説明

MOS型半導体装置およびその製造方法

【課題】ゲートポリ電極とソース及びドレイン高濃度拡散層との間での位置合わせズレを防止し、素子特性や信頼性の均一化を図ることができる。
【解決手段】半導体基板と、前記半導体基板上に形成した酸化膜と、前記半導体基板上に形成した前記酸化膜の除去された領域の寸法に対応して画定したゲート長を有するゲート電極と、前記半導体基板の内部にチャンネル領域を含む位置に配設し、長さは前記酸化膜の幅に対応して決定したオフセット層と、前記オフセット層の内部に配設し、前記ゲート長方向に、前記チャンネル領域から離隔し、前記オフセット層の低濃度不純物より高濃度の不純物を含むソース及びドレイン高濃度不純物拡散層と、前記オフセット層の前記ゲート長方向の両端部に配設し、ソース及びドレイン高濃度拡散層を形成するための不純物のイオン注入に対してのマスクとなる厚さを有する酸化膜とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関して、特にオフセット層(低濃度不純物拡散層)を有するMOS型半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MOS型半導体装置は、通常ドレイン側に電圧を印加し、素子を駆動させるため、ドレイン側の拡散層では、高電界が生じ電界が集中する部分であり、インパクトイオン化を引き起こす。ここで発生した電子/正孔は、高電界に加速され、ゲート絶縁膜に注入もしくはトラップされ、素子特性の経時変化の原因となり、特に高耐圧MOS型半導体装置ではその傾向が顕著である。
【0003】
この問題点を解決するため、ソース及びドレイン高濃度拡散層とゲートの間に、オフセット層を設け、距離を離すことで電界を緩和させる手段が検討されている。
【0004】
しかしながら、一般的なフォトレジストマスクによるオフセット層形成では、フォトリソグラフィの露光の際、ゲートポリ電極とソース及びドレイン高濃度拡散層との間で位置合わせズレが生じ、この幅がばらつくため、素子特性や信頼性の不均一が生じることとなる。
【0005】
近年、高精度のオフセット層形成技術が求められる中、上記課題を解決する手法として様々な手法が検討されている(特許文献1、2)。
【0006】
特許文献1に係る図24〜図28に示す半導体装置においては、フォトリソグラフィ技術によるオフセット層の幅のバラツキを克服するため、シリコン基板200上にゲート絶縁膜201とポリシリコン202を形成し、フォトリソグラフィによりゲート電極203とソース及びドレイン電極となる部分を覆う205を形成している。これら203と205をマスクとして、オフセット層204を形成した後、マスク205を除去し、ゲート電極203を覆うようにフォトレジスト223を形成している。ここに高濃度不純物注入を行うことでソース及び、ドレイン高濃度拡散層が形成され、これら高濃度拡散層端からゲート電極端までの距離がマスク222の幅で決定でき、フォトリソグラフィ工程の位置合わせズレの影響を排除している。
【0007】
しかしながら、ポリシリコン膜203と205をマスクとしてオフセット層を形成するため、深いオフセット層を形成するために、不純物の注入エネルギーを増加させると、その不純物はマスクのポリシリコン膜を突き抜けてしまうことになる。
【0008】
その結果、ゲート電極下のp型層はn型層になり、場合によってはノーマリーオン型MOS型半導体装置となる不具合が現れる可能性がある。
【0009】
すなわち、オフセット層に注入する低濃度不純物の注入エネルギーは、ポリシリコン膜203の厚さで決定されてしまう欠点がある。なお、ポリシリコン膜の膜厚を厚くすることで、不純物の注入エネルギーの増加に対応することも考えられるが、この膜厚はMOS型半導体装置の電気的特性や加工精度に最適化されているので、ポリシリコン膜厚を変更することは現実的ではないといえる。
【0010】
一方、特許文献2には、フォトリソグラフィ技術によるオフセット層の幅のバラツキを防止する技術を採用した半導体装置が記載されている。図29〜34は、特許文献2に係る半導体装置を示す図である。図29におけるシリコン基板221にフィールド酸化膜217を形成した後、シリコン酸化膜214、215、216を所望の形状に形成するものである。シリコン酸化膜214、215、216をマスクとして、低濃度不純物を注入することでオフセット層210、211、212、213を形成している。図30では、さらにフォトリソグラフィ技術と高濃度不純物注入を行い、フィールド酸化膜217に接した拡散層に高濃度拡散層225、226を形成している。レジスト227を除去し、図31にて、フォトリソグラフィ技術とエッチングによりシリコン酸化膜215を除去したのち、図32でゲート酸化膜229とポリシリコン膜228を形成し、フォトリソグラフィ技術及びエッチングによりポリシリコン膜228を除去し、ゲート電極229を形成している。その後レジストを除去した状態が図33となる。その後フォトレジストマスクをフォトリソグラフィ技術により、ゲート電極を保護するよう形成し、低濃度不純物を斜めに注入することにより、図34に示すオフセット層219、220を形成している。
【0011】
上記手法を採用することにより、ソース及びドレイン高濃度拡散層からゲート電極までの距離、及びゲート電極下に潜り込んでいるオフセット幅はマスクシリコン酸化膜の幅によって決まるため、フォトリソグラフィの位置合わせズレを修正することができる。
【0012】
また、シリコン酸化膜をオフセット層形成のマスクとして用いており、このシリコン酸化膜の膜厚はオフセット注入の深さに応じて厚くすることが可能であるため、上記問題点を解決しようとしている。
【0013】
しかしながら、この構造を実現するための製造工程を鑑みると、特許文献1に記載の半導体の製造方法よりも、フォトリソグラフィ工程で2工程追加、不純物注入工程で1工程追加、エッチング工程で1工程追加となり、非常なコスト増となる問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平9−205205号公報
【特許文献2】特開2006−261227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
関連する技術にかかるMOS型半導体装置およびその製造方法では、フォトリソグラフィの位置合わせズレが生じ、素子特性や信頼性の不均一が生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係るMOS型半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板上に形成した酸化膜と、前記半導体基板上に形成した前記酸化膜の除去された領域の寸法に対応して画定したゲート長を有するゲート電極と、前記半導体基板の内部にチャンネル領域を含む位置に配設し、長さは前記酸化膜の幅に対応して決定したオフセット層と、前記オフセット層の内部に配設し、前記ゲート長方向に、前記チャンネル領域から離隔し、前記オフセット層の低濃度不純物より高濃度の不純物を含むソース及びドレイン高濃度不純物拡散層と、前記オフセット層の前記ゲート長方向の両端部に配設し、ソース及びドレイン高濃度拡散層を形成するための不純物のイオン注入に対してのマスクとなる厚さを有する酸化膜とを備えている。
【0017】
このような構成にすることにより、オフセット層の幅のばらつきが抑制され、電気特性の均一化を図ることができる。
【0018】
本発明に係るMOS型半導体装置の製造方法は、ゲート電極を形成するより前に、半導体基板に、オフセット層を形成し、前記半導体基板の上方に、ソース及びドレイン高濃度拡散層を形成するためのマスクとして所定の厚さを有するマスク酸化膜を成長し、前記マスク酸化膜のうち、前記ゲート電極を形成する領域と、ソース及びドレインを形成する領域を選択的に除去して開孔し、前記ゲート電極を形成する領域と、ソース及びドレインを形成する領域にゲート酸化膜を形成し、前記マスク酸化膜に、ゲート電極を形成する領域として開孔した部分を埋め込むように導電性薄膜を成長し、前記ゲート電極を形成する領域に、前記酸化膜を開孔した開孔部と同一又は前記開孔部より広い範囲で、前記導電性薄膜が残るようにエッチング加工してゲート電極を形成し、前記ソース及びドレインを形成する領域に埋め込まれた導電性薄膜をエッチングして除去し、前記マスク酸化膜および上記ゲート電極をマスクとして、イオン注入を行い、ソース及びドレイン高濃度拡散層を形成する。
【0019】
このような構成にすることにより、オフセット層を形成する低濃度不純物がゲート直下の半導体領域の画定を兼ねているため、不要な工程増加を低減することが可能となる。また、オフセット層の不純物は、予めソース及びドレインの高濃度の不純物拡散層の形成予定領域にも注入しておくため、オフセット層とソースドレイン拡散層を接続するための注入工程を省くことが可能となる。
【0020】
本発明に係るMOS型半導体装置の製造方法は、上記酸化膜は、シリコン酸化膜であることを特徴とする。
【0021】
本発明に係るMOS型半導体装置の製造方法は、上記オフセットと、前記ソース及びドレイン高濃度不純物拡散層を、上記半導体基板上に、一対形成することを特徴とする。
【0022】
本発明に係るMOS型半導体装置の製造方法は、前記オフセット層と、ソース及びドレイン高濃度不純物拡散層とが接していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ゲートポリ電極とソース及びドレイン高濃度拡散層との間での位置合わせズレを防止し、素子特性や信頼性の均一化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1に係るMOS型半導体装置の構造図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るMOS型半導体装置の形成手順を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るMOS型半導体装置の形成手順を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るMOS型半導体装置の形成手順を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係るMOS型半導体装置の形成手順を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係るMOS型半導体装置の形成手順を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係るMOS型半導体装置の形成手順を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係るMOS型半導体装置の形成手順を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係るMOS型半導体装置の形成手順を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態1に係るMOS型半導体装置の形成手順を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態1に係るMOS型半導体装置の形成手順を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態1に係るMOS型半導体装置の形成手順を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態1に係るMOS型半導体装置の形成手順を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態1に係るMOS型半導体装置の形成手順を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態1に係るMOS型半導体装置の形成手順を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態1に係るMOS型半導体装置の形成手順を示す図である。
【図17】本発明の実施の形態1に係るMOS型半導体装置の形成手順を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態1に係るMOS型半導体装置の形成手順を示す図である。
【図19】本発明の実施の形態1に係るMOS型半導体装置の形成手順を示す図である。
【図20】本発明の実施の形態2に係るMOS型半導体装置の形成手順を示す図である。
【図21】本発明の実施の形態2に係るMOS型半導体装置の形成手順を示す図である。
【図22】本発明の実施の形態2に係るMOS型半導体装置の形成手順を示す図である。
【図23】本発明の実施の形態2に係るMOS型半導体装置の形成手順を示す図である。
【図24】関連する技術(特許文献1)にかかるMOS型半導体装置のオフセット層構造の形成手順を示す図である。
【図25】関連する技術(特許文献1)にかかるMOS型半導体装置のオフセット層構造の形成手順を示す図である。
【図26】関連する技術(特許文献1)にかかるMOS型半導体装置のオフセット層構造の形成手順を示す図である。
【図27】関連する技術(特許文献1)にかかるMOS型半導体装置のオフセット層構造の形成手順を示す図である。
【図28】関連する技術(特許文献1)にかかるMOS型半導体装置のオフセット層構造の形成手順を示す図である。
【図29】関連する技術(特許文献2)にかかるMOS型半導体装置の形成手順の構造断面図である。
【図30】関連する技術(特許文献2)にかかるMOS型半導体装置の形成手順の構造断面図である。
【図31】関連する技術(特許文献2)にかかるMOS型半導体装置の形成手順の構造断面図である。
【図32】関連する技術(特許文献2)にかかるMOS型半導体装置の形成手順の構造断面図である。
【図33】関連する技術(特許文献2)にかかるMOS型半導体装置の形成手順の構造断面図である。
【図34】関連する技術(特許文献2)にかかるMOS型半導体装置の形成手順の構造断面図である。
【図35】シリコン酸化膜(SiO)と各ドーズ種における注入エネルギーのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。以下の記載及び図面は、明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。
【0026】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るMOS型半導体装置の構造図である。図1を参照しながら、実施の形態1に係るMOS型半導体装置について説明する。
【0027】
本実施の形態に係るMOS型半導体装置は、半導体基板であるシリコン基板100と、シリコン基板100上にシリコン酸化膜からなるゲート酸化膜106とゲートポリシリコン膜105により、ゲート電極が形成されている。また、シリコン基板100の上方であって、オフセット層(低濃度不純物拡散層)101のゲート電極のゲート長107方向の両端部に配設された厚いシリコン酸化膜104が形成される。このシリコン酸化膜104の厚さは、ソース及びドレイン高濃度拡散層102、103を形成するための不純物のイオン注入に対してのマスクとなるのに十分な厚さで形成される。シリコン酸化膜104の厚さは、具体的には、5000Åである。この条件は一例であり、通常は高濃度拡散層を形成するドーズ注入エネルギーにより決定され、ドーズ種がマスクシリコン酸化膜を突き抜けない膜厚に設定される。
図35に、シリコン酸化膜(SiO)と各ドーズ種における注入エネルギーのグラフ(G.Dearnaley, et al., Ion Implantation, North-Holland, Amsterdam, 1973.)を示す。縦軸はマスクの最少厚さ(μm)、横軸は注入エネルギー(kev)である。グラフ上の曲線のうち、実線は99.99%のマスク効果を得るための、SiOの最少厚さ、破線はSiの最少厚さ、一点破線はフォトレジストの最少厚さである。これにより、ソース及びドレイン高濃度拡散層を形成するための不純物のイオン注入に対しての注入エネルギーとマスクの厚さとの関係が示される。
【0028】
シリコン基板100上には、ゲート酸化膜106直下に形成されるチャンネル領域を挟んだ両側に、オフセット層101が形成され、このオフセット層101の内部に、これよりも不純物濃度の高いソース及びドレイン高濃度不純物拡散層102、103が形成される。
【0029】
このように、ソース及びドレイン高濃度不純物拡散層102、103は、オフセット層101よりもゲート長107方向においてチャンネル領域から離れた位置に形成され、しかも、オフセット層101よりも浅い位置に形成されている。
【0030】
このような構成にすることにより、高濃度不純物拡散層102、103の端部近傍の電界を緩和させることが可能となり、高電圧印加時における電界強度の分布のバラツキも小さくなるので信頼性を改善できる。同時に、電気的特性バラツキを抑えるという効果が得られる。
【0031】
上記高濃度不純物拡散層102、103の端部から、ゲート酸化膜106端部までの幅は、シリコン酸化膜104の幅で決定される。また、ゲート長107は、マスクとしてのシリコン酸化膜104が除去された領域の長さで画定される。
【0032】
次に、本実施の形態に係るMOS型半導体装置の製造方法について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0033】
図2〜図19は、本発明の実施の形態1に係るMOS型半導体装置の形成手順を示す図である。
【0034】
まず、半導体基板であるシリコン基板100上に、素子分離領域であるSTI(Shallow TrenchIsolation)又はLOCOS(Local Oxidation of Silicon)109を形成した。STIまたはLOCOS109を形成したシリコン基板100上にオフセット層101注入マスクに用いるフォトレジスト110を塗布した(図3)。ここで、シリコン基板100表面を保護するために、薄いシリコン酸化膜を形成しておくことが好ましい。
【0035】
本実施の形態においては、半導体基板100に単結晶シリコンを用いたが、その材質は特に限定されることはなく、多結晶シリコン薄膜又は非晶質シリコン薄膜をガラス、石英ガラス基板上に形成したものであってもよい。
【0036】
次いで、リソグラフィ工程により加工成型し、オフセット層101を形成する部分のフォトレジスト110を除去した。その後、図3において塗布したフォトレジスト110の上方から、低濃度不純物111を注入し、オフセット層101を形成した(図4)。ここで、オフセット層101を形成する際のイオン注入について、注入量は、好ましくは、1012(1/cm)〜1014(1/cm)、より好ましくは、1013(1/cm)〜5×1013(1/cm)である。イオン注入量が1013(1/cm)〜5×1013(1/cm)であると、低濃度拡散層を形成する濃度に適しており、ジャンクション耐圧を高くすることができる点で好ましい。これら注入量条件はあくまで一例で、所望のジャンクション耐圧やMOS型半導体装置の性能により決定される。
【0037】
また、イオン注入の注入エネルギーは、例えば、ドーズ種がPの場合、より好ましくは、100keV〜500keVである。注入エネルギーが100keV〜500keVであると、適切なオフセット層を形成できる点で好ましい。また、これら条件は一例であり、装置の性能、所望のオフセット層深さ、ドーズ種により決定される。
【0038】
さらに、イオン種は、B、BF、P、As等が挙げられるが、この中でもNMOS型半導体装置にはP、PMOS型半導体装置にはB、が好ましい。しかし、シリコン内でドナー、アクセプタとしての機能が得られる物質であれば特に限定されない。
【0039】
オフセット層101を形成した後、オフセット注入で使用したフォトレジスト110を除去した(図5)。その後、シリコン基板100の上方にマスクシリコン酸化膜104を成長した(図6)。
【0040】
次いで、上記マスクシリコン酸化膜104上に、エッチングのマスク材として、フォトレジスト112を塗布する(図7)。その後、マスクシリコン酸化膜104を残したい部分のみ、リソグラフィにより加工成型し、フォトレジスト112を残した(図8)。
【0041】
次いで、ソース及びドレイン電極部、並びにゲート電極が形成される部分のマスクシリコン酸化膜104をエッチングにより除去して開孔し(図9)、その後、フォトレジスト膜112を除去した(図10)。
【0042】
次いで、ソース及びドレイン電極部、並びにゲート電極が形成される部分に、ゲート酸化膜106を形成した(図11)。その後、マスクシリコン酸化膜104に、ゲート電極を形成する領域として開孔した部分を埋め込むように、導電性薄膜としてのゲートポリシリコン膜113を成長した(図12)。
【0043】
次いで、ゲート電極を形成する際のエッチングに使うマスクとして、上記ゲートポリシリコン膜113の上方にフォトレジスト114を塗布した(図13)。その後、図14に示すように、ゲート電極部分はマスクされるよう、リソグラフィ加工成型によりフォトレジスト114を加工した。
【0044】
その後、ゲート電極を形成する領域に、マスクシリコン酸化膜104を開孔した開孔部と同一又は開孔部より広い範囲で、ゲートポリシリコン膜113が残るようにエッチング加工してゲート電極を形成した(図15)。そして、ゲート電極上部のフォトレジスト114を除去した(図16)。
【0045】
次いで、マスクシリコン酸化膜104およびゲート電極をマスクとして、イオン注入を行い、高濃度不純物115を注入し、ソース及びドレイン高濃度拡散層102、103を形成した(図17)。この時点で、オフセット層101の幅108が決定された。
【0046】
ここで、高濃度の不純物拡散層102、103を形成する際のイオン注入について、注入量は、好ましくは、1015(1/cm)〜1016(1/cm)、より好ましくは、1×1015(1/cm)〜5×1015(1/cm)である。
【0047】
また、イオン注入の注入エネルギーは、好ましくは、10keV〜200keV、より好ましくは、10keV〜100keVである。注入エネルギーが10keV〜100keVであると、低抵抗の拡散層をシリコン表面に形成できる点で好ましい。この条件は一例で、MOS形半導体装置の性能、耐圧によって決定される。
【0048】
さらに、イオン種は、B、BF、P、As等が挙げられるが、この中でもNMOS型半導体装置にはP、As、PMOS型半導体装置にはBFが好ましい。しかし、シリコン内でドナー、アクセプタとしての機能が得られる物質であれば特に限定されない。
【0049】
その後、層間絶縁膜116を形成し(図18)、不純物の活性化のための加熱処理を施し、層間絶縁膜116を開口し、コンタクト117を形成した。その後、配線層118を形成してソース及びドレイン高濃度拡散層102、103と接続した(図19)。以上説明した工程によって、半導体装置を完成した。
【0050】
本実施の形態に係る素子は左右対称の構造となっているため、ドレイン端子、ソース端子は入れ替えて高電圧を印加することが可能である。
【0051】
図4に示すように、フォトレジスト110をマスクに、イオン注入することにより、オフセット層101を形成したことにより、イオン注入工程の自由度が増し、その結果、オフセット層101を深く形成することができた。これにより、問題となっていた課題を解決することができた。
【0052】
すなわち、図24〜28に示すように、関連する技術(特許文献1)では、深いオフセット層を形成するために、不純物の注入エネルギーを増加させると、その不純物はマスクのポリシリコン膜203を突き抜けてしまい、この結果、ゲート電極下のp型層は、n型層になり、場合によってはノーマリーオン型MOS型半導体装置となってしまう不具合が現れる可能性があった。つまり、オフセット層204にイオン注入する低濃度不純物の注入エネルギーは、ポリシリコン膜203の厚さで決定されてしまうという欠点があった。しかし、本実施の形態に係るMOS型半導体装置の製造方法において、上記問題点を解決することができた。
【0053】
なお、ポリシリコン膜203の膜厚を厚くすることにより、不純物の注入エネルギーの増加に対応することも考えられるが、この膜厚はMOS型半導体装置の電気的特性や加工精度に最適化されているので、ポリシリコン膜厚を変更することは現実的ではないといえる。
【0054】
本実施の形態に係る実効オフセット108は、オフセット層101上方に形成されたマスクシリコン酸化膜104を所望の形状にエッチングすることによって画定されるが(図11、図17)、その際、除去した領域に、ゲート電極、並びにソース及びドレイン領域を形成するため、これらの位置と寸法も同時に画定していることになり、マスク層除去工程等の工程を省くことが可能となり、工数の低減、ひいては製造コストの低減を図ることができる。
【0055】
さらに、関連する技術と異なり(図20〜図29)、オフセット層101と、ソース及びドレイン高濃度拡散層102、103は直接接することになり、これらを結合するための不純物層を追加形成する工程を省くことが可能となり、工数の低減、ひいては製造コストの低減を図ることができる。
【0056】
本実施の形態に係るMOS型半導体の製造方法は、オフセット層101を先に形成するので、オフセット層101端部とマスクシリコン酸化膜104の開孔端の間には、フォトリソグラフィの位置合わせズレが生じるが、ゲート電極下にオフセット層101が潜り込むように設計・製造すれば、問題は生じない。従って、MOS型半導体装置を製造する装置のバラツキ範囲よりも大きな幅で設計すればよいということになる。また、上記位置合わせズレは、ドレイン電極側、ソース電極側の総和としては一律となるため、MOS型半導体装置の電気的特性に影響は無いと言える。
【0057】
また、本実施の形態におけるMOS型半導体装置の製造方法によれば、ソース及びドレイン端子の高濃度不純物拡散層端102、103からゲート酸化膜106端までの距離は、マスクシリコン絶縁膜の幅で決まるので、オフセット幅108のバラツキを極小化することができる。
【0058】
これにより、高電圧印加時におけるオフセット層101に発生する電界強度の分布のバラツキも小さくなるので信頼性を改善できる。同時に、電気的特性バラツキを抑える効果も得ることができる。
【0059】
さらに、ゲート電極形成前に、オフセット層101を形成するため、MOS型半導体装置のドレイン端子側に生じる電界を抑える、深いオフセット層101の形成が可能であり、より高耐圧に適したMOS型半導体装置を提供することができる。
【0060】
(実施の形態2)
図23は、本発明の実施の形態2に係るMOS型半導体装置の構造図である。図23を参照しながら、実施の形態2に係るMOS型半導体装置について説明する。
【0061】
実施の形態2に係るMOS型半導体装置においては、素子が左右対称の構造を有する実施の形態1と異なり、左右非対称の構造を持ったMOS型半導体装置である。
【0062】
本実施の形態に係るMOS型半導体装置は、ドレイン端子、ソース端子のいずれか片方のみに高電圧を印加する場合に使用することが可能である。
【0063】
本実施の形態に係るMOS型半導体装置は、半導体基板であるシリコン基板と、シリコン基板100上にシリコンからなるゲート酸化膜106とゲートポリシリコン膜105により、ゲート電極が形成されている。また、シリコン基板100の上方であって、オフセット層101のゲート電極のゲート長107方向の片端部に配設された厚いシリコン酸化膜104が形成される。このシリコン酸化膜104の厚さは、ソース及びドレイン高濃度拡散層102、103を形成するための不純物のイオン注入に対してのマスクとなるのに十分な厚さで形成される。シリコン酸化膜104の厚さは、具体的には、5000Åである。この条件は一例であり、通常は高濃度拡散層を形成するドーズ注入エネルギーにより決定され、ドーズ種がマスクシリコン酸化膜を突き抜けない膜厚に設定される。
【0064】
シリコン基板100上には、ゲート酸化膜106直下に形成されるチャンネル領域に接した片方に、オフセット層101が形成され、このオフセット層101の内部に、これよりも不純物濃度の高いドレイン高濃度不純物拡散層103が形成される。
【0065】
このように、ドレイン高濃度不純物拡散層103は、オフセット層101よりもゲート長107方向においてチャンネル領域から離れた位置に形成され、しかも、オフセット層101よりも浅い位置に形成されている。
【0066】
このような構成にすることにより、実施の形態1よりもMOS型半導体装置の面積が縮小でき、さらにソース端子側の抵抗が極小化するため、その結果、素子の性能が向上するという効果が得られる。
【0067】
次に、本実施の形態に係るMOS型半導体装置の製造方法について、実施の形態1と異なる部分を中心に、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0068】
まず、半導体基板であるシリコン基板100上に、素子分離領域であるSTI又はLOCOS109を形成した。STIまたはLOCOS109を形成したシリコン基板100上にオフセット層101注入マスクに用いるフォトレジスト110を塗布した。ここで、シリコン基板100表面を保護するために、薄いシリコン酸化膜を形成しておくことが好ましい。
【0069】
本実施の形態においては、半導体基板100に単結晶シリコンを用いたが、その材質は特に限定されることはなく、多結晶シリコン薄膜又は非晶質シリコン薄膜をガラス、石英ガラス基板上に形成したものであってもよい。
【0070】
次いで、リソグラフィ工程により加工成型し、オフセット層101を形成する部分のフォトレジスト110を除去した後、フォトレジスト110の上方から、低濃度不純物111を注入し、ドレイン端子側のみ、オフセット層101を形成した(図20)。ここで、オフセット層101を形成する際のイオン注入について、注入量は、好ましくは、1012(1/cm)〜1014(1/cm)、より好ましくは、1013(1/cm)〜5×1013(1/cm)である。イオン注入量が1013(1/cm)〜5×1013(1/cm)であると、低濃度拡散層を形成する濃度に適しており、ジャンクション耐圧を高くすることができる点で好ましい。これら注入量条件はあくまで一例で、所望のジャンクション耐圧やMOS型半導体装置の性能により決定される。
【0071】
また、イオン注入の注入エネルギーは、例えば、ドーズ種がPの場合、好ましくは、10keV〜1000keV、より好ましくは、50keV〜500keVである。注入エネルギーが50keV〜500keVであると、適切なオフセット層を形成できる点で好ましい。また、これら条件は一例であり、装置の性能、所望のオフセット層深さ、ドーズ種により決定される。
【0072】
さらに、イオン種は、B、BF、P、As等が挙げられるが、この中でもNMOS型半導体装置にはP、PMOS型半導体装置にはB、が好ましい。しかし、シリコン内でドナー、アクセプタとしての機能が得られる物質であれば特に限定されない。
オフセット層101を形成した後、オフセット注入で使用したフォトレジスト110を除去した。その後、シリコン基板100の上方にマスクシリコン酸化膜104を形成した。これにより、オフセット幅108とドレイン側ゲート電極の位置が画定する効果が得られる。
【0073】
次いで、上記マスクシリコン酸化膜104上に、エッチングのマスクとして、フォトレジスト112を塗布する。その後、マスクシリコン酸化膜104を残したい部分のみ、リソグラフィにより加工成型し、フォトレジスト112を残した。
【0074】
次いで、マスクシリコン酸化膜104を、ドレイン電極側のみに残すようにフォトレジスト112を加工し、エッチングで不要なマスクシリコン酸化膜104を除去し(図21)、その後、フォトレジスト膜112を除去した。
【0075】
次いで、ソース及びドレイン電極部、並びにゲート電極が形成される部分に、ゲート酸化膜106を形成した。その後、オフセット幅108のシリコン酸化膜104を端部とした部分に、ゲート電極を形成するため、ゲートポリシリコン膜113を形成した。
【0076】
次いで、ゲート電極を形成する際のエッチングに使うマスクとして、上記ゲートポリシリコン膜113の上方にフォトレジスト114を塗布した。その後、ゲート電極部分はマスクされるよう、リソグラフィ加工成型によりフォトレジスト114を加工した。
【0077】
次いで、ゲートポリシリコン膜113をエッチングで除去した(図22)。そして、ゲート電極上部のフォトレジスト114を除去した。
【0078】
その後、上記ゲートポリシリコン113とマスクシリコン酸化膜104の上方からイオン注入を行い、高濃度不純物115を注入して、ソース及びドレイン高濃度拡散層102、103を形成した(図23)。この時点で、オフセット層101の幅108が決定された。
【0079】
ここで、高濃度の不純物拡散層102、103を形成する際のイオン注入について、注入量は、好ましくは、1015(1/cm)〜1016(1/cm)、より好ましくは、1×1015(1/cm)〜5×1015(1/cm)である。
【0080】
また、イオン注入の注入エネルギーは、好ましくは、10keV〜200keV、より好ましくは、10keV〜100keVである。注入エネルギーが10keV〜100keVであると、低抵抗の拡散層をシリコン表面に形成できる点で好ましい。この条件は一例で、MOS形半導体装置の性能、耐圧によって決定される。
【0081】
さらに、イオン種は、B、BF、P、As等が挙げられるが、この中でもNMOS型半導体装置にはP、As、PMOS型半導体装置にはBFが好ましい。しかし、シリコン内でドナー、アクセプタとしての機能が得られる物質であれば特に限定されない。
【0082】
その後、層間絶縁膜116を形成し、不純物の活性化のための加熱処理を施し、層間絶縁膜116を開口し、コンタクト117を形成した。その後、配線層を形成してソース及びドレイン高濃度拡散層102、103と接続した。以上説明した工程によって、半導体装置を完成した。
【0083】
本実施の形態に係るMOS型半導体装置は、左右非対称の構造であるため、オフセット層101はドレイン側にのみ形成されるため、ドレイン端子側のみしか高電圧を印加できないという制約が生まれる。しかし、ソース端子側のオフセット層101を除くことにより、その分、面積が縮小でき、ソース端子側の抵抗が極小化するため、その結果、素子の性能が向上するという技術的意義が生まれることになる。
【符号の説明】
【0084】
100 シリコン基板
101 オフセット層
102 ドレイン高濃度拡散層
103 ソース高濃度拡散層
104 シリコン酸化膜
105 ゲートポリシリコン膜
106 ゲート酸化膜
107 ゲート長
108 オフセット幅
109 STI(LOCOS)
110 フォトレジスト
111 低濃度不純物
112 フォトレジスト
113 ゲートポリシリコン膜
114 フォトレジスト
115 高濃度不純物
116 層間絶縁膜
117 コンタクト
118 配線層
200 シリコン基板
201 ゲート絶縁膜
202 ポリシリコン
203 ゲート電極
204 オフセット層
205 マスク
210 オフセット層
211 オフセット層
212 オフセット層
213 オフセット層
214 シリコン酸化膜
215 シリコン酸化膜
216 シリコン酸化膜
217 フィールド酸化膜
219 オフセット層
220 オフセット層
221 シリコン基板
222 スペーサ
223 フォトレジストマスク
225 高濃度拡散層
226 高濃度拡散層
227 レジスト
228 ポリシリコン膜
229 ゲート酸化膜
230 ゲート電極(ポリシリコン膜)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成した酸化膜と、
前記半導体基板上に形成した前記酸化膜の除去された領域の寸法に対応して画定したゲート長を有するゲート電極と、
前記半導体基板の内部にチャンネル領域を含む位置に配設し、長さは前記酸化膜の幅に対応して決定したオフセット層と、
前記オフセット層の内部に配設し、前記ゲート長方向に、前記チャンネル領域から離隔し、前記オフセット層の低濃度不純物より高濃度の不純物を含むソース及びドレイン高濃度不純物拡散層と、
前記オフセット層の前記ゲート長方向の両端部に配設し、ソース及びドレイン高濃度拡散層を形成するための不純物のイオン注入に対してのマスクとなる厚さを有する酸化膜とを備えたMOS型半導体装置。
【請求項2】
前記酸化膜はシリコン酸化膜であることを特徴とする請求項1に記載のMOS型半導体装置。
【請求項3】
前記オフセット層と、前記ソース及びドレイン高濃度不純物拡散層を、前記半導体基板上に、一対形成することを特徴とする請求項1または2に記載のMOS型半導体装置。
【請求項4】
前記オフセット層と、ソース及びドレイン高濃度不純物拡散層とが接していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のMOS型半導体装置。
【請求項5】
ゲート電極を形成するより前に、
半導体基板に、オフセット層を形成し、
前記半導体基板の上方に、ソース及びドレイン高濃度拡散層を形成するためのマスクとして所定の厚さを有するマスク酸化膜を成長し、前記マスク酸化膜のうち、前記ゲート電極を形成する領域と、ソース及びドレインを形成する領域を選択的に除去して開孔し、 前記ゲート電極を形成する領域と、ソース及びドレインを形成する領域にゲート酸化膜を形成し、
前記マスク酸化膜に、ゲート電極を形成する領域として開孔した部分を埋め込むように導電性薄膜を成長し、
前記ゲート電極を形成する領域に、前記酸化膜を開孔した開孔部と同一又は前記開孔部より広い範囲で、前記導電性薄膜が残るようにエッチング加工してゲート電極を形成し、前記ソース及びドレインを形成する領域に埋め込まれた導電性薄膜をエッチングして除去し、
前記マスク酸化膜および上記ゲート電極をマスクとして、イオン注入を行い、ソース及びドレイン高濃度拡散層を形成するMOS型半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記酸化膜はシリコン酸化膜であることを特徴とする請求項5に記載のMOS型半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記オフセットと、前記ソース及びドレイン高濃度不純物拡散層とを、前記半導体基板上に、一対形成することを特徴とする請求項5または6に記載のMOS型半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記オフセット層と、ソース及びドレイン高濃度不純物拡散層とが接していることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載のMOS型半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate


【公開番号】特開2011−176113(P2011−176113A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38896(P2010−38896)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】