説明

Vベルト式無段変速機のベルトスリップ状態判定装置

【課題】Vベルトの挟圧時におけるプーリの変形に伴うベルト巻き付き半径の変化を考慮して、実際に近いベルトスリップ率を求め、これが適正値になるよう制御する。
【解決手段】理論的なベルト巻き付き半径比λboと、プーリ回転比λpとから、ベルトスリップ率SLipを求めるものを前提とするが、理論的なベルト巻き付き半径比λboをそのまま用いず、これを補正係数Kpの乗算により補正して得られる補正済ベルト巻き付き半径比λbを用いる。補正係数Kpは、Vベルトの挟圧時におけるプーリの変形に伴うベルト巻き付き半径の変化で理論的なベルト巻き付き半径比λboが実際のベルト巻き付き半径比からずれるため、このずれを無くして補正済ベルト巻き付き半径比λbを実際のベルト巻き付き半径比に一致させるような係数とする。このλbを用いてベルトスリップ率SLipを求めることで、このスリップ率SLipが実際値に一致して、実際のベルトスリップを過不足のない適正値に制御可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Vベルト式無段変速機のVベルトがプーリに対して如何なるスリップ状態であるのかを判定するVベルト式無段変速機のベルトスリップ状態判定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
Vベルト式無段変速機は、入力側のプライマリプーリおよび出力側のセカンダリプーリ間にVベルトを掛け渡して構成する。
そして、プライマリプーリおよびセカンダリプーリをそれぞれ、プーリV溝を形成する一方の固定フランジに対し他方の可動フランジが個々のプーリ圧により軸線方向へストローク可能となす。
【0003】
また、これらプーリ圧のうち一方のプーリ圧を制御して、プライマリプーリによるVベルト挟圧力およびセカンダリプーリによるVベルト挟圧力を決定し、
プライマリプーリによるVベルト挟圧力とセカンダリプーリによるVベルト挟圧力との相関関係によってVベルト式無段変速機の変速比が決まる。
【0004】
ところでVベルト式無段変速機は、プライマリプーリおよびセカンダリプーリに対するVベルトのスリップ状態が適切なものとなるよう、プライマリプーリ圧によるVベルト挟圧力およびセカンダリプーリ圧によるVベルト挟圧力を決定する必要がある。
【0005】
ちなみに、プライマリプーリ圧によるVベルト挟圧力およびセカンダリプーリ圧によるVベルト挟圧力が小さ過ぎてVベルトがスリップ過多である場合、伝動効率が低下するだけでなく、Vベルトの耐久性が悪化し、
逆にプライマリプーリ圧によるVベルト挟圧力およびセカンダリプーリ圧によるVベルト挟圧力が大き過ぎてVベルトがスリップ不足である場合も、Vベルトの耐久性が悪化するだけでなく、Vベルト挟圧力の過大分だけ動力損失が大きくなって燃費の悪化を招くという問題を生ずる。
【0006】
従って、プライマリプーリおよびセカンダリプーリに対するVベルトのスリップ状態が適切なものとなるよう、プライマリプーリ圧によるVベルト挟圧力およびセカンダリプーリ圧によるVベルト挟圧力を制御する必要があり、
そのためプライマリプーリおよびセカンダリプーリに対するVベルトのスリップ状態を判定する必要がある。
【0007】
例えばかかる要求に鑑み、Vベルトのスリップ状態を判定する技術としては従来、特許文献1に記載のごときものが知られている。
これに記載のベルトスリップ率判定技術は、Vベルトがプーリに対して進行方向にスリップしていることを前提とし、プライマリプーリおよびセカンダリプーリ間におけるプーリ回転比と、プライマリプーリおよびセカンダリプーリに対する巻き付け半径比との比較から、Vベルトが進行方向にスリップしているか否かを判定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平04−064760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、Vベルトのスリップ状態を上記のごとく、プライマリプーリおよび/またはセカンダリプーリに対するVベルトの巻き付き半径から判定する場合は、以下に説明するような問題がある。
【0010】
つまり、Vベルト挟圧力を発生させるためのプーリ圧は、プーリの固定フランジおよび可動フランジをVベルト挟圧反力によって軸線方向に変形させる傾向となる。
かかる固定フランジおよび可動フランジの変形は、Vベルトが同じ巻き掛け位置を保っていても、Vベルトと固定フランジおよび可動フランジとの理論上の接触係合点を径方向に位置ずれさせてしまい、プーリに対するVベルトの巻き付き半径を変化させる。
この傾向は、アクセルペダルの踏み込みに呼応してVベルト式無段変速機がロー側変速比に向けダウンシフトするとき、Vベルト挟圧力が大きくなって上記固定フランジおよび可動フランジの変形が大きくなることから、特に顕著になる。
【0011】
かようにVベルトの巻き付き半径が変化するにもかかわらず、この変化を考慮することなくVベルトのスリップ状態を前記のごとくに判定する従来の装置では、Vベルトのスリップ状態判定精度が悪く、
プライマリプーリおよびセカンダリプーリに対するVベルトのスリップ状態が適切なものとなるよう、プライマリプーリによるVベルト挟圧力およびセカンダリプーリによるVベルト挟圧力を制御するという要求を満足させることができない。
【0012】
本発明は、プーリによるVベルト挟圧力に応じたVベルト巻き付き半径の変化を考慮してVベルトのスリップ状態を正確に判定し得るようになすことにより、上記の問題を解消可能にしたVベルト式無段変速機のベルトスリップ状態判定装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のため、本発明によるVベルト式無段変速機のベルトスリップ状態判定装置は、請求項1に記載のごとくに構成する。
先ず、本発明のベルトスリップ状態判定装置を用いるVベルト式無段変速機について説明するに、これは、
入力側のプライマリプーリおよび出力側のセカンダリプーリ間にVベルトを掛け渡して具え、プライマリプーリによるVベルト挟圧力とセカンダリプーリによるVベルト挟圧力との相関関係によって変速比が決まるものである。
【0014】
本発明の前提となるベルトスリップ状態判定装置は、かかるVベルト式無段変速機に用いて、
プライマリプーリおよびセカンダリプーリに対するVベルトのスリップ状態を、少なくとも該プライマリプーリまたはセカンダリプーリに対するVベルトの巻き付き半径から判定するものである。
【0015】
そして本発明のベルトスリップ判定装置は特に、上記型式のベルトスリップ判定装置に対し、以下のような第1のVベルト巻き付き半径補正手段を設ける。
当該第1のVベルト巻き付き半径補正手段は、上記スリップ状態の判定に際して用いる、プライマリプーリまたはセカンダリプーリに対するVベルトの巻き付き半径を、プライマリプーリによるVベルト挟圧力またはセカンダリプーリによるVベルト挟圧力に応じて補正するものである。
【発明の効果】
【0016】
かかる本発明のベルトスリップ状態判定装置によれば、Vベルトのスリップ状態を判定するに際して用いる、プライマリプーリまたはセカンダリプーリに対するVベルトの巻き付き半径を、プライマリプーリによるVベルト挟圧力またはセカンダリプーリによるVベルト挟圧力に応じて補正するため、
これらVベルト挟圧力に応じVベルトの巻き付き半径が変化しても、この変化を考慮すて補正したVベルトの巻き付き半径をもとにVベルトのスリップ状態を正確に判定することができる。
【0017】
よって、Vベルトのスリップ状態判定精度が高く、例えばVベルトのスリップ状態が適切なものとなるよう、プライマリプーリによるVベルト挟圧力およびセカンダリプーリによるVベルト挟圧力を制御するに際して、この要求された制御を確実に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のベルトスリップ状態判定装置を適用可能なVベルト式無段変速機を、その変速制御システムと共に例示する概略線図である。
【図2】図1におけるVベルト式無段変速機のVベルト巻き掛け伝動部を示す詳細正面図である。
【図3】図1におけるVベルト式無段変速機のプーリと、Vベルトエレメントとの係合接触状態を示す斜視図である。
【図4】図1における変速制御システムの詳細を示すブロック線図である。
【図5】図1,4における変速機コントローラのベルトスリップ率演算部を示すブロック線図である。
【図6】Vベルト挟圧反力によるプーリフランジの変形に応じて、プーリフランジに対するVベルトエレメントの接触係合位置が変化する状況を示し、 (a)は、Vベルト挟圧力が小さい場合の、プーリフランジに対するVベルトエレメントの接触係合位置を示す説明図、 (b)は、Vベルト挟圧力が大きい場合の、プーリフランジに対するVベルトエレメントの接触係合位置を示す説明図である。
【図7】図5における第1のVベルト巻き付き半径比補正係数演算部が第1のVベルト巻き付き半径比補正係数を求めるときに用いる、第1のVベルト巻き付き半径比補正係数の変化特性を示す特性線図である
【図8】変速機入力トルクに応じて、プライマリプーリおよびセカンダリプーリに対するVベルトの巻き付き半径が変化する状況を示し、 (a)は、変速機入力トルクが小さい場合の、プライマリプーリおよびセカンダリプーリに対するVベルトの巻き付き状態を示す説明図、 (b)は、変速機入力トルクが大きい場合の、プライマリプーリおよびセカンダリプーリに対するVベルトの巻き付き状態を示す説明図である。
【図9】図5における第2のVベルト巻き付き半径比補正係数演算部が第2のVベルト巻き付き半径比補正係数を求めるときに用いる、第2のVベルト巻き付き半径比補正係数の変化特性を示す特性線図である
【図10】図5に示したベルトスリップ状態判定処理による動作を、プライマリプーリ圧およびセカンダリプーリ圧が上昇した場合について示すタイムチャートである。
【図11】図5に示したベルトスリップ状態判定処理による動作を、変速機入力トルクが増大する場合について示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図示の実施例に基づき詳細に説明する。
<構成>
図1は、本発明のベルトスリップ状態判定装置を適用可能なVベルト式無段変速機1を例示し、その概略を示すものである。
このVベルト式無段変速機1はプライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3を、両者のプーリV溝が軸直角面内に整列するよう配して具え、これらプーリ2,3のV溝に無終端Vベルト4を掛け渡す。
プライマリプーリ2に同軸にエンジン5を配置し、このエンジン5およびプライマリプーリ2間にエンジン5の側から順次ロックアップトルクコンバータ6および前後進切り換え機構7を設ける。
【0020】
前後進切り換え機構7は、ダブルピニオン遊星歯車組7aを主たる構成要素とし、そのサンギヤをトルクコンバータ6を介してエンジン5に結合し、キャリアをプライマリプーリ2に結合する。
前後進切り換え機構7は更に、ダブルピニオン遊星歯車組7aのサンギヤおよびキャリア間を直結する前進クラッチ7b、およびリングギヤを固定する後進ブレーキ7cをそれぞれ具える。
かくて前後進切り換え機構7は、前進クラッチ7bの締結時にエンジン5からトルクコンバータ6を経由した入力回転をそのままプライマリプーリ2に伝達し、後進ブレーキ7cの締結時にエンジン5からトルクコンバータ6を経由した入力回転を逆転減速下にプライマリプーリ2へ伝達することができる。
【0021】
プライマリプーリ2への回転はVベルト4を介してセカンダリプーリ3に伝達され、セカンダリプーリ3の回転はその後、出力軸8、歯車組9およびディファレンシャルギヤ装置10を経て図示せざる左右駆動車輪に至り、車両の走行に供される。
上記の動力伝達中にプライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3間における回転伝動比(変速比)を変更可能にするために、プライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3のV溝を形成する対向フランジのうち一方を固定フランジ2a,3aとし、他方のフランジ2b,3bを軸線方向へ変位可能な可動フランジとする。
【0022】
これら可動フランジ2b,3bはそれぞれ、詳しくは後述のごとくに制御されるライン圧を元圧とするプライマリプーリ圧Ppriおよびセカンダリプーリ圧Psecをプライマリプーリ室2cおよびセカンダリプーリ室3cに供給することにより固定フランジ2a,3aに向け附勢する。
これによりVベルト4を対向フランジ2a,2b間および3a,3b間に挟圧してプライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3間での前記動力伝達を可能にする。
【0023】
この動力伝達を司るVベルト4は図2に示すごとく、図3に明示したV型エレメント4aを多数個、図示せざる無終端バンドで繋ぎ止めてベルト状に構成し、V型エレメント4aが図3に示すごとく対向フランジ2a,2b間および3a,3b間に挟圧され、プライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3間での動力伝達を行う。
この動力伝達に際しては、プライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3の回転方向が図2に矢印で示す方向である場合、プライマリプーリ2からセカンダリプーリ3へ向かっている圧縮側のV型エレメント4aが、図2に黒塗り矢印で示す方向へ順次押し付け合い、セカンダリプーリ3からプライマリプーリ2へ向かっている伸張側のV型エレメント4aを繋ぎ止めている無終端バンドが、当該伸張側のV型エレメント4aを図2に白抜き矢印で示す方向へ進めてプライマリプーリ2に巻き込ませることで、プライマリプーリ2の回転をセカンダリプーリ3に伝達することができる。
【0024】
<変速作用>
変速に際しては、後述のごとくライン圧を元圧とし、s目標変速比に対応させて発生させたセカンダリプーリ圧Psecと、ライン圧をそのまま使用するプライマリプーリ圧Ppriとの間における差圧により両プーリ2,3のV溝幅を変更して、これらプーリ2,3に対するVベルト4の巻き付き判定を連続的に変化させることで目標変速比を実現することができる。
【0025】
プライマリプーリ圧Ppriおよびセカンダリプーリ圧Psecの出力は、前進走行レンジの選択時に締結すべき前進クラッチ7bおよび後進走行レンジの選択時に締結すべき後進ブレーキ7cの締結油圧の出力と共に、変速制御油圧回路11により制御する。
この変速制御油圧回路11は変速機コントローラ12からの信号に応答して当該制御を行うものとする。
【0026】
このため変速機コントローラ12には、プライマリプーリ回転数Npriを検出するプライマリプーリ回転センサ13からの信号と、セカンダリプーリ回転数Nsecを検出するセカンダリプーリ回転センサ14からの信号と、セカンダリプーリ圧Psecを検出するセカンダリプーリ圧センサ15からの信号と、プライマリプーリ圧Ppriを検出するプライマリプーリ圧センサ16からの信号と、アクセルペダル踏み込み量APOを検出するアクセル開度センサ17からの信号と、インヒビタスイッチ18からの選択レンジ信号と、エンジン5の制御を司るエンジンコントローラ19からの変速機入力トルクに関した信号(エンジン回転数や燃料噴時間)と、セカンダリプーリ可動フランジ3bのストロークLsecを検出するストロークセンサ20からの信号とを入力する。
【0027】
変速制御油圧回路11および変速機コントローラ12は図4に示すごときもので、先ず変速制御油圧回路11について以下に説明する。
この変速制御油圧回路11は、エンジン駆動されるオイルポンプ21を具え、これから油路22への作動油を媒体として、これをプレッシャレギュレータ弁23により所定のライン圧Pに調圧する。
油路22のライン圧Pは、一方でそのままプライマリプーリ圧Ppriとしてプライマリプーリ室2cに供給し、他方で変速制御弁25により調圧された後セカンダリプーリ圧Psecとしてセカンダリプーリ室3cに供給される。
なおプレッシャレギュレータ弁23は、ソレノイド23aへの駆動デューティーによりライン圧Pを、変速機入力トルクに対応した圧力に制御するものとする。
【0028】
変速制御弁25は、中立位置25aと、増圧位置25bと、減圧位置25cとを有し、これら弁位置を切り換えるために変速制御弁25を変速リンク26の中程に連結し、該変速リンク26の一端に、変速アクチュエータとしてのステップモータ27を、また他端にセカンダリプーリの可動フランジ2bを連結する。
ステップモータ27は、基準位置から目標変速比に対応したステップ数Stepだけ進んだ操作位置にされ、かかるステップモータ27の操作により変速リンク26が可動フランジ2bとの連結部を支点にして揺動することにより、変速制御弁25を中立位置25aから増圧位置25bまたは減圧位置25cとなす。
【0029】
変速制御弁25の中立位置25aでは、セカンダリプーリ圧Psecが保圧され、変速制御弁25の増圧位置25bでは、セカンダリプーリ圧Psecがライン圧Pを元圧として増圧され、変速制御弁25の減圧位置25cでは、セカンダリプーリ圧Psecがドレンにより減圧される。
セカンダリプーリ圧Psecの上記増減圧により、これと、プライマリプーリ圧Ppriとの差圧が変化すると、セカンダリプーリ圧Psecの増圧時はVベルト式無段変速機1がロー側変速比へダウンシフトされ、セカンダリプーリ圧Psecの減圧時はVベルト式無段変速機1がハイ側変速比へアップシフトされ、これらによりVベルト式無段変速機1を目標変速比に向けての変速させることができる。
【0030】
当該変速の進行は、セカンダリプーリ3の可動フランジ3cを介して変速リンク26の対応端にフィードバックされ、変速リンク26がステップモータ27との連結部を支点にして、変速制御弁25を増圧位置25bまたは減圧位置25cから中立位置25aに戻す方向へ揺動する。
これにより、目標変速比が達成される時に変速制御弁25が中立位置25aに戻され、セカンダリプーリ圧Psecの保圧によりVベルト式無段変速機1を目標変速比を保つことができる。
【0031】
プレッシャレギュレータ弁23のソレノイド駆動デューティー、およびステップモータ27への変速指令(ステップ数Step)は、図1に示す前進クラッチ7bおよび後進ブレーキ7cへ締結油圧を供給するか否かの制御と共に、変速機コントローラ12により決定する。
【0032】
プレッシャレギュレータ弁23のデューティー制御に際して変速機コントローラ12は、エンジンコントローラ19(図1参照)からの入力トルク関連情報(エンジン回転数や燃料噴射時間)を基に求めた変速機入力トルクTiから、この変速機入力トルクTiを伝達可能で、且つ、後述のごとくに判定したプライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3に対するVベルト4のスリップ状態が、Vベルト4の耐久性および伝動効率の観点から適切なものとなるような必要プライマリプーリ圧Ppri(プライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3での必要Vベルト挟圧力)を求め、この必要プライマリプーリ圧Ppriにライン圧Pが一致するようプレッシャレギュレータ弁23のソレノイド23aの駆動デューティーを決定する。
【0033】
図1に示す前進クラッチ7bおよび後進ブレーキ7cへ締結油圧を供給するか否かの制御に際して変速機コントローラ12は、インヒビタスイッチ18からの選択レンジ信号に応じて当該制御を以下のごとくに行う。
Vベルト式無段変速機1がPレンジやNレンジのような非走行レンジにされていれば、前進クラッチ7bおよび後進ブレーキ7cへ締結油圧を供給せず、これらの解放によりVベルト式無段変速機1を動力伝達が行われない中立状態にする。
【0034】
Vベルト式無段変速機1がDレンジのような前進走行レンジにされていれば、前進クラッチ7bのみに締結油圧を供給して、その締結によりVベルト式無段変速機1を前進回転伝動状態となるようにする。
Vベルト式無段変速機1がRレンジのような後進走行レンジにされていれば、後進ブレーキ7cのみに締結油圧を供給して、その締結によりVベルト式無段変速機1を後進回転伝動状態となるようにする。
【0035】
ステップモータ27への変速指令(ステップ数Step)を決定するに際して変速機コントローラ12は、セカンダリプーリ回転数Nsecから求めた車速VSPと、アクセル開度APOとから、予定の変速マップをもとに目標変速比を求め、これに対応するステップ数Stepを変速指令となす。
図4のステップモータ27は、この変速指令(ステップ数Step)に応動して前記の変速作用により、Vベルト式無段変速機1の実変速比を目標変速比に一致させる。
【0036】
<ベルトスリップ状態の判定>
Vベルト式無段変速機1の伝動中は前記した通り、プライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3に対するVベルト4のスリップ状態が、Vベルト4の耐久性および伝動効率の観点から適切なものとなるよう、ライン圧Pの制御を介してプライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3のVベルト挟圧力を制御する必要がある。
【0037】
そのために図1,4の変速機コントローラ12は、図5のブロック線図で示す演算処理により、プライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3に対するVベルト4のスリップ状態(ベルトスリップ率SLip)を判定する。
【0038】
この判定に当たっては、図1のセンサ20で検出したセカンダリプーリ可動フランジ3bのストロークLsecなどから読み取れる、プライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3に対するVベルト4の理論的な巻き付き半径比λboと、プライマリプーリ回転数Npriおよびセカンダリプーリ回転数Nsec間のプーリ回転比λp(=Npri/ Nsec)とを用い、ベルトスリップ率SLipを
SLip=1−(λp/λbo)
の演算により求めて、その判定を行うものであることを前提とする。
【0039】
しかし当該判定に際して用いる理論上のベルト巻き付き半径比λboは、以下に説明する理由から実際のベルト巻き付き半径比と異なり、上記のごとくこの理論上のベルト巻き付き半径比λboをそのまま用いてベルトスリップ率SLipを求めると、ベルトスリップ率SLipが実際置との間に誤差を持つこととなる。
かように実際値からずれたベルトスリップ率SLipが適切なものとなるようVベルト挟圧力を制御しても、Vベルト4の実スリップ状態が適切なものとはならず、Vベルト4のスリップ過多による伝動効率の低下やVベルト4の耐久性の悪化を生じたり、Vベルト4のスリップ不足(Vベルト挟圧力の過大)による動力損失の増大を生ずる。
【0040】
理論上のベルト巻き付き半径比λboが実際のベルト巻き付き半径比からずれる原因としては2つの原因があり、第1の原因は、プーリ圧Ppri,Psecの上昇、低下に伴うVベルト挟圧力の変化に起因したプーリフランジ2a,2b,3a,3bの変形であり、第2の原因は、変速機入力トルクTiの変化に伴うプーリ2,3に対するVベルト4の巻き付き半径変化である。
【0041】
先ず前者の原因を図6に基づき説明するに、同図(a)は、プーリ圧Ppri,Psecが低くてVベルト挟圧力が小さい場合におけるプーリフランジ2a,2b,3a,3bとVベルト4(V型エレメント4a)との接触状態を示し、同図(b)は、プーリ圧Ppri,Psecが高くてVベルト挟圧力が大きい場合におけるプーリフランジ2a,2b,3a,3bとVベルト4(V型エレメント4a)との接触状態を示す。
【0042】
プーリ圧Ppri,Psecが高くてVベルト挟圧力が大きい場合、プーリフランジ2a,2b,3a,3bが図6(b)に矢印で示す方向へ変形して、Vベルト4(V型エレメント4a)との接触点がBで示すように径方向内方へ移動する。
プーリ圧Ppri,Psecが低くてVベルト挟圧力が小さい場合、プーリフランジ2a,2b,3a,3bは上記の変形を生じないか、生じてもごく僅かであり、Vベルト4(V型エレメント4a)との接触点が図6(a)にAで示すように径方向外方位置となる。
【0043】
つまり、プーリ圧Ppri,Psecの上昇、低下(Vベルト挟圧力の変化)に伴ってベルト巻き付き半径がΔRだけ変化し、理論上のベルト巻き付き半径比λboがその分だけ実際のベルト巻き付き半径比からずれる。
【0044】
ちなみに、Vベルト式無段変速機1がロー側変速比である場合は、プライマリプーリ2側のベルト巻き付き半径がセカンダリプーリ3側のベルト巻き付き半径よりも小さいため、Vベルト4は主にプライマリプーリ2側でスリップし、また、プライマリプーリ2からVベルト4へ動力伝達がなされるため、プライマリプーリ回転速度>Vベルト回転速度となる。
Vベルト式無段変速機1がハイ側変速比である場合は、逆にセカンダリプーリ3側のベルト巻き付き半径がプライマリプーリ2側のベルト巻き付き半径よりも小さいため、Vベルト4は主にセカンダリプーリ3側でスリップし、また、Vベルト4からセカンダリプーリ3へ動力伝達がなされるため、セカンダリプーリ回転速度<Vベルト回転速度となる。
【0045】
本実施例においては、上記のずれを無くして理論上のベルト巻き付き半径比λboを実際のベルト巻き付き半径比に一致させるための補正係数Kpを求める第1のVベルト巻き付き半径比補正係数演算部31を図5に示すごとくに設ける。
ここで第1のVベルト巻き付き半径比補正係数演算部31は、本発明における第1のVベルト巻き付き半径補正手段に相当する。
【0046】
この演算部31は、変速に際し前記の通りセカンダリプーリ圧Psecを制御するシステムであることから、図7に例示する特性マップをもとに、セカンダリプーリ圧Psecおよび理論上のベルト巻き付き半径比λbo(理論上の変速比)から、第1のVベルト巻き付き半径比補正係数Kpを求める。
【0047】
第1のVベルト巻き付き半径比補正係数Kpは図7に示すように、理論上のベルト巻き付き半径比λbo(理論上の変速比)が1以上のロー側では、セカンダリプーリ圧Psecが高くなってベルト巻き付き半径を図6(b)に示すように小さくしてベルト巻き付き半径比を増大方向へずれさせることから、1以上の補正係数とすると共にその値をロー側変速比であるほど、またセカンダリプーリ圧Psecが高いほど大きくし、
理論上のベルト巻き付き半径比λbo(理論上の変速比)が1未満のハイ側では、セカンダリプーリ圧Psecが低くなってベルト巻き付き半径を図6(a)に示すように大きくしてベルト巻き付き半径比を低下方向へずれさせることから、1未満の補正係数とすると共にその値をハイ側変速比であるほど、またセカンダリプーリ圧Psecが高いほど小さくする。
【0048】
次に、理論上のベルト巻き付き半径比λboが実際のベルト巻き付き半径比からずれる第2の原因、つまり変速機入力トルクTiの変化に伴うプーリ2,3に対するVベルト4の巻き付き半径変化について、図8を参照しつつ説明する。
同図(a)は、変速機入力トルクTiが小さくい場合におけるプライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3とVベルト4(V型エレメント4a)との接触状態を示し、同図(b)は、変速機入力トルクTiが大きい場合におけるプライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3とVベルト4(V型エレメント4a)との接触状態を示す。
【0049】
変速機入力トルクTiが大きくなると、図8(b)に示すように、動力伝達を行うVベルト4の圧縮側(図の右側)におけるV型エレメント4aが、プライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3の径方向外方へはみ出し、プライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3に対するVベルト4の巻き付き半径RpriおよびRsecが大きくなると共に、これら巻き付き半径RpriおよびRsecの増大量が異なり、
変速機入力トルクTiが大きくなるにつれ、プライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3に対するVベルト4の巻き付き半径比が増大方向へずれる。
【0050】
本実施例においては、このずれを無くして理論上のベルト巻き付き半径比λboを実際のベルト巻き付き半径比に一致させるための補正係数Ktを求める第2のVベルト巻き付き半径比補正係数演算部32を図5に示すごとくに設ける。
ここで第1のVベルト巻き付き半径比補正係数演算部32は、本発明における第2のVベルト巻き付き半径補正手段に相当する。
【0051】
この演算部32は、図9に例示する特性マップをもとに、変速機入力トルクTiから、第2のVベルト巻き付き半径比補正係数Ktを求める。
第2のVベルト巻き付き半径比補正係数Ktは図9に示すように、変速機入力トルクTiが大きいほど、1よりも大きな値とし、変速機入力トルクTiの増大につれVベルト4の巻き付き半径比が増大方向へずれても、理論上のベルト巻き付き半径比λboを実際のベルト巻き付き半径比に一致させ得るようになす。
【0052】
図5の乗算器33では、理論上のベルト巻き付き半径比λboに、演算部31で求めた第1のVベルト巻き付き半径比補正係数Kpと、演算部32で求めた第2のVベルト巻き付き半径比補正係数Ktとを乗じて、補正済ベルト巻き付き半径比λb(=λbo×Kp×Kt)を演算する。
この補正済ベルト巻き付き半径比λbは、第1のVベルト巻き付き半径比補正係数Kpおよび第2のVベルト巻き付き半径比補正係数Ktがそれぞれ前記したように設定されたものであることから、実際のベルト巻き付き半径比に一致する。
【0053】
図5においては、かように求めた補正済ベルト巻き付き半径比λbと、プライマリプーリ回転数Npriおよびセカンダリプーリ回転数Nsec間のプーリ回転比λp(=Npri/ Nsec)とを用い、ベルトスリップ率SLipを
SLip=1−(λp/λb)
の演算により求める。
【0054】
ところで本実施例においては、理論的な巻き付き半径比λboをそのまま用いず、これに補正係数Kp,Ktを乗じて求めた補正済ベルト巻き付き半径比λbを用いるため、そして、この補正済ベルト巻き付き半径比λbが前記した通り常に実際のベルト巻き付き半径比に一致しているため、
これを基に求めたベルトスリップ率SLipも実際置との間に誤差を持たない正確なものとなり、かかる正確なベルトスリップ率SLipが適切なものとなるようVベルト挟圧力を前記したごとく制御することで、Vベルト4の実スリップ状態を適切なものとなるよう制御することができる。
よって、Vベルト4のスリップ過多による伝動効率の低下やVベルト4の耐久性の悪化を生じたり、Vベルト4のスリップ不足(Vベルト挟圧力の過大)による動力損失の増大を生ずることがない。
【0055】
図10および図11により上記の作用効果を付言する。
図10は、アクセル開度APOを図示のごとく一定に保つ結果、変速機入力トルクTiが図示のごとく一定に保たれている間、瞬時t1にVベルト式無段変速機1が、セカンダリプーリ圧Psecの図示する上昇およびこれに呼応したプライマリプーリ圧Ppriの図示する上昇でダウンシフトを開始することにより、プライマリプーリ回転数Npriが図示のごとくセカンダリプーリ回転数Nsecから上昇乖離する場合の動作タイムチャートである。
【0056】
理論上はプライマリプーリ側ベルト巻き付き半径Rpriおよびセカンダリプーリ側ベルト巻き付き半径Rsecと、これらの間における理論上のベルト巻き付き半径比λboがそれぞれ、図10に破線で示すごときものである。
しかし実際は、セカンダリプーリ圧Psecの図示する上昇およびこれに呼応したプライマリプーリ圧Ppriの図示する上昇で、プライマリプーリ側ベルト巻き付き半径Rpriおよびセカンダリプーリ側ベルト巻き付き半径Rsecと、これらの間における実際のベルト巻き付き半径比λbがそれぞれ、図6につき前述した理由から図10に実線で示すごときものとなり、
理論上のベルト巻き付き半径比λboが実際のベルト巻き付き半径比λbからずれる。
【0057】
しかし、当該ずれを考慮しないでプライマリプーリ側ベルト巻き付き半径Rpriおよびセカンダリプーリ側ベルト巻き付き半径Rsecと、これらの間におけるベルト巻き付き半径比λbがそれぞれ、図10に一点鎖線で示すごときものであると認識した場合、ベルトスリップ率SLipが同図に一点鎖線で示すような値として演算される。
このベルトスリップ率演算値SLipは、同図に実線で示す実際のベルトスリップ率SLipよりも大きく、かように過大なベルトスリップ率演算値SLipをもとに、これが適切なベルトスリップ率となるよう制御した場合、Vベルト4のスリップが適正値に対し不足し、ベルト挟圧力の過大分だけ動力損失を生ずる。
【0058】
また前記のずれを考慮しないでプライマリプーリ側ベルト巻き付き半径Rpriおよびセカンダリプーリ側ベルト巻き付き半径Rsecと、これらの間におけるベルト巻き付き半径比λbがそれぞれ、図10に二点鎖線で示すごときものであると認識した場合、ベルトスリップ率SLipが同図に二点鎖線で示すような値として演算される。
このベルトスリップ率演算値SLipは、同図に実線で示す実際のベルトスリップ率SLipよりも小さく、かように過小なベルトスリップ率演算値SLipをもとに、これが適切なベルトスリップ率となるよう制御した場合、Vベルト4のスリップが適正値に対し過剰となり、伝動効率の低下およびベルト耐久性の悪化を生ずる。
【0059】
これに対し本実施例によれば、プライマリプーリ側ベルト巻き付き半径Rpriおよびセカンダリプーリ側ベルト巻き付き半径Rsecと、これらの間における(補正済)ベルト巻き付き半径比λbをそれぞれ、図10に実線で示すように認識して実際値と一致させることができる。
このためベルトスリップ率演算値SLipが、図10に実線で示すごときものとなり、実際のベルトスリップ率SLipに一致する。
かように実際値に一致したベルトスリップ率演算値SLipをもとに、これが適切なベルトスリップ率となるよう制御する本実施例によれば、Vベルト4のスリップが適正値に対し過不足を生ずることがなく、伝動効率の低下およびベルト耐久性の悪化や、ベルト挟圧力の過大による動力損失を生ずることがない。
【0060】
図11は、アクセル開度APOを図示のごとく開度増大させた結果、変速機入力トルクTiが図示のごとく増大されると共に、瞬時t1にVベルト式無段変速機1が、図示のごとく同じに保たれているセカンダリプーリ圧Psecおよびプライマリプーリ圧Ppriでダウンシフトを開始することにより、プライマリプーリ回転数Npriが図示のごとくセカンダリプーリ回転数Nsecから上昇乖離する場合の動作タイムチャートである。
【0061】
理論上はプライマリプーリ側ベルト巻き付き半径Rpriおよびセカンダリプーリ側ベルト巻き付き半径Rsecと、これらの間における理論上のベルト巻き付き半径比λboがそれぞれ、図11に破線で示すごときものである。
しかし実際は、変速機入力トルクTiの図示する上昇で、プライマリプーリ側ベルト巻き付き半径Rpriおよびセカンダリプーリ側ベルト巻き付き半径Rsecと、これらの間における実際のベルト巻き付き半径比λbがそれぞれ、図8につき前述した理由から図11に実線で示すごときものとなり、
理論上のベルト巻き付き半径比λboが実際のベルト巻き付き半径比λbからずれる。
【0062】
このため、当該ずれを考慮しないで理論上のベルト巻き付き半径比λboから求めた理論上のベルトスリップ率SLip(図11では図示を省略)を基に、これが適切なベルトスリップ率となるよう制御する場合、Vベルト4のスリップが適正値に対し過不足を生じ、スリップ過大時は伝動効率の低下およびベルト耐久性の悪化を生じ、スリップ不足時はベルト挟圧力の過大分だけ動力損失を生ずる。
【0063】
これに対し本実施例によれば、プライマリプーリ側ベルト巻き付き半径Rpriおよびセカンダリプーリ側ベルト巻き付き半径Rsecと、これらの間における(補正済)ベルト巻き付き半径比λbをそれぞれ、図11に実線で示すように認識して実際値と一致させることができる。
このためベルトスリップ率演算値SLipが、図11に実線で示すごときものとなり、実際のベルトスリップ率SLipに一致する。
かように実際値に一致したベルトスリップ率演算値SLipをもとに、これが適切なベルトスリップ率となるよう制御する本実施例によれば、Vベルト4のスリップが適正値に対し過不足を生ずることがなく、伝動効率の低下およびベルト耐久性の悪化や、ベルト挟圧力の過大による動力損失を生ずることがない。
【0064】
<変形例>
なお上記実施例では、変速に際しセカンダリプーリ圧Psecを制御することから、このセカンダリプーリ圧Psecに応じ(第1の補正係数Kpに応じ)、理論上のベルト巻き付き半径比λboを補正して補正済ベルト巻き付き半径比λbを求めることとしたが、
第1の補正係数Kpは、セカンダリプーリ圧Psecに応じて定めるものに限られず、プライマリプーリ圧Ppriに応じ定めるようにしたり、これらセカンダリプーリ圧Psecおよびプライマリプーリ圧Ppriの双方に応じ定めるようにしてもよいのは言うまでもない。
【0065】
また何れにしても、図5における第1のVベルト巻き付き半径比補正係数演算部31は、セカンダリプーリ圧4Psec(セカンダリプーリ3)によるVベルト挟圧力またはプライマリプーリ圧Ppri(プライマリプーリ2)によるVベルト挟圧力ごとに、Vベルト巻き付き半径比の変化量を平均化してVベルト巻き付き半径比の補正量となるよう、補正係数Kpを予め実験などにより求めてマップ化するのがよい。
【0066】
更に、図5における第2のVベルト巻き付き半径比補正係数演算部32は、変速機入力トルクTiごとに、Vベルト巻き付き半径比の変化量を平均化してVベルト巻き付き半径比の補正量となるよう、補正係数Ktを予め実験などにより求めてマップ化するのがよい。
【符号の説明】
【0067】
1 Vベルト式無段変速機
2 プライマリプーリ
2a 固定フランジ
2b 可動フランジ
2c プライマリプーリ圧室
3 セカンダリプーリ
3a 固定フランジ
3b 可動フランジ
3c セカンダリプーリ圧室
4 Vベルト
4a V型エレメント
5 エンジン
6 ロックアップトルクコンバータ
7 前後進切り換え機構
8 出力軸
9 歯車組
10 ディファレンシャルギヤ装置
11 変速制御油圧回路
12 変速機コントローラ
13 プライマリプーリ回転センサ
14 セカンダリプーリ回転センサ
15 セカンダリプーリ圧センサ
16 プライマリプーリ圧センサ
17 アクセル開度センサ
18 インヒビタスイッチ
19 エンジンコントローラ
20 ストロークセンサ
21 オイルポンプ
23 プレッシャレギュレータ弁
25 変速制御弁
26 変速リンク
27 ステップモータ(変速アクチュエータ)
31 第1のVベルト巻き付き半径比補正係数演算部
(第1のVベルト巻き付き半径補正手段)
32 第2のVベルト巻き付き半径比補正係数演算部
(第2のVベルト巻き付き半径補正手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力側のプライマリプーリおよび出力側のセカンダリプーリ間にVベルトを掛け渡して具え、プライマリプーリによるVベルト挟圧力とセカンダリプーリによるVベルト挟圧力との相関関係によって変速比が決まるVベルト式無段変速機に用いられ、
前記プライマリプーリおよびセカンダリプーリに対するVベルトのスリップ状態を、少なくとも該プライマリプーリまたはセカンダリプーリに対するVベルトの巻き付き半径から判定するようにしたVベルト式無段変速機のベルトスリップ判定装置において、
前記プライマリプーリまたはセカンダリプーリに対するVベルトの巻き付き半径を、プライマリプーリによるVベルト挟圧力またはセカンダリプーリによるVベルト挟圧力に応じて補正する第1のVベルト巻き付き半径補正手段を設けたことを特徴とするVベルト式無段変速機のベルトスリップ状態判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のVベルト式無段変速機のベルトスリップ状態判定装置において、
前記プライマリプーリおよびセカンダリプーリに対するVベルトの巻き付き半径を、変速機入力トルクに応じて補正する第2のVベルト巻き付き半径補正手段を設けたことを特徴とするVベルト式無段変速機のベルトスリップ状態判定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のVベルト式無段変速機のベルトスリップ状態判定装置において、
前記補正を行う前のプライマリプーリおよびセカンダリプーリに対するVベルトの巻き付き半径が理論上のVベルト巻き付き半径であることを特徴とするVベルト式無段変速機のベルトスリップ状態判定装置。
【請求項4】
前記プライマリプーリおよびセカンダリプーリがそれぞれ、プーリV溝を形成する一方の固定フランジに対し他方の可動フランジを個々のプーリ圧により軸線方向へストローク可能で、一方のプーリ圧を制御してプライマリプーリによるVベルト挟圧力およびセカンダリプーリによるVベルト挟圧力を決定するものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のVベルト式無段変速機のベルトスリップ状態判定装置において、
前記第1のVベルト巻き付き半径補正手段は、前記一方のプーリ圧に応じて前記Vベルトの巻き付き半径の補正を行うものであることを特徴とするVベルト式無段変速機のベルトスリップ状態判定装置。
【請求項5】
前記一方のプーリ圧がセカンダリプーリ圧である、請求項4に記載のVベルト式無段変速機のベルトスリップ状態判定装置において、
前記第1のVベルト巻き付き半径補正手段は、Vベルト式無段変速機の変速比が減速比であるとき前記Vベルトの巻き付き半径を増大方向へ補正し、Vベルト式無段変速機の変速比が増速比であるとき前記Vベルトの巻き付き半径を減少方向へ補正するものであることを特徴とするVベルト式無段変速機のベルトスリップ状態判定装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のVベルト式無段変速機のベルトスリップ状態判定装置において、
前記第1のVベルト巻き付き半径補正手段は、プライマリプーリによるVベルト挟圧力またはセカンダリプーリによるVベルト挟圧力ごとに、前記Vベルト巻き付き半径の変化量を平均化してVベルト巻き付き半径の補正量とするものであることを特徴とするVベルト式無段変速機のベルトスリップ状態判定装置。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか1項に記載のVベルト式無段変速機のベルトスリップ状態判定装置において、
前記第2のVベルト巻き付き半径補正手段は、プライマリプーリおよびセカンダリプーリに対するVベルトの巻き付き半径を、変速機入力トルクが大きいほど増大量が大きくなるよう補正するものであることを特徴とするVベルト式無段変速機のベルトスリップ状態判定装置。
【請求項8】
請求項7に記載のVベルト式無段変速機のベルトスリップ状態判定装置において、
前記第2のVベルト巻き付き半径補正手段は、変速機入力トルクごとに、前記Vベルト巻き付き半径の変化量を平均化してVベルト巻き付き半径の補正量とするものであることを特徴とするVベルト式無段変速機のベルトスリップ状態判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−180995(P2010−180995A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26814(P2009−26814)
【出願日】平成21年2月7日(2009.2.7)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】