説明

高周波表面音波装置

【課題】入力変換ユニットおよび出力変換ユニットの線幅を変更することなしに中心周波数を調整することができる高周波表面音波装置の提供。
【解決手段】高周波表面音波装置が開示されている。開示の高周波表面音波装置は、そのナノ結晶ダイヤモンド層の厚さを変更することによってその中心周波数を容易に調整することができる。開示の高周波表面音波装置は、シリコン基板、シリコン基板の上に位置するナノ結晶ダイヤモンド層、ナノ結晶ダイヤモンド層の表面に形成した圧電層、入力変換ユニット、および出力変換ユニットを備え、そこでは入力変換ユニットおよび出力変換ユニットは圧電層の表面上か、または下に対で形成される。また、ナノ結晶ダイヤモンド層の厚さは0.5μm〜20μmであることができる。圧電層はZnO、AlN、またはLiNbO3から作られることができる。圧電層の厚さは0.5μm〜5μmであることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面音波装置、より詳細には高周波表面音波装置に関するものであり、この装置はそのナノ結晶ダイヤモンド層の厚さを変更することによってその中心周波数を調整することができる。
【背景技術】
【0002】
現在、材料技術の発展によって、高周波表面音波装置はフィルターとして使用され得る。高周波表面音波装置は移動通信技術で広く使用されている。その上、高周波表面音波装置は多くの利点、例えば低損失、高減衰、ならびに限られたサイズおよび重量などを有するので、高周波表面音波装置の応用は広い。しかしながら、最もよく知られている基板、すなわちLiNbO3基板の場合は、LiNbO3基板を備える高周波表面音波装置の中心周波数が1800MHzを達成する必要があるなら、高周波表面音波装置の入力変換ユニットおよび出力変換ユニットの線幅は0.5μm程度の狭さである必要があり、これは従来の接触式アライナによって製造することは困難である。
【0003】
その一方で、高周波表面音波装置の応用分野を広げるために、業界は高周波表面音波装置の中心周波数を調整するためにいくつかの解決法を既に提案している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1Aおよび図1Bを参照すると、従来の高周波表面音波装置は、圧電基板11、入力変換ユニット12、および出力変換ユニット13を備え、そこでは入力変換ユニット12および出力変換ユニット13は圧電基板11の表面に対で形成されている。圧電基板11は石英、LiNbO3またはLiTaO3から作られる。しかながら、いったん入力変換ユニット12および出力変換ユニット13の線幅が確定されると、従来の高周波表面音波装置の中心周波数は調整するのが非常に困難である。換言すれば、従来の高周波表面音波装置の中心周波数を調整する唯一の方法は、入力変換ユニット12および出力変換ユニット13の線幅を変更することである。さらに、入力変換ユニット12および出力変換ユニット13の線幅を変更するつもりである場合は、新しい線幅による新しいパターンを有する新しいフォトマスクを製造する必要がある。結果として、新しいフォトマスクに係わる余分なコストおよび時間が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、そのナノ結晶ダイヤモンド層の厚さを変更することによってその中心周波数を調整することができる高周波表面音波装置が必要である。その一方で、圧電基板から作られた層構造を有する高周波表面音波装置の中心周波数の調整が圧電層の厚さを変更することによって達成され得るけれども、その中心周波数の非常に大きい上昇は、圧電層の厚さを変更し、かつ高周波表面音波装置において高音速を有する材料、例えばナノ結晶ダイヤモンド層を用いることによってだけ達成され得る。
【0006】
本発明の第1目的は、そのナノ結晶ダイヤモンド層の厚さを変更することによってその中心周波数を調整することができる高周波表面音波装置を提供することである。
【0007】
本発明の第2目的は、その中心周波数を調整する方法を簡単にし、その応用の柔軟性を拡大することができる高周波表面音波装置を提供することである。
【0008】
目的を達成するために、本発明の高周波表面音波装置は、シリコン基板、シリコン基板の上に位置するナノ結晶ダイヤモンド層、ナノ結晶ダイヤモンド層の表面に形成した圧電層、入力変換ユニット、および出力変換ユニットを備え、そこでは入力変換ユニットおよび出力変換ユニットは圧電層の表面に対で形成される。
【0009】
その一方で、本発明の高周波表面音波装置はまた、シリコン基板、シリコン基板の上に位置するナノ結晶ダイヤモンド層、ナノ結晶ダイヤモンド層の表面に形成した圧電層、入力変換ユニット、および出力変換ユニットを備えることが可能であり、そこでは入力変換ユニットおよび出力変換ユニットはナノ結晶ダイヤモンド層の表面に対で形成され、圧電層は入力変換ユニットと出力変換ユニットとの間に位置するナノ結晶ダイヤモンド層の表面の一部分を覆う。
【0010】
従って、本発明の高周波表面音波装置は、その入力変換ユニットおよび出力変換ユニットの線幅を変更する必要なく、そのナノ結晶ダイヤモンド層の厚さを変更することによってその中心周波数を調整することができる。結果として、本発明の高周波表面音波装置の中心周波数を調整する方法は簡単になって、単にそのナノ結晶ダイヤモンド層の堆積時間を制御するだけである。従って、本発明の高周波表面音波装置の応用の柔軟性は従来の高周波表面音波装置のそれよりも大きい。
【0011】
本発明の高周波表面音波装置の基板はどんな種類の材料からも作られ得るが、その基板はシリコン(100)ダイであることが好ましい。本発明の高周波表面音波装置のナノ結晶ダイヤモンド層は任意の厚さを有することができるが、そのナノ結晶ダイヤモンド層の厚さは0.5μm〜20μmの範囲であることが好ましい。本発明の高周波表面音波装置の圧電層はどんな種類の材料からも作られ得るが、その圧電層はZnO、AlN、またはLiNbO3から作られることが好ましい。本発明の高周波表面音波装置の圧電層はどんな種類の製造プロセスによってもナノ結晶ダイヤモンド層の表面に形成され得るが、その圧電層は、RF(Radio Frequency)マグネトロン・スパッタリング・プロセス、電子ビーム蒸着プロセス、化学気相堆積プロセス、エキシマレーザー堆積プロセス、ゾル・ゲルプロセス、または物理気相堆積プロセスによってナノ結晶ダイヤモンド層の表面に形成されることが好ましい。本発明の高周波表面音波装置の入力変換ユニットおよび出力変換ユニットはどんな種類の線幅も有することができるが、その線幅は0.5μm〜5μmの範囲であることが好ましい。本発明の高周波表面音波装置の入力変換ユニットおよび出力変換ユニットはどんな種類の材料からも作られ得るが、それはアルミニウムから作られることが好ましい。本発明の高周波表面音波装置の入力変換ユニットおよび出力変換ユニットの厚さは50nm〜200nmの範囲であることが好ましい。
【0012】
本発明の他の目的、利点、および新規な特徴について、添付図面を用いた次の詳細な説明によってより明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施形態1
図2Aおよび図2Bを参照すると、図2Aは本発明の第1実施形態による高周波表面音波装置の斜視図であり、図2Bは図2Aの面BB’に沿って切った断面図である。
【0014】
本発明の第1実施形態による高周波表面音波装置は、シリコン基板21、ナノ結晶ダイヤモンド層22、圧電層23、入力変換ユニット24、および出力変換ユニット25を備え、そこでは入力変換ユニット24および出力変換ユニット25は圧電層23の表面に対で形成される。第1実施形態では、ZnOから作られた圧電層23はRFマグネトロン・スパッタリング・プロセスによってナノ結晶ダイヤモンド層22の表面に形成される。RFマグネトロン・スパッタリング・プロセスの堆積パラメーターを下の表1に示す。
【0015】
【表1】

【0016】
次に、フォトレジスト層が圧電層23の表面に施される。フォトリソグラフィープロセスを実行して、インターデジタル電極のパターンが形成される。後で、約100nmの厚さのアルミニウム層が蒸着プロセスによってパターン上に形成される。アルミニウム層およびフォトレジスト層の不要な部分がリフトオフプロセスによって除去される。入力変換ユニット24および出力変換ユニット25は圧電層23の表面に形成される。上のプロセス完了後に、ナノ結晶ダイヤモンド層22の厚さは約5μmである。ZnOから作られる圧電層23の厚さは約1.2μmである。入力変換ユニット24および出力変換ユニット25はアルミニウムから作られ、その線幅は約5μmである。
【0017】
本発明の第1実施形態による高周波表面音波装置の周波数応答を図2Cに示す。図に示すように、高周波表面音波装置の中心周波数は約255.84MHzである。
【0018】
その一方で、2つの高周波表面音波装置もまた上述の同じ製造プロセスによって形成される。これらの2つの高周波表面音波装置において、ナノ結晶ダイヤモンド層の厚さは互いに異なり、それらはそれぞれ2.1μmおよび4.3μmである。その上、これらの2つの高周波表面音波装置の他の要素(例えば、シリコン基板、圧電層、入力変換ユニット、および出力変換ユニットなど)のサイズおよび材料は、本発明の第1実施形態による高周波表面音波装置の相当する要素と同じである。
【0019】
これらの2つの高周波表面音波装置の表面音波の位相速度、および本発明の第1実施形態による高周波表面音波装置の表面音波のそれが測定され、測定結果を図2Dに示す。図に示すように、本発明の第1実施形態による高周波表面音波装置の他の要素(例えば、シリコン基板、圧電層、入力変換ユニット、および出力変換ユニットなど)のサイズおよび材料が同じままであっても、その表面音波の位相速度はそのナノ結晶ダイヤモンド層の厚さを変更することによって調整され得る。
【0020】
実施形態2
図3Aおよび図3Bを参照すると、図3Aは本発明の第2実施形態による高周波表面音波装置の斜視図であり、図3Bは図3Aの面CC’に沿って切った断面図である。
【0021】
本発明の第2実施形態による高周波表面音波装置は、シリコン基板31、ナノ結晶ダイヤモンド層32、圧電層33、入力変換ユニット34、および出力変換ユニット35を備え、そこでは入力変換ユニット34および出力変換ユニット35はナノ結晶ダイヤモンド層32の表面に対で形成され、圧電層33は入力変換ユニット34と出力変換ユニット35との間に位置するナノ結晶ダイヤモンド層32の表面の一部分を覆う。
【0022】
本実施形態では、フォトレジスト層がナノ結晶ダイヤモンド層32の表面に施される。フォトリソグラフィープロセスを実行して、インターデジタル電極のパターンが形成される。後で、約100nmの厚さのアルミニウム層が蒸着プロセスによってパターン上に形成される。アルミニウム層およびフォトレジスト層の不要な部分がリフトオフプロセスによって除去される。入力変換ユニット34および出力変換ユニット35はナノ結晶ダイヤモンド層32の表面に形成される。次に、ZnOから作られる圧電層33はRFマグネトロン・スパッタリング・プロセスによってナノ結晶ダイヤモンド層32の表面に形成され、そこでは圧電層33は入力変換ユニット34と出力変換ユニット35との間に位置するナノ結晶ダイヤモンド層32の表面の一部分を覆う。RFマグネトロン・スパッタリング・プロセスの堆積パラメーターを上の表1に示す。
【0023】
上のプロセス完了後に、ナノ結晶ダイヤモンド層32の厚さは約3.6μmである。ZnOから作られる圧電層33の厚さは約1.2μmである。入力変換ユニット34および出力変換ユニット35はアルミニウムから作られ、その線幅は約5μmである。
【0024】
本発明の第2実施形態による高周波表面音波装置の周波数応答を図3Cに示す。図に示すように、高周波表面音波装置の中心周波数は約425.225MHzである。
【0025】
その一方で、2つの高周波表面音波装置もまた上述の同じ製造プロセスによって形成される。これらの2つの高周波表面音波装置において、ナノ結晶ダイヤモンド層の厚さは互いに異なり、それらはそれぞれ4.3μmおよび5.0μmである。その上、これらの2つの高周波表面音波装置の他の要素(例えば、シリコン基板、圧電層、入力変換ユニット、および出力変換ユニットなど)のサイズおよび材料は、本発明の第2実施形態による高周波表面音波装置の相当する要素と同じである。
【0026】
これらの2つの高周波表面音波装置の表面音波の位相速度、および本発明の第2実施形態による高周波表面音波装置の表面音波のそれが測定され、測定結果を図3Dに示す。図に示すように、本発明の第2実施形態による高周波表面音波装置の表面音波の位相速度はナノ結晶ダイヤモンド層の厚さを変更することによって調整され得る。その上に、それの他の要素(例えば、シリコン基板、圧電層、入力変換ユニット、および出力変換ユニットなど)のサイズおよび材料は同じままである。
【0027】
上述のように、本発明の高周波表面音波装置は、その入力変換ユニットおよび出力変換ユニットの線幅を変更する必要なく、そのナノ結晶ダイヤモンド層の厚さを変更することによってその中心周波数を調整することができる。結果として、本発明の高周波表面音波装置の中心周波数を調整する方法は簡単になって、単にそのナノ結晶ダイヤモンド層の堆積時間を制御するだけである。従って、本発明の高周波表面音波装置の応用の柔軟性は従来の高周波表面音波装置のそれよりも大きい。
【0028】
本発明をその好ましい実施形態に関して説明したが、多くの他の可能な変更および改変が本発明の精神および範囲を逸脱せずに行われ得ることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1A】従来の高周波表面音波装置の斜視図である。
【図1B】図1Aの面AA’に沿って切った断面図である。
【図2A】本発明の第1実施形態による高周波表面音波装置の斜視図である。
【図2B】図2Aの面BB’に沿って切った断面図である。
【図2C】本発明の第1実施形態による高周波表面音波装置の周波数応答を示す。
【図2D】本発明の第1実施形態による高周波表面音波装置における表面音波の位相速度とナノ結晶ダイヤモンド層の厚さとの関係を示す。
【図3A】本発明の第2実施形態による高周波表面音波装置の斜視図である。
【図3B】図3Aの面CC’に沿って切った断面図である。
【図3C】本発明の第2実施形態による高周波表面音波装置の周波数応答を示す。
【図3D】本発明の第2実施形態による高周波表面音波装置における表面音波の位相速度とナノ結晶ダイヤモンド層の厚さとの関係を示す。
【符号の説明】
【0030】
11 圧電基板
12 入力変換ユニット
13 出力変換ユニット
21 シリコン基板
22 ナノ結晶ダイヤモンド層
23 圧電層
24 入力変換ユニット
25 出力変換ユニット
31 シリコン基板
32 ナノ結晶ダイヤモンド層
33 圧電層
34 入力変換ユニット
35 出力変換ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板と、
前記シリコン基板の上に位置するナノ結晶ダイヤモンド層と、
前記ナノ結晶ダイヤモンド層の表面に形成した圧電層と、
入力変換ユニットと、
出力変換ユニットと、
を備え、前記入力変換ユニットおよび前記出力変換ユニットは前記圧電層の表面に対で形成される高周波表面音波装置。
【請求項2】
前記シリコン基板がシリコン(100)ダイである請求項1に記載の高周波表面音波装置。
【請求項3】
前記ナノ結晶ダイヤモンド層の厚さが0.5μm〜20μmの範囲である請求項1に記載の高周波表面音波装置。
【請求項4】
前記圧電層がRFマグネトロン・スパッタリング・プロセスによって前記ナノ結晶ダイヤモンド層の表面に形成される請求項1に記載の高周波表面音波装置。
【請求項5】
前記圧電層がZnO、AlN、またはLiNbO3から作られる請求項1に記載の高周波表面音波装置。
【請求項6】
前記入力変換ユニットおよび前記出力変換ユニットの線幅が0.5μm〜5μmの範囲である請求項1に記載の高周波表面音波装置。
【請求項7】
前記入力変換ユニットおよび前記出力変換ユニットがそれぞれインターデジタル電極である請求項1に記載の高周波表面音波装置。
【請求項8】
前記入力変換ユニットおよび前記出力変換ユニットがアルミニウムから作られる請求項1に記載の高周波表面音波装置。
【請求項9】
シリコン基板と、
前記シリコン基板の上に位置するナノ結晶ダイヤモンド層と、
前記ナノ結晶ダイヤモンド層の表面に形成した圧電層と、
入力変換ユニットと、
出力変換ユニットと、
を備え、前記入力変換ユニットおよび前記出力変換ユニットは前記ナノ結晶ダイヤモンド層の表面に対で形成され、前記圧電層は前記入力変換ユニットと前記出力変換ユニットとの間に位置する前記ナノ結晶ダイヤモンド層の表面の一部分を覆う高周波表面音波装置。
【請求項10】
前記シリコン基板がシリコン(100)ダイである請求項9に記載の高周波表面音波装置。
【請求項11】
前記ナノ結晶ダイヤモンド層の厚さが0.5μm〜20μmの範囲である請求項9に記載の高周波表面音波装置。
【請求項12】
前記圧電層がRFマグネトロン・スパッタリング・プロセスによって前記ナノ結晶ダイヤモンド層の表面に形成される請求項9に記載の高周波表面音波装置。
【請求項13】
前記圧電層がZnO、AlN、またはLiNbO3から作られる請求項9に記載の高周波表面音波装置。
【請求項14】
前記入力変換ユニットおよび前記出力変換ユニットの線幅が0.5μm〜5μmの範囲である請求項9に記載の高周波表面音波装置。
【請求項15】
前記入力変換ユニットおよび前記出力変換ユニットがそれぞれインターデジタル電極である請求項9に記載の高周波表面音波装置。
【請求項16】
前記入力変換ユニットおよび前記出力変換ユニットがアルミニウムから作られる請求項9に記載の高周波表面音波装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【公開番号】特開2010−57155(P2010−57155A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309616(P2008−309616)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(508213562)タトゥン カンパニー (9)
【出願人】(508207815)タトゥン ユニヴァーシティー (8)
【Fターム(参考)】