説明

InP基板上のII−VI/III−V層状構造体

InP基板並びにII−VI及びIII−V材料の交番層を含む層状構造体が提供される。II−VI及びIII−V材料の交番層は、典型的にはInP基板に格子整合しているか又はシュードモルフィックである。典型的には、II−VI材料は、CdZnSe、CdMgZnSe、BeZnTe、又はBeMgZnTe合金から選択され、及び最も典型的にはCdZn1−xSeであり、ここでxは0.55〜0.57である。典型的には、III−V材料は、InAlAs又はAlInGaAs合金から選択され、及び最も典型的には、InP又はInAl1−yAsであり、ここでyは0.53〜0.57である。層状構造体は、1以上の分布ブラッグ反射器(DBR)を形成することができる。別の態様では、本発明は、InP基板及びエピタキシャル半導体材料の15層対以下を含む95%以上の反射率を有する分布ブラッグ反射器(DBR)を含む層状構造体を提供する。別の態様では、本発明は、層状構造体を含むレーザー又は光検知器を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2004年6月18日に出願し、現在係属中の米国特許出願10/871,424の一部継続出願である。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、InP基板並びに分布ブラッグ反射器(DBR)を典型的には形成するII−VI及びIII−V材料の交番層を含む、垂直キャビティ面発光レーザ(VCSEL)を包含する、レーザー又は光検出器のようなデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
特開2003−124508号公報は、AlGaInP型発光層を有する発光ダイオードの権利を主張する(請求項1〜8)。参考文献は、段落2、15、及び21並びに請求項1において、層とGaAs基板との「格子整合」を強調している。参考文献は、II−VI族材料層及びAlGaAs型又はAlGaInP型材料層の積層化対を含む構造体を有するDBR層を含有する、AlGaInP型発光層を有する発光ダイオードの権利を主張する(請求項2〜4)。参考文献は、GaAs基板上のGaAlAs/ZnSeのDBR層(図1〜3、参照番号2、及び付随説明)及び任意にGaAlAs/AlAsのDBR層である第2DBR層(図3、参照番号10、及び付随説明)を含有するAlGaInP型発光層を有する発光ダイオードを開示すると称する。
【0004】
米国特許第5,206,871号は、GaP又はZnSの交番層、及びボロシリケートガラス、CaF2、MgF2、又はNaFの層を含むミラーを含むVCSELを開示すると称する。
【0005】
米国特許第5,732,103号は、InP基板、及びII−VI材料、特にZnCdSe/MgZnCdSeの交番層を含む格子整合ミラースタックを含むVCSELを開示すると称する。
【0006】
米国特許第5,956,362号は、VCSELを開示すると称する。
【0007】
PCT国際公開特許WO02/089268A2は、酸化物材料を含むVCSELに使用するためのハイコントラスト反射ミラーを開示すると称する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
簡潔に言うと、本発明は、InP基板並びにII−VI及びIII−V材料の交番層を含む層状構造体を提供する。II−VI及びIII−V材料の交番層は、典型的にはInP基板に格子整合しているか又はシュードモルフィックである。典型的には、II−VI材料は、ZnSe、CdSe、BeSe、MgSe、ZnTe、CdTe、BeTe、MgTe、ZnS、CdS、BeS、MgS、及びそれらの合金から成る群から選択され、より典型的には、CdZnSe、CdMgZnSe、BeZnTe、及びBeMgZnTe合金から成る群から選択され、及び最も典型的には、CdZn1−xSeであり、ここでxは0.47〜0.57である。典型的には、III−V材料は、InAs、AlAs、GaAs、InP、AlP、GaP、InSb、AlSb、GaSb、及びそれらの合金から成る群から選択され、より典型的には、InP、InAlAs、GaInAs、AlInGaAs、及びGaInAsP合金から成る群から選択され、最も典型的にはInP又はInAl1−yAsであり、ここでyは0.47〜0.57である。II−VI及びIII−V材料の交番層の1つは、InP基板と直接接触してもよいし、又は追加層がII−VI及びIII−V材料の交番層と、InP基板との間に介在してもよい。1つの実施形態では、層状構造体は、1以上の分布ブラッグ反射器(DBR)を形成する。典型的には、こうしたDBRは、II−VI及びIII−V材料の交番層の20対以下、及びより典型的には15対以下によって作製されることができる。典型的には、II−VI及びIII−V材料の層は、約100nm〜約200nmの平均厚さを有する。
【0009】
別の態様では、本発明は、InP基板及びエピタキシャル半導体材料の15層対以下を含む95%以上の反射率を有する分布ブラッグ反射器(DBR)を含む層状構造体を提供する。
【0010】
別の態様では、本発明は、本発明に従う層状構造体を含むレーザーを提供する。
【0011】
別の態様では、本発明は、本発明に従う層状構造体を含む光検知器を提供する。
【0012】
本出願では:
「格子整合」は、基板上のエピタキシャル膜のような2つの結晶性材料に関して、単離採取された各材料が格子定数を有し、これらの格子定数が実質的に等しく、典型的には互いに0.2%以下の違いであり、より典型的には互いに0.1%以下の違いであり、及び最も典型的には互いに0.01%以下の違いであることを意味し;並びに
「シュードモルフィック(pseudomorphic)」は、エピタキシャル膜及び基板のような、所与の厚さの第1結晶性層及び第2結晶性層に関して、単離採取された各層が格子定数を有し、及びこれらの格子定数が実質的に類似しており、その結果第1層が、所与の厚さにおいて、不適合による欠陥が実質的に存在せずに、層の平面で第2層の格子間隔を取れることを意味する。
【0013】
VCSELを包含するレーザー又は光検知器のような長波長InPデバイス中に使用するための高反射率DBRとしての役割を果すことができる層状構造体、特に、相対的に少ない層によって好適に高い反射率を実現できるものを提供することは、本発明の利点である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
簡潔に言うと、本発明は、InP基板並びにII−VI及びIII−V材料の交番層を含む層状構造体を提供する。II−VI及びIII−V材料の交番層は、典型的にはInP基板に格子整合しているか又はシュードモルフィックである。
【0015】
いずれかの好適なII−VI材料が、本発明の実施に使用されてもよい。典型的には、II−VI材料は、ZnSe、CdSe、BeSe、MgSe、ZnTe、CdTe、BeTe、MgTe、ZnS、CdS、BeS、MgS、及びそれらの合金から成る群から選択される。好適な合金は、典型的には1〜4の異なるII族材料及び1〜3の異なるVI族材料、より典型的には1〜3の異なるII族材料及び1〜2の異なるVI族材料を包含する。好適な合金は、式、M(1−n)(1−p)に従うものを包含してもよく、ここでM及びMは独立してZn、Cd、Be、及びMgから選択され;M及びMは独立してSe、Te、及びSから選択され;ここでnは0〜1のいずれかの数であり;ここでpは0〜1のいずれかの数である。好適な合金は、式、M(1−q)に従うものを包含してもよく、ここでM及びMは独立してZn、Cd、Be、及びMgから選択され;MはSe、Te、及びSから選択され;並びにここでqは0〜1のいずれかの数である。前の式において、n、p、及びqは典型的には、InPに格子整合しているか、又はシュードモルフィックである合金を提供するように選択される。1つの実施形態では、InPに格子整合しているか又はシュードモルフィックである合金組成を見出すために、合金の格子定数は、合金の二元構成要素の格子定数からの線形補間により見積もられる。より典型的には、II−VI材料は、CdZnSe、CdMgZnSe、BeZnTe、BeMgZnTeから成る群から選択され、及び最も典型的にはCdZn1−xSeであり、ここでxは0.47〜0.57である。II−VI材料は、塩素又は窒素ドーピングを包含するいずれかの好適な方法により又はいずれかの好適なドーパントの包含により、nドープ、pドープされてもよいし、又は非ドープであってもよい。
【0016】
いずれかの好適なIII−V材料が、本発明の実施に使用されてもよい。典型的には、III−V材料は、InAs、AlAs、GaAs、InP、AlP、GaP、InSb、AlSb、GaSb、及びそれらの合金から成る群から選択される。好適な合金は、典型的には、1〜3の異なるIII族材料、及び1〜3の異なるV族材料、より典型的には1〜2の異なるV族材料を包含する。好適な合金は、式、M(1−r)1011(1−s)に従うものを包含してもよく、ここでM及びMは独立してIn、Al、及びGaから選択され;M10及びM11は独立してAs、P、及びSbから選択され;ここでrは0〜1のいずれかの数であり;ここでsは0〜1のいずれかの数である。好適な合金は、式、M1213(1−t)14に従うものを包含してもよく、ここでM12及びM13は独立してIn、Al、及びGaから選択され;M14はAs、P、及びSbから選択され;並びにここでtは0〜1のいずれかの数である。前の式において、r、s、及びtは典型的には、InPに格子整合しているか、又はシュードモルフィックである合金を提供するように選択される。1つの実施形態では、InPに格子整合しているか又はシュードモルフィックである合金組成を見出すために、合金の格子定数は、合金の二元構成要素の格子定数からの線形補間により見積もられる。より典型的には、III−V材料は、InP、InAlAs、GaInAs、AlInGaAs、GaInAsPから成る群から選択され、及び最も典型的には、InP又はInAl1−yAsであり、ここでyは0.47〜0.57である。III−V材料は、いずれかの好適な方法により又はいずれかの好適なドーパントの包含により、nドープ、pドープされてもよいし、又は非ドープであってもよい。
【0017】
ある実施形態では、層状構造体は、BeZnTe又はBeMgZnTeを包含するII−VI層、及びInAlAs又はAlInGaAsを包含するIII−V層を包含する。例えば、II−VI層はBeZnTeを包含することができ及びIII−V層はInAlAsを包含することができるか;II−VI層はBeZnTeを包含することができ及びIII−V層はAlInGaAsを包含することができるか;II−VI層はBeMgZnTeを包含することができ及びIII−V層はInAlAsを包含することができるか;又はII−VI層はBeMgZnTeを包含することができ及びIII−V層はAlInGaAsを包含することができる。こうした実施形態は、p型伝導性を有する層状構造体を提供するためにドープされることができる。例えば、BeZnTeは、Nによりドープされることができ、及び/又はInAlAsは、Beによりドープされることができる。こうしたドーピングは、例えば半導体レーザー又は光ダイオードに使用するために好適な低い電気抵抗を提供することができる。
【0018】
ある実施形態では、層状構造体は、CdZnSe又はCdMgZnSeを包含するII−VI層及びInAlAs又はAlInGaAs包含するIII−V層を包含する。例えば、II−VI層はCdZnSeを包含することができ及びIII−V層はInAlAsを包含することができるか;II−VI層はCdZnSeを包含することができ及びIII−V層はAlInGaAsを包含することができるか;II−VI層はCdMgZnSeを包含することができ及びIII−V層はInAlAsを包含することができるか;又はII−VI層はCdMgZnSeを包含することができ及びIII−V層はAlInGaAsを包含することができる。こうした実施形態は、n型伝導性を有する層状構造体を提供するためにドープされることができる。例えば、CdZnSeは、Clによりドープされることができ、及び/又はInAlAsは、Siによりドープされることができる。こうしたドーピングは、例えば半導体レーザー又は光ダイオードに使用するために好適な低い電気抵抗を提供することができる。
【0019】
ある実施形態では、層状構造体は、ZnSeTeを包含するII−VI層及びInAlAs又はAlInGaAs包含するIII−V層を包含する。例えば、II−VI層はZnSeTeを包含することができ及びIII−V層はInAlAsを包含することができるか、又はII−VI層はZnSeTeを包含することができ及びIII−V層はAlInGaAsを包含することができる。こうした実施形態は、p型又はn型伝導性を有する層状構造体を提供するためにドープされることができる。例えば、ZnSeTeは、n型伝導性を提供するためにClにより若しくはp型伝導性を提供するためにNによりドープされることができ、及び/又はInAlAsは、n型伝導性を提供するためにSiにより若しくはp型伝導性を提供するためにBeによりドープされることができる。こうしたドーピングは、例えば半導体レーザー又は光ダイオードに使用するために好適な低い電気抵抗を提供することができる。
【0020】
ある実施形態では、II−VI材料はZnSe又はそれらの合金を包含し;及びIII−V材料はInAs、AlAs、GaAs、InP、AlP、GaP、InSb、AlSb、GaSb、又はそれらの合金を包含する。ある実施形態では、II−VI材料はCdSe又はそれらの合金を包含し;及びIII−V材料はInAs、AlAs、GaAs、InP、AlP、GaP、InSb、AlSb、GaSb、又はそれらの合金を包含する。ある実施形態では、II−VI材料はBeSe又はそれらの合金を包含し;及びIII−V材料はInAs、AlAs、GaAs、InP、AlP、GaP、InSb、AlSb、GaSb、又はそれらの合金を包含する。ある実施形態では、II−VI材料はMgSe又はそれらの合金を包含し;及びIII−V材料はInAs、AlAs、GaAs、InP、AlP、GaP、InSb、AlSb、GaSb、又はそれらの合金を包含する。ある実施形態では、II−VI材料はZnTe又はそれらの合金を包含し;及びIII−V材料はInAs、AlAs、GaAs、InP、AlP、GaP、InSb、AlSb、GaSb、又はそれらの合金を包含する。ある実施形態では、II−VI材料はCdTe又はそれらの合金を包含し;及びIII−V材料はInAs、AlAs、GaAs、InP、AlP、GaP、InSb、AlSb、GaSb、又はそれらの合金を包含する。ある実施形態では、II−VI材料はBeTe又はそれらの合金を包含し;及びIII−V材料はInAs、AlAs、GaAs、InP、AlP、GaP、InSb、AlSb、GaSb、又はそれらの合金を包含する。ある実施形態では、II−VI材料はMgTe又はそれらの合金を包含し;及びIII−V材料はInAs、AlAs、GaAs、InP、AlP、GaP、InSb、AlSb、GaSb、又はそれらの合金を包含する。ある実施形態では、II−VI材料はZnS又はそれらの合金を包含し;及びIII−V材料はInAs、AlAs、GaAs、InP、AlP、GaP、InSb、AlSb、GaSb、又はそれらの合金を包含する。ある実施形態では、II−VI材料はCdS又はそれらの合金を包含し;及びIII−V材料はInAs、AlAs、GaAs、InP、AlP、GaP、InSb、AlSb、GaSb、又はそれらの合金を包含する。ある実施形態では、II−VI材料はBeS又はそれらの合金を包含し;及びIII−V材料はInAs、AlAs、GaAs、InP、AlP、GaP、InSb、AlSb、GaSb、又はそれらの合金を包含する。ある実施形態では、II−VI材料はMgS又はそれらの合金を包含し;及びIII−V材料はInAs、AlAs、GaAs、InP、AlP、GaP、InSb、AlSb、GaSb、又はそれらの合金を包含する。
【0021】
ある実施形態では、II−VI材料はCdZnSeを包含し;及びIII−V材料はInAs、AlAs、GaAs、InP、AlP、GaP、InSb、AlSb、GaSb、又はそれらの合金を包含する。ある実施形態では、II−VI材料はCdMgZnSeを包含し;及びIII−V材料はInAs、AlAs、GaAs、InP、AlP、GaP、InSb、AlSb、GaSb、又はそれらの合金を包含する。ある実施形態では、II−VI材料はBeZnTeを包含し;及びIII−V材料はInAs、AlAs、GaAs、InP、AlP、GaP、InSb、AlSb、GaSb、又はそれらの合金を包含する。ある実施形態では、II−VI材料はBeMgZnTeを包含し;及びIII−V材料はInAs、AlAs、GaAs、InP、AlP、GaP、InSb、AlSb、GaSb、又はそれらの合金を包含する。
【0022】
ある実施形態では、II−VI材料はZnSe、CdSe、BeSe、MgSe、ZnTe、CdTe、BeTe、MgTe、ZnS、CdS、BeS、MgS、又はそれらの合金を包含し;及びIII−V材料はInAs又はそれらの合金を包含する。ある実施形態では、II−VI材料はZnSe、CdSe、BeSe、MgSe、ZnTe、CdTe、BeTe、MgTe、ZnS、CdS、BeS、MgS、又はそれらの合金を包含し;及びIII−V材料はAlAs又はそれらの合金を包含する。ある実施形態では、II−VI材料はZnSe、CdSe、BeSe、MgSe、ZnTe、CdTe、BeTe、MgTe、ZnS、CdS、BeS、MgS、又はそれらの合金を包含し;及びIII−V材料はGaAs又はそれらの合金を包含する。ある実施形態では、II−VI材料はZnSe、CdSe、BeSe、MgSe、ZnTe、CdTe、BeTe、MgTe、ZnS、CdS、BeS、MgS、又はそれらの合金を包含し;及びIII−V材料はInP又はそれらの合金を包含する。ある実施形態では、II−VI材料はZnSe、CdSe、BeSe、MgSe、ZnTe、CdTe、BeTe、MgTe、ZnS、CdS、BeS、MgS、又はそれらの合金を包含し;及びIII−V材料はAlP又はそれらの合金を包含する。ある実施形態では、II−VI材料はZnSe、CdSe、BeSe、MgSe、ZnTe、CdTe、BeTe、MgTe、ZnS、CdS、BeS、MgS、又はそれらの合金を包含し;及びIII−V材料はGaP又はそれらの合金を包含する。ある実施形態では、II−VI材料はZnSe、CdSe、BeSe、MgSe、ZnTe、CdTe、BeTe、MgTe、ZnS、CdS、BeS、MgS、又はそれらの合金を包含し;及びIII−V材料はInSb又はそれらの合金を包含する。ある実施形態では、II−VI材料はZnSe、CdSe、BeSe、MgSe、ZnTe、CdTe、BeTe、MgTe、ZnS、CdS、BeS、MgS、又はそれらの合金を包含し;及びIII−V材料はAlSb又はそれらの合金を包含する。ある実施形態では、II−VI材料はZnSe、CdSe、BeSe、MgSe、ZnTe、CdTe、BeTe、MgTe、ZnS、CdS、BeS、MgS、又はそれらの合金を包含し;及びIII−V材料はGaSb又はそれらの合金を包含する。
【0023】
ある実施形態では、II−VI材料はZnSe、CdSe、BeSe、MgSe、ZnTe、CdTe、BeTe、MgTe、ZnS、CdS、BeS、MgS、又はそれらの合金を包含し;及びIII−V材料はInAlAsを包含する。ある実施形態では、II−VI材料はZnSe、CdSe、BeSe、MgSe、ZnTe、CdTe、BeTe、MgTe、ZnS、CdS、BeS、MgS、又はそれらの合金を包含し;及びIII−V材料はGaInAsを包含する。ある実施形態では、II−VI材料はZnSe、CdSe、BeSe、MgSe、ZnTe、CdTe、BeTe、MgTe、ZnS、CdS、BeS、MgS、又はそれらの合金を包含し;及びIII−V材料はAlInGaAsを包含する。ある実施形態では、II−VI材料はZnSe、CdSe、BeSe、MgSe、ZnTe、CdTe、BeTe、MgTe、ZnS、CdS、BeS、MgS、又はそれらの合金を包含し;及びIII−V材料はGaInAsPを包含する。
【0024】
いずれかの好適なInP基板が、本発明の実施に使用されてもよい。InP基板は、nドープ、pドープされてもよいし、又は半絶縁であってもよく、これはいずれかの好適な方法により又はいずれかの好適なドーパントの包含により実現されてもよい。
【0025】
本発明に従う層状構造体の1つの実施形態では、II−VI及びIII−V材料の交番層の少なくとも1つは、InP基板に直接接触している。代替的実施形態では、追加の層が、II−VI及びIII−V材料の交番層と、InP基板との間に介在する。II−VI及びIII−V材料の交番層と、InP基板との間に追加層が介在する場合、それらはいずれかの好適な層を含んでもよい。典型的には、これらの介在する層は、InP基板に格子整合しているか又はシュードモルフィックである。介在する層は、VCSELの要素、例えば電気接点層、緩衝層、光導波層、活性層、量子井戸層、電流拡散層、クラッド層、障壁層などを包含してもよい。介在する層は、光検知器の要素、例えば電気接点層、クラッド層、吸収層、緩衝層などを包含してもよい。
【0026】
II−VI及びIII−V材料の層はいずれかの好適な厚さを有してもよい。II−VI及びIII−V材料の層は、個々に又は平均して0.1nm〜10,000nm、より典型的には10〜1,000nm、より典型的には50nm〜500nm、及びより典型的には100nm〜200nmの厚さを有してもよい。
【0027】
1つの実施形態では、層状構造体は、1以上の分布ブラッグ反射器(DBR)を形成する。DBRを形成する層状構造体は、II−VI及びIII−V材料の対のいずれかの好適な数、2から非常に大きな数までを包含してもよい。1つの実施形態では、層状構造体は、DBRがII−VI及びIII−V材料の層の20対以下、より典型的には15対以下、より典型的には12対以下、より典型的には10対以下によって作製され得るように、十分な反射率を所有している。他の実施形態では、層状構造体は、好適に有効なDBRが、8対以下、及びより典型的には5対以下によって作製され得るのに十分な反射率を所有している。
【0028】
DBRにおいて、層の厚さは、その材料中の光の波長の4分の1であり、次式で表される。
【0029】
【数1】

【0030】
ここで、tは層の厚さ、λは光の波長、nは材料の屈折率である。例として、1.55μmの波長で最高反射率を有するように設計された、Cd0.52Zn0.48Se及びIn0.52Al0.48As層を含む本発明に従うDBRミラーを採用する。1.55μmでのCd0.52Zn0.48Seの屈折率は2.49であり、及びそのためCd0.52Zn0.48Se層の厚さは156nmであるべきである。1.55μmでのIn0.52Al0.48Asの屈折率は3.21であり、及びそのためIn0.52Al0.48As層の厚さは121nmであるべきである。1つの実施形態では、層状構造体は、1〜2ミクロンの範囲の波長で生じる最大反射率を有する1以上の分布ブラッグ反射器(DBR)を形成する。
【0031】
1つの実施形態では、層状構造体は、VCSELのようなレーザーの一部を形成する1以上の分布ブラッグ反射器(DBR)を形成する。VCSELは、いずれかの好適な波長で動作してもよい。1つの実施形態では、VCSELは、光ファイバーによる伝送中に低減した分散及び減衰を提供する範囲である1μm〜2μmの波長で動作する。典型的にはVCSELは、光ファイバーネットワークが動作する、典型的にはおよそ1.3μm又は1.55μmの波長で動作する。
【0032】
1つの実施形態では、層状構造体は、光検知器の一部を形成する1以上の分布ブラッグ反射器(DBR)を形成する。光検知器は電気通信に使用されてもよく、ここではギガヘルツ周波数信号の光から電子への変換が可能な場合がある。典型的な光検知器は、光学エネルギーの吸収及び関連したキャリアの生成、光生成キャリアの吸収領域を横断する輸送、並びに光電流の発生を伴うキャリアの収集によって機能する。
【0033】
図5は、本発明の層状構造体93を利用する光検知器90の基礎的構成要素を示し、その中で示された他の構成要素は:DBR部分91;電気接点96及び97、並びにミラー98である。
【0034】
本発明に従う層状構造体は、いずれかの好適な方法により製造されてもよく、これには分子線エピタキシー、化学気相堆積、液相エピタキシー、及び蒸気相エピタキシーを挙げてもよい。典型的には、本発明に従う層状構造体は、ウエハ融着なしに製造されてもよい。
【0035】
本発明は、光電子通信技術を包含する、光電子技術において有用である。
【0036】
本発明の目的及び利点は、下記の実施例によって更に説明されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に本発明を過度に限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0037】
実施例1
DBR形成
II−VI及びIII−Vエピタキシャル半導体材料の交番層の2対を有する分布ブラッグ反射器(DBR)ミラーが、InP基板上に成長した。結果として生じた構造体は図1に概略的に図解され、並びにInP基板10、InAlAs緩衝層20、第1CdZnSe層30、第1InAlAs層40、第2CdZnSe層50、第2InAlAs層60、及びInGaAsキャップ層70を包含する。CdZnSe層30及び50並びにInAlAs層40及び60は、DBR80を構成する。II−VI材料は、Clによりn型ドープされたCd0.52Zn0.48Seであった。III−V材料は、Siによりn型ドープされたIn0.52Al0.48Asであった。
【0038】
ミラーは、1.55μmで最高反射率を有するように設計された。そのために、InAlAs及びCdZnSe層の厚さの名目値は、それぞれ121nm及び156nmであった。
【0039】
使用された装置は、パーキン・エルマー(Perkin-Elmer)430固体ソース分子線エピタキシー(MBE)システムであった。システムは、超高真空移送管により接続された2つの成長チャンバを包含し、その内の1つはAs系III−V材料用に、及びもう一方はII−VI材料用に使用された。ウエハーは、異なる層の適用のために、超高真空パイプラインを介して2つのチャンバ間を往復移送された。
【0040】
(100)配向n型、SドープInP基板が、565℃、As超過気圧下で、III−Vチャンバ内で脱酸素された。120nm厚さのInAlAs緩衝層が次に540℃で、付着ソースとして:Inエフュージョンセル、Alエフュージョンセル、及びAsバルブ付きクラッカーセルを使用して成長した。緩衝が成長した後、ウエハは、第1CdZnSe層の成長のためにII−VIチャンバに移送された。成長は、185℃での15分間のZnの暴露により開始され、次いで薄いClドープされたCdZnSe層が200℃で拡散促進エピタキシー(MEE)により成長した。基板温度は次に270℃まで上昇され、及びClドープされたCdZnSe層の残りが156nmの厚さまで成長した。CdZnSeの成長後、サンプルはIII−Vチャンバに戻された。高温でのInAlAs成長の間、CdZnSe層のいずれかの構成要素の損失を低減するために、5nm厚さのSiドープされたInAlAsキャッピング層が300℃で成長した。121nm厚さのSiドープされたInAlAs層の残りが次に540℃で成長し、こうして第1CdZnSe/InAlAsミラー対が形成した。第2ミラー対が、第1対と同じ成長条件下で成長した。最後に、Siによりn型ドープされたIn0.53Ga0.47Asから構成された5nm厚さのn−InGaAsキャップ層が、構造体の最上部に成長した。
【0041】
X線回折
X線回折(XRD)が、較正サンプルについて、ベデ・サイエンティフィック(Bede scientific)QC1a二結晶回折計を使用して行われ、InP基板上のInAlAs及びCdZnSe層の組成物は格子整合していることが確認された。2つの別個の較正サンプル:InP基板上のCdZnSe及びInP基板上のInAlAsが成長した。
【0042】
SEM
上記のようにして作製されたDBRミラーが切断され及びヒタチ(Hitachi)S4700走査型電子顕微鏡(SEM)下で検査された。図2は、そのサンプルの走査電子顕微鏡写真である。顕微鏡写真は、InP基板10、InAlAs緩衝層20、第1CdZnSe層30、第1InAlAs層40、第2CdZnSe層50、第2InAlAs層60、及びInGaAsキャップ層70を示す。顕微鏡写真は、意図された値よりやや薄い、それぞれおよそ142nm及び116nmのCdZnSe及びInAlAs層の厚さの値を示す。
【0043】
反射率
上記のようにして作製されたDBRミラーの反射率が、パーキン・エルマー(Perkin-Elmer)ラムダ(Lambda)900UV/VIS/NIRスペクトロメーターを使用して測定された。結果として生じたデータは図3のトレースAに提示される。2対のCdZnSe/InAlAsのDBRミラーについては、最高反射率は、1.45μmで66%であった。ミラー反射率は、SEMからの厚さの値を使用することにより、転送行列計算に基づいてシミュレートされた。(転送行列計算について、より詳しくは、テオドール・タミール(Theodor Tamir)(編)「導波光電子工学(Guided-Wave Optoelectroncs)」、第2版、シュプリンガー出版(Springer-Verlag)を参照されたい)。図3において明らかであるように、シミュレートされた曲線(図3、トレースB)は、実験データとよく適合する。図3はまた、2つの比較III−V/III−VのDBR:2対のInGaAsP/InP(トレースC)及び2対のAlGaAsSb/AlAsSbのDBR(トレースD)についての波長の関数としてのシミュレートされた反射率を示す。反射率は、2対のAlGaAsSb/AlAsSbのDBRミラーについては僅か46%であり、及び2対のInGaAsP/InPミラーについては40%である。本発明に従うDBRは、匹敵する厚さの現在利用可能な長波長DBRと比較して大きく改善された反射率を実証する。このデータからの外挿は、95%の反射率を有するDBRは、15以下の層対により実現できることを示している。
【0044】
実施例2
InP上のAlInAs/BeZnTe/AlInAsの成長
(001)InP基板ウエハが、Asバルブ付きクラッカーセル並びにAl及びInクヌーセン(Knudsen)エフュージョンセル装備、超高真空(UHV)分子線エピタキシー(MBE)チャンバの中に移送された。InP基板は、As超過気圧下で、自然酸化物が脱着されるまで加熱された。光高温計により測定されたとき酸化物脱着温度は、およそ560℃であった。酸化物がないときの反射高速電子回折(RHEED)パターンは、(1×1)から(2×4)まで変化し、V族終端表面を示す。
【0045】
(2×4)へのRHEEDパターンの遷移後、僅かに格子整合したAlInAsの成長のために、基板温度は500℃〜530℃に低下された。AlInAsの成長は、Asが豊富なV−III流出比下で、およそ1μm/hrの速度であった。
【0046】
AlInAs層の成長後、As超過気圧下で、過剰As表面を形成するために、基板温度は300℃未満に低下された。この時点で、基板は第1MBEチャンバから、UHVパイプラインを通って、Be、Zn、及びTeクヌーセン(Knudsen)エフュージョンセル装備第2MBEに移送された。
【0047】
第2MBEの中への移送の際に、基板は過剰のAsが脱着される温度(およそ360℃)に加熱され、(2×4)RHEEDパターンを示すAs終端表面を残す。このチャンバ内では、温度はInP基板を通じた基板加熱器の放射の透過スペクトルを分析することにより間接的に測定された。InPのバンドギャップの温度依存性、したがってスペクトルの吸収限界は既知であった。
【0048】
(2×4)へのAlInASのRHEED遷移後、基板はおよそ300℃に冷却され、このときに僅かに格子整合したBeZnTeの成長が開始された。BeZnTeの成長は、Teが豊富なVI−II流出比下でおよそ0.8μm/hrの速度であり、これは(2×1)RHEEDパターンを示す。
【0049】
BeZnTe層の成長後、基板は第2MBEチャンバから取り出され、及びUHVパイプラインを介して、第1MBEチャンバに戻された。第1MBEチャンバの中への移送の際に、基板はAlInAs成長温度(500℃〜530℃)に加熱された。350℃〜450℃の中間温度で、BeZnTe表面がAsの流れに暴露された。基板温度がAlInAs成長温度に達したとき、第1AlInAs層と同じ速度及びソースの流れにおいてAlInAsの第2層が成長した。
【0050】
本発明の様々な修正及び変更が、本発明の範囲及び原理から逸脱することなく当業者には明白であり、また本発明は、上記で説明した例示的な実施形態に過度に限定されないことは、理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】DBRである本発明に従う層状構造体の概略図である。
【図2】本発明に従う層状構造体の断面の走査電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例に記載された本発明に従う2対のCdZnSe/InAlAsのDBRについて測定したときの反射率対波長のグラフ(トレースA)、本発明に従う2対のCdZnSe/InAlAsのDBRについてのシミュレートされた反射率データを提示したグラフ(トレースB)、2つの比較III−V/III−VのDBR:2対のInGaAsP/InPのDBR(トレースC)、そして2対のAlGaAsSb/AlAsSbのDBR(トレースD)についてのシミュレートされた反射率データを提示したグラフである。
【図4】II−VI及びIII−V材料の交番層の15対を有する本発明の層状構造体の概略図である。
【図5】本発明の光検知器の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
InP基板;並びに
II−VI及びIII−V材料の交番層を含む層状構造体であって、
前記II−VI材料がCdZnSeを含み、及び前記III−V材料がInAlAs又はAlInGaAsを含み;その際前記II−VI材料がCdZn1−xSeであり、ここでxが0.47〜0.57であるが、0.47〜0.54のxを除く、層状構造体。
【請求項2】
InP基板;並びに
II−VI及びIII−V材料の交番層を含む層状構造体であって、
前記交番層の前記材料が次のもの:BeZnTe又はBeMgZnTeを含むII−VI材料及びInAlAsを含むIII−V材料;CdZnSe又はCdMgZnSeを含むII−VI材料及びInAlAsを含むIII−V材料;又はZnSeTeを含むII−VI材料及びInAlAsを含むIII−V材料から選択され;その際前記III−V材料がInAl1−yAsであり、ここでyが0.47〜0.57であるが、0.47〜0.52のyを除く、層状構造体。
【請求項3】
InP基板;並びに
II−VI及びIII−V材料の交番層を含む層状構造体であって、
前記II−VI材料がZnSeTeを含み、前記III−V材料がInAlAs又はAlInGaAsを含む層状構造体。
【請求項4】
前記II−VI及びIII−V材料の交番層が、前記InP基板に格子整合しているか又は前記InP基板にシュードモルフィックである、請求項1、2、又は3に記載の層状構造体。
【請求項5】
前記II−VI及びIII−V材料の交番層の少なくとも1つが、前記InP基板に直接接触している、請求項1、2、又は3に記載の層状構造体。
【請求項6】
前記InP基板と、前記II−VI及びIII−V材料の交番層との間に介在する層を更に含む、請求項1、2、又は3に記載の層状構造体。
【請求項7】
前記II−VI及びIII−V材料の交番層が、1以上の分布ブラッグ反射器(DBR)を形成する、請求項1、2、又は3に記載の層状構造体。
【請求項8】
前記分布ブラッグ反射器(DBR)が、1〜2ミクロンの範囲の波長で生じる最大反射率を有する、請求項7に記載の層状構造体。
【請求項9】
各DBRが、15対以下の、II−VI及びIII−V材料の交番層を包含し、かつ95%以上の反射率を有する、請求項7に記載の層状構造体。
【請求項10】
前記II−VI材料が、CdZn1−xSeであり、ここでxが0.47〜0.57である、請求項2に記載の層状構造体。
【請求項11】
前記III−V材料が、InAl1−yAsであり、ここでyが0.47〜0.57である、請求項1又は3に記載の層状構造体。
【請求項12】
前記II−VI及びIII−V材料が、約100nm〜約200nmの平均厚さを有する、請求項1、2、又は3に記載の層状構造体。
【請求項13】
請求項1、2、又は3に記載の層状構造体を含むレーザー。
【請求項14】
請求項1、2、又は3に記載の層状構造体を含む光検知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−520377(P2009−520377A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547224(P2008−547224)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/042614
【国際公開番号】WO2007/073449
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】