PLL回路
【課題】ハイブリッド制御方式PLL回路の定常状態における位相ジッタを低減する。
【解決手段】ハイブリッド制御方式PLL回路内の位相比較回路PHASE_COMPの出力S_PHが頻繁に変化しているか否かを判定する定常状態検出回路CONV_DETを設け、位相比較回路の出力S_PHが暫く変化していない時は定常状態に達していないと判定し、頻繁に変化している時は定常状態に達したと判定し、その判定結果に基づいて、電圧制御発振回路VCOの発振周波数をデジタル制御信号S_DGによって制御する制御幅を変更し、もしくは(および)、アナログ制御信号S_AGを変化させる頻度を変更する。これにより、定常状態に達する前の収束性を損なうことなく、定常状態に達した後のデジタル制御信号による発振周波数の制御幅を小さくできる。よって、定常状態における位相ジッタを低減できる。
【解決手段】ハイブリッド制御方式PLL回路内の位相比較回路PHASE_COMPの出力S_PHが頻繁に変化しているか否かを判定する定常状態検出回路CONV_DETを設け、位相比較回路の出力S_PHが暫く変化していない時は定常状態に達していないと判定し、頻繁に変化している時は定常状態に達したと判定し、その判定結果に基づいて、電圧制御発振回路VCOの発振周波数をデジタル制御信号S_DGによって制御する制御幅を変更し、もしくは(および)、アナログ制御信号S_AGを変化させる頻度を変更する。これにより、定常状態に達する前の収束性を損なうことなく、定常状態に達した後のデジタル制御信号による発振周波数の制御幅を小さくできる。よって、定常状態における位相ジッタを低減できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PLL(Phase Locked Loop)回路に関し、特にデジタル制御信号およびアナログ制御信号の両方によって制御される電圧制御発振器を有するハイブリッド制御方式PLL回路に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者が検討した技術として、例えば、PLL回路においては、以下の技術が考えられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、位相比較器、周波数比較器、および電圧制御発振器などを含んだPLL回路において、電源電圧が変動した際にもジッタの小さいクロック信号を発生可能にする電圧制御発振器の回路構成が示されている。具体的には、互いに並列接続されたリングオシレータおよび容量と、これらの電源電圧(電流)を制御することで発振周波数を制御するMOSトランジスタとを備えた構成に対して、位相比較結果に応じて発振周波数を制御する第2の手段を設けた構成となっている。この第2の手段は、リングオシレータに対して接続/非接続を切り替え可能な容量で実現され、位相比較結果に応じてこの容量を接続した際には負荷の増大と共に発振周波数が遅くなり、非接続の場合はその逆となる。
【0004】
また、特許文献2には、周波数比較器の比較結果に対して、積分回路、コンパレータおよびゲイン調整回路による処理を経てVCO(Voltage Controlled Oscillator)に反映させる構成のPLL回路が示されている。この周波数比較器は、VCOからの3相クロックから得られる3つの位相区間を基準に入力クロックの位相の変化を観察することで周波数の高低を比較判定する。このような周波数比較器の結果に対して前述したような各種の処理を経てVCOに反映させることで、周波数比較器の誤検出が発生した場合でもその影響を低減可能となる。
【特許文献1】特開2001−257567号公報
【特許文献2】特開2005−252723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記のようなPLL回路の技術について、本発明者が検討した結果、以下のようなことが明らかとなった。
【0006】
例えば、特許文献1に示されるPLL回路は、電圧制御発振器の発振周波数を、デジタル制御とアナログ制御によって制御するハイブリッド制御の構成となっている。デジタル制御では、前述した第2の手段となる容量の接続/非接続の切り替えが、位相比較結果となるデジタル信号に基づいて行われる。一方、アナログ制御では、前述した発振周波数を制御するMOSトランジスタのゲート電圧がチャージポンプ回路の出力によってアナログ的に制御され、このチャージポンプ回路の充放電が位相比較結果および周波数比較結果に基づいて制御される。
【0007】
図14は、本発明の前提として検討したPLL回路に含まれる電圧制御発振回路の概略構成を示す回路図である。
【0008】
図14に示す電圧制御発振回路VCOは、特許文献1に示される電圧制御発振回路の特徴を反映したものであり、リングオシレータ回路OSC、容量C1〜C3、NMOSトランジスタT1、PMOSトランジスタT2,T3および抵抗R1などによって構成される。リングオシレータ回路OSCは、高電位側電源ノードVddと第2低電位側電源ノードVss2の間に設けられる。NMOSトランジスタT1は、第2低電位側電源ノードVss2と第1低電位側電源ノードVssの間に設けられ、そのゲート電圧によってリングオシレータ回路OSCへの供給電流を制御し、結果として、第2低電位側電源ノードVss2の電圧の制御を通じてリングオシレータ回路OSCの発振周波数を制御する。
【0009】
高電位側電源ノードVddには、順に、容量C3、PMOSトランジスタT2、PMOSトランジスタT3が直列に接続され、このPMOSトランジスタT3の先がリングオシレータ回路OSCの内部ノードに接続される。PMOSトランジスタT2は、デジタル制御信号S_DGによってオン/オフが制御される。PMOSトランジスタT2がオンに制御された際には、リングオシレータ回路OSCに対して容量C3が付加されることになる。したがって、PMOSトランジスタT2をオフに制御することで相対的に発振周波数を高くし、オンに制御することで相対的に発振周波数を低くすることができる。なお、PMOSトランジスタT3のゲートは第2低電位側電源ノードVss2に接続されており、通常オン状態を保っている。このPMOSトランジスタT3は、デジタル制御信号S_DGのオン/オフに伴うカップリングノイズがリングオシレータ回路OSCの内部ノードに直接影響を与えないようにするためのものであり、場合によっては省略可能である。このようにデジタル制御信号S_DGによるデジタル制御を用いることで、リングオシレータ回路OSCの熱雑音等に起因する発振周波数の微少変化を1回の制御で一気に補正することができる。
【0010】
一方、NMOSトランジスタT1のゲートには、抵抗R1および容量C2からなるローパスフィルタを介してアナログ制御信号S_AGが印加される。このアナログ制御信号S_AGによるアナログ制御は、前述したようなデジタル制御を併用することによって高速性が求められなくなる。したがって、ローパスフィルタを介してアナログ制御信号S_AGを接続することが可能となり、さらに、高電位側電源ノードVddと第2低電位側電源ノードVss2の間に容量C1を設けることも可能となる。これらによって、突発的な電源ノイズなどに起因するアナログ制御電圧の変動やリングオシレータ回路OSCにかかる電源電圧の変動を極力抑えることが可能となり、これらに起因する発振周波数の変動を抑えることが可能となる。
【0011】
ところで、この特許文献1の構成を用いると、例えば定常状態では、位相比較結果を反映してデジタル制御信号S_DGがハイレベルとローレベルを交互に推移し、これに伴い容量C3の接続/非接続が交互に切り替えられる。この状態では、アナログ制御による周波数調整が収束し、この収束した周波数を中心として上下にデジタル制御に伴う制御幅の周波数変動が加わることになる。デジタル制御におけるこの容量C3の切り替えに伴う周波数の制御幅は、例えば、リングオシレータ回路OSCの熱雑音による高速ノイズを補正する程度の大きさを確保すればよい。このデジタル制御による制御幅の大きさは、定常状態ではジッタ成分となることから必要最小限の大きさであることが望ましい。
【0012】
一方、アナログ制御による周波数の最小制御幅は、例えばデジタル制御による制御幅の1/5〜1/10程度またはそれ以下にするとよい。そうすると、アナログ制御でこの制御幅分の変化が生じた際に、その前後でデジタル制御の制御幅が適度に重なり合い、好適な周波数調整を実現できる。このようなことから、前述したようにデジタル制御の制御幅を小さくするためには、その分アナログ制御の制御幅も小さくする必要がある。
【0013】
ところが、アナログ制御の制御幅を小さくするためにはチャージポンプ回路による充電および放電の1回当たりの電荷移動量を小さくする必要がある。そのためにはチャージポンプ回路を構成するトランジスタなどの素子を小さくする必要がある。しかしながら、使用する半導体テクノロジで作成可能な素子の最小サイズには限度があり、そのサイズの素子で構成したチャージポンプ回路の1回当たりの電荷移動量が低減の限度となる。すると、デジタル制御の制御幅の低減や位相ジッタ低減の限度もこれによって決まる。
【0014】
そこで、本発明の目的は、PLL回路において、周波数の最小制御幅の限度を除去し、位相ジッタをさらに低減可能にすることにある。
【0015】
本発明は、前述したようなことを鑑みてなされたものであり、前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願において開示される実施例のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0017】
すなわち、代表的な実施例によるPLL回路は、定常状態に達しているか否かを検出する手段を備え、定常状態に達している時と達していない時とで一部異なる動作をする。
【0018】
例えば、定常状態に達していない時には、チャージポンプ回路による充電および放電の頻度を下げることにより平均的に見た時の1サイクル当たりの電荷移動量を小さくする。定常状態に達している時には、その状態から外れないようにするため充放電の頻度を下げることはできない。しかしその代わり、定常状態に達している時には充電と放電がほぼ交互に行なわれるため、充電と放電が打ち消し合って平均的に見るとほぼゼロになる。
【0019】
前述のように、ハイブリッド制御型のPLL回路ではアナログ制御信号による制御は高速性を必要としないため、チャージポンプ回路による充放電の効果が直ちに全て現れず所定の時定数で徐々に現れるようにすることができる。したがって、その時定数程度の時間に亘って平均的に見た1サイクル当たりの電荷移動量が小さければ、1サイクルごとの電荷移動によるアナログ制御の制御幅がデジタル制御の制御幅の1/5〜1/10程度を超える場合があっても問題とならない。
【0020】
他の構成例では、定常状態に達していない時にはデジタル制御による制御幅を大きくし、定常状態に達している時には小さくする。定常状態に達していない時には位相ジッタを小さくする必要がないため、デジタル制御による制御幅を大きくすることが可能であり、アナログ制御による1サイクル当たりの制御幅をデジタル制御による制御幅に比べて相対的に小さく見せかけることができる。定常状態に達している時はデジタル制御による制御幅を小さくし位相ジッタを小さくする必要があるが、前述のように定常状態では充放電が打ち消し合って平均的に見た1サイクル当たりアナログ制御の制御幅が小さくなる。
【0021】
定常状態に達しているか否かを検出する手段は、例えば、位相比較回路の出力が頻繁に変化しているか否かを判定する回路により構成する。定常状態に達している場合には、位相差と周波数差が殆ど無いため、多くの場合は1サイクルごとに交互に位相比較結果が切り替わり、高速のデジタル制御によって1サイクルごとに位相関係が逆転するはずである。実際には、チャージポンプ回路による充電と放電の電荷移動量が異なるため、位相比較回路が2サイクル連続して同じ値を出力することが時々発生する。また、さらにこれにノイズなどが加わることにより、さらに低い確率で3サイクル連続することもある。一方、発振周波数がほぼ定常値に達している場合で位相が定常状態に達していない場合には、位相がなかなか反転しないため位相比較回路が多数サイクルに亘って同じ値を出力することになる。したがって、位相比較回路がある程度以上の時間に亘って同じ値を出力している時には定常状態に達していないと判定し、それ以下の時間で変化している時には定常状態に達していると判定することにより、定常状態に達しているか否かを検出することができる。
【0022】
なお上述のように、定常状態に達していても3サイクル連続して位相比較回路が同じ値を出力する場合が、確率は低いが存在する。一方、4サイクル連続して位相比較回路が同じ値を出力している場合は定常状態に達していない場合が殆どである。したがって、通常は4サイクル連続して位相比較回路が同じ値を出力している時に定常状態に達していないと判定するのがほぼ最適である。ただし、4サイクル以外の値にした設計も可能である。
【発明の効果】
【0023】
代表的な実施例によれば、ハイブリッド制御方式のPLL回路において、デジタル制御信号による制御幅を小さくし位相ジッタを低減することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0025】
また、実施の形態の各機能ブロックを構成する回路素子は、特に制限されないが、公知のCMOS(相補型MOSトランジスタ)等の集積回路技術によって、単結晶シリコンのような半導体基板上に形成される。実施の形態では、トランジスタの一例としてMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を用い、その一例としてMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタを用いる。各図面において、Pチャネル型MOSトランジスタ(PMOSトランジスタ)にはゲートに丸印の記号を付すことで、Nチャネル型MOSトランジスタ(NMOSトランジスタ)と区別することとする。
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1によるPLL回路の構成例を示すブロック図である。
【0028】
図1に示すPLL回路は、位相比較回路PHASE_COMPと、周波数比較回路FREQ_COMPと、位相逆転検出回路REV_DETと、定常状態検出回路CONV_DETと、デジタル制御回路DIG_CNTLと、チャージポンプ制御回路CP_CNTLと、チャージポンプ回路CPと、電圧制御発振回路VCOと、分周回路DIVと、遅延回路DLYなどによって構成される。
【0029】
電圧制御発振回路VCOは、3ビット構成のデジタル制御信号S_DGとアナログ制御信号S_AGを受け、これに基づいて発振周波数が制御されたクロック信号を生成する。
【0030】
分周回路DIVは、電圧制御発振回路VCOによって生成されたクロック信号を分周し、分周されたクロック信号CLK_OUTを出力する。このクロック信号CLK_OUTは、例えば、半導体集積回路装置内に含まれるクロックツリー等の供給経路を介して各フリップフロップ回路等に供給される。また、分周回路DIVは、電圧制御発振回路VCOによって生成されたクロック信号をフィードバック用として分周し、この分周された信号が、遅延回路DLYを介してフィードバック用クロック信号(フィードバック信号)CLK_FBとなる。なお、遅延回路DLYは、分周回路DIVから各フリップフロップ回路に至るクロック分配経路を反映した遅延量を備え、クロック信号CLK_OUTが実際に各フリップフロップ回路に入力される時点での位相をリファレンス用クロック信号(リファレンス信号)CLK_REFの位相に合わせ込むために設けられる。
【0031】
位相比較回路PHASE_COMPは、リファレンス信号(基準信号)CLK_REFとフィードバック信号CLK_FBの位相を比較し、その比較結果となる位相比較回路の出力S_PHを、定常状態検出回路CONV_DETおよびデジタル制御回路DIG_CNTLおよびチャージポンプ制御回路CP_CNTLに出力する。
【0032】
周波数比較回路FREQ_COMPは、リファレンス信号CLK_REFを反転した反転リファレンス信号CLKB_REFとフィードバック信号CLK_FBの周波数を比較し、その比較結果として2つの周波数比較回路の出力S_REF,S_FBをチャージポンプ制御回路CP_CNTLに出力する。
【0033】
位相逆転検出回路REV_DETは、フィードバック信号CLK_FBを反転した信号と反転リファレンス信号CLKB_REFを比較し、位相の逆転が発生したか否かを判定した結果として2つの位相逆転検出回路の出力S_REV1,S_REV2をチャージポンプ制御回路CP_CNTLに出力する。
【0034】
定常状態検出回路CONV_DETは、位相比較回路PHASE_COMPの出力S_PHを基に、図1のPLL回路全体が定常状態に達したか否かを判定し、その判定結果となる定常状態検出回路の出力S_CONVを、デジタル制御回路DIG_CNTLおよびチャージポンプ制御回路CP_CNTLに出力する。
【0035】
デジタル制御回路DIG_CNTLは、位相比較回路PHASE_COMPの出力S_PHと定常状態検出回路CONV_DETの出力S_CONVを基に、電圧制御発振回路VCOを制御する3ビットのデジタル制御信号S_DGを出力する。
【0036】
チャージポンプ制御回路CP_CNTLは、位相比較回路PHASE_COMPや周波数比較回路FREQ_COMPや位相逆転検出回路REV_DETや定常状態検出回路CONV_DETの出力を基に、チャージポンプ回路CPに対して4通りの制御信号S_UH,S_UL,S_DH,S_DLを出力する。制御信号S_UHは、発振周波数を大きく上げたい際に出力され、制御信号S_ULは、発振周波数を少しだけ上げたい際に出力される。一方、制御信号S_DHは、発振周波数を大きく下げたい際に出力され、制御信号S_DLは、発振周波数を少しだけ下げたい際に出力される。
【0037】
チャージポンプ回路CPは、チャージポンプ制御回路CP_CNTLからの4通りの制御信号S_UH,S_UL,S_DH,S_DLを受け、これらの制御信号にそれぞれ対応した電荷量をアナログ制御信号S_AGのノードに充放電する。また、定常状態検出回路CONV_DETやチャージポンプ制御回路CP_CNTLやチャージポンプ回路CPなどは、反転リファレンス信号CLKB_REFに同期して動作する。
【0038】
次に、図1のPLL回路全体の、電源を投入してから定常状態に達するまでの状態変化の概要について説明する。
【0039】
電源投入直後から暫くの間は、電圧制御発振回路VCOは発振しないかまたは目標の発振周波数と大きく異なる周波数で発振するため、リファレンス信号CLK_REFとフィードバック信号CLK_FBの周波数は大きく異なる。この時には、周波数比較回路FREQ_COMPや位相逆転検出回路REV_DETは周波数が異なることを示す信号や位相が逆転したことを示す信号を頻繁に出力し、チャージポンプ制御回路CP_CNTLによるチャージポンプ回路CPの制御は周波数比較回路の出力S_REF,S_FBに基づく制御が支配的となる。その結果、フィードバック信号CLK_FBの周波数はリファレンス信号CLK_REFの周波数に近づいていく。
【0040】
フィードバック信号CLK_FBの周波数がリファレンス信号CLK_REFの周波数とほぼ一致すると、周波数比較回路が周波数の異なることを示す信号を周波数比較回路の出力S_REF,S_FBに出力する頻度が下がる。すると、チャージポンプ制御回路CP_CNTLによるチャージポンプ回路CPの制御は、位相比較回路PHASE_COMPの出力S_PHに基づく制御の方が支配的となる。また、この状態に移行した直後は、フィードバック信号CLK_FBとリファレンス信号CLK_REFは周波数がほぼ同じであっても位相が離れている場合が多く、一方の位相が他方の位相より早い状態や遅い状態がそれぞれ長い時間続き、時々その関係が逆転するという変化を繰り返すことになる。この時には、位相比較回路の出力S_PHは長い時間同じ値をとりたまに変化する。
【0041】
このPLL回路には定常状態検出回路CONV_DETが設けてあり、位相比較回路の出力S_PHが所定時間(例えばリファレンス信号CLK_REFの4サイクルに相当する時間)以上同じ値をとると、定常状態に達していないことを示すレベル(ハイレベル(Vdd)またはローレベル(Vss))を定常状態検出回路の出力S_CONVに出力する。その信号に基づき、デジタル制御回路DIG_CNTLはその出力であるデジタル制御信号S_DGを3ビットとも位相比較回路PHASE_COMPの出力S_PHに応じて変化させる。
【0042】
すると、電圧制御発振回路VCOの発振周波数は3ビット分のデジタル制御信号S_DGに応じて大きく変化する。また、チャージポンプ制御回路CP_CNTLは位相比較回路PHASE_COMPの出力S_PHに応じてアナログ制御信号S_AGを少しだけ変化させる信号を制御信号S_ULまたは制御信号S_DLに出力するが、定常状態検出回路の出力S_CONVが定常状態に達していないことを示している時には、反転リファレンス信号CLKB_REFの所定サイクル数(例えば8サイクル)ごとに1回だけ上記の信号を出力し、その他のサイクルでは両方とも出力しない。
【0043】
これにより、アナログ制御信号S_AGは反転リファレンス信号CLKB_REFの所定サイクル数ごとに1回だけしか変化せず、結果的にゆっくりとした変化になる。すなわち、デジタル制御信号S_DGによる発振周波数の制御幅が大きくアナログ制御信号S_AGによる発振周波数の制御が少しずつしか行なわれない状態になる。これは、位相ジッタは大きくなるがアナログ制御信号S_AGが収束しやすい状態である。
【0044】
この場合でも、位相比較回路の出力S_PHは時々変化し、その直後には定常状態検出回路CONV_DETは定常状態に達したことを示すレベルを定常状態検出回路の出力S_CONVに出力する。しかし上記の所定時間が経過すると、定常状態検出回路の出力S_CONVは再び定常状態に達していないことを示すレベルになる。アナログ制御信号S_AGが収束してくると、位相比較回路の出力S_PHが変化する頻度が高くなり、定常状態に達していることを定常状態検出回路の出力S_CONVが示す頻度が高くなる。そして、位相比較回路の出力S_PHが上記の所定時間以内に必ず変化するようになると、定常状態検出回路CONV_DETは定常状態に達したことを示すレベルを定常状態検出回路の出力S_CONVに常に出力し続けることになる。
【0045】
定常状態検出回路の出力S_CONVが定常状態に達していることを示している時には、デジタル制御回路DIG_CNTLは、デジタル制御信号S_DGのうち1ビットのみを位相比較回路PHASE_COMPの出力S_PHに応じて変化させ、他のビットは一方をハイレベルに他方をローレベルに固定する。すると、電圧制御発振回路VCOの発振周波数はデジタル制御信号S_DGの1ビット分に応じて小さく変化する。また、チャージポンプ制御回路CP_CNTLは位相比較回路PHASE_COMPの出力S_PHに応じてアナログ制御信号S_AGを少しだけ変化させる信号を制御信号S_ULまたは制御信号S_DLに毎サイクル出力する。
【0046】
これにより、アナログ制御信号S_AGは位相比較回路PHASE_COMPの出力S_PHを全て反映した変化をする。しかし、この時には位相比較回路の出力S_PHが頻繁に変化しているため、アナログ制御信号S_AGを少しだけ上げる制御信号S_ULと少しだけ下げる制御信号S_DLが両方とも頻繁に出力されて互いに相殺し、アナログ制御信号S_AGが急激に変化することはない。すなわち、デジタル制御信号S_DGによる発振周波数の制御幅が小さいため位相ジッタが小さくなり、アナログ制御信号S_AGも急激に変化せず安定した状態になる。以後はこの状態が継続する。
【0047】
次に、図1に示したPLL回路を構成する各ブロックについて、その具体的な構成例を順に説明する。
【0048】
図2は、図1のPLL回路において、その位相比較回路PHASE_COMPの詳細な構成例を示す回路図である。
【0049】
図2に示す位相比較回路PHASE_COMPは、セットリセットラッチ回路SR20と、NAND回路ND20と、遅延回路IV_DLY20と、インバータ回路IV20、IV21と、フリップフロップ回路FF20によって構成される。
【0050】
セットリセットラッチ回路SR20は、2つのNAND回路ND21,ND22によって構成され、NAND回路ND21の一方の入力ノードにはリファレンス信号CLK_REFが入力され、ND22の一方の入力ノードにはフィードバック信号CLK_FBが入力される。また、ND21の他方の入力ノードには、NAND回路ND22の出力ノードが接続され、NAND回路ND22の他方の入力ノードには、NAND回路ND21の出力ノードが接続される。
【0051】
NAND回路ND20は、一方の入力ノードにリファレンス信号CLK_REFが入力され、他方の入力ノードにフィードバック信号CLK_FBが入力される。NAND回路ND20の出力は、ここでは3段のインバータ回路からなる遅延回路IV_DLY20を介してフリップフロップ回路FF20のクロックトリガに使用される。フリップフロップ回路FF20のデータ入力ノードは、NAND回路ND22の出力ノードがインバータ回路IV21を介して接続される。なお、NAND回路ND21の出力ノードに接続されたインバータ回路IV20は、ND22の出力に対する負荷とバランスを等しくするために設けられている。
【0052】
この位相比較回路PHASE_COMPは、リファレンス信号CLK_REFの立ち上がりエッジとフィードバック信号CLK_FBの立ち上がりエッジのどちらが先に現れるかをセットリセットラッチ回路SR20で検出し、その検出結果をフリップフロップ回路FF20に取り込んで保持すると共に、その比較結果を示すデジタル信号として位相比較回路の出力S_PHを出力する。
【0053】
図3は、図1のPLL回路において、その周波数比較回路FREQ_COMPの詳細な構成例を示す回路図である。
【0054】
図3に示す周波数比較回路FREQ_COMPは、インバータ回路IV30,IV31と、遅延回路IV_DLY30,IV_DLY31と、AND回路AD30,AD31と、セットリセットラッチ回路SR30と、インバータ回路IV32,IV33と、フリップフロップ回路FF30,FF31によって構成される。セットリセットラッチ回路SR30は、2つのNOR回路NR30,NR31によって構成され、NOR回路NR30の一方の入力ノードにはAND回路AD30の出力信号A0が入力され、NOR回路NR31の一方の入力ノードにはAND回路AD31の出力信号A1が入力される。また、NOR回路NR30の他方の入力ノードには、NOR回路NR31の出力ノードが接続され、NOR回路NR31の他方の入力ノードには、NOR回路NR30の出力ノードが接続される。
【0055】
インバータ回路IV30には反転リファレンス信号CLKB_REFが入力され、その出力はAND回路AD30の一方の入力ノードと遅延回路IV_DLY30の入力ノードに接続される。また、遅延回路IV_DLY30の出力はAND回路AD30の他方の入力ノードに接続される。この構成により、AND回路AD30の出力A0には反転リファレンス信号CLKB_REFの立ち下がりエッジに同期したパルスが出力される。同様に、インバータ回路IV31にはフィードバック信号CLK_FBが入力され、その出力はAND回路AD31の一方の入力ノードと遅延回路IV_DLY31の入力ノードに接続される。また、遅延回路IV_DLY31の出力はAND回路AD31の他方の入力ノードに接続される。この構成により、AND回路AD31の出力A1にはフィードバック信号CLK_FBの立ち下がりエッジに同期したパルスが出力される。
【0056】
この出力A0と出力A1がセットリセットラッチ回路SR30に入力されているため、出力A0と出力A1に出力されるパルスが両方とも消えた後には、出力A0と出力A1のうちのいずれのパルスが先に消えたかをセットリセットラッチ回路SR30に記憶している。そして、その情報がインバータ回路IV32やインバータ回路IV33を介してフリップフロップ回路FF30やフリップフロップ回路FF31のデータ入力端子B0やB1に入力されている。
【0057】
すると、先にパルスが消えた側にその次のパルスが現れた場合は、フリップフロップ回路FF30またはフリップフロップ回路FF31が周波数比較回路の出力S_REFまたはS_FBにローレベルを出力し、出力A0と出力A1に交互にパルスが現れていることを認識できる。後からパルスが消えた側に次のパルスが現れた場合は、フリップフロップ回路FF30またはフリップフロップ回路FF31が周波数比較回路の出力S_REFまたはS_FBにハイレベルを出力し、その側のパルスが2回以上連続して現れたことを認識できる。
【0058】
反転リファレンス信号CLKB_REFはリファレンス信号CLK_REFを反転した信号であるため、この周波数比較回路FREQ_COMPは、リファレンス信号CLK_REFの立ち上がりエッジとフィードバック信号CLK_FBの立ち下がりエッジが交互に現れているか否かを検出することになる。そして、交互に現れている場合にはその検出結果を示すデジタル信号である周波数比較回路の出力S_REFおよびS_FBにローレベルを出力し、いずれか一方が2回以上連続して現れた場合にはその側の周波数比較回路の出力S_REFまたはS_FBにハイレベルを出力する。
【0059】
なお、定常状態では、図1のPLL回路はリファレンス信号CLK_REFとフィードバック信号CLK_FBの周波数と位相をほぼ一致させ両方の立ち上がりエッジがほぼ同時刻となるように制御するので、リファレンス信号CLK_REFの立ち上がりエッジとフィードバック信号CLK_FBの立ち下がりエッジが交互に現れて周波数比較回路の出力S_REFおよびS_FBには常にローレベルが出力される。
【0060】
図1のPLL回路において、その位相逆転検出回路REV_DETは、周波数比較回路FREQ_COMPが周波数比較回路の出力S_REFまたはS_FBにハイレベルを出力した後に、リファレンス信号CLK_REFとフィードバック信号CLK_FBの位相差が半回転しその位相関係が逆転したことを検出するために設けた回路である。この回路は、フィードバック信号CLK_FBを反転して入力する以外は周波数比較回路と同じ構成の回路であり、リファレンス信号CLK_REFとフィードバック信号CLK_FBの立ち上がりエッジ同士が交互に現れているか否かを検出する。交互に現れている場合には位相逆転検出回路の出力S_REV1およびS_REV2にローレベルを出力し、いずれか一方が2回以上連続して現れた場合には位相逆転検出回路の出力S_REV1またはS_REV2にハイレベルを出力する回路として作用する。
【0061】
リファレンス信号CLK_REFとフィードバック信号CLK_FBの周波数が近づくと、リファレンス信号CLK_REFの1サイクル当たりに対するフィードバック信号CLK_FBとの位相差の変化が小さくなる。ここで、リファレンス信号CLK_REFの立ち上がりエッジとフィードバック信号CLK_FBの立ち下がりエッジのいずれかが2回連続して現れた時は位相がほぼ半周期ずれている時であり、その後暫くの間は周波数の高い側の位相が遅れた状態になる。この状態の時に位相比較回路PHASE_COMPの出力S_PHに基づいてチャージポンプ回路CPを制御すると、所望とは逆の制御がかかることになる。これを避けることが位相逆転検出回路REV_DETを設ける第1の目的である。リファレンス信号CLK_REFとフィードバック信号CLK_FBの立ち上がりエッジ同士のいずれかが2回連続して現れた時は位相がほぼ一致している時であり、その後は次にリファレンス信号CLK_REFの立ち上がりエッジとフィードバック信号CLK_FBの立ち下がりエッジのいずれかが2回連続して現れるまで周波数の高い側の位相が進んだ状態になる。この状態の時に位相比較回路PHASE_COMPの出力S_PHに基づいてチャージポンプ回路CPを制御すれば所望の制御がかかる。したがって、周波数比較回路FREQ_COMPの出力のいずれかがハイレベルになった後は位相比較回路PHASE_COMPの出力S_PHに基づくチャージポンプ回路CPの制御を停止し、位相逆転検出回路REV_DETの出力のいずれかがハイレベルになった後に再開すればよい。
【0062】
また、リファレンス信号CLK_REFとフィードバック信号CLK_FBの周波数がさらに近づくと、リファレンス信号CLK_REFの1サイクル当たりに対するフィードバック信号CLK_FBとの位相差の変化がさらに小さくなり、各エッジが交互に現れても周波数比較回路FREQ_COMPが周波数比較回路の出力S_REFまたはS_FBにハイレベルを出力する誤検出を生じることがある。この誤検出の影響を防止することが位相逆転検出回路REV_DETを設ける第2の目的である。この誤検出が生じるのはリファレンス信号CLK_REFの立ち上がりエッジとフィードバック信号CLK_FBの立ち下がりエッジがほぼ同時刻に現れる場合であり、正しい検出が行なわれる1サイクルを挟んで前後何サイクルかの間連続して発生する。その最初のサイクルで現れる誤検出は、周波数の高い側の信号が後から現れるため結果的には正しい検出と同じ信号を出力する。また、1サイクルの正しい検出を挟む一連のサイクルでの誤検出が発生してから次に1サイクルの正しい検出を挟む一連のサイクルでの誤検出が発生するまでの間には、リファレンス信号CLK_REFとフィードバック信号CLK_FBの位相差が1回転する。そしてその間の約半回転の時点で、位相逆転検出回路REV_DETが位相逆転検出回路の出力S_REV1またはS_REV2にハイレベルを出力する。したがって、周波数比較回路FREQ_COMPの出力S_REFまたはS_FBに基づいてチャージポンプ回路CPを制御した後は、次に位相逆転検出回路REV_DETが位相逆転検出回路の出力S_REV1またはS_REV2のいずれかにハイレベルを出力するまで、周波数比較回路FREQ_COMPの出力に基づくチャージポンプ回路CPの制御を行わないようにすればよい。これにより、周波数比較回路FREQ_COMPの誤検出の影響を回避できる。
【0063】
図4は、図1のPLL回路において、その定常状態検出回路CONV_DETの詳細な構成例を示す回路図である。
【0064】
図4に示す定常状態検出回路は、位相比較回路の出力S_PHが反転したことを検出する部分FLIP_DETと、位相比較回路の出力S_PHが反転してからの経過時間を計測し所定時間が経過したことを検知する部分TIMERによって構成される。それぞれの部分は、インバータ回路IV40と、フリップフロップ回路FF40〜FF42と、OR−NAND複合回路RD40,RD41と、NAND回路ND40〜ND44によって構成される。フリップフロップ回路FF40は1サイクル前の位相比較回路の出力S_PHを記憶し、反転したことを検出する部分FLIP_DETは現在の位相比較回路の出力S_PHと1サイクル前の位相比較回路の出力S_PHを比較する。この2つが異なる時には位相比較回路の出力S_PHが反転したと判定し、それを示す信号を信号SB_FLIPに出力する。
【0065】
図4に示す回路では、位相比較回路の出力S_PHが反転した時には信号SB_FLIPがローレベルになり、反転しない時にはハイレベルになる。所定時間が経過したことを検知する部分TIMERは、フリップフロップ回路FF41およびFF42などが構成する2ビットカウンタにより構成される。この2ビットカウンタは反転リファレンス信号CLKB_REFのパルス数をカウントするが、信号SB_FLIPがローレベルになると次のサイクルではカウント値が0にリセットされる。信号SB_FLIPがハイレベルの間は1カウントずつカウント値が進み、カウント値が3に達すると定常状態検出回路の出力S_CONVにローレベルを出力して以後はそのカウント値に固定する。すなわち、この定常状態検出回路CONV_DETは、位相比較回路の出力S_PHが4サイクル以上に渡って反転していない時には定常状態検出回路の出力S_CONVにローレベルを出力し、位相比較回路の出力S_PHが3サイクル以内に反転している時には定常状態検出回路の出力S_CONVにハイレベルを出力する回路として作用する。
【0066】
図5は、図1のPLL回路において、そのデジタル制御回路DIG_CNTLの詳細な構成例を示す回路図である。
【0067】
図5に示すデジタル制御回路は、インバータ回路IV50,IV51やNAND回路ND50やNOR回路NR50によって構成される。図5に示す回路では、定常状態検出回路の出力S_CONVがローレベルの時にはデジタル制御信号S_DGには3ビットとも位相比較回路の出力S_PHと同じレベルを出力し、定常状態検出回路の出力S_CONVがハイレベルの時にはデジタル制御信号S_DGの内の1ビットのみに位相比較回路の出力S_PHと同じレベルを出力し他の2ビットにはそれぞれローレベルとハイレベルを出力する。
【0068】
図6は、図1のPLL回路において、その電圧制御発振回路VCOの詳細な構成例を示す回路図である。
【0069】
図6の電圧制御発振回路は、図14で述べた電圧制御発振回路VCOのより詳細な構成例を示すものであり、デジタル制御部DG_CTLと、リングオシレータ回路OSCと、バッファ回路BUFと、レベルシフト回路LSと、アナログ制御部AG_CTLによって構成される。リングオシレータ回路OSCは、高電位側電源ノードVddと第2低電位側電源ノードVss2の間に接続された奇数段(ここでは5段)のCMOSインバータ回路IV60〜IV64によって構成される。5段目となるIV64の出力ノードは抵抗R3を介して1段目となるIV60の入力ノードに帰還されており、このリング構造によって発振動作を行う。
【0070】
図14で述べた公知例の回路と異なり、図6の回路のデジタル制御部DG_CTLは、抵抗R3と並列に設けられた、ゲート電極にデジタル制御信号S_DGの各ビットを接続したPMOSトランジスタT2〜T4によって構成される。PMOSトランジスタT2〜T4が全て遮断状態の時にはインバータ回路IV64の出力ノードとインバータ回路IV60の入力ノードの間は抵抗R3のみの抵抗値で接続されているが、PMOSトランジスタT2〜T4のうちのいくつかが導通状態になるとそのPMOSトランジスタの抵抗値に相当する分が並列接続され帰還回路の抵抗値が下がり発振周波数が高くなる。これによる発振周波数の変化分がデジタル制御信号S_DGによる制御幅である。
【0071】
図14で述べた公知例の回路では、半導体テクノロジで作成可能な最小サイズでPMOSトランジスタT2や容量C3を設計した場合より発振周波数の制御幅を小さくすることは困難であるが、図6の回路では、抵抗R3の抵抗値を小さくすることにより比較的容易に発振周波数の制御幅を小さくすることができる。
【0072】
デジタル制御信号S_DGが3ビットとも同時に変化する場合には、PMOSトランジスタT2〜T4の導通状態または遮断状態が同時に制御されるため発振周波数の制御幅は大きくなる。デジタル制御信号S_DGのうちの1ビットだけが変化し他のビットがそれぞれローレベルとハイレベルに固定される場合には、1個のPMOSトランジスタによる分だけ発振周波数を制御することになり制御幅は小さくなる。PMOSトランジスタT2〜T4が全て同じサイズになるように設計しておくと、デジタル制御信号S_DGのうちの1ビットだけが変化する場合の発振周波数の制御幅は3ビットとも変化する場合の約3分の1となる。また、1ビットだけ変化する制御信号に接続されている1個のPMOSトランジスタだけが小さくなるように設計しておくと、1ビットだけが変化する場合の発振周波数の制御幅は3ビットとも変化する場合に比べ3分の1よりさらに小さくできる。
【0073】
バッファ回路BUFは、例えば、高電位側電源ノードVddと第2低電位側電源ノードVss2の間に接続された2段のCMOSインバータ回路IV65,IV66によって構成され、1段目となるインバータ回路IV65の入力ノードにリングオシレータ回路OSCの出力ノードOSC_OUT(インバータ回路IV60〜64のいずれかの出力ノード)が接続される。このバッファ回路BUFは、リングオシレータ回路OSCの出力ノードに対する負荷を低減するために設けられる。
【0074】
レベルシフト回路LSは、高電位側電源ノードVddと第1低電位側電源ノードVssの間に接続され、例えば、PMOSトランジスタTp62,Tp63およびNMOSトランジスタTn60,Tn61からなる差動増幅回路と、その出力ノードに接続された2段のCMOSインバータ回路IV68,IV69によって構成される。PMOSトランジスタTp62,Tp63は、差動対として動作し、PMOSトランジスタTp62のゲートはバッファ回路BUF内のインバータ回路IV66の出力ノードBUF_Pに接続され、PMOSトランジスタTp63のゲートはバッファ回路BUF内のインバータ回路IV65の出力ノードBUF_Nに接続される。NMOSトランジスタTn60およびTn61は、カレントミラー回路を構成し、PMOSトランジスタTp63およびTp62のドレインにそれぞれ接続されることで差動増幅回路の負荷電流源として機能する。そして、PMOSトランジスタTp62のドレインが1段目のCMOSインバータ回路IV68の入力ノードに接続され、2段目のCMOSインバータ回路IV69から発振出力信号VCO_OUTが得られる。
【0075】
このレベルシフト回路LSは、高電位側電源ノードVddと第2低電位側電源ノードVss2の間で振れる発振信号を、高電位側電源ノードVddと第1低電位側電源ノードVssの間の全振幅で振れる発振信号に変換するために設けられる。なお、図6のレベルシフト回路LSは、さらに、このような構成に加えて、ストップ信号STPを受けて発振出力信号VCO_OUTをローレベルに固定するためのPMOSトランジスタTp60,Tp61、NMOSトランジスタTn62およびインバータ回路IV67も備えている。ストップ信号STPがハイレベルとなった際には、インバータ回路IV67を介してPMOSトランジスタTp60およびTp61のゲートにローレベルが印加され、このオンとなったPMOSトランジスタTp60およびTp61を介して高電位側電源ノードVddの電圧がPMOSトランジスタTp63およびTp62のゲートに印加される。さらに、ストップ信号STPのハイレベルは、NMOSトランジスタTn62のゲートにも印加され、このオンとなったNMOSトランジスタTn62を介してインバータ回路IV68の入力ノードがローレベルに固定される。
【0076】
アナログ制御部AG_CTLは、図14で述べたような、NMOSトランジスタT1、ならびにNMOSトランジスタT1のゲートに接続された抵抗R1および容量C2からなるローパスフィルタに加えて、抵抗R2を備えた構成となっている。NMOSトランジスタT1は、ドレインが第2低電位側電源ノードVss2に接続され、ソースが抵抗R2を介して第1低電位側電源ノードVssに接続される。また、NMOSトランジスタT1のゲートには、前述したローパスフィルタを介してアナログ制御信号S_AGが入力される。ここで、抵抗R2は、第2低電位側電源ノードVss2と第1低電位側電源ノードVssの間で電圧変動が生じた際にNMOSトランジスタT1に流れる電流が変動するのを抑制するために設けている。
【0077】
図7は、図1のPLL回路において、そのチャージポンプ制御回路CP_CNTLの詳細な構成例を示す回路図である。図7に示すチャージポンプ制御回路は、カウンタ回路CT70と、インバータ回路IV70〜IV72と、NAND回路ND70〜ND75と、フリップフロップ回路FF70〜FF73と、セットリセットラッチ回路SR70によって構成される。カウンタ回路CT70は、反転リファレンス信号CLKB_REFのパルス数をカウントする回路であり、最大カウント値になった次のパルスで0にリセットされさらにカウント動作を繰り返す回路である。ここでは、3ビットカウンタを用い8カウントごとにリセットされる場合を例に説明する。
【0078】
セットリセットラッチ回路SR70は、発振周波数を大きく変化させる制御信号S_UHもしくはS_DHと位相逆転検出回路REV_DETの出力S_REV1もしくはS_REV2のいずれが最後までハイレベルであったのかを記憶する。制御信号S_UHもしくはS_DHの方が最後までハイレベルであった場合はインバータ回路IV72を介してイネーブル信号S_ENBL1にローレベルを出力し、位相逆転検出回路の出力S_REV1もしくはS_REV2の方が最後までハイレベルであった場合はイネーブル信号S_ENBL1にハイレベルを出力する。制御信号S_UHもしくはS_DHと位相逆転検出回路の出力S_REV1もしくはS_REV2が両方とも今なおハイレベルである時は、イネーブル信号S_ENBL1にハイレベルを出力する。イネーブル信号S_ENBL1がハイレベルの時に周波数比較回路FREQ_COMPが周波数比較回路の出力S_REFまたはS_FBにハイレベルを出力すると、反転リファレンス信号CLKB_REFの次の立ち上がりに同期して、このチャージポンプ制御回路CP_CNTLは発振周波数を大きく変化させる制御信号S_UHまたはS_DHにハイレベルを出力する。また、この時に位相逆転検出回路の出力S_REV1およびS_REV2がローレベルであれば、イネーブル信号S_ENBL1はローレベルになる。イネーブル信号S_ENBL1がローレベルの時には、周波数比較回路FREQ_COMPの出力にかかわらず反転リファレンス信号CLKB_REFの次の立ち上がりに同期して制御信号S_UHおよびS_DHにローレベルを出力する。したがって、位相逆転検出回路の出力S_REV1またはS_REV2がハイレベルになった後最初に現れる周波数比較回路の出力S_REFまたはS_FBのハイレベルに対してのみ制御信号S_UHまたはS_DHにハイレベルを出力し、その後は再び位相逆転検出回路の出力S_REV1またはS_REV2がハイレベルになるまで制御信号S_UHおよびS_DHにローレベルを出力する回路として作用する。
【0079】
また、カウンタ回路CT70が8カウントごとにオール1を出力するため、定常状態検出回路CONV_DETが定常状態検出回路の出力S_CONVにローレベルを出力している時には、8サイクルごとに1回だけイネーブル信号S_ENBL2にハイレベルが出力され他の7サイクルではイネーブル信号S_ENBL2にローレベルが出力される。S_CONVがハイレベルの時には、イネーブル信号S_ENBL2には常にハイレベルが出力される。イネーブル信号S_ENBL1およびS_ENBL2が共にハイレベルの時には、位相比較回路PHASE_COMPの出力S_PHに応じて、発振周波数を少しだけ変化させる制御信号S_ULもしくはS_DLにハイレベルが出力される。イネーブル信号S_ENBL1またはS_ENBL2の少なくとも一方がローレベルの時には、制御信号S_ULおよびS_DLには共にローレベルが出力される。すなわち、周波数比較回路の出力S_REFもしくはS_FBのいずれかがハイレベルになった後、位相逆転検出回路の出力S_REV1もしくはS_REV2のいずれかがハイレベルになるまでの間は制御信号S_ULおよびS_DLには共にローレベルを出力し、位相逆転検出回路の出力S_REV1もしくはS_REV2のいずれかがハイレベルになった後は、定常状態検出回路の出力S_CONVがハイレベルであれば毎サイクル、定常状態検出回路の出力S_CONVがローレベルであれば8サイクルごとに1回、位相比較回路の出力S_PHに応じて制御信号S_ULまたはS_DLにハイレベルを出力する回路として作用する。
【0080】
図8は、図1のPLL回路において、そのチャージポンプ回路CPの詳細な構成例を示す回路図である。図8のチャージポンプ回路は、高電位側電源ノードVddと第1低電位側電源ノードVssの間にPMOSトランジスタTp80〜Tp82とNMOSトランジスタTn82〜Tn80を備えている。ここで、PMOSトランジスタTp82とNMOSトランジスタTn82のドレインに該当する出力ノードからはアナログ制御信号S_AGが出力される。
【0081】
また、このアナログ制御信号S_AGの出力ノードと高電位側電源ノードVddの間には、PMOSトランジスタTp80〜Tp82と並列にPMOSトランジスタTp83が接続され、アナログ制御信号S_AGの出力ノードと第1低電位側電源ノードVssの間には、それぞれNMOSトランジスタTn82〜Tn80と並列に2つのNMOSトランジスタTn83、Tn84が接続される。PMOSトランジスタTp81(およびNMOSトランジスタTn81)のゲートには第1パルス信号PLS1(およびその反転信号)が入力される。一方、PMOSトランジスタTp80(およびNMOSトランジスタTn80)のゲートには第2パルス信号PLS2(およびその反転信号)が入力される。
【0082】
第1パルス信号PLS1は、反転リファレンス信号CLKB_REFと、これを合計5段のインバータ回路により構成した遅延回路DLY80およびIV_DLY82により反転および遅延させた信号とをNAND回路ND81で演算することで生成される。この場合、第1パルス信号PLS1は、インバータ回路5段分のパルス幅を備えたローパルス信号となる。一方、第2パルス信号PLS2は、反転リファレンス信号CLKB_REFと、これを合計7段のインバータ回路により構成した遅延回路DLY80およびIV_DLY81により反転および遅延させた信号とをNAND回路ND80で演算し、さらに、その出力を例えば3段のインバータ回路により構成した遅延回路IV_DLY83で反転および遅延させることで生成される。この場合、第2パルス信号PLS2は、インバータ回路7段分のパルス幅を備えたハイパルス信号となり、第1パルス信号PLS1の立ち下がりから遅延回路IV_DLY83の遅延時間分を経て立ち上がるパルス信号となる。すなわち、この遅延回路IV_DLY83の遅延時間が、Tp81(およびTn81)が導通してからTp80(およびTn80)が遮断するまでの時間となり、すなわち高電位側電源ノードVddからアナログ制御信号S_AGの間またはアナログ制御信号S_AGから第1低電位側電源ノードVssの間に電流を流す時間となる。
【0083】
PMOSトランジスタTp82のゲートには、ストップ信号STPの反転信号と制御信号S_ULとをNAND回路ND82で演算した結果が入力され、NMOSトランジスタTn82のゲートには、制御信号S_DLが入力される。したがって、PMOSトランジスタTp82は、ストップ信号STPがローレベル(不活性)の場合で、なおかつ少し周波数を上げたい時の制御信号S_ULがハイレベルとなった場合にオンとなる。一方、NMOSトランジスタTn82は、少し周波数を下げたい時の制御信号S_DLがハイレベルとなった場合にオンとなる。そして、PMOSトランジスタTp82およびNMOSトランジスタTn82の一方がオンとなった場合には、遅延回路IV_DLY83の遅延時間に相当する非常に短い時間幅を備えた電流がアナログ制御信号S_AGの端子に出力されることになる。
【0084】
PMOSトランジスタTp83のゲートには、ストップ信号STPの反転信号と制御信号S_UHとをNAND回路ND83で演算した結果が入力され、NMOSトランジスタTn83のゲートには、制御信号S_DHが入力される。したがって、PMOSトランジスタTp83は、ストップ信号STPがローレベル(不活性)の場合で、なおかつ大きく周波数を上げたい時の制御信号S_UHがハイレベルとなった場合にオンとなる。一方、NMOSトランジスタTn83は、大きく周波数を下げたい時の制御信号S_DHがハイレベルとなった場合にオンとなる。PMOSトランジスタTp83またはNMOSトランジスタTn83が導通する時には、制御信号S_UHまたはS_DHのパルス幅(すなわちリファレンス信号CLK_REFの1サイクル分)に相当する時間幅を備えた電流がアナログ制御信号S_AGの端子に出力されることになる。この時間は遅延回路IV_DLY83の遅延時間より相当長いため、制御信号S_UHまたはS_DHによる制御幅は制御信号S_ULまたはS_DLによる制御幅より相当大きくなる。
【0085】
なお、ストップ信号STPは、例えば、テスト時等において、アナログ制御信号S_AGを第1低電位側電源ノードVss電圧とし、電圧制御発振回路VCOの発振を停止させるために設けている。ストップ信号STPがハイレベルとなった場合は、NAND回路ND82およびND83を介してPMOSトランジスタTp82およびTp83がオフに駆動されると共に、NMOSトランジスタTn84がオンに駆動されることでアナログ制御信号S_AGがVssに接続される。
【0086】
以上、本実施の形態1のPLL回路を用いることで、定常状態におけるデジタル制御信号による発振周波数の制御幅を抑制でき、位相ジッタが小さいPLL回路を実現可能となる。
【0087】
(実施の形態2)
前述した実施の形態1では、チャージポンプ回路CPと電圧制御発振回路VCOの間を1本のアナログ制御信号S_AGで接続する構成について述べた。本実施の形態2では、この間を2本のアナログ制御信号S_AG1およびS_AG2で接続する構成について述べる。
【0088】
図9は、本発明の実施の形態2によるチャージポンプ回路CPの構成例を示す回路図である。図9に示すチャージポンプ回路は、図8で示したチャージポンプ回路と比較して、PMOSトランジスタTp80〜Tp82とNMOSトランジスタTn82〜Tn80が構成する回路から出力するアナログ制御信号S_AG1を他の回路から出力するアナログ制御信号S_AG2と分離した構成を用いている。この目的は、アナログ制御信号S_AG1のノードに付く寄生容量を極力低減することにある。
【0089】
図8の場合、PMOSトランジスタTp80〜Tp82またはNMOSトランジスタTn82〜Tn80を経由し図6の抵抗R1を介して容量C2に充放電される電荷量が、アナログ制御信号S_AGのノードに付く寄生容量に充放電される電荷量より十分に大きければ、この寄生容量を無視することができる。しかし、電流が流れる時間を短くして容量C2に充放電される電荷量を低減しようとすると、この寄生容量が無視できなくなる。図9はこれを回避するための構成であり、PMOSトランジスタTp80〜Tp82とNMOSトランジスタTn82〜Tn80以外の回路を分離してアナログ制御信号S_AG1に付く寄生容量を極力低減している。
【0090】
図10は、図9に示すチャージポンプ回路と共に使用する電圧制御発振回路VCOの中のアナログ制御部AG_CTLの構成例を示す回路図である。この回路では、アナログ制御信号S_AG1およびS_AG2と容量C2の間に別々の抵抗R11およびR12を設け、アナログ制御信号S_AG1とS_AG2を分離している。アナログ制御部AG_CTLの中のその他の部分と、電圧制御発振回路VCOの中のアナログ制御部以外の部分は、図6に示す電圧制御発振回路と同じ構成である。アナログ制御信号S_AG1を経由して充放電された電荷とアナログ制御信号S_AG2を経由して充放電された電荷は共に容量C2に蓄積され、図6に示す電圧制御発振回路と同じように作用する。アナログ制御信号S_AG1とアナログ制御信号S_AG2を分離したことにより、アナログ制御信号S_AG2のノードに付く寄生容量がアナログ制御信号S_AG1を供給する回路に影響を及ぼさないようにすることができる。
【0091】
(実施の形態3)
前述した実施の形態1では、電圧制御発振回路VCOの中のバッファ回路BUFを2段のインバータで構成する場合について述べた。本実施の形態3では、このバッファ回路BUFを4段のインバータで構成する場合について述べる。
【0092】
図11は、本発明の実施の形態3による電圧制御発振回路VCOの中のバッファ回路BUFの構成例を示す回路図である。このバッファ回路は、インバータ回路IV110,IV65,IV111,IV66によって構成される。図6で示した電圧制御発振回路の中のバッファ回路と比較して、この回路ではインバータ回路IV66の入力信号を出力ノードBUF_N信号と独立にした構成を用いている。図6に示したように、バッファ回路BUFとレベルシフト回路LSの低電位側の電源は一方が第2低電位側電源ノードVss2であり、他方が第1低電位側電源ノードVssであって電圧が異なるため、この2つの回路の間をつなぐ出力ノードBUF_PおよびBUF_Nの配線がレイアウト設計の都合によって長くなる場合がある。すると出力ノードBUF_PおよびBUF_Nに付く寄生容量が大きくなり、発振周波数が高い場合には信号波形が鈍ることがある。この信号波形が鈍った出力ノードBUF_Nをインバータ回路IV66の入力として出力ノードBUF_Pを出力することを避けるため、図11に示す構成を用いる。このバッファ回路BUFでは、インバータ回路IV110,IV111,IV66を経由して出力ノードBUF_Pを出力し、インバータ回路IV110,IV65を経由して出力ノードBUF_Nを出力するように構成している。これにより、信号波形が鈍る可能性のある出力ノードBUF_PやBUF_Nが他方の信号を生成する経路に混入することを避け、発振周波数が高くなった場合に信号波形がさらに鈍ることを回避できる。
【0093】
(実施の形態4)
前述した実施の形態1では、周波数比較回路FREQ_COMPおよび位相逆転検出回路REV_DETとチャージポンプ制御回路CP_CNTLの間を直接接続する構成について述べた。本実施の形態4では、この間に信号の時間幅を拡張する回路を設けた構成について述べる。
【0094】
リファレンス信号CLK_REFとフィードバック信号CLK_FBの周波数がある程度以上異なる時には、周波数比較回路FREQ_COMPや位相逆転検出回路REV_DETが周波数の異なることを示す周波数比較回路の出力S_REFもしくはS_FBや、位相が逆転したことを示す位相逆転検出回路の出力S_REV1もしくはS_REV2を毎サイクル出力し、発振周波数を大きく変化させる制御信号S_UHもしくはS_DHが毎サイクル出力されるのが望ましい。しかしながら、ここまで示してきた周波数比較回路FREQ_COMPや位相逆転検出回路REV_DETでは、リファレンス信号CLK_REFとフィードバック信号CLK_FBの周波数が大きく異なる場合でも、タイミング関係によっては周波数比較回路の出力S_REFおよびS_FBや位相逆転検出回路の出力S_REV1およびS_REV2に信号が出力されないサイクルが生じる。また、リファレンス信号CLK_REFとフィードバック信号CLK_FBの周波数が2対1程度にまで近づくと、周波数比較回路の出力S_REFもしくはS_FBや位相逆転検出回路の出力S_REV1もしくはS_REV2に信号が出力される頻度は約2サイクルに1回程度にまで低下する。
【0095】
本発明の実施の形態4では、この周波数比較回路の出力S_REFもしくはS_FBや位相逆転検出回路の出力S_REV1もしくはS_REV2の時間幅を1サイクル分拡張することにより、リファレンス信号CLK_REFとフィードバック信号CLK_FBの周波数が2対1程度以上異なれば発振周波数を大きく変化させる信号がほぼ毎サイクル出力される。なお前述のように、リファレンス信号CLK_REFとフィードバック信号CLK_FBの周波数がほぼ等しい時には周波数比較回路の出力S_REFもしくはS_FBに連続して信号が出力されても過大な制御がかからないようにする機構をチャージポンプ制御回路CP_CNTLに備えれば、これらの信号の時間幅を拡張したことによる誤動作などは発生しない。
【0096】
図12は、本発明の実施の形態4において、周波数比較回路の出力S_REFの時間幅を1サイクル分拡張する回路の構成例を示す回路図である。図12の回路は、フリップフロップ回路FF120と、NOR回路NR120と、インバータ回路IV120によって構成される。フリップフロップ回路FF120のデータ入力端子とNOR回路NR120の一方の入力端子には、周波数比較回路FREQ_COMPの出力S_REFを接続する。フリップフロップ回路FF120のクロックトリガ入力端子には、反転リファレンス信号CLKB_REFを接続し、フリップフロップ回路FF120の出力端子はNOR回路NR120の他方の入力端子に接続する。これにより、フリップフロップ回路FF120には1サイクル前の周波数比較回路の出力S_REFを記憶し、NOR回路NR120の出力端子では1サイクル前と現在の周波数比較回路の出力S_REFのNOR演算結果が得られる。これをインバータ回路IV120によって反転することにより、周波数比較回路の出力S_REFの時間幅を1サイクル分拡張した信号S_REF1が得られる。この信号を、チャージポンプ制御回路CP_CNTLのS_REF入力端子に接続すればよい。他の信号(周波数比較回路の出力S_FB、位相逆転検出回路の出力S_REV1,S_REV2)についても同様の回路で時間幅を1サイクル分拡張できる。
【0097】
また、実施の形態1では周波数比較回路FREQ_COMPの出力S_FBのパルス幅は通常はフィードバック信号CLK_FBの周期に等しいため、フィードバック信号の周波数が極端に高い状態を初期状態として制御が始まった場合(高い周波数で使用している状態から低い周波数で使用する状態に移行する場合など)には、反転リファレンス信号CLKB_REFの周期より周波数比較回路の出力S_FBのパルス幅の方が短くなる。このため、実施の形態1では周波数比較回路FREQ_COMPの出力S_FBの信号がチャージポンプ制御回路CP_CNTLに確実に取り込まれるようタイミング設計に気をつける必要がある。
【0098】
本実施の形態4では、周波数比較回路の出力S_FBのパルス幅を反転リファレンス信号CLKB_REFの1サイクル分拡張するため、このタイミング設計が容易になる。
【0099】
(実施の形態5)
前述した実施の形態1では、電圧制御発振回路VCOの出力を分周回路DIVで分周してクロック信号CLK_OUTを出力する構成について述べた。本実施の形態5では、図13に示すように電圧制御発振回路VCOから直接クロック信号CLK_OUTを出力する構成について述べる。
【0100】
図13に示す構成は図1に示す構成と比較して、クロック信号CLK_OUTとして出力するクロック信号の上限周波数が高いという特長がある。電圧制御発振回路VCOとして同じ回路を使うと上限発振周波数が同じであるから、そのままの周波数で出力する図13の構成の方が半分以下の周波数にして出力する図1の構成より高い周波数で出力できる。
【0101】
一方、図1に示す構成は図13に示す構成と比較して、クロック信号CLK_OUTとして出力するクロック信号のパルス幅を正確にクロック周期の半分にできるという特長がある。分周回路DIVからクロック信号CLK_OUTを出力することにより、クロック信号CLK_OUTの立ち上がりエッジと立ち下がりエッジを共に電圧制御発振回路VCOの出力に同期させることができるため、パルス幅を正確に制御することができる。また、複数の相のクロック信号を出力したい場合にも図1の構成を使う方が容易である。
【0102】
図1と図13のいずれの構成が最適であるかは、そのPLL回路を使用する目的や条件などによって異なる。
【0103】
(その他の実施の形態)
前述した実施の形態1では、定常状態検出回路CONV_DETの出力S_CONVを、デジタル制御回路DIG_CNTLとチャージポンプ制御回路CP_CNTLの両方が使用し、デジタル制御信号S_DGによる発振周波数の制御幅とアナログ制御信号S_AGを変化させる頻度を、定常状態に達しているか否かによって両方とも変更する構成について述べた。この他の実施の形態として、デジタル制御信号S_DGによる発振周波数の制御幅のみを定常状態に達しているか否かによって変更する構成や、アナログ制御信号S_AGを変化させる頻度のみを定常状態に達しているか否かによって変更する構成も有り得る。また、デジタル制御信号S_DGのうち定常状態の時にローレベルに固定する1本またはハイレベルに固定する1本を削除し、2ビットで制御する構成も有り得る。いずれの場合も本発明の実施の形態1によるPLL回路に比べて本発明の効果は薄れるが、ある程度は本発明の効果を期待できる。
【0104】
また、定常状態検出回路CONV_DETの中の所定時間が経過したことを検知する部分TIMERを2組設け、定常状態に達しているか否かを判定する所定時間を2種類用意する構成も有り得る。この場合、デジタル制御信号による発振周波数の制御幅を変更するために定常状態に達しているか否かを判定する条件と、アナログ制御信号を変化させる頻度を変更するために定常状態に達しているか否かを判定する条件を、別々に設定できるためそれぞれに最適な設計をすることが可能である。
【0105】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0106】
例えば、これまでの実施の形態では、トランジスタとしてMOSトランジスタを用いたが、勿論、バイポーラトランジスタなどで代替えすることも可能である。また、図6等では、低電位電源側にトランジスタを設け、そのゲート電位によって発振周波数の制御を行ったが、同様に、高電位電源側にトランジスタを設け、そのゲート電位によって発振周波数を制御することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明のPLL回路は、特に、半導体集積回路装置内のクロック信号供給部に適用して有益な技術であり、これに限らず、高速または高精度なクロック信号が求められる各種集積回路装置に対して広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の実施の形態1によるPLL回路の構成例を示すブロック図である。
【図2】図1のPLL回路において、その位相比較回路の詳細な構成例を示す回路図である。
【図3】図1のPLL回路において、その周波数比較回路の詳細な構成例を示す回路図である。
【図4】図1のPLL回路において、その定常状態検出回路の詳細な構成例を示す回路図である。
【図5】図1のPLL回路において、そのデジタル制御回路の詳細な構成例を示す回路図である。
【図6】図1のPLL回路において、その電圧制御発振回路の詳細な構成例を示す回路図である。
【図7】図1のPLL回路において、そのチャージポンプ制御回路の詳細な構成例を示す回路図である。
【図8】図1のPLL回路において、そのチャージポンプ回路の詳細な構成例を示す回路図である。
【図9】本発明の実施の形態2によるPLL回路において、そのチャージポンプ回路の詳細な構成例を示す回路図である。
【図10】本発明の実施の形態2によるPLL回路において、その電圧制御発振回路の中のアナログ制御部の詳細な構成例を示す回路図である。
【図11】本発明の実施の形態3によるPLL回路において、その電圧制御発振回路の中のバッファ回路の詳細な構成例を示す回路図である。
【図12】本発明の実施の形態4によるPLL回路において、その信号の時間幅を拡張する回路の詳細な構成例を示す回路図である。
【図13】本発明の実施の形態5によるPLL回路の構成例を示すブロック図である。
【図14】本発明の前提として検討したPLL回路に含まれる電圧制御発振回路の概略構成例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0109】
AD AND回路
AG_CTL アナログ制御部
BUF バッファ回路
BUF_N,BUF_P バッファ回路の出力ノード
C 容量
CLK_FB フィードバック信号
CLK_OUT クロック出力信号
CLK_REF リファレンス信号
CLKB_REF 反転リファレンス信号
CONV_DET 定常状態検出回路
COUNTER カウンタ回路
CP チャージポンプ回路
CP_CNTL チャージポンプ制御回路
CT カウンタ回路
DG_CTL デジタル制御部
DIG_CNTL デジタル制御回路
DIV 分周回路
DLY、IV_DLY 遅延回路
FF フリップフロップ回路
FLIP_DET 反転したことを検出する部分
FREQ_COMP 周波数比較回路
IV インバータ回路
LS レベルシフト回路
ND NAND回路
NR NOR回路
OSC リングオシレータ回路
OSC_OUT リングオシレータ回路の出力ノード
PHASE_COMP 位相比較回路
PLS パルス信号
R 抵抗
REV_DET 位相逆転検出回路
S_AG アナログ制御信号
S_CONV,S_REV 検出回路の出力
S_DG デジタル制御信号
S_DH,S_DL,S_UH,S_UL 制御信号
S_ENBL イネーブル信号
S_FB,S_PH,S_REF 比較回路の出力
SR セットリセットラッチ回路
STP ストップ信号
T トランジスタ
TIMER 所定時間が経過したことを検知する部分
Tn NMOSトランジスタ
Tp PMOSトランジスタ
VCO 電圧制御発振回路
VCO_OUT 電圧制御発振回路の出力ノード
Vdd 高電位側電源ノード
Vss 第1低電位側電源ノード
Vss2 第2低電位側電源ノード
【技術分野】
【0001】
本発明は、PLL(Phase Locked Loop)回路に関し、特にデジタル制御信号およびアナログ制御信号の両方によって制御される電圧制御発振器を有するハイブリッド制御方式PLL回路に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者が検討した技術として、例えば、PLL回路においては、以下の技術が考えられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、位相比較器、周波数比較器、および電圧制御発振器などを含んだPLL回路において、電源電圧が変動した際にもジッタの小さいクロック信号を発生可能にする電圧制御発振器の回路構成が示されている。具体的には、互いに並列接続されたリングオシレータおよび容量と、これらの電源電圧(電流)を制御することで発振周波数を制御するMOSトランジスタとを備えた構成に対して、位相比較結果に応じて発振周波数を制御する第2の手段を設けた構成となっている。この第2の手段は、リングオシレータに対して接続/非接続を切り替え可能な容量で実現され、位相比較結果に応じてこの容量を接続した際には負荷の増大と共に発振周波数が遅くなり、非接続の場合はその逆となる。
【0004】
また、特許文献2には、周波数比較器の比較結果に対して、積分回路、コンパレータおよびゲイン調整回路による処理を経てVCO(Voltage Controlled Oscillator)に反映させる構成のPLL回路が示されている。この周波数比較器は、VCOからの3相クロックから得られる3つの位相区間を基準に入力クロックの位相の変化を観察することで周波数の高低を比較判定する。このような周波数比較器の結果に対して前述したような各種の処理を経てVCOに反映させることで、周波数比較器の誤検出が発生した場合でもその影響を低減可能となる。
【特許文献1】特開2001−257567号公報
【特許文献2】特開2005−252723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記のようなPLL回路の技術について、本発明者が検討した結果、以下のようなことが明らかとなった。
【0006】
例えば、特許文献1に示されるPLL回路は、電圧制御発振器の発振周波数を、デジタル制御とアナログ制御によって制御するハイブリッド制御の構成となっている。デジタル制御では、前述した第2の手段となる容量の接続/非接続の切り替えが、位相比較結果となるデジタル信号に基づいて行われる。一方、アナログ制御では、前述した発振周波数を制御するMOSトランジスタのゲート電圧がチャージポンプ回路の出力によってアナログ的に制御され、このチャージポンプ回路の充放電が位相比較結果および周波数比較結果に基づいて制御される。
【0007】
図14は、本発明の前提として検討したPLL回路に含まれる電圧制御発振回路の概略構成を示す回路図である。
【0008】
図14に示す電圧制御発振回路VCOは、特許文献1に示される電圧制御発振回路の特徴を反映したものであり、リングオシレータ回路OSC、容量C1〜C3、NMOSトランジスタT1、PMOSトランジスタT2,T3および抵抗R1などによって構成される。リングオシレータ回路OSCは、高電位側電源ノードVddと第2低電位側電源ノードVss2の間に設けられる。NMOSトランジスタT1は、第2低電位側電源ノードVss2と第1低電位側電源ノードVssの間に設けられ、そのゲート電圧によってリングオシレータ回路OSCへの供給電流を制御し、結果として、第2低電位側電源ノードVss2の電圧の制御を通じてリングオシレータ回路OSCの発振周波数を制御する。
【0009】
高電位側電源ノードVddには、順に、容量C3、PMOSトランジスタT2、PMOSトランジスタT3が直列に接続され、このPMOSトランジスタT3の先がリングオシレータ回路OSCの内部ノードに接続される。PMOSトランジスタT2は、デジタル制御信号S_DGによってオン/オフが制御される。PMOSトランジスタT2がオンに制御された際には、リングオシレータ回路OSCに対して容量C3が付加されることになる。したがって、PMOSトランジスタT2をオフに制御することで相対的に発振周波数を高くし、オンに制御することで相対的に発振周波数を低くすることができる。なお、PMOSトランジスタT3のゲートは第2低電位側電源ノードVss2に接続されており、通常オン状態を保っている。このPMOSトランジスタT3は、デジタル制御信号S_DGのオン/オフに伴うカップリングノイズがリングオシレータ回路OSCの内部ノードに直接影響を与えないようにするためのものであり、場合によっては省略可能である。このようにデジタル制御信号S_DGによるデジタル制御を用いることで、リングオシレータ回路OSCの熱雑音等に起因する発振周波数の微少変化を1回の制御で一気に補正することができる。
【0010】
一方、NMOSトランジスタT1のゲートには、抵抗R1および容量C2からなるローパスフィルタを介してアナログ制御信号S_AGが印加される。このアナログ制御信号S_AGによるアナログ制御は、前述したようなデジタル制御を併用することによって高速性が求められなくなる。したがって、ローパスフィルタを介してアナログ制御信号S_AGを接続することが可能となり、さらに、高電位側電源ノードVddと第2低電位側電源ノードVss2の間に容量C1を設けることも可能となる。これらによって、突発的な電源ノイズなどに起因するアナログ制御電圧の変動やリングオシレータ回路OSCにかかる電源電圧の変動を極力抑えることが可能となり、これらに起因する発振周波数の変動を抑えることが可能となる。
【0011】
ところで、この特許文献1の構成を用いると、例えば定常状態では、位相比較結果を反映してデジタル制御信号S_DGがハイレベルとローレベルを交互に推移し、これに伴い容量C3の接続/非接続が交互に切り替えられる。この状態では、アナログ制御による周波数調整が収束し、この収束した周波数を中心として上下にデジタル制御に伴う制御幅の周波数変動が加わることになる。デジタル制御におけるこの容量C3の切り替えに伴う周波数の制御幅は、例えば、リングオシレータ回路OSCの熱雑音による高速ノイズを補正する程度の大きさを確保すればよい。このデジタル制御による制御幅の大きさは、定常状態ではジッタ成分となることから必要最小限の大きさであることが望ましい。
【0012】
一方、アナログ制御による周波数の最小制御幅は、例えばデジタル制御による制御幅の1/5〜1/10程度またはそれ以下にするとよい。そうすると、アナログ制御でこの制御幅分の変化が生じた際に、その前後でデジタル制御の制御幅が適度に重なり合い、好適な周波数調整を実現できる。このようなことから、前述したようにデジタル制御の制御幅を小さくするためには、その分アナログ制御の制御幅も小さくする必要がある。
【0013】
ところが、アナログ制御の制御幅を小さくするためにはチャージポンプ回路による充電および放電の1回当たりの電荷移動量を小さくする必要がある。そのためにはチャージポンプ回路を構成するトランジスタなどの素子を小さくする必要がある。しかしながら、使用する半導体テクノロジで作成可能な素子の最小サイズには限度があり、そのサイズの素子で構成したチャージポンプ回路の1回当たりの電荷移動量が低減の限度となる。すると、デジタル制御の制御幅の低減や位相ジッタ低減の限度もこれによって決まる。
【0014】
そこで、本発明の目的は、PLL回路において、周波数の最小制御幅の限度を除去し、位相ジッタをさらに低減可能にすることにある。
【0015】
本発明は、前述したようなことを鑑みてなされたものであり、前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願において開示される実施例のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0017】
すなわち、代表的な実施例によるPLL回路は、定常状態に達しているか否かを検出する手段を備え、定常状態に達している時と達していない時とで一部異なる動作をする。
【0018】
例えば、定常状態に達していない時には、チャージポンプ回路による充電および放電の頻度を下げることにより平均的に見た時の1サイクル当たりの電荷移動量を小さくする。定常状態に達している時には、その状態から外れないようにするため充放電の頻度を下げることはできない。しかしその代わり、定常状態に達している時には充電と放電がほぼ交互に行なわれるため、充電と放電が打ち消し合って平均的に見るとほぼゼロになる。
【0019】
前述のように、ハイブリッド制御型のPLL回路ではアナログ制御信号による制御は高速性を必要としないため、チャージポンプ回路による充放電の効果が直ちに全て現れず所定の時定数で徐々に現れるようにすることができる。したがって、その時定数程度の時間に亘って平均的に見た1サイクル当たりの電荷移動量が小さければ、1サイクルごとの電荷移動によるアナログ制御の制御幅がデジタル制御の制御幅の1/5〜1/10程度を超える場合があっても問題とならない。
【0020】
他の構成例では、定常状態に達していない時にはデジタル制御による制御幅を大きくし、定常状態に達している時には小さくする。定常状態に達していない時には位相ジッタを小さくする必要がないため、デジタル制御による制御幅を大きくすることが可能であり、アナログ制御による1サイクル当たりの制御幅をデジタル制御による制御幅に比べて相対的に小さく見せかけることができる。定常状態に達している時はデジタル制御による制御幅を小さくし位相ジッタを小さくする必要があるが、前述のように定常状態では充放電が打ち消し合って平均的に見た1サイクル当たりアナログ制御の制御幅が小さくなる。
【0021】
定常状態に達しているか否かを検出する手段は、例えば、位相比較回路の出力が頻繁に変化しているか否かを判定する回路により構成する。定常状態に達している場合には、位相差と周波数差が殆ど無いため、多くの場合は1サイクルごとに交互に位相比較結果が切り替わり、高速のデジタル制御によって1サイクルごとに位相関係が逆転するはずである。実際には、チャージポンプ回路による充電と放電の電荷移動量が異なるため、位相比較回路が2サイクル連続して同じ値を出力することが時々発生する。また、さらにこれにノイズなどが加わることにより、さらに低い確率で3サイクル連続することもある。一方、発振周波数がほぼ定常値に達している場合で位相が定常状態に達していない場合には、位相がなかなか反転しないため位相比較回路が多数サイクルに亘って同じ値を出力することになる。したがって、位相比較回路がある程度以上の時間に亘って同じ値を出力している時には定常状態に達していないと判定し、それ以下の時間で変化している時には定常状態に達していると判定することにより、定常状態に達しているか否かを検出することができる。
【0022】
なお上述のように、定常状態に達していても3サイクル連続して位相比較回路が同じ値を出力する場合が、確率は低いが存在する。一方、4サイクル連続して位相比較回路が同じ値を出力している場合は定常状態に達していない場合が殆どである。したがって、通常は4サイクル連続して位相比較回路が同じ値を出力している時に定常状態に達していないと判定するのがほぼ最適である。ただし、4サイクル以外の値にした設計も可能である。
【発明の効果】
【0023】
代表的な実施例によれば、ハイブリッド制御方式のPLL回路において、デジタル制御信号による制御幅を小さくし位相ジッタを低減することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0025】
また、実施の形態の各機能ブロックを構成する回路素子は、特に制限されないが、公知のCMOS(相補型MOSトランジスタ)等の集積回路技術によって、単結晶シリコンのような半導体基板上に形成される。実施の形態では、トランジスタの一例としてMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を用い、その一例としてMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタを用いる。各図面において、Pチャネル型MOSトランジスタ(PMOSトランジスタ)にはゲートに丸印の記号を付すことで、Nチャネル型MOSトランジスタ(NMOSトランジスタ)と区別することとする。
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1によるPLL回路の構成例を示すブロック図である。
【0028】
図1に示すPLL回路は、位相比較回路PHASE_COMPと、周波数比較回路FREQ_COMPと、位相逆転検出回路REV_DETと、定常状態検出回路CONV_DETと、デジタル制御回路DIG_CNTLと、チャージポンプ制御回路CP_CNTLと、チャージポンプ回路CPと、電圧制御発振回路VCOと、分周回路DIVと、遅延回路DLYなどによって構成される。
【0029】
電圧制御発振回路VCOは、3ビット構成のデジタル制御信号S_DGとアナログ制御信号S_AGを受け、これに基づいて発振周波数が制御されたクロック信号を生成する。
【0030】
分周回路DIVは、電圧制御発振回路VCOによって生成されたクロック信号を分周し、分周されたクロック信号CLK_OUTを出力する。このクロック信号CLK_OUTは、例えば、半導体集積回路装置内に含まれるクロックツリー等の供給経路を介して各フリップフロップ回路等に供給される。また、分周回路DIVは、電圧制御発振回路VCOによって生成されたクロック信号をフィードバック用として分周し、この分周された信号が、遅延回路DLYを介してフィードバック用クロック信号(フィードバック信号)CLK_FBとなる。なお、遅延回路DLYは、分周回路DIVから各フリップフロップ回路に至るクロック分配経路を反映した遅延量を備え、クロック信号CLK_OUTが実際に各フリップフロップ回路に入力される時点での位相をリファレンス用クロック信号(リファレンス信号)CLK_REFの位相に合わせ込むために設けられる。
【0031】
位相比較回路PHASE_COMPは、リファレンス信号(基準信号)CLK_REFとフィードバック信号CLK_FBの位相を比較し、その比較結果となる位相比較回路の出力S_PHを、定常状態検出回路CONV_DETおよびデジタル制御回路DIG_CNTLおよびチャージポンプ制御回路CP_CNTLに出力する。
【0032】
周波数比較回路FREQ_COMPは、リファレンス信号CLK_REFを反転した反転リファレンス信号CLKB_REFとフィードバック信号CLK_FBの周波数を比較し、その比較結果として2つの周波数比較回路の出力S_REF,S_FBをチャージポンプ制御回路CP_CNTLに出力する。
【0033】
位相逆転検出回路REV_DETは、フィードバック信号CLK_FBを反転した信号と反転リファレンス信号CLKB_REFを比較し、位相の逆転が発生したか否かを判定した結果として2つの位相逆転検出回路の出力S_REV1,S_REV2をチャージポンプ制御回路CP_CNTLに出力する。
【0034】
定常状態検出回路CONV_DETは、位相比較回路PHASE_COMPの出力S_PHを基に、図1のPLL回路全体が定常状態に達したか否かを判定し、その判定結果となる定常状態検出回路の出力S_CONVを、デジタル制御回路DIG_CNTLおよびチャージポンプ制御回路CP_CNTLに出力する。
【0035】
デジタル制御回路DIG_CNTLは、位相比較回路PHASE_COMPの出力S_PHと定常状態検出回路CONV_DETの出力S_CONVを基に、電圧制御発振回路VCOを制御する3ビットのデジタル制御信号S_DGを出力する。
【0036】
チャージポンプ制御回路CP_CNTLは、位相比較回路PHASE_COMPや周波数比較回路FREQ_COMPや位相逆転検出回路REV_DETや定常状態検出回路CONV_DETの出力を基に、チャージポンプ回路CPに対して4通りの制御信号S_UH,S_UL,S_DH,S_DLを出力する。制御信号S_UHは、発振周波数を大きく上げたい際に出力され、制御信号S_ULは、発振周波数を少しだけ上げたい際に出力される。一方、制御信号S_DHは、発振周波数を大きく下げたい際に出力され、制御信号S_DLは、発振周波数を少しだけ下げたい際に出力される。
【0037】
チャージポンプ回路CPは、チャージポンプ制御回路CP_CNTLからの4通りの制御信号S_UH,S_UL,S_DH,S_DLを受け、これらの制御信号にそれぞれ対応した電荷量をアナログ制御信号S_AGのノードに充放電する。また、定常状態検出回路CONV_DETやチャージポンプ制御回路CP_CNTLやチャージポンプ回路CPなどは、反転リファレンス信号CLKB_REFに同期して動作する。
【0038】
次に、図1のPLL回路全体の、電源を投入してから定常状態に達するまでの状態変化の概要について説明する。
【0039】
電源投入直後から暫くの間は、電圧制御発振回路VCOは発振しないかまたは目標の発振周波数と大きく異なる周波数で発振するため、リファレンス信号CLK_REFとフィードバック信号CLK_FBの周波数は大きく異なる。この時には、周波数比較回路FREQ_COMPや位相逆転検出回路REV_DETは周波数が異なることを示す信号や位相が逆転したことを示す信号を頻繁に出力し、チャージポンプ制御回路CP_CNTLによるチャージポンプ回路CPの制御は周波数比較回路の出力S_REF,S_FBに基づく制御が支配的となる。その結果、フィードバック信号CLK_FBの周波数はリファレンス信号CLK_REFの周波数に近づいていく。
【0040】
フィードバック信号CLK_FBの周波数がリファレンス信号CLK_REFの周波数とほぼ一致すると、周波数比較回路が周波数の異なることを示す信号を周波数比較回路の出力S_REF,S_FBに出力する頻度が下がる。すると、チャージポンプ制御回路CP_CNTLによるチャージポンプ回路CPの制御は、位相比較回路PHASE_COMPの出力S_PHに基づく制御の方が支配的となる。また、この状態に移行した直後は、フィードバック信号CLK_FBとリファレンス信号CLK_REFは周波数がほぼ同じであっても位相が離れている場合が多く、一方の位相が他方の位相より早い状態や遅い状態がそれぞれ長い時間続き、時々その関係が逆転するという変化を繰り返すことになる。この時には、位相比較回路の出力S_PHは長い時間同じ値をとりたまに変化する。
【0041】
このPLL回路には定常状態検出回路CONV_DETが設けてあり、位相比較回路の出力S_PHが所定時間(例えばリファレンス信号CLK_REFの4サイクルに相当する時間)以上同じ値をとると、定常状態に達していないことを示すレベル(ハイレベル(Vdd)またはローレベル(Vss))を定常状態検出回路の出力S_CONVに出力する。その信号に基づき、デジタル制御回路DIG_CNTLはその出力であるデジタル制御信号S_DGを3ビットとも位相比較回路PHASE_COMPの出力S_PHに応じて変化させる。
【0042】
すると、電圧制御発振回路VCOの発振周波数は3ビット分のデジタル制御信号S_DGに応じて大きく変化する。また、チャージポンプ制御回路CP_CNTLは位相比較回路PHASE_COMPの出力S_PHに応じてアナログ制御信号S_AGを少しだけ変化させる信号を制御信号S_ULまたは制御信号S_DLに出力するが、定常状態検出回路の出力S_CONVが定常状態に達していないことを示している時には、反転リファレンス信号CLKB_REFの所定サイクル数(例えば8サイクル)ごとに1回だけ上記の信号を出力し、その他のサイクルでは両方とも出力しない。
【0043】
これにより、アナログ制御信号S_AGは反転リファレンス信号CLKB_REFの所定サイクル数ごとに1回だけしか変化せず、結果的にゆっくりとした変化になる。すなわち、デジタル制御信号S_DGによる発振周波数の制御幅が大きくアナログ制御信号S_AGによる発振周波数の制御が少しずつしか行なわれない状態になる。これは、位相ジッタは大きくなるがアナログ制御信号S_AGが収束しやすい状態である。
【0044】
この場合でも、位相比較回路の出力S_PHは時々変化し、その直後には定常状態検出回路CONV_DETは定常状態に達したことを示すレベルを定常状態検出回路の出力S_CONVに出力する。しかし上記の所定時間が経過すると、定常状態検出回路の出力S_CONVは再び定常状態に達していないことを示すレベルになる。アナログ制御信号S_AGが収束してくると、位相比較回路の出力S_PHが変化する頻度が高くなり、定常状態に達していることを定常状態検出回路の出力S_CONVが示す頻度が高くなる。そして、位相比較回路の出力S_PHが上記の所定時間以内に必ず変化するようになると、定常状態検出回路CONV_DETは定常状態に達したことを示すレベルを定常状態検出回路の出力S_CONVに常に出力し続けることになる。
【0045】
定常状態検出回路の出力S_CONVが定常状態に達していることを示している時には、デジタル制御回路DIG_CNTLは、デジタル制御信号S_DGのうち1ビットのみを位相比較回路PHASE_COMPの出力S_PHに応じて変化させ、他のビットは一方をハイレベルに他方をローレベルに固定する。すると、電圧制御発振回路VCOの発振周波数はデジタル制御信号S_DGの1ビット分に応じて小さく変化する。また、チャージポンプ制御回路CP_CNTLは位相比較回路PHASE_COMPの出力S_PHに応じてアナログ制御信号S_AGを少しだけ変化させる信号を制御信号S_ULまたは制御信号S_DLに毎サイクル出力する。
【0046】
これにより、アナログ制御信号S_AGは位相比較回路PHASE_COMPの出力S_PHを全て反映した変化をする。しかし、この時には位相比較回路の出力S_PHが頻繁に変化しているため、アナログ制御信号S_AGを少しだけ上げる制御信号S_ULと少しだけ下げる制御信号S_DLが両方とも頻繁に出力されて互いに相殺し、アナログ制御信号S_AGが急激に変化することはない。すなわち、デジタル制御信号S_DGによる発振周波数の制御幅が小さいため位相ジッタが小さくなり、アナログ制御信号S_AGも急激に変化せず安定した状態になる。以後はこの状態が継続する。
【0047】
次に、図1に示したPLL回路を構成する各ブロックについて、その具体的な構成例を順に説明する。
【0048】
図2は、図1のPLL回路において、その位相比較回路PHASE_COMPの詳細な構成例を示す回路図である。
【0049】
図2に示す位相比較回路PHASE_COMPは、セットリセットラッチ回路SR20と、NAND回路ND20と、遅延回路IV_DLY20と、インバータ回路IV20、IV21と、フリップフロップ回路FF20によって構成される。
【0050】
セットリセットラッチ回路SR20は、2つのNAND回路ND21,ND22によって構成され、NAND回路ND21の一方の入力ノードにはリファレンス信号CLK_REFが入力され、ND22の一方の入力ノードにはフィードバック信号CLK_FBが入力される。また、ND21の他方の入力ノードには、NAND回路ND22の出力ノードが接続され、NAND回路ND22の他方の入力ノードには、NAND回路ND21の出力ノードが接続される。
【0051】
NAND回路ND20は、一方の入力ノードにリファレンス信号CLK_REFが入力され、他方の入力ノードにフィードバック信号CLK_FBが入力される。NAND回路ND20の出力は、ここでは3段のインバータ回路からなる遅延回路IV_DLY20を介してフリップフロップ回路FF20のクロックトリガに使用される。フリップフロップ回路FF20のデータ入力ノードは、NAND回路ND22の出力ノードがインバータ回路IV21を介して接続される。なお、NAND回路ND21の出力ノードに接続されたインバータ回路IV20は、ND22の出力に対する負荷とバランスを等しくするために設けられている。
【0052】
この位相比較回路PHASE_COMPは、リファレンス信号CLK_REFの立ち上がりエッジとフィードバック信号CLK_FBの立ち上がりエッジのどちらが先に現れるかをセットリセットラッチ回路SR20で検出し、その検出結果をフリップフロップ回路FF20に取り込んで保持すると共に、その比較結果を示すデジタル信号として位相比較回路の出力S_PHを出力する。
【0053】
図3は、図1のPLL回路において、その周波数比較回路FREQ_COMPの詳細な構成例を示す回路図である。
【0054】
図3に示す周波数比較回路FREQ_COMPは、インバータ回路IV30,IV31と、遅延回路IV_DLY30,IV_DLY31と、AND回路AD30,AD31と、セットリセットラッチ回路SR30と、インバータ回路IV32,IV33と、フリップフロップ回路FF30,FF31によって構成される。セットリセットラッチ回路SR30は、2つのNOR回路NR30,NR31によって構成され、NOR回路NR30の一方の入力ノードにはAND回路AD30の出力信号A0が入力され、NOR回路NR31の一方の入力ノードにはAND回路AD31の出力信号A1が入力される。また、NOR回路NR30の他方の入力ノードには、NOR回路NR31の出力ノードが接続され、NOR回路NR31の他方の入力ノードには、NOR回路NR30の出力ノードが接続される。
【0055】
インバータ回路IV30には反転リファレンス信号CLKB_REFが入力され、その出力はAND回路AD30の一方の入力ノードと遅延回路IV_DLY30の入力ノードに接続される。また、遅延回路IV_DLY30の出力はAND回路AD30の他方の入力ノードに接続される。この構成により、AND回路AD30の出力A0には反転リファレンス信号CLKB_REFの立ち下がりエッジに同期したパルスが出力される。同様に、インバータ回路IV31にはフィードバック信号CLK_FBが入力され、その出力はAND回路AD31の一方の入力ノードと遅延回路IV_DLY31の入力ノードに接続される。また、遅延回路IV_DLY31の出力はAND回路AD31の他方の入力ノードに接続される。この構成により、AND回路AD31の出力A1にはフィードバック信号CLK_FBの立ち下がりエッジに同期したパルスが出力される。
【0056】
この出力A0と出力A1がセットリセットラッチ回路SR30に入力されているため、出力A0と出力A1に出力されるパルスが両方とも消えた後には、出力A0と出力A1のうちのいずれのパルスが先に消えたかをセットリセットラッチ回路SR30に記憶している。そして、その情報がインバータ回路IV32やインバータ回路IV33を介してフリップフロップ回路FF30やフリップフロップ回路FF31のデータ入力端子B0やB1に入力されている。
【0057】
すると、先にパルスが消えた側にその次のパルスが現れた場合は、フリップフロップ回路FF30またはフリップフロップ回路FF31が周波数比較回路の出力S_REFまたはS_FBにローレベルを出力し、出力A0と出力A1に交互にパルスが現れていることを認識できる。後からパルスが消えた側に次のパルスが現れた場合は、フリップフロップ回路FF30またはフリップフロップ回路FF31が周波数比較回路の出力S_REFまたはS_FBにハイレベルを出力し、その側のパルスが2回以上連続して現れたことを認識できる。
【0058】
反転リファレンス信号CLKB_REFはリファレンス信号CLK_REFを反転した信号であるため、この周波数比較回路FREQ_COMPは、リファレンス信号CLK_REFの立ち上がりエッジとフィードバック信号CLK_FBの立ち下がりエッジが交互に現れているか否かを検出することになる。そして、交互に現れている場合にはその検出結果を示すデジタル信号である周波数比較回路の出力S_REFおよびS_FBにローレベルを出力し、いずれか一方が2回以上連続して現れた場合にはその側の周波数比較回路の出力S_REFまたはS_FBにハイレベルを出力する。
【0059】
なお、定常状態では、図1のPLL回路はリファレンス信号CLK_REFとフィードバック信号CLK_FBの周波数と位相をほぼ一致させ両方の立ち上がりエッジがほぼ同時刻となるように制御するので、リファレンス信号CLK_REFの立ち上がりエッジとフィードバック信号CLK_FBの立ち下がりエッジが交互に現れて周波数比較回路の出力S_REFおよびS_FBには常にローレベルが出力される。
【0060】
図1のPLL回路において、その位相逆転検出回路REV_DETは、周波数比較回路FREQ_COMPが周波数比較回路の出力S_REFまたはS_FBにハイレベルを出力した後に、リファレンス信号CLK_REFとフィードバック信号CLK_FBの位相差が半回転しその位相関係が逆転したことを検出するために設けた回路である。この回路は、フィードバック信号CLK_FBを反転して入力する以外は周波数比較回路と同じ構成の回路であり、リファレンス信号CLK_REFとフィードバック信号CLK_FBの立ち上がりエッジ同士が交互に現れているか否かを検出する。交互に現れている場合には位相逆転検出回路の出力S_REV1およびS_REV2にローレベルを出力し、いずれか一方が2回以上連続して現れた場合には位相逆転検出回路の出力S_REV1またはS_REV2にハイレベルを出力する回路として作用する。
【0061】
リファレンス信号CLK_REFとフィードバック信号CLK_FBの周波数が近づくと、リファレンス信号CLK_REFの1サイクル当たりに対するフィードバック信号CLK_FBとの位相差の変化が小さくなる。ここで、リファレンス信号CLK_REFの立ち上がりエッジとフィードバック信号CLK_FBの立ち下がりエッジのいずれかが2回連続して現れた時は位相がほぼ半周期ずれている時であり、その後暫くの間は周波数の高い側の位相が遅れた状態になる。この状態の時に位相比較回路PHASE_COMPの出力S_PHに基づいてチャージポンプ回路CPを制御すると、所望とは逆の制御がかかることになる。これを避けることが位相逆転検出回路REV_DETを設ける第1の目的である。リファレンス信号CLK_REFとフィードバック信号CLK_FBの立ち上がりエッジ同士のいずれかが2回連続して現れた時は位相がほぼ一致している時であり、その後は次にリファレンス信号CLK_REFの立ち上がりエッジとフィードバック信号CLK_FBの立ち下がりエッジのいずれかが2回連続して現れるまで周波数の高い側の位相が進んだ状態になる。この状態の時に位相比較回路PHASE_COMPの出力S_PHに基づいてチャージポンプ回路CPを制御すれば所望の制御がかかる。したがって、周波数比較回路FREQ_COMPの出力のいずれかがハイレベルになった後は位相比較回路PHASE_COMPの出力S_PHに基づくチャージポンプ回路CPの制御を停止し、位相逆転検出回路REV_DETの出力のいずれかがハイレベルになった後に再開すればよい。
【0062】
また、リファレンス信号CLK_REFとフィードバック信号CLK_FBの周波数がさらに近づくと、リファレンス信号CLK_REFの1サイクル当たりに対するフィードバック信号CLK_FBとの位相差の変化がさらに小さくなり、各エッジが交互に現れても周波数比較回路FREQ_COMPが周波数比較回路の出力S_REFまたはS_FBにハイレベルを出力する誤検出を生じることがある。この誤検出の影響を防止することが位相逆転検出回路REV_DETを設ける第2の目的である。この誤検出が生じるのはリファレンス信号CLK_REFの立ち上がりエッジとフィードバック信号CLK_FBの立ち下がりエッジがほぼ同時刻に現れる場合であり、正しい検出が行なわれる1サイクルを挟んで前後何サイクルかの間連続して発生する。その最初のサイクルで現れる誤検出は、周波数の高い側の信号が後から現れるため結果的には正しい検出と同じ信号を出力する。また、1サイクルの正しい検出を挟む一連のサイクルでの誤検出が発生してから次に1サイクルの正しい検出を挟む一連のサイクルでの誤検出が発生するまでの間には、リファレンス信号CLK_REFとフィードバック信号CLK_FBの位相差が1回転する。そしてその間の約半回転の時点で、位相逆転検出回路REV_DETが位相逆転検出回路の出力S_REV1またはS_REV2にハイレベルを出力する。したがって、周波数比較回路FREQ_COMPの出力S_REFまたはS_FBに基づいてチャージポンプ回路CPを制御した後は、次に位相逆転検出回路REV_DETが位相逆転検出回路の出力S_REV1またはS_REV2のいずれかにハイレベルを出力するまで、周波数比較回路FREQ_COMPの出力に基づくチャージポンプ回路CPの制御を行わないようにすればよい。これにより、周波数比較回路FREQ_COMPの誤検出の影響を回避できる。
【0063】
図4は、図1のPLL回路において、その定常状態検出回路CONV_DETの詳細な構成例を示す回路図である。
【0064】
図4に示す定常状態検出回路は、位相比較回路の出力S_PHが反転したことを検出する部分FLIP_DETと、位相比較回路の出力S_PHが反転してからの経過時間を計測し所定時間が経過したことを検知する部分TIMERによって構成される。それぞれの部分は、インバータ回路IV40と、フリップフロップ回路FF40〜FF42と、OR−NAND複合回路RD40,RD41と、NAND回路ND40〜ND44によって構成される。フリップフロップ回路FF40は1サイクル前の位相比較回路の出力S_PHを記憶し、反転したことを検出する部分FLIP_DETは現在の位相比較回路の出力S_PHと1サイクル前の位相比較回路の出力S_PHを比較する。この2つが異なる時には位相比較回路の出力S_PHが反転したと判定し、それを示す信号を信号SB_FLIPに出力する。
【0065】
図4に示す回路では、位相比較回路の出力S_PHが反転した時には信号SB_FLIPがローレベルになり、反転しない時にはハイレベルになる。所定時間が経過したことを検知する部分TIMERは、フリップフロップ回路FF41およびFF42などが構成する2ビットカウンタにより構成される。この2ビットカウンタは反転リファレンス信号CLKB_REFのパルス数をカウントするが、信号SB_FLIPがローレベルになると次のサイクルではカウント値が0にリセットされる。信号SB_FLIPがハイレベルの間は1カウントずつカウント値が進み、カウント値が3に達すると定常状態検出回路の出力S_CONVにローレベルを出力して以後はそのカウント値に固定する。すなわち、この定常状態検出回路CONV_DETは、位相比較回路の出力S_PHが4サイクル以上に渡って反転していない時には定常状態検出回路の出力S_CONVにローレベルを出力し、位相比較回路の出力S_PHが3サイクル以内に反転している時には定常状態検出回路の出力S_CONVにハイレベルを出力する回路として作用する。
【0066】
図5は、図1のPLL回路において、そのデジタル制御回路DIG_CNTLの詳細な構成例を示す回路図である。
【0067】
図5に示すデジタル制御回路は、インバータ回路IV50,IV51やNAND回路ND50やNOR回路NR50によって構成される。図5に示す回路では、定常状態検出回路の出力S_CONVがローレベルの時にはデジタル制御信号S_DGには3ビットとも位相比較回路の出力S_PHと同じレベルを出力し、定常状態検出回路の出力S_CONVがハイレベルの時にはデジタル制御信号S_DGの内の1ビットのみに位相比較回路の出力S_PHと同じレベルを出力し他の2ビットにはそれぞれローレベルとハイレベルを出力する。
【0068】
図6は、図1のPLL回路において、その電圧制御発振回路VCOの詳細な構成例を示す回路図である。
【0069】
図6の電圧制御発振回路は、図14で述べた電圧制御発振回路VCOのより詳細な構成例を示すものであり、デジタル制御部DG_CTLと、リングオシレータ回路OSCと、バッファ回路BUFと、レベルシフト回路LSと、アナログ制御部AG_CTLによって構成される。リングオシレータ回路OSCは、高電位側電源ノードVddと第2低電位側電源ノードVss2の間に接続された奇数段(ここでは5段)のCMOSインバータ回路IV60〜IV64によって構成される。5段目となるIV64の出力ノードは抵抗R3を介して1段目となるIV60の入力ノードに帰還されており、このリング構造によって発振動作を行う。
【0070】
図14で述べた公知例の回路と異なり、図6の回路のデジタル制御部DG_CTLは、抵抗R3と並列に設けられた、ゲート電極にデジタル制御信号S_DGの各ビットを接続したPMOSトランジスタT2〜T4によって構成される。PMOSトランジスタT2〜T4が全て遮断状態の時にはインバータ回路IV64の出力ノードとインバータ回路IV60の入力ノードの間は抵抗R3のみの抵抗値で接続されているが、PMOSトランジスタT2〜T4のうちのいくつかが導通状態になるとそのPMOSトランジスタの抵抗値に相当する分が並列接続され帰還回路の抵抗値が下がり発振周波数が高くなる。これによる発振周波数の変化分がデジタル制御信号S_DGによる制御幅である。
【0071】
図14で述べた公知例の回路では、半導体テクノロジで作成可能な最小サイズでPMOSトランジスタT2や容量C3を設計した場合より発振周波数の制御幅を小さくすることは困難であるが、図6の回路では、抵抗R3の抵抗値を小さくすることにより比較的容易に発振周波数の制御幅を小さくすることができる。
【0072】
デジタル制御信号S_DGが3ビットとも同時に変化する場合には、PMOSトランジスタT2〜T4の導通状態または遮断状態が同時に制御されるため発振周波数の制御幅は大きくなる。デジタル制御信号S_DGのうちの1ビットだけが変化し他のビットがそれぞれローレベルとハイレベルに固定される場合には、1個のPMOSトランジスタによる分だけ発振周波数を制御することになり制御幅は小さくなる。PMOSトランジスタT2〜T4が全て同じサイズになるように設計しておくと、デジタル制御信号S_DGのうちの1ビットだけが変化する場合の発振周波数の制御幅は3ビットとも変化する場合の約3分の1となる。また、1ビットだけ変化する制御信号に接続されている1個のPMOSトランジスタだけが小さくなるように設計しておくと、1ビットだけが変化する場合の発振周波数の制御幅は3ビットとも変化する場合に比べ3分の1よりさらに小さくできる。
【0073】
バッファ回路BUFは、例えば、高電位側電源ノードVddと第2低電位側電源ノードVss2の間に接続された2段のCMOSインバータ回路IV65,IV66によって構成され、1段目となるインバータ回路IV65の入力ノードにリングオシレータ回路OSCの出力ノードOSC_OUT(インバータ回路IV60〜64のいずれかの出力ノード)が接続される。このバッファ回路BUFは、リングオシレータ回路OSCの出力ノードに対する負荷を低減するために設けられる。
【0074】
レベルシフト回路LSは、高電位側電源ノードVddと第1低電位側電源ノードVssの間に接続され、例えば、PMOSトランジスタTp62,Tp63およびNMOSトランジスタTn60,Tn61からなる差動増幅回路と、その出力ノードに接続された2段のCMOSインバータ回路IV68,IV69によって構成される。PMOSトランジスタTp62,Tp63は、差動対として動作し、PMOSトランジスタTp62のゲートはバッファ回路BUF内のインバータ回路IV66の出力ノードBUF_Pに接続され、PMOSトランジスタTp63のゲートはバッファ回路BUF内のインバータ回路IV65の出力ノードBUF_Nに接続される。NMOSトランジスタTn60およびTn61は、カレントミラー回路を構成し、PMOSトランジスタTp63およびTp62のドレインにそれぞれ接続されることで差動増幅回路の負荷電流源として機能する。そして、PMOSトランジスタTp62のドレインが1段目のCMOSインバータ回路IV68の入力ノードに接続され、2段目のCMOSインバータ回路IV69から発振出力信号VCO_OUTが得られる。
【0075】
このレベルシフト回路LSは、高電位側電源ノードVddと第2低電位側電源ノードVss2の間で振れる発振信号を、高電位側電源ノードVddと第1低電位側電源ノードVssの間の全振幅で振れる発振信号に変換するために設けられる。なお、図6のレベルシフト回路LSは、さらに、このような構成に加えて、ストップ信号STPを受けて発振出力信号VCO_OUTをローレベルに固定するためのPMOSトランジスタTp60,Tp61、NMOSトランジスタTn62およびインバータ回路IV67も備えている。ストップ信号STPがハイレベルとなった際には、インバータ回路IV67を介してPMOSトランジスタTp60およびTp61のゲートにローレベルが印加され、このオンとなったPMOSトランジスタTp60およびTp61を介して高電位側電源ノードVddの電圧がPMOSトランジスタTp63およびTp62のゲートに印加される。さらに、ストップ信号STPのハイレベルは、NMOSトランジスタTn62のゲートにも印加され、このオンとなったNMOSトランジスタTn62を介してインバータ回路IV68の入力ノードがローレベルに固定される。
【0076】
アナログ制御部AG_CTLは、図14で述べたような、NMOSトランジスタT1、ならびにNMOSトランジスタT1のゲートに接続された抵抗R1および容量C2からなるローパスフィルタに加えて、抵抗R2を備えた構成となっている。NMOSトランジスタT1は、ドレインが第2低電位側電源ノードVss2に接続され、ソースが抵抗R2を介して第1低電位側電源ノードVssに接続される。また、NMOSトランジスタT1のゲートには、前述したローパスフィルタを介してアナログ制御信号S_AGが入力される。ここで、抵抗R2は、第2低電位側電源ノードVss2と第1低電位側電源ノードVssの間で電圧変動が生じた際にNMOSトランジスタT1に流れる電流が変動するのを抑制するために設けている。
【0077】
図7は、図1のPLL回路において、そのチャージポンプ制御回路CP_CNTLの詳細な構成例を示す回路図である。図7に示すチャージポンプ制御回路は、カウンタ回路CT70と、インバータ回路IV70〜IV72と、NAND回路ND70〜ND75と、フリップフロップ回路FF70〜FF73と、セットリセットラッチ回路SR70によって構成される。カウンタ回路CT70は、反転リファレンス信号CLKB_REFのパルス数をカウントする回路であり、最大カウント値になった次のパルスで0にリセットされさらにカウント動作を繰り返す回路である。ここでは、3ビットカウンタを用い8カウントごとにリセットされる場合を例に説明する。
【0078】
セットリセットラッチ回路SR70は、発振周波数を大きく変化させる制御信号S_UHもしくはS_DHと位相逆転検出回路REV_DETの出力S_REV1もしくはS_REV2のいずれが最後までハイレベルであったのかを記憶する。制御信号S_UHもしくはS_DHの方が最後までハイレベルであった場合はインバータ回路IV72を介してイネーブル信号S_ENBL1にローレベルを出力し、位相逆転検出回路の出力S_REV1もしくはS_REV2の方が最後までハイレベルであった場合はイネーブル信号S_ENBL1にハイレベルを出力する。制御信号S_UHもしくはS_DHと位相逆転検出回路の出力S_REV1もしくはS_REV2が両方とも今なおハイレベルである時は、イネーブル信号S_ENBL1にハイレベルを出力する。イネーブル信号S_ENBL1がハイレベルの時に周波数比較回路FREQ_COMPが周波数比較回路の出力S_REFまたはS_FBにハイレベルを出力すると、反転リファレンス信号CLKB_REFの次の立ち上がりに同期して、このチャージポンプ制御回路CP_CNTLは発振周波数を大きく変化させる制御信号S_UHまたはS_DHにハイレベルを出力する。また、この時に位相逆転検出回路の出力S_REV1およびS_REV2がローレベルであれば、イネーブル信号S_ENBL1はローレベルになる。イネーブル信号S_ENBL1がローレベルの時には、周波数比較回路FREQ_COMPの出力にかかわらず反転リファレンス信号CLKB_REFの次の立ち上がりに同期して制御信号S_UHおよびS_DHにローレベルを出力する。したがって、位相逆転検出回路の出力S_REV1またはS_REV2がハイレベルになった後最初に現れる周波数比較回路の出力S_REFまたはS_FBのハイレベルに対してのみ制御信号S_UHまたはS_DHにハイレベルを出力し、その後は再び位相逆転検出回路の出力S_REV1またはS_REV2がハイレベルになるまで制御信号S_UHおよびS_DHにローレベルを出力する回路として作用する。
【0079】
また、カウンタ回路CT70が8カウントごとにオール1を出力するため、定常状態検出回路CONV_DETが定常状態検出回路の出力S_CONVにローレベルを出力している時には、8サイクルごとに1回だけイネーブル信号S_ENBL2にハイレベルが出力され他の7サイクルではイネーブル信号S_ENBL2にローレベルが出力される。S_CONVがハイレベルの時には、イネーブル信号S_ENBL2には常にハイレベルが出力される。イネーブル信号S_ENBL1およびS_ENBL2が共にハイレベルの時には、位相比較回路PHASE_COMPの出力S_PHに応じて、発振周波数を少しだけ変化させる制御信号S_ULもしくはS_DLにハイレベルが出力される。イネーブル信号S_ENBL1またはS_ENBL2の少なくとも一方がローレベルの時には、制御信号S_ULおよびS_DLには共にローレベルが出力される。すなわち、周波数比較回路の出力S_REFもしくはS_FBのいずれかがハイレベルになった後、位相逆転検出回路の出力S_REV1もしくはS_REV2のいずれかがハイレベルになるまでの間は制御信号S_ULおよびS_DLには共にローレベルを出力し、位相逆転検出回路の出力S_REV1もしくはS_REV2のいずれかがハイレベルになった後は、定常状態検出回路の出力S_CONVがハイレベルであれば毎サイクル、定常状態検出回路の出力S_CONVがローレベルであれば8サイクルごとに1回、位相比較回路の出力S_PHに応じて制御信号S_ULまたはS_DLにハイレベルを出力する回路として作用する。
【0080】
図8は、図1のPLL回路において、そのチャージポンプ回路CPの詳細な構成例を示す回路図である。図8のチャージポンプ回路は、高電位側電源ノードVddと第1低電位側電源ノードVssの間にPMOSトランジスタTp80〜Tp82とNMOSトランジスタTn82〜Tn80を備えている。ここで、PMOSトランジスタTp82とNMOSトランジスタTn82のドレインに該当する出力ノードからはアナログ制御信号S_AGが出力される。
【0081】
また、このアナログ制御信号S_AGの出力ノードと高電位側電源ノードVddの間には、PMOSトランジスタTp80〜Tp82と並列にPMOSトランジスタTp83が接続され、アナログ制御信号S_AGの出力ノードと第1低電位側電源ノードVssの間には、それぞれNMOSトランジスタTn82〜Tn80と並列に2つのNMOSトランジスタTn83、Tn84が接続される。PMOSトランジスタTp81(およびNMOSトランジスタTn81)のゲートには第1パルス信号PLS1(およびその反転信号)が入力される。一方、PMOSトランジスタTp80(およびNMOSトランジスタTn80)のゲートには第2パルス信号PLS2(およびその反転信号)が入力される。
【0082】
第1パルス信号PLS1は、反転リファレンス信号CLKB_REFと、これを合計5段のインバータ回路により構成した遅延回路DLY80およびIV_DLY82により反転および遅延させた信号とをNAND回路ND81で演算することで生成される。この場合、第1パルス信号PLS1は、インバータ回路5段分のパルス幅を備えたローパルス信号となる。一方、第2パルス信号PLS2は、反転リファレンス信号CLKB_REFと、これを合計7段のインバータ回路により構成した遅延回路DLY80およびIV_DLY81により反転および遅延させた信号とをNAND回路ND80で演算し、さらに、その出力を例えば3段のインバータ回路により構成した遅延回路IV_DLY83で反転および遅延させることで生成される。この場合、第2パルス信号PLS2は、インバータ回路7段分のパルス幅を備えたハイパルス信号となり、第1パルス信号PLS1の立ち下がりから遅延回路IV_DLY83の遅延時間分を経て立ち上がるパルス信号となる。すなわち、この遅延回路IV_DLY83の遅延時間が、Tp81(およびTn81)が導通してからTp80(およびTn80)が遮断するまでの時間となり、すなわち高電位側電源ノードVddからアナログ制御信号S_AGの間またはアナログ制御信号S_AGから第1低電位側電源ノードVssの間に電流を流す時間となる。
【0083】
PMOSトランジスタTp82のゲートには、ストップ信号STPの反転信号と制御信号S_ULとをNAND回路ND82で演算した結果が入力され、NMOSトランジスタTn82のゲートには、制御信号S_DLが入力される。したがって、PMOSトランジスタTp82は、ストップ信号STPがローレベル(不活性)の場合で、なおかつ少し周波数を上げたい時の制御信号S_ULがハイレベルとなった場合にオンとなる。一方、NMOSトランジスタTn82は、少し周波数を下げたい時の制御信号S_DLがハイレベルとなった場合にオンとなる。そして、PMOSトランジスタTp82およびNMOSトランジスタTn82の一方がオンとなった場合には、遅延回路IV_DLY83の遅延時間に相当する非常に短い時間幅を備えた電流がアナログ制御信号S_AGの端子に出力されることになる。
【0084】
PMOSトランジスタTp83のゲートには、ストップ信号STPの反転信号と制御信号S_UHとをNAND回路ND83で演算した結果が入力され、NMOSトランジスタTn83のゲートには、制御信号S_DHが入力される。したがって、PMOSトランジスタTp83は、ストップ信号STPがローレベル(不活性)の場合で、なおかつ大きく周波数を上げたい時の制御信号S_UHがハイレベルとなった場合にオンとなる。一方、NMOSトランジスタTn83は、大きく周波数を下げたい時の制御信号S_DHがハイレベルとなった場合にオンとなる。PMOSトランジスタTp83またはNMOSトランジスタTn83が導通する時には、制御信号S_UHまたはS_DHのパルス幅(すなわちリファレンス信号CLK_REFの1サイクル分)に相当する時間幅を備えた電流がアナログ制御信号S_AGの端子に出力されることになる。この時間は遅延回路IV_DLY83の遅延時間より相当長いため、制御信号S_UHまたはS_DHによる制御幅は制御信号S_ULまたはS_DLによる制御幅より相当大きくなる。
【0085】
なお、ストップ信号STPは、例えば、テスト時等において、アナログ制御信号S_AGを第1低電位側電源ノードVss電圧とし、電圧制御発振回路VCOの発振を停止させるために設けている。ストップ信号STPがハイレベルとなった場合は、NAND回路ND82およびND83を介してPMOSトランジスタTp82およびTp83がオフに駆動されると共に、NMOSトランジスタTn84がオンに駆動されることでアナログ制御信号S_AGがVssに接続される。
【0086】
以上、本実施の形態1のPLL回路を用いることで、定常状態におけるデジタル制御信号による発振周波数の制御幅を抑制でき、位相ジッタが小さいPLL回路を実現可能となる。
【0087】
(実施の形態2)
前述した実施の形態1では、チャージポンプ回路CPと電圧制御発振回路VCOの間を1本のアナログ制御信号S_AGで接続する構成について述べた。本実施の形態2では、この間を2本のアナログ制御信号S_AG1およびS_AG2で接続する構成について述べる。
【0088】
図9は、本発明の実施の形態2によるチャージポンプ回路CPの構成例を示す回路図である。図9に示すチャージポンプ回路は、図8で示したチャージポンプ回路と比較して、PMOSトランジスタTp80〜Tp82とNMOSトランジスタTn82〜Tn80が構成する回路から出力するアナログ制御信号S_AG1を他の回路から出力するアナログ制御信号S_AG2と分離した構成を用いている。この目的は、アナログ制御信号S_AG1のノードに付く寄生容量を極力低減することにある。
【0089】
図8の場合、PMOSトランジスタTp80〜Tp82またはNMOSトランジスタTn82〜Tn80を経由し図6の抵抗R1を介して容量C2に充放電される電荷量が、アナログ制御信号S_AGのノードに付く寄生容量に充放電される電荷量より十分に大きければ、この寄生容量を無視することができる。しかし、電流が流れる時間を短くして容量C2に充放電される電荷量を低減しようとすると、この寄生容量が無視できなくなる。図9はこれを回避するための構成であり、PMOSトランジスタTp80〜Tp82とNMOSトランジスタTn82〜Tn80以外の回路を分離してアナログ制御信号S_AG1に付く寄生容量を極力低減している。
【0090】
図10は、図9に示すチャージポンプ回路と共に使用する電圧制御発振回路VCOの中のアナログ制御部AG_CTLの構成例を示す回路図である。この回路では、アナログ制御信号S_AG1およびS_AG2と容量C2の間に別々の抵抗R11およびR12を設け、アナログ制御信号S_AG1とS_AG2を分離している。アナログ制御部AG_CTLの中のその他の部分と、電圧制御発振回路VCOの中のアナログ制御部以外の部分は、図6に示す電圧制御発振回路と同じ構成である。アナログ制御信号S_AG1を経由して充放電された電荷とアナログ制御信号S_AG2を経由して充放電された電荷は共に容量C2に蓄積され、図6に示す電圧制御発振回路と同じように作用する。アナログ制御信号S_AG1とアナログ制御信号S_AG2を分離したことにより、アナログ制御信号S_AG2のノードに付く寄生容量がアナログ制御信号S_AG1を供給する回路に影響を及ぼさないようにすることができる。
【0091】
(実施の形態3)
前述した実施の形態1では、電圧制御発振回路VCOの中のバッファ回路BUFを2段のインバータで構成する場合について述べた。本実施の形態3では、このバッファ回路BUFを4段のインバータで構成する場合について述べる。
【0092】
図11は、本発明の実施の形態3による電圧制御発振回路VCOの中のバッファ回路BUFの構成例を示す回路図である。このバッファ回路は、インバータ回路IV110,IV65,IV111,IV66によって構成される。図6で示した電圧制御発振回路の中のバッファ回路と比較して、この回路ではインバータ回路IV66の入力信号を出力ノードBUF_N信号と独立にした構成を用いている。図6に示したように、バッファ回路BUFとレベルシフト回路LSの低電位側の電源は一方が第2低電位側電源ノードVss2であり、他方が第1低電位側電源ノードVssであって電圧が異なるため、この2つの回路の間をつなぐ出力ノードBUF_PおよびBUF_Nの配線がレイアウト設計の都合によって長くなる場合がある。すると出力ノードBUF_PおよびBUF_Nに付く寄生容量が大きくなり、発振周波数が高い場合には信号波形が鈍ることがある。この信号波形が鈍った出力ノードBUF_Nをインバータ回路IV66の入力として出力ノードBUF_Pを出力することを避けるため、図11に示す構成を用いる。このバッファ回路BUFでは、インバータ回路IV110,IV111,IV66を経由して出力ノードBUF_Pを出力し、インバータ回路IV110,IV65を経由して出力ノードBUF_Nを出力するように構成している。これにより、信号波形が鈍る可能性のある出力ノードBUF_PやBUF_Nが他方の信号を生成する経路に混入することを避け、発振周波数が高くなった場合に信号波形がさらに鈍ることを回避できる。
【0093】
(実施の形態4)
前述した実施の形態1では、周波数比較回路FREQ_COMPおよび位相逆転検出回路REV_DETとチャージポンプ制御回路CP_CNTLの間を直接接続する構成について述べた。本実施の形態4では、この間に信号の時間幅を拡張する回路を設けた構成について述べる。
【0094】
リファレンス信号CLK_REFとフィードバック信号CLK_FBの周波数がある程度以上異なる時には、周波数比較回路FREQ_COMPや位相逆転検出回路REV_DETが周波数の異なることを示す周波数比較回路の出力S_REFもしくはS_FBや、位相が逆転したことを示す位相逆転検出回路の出力S_REV1もしくはS_REV2を毎サイクル出力し、発振周波数を大きく変化させる制御信号S_UHもしくはS_DHが毎サイクル出力されるのが望ましい。しかしながら、ここまで示してきた周波数比較回路FREQ_COMPや位相逆転検出回路REV_DETでは、リファレンス信号CLK_REFとフィードバック信号CLK_FBの周波数が大きく異なる場合でも、タイミング関係によっては周波数比較回路の出力S_REFおよびS_FBや位相逆転検出回路の出力S_REV1およびS_REV2に信号が出力されないサイクルが生じる。また、リファレンス信号CLK_REFとフィードバック信号CLK_FBの周波数が2対1程度にまで近づくと、周波数比較回路の出力S_REFもしくはS_FBや位相逆転検出回路の出力S_REV1もしくはS_REV2に信号が出力される頻度は約2サイクルに1回程度にまで低下する。
【0095】
本発明の実施の形態4では、この周波数比較回路の出力S_REFもしくはS_FBや位相逆転検出回路の出力S_REV1もしくはS_REV2の時間幅を1サイクル分拡張することにより、リファレンス信号CLK_REFとフィードバック信号CLK_FBの周波数が2対1程度以上異なれば発振周波数を大きく変化させる信号がほぼ毎サイクル出力される。なお前述のように、リファレンス信号CLK_REFとフィードバック信号CLK_FBの周波数がほぼ等しい時には周波数比較回路の出力S_REFもしくはS_FBに連続して信号が出力されても過大な制御がかからないようにする機構をチャージポンプ制御回路CP_CNTLに備えれば、これらの信号の時間幅を拡張したことによる誤動作などは発生しない。
【0096】
図12は、本発明の実施の形態4において、周波数比較回路の出力S_REFの時間幅を1サイクル分拡張する回路の構成例を示す回路図である。図12の回路は、フリップフロップ回路FF120と、NOR回路NR120と、インバータ回路IV120によって構成される。フリップフロップ回路FF120のデータ入力端子とNOR回路NR120の一方の入力端子には、周波数比較回路FREQ_COMPの出力S_REFを接続する。フリップフロップ回路FF120のクロックトリガ入力端子には、反転リファレンス信号CLKB_REFを接続し、フリップフロップ回路FF120の出力端子はNOR回路NR120の他方の入力端子に接続する。これにより、フリップフロップ回路FF120には1サイクル前の周波数比較回路の出力S_REFを記憶し、NOR回路NR120の出力端子では1サイクル前と現在の周波数比較回路の出力S_REFのNOR演算結果が得られる。これをインバータ回路IV120によって反転することにより、周波数比較回路の出力S_REFの時間幅を1サイクル分拡張した信号S_REF1が得られる。この信号を、チャージポンプ制御回路CP_CNTLのS_REF入力端子に接続すればよい。他の信号(周波数比較回路の出力S_FB、位相逆転検出回路の出力S_REV1,S_REV2)についても同様の回路で時間幅を1サイクル分拡張できる。
【0097】
また、実施の形態1では周波数比較回路FREQ_COMPの出力S_FBのパルス幅は通常はフィードバック信号CLK_FBの周期に等しいため、フィードバック信号の周波数が極端に高い状態を初期状態として制御が始まった場合(高い周波数で使用している状態から低い周波数で使用する状態に移行する場合など)には、反転リファレンス信号CLKB_REFの周期より周波数比較回路の出力S_FBのパルス幅の方が短くなる。このため、実施の形態1では周波数比較回路FREQ_COMPの出力S_FBの信号がチャージポンプ制御回路CP_CNTLに確実に取り込まれるようタイミング設計に気をつける必要がある。
【0098】
本実施の形態4では、周波数比較回路の出力S_FBのパルス幅を反転リファレンス信号CLKB_REFの1サイクル分拡張するため、このタイミング設計が容易になる。
【0099】
(実施の形態5)
前述した実施の形態1では、電圧制御発振回路VCOの出力を分周回路DIVで分周してクロック信号CLK_OUTを出力する構成について述べた。本実施の形態5では、図13に示すように電圧制御発振回路VCOから直接クロック信号CLK_OUTを出力する構成について述べる。
【0100】
図13に示す構成は図1に示す構成と比較して、クロック信号CLK_OUTとして出力するクロック信号の上限周波数が高いという特長がある。電圧制御発振回路VCOとして同じ回路を使うと上限発振周波数が同じであるから、そのままの周波数で出力する図13の構成の方が半分以下の周波数にして出力する図1の構成より高い周波数で出力できる。
【0101】
一方、図1に示す構成は図13に示す構成と比較して、クロック信号CLK_OUTとして出力するクロック信号のパルス幅を正確にクロック周期の半分にできるという特長がある。分周回路DIVからクロック信号CLK_OUTを出力することにより、クロック信号CLK_OUTの立ち上がりエッジと立ち下がりエッジを共に電圧制御発振回路VCOの出力に同期させることができるため、パルス幅を正確に制御することができる。また、複数の相のクロック信号を出力したい場合にも図1の構成を使う方が容易である。
【0102】
図1と図13のいずれの構成が最適であるかは、そのPLL回路を使用する目的や条件などによって異なる。
【0103】
(その他の実施の形態)
前述した実施の形態1では、定常状態検出回路CONV_DETの出力S_CONVを、デジタル制御回路DIG_CNTLとチャージポンプ制御回路CP_CNTLの両方が使用し、デジタル制御信号S_DGによる発振周波数の制御幅とアナログ制御信号S_AGを変化させる頻度を、定常状態に達しているか否かによって両方とも変更する構成について述べた。この他の実施の形態として、デジタル制御信号S_DGによる発振周波数の制御幅のみを定常状態に達しているか否かによって変更する構成や、アナログ制御信号S_AGを変化させる頻度のみを定常状態に達しているか否かによって変更する構成も有り得る。また、デジタル制御信号S_DGのうち定常状態の時にローレベルに固定する1本またはハイレベルに固定する1本を削除し、2ビットで制御する構成も有り得る。いずれの場合も本発明の実施の形態1によるPLL回路に比べて本発明の効果は薄れるが、ある程度は本発明の効果を期待できる。
【0104】
また、定常状態検出回路CONV_DETの中の所定時間が経過したことを検知する部分TIMERを2組設け、定常状態に達しているか否かを判定する所定時間を2種類用意する構成も有り得る。この場合、デジタル制御信号による発振周波数の制御幅を変更するために定常状態に達しているか否かを判定する条件と、アナログ制御信号を変化させる頻度を変更するために定常状態に達しているか否かを判定する条件を、別々に設定できるためそれぞれに最適な設計をすることが可能である。
【0105】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0106】
例えば、これまでの実施の形態では、トランジスタとしてMOSトランジスタを用いたが、勿論、バイポーラトランジスタなどで代替えすることも可能である。また、図6等では、低電位電源側にトランジスタを設け、そのゲート電位によって発振周波数の制御を行ったが、同様に、高電位電源側にトランジスタを設け、そのゲート電位によって発振周波数を制御することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明のPLL回路は、特に、半導体集積回路装置内のクロック信号供給部に適用して有益な技術であり、これに限らず、高速または高精度なクロック信号が求められる各種集積回路装置に対して広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の実施の形態1によるPLL回路の構成例を示すブロック図である。
【図2】図1のPLL回路において、その位相比較回路の詳細な構成例を示す回路図である。
【図3】図1のPLL回路において、その周波数比較回路の詳細な構成例を示す回路図である。
【図4】図1のPLL回路において、その定常状態検出回路の詳細な構成例を示す回路図である。
【図5】図1のPLL回路において、そのデジタル制御回路の詳細な構成例を示す回路図である。
【図6】図1のPLL回路において、その電圧制御発振回路の詳細な構成例を示す回路図である。
【図7】図1のPLL回路において、そのチャージポンプ制御回路の詳細な構成例を示す回路図である。
【図8】図1のPLL回路において、そのチャージポンプ回路の詳細な構成例を示す回路図である。
【図9】本発明の実施の形態2によるPLL回路において、そのチャージポンプ回路の詳細な構成例を示す回路図である。
【図10】本発明の実施の形態2によるPLL回路において、その電圧制御発振回路の中のアナログ制御部の詳細な構成例を示す回路図である。
【図11】本発明の実施の形態3によるPLL回路において、その電圧制御発振回路の中のバッファ回路の詳細な構成例を示す回路図である。
【図12】本発明の実施の形態4によるPLL回路において、その信号の時間幅を拡張する回路の詳細な構成例を示す回路図である。
【図13】本発明の実施の形態5によるPLL回路の構成例を示すブロック図である。
【図14】本発明の前提として検討したPLL回路に含まれる電圧制御発振回路の概略構成例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0109】
AD AND回路
AG_CTL アナログ制御部
BUF バッファ回路
BUF_N,BUF_P バッファ回路の出力ノード
C 容量
CLK_FB フィードバック信号
CLK_OUT クロック出力信号
CLK_REF リファレンス信号
CLKB_REF 反転リファレンス信号
CONV_DET 定常状態検出回路
COUNTER カウンタ回路
CP チャージポンプ回路
CP_CNTL チャージポンプ制御回路
CT カウンタ回路
DG_CTL デジタル制御部
DIG_CNTL デジタル制御回路
DIV 分周回路
DLY、IV_DLY 遅延回路
FF フリップフロップ回路
FLIP_DET 反転したことを検出する部分
FREQ_COMP 周波数比較回路
IV インバータ回路
LS レベルシフト回路
ND NAND回路
NR NOR回路
OSC リングオシレータ回路
OSC_OUT リングオシレータ回路の出力ノード
PHASE_COMP 位相比較回路
PLS パルス信号
R 抵抗
REV_DET 位相逆転検出回路
S_AG アナログ制御信号
S_CONV,S_REV 検出回路の出力
S_DG デジタル制御信号
S_DH,S_DL,S_UH,S_UL 制御信号
S_ENBL イネーブル信号
S_FB,S_PH,S_REF 比較回路の出力
SR セットリセットラッチ回路
STP ストップ信号
T トランジスタ
TIMER 所定時間が経過したことを検知する部分
Tn NMOSトランジスタ
Tp PMOSトランジスタ
VCO 電圧制御発振回路
VCO_OUT 電圧制御発振回路の出力ノード
Vdd 高電位側電源ノード
Vss 第1低電位側電源ノード
Vss2 第2低電位側電源ノード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の範囲に亘って発振周波数を制御するアナログ制御信号と、前記第1の範囲より狭い範囲で発振周波数を制御するデジタル制御信号と、によって制御される電圧制御発振器と、
前記電圧制御発振器の出力の周波数、もしくは前記電圧制御発振器の出力を分周した信号の周波数と、基準信号の周波数と、を比較する周波数比較回路と、
前記電圧制御発振器の出力の位相、もしくは前記電圧制御発振器の出力を分周した信号の位相と、前記基準信号の位相と、を比較する位相比較回路と、を備え、
前記電圧制御発振器の出力、もしくは前記電圧制御発振器の出力を分周した信号と、前記基準信号と、の周波数および位相が一致するように前記電圧制御発振器の発振周波数を制御するように構成されたPLL回路であって、
前記電圧制御発振器の発振周波数の制御が定常状態に達したか否かを判定する第1回路を備え、
前記定常状態に達していないと判定した時にのみ作動する第2回路、または前記定常状態に達したと判定した時にのみ作動する第3回路のうち、少なくとも一方を有することを特徴とするPLL回路。
【請求項2】
請求項1記載のPLL回路において、
前記第1回路は、前記位相比較回路の比較結果が第1の時間以上同じ状態にあるか否かを判定する機能を有することを特徴とするPLL回路。
【請求項3】
請求項2記載のPLL回路において、
前記第1の時間は、前記基準信号の4サイクルに相当する時間であることを特徴とするPLL回路。
【請求項4】
請求項1記載のPLL回路において、
前記第1回路が前記定常状態に達していないと判定した場合には、前記第1回路が前記定常状態に達していると判定した場合に比べ、前記アナログ制御信号を変化させる頻度を下げることを特徴とするPLL回路。
【請求項5】
請求項2記載のPLL回路において、
前記位相比較回路の比較結果が前記第1の時間以上同じ状態にある場合には、前記位相比較回路の比較結果が前記第1の時間未満に変化している場合に比べ、前記アナログ制御信号を変化させる頻度を下げることを特徴とするPLL回路。
【請求項6】
請求項3記載のPLL回路において、
前記位相比較回路の比較結果が前記第1の時間以上同じ状態にある場合には、前記位相比較回路の比較結果が前記第1の時間未満に変化している場合に比べ、前記アナログ制御信号を変化させる頻度を下げることを特徴とするPLL回路。
【請求項7】
請求項4記載のPLL回路において、
前記第1回路が前記定常状態に達していないと判定した場合には、第2の時間ごとに前記アナログ制御信号を変化させ、
前記第1回路が前記定常状態に達していると判定した場合には、前記アナログ制御信号を前記基準信号の1サイクルごとに変化させることを特徴とするPLL回路。
【請求項8】
請求項5記載のPLL回路において、
前記位相比較回路の比較結果が前記第1の時間以上同じ状態にある場合には、第2の時間ごとに前記アナログ制御信号を変化させ、
前記位相比較回路の比較結果が前記第1の時間未満に変化している場合には、前記アナログ制御信号を前記基準信号の1サイクルごとに変化させることを特徴とするPLL回路。
【請求項9】
請求項6記載のPLL回路において、
前記位相比較回路の比較結果が前記第1の時間以上同じ状態にある場合には、第2の時間ごとに前記アナログ制御信号を変化させ、
前記位相比較回路の比較結果が前記第1の時間未満に変化している場合には、前記アナログ制御信号を前記基準信号の1サイクルごとに変化させることを特徴とするPLL回路。
【請求項10】
請求項7記載のPLL回路において、
前記第2の時間は、前記基準信号の8サイクル以上に相当する時間であることを特徴とするPLL回路。
【請求項11】
請求項8記載のPLL回路において、
前記第2の時間は、前記基準信号の8サイクル以上に相当する時間であることを特徴とするPLL回路。
【請求項12】
請求項9記載のPLL回路において、
前記第2の時間は、前記基準信号の8サイクル以上に相当する時間であることを特徴とするPLL回路。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のPLL回路において、
前記デジタル制御信号は2ビット以上のデジタル信号により構成され、
前記第1回路が前記定常状態に達していると判定した場合には、前記デジタル制御信号の内の1ビットのみを前記位相比較回路の比較結果に基づいて変化させると共に他のビットをそれぞれ所定値に固定し、
前記第1回路が前記定常状態に達していないと判定した場合には、少なくとも前記他のビットを前記位相比較回路の比較結果に基づいて変化させることを特徴とするPLL回路。
【請求項1】
第1の範囲に亘って発振周波数を制御するアナログ制御信号と、前記第1の範囲より狭い範囲で発振周波数を制御するデジタル制御信号と、によって制御される電圧制御発振器と、
前記電圧制御発振器の出力の周波数、もしくは前記電圧制御発振器の出力を分周した信号の周波数と、基準信号の周波数と、を比較する周波数比較回路と、
前記電圧制御発振器の出力の位相、もしくは前記電圧制御発振器の出力を分周した信号の位相と、前記基準信号の位相と、を比較する位相比較回路と、を備え、
前記電圧制御発振器の出力、もしくは前記電圧制御発振器の出力を分周した信号と、前記基準信号と、の周波数および位相が一致するように前記電圧制御発振器の発振周波数を制御するように構成されたPLL回路であって、
前記電圧制御発振器の発振周波数の制御が定常状態に達したか否かを判定する第1回路を備え、
前記定常状態に達していないと判定した時にのみ作動する第2回路、または前記定常状態に達したと判定した時にのみ作動する第3回路のうち、少なくとも一方を有することを特徴とするPLL回路。
【請求項2】
請求項1記載のPLL回路において、
前記第1回路は、前記位相比較回路の比較結果が第1の時間以上同じ状態にあるか否かを判定する機能を有することを特徴とするPLL回路。
【請求項3】
請求項2記載のPLL回路において、
前記第1の時間は、前記基準信号の4サイクルに相当する時間であることを特徴とするPLL回路。
【請求項4】
請求項1記載のPLL回路において、
前記第1回路が前記定常状態に達していないと判定した場合には、前記第1回路が前記定常状態に達していると判定した場合に比べ、前記アナログ制御信号を変化させる頻度を下げることを特徴とするPLL回路。
【請求項5】
請求項2記載のPLL回路において、
前記位相比較回路の比較結果が前記第1の時間以上同じ状態にある場合には、前記位相比較回路の比較結果が前記第1の時間未満に変化している場合に比べ、前記アナログ制御信号を変化させる頻度を下げることを特徴とするPLL回路。
【請求項6】
請求項3記載のPLL回路において、
前記位相比較回路の比較結果が前記第1の時間以上同じ状態にある場合には、前記位相比較回路の比較結果が前記第1の時間未満に変化している場合に比べ、前記アナログ制御信号を変化させる頻度を下げることを特徴とするPLL回路。
【請求項7】
請求項4記載のPLL回路において、
前記第1回路が前記定常状態に達していないと判定した場合には、第2の時間ごとに前記アナログ制御信号を変化させ、
前記第1回路が前記定常状態に達していると判定した場合には、前記アナログ制御信号を前記基準信号の1サイクルごとに変化させることを特徴とするPLL回路。
【請求項8】
請求項5記載のPLL回路において、
前記位相比較回路の比較結果が前記第1の時間以上同じ状態にある場合には、第2の時間ごとに前記アナログ制御信号を変化させ、
前記位相比較回路の比較結果が前記第1の時間未満に変化している場合には、前記アナログ制御信号を前記基準信号の1サイクルごとに変化させることを特徴とするPLL回路。
【請求項9】
請求項6記載のPLL回路において、
前記位相比較回路の比較結果が前記第1の時間以上同じ状態にある場合には、第2の時間ごとに前記アナログ制御信号を変化させ、
前記位相比較回路の比較結果が前記第1の時間未満に変化している場合には、前記アナログ制御信号を前記基準信号の1サイクルごとに変化させることを特徴とするPLL回路。
【請求項10】
請求項7記載のPLL回路において、
前記第2の時間は、前記基準信号の8サイクル以上に相当する時間であることを特徴とするPLL回路。
【請求項11】
請求項8記載のPLL回路において、
前記第2の時間は、前記基準信号の8サイクル以上に相当する時間であることを特徴とするPLL回路。
【請求項12】
請求項9記載のPLL回路において、
前記第2の時間は、前記基準信号の8サイクル以上に相当する時間であることを特徴とするPLL回路。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のPLL回路において、
前記デジタル制御信号は2ビット以上のデジタル信号により構成され、
前記第1回路が前記定常状態に達していると判定した場合には、前記デジタル制御信号の内の1ビットのみを前記位相比較回路の比較結果に基づいて変化させると共に他のビットをそれぞれ所定値に固定し、
前記第1回路が前記定常状態に達していないと判定した場合には、少なくとも前記他のビットを前記位相比較回路の比較結果に基づいて変化させることを特徴とするPLL回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−159038(P2009−159038A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332026(P2007−332026)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、文部科学省、「低電力高速デバイス・回路技術・論理方式の研究開発」 委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、文部科学省、「低電力高速デバイス・回路技術・論理方式の研究開発」 委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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