説明

めっき配線形成方法

【課題】 本発明では、基板の表面に選択的にめっき触媒を付着させることができ、所望パターンで付着しためっき触媒によって所望パターンの配線を形成することができる技術を実現する。
【解決手段】 本発明の方法は、基板の上に選択的に導体をめっきすることによって配線を形成する方法であって、自己組織化単分子膜を基板の表面に形成する成膜工程と、前記自己組織化単分子膜に選択的に光を照射する露光工程と、前記自己組織化単分子膜の露光部を除去する洗浄工程と、前記基板の上にめっき触媒を付与する触媒付与工程と、前記基板の上に導体を無電解めっきする無電解めっき工程とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はめっき配線形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、基板の上に配線を形成するためには、基板の上に一様に金属薄膜を形成してから選択的にエッチングして金属薄膜の不要部を除去することによって、所望のパターンの配線を形成する。金属薄膜のエッチング工程では、金属薄膜の上にホトレジストを塗布し、選択的に露光して現像することによってホトレジストをパターニングし、ホトレジストで被覆されていない部位の金属をエッチングすることによって金属薄膜をパターニングし、最後にホトレジストを剥離する。
上記の配線形成方法では、1μmより微細な配線を形成することが非常に困難である。金属エッチング液は、微小な凹部に入り込まないために、配線間の間隔を微細化することが困難である。配線間の間隔を形成するために、エッチング処理に時間をかけると、配線を構成する金属薄膜が細ってしまう。それゆえ、金属薄膜をエッチング処理する技術では、微細な配線を形成することができなかった。
【0003】
そこで、微細な配線を形成するために、基板の表面に選択的にめっきすることによって配線を形成する技術が提案されている。特許文献1には、基板の表面にPd2+(パラジウムイオン)などの触媒金属錯イオンを含有するめっき触媒を一様に付着し、次いでパターンマスクを用いて光照射することによって光照射部分の触媒活性を失活させ、その後に基板を無電解めっき浴に入れて光未照射部分にNi(ニッケル)等の導体をめっきし、それによって所望パターンの導体配線を形成する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平6−77626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術によれば、基板表面に付着しているめっき触媒の活性を選択的に失活させることによって、導体を選択的にめっきすることができる。金属エッチング液を使用しないことから、金属薄膜をエッチングする場合にくらべ微細な配線パターンを形成することができる。
しかしながら、特許文献1の技術はさらなる改善の余地を残している。特許文献1の技術では、基板の表面全体に一様に、めっき触媒を付着する必要がある。しかし、実際に必要とされるめっき触媒は、光が照射されない部位のめっき触媒のみであり、光が照射される部位のめっき触媒は、光照射することによって失活されて廃却される。
めっき触媒として用いるパラジウムやプラチナ等は貴重な資源であるから、上記のように無駄に使用することは好ましくない。必要な部位のみに選択的にめっき触媒を付着させることができ、必要な部位のみに選択的にめっき触媒を付着させれば足りる技術が望まれている。
【0005】
本発明は上記課題を解決する。本発明では、基板の表面に選択的にめっき触媒を付着させることができ、所望パターンで付着しためっき触媒によって所望パターンの配線を形成することができる技術を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の方法は、基板の上に選択的に導体をめっきすることによって配線を形成する方法であって、自己組織化単分子膜を基板の表面に形成する成膜工程と、前記自己組織化単分子膜に選択的に光を照射する露光工程と、前記自己組織化単分子膜の露光部を除去する洗浄工程と、前記基板の上にめっき触媒を付与する触媒付与工程と、前記基板の上に導体を無電解めっきする無電解めっき工程とを備えることを特徴とする。
自己組織化単分子膜とは、有機高分子が固体表面と化学反応して吸着する過程で、固体表面に吸着する有機高分子同士が相互作用し、分子の配向性がそろって規則的に配列されることによって形成される、厚みが分子1個分程度の分子膜のことを言う。例えば、一般的な基板材料の表面に対して、上記の自己組織化によって単分子膜を形成する高分子としては、n−ODS(オクタデシルトリメトキシシラン;CH(CH17Si(OCH)、FAS(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラハイドロ−デクリル−1−トリメトキシシラン;FC(CF(CHSi(OCH)、AHAPS(n−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン;HN(CHNH(CHSi(OCH)が例示される。
上記の自己組織化単分子膜は、高分子から構成される分子膜であるため、光の照射を受けると、光が照射された部位の分子が分解される。ここでいう光とは一般的な可視光のみではなく、紫外線、真空紫外線などの可視光より短波長の電磁波を含む。
また上記の自己組織化単分子膜は、その表面に配列される官能基が、一般的な基板の表面の官能基にくらべて、めっき触媒との親和性が大きく異なるという性質を持つ。例えばn−ODSの場合、膜の表面にはCH基(メチル基)が配列されているが、アミノ化合物を含む溶液で処理することにより、膜表面のCH基(メチル基)上にNH基(アミノ基)が吸着し、基板表面のOH基(水酸基)にくらべてめっき触媒(例えばPd2+)との親和性が高くなる。また、AHAPSの場合、表面にはNH基(アミノ基)が配列されており、基板表面のOH基にくらべてめっき触媒(例えばPd2+)との親和性は高い。FASの場合は、表面にCF基(トリフルオロメチル基)が配列されており、基板表面のOH基にくらべてめっき触媒(例えばPd2+)との親和性は低い。
本発明者らは、上記しためっき触媒との親和性の相違に着目し、基板の表面に自己組織化単分子膜のパターンを形成することによって、基板上にめっき触媒液を選択的に付着させることができることを見出した。即ち、不要な部位にまでめっき触媒液を付着させる必要がない技術を創作した。
【0007】
図2は、本発明の方法によって基板上に選択的に導体をめっきする過程を模式的に示す図である。図2の(a)は配線を形成しようとする基板10を示す。基板10の材料には特に限定がなく、通常の基板が利用できる。例えば、エポキシ樹脂、ガラスエポキシ樹脂、シリコーン樹脂あるいはポリイミド樹脂等の高分子基板を利用することができる。また表面が、無機酸化物や金属酸化膜で覆われた任意の基板を利用することもできる。
【0008】
成膜工程では図2の(b)に示すように、上記の基板10の表面に自己組織化単分子膜12を形成する。
図2に示す方法では、自己組織化単分子膜12を形成する分子として、例えば、n−ODSあるいはAHAPSを用いることができる。
基板10への自己組織化単分子膜12の成膜は、例えば、CVD法によって実施してもよいし、プラズマCVD法によって実施してもよいし、PVD法によって実施してもよいし、その他のどのような方法で実施してもよい。
成膜工程を実施することによって、基板10の表面は均一に配列された自己組織化単分子膜12によって覆われる。
【0009】
露光工程と洗浄工程では図2の(c)に示すように、表面に自己組織化単分子膜12が成膜された基板10に選択的に(所望のパターンで)光を照射し、光が照射された自己組織化単分子膜12を除去する。選択的な光の照射は、例えばエキシマランプなどの光源からの光をマスクを用いて選択的に透過してもよいし、レーザーを用いて部分的に光を照射してもよい。基板10の表面に存在する自己組織化単分子膜12のうち、光を照射された部分は分子が分解し、光を照射されていない部分は健全な状態で保たれる。光を照射することによって、基板10の表面には自己組織化単分子膜12のパターンが形成される。必要に応じて、表面を洗浄してもよい。
【0010】
めっき触媒液付与工程では、図2の(d)に示すように、自己組織化単分子膜12のパターンを利用して、めっき触媒14を選択的に付与する。めっき触媒14としては、好適にはPd2+を用いることができる。めっき触媒14の付与は、好適には基板10をめっき触媒14を備えるめっき触媒液中に浸漬することによって行うことができる。
基板10の表面にめっき触媒液を接触させると、自己組織化単分子膜12の表面と剥き出しとなっている基板10の表面との親和性の相違から、めっき触媒14は基板10の上に選択的に吸着する。例えば、自己組織化単分子膜12としてn−ODSを用いる場合、表面をアミノ化合物を含む溶液で処理することにより、その表面は基板10の表面にくらべ、Pd2+が吸着しやすい性質がある。それゆえ、基板10をめっき触媒液に浸漬すると、初めに自己組織化単分子膜12の表面にめっき触媒14が付着し、その後に剥き出しとなっている基板10の表面にもめっき触媒14が付着していく。そこで、基板10をめっき触媒液に浸漬する時間を調整することで、自己組織化単分子膜12の表面にのみめっき触媒14を吸着させ、基板10の表面にはめっき触媒14を吸着させないことができる。自己組織化単分子膜12としてAHAPSを用いる場合も同様である。AHAPSの表面は基板10の表面にくらべPd2+が吸着しやすいため、n−ODSを用いる場合と同様の方法によって、自己組織化単分子膜12の表面のみにめっき触媒14を付与することができる。
触媒付与工程を実施することによって、基板10の上にめっき触媒14を選択的に吸着させることができる。
【0011】
無電解めっき工程では図2の(e)に示すように、めっき触媒14が選択的に付与された基板10を無電解めっきして、基板10の上に選択的に導体16をめっきする。その結果、めっき触媒14を核として基板10の上に導体がめっきされ、基板10の上に導体16の配線が形成される。
【0012】
上記の例では、自己組織化単分子膜を形成する分子としてn−ODSあるいはAHAPSを用いて、基板の上に自己組織化単分子膜のパターンを形成し、パターン形成された単分子膜の表面にのみめっき触媒を吸着させることで、導体を選択的にめっきして配線を形成している。
上記とは異なり、自己組織化単分子膜を形成する分子として、FASを用いることもできる。FASの自己組織化単分子膜の表面は、基板の表面にくらべめっき触媒が吸着しにくい。従ってFASを用いる場合には、自己組織化単分子膜のパターン(配線を形成する部分が抜かれたパターン)を形成した後に、自己組織化単分子膜の表面にはめっき触媒を吸着させずに剥き出しとなっている基板の表面にのみめっき触媒を吸着させることができ、選択的に無電解めっきすることができる。
【0013】
図3は自己組織化単分子膜としてFASを用いた場合に、本発明の方法によって基板上に選択的にめっきする過程を模式的に示す図である。
図3の(a)は配線を形成しようとする基板10であり、図2の(a)の基板と同様であるから、説明を略す。
成膜工程では図3の(b)に示すように、上記の基板10の表面に、自己組織化単分子膜22を形成する。自己組織化単分子膜22としてFASを用いる場合も、図2の場合と同様にして、CVD法によって成膜してもよいし、プラズマCVD法によって成膜してもよいし、PVD法によって成膜してもよいし、その他のどのような方法で成膜してもよい。
【0014】
露光工程と洗浄工程では図3の(c)に示すように、表面に自己組織化単分子膜22を成膜された基板10に選択的に光を照射して、自己組織化単分子膜22を選択的に除去する。図2に示す方法では、形成しようとする配線と同一の形状の自己組織化単分子膜を残しているが、図3に示す方法では、形成しようとする配線と同一の形状で基板10が剥き出しとなるように、自己組織化単分子膜22を除去する。
【0015】
触媒付与工程では図3の(d)に示すように、自己組織化単分子膜22のパターンが形成された基板10の表面にめっき触媒14を付与して、めっき触媒14のパターンを形成する。基板10の表面にめっき触媒14を付与すると、自己組織化単分子膜12の表面と剥き出しとなっている基板10の表面との親和性の相違から、めっき触媒14は基板10の上に選択的に吸着する。自己組織化単分子膜22としてFASを用いる場合、その表面は基板10の表面にくらべ、めっき触媒が吸着しにくい性質がある。それゆえ、基板10を触媒処理液に浸漬すると、初めに剥き出しとなっている基板10の表面にめっき触媒14が付着し、その後に自己組織化単分子膜22の表面にもめっき触媒14が付着していく。そこで、基板10を触媒処理液に浸漬する時間を調整することで、剥き出しとなっている基板10の表面のみにめっき触媒14を吸着させ、自己組織化単分子膜22の表面にはめっき触媒14を吸着させないことができる。
めっき触媒14を付与することによって、図3の(d)に示すように、基板10の上で自己組織化単分子膜22が覆っていない部分にのみめっき触媒14が吸着する。
【0016】
図3の(e)に示すように、めっき触媒14が選択的に付与された基板10を無電解めっきして、基板10の上に導体16をめっきする。その結果、めっき触媒14を核として基板10の上に選択的に導体16がめっきされ、基板10の上に導体16の配線が形成される。
【0017】
上記した成膜工程から無電解めっき工程までを実施することで、基板の表面に導体の配線を形成することができる。
上記の方法では、基板の表面に均一に吸着する自己組織化単分子膜を選択的に除去して配線パターンを形成する。自己組織化単分子膜は局所的に凝集することが無く、基板の表面に均一に吸着するため、選択的に除去することによって精度よくパターンを形成することができる。従って、めっき触媒についても精度よく選択的に吸着させることが可能であり、微細な配線についても好適に形成することができる。本発明者らが試作を実施したところ、配線を構成する導線の太さおよび導線の間隔が500nmの微細な配線についても、好適に形成することができた。
【0018】
前記の配線形成方法は、前記成膜工程を実施する前に、前記基板の表面に光を照射して表面を親水化する前処理工程をさらに備えることが好ましい。
基板の表面に光を照射すると、基板の表面に付着していた汚れが分解されて、表面が親水化される。ここでいう光とは一般的な可視光のみではなく、紫外線、真空紫外線などの可視光より短波長の電磁波を含む。基板の表面をあらかじめ親水化しておくことで、自己組織化単分子膜を基板の表面に高い吸着性で均一に形成することが可能となる。自己組織化単分子膜を均一に形成することで、基板に形成される配線の寸法精度を好適に保つことが可能となる。また、自己組織化単分子膜を高い吸着性で形成することで、自己組織化単分子膜の表面にめっき触媒を付与する場合に、基板に形成される配線と基板との密着性を向上することができる。
【0019】
前記の配線形成方法は、前記無電解めっき工程を実施した後に、前記基板の上に電気めっきする電気めっき工程をさらに備えることが好ましい。
無電解めっきによって形成された導体パターンを下地として電気めっきすることによって、形成される配線の導体を被覆したり、所望の厚さまで増厚したりすることを容易に実施することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の配線形成方法によって、基板の表面に選択的にめっき触媒を付与して、基板にめっき配線を形成することが可能となる。めっきをするために必要な部位にのみめっき触媒を付与することから、めっき触媒の無駄を省き、基板への配線形成の省資源化をはかることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を具現化した実施例について図面を参照して説明する。最初に実施例の主要な特徴を列記する。
(形態1) 基板の上に選択的に導体をめっきすることによって配線を形成する方法であって、
表面にCH基またはNH基を備える自己組織化単分子膜を基板の表面に形成する成膜工程と、
前記自己組織化単分子膜に選択的に光を照射する露光工程と、
前記自己組織化単分子膜の露光部を除去する洗浄工程と、
前記自己組織化単分子膜の表面に触媒を付与する触媒付与工程と、
前記自己組織化単分子膜の表面に導体を無電解めっきする無電解めっき工程と
を備えることを特徴とする。
(形態2) 前記露光工程は、前記自己組織化単分子膜に選択的に真空紫外線を照射する工程であることを特徴とする。
(形態3) 前記成膜工程は、自己組織化単分子膜を基板の表面にCVD法を用いて形成する工程であることを特徴とする。
【実施例】
【0022】
(第1実施例)
本実施例では、エポキシ樹脂製の基板の表面にニッケルの配線を形成する例を、図面を参照しながら説明する。
図1は本実施例に係る配線形成方法を示すフローチャートである。本実施例の配線形成方法は、S12で開始した後に、前処理工程S14、成膜工程S16、露光工程S18、洗浄工程S20、触媒付与工程S22、無電解めっき工程S24、電気めっき工程S26を順に実施してS28で終了する。
【0023】
前処理工程S14では、基板の表面を光洗浄して、基板表面の樹脂を親水化する。基板の表面を水洗して乾燥させ、その後にエキシマランプを用いて基板の表面に真空紫外線を照射する。真空紫外線の照射によって、基板の表面に付着していた汚れが分解され、基板の表面は洗浄され、親水化される。上記のエキシマランプによる照射は、波長172nmの真空紫外線を、圧力10Paの雰囲気化で、20分程度実施することが好ましい。
前処理工程S12を実施することで、基板の表面は洗浄されて親水化され、後の成膜工程S16において自己組織化単分子膜を好適に形成することができる。
【0024】
成膜工程S16では、基板の表面に自己組織化単分子膜を形成する。本実施例では、自己組織化単分子膜を形成する高分子として、ODSを用いる。基板表面への単分子膜の形成には、CVD法を用いる。
成膜工程S16では、図4に示すように、容器30の内部に、基板10と原液容器38を配置する。
基板10は前処理工程S14において表面を親水化されており、表面を上に向けた状態で台32の上に載置される。
原液容器38はガラス製の開口を上部に備える容器であり、その中にはODSの原液36が蓄えられている。原液容器38にはヒータ34が設けられており、原液36は所定の温度履歴に沿って加熱され、原液36が所定の温度に到達するとODS分子が気化されて容器30内に拡散する。
容器30は蓋を閉じることによって内部を密閉することが可能な、テフロン(登録商標)製の容器である。容器30を密閉した状態では、原液36から気化されるODS分子は、容器30の外部へ出ることなく、内部で拡散する。
【0025】
容器30の内部に原液容器38と基板10を配置して、容器30を密閉し、ヒータ34による加熱を開始すると、原液36が所定の温度に到達して、ODS分子が気化される。
気化されたODS分子は容器30内に拡散して、一部は基板10の表面に到達する。ODS分子は基板10の表面に到達すると、基板10の表面とシラン結合によって吸着していく。このとき、すでに吸着している隣接するODS分子と分子間力によって結合し、基板10の表面に自己組織化単分子膜を形成する。
成膜工程S16を実施することによって、基板10の表面に膜厚2nm程度のn−ODS自己組織化単分子膜が形成される。
【0026】
露光工程S18では、基板の表面に形成された自己組織化単分子膜にマスクを通じて光を照射し、選択的にn−ODS分子を分解する。
図5は光源としてエキシマランプを用いる場合の、露光工程S18の概要を模式的に示す図である。
マスク40は基板10の上に形成しようとする配線に応じた光透過模様を備えている。マスク40は図示されない固定治具によって、端部を保持されている。基板10とマスク40は実際には近接しているが、図中では図示の明瞭化のためにマスク40と基板10を大きく離して示している。
エキシマランプ(図示されない)から照射される光は、マスク40によって選択的に透過され、基板10の上の自己組織化単分子膜を選択的に露光する。エキシマランプによる照射は、圧力10Paの雰囲気化で、波長172nmの真空紫外線を照射することが好ましい。
基板10の上の自己組織化単分子膜は、マスクを透過した真空紫外線に露光された部分(露光部)42と、マスクによって真空紫外線を遮蔽されて露光されない部分(遮光部)44が形成される。露光部42のn−ODS分子は、真空紫外線によって分解される。
露光工程S18を実施することによって、基板10の表面の自己組織化単分子膜に、分子が分解された露光部42と、分子が健全なまま保たれる遮光部42が形成される。
【0027】
洗浄工程S20では、選択的に露光された自己組織化単分子膜から露光部を除去して、基板の表面に遮光部の自己組織化単分子膜のみを残留させる。
洗浄工手S20では露光した基板をHF(フッ化水素)溶液を備える洗浄槽の内部に浸漬する。HF溶液の濃度は、1重量%程度であることが好ましい。
基板をHF溶液に浸漬すると、自己組織化単分子膜の露光部については、分解されたODS分子が除去される。自己組織化単分子膜の遮光部については、ODS分子が除去されることなく、基板の表面にそのまま残留する。
洗浄工程S20を実施することによって、基板の表面の自己組織化単分子膜から露光部のみが除去されて、自己組織化単分子膜のパターンが基板の表面に形成される。
【0028】
触媒付与工程S22では、基板の表面の自己組織化単分子膜のパターンを利用して、めっき触媒を選択的に付与する。本実施例では、自己組織化単分子膜のパターンが形成された基板を、所定の時間だけ触媒槽に浸漬させることによって、めっき触媒を付与する。
触媒付与に用いる触媒槽は、その内部にめっき触媒液を備えている。触媒処理液は、PdCl、PdSOなどの化合物と、錯化剤としてフタル酸を備えている。
触媒処理液の中に自己組織化単分子膜を備える基板を浸漬させると、触媒処理液中のPd2+との親和性の相違から、先ず自己組織化単分子膜の表面にPd2+が吸着していく。所定の時間が経過した後に基板を取り出して乾燥させることで、自己組織化単分子膜の表面にのみめっき触媒が吸着する。
触媒付与工程S22を実施することによって、基板の上にめっき触媒が選択的に付与される。
【0029】
無電解めっき工程S24では、選択的にめっき触媒を付与された基板に無電解めっき処理を施して、基板の表面に導体の配線を形成する。本実施例では、めっき触媒を付与された基板をめっき浴に浸漬することで、無電解めっきを実施する。
無電解めっきに用いるめっき浴は、内部にめっき液を蓄えている。めっき液はNi(ニッケル)の金属イオンと、還元剤として次亜リン酸ナトリウムを備えている。
めっき浴の内部に基板を浸漬すると、めっき液中の還元剤が自己組織化単分子膜の表面に付着しているPd2+表面で酸化され、放出される電子によってめっき液中のNiイオンが還元される。その結果、自己組織化単分子膜の表面上にNiが析出する。
無電解めっき工程を実施することによって、基板の上にNiの配線パターンが形成される。
【0030】
電気めっき工程では、無電解めっき工程で基板の表面に形成されたNiの配線パターンを下地として、電気めっき処理を施す。無電解めっき工程S24で表面にめっきされたNiを下地として電気めっきによってさらにNiをめっきすることによって、形成されたNiの配線パターンを所望の厚さまで増厚することができる。
【0031】
上記の方法によって、基板の表面に微細な配線を形成することができる。本発明者らが試作を実施したところ、配線を構成する導線の太さおよび導線の間隔が500nmの微細な配線について、好適に形成することができた。
【0032】
上記の実施例では、基板としてエポキシ樹脂を用いる例を説明しているが、それ以外にも例えばガラスエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂であっても、好適に配線を形成することができる。
また、樹脂系の基板材料だけではなく、無機酸化物、金属酸化膜などを表面に備える基板に対しても、好適に配線を形成することができる。
【0033】
上記の実施例では、基板の表面にめっきする金属としてNiを用いる例を説明しているが、それ以外にも例えばAu(金)、Cu(銅)であっても、好適に配線を形成することができる。
【0034】
上記の実施例では、基板に形成する自己組織化単分子膜としてn−ODSを用いる例を説明したが、自己組織化単分子膜としてAHAPSを用いても好適に配線を形成することができる。
【0035】
(第2実施例)
本実施例では、表面にシリコン酸化膜を備える基板上に、銅の配線を形成する例を説明する。第1実施例と同様の事柄については説明を略す。
図1は本実施例に係る配線形成方法を示すフローチャートである。本実施例の配線形成方法は、第1実施例と同様に、S12で開始した後に、前処理工程S14、成膜工程S16、露光工程S18、洗浄工程S20、触媒付与工程S22、無電解めっき工程S24、電気めっき工程S26を順に実施してS28で終了する。
【0036】
成膜工程S16では、基板の表面に自己組織化単分子膜を形成する。本実施例では、自己組織化単分子膜を形成する高分子として、FASを用いる。基板表面への自己組織化単分子膜の形成には、CVD法を用いる。
【0037】
容器の内部にFASの原液を蓄えた原液容器と基板を配置して、容器を密閉し、ヒータによる原液の加熱を開始すると、原液が所定の温度に到達して、FAS分子が気化される。気化されたFAS分子は密閉された容器内に拡散して、一部は基板の表面に到達する。FAS分子は基板の表面に到達すると、基板の表面とシラン結合によって吸着していく。このとき、すでに吸着している隣接するFAS分子と分子間力によって結合し、基板の表面に自己組織化単分子膜を形成する。
成膜工程S16を実施することによって、基板の表面に膜厚2nm程度のFASの自己組織化単分子膜が形成される。
【0038】
露光工程S18では、基板の表面に形成された自己組織化単分子膜に紫外線領域のレーザー光を照射して、自己組織化単分子膜を選択的に除去する。
基板の上の自己組織化単分子膜は、レーザー光を照射された部分(露光部)と、レーザー光を照射されない部分(遮光部)が形成される。露光部のFAS分子は、レーザー光の照射によって分解される。
露光工程S18を実施することによって、基板の表面の自己組織化単分子膜に、分子が分解された露光部と、分子が健全なまま保たれる遮光部が形成される。
【0039】
洗浄工程S20では、選択的に露光された自己組織化単分子膜から露光部を除去して、基板の表面に遮光部の自己組織化単分子膜のみを残留させる。
基板をHF溶液に浸漬すると、自己組織化単分子膜の露光部については、分解されたFAS分子が除去される。自己組織化単分子膜の遮光部については、FAS分子が除去されることなく、基板の表面にそのまま残留する。
洗浄工程S20を実施することによって、基板の表面の自己組織化単分子膜から露光部のみが除去されて、自己組織化単分子膜のパターンが基板の表面に形成される。
【0040】
触媒付与工程S22では、基板の表面の自己組織化単分子膜のパターンを利用して、めっき触媒を選択的に付与する。本実施例では、自己組織化単分子膜のパターンが形成された基板を、所定の時間だけ触媒槽に浸漬させることによって、めっき触媒を付与する。
触媒処理液の中に自己組織化単分子膜を備える基板を浸漬させると、触媒処理液中のPd2+との親和性の相違から、先ず剥き出しの基板の表面にPd2+が吸着していく。所定の時間が経過した後に基板を取り出して乾燥させることで、自己組織化単分子膜の表面にはめっき触媒を吸着させずに、剥き出しの基板の表面にのみめっき触媒が吸着する。
触媒付与工程S22を実施することによって、基板の上にめっき触媒が選択的に付与される。
【0041】
無電解めっき工程S24では、選択的にめっき触媒を付与された基板に無電解めっき処理を施して、表面に導体の配線を形成する。本実施例では、めっき触媒を付与された基板をめっき浴に浸漬することで、無電解めっきを実施する。
無電解めっきに用いるめっき浴は、内部にめっき液を蓄えている。めっき液はCu(銅)の金属イオンと、還元剤として次亜リン酸ナトリウムを備えている。
めっき浴の内部に基板を浸漬すると、めっき液中の還元剤が剥き出しの基板の表面に付着しているPd2+表面で酸化され、放出される電子によってめっき液中のCuイオンが還元される。その結果、剥き出しの基板の表面上にCuが析出する。
無電解めっき工程を実施することによって、基板の上にCuの配線パターンが形成される。
【0042】
電気めっき工程では、無電解めっき工程で基板の表面に形成されたCuの配線パターン上に、電気めっき処理を施す。無電解めっき工程S24で表面にめっきされたCuを下地として電気めっきすることによって、形成されたCuの配線パターンを被覆することができる。
【0043】
基板の表面に残留している自己組織化単分子膜は、適切な洗浄処理を施して除去してもよいし、そのまま残留させてもよい。本実施例で用いているFASの自己組織化単分子膜は絶縁性材料であり、そのまま残留させた場合でも配線の導電性には影響を及ぼさない。
上記の方法によって、基板の表面に微細な配線を形成することができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は本実施例の配線形成方法を示すフローチャートである。
【図2】図2は本発明の配線形成方法を説明する図である。
【図3】図3は本発明の他の配線形成方法を説明する図である。
【図4】図4は基板へ自己組織化単分子膜を成膜する様子を説明する図である。
【図5】図5は自己組織化単分子膜を選択的に露光する様子を説明する図である。
【符号の説明】
【0046】
10・・・基板
12、22・・・自己組織化単分子膜
14・・・めっき触媒
16・・・導体
30・・・容器
32・・・台
34・・・ヒータ
36・・・原液
38・・・原液容器
40・・・マスク
42・・・露光部
44・・・遮光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に選択的に導体をめっきすることによって配線を形成する方法であって、
自己組織化単分子膜を基板の表面に形成する成膜工程と、
前記自己組織化単分子膜に選択的に光を照射する露光工程と、
前記自己組織化単分子膜の露光部を除去する洗浄工程と、
前記基板の上にめっき触媒を付与する触媒付与工程と、
前記基板の上に導体を無電解めっきする無電解めっき工程と
を備えることを特徴とする配線形成方法。
【請求項2】
前記成膜工程を実施する前に、前記基板の表面に光を照射して表面を親水化する前処理工程
をさらに備えることを特徴とする請求項1の配線形成方法。
【請求項3】
前記無電解めっき工程を実施した後に、前記基板の上に電気めっきする電気めっき工程
をさらに備えることを特徴とする請求項2の配線形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−57167(P2006−57167A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−242748(P2004−242748)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】