームスプリッタの設置条件を説明するための概念図である。
【図4】実施の形態1における高さ信号と光量センサの出力との関係の一例を示す図である。
【図5】実施の形態2における高さ検出装置の構成を示す概念図である。
【図6】実施の形態2における高さ検出装置の他の構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における高さ検出装置の構成を示す概念図である。図1において、高さ検出装置100は、照明光学系200、結像レンズ220、1/4波長板(λ/4板)270、ビームスプリッタ222(分岐用ビームスプリッタ)、照明スリット210、前側検出スリット230、後側検出スリット240、前側光量センサ252、後側光量センサ254、及び演算回路260を備えている。照明光学系200は、光源201、ビームエキスパンダ202、分割レンズ204、回転位相板206、コリメータレンズ208、照明レンズ212、偏光ビームスプリッタ214(照明光導入用ビームスプリッタ)、及び対物レンズ218を有している。高さ検出装置100では、照明光学系200、結像レンズ220、λ/4板270、及びビームスプリッタ222を用いて光学系を構成する。この光学系は、照明スリット210を通過した照明光となる光104を対象物101面に照明し、対象物101面からの反射光を結像する。以下、詳細について説明する。照明スリット210はスリット状に開口された照明側開口部の一例である。照明側開口部は、照明スリット210の代わりに、ピンホール状に開口された照明ピンホールであっても構わない。前側検出スリット230は、スリット状に開口された前側検出開口部の一例である。前側検出開口部は、前側検出スリット230の代わりに、ピンホール状に開口された前側検出ピンホールであっても構わない。同様に、後側検出スリット240は、スリット状に開口された後側検出開口部の一例である。後側検出開口部は、後側検出スリット240の代わりに、ピンホール状に開口された後側検出ピンホールであっても構わない。但し、照明側開口部と前側検出開口部と後側検出開口部は、スリット或いはピンホールに統一されることが望ましい。
【0013】
光源201から発せられた光102をビームエキスパンダ202で拡大し、分割レンズ204で面光源を生成する。その後、回転位相板206を通すことによって空間コヒーレンシーが低減される。その後、コリメータレンズ208によって面光源のフーリエ面を生成し、このフーリエ面の位置に照明スリット210を設置する。照明スリット210を通過した光104は、照明レンズ212及び対物レンズ218によって対象物101面上に結像される。照明光学系200は、光源201から発した光102を対象物101面に均一に照明する。照明スリット210と対象物101面とが共役関係になるようにレンズ系を配置する。照明スリット210を通過した光104(照明光)は、偏光ビームスプリッタ214によって対象物101面側に導かれる。すなわち、偏光ビームスプリッタ214は、光104を光路内に導入する。偏光ビームスプリッタ214の配置位置はここに限らず、照明スリット210以降で配置できるところがあれば、どこであっても構わない。そして、偏光ビームスプリッタ214によって導入された照明光となる光104は対物レンズ218によって対象物101面に照明される。
【0014】
対象物101に照明光となる光104を照明した対物レンズ218は、対象物101からの反射光を集光する。そして、対象物101面で反射された反射光となる光107は対物レンズ218、及び偏光ビームスプリッタ214を経た後、結像レンズ220(結像光学系)によって結像される。このようにして、結像レンズ220は、対物レンズ218と組み合わせて対象物101の像を形成する。結像レンズ220後には、λ/4板270及びビームスプリッタ222が配置され、ビームスプリッタ222によって光107を2つに分岐する。図1では、結像レンズ220によって結像光学系が構成される。但し、結像光学系は、これに限るものではなく、その他のレンズやミラー等を用いて構成しても構わない。
【0015】
ここで、対象物101に形成されるパターンによって偏光方向が変化している、偏光ビームスプリッタ214を経た後の反射光となる光107をそのままビームスプリッタ222に、或いは結像レンズ220を介しただけで入射させてしまうと、ビームスプリッタ222の分割比が変化してしまう。そこで、実施の形態1では、ビームスプリッタ222の手前にλ/4板270を設置することにより、ビームスプリッタ222の手前における光107の偏光方向が変化したとしても、ビームスプリッタ222の分割比(分岐比)が変わらないようにする。言い換えれば、ビームスプリッタ222の反射率が変わらないようにする。
【0016】
図2は、実施の形態1におけるλ/4板の前後における光の偏光方向を説明するための概念図である。例えば、直線偏光がλ/4板270に入射する場合、その方向によって、出射光の偏光は直線、円、楕円のいずれかに変化する。入射光の偏光方向20とλ/4板270の進相軸10のなす角度が0度である場合はλ/4板270を通過した出射光は進相軸10と同方向に延びる直線偏光となる。また、入射光の偏光方向20とλ/4板270の進相軸10のなす角度が45度である場合はλ/4板270を通過した出射光は円偏光となる。そして、入射光の偏光方向20とλ/4板270の進相軸10のなす角度がこれらの角度の間の角度である場合はλ/4板270を通過した出射光は進相軸10と同方向へと長軸が延びる楕円偏光となる。
【0017】
例えば、x軸、y軸は共に光線方向(z軸)と直行し、かつx軸とy軸は互いに直行するものとすると、x,y面において、λ/4板270の進相軸10とx軸とy軸の一方との角度が45°になる場合、直線偏光、円偏光、及び楕円偏光のいずれの場合でも、出射光の電場のx振動成分とy振動成分の比率が1:1になる。かかる特性により、実施の形態1では、λ/4板270への入射偏光方向がいかなる方向であっても、出射光の電場のx振動成分とy振動成分の比率を1:1に保つことができる。
【0018】
図3は、実施の形態1におけるλ/4板とビームスプリッタの設置条件を説明するための概念図である。実施の形態1では、ビームスプリッタ222の反射面とビームスプリッタ222に入射する反射光となる光107とがなす角度が45度になるようにビームスプリッタ222を設置する。そして、さらに、ビームスプリッタ222に入射する光107とビームスプリッタ222で反射された反射光の光106で形成される入射面の法線方向とλ/4板270の進相軸方向とがなす図3におけるx,y面上の角度が45±5度になるようにλ/4板270を設置する。実施の形態1ではかかる2つの設置条件を示しているが、少なくともビームスプリッタ222に入射する光107とビームスプリッタ222で反射された反射光の光106で形成される入射面の法線方向とλ/4板270の進相軸方向とがなす図3におけるx,y面上の角度が45±5度になる設置条件が満たされることにより、λ/4板270への入射偏光方向がいかなる方向であっても、ビームスプリッタ222へ入射する光のP偏光成分とS偏光成分の割合が1:1に保たれるため、ビームスプリッタ222の分割比が変わらないようにできる。
【0019】
そして、ビームスプリッタ222に入射する光107とビームスプリッタ222で反射された反射光の光106とで形成される入射面の法線方向とλ/4板270の進相軸方向とがなす角度が45±1度になるようにλ/4板270を設置するとさらに好適である。さらに、より好ましくは、ビームスプリッタ222の反射面とビームスプリッタ222に入射する反射光となる光107とがなす角度が45度になるようにビームスプリッタ222を設置すると良い。
【0020】
かかる条件では、ビームスプリッタ222の入射面内にx軸とy軸の一方(図3の例ではx軸)が含まれるような位置関係でλ/4板270が設置され、x軸とy軸の他方(図3の例ではy軸)がλ/4板270の進相軸に対して理想的には45度の角度をなすことになる。言い換えれば、反射光となる光107とビームスプリッタ222の反射面とで形成される入射面の法線方向をy軸とすれば、y軸がλ/4板270の進相軸に対して理想的には45度の角度をなすことになる。かかる設置条件により、λ/4板270への入射偏光方向がいかなる方向であっても、出射光の電場のx振動成分とy振動成分の比率が1:1になる。よって、ビームスプリッタ222に入射する光のS成分とP成分を1:1にすることができる。また、この関係はλ/4板270に入射する偏光の方向によらず一定に保たれるため、この関係を高さ検知方式に適用した場合、対象物101のパターン方向によらず、分岐用のビームスプリッタ222の分割比を一定に保つことができる。
【0021】
以下、λ/4板270の特徴を解析的に証明する。電磁波の電場Pは一般的に次の式(1)のように表される。
(1) P=E・cosθ・sin(ωt)・i+E・sinθ・sin(ωt)・j
【0022】
ここで、Eは電場の振幅、θはx軸を0度としたときの回転角度であり、i、jはそれぞれx軸、y軸方向の単位ベクトルである。λ/4板270を通過すると電場の進相軸成分の位相が90度進むため、これを表現するために、式(1)の座標系を回転し、進相軸方向をx’軸、それと直行する方向をy’軸とすると、λ/4板270に入射する電場Pは式(2)のように定義できる。
(2) P=E・(cosθ・sin(ωt)・cos45°−sinθ・sin(ωt)・sin45°)・i’+E・(cosθ・sin(ωt)・sin45°+sinθ・sin(ωt)・cos45°)・j’
=1/√2・E・(cosθ−sinθ)・sin(ωt)・i’+1/√2・E・(sinθ+cosθ)・sin(ωt)・j’
【0023】
ここで、i’、j’はそれぞれx’軸、y’軸方向の単位ベクトルである。λ/4板270の効果によりx’軸成分が90度進むため、λ/4板270の出射光の電場P’は以下の式(3)で定義できる。
(3) P’=1/√2・E・(cosθ−sinθ)cos(ωt)・i’+1/√2・E・(sinθ+cosθ)・sin(ωt)・j’
【0024】
式(3)をxy座標系に戻すと、次の式(4)になる。
(4) P’=(1/√2)・E・{(cosθ−sinθ)cos(ωt)・cos45°+(sinθ+cosθ)・sin(ωt)・sin45°}・i
−(1/√2)・E・{(cosθ−sinθ)cos(ωt)・sin45°−(sinθ+cosθ)・sin(ωt)・cos45°}・j
=(1/2)・E・√{(cosθ−sinθ)+(sinθ+cosθ)}・sin(ωt+α)・i
−(1/2)・E・√{(cosθ−sinθ)+(sinθ+cosθ)}・sin(ωt+β))・j
=(1/√2)・E・sin(ωt+α)・i−(1/√2)・E・sin(ωt+β))・j
【0025】
ここで、α、βはθによって定まる定数である。式(4)に示すように、λ/4板270を出射する光の電場P’のx成分とy成分の振幅がθによらず等しくなることが明らかとなった。
【0026】
このようなλ/4板270の特徴により、分岐用のビームスプリッタ222に入射するP成分とS成分の比率を1:1に保つことができる。
【0027】
以上のように、ビームスプリッタ222に入射するP成分とS成分の比率を1:1に保つことでビームスプリッタ222の分割比を対象物101に形成されるパターンによらず一定にすることができる。ここで、λ/4板270は、ビームスプリッタ222に入射する反射光となる光107の偏向方向を制御する目的から、偏光ビームスプリッタ214と分岐用のビームスプリッタ222との間に配置されることが好適である。
【0028】
そして、ビームスプリッタ222によって分岐された一方の光106の結像点より手前には、前側の検出スリット230が配置される。そして、検出スリット230の後側に検出用の前側光量センサ252が配置される。そして、光量センサ252が検出スリット230を通過した反射光となる光106の光量を検出する。また、分岐された他方の光108の結像点より後側には、後側の検出スリット240が配置される。そして、検出スリット240の後側に検出用の後側光量センサ254が配置される。そして、光量センサ254が検出スリット240を通過した反射光となる光108の光量を検出する。
【0029】
図4は、実施の形態1における高さ信号と光量センサの出力との関係の一例を示す図である。横軸は対象物101面の実際の高さz、縦軸は対象物101面の高さ信号zを示す。演算回路260は、光量センサ252,254の出力に基づいて対象物101面の高さを演算する。具体的には、対象物101面の高さ信号zは、前側の検出用光量センサ252の出力A、後側の検出用光量センサ254の出力B、及び比例定数kを用いて、次の式(5)で演算することができる。
(5) z=k・(A−B)/(A+B)
【0030】
図4に示すように、対象物101面の実際の高さzと対象物101面の高さ信号zは、0近傍で直線性が確保できる。よって、直線領域で位置検出を行なうことで1次比例の関係で高さ信号zから実際の高さzを求めることができる。すなわち、比例定数kを用いて、z=k・zで実際の高さzを求めることができる。その結果、高精度な高さ検出を行なうことができる。
【0031】
式(5)に示すように、光量センサ252,254の出力の差を和で除する演算を行なうことで対象物101の高さを算出することができる。そして、検出された結果は、図示しない外部或いはモニタ等に出力される。
【0032】
以上のように、実施の形態1によれば、対象物のパターンに依存することなくビームスプリッタの反射率を安定させることができる。その結果、高精度な高さ検出を行なうことができる。
【0033】
実施の形態2.
実施の形態1で説明した式(4)から導きだせるλ/4板270の特徴は、λ/4板270が常光と異常光の間に理想的には90度の位相差を与えることができる場合には成り立つが、実際には誤差を持ち得る。そのため、実施の形態2では、さらに精度を上げることが可能な構成について説明する。
【0034】
図5は、実施の形態2における高さ検出装置の構成を示す概念図である。図5における高さ検出装置100は、λ/4板270とビームスプリッタ222との間に、偏光ビームスプリッタ272を配置した点以外は、図1と同様である。λ/4板270とビームスプリッタ222との間に、偏光ビームスプリッタ272を配置することで、偏光方向を揃えることができる。これにより誤差を排除できる。かかる構成では、λ/4板270の効果でビームスプリッタ222による反射光となる光107の分割比を1:1に近い状態で作ることができているため、偏光ビームスプリッタ272で一方向に偏光方向を揃えたとしても、ビームスプリッタ222の分割比が、対象物101のパターンによらず一定となる。常にビームスプリッタ222の分割比が一定であれば、高精度に高さ検出を行なうことができる。
【0035】
図6は、実施の形態2における高さ検出装置の他の構成を示す概念図である。図6では、高さ検出装置100の構成を一部省略しているが、偏光ビームスプリッタ272の代わりに偏光子274を配置した点以外は、図5と同様である。偏光ビームスプリッタ272の代わりに偏光子274を配置した場合でも偏光方向を揃えることができる。これにより誤差を排除できる。
【0036】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0037】
また、各実施の形態で説明した高さ検出装置は、反射光を用いているが、透過光を用いる構成にしてもよい。また、高さ検出装置は、半導体素子や液晶ディスプレイ(LCD)を製作する際に使用するリソグラフィ用マスクの欠陥を検査するためのパターン検査装置に用いることができる。その際のパターン検査装置は、検査基準パタンデータとなる参照画像を設計データから生成するdie to database検査装置でも、フォトダイオードアレイ等のセンサにより撮像した同一パターンのデータを用いるdie to die検査装置でも構わない。また、パターン検査装置は、透過光を用いて検査する装置しても、反射光あるいは、透過光と反射光を同時に用いて検査する装置でもよい。
【0038】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
【0039】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての高さ検出装置及びパターン検査装置は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0040】
10 進相軸
20 偏光方向
100 高さ検出装置
101 対象物
102,104,106,107,108 光
200 照明光学系
201 光源
202 ビームエキスパンダ
204 分割レンズ
206 回転位相板
208 コリメータレンズ
210 照明スリット
212 照明レンズ
214,272 偏光ビームスプリッタ
218 対物レンズ
220 結像レンズ
222 ビームスプリッタ
230,240 検出スリット
252,254 光量センサ
260 演算回路
270 λ/4板
274 偏光子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物面に照明光を照明する照明光学系と、
前記対象物面から反射された反射光を入射する1/4波長板と、
前記1/4波長板を通過した前記反射光を分岐するビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタによって分岐された反射光の一方を前記反射光の結像点の前側で受光して、光量を検出する第1の光量センサと、
前記ビームスプリッタによって分岐された反射光の他方を前記反射光の結像点の後側で受光して、光量を検出する第2の光量センサと、
前記第1と第2の光量センサの出力に基づいて前記対象物面の高さを演算する演算部と、
を備えたことを特徴とする高さ検出装置。
【請求項2】
前記1/4波長板と前記ビームスプリッタとの間に配置された、偏光子ないしは偏光ビームスプリッタをさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の高さ検出装置。
【請求項3】
光源と、
系内に配置される対象物と共役な位置に配置された、スリット状或いはピンホール状に開口された照明側開口部と、前記照明側開口部を通過した前記光源から発した照明光を光路内に導入する照明光導入用ビームスプリッタと、前記照明光導入用ビームスプリッタによって導入された前記照明光を前記対象物面に照明する対物レンズとを有する照明光学系と、
前記対象物面から反射され、前記対物レンズと前記照明光導入用ビームスプリッタとを通過した反射光を結像する結像光学系と、
前記照明光導入用ビームスプリッタを通過した反射光を入射する1/4波長板と、
前記1/4波長板を通過した反射光を分岐する分岐用ビームスプリッタと、
前記分岐用ビームスプリッタによって分岐された前記反射光の一方が前記結像光学系によって結像される結像点の前側に配置された、スリット状或いはピンホール状に開口された検出前側開口部と、
前記分岐用ビームスプリッタによって分岐された前記反射光の他方が前記結像光学系によって結像される結像点の後側に配置された、スリット状或いはピンホール状に開口された検出後側開口部と、
前記検出前側開口部を通過した前記反射光の一方の光量を検出する第1の光量センサと、
前記検出後側開口部を通過した前記反射光の他方の光量を検出する第2の光量センサと、
前記第1と第2の光量センサの出力の差と和とに基づいて前記対象物面の高さを演算する演算部と、
を備えたことを特徴とする高さ検出装置。
【請求項4】
前記分岐用ビームスプリッタに入射する光線と前記分岐用ビームスプリッタの反射光で形成される入射面の法線方向と前記1/4波長板の進相軸方向とがなす角度が45±5度であることを特徴とする請求項3記載の高さ検出装置。
【請求項5】
前記1/4波長板と前記ビームスプリッタとの間に配置された、偏光子ないしは偏光ビームスプリッタをさらに備えたことを特徴とする請求項3又は4記載の高さ検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−53120(P2011−53120A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203195(P2009−203195)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】