説明

ICカード用外部接続端子基板、デュアルインターフェイス型ICカード及びその製造方法

【課題】ICチップと良好に接続することができるICカード用外部接続端子基板を提供する。
【解決手段】本発明のICカード用外部接続端子基板3は、貫通孔12Aを有する絶縁性の基板12と、導体を含み、基板12の一方の面に設けられた外部接続端子13と、貫通孔12A内において外部接続端子13と電気的に接続され、基板12の他方の面において貫通孔12Aから突出して形成された半田バンプ14とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカード用外部接続端子基板、接触式及び非接触式の2種類の通信インターフェイスを有するデュアルインターフェイス型ICカード及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家電製品、コンピュータ・モバイル製品の分野等においては、軽薄短小の流れの中で各種装置の更なる高機能、高密度化が進められており、カード製造業界においても同様の要請が高まっている。特に近年は、ICカードによるクレジット、電子マネー等の多機能決済等の高機能、多機能化が注目されている。
【0003】
ICカードの高機能化、多機能化の流れの一つとして、インターフェイスの複数化が挙げられる。ICカードの通信方式には、大別して接触式と非接触式との2種類があるが、この両方の方式の通信が可能なハイブリッドカードやデュアルインターフェイスカード(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)が知られている。
【0004】
このうち、デュアルインターフェイスカードは、コンビネーションカードとも称され、1個のICチップで接触式及び非接触式の両方の通信機能を満足するカードであり、接触式通信及び非接触式通信にそれぞれ専用のICチップを搭載したハイブリッドカードに比べてコスト面で有利である。また、接触用途、非接触用途でポイントサービス等の共通のサービス等を提供できるのはデュアルインターフェイスカードのみであり、この点においてもメリットを有する。
【0005】
特許文献1に記載のデュアルインターフェイス型ICカード(以下、「デュアルIFカード」と称する。)においては、ICチップが搭載された外部接続端子基板が、カード製造工程の終盤においてカード本体に接続される。
一般的に、ICカードにおける非接触通信特性の調整は、ICチップが接続されるアンテナシートに設けられた共振周波数調整用のコンデンサを形成するパターンの一部を切断し(トリミング加工)、アンテナシートの持つキャパシタ値を最適な値に調整することによって行われる。
しかしながら、最適値とするための調整は、ICチップがアンテナシートに実装されたインレットの状態、すなわち両者のリアクタンス値及びキャパシタ値が合成された状態で行う必要があるため、特許文献1に記載のデュアルIFカードでは、カード本体ごとアンテナシートに貫通孔を開けなければトリミング加工が行えない。したがって、非接触通信特性の個体差が極小になるように厳密に制御してカードを製造することは実際には困難である。
【0006】
これに対して、特許文献2に記載のデュアルIFカードでは、図15に示すように、アンテナシート100にICチップ101が実装されたインレット102がカード本体103に挟み込まれて埋設される。
したがって、インレット102をカード本体に埋設する前にトリミング加工を行うことができるので、例えば、非接触高速通信が実現できる代わりに非接触通信特性の許容範囲が厳しく規定される、いわゆるタイプC(Type C)規格であっても、当該規格に準拠したデュアルIFカードを製造することができる。
【特許文献1】特開2000−227954号公報
【特許文献2】特開2004−13855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載のデュアルIFカードでは、接触式通信を行うための外部接続端子基板として、両面に導体を配し、表裏面の導体間をビアホールやスルーホールで接続し、さらに裏面導体に金属製バンプを設けた特殊な両面基板を用いることから、高コストとなるという問題がある。
【0008】
また、図15に示すように、外部接続端子基板104は、接着剤105等によってカード本体103に接合されている。外部接続端子基板104の金属製バンプ106は、アンテナシート100上のアンテナパターン107と接触することによって電気的に接続されているので、接続の信頼性が充分とはいえない。
ここで、接続の信頼性を確保するために導電性ペーストや半田等をアンテナパターン107に塗布して加工しようとすると、接続部位が小さいために、その充填量の制御が難しい。当該充填量は多すぎても少なすぎても電気的接続に悪影響を及ぼすため、要求される通信特性を有するカードを安定して生産することが難しいという問題がある。
【0009】
特にクリーム半田を使用する場合は、上述の他にも問題が発生する。半田を溶融させるには加熱処理が必要となるが、これによって、カード本体の変形、反り、印刷の歪み等が生じ、カードの外観品質を低下させてしまうという問題がある。また、クリーム半田溶融時には、外部接続端子基板が上部を覆っているため、蒸散したフラックスとともに溶融した半田が意図せぬ飛散をする場合があり、飛散した半田が固化して半田ボールとなったり、意図せぬ箇所に付着して電気回路の短絡を引き起こしたりする。これらは、デュアルIFカードの安定した製造を阻害し、問題となる。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ICチップと良好に接続することができるICカード用外部接続端子基板を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、外部接続端子基板とICチップとが良好に接続され、非接触通信特性のばらつきが少なく、かつ安価で製造できるデュアルインターフェイス型ICカード及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様であるICカード用外部接続端子基板は、貫通孔を有する絶縁性の基板と、導体を含み、前記基板の一方の面に設けられた外部接続端子と、前記貫通孔内において前記外部接続端子と電気的に接続され、前記基板の他方の面において前記貫通孔から突出して形成された半田バンプとを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明のICカード用外部接続端子基板によれば、基板の貫通孔に半田を充填して溶融させることによって、低コストで接続の信頼性が高いICカード用外部接続端子基板とすることができる。
【0013】
本発明の第2の態様であるデュアルインターフェイス型ICカードは、カード本体と、非接触通信を行うためのアンテナパターンと、前記アンテナパターンに電気的に接続されたICチップとを有し、前記ICチップと電気的に接続された接続部の少なくとも一部を露出させて前記カード本体に埋設されたインレットと、前記接続部に電気的に接続された本発明のICカード用外部接続端子基板とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明のデュアルインターフェイス型ICカードによれば、外部接続端子基板とインレットの接続部とが、半田バンプを介して確実に電気的に接続される。
【0015】
本発明の第3の態様であるデュアルインターフェイス型ICカードの製造方法は、貫通孔を有する絶縁性の基板の一方の面に外部接続端子を設け、前記貫通孔に半田を配置して溶融させ、前記基板の他方の面に半田バンプを形成して外部接続端子基板を形成する第1工程と、非接触通信を行うためのアンテナパターンと、前記アンテナパターンに電気的に接続されたICチップと、前記ICチップと前記外部接続端子基板とを電気的に接続するための接続部とを有するインレットを、前記接続部の少なくとも一部を露出させてカード本体に埋設する第2工程と、前記外部接続基板を、接続部材を介して前記インレットの接続部と電気的に接続して前記カード本体に接合する第3工程とを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明のデュアルインターフェイス型ICカードの製造方法によれば、半田バンプを有する外部接続端子基板を容易に形成し、インレットが埋設されたカード本体に一体に接合されるので、低コストで外部接続端子基板とインレットのICチップとが確実に接続されたデュアルインターフェイス型ICカードを製造することができる。
【0017】
前記第3工程においては、前記第1工程で使用される半田よりも融点の低い半田が前記接続部材として用いられてもよい。この場合、外部接続端子基板とインレットの接続部とを接続する際に半田バンプが溶融しないため、半田バンプと外部接続端子との電気的接続を確実に保持することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のICカード用外部接続端子基板によれば、ICチップと良好に接続することができる。
また、本発明のデュアルインターフェイス型ICカードの製造方法によれば、外部接続端子基板とICチップとが良好に接続され、非接触通信特性のばらつきが少ないデュアルインターフェイス型ICカードを安価で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の第1実施形態のデュアルIFカードについて、図1から図12を参照して説明する。
図1は本実施形態のデュアルIFカード1を示す図である。デュアルIFカード1のカード本体2の上面には、外部接続端子基板3が取り付けられており、接触式通信が可能となっている。
【0020】
図2は、デュアルIFカード1を分解して示す図である。図2に示すように、カード本体2は、上側の第1部材2Aと下側の第2部材2Bとからなり、各部材の間に接触式及び非接触式通信を行うためのインレット4が挟み込まれるように埋設されている。カード本体2の材料としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、非結晶性ポリエチレンテレフタレートコポリマー(PET−G)等を好適に採用することができる。
【0021】
図3は、インレット4の平面図である。インレット4は、ICチップ5と、ICチップ5と電気的に接続されたアンテナシート6とを備えている。
アンテナシート6は、絶縁性と可撓性とを有し、かつ強靭な基材シート7と、基材シート7上に銅やアルミ等の導体によって形成された導体パターン8とを有している。
【0022】
基材シート7の厚みは15マイクロメートル(μm)から200μm程度までの範囲で設定可能であり、材料としては、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の各種樹脂を好適に採用することができる。
【0023】
導体パターン8は、エッチング等によって、基材シート7上に20μmから50μm程度の厚さに形成されており、非接触式通信用のコイル状のアンテナパターン9と、ICチップ5と外部接続端子基板3とを接続するための接続部10と、共振周波数調整用のコンデンサパターン11とから構成されている。
【0024】
ICチップ5は、図4に断面で示すように、下面に設けられた図示しないバンプが、異方性導電性フィルム(ACF)等を介してフリップチップ実装によってアンテナパターン9及び接続部10と電気的に接続されている。必要に応じて封止用樹脂や金属板を用いて実装後のICチップ5を保護してもよい。
【0025】
図5は、外部接続端子基板3の断面図である。外部接続端子基板3は、絶縁性の基板12と、基板12の一方の面に設けられた複数の外部接続端子13と、外部接続端子13と電気的に接続された半田バンプ14とを備えて構成されている。
【0026】
基板12は、絶縁性の材料から形成されており、直径0.5ミリメートル(mm)から1.0mm程度の複数の貫通孔12Aが設けられている。基板12の材料としては、後述する半田バンプ14の形成工程において高熱が加えられるため、耐熱性を有するものが好ましく、例えばガラスエポキシ等を好適に採用することができる。
【0027】
外部接続端子13は、銅箔パターン等により形成されている。当該銅箔パターンには、
必要に応じてニッケルメッキ及び接触抵抗低減のための金メッキが施されてもよい。
半田バンプ14は、貫通孔12Aに半田が充填されて形成されており、外部接続端子13と電気的に接続されて外部接続端子12と反対側の面に突出している。
【0028】
半田バンプ14の突出高さや径、及び半田バンプ14の径に影響を及ぼす貫通孔12Aの径等は、カード本体2の厚みや、後述する凹部15及び接続孔16の寸法等を考慮して適宜決定される。なお、半田バンプ14の形成方法を含む外部接続端子基板3の製造方法については後述する。
【0029】
図2に示すように、カード本体2の第1部材2Aには、ザグリ加工(ミーリング加工)等によって、外部接続端子基板3を配置するための凹部15が設けられている。凹部15の底面には、接続部10と半田バンプ14とを電気的に接続するための接続孔16が複数設けられている。各々の接続孔16は、インレット4の各々の接続部10の端部に対応した位置に設けられており、インレット4がカード本体2に埋設されたときに、接続部10の各々の端部がそれぞれの接続孔16に露出されるようになっている。
なお、接続部10の端部を良好に露出させるために、必要に応じて図2に示すように、接続部10の端部を面積の大きいパッド状に形成してもよい。また、外部接続端子基板3の各々の半田バンプ14も、接続孔16に対応した位置に設けられるのは言うまでもない。
【0030】
上記のように構成されたデュアルIFカード1の製造方法について説明する。
図6は、デュアルIFカード1の製造手順を示すフローチャートである。図6に示すように、デュアルIFカード1の製造方法は、外部接続端子基板3を製造する第1工程と、インレット4をカード本体2に埋設する第2工程と、外部接続端子基板3をカード本体2に接合して、インレット4のICチップ5と接続する第3工程とを備えている。
【0031】
ステップS1の第1工程においては、まず図7(a)に示すように、基板12に貫通孔12Aを形成し、一方の面に外部接続端子13を形成する。そして、図7(b)に示すように外部接続端子13と反対側の面から、貫通孔12Aに、貫通孔12Aの容積より若干多い量の半田17を充填塗布する。半田17の塗布は、外部接続端子13と反対側の面を貫通孔12A及びその周辺の一定範囲を除いてマスキングし、クリーム半田をスクリーン印刷すると容易に行える。上記方法以外に、貫通孔12A内にディスペンサを用いてクリーム半田を塗布する、貫通孔12A内にフラックスをディスペンサ塗布したあとに半田ボールをマウントする等の各種の公知の方法が採用されてもよい。
【0032】
次に、半田が塗布された基板12を、リフロー炉に入れ、半田17に応じた温度プロファイルで半田17を溶融、固化させる。半田17は図7(c)に示すように、セルフアライメント効果によって、貫通孔12Aの中心を頂点として略球面状に基板上に突出する。このようにして、外部接続端子13と電気的に接続された半田バンプ14を有する外部接続端子基板3が形成される。
【0033】
なお、本実施形態においては、Sn−3.5Ag(固相温度約220℃)の半田合金を使用して各々の貫通孔12Aに約1.5ミリグラム(mg)のクリーム半田を塗布し、基板12からの突出高さが約150μmの半田バンプ14が形成されている。上記は一例であり、使用する半田の種類や半田バンプ14の寸法等は、適宜決定されてよい。
【0034】
次に、ステップS2の第2工程について説明する。
まず、インレット4を形成する。基材シート7にエッチング等によって導体パターン8を形成し、ICチップ5を実装する。インレット4が完成したあと、共振周波数が一定の値を示すように、コンデンサパターン11をチューニングして通信特性を調節する。
【0035】
チューニングは、アンテナパターン9及びICチップ5のリアクタンス値及びキャパシタ値が合成された状態で共振周波数を測定し、最適な共振周波数を得られるキャパシタ狙い値との誤差分を補正するように、任意の位置でコンデンサパターン11を切断することによって行う。例えば、図8(a)に示すように、位置P1に貫通孔を設けてコンデンサパターン11を切断した場合、図8(b)に示すように位置P2に貫通孔を設けてコンデンサパターンを切断した場合に比べて、ICチップ5と電気的に接続されたコンデンサ構造の個数が少なくなる。このようにしてキャパシタ値の調整を行う。
【0036】
チューニングが終了したインレット4を、図9に示すように、第1部材2Aと第2部材2Bとの間に挟みこみ、熱成形する。これによって、カード本体2内にインレット4が埋設される。
【0037】
次に、カード本体2の第1部材2A側にザグリ加工等を施して、図10に示すように凹部15を形成する。凹部15の形成位置は、ISO7816に従う。そして、凹部15の底面をさらに掘り込み加工し、接続孔16を形成する。接続孔16は、インレット4の各々の接続部10の端部が露出するように形成される。
【0038】
続いて、ステップS3の第3工程に移る。図11に拡大して示すように、接続部10が露出した接続孔16にクリーム半田(接続部材)17Aを塗布する。塗布量は、一般的な表面実装部品(SMD)搭載用の半田メッキと同程度の、一点あたり1〜2mgで充分である。なぜなら、後述する外部接続端子基板3の接合時に、半田バンプ14が接続孔16の大部分を埋めるように挿入されるため、半田バンプ14と接続部10との接続が確保される程度で足りるからである。
【0039】
使用するクリーム半田17Aは、溶融・接合時にカード本体2に影響を与えない程度の温度プロファイルを有するものであれば特に制限はない。ただし、Sn−57Bi−1Ag(固相温度140℃)、Sn−8Zn―3Bi(固相温度190℃)のような低融点の半田合金を含むクリーム半田を用いて、半田バンプ14を形成する半田17よりもクリーム半田17Aの融点を低くすると、後述する外部接続端子基板3の接合時に半田バンプ14が溶融して、接続部10側に流れ落ちる可能性がなくなる。したがって、半田バンプ14と外部接続端子13との電気的接続を確実に保持することができ、好ましい。
【0040】
次に、外部接続端子基板3を凹部15に装着する。このとき、半田バンプ14の先端が略球面状に突出しており、接続孔16に誘い込まれて挿入されるので、外部接続端子基板3とカード本体2との位置あわせが良好に行われる。
装着後、図12に示すように、外部接続端子基板3とカード本体2とを一体に接合する。接合は、外部接続端子基板3とカード本体2との間に、ポリエステル系やニトリルゴム系等のホットメルトシート18等を介装し、熱圧着することによって行う。
【0041】
上述の熱圧着の際に、同時にクリーム半田17Aを溶融させ、接続孔16に挿入された半田バンプ14とインレットの接続部10とを電気的に接合する。このとき、導体パターン8を銅で形成していると、クリーム半田17Aの半田合金と接続部10とが合金化するため、両者の接続を良好に行うことができる。
なお、本実施形態における熱圧着の条件は、プレス温度180℃〜240℃、プレス時間1.5〜4秒であるが、これは、使用する半田に応じて適宜変更されてよい。
【0042】
熱圧着が終了すると、外部接続端子基板3がインレット4の接続部10と電気的に接続された状態でカード本体2に接合され、デュアルIFカード1が完成する。
【0043】
本実施形態のデュアルIFカード1によれば、カード本体2に設けられた接続孔16の大部分を埋める半田バンプ14によって外部接続端子基板3とインレット4とが電気的に接続されるので、両者の接続の信頼性がより高いデュアルIFカードを構成することができる。
【0044】
また、外部接続端子基板3の半田バンプ14は、基板12の貫通孔に半田を充填することによって容易に形成することができるので、低コストでかつ接続の信頼性が高いデュアルIFカード用の外部接続端子基板を提供することができる。
【0045】
また、半田バンプ14が接続孔16の大部分を埋めるため、接続孔16に塗布するクリーム半田17Aの量を少なくすることができる。したがって、フラックスの量も少量となるので、溶融時のフラックス蒸散による意図せぬ半田の飛散や、それに伴う電気回路の短絡発生等の問題を防止することができる。
【0046】
さらに、クリーム半田17Aが少量であるので、塗布量の制御が容易である。そして、溶融させるための熱量が少なくて済むので、熱圧着時のカード本体2へのダメージが少なくて済み、反りや変形の少ない、外観の良好なデュアルIFカードを構成することができる。
【0047】
本実施形態においては、クリーム半田17Aを用いて外部接続端子基板3とインレット4とを接続する例を説明したが、これに代えて、例えば銀ペースト材のような、半田以外の導電性ペースト材料を用いて両者の接続を行ってもよい。この場合、合金化のプロセスがないため、導体パターン8をアルミで形成しても接続の信頼性は大きく低下することはない。したがって、より低コストでデュアルIFカード1を形成することができる。
【0048】
さらにこの場合、半田を溶融させる必要がないため、熱圧着条件はプレス温度180℃〜200℃、プレス時間1〜2秒で充分である。したがって、より低温度、短時間で接合を行えるので、加熱によるカード本体2へのダメージをより少なくすることができ、より外観品質が重視される場合でも対応可能なデュアルIFカードとすることができる。
【0049】
次に、図13及び図14を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態のデュアルIFカード21と第1実施形態のデュアルIFカード1との異なる点は、外部接続端子基板とインレットとの電気的接続の態様である。なお、デュアルIFカード1と共通する構成については、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0050】
図13は、デュアルIFカード21の製造過程を示す図である。第2工程において、インレット4をカード本体2に埋設した後、第1部材2A側に、外部接続端子基板3と略同等の大きさの、底面を有さない孔部22が形成される。このため、図13に示す状態において、すべての接続部10の端部を含むインレット4の一部が孔部22に露出している。
なお、孔部22は、インレット4の埋設前に第1部材2Aに打ち抜き等の加工方法で形成されてもよい。
【0051】
次に、図14に示すように、ACF等の導電性フィルム(接続部材)23を、接続部10を覆うように孔部22に配置し、その上から外部接続端子基板3を孔部22に装着する。導電性フィルム23としては、例えば、ニトリルゴム系のホットメルトシートにニッケルや金を表面材料とする導電粒子を含むもの等を好適に採用することができる。
【0052】
外部接続端子基板3の装着後、プレス温度180℃〜200℃、プレス時間1〜2秒の条件で熱圧着を行い、外部接続端子基板3とカード本体2とを一体に接合するとともに、半田バンプ14を介して外部接続端子13と接続部10とを電気的に接続する。このようにしてデュアルIFカード21が完成する。
【0053】
本実施形態のデュアルIFカード21によれば、第1実施形態において銀ペースト等を用いて外部接続端子基板3とインレット4とを接続する場合と同様に、より低温度、短時間の条件で熱圧着を行うことができる。従って、より高い外観品質が要請される場合でも対応可能なデュアルIFカードを製造することができる。
【0054】
また、第1部材2Aに孔部22を設けるだけでよいので、複雑な加工が必要ない。そして、接続において合金化のプロセスがないため、導体パターン8をアルミで形成しても問題がない。したがって、より低コストで接続の信頼性が高いデュアルIFカードを製造することができる。
【0055】
以上、本発明の一実施形態について説明してきたが、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0056】
例えば、上述の各実施形態においては、外部接続端子基板3を形成する工程を第1工程と称しているが、これは当該工程が最初に行われなければならないことを意味しない。第1工程は、外部接続端子基板3がカード本体2に装着される第3工程の前に行われれば、例えば第2工程の後に行われても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態のデュアルIFカードを示す斜視図である。
【図2】同デュアルIFカードを分解して示す図である。
【図3】同デュアルIFカードのインレットを示す平面図である。
【図4】図3のA−A線における断面図である。
【図5】同デュアルIFカードの外部接続端子基板の断面図である。
【図6】同デュアルIFカードの製造手順を示すフローチャートである。
【図7】(a)から(c)は、いずれも同外部接続端子基板の製造過程を示す図である。
【図8】(a)及び(b)は、いずれもインレットのチューニングの一例を示す図である。
【図9】インレットのカード本体への埋設工程を示す図である。
【図10】カード本体に凹部が設けられた状態を示す図である。
【図11】同外部接続端子基板のカード本体への接合工程を示す図である。
【図12】同外部接続端子基板のカード本体への接合工程を示す図である。
【図13】本発明の第2実施形態のデュアルIFカードの製造過程を示す断面図である。
【図14】同デュアルIFカードの製造過程を示す断面図である。
【図15】従来のデュアルIFカードを示す断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1、21 デュアルインターフェイス型ICカード
2 カード本体
3 外部接続端子基板
3 ICチップ
4 インレット
9 アンテナパターン
10 接続部
12 基板
13 外部接続端子
14 半田バンプ
17 半田
17A クリーム半田(接続部材)
23 導電性フィルム(接続部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する絶縁性の基板と、
導体を含み、前記基板の一方の面に設けられた外部接続端子と、
前記貫通孔内において前記外部接続端子と電気的に接続され、前記基板の他方の面において前記貫通孔から突出して形成された半田バンプと、
を備えることを特徴とするICカード用外部接続端子基板。
【請求項2】
カード本体と、
非接触通信を行うためのアンテナパターンと、前記アンテナパターンに電気的に接続されたICチップとを有し、前記ICチップと電気的に接続された接続部の少なくとも一部を露出させて前記カード本体に埋設されたインレットと、
前記接続部に電気的に接続された請求項1に記載のICカード用外部接続端子基板と、
を備えることを特徴とするデュアルインターフェイス型ICカード。
【請求項3】
貫通孔を有する絶縁性の基板の一方の面に外部接続端子を設け、前記貫通孔に半田を配置して溶融させ、前記基板の他方の面に半田バンプを形成して外部接続端子基板を形成する第1工程と、
非接触通信を行うためのアンテナパターンと、前記アンテナパターンに電気的に接続されたICチップと、前記ICチップと前記外部接続端子基板とを電気的に接続するための接続部とを有するインレットを、前記接続部の少なくとも一部を露出させてカード本体に埋設する第2工程と、
前記外部接続基板を、接続部材を介して前記インレットの接続部と電気的に接続して前記カード本体に接合する第3工程と、
を備えることを特徴とするデュアルインターフェイス型ICカードの製造方法。
【請求項4】
前記第3工程において、前記第1工程で使用される半田よりも融点の低い半田を前記接続部材として用いることを特徴とする請求項3に記載のデュアルインターフェイス型ICカードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−182212(P2009−182212A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−20979(P2008−20979)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】