LiCoO2の堆積
本発明によれば、パルスdc物理気相堆積プロセスによるLiCoO2層の堆積が提供される。そのような堆積により、所望の<101>配向または<003>配向を有するLiCoO2の結晶性層の低温高堆積速度堆積を提供することが可能である。堆積のいくつかの実施形態は、固体再充電可能Li電池のカソード層として利用しうるLiCoO2膜の高速度堆積の必要性に対処するものである。本発明に係るプロセスの実施形態によれば、LiCoO2層を結晶化させるために慣例的に必要とされる高温(>700℃)アニール工程を省略することが可能である。本プロセスのいくつかの実施形態によれば、短時間のランプ速度の急速熱アニールプロセスを利用することにより、LiCoO2層を利用する電池を改良することが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、Hongmei ZhangおよびRichard E.Demarayにより2005年2月8日に出願された仮出願第60/651,363号ならびに同発明者らにより2004年12月8日に出願された仮出願第60/634,818号(それぞれ、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする)に基づく優先権を主張する。
【0002】
背景
1. 発明の分野
本発明は、薄膜固体電池に関し、特定的には、電池を製造するためにLiCoO2の膜および層を堆積することに関する。
【背景技術】
【0003】
2. 関連技術に関する考察
固体薄膜電池は、典型的には、膜が協同して電圧を発生するように基材上に薄膜をスタッキングすることにより形成される。薄膜としては、典型的には、電流コレクター、カソード、アノード、および電解質が挙げられる。薄膜は、スパッタリングや電気メッキをはじめとするいくつかの堆積プロセスを利用して堆積可能である。本出願に好適な基板は、慣例的には、LiCoO2膜を結晶化させるために空気中で最大約2時間にわたり少なくとも700℃までの少なくとも1つの高温アニールプロセスに耐えることのできる高温材料である。そのような基板は、適切な構造特性および材料特性を有する任意の好適な材料、たとえば、半導体ウェーハ、金属シート(たとえばチタンもしくはジルコニウムのシート)、セラミックス(たとえばアルミナ)、またはLiCoO2の存在下における後続の高温処理に耐えることのできる他の材料でありうる。これらの材料は、これらの温度サイクル時、電池に利用されるほとんどの材料との有意な界面反応を起こす可能性がある。
【0004】
LiCoO2以外の他のリチウム含有混合金属酸化物(Ni、Nb、Mn、Vの酸化物、ときにはCoの酸化物をも含むものであるが、他の遷移金属の酸化物を含むものもある)が、結晶性エネルギー貯蔵カソード材料として評価されてきた。典型的には、カソード材料をアモルファス形で堆積し、次に、アニールプロセスで材料を加熱し、結晶性材料を形成する。たとえば、LiCoO2の場合、700℃以上でアニールすることにより、堆積されたアモルファス膜を結晶形に変換する。しかしながら、そのような高温アニールを用いると、基板として利用可能な材料が著しく限定され、リチウム含有カソード材料との破壊的反応が起こり、多くの場合、金のような高価な貴金属の使用が必要とされる。そのような高熱収支プロセス(すなわち、長時間にわたる高温)は、半導体デバイスやMEMデバイスの加工との適合性がなく、基板材料の選択を制限し、コストを増大させ、さらにはそのような電池の歩留りを減少させる。本発明者らは、堆積後のアニールプロセスが、ステンレス鋼箔、アルミニウム箔、または銅箔のような低温材料上への機能的構造体の作製を可能にする十分に低い熱収支を有する、電池構造体用のカソードリチウム膜の作製を可能にする当技術分野で開示されたプロセスを知らない。
【0005】
貴金属上のアモルファスLiCoO2の結晶化を達成しうることは公知である。この結晶化の例は、Kimらの文献に論述されている。そこでは、貴金属上のLiCoO2のアモルファス層に20分間にわたり700℃で従来のファーネスアニール処理を施すことにより、X線回折データにより示されるLiCoO2材料の結晶化が達成される。Kim, Han-Ki and Yoon, Young Soo, ”Characteristics of rapid-thermal-annealed LiCoO2, cathode film for an all-solid-state thin film microbattery,” J. Vac. Sci. Techn. A 22(4), Jul/Aug 2004。Kimらの文献では、LiCoO2膜は、高温MgO/Si基板上に堆積された白金膜上に堆積された。Kimらの文献では、そのような結晶性膜は、機能的全固体Li+イオン電池のLi+イオン含有カソード層を構成しうることが明らかにされた。しかしながら、高価な貴金属の核生成層、バリヤー層、高価な高温基板のいずれを必要とすることなくそのような電池の製造が可能になるように、時間および温度のいずれに関しても堆積後のアニールの熱収支をさらに減少させるべく固体Li+イオン電池の製造に継続的な関心が寄せられている。
【0006】
小角X線回折(XRD)によりなんらかの観測可能な結晶性組成物であることが実証されるLiCoO2膜を提供しうるイオンビーム支援プロセスが開示されている多くの参考文献が存在する。これらのうちのいくつかの例は、米国特許出願第09/815,983号(公開番号US 2002/001747)、同第09/815,621号(公開番号US 2001/0032666)、および同第09/815,919号(公開番号US 2002/0001746)に見いだされる。これらの参考文献には、基板表面にイオンの流束とLiCoO2蒸気の流束とのオーバーラップ領域が得られるように堆積源と並置して第2の前面イオンビーム源または他のイオン源を使用することが開示されている。これらの参考文献のいずれにも、低温加工であるという主張を裏付ける堆積時の膜温度データや膜の他の温度データは開示されていない。
【0007】
材料層をスパッタリングするかまたはイオン流束の衝撃を加えるかのいずれかにより均一な堆積を行うことは非常に困難である。基板に対して同一の位置および範囲を占有しない2つの供給源からの2つの均一な同時分配を利用すると、均一な材料堆積の達成に伴う問題が極端に大きくなる。これらの参考文献には、薄膜電池を確実に製造するのに必要とされる均一な材料堆積については開示されていない。有用な電池製品に適合する材料均一性に関する十分な理解の得られた仕様は、5%1σの材料均一性が薄膜製造における標準であるということである。この均一性を有する膜の約86%は、電池製造に適合しうるものであろう。
【0008】
200mmや300mmのような製造スケールで基板を作製することは一段と難しい。実際には、スパッタリング堆積およびイオンビーム堆積の両者が利用される以上に述べた参考文献には、小面積ターゲットおよび小面積基板のみが開示されている。これらの参考文献には、単に実現可能性に関する結果が開示されているにすぎない。2つの独立した前面供給源からの均一分配を達成する方法は、これらの参考文献には開示されていない。
【0009】
さらに、従来の材料および製造プロセスでは、作製される電池のエネルギー密度性能が制限されて、より多くの容積を占有するより多くの電池が必要になる可能性がある。低重量かつ低容積の電池を提供するために単位体積あたり多量の貯蔵エネルギーを有する電池を製造することがとくに望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、基板上に結晶性材料(たとえばLiCoO2材料)を堆積する低温プロセスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
概要
本発明によれば、パルスdc物理気相堆積プロセスによるLiCoO2層の堆積が提供される。そのような堆積により、所望の<101>配向を有するLiCoO2の結晶性層の低温高堆積速度堆積を提供することが可能である。堆積のいくつかの実施形態は、固体再充電可能Li電池のカソード層として利用しうるLiCoO2膜の高速度堆積の必要性に対処するものである。本発明に係るプロセスの実施形態によれば、LiCoO2層を結晶化させるために慣例的に必要とされる高温(>700℃)アニール工程を省略することが可能である。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態に係るLiCoO2層の堆積方法は、反応器内に基板を配置することと、アルゴンおよび酸素を含むガス状混合物を反応器内に通して流動させることと、基板に対向するように位置決めされたLiCoO2で形成されたターゲットにパルスDC電力を印加することと、を含む。いくつかの実施形態では、LiCoO2層は、基板上に形成される。さらに、いくつかの実施形態では、LiCoO2層は、<101>配向の結晶性層である。
【0013】
いくつかの実施形態では、スタック型電池構造体を形成することが可能である。スタック型電池構造体は、薄肉基板上に堆積された1つ以上の電池スタックを含み、それぞれの電池スタックは、導電層と、導電層の上に堆積された結晶性LiCoO2層と、LiCoO2層の上に堆積されたLiPON層と、LiPON層の上に堆積されたアノードと、を含む。最上導電層は、1つ以上の電池スタックの上に堆積可能である。
【0014】
いくつかの実施形態では、電池構造体をクラスターツールにより形成することが可能である。クラスターツールによる電池の製造方法は、クラスターツール中に基板を装填することと、クラスターツールの第1のチャンバー内で基板の上に導電層を堆積することと、クラスターツールの第2のチャンバー内で導電層の上に結晶性LiCoO2層を堆積することと、クラスターツールの第3のチャンバー内でLiCoO2層の上にLiPON層を堆積することと、第4のチャンバー内でLiCoO2層の上にアノード層を堆積することと、クラスターツールの第5のチャンバー内でLiPON層の上に第2の導電層を堆積することと、を含む。
【0015】
薄肉基板を保持するための固定具は、上部および底部を含みうる。ただし、上部を底部に結合させたときに、薄肉基板が保持される。
【0016】
以下の図を参照して本発明のこれらのおよび他の実施形態について以下でさらに論述する。当然のことながら、以上の一般的な説明および以下の詳細な説明はいずれも、例示的かつ解説的なものにすぎず、特許請求された本発明を限定するものではない。さらに、堆積プロセス時の特定の層の堆積もしくは性能に関するまたはそれらの層が組み込まれたデバイスの性能についての特定の説明または理論は、単に説明のために提供されたものにすぎず、本開示の範囲または特許請求の範囲に対する限定とみなすべきものではない。
【0017】
図中、同一の記号を有する要素は、同一もしくは類似の機能を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
詳細な説明
本発明の実施形態によれば、LiCoO2膜は、パルスdc物理気相堆積(PVD)プロセスにより基板上に堆積される。Kimらの文献などとは対照的に、本発明のいくつかの実施形態に係るLiCoO2膜は、金属核生成下側膜やバリヤー下側膜を用いることなく堆積時約220℃程度の低い基板温度で基板上に堆積された結晶性LiCoO2膜を提供する。堆積されたままの状態の結晶性LiCoO2膜は、下側貴金属膜を用いることなく5分間程度の短い時間で約700℃でアニールすることにより非常に高い結晶性の状態に容易に熟成することが可能である。そのほか、貴金属膜上に位置決めした場合、堆積されたままの状態の結晶性膜は、さらに大きく低減された温度、たとえば、400〜500℃程度の低い温度でアニールして、より低温の基板上で固体電池の堆積、アニール、および作製を提供することが可能である。
【0019】
本出願には、製造用として400mm×500mmの大きさに作製された単一拡張供給源が記載されており、これにより、二次的な前面イオン源やイオン支援を必要とすることなく、2000cm2の領域にわたり毎時1.2ミクロンの厚さの堆積速度で25点で測定したときに3%1σのLiCoO2均一性が達成される。
【0020】
プロセスの一例として、本明細書に記載の導電性セラミックLiCoO2ターゲットを利用し、無バイアスで4kWのパルスdc電力を印加し、60sccmのArと20sccmのO2とよりなるガス流を用いることにより、LiCoO2膜を堆積した。結晶性LiCoO2よりなる3000オングストロームの層が400×500mmの基板領域上に堆積された。図16に示されるように、基板を横切って均一に離間した約25箇所においてフェルトマーカーペンを用いて各箇所で膜の一部を持ち上げて膜厚均一性を確認した。高精度白色光干渉法を利用して基板から膜表面までのステップ高を測定することにより各箇所の膜厚を測定した。全部で25回の厚さ測定を行ったところ、400×500mmの基板領域にわたり3%1σの膜厚均一性であることが実証された。図16に示されるように、膜は、3.09μmの最大値かつ2.70μmの最小値かつ0.093の標準偏差を有して約2.96μmの平均厚さで堆積された。膜表面上の0.65mm離間した箇所で厚さデータを取得した。したがって、膜厚は、示された表面領域にわたり3%1σの均一性を示した。
【0021】
このプロセスを利用する他の堆積に関して、堆積時の基板の温度測定により、基板は224℃未満に保持されることが示された。Omega Engineering, Stamford, Ctから購入した温度ステッカー(199〜224℃で機能するModel no. TL−F−390)を利用して温度測定を行った。
【0022】
さらに、いくつかの実施形態では、本発明に従って堆積される膜は、従来の膜のプロセスの約10倍〜約30倍の堆積速度を有しうる。本発明に従って堆積された膜の堆積厚さおよび堆積時間を表Iに示す。さらに、本発明に係る膜は、これまでのスパッタリングプロセスの表面積の10〜50倍の表面積を有する大面積基板上に堆積可能であり、その結果、生産性がかなり高くなり、製造コストがかなり削減されるので、高容量低コスト電池が提供される。
【0023】
さらに、イオン源を用いない従来の堆積プロセスでは、アモルファスLiCoO2層を堆積することはできるが、結晶性LiCoO2層を堆積しない。驚くべきことに、本発明のある実施形態に係る堆積によれば、X線回折法により容易に測定される実質的結晶性のLiCoO2層が堆積される。いくつかの実施形態では、堆積されたままの状態のLiCoO2層の結晶性は、さらなる熱処理を施すことなく電池構造体で利用するのに十分なものである。いくつかの実施形態では、堆積されたままの状態のLiCoO2層の結晶性は、低温基板上に堆積された膜に適合しうる低い熱収支の熱プロセスにより改良される。
【0024】
さらに、本発明のいくつかの実施形態に従って堆積されたいくつかのLiCoO2層の堆積されたままの状態での化学量論性により、この層は電池で利用するのに十分なものであることが示される。結晶性および十分な化学量論性を備えたLiCoO2膜を堆積できることが実証されたことから、堆積されたままの状態のLiCoO2膜を利用した電池を製造することが可能である。LiCoO2層を熱処理することにより、結晶性を改良しかつインピーダンスを低下させることが可能である。
【0025】
いくつかの実施形態では、<101>結晶配向または<003>結晶配向を有するLiCoO2の結晶性層が、基板上に直接堆積される。結晶性材料を堆積することにより、膜を結晶化および配向させるための後続の高温アニールまたは貴金属層の必要性を排除または低減することが可能である。高温アニールを排除すれば、ステンレス鋼箔、銅箔、アルミニウム箔、およびプラスチックシートのような軽量かつ低温の基板上に電池構造体を形成することが可能であるので、Li系電池のエネルギー密度貯蔵容量を保持しつつ電池の重量およびコストの両方が低減される。いくつかの実施形態では、白金やイリジウムのような貴金属層上に結晶性LiCoO2層を堆積することが可能であるので、結果として、結晶性を改良するのに必要とされる熟成熱収支がさらに有意に低減される。
【0026】
パルスDCバイアス反応性イオン堆積による材料の堆積については、2002年3月16日に出願されHongmei Zhangらに付与された「酸化物膜のバイアスパルスDC反応性スパッタリング」という名称の米国特許出願第10/101863号に記載されている。ターゲットの作製については、2002年3月16日に出願されVassiliki Milonopoulouらに付与された「誘電体平面用途向けの希土類予備合金化PVDターゲット」という名称の米国特許出願第10/101,341号に記載されている。米国特許出願第10/101863号および米国特許出願第10/101,341号は、それぞれ、本開示と同一の譲受人に譲渡されたものであり、それぞれ、それらの全体が本明細書に組み入れられるものとする。また、酸化物材料の堆積については、米国特許第6,506,289号(その全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されている。透明酸化物膜は、米国特許第6,506,289号および米国特許出願第10/101863号に具体的に記載のものに類似したプロセスを利用して堆積可能である。
【0027】
図1Aは、本発明に従ってターゲット12から材料をスパッタリングするための反応器装置10の概略図を示している。いくつかの実施形態では、装置10は、たとえば、Applied Komatsu製のAKT−1600 PVD(400×500mmの基板サイズ)システムまたはApplied Komatsu, Santa Clara, CA製のAKT−4300(600×720mmの基板サイズ)システムに変更を加えたものでありうる。AKT−1600反応器は、たとえば、真空搬送チャンバーにより接続された3つの堆積チャンバーを有する。これらのAKT反応器は、パルスDC電力がターゲットに供給されかつRF電力が材料膜の堆積時に基板に供給されるように改造可能である。装置10はまた、本明細書に記載されるようなパルスdcプロセス用としてとくに設計されたSymmorphix製のPhoenix Gen III PVDクラスターツールでありうる。
【0028】
装置10は、フィルター15を介してパルスDC電源14に電気結合されたターゲット12を含む。いくつかの実施形態では、ターゲット12は、基板16上に堆積される材料を提供する大面積スパッター源ターゲットである。基板16は、ターゲット12に平行になるようにかつ対向するように位置決めされる。ターゲット12は、それにパルスDC電源14から電力が印加されたときにカソードとして機能するので、等価的にカソードと称される。ターゲット12に電力を印加すると、プラズマ53が生成する。基板16は、絶縁体54を介して電極17に容量結合される。電極17は、RF電源18に結合可能である。磁石20は、ターゲット12の上端を横切って走査される。
【0029】
装置10により行われるようなパルス反応性dcマグネトロンスパッタリングの場合、電源14によりターゲット12に供給される電力の極性は、負電位と正電位との間で振動する。正の時間中、ターゲット12の表面上の絶縁層は放電され、アーキングは防止される。アークフリー堆積を達成するために、パルシング周波数は、ターゲット材料、カソード電流、および反転時間に依存しうる臨界周波数を超える。装置10に示されるような反応性パルスDCマグネトロンスパッタリングを用いて、高品質の酸化物膜を作製することが可能である。
【0030】
パルスDC電源14は、任意のパルスDC電源、たとえば、Advanced Energy, Inc.製のAE Pinnacle plus 10Kでありうる。このDC電源を用いた場合、0〜350kHzの周波数で10kWまでのパルスDC電力を供給することが可能である。逆電圧は、負ターゲット電圧の10%でありうる。他の電源を利用することにより、異なる電力特性、周波数特性、および逆電圧パーセントを得ることが可能である。電源14のこの実施形態での反転時間は、0〜5μsに調整可能である。
【0031】
フィルター15は、電源18からのバイアス電力がパルスDC電源14に結合するのを防止する。いくつかの実施形態では、電源18は、2MHz RF電源、たとえば、ENI, Colorado Springs, Co.製のNova−25電源でありうる。
【0032】
いくつかの実施形態では、フィルター15は、2MHz正弦波帯域消去フィルターでありうる。いくつかの実施形態では、フィルターの帯域幅は、約100kHzでありうる。したがって、フィルター15は、バイアスから基板16に印加された2MHz電力が電源14に損傷を与えるのを防止し、かつパルスdc電力およびパルスdc周波数を透過させる。
【0033】
パルスDC堆積フィルムは、十分に稠密ではなく、柱状構造を有しうる。柱状構造は、柱状物間に境界域が存在するので、高密度が重要であるバリヤー膜や誘電体膜のような薄膜用途には有害である可能性がある。柱状物は、材料の絶縁耐力を低下させるように作用するが、電流、イオン電流、気体、または他の化学剤たとえば水の輸送または拡散のための拡散経路を提供しうる。固体電池の場合、材料の境界域を介してより良好なLi輸送が可能になるので、本発明に係るプロセスから誘導されるような結晶性を含有する柱状構造は、電池性能には有利である。
【0034】
たとえば、Phoenixシステムの場合、ターゲット12は、約600×720mmの寸法を有する基板16上に膜を堆積するために約800.00×920.00mm×4〜8mmの有効サイズを有しうる。基板16の温度は、−50℃〜500℃に調整可能である。ターゲット12と基板16との間の距離は、約3〜約9cmでありうる(いくつかの実施形態では、4.8〜6cmが使用される)。プロセスガスは、約200sccmまでの速度で装置10のチャンバー内に挿入可能であり、一方、装置10のチャンバー内の圧力は、約0.7〜6ミリトルに保持可能である。磁石20は、ターゲット12の平面内に方向付けられた約400〜約600ガウスの強度の磁界を提供し、約20〜30秒/スキャン未満の速度でターゲット12を横切って移動する。Phoenix反応器を利用するいくつかの実施形態では、磁石20は、約150mm×800mmの寸法を有するレーストラック形磁石でありうる。
【0035】
図2は、ターゲット12の例を示している。ターゲット12の領域52に完全に対向するキャリヤーシート17上に位置決めされた基板上に堆積された膜は、良好な厚さ均一性を有する。領域52は、均一なプラズマ条件に暴露される図1Bに示される領域である。いくつかの実装形態では、キャリヤー17は、領域52と共延的でありうる。図2に示される領域24は、物理的にも化学的にも均一な堆積を達成しうる上限領域、たとえば、物理的かつ化学的な均一性により、屈折率均一性、酸化物膜均一性、または金属膜均一性が提供される上限領域を示している。図2は、厚さ均一性を提供するターゲット12の領域52を示しており、この領域は、一般的には、堆積膜に厚さ均一性および化学的均一性を提供するターゲット12の領域24よりも大きい。しかしながら、最適化プロセスでは、領域52および24は、共延的でありうる。
【0036】
いくつかの実施形態では、磁石20は、一方向に、たとえば、図2中のY方向に、領域52を越えて延在し、その結果、スキャニングは、時間平均均一磁界を提供するために、一方向にのみ、たとえば、X方向にのみ必要とされる。図1Aおよび1Bに示されるように、磁石20は、均一スパッター侵食の領域52よりも大きいターゲット12の全範囲にわたり走査可能である。磁石20は、ターゲット12の平面に平行な平面内で移動する。
【0037】
均一なターゲット12と基板16の領域よりも大きいターゲット領域52とを組み合わせることにより、きわめて均一な厚さの膜を提供することが可能である。さらに、堆積された膜の材料特性は、きわめて均一でありうる。ターゲット表面におけるスパッタリング条件、たとえば、侵食の均一性、ターゲット表面におけるプラズマの平均温度、およびターゲット表面とプロセスの気相雰囲気との平衡は、均一な膜厚でコーティングされる領域よりも大きいかまたはその領域に等しい領域にわたり均一である。そのほか、均一な膜厚の領域は、きわめて均一な電気特性、機械特性、または光学特性、たとえば、屈折率、化学量論性、密度、透過率、または吸収率を有する膜の領域よりも大きいかまたはその領域に等しい。
【0038】
ターゲット12は、LiCoO2堆積に対して適正な化学量論性を提供する任意の材料で形成可能である。典型的なセラミックターゲット材料は、LiおよびCoの酸化物、さらには金属Liおよび金属Coの添加物、ならびにドーパント、たとえば、Ni、Si、Nb、または他の好適な金属酸化物の添加物を含む。本開示では、ターゲット12は、LiCoO2膜を堆積すべくLiCoO2から形成可能である。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態では、材料タイルが形成される。これらのタイルは、装置10用のターゲットを形成すべくバッキングプレート上に取り付け可能である。大面積スパッターカソードターゲットは、より小さいタイルの密充填アレイから形成可能である。したがって、ターゲット12は、任意の数のタイル、たとえば、2〜60個の個別タイルを含みうる。タイルは、タイル30の隣接間で起こりうるプラズマ過程を排除するために約0.010インチ〜約0.020インチ未満または0.5ミリメートル未満のタイル間エッジワイズ非接触マージンを提供するようなサイズに仕上げ処理可能である。ターゲット12のタイルと暗部アノードまたは図1B中のグラウンドシールド19との間の距離は、非接触アセンブリーを提供するようにまたはプロセスチャンバーのコンディショニング時もしくは運転時の熱膨張許容範囲を提供するようにいくらか大きくとりうる。
【0040】
図1Bに示されるように、均一プラズマ条件は、基板16上に位置する領域内のターゲット12と基板16との間の領域で生成可能である。プラズマ53は、全ターゲット12の下に延在する領域51で生成可能である。ターゲット12の中央領域52は、均一スパッター侵食の条件に遭遇可能である。したがって、本明細書中でさらに考察されるように、中央領域52の下の任意の位置に配置された基板上に堆積された層は、厚さおよび他の特性(すなわち、誘電指数、光学指数、または材料濃度)が均一でありうる。いくつかの実施形態では、ターゲット12は、基板16上に堆積された膜の均一性を提供するために実質的に平面状である。実用上、ターゲット12の平面性は、領域52内のターゲット表面のすべての部分が平面状表面から数ミリメートル以内、典型的には平面状表面から0.5mm以内にあることを意味しうる。
【0041】
図3は、本発明のいくつかの実施形態に従って堆積されたLiCoO2層を有する電池構造体を示している。図3に示されるように、金属集電層302が基板301上に堆積される。いくつかの実施形態では、集電層302は、LiCoO2層303の堆積前に種々の方法でパターニング可能である。また、いくつかの実施形態によれば、LiCoO2層303は、堆積された結晶性層でありうる。本発明のいくつかの実施形態では、層303は、結晶化熱処理を必要とすることなく結晶性である。したがって、基板301は、シリコンウェーハ、チタン金属、アルミナ、または他の従来の高温基板でありうるが、低温材料、たとえば、プラスチック、ガラス、または高温結晶化熱処理で損傷を受ける可能性のある他の材料であってもよい。この特徴は、本発明により形成された電池構造体の費用および重量を低減させるという大きい利点を有しうる。LiCoO2を低温堆積することにより、電池層をそれぞれ積重して逐次堆積することが可能になる。そのようなプロセスは、電池構造体の逐次層が基板層を組み込むことなくスタック条件で得られるという利点を有するであろう。スタック型層状電池は、充放電に対してより高い比エネルギー密度さらには低インピーダンス動作を提供するであろう。
【0042】
いくつかの実施形態では、酸化物層を基板301上に堆積することが可能である。たとえば、酸化シリコン層をシリコンウェーハ上に堆積することが可能である。導電層302と基板301との間に他の層を形成することが可能である。
【0043】
図3にさらに示されるように、LiPON層304(LixPOyNz、)がLiCoO2層303上に堆積される。LiPON層304は、電池300用の電解質であり、一方、LiCoO2層303は、カソードとして作用する。電池を完成させるために、LiPON層304の上に金属導電層305を堆積することが可能である。金属導電層305は、LiPON層304に隣接してリチウムを含みうる。
【0044】
アノード305は、LiPON層304の上に堆積される。アノード305は、たとえば、蒸発されたリチウム金属でありうる。他の材料、たとえば、ニッケルなどを利用することも可能である。次に、導電性材料である電流コレクター306がアノード305の少なくとも一部分の上に堆積される。
【0045】
Li系薄膜電池は、電流コレクター306と電流コレクター302との間の電圧を定電圧に保持するように電流コレクター306から電流コレクター302の方向にLiイオンを輸送することにより動作する。その際、定常電流を供給する電池構造体300の能力は、LiPON層304およびLiCoO2層303を通って拡散するLiイオンの能力に依存する。薄膜電池内のバルクカソードLiCoO2層303を通るLi輸送は、粒子または粒界を経由して起こる。本開示においてなんら特定の輸送理論に限定されるものではないが、基板302に平行な平面を有する粒子はLiイオンの流動を妨害し、一方、基板301に垂直な平面を有するように配向した(すなわち、Liイオン流動の方向に平行になるように配向した)粒子はLiの拡散を促進すると考えられる。したがって、高電流電池構造体を提供するために、LiCoO2層303は、<101>方向または<003>方向に配向した結晶を含むことが望ましい。
【0046】
本発明によれば、LiCoO2膜は、以上に記載したようにパルスDCバイアスPVDシステムを用いて基板302上に堆積可能である。そのほか、Phoenixシステムで利用可能なRFバイアスを提供すべくAKT 1600 PVDシステムを改造することが可能であり、ターゲットに電力を提供すべくAdvanced Energy Pinnacle plus 10KパルスDC電源を利用することが可能である。電源のパルシング周波数は、約0〜約350kHzのさまざまな値が可能である。電源の電力出力は、0〜約10kWである。約3〜約10kΩの範囲内の抵抗率を有する稠密化LiCoO2タイルのターゲットをdcスパッタリングで利用することが可能である。
【0047】
いくつかの実施形態では、LiCoO2膜は、Siウェーハ上に堆積される。酸素およびアルゴンを含有するガス流を利用することが可能である。いくつかの実施形態では、酸素対アルゴン比は、約80sccmの全ガス流を用いて0〜約50%の範囲内である。パルシング周波数は、堆積時、約200kHz〜約300kHzの範囲内である。RFバイアスを基板に印加することも可能である。多くの試験において、堆積速度は、O2/Ar比さらには基板バイアスに依存して、約2オングストローム/(kW sec)〜約1オングストローム/(kW sec)のさまざまな値をとる。
【0048】
表Iは、本発明に係るLiCoO2のいくつかの堆積例を示している。得られた薄膜で取得したXRD(X線回折)の結果から、本発明に従って堆積された膜が多くの場合約150nm程度の大きい高テクスチャー化粒子サイズを有する結晶性膜であることが例証される。優位な結晶配向は、O2/Ar比の影響を受けやすいことが判明している。特定のO2/Ar比(約10%)では、堆積されたままの状態の膜は、<101>方向にまたは不十分に<003>平面を生じて<003>方向に優先配向を呈する。
【0049】
図4Aおよび4Bは、それぞれ、表I中の実施例15として堆積されたLiCoO2膜のXRD分析結果およびSEM断面図を示している。そのようなLiCoO2膜は、約30℃の初期温度を有する基板に対して60sccmのArおよび20sccmのO2を用いて、2kWのターゲット電力、300kHzの周波数でSiウェーハ上に堆積された。図4AのXRD分析結果に示されるように、強い<101>ピークの存在が示されることから、所望の<101>結晶学的方向にLiCoO2結晶が強く配向していることは明らかである。さらに、図4Bに示されるSEM断面図は、<101>方向を有する膜の柱状構造および得られたLiCoO2結晶の粒界を示している。
【0050】
図5A〜5Fは、本発明に係るLiCoO2結晶のさらなる堆積例のSEM断面図を示している。各実施例において、約2kWのターゲット電力および約250kHzの周波数を用いてSiウェーハ上にLiCoO2膜の堆積を行った。図5Aに示されるLiCoO2膜は、表I中の堆積例の実施例1に対応する。図5Aに示されるLiCoO2膜の堆積では、約80sccmのアルゴン流量および約0sccmの酸素流量で無バイアス電力を利用した。400×500mmの全基板領域にわたり約1.45μm/hrの堆積速度が達成された。さらに、図5Aに示される断面図からわかるように、LiCoO2の<101>配向が達成された。
【0051】
図5Aに示されるLiCoO2層の堆積速度は、おそらくセラミックLiCoO2酸化物スパッターターゲットの比較的高い導電率または低い抵抗率が原因で、非常に速い。ターゲット12の表面上の約4cmの距離にわたりオーム計により10kΩのターゲット抵抗が測定された。この速い速度のおかげで、電池に必要とされる3ミクロン以上の厚さのLiCoO2層が短時間に広領域にわたり高速度で製造可能になり、結果として、生産性が非常に高くなりコストが非常に低くなる。同一測定法により同一距離にわたり約500kΩ程度またはそれ以上のターゲット抵抗では、そのような低いターゲット電力でそのような高いスパッター効率や速い堆積速度を達成することはできないであろう。従来のターゲット材料の抵抗は、測定できないほど高い可能性がある。表面の約4cmにわたり100kΩの抵抗であれば、高いスパッター効率および速い堆積速度が得られるであろう。さらに、堆積速度は、典型的には、ターゲット電力と共にほぼ直線的に変化するので、6kWで堆積すれば、約3μm/hrの堆積速度になるであろう。これは、400×500mm2の表面領域上にLi系薄膜固体電池を作製できるようにするのに非常に望ましい堆積速度である。
【0052】
図5Bに示されるLiCoO2層は、表I中に実施例7として列挙された条件で堆積される。この場合も、堆積時、無バイアスを利用した。約72sccmのアルゴン流量および約8sccmの酸素流量を利用した。堆積速度は、有意に約0.85μm/hrまで低減された。さらに、<101>結晶性は識別可能ではあったが、その<101>結晶性は、図5Aに示される膜の堆積で示されたものほど顕著ではない。
【0053】
図5Cに示されるLiCoO2膜は、表I中の実施例3に従って堆積された。この堆積時、100Wのバイアス電力を基板に印加する。さらに、72sccmのアルゴン流量および8sccmの酸素流量を利用した。堆積速度は、約0.67μm/hrであった。したがって、バイアスを印加すると、図5Bに示されるLiCoO2膜と比較して、堆積速度はさらに低減された(図5Cに示される実施例では0.67μm/hrであるのに対して図5Bに示される実施例では0.85μm/hrであることから)。さらに、形成される結晶の所望の<101>方向性は、さらに損なわれることが判明している。
【0054】
図5Dに示されるLiCoO2膜は、表I中の実施例4に対応する。この堆積時、Ar/O2比を増大させた。図5Dに示されるように、Ar/O2比を増大させると結晶性が改良される。図5Cに示される実施例と対比して、約76sccmのアルゴン流および約4sccmの酸素流を用いて、さらには基板に対する100Wのバイアスを保持して、図5Dに示される堆積を行った。LiCoO2の堆積速度は、図5Cに示される0.67μm/hrの速度から0.79μm/hrに改良された。
【0055】
表I中の実施例5に対応する図5Eに示される堆積例の場合。基板温度を約200℃に設定し、一方、バイアス電力を約100Wに保持した。アルゴン流量を約76sccmに設定し、酸素流量を約4sccmに設定した。得られたLiCoO2層堆積速度は、約0.74μm/hrであった。
【0056】
表Iの実施例6に対応する図5Fに示される堆積例では、アルゴン流量を約74sccmに設定し、酸素流量を約6sccmに設定し、結果として約0.67μm/hrのLiCoO2堆積速度を得た。したがって、図5Eに示される堆積よりもアルゴンおよび酸素の両流量を増大させることにより、堆積速度が低減された。
【0057】
図5Gは、それぞれ、図5F、5D、5C、5E、および5Bに対応するXRDデータを示している。図5Gに示されるように、堆積されたままの状態の結晶性LiCoO2がこれらのプロセスで堆積される。
【0058】
表IIに示されるように、いくつかのプロセス条件下では堆積されたままの状態のLiCoO2結晶性膜を取得しうることがデータから明確に示される。とくに、本発明の実施形態に係るプロセス条件では、配向結晶性構造と共に、低電力で非常に速い堆積速度が得られる。
【0059】
図6Aは、本発明のいくつかの実施形態に係る薄肉基板601上に堆積されたLiCoO2層602を示している。電池スタックの厚さの何倍もの厚さまたは数十倍の厚さではなく電池スタック自体の厚さに匹敵する厚さを有する薄肉基板601上に堆積された結晶性LiCoO2カソード膜602を利用して、より高いリチウムイオン移動度を達成することが可能である。そのような膜を用いれば、より速い充放電速度を達成することが可能である。基板601は、薄肉金属シート(たとえば、アルミニウムシート、チタンシート、ステンレス鋼シート、もしくは他の好適な薄肉金属シート)で形成可能であるか、ポリマー材料もしくはプラスチック材料で形成可能であるか、またはセラミック材料もしくはガラス材料で形成可能である。図6Bに示されるように、基板601が絶縁材料である場合、基板601とLiCoO2層602との間に導電層603を堆積することが可能である。
【0060】
薄肉基板上に材料を堆積するには、堆積時に基板の保持および位置決めを行うことが必要である。図7A、7B、7C、および7Dは、薄膜基板を保持するための再使用可能な固定具700を示している。図7Aに示されるように、再使用可能な固定具700は、スナップ留めで一体化される上部701と底部702とを含む。薄肉基板601は、上部701と底部702との間に位置決めされる。図7Bに示されるように、上部701および底部702は、基板601が張力下に置かれ、続いて、上部701が底部702中に閉止されたときに圧締されるようになっている。基板601の取扱いおよび位置決めが可能になるように、固定具700により基板601を容易に保持することが可能である。いくつかの実施形態では、上部701を底部702中に閉止したときに「ラップアラウンド」隅角部圧締作用を回避することにより基板601がより容易に引っ張られるように、基板601の隅角部(領域703)は除去される。
【0061】
図7Cに示されるように、マスク712を固定具700に取り付けることが可能である。いくつかの実施形態では、固定具700は、マスク712に対して固定具700をアライメントするためにガイドを含む。いくつかの実施形態では、マスク712を固定具700に取り付けて、固定具700と共に移動させることが可能である。マスク712は、固定具700中の基板601よりも高い任意の所望の高さに位置決め可能である。したがって、マスク712は、接触マスクまたは近接マスクのいずれかとして機能しうる。いくつかの実施形態では、マスク712は、固定具700に類似した固定具中に装着された他の薄肉基板で形成される。
【0062】
図7Cおよび7Dに示されるように、固定具700およびマスク712は、マウント710に対して位置決め可能である。たとえば、マウント710は、図1Aおよび1Bに示されるような処理チャンバーのサセプター、マウント、または静電チャックでありうる。固定具700およびマスク712は、互いにかつマウント710に対して即座にアライメントできるという特徴を有しうる。いくつかの実施形態では、マスク712は、処理チャンバー内に常駐し、図7Dに示されるように、固定具700をマウント710上に位置決めする際に固定具700にアライメントされる。
【0063】
図7A、7B、7C、および7Dに示されるように固定具700を利用すれば、処理チャンバー内で薄膜基板を処理することが可能になる。いくつかの実施形態では、薄膜基板は、約10μm以上でありうる。さらに、薄膜基板601は、固定具700内に装着された後、取扱いおよびプロセスチャンバー間の移動が可能である。したがって、本発明の実施形態に従って堆積された1層以上のLiCoO2層を含む層のスタックを形成するために、マルチプロセッサーチャンバーシステムを利用することが可能である。
【0064】
図8は、薄膜基板を処理するためのクラスターツール800を示している。クラスターツール800は、たとえば、ロードロック802およびロードロック803を備えることが可能であり、これらを介して、装着された薄膜基板601が装填され、得られたデバイスがクラスターツール800から取り出される。チャンバー804、805、806、807−、および808は、材料の堆積、熱処理、エッチング、または他のプロセスのための処理チャンバーである。チャンバー804、805、806、807、および808のうちの1つ以上は、図1Aおよび1Bに関連して先に述べたようなパルスDC PVDチャンバーでありうる。また、そのチャンバー内では、本発明の実施形態に従って堆積されるLiCoO2膜を堆積することが可能である。
【0065】
処理チャンバー804、805、806、807、および808、ならびにロードロック802および803は、トランスファーチャンバー801により連結される。トランスファーチャンバー801は、処理チャンバー804、805、806、807、および808、ならびにロードロック802および803の間で個別ウェーハを往復させるために基板搬送ロボットを備える。
【0066】
従来の薄膜電池の製造では、セラミック基板は、ロードロック803内に装填される。薄肉金属層は、チャンバー804内で堆積可能であり、続いて、LiCoO2の堆積は、チャンバー805内で実施可能である。次に、基板は、ロードロック803を介して取り出され、クラスターツール800の外部で空気中熱処理に付される。次に、処理されたウェーハは、ロードロック802を介してクラスターツール800内に再装填される。LiPON層は、チャンバー806内で堆積可能である。次に、ウェーハは、再びクラスターツール800から取り出されてリチウムアノード層の堆積に付されるか、またはときにはチャンバー807をリチウムアノード層の堆積に適合させることが可能である。第2の金属層は、チャージコレクターおよびアノードコレクターを形成するためのチャンバー808内で堆積される。次に、完成電池構造体は、ロードロック802でクラスターツール800から搬出される。ウェーハは、トランスファーチャンバー801内のロボットによりチャンバー間を往復する。
【0067】
本発明に従って電池構造体を作製する場合、固定具700のような固定具中に装填された薄膜基板を利用することが可能である。次に、固定具700は、ロードロック803内に装填される。チャンバー804内では、常に、導電層の堆積が行われうる。次に、チャンバー805内で本発明の実施形態に係るLiCoO2層の堆積が行われる。次に、チャンバー806内でLiPON層を堆積することが可能である。チャンバー807は、常に、リチウム金属のようなリチウムリッチ材料の堆積に適合させることが可能であり、チャンバー808は、電流コレクターの導電層の堆積に利用可能である。このプロセスでは、LiCoO2層を結晶化させるために熱処理を利用することはない。
【0068】
薄膜電池プロセスの他の利点は、電池構造体をスタッキングできることである。言い換えれば、多重スタック型電池構造体を作製するために、クラスターツール800内に装填された基板をプロセスチャンバー804、805、806、807、および808の間で複数回行き来させることが可能である。図9Aおよび9Bは、そのような電池構造体を示している。
【0069】
図9Aは、並列結合スタッキングを示している。図9Aに示されるように、たとえばプラスチック基板でありうる基板601は、ロードロック803内に装填される。導電層603、たとえば、約2μmのアルミニウム層、銅層、イリジウム層、または他の材料層は、底部電流コレクターとして作用する。導電層603は、たとえば、チャンバー804内で堆積可能である。次に、LiCoO2層602が導電層603上に堆積される。LiCoO2層602は、約3〜10μmでありうる。また、本発明の実施形態に従ってチャンバー805内で堆積可能である。次に、ウェーハをチャンバー806に移動させることが可能であり、そこで、約0.5〜約2μmの厚さのLiPON層901を堆積することが可能である。次に、チャンバー807において、アノード層902、たとえば、約10μmまでのリチウム金属層をチャンバー807内で堆積することが可能である。次に、第2の導電層903をアノード層902の上に堆積することが可能である。次に、金属層603、LiCoO2層602、LiPON層901、リチウム層902、および集電導電層903により形成された第1の電池スタックの上に第2の電池スタックを堆積することが可能である。集電導電層903の上に他のリチウム層902が形成される。リチウム層902の上に他のLiPON層901が形成される。LiPON層901の上に他のLiCoO2層602が形成され、最後に、LiCoO2層602の上に他の金属層603が形成される。いくつかの実施形態では、さらなるスタッキングを形成することが可能である。いくつかの実施形態では、層の電気結合を行うためのタブが形成されるように、金属層603および903は、堆積時に利用されるマスクが異なる。
【0070】
以上で論じたように、並列電池構成体が形成されるように任意の数の個別電池スタックを形成することが可能である。電池スタッキング構造体のそのような並列配置は、電流コレクター/LiCoO2/LiPON/アノード/電流コレクター/アノード/LiPON/LiCoO2/電流コレクター/LiCoO2.../電流コレクターとして表すことが可能である。図9Bは、電池構造体の電流コレクター/LiCoO2/LiPON/アノード/電流コレクター/LiCoO2/LiPON/アノード/電流コレクター.../電流コレクターに対応する他の選択肢のスタッキングを示している。この場合、個別電池スタックがアノードを共有するので、直列配置電池スタッキング構造体が形成される。
【0071】
図9Aおよび9Bに示される構造体を形成するために、複数の電池セットを堆積するように再び基板をクラスターツール800内のチャンバーに通して循環させる。一般的には、このようにして任意の数の電池のスタックを堆積することが可能である。
【0072】
いくつかの実施形態では、化学量論的LiCoO2をイリジウム上に堆積することが可能である。図10A〜10Dは、Siウェーハ上に堆積されたイリジウム層の上へのLi−Co堆積に対するアニール手順を示している。7200秒間かけて、予備加熱を行わず、60sccmのAr流および20sccmのO2流を用いて、2kWのターゲット電力、無バイアス電力、1.6μsの反転時間、300kHzのパルシング周波数で、以上で論じたようにLiCoO2堆積を達成した。その結果、約1.51μmのLiCoO2の層が堆積された。
【0073】
図10A〜10Dは、以上で論じたように堆積されたLiCoO2の堆積されたままの状態の層およびアニールされた層の両層のXRD分析結果を示している。堆積されたままの状態の層のXRD分析結果は、結晶性LiCoO2の<003>配向を表す2θ=18.85°の低いピークと、所望の<101>結晶学的方向に対応するほぼ2θ=38.07°のよりシャープなピークと、イリジウムの<111>方向に対応する2θ=40.57°のピークと、を示す。しかしながら、<101>LiCoO2ピークの位置は、<101>LiCoO2ピークが非化学量論的LiCoO2であることを示唆する。電池層として有用なものにするには、化学量論的LiCoO2が最も良好なLi輸送を提供する。当業者であればわかるであろうが、堆積パラメーターを注意深く調整すれば、所望の配向の化学量論的LiCoO2を提供することが可能である。
【0074】
図10Bは、2時間かけて空気中で300℃のアニールを行った後の図10Aに示されるサンプルのXRD分析結果を示している。図10Bに示されるように、<003>LiCoO2に対応するXRDピークが増大することから、LiCoO2が<003>方向に結晶化したことが示唆される。さらに、LiCoO2の<101>ピークがわずかに2θ=38.53°にシフトすることから、<101>LiCoO2がより化学量論的に結晶化したことが示唆される。しかしながら、結晶性LiCoO2は、このアニールの後でも依然として化学量論的ではない。当業者であればわかるであろうが、より長時間のアニールおよび/または堆積化学量論性のさらなる調整を行えば、300℃以下のアニール温度で効果的に配向した化学量論的LiCoO2層を得ることが可能である。したがって、低温材料、たとえば、ポリマー、ガラス、または金属を基板として利用することが可能である。
【0075】
図10Cは、2時間かけて空気中で500℃の後続アニールを行った後のサンプルから得られたXRD分析結果を示している。図10Cに示されるように、より多くのLiCoO2が<003>層中に結晶化する。さらに、<101>LiCoO2ピークが再び2θ=39.08°にシフトすることから、LiCoO2の<012>層が結晶化したことが示唆される。この場合、<012>LiCoO2結晶は化学量論的であり、したがって、効率的なLi輸送を可能にする。当業者であればわかるであろうが、より長時間のアニールおよび/または堆積化学量論性のさらなる調整を行えば、500℃以下のアニール温度で効果的に配向した化学量論的LiCoO2層を得ることが可能である。したがって、低温材料、たとえば、ポリマー、ガラス、または金属を基板として利用することが可能である。
【0076】
図10Dは、2時間にわたり空気中で700℃の後続アニールを行った後のサンプルのXRD分析結果を示している。図10Dに示されるように、<003>LiCoO2ピークは消失するが、<012>LiCoO2ピークは、図10Cに示される500°アニールに示されるピークとほぼ同一の状態で残存する。
【0077】
図10A〜10Dは、イリジウム層の上への低温における<101>LiCoO2の堆積を示している。<101>LiCoO2層の化学量論性を変化させるには500℃までの後続アニールが望ましいと思われるが、700℃までのアニールは必要でないことが判明している。500℃未満のアニール温度を用いれば、導電性イリジウム層の上へのLiCoO2層の堆積を、ガラス上、アルミニウム箔上、プラスチック上、または他の低温基板材料上で達成することが可能である。また、500未満ただし300℃超のアニール温度を用いるかまたはより低温のアニールの時間を延長すれば、化学量論的結晶性LiCoO2の所望の配向を得ることが可能である。
【0078】
図11A〜11Dは、本発明のいくつかの実施形態に係る単層電池の構成体を示している。図11Aに示されるように、リフトオフ層1102を基板1101上に堆積することが可能である。さらに、リフトオフ層1102の上にイリジウム層1103を堆積することが可能である。いくつかの実施形態では、基板1101は、プラスチック、ガラス、Al箔、Siウェーハ、または任意の他の材料でありうる。リフトオフ層1102は、任意のリフトオフ層でありうる。また、ポリイミド層のようなポリマー層、CaF2層や炭素層のような無機層、またはたとえば酸化、熱、もしくは光が原因で接着性を失う接着剤層でありうる。リフトオフ層は周知である。イリジウム層1103は、約500Å以上でありうる。
【0079】
図11Bに示されるように、LiCoO2層は、以上で論じたようなイリジウム層1103の上に堆積される。いくつかの実施形態では、この工程でアニールを行うことが可能である。いくつかの実施形態では、アニール工程を実施する前に電池のさらなる層を堆積することが可能である。いくつかの実施形態では、さらなるアニールを必要とすることなく堆積されたままの状態のLiCoO2として、有用な結晶配向の化学量論的LiCoO2層を得ることが可能である。
【0080】
図11Cは、LiCoO2層の上へのLiPON層1105の堆積、LiPON層1105の上へのLi層1106の堆積、およびLi層1106の上への電極層1107の堆積を示している。いくつかの実施形態では、以上で論じたような500℃までのアニール工程をここで実施することが可能である。
【0081】
図11Dに示されるように、イリジウム層1103、LiCoO2層1104、LiPON層1105、Li層1106、および電極層1107から形成されて得られる単層電池を基板1101から「剥離」することが可能である。そのような単層電池は、約5μm以上の厚さの自立性電池でありうる。基板1101を必要としないそのような電池が約1kW・hr/リットル超のエネルギーを貯蔵できる可能性を有することは、周知である。
【0082】
図11A〜11Dに記載されるようなリフトオフプロセスの代替手段として、アニール時に基板を除去して単層電池を残すようにすることが可能である。さらに、いくつかの実施形態では、溶媒プロセス、エッチングプロセス、または光プロセスにより、基材1101を除去することが可能である。さらに、特定の電圧でより大きいエネルギーを貯蔵するデバイスを提供すべく、なんらかの方式で単層電池を組み合わせたりまたはスタッキングしたりすることが可能である。
【0083】
図12A〜12Lは、表Iに示されるサンプル31および32に基づく成長させたままの状態のLiCoO2層およびアニール後のLiCoO2層の結晶性を示している。サンプル31および32は、それぞれ、シリコン基板およびアルミナ基板を利用して、同一の堆積で形成された。
【0084】
図12Aは、Al2O3基板上の堆積されたままの状態のLiCoO2膜(表I中の実施例32)のXRD分析結果を示している。ブロードな<003>結晶性LiCoO2ピークが観測される。図12A中で表示のない分析結果の残りのピークは、Al2O3基板から生じる。<003>ピークは、本発明の実施形態に係る堆積されたままの状態の結晶性LiCoO2膜中の層状構造に特有なものである。
【0085】
図12Bは、2時間にわたる700℃のアニールを行った後の図12Aに示されるLiCoO2膜の結晶性を示している。図12Bに示されるように、<003>ピークがよりシャープにかつより高くなることから、より良好な結晶性であることが示唆される。図12G〜12Jに示されるように、図12C〜12Fと比較して、柱状構造は、アニールに伴って熟成し、粒子サイズは、アニールに伴ってより大きくなる。図12Bはまた、<012>結晶性ピークおよび<006>結晶性ピークを示している。
【0086】
図12C〜12Fは、図I中の実施例32に対応する堆積されたままの状態の膜の粒状性のSEM写真を示している。図12G〜12Jは、図12Bに示されるようなアニールされた膜の粒状性のSEM写真を示している。図12C〜12Fと図12G〜12Jとの比較から、アニールプロセスの結果として粒状性が増大することが示される。
【0087】
図12Kは、表I中の実施例31に対応する堆積されたままの状態の結晶性膜のモルフォロジーを示す破損断面SEMを示している。図12Lは、表I中の実施例32に従って成長させた膜に対応する類似の断面SEMを示している。
【0088】
図13A〜13Jは、表Iの実施例49のときと同様にLiCoO2層に適用された急速熱アニールプロセスを示している。その実施例では、LiCoO2は、無バイアスで2kWパルスDC電力を用いてアルミナ上に堆積される。アルゴン流を60sccmに設定し、酸素流を20sccmに設定した。堆積パラメーターは、表I中の実施例32のものとほぼ同等であり、したがって、図12Aには堆積されたままの状態の膜のXRDデータが示されている。図13Aは、アルゴン雰囲気中で15分間かけて700℃のアニールを行った後のXRDデータを示している。ランプアップ時間(室温→700℃)は、45秒間であり、ランプダウン時間(700℃→約300℃)は、10分間にわたった。300℃において急速熱アニール(RTA)オーブンからサンプルを取り出し、空気中で室温まで冷却させた。図13Aに示されるように、実質的結晶性が得られる。図13Bは、アルゴン/酸素雰囲気中で図13Aに関連して記述したようなRTAを行った後のXRDデータを示している。アルゴン/酸素比は、3:1であった。
【0089】
図13Aと13Bとの比較からわかるように、酸素の存在下で行われるRTAよりもアルゴンのみのRTAのほうが、より高い結晶性が観測される。このことは、図13Cおよび13Dと図13Eおよび13Fとの比較からさらに例証される。図13Cおよび13Dは、図13Aに示されるRTAを行った後のLiCoO2膜の粒状性を示している。図13Eおよび13Fは、図13Bに示されるRTAを行った後のLiCoO2膜の粒状性を示している。観測からわかるように、図13Cおよび13D(倍率が異なる)に示される粒状性は、図13Eおよび13F(この場合も倍率が異なる)に示される粒状性よりも良好である。
【0090】
図14A〜14Dは、表Iの実施例37を用いたいくつかのアニールプロセスを示している。その実施例では、LiCoO2は、60sccmのアルゴン流および20sccmの酸素流を用いて、2kWの電力および100Wのバイアスで、パルスdcプロセスを利用して、アルミナ上に堆積された。
【0091】
図14Aは、表Iの実施例37に示されるプロセスに基づく堆積されたままの状態のLiCoO2膜のSEM写真を示している。図14Bは、2時間にわたる700℃のアニールを用いて慣例的にアニールされた表Iの実施例37に示されるプロセスに基づくLiCoO2膜のSEM写真を示している。図14Cおよび14Dは、700℃のRTAプロセスでアニールされた表Iの実施例37に示されるプロセスに基づくLiCoO2膜のSEM写真を示している。RTAプロセスのランプアップ時間およびランプダウン時間は、以上に示されている。図14Cは、5分間にわたる700℃のRTAプロセスを行った後のLiCoO2膜のSEM写真を示しており、一方、図14Dは、15分間にわたる700℃のRTAプロセスを行った後のLiCoO2膜のSEM写真を示している。図14Cおよび14Dと図14Bとの比較から明らかなように、従来のファーネスアニールではなく低熱収支RTAプロセスを用いると、はるかに良好な粒状性が達成される。低熱収支RTAプロセスは、低温基板上へのそのような膜の堆積を可能にする。
【0092】
図15Aおよび15Bは、2つの異なるランプアップ時間を利用したRTAプロセスでアニールされたLiCoO2膜のSEM写真を示しており、RTAプロセスにおけるランプ時間の影響が例証される。LiCoO2膜は、表I中に実施例51として記載されるプロセスに従ってアルミナ基板上に堆積された。図15Aに示される膜は、45秒間のランプアップ時間(すなわち、45秒間で室温→700℃)でアニールされた。図15Bに示される膜は、240秒間のランプアップ時間でアニールされた。膜はいずれも、5分間にわたり700℃に保持された。図15Aと15Bとの比較からわかるように、より長いランプアップ時間よりも短いアニールランプアップ時間のほうが良好な粒状性が得られることは明らかである。
【0093】
図17は、本発明の実施形態に係るLiCoO2膜を利用して形成された電池構造体の電池充放電プロファイルを示している。図17にプロファイルの示された電池中のLiCoO2膜は、表I中の実施例54に従って堆積された。LiCoO2膜は、金電流コレクターを有するアルミナ基板上に堆積された。LiCoO2膜は、以上に記載したような高速ランプ(45秒間)のRTAプロセスを利用してアニールされた。次に、改造AKT反応器内でバイアスを用いずに標準的RF堆積プロセスにより1.5μmのLiPON層が堆積された。次に、リチウムアノードおよびニッケル電流コレクターが堆積された。0.33mA、1.65mA、3.3mA、16.5mA、33mA、および66mAで、データを取得した。観測からわかるように、電池は、2.0V超の電圧で例外的な25mA/cm2を貯蔵しうる。
【0094】
当業者であれば、本開示に特定的に論じられている実施例の変更形態および修正形態はわかるであろう。これらの変更形態および修正形態は、本開示の範囲および精神に包含されるものとする。したがって、範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【表1】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】図1Aおよび1Bは、本発明に係る堆積方法で利用しうるパルスDCバイアス反応性堆積装置を示している。
【図2】図2は、図1Aおよび1Bに示される反応器で利用しうるターゲットの例を示している。
【図3】図3は、本発明のいくつかの実施形態に係る薄膜電池デザインを示している。
【図4】図4Aおよび4Bは、本発明の実施形態に従って堆積されたLiCoO2膜のX線回折分析結果およびSEM写真を示している。
【図5−1】図5A〜5Bは、本発明のいくつかの実施形態に係るLiCoO2膜のSEM写真を示している。
【図5−2】図5C〜5Dは、本発明のいくつかの実施形態に係るLiCoO2膜のSEM写真を示している。
【図5−3】図5E〜5Fは、本発明のいくつかの実施形態に係るLiCoO2膜のSEM写真を示している。
【図5−4】図5Gは、図5B〜5Fに示される堆積に対応するX線回折データを示している。
【図6】図6Aは、本発明のいくつかの実施形態に従って薄肉基板上に堆積されたLiCoO2の層を示している。図6Bは、本発明のいくつかの実施形態に従って薄肉基板上の導電層の上に堆積されたLiCoO2の層を示している。
【図7A】図7Aは、本発明のいくつかの実施形態に従って堆積されるLiCoO2層の堆積で利用しうる薄肉基板のマウントおよびマスクの構成を示している。
【図7B】図7Bは、本発明のいくつかの実施形態に従って堆積されるLiCoO2層の堆積で利用しうる薄肉基板のマウントおよびマスクの構成を示している。
【図7C】図7Cは、本発明のいくつかの実施形態に従って堆積されるLiCoO2層の堆積で利用しうる薄肉基板のマウントおよびマスクの構成を示している。
【図7D】図7Dは、本発明のいくつかの実施形態に従って堆積されるLiCoO2層の堆積で利用しうる薄肉基板のマウントおよびマスクの構成を示している。
【図8】図8は、本発明のいくつかの実施形態に従って堆積されたLiCoO2層を有する電池を形成するために利用しうるクラスターツールを示している。
【図9】図9Aおよび9Bは、本発明のいくつかの実施形態に従って堆積されたLiCoO2層を有するスタック型電池構造体の例を示している。
【図10】図10A〜10Dは、シリコンウェーハ上のイリジウム層の上に堆積されたLiCoO2の堆積工程およびアニール工程を示している。
【図11】図11A〜11Dは、本発明のいくつかの実施形態に従ってイリジウム層の上に形成された単層電池を示している。
【図12−1】図12Aは、シリコン基板上またはアルミナ基板上への結晶性LiCoO2層の堆積を示している。
【図12−2】図12Bは、シリコン基板上またはアルミナ基板上への結晶性LiCoO2層の堆積を示している。
【図12−3】図12C〜12Fは、シリコン基板上またはアルミナ基板上への結晶性LiCoO2層の堆積を示している。
【図12−4】図12G〜12Jは、シリコン基板上またはアルミナ基板上への結晶性LiCoO2層の堆積を示している。
【図12−5】図12K〜12Lは、シリコン基板上またはアルミナ基板上への結晶性LiCoO2層の堆積を示している。
【図13−1】図13Aは、本発明に従って堆積されたLiCoO2層の急速熱アニールプロセスを示している。
【図13−2】図13Bは、本発明に従って堆積されたLiCoO2層の急速熱アニールプロセスを示している。
【図13−3】図13C〜13Fは、本発明に従って堆積されたLiCoO2層の急速熱アニールプロセスを示している。
【図14】図14A〜14Dは、本発明の実施形態に従って堆積されたLiCoO2膜で利用されるいくつかのアニールプロセスを示している。
【図15】図15Aおよび15Bは、本発明に従って堆積されたLiCoO2膜の急速熱アニールにおけるランプ時間の影響を示している。
【図16】図16は、本発明のいくつかの実施形態に従って堆積されたLiCoO2膜の厚さ均一性を示している。
【図17】図17は、本発明のいくつかの実施形態に係るLiCoO2膜を利用して形成された電池の電池充放電プロファイルを示している。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、Hongmei ZhangおよびRichard E.Demarayにより2005年2月8日に出願された仮出願第60/651,363号ならびに同発明者らにより2004年12月8日に出願された仮出願第60/634,818号(それぞれ、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする)に基づく優先権を主張する。
【0002】
背景
1. 発明の分野
本発明は、薄膜固体電池に関し、特定的には、電池を製造するためにLiCoO2の膜および層を堆積することに関する。
【背景技術】
【0003】
2. 関連技術に関する考察
固体薄膜電池は、典型的には、膜が協同して電圧を発生するように基材上に薄膜をスタッキングすることにより形成される。薄膜としては、典型的には、電流コレクター、カソード、アノード、および電解質が挙げられる。薄膜は、スパッタリングや電気メッキをはじめとするいくつかの堆積プロセスを利用して堆積可能である。本出願に好適な基板は、慣例的には、LiCoO2膜を結晶化させるために空気中で最大約2時間にわたり少なくとも700℃までの少なくとも1つの高温アニールプロセスに耐えることのできる高温材料である。そのような基板は、適切な構造特性および材料特性を有する任意の好適な材料、たとえば、半導体ウェーハ、金属シート(たとえばチタンもしくはジルコニウムのシート)、セラミックス(たとえばアルミナ)、またはLiCoO2の存在下における後続の高温処理に耐えることのできる他の材料でありうる。これらの材料は、これらの温度サイクル時、電池に利用されるほとんどの材料との有意な界面反応を起こす可能性がある。
【0004】
LiCoO2以外の他のリチウム含有混合金属酸化物(Ni、Nb、Mn、Vの酸化物、ときにはCoの酸化物をも含むものであるが、他の遷移金属の酸化物を含むものもある)が、結晶性エネルギー貯蔵カソード材料として評価されてきた。典型的には、カソード材料をアモルファス形で堆積し、次に、アニールプロセスで材料を加熱し、結晶性材料を形成する。たとえば、LiCoO2の場合、700℃以上でアニールすることにより、堆積されたアモルファス膜を結晶形に変換する。しかしながら、そのような高温アニールを用いると、基板として利用可能な材料が著しく限定され、リチウム含有カソード材料との破壊的反応が起こり、多くの場合、金のような高価な貴金属の使用が必要とされる。そのような高熱収支プロセス(すなわち、長時間にわたる高温)は、半導体デバイスやMEMデバイスの加工との適合性がなく、基板材料の選択を制限し、コストを増大させ、さらにはそのような電池の歩留りを減少させる。本発明者らは、堆積後のアニールプロセスが、ステンレス鋼箔、アルミニウム箔、または銅箔のような低温材料上への機能的構造体の作製を可能にする十分に低い熱収支を有する、電池構造体用のカソードリチウム膜の作製を可能にする当技術分野で開示されたプロセスを知らない。
【0005】
貴金属上のアモルファスLiCoO2の結晶化を達成しうることは公知である。この結晶化の例は、Kimらの文献に論述されている。そこでは、貴金属上のLiCoO2のアモルファス層に20分間にわたり700℃で従来のファーネスアニール処理を施すことにより、X線回折データにより示されるLiCoO2材料の結晶化が達成される。Kim, Han-Ki and Yoon, Young Soo, ”Characteristics of rapid-thermal-annealed LiCoO2, cathode film for an all-solid-state thin film microbattery,” J. Vac. Sci. Techn. A 22(4), Jul/Aug 2004。Kimらの文献では、LiCoO2膜は、高温MgO/Si基板上に堆積された白金膜上に堆積された。Kimらの文献では、そのような結晶性膜は、機能的全固体Li+イオン電池のLi+イオン含有カソード層を構成しうることが明らかにされた。しかしながら、高価な貴金属の核生成層、バリヤー層、高価な高温基板のいずれを必要とすることなくそのような電池の製造が可能になるように、時間および温度のいずれに関しても堆積後のアニールの熱収支をさらに減少させるべく固体Li+イオン電池の製造に継続的な関心が寄せられている。
【0006】
小角X線回折(XRD)によりなんらかの観測可能な結晶性組成物であることが実証されるLiCoO2膜を提供しうるイオンビーム支援プロセスが開示されている多くの参考文献が存在する。これらのうちのいくつかの例は、米国特許出願第09/815,983号(公開番号US 2002/001747)、同第09/815,621号(公開番号US 2001/0032666)、および同第09/815,919号(公開番号US 2002/0001746)に見いだされる。これらの参考文献には、基板表面にイオンの流束とLiCoO2蒸気の流束とのオーバーラップ領域が得られるように堆積源と並置して第2の前面イオンビーム源または他のイオン源を使用することが開示されている。これらの参考文献のいずれにも、低温加工であるという主張を裏付ける堆積時の膜温度データや膜の他の温度データは開示されていない。
【0007】
材料層をスパッタリングするかまたはイオン流束の衝撃を加えるかのいずれかにより均一な堆積を行うことは非常に困難である。基板に対して同一の位置および範囲を占有しない2つの供給源からの2つの均一な同時分配を利用すると、均一な材料堆積の達成に伴う問題が極端に大きくなる。これらの参考文献には、薄膜電池を確実に製造するのに必要とされる均一な材料堆積については開示されていない。有用な電池製品に適合する材料均一性に関する十分な理解の得られた仕様は、5%1σの材料均一性が薄膜製造における標準であるということである。この均一性を有する膜の約86%は、電池製造に適合しうるものであろう。
【0008】
200mmや300mmのような製造スケールで基板を作製することは一段と難しい。実際には、スパッタリング堆積およびイオンビーム堆積の両者が利用される以上に述べた参考文献には、小面積ターゲットおよび小面積基板のみが開示されている。これらの参考文献には、単に実現可能性に関する結果が開示されているにすぎない。2つの独立した前面供給源からの均一分配を達成する方法は、これらの参考文献には開示されていない。
【0009】
さらに、従来の材料および製造プロセスでは、作製される電池のエネルギー密度性能が制限されて、より多くの容積を占有するより多くの電池が必要になる可能性がある。低重量かつ低容積の電池を提供するために単位体積あたり多量の貯蔵エネルギーを有する電池を製造することがとくに望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、基板上に結晶性材料(たとえばLiCoO2材料)を堆積する低温プロセスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
概要
本発明によれば、パルスdc物理気相堆積プロセスによるLiCoO2層の堆積が提供される。そのような堆積により、所望の<101>配向を有するLiCoO2の結晶性層の低温高堆積速度堆積を提供することが可能である。堆積のいくつかの実施形態は、固体再充電可能Li電池のカソード層として利用しうるLiCoO2膜の高速度堆積の必要性に対処するものである。本発明に係るプロセスの実施形態によれば、LiCoO2層を結晶化させるために慣例的に必要とされる高温(>700℃)アニール工程を省略することが可能である。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態に係るLiCoO2層の堆積方法は、反応器内に基板を配置することと、アルゴンおよび酸素を含むガス状混合物を反応器内に通して流動させることと、基板に対向するように位置決めされたLiCoO2で形成されたターゲットにパルスDC電力を印加することと、を含む。いくつかの実施形態では、LiCoO2層は、基板上に形成される。さらに、いくつかの実施形態では、LiCoO2層は、<101>配向の結晶性層である。
【0013】
いくつかの実施形態では、スタック型電池構造体を形成することが可能である。スタック型電池構造体は、薄肉基板上に堆積された1つ以上の電池スタックを含み、それぞれの電池スタックは、導電層と、導電層の上に堆積された結晶性LiCoO2層と、LiCoO2層の上に堆積されたLiPON層と、LiPON層の上に堆積されたアノードと、を含む。最上導電層は、1つ以上の電池スタックの上に堆積可能である。
【0014】
いくつかの実施形態では、電池構造体をクラスターツールにより形成することが可能である。クラスターツールによる電池の製造方法は、クラスターツール中に基板を装填することと、クラスターツールの第1のチャンバー内で基板の上に導電層を堆積することと、クラスターツールの第2のチャンバー内で導電層の上に結晶性LiCoO2層を堆積することと、クラスターツールの第3のチャンバー内でLiCoO2層の上にLiPON層を堆積することと、第4のチャンバー内でLiCoO2層の上にアノード層を堆積することと、クラスターツールの第5のチャンバー内でLiPON層の上に第2の導電層を堆積することと、を含む。
【0015】
薄肉基板を保持するための固定具は、上部および底部を含みうる。ただし、上部を底部に結合させたときに、薄肉基板が保持される。
【0016】
以下の図を参照して本発明のこれらのおよび他の実施形態について以下でさらに論述する。当然のことながら、以上の一般的な説明および以下の詳細な説明はいずれも、例示的かつ解説的なものにすぎず、特許請求された本発明を限定するものではない。さらに、堆積プロセス時の特定の層の堆積もしくは性能に関するまたはそれらの層が組み込まれたデバイスの性能についての特定の説明または理論は、単に説明のために提供されたものにすぎず、本開示の範囲または特許請求の範囲に対する限定とみなすべきものではない。
【0017】
図中、同一の記号を有する要素は、同一もしくは類似の機能を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
詳細な説明
本発明の実施形態によれば、LiCoO2膜は、パルスdc物理気相堆積(PVD)プロセスにより基板上に堆積される。Kimらの文献などとは対照的に、本発明のいくつかの実施形態に係るLiCoO2膜は、金属核生成下側膜やバリヤー下側膜を用いることなく堆積時約220℃程度の低い基板温度で基板上に堆積された結晶性LiCoO2膜を提供する。堆積されたままの状態の結晶性LiCoO2膜は、下側貴金属膜を用いることなく5分間程度の短い時間で約700℃でアニールすることにより非常に高い結晶性の状態に容易に熟成することが可能である。そのほか、貴金属膜上に位置決めした場合、堆積されたままの状態の結晶性膜は、さらに大きく低減された温度、たとえば、400〜500℃程度の低い温度でアニールして、より低温の基板上で固体電池の堆積、アニール、および作製を提供することが可能である。
【0019】
本出願には、製造用として400mm×500mmの大きさに作製された単一拡張供給源が記載されており、これにより、二次的な前面イオン源やイオン支援を必要とすることなく、2000cm2の領域にわたり毎時1.2ミクロンの厚さの堆積速度で25点で測定したときに3%1σのLiCoO2均一性が達成される。
【0020】
プロセスの一例として、本明細書に記載の導電性セラミックLiCoO2ターゲットを利用し、無バイアスで4kWのパルスdc電力を印加し、60sccmのArと20sccmのO2とよりなるガス流を用いることにより、LiCoO2膜を堆積した。結晶性LiCoO2よりなる3000オングストロームの層が400×500mmの基板領域上に堆積された。図16に示されるように、基板を横切って均一に離間した約25箇所においてフェルトマーカーペンを用いて各箇所で膜の一部を持ち上げて膜厚均一性を確認した。高精度白色光干渉法を利用して基板から膜表面までのステップ高を測定することにより各箇所の膜厚を測定した。全部で25回の厚さ測定を行ったところ、400×500mmの基板領域にわたり3%1σの膜厚均一性であることが実証された。図16に示されるように、膜は、3.09μmの最大値かつ2.70μmの最小値かつ0.093の標準偏差を有して約2.96μmの平均厚さで堆積された。膜表面上の0.65mm離間した箇所で厚さデータを取得した。したがって、膜厚は、示された表面領域にわたり3%1σの均一性を示した。
【0021】
このプロセスを利用する他の堆積に関して、堆積時の基板の温度測定により、基板は224℃未満に保持されることが示された。Omega Engineering, Stamford, Ctから購入した温度ステッカー(199〜224℃で機能するModel no. TL−F−390)を利用して温度測定を行った。
【0022】
さらに、いくつかの実施形態では、本発明に従って堆積される膜は、従来の膜のプロセスの約10倍〜約30倍の堆積速度を有しうる。本発明に従って堆積された膜の堆積厚さおよび堆積時間を表Iに示す。さらに、本発明に係る膜は、これまでのスパッタリングプロセスの表面積の10〜50倍の表面積を有する大面積基板上に堆積可能であり、その結果、生産性がかなり高くなり、製造コストがかなり削減されるので、高容量低コスト電池が提供される。
【0023】
さらに、イオン源を用いない従来の堆積プロセスでは、アモルファスLiCoO2層を堆積することはできるが、結晶性LiCoO2層を堆積しない。驚くべきことに、本発明のある実施形態に係る堆積によれば、X線回折法により容易に測定される実質的結晶性のLiCoO2層が堆積される。いくつかの実施形態では、堆積されたままの状態のLiCoO2層の結晶性は、さらなる熱処理を施すことなく電池構造体で利用するのに十分なものである。いくつかの実施形態では、堆積されたままの状態のLiCoO2層の結晶性は、低温基板上に堆積された膜に適合しうる低い熱収支の熱プロセスにより改良される。
【0024】
さらに、本発明のいくつかの実施形態に従って堆積されたいくつかのLiCoO2層の堆積されたままの状態での化学量論性により、この層は電池で利用するのに十分なものであることが示される。結晶性および十分な化学量論性を備えたLiCoO2膜を堆積できることが実証されたことから、堆積されたままの状態のLiCoO2膜を利用した電池を製造することが可能である。LiCoO2層を熱処理することにより、結晶性を改良しかつインピーダンスを低下させることが可能である。
【0025】
いくつかの実施形態では、<101>結晶配向または<003>結晶配向を有するLiCoO2の結晶性層が、基板上に直接堆積される。結晶性材料を堆積することにより、膜を結晶化および配向させるための後続の高温アニールまたは貴金属層の必要性を排除または低減することが可能である。高温アニールを排除すれば、ステンレス鋼箔、銅箔、アルミニウム箔、およびプラスチックシートのような軽量かつ低温の基板上に電池構造体を形成することが可能であるので、Li系電池のエネルギー密度貯蔵容量を保持しつつ電池の重量およびコストの両方が低減される。いくつかの実施形態では、白金やイリジウムのような貴金属層上に結晶性LiCoO2層を堆積することが可能であるので、結果として、結晶性を改良するのに必要とされる熟成熱収支がさらに有意に低減される。
【0026】
パルスDCバイアス反応性イオン堆積による材料の堆積については、2002年3月16日に出願されHongmei Zhangらに付与された「酸化物膜のバイアスパルスDC反応性スパッタリング」という名称の米国特許出願第10/101863号に記載されている。ターゲットの作製については、2002年3月16日に出願されVassiliki Milonopoulouらに付与された「誘電体平面用途向けの希土類予備合金化PVDターゲット」という名称の米国特許出願第10/101,341号に記載されている。米国特許出願第10/101863号および米国特許出願第10/101,341号は、それぞれ、本開示と同一の譲受人に譲渡されたものであり、それぞれ、それらの全体が本明細書に組み入れられるものとする。また、酸化物材料の堆積については、米国特許第6,506,289号(その全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されている。透明酸化物膜は、米国特許第6,506,289号および米国特許出願第10/101863号に具体的に記載のものに類似したプロセスを利用して堆積可能である。
【0027】
図1Aは、本発明に従ってターゲット12から材料をスパッタリングするための反応器装置10の概略図を示している。いくつかの実施形態では、装置10は、たとえば、Applied Komatsu製のAKT−1600 PVD(400×500mmの基板サイズ)システムまたはApplied Komatsu, Santa Clara, CA製のAKT−4300(600×720mmの基板サイズ)システムに変更を加えたものでありうる。AKT−1600反応器は、たとえば、真空搬送チャンバーにより接続された3つの堆積チャンバーを有する。これらのAKT反応器は、パルスDC電力がターゲットに供給されかつRF電力が材料膜の堆積時に基板に供給されるように改造可能である。装置10はまた、本明細書に記載されるようなパルスdcプロセス用としてとくに設計されたSymmorphix製のPhoenix Gen III PVDクラスターツールでありうる。
【0028】
装置10は、フィルター15を介してパルスDC電源14に電気結合されたターゲット12を含む。いくつかの実施形態では、ターゲット12は、基板16上に堆積される材料を提供する大面積スパッター源ターゲットである。基板16は、ターゲット12に平行になるようにかつ対向するように位置決めされる。ターゲット12は、それにパルスDC電源14から電力が印加されたときにカソードとして機能するので、等価的にカソードと称される。ターゲット12に電力を印加すると、プラズマ53が生成する。基板16は、絶縁体54を介して電極17に容量結合される。電極17は、RF電源18に結合可能である。磁石20は、ターゲット12の上端を横切って走査される。
【0029】
装置10により行われるようなパルス反応性dcマグネトロンスパッタリングの場合、電源14によりターゲット12に供給される電力の極性は、負電位と正電位との間で振動する。正の時間中、ターゲット12の表面上の絶縁層は放電され、アーキングは防止される。アークフリー堆積を達成するために、パルシング周波数は、ターゲット材料、カソード電流、および反転時間に依存しうる臨界周波数を超える。装置10に示されるような反応性パルスDCマグネトロンスパッタリングを用いて、高品質の酸化物膜を作製することが可能である。
【0030】
パルスDC電源14は、任意のパルスDC電源、たとえば、Advanced Energy, Inc.製のAE Pinnacle plus 10Kでありうる。このDC電源を用いた場合、0〜350kHzの周波数で10kWまでのパルスDC電力を供給することが可能である。逆電圧は、負ターゲット電圧の10%でありうる。他の電源を利用することにより、異なる電力特性、周波数特性、および逆電圧パーセントを得ることが可能である。電源14のこの実施形態での反転時間は、0〜5μsに調整可能である。
【0031】
フィルター15は、電源18からのバイアス電力がパルスDC電源14に結合するのを防止する。いくつかの実施形態では、電源18は、2MHz RF電源、たとえば、ENI, Colorado Springs, Co.製のNova−25電源でありうる。
【0032】
いくつかの実施形態では、フィルター15は、2MHz正弦波帯域消去フィルターでありうる。いくつかの実施形態では、フィルターの帯域幅は、約100kHzでありうる。したがって、フィルター15は、バイアスから基板16に印加された2MHz電力が電源14に損傷を与えるのを防止し、かつパルスdc電力およびパルスdc周波数を透過させる。
【0033】
パルスDC堆積フィルムは、十分に稠密ではなく、柱状構造を有しうる。柱状構造は、柱状物間に境界域が存在するので、高密度が重要であるバリヤー膜や誘電体膜のような薄膜用途には有害である可能性がある。柱状物は、材料の絶縁耐力を低下させるように作用するが、電流、イオン電流、気体、または他の化学剤たとえば水の輸送または拡散のための拡散経路を提供しうる。固体電池の場合、材料の境界域を介してより良好なLi輸送が可能になるので、本発明に係るプロセスから誘導されるような結晶性を含有する柱状構造は、電池性能には有利である。
【0034】
たとえば、Phoenixシステムの場合、ターゲット12は、約600×720mmの寸法を有する基板16上に膜を堆積するために約800.00×920.00mm×4〜8mmの有効サイズを有しうる。基板16の温度は、−50℃〜500℃に調整可能である。ターゲット12と基板16との間の距離は、約3〜約9cmでありうる(いくつかの実施形態では、4.8〜6cmが使用される)。プロセスガスは、約200sccmまでの速度で装置10のチャンバー内に挿入可能であり、一方、装置10のチャンバー内の圧力は、約0.7〜6ミリトルに保持可能である。磁石20は、ターゲット12の平面内に方向付けられた約400〜約600ガウスの強度の磁界を提供し、約20〜30秒/スキャン未満の速度でターゲット12を横切って移動する。Phoenix反応器を利用するいくつかの実施形態では、磁石20は、約150mm×800mmの寸法を有するレーストラック形磁石でありうる。
【0035】
図2は、ターゲット12の例を示している。ターゲット12の領域52に完全に対向するキャリヤーシート17上に位置決めされた基板上に堆積された膜は、良好な厚さ均一性を有する。領域52は、均一なプラズマ条件に暴露される図1Bに示される領域である。いくつかの実装形態では、キャリヤー17は、領域52と共延的でありうる。図2に示される領域24は、物理的にも化学的にも均一な堆積を達成しうる上限領域、たとえば、物理的かつ化学的な均一性により、屈折率均一性、酸化物膜均一性、または金属膜均一性が提供される上限領域を示している。図2は、厚さ均一性を提供するターゲット12の領域52を示しており、この領域は、一般的には、堆積膜に厚さ均一性および化学的均一性を提供するターゲット12の領域24よりも大きい。しかしながら、最適化プロセスでは、領域52および24は、共延的でありうる。
【0036】
いくつかの実施形態では、磁石20は、一方向に、たとえば、図2中のY方向に、領域52を越えて延在し、その結果、スキャニングは、時間平均均一磁界を提供するために、一方向にのみ、たとえば、X方向にのみ必要とされる。図1Aおよび1Bに示されるように、磁石20は、均一スパッター侵食の領域52よりも大きいターゲット12の全範囲にわたり走査可能である。磁石20は、ターゲット12の平面に平行な平面内で移動する。
【0037】
均一なターゲット12と基板16の領域よりも大きいターゲット領域52とを組み合わせることにより、きわめて均一な厚さの膜を提供することが可能である。さらに、堆積された膜の材料特性は、きわめて均一でありうる。ターゲット表面におけるスパッタリング条件、たとえば、侵食の均一性、ターゲット表面におけるプラズマの平均温度、およびターゲット表面とプロセスの気相雰囲気との平衡は、均一な膜厚でコーティングされる領域よりも大きいかまたはその領域に等しい領域にわたり均一である。そのほか、均一な膜厚の領域は、きわめて均一な電気特性、機械特性、または光学特性、たとえば、屈折率、化学量論性、密度、透過率、または吸収率を有する膜の領域よりも大きいかまたはその領域に等しい。
【0038】
ターゲット12は、LiCoO2堆積に対して適正な化学量論性を提供する任意の材料で形成可能である。典型的なセラミックターゲット材料は、LiおよびCoの酸化物、さらには金属Liおよび金属Coの添加物、ならびにドーパント、たとえば、Ni、Si、Nb、または他の好適な金属酸化物の添加物を含む。本開示では、ターゲット12は、LiCoO2膜を堆積すべくLiCoO2から形成可能である。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態では、材料タイルが形成される。これらのタイルは、装置10用のターゲットを形成すべくバッキングプレート上に取り付け可能である。大面積スパッターカソードターゲットは、より小さいタイルの密充填アレイから形成可能である。したがって、ターゲット12は、任意の数のタイル、たとえば、2〜60個の個別タイルを含みうる。タイルは、タイル30の隣接間で起こりうるプラズマ過程を排除するために約0.010インチ〜約0.020インチ未満または0.5ミリメートル未満のタイル間エッジワイズ非接触マージンを提供するようなサイズに仕上げ処理可能である。ターゲット12のタイルと暗部アノードまたは図1B中のグラウンドシールド19との間の距離は、非接触アセンブリーを提供するようにまたはプロセスチャンバーのコンディショニング時もしくは運転時の熱膨張許容範囲を提供するようにいくらか大きくとりうる。
【0040】
図1Bに示されるように、均一プラズマ条件は、基板16上に位置する領域内のターゲット12と基板16との間の領域で生成可能である。プラズマ53は、全ターゲット12の下に延在する領域51で生成可能である。ターゲット12の中央領域52は、均一スパッター侵食の条件に遭遇可能である。したがって、本明細書中でさらに考察されるように、中央領域52の下の任意の位置に配置された基板上に堆積された層は、厚さおよび他の特性(すなわち、誘電指数、光学指数、または材料濃度)が均一でありうる。いくつかの実施形態では、ターゲット12は、基板16上に堆積された膜の均一性を提供するために実質的に平面状である。実用上、ターゲット12の平面性は、領域52内のターゲット表面のすべての部分が平面状表面から数ミリメートル以内、典型的には平面状表面から0.5mm以内にあることを意味しうる。
【0041】
図3は、本発明のいくつかの実施形態に従って堆積されたLiCoO2層を有する電池構造体を示している。図3に示されるように、金属集電層302が基板301上に堆積される。いくつかの実施形態では、集電層302は、LiCoO2層303の堆積前に種々の方法でパターニング可能である。また、いくつかの実施形態によれば、LiCoO2層303は、堆積された結晶性層でありうる。本発明のいくつかの実施形態では、層303は、結晶化熱処理を必要とすることなく結晶性である。したがって、基板301は、シリコンウェーハ、チタン金属、アルミナ、または他の従来の高温基板でありうるが、低温材料、たとえば、プラスチック、ガラス、または高温結晶化熱処理で損傷を受ける可能性のある他の材料であってもよい。この特徴は、本発明により形成された電池構造体の費用および重量を低減させるという大きい利点を有しうる。LiCoO2を低温堆積することにより、電池層をそれぞれ積重して逐次堆積することが可能になる。そのようなプロセスは、電池構造体の逐次層が基板層を組み込むことなくスタック条件で得られるという利点を有するであろう。スタック型層状電池は、充放電に対してより高い比エネルギー密度さらには低インピーダンス動作を提供するであろう。
【0042】
いくつかの実施形態では、酸化物層を基板301上に堆積することが可能である。たとえば、酸化シリコン層をシリコンウェーハ上に堆積することが可能である。導電層302と基板301との間に他の層を形成することが可能である。
【0043】
図3にさらに示されるように、LiPON層304(LixPOyNz、)がLiCoO2層303上に堆積される。LiPON層304は、電池300用の電解質であり、一方、LiCoO2層303は、カソードとして作用する。電池を完成させるために、LiPON層304の上に金属導電層305を堆積することが可能である。金属導電層305は、LiPON層304に隣接してリチウムを含みうる。
【0044】
アノード305は、LiPON層304の上に堆積される。アノード305は、たとえば、蒸発されたリチウム金属でありうる。他の材料、たとえば、ニッケルなどを利用することも可能である。次に、導電性材料である電流コレクター306がアノード305の少なくとも一部分の上に堆積される。
【0045】
Li系薄膜電池は、電流コレクター306と電流コレクター302との間の電圧を定電圧に保持するように電流コレクター306から電流コレクター302の方向にLiイオンを輸送することにより動作する。その際、定常電流を供給する電池構造体300の能力は、LiPON層304およびLiCoO2層303を通って拡散するLiイオンの能力に依存する。薄膜電池内のバルクカソードLiCoO2層303を通るLi輸送は、粒子または粒界を経由して起こる。本開示においてなんら特定の輸送理論に限定されるものではないが、基板302に平行な平面を有する粒子はLiイオンの流動を妨害し、一方、基板301に垂直な平面を有するように配向した(すなわち、Liイオン流動の方向に平行になるように配向した)粒子はLiの拡散を促進すると考えられる。したがって、高電流電池構造体を提供するために、LiCoO2層303は、<101>方向または<003>方向に配向した結晶を含むことが望ましい。
【0046】
本発明によれば、LiCoO2膜は、以上に記載したようにパルスDCバイアスPVDシステムを用いて基板302上に堆積可能である。そのほか、Phoenixシステムで利用可能なRFバイアスを提供すべくAKT 1600 PVDシステムを改造することが可能であり、ターゲットに電力を提供すべくAdvanced Energy Pinnacle plus 10KパルスDC電源を利用することが可能である。電源のパルシング周波数は、約0〜約350kHzのさまざまな値が可能である。電源の電力出力は、0〜約10kWである。約3〜約10kΩの範囲内の抵抗率を有する稠密化LiCoO2タイルのターゲットをdcスパッタリングで利用することが可能である。
【0047】
いくつかの実施形態では、LiCoO2膜は、Siウェーハ上に堆積される。酸素およびアルゴンを含有するガス流を利用することが可能である。いくつかの実施形態では、酸素対アルゴン比は、約80sccmの全ガス流を用いて0〜約50%の範囲内である。パルシング周波数は、堆積時、約200kHz〜約300kHzの範囲内である。RFバイアスを基板に印加することも可能である。多くの試験において、堆積速度は、O2/Ar比さらには基板バイアスに依存して、約2オングストローム/(kW sec)〜約1オングストローム/(kW sec)のさまざまな値をとる。
【0048】
表Iは、本発明に係るLiCoO2のいくつかの堆積例を示している。得られた薄膜で取得したXRD(X線回折)の結果から、本発明に従って堆積された膜が多くの場合約150nm程度の大きい高テクスチャー化粒子サイズを有する結晶性膜であることが例証される。優位な結晶配向は、O2/Ar比の影響を受けやすいことが判明している。特定のO2/Ar比(約10%)では、堆積されたままの状態の膜は、<101>方向にまたは不十分に<003>平面を生じて<003>方向に優先配向を呈する。
【0049】
図4Aおよび4Bは、それぞれ、表I中の実施例15として堆積されたLiCoO2膜のXRD分析結果およびSEM断面図を示している。そのようなLiCoO2膜は、約30℃の初期温度を有する基板に対して60sccmのArおよび20sccmのO2を用いて、2kWのターゲット電力、300kHzの周波数でSiウェーハ上に堆積された。図4AのXRD分析結果に示されるように、強い<101>ピークの存在が示されることから、所望の<101>結晶学的方向にLiCoO2結晶が強く配向していることは明らかである。さらに、図4Bに示されるSEM断面図は、<101>方向を有する膜の柱状構造および得られたLiCoO2結晶の粒界を示している。
【0050】
図5A〜5Fは、本発明に係るLiCoO2結晶のさらなる堆積例のSEM断面図を示している。各実施例において、約2kWのターゲット電力および約250kHzの周波数を用いてSiウェーハ上にLiCoO2膜の堆積を行った。図5Aに示されるLiCoO2膜は、表I中の堆積例の実施例1に対応する。図5Aに示されるLiCoO2膜の堆積では、約80sccmのアルゴン流量および約0sccmの酸素流量で無バイアス電力を利用した。400×500mmの全基板領域にわたり約1.45μm/hrの堆積速度が達成された。さらに、図5Aに示される断面図からわかるように、LiCoO2の<101>配向が達成された。
【0051】
図5Aに示されるLiCoO2層の堆積速度は、おそらくセラミックLiCoO2酸化物スパッターターゲットの比較的高い導電率または低い抵抗率が原因で、非常に速い。ターゲット12の表面上の約4cmの距離にわたりオーム計により10kΩのターゲット抵抗が測定された。この速い速度のおかげで、電池に必要とされる3ミクロン以上の厚さのLiCoO2層が短時間に広領域にわたり高速度で製造可能になり、結果として、生産性が非常に高くなりコストが非常に低くなる。同一測定法により同一距離にわたり約500kΩ程度またはそれ以上のターゲット抵抗では、そのような低いターゲット電力でそのような高いスパッター効率や速い堆積速度を達成することはできないであろう。従来のターゲット材料の抵抗は、測定できないほど高い可能性がある。表面の約4cmにわたり100kΩの抵抗であれば、高いスパッター効率および速い堆積速度が得られるであろう。さらに、堆積速度は、典型的には、ターゲット電力と共にほぼ直線的に変化するので、6kWで堆積すれば、約3μm/hrの堆積速度になるであろう。これは、400×500mm2の表面領域上にLi系薄膜固体電池を作製できるようにするのに非常に望ましい堆積速度である。
【0052】
図5Bに示されるLiCoO2層は、表I中に実施例7として列挙された条件で堆積される。この場合も、堆積時、無バイアスを利用した。約72sccmのアルゴン流量および約8sccmの酸素流量を利用した。堆積速度は、有意に約0.85μm/hrまで低減された。さらに、<101>結晶性は識別可能ではあったが、その<101>結晶性は、図5Aに示される膜の堆積で示されたものほど顕著ではない。
【0053】
図5Cに示されるLiCoO2膜は、表I中の実施例3に従って堆積された。この堆積時、100Wのバイアス電力を基板に印加する。さらに、72sccmのアルゴン流量および8sccmの酸素流量を利用した。堆積速度は、約0.67μm/hrであった。したがって、バイアスを印加すると、図5Bに示されるLiCoO2膜と比較して、堆積速度はさらに低減された(図5Cに示される実施例では0.67μm/hrであるのに対して図5Bに示される実施例では0.85μm/hrであることから)。さらに、形成される結晶の所望の<101>方向性は、さらに損なわれることが判明している。
【0054】
図5Dに示されるLiCoO2膜は、表I中の実施例4に対応する。この堆積時、Ar/O2比を増大させた。図5Dに示されるように、Ar/O2比を増大させると結晶性が改良される。図5Cに示される実施例と対比して、約76sccmのアルゴン流および約4sccmの酸素流を用いて、さらには基板に対する100Wのバイアスを保持して、図5Dに示される堆積を行った。LiCoO2の堆積速度は、図5Cに示される0.67μm/hrの速度から0.79μm/hrに改良された。
【0055】
表I中の実施例5に対応する図5Eに示される堆積例の場合。基板温度を約200℃に設定し、一方、バイアス電力を約100Wに保持した。アルゴン流量を約76sccmに設定し、酸素流量を約4sccmに設定した。得られたLiCoO2層堆積速度は、約0.74μm/hrであった。
【0056】
表Iの実施例6に対応する図5Fに示される堆積例では、アルゴン流量を約74sccmに設定し、酸素流量を約6sccmに設定し、結果として約0.67μm/hrのLiCoO2堆積速度を得た。したがって、図5Eに示される堆積よりもアルゴンおよび酸素の両流量を増大させることにより、堆積速度が低減された。
【0057】
図5Gは、それぞれ、図5F、5D、5C、5E、および5Bに対応するXRDデータを示している。図5Gに示されるように、堆積されたままの状態の結晶性LiCoO2がこれらのプロセスで堆積される。
【0058】
表IIに示されるように、いくつかのプロセス条件下では堆積されたままの状態のLiCoO2結晶性膜を取得しうることがデータから明確に示される。とくに、本発明の実施形態に係るプロセス条件では、配向結晶性構造と共に、低電力で非常に速い堆積速度が得られる。
【0059】
図6Aは、本発明のいくつかの実施形態に係る薄肉基板601上に堆積されたLiCoO2層602を示している。電池スタックの厚さの何倍もの厚さまたは数十倍の厚さではなく電池スタック自体の厚さに匹敵する厚さを有する薄肉基板601上に堆積された結晶性LiCoO2カソード膜602を利用して、より高いリチウムイオン移動度を達成することが可能である。そのような膜を用いれば、より速い充放電速度を達成することが可能である。基板601は、薄肉金属シート(たとえば、アルミニウムシート、チタンシート、ステンレス鋼シート、もしくは他の好適な薄肉金属シート)で形成可能であるか、ポリマー材料もしくはプラスチック材料で形成可能であるか、またはセラミック材料もしくはガラス材料で形成可能である。図6Bに示されるように、基板601が絶縁材料である場合、基板601とLiCoO2層602との間に導電層603を堆積することが可能である。
【0060】
薄肉基板上に材料を堆積するには、堆積時に基板の保持および位置決めを行うことが必要である。図7A、7B、7C、および7Dは、薄膜基板を保持するための再使用可能な固定具700を示している。図7Aに示されるように、再使用可能な固定具700は、スナップ留めで一体化される上部701と底部702とを含む。薄肉基板601は、上部701と底部702との間に位置決めされる。図7Bに示されるように、上部701および底部702は、基板601が張力下に置かれ、続いて、上部701が底部702中に閉止されたときに圧締されるようになっている。基板601の取扱いおよび位置決めが可能になるように、固定具700により基板601を容易に保持することが可能である。いくつかの実施形態では、上部701を底部702中に閉止したときに「ラップアラウンド」隅角部圧締作用を回避することにより基板601がより容易に引っ張られるように、基板601の隅角部(領域703)は除去される。
【0061】
図7Cに示されるように、マスク712を固定具700に取り付けることが可能である。いくつかの実施形態では、固定具700は、マスク712に対して固定具700をアライメントするためにガイドを含む。いくつかの実施形態では、マスク712を固定具700に取り付けて、固定具700と共に移動させることが可能である。マスク712は、固定具700中の基板601よりも高い任意の所望の高さに位置決め可能である。したがって、マスク712は、接触マスクまたは近接マスクのいずれかとして機能しうる。いくつかの実施形態では、マスク712は、固定具700に類似した固定具中に装着された他の薄肉基板で形成される。
【0062】
図7Cおよび7Dに示されるように、固定具700およびマスク712は、マウント710に対して位置決め可能である。たとえば、マウント710は、図1Aおよび1Bに示されるような処理チャンバーのサセプター、マウント、または静電チャックでありうる。固定具700およびマスク712は、互いにかつマウント710に対して即座にアライメントできるという特徴を有しうる。いくつかの実施形態では、マスク712は、処理チャンバー内に常駐し、図7Dに示されるように、固定具700をマウント710上に位置決めする際に固定具700にアライメントされる。
【0063】
図7A、7B、7C、および7Dに示されるように固定具700を利用すれば、処理チャンバー内で薄膜基板を処理することが可能になる。いくつかの実施形態では、薄膜基板は、約10μm以上でありうる。さらに、薄膜基板601は、固定具700内に装着された後、取扱いおよびプロセスチャンバー間の移動が可能である。したがって、本発明の実施形態に従って堆積された1層以上のLiCoO2層を含む層のスタックを形成するために、マルチプロセッサーチャンバーシステムを利用することが可能である。
【0064】
図8は、薄膜基板を処理するためのクラスターツール800を示している。クラスターツール800は、たとえば、ロードロック802およびロードロック803を備えることが可能であり、これらを介して、装着された薄膜基板601が装填され、得られたデバイスがクラスターツール800から取り出される。チャンバー804、805、806、807−、および808は、材料の堆積、熱処理、エッチング、または他のプロセスのための処理チャンバーである。チャンバー804、805、806、807、および808のうちの1つ以上は、図1Aおよび1Bに関連して先に述べたようなパルスDC PVDチャンバーでありうる。また、そのチャンバー内では、本発明の実施形態に従って堆積されるLiCoO2膜を堆積することが可能である。
【0065】
処理チャンバー804、805、806、807、および808、ならびにロードロック802および803は、トランスファーチャンバー801により連結される。トランスファーチャンバー801は、処理チャンバー804、805、806、807、および808、ならびにロードロック802および803の間で個別ウェーハを往復させるために基板搬送ロボットを備える。
【0066】
従来の薄膜電池の製造では、セラミック基板は、ロードロック803内に装填される。薄肉金属層は、チャンバー804内で堆積可能であり、続いて、LiCoO2の堆積は、チャンバー805内で実施可能である。次に、基板は、ロードロック803を介して取り出され、クラスターツール800の外部で空気中熱処理に付される。次に、処理されたウェーハは、ロードロック802を介してクラスターツール800内に再装填される。LiPON層は、チャンバー806内で堆積可能である。次に、ウェーハは、再びクラスターツール800から取り出されてリチウムアノード層の堆積に付されるか、またはときにはチャンバー807をリチウムアノード層の堆積に適合させることが可能である。第2の金属層は、チャージコレクターおよびアノードコレクターを形成するためのチャンバー808内で堆積される。次に、完成電池構造体は、ロードロック802でクラスターツール800から搬出される。ウェーハは、トランスファーチャンバー801内のロボットによりチャンバー間を往復する。
【0067】
本発明に従って電池構造体を作製する場合、固定具700のような固定具中に装填された薄膜基板を利用することが可能である。次に、固定具700は、ロードロック803内に装填される。チャンバー804内では、常に、導電層の堆積が行われうる。次に、チャンバー805内で本発明の実施形態に係るLiCoO2層の堆積が行われる。次に、チャンバー806内でLiPON層を堆積することが可能である。チャンバー807は、常に、リチウム金属のようなリチウムリッチ材料の堆積に適合させることが可能であり、チャンバー808は、電流コレクターの導電層の堆積に利用可能である。このプロセスでは、LiCoO2層を結晶化させるために熱処理を利用することはない。
【0068】
薄膜電池プロセスの他の利点は、電池構造体をスタッキングできることである。言い換えれば、多重スタック型電池構造体を作製するために、クラスターツール800内に装填された基板をプロセスチャンバー804、805、806、807、および808の間で複数回行き来させることが可能である。図9Aおよび9Bは、そのような電池構造体を示している。
【0069】
図9Aは、並列結合スタッキングを示している。図9Aに示されるように、たとえばプラスチック基板でありうる基板601は、ロードロック803内に装填される。導電層603、たとえば、約2μmのアルミニウム層、銅層、イリジウム層、または他の材料層は、底部電流コレクターとして作用する。導電層603は、たとえば、チャンバー804内で堆積可能である。次に、LiCoO2層602が導電層603上に堆積される。LiCoO2層602は、約3〜10μmでありうる。また、本発明の実施形態に従ってチャンバー805内で堆積可能である。次に、ウェーハをチャンバー806に移動させることが可能であり、そこで、約0.5〜約2μmの厚さのLiPON層901を堆積することが可能である。次に、チャンバー807において、アノード層902、たとえば、約10μmまでのリチウム金属層をチャンバー807内で堆積することが可能である。次に、第2の導電層903をアノード層902の上に堆積することが可能である。次に、金属層603、LiCoO2層602、LiPON層901、リチウム層902、および集電導電層903により形成された第1の電池スタックの上に第2の電池スタックを堆積することが可能である。集電導電層903の上に他のリチウム層902が形成される。リチウム層902の上に他のLiPON層901が形成される。LiPON層901の上に他のLiCoO2層602が形成され、最後に、LiCoO2層602の上に他の金属層603が形成される。いくつかの実施形態では、さらなるスタッキングを形成することが可能である。いくつかの実施形態では、層の電気結合を行うためのタブが形成されるように、金属層603および903は、堆積時に利用されるマスクが異なる。
【0070】
以上で論じたように、並列電池構成体が形成されるように任意の数の個別電池スタックを形成することが可能である。電池スタッキング構造体のそのような並列配置は、電流コレクター/LiCoO2/LiPON/アノード/電流コレクター/アノード/LiPON/LiCoO2/電流コレクター/LiCoO2.../電流コレクターとして表すことが可能である。図9Bは、電池構造体の電流コレクター/LiCoO2/LiPON/アノード/電流コレクター/LiCoO2/LiPON/アノード/電流コレクター.../電流コレクターに対応する他の選択肢のスタッキングを示している。この場合、個別電池スタックがアノードを共有するので、直列配置電池スタッキング構造体が形成される。
【0071】
図9Aおよび9Bに示される構造体を形成するために、複数の電池セットを堆積するように再び基板をクラスターツール800内のチャンバーに通して循環させる。一般的には、このようにして任意の数の電池のスタックを堆積することが可能である。
【0072】
いくつかの実施形態では、化学量論的LiCoO2をイリジウム上に堆積することが可能である。図10A〜10Dは、Siウェーハ上に堆積されたイリジウム層の上へのLi−Co堆積に対するアニール手順を示している。7200秒間かけて、予備加熱を行わず、60sccmのAr流および20sccmのO2流を用いて、2kWのターゲット電力、無バイアス電力、1.6μsの反転時間、300kHzのパルシング周波数で、以上で論じたようにLiCoO2堆積を達成した。その結果、約1.51μmのLiCoO2の層が堆積された。
【0073】
図10A〜10Dは、以上で論じたように堆積されたLiCoO2の堆積されたままの状態の層およびアニールされた層の両層のXRD分析結果を示している。堆積されたままの状態の層のXRD分析結果は、結晶性LiCoO2の<003>配向を表す2θ=18.85°の低いピークと、所望の<101>結晶学的方向に対応するほぼ2θ=38.07°のよりシャープなピークと、イリジウムの<111>方向に対応する2θ=40.57°のピークと、を示す。しかしながら、<101>LiCoO2ピークの位置は、<101>LiCoO2ピークが非化学量論的LiCoO2であることを示唆する。電池層として有用なものにするには、化学量論的LiCoO2が最も良好なLi輸送を提供する。当業者であればわかるであろうが、堆積パラメーターを注意深く調整すれば、所望の配向の化学量論的LiCoO2を提供することが可能である。
【0074】
図10Bは、2時間かけて空気中で300℃のアニールを行った後の図10Aに示されるサンプルのXRD分析結果を示している。図10Bに示されるように、<003>LiCoO2に対応するXRDピークが増大することから、LiCoO2が<003>方向に結晶化したことが示唆される。さらに、LiCoO2の<101>ピークがわずかに2θ=38.53°にシフトすることから、<101>LiCoO2がより化学量論的に結晶化したことが示唆される。しかしながら、結晶性LiCoO2は、このアニールの後でも依然として化学量論的ではない。当業者であればわかるであろうが、より長時間のアニールおよび/または堆積化学量論性のさらなる調整を行えば、300℃以下のアニール温度で効果的に配向した化学量論的LiCoO2層を得ることが可能である。したがって、低温材料、たとえば、ポリマー、ガラス、または金属を基板として利用することが可能である。
【0075】
図10Cは、2時間かけて空気中で500℃の後続アニールを行った後のサンプルから得られたXRD分析結果を示している。図10Cに示されるように、より多くのLiCoO2が<003>層中に結晶化する。さらに、<101>LiCoO2ピークが再び2θ=39.08°にシフトすることから、LiCoO2の<012>層が結晶化したことが示唆される。この場合、<012>LiCoO2結晶は化学量論的であり、したがって、効率的なLi輸送を可能にする。当業者であればわかるであろうが、より長時間のアニールおよび/または堆積化学量論性のさらなる調整を行えば、500℃以下のアニール温度で効果的に配向した化学量論的LiCoO2層を得ることが可能である。したがって、低温材料、たとえば、ポリマー、ガラス、または金属を基板として利用することが可能である。
【0076】
図10Dは、2時間にわたり空気中で700℃の後続アニールを行った後のサンプルのXRD分析結果を示している。図10Dに示されるように、<003>LiCoO2ピークは消失するが、<012>LiCoO2ピークは、図10Cに示される500°アニールに示されるピークとほぼ同一の状態で残存する。
【0077】
図10A〜10Dは、イリジウム層の上への低温における<101>LiCoO2の堆積を示している。<101>LiCoO2層の化学量論性を変化させるには500℃までの後続アニールが望ましいと思われるが、700℃までのアニールは必要でないことが判明している。500℃未満のアニール温度を用いれば、導電性イリジウム層の上へのLiCoO2層の堆積を、ガラス上、アルミニウム箔上、プラスチック上、または他の低温基板材料上で達成することが可能である。また、500未満ただし300℃超のアニール温度を用いるかまたはより低温のアニールの時間を延長すれば、化学量論的結晶性LiCoO2の所望の配向を得ることが可能である。
【0078】
図11A〜11Dは、本発明のいくつかの実施形態に係る単層電池の構成体を示している。図11Aに示されるように、リフトオフ層1102を基板1101上に堆積することが可能である。さらに、リフトオフ層1102の上にイリジウム層1103を堆積することが可能である。いくつかの実施形態では、基板1101は、プラスチック、ガラス、Al箔、Siウェーハ、または任意の他の材料でありうる。リフトオフ層1102は、任意のリフトオフ層でありうる。また、ポリイミド層のようなポリマー層、CaF2層や炭素層のような無機層、またはたとえば酸化、熱、もしくは光が原因で接着性を失う接着剤層でありうる。リフトオフ層は周知である。イリジウム層1103は、約500Å以上でありうる。
【0079】
図11Bに示されるように、LiCoO2層は、以上で論じたようなイリジウム層1103の上に堆積される。いくつかの実施形態では、この工程でアニールを行うことが可能である。いくつかの実施形態では、アニール工程を実施する前に電池のさらなる層を堆積することが可能である。いくつかの実施形態では、さらなるアニールを必要とすることなく堆積されたままの状態のLiCoO2として、有用な結晶配向の化学量論的LiCoO2層を得ることが可能である。
【0080】
図11Cは、LiCoO2層の上へのLiPON層1105の堆積、LiPON層1105の上へのLi層1106の堆積、およびLi層1106の上への電極層1107の堆積を示している。いくつかの実施形態では、以上で論じたような500℃までのアニール工程をここで実施することが可能である。
【0081】
図11Dに示されるように、イリジウム層1103、LiCoO2層1104、LiPON層1105、Li層1106、および電極層1107から形成されて得られる単層電池を基板1101から「剥離」することが可能である。そのような単層電池は、約5μm以上の厚さの自立性電池でありうる。基板1101を必要としないそのような電池が約1kW・hr/リットル超のエネルギーを貯蔵できる可能性を有することは、周知である。
【0082】
図11A〜11Dに記載されるようなリフトオフプロセスの代替手段として、アニール時に基板を除去して単層電池を残すようにすることが可能である。さらに、いくつかの実施形態では、溶媒プロセス、エッチングプロセス、または光プロセスにより、基材1101を除去することが可能である。さらに、特定の電圧でより大きいエネルギーを貯蔵するデバイスを提供すべく、なんらかの方式で単層電池を組み合わせたりまたはスタッキングしたりすることが可能である。
【0083】
図12A〜12Lは、表Iに示されるサンプル31および32に基づく成長させたままの状態のLiCoO2層およびアニール後のLiCoO2層の結晶性を示している。サンプル31および32は、それぞれ、シリコン基板およびアルミナ基板を利用して、同一の堆積で形成された。
【0084】
図12Aは、Al2O3基板上の堆積されたままの状態のLiCoO2膜(表I中の実施例32)のXRD分析結果を示している。ブロードな<003>結晶性LiCoO2ピークが観測される。図12A中で表示のない分析結果の残りのピークは、Al2O3基板から生じる。<003>ピークは、本発明の実施形態に係る堆積されたままの状態の結晶性LiCoO2膜中の層状構造に特有なものである。
【0085】
図12Bは、2時間にわたる700℃のアニールを行った後の図12Aに示されるLiCoO2膜の結晶性を示している。図12Bに示されるように、<003>ピークがよりシャープにかつより高くなることから、より良好な結晶性であることが示唆される。図12G〜12Jに示されるように、図12C〜12Fと比較して、柱状構造は、アニールに伴って熟成し、粒子サイズは、アニールに伴ってより大きくなる。図12Bはまた、<012>結晶性ピークおよび<006>結晶性ピークを示している。
【0086】
図12C〜12Fは、図I中の実施例32に対応する堆積されたままの状態の膜の粒状性のSEM写真を示している。図12G〜12Jは、図12Bに示されるようなアニールされた膜の粒状性のSEM写真を示している。図12C〜12Fと図12G〜12Jとの比較から、アニールプロセスの結果として粒状性が増大することが示される。
【0087】
図12Kは、表I中の実施例31に対応する堆積されたままの状態の結晶性膜のモルフォロジーを示す破損断面SEMを示している。図12Lは、表I中の実施例32に従って成長させた膜に対応する類似の断面SEMを示している。
【0088】
図13A〜13Jは、表Iの実施例49のときと同様にLiCoO2層に適用された急速熱アニールプロセスを示している。その実施例では、LiCoO2は、無バイアスで2kWパルスDC電力を用いてアルミナ上に堆積される。アルゴン流を60sccmに設定し、酸素流を20sccmに設定した。堆積パラメーターは、表I中の実施例32のものとほぼ同等であり、したがって、図12Aには堆積されたままの状態の膜のXRDデータが示されている。図13Aは、アルゴン雰囲気中で15分間かけて700℃のアニールを行った後のXRDデータを示している。ランプアップ時間(室温→700℃)は、45秒間であり、ランプダウン時間(700℃→約300℃)は、10分間にわたった。300℃において急速熱アニール(RTA)オーブンからサンプルを取り出し、空気中で室温まで冷却させた。図13Aに示されるように、実質的結晶性が得られる。図13Bは、アルゴン/酸素雰囲気中で図13Aに関連して記述したようなRTAを行った後のXRDデータを示している。アルゴン/酸素比は、3:1であった。
【0089】
図13Aと13Bとの比較からわかるように、酸素の存在下で行われるRTAよりもアルゴンのみのRTAのほうが、より高い結晶性が観測される。このことは、図13Cおよび13Dと図13Eおよび13Fとの比較からさらに例証される。図13Cおよび13Dは、図13Aに示されるRTAを行った後のLiCoO2膜の粒状性を示している。図13Eおよび13Fは、図13Bに示されるRTAを行った後のLiCoO2膜の粒状性を示している。観測からわかるように、図13Cおよび13D(倍率が異なる)に示される粒状性は、図13Eおよび13F(この場合も倍率が異なる)に示される粒状性よりも良好である。
【0090】
図14A〜14Dは、表Iの実施例37を用いたいくつかのアニールプロセスを示している。その実施例では、LiCoO2は、60sccmのアルゴン流および20sccmの酸素流を用いて、2kWの電力および100Wのバイアスで、パルスdcプロセスを利用して、アルミナ上に堆積された。
【0091】
図14Aは、表Iの実施例37に示されるプロセスに基づく堆積されたままの状態のLiCoO2膜のSEM写真を示している。図14Bは、2時間にわたる700℃のアニールを用いて慣例的にアニールされた表Iの実施例37に示されるプロセスに基づくLiCoO2膜のSEM写真を示している。図14Cおよび14Dは、700℃のRTAプロセスでアニールされた表Iの実施例37に示されるプロセスに基づくLiCoO2膜のSEM写真を示している。RTAプロセスのランプアップ時間およびランプダウン時間は、以上に示されている。図14Cは、5分間にわたる700℃のRTAプロセスを行った後のLiCoO2膜のSEM写真を示しており、一方、図14Dは、15分間にわたる700℃のRTAプロセスを行った後のLiCoO2膜のSEM写真を示している。図14Cおよび14Dと図14Bとの比較から明らかなように、従来のファーネスアニールではなく低熱収支RTAプロセスを用いると、はるかに良好な粒状性が達成される。低熱収支RTAプロセスは、低温基板上へのそのような膜の堆積を可能にする。
【0092】
図15Aおよび15Bは、2つの異なるランプアップ時間を利用したRTAプロセスでアニールされたLiCoO2膜のSEM写真を示しており、RTAプロセスにおけるランプ時間の影響が例証される。LiCoO2膜は、表I中に実施例51として記載されるプロセスに従ってアルミナ基板上に堆積された。図15Aに示される膜は、45秒間のランプアップ時間(すなわち、45秒間で室温→700℃)でアニールされた。図15Bに示される膜は、240秒間のランプアップ時間でアニールされた。膜はいずれも、5分間にわたり700℃に保持された。図15Aと15Bとの比較からわかるように、より長いランプアップ時間よりも短いアニールランプアップ時間のほうが良好な粒状性が得られることは明らかである。
【0093】
図17は、本発明の実施形態に係るLiCoO2膜を利用して形成された電池構造体の電池充放電プロファイルを示している。図17にプロファイルの示された電池中のLiCoO2膜は、表I中の実施例54に従って堆積された。LiCoO2膜は、金電流コレクターを有するアルミナ基板上に堆積された。LiCoO2膜は、以上に記載したような高速ランプ(45秒間)のRTAプロセスを利用してアニールされた。次に、改造AKT反応器内でバイアスを用いずに標準的RF堆積プロセスにより1.5μmのLiPON層が堆積された。次に、リチウムアノードおよびニッケル電流コレクターが堆積された。0.33mA、1.65mA、3.3mA、16.5mA、33mA、および66mAで、データを取得した。観測からわかるように、電池は、2.0V超の電圧で例外的な25mA/cm2を貯蔵しうる。
【0094】
当業者であれば、本開示に特定的に論じられている実施例の変更形態および修正形態はわかるであろう。これらの変更形態および修正形態は、本開示の範囲および精神に包含されるものとする。したがって、範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【表1】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】図1Aおよび1Bは、本発明に係る堆積方法で利用しうるパルスDCバイアス反応性堆積装置を示している。
【図2】図2は、図1Aおよび1Bに示される反応器で利用しうるターゲットの例を示している。
【図3】図3は、本発明のいくつかの実施形態に係る薄膜電池デザインを示している。
【図4】図4Aおよび4Bは、本発明の実施形態に従って堆積されたLiCoO2膜のX線回折分析結果およびSEM写真を示している。
【図5−1】図5A〜5Bは、本発明のいくつかの実施形態に係るLiCoO2膜のSEM写真を示している。
【図5−2】図5C〜5Dは、本発明のいくつかの実施形態に係るLiCoO2膜のSEM写真を示している。
【図5−3】図5E〜5Fは、本発明のいくつかの実施形態に係るLiCoO2膜のSEM写真を示している。
【図5−4】図5Gは、図5B〜5Fに示される堆積に対応するX線回折データを示している。
【図6】図6Aは、本発明のいくつかの実施形態に従って薄肉基板上に堆積されたLiCoO2の層を示している。図6Bは、本発明のいくつかの実施形態に従って薄肉基板上の導電層の上に堆積されたLiCoO2の層を示している。
【図7A】図7Aは、本発明のいくつかの実施形態に従って堆積されるLiCoO2層の堆積で利用しうる薄肉基板のマウントおよびマスクの構成を示している。
【図7B】図7Bは、本発明のいくつかの実施形態に従って堆積されるLiCoO2層の堆積で利用しうる薄肉基板のマウントおよびマスクの構成を示している。
【図7C】図7Cは、本発明のいくつかの実施形態に従って堆積されるLiCoO2層の堆積で利用しうる薄肉基板のマウントおよびマスクの構成を示している。
【図7D】図7Dは、本発明のいくつかの実施形態に従って堆積されるLiCoO2層の堆積で利用しうる薄肉基板のマウントおよびマスクの構成を示している。
【図8】図8は、本発明のいくつかの実施形態に従って堆積されたLiCoO2層を有する電池を形成するために利用しうるクラスターツールを示している。
【図9】図9Aおよび9Bは、本発明のいくつかの実施形態に従って堆積されたLiCoO2層を有するスタック型電池構造体の例を示している。
【図10】図10A〜10Dは、シリコンウェーハ上のイリジウム層の上に堆積されたLiCoO2の堆積工程およびアニール工程を示している。
【図11】図11A〜11Dは、本発明のいくつかの実施形態に従ってイリジウム層の上に形成された単層電池を示している。
【図12−1】図12Aは、シリコン基板上またはアルミナ基板上への結晶性LiCoO2層の堆積を示している。
【図12−2】図12Bは、シリコン基板上またはアルミナ基板上への結晶性LiCoO2層の堆積を示している。
【図12−3】図12C〜12Fは、シリコン基板上またはアルミナ基板上への結晶性LiCoO2層の堆積を示している。
【図12−4】図12G〜12Jは、シリコン基板上またはアルミナ基板上への結晶性LiCoO2層の堆積を示している。
【図12−5】図12K〜12Lは、シリコン基板上またはアルミナ基板上への結晶性LiCoO2層の堆積を示している。
【図13−1】図13Aは、本発明に従って堆積されたLiCoO2層の急速熱アニールプロセスを示している。
【図13−2】図13Bは、本発明に従って堆積されたLiCoO2層の急速熱アニールプロセスを示している。
【図13−3】図13C〜13Fは、本発明に従って堆積されたLiCoO2層の急速熱アニールプロセスを示している。
【図14】図14A〜14Dは、本発明の実施形態に従って堆積されたLiCoO2膜で利用されるいくつかのアニールプロセスを示している。
【図15】図15Aおよび15Bは、本発明に従って堆積されたLiCoO2膜の急速熱アニールにおけるランプ時間の影響を示している。
【図16】図16は、本発明のいくつかの実施形態に従って堆積されたLiCoO2膜の厚さ均一性を示している。
【図17】図17は、本発明のいくつかの実施形態に係るLiCoO2膜を利用して形成された電池の電池充放電プロファイルを示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器内に基板を配置することと、
アルゴンおよび酸素を含むガス状混合物を該反応器内に通して流動させることと、
該基板に対向するように位置決めされたLiCoO2で形成されたターゲットにパルスDC電力を印加することと、
を含むLiCoO2層の堆積方法であって、
LiCoO2の結晶性層が該基板上に堆積される、上記方法。
【請求項2】
前記基板にRFバイアスを印加することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記結晶性層が<101>配向である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記結晶性層が<003>配向である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記結晶性層の粒子サイズが約750Å〜約1700Åである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記基板が、シリコン、ポリマー、ガラス、セラミックス、および金属で構成された集合から選ばれる材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記基板を約200℃の温度に予備加熱することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記基板が低温基板である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記低温基板が、ガラス、プラスチック、および金属箔を含む一連の基板のうちの1つである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記基板上に酸化物層を堆積することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記酸化物層が二酸化シリコン層である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記結晶性層が毎時1μm超の速度で堆積される、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記ターゲットが、表面の約4cmを横切って測定したときに約500kΩ未満の抵抗を有するセラミックLiCoO2スパッターターゲットである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記基板上に金属層を堆積することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記金属層がイリジウムである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記金属層が白金である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記結晶性層を低熱収支でアニールすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記結晶性層をアニールすることが、約10分間未満の時間にわたる急速熱アニールプロセスにより700℃までアニールすることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記LiCoO2層を約500℃以下の温度でアニールすることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記LiCoO2層を約400℃以下の温度でアニールすることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
低温基板の上に堆積された結晶性LiCoO2層
を含む電池構造体。
【請求項22】
前記結晶性LiCoO2層と前記低温基板との間に堆積された導電層をさらに含む、請求項21に記載の構造体。
【請求項23】
前記導電層がイリジウム層である、請求項22に記載の構造体。
【請求項24】
前記導電層が白金層である、請求項22に記載の構造体。
【請求項25】
前記LiCoO2層の上に堆積されたLiPON層をさらに含む、請求項21に記載の構造体。
【請求項26】
前記LiCoO2層の上に堆積された第2の導電層をさらに含む、請求項21に記載の構造体。
【請求項27】
薄肉基板上に堆積された1つ以上の電池スタック
を含むスタック型電池構造体であって、各電池スタックが、
導電層と、
該導電層の上に結晶性層として堆積されたLiCoO2層と、
該結晶性LiCoO2層の上に堆積されたLiPON層と、
該LiPON層の上に堆積されたアノード層と、
該1つ以上の電池スタックの上に堆積された最上導電層と、
を含む、上記スタック型電池構造体。
【請求項28】
前記電池スタックが並列スタック型電池構造体を形成している、請求項27に記載のスタック型電池構造体。
【請求項29】
前記電池スタックが直列スタック型電池構造体を形成している、請求項27に記載のスタック型電池構造体。
【請求項30】
前記導電層が、基板上に堆積された金属層である、請求項27に記載のスタック型電池構造体。
【請求項31】
前記金属層がイリジウム層である、請求項30に記載のスタック型電池構造体。
【請求項32】
前記金属層が白金層である、請求項30に記載のスタック型電池構造体。
【請求項33】
前記基板が低温基板である、請求項30に記載のスタック型電池構造体。
【請求項34】
前記導電層が金属箔である、請求項27に記載のスタック型電池構造体。
【請求項35】
前記金属箔が、銅、金、白金、アルミニウム、ステンレス鋼、および他のニッケル基超合金またはコバルト基超合金よりなる群から選ばれる金属で形成されている、請求項34に記載のスタック型電池構造体。
【請求項36】
クラスターツール中に基板を装填することと、
パルスdc PVDプロセスを用いて該クラスターツールのチャンバー内で導電層の上に結晶性LiCoO2層を堆積することと、
を含む、電池の製造方法。
【請求項37】
結晶性LiCoO2層を堆積することが、マスクを介して結晶性LiCoO2を堆積することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記基板上に導電層を堆積することをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記LiCoO2層の上にLiPON層を堆積することをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記LiPON層の上へのアノードの堆積をさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記アノードの上に導電層を堆積することをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記導電層がイリジウム層である、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
薄肉基板を保持するための固定具であって、
上部と、
底部と、
を含み、
該上部が該底部に取り付けられたときに該薄肉基板が保持される、上記固定具。
【請求項1】
反応器内に基板を配置することと、
アルゴンおよび酸素を含むガス状混合物を該反応器内に通して流動させることと、
該基板に対向するように位置決めされたLiCoO2で形成されたターゲットにパルスDC電力を印加することと、
を含むLiCoO2層の堆積方法であって、
LiCoO2の結晶性層が該基板上に堆積される、上記方法。
【請求項2】
前記基板にRFバイアスを印加することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記結晶性層が<101>配向である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記結晶性層が<003>配向である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記結晶性層の粒子サイズが約750Å〜約1700Åである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記基板が、シリコン、ポリマー、ガラス、セラミックス、および金属で構成された集合から選ばれる材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記基板を約200℃の温度に予備加熱することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記基板が低温基板である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記低温基板が、ガラス、プラスチック、および金属箔を含む一連の基板のうちの1つである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記基板上に酸化物層を堆積することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記酸化物層が二酸化シリコン層である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記結晶性層が毎時1μm超の速度で堆積される、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記ターゲットが、表面の約4cmを横切って測定したときに約500kΩ未満の抵抗を有するセラミックLiCoO2スパッターターゲットである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記基板上に金属層を堆積することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記金属層がイリジウムである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記金属層が白金である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記結晶性層を低熱収支でアニールすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記結晶性層をアニールすることが、約10分間未満の時間にわたる急速熱アニールプロセスにより700℃までアニールすることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記LiCoO2層を約500℃以下の温度でアニールすることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記LiCoO2層を約400℃以下の温度でアニールすることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
低温基板の上に堆積された結晶性LiCoO2層
を含む電池構造体。
【請求項22】
前記結晶性LiCoO2層と前記低温基板との間に堆積された導電層をさらに含む、請求項21に記載の構造体。
【請求項23】
前記導電層がイリジウム層である、請求項22に記載の構造体。
【請求項24】
前記導電層が白金層である、請求項22に記載の構造体。
【請求項25】
前記LiCoO2層の上に堆積されたLiPON層をさらに含む、請求項21に記載の構造体。
【請求項26】
前記LiCoO2層の上に堆積された第2の導電層をさらに含む、請求項21に記載の構造体。
【請求項27】
薄肉基板上に堆積された1つ以上の電池スタック
を含むスタック型電池構造体であって、各電池スタックが、
導電層と、
該導電層の上に結晶性層として堆積されたLiCoO2層と、
該結晶性LiCoO2層の上に堆積されたLiPON層と、
該LiPON層の上に堆積されたアノード層と、
該1つ以上の電池スタックの上に堆積された最上導電層と、
を含む、上記スタック型電池構造体。
【請求項28】
前記電池スタックが並列スタック型電池構造体を形成している、請求項27に記載のスタック型電池構造体。
【請求項29】
前記電池スタックが直列スタック型電池構造体を形成している、請求項27に記載のスタック型電池構造体。
【請求項30】
前記導電層が、基板上に堆積された金属層である、請求項27に記載のスタック型電池構造体。
【請求項31】
前記金属層がイリジウム層である、請求項30に記載のスタック型電池構造体。
【請求項32】
前記金属層が白金層である、請求項30に記載のスタック型電池構造体。
【請求項33】
前記基板が低温基板である、請求項30に記載のスタック型電池構造体。
【請求項34】
前記導電層が金属箔である、請求項27に記載のスタック型電池構造体。
【請求項35】
前記金属箔が、銅、金、白金、アルミニウム、ステンレス鋼、および他のニッケル基超合金またはコバルト基超合金よりなる群から選ばれる金属で形成されている、請求項34に記載のスタック型電池構造体。
【請求項36】
クラスターツール中に基板を装填することと、
パルスdc PVDプロセスを用いて該クラスターツールのチャンバー内で導電層の上に結晶性LiCoO2層を堆積することと、
を含む、電池の製造方法。
【請求項37】
結晶性LiCoO2層を堆積することが、マスクを介して結晶性LiCoO2を堆積することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記基板上に導電層を堆積することをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記LiCoO2層の上にLiPON層を堆積することをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記LiPON層の上へのアノードの堆積をさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記アノードの上に導電層を堆積することをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記導電層がイリジウム層である、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
薄肉基板を保持するための固定具であって、
上部と、
底部と、
を含み、
該上部が該底部に取り付けられたときに該薄肉基板が保持される、上記固定具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5−1】
【図5−2】
【図5−3】
【図5−4】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12−1】
【図12−2】
【図12−3】
【図12−4】
【図12−5】
【図13−1】
【図13−2】
【図13−3】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5−1】
【図5−2】
【図5−3】
【図5−4】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12−1】
【図12−2】
【図12−3】
【図12−4】
【図12−5】
【図13−1】
【図13−2】
【図13−3】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2008−523567(P2008−523567A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545692(P2007−545692)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/044781
【国際公開番号】WO2006/063308
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(507186218)シモーフィックス,インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/044781
【国際公開番号】WO2006/063308
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(507186218)シモーフィックス,インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】
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